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[第四弾]妹に言われたいセリフ
- 1 :No.2 :05/01/19 01:22:36 ID:h4scIhQi
- 「また会えたね、お兄ちゃん」
ここは、脳内の妹さんが囁いてくれるセリフとかSSとかを暴露しちゃうスレです。
【お兄ちゃんと私のお約束】
・荒らしさんや厨房さんは、ちょっと可哀想だけど、見ないフリをしようね♪
・SS職人さんにはちゃんとお礼を言うこと!!デリケートな職人さんもいるんだからね?
・えっと……いっぱい見られるのはちょっとだけ恥ずかしいから……sage推奨だよ……。
メール欄に『sage』って入れてほしいな……。
・リアルの妹さんの話は程々にすること!!
【お兄ちゃんとの思い出】
妹に言われたいセリフ
http://game.2ch.net/gal/kako/1022/10225/1022257886.html
[第二弾]妹に言われたいセリフ
http://game4.2ch.net/test/read.cgi/gal/1028470988/
[第三弾]妹に言われたいセリフ
http://game9.2ch.net/test/read.cgi/gal/1056993709/
過去ログ倉庫
http://www.geocities.jp/mewmirror9/
このスレでもずぅっと一緒だよ、お兄ちゃん♪
- 328 :コンズ :05/02/13 03:42:42 ID:yN8E6bOA
- Give me 全スレ931
もう気になって夜も眠れない(・∀・)
- 329 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/13 03:45:36 ID:z0HsnTpV
- 乙ですー
素晴らしいです。
どんどん続き投下しちゃってください!!
期待してますよ(´∀`)
- 330 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/13 04:03:45 ID:3EksoEle
- 遊星さんといい931さんといい
小説家めざせますよ?
同人誌ならず同人書で!
- 331 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/02/13 07:12:50 ID:DeVwSD31
- すっげぇ……。
俺とは比べ物にならんよ、マジで……。
>>326
確かに……。
って言ったら、気分を悪くするだろうか……。
- 332 :前スレ288 :05/02/13 16:15:09 ID:RtwTmGNA
- ……お前ら、パンドラの箱という神話を知っているか?
あらゆる不幸を閉じ込めた箱を与えられた、少女の話。
話それ自体は知らなくても、パンドラという名前くらいは耳にしたことがあるだろう。
この話の少女は、……結末を言ってしまうが、結局は好奇心から箱を開けてしまう。
慌てて箱を閉めたら、残っていたのは希望だけ。
その結果、あらゆる不幸が世界中にばら撒かれることになった―――というお話だ。
よく考えてみてくれ。おかしな話じゃないか?
不幸を閉じ込めておいた箱に、どうして希望なんてものが入っていたのだろう。
これは推測だが……それは未来というやつなんじゃないかと思う。
未来のことが事前に分かってしまう。気づいてしまう。そうしたら人は生きていけない。
だから箱に閉じ込めておいた。つまりはそういうことなんだろう。
だが、ここにその最後の不幸を与えられてしまった少女がいる。
………そう。例えるなら、これはそんな話だろう―――。
- 333 :前スレ288 :05/02/13 16:16:53 ID:RtwTmGNA
- 最後の日まで、あと7日。
「―――もう、長くありません」
無機質な部屋の中で、妹の担当医はそう告げた。
「病気に抵抗する力がないのでしょう。病状は悪くなる一方です」
担当医は額にシワを寄せ、カルテを真剣に見つめている。
「こちらとしては、打つ手がありません。持ってあと一週間でしょう」
担当医は本当にすまない、という表情をしながら俺に言った。
「……分かりました。ありがとうございます」
俺はイスから立ち上がり、部屋を出ようとする。
「―――あの」
振り向くと、担当医は俺をしっかりと見据えていた。
口が開く。
- 334 :前スレ288 :05/02/13 16:18:47 ID:RtwTmGNA
- 「春香、入るぞ」
「あっ!お兄ちゃん♪えへへ…いらっしゃ〜い」
「調子はどうだ?」
「うん、今日はいつもよりいいよ。春香、ちゃんといい子にしてたから」
「そっか。春香はいい子だな。……そんな春香にご褒美をあげよう」
「ほえ?ごほうび?」
「退院、おめでとう。春香」
「……え?」
「担当医の先生がさ、もう退院してもいいってさ」
「………」
「……春香?」
「―――う」
「う?」
「う……う……うわあああぁぁぁん!」
「はっ、春香!?ど、どど、どうした!?」
「うう……嬉しいよぉ!お兄ちゃん……ありがとう……!」
「あ、ああ……。俺の力じゃないよ」
俺の力じゃない。
春香は本当はもう助からないから、せめて長年帰っていなかった自宅に帰らせてやろう。
担当医が言ったんだ。俺の力じゃない。
すなわち、俺のせいじゃない。俺のせいじゃない。俺の………。
- 335 :前スレ288 :05/02/13 16:20:53 ID:RtwTmGNA
- 「えへへ〜♪」
「そんなに楽しみか?うちに帰るの」
「うん!だってだって、もう三年も帰ってなかったんだよ?」
「あ、もうそんなに経ってたっけ」
「もぉ〜!それくらい覚えておいてよぉ〜……」
「冗談だよ、冗談。ほら、着いたぞ」
夕暮れを背負った我が家を見上げる。春香は目を丸くしてそれを見上げた。
「……懐かしいなぁ。あ!あそこ春香の部屋でしょ?」
「ああ、そうだな。で、隣は俺の部屋だ」
「お兄ちゃんの部屋かぁ……。入るのも久しぶりだよね」
「昔はしょっちゅう来たけどな。夜中に怖くて眠れな〜いとか半べそになって」
「むかっ!春香ちゃん、今ので怒っちゃいました」
「え?あ、いや、ごめん」
「ダメです。もう怒っちゃいました。お兄ちゃんのベッドの下を調べるまで許しません」
「……置いてくぞ」
「ほえ?……あっ!あ、待ってよぅ!……って、図星?お兄ちゃん、図星なの〜っ!?」
- 336 :前スレ288 :05/02/13 16:22:58 ID:RtwTmGNA
- 玄関を開けた。俺にとっては見慣れた廊下が広がる。しかし―――。
「えへへ……帰ってきちゃった」
「ああ」
俺は靴を脱ぎ、フローリングの床に踏み出す。それから振り返り、
「春香。……おかえり」
「あ……うん。……ただいま、お兄ちゃん」
手を差し伸べる。春香は靴を脱ぎ、何のためらいもなく俺の手をとった。
「あ!」
「おわっ!?なんだ?」
「お父さんとお母さんにも、ただいま言ってこなきゃ!」
そう告げると、春香は俺の手を離し、廊下の奥へと小走りに駆けていく。
行き先はおそらく仏間だろう。そこに両親の仏壇がある。
俺たちの親はすでに亡くなっている。心臓病だ。
その病気が、今度は春香の命を奪おうとしている。
「……くそっ」
俺は空いた手を強く握り締め、春香の後を追った。
仏間に入ると、春香は両手を合わせて正座していた。無論、仏壇に向かってだ。
俺はそれを後ろから眺める。
……肩までの髪。華奢なそのシルエットはひどく痩せているように感じた。
ぼんやりと眺めていると、春香は立ち上がり、その可愛らしい顔を少し歪めて笑った。
―――無理して笑っている顔だ。
「あは……お父さんとお母さん、おかえりだって」
「ああ……」
- 337 :前スレ288 :05/02/13 16:24:53 ID:RtwTmGNA
- _| ̄|○ 書いちゃった。続きは書かない。
- 338 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/13 16:38:22 ID:3EksoEle
- >>337
許さん!書きなさい!この俺のもやもやどうしてくれんだよ〜(´;ω;`)
- 339 :前スレ931 :05/02/13 19:53:40 ID:e+kDRYFj
- ぬお、件の288氏じゃないですか
すんません。俺が前スレで書いたヤツの導入部、288氏のとメッチャ似てました…
パクったわけじゃないっすから許して下さい… m(_ _)m
- 340 :前スレ288 :05/02/13 19:58:16 ID:RtwTmGNA
- 「春香、そこのしょうゆ取って」
「これ?はい、お兄ちゃん」
「ああ、ありがとう」
何気無い日常。本来ならどこの家庭にもある、当たり前の風景。
俺はその重さを噛みしめていた。
やっと、やっと春香は我が家に帰ってこられた。ここまで、本当に長かった。
だけど―――。
あと、6日。
あくまでも予測で、今日を含めても7日。
それでもたった7日だ。それしか春香は生きることができない。
……明日から、学校は休もう。先生も分かってくれるだろう。
一週間だけ。残されたこの時間を、春香と一緒に過ごそうと思う。
「ダメだよ、お兄ちゃん」
「えっ!?」
何故か心の中を見透かされたような気がして、俺は素っ頓狂な声を上げてしまった。
春香はやっぱり、という表情になる。
「…………本当は分かってたの。春香、もうダメなんでしょ?」
俺は凍りついた。
「なんとなく気づいてた。お兄ちゃんにはウソついていたけど、体調は悪くなる一方だったし」
春香の口から、春香の心が紡がれる。
「春香、幸せだったよ。こんなに優しいお兄ちゃんがいてくれて」
言うな。その先は言うな。泣きそうな顔して、なに笑おうとしてるんだよ。
「だから……だから、もういいの。春香、どうせ死ぬから」
動けなかった。何も言えなかった。叱る言葉さえ出てこなかった。
そんな自分が、殺したいほど憎かった。
よくのん気に飯が食えるな、このクソ野郎。待ってろ。今、叩きのめしてやる。
「お兄ちゃんは普段通りの暮らしを続けて。春香は家でいい子にしてるから」
そこまで言って、春香はようやく作り笑いを浮かべることに成功した。
それが俺を動かした。
- 341 :前スレ288 :05/02/13 20:00:19 ID:RtwTmGNA
- ―――バチン。
俺は手加減せず、思いっきり春香の頬を叩いた。
「ふざけるなっ!何がどうせ死ぬから、だ!逃げるんじゃねえよ!!」
「う……」
「生きろよ!!最後なんだろ!?だったら……だったらしっかり生きてみろよ!!」
「……何も……何も分からないくせにっ!!」
春香はイスから転げ落ちるようにして俺から離れた。そのままドアへ走る。
「春香っ!!」
俺は後を追う。しかし―――。
目の前で、春香は自分の部屋の鍵をかけた。
しまった。その一言が頭に浮かんだ。
「お兄ちゃんのばかっ!!ばかばかばかばかっ!!」
俺はすでにその罵声を無視して、どうやって部屋に入るかの方法を考えていた。
「ばか……ばかぁ……」
だから、すぐには気が付かなかった。罵声はいつからか力無い泣き声に変わっていた。
「うう……ひっく……」
「春香……」
ドアの向こうで、ぐっ、と鼻水をすする声が聞こえる。
「あっちいって…………」
……待て。
やっぱり俺はバカだな。
部屋に入る方法なんて、すでに知っているじゃないか。
- 342 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/13 20:03:30 ID:RtwTmGNA
- 「―――春香。ここ、開けてくれないか?」
「やだ」
「外、綺麗だな」
「……外?」
「見てみろ、星が綺麗だぞ」
「…………あっちいってよ」
「言ったよな、春香。覚えてるか?小学校のときの……何年生かは忘れたけど、春休み」
「…………」
「お前、夜中にいきなり桜が見たいって言い出した。当然、俺は困ったよ」
次々と言葉が紡がれていく。
- 343 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/13 20:05:10 ID:RtwTmGNA
- 俺は悟った。何を、と訊かれると答えられないが、とにかく悟った。
きっと。
「でも、あまりに必死なお前の顔を見て、なんとしても叶えてやろうって思った」
人を最も傷つけることができるもの、最も癒すことができるもの。それは―――。
「家を抜け出して、そこの堤防まで行った。桜は咲いてたけど、暗くてまるで見えなかった」
言葉だ。
「お前はもういいよって言ってたけど、今度は俺がその気になっちゃって。帰ろうとしなくて」
ドアから返事は聞こえない。
「そしたら、雲が割れてさ。凄かったよな、空」
夜の空を覆っていた雲が突然割れ、隙間から爛々と輝く月と、無数の星が現れた。
その光は、壮大で、雄大で、何よりも綺麗で。
「その光のおかげで、桜、見れたよな」
そして、約束した。また今度、桜を見に来ようねって。
「春香」
言う。
「桜を見に行こう」
返事は聞こえない。だけど、俺は確信していた。
実はドアの向こうで春香は意識を失っていて、しばらくして病院に運ばれるけど―――。
春香はそんなことしない。
―――ガチャリ。
ドアが、開いた。
「……うん」
- 344 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/13 20:06:57 ID:RtwTmGNA
- 外は呆れるほど寒く、吐く息はことごとく白かった。
春香に厚いコートを着させ、俺のマフラーを首に巻かせた。手袋もさせる。
「大丈夫か?寒くないか?」
「……平気」
「そっか」
俺は手を差し出す。
「行こう」
「うん」
春香はその手を握った。
家から出て数分歩いたところで、もうその堤防まで辿り着いた。
「……もう、着いちゃったんだ」
「俺たちが大きくなったからな」
春香の手を引き、堤防をのぼる。力強く、握り締める。
そして、のぼりきった。
空には―――。
「…………」
「…………」
なにひとつ、輝いていなかった。
そんなバカな。さっきまではあんなに綺麗だったのに。
「……もういいよ、お兄ちゃん。帰ろ?」
春香が俺の手を引く。しかし、俺はふと思いついたようにその手を振り払った。
「お兄ちゃん?」
「見てろ、春香」
俺はさっと両手を上げる。真っ暗な空へ、目に見えない指揮棒を振り上げる。
「大事な大事なお客様だぞ。いいか、ヘマするなよ」
世界に告げる。
指揮棒を、振り下ろす。
―――瞬間。
- 345 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/13 20:09:11 ID:RtwTmGNA
- 空が輝いた。
雲は消え、月が現れ、星が光りだした。
夢なんかじゃない。
これは、現実の夢だ。
現実にしか作り出せない、夢なんだ。
「う、うわわ……わあ……」
春香は大口を開けてその光景に見入った。
『いいか?本当の音楽家ってやつはな、指揮棒一本で何でも操れるんだよ』
俺は人差し指を立てる。
『将来、お前がどう歩むかはお前の勝手だ。だが、これだけは覚えておけ。
エマーソンが言った。心の奥底に達して、あらゆる病を癒せる音楽。それは暖かい言葉だ。
俺のあとを継いで音楽家にならなくてもいい。だが、名前の通り、真の人間を目指せ。
いいな、真人。それだけは忘れるなよ』
俺は空を指差した。
「……覚えてるよ。天才音楽家の親父殿」
「……まこと……お兄ちゃん」
春香に向き直り、優しい笑みを浮かべる。
「はは。なに?」
「なんか……生き生きしてる」
「そうかな?ああ……そうかもしれない」
「……まこと兄ちゃん」
春香はそう言うと、俺の手を掴み、
「ありがとうっ!」
笑顔。
それが見たかったから、俺はいつも寝ているお前のために、音楽を始めたんだよ。
- 346 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/13 20:14:19 ID:RtwTmGNA
- >>338
すまぬ。これで許してください。 _| ̄|○
>>339
いや、むしろ俺がパク(ry
というか自分は下手なので、前スレ931さんのSSを期待しております。
- 347 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/13 20:25:52 ID:3EksoEle
- >>346
スマン…
俺は身内や友人の死になんどもたちあい泣く事許されず過ごした
もう何年も泣いてない俺が
目が潤んでしかたない
一言
良い作ありがとう
- 348 :前スレ931 :05/02/13 20:31:02 ID:e+kDRYFj
- ああ…切ねぇっすよ…ステキです…
ドコが下手ですか海中さん!
- 349 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/02/13 20:33:18 ID:DeVwSD31
- >海中時計 >前スレ931
あなた方、素晴らし過ぎ……もう言葉もないよ、マジで。
バレンタインSS?延期だ、延期!!来年まで延期!!!
- 350 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/13 20:50:06 ID:hgitM/xr
- 神が増えてる!
- 351 :前スレ931 :05/02/13 22:18:01 ID:e+kDRYFj
- >>349
神に褒められた!
てか延期しないで…お願いっすから
- 352 :前スレ931 :05/02/13 22:58:51 ID:e+kDRYFj
- 遊星さんへのテコ入れも兼ねて…続きいきまっす
_________________________________
空が茜色に染め抜かれ、道行く人の影が伸びゆく頃。
試験の張り詰めた空気がにわかに失せた教室で、蓮は和人に歩み寄った。
「よお和人。どーだった」
返事はない。
しかし、西に傾く夕日を見つめるそのうつろな瞳は、言葉以上のものを物語っていた。
「んぁあ〜もー!何なんだよあれはぁ…」
帰りの道すがら、和人は不満をぶちまけた。
「まあ確かにちょっとキツかったな、今日の試験」
「ちょっと?ちょっとと来たかい蓮?よゆーだねぇまったく。俺この単位やばいって…」
「ご愁傷様。つーかお前授業中ほとんど寝てたろうが。アレで単位取れたらこっちの立つ瀬がねえっての」
「う…」
「ま、今日で後期の試験は全部終わりだろ?明日から春休みだし、気晴らしに
飲みにでも行こーぜ」
「よっしゃー飲んだる!だから蓮…」
「ん?」
「…今夜は…帰さない…」
「よし黙れ」
- 353 :前スレ931 :05/02/13 23:01:22 ID:e+kDRYFj
- リビングに響くのはテレビから流れる流行りの歌謡曲。
独りきりの夕食を終え、ソファに腰かけた雪乃は静かに目を閉じた
音楽に耳を傾けているわけでは無い。
夜半の静寂を破るためだけにつけたテレビに、端から意識を向けてはいなかったからだ。
ただ、待ち焦がれていた。
ちらと見た時計はもうすぐ11時を指そうとしている
「(…にいさん…まだかな…)」
静寂は嫌いだった あの夜を思い出すから 鮮烈な赤に溺れた夜を
正直に言えば、そのときのことをはっきりと覚えているわけじゃない
ただ思い出さないようにしているだけかもしれない
でも、記憶の底に残る忌まわしい傷跡の疼きは私を捕らえて離そうとはしない
静寂はいや…
ひとりはいや…
そのとき不意にドアチャイムがリビングに響いた。
その音に思考を中断させた雪乃は、ふきんで手を拭いながら小走りで玄関へと向かった。
鍵を開け、がちゃりと扉を開ける。
「にいさ…」
「や、こんばんは」
そう言って、玄関口でひょいと左手を挙げたのは彼女も知っている人物だった。
- 354 :前スレ931 :05/02/13 23:04:41 ID:e+kDRYFj
- 「…鷹梨さん…?」
蓮は、どうもと小さく答えると背後に向かって話しかけた。
「しっかりしろ、和人。お前んちついたぞ」
「お〜う…」
蓮に半ば寄りかかるようにしながら、唸るような声で返事をしたのは和人だった。
その顔は赤く染まり、視線も虚ろ。何より漂ってくるアルコールの匂いが今の彼の状態を端的に表していた。
「ほら、立てるか?」
蓮の問いかけに行動で答えようとする和人。
しかし3歩も歩まぬうちに前のめりになり、玄関に崩れ落ちてしまう。
「あっ…だいじょぶです…か…?」
雪乃はおそるおそる尋ねるが、もはや和人の意識はまどろみの中に
沈んでしまったようだった。
「やれやれ、しょーがない。雪乃ちゃん、和人の部屋まで案内してくれる?」
蓮はそう言いながら、いびきをかき始めた和人を抱えあげた。
「よいしょっと」
二階の部屋にあるベッドに和人を寝かせた蓮はふうと息をついた。
「…ありがとうございました、鷹梨さん」
和人の顔をタオルでそっと拭くと、雪乃は蓮に向かってぺこりと頭を下げた。
蓮はひらひらと手を振りながら答える。
「いいって。もともと俺が誘ったんだしね。」
「れ〜ん…よく頑張ったねー、ごくろうさ〜ん。雪乃ちゃーん、ジュースちょーだーい…」
ベッドにうつ伏せになったまま間抜けた声を出す和人に、雪乃は呆れ顔になる。
「…にいさん、黙って寝ててください…」
「はは。じゃあ、おれはそろそろおいとまするよ」
そう言って玄関へ向かおうとする蓮の背に雪乃が声を投げかける。
「あ…私もご一緒してよろしいですか?…ちょっと近くのコンビニに用事があって…」
「そう?じゃあ一緒に行こうか」
- 355 :前スレ931 :05/02/13 23:08:31 ID:e+kDRYFj
- 蓮と雪乃はどっぷりと日の暮れた町を、少し離れて歩いていた。
外を満たす2月の冷たい空気が肌を刺す。
漆黒が塗りつぶした夜空を統べるかのような青白い三日月に、雪乃はしばし目を奪われていた。
「いい兄妹なんだね、2人は」
ふいに蓮が口を開く。
「え…」
「和人のやつ、酔うと雪乃ちゃんの話ばっかりしてたよ。君に感謝してるって。いつもすまないってさ」
「…」
「雪乃ちゃんは兄さん思いだしね。いい妹さん持って幸せだよ、和人はさ。ウチの妹にも
見習って欲しいもんだなー、まったく」
酔いの勢いも手伝ってか蓮はいつになく饒舌だった。
しかし、それとは逆に雪乃は伏せ目がちになって黙り込んでしまう。
「ん、どうしたの?雪乃ちゃん」
「………そんなこと……無いです……」
「え?」
「あ…いえ……何でもありません。私…ここで失礼しますね…」
通りにぽつんと立つコンビニの明かりを確かめると、雪乃はまたぺこりと頭を下げ、蓮に背を向けた。
「う…ん…」
自身のアルコール臭い吐息に、和人は小さくうめいた。
ベッドの上でごろりと仰向けになって澄んだ空気を大きく吸いこむと、改めて部屋の中を
ぐるりと見渡す。
- 356 :前スレ931 :05/02/13 23:10:54 ID:e+kDRYFj
- カーテンの隙間からわずかに漏れた月明かりが、机の上を照らしていた
「もうすぐ…か」
浮かび上がった卓上のカレンダーを見ながらつぶやく。
「優」
和人の淀んだ瞳に、ありし日の情景が映し出されてゆく
死んだ母さんのことはあまり覚えていない。
物心つく前にいなくなってしまった人だから寂しさもなかった
母親のいない三人だけの暮らし。
父さんと俺と、そして優との暮らしは俺にとって十分に幸せなものだった。
優
2つ年の離れた妹は、俺が子供ながらに守りたいとはじめて願った存在だった
「お兄ちゃん!」
小さな身体で力いっぱい俺を呼ぶその声はどこまでも明るくて、それを聞くたび俺の心は満たされるようだった
優が笑って俺が笑って父さんが笑って
こんな暮らしがいつまでも続くと信じていた
それが限りある時間だなんて想像もしなかった
11年前
突然訪れた崩壊の日はあまりに唐突で不条理だった
- 357 :前スレ931 :05/02/13 23:12:26 ID:e+kDRYFj
- 優を――まだ5才になったばかりだった少女を襲ったのは死に至る病だった
可憐な花のようだったその身体は、見る見るうちに枯れ木の様にやせ衰え、やがて優はベッドの虜に成り果ててしまった
始めのうちは、見舞いに足しげく通っていた
少しでもあいつのそばに居てやらなきゃいけない、という7歳のガキなりの使命感だったのかもしれない
だが、俺が優の元にいることで出来ることなんか何一つ無いことをやがて思い知る
優の弱々しいながらも精一杯の笑顔が激しい苦痛に歪むのを目の当りにする度、俺は彼女に何もしてやれない無力な自分を呪った
そして、俺の足は次第に病院から遠のいていった
守りたいものを守れない無力な己の姿を見るのが怖かったから
そして優は死んだ
春を待たずに散った花の骸は小さくて、軽くて、はかなくて
俺は冷たくなった彼女のそばでいつまでもいつまでも泣き続けた
涙が枯れ果てるまで
それなのに…
「なんでだろうね」
そっと呟く。まるでそこにいる誰かに語りかけるように。
あの時あんなに後悔したはずなのに…
「今じゃお前の笑顔も思い出せないんだ」
- 358 :前スレ931 :05/02/13 23:14:28 ID:e+kDRYFj
- コンビニの袋を右手に提げ、家路を急いでいた雪乃は吸いこまれるかのような
星空をふと仰いだ。
霞がかった夜空の支配者が放つ、淡く冷たい輝きは和人の目に宿るそれと似ていた。
「にいさん…」
和人に本当の妹がいたことは雪乃も知っていた。
そして彼女の命日まであと少しだということも。
「…私は…にいさんの何なのかな…」
掌に向かって問いかける。
義理の妹
それ以上でもそれ以下でも無い
わかってはいるけれど…
あの地獄から
あの世界の果てから
私を救ってくれたにいさん
私にとって誰よりも大切な人…
例えにいさんの中に私がいないとしても
『優はね…』
亡くなった妹の話をするときのにいさんは、いつも行き場の無い怒りと悲しみをたたえていた
私はそんな姿を見る度、切なさと嫉妬をにじませずにはいられなかった
にいさんの中にはいつも優さんがいる。
どんなに私がにいさんを思っても
想い出の人にはかなわない
「…それでも…」
雪乃はぎゅっと唇を結んだ。
- 359 :前スレ931 :05/02/13 23:18:38 ID:e+kDRYFj
- 帰宅した雪乃は真っ直ぐ和人の部屋を目指した。
「にいさん…起きてますか…?」
そっと部屋の戸を開け、明かりを絞ってベッドに歩み寄る。
大の字になったまま布団もかけずに寝息を立てる和人の様子に、雪乃は小さく微笑みながら
そっと毛布をかけた。と、
「う…あ…」
目を瞑ったままの和人の口からふいに呻きが漏れた。
心なしか息遣いまで荒くなる和人に思わず雪乃が
「にいさ…」
声をかけようとしたとき…
「…ゆ…う…」
「!」
和人が漏らした言葉に、雪乃は体の芯が凍ってゆくような感覚に襲われた。
手に提げていたコンビニの袋が滑り落ち、中からジュースの缶が転がった。
「っ…」
雪乃はその場から逃げるように部屋を出て、扉を閉めた。
頭に浮かんだおそろしい感情が、暗い水のようにゆっくり体に染み渡ってゆくのを感じた。
閉めた扉に背中を預けたまま、力なく座り込む。
「…私は……優さんの代わり…なのかな……」
宵闇に問うても答えはなく。
………私は……何処に………いれば………
白蝋のような頬をひとすじの雫が伝ってこぼれた。
- 360 :前スレ931 :05/02/13 23:25:09 ID:e+kDRYFj
- それから続いた日々は何気ないようで、どこか奇妙に歪んでいた。
勢いよく流れる水がステンレスの流しを叩く。
キッチンで朝食の食器を洗おうと、雪乃はスポンジを手に取った。すると
「雪乃ちゃん。俺がやろうか」
脇から和人が声をかける。
「…いえ、大丈夫ですから…にいさんはゆっくりしてて下さい…」
「そう…」
雪乃にそう言われた和人は手をもてあましながらリビングのソファに腰掛け、窓の外を
ぼうっと眺め始めた。
和人は家にいることが多くなり、その目はいつも何処か遠いところを見ていた。
雪乃はそんな和人の様子を気懸かりに思いながらも、立ち入ることが出来ずにいた
2人の交わす会話も空虚で、形だけのものになってしまっていた。
この時期に毎年繰り返される光景ではあったのだが、幾度経験しても慣れるような
類のものではなかったし、その根幹にある傷が癒えるわけでもなかったから、この雰囲気が打破されることなど永久にないのではないかとさえ思われた。
「よっ、と」
ふいに掛け声をあげて和人はソファから立ち上がった。
「部屋にいるから。なんかあったら呼んでね」
そう短く告げると、さっさとリビングを出て二階へ上がっていった。
自室に戻った和人はベッドの上に身を投げ出した。
「はぁ…」
口を開けばため息ばかりの自分に軽い自己嫌悪を覚えながら、窓の外を見上げる。
空は雲ひとつない、透き通った快晴だ。
そんな美しい青空も今の彼には皮肉そのものだった。
ちらと目を背けた先に、最近変えたばかりのケータイがあった。
和人は上体を起こしてそれを手に取ると、履歴から番号を探して通話ボタンを押した。
- 361 :前スレ931 :05/02/13 23:26:50 ID:e+kDRYFj
- 耳障りな呼び出し音のあと、
『もしもし?』
と声がした。
「よう蓮、ちょっといいか?」
出来るだけ明るく言う。
『どうしたよ、いきなり』
「いやヒマだからさ、今夜カラオケにでも行か…」
『蓮にい、大変!天井まで火がぁー!』
途中まで言いかけた和人の耳に、電話口から聞きなれない嬌声が聞こえた。
『あ、アホっ!また台所焼く気か柚葉!』
それに蓮の声が続く。いつもの何処か醒めた印象とは異なるその様子に
和人は思わず尋ねた。
「誰か…いるのか?」
『ん?ああ、今妹がウチに遊びに来ててな。やかましくて大変だよ』
『あ、やかましいって言ったー!せっかくボクがお世話してあげてるのにーもお!』
『頼んでないっつーに……っと悪い。何だっけ?』
「………………あ…いや。やっぱ何でもない」
『何でもないってお前…』
「お邪魔しちゃったみたいだからねぇ?」
『いやっだから妹だって…』
「あははは。じゃ、頑張れよー」
『頑張れってあ…』
まだ何か言いたげな蓮を尻目に通話を切ると、和人はベッドにごろりと寝転がった。
そしてまだ愛想笑いの抜けきらない顔に、今度は嘲笑を浮かべた。
「何してんだ俺は…」
そっと目をつむる。
瞼に映るのはまたあの白い夢………
- 362 :前スレ931 :05/02/13 23:29:19 ID:e+kDRYFj
- 日も暮れなずむ頃。和人はノックの音で目を覚ました。
「ん〜…何?」
扉を開け雪乃が顔を出す。
「あ…ごめんなさい…起こしちゃいましたか…?」
「いいって。それより、どうしたの」
「…ちょっと駅前まで買い物に行ってきます。7時前には帰りますから、それまで留守番よろしくお願いします…」
「わかった。行ってらっしゃい」
それだけ言うと、和人は寝ぼけ眼をこすりながら再び横になる。
「…あ……にいさん…」
「ん?」
「…あの…」
寝転んだ和人の背中に言葉を投げかけようとする雪乃。しかし
「……………いえ…なんでもありません…」
その言葉は飲み込まれてしまった。
「そう」
和人は振り向きもせずに短く答えた。
雪乃が去った部屋で和人はひとり、窓からの夕焼けを望んだ。
今宵の黄昏を染める紅蓮はいつもより紅く見えた
______________________________________
夕闇が茜色の空を塗りこめてゆく。
駅前の繁華街を離れ、人もまばらな暗い道を雪乃はトートを片手に歩いていた。
「………はぁ」
取り留めのないことばかりを考えては打ち消し、ため息をつく。
どうしても思い浮かべてしまうのは和人のことだった。
- 363 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/13 23:29:26 ID:MGMBN756
- 超リアルタイム!
- 364 :前スレ931 :05/02/13 23:32:03 ID:e+kDRYFj
- 「(にいさん、辛そうだった…)」
義兄の心を捕らえて離さない呪縛は、今や彼女自身の枷にもなりつつあった。
和人を縛る後悔の念は、雪乃を孤独の迷宮に追いやる。
少女はそこから抜け出すすべを知らなかった。
誰かが悪いわけじゃない
わかっているからこそ、その悲哀には出口がなかった。
そんな雪乃の耳に不意に、みいみいという甲高い鳴き声が聞こえた。
「?」
声は横手に見える公園から発せられているようだった。
雪乃は声に導かれるように公園に入って、その鳴き声の主を探す。
植え込みの中に、果たして主はいた。
小さな三毛猫。
雪乃を見るなりびくりと飛び上がり、まだ小さくかわいらしい牙をむき出しにする。
体全体を震わせて力一杯感情を吹き出すその体に、雪乃は歩み寄って手を触ようとした。
はじめは警戒していた子猫だったが、やがてゆっくり近づいてゆくと雪乃の手に体をこすりつけ、のどをごろごろと鳴らし始めた。
「…きみも…ひとりぼっちなの…」
手に伝わる暖かさが優しくて、雪乃はしばし時を忘れて猫と戯れていた。
しかし
「あっ」
突然子猫はふっと身構えると、きびすを返し植え込みの奥に走り去ってしまった。
雪乃は少し寂しそうに後姿を見送るとゆっくり立ち上がる。
その時だった。
突然後ろに感じた人の気配に、雪乃ははっと振り向いた。
公園の薄暗がりの中、大学生くらいの三人の男が雪乃を取り囲むようにして立っていた。
ひとりは大柄でパーカーをだらしなく着こなしており、別のひとりは赤いキャップをかぶった狡猾そうな小男。
そして真ん中にいるニット帽の男が、にぃと薄笑いを浮かべて声を出した
「ねえ君、ヒマ?」
- 365 :前スレ931 :05/02/13 23:36:00 ID:e+kDRYFj
- 今日はここまでにさせて頂きます
ビミョーに引きを持ってきてみたり…
- 366 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/13 23:39:34 ID:hgitM/xr
- 引くのかよ!?
も、持つ彼さま・・・・。
- 367 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/14 00:13:15 ID:GbLxIR1R
- 最後の日まで、あと6日。
当たり前だが、病気は正確ではない。わずかな誤差はあるに決まっている。
早朝、俺は誰もいないリビングで受話器を下ろした。
わずかな誤差。それが何日なのかは分からない。もしかしたら、何週間なのかもしれない。
……ある程度、覚悟はしておかなきゃ、な……。
―――バタン!
頭上、つまり二階から激しい物音がした。
そろそろ春香が目覚める頃だ。俺は苦笑しながらリビングを出た。
階段を上がり、俺の部屋のドアを開ける。
案の定、春香がベッド…………から落ちていた。目が合う。春香はにへっと笑う。
「……おはよう、まこちゃん」
「な、なんだ、まこちゃんって」
「あれ?入院する前はそう呼んでたのになぁ……」
「三年前だろ?そんな昔の話を持ち出すなよ」
「……そっか。もう三年も昔だもんね……」
しゅんとする春香。ああ、なんて俺はバカなんだ。朝からまた失敗してるのか。
「あ、いや、その……いいよ。その呼び方でも」
「え?い、いいの?」
「男に二言はないぞ」
「……じゃあ、ここは間をとってまこちゃんお兄ちゃんって呼ぶことにっ」
「却下」
- 368 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/14 00:14:37 ID:GbLxIR1R
- ちなみに俺の部屋に春香がいたのは、別にやらしい行為が行われたからじゃない。
昨夜、俺は春香に自分の部屋で寝ろと言ったのだが、春香はどうしても聞かなかった。
無理もないだろう。入院する前はお兄ちゃん子だったし。
何より、人と一緒に寝るなんてことも久しぶりだったのだから。
「ところで、お兄ちゃん。学校は大丈夫なの?」
朝食のご飯を口に膨らませながら、春香は言った。
「うん、今日は休むよ。さっき電話した」
「ええっ!?」
ご飯粒が飛び、慌てて春香は口の中のものを飲み込んだ。
「え、えとっ……だ、ダメだよ!ちゃんと―――」
「春香」
その先を遮る。
「俺は少しでも春香と一緒にいたい。俺のわがまま、聞いてくれないかな」
「……む〜」
「……」
「……お兄ちゃん、わたしが断れないってこと分かってて言ってるでしょ」
ぷくっ、と頬を膨らませて、春香は怒った表情をみせた。
しかし、俺から見ればそんなものはバレバレで……笑顔を噛み殺しているのが分かった。
やっぱり、本当は嬉しいのだ。
- 369 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/14 00:16:13 ID:GbLxIR1R
- とは言ったものの、普段なら学校に行っている時間。
俺はソファに座りながら、ぼーっとテレビを見ていた。
ヒマだ。
「春香ぁ、ヒマだな」
「え?そうかなぁ」
春香は隣で楽しそうにテレビを見ていた。何かのバラエティ番組の再放送だ。
「画面、やっぱり大きいね」
「病室のテレビは小さかったもんな」
「うん。本当に小さくて、すみっこの文字とかぼやけてたんだからっ!」
何故か拳を振り上げる春香。その振り上げた拳に自分自身がよろける。
「お兄ちゃん、退屈なの?」
「春香がいるから少しはマシだけどな」
「じゃあ……どこか行こうよ〜」
甘えるように俺の腕に頬をすりすりさせてくる。ここはひとつからかってやろう。
「……お前、自分の立場を分かってるのか?」
冷たい目つき。春香は明らかに動揺したようだった。
「あ……う……病人、です……」
たまらず吹き出してしまう。
「えっ!?は、春香っ、な、何かおかしなこと言った!?」
「言った言った!はははははっ!」
俺は春香に向き直る。
「お前は俺の妹だよ」
- 370 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/14 00:17:42 ID:GbLxIR1R
- 「お兄ちゃん……ほんとに……これで?」
「失礼な。まだまだ現役だっつの」
目の前には、自転車。要するに二人乗り。兄バカ炸裂。でもいいや。
「ふ、二人乗りはっ!」
この病院純粋培養め。頭から湯気を出して否定している。
力強く口を開くたびに、俺が被らせたニット帽のぼんぼんが揺れた。
「みんな普通にしてるって。特にカップルとか」
「かっぷる……」
しまった!ぼんぼんに気を取られた!
「た、例えの話!例えばだよ、た・と・え・ば!」
「かっぷる……わたしと、お兄ちゃんが……」
「と、とにかく行くぞ!乗れ!」
春香はきょとん、と我に帰る。
「ところで、どこに行くの?」
ずっこけた。
- 371 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/14 00:19:12 ID:GbLxIR1R
- 「うーみーはひろいーなー、おおきーいーなー♪」
「はあ……ひい……」
「お兄ちゃん、大丈夫?」
「……だ、大丈夫。平気……」
さすがに二人乗りで坂道はきつかった。この町は田舎なのだ。
海と山に挟まれ、自宅を出て数十分で海岸もしくは山道に出る。
おまけに川まで縦横無尽に走っているのだ。どんな町やねん。一人愚痴をこぼしてみる。
「つ、着いた……」
俺はペダルを踏むのをやめる。春香はすぐに気づいたようで、あっ、と息を呑んだ。
「すごいね……ここ……」
丘の上だ。町全体が見下ろせる公園になっている。
日没なんかは結構な景色になるため、デートには最適だったりする。
しかし今は平日の昼間。俺たち二人の他には誰もいない。
そもそも俺以外に知っているやつはいないだろう。そんな場所だ。
春香はにへっと笑い、両手を広げて走り出した。
「あははっ♪空があんなに近くにあるよ〜」
「こ、転ぶなよ!」
深呼吸をして息を整える。それから来た道を振り返った。
―――春香には過去を振り返って欲しくない。
思い出の場所へ行けば、必ず両親が生きていた頃の記憶を思い出す。それはダメだ。
俺たち二人にとって悲しい記憶にしかならないのだから。
俺はそれだけは避け、春香の知らないこの丘へ来たのだった。
- 372 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/14 00:21:10 ID:GbLxIR1R
- 野原に寝そべり、空を眺める。春香も隣で寝そべっている。
「……のどかだな」
「……うん。いつまでも、こういう時間が続けばいいのにね」
重い一言。
「……」
言えなかった。軽々しく、ああ……、なんて言えなかった。
「あははっ。でも、それは無理なのは分かってます」
春香は立ち上がり、お尻をぱんぱんと払った。白いコートが揺れる。
「だから、今はお兄ちゃんと過ごすこの時間を、大切にしたいと思います」
えへへっ、と笑う。―――春香。お前はいつからそんなに強くなったんだ?
「……そうだな。よっと」
俺は起き上がり、手を伸ばせば届きそうな青空を見上げた。
「大丈夫だよ」
突然、澄んだ声で春香が言った。
「―――ここなら、わたしがお空にのぼっても、すぐに見つけられるから」
言いながら。春香はぽろぽろと涙をこぼし始めた。
いくつもの雫が、春香の頬を伝い、足元に落ちていく。
「あれ……?なんで、泣いちゃうのかな?ここは笑わなきゃいけないのに……」
「春香」
俺はそっと春香を抱きしめた。なんて小さい背中だろう。
「悲しいから、泣いているんだ」
それが合図だったかのように、春香は―――。
- 373 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/14 00:22:28 ID:GbLxIR1R
- 「う……うわああぁぁぁぁぁっ!!」
泣き出した。俺の服を硬く握りしめ、叫ぶように嗚咽をもらす。
「やだよ……死にたくないよぉ……!!」
春香の痛みが、鮮烈に突き刺さってくる。自分から両親と自由を奪った、悪魔。
その悪魔は。今度は自分を見つめているのだ。
圧倒的な恐怖。やっぱり、春香は弱かった。誰よりも、誰よりも弱いのだ。いや違う。
誰だって、怖いのだ。
「ずっとお兄ちゃんといたいよぉっ!!ひっく……やだよぉ……!!」
―――現実からは、逃れられない。
ちくしょう!ちくしょう!!どうして、どうしてこんな―――こんなッ―――!!!
春香のすべてを受け止める。いつしか、俺も涙を流していた。
世界はどうしてこんなにも、悲しく、切なく、無情なんだ。
ひたすら泣き続ける俺たちの上を、雲はのんびりと時を刻んでいく―――。
あと、5日。
- 374 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/14 00:26:50 ID:i+xKpVrg
- リアルタイムGJ!
- 375 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/14 00:28:23 ID:Ae1Ry0W5
- なんだこの同一人物? 的な発想さえ醸し出す神SSラッシュは・・・。
すげーよ。 三神降臨だよ・・・。
- 376 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/14 00:29:16 ID:EBRq/pMd
- くそ!だれか俺の目にワイパーを!!
- 377 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/14 00:32:12 ID:Ae1Ry0W5
- ____ r っ ________ _ __
| .__ | __| |__ |____ ,____| ,! / | l´ く`ヽ ___| ̄|__ r‐―― ̄└‐――┐
| | | | | __ __ | r┐ ___| |___ r┐ / / | | /\ ヽ冫L_ _ | | ┌─────┐ |
| |_| | _| |_| |_| |_ | | | r┐ r┐ | | | / | | レ'´ / く`ヽ,__| |_| |_ !┘| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄|‐┘
| r┐| |___ __|. | | | 二 二 | | |く_/l | | , ‐'´ ∨|__ ___| r‐、 ̄| | ̄ ̄
| |_.| | / ヽ | | | |__| |__| | | | | | | | __ /`〉 / \ │ | |  ̄ ̄|
| | / /\ \. | |└------┘| | | | | |__| | / / / /\ `- 、_ 丿 \| | ̄ ̄
 ̄ ̄ く_/ \ `フ |  ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ | | | |____丿く / <´ / `- 、_// ノ\ `ー―--┐
`´ `‐' ̄ ̄ ̄ ̄ ̄`‐'  ̄ ` `´ `ー' `ー───-′
しないかな・・・・・。
- 378 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/14 00:35:11 ID:j8ugAql5
- 何なんだ、この神ラッシュは!!
萌えすぎて死にそうだぞ俺は!
ここで未来ちゃんが降臨したらマジ逝っちまう……。
- 379 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/14 00:47:51 ID:j8ugAql5
- ……っていうかこれでおしまい?
な、なんてじらす神達なんだ!気になって寝むれやしねぇ…orz
- 380 :雨音は紫音の調べ ◆cXtmHcvU.. :05/02/14 00:50:45 ID:XW2+TTCB
- すごい……
マジで泣けてくる……
- 381 :前スレ921 :05/02/14 01:20:53 ID:TsMlMoJR
- えーと……
神降臨しまくってて非常に言い出し難いのですが、予告通りバレンタインネタSSを書いたのでもう少ししたら貼ろうと思います……
要らないという方いましたら今のうちに貼るなと言ってくだせぇ。
即興なのでかなり読みにくい&纏まりがないんですが……
- 382 :コンズ :05/02/14 01:22:10 ID:D2gHCyk9
- たっ、たまら〜ん!!皆様乙でふ!!
で、次回作わいつのご予定で?
- 383 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/14 01:28:36 ID:Ae1Ry0W5
- >>381
待ってます。
- 384 :前スレ921 :05/02/14 01:33:33 ID:TsMlMoJR
- 今日最後の授業の終わりを知らせる鐘がなり、教室が騒がしくなる。
毎日学校へ来ていても最後の授業が終わると幸せだ。
だが今日はいつもに増して騒がしい。
バレンタインだ。
女子は女子、男子は男子で期待やら不安を抱いてあちこちでざわついている。
「苦手だ‥‥‥」
誰かに話し掛けるでもなく呟いてしまう。
こういう行事は嫌いではない。だがもう少し静かに出来ないものか……
俺はこういうのはチョコを渡すという行為より雰囲気が大事だと思うのだが……
そして何より騒がしいのが嫌いだ。
こういう時はさっさと帰ろう。
- 385 :前スレ921 :05/02/14 01:36:42 ID:TsMlMoJR
- と、教室を出ようとした。
「広田ー、ちょっといいか?」
早く帰りたい時に限って教師にひっかかるのだ……
やはりこういうのは苦手だ……
――――――――――――
結構長いですが、携帯からのカキコなので勘弁して下さい
- 386 :前スレ921 :05/02/14 01:39:22 ID:TsMlMoJR
- 「やっと終わった……」
やっとの思いで学校を出た人気のない帰り道、ついつい呟いてしまう。
仕方ないだろう。苦手な騒がしい空間に居て、更に教師に呼び出されたのだから。
教師の用件は『妹が学校に来ていないがどうしたのか』だった。
なぜ妹は学校を休んだのだろう。
朝は元気だった。第一学校をサボるような性格ではない。
考えている間に段々不安になってきた……
事故にでも遇ったのだろうか?
そうこう考えている間に小走りに、そしていつしか走っていた。
家に着き、玄関を開ける。と
- 387 :前スレ921 :05/02/14 01:42:43 ID:TsMlMoJR
- 「おかえりなさぁ〜い♪お兄ちゃん♥」
「…………」
玄関には妹が立っている。
いつもと変わった様子は見られない。寧ろいつもよりも元気に見えるのは俺の気のせいだろうか……
「帰ってきたらただいま。だよー??」
「……あぁ、ただいま。」
「おかえりなさーい♥」
家に入り、居間へと向かいながらもう一度妹を見てみた。
「さっきから真剣な顔してどうしたのぉ??」
やはり至って普通。
もしかして学校で何かあったのだろうか。それで学校を休んだのだろうか……
- 388 :前スレ921 :05/02/14 01:46:26 ID:TsMlMoJR
- 考えている内に居間に着き、俺は椅子に座り、妹はパタパタ小走りで台所へ向かって行く。
直接聞くのが一番早いだろう。
「なぁ……零(れい)……」
妹が二人分のココアを作って運んできた。
「なぁに?はい、ココアだよー」
零はココアを口に運び、この上なく幸せそうな顔をしている。
「零、何で今日学校休んだんだ?」
「へっ!?」
零の表情が急変、どう見ても『驚いた』表情だ。
表情だけではなく、ココアの入ったカップまで落としそうになっている。
「え、えーと……それは……そのぅ……」
- 389 :前スレ921 :05/02/14 01:49:06 ID:TsMlMoJR
- あからさまに動揺している。やはり学校で何かあったのだろうか……
「どうした?学校で何か行きたくないようなコトがあったのか?まさかいじめにあったのか?」
「そんなコトないよ!みんな優しいし、学校も楽しいよ!!」
必死に否定している表情を見る限り、嘘を言っているようには見えない。
「じゃあなんで休んだんだ?」
「……それは……その……」
「朝元気だったのに学校に来てないから俺がどれだけ心配したと思ってるんだ?学校で何かあったんじゃないか、登校中に事故にでも遇ったのかと思った……」
- 390 :前スレ921 :05/02/14 01:52:40 ID:TsMlMoJR
- やっと落ち着き、今まで不安に思っていたた事が一気に言葉として紡がれる。
「うぅ……ごめんなさい……」
「なんで言わなかったんだ?俺がサボるななんて言う性格じゃないのは知ってるだろう…」
「うん……でも……」
零はそこまで言って俯いてしまった。
‥‥‥
気まずい沈黙……
少し言い過ぎたかもしれない…
「……まぁ、零ももう高校生だし、言いたくない事もあるだろう。理由が言いたくなければ言わなくてもいい。ただ、休む事くらいは言ってくれ。な?」
「……うん」
- 391 :前スレ921 :05/02/14 01:55:11 ID:TsMlMoJR
- いつかは妹も兄から離れていく……わかってはいるが悲しいものだ……
俺は一気にココアを飲み干し自室へ戻ろうと椅子から離れた。
「……でも……」
「ん?」
「高校生だからじゃない……今日だから言いたくなかったんだよ……っ」
俯いたまま、小声だが、はっきりと言い切った。
「え?」
突然で話が読めない……何が言いたいんだ?
「お兄ちゃんに……チョコ……作ってたの……」
「………なんで?」
「へ?……今日は…その……バレン…タイン…だから……」
「……あ」
……忘れてた……零の心配をしててすっかり忘れてた……
- 392 :前スレ921 :05/02/14 01:59:21 ID:TsMlMoJR
- 「じゃあ……今日休んだのって……俺のために……?」
「そうだよ…」
俺は立ったまま固まってしまった。
なんて事だ…零は俺の為に休んだのに、あんな事を……
「ごめん……あんな事言って……」
「ううん!!言わなかった私が悪いから。でも、お兄ちゃんが心配してくれて嬉しかった♥」
「はい。チョコだよ!!お兄ちゃん♥」
「あ、ありがとう」
ラッピングも零がしたのか、少し粗がある。
「うぅ〜……やっぱり恥ずかしいよぅ〜……」
「開けていいか?」
- 393 :前スレ921 :05/02/14 02:03:08 ID:TsMlMoJR
- と言うのは社交事例で既に開け始めた俺に慌てて零が止めに入ろうとする。
が、伊達に長年兄をやっているわけではない。
「ぇ!?ちょっ!は、恥ずかしいから部屋に戻ってからにしてよ!!」
包装を開ける俺を阻止すべく繰り出される零の手をことごとくかわしながら手早く包装を開けてチョコを一つ口に放り込む。
「うぅ〜…お兄ちゃんのいぢわるぅ〜……」
ちょっと涙目になりながら文句を言ってくる零を無視しつつチョコを味わう。
「うまい!!」
「えっ!?ホントっっ!?」
「本当だ。ありがとうな。零」
- 394 :前スレ921 :05/02/14 02:07:58 ID:TsMlMoJR
- 形は少し崩れているものの、味は確かにうまい。少し甘めで、ココアと一緒に持ってきていたから程よく柔らかい。
何より零がわざわざ学校を休んでまで作ってくれたのが嬉しかった―――
「ううんー!お兄ちゃんが喜んでくれたら零も頑張った甲斐があったよ♪これからもよろしくね♪」
「大好きだよ♥お兄ちゃん♥」
――――――――――――
一応これで終わりです。
俺のヘタレSSでスレ消費してしまって申し訳ないorz
広田は苗字でござい。
妹→零
兄→名無し
ネーミングセンスの悪さは俺の才能がないせいです。
- 395 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/14 02:12:02 ID:j8ugAql5
- ………プツン
今日は神祭りだーーー!!あひゃひゃひゃ!!!(萌えすぎて暴走w)
- 396 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/14 02:16:51 ID:ti9Pmvyo
- リアルで乙
- 397 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/14 02:18:24 ID:Ae1Ry0W5
- このラッシュは・・・なんだ!? このスレに一体なにが起きているんだ!?
超乙可憐!
- 398 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/02/14 16:34:54 ID:H9dKM/oJ
- すげぇよ……。
このスレ、すげぇよ……。
つーことで、今年のバレンタインはお休みさせてもらいますです。
俺の軽くて薄っぺらな台本を貼る勇気はマジでありません。
- 399 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/14 17:23:56 ID:Ae1Ry0W5
- 僕なんてフォルダごと削除しようかと思いましたよ・・。 ('A`)
や、割と本気で。 ・・・・やるか?
- 400 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/14 20:43:22 ID:4S6cmlZI
- 最後の日まで、あと5日。
……月も眠る真夜中に、俺はぼんやりと天井を見つめ続けていた。
右隣から、春香の規則正しい寝息が聞こえる。時計の短針はすでに三時を指していた。
…………どうすればいい。
俺は38回目の自問自答を繰り返す。
逃げることの出来ない死。それは不確かで、しかし確実に迫ってきている。
「くそっ……」
38回目の愚痴をこぼす。止めることは出来ない。止めようとも思わなかった。
「春香……」
俺は顔を傾ける。春香は頬にくっきりと涙の痕を残し、静かに眠っていた。
いつか、この呼吸が止まる日が来る。
―――その時まで、俺はどうすればいいんだ?
俺は39回目の自問自答をすると同時に、39回目の愚痴をこぼした。
……40回目は無かった。
- 401 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/14 20:44:31 ID:4S6cmlZI
- 夜が明けた。
カーテンの隙間から差し込む光が、俺の顔を照らした。ゆっくりと瞼を開ける。
「……はあ」
結局、疲労困憊で眠りに落ちたのが午前四時だ。おそらくはクマが出来ていることだろう。
今は七時だから、三時間しか寝ていないことになる。
ダメだ。やる気が出ない。
全身から力が抜けていくような感覚。俺は完全な無気力状態に陥っていた。
「……休もうかな」
ぽつりと呟き、春香の髪を撫でる。春香は、んっ、と小さな声をもらし、その頬を緩ませた。
やっぱり、俺には迷うことしか出来ない。春香を助けようとあがいて、余計に苦しんでいる。
ならばいっそのこと、春香を見捨てるか?
そんなこと出来るわけが無い。
ああ。そうなんだ。
俺に何か出来るわけが無いんだ―――。
俺は……何も……出来ない……。
「ちくしょう……」
- 402 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/14 20:46:10 ID:4S6cmlZI
- 「…………」
「…………」
気まずい朝食。テーブルを挟んでお互い向かい合ったまま、黙々と食べ続けていた。
春香は寝ぼけ眼でベーコンエッグを口に運んでいる。
そういえば春香はオムライスが好きだったっけ。
小さいころ、まだ両親が生きていたころ。春香は母さんのオムライスが大好きだった。
それはとても甘くて、美味しくて。それなのに栄養もきちんと考えてあって。
当時、俺はオムライスがあまり好きではなかった。理由は今でも分からない。
そのせいか、夕食がオムライスになるたびに、ことあるごとに春香に不満をぶつけていた。
春香にとってみればいい迷惑だろう。
いつの間にかオムライス=春香という図式が成り立っていたのだから。
そうだ。
オムライスを作ろう。
母さんのように美味しくは作れないかもしれないけれど。
違う。
ここだ。
母さんのように……美味しいオムライスを作ってみせよう。
「いいや……作ってやる」
勇気の使いどころは、ここなんだ。
「……え?」
春香は目を丸くして、俺の顔をしげしげと見つめた。
- 403 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/14 20:47:18 ID:4S6cmlZI
- 「……よし!」
完成したオムライスを前に、俺は一人ガッツポーズをした。
我ながらよく作れたと思う。味こそそっくり同じとは言わないものの、かなり美味しいはずだ。
そろそろ昼食の時間だ。俺はリビングのドアを開けた。
「はる―――か?」
いない。さっきまでは、ここでテレビを見ていたはずなのに。
しばらく室内を見回したあと、ふとテーブルの上に何かが置かれているのを見つけた。
書置きだった。
お兄ちゃんへ。ちょっと出かけてきます。お昼ご飯には帰ってきます。
春香より。
「……もう一時だよな」
俺は時計を見上げた。針は言葉通りの時刻を示している。
「行きますかね」
エプロンを投げ捨て、自転車の鍵を取った。
- 404 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/14 20:48:32 ID:4S6cmlZI
- 「―――ここにいたのか、春香」
俺の声に驚いた春香は、びくっ、と体を震わせて振り向いた。
辺りは緑一色。遠くを見ると、緑と青の境界線が伸びていた。
あの堤防だ。
「お兄ちゃん……」
春香はためらいながらも呟き、すぐに俺から目をそらした。
俺はずかずかと春香に歩み寄る。そのまま、わざと大きな動作で手を振り上げた。
「っ!?」
叩かれると思ったのだろう。春香は思わず反射的に肩を縮めた。
「これなんだ?」
想像していた衝撃は現れず、春香の顔が恐る恐る上がっていく。
そして、俺の手に掴まれていた弁当箱を見つける。
「……お弁当箱」
「うーん、ちょっと惜しいな」
がしっ。
「きゃっ!」
頭上に気をとられ、お留守になっていた春香の片手を掴む。
「お、お兄ちゃん?」
「さて、ここでヒント。春香の大好きな食べ物といえば。なんでしょう?」
「は、春香の大好きな……たべ……」
ようやく意図が分かったのだろう。春香はすぐに目の色を変えた。そして予想外の行動。
春香は片手を掴まれたまま、もう片方の手で弁当箱を奪おうと身を乗り出した。
当然、バランスは崩れて―――。
- 405 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/14 20:49:32 ID:i+xKpVrg
- またも
リ ア ル タ イ ム !
- 406 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/14 20:49:56 ID:4S6cmlZI
- 「おわっ!」「わわっ!」
悲鳴は見事にハモり、ふたりはもつれ合い、緩やかな堤防をごろごろと転げ落ちていた。
「あぐ、あぐ、あぐ、あぐ……」
衝撃が背中を殴りつける。どうして俺が下のときに段差が来るのだろう?
どすん。
「あぐっ……」
止まった。同じく止まりかけた呼吸を必死で立て直し、目を開けた。
真っ暗だ。……何やら柔らかい感触。―――まさか。
「……あ……」
春香のか細い声。くい、と顔を上げると、春香の真っ赤な顔が目の前を覆っていた。
「春香……ちゃん?あの、もしかして……もしかしなくても……」
「お、おおお、お兄ちゃんのエッチ!!」
ものすごい勢いで飛び跳ねる。しかもちゃっかりと弁当箱を奪っている。
「は、春香の胸に飛びついてくるなんてっ!ばかっ!エッチ!!」
「おいっ!?誰が飛びついたんだよ、誰が!?」
「お兄ちゃんが飛びついてきましたっ!ちょっと嬉しかったんだか―――あ」
「……ほほう」
ぼん、と春香の顔が真っ赤に染まった。
「ち、違うのっ!あの……その……」
「ありがとう」
「……え?」
俺は春香のポケットの包みを指差す。
「チョコだろ、それ?俺のために買ってきてくれたから、こんなに遅くなったんだよな」
「あ…………」
- 407 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/14 20:51:14 ID:4S6cmlZI
- 「ありがとう、春香。お返しにそのオムライスやるよ」
「え?で、でも……お返しは、ホワイデーで……」
「ホワイトデーのお返しは、春香の命が欲しい」
思いがけない言葉。
「見ろよ、オムライス。上手く作れたんだぜ。だから、きっと大丈夫さ」
どういう理屈だ。オムライスひとつで人の命が救えるか。
「春香を死なせはしない。もしダメでも、きっと春香を幸せにしてやる」
―――ああ。
「嬉しくて、楽しくて、後悔のない、幸せだったと心から言える喜びを……春香にやる」
救って、みせる。
「だから。一応、ホワイトデーは春香の命が欲しい」
めちゃくちゃだ。でも、完璧なめちゃくちゃだ。
「……うん」
春香は――本当に久しぶりに――にへっ、と微笑んだ。
「わたしの命、お兄ちゃんに預けたっ!」
- 408 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/14 20:52:44 ID:4S6cmlZI
- 「お兄ちゃん、よくわたしがここにいるって分かったね」
「お前、遠くまで行けないだろ。だからまずはここかなぁ、と思って来たら、どんぴしゃ」
「あははっ。春香の行動パターン、お兄ちゃんにバレバレだね」
「そうとも。可愛い妹の行動パターンなんてすぐに理解できる」
「えへへ……ありがとう♪」
「ところで、オムライスの味はどう?美味いかな?」
「うん。美味しいよ。お母さんの味そっくり」
「そっか。これからもっと美味くなるから覚悟しとけよ」
「あは♪楽しみだなぁ♪大丈夫?そんなに大きく言っちゃって〜」
「ふふふ。この俺に後悔の文字など無いっ!」
「ほえ?後悔しないの?」
「ああ。反省はしてる、でも後悔はしてない」
「ふわぁ〜……なんかかっこいいね」
「昨日、寝ずに考えたからな」
堤防に腰を並べ、春香はオムライスを、俺はチョコレートを食べる。
ふと空を見上げた。青い、青い空が広がっている―――。
たとえ、救えないとしても。
「はい、あ〜ん♪」
「勘弁してください」
……誇れるだけの、人生を送ろう。
あと、4日。
- 409 :前スレ931 :05/02/14 20:56:48 ID:4iVAw1gf
- 同じくリアルタイム!やばいっすよ海中さん…
- 410 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/14 20:57:34 ID:4S6cmlZI
- _| ̄|○ なんだ、ホワイデーって。
バレンタインなので意識してみました……が、大失敗のようですね。
夜は混みそうだから今のうちに貼っておきます。
- 411 :265 :05/02/14 21:03:51 ID:+wm+1esG
- この和やかさと深刻さの混ぜ合わせ方・・・・神だ・・・。
- 412 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/02/14 21:08:03 ID:H9dKM/oJ
- 上手だねぇ……。
アンタこそ、神にふさわしいよ……。
- 413 :前スレ931 :05/02/14 21:13:45 ID:4iVAw1gf
- どうしよう…俺のヤツ自粛した方がいいっすかね?
ちょっとバイオレンス入っちゃうんで、海中さんの綺麗な余韻に水差すかも…
- 414 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/14 21:20:03 ID:4S6cmlZI
- 俺にみなさんのSSという名のチョコをください。
俺?もちろん戦死したー。・゚・(ノД`)・゚・。
- 415 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/02/14 21:24:24 ID:H9dKM/oJ
- 今回はマジで欠席のつもりだったけど……海中時計様の作品見て気が変わったよ……。
俺も後悔しないように参戦しよう。もう、バッシングでも何でもしなさい。勇気こそ魔法だ!!
前スレ931様のが終わったら、貼りましょうか……。
- 416 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/14 21:26:27 ID:tF38l1fG
- どなたか、ここのSSに合うBGMを作ってくれませんか?
俺の脳内BGMでは限界があるので…
- 417 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/14 21:28:51 ID:IXRlmSKH
- >>416
歌手はKOTOKOがいいな
- 418 :前スレ931 :05/02/14 21:35:33 ID:4iVAw1gf
- >>416
ラルクの「fourth avenue cafe」と「瞳の住人」がここでのマイBGMです。聞くだけで涙腺緩む…
わりとオススメですよー
>>415
次の俺のはホントにスレ汚しになっちゃうかもしれないんです…今日は自粛させて頂きますので
遊星さんの萌えSSを見せてください、お願いします!!
- 419 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/14 21:36:57 ID:+wm+1esG
- ちょうど「Timeless-Mobius Rover-」と言う曲を知っていたり・・・。
良い曲ですよ。
- 420 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/02/14 21:37:41 ID:H9dKM/oJ
- 「千奈ちゃん、明日はバレンタインだけど、どうするの?」
「私はやっぱり何か作りたいな……えっと……お兄さんに……」
「そっかぁ。千奈ちゃんはお菓子作れるからなぁー」
「じゃあ、唯奈ちゃんも一緒に作る?」
「えっ?いいの!?……って、言いたいところだけど、遠慮しとくよ。唯奈は自分だけでやりたいんだ」
「ふふっ。唯奈ちゃんはそう言うと思ったよ」
「えへへ。そうだ!!勝負しようよ、千奈ちゃん!!」
「え?勝負?」
「うん。どっちがお兄ちゃんに喜んでもらえるか勝負するの!!」
「どうして?」
「え……?だ、だって、そっちのほうが楽しいじゃん!!」
「ふふっ、そうだね。じゃあ、負けた方はどうするの?」
「うーん、そうだなぁ……じゃ、勝ったほうにクレープを買ってあげるっていうのは?」
「うん。分かったよ」
「じゃあ準備開始だね!!千奈ちゃん、頑張ってね!!」
「うん。唯奈ちゃんも頑張ってね!!」
───────────────────────
[Tina's side]
「えっと……お兄さんは……甘い物好きなのかなぁ……」
好きならば、ミルクチョコやホワイトチョコにしたほうがいいし、
好きじゃないなら、ビターチョコとか、いっそチョコじゃないほうがいい。
「そういえば、私、全然知らないや」
お兄さんは私のお菓子を美味しそうに食べてくれるけど……それだけじゃ、何が好きかなんて分からない。
でも……自分で聞くのは恥ずかしいです……。
「うーん……困ったなぁ……」
「どうした?千奈?」
「えっ!?あっ!?お兄さんっ!?」
えっ!?独り言が聞かれてしまいました!?
- 421 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/02/14 21:38:43 ID:H9dKM/oJ
- どうしましょう!どうしましょう!?
「よう。で、どうしたんだ?なんか困り事か?」
「いっ、いえっ!!そんな、お兄さんに言うほどの事ではっ!!」
あわわ……声が上ずってしまいました……。
「まぁまぁ。遠慮しないで、俺に相談してくれよ。俺に出来る事なら、何でもするからさ」
バレンタインのチョコはどんなのがいいいですか……?
「そんなこと、聞けるわけありませんよぉ!!」
「えっ!?ちょっと、千奈!?」
頭の中が真っ白になって、顔が熱くなって……
情けない事に、お兄さんの前から逃げ出してしまいました……。
お兄さん、ゴメンなさい!!お兄さんは悪くないんです!!
───────────────────────
[Yuna's side]
『そんなこと、聞けるわけありませんよぉ!!』
「ん?千奈ちゃん?」
そんな声が聞こえたと思ったら、唯奈の隣を千奈ちゃんが凄いスピードで走っていった。
「すごぉい!!千奈ちゃん、唯奈より速いかもー!!」
でも……大人しい千奈ちゃんがあんなことになるなんて……何があったのかな?
そんなことを考えていると、ドアからお兄ちゃんが不安そうに顔を出した。
「えっと……千奈は?」
「すごいスピードで二階に行ったけど……お兄ちゃん、千奈ちゃんに変な事したの?」
「いや……そんなつもりはないんだけど……ただ、困った事があるなら相談してくれって言っただけで……」
「ふぅん……」
「も、もしかして、俺なんかマズいことしたのか……?」
お兄ちゃんがオロオロしてる……初めて見たよ。
「唯奈は、大丈夫だと思うけどなぁ」
- 422 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/02/14 21:39:51 ID:H9dKM/oJ
- 「そ、そうか……?」
「うん。と・こ・ろ・でぇ……お兄ちゃんの誕生日って2月10日だったよね?」
「あ、あぁ……」
「じゃあ、みずがめ座?」
「そうなるな」
「って、ことは……わぁーい!!ふたご座と相性良いみたいー!!」
「相性……。え、えっと……唯奈はふたご座なのか?」
「うん。千奈ちゃんもふたご座だよ」
「はは。そりゃそうだ」
「ふぇ?何で分かるの?私たちが双子だから?」
もしかして、双子の人はみんなふたご座なのかなぁ……?
もし、そうだったらスゴいなぁ……お兄ちゃん物知りー!!
「ん……?そりゃ、双子は普通誕生日同じだろ?」
「あ……そ、そうだよね!!誕生日同じだもんね!!あはははは……」
「ああ……」
ありゃ……お兄ちゃんがヒいてる……。
わ、話題変えなきゃ!!
「え、えーと……そうだ、お兄ちゃんの血液型を当ててあげる!!」
「あ、ああ……。やってみな」
「えっと……お兄ちゃんは……A型でしょ!?」
「ははっ。よく言われるけど、俺はBだよ」
「へぇ……意外……でも、相性はいい感じだね」
「また相性……。ま、つまり当たんないんだって、占いなんて」
「うん……分かってるけど……」
「でもまぁ、みんなでワイワイやるぶんには楽しいよな?」
「うん!」
「でも、血液型だけで人を判断したらダメなんだぞ」
「はーい!!」
───────────────────────
- 423 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/02/14 21:40:53 ID:H9dKM/oJ
- [Tina's side] part2
「はぁ……どうしましょう……」
ちょっと頭がスッキリしてきました。
どうして、唯奈ちゃんみたいに出来ないんでしょうか……。
私も唯奈ちゃんみたいに積極的なら……今日みたいにお兄さんを困らせる事なんてなかったのに……。
「はぁ……」
お兄さん……本当にゴメンなさい……。
「あっ!!」
そ、そうです!!
いつまでも落ち込んでちゃダメなんですよね!!私も唯奈ちゃんみたいにならないと!!
で、でも!!お兄さんの好みが分からないし……。
何かいいアイデアは……
…………
……そ、そうです!!
───────────────────────
[Yuna's side] part2
「えっと……お兄ちゃんはKタイプか……」
コレは、『あなたのカレは何タイプ!?バレンタイン必勝チャート 20タイプ!!』
友達が当たるって言ってたから借りてきたけど……20タイプは多いと思うなぁ……。
そうそう。えっとKタイプの人は……。
[Kタイプ]
真面目で面倒見のいいあなたのカレ。融通が利かず頭は固め。恋愛にはちょっと疎い!?
あなたに対しては優しくしてくれるのですが、それは持ち前の正義感から来るモノ。
カレが優しくしてくれるからと言って、カレにベッタリ甘えてしまってはいい関係になるのは難しいです。
かといって、世話を焼きすぎると、カレもあなたのことを避けがちになってしまいます。
ちょっと控えめな態度で接し、カレのパートナー的な関係から始めるのがベスト!?
そんなカレへのプレゼントは、手作りよりも売り物の方がベター。
奇抜な物よりも、ベーシックなモノのほうが良さそうです。
- 424 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/02/14 21:42:27 ID:H9dKM/oJ
- 「唯奈との相性は60%か……あっ!!千奈ちゃん99%だって!!すごーい!!」
なるほど……お兄ちゃんのパートナーか……。
そういえば、お兄ちゃんと千奈ちゃん、たまに、二人でマジメな話してるしなぁ……。
私とはどうでもいいような話ばっかり……。
お兄ちゃんには千奈ちゃんみたいなコがいいのかなぁ……。
ううん!!お兄ちゃんだって『当たんないんだって、占いなんて』って言ってたし、
まだ唯奈でも大丈夫だよねっ!?バレンタインで頑張れば、大丈夫だよね!?
「よし、そうと決まれば、チョコ買いに行くぞー!!」
───────────────────────
──二月十四日。夜。我が家のリビングにて。
「真司君。はい、コレ」
俺の義母、唯奈千奈の母、恵さんが何かの箱を俺に手渡す。
「え?何ですか?」
「チョコだけど……こんなオバさんのチョコはいらない?」
「あ、今日はバレンタインだったんですね。ありがとうございます」
「えっ、知らなかったの!?」
「えぇ、まぁ……」
「学校の娘たちから貰わなかった?真司君モテそうなのに」
「ま、理系のクラスですしね。女子自体が少なくて」
「そうなの?大変なのね……私が最初でよかったわ……」
「最初?」
「いやっ、こっちの話……ところで、私はお邪魔なのかしらね?」
「邪魔?なんでです?」
「あれ……」
恵さんが指差した先を見ると……ドアのガラス部分にベッタリ張り付いている唯奈と千奈が……。
「な、何ですか……アレは……」
「さぁ……でも真司君に用みたいよ。じゃあ、私は失礼するわ」
そう言って、恵さんは二人が張り付いているドアに向かう。
怒られると思ったのか、磁石が反発するようにサッとドアから飛び退く二人。
しかし、恵さんは二人に何か囁いて、どこかへ行ってしまう。
- 425 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/02/14 21:43:29 ID:H9dKM/oJ
- 代わりにリビングに流れ込んでくる二人。
「お兄ちゃん!!」
「お……お兄さん!」
「どうした?二人して?」
「お兄ちゃん、今日は何の日か知ってる?」
「ああ、さっき恵さんに教えてもらった」
「えっと……じゃあ……私たちがここに来た訳……分かりますよね?」
「あー……チョコをくれるため……って言ったら自惚れてるか?」
「ううん。大正解だよ」
「まずは私から……」
千奈は精一杯手を伸ばして俺に大きめの箱を差し出した。
「私、お兄さんの好みが分からなかったんですけど……一応、色々な味のものを作って……」
「うん」
「えっと……!!お口に合うかどうか分かりませんけど……一生懸命作りましたからっ!!」
「あぁ。ありがとう。千奈」
俺は千奈の肩をポンポンと軽く叩く。
千奈は一気に緊張が解けたようで、優しく微笑んだ。
「次は唯奈ね……はい、コレ、唯奈からのチョコだよ」
唯奈が小さめの深緑色の箱を俺に差し出した。
「私は不器用だから、千奈ちゃんみたいに手作りなんて出来ないけど……お兄ちゃんのために頑張って選んだんだよ」
唯奈は珍しく、控えめにそう言った。
「あとは……えっと……お兄ちゃん、前にこの色が好きって言ってたから」
「うん。嬉しいよ、唯奈」
「えへへ……」
唯奈は薄く頬を紅潮させて、照れくさそうに笑う。
「二人ともホントにありがとう。バレンタインなんて、俺には関係ない物だと思ってたから、嬉しいよ」
「えへへ……」
「へへ……」
で、俺はそこで立ち去ろうとしたら……。
- 426 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/02/14 21:44:30 ID:H9dKM/oJ
- 「お兄ちゃん!!」
「お兄さん」
「ん?今度は何?」
「お兄ちゃん、千奈ちゃんと唯奈、どっちが嬉しかった!?」
「遠慮しないで言ってくださいね」
「……は?」
「唯奈と千奈ちゃんのどっちのチョコがお兄ちゃんに喜んでもらえるのか勝負してるの!!」
「だから、お兄さんが決めて下さい」
「……いや、二人とも良かったってのはダメ?」
「ダメ!!クレープが懸かってるんだから!!」
「はい!」
あ、なるほど。負けたほうがクレープを奢るとか、そんな感じね……。
しかし、まぁ……妹たちは仲が良いもんだと思ってたから、勝負ってのはなぁ……。
「なぁ……その勝負がなかったら、俺にチョコくれなかったのか?」
「「えっ……」」
「あ……俺、また自惚れてるな……気にしないでくれ」
二人の肩を叩いて、俺はその場から離れようとする。
「そんなことないよ……」
唯奈が呟いた。
「どっちの話だ?」
「どっちもです」
今度は千奈が言う。
- 427 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/02/14 21:45:32 ID:H9dKM/oJ
- 「唯奈は……お兄ちゃんに喜んで欲しかったから……」
「私も……です」
「二人とも、それだけ言えれば、俺の言いたい事は分かるだろ?」
俺の問いかけに、二人は同時にうなずいた。
「ま、どうしても白黒つけたいって言うのなら……俺の負けだね」
「「えっ……」」
「明日、クレープ食いに行こう。三人で。俺が奢るからさ」
「お兄ちゃん……」
「お兄さん……」
「仲良きことは美しきかな……だな」
「うん。お兄ちゃん……好きだよ」
「私も……すき……」
また一つ、楽しみにするイベントが増えた。
全く、いい妹たちだよ……。
───────────────────────
ホント薄っぺらだね……余韻ブチ壊し。
つーことで、今年のバレンタイン台本は、双子。
こんな台本でも、俺は、やっと満足する双子モノが書けたと思ってるんだけど、どうだろう……。
あと、[Tina]はワザとやってます。
[China]じゃ、俺にはチャイナとしか読めないからねぇ……
- 428 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/02/14 21:52:23 ID:H9dKM/oJ
- 二月十四日。バレンタインですよ。
「ねぇ、兄さん。今日はバレンタインですよ?」
学校への道を妹の未来と一緒に歩いている。
「今年もチョコ、作りますからね?」
「あぁ、楽しみだ」
「兄さんは、どんなのが好きですか?」
「そうだなぁ……」
ちょっとからかってやるかな。
「未来の体にチョコ塗って……んで、俺が隅から隅まで味わわせてもらうと。どう?」
「だ、ダメに決まってるじゃないですか!!何言ってるんですか!!」
公衆の面前でそんな事を言われて、未来ちゃんの顔も紅さ三割増し。やっぱり可愛い!!
「でも、未来はチョコも美味いからな。何でもいいよ」
「ありがとうございます。じゃあ、頑張って作りますね?」
「ああ、楽しみだ。……じゃ、今年はチョコ全部断っちゃおうかな!!」
「だ、ダメですよ、そんなの!!」
意外だな……喜ぶと思ったのに……。
「何で?」
「気持ち……分かりますから……」
「気持ち……?」
「はい。その中には、本命の人もいるわけですから……その人の勇気とかを無駄にするのって酷いと思うんです……」
「んー。俺にはその辺はよく分からんなぁ……」
「でも……その人のこと大切にしてほしいんです……」
「ああ。分かったよ。未来がそこまで言うなら」
「はい!ありがとうございます!!」
そんな感じで、仲睦まじく歩いていると……
- 429 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/02/14 21:53:28 ID:H9dKM/oJ
- 「よ、未来ちゃん。おはよ」
何者かが後ろから未来に声をかける。
「あっ、おはようございます」
未来の声が聞こえたかどうか知らんが、その声の主は自転車であっという間に俺たちを追い抜いてしまった。
「で……誰?」
「クラスの人ですね」
「ほぅ……しかし、相当未来に期待してる感じだな……」
「期待って、何ですか?」
「チョコに決まってるだろ?アイツにあげるのか?」
「あ、あげるわけないじゃないですか!!大体、話したことだってそんなにないですし……」
「義理も?」
「はい……そういえば、聞いてください!!あの人、お弁当がいつも美味しそうなんですよ!!」
「べ、弁当……?」
「はい!!冷凍食品とかあんまりないし、彩りもキレイですし!!きっと、お母さんが頑張ってるんですね!!」
ああ、なるほど。
多分、未来はあの彼の弁当がついつい気になっちゃうんだろう。
そして、彼は未来が自分に興味があると勘違いして……。
俺が言うのも難だが、あの少年に幸有れ!!
「ま、未来ちゃんの本命チョコは俺のものだしね」
「もう……兄さんったら……」
そう呟いて、顔を赤くした未来は少しだけ歩く速度を速めた。
───────────────────────
今日は一日があっと言う間だった。
気付いてみればもう夕方。周りも薄暗くなった。
「ただいま」
家の中が甘い匂いで満ちている。未来がチョコを溶かしているのかな……。
- 430 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/02/14 21:54:30 ID:H9dKM/oJ
- 「あっ、お帰りなさい。兄さん」
エプロン姿の未来が玄関に出てきて言う。
「ああ、ただいま」
「あっ、兄さん。丁度良かった!!ご飯できましたよ」
「ああ。着替えてから行く」
「はい!早く来てくださいね!!」
未来がそういうので、俺は手っ取り早く着替えを済ませキッチンに行く。
「へぇ……チーズフォンデュか……美味そうだな」
「ふふっ。違いますよ、兄さん」
「違うって?何が?」
「食べてみれば分かりますって」
未来に言われるがままに、金串をパンに刺し、チーズに浸して口に運ぶ。
「何コレ!?甘っ!?」
「ホワイトチョコですよ。って、こんなに匂いがしてるじゃないですか……」
「ま、そりゃそうなんだが……思い込みって怖いな」
「ふふっ、そうですね。それで……美味しいですか、兄さん?」
「うん。美味いよ、未来」
「ありがとうございます。……でも、これデザートのつもりなんですけどね」
「ま、流石にこれメインじゃ飯は食えないよな……」
「はい。ご飯、今持ってきますから待っててくださいね」
「ああ、頼む」
「今日は兄さんの好きなもの作ったんですよ?」
「へぇ、何?」
「じゃーん!!兄さんの大好きなピザです!」
「おぉ!未来が作ったのか!?」
「はい。生地からソースまで全部、未来特製ですよ!」
「ほぅ。じゃあ、早速食べようかな」
「はい。熱いですから、気をつけてくださいね」
───────────────────────
- 431 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/02/14 21:55:31 ID:H9dKM/oJ
- 「ごちそうさま」
「はい。お粗末さまでした」
まぁ、未来の料理について語る事はないだろう。とにかく見事の一言であった。
例のデザートも、ホワイトチョコだけでなく普通の黒い(?)チョコも出てきて、なかなか美味しかった。
「さ……課題でもやるか」
ドアに手をかけた俺を未来が呼び止めた。
「あ、あの……ちょっといいですか?」
「ああ。いいけど?」
「すいません……。あの……兄さん言いましたよね……?えっと……」
何を言うつもりかは知らんが、未来は顔を真っ赤にして俯いている。
「わ、私の体にチョコ塗って食べたいって……」
「ま、まぁ……言った事は言ったけど……」
何!?する気なの!?チョコレートフォンデュはその伏線!?
「ちょ、ちょっと未来ちゃん!?」
「えっと……」
溶けたチョコが入った鍋を掴み、その白い人差し指を褐色の液体で染める。
そして……
「み、未来……?」
口の中が甘くて暖かい……。
気付くと、俺は未来の指を口に含んでいた……。
「えっと……私は……兄さんのためなら……何でもしてあげたいけど……」
「み、みく……?」
俺は驚き、間抜けな声を出してしまう。
「私には……これが精一杯です……でも……こんな私でもいいなら……」
未来の途切れ途切れの言葉。……そっか、コレが勇気ですか?未来ちゃん。
「ったく……お前は冗談が通じねぇヤツだな!!」
俺は未来を抱き寄せ、頭をクシャクシャに撫でる。
「可愛いぞ、このヤロー!!」
「に、兄さん……や、やめてくださいよぉ!!」
微笑みながら、くすぐったそうに体をよじらせる未来。
- 432 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/02/14 21:56:33 ID:H9dKM/oJ
- 「未来……最高だったよ。ありがとな」
「ふふっ、兄さん。まだ早いですよ」
「えっ?」
「えっと……はい……」
未来が小さな箱を差し出す。
「何、コレ?」
「チョコレートです……」
「何で?」
「えっと……私も……他の女の子たちの仲間に入れて欲しかったから……」
今の未来の様子を改めて言うこともないだろう。
「私も……ドキドキしたかったから……」
そう。いつも通りの未来なのだ。
何度見てもあまりに可愛すぎて……
「じゃ、俺の部屋でもっとドキドキしようか!?」
つい意地悪してしまう。
「わ!!に、兄さん!?な、何言ってるんですか!!」
「はははっ!!冗談だって」
「もう……兄さんってば……」
ラブラブな雰囲気ってのも理想と言えば理想なんだが……。
バカ言って、突っ込まれての生活も捨てたモンじゃないと思うよ、俺は。
───────────────────────
なんつって、今年はまだまだ終わらないよ。
二作目は未来。
なりきりは散々だったけど、台本の方はどうだろうか……。
- 433 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/14 21:58:05 ID:i+xKpVrg
- またも
リアルタイム!!!
GJ!!最高です!!
未来ちゃん最高!
双子も最高!
- 434 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/02/14 22:00:01 ID:H9dKM/oJ
- 今日は二月十四日。バレンタイン神父撲殺記念日です。
……いや、別に僻んでる訳じゃないんだけど、俺、三上修二はやっぱりこの日は好きじゃない。
何故かこの日はクラスみんながソワソワしていて、俺だけ取り残された気分になる。
そして……そのソワソワは、今年は学校の中だけの物ではなかった。
「おにぃちゃーん!!」
パジャマ姿の沙耶が俺のベッドに飛び込んでくる。
「うぉっ!?」
間一髪、俺は沙耶のフライングボディープレスを回避。スプリングがきしみ、沙耶はその場でバウンドした。
「おにぃちゃん、おはよー!!」
俺の隣で寝転がってる沙耶が俺に能天気な笑顔を向ける。
「沙耶……俺を永遠の眠りに就かせる気……?」
逆に、悪気はないとはいえ朝っぱらから殺されかけた俺は機嫌が悪い。
「ううん。おにぃちゃんを起こしに来たんだよー!!」
テンション高ぇ……。
「……で、何?」
「おにぃちゃん、知ってるー!?」
「何を?」
「今日はバレンタインなんだよー!!」
……は?
それは、今日がバレンタイン、つまり、二月十四日であることを知っているのかと聞いているのか?
それとも、二月十四日にバレンタインと言う行事があることを知っているのかと聞いているのか?
……ま、どっちにしろイエスだが。
「あぁ……一応……」
「えへへ。おにぃちゃん、サヤのチョコ欲しい?」
「学校で一杯貰うから要らない……」
あっ……マズいっ……!!
- 435 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/02/14 22:01:03 ID:H9dKM/oJ
- 沙耶に冗談は通じない。
全てを本気にして、今も涙が臨界点に達しようとしている。
「あ……そ、そっか……ご、ゴメンなさい……」
「沙ー耶ー!!冗談だってば!!俺、沙耶のチョコが欲しいなぁ!!」
「おにぃちゃん……」
「いや、実は俺、チョコ大好きなんだよ!!」
いや、心にもないことを言ってるわけじゃないけど……なんか白々しいのは何でだろ……。
「わぁーい!!おにぃちゃん、サヤのチョコ欲しいのー!?」
「ああ。下さい。是非下さい」
「わぁーい!!やったやったぁー!!」
すさまじいテンションでベッドの上で飛び跳ねる沙耶……。
まだ眠い頭には響くってば……。
「沙耶……飯でも食うか?」
「うん。食べるー!!」
俺は沙耶の暴走を止めるべく、食事と言う手段を用いて、沈静化を試みた。
……今日は、もしかしたら頭痛薬が要るかもしれない……。
───────────────────────
もう夕方だが……学校での出来事を特に言う必要はないと思う。
まぁ、敢えて要約するなら、
『三上クン、これあげるー!!』とか『しゅーちゃん!はい、チョコ!!』とか……。
……まぁ、つまり、俺にチョコをくれるのは女友達ばっかりだ。義理100%。
だからと言って、どうしたということはないんだがな。
しかし、まぁ……俺は特別甘い物が好きなわけでもないので、正直、チョコなどいらないのだが、
知らない人からの本命チョコよりも、友人からの義理チョコのほうが千倍は断りにくいと俺は思う。
まぁ……沙耶からのチョコが一番断りにくいのだが。
……そんなことを考えながら、リビングへ続く扉の前で、俺はちょっと身構える。
それなら、別にリビングに入る必要などないだろう。と思うかもしれないが……甘い!!
- 436 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/02/14 22:02:07 ID:H9dKM/oJ
- 朝の沙耶を見れば分かるように、今日のテンションはかなりのものだ。
もしかしたら深刻なダメージを受ける可能性もある。
しかし、一回顔を会わせておけば、その後しばらくはリスクは少なくなる。
つーことで、最初の一回を身構えて受ける事で、後々のダメージを最小限に抑えられるのだ!!
……って言うのは、話が飛躍しすぎかもしれないが。
「ふぅ……」
俺は大きく深呼吸して覚悟を決めた。
すると……
ガッシャーン!!
「わわわぁっ!!」
ドアの向こうの更に向こう。キッチンから沙耶の声がした。
「わわわっ!!こぼれちゃったよぅ!!」
沙耶がなんかやってるみたいだな……。
助けてあげてもいいけど……このまま様子を見ていてもいいような気がする。
「はわっ!!床が水浸しだよぉ!!」
……めんどぃ。
もうちょっとピンチになってからでもいいか……。
「ひゃっ!!」
まだ余裕だな。
「きゃん!!」
まだまだ。
「くぅーん……」
そろそろか。
俺は静かにドアを開け、わざと足音を立てながらキッチンに向かう。
「ただいま、沙耶」
「はわ……おかえりなさい……」
沙耶はグチャグチャになったキッチンの床にペタンと座っていた。
「ずいぶん汚れてるな……。ほれ、立ちな」
俺は手を差し出して、沙耶を立たせてやる。
「うん……」
- 437 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/02/14 22:03:17 ID:H9dKM/oJ
- 朝のノリはどこへやら。沙耶はすっかり気を落としていた。
「どうしたんだよ、沙耶?」
「サヤ……おにぃちゃんにチョコを作ろうと思ったのに……失敗……しちゃった……」
「まったく……」
今にも泣き出しそうな沙耶の頭にポンと手を置く。
「大丈夫?ケガはないか?」
「うん……でも……」
「いいんだよ、沙耶が無事なら」
俺は沙耶の頭を優しく撫でる。居心地がよさそうに、涙目ながらも、沙耶は次第に俺に身を寄せて来た。
そこで、ふと調理台の上に目をやると……
「あ、美味そうなチョコがあるじゃないか。これ、俺の?」
「わわっ!!それは、ダメだよぉ!!」
「何で?」
「だって……変になっちゃったから……」
まぁ、言われてみると、ハート型にちょっと突起物がついたような不思議な形をしてるし、
ホワイトチョコで書いてある字も一応読めるが、かなり下手糞だ。
「でも、沙耶が一生懸命作ったんだろ?嬉しいよ」
「おにぃちゃん……」
「後で、二人で一緒に食べような?」
「うん!!」
沙耶のとても明るい笑顔は、俺にまで微笑を浮かべさせた。
「おにぃちゃん!!サヤね、おにぃちゃんのこと大好きだよっ!!」
「そっか」
「ねぇねぇ!!おにぃちゃんは……サヤのこと……好き……?」
「そうだなぁ……嫌いじゃないかな」
「ホント!?わーい!!わーい!!」
……出来れば、沙耶にはいつまでもこの純真さを持ち続けてほしいもんだな。
───────────────────────
バレンタイン、最後の妹は沙耶。マジで疲れた……。
文句なら何でも聞くよ。今回はそれに値する事をしたからね。なんなら、このトリップを晒してもいいけど。
- 438 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/14 22:03:21 ID:IXRlmSKH
- 沙耶キタ−−(゜∀゜)−−−−−−−−−−−−!!
- 439 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/14 22:06:46 ID:DHw18aLu
- も、萌え死ぬ…orz
- 440 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/14 22:08:49 ID:j8ugAql5
- 未来ちゃんキタ――(゚∀゚)――!
俺も未来ちゃんの指ちゅぱしたい……。
もちろんそこからセkk(以下自主規制
- 441 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/14 23:04:22 ID:XW2+TTCB
- ラブリィだぜ……
- 442 :前スレ921 :05/02/15 00:26:40 ID:MXfg2ugN
- 遊星氏、海中時計氏
乙ですー。
危うく萌え死んじゃうとこでした('A`)
- 443 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/15 02:18:50 ID:vvYwIzAB
- 神だ!
- 444 :コンズ :05/02/15 05:57:37 ID:5+/wilB1
- くっはぁ〜!!遊星さん最高でふた!!
やっぱり双子のお話わイイっ(・∀・)
- 445 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/15 17:59:50 ID:ChVamTqL
- ゆ、遊星さん…沙耶たんもらっていい?
もう俺的キタ━━━━(゚∀゚)━━━━!!
- 446 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/02/15 21:29:02 ID:ij89ILEM
- 梨那は次の授業は教室を移動しなきゃならないとかで、五時間目の予鈴が鳴るまえに自分の教室に戻った。
『英語苦手なんだよぉー!!』とか、『国語なら得意なんだけどなぁー!!』などとボヤきながら。
俺も五時間目の英語の準備をしようと、机の中に手を入れると、
「さぁ、行こうぜ」
友人の一人が俺に声をかけた。
「行くって?何処へ?」
「聞いてないのか?今日、吉崎さんが風邪で休みだから……」
「あ。視聴覚教室で文型クラスと合同だったな?」
「そうそう。2組とな」
2組っていったら、梨那のクラスだ……。
っていうか、そんなに授業が遅れてる訳じゃないんだから、自習で良いのに……。
「でも、2組っつったら、あの坂野が教えてんだぜ?最悪だよ……」
「坂野か……生徒に人気無いよな、あの人」
「あーあ!いいよなぁー!!学年トップクラスのヤツは他人事で!!」
「どういうことだ?」
「知らない?アイツ、ワザと分からなさそうなヤツ当てて、んで勝手にキレるんだってさ」
「性格悪いな」
「だろ?あっ、もう時間ねぇな。早く行くぞ」
「ああ」
俺は英語の用具を持ち、視聴覚教室へ向かう。
一応、席は自由だったのだがチャイム擦れ擦れで入り込んだため、
ほとんど席は残っていなく、一番後ろの席に二人で座った。
「成績が良くないヤツは出来るだけ前のほうに来るように!!」
坂野が声を張り上げた。
なるほど……だから後ろが空いてるんだな……流石に一番後ろに行く度胸のあるヤツはいないか……。
そこで、周りを見渡すと、ご丁寧に一番前に座っている梨那という名のバカが一人……。
- 447 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/02/15 21:31:07 ID:ij89ILEM
- 「行く?」
友人が前を指差す。
「いや、いい」
「ま、お前は余裕だもんな、天才。当てられたときは頼むぜ?」
「ま、考えとくよ」
とまぁ、そんなこんなで授業が始まって……
「今日の問題は簡単だ。出来ないヤツは危機感を感じたほうがいいぞ」
ってなことを言いながらプリントを配る坂野。
……って、教科書使わねぇのか……じゃ、自習でもいいのにな。
「10分で目を通せ」
俺は前から回ってきたプリントに目を通す。
タイトルは『ニュートンとアインシュタインの物理』。
……正直、俺なら、こんなこと読まんでも知ってる事ばっかりだったが、文自体は結構難しい。
文系、理系にとっても、決して簡単な問題じゃない。まして10分で解ける問題ではないな。
んで、しばらくしているうちに10分経って、坂野は生徒を当て始めた。
情報によると、俺ぐらい成績が良ければ、まず指されないらしいので、
俺にとっては退屈極まりない授業だ。
そんな俺は頬杖をついて、ハラハラした顔で英文を読んでる梨那を見ていた。
───────────────────────
……弱い物虐め的授業も半分ほど終わった。
噂どおり、ワザと当てられそうにないヤツを選んでいるようで、意図的に成績のいいヤツを避けている。
んで、せめて何食わぬ顔をしてりゃ良いのに、当の本人はニタニタ笑ってるから、タチが悪い。
予習してなくて分からないのなら自業自得だが……
今初めて読んだ英文、しかもこれぐらいのレベルなのだから、分からなくても無理もないと思うのだが……。
ってなワケで、俺はモヤモヤした怒りを抱えながら、適当に授業を聞いていた。
「じゃ、次は……相川。下線部(3)を訳してみろ」
「にゃ……は、はい……」
梨那が緊張と不安で顔を強張らせながら立ち上がった。
下線部(3)って言ったら、多分一番難しいトコだな……。運が悪いねぇ……梨那くん。
- 448 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/02/15 21:32:08 ID:ij89ILEM
- 「えっと……しかし……うんと……アインシュタインは考えた……えっと……」
「何だ?相川、こんなのも出来ないのか?」
「は、はい……」
抑えろ抑えろ……。
「まったく、こんな簡単な文も訳せないと、今度は英語で赤点取るぞ」
「……」
我慢だ……大人になれ……。
「詩だか何だか知らないが、表彰されたぐらいで調子に乗ってもらったら困るな」
「……」
坂野の執拗な攻撃に、今にも泣き出しそうな梨那の顔。
バン!!
「ふぅ……」
俺は机を叩いて勢いよく立ち上がり、深い呼吸をする。
教室中が俺に注目するなか、隣の友人は、面白そうな顔をしている。
「な、何だ!?州田!?」
坂野は驚いた様子で、間抜けな声を出した。
あ、州田ってのは俺の名前ね。
俺はその質問を無視し、梨那の席へ歩いていく。
「お兄ちゃん……?」
俺は梨那に微笑み、その震える肩をポンと叩き、そして、ドアに向かう。
「ど、何処に行くんだ!?州田!?」
「あぁ、もう半分過ぎてるから、もう出席扱いっすよね?これ以上聞く価値ないんで教室で自習してます」
「お、おい!?いいのか!?ここ、次のテストに出すぞ!?」
「えっと……onlyによる倒置ですか?このthisが前文全体を指す事ですか?それとも、最後の省略ですか?
ま、なんにせよ俺には分からない問題じゃありませんよ」
- 449 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/02/15 21:34:18 ID:ij89ILEM
- 「う……」
「あ、先生。発音、三つほど間違ってましたよ?
しかも、その一回は、生徒が正しく発音したヤツをわざわざ直してましたよね?」
「……」
「簡単だって言いましたけど、客観的に考えても、この問題をそう思えるのは、英語が得意な物理マニアだけです」
「……」
「あと……授業をストレス解消に使うのはどうかと思いますよ?」
「……」
「何か言いたいことあるなら校長か学年主任か担任にどうぞ。では」
言いたい事を言い尽くし、ちょっとスカッとした俺はドアを開け、視聴覚教室を出て行く。
俺の背にある教室が騒がしくなったのを聞きながら……。
───────────────────────
授業の途中で教室に戻った俺は、皆から腫れ物扱いされると思っていた。
しかし……
「やるじゃん、州田!!」
「しゅーちゃん、スカッとしたよ!!」
予想に反して、俺は英雄だった。
坂野にはみんなムカムカしていたらしく、俺は惜しみない称賛を浴びることとなった。
結局、俺が出て行った後、授業は騒然となり、他の成績優秀者が続々と抜けて、
呆然としていた坂野は、もう誰かを指名せず、ただ答えのプリントを配るだけで終わったらしい。
その後、騒動の張本人として、俺は担任に呼ばれた。
俺が事情を話すと、担任は分かってくれて、坂野には後で注意をするらしい。
一応、俺の行動も褒められた物ではないとして厳重な注意を受けた。
ま、喧嘩両成敗といったところだろうか……。
「失礼しました」
俺は軽く礼をして、職員室から出る。
「お兄ちゃん……」
梨那が申し訳なさそうな顔をして、俺に声をかける。
「よぅ、梨那。一緒に帰るか?」
俺の問いかけに、梨那は黙って頷いた。
梨那にいつもの明るさがないので、俺も会話の糸口を失ってしまう。
しばらく沈黙が続いた。
- 450 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/02/15 21:35:23 ID:ij89ILEM
- 「ねぇ……」
先に沈黙を破ったのは梨那だった。
「何だ?」
「ゴメンなさい……梨那のせいで……」
「梨那のせい?」
「うん……お兄ちゃん、梨那を助けてくれたのに……お兄ちゃんだけが怒られて……」
別に怒られた訳じゃないけど……ま、いいか。
「ゴメンね……お兄ちゃん……ゴメンね……」
ポロポロと涙を流す梨那。
梨那との付き合いも長いが、もしかしたら、こんな悲しそうな涙は初めて見たかもしれない……。
「泣くなよ。梨那が悪いんじゃないって」
「で、でも……」
「体が勝手に動いたんだ。梨那の泣きそうな顔見たらさ」
「お兄ちゃん……?」
梨那は驚いて、潤んだ瞳で俺を見上げた。
「さ、帰るぞ!!」
結構マジのつもりだったが、梨那に見つめられると恥ずかしくなってきた。
ちょっと熱い頬を隠すため、俺は少し早足で歩き始める。
「お、お兄ちゃん!!」
「な、何だよ?」
「ありがとう!!」
梨那が涙を拭いて、笑った。
「ああ」
俺も梨那に笑いかける。
「あーあ……結局あの後、授業やらなかったんだって?」
「うん」
「折角、俺が全訳と単語メモ作って、こっそり渡してやったのに、無駄だったな」
「うん。でも、梨那、嬉しかったよ!!」
「そう思うなら……あー、いや、やっぱ止めとくわ」
- 451 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/02/15 21:36:32 ID:ij89ILEM
- 「いつものアレが欲しいの?」
「いいよいいよ。忘れてくれ」
「ううん。梨那が買ってあげる。お昼の分もあるしね?」
「いいのか?」
「うん。で、でも一個だけだからねっ!?」
「三つ……いや、二つだ!!」
「にゃっ!?ひ、ヒドいよぉ!!」
「ウソウソ。一個で良いよ」
情けない事だが、俺の弱点はいつだって梨那なのだ。
でも、それはそれで、俺は幸せなのである。
───────────────────────
♪言いたかないが 連チャンはキツい い・い・い・い 言うだけ無駄だよ 頑張ろう♪
もう、余韻ブチ壊す前に貼っとくよ。
構想段階では、梨那の兄と沙耶の兄を同一人物にする気だった。っていうのは秘密だ。
- 452 :前スレ921 :05/02/15 21:44:00 ID:MXfg2ugN
- リアルタイムで見れた━━(゚∀゚)━━!!
乙っス!!
- 453 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/15 21:46:25 ID:jYER33Ji
- (*´ー`*)ーЭ やっぱ最高です!
- 454 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/15 21:51:48 ID:ChVamTqL
- おい遊星さんよ〜
萌て死にそうだ!
- 455 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/15 21:54:45 ID:fPIYbZwL
- ネ申!
遊星さん最高ですよ!
英文わかんない…。
- 456 :前スレ921 :05/02/15 23:01:14 ID:MXfg2ugN
- ―コンコン
部屋をノックする音で目が覚めた。
いつの間にか寝ていたらしい。
うっすらと重い瞼を開くと夕焼けに軽く紅に染められた白い天井が見える。
窓からは烏丸の鳴き声が聞こえてきた。
どうやら今は夕方のようだ。
枕元には無造作に漫画が置いてある。
漫画を読んでいるうちに寝てしまっていたようだ。
―コンコン
「夢亜ー、起きろー」
もう一度ノックする音が聞こえた。今度は兄の声も聞こえてきた。
「んー、起きたぁー。」
ベッドに横になったまま寝起き特有のけだるさをたたえた声で返事をする。
- 457 :前スレ921 :05/02/15 23:03:12 ID:MXfg2ugN
- 「目が覚めたのと起きるのは違う!さっさと起きる!入るぞ?」
「起きてるってばぁ…」
とは言ったもののさすがは兄。長年一緒に居るだけあってこのままだと私が二度寝する事がわかっているのだろう。
考えているうちに部屋のドアが開き兄が入ってくる。
顔は整っているが美形と言う程でもなく、身長も170程度。性格も人当たり良く。至って普通。馴染み易い人間だ。
「おそよう夢亜さん。随分と気持ち良く寝ていたようですね。」
「お・は・よ・う・お兄ちゃん。」
ただ、少し…いや、かなりふざけた人間だ。
- 458 :前スレ921 :05/02/15 23:04:34 ID:MXfg2ugN
- いやにニヤニヤしながら話し掛けてくる。
「まだ寝ぼけてるのか?おはようは朝の挨拶だぞ?お・そ・よ・う・寝癖の素敵な夢亜お嬢様(笑)」
「なっ!!う、うるさいなぁ!!わざわざそんなコト言いに来たの!?」
慌てて寝癖を治しながらもとにかく反応しておく。
兄は私の反応を見て随分楽しそうな顔をしている。
「まさか。そろそろ夕飯にするから降りて来いよ。いつまでも寝てないで」
「いつまでもって…もう起きてるよ!」
兄はどう見ても私の反応を見て楽しんでいる。
からかわれているのがわかっていてもついつい反応してしまうのが悔しい。
- 459 :前スレ921 :05/02/15 23:09:30 ID:MXfg2ugN
- 「はいはい。先に降りてるから。」
そう言って兄は部屋を出て階段を降りていく音が聞こえてくる。
「もぉ〜、お兄ちゃんったらなんで人が気にするコトわざわざ言うかなぁ〜…」
あれさえ無ければ……なぁ……。
顔をしかめながらベッドから降りて服を治しながらリビングへ降りる仕度をする。
―――――――――――――――――
今日はこれだけ
今回はゆっくり書いてます。
キャラ
静原夢亜(しずはらゆあ)
静原星一(せいいち[兄])
この話しは一応この前にプロローグのような物がありますがスレ違いなのでカットしました。
続きはまた。
- 460 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/15 23:29:02 ID:jYER33Ji
- も、萌えました(*'∀`*) やっぱり上手いです。
……で、張っちゃいます。('A`)
- 461 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/15 23:30:13 ID:jYER33Ji
- 最後の日まで、あと4日。
「お兄ちゃん!ネクタイ曲がってるぅ!」
「え?……あ、ホントだ」
タキシードを着て譜面に没頭していた俺は、春香の声によって我に帰った。
首元で春香の手先が器用に動いている。ふと時計が目に入った。
午後7時。開演まであと30分だ。
今さらだが、俺の名前は真人。妹の名前は春香。天才音楽家の息子と娘だ。
これから市民ホールでオーケストラの演奏が行われる。
その指揮者として、俺も舞台に上がるのだ。
別に今回が初めてではない。まだ高校生だが、これも食っていくためだ。
もちろん春香を養うためでもある。
親父は自他ともに認める偏屈な奴で、自分の生まれ故郷であるこの町を気に入っていた。
理由は分からないが、親父はこの田舎町を拠点として音楽活動を始めたのだ。
……今や、町の誇りとして記念館まで作られていたりする。
その息子と娘。
…………我ながら波乱万丈な人生だ。
「お兄ちゃんってば!ほら、もう時間だよぉ!?」
わたわたと両手を振る春香に苦笑し、俺は椅子から腰を上げた。
7時10分。そろそろ舞台裏へ行くとするか。
「よし、行ってくる。春香は観客席に」
「りょー、かい!」
びしっ、と敬礼。そそくさとドアの前まで行き、ドアの影から顔を半分だけ覗かせて、
「が、頑張ってね、お兄ちゃん。春香、見てるから……」
「おう」
俺は親指を立てた。
- 462 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/15 23:31:29 ID:jYER33Ji
- 緊張はしない。慣れっこだ。
控え室廊下を通り、舞台の袖に到着する。
適当に挨拶をすませ、演奏のために意識を高めていく。
――音楽は心だ。何度か親父にそう言われたことがあるが、まさにその通りだと思う。
特に指揮者はそうだ。
オーケストラの演奏するすべての音を捉え、それらをより高く導かなければならない。
ただタクトを振るだけじゃダメなのだ。
「妹さん、今日も来ているのか?」
声をかけられ、その方向に振り向くと、今日の演奏をともにする女性が立っていた。
腰までの長さの黒髪、大きな瞳、整った顔立ち―――。要するに美人だ。
だが、天は二物を与えずというかなんというか。
彼女、立川要は外見とは裏腹にひどく男っぽいのだ。口調もしぐさも。
「ええ。期待に応えてやらないと」
俺は苦笑してタイを確認した。大丈夫、曲がっていない。
要さんはかなりの顔馴染みだ。仕事の都合で何度も会うし、家に来たりもする。
無論、春香も要さんのことをよく知っている。いいお姉さんだと思っているだろう。
まあそんな人だ。
「そうだな。兄の威厳をみせてやれ」
「それ、普段は俺が威厳がないような言い方じゃないですか」
「ははは!そうかもな。……よし、そろそろ時間だな。それじゃ」
「はい」
オーケストラは幕が上がる前に舞台上の席に座り、待機する。指揮者は後から入る。
一人舞台の袖に取り残され、俺は大きく息を吐いた。
照明と観客が待っている。……まずい、緊張してきた。
春香が待っている。……俺は心が落ち着くのを感じ、堂々と一歩を踏み出す。
ショータイムだ。
- 463 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/15 23:33:14 ID:jYER33Ji
- 幕が上がる。
舞台上にオーケストラの姿が現れた。かなめおねえちゃんの姿もある。
やがて舞台の袖からお兄ちゃんが歩いてきた。照明に照らされ、威風堂々と。
なのに、わたしはこんな場所で見守ることしかできない。
わたしはお兄ちゃんの重荷になっている。
けれど、そんなことは言えない。
わたしはお兄ちゃんの重荷であると同時に、心の支えなのだから。
自惚れじゃない。
わたしはお兄ちゃんのしぐさを一挙一動、見守った。
タクトが振り上げられる。
時が止まる。
いや違う。お兄ちゃんが時を律しているのだ。
タクトが振られる。
時は動き出し、音楽は時間との融合を試みる―――。
- 464 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/15 23:34:33 ID:jYER33Ji
- ……公演は成功だった。観客は総立ちだったし、満足してくれたようだ。
「ほう、退院したのか。それは良かったじゃないか」
市民ホールから少し離れたファミレスで、俺と春香と要さんは打ち上げに参加していた。
本来はもっと豪華な場所でしたりするのだが、ここは田舎だ。それは仕方ない。
というか、むしろうちのオーケストラは庶民的な輩が多い。……親父の影響だろうか。
ビールを持ち出したテーブルを尻目に、俺はジュースを飲み干した。
「ええ。こいつ、嬉しくて飛び跳ねてましたよ」
「お、お兄ちゃん!もうっ……」
赤面する春香。要さんは苦笑する。
「ははは。いいじゃないか。兄の前では甘えているようだな」
「そ、そんなことないですっ!わたしなんか、いつもお兄ちゃんに迷惑かけてばかりで……」
「女は少しくらい迷惑をかけたほうがいいのさ。なあ、真人」
「え?いや、それは俺にふられても……」
「なんだ甲斐性なしか?」
「か、要さん……」
昔からそうだが、この人には頭が上がらない。
「ほれほれ。酒でも飲め」
「俺まだ未成年ですって」
「いいから飲め。オレがお前くらいの頃はぐいぐい飲んでたぞ」
要さんは自分のことをオレという。……いや、要さん。あなたおいくつですか。
「アルコールはダメなんですってば!ほ、ほら、春香からも何か……って、寝るな!」
- 465 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/15 23:36:13 ID:jYER33Ji
- ファミレスを出て、夜風に体を預ける。火照った体には気持ちいい。
……結局、飲まされた。
「しかし……なんだ。相変わらずウソは下手だな」
春香を背負っての帰宅途中、要さんはいきなりそう言った。
「はい?」
「何を隠している?」
……はは。
本当に頭が上がらないや。
大丈夫。この人になら話してもいい。
「実は―――」
俺は少し酔っていたせいもあってか、春香の病気の調子をべらべらと喋っていた。
背中の春香は静かな寝息を立てている。
すべてを話したあと、要さんは深呼吸をした。
「この」
「この?」
「馬鹿野郎っ!!」
怒鳴られた。
「どうして早く言わないのだ!!馬鹿野郎!!」
「言えませんよ。簡単には。要さんだから話したんです」
ふっ、と要さんの表情が変わる。
「そうだな。……そうだった。すまない」
「いえ、いいんです」
俺たちは空を見上げた。月と星が輝いている。
「一人じゃないよ」
「え?」
「お前たちは、一人じゃないよ」
要さんはくすっ、と笑うと、背中の春香を眺めて呟いた。
「春香は一人じゃない。オレもお前もいる。オーケストラの連中だってそうだ。仲間だ」
「要さん…………」
「忘れるな、真人。お前には頼れる味方かいるということをな」
それだけ言うと、要さんはそれじゃと言ってきびすを返し、闇夜に消えていった。
- 466 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/15 23:37:32 ID:jYER33Ji
- 「春香、着いたぞ」
「……お兄ちゃん」
「なんだ?具合が悪いのか?」
「ううん。そうじゃないの」
「どうした?」
「…………春香、一人じゃないね」
「……ああ。今さら気づいたのか?」
「ううん。気づいてた。でも悲劇のヒロインを演じようとしてたのかも」
「ははは。そうかもな」
「だからね」
「ん」
「お兄ちゃんも一人じゃないから。もう抱え込まなくてもいいから」
「春香……」
「ありがとう、お兄ちゃん。大好き……」
口を閉ざし、春香は再び眠りに落ちた。
俺は玄関から再び空を見上げた。
妙な力強さが、そこにはあった。
あと、3日。
- 467 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/15 23:38:54 ID:jYER33Ji
- ('A`) もうこれ以上は無駄にスレ消費できない。
次回からお涙頂戴路線に入るので、どうかご容赦を…
- 468 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/15 23:49:08 ID:ChVamTqL
- くっ!目に涙が留まらなくなってきた!
- 469 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/15 23:58:49 ID:CT9VhLV6
- ……ええ話やわ〜。(感涙)
一日毎に貼られてくから毎日泣いてるよ俺…。
- 470 :前スレ931 :05/02/16 00:10:03 ID:y+5xjefp
- 遊星さんや海中さんの後に貼るのは心苦しいんすけど、忘れられるのが怖いので…
_______________________________
「んっと」
寝転んで思いを巡らすのに飽きた和人はベッドから起き上がった。
リビングに下りるが雪乃はいない。
そうだ、買い物に行ったんだと思い出して、ソファに腰掛けると時計を見る。
時刻は7時を15分ほどまわっていた。
いつも時間はきっちり守る雪乃とはいえ、気にしすぎかと自分を戒める。
が、和人は何か落ち着かないものを感じた。
もしまた発作を起こしてたら…
腰を下ろしたままあれこれ考えていたが、やがてゆっくりとソファから立ち上がった。
「え……」
戸惑う雪乃に馴れ馴れしい調子で近づくニット帽。
「今ヒマっしょ?俺らとカラオケ行かねー?」
ニヤニヤと薄ら笑いを浮かべながら話しかける。
「いえ、その…ごめんなさい…」
足早にその場を立ち去ろうとした雪乃の腕を、パーカー男の太い腕がしっかと掴んだ。
「!」
「待ちなって」
何ら表情を変えることなく、低い声で言う。
「そーそー、ゆっくりしてけって。ちょーっと付き合ってくれるだけでいいんだよ」
キャップの男もけたけた笑いながら近づいてくる。
「いやっ…!」
男たちの放つ圧迫感に耐え切れず、雪乃は悲鳴をあげた。
そのときニット帽の男が、腕をつかまれたままの雪乃にすっと近づく。
ぱしんという乾いた音が暗い公園に響いた。
- 471 :前スレ931 :05/02/16 00:12:44 ID:y+5xjefp
- 「黙れって」
ニット帽はにやついた顔を崩すこともなく、雪乃を張った手を泳がせた。
雪乃は頬に走った衝撃に、一瞬何が起こったかもわからないままへたりと座り込んでしまう。
「あ……」
立ち上がろうとしても膝に力が入らない。
胸の辺りに重たい痞えがあらわれたように、声も出なくなる。
「静かにしてりゃすぐ済むって」
誰かがそう言うと同時に、三人の男たちの顔に下卑た笑みが浮かんだ。
その時
「!!?」
ざざっと地を駆ける音が響き、次の瞬間ニット帽の男が吹き飛んだ。
「雪乃ちゃん!」
「…にい……さん」
ニット帽の背中に思い切りドロップキックを浴びせたのは和人だった。
「逃げるよ!」
突然のことに驚いた周りが膠着している間に、和人は雪乃の手をとり走り出そうとした。
しかし、
「…あっ」
雪乃は立ち上がることすら出来ずに崩れ落ちてしまう。膝が震えて動かないのだ。
「しまっ…」
和人がそう言いかけた時、パーカー男が巨体に似合わぬ俊敏な動きで走り寄るのが
一瞬目に入った。そして
「が…!」
パーカーは和人の鳩尾に岩のような右拳を打ち込んだ。
- 472 :前スレ921 :05/02/16 00:13:09 ID:gi7pBp3d
- 相変わらず素敵です(´∀`)
日常で汚れる心が浄化されるー(笑
明日からはハンカチ用意しときまつ。
あ、もし希望する方が居ましたら、プロローグぽいやつも貼ります。
て居ませんよね('A`)
- 473 :前スレ931 :05/02/16 00:15:36 ID:y+5xjefp
- 体を貫く凄まじい衝撃に和人は悶えて地に伏せる。
その横で、和人に蹴飛ばされたニット帽がゆっくりと立ち上がった。
和人をねめつけるその目は憎悪と怒りで真っ赤に染められている。そして
「このクソがぁっ!!」
怒号とともに、倒れている和人を狂ったように蹴り飛ばしはじめた。
「糞っ!クソっ!死ねや!死ね!死ね!」
顔を、腹を、背を、ニット帽のつま先がえぐるたび和人は声にならない悲痛なうめき声を漏らす。
「殺すなよーユージ君?あとがメンドーだからさ」
キャップの男がケータイを覗き込みながら言った。
「知ったこっちゃねえよボケ!!」
和人の頭を踏みつけにしながら怒号を飛ばすニット帽。
「こんな程度で死ぬか」
そう言うとパーカー男も、和人の顔面を蹴りつけた。
「んぐっ…」
和人の口の中はかみそりで切られたようにズタズタになっていた。
唇の端から血がつつとたれる。
視界に霞がかかり、もはや自分が何を見ているのかもわからなかった。
しかし、朧な視線の先にただひとつ確かなものをとらえる
座ったままがくがく震えている雪乃の姿だった。
和人はありったけの声――実際には蚊の鳴くような声だったが――で叫ぶ。
「……ゆき………の…ちゃ……逃げ…ろ…」
しかし雪乃は動けない。
彼女の心の奥底に繋がれた錆びた鎖は今なお、その体をも繋ぎ止めて離そうとはしなかったのだ。
- 474 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/16 00:17:58 ID:SN4wM2aa
- よし!パーカーの男
こ ろ し に い く わ !
って思うくらいいいできですね
- 475 :前スレ931 :05/02/16 00:19:45 ID:y+5xjefp
- 「逃げろじゃねーっつのタコ」
和人のわき腹に蹴りを入れながらせせら笑うニット帽。
海老のように丸まってもがく和人の無惨な姿に少し気が晴れたのか、男達は次の標的――雪乃に目を向けた。
彼らの放つおぞましい視線に、雪乃は後ずさる。
しかしそんな態度もよけいに男達の嗜虐心を煽るだけだった。
始終にたにた笑っていたキャップの男が、懐から無機質な鉄の塊を取り出しながら
雪乃の近づき腰を落とした。
「怖い?」
顔に亀裂のような笑みを浮かべて、心底意地の悪い声で尋ねた。
手元の鉄の塊から刃を引き抜き、雪乃の前に晒す。
かざされたナイフの冷たく重たい輝きに、雪乃は硬直した。
「そーそー、大人しくしてるんだよ〜」
白刃の放つ妖しい輝きに射抜かれたかのように身動きできない雪乃のコートのボタンを
キャップ男はひとつずつ切り落としてゆく。
「あは」
狂った獣のような声がキャップの口から漏れた。と、
「や…め……ろぉ!」
突然和人は踏みつけていたニット帽の男の足を払いのける。
無様に転ぶニット帽を尻目に、和人はキャップ男に走りよって突き飛ばし雪乃の前に立ちふさがった。
- 476 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/16 00:20:50 ID:y+5xjefp
- 「この子には……触れさせない…!」
しかしすぐさま起き上がったニット帽は血走った目で和人を睨み付ける。
「ざけんなゴミがぁ!」
ニット帽は和人を横合いに思い切り殴りつけると、倒れた体に馬乗りになる。
そして懐からバタフライナイフを取り出すと逆手に構えて天にかざした。
「にいさん!」
「?!」
雪乃は震える身体を奮い立たせ、いきなりニット帽のナイフを持った腕に飛びかかった。
必死に腕にしがみつく雪乃。しかし
「邪魔だっ!」
男の勢いに振り解かれ、そのか細い体は壁に叩きつけられる。
「ぁ…ぅ…」
「雪乃!」
ニット帽は悲痛な声を上げる雪乃から視線を和人に戻す。
最早その血走った目に宿るのは唯ただ狂気のみだった。
「死ねや」
男は凍えるように冷たい声で言い放つと、唇をきゅうとつり上げた。
そのときだった。
宵闇を切り裂くような強く澄んだ風が、公園内を駆け抜けた。
「やめろ」
それは静かな声だった。
- 477 :前スレ931 :05/02/16 00:23:00 ID:y+5xjefp
- その場にいた者全てが声のした方を振り返る。
夜で満たされた公園内に、闇を纏う2つのシルエットがあった。
不意に雲の切れ間から覗いた満月の光に照らされ、影の主が浮かび上がる。
ひとりは少女。栗毛のショートヘアをした美しい少女。
ひとりは青年。静かな、しかし激しい怒りをその目に宿す青年。
「やめろ」
青年はもう一度口を開いた。
一見女性とも思えるような優男の青年が発したその言葉はしかし、その場にいた
男達を沈黙させるに十分な威圧感を持っていた。
月光を浴びて立つ青年の姿を認めた和人は、よく見知ったその名を呼んだ。
「れ………ん…」
- 478 :前スレ931 :05/02/16 00:26:53 ID:y+5xjefp
- 何故かあがっちゃったっす…すいません… OTZ
一応ここまでにしときます
もし眠らずにいられたら今夜中に残り投下しますね
(さっさと自分の消化しないと神の邪魔になっちゃうんで…)
- 479 :前スレ921 :05/02/16 00:33:25 ID:gi7pBp3d
- >>前スレ931氏
乙です!!
申し訳ない……SSの途中にカキコっちまった……orz
不覚……
- 480 :前スレ931 :05/02/16 00:42:51 ID:y+5xjefp
- >>479
いえとんでもないっす
プロローグ楽しみに待ってますよう
>>474
あんまり気分いい展開じゃなくてすんません…
- 481 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/16 00:49:47 ID:xsc/15bI
- >>480
ほんとに
ネ申すぎますな!!
- 482 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/16 01:11:16 ID:ww+h8xNV
- もう素晴らしい作品ばかりで
つづきが気になって気になって寝れなくて寝不足気味ですよ……
- 483 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/16 03:09:17 ID:YKj41IZf
- おれなんか確実に忘れられてるぜ! 神々、超お疲れ夏!
あー、寝ちゃったかな。 起きろ! K神! がんがりなさい!
- 484 :コンズ :05/02/16 03:37:24 ID:nsB2sVfc
- 遊星すゎん、海中時計すゎん、前スレ921すゎん、前スレ931すゎん、乙です!萌えさせていただきました!!続きを期待しております!!
前スレ921すゎん>プロローグお願いしまふ!
- 485 :前スレ931 :05/02/16 23:45:17 ID:bERi+v2a
- よかった…とりあえず今回は海中さんの邪魔にならずにすみそう
昨日寝ちゃったもんで、今夜こそ続きいきますね
- 486 :前スレ931 :05/02/16 23:46:26 ID:bERi+v2a
- 最初に硬直を解いたのはキャップの男だった。
「なんだお前。刺されたいの?ねえ」
手に持ったナイフを蓮に向け、ゆっくり近づいてゆく。
蓮はその姿を見ると、隣の少女に向けて言った
「柚葉、あの子を」
その言葉に、柚葉と呼ばれた少女はうなずくと雪乃の元に走りよってその手をとった。
「キミ、大丈夫?立てるかい?」
突然の展開に唖然としていた雪乃はその言葉に我に返った。
「あ…はい…」
一生懸命立ち上がろうとする。
「ボクと一緒にちょっと離れてるんだよ、危ないからね」
「で、でも…!」
にいさんと鷹梨さんが…そう言い掛けた雪乃に
「大丈夫」
少女は胸を張って自信たっぷりに言った。
「蓮にいは強いんだから!あんなやつらに負けたりしないよ」
「なあ。ナメてんのかお前。なあ?」
挑発的な口調で蓮の顔先にナイフをかざすキャップの男。
その刃先が蓮の頬に触れようとした時
「!!!」
刹那の出来事だった。
蓮はナイフが握られた方の腕を一瞬の内にとって捻り、キャップの男を地面に叩き伏せた。
そして間接を極めたままその肩に足をかけ、もう一度ぐいと捻った。
ごきり
といやな音がした。
「ぃあアぁaァ亜ァぁァあァ!!!」
肩をはずされたその痛みに、キャップ男は薄汚い叫び声を上げて転がりまわる。
蓮はそんなキャップ男の首の後ろを目掛け、横蹴りを止めとばかりに打ち込んだ。
キャップはびくんと一瞬跳ねると、やがてぴくりとも動かなくなった。
- 487 :前スレ931 :05/02/16 23:48:11 ID:bERi+v2a
- 辺りは森閑と静まりかえった。
残された男たちは顔を見合わせる。
人間としての本能が、彼らに万に一つの勝ち目もないことを伝えていた。
だが悲しいかな。
彼らはそれに従えるほど冷静でも、そして賢明でもなかった。
「シッ!」
短く息を吐きながら地を蹴り一瞬で距離をつめたパーカーが、疾風の勢いの左ジャブを蓮の顔面に向かって繰り出す。
蓮はそれを頭の動きだけで避ける。耳元を通り過ぎた拳がびゅんと風切音を鳴らした。
次いでハンマーのような右ストレート。それは顔面を確実に捉えたかに見えた。
しかし
蓮はストレートを右の腕部で凪ぐように受け流しながら相手の右側へステップイン、
同時にガラ空きの脇腹に強烈な左フックをめり込ませた。
ぼごんという鈍く重たい音が響き、蓮の左拳には骨を叩き折った感触が鮮やかに残る。
「げぇ…ぁ…」
予期せぬ衝撃と痛み、そして肋骨を折られたという意識が、パーカーから戦意を完全に
そぎ落とした。
一瞬前まで軽快なフットワークを刻んでいた膝はがくりと折れ、地に着く。
だが蓮は容赦しなかった。
脇を抑えて呻くパーカーの顔面に思い切り膝蹴りを叩き込む。
奇妙にひんまがった鼻から血を噴き出しながら、パーカーは地面に崩れ落ち、
動かなくなった。
蓮の怒りに燃えた目は最後に残ったニット帽の男に向けられる。
- 488 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/16 23:49:27 ID:PPU/yGED
- (゜Д゜)カッコイイ!!
- 489 :前スレ931 :05/02/16 23:50:18 ID:bERi+v2a
- 「ひっ」
今度こそ、ニット帽は慄いて悲鳴をあげた。
醜態を晒す男に、蓮は一歩一歩ゆっくりと近づいてゆく。
狼狽しながら辺りをせわしなく見回すニット帽。その視界の隅に二人の少女が眼に入った。
雪乃と少女は男の目線にぎゅっと身を引きしめる。
「!しまっ」
蓮がニット帽の、そのあまりにも愚劣な意図に気付いたときは遅かった。
ニット帽はにぃぃっと下卑た笑みを浮かべると、彼女らに襲い掛からんと走り出す。
そのとき
「!?」
急に何かに足をとられ、無様に地を舐めた。自分の足元に目を移すと、自分が先ほどまで蹴り続けていた男の右手が自分の左足を万力のように締め上げているのが見えた。
「テメェっ!は、離せコラぁ!」
ニット帽は和人の頭を片足で何度も蹴り飛ばすが、その手は決して離れようとはしない。
そして和人が右足も掴んでゆっくりと立ち上がったとき、ニット帽は自分がこれから何をされるのかを正確に理解した。
「や…やめろっ」
ひりついた声で哀願するが和人の耳には届かない。
和人はすうと大きく息を吸うと
「うおぉぉおぉらぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ニット帽の両足を抱え込んだまま、独楽のように回転を始めた。
独楽の先端から悲鳴が上がるが、回る勢いは止まらない。
そしてどごんっという激しい音と共に独楽が電灯に叩きつけられると、
潰れた虫のように地面に落ちたニット帽は二、三度痙攣し、やがて沈黙した。
「ぷはぁっ…はぁ…」
肩で息をしながら地面に倒れこんだ和人に蓮は歩み寄って声をかけた。
「おみごと」
「どーも…」
にやりと笑いながら返答すると、和人は差し伸べられた蓮の手に甘えた。
- 490 :前スレ931 :05/02/16 23:58:24 ID:bERi+v2a
- _________________________
「…悪いね、蓮。また肩借りちまって…」
「まったくだ。次からは貸し賃取るから覚悟しとけ?」
「世知辛いねぇ…」
帰りの夜道で軽口を叩き合う青年たちを、少し前を歩いていた二人の少女は振り返った。
「いーお兄さんだね♪」
傷だらけの和人の様子をみた柚葉は、俯く雪乃の顔を覗き込むようにして言った。
「…はい」
悲しそうな、うれしそうな、様々な感情が入り混じった顔で雪乃は小さく答えた。
「雪乃ちゃん」
突然の和人の呼ぶ声に、雪乃はふっと振り向いた。
「雪乃ちゃんは大丈夫だったかい?」
「私は平気です。それよりにいさんの方が…」
「俺はだいじょぶだって。丈夫いからねぇ俺は」
「丈夫い、ねぇ…」
やせ我慢をする和人の様子に蓮はくっくと笑いをこらえた。
「何が可笑しいんだよ蓮。てか何でお前、あの時あんなトコにいたわけ?」
「いや、柚葉にせがまれてさ。食事がてら映画見に瑠々伊駅来てたんだよ。
それでついでに公園に寄ったら…ってわけ」
「ついでに公園に?何でまた?」
「ん?あー…その…」
言葉に詰まる蓮に変わって柚葉が代わりに話を進めた。
「あの公園はね、ボクと蓮にいが結ばれた思い出の場所なんだよ♪」
「むっ…結ば…れ…?」
聞いていた雪乃の顔が真っ赤になる。
「な、なに口走ってんだ柚葉!いや違うぞ和人、その…」
「おやおやまあまあ。やっぱりそーゆーことだったんですね?蓮君。参ったねぇこりゃ」
「いや勝手に参るなそこコラ!」
月夜の晩に四人の嬌声が響いた。
- 491 :前スレ931 :05/02/17 00:02:05 ID:KlB7x/MG
- 夜空を覆っていた雲は晴れ、満月が辺りを照らしている。
結晶をちりばめたかの様な星空を見上げる蓮に、和人は言った。
「…ありがとな、今日は」
「なに。大したことじゃない」
蓮は顔を上げたまま答えた。
「あの時」
和人は冗談めかして言う。
「俺にはお前がジークフリートに見えたよ、蓮」
「バカ言え。俺は舞台をかき乱しただけだよ」
「デウスエクスマキナってか?気取っちゃってまあ…」
「ブリュンヒルトを守ったのはお前さんだよ」
蓮の科白に和人は、少し前を柚葉と並んで歩く雪乃を見つめる。
そして天を仰ぐと、淡く輝く満月に手をかざしながら呟いた。
「我ながら頼りない英雄だよ……まったく」
- 492 :前スレ931 :05/02/17 00:07:59 ID:KlB7x/MG
- とりあえず今はここまでっす
- 493 :雨音は紫音の調べ ◆cXtmHcvU.. :05/02/17 00:12:38 ID:kwDjySo7
- リアルタイムで!
初めてリアルタイムで読みました!!
ありがとうございますっ!
- 494 :前スレ921 :05/02/17 00:27:15 ID:1fTUDrHw
- 二日連続のリアルタイム(・∀・)
乙です〜。
ニヤニヤしちゃう('A`)
俺もそろそろ貼りますね。
とりあえず昨日の続きをあと2、3日くらいで貼ってその後プロローグ、エピローグ貼りますね。
- 495 :前スレ921 :05/02/17 00:28:53 ID:1fTUDrHw
- 夕飯の仕度をしながら夢亜が降りてくるのを待つ。
仕度と言っても、既に夕飯は作り終えてるから箸や皿を運ぶだけだ。
そうこうしてる内に夢亜が降りて来た。
整った顔立ちに透き通るような白い肌、身長は150程度、天然でマイペースなところがある。かなり華奢な体格だ。
ちなみに今日の服装は黒のパーカー、赤と黒のチェックの短めのスカートにニーソックスだ。
「あれー?お父さんはぁ?」
「俺の記憶が正しければ昨日から出張のはずだが。」
「そうだったね。忘れてたよ」
リビングの火燵に収まってまだ少し眠そうに会話を続ける。
- 496 :前スレ921 :05/02/17 00:31:25 ID:1fTUDrHw
- 「自分の父親の事を忘れる妹を持ってなんて兄さん悲しいぞ。小さいのは体だけにしてくれ」
「なっ…私の体は関係ないでしょっ!!そんなコトより早くご飯!!」
そんなコトとは夢亜の体の事なのか父親の事なのか、問いただしたいところだ……
今日のところは火燵をバンバン叩いている育ち盛りの為に夕飯にしてやろう。
「それにしても寝起きですぐご飯食べられるのか?今日はなんとカレーだ!」
「もっちろん♪カレーは夢亜ちゃんの大好物だよぉ♥」
他愛のない会話をしながら兄妹二人で夕飯を食べた。
- 497 :前スレ921 :05/02/17 00:32:59 ID:1fTUDrHw
- 「いやぁ〜、やっぱりお兄ちゃんの作ったカレーは最高だよ〜♪満腹満腹♥」
「そう言って貰えると作った甲斐があるってもんだ。じゃ、片付けは頼んだぞ。」
「はぁ〜い♪お兄ちゃんはテキトーに寛いでて〜」
夕飯も食べ終わり、片付けは夢亜の仕事だ。
普通は逆なのだろうが、夢亜は不器用だ。
夢亜もあまり自分からは料理はしようとしない。
そのかわりこうして片付けや掃除は進んでやってくれる。夢亜は夢亜なりに気にしているんだろう。
- 498 :前スレ921 :05/02/17 00:35:17 ID:1fTUDrHw
- 「夢亜のおかげで食後に楽ができて俺は幸せだよ。じゃあ俺はゆっくりテレビでも見させていただくよ。」
と、さりげなくフォローをしつつテレビをつけた。
夢亜は台所で洗い物をしてるのでもちろん大きめの声で話した。
が、返事が来なかった。まぁ聞こえなかったのなら聞こえなかったでいいだろう。
俺は火燵に潜り込み黙ってテレビを見る事にした。
テレビでは調度夜景の特番がやっていた。星が綺麗なところを紹介する特番らしい。
俺は夜空もそうだが昔から空を見るのは好きな方だ。
- 499 :前スレ921 :05/02/17 00:36:48 ID:1fTUDrHw
- 火燵の暖かさもあってか、ぼーっとしながら暫くテレビを眺めていると夢亜が片付けが終わったのだろうか、台所の方が少し騒がしくなった。
「はーい!食後のおっ茶でっすよ〜♪」
「おぉ、サンキュー。気が効くなぁ」
「食後にゆっくり出来て、お茶まで出てきて、可愛い妹を持って幸せでしょ〜♥」
片付けが終わった夢亜が二人分のお茶を持って俺の隣に割り込んできた。
随分とご機嫌なようだ。
さっきの言葉はしっかり聞こえていたらしい。
こんな事で機嫌が良くなるなんて可愛い妹を持ったものだ。
- 500 :前スレ921 :05/02/17 00:38:44 ID:1fTUDrHw
- だが俺はそんな事を素直に言うような出来た人間になった覚えはない。
「狭い。」
「そんな事ないよ!私痩せてるからねー♪それに、ここに座った方がテレビが見やすいんだよ♪」
夢亜は俺がからかおうとしたのを上手く返したと思い、得意な顔になってみせた。
甘い。
「そうだなー。夢亜は痩せてるもんなぁー。胸とか」
夢亜の顔が一気に赤くなる。漫画ならボッ!!と擬音が出てるだろう。
「な…べ、別に大きければ良いってもんでもないもん!!」
「じゃあ小さい方が良いのか?」
「う……それは……やっぱり、大きい方が良いのかなぁ……?」
- 501 :前スレ921 :05/02/17 00:40:12 ID:1fTUDrHw
- なんて単純なんだ……
「冗談だ。小さくても可愛いと思うぞ。」
「……ホントに??」
頬を赤らめながら上目使いに怖ず怖ずと聞いてくる。
この顔はやばい。さっさと話題を変えるべきだな。
「あぁ。大きければ良いってもんじゃない」
夢亜は顔を上げ、満面の笑みになる。
勢いよく顔を上げたせいで体も動いて火燵が少し揺れた。
「そうだよね!!さっすがお兄ちゃん!わかってるぅ♪」
「ところで夢亜、テレビ見る為にここに座ったのに見なくていいのか?」
- 502 :前スレ921 :05/02/17 00:42:30 ID:1fTUDrHw
- と言ったが実はもうとっくに終わっていて、テレビではホッカイロのCMが流れていたりする。
元々夢亜が来た時にはもう番組も終盤だったが。
「あぁーっ!!終わってる……そんなぁ……」
表情がころころと変わる夢亜は見ていて飽きない。
- 503 :前スレ921 :05/02/17 00:45:16 ID:1fTUDrHw
- 火燵に顔を乗せるかたちになっていてわかりずらいが、夢亜の顔は少し膨れていた。
「お兄ちゃんのせいだよぉ…お兄ちゃんが変なコト言うから夜景見れなかったよぅ……」
夜景の特番が終わってから暫く経つが、夢亜はまだふてくされている。
そんな事を言いつつもちゃっかり未だに俺の横に座っている。
「だから悪かったって。」
もう何度謝っただろうか。二人ともすっかりお茶も飲み干し、暇を持て余している。
夢亜は火燵の中で足をバタバタさせたり、火燵に乗っている顔を膨らませたままぶつぶつ俺の文句を言ったりしている。
- 504 :前スレ921 :05/02/17 00:47:50 ID:1fTUDrHw
- 「ごめんで済んだらこの世には警察も法律も殺し屋もいらないよ……」
殺し屋は全く関係ないと思うのだが、ツッコミを入れるのは間違いだろう。
「じゃあデザートをおごってやるよ。これならどうだ?」
夢亜は大が付いても足りない程の甘党だ。これで大低は機嫌を治す。
現に言った瞬間表情が緩み足のバタバタも止まっている。
「うーん…どうしようかなぁ……」
……おかしい。普段はこの一言でケリがつくのだが、今日はいまいち効き目が薄いようだ。
「とりあえず夢亜に損はないんだし、今から買いに行こう?」
「うん。そうだね…」
- 505 :前スレ921 :05/02/17 00:51:48 ID:1fTUDrHw
- 今日はここまで。
……てこんなヘタレが500踏んじまったorz
清次郎の人っていなくなっちゃったんスかねぇ……
降臨キボン
- 506 :雨音は紫音の調べ ◆cXtmHcvU.. :05/02/17 00:54:07 ID:kwDjySo7
- またしてもリアルタイムで!
今日の僕はものすごく付いてる!!
ありがとうございます!
- 507 :前スレ931 :05/02/17 02:19:54 ID:KlB7x/MG
- 最後です
____________________________
「よいしょ…痛っ…てて」
蓮たちと別れ、家に帰った和人はソファににぐったりともたれた。
「…ちょっと沁みますけど、我慢してくださいね」
雪乃は擦り傷だらけの和人の顔をそっとぬぐう。
「ふう。まったくあいつら、無茶苦茶やんなぁ」
ぼやくように言う和人の傍で、雪乃が目を伏せた。
「…ごめんなさい………わたしの…せいで…」
途切れ途切れに言う彼女を見て、和人は呟く。
「雪乃ちゃんのせいじゃない。それに…」
目を伏せた。
「俺は…何もしてないよ。出来なかった」
「そんなことないです。にいさんは私を…」
「俺は無力なんだよ」
雪乃の言葉をさえぎり、和人は自嘲した。
「結局雪乃ちゃんを守れなかった。つらい思いさせて…はは、何が英雄だ
御笑い種もいいとこだよ」
「…」
- 508 :前スレ931 :05/02/17 02:25:07 ID:KlB7x/MG
- 「優だって………あの子は…俺が殺したも同然だよ。あの子の苦しみも寂しさも辛さも
わかってたのに…俺が守ってやらなきゃいけなかったのに…俺は逃げたんだ。
あの時…何もしなかった自分に後悔してたはずなのに…今度は雪乃ちゃんまで傷付けて、
守ってやることも出来なくて……俺は…」
そこまでいいかけて
不意に唇に走った暖かく柔らかな感触は、和人から言葉を奪った。
それが雪乃からのキスだと気付くのには少し時間が必要だった。
「…!」
そして永遠とも思えた一瞬の後
その唇は、名残惜しそうにゆっくりと離れた。
「ごめんなさい…」
雪乃は消え入りそうな声で言った。
- 509 :前スレ931 :05/02/17 02:27:24 ID:KlB7x/MG
- 「私…ずっと不安だった……私は優さんの代わりなんじゃないかって……でも…それでもよかったんです…
…にいさんはずっと私を守ってきてくれたから…」
ずっと内に秘めていた想いが、言葉が、堰を切ったように溢れ出る。
「だけど…もう我慢なんてできない。誰よりにいさんの近くにいたい……にいさんの
傷を癒してあげられるようになりたい…にいさんが私にしてくれたみたいに……
…だから」
顔を上げ、涙をいっぱいにためた鳶色の瞳で、雪乃は和人を見つめた。
「…ずっと…傍にいてください……」
瞑った目から涙がポロポロとこぼれ落ちた。
和人はその真摯な瞳を受け止めていたが、ふいにふっと目線を下げた。
「俺は…」
下を向いたまま呟く。
「ずっといろんなものから逃げ続けて……それでいろんな人を傷つけて……だから俺はそれをずっと背負って生きなきゃいけないんだと思う……でも」
すうと大きく息を吸う
「………それでも…もし許されるなら」
「…あ」
硝子細工のように華奢な雪乃の身体を、和人はそっと引き寄せ抱きしめる。
「ずっとこうしていたい」
「にい…さん……!」
「俺が雪乃を守るよ……もう…二度と後悔しないために…」
「………はい…………」
拭えども拭えども溢れ出る涙にぬれた雪乃の頬を、和人が指でそっとなぞると
二人は再び口づけを交わした。
そしていつまでもいつまでも
夜が明けるまで抱きしめあっていた。
- 510 :前スレ931 :05/02/17 02:31:27 ID:KlB7x/MG
- …………………………………………………………………………………………………………
その日見た夢を 俺は決して忘れない
始まりは いつものような白い闇
しかし
闇は まるでそれが幻であったかの様に消え失せる
そして瞳に映し出された世界は いのちで溢れていた
ぬけるような青空に浮かぶ雲はどこまでも高く
地をなぜる風は優しく穏やかで
世の果てまで続く紺碧の草原を太陽は鮮やかに、暖かく照らしていた
そんな世界の真中に
彼女は──まるで一輪の花の様に──美しく咲いていた
「優」
- 511 :前スレ931 :05/02/17 02:32:32 ID:KlB7x/MG
-
俺の呼ぶ声に、彼女はゆっくり顔を上げた
柔らかな唇の動きが 言葉を編んだ
「泣かなくても いいんだよ」
その言葉に
俺ははじめて 頬を滴が伝っていることに気付いた
驚きと安堵が生まれた
ああ 俺の涙は 枯れて果ててなんかいなかったんだ
いつのまにか 拭いきれないほどの涙が目に映る景色を虚ろに染め上げていた
わかっていた
彼女と言葉を交わすのは これが最期だということを
朧な視線の先で 優はそっと言葉を紡いだ
それはわかれのことば
俺は答えを返すことが出来ない
胸の奥に何か詰まってしまったかのように 声を出せない
言わなくちゃいけないのに
答えなくちゃいけないのに…
そのとき
俺のすぐ傍に 暖かな ひとの温もりを感じた
そうだ 俺は……俺には
- 512 :前スレ931 :05/02/17 02:33:49 ID:KlB7x/MG
-
「守ってあげたいひとがいるんだ」
気付けば 言葉はあふれていた
「非力な俺を必要としてくれたひとがいるんだ…」
「こんな俺でも…愛してくれたひとがいるんだ……!」
嗚咽にむせぶ俺の言葉は ちゃんと届いていただろうか
「お前のために泣くのはこれで最後にするから……だから」
だから涙は拭かない
「…さよなら」
それはわかれのことば
滲みゆく世界の中で
まばゆい輝きに照らされながら
優は太陽のような笑顔で
俺がずっと思い出すことの出来なかった その笑顔で
ちいさくそっと手を振った
- 513 :前スレ931 :05/02/17 02:37:20 ID:KlB7x/MG
- 終わりです…
長いこと付き合って下さってありがとうございました
- 514 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/17 02:43:31 ID:Jploycs3
- なんてこったーーーー!!
GJ持つ彼神様!! この野郎!!
全然長くなんか感じなかったぞ!! もっとだ!! もっとよこせ!!
(´・ω・`)ハイハイ
とにかく乙可憐様々!! あんた最高!! あいしてる!!
- 515 :前スレ921 :05/02/17 02:45:35 ID:1fTUDrHw
- 激しく乙です!
涙を流さずにはいられねぇ(。つд;`)
- 516 :('A`) 清次郎の人って自分ですか? :05/02/17 03:09:59 ID:Jploycs3
- そういえば誰かが呼んだような・・・。 ずっといましたけどー。
SSは貼ってませんがー。
- 517 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/17 03:27:32 ID:UdHGKjV2
- >>516
あなたはもしやおっぱいのかたですか?
- 518 :Σ('A`) :05/02/17 03:40:49 ID:Jploycs3
- おぱい?!
えと、多分そう。
- 519 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/17 03:48:56 ID:UdHGKjV2
- >>518
よかったですあってて
俺は5人(正確には6人)の創造主です
SS期待してますよ
- 520 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/17 03:58:16 ID:Jploycs3
- ('A`)キタイサレチャタ・・・。
んでも暫くはネタもないんで神々のSS見てます。
いやネタならいくらでもあるんだけどあのヒトらに混じって貼れるようなモンでもなし。
彼らのSSが終わったら保守代わりにでも貼っときます。
だから安心して! 神々のは荒らさない素直なヒト! 暫くは貼らないから!
- 521 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/17 04:01:30 ID:UdHGKjV2
- た、じゃなくて(′A’)さん
自信をもってください
無理ならエロ版に
- 522 :コンズ :05/02/17 04:18:30 ID:KJeDfM3c
- 513>乙だす!次回作期待してますっ!
もう誰でもイイから書いて暮れぇぇ〜い!!
- 523 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/17 04:52:44 ID:FvZh8m1m
- 最期の日まで、あと3日。
太陽が一番高くのぼった頃、俺は病院を訪ねていた。
見慣れた白いドアをノックすると、すぐに返事が返ってきた。ドアノブを回す―――。
「やあ」
春香の担当医は片手を上げ、俺に力無く微笑んだ。
「どうも」
軽く答えてから、差し出されたイスに腰をおろす。
「……妹さんの調子はどうですか?」
「最近は良いです。それでも時々、苦しそうな素振りを……」
「そうですか……。今、どこに?」
「姉に預けています」
「姉?お姉さんなんておられましたっけ」
「はあ……まあ、姉みたいな人です」
「そうですか。……話が逸れましたね。それで、妹さんの病気のことなのですが―――」
「何か分かったんですか!?」
思わず身を乗り出してしまう。担当医は苦笑し、それから重い口を開いた。
「……いいえ。やはりあと3日が限界です。それ以後は再びこちらに置かせてもらいます」
「そうですか……」
少しでも期待していたために、がくっと肩の力が抜ける。
「申し訳ない。君から両親を救えなかった挙句、妹さんまで……」
「いえ……仕方ないですから」
仕方ない。
本当にそうなのか?
お前はそう言って、すべてを諦めているんじゃないのか。
春香に後悔のない人生を送らせる、だと?
それは単に諦めてくれ、ということじゃないのか。
俺たちはうなだれたまま、しばらく黙り込んでいた。
- 524 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/17 04:54:15 ID:FvZh8m1m
- 「かなめおねーちゃん!今のずるいよ〜っ」
「ははは。対処できなかった春香が未熟なのだ」
「む、むう……。あっ!?またそんなところをっ!?」
「ほれほれ」
「ああっ……やだ……やめてよぉ……」
「ほれ、どうした?いつも真人にやられているんじゃないのか?」
「お、お兄ちゃんはそんなことしないもんっ!!」
「なんだ?まだなのか。つまらんな。……今度、真人に教えてやるか」
「え?」
「春香の弱点を真人に教えてやる、と言ったんだ」
「えええっ!?や、やめてよぉ!!」
「はははっ!!ほら、行くぞ!!」
- 525 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/17 04:55:28 ID:FvZh8m1m
- 原因不明の心臓病。万一、発作が起きれば助からない。
俺は担当医に言われた言葉を、頭の中で何度も反芻していた。
状況はあの時からちっとも変わっていない。
空を見上げた。……白いな雲がゆっくりと流れている。
「……いいよなぁ、お前は」
コンビニ弁当の入った袋を掲げ、ぶらぶらと堤防を歩いていく。
「ただ下界を見下ろすだけだもんな。苦しみも悲しみも、何もないもんな」
『そんなことないよ』
声が聞こえた―――ような気がした。
「え?」
『私たちが見下ろせるのは、あなたたちの世界だけだから』
俺は顔を上げた。真っ白な雲がふわふわと泳いでいる。
「……幻聴?」
『嫌でも、目を背けることはできないの』
嫌でも目を背けることができない。
その通りだ。オレは春香から目を背けることはできない。それでも……。
「それでも……俺にはどうしようもないんだ……」
『そんなことないよ』
透き通った、よく響く声は淡々と聞こえてくる。
「……え?」
『真人君ならきっとできるよ』
これはもう、幻聴じゃない!
「だ、誰なんだっ!?お前、どうして俺を知っているんだ!?」
『私は―――』
何か。
ひどく懐かしい声を聞いたような気がした。
急に世界が大きく傾き、重力が無くなったかのような錯覚を覚え……。
「あ」
俺は堤防を転げ落ちていた。
- 526 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/17 04:56:41 ID:FvZh8m1m
- 「ただいま」
俺はよろよろと玄関に倒れこんだ。ぱたぱたと足音が近づいてくる。
「おかえりっ、お兄ちゃ……だ、大丈夫っ!?」
「ああ……平気……」
「どうした、春香?なんだ真人か。おかえり」
「ただいま」
重い体を起こし、ふと春香に訊いてみる。
「あのさ、春香。俺たちがものすごく小さい頃、知り合いに女の子なんていたっけ?」
「女の子?」
春香は少しだけ悩んだような素振りをみせ、
「かなめおねーちゃんのこと?」
と言って、首をかしげた。要さんはきょとん、と目を丸くしている。
やっぱり……知らないか……。
「なんでもない。春香、いい子にしてたか?」
「うんっ!春香、いい子にしてたよっ♪」
「要さんに何かされなかったか?」
「……された……」
なんですとっ!?
「か、要さん!?」
「いやあ……なかなか春香もやるよ」
なに!?その意味ありげな目配りは!?
- 527 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/17 04:57:54 ID:FvZh8m1m
- 春香と要さんは格ゲーで対戦していて、悪質なハメをされ、春香はへこんでいたらしい。
……良かった。ちょっと残念というか、いや、とにかく良かった。
「ふむ。オレは真人が何を想像していたのか気になるな」
……この人は。
「お兄ちゃん?なに考えてたの?」
「ん、なんでもないよ。ほんと」
それから春香の用意してくれたお茶を飲み、一息つく。
「お兄ちゃん……どうだった?」
「ん……特に何も」
「そっか……」
特に何も、とは何も成果はなかった、ということだ。
……くそっ!!春香をどうにかして救えないのか?
あと3日で春香は病院に戻る。そうなれば、春香は死ぬまで病室にいることになる。
それはまさに生き地獄といっても過言ではない。戻れば終わりなのだ。
ハッ……何をいまさら。そのために、担当医は春香をうちへ帰したんだろう?
俺に何かできるわけがないだろう。身の程知らずのガキめ。
「お兄ちゃん」
顔を上げると、春香はにへっと笑った。
「わたし、お兄ちゃんの妹だから。考えてることなんて、すぐに分かっちゃうから」
そう言って、俺の頭を自分の胸に押し付けた。優しく髪を撫でてくる。
「大丈夫。お兄ちゃんのせいじゃないよ」
「春香……」
その、すべてが、愛しい。―――俺はそれを諦めることなどできなかった。
「オレの立ち入る隙が無いぞ……二人とも」
- 528 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/17 04:59:35 ID:FvZh8m1m
- 夜。要さんが帰ったあと、俺と春香は遅めの夕食を取っていた。
「うわあっ♪オムライスだーっ!」
「ははは。今度も自信作だぞ」
「お、おかわりあるっ?」
「もちろん。全部食べたっていいぞ」
「えへへ……♪」
春香はぎらぎらと目を輝かせ、スプーンを手に取った。
「いただきます」「いただきま〜すっ!!」
一口食べてみる。うん、美味い。やっぱり腕はどんどん上がってきているようだ。
「どうだ、春香?美味いだ―――」
そして見た。
……最初は何かの冗談だと思った。
ずっと予測していたこと。ずっと恐れていたこと。何より見たくなかったこと。
だけど、ついにそれは。
現れた。
手のつけられていないオムライス。その手から滑り落ちるスプーン。真っ青な―――。
「春香っ!?」
- 529 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/17 05:00:48 ID:FvZh8m1m
- 『当たり前だが、病気は正確ではない。わずかな誤差はあるに決まっている。
わずかな誤差。それが何日なのかは分からない。もしかしたら、何週間なのかもしれない。
……ある程度、覚悟はしておかなきゃ、な……』
―――とうとう、終わりが始まったのだ。
- 530 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/17 05:02:24 ID:FvZh8m1m
- 「春香っ!?」
俺は椅子から立ち上がり、急いで春香の肩を抱いた。
顔色は真っ青で、心なしか痙攣していて、何より目つきは虚ろで―――。
春香は泣いていた。
瞳からぼろぼろと涙をこぼし、かつ声にならない悲鳴を上げている。
ぎりりっ、と春香の手に力が込められる。爪先が軽く肉に食い込む。
「きゅ、救急車……!!」
俺は電話に駆け寄り、すばやく短縮ボタンを押す。
電話を終えて振り返ると…………春香はすでに呼吸を止めていた。
「―――くそっ!春香ぁ!!返事しろっ!!」
ひゅっ、と春香の口から風がもれる。
「春香ぁ……!!」
……顔色は真っ青を超えて、今や蒼白になっている。
―――死人のそれだ。
俺は愕然とした。
- 531 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/17 05:03:38 ID:FvZh8m1m
- 『お兄ちゃんは普段通りの暮らしを続けて。春香は家でいい子にしてるから』
そんなこと、できるわけないだろ?必ず春香を救ってみせる。
『ずっとお兄ちゃんといたいよぉっ!!ひっく……やだよぉ……!!』
俺がいるから。春香を死なせはしないよ。
『は、春香の胸に飛びついてくるなんてっ!ばかっ!エッチ!!』
飛び込んできたのは春香だろ!?……なあ。
『わたしの命、お兄ちゃんに預けたっ!』
…………なあ、どうして……。
『ありがとう、お兄ちゃん。大好き……』
……どうして、こんなものを見せるんだ……。
……春香との記憶がこぼれ落ちていく。絵画のように切り取られた思い出が消えていく。
嫌だ。……やめろ。もうやめてくれ。……もう、やめてくれ……。
「ああ……春香ぁ……息……しろよぉ……」
沈黙。瞳から、つう、と一筋の涙が頬を伝った。すべてが終わりを告げていく。
……闇夜を裂いて、サイレンが響いてくる―――!
- 532 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/17 05:10:49 ID:FvZh8m1m
- _| ̄|○ 行数制限だと?おかげで何回も書き込んじまったじゃないですか!!
ええと、もちろん続きます。
- 533 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/17 05:26:49 ID:UdHGKjV2
- 早く俺にSSを寝たくても寝れないじゃねーか!
どーしてくれるんだよ!海中さん!
ネ申SSすぎます!
- 534 :前スレ921 :05/02/17 12:58:17 ID:1fTUDrHw
- 「うぅ〜、寒いぃ〜」
もうすぐ3月と言ってもやはり夜風はまだまだ冬の寒さを称えている。
「すぐそこのコンビニだから我慢してくれ」
そうは言っても兄はダッフルコートにマフラー、手袋、帽子と完全防備なのに対して夢亜は起きた時のスカート、パーカーにマフラー、手袋、キャスケットを被っただけで、どちらが寒いかは一目瞭然だった。
「こんなコトなら手抜きするんじゃなかったよぉ……」
すぐそこだし一度仕舞ってしまったので面倒だからとコートを着ないで外に出た事に後悔せずにはいられなかった……。
- 535 :前スレ921 :05/02/17 13:00:23 ID:1fTUDrHw
- 「だから着た方がいいって言っただろ?ま、デザートの為に頑張ってくれ。」
「うん〜……でもやっぱり寒いよぉ〜」
すぐそこまでと言ってもせっかく兄と出掛けるのだ。
一緒に歩こうと思っていたが、寒さに負けた。
夢亜はパタパタ小走りに先にコンビニに行き暖まる事にした。
後ろで笑われた気もするが今は目的地に着く事の方が先決だった。
―――コンビニのドアを開けると途端に人工的な暖かさに包まれる。
「あ、いらっしゃい」
- 536 :前スレ921 :05/02/17 13:02:01 ID:1fTUDrHw
- この店員さんは兄の友達。名前は塚原広司。普段はやる気のない人だが仕事はちゃんとやる人で、変わった性格の持ち主だが笑顔を絶やさぬいい人。
暇らしくカウンターの無駄に細かい所を掃除している。
流石にこの寒さの中外に出歩く人も居ないらしく、客は夢亜だけだ。
「こんばんわ〜。暖かぁ〜い♥」
店内の暖かさを噛み締めながら軽く挨拶しデザート売場へ向かう。
「今日は一人で買い物?」
「すぐお兄ちゃんも来ますよー。」
- 537 :前スレ921 :05/02/17 13:04:01 ID:1fTUDrHw
- 今日は・というのはしょっちゅう来ている証拠だ。
兄があの性格なので夢亜が拗ねる。兄が甘い物おごる。というのはいつもの事だったりする。
「今日は新規でエクレアが入ったよ。クリームもしっかり入ってて美味しかったよ。」
新しい商品が入るといつも教えてくれる。
しかもいつも一言簡単な感想を付けて。彼もまた甘党なのだ。
「よ。広司。いつ来ても居るなー。」
置いて来た兄が着いた。
私より先に友達に話し掛けたのが少し淋しかったりする……
「いや俺週6で入ってるから当たり前。星と夢亜ちゃんも負けてないぞ?」
- 538 :前スレ921 :05/02/17 13:08:02 ID:1fTUDrHw
- 兄は友達からは星(ほし)と呼ばれている。
私は兄の名前は気に入っているけどこのあだ名も結構お気に入り……
「そうか?じゃあ常連の俺らに暖かい飲み物でもおごってくれ。」
実はもう何を買ってもらうか決まっているのだが、兄と話したい反面、友達との会話を邪魔したくない。
私は未だにデザート売場に立っている。
「それより夢亜ちゃんの方行ってやれよ。暇そうだぞ」
「俺の話しは無視かよ……。夢亜ー、何買うか決まったかー?」
広司さんはいつもさりげなく気を使ってくれる。
やっと兄が私の方へ来た。
- 539 :前スレ921 :05/02/17 13:09:49 ID:1fTUDrHw
- 「うん!エクレアがいい!!新しいやつなんだって!!お兄ちゃんは?」
「じゃあ俺も夢亜と同じで。」
こういう時兄はいつも夢亜と同じ物だ。夢亜と星一は食べ物の好みが合うからそれでいいのだろう。
夢亜はエクレアを二つ取りレジへ向かった―――
「広司さーん!お願いしまぁ〜す♪」
「はいはーい♪」
広司さんはもうこのコンビニで二年以上働いている。
エクレア二つでも手際のよさが違う。普段のだらけきった姿からは想像出来ない姿だ。
「あ、これは俺から二人にプレゼント。夢亜ちゃん寒そうだしね。」
- 540 :前スレ921 :05/02/17 13:11:44 ID:1fTUDrHw
- 広司さんは暖かいミルクティーのホットペットを二本袋に入れてくれた。
広司さんは女の子には優しいのだ。
「ありがとぉ〜!苦あれば楽ありとはこのコトだね♪」
寒い思いをして来て得をした。やはり彼はいい人だ!
「流石広司!やっぱり広司は俺の無二の親友だ!」
「どういたしまして。ホットペット二本で友情を再確認されてもねぇ……」
広司さんは少し複雑な笑顔を浮かべた。
「まぁ、また来てよ。じゃ、気をつけて〜。ありがとうございましたー。」
これだけ普通に話しても店員としての挨拶は忘れないところが偉い。
- 541 :前スレ921 :05/02/17 13:20:49 ID:1fTUDrHw
- 「じゃ、頑張れや。」
「頑張って下さいね〜♪」
買い物も済み、夢亜と星一はドアへと向かう。
この時、夢亜はすっかり外の寒さを忘れていた……
――――――――――――――――――――――――――――――
今日は休みなので神たちが降臨する前に……。
次で一応今回の分(プロローグ・エピローグ除く)は終わりですのでもう少しお付き合いお願いします。
- 542 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/02/17 21:01:30 ID:nr6Me8VF
- ちょっと見てないだけでスレの伸びが凄い……。
神々のパワーってのは恐ろしいねぇ……。
しかし、こんなこと、第三弾中盤じゃ全く考えられなかったよ……感無量だね。
- 543 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/17 23:14:03 ID:SqAW3MX4
- 終わりの始まり。
「…………」
薄暗い廊下。リノリウムの床は冷たく、無機質な微笑みを俺に投げかけていた。
そっと、ドアの隙間から中を覗く。
蛍光灯の明かりの下で、いくつもの白衣がせわしなく動き回っていた。
その間隙から……一瞬だけだが、見えた。
様々なパイプに繋がれ、口に呼吸器を付けた―――春香の姿。
小さなその体を侵すように、病魔はじわじわと奪いにかかっている。
春香の命を。
これほどまでに、たった一人の命が……重いなんて。
「うう……」
いつしか呻き声がもれていた。はっ、と顔を上げる。
春香は相変わらず口に呼吸器をはめているし、意識が戻ったようには見えない。
これは、俺の呻き声だ。
「ううう…………」
ぼろぼろと涙がこぼれおちていく。
誰でもいい。
天使でも、悪魔でも、神でも仏でも、なんでもいい。
どうか……春香を救ってください……。
俺は泣いた。
- 544 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/17 23:15:04 ID:SqAW3MX4
- 夜の街は暗く、やはり田舎なのだという事実を改めて思い知った。
病院の屋上。俺は一人、手すりにもたれかかって空を眺めていた。
あの後、担当医にもう少しかかると言われ、しばらく休んだほうがいいと背中を押された。
実際その通りで、俺の体はへとへとに疲れていた。
ふらつく足取りで階段をのぼり、屋上に出て手すりに体を預けたものの。
そこから動く力は、もはや残っていなかった。
今、俺はどんな顔をしているんだろう。
ほら、笑え。春香の意識が戻ったら、まず手を握ってやれ。
それから優しく頭を撫でる。大丈夫だよ、春香。お兄ちゃんはここにいるよ。
…………何が、大丈夫なんだ?
「ちくしょう……」
夜の闇に向かって、ぽつりと呟く。それから夜空を見上げた。
―――月も星も、なにひとつ出ていなかった。
「出てこいよ……頼むよ……」
俺は見えないタクトを振りかざす。そのまま力無く振り下ろす。
空は変わらない。
俺は、魔法使いじゃない。
あれは偶然だったんだ。
俺はどこにでもいる、ちょっとひねくれたガキにしか過ぎない。
自嘲気味に笑う。まったく、お前は本当に馬鹿だな……。
『起きたよ』
「……え?」
「真人君っ!!」
背後からの大声に、俺はびっくりして振り向いた。
屋上の入り口に担当医が立っていた。
「意識がもど―――」
言い終わる前に、俺の体はバネ仕掛けのように動いていた。
- 545 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/17 23:16:05 ID:SqAW3MX4
- 「春香っ!!」
病室に転がり込む。春香に繋がれていたパイプは消え、呼吸器もなくなっていた。
背後で担当医が医者に出ていくように告げる。すぐに病室には俺たちふたりだけになった。
「……お兄ちゃん……」
「春香っ!!ここだよ!!ここにいるよ!!」
「……あは……分かるよ。目、見えるもん……」
ぎゅっ、と強く手を握る。春香は弱弱しい笑みを浮かべた。
「……春香、もうがんばれない……」
「そんなこと言うなよ!!まだ、まだ頑張れるだろ!?」
「ううん……春香、分かるの……」
それからゆっくりと、本当にゆっくりと呼吸をして、春香は呟いた。
やめろ。
言うな。
「次に眠ったら……もう……起きられないと思う……」
―――つう、と頬を涙が伝う。
「春香……幸せ……だったよ。後悔……してないから……」
嗚咽をもらす。
「だから、泣かないで……お兄ちゃん……」
分かっている。泣いちゃいけない。でも、止められない。
「春香まで……泣いちゃう……から……」
俺は涙を必死でこらえた。それから春香の頭を撫でる。
春香は気持ち良さそうに目を細め、やがて言った。
「お兄ちゃん……お願いが……あるの……」
- 546 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/17 23:17:05 ID:SqAW3MX4
- 真夜中の駐車場を、ひとつの影が走っていく。
いや。
よく見ると、それはふたつの影が重なってひとつになっていることが分かる。
背中に誰かを背負った誰かは、駐輪場に近づいていく。
錆び付いた自転車を引っぱり出し、背負っていた誰かを後部に乗せる。
自分は前に座り、ゆっくりと向きを変えていく。
そして。
かなりの速さで、自転車は走り出していった。
「…………」
それを一人の男が見つめていた。白衣を着て、メガネをかけている。
担当医だ。
彼はポケットから本来は使用禁止のはずの携帯電話を取り出すと、どこかへかけ始めた。
しばらく何かを話し、通話を切る。
「私にできることは……これで精一杯だ。すまない……」
ぽつりと呟き。その場に崩れ落ちた。
- 547 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/17 23:18:06 ID:SqAW3MX4
- 闇夜の中、とある部屋の女性が動き出した。
一人の女性が電話で何かを叫び、室内を走り回っている。
しばらくして電話を切ると、車のキーを掴み、部屋から飛び出していった。
闇夜の中、死んだ街が動き出した。
数々の民家から人が飛び出していき、次第にそれは周囲に広がっていく。
人影が民家を訪ね、そこからまた人影が飛び出して、さらにまた隣の家へ―――。
それらを繰り返し、どんどんと人影は増えていく。
闇夜の中、死んだ空が動き出した―――。
- 548 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/17 23:20:25 ID:SqAW3MX4
- _| ̄|○ 長い間つまらない駄文を読んでいただいて感謝しています。
次回でやっと最終回です。
……これ、萌える話じゃないや。
- 549 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/17 23:23:57 ID:UdHGKjV2
- 続きをはやく!飢えてる!涙がでそう!
続きを…早く俺にネ申SSを…!
- 550 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/17 23:25:29 ID:AjGjRSZr
- 俺にも続きを…
ダム決壊寸前
- 551 :堕天使は紫音の調べ ◆cXtmHcvU.. :05/02/17 23:34:44 ID:kwDjySo7
- もう…今にも大泣きしそうな状態です…… (ノд`)゜。゜
- 552 :前スレ931 :05/02/17 23:46:29 ID:zNcO6j6I
- あ、ダメだ。どうやら完全に俺の負けみたいです、海中さん
ラストが気になって気になってしょうがないんで続きくださいっす…
- 553 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/17 23:56:25 ID:6sYkCy8Y
- ……漏れを殺す気かぁ〜!
懐中殿ぉ!早く…早く最終話を見せて下され〜!
- 554 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/18 01:58:57 ID:8ltRfqlH
- すげぇ・・・。
今日中に見れるのかな・・・?
- 555 :前スレ921 :05/02/18 04:18:01 ID:RChPIumj
- やばい……凄過ぎる……やっぱあなた神だ。゚・(ノд`)・゚。
とゆーわけで海中さんの邪魔をしたくないので明日は貼るの控えようと思います。
- 556 :コンズ :05/02/18 10:37:54 ID:iLYM7GZf
- 海中時計様すんばらしすぎます!自分も早く続きがぁ!!
前スレ921様もお願いしまふ
- 557 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/02/18 18:13:03 ID:puWRS2Hx
- 。・゚・(ノД`)・゚・。
そういや、海中時計様のネタをパク……いや、影響されて俺の双子のSSが出来たんだよな……。
ホントに頭が上がらねぇよ……。
- 558 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/18 20:57:57 ID:/rC7efZR
- ああ、こう言うの俺弱いんだ・・・。
読み終えたら数日間は鬱状態と食欲不振が続く。
- 559 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/18 23:03:29 ID:wJObKQim
- ( ´−`) .。oO(長かった。でもここまで書けたのはみなさんのおかげです。ありがとう)
あらすじ
7日前 332-336 340-345
6日前 367-373
5日前 400-408
4日前 461-466
3日前 523-531
終わりの始まり 543-547
それでは泣けるBGMをおかけになって、どうか最後までお読みになってください。
- 560 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/18 23:04:32 ID:wJObKQim
- 終わりの終わり。
「はあっ……はあっ……!」
息も絶え絶えに、俺は春香を乗せて自転車をこいでいた。
急な坂道を全力でのぼっていく。てのひらに汗が滲みだし、ハンドルを握る手が滑る。
しかも病院で盗んだ自転車は錆び付いていて、今にも自壊しそうだった。
「お兄ちゃん……」
春香は俺の腰に手を回し、しっかりと抱きついている。
「大丈夫……!きっと……たどり着ける……!」
真っ暗な空の下、街灯の明かりを頼りに、自転車は進んでいく。
目指す先はもちろんあの場所。
この街で、最も空に近い場所。
あの丘だ。
俺は病室での春香の言葉を思い返していた。
「お兄ちゃん……お願いが……あるの……」
「な、なに!?なんでも言って!!なんでもしてやるから!!」
「あのね……春香、お星様が見たい……」
「お星様?」
「うん。……あと、お月様も……」
春香は首を傾け、窓の外を見た。空は真っ暗だ。
「お兄ちゃんの魔法……見たいな……」
- 561 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/18 23:05:37 ID:wJObKQim
- 「はあっ……ふうっ……!」
全力でペダルを踏みつける。自転車は失速しながらも、少しずつ坂道をのぼっていく。
全身の骨が軋んでいる。肺が活動することを拒んでいる。
だけど、そんなものは今の俺にとっては微々たる問題にしかすぎなかった。
そして、たどり着いた。
あの丘だ。
「は、春香……着いたぞ……」
「うん……。ありがとう、お兄ちゃん……」
「ま、まだ……お礼は早いって……」
俺は無理矢理、呼吸を整える。肺が悲鳴を上げるがなんとか我慢する。
「よ、よし……!いくぞ!」
俺は春香から少し離れ、草むらの上に立つ。
……周囲を風が駆け抜けていく。空は相変わらず真っ暗だ。
俺は両手を広げる。風をその身に受ける。……大丈夫、やれる。
- 562 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/18 23:06:40 ID:wJObKQim
- ―――なあ。
俺たちが見えるか、親父、母さん。
春香、死にそうなんだぞ。
力を貸してくれよ。頼む。
春香はいい妹なんだ。誰にでも優しくて、明るくて。家事も万能だし、文句無しだ。
それに、可愛いし。
そんな春香が、あの時の空を見たいって言っているんだ。
あの時の空だよ。宝石箱をひっくり返したような、あの空。
頼む。
力を、貸してくれ。
親父、あんた天才音楽家なんだろ。
この世のすべてを……奏でてみせろよ。
俺は見えないタクトを振り上げる。
―――振り下ろす!
- 563 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/18 23:07:43 ID:wJObKQim
- そして真っ暗な空は―――――――――――――――――――――何も変わらなかった。
「あ…………」
俺は膝をつく。もはや動けなかった。
……すべてが終わってしまった。
ゆっくりと春香に振り返る。
春香は俺の目を見て、にへっと微笑み……。
……そのまま涙をこぼした。
「ううっ……」
俺は春香に近寄り、優しくその体を抱きしめる。
ぎゅっと抱きしめる。
「もう離さないよ、春香」
「…………うん」
春香は呟き、顔を上げる。
そっと、俺の唇にキスをした。
「ありがとう、お兄ちゃん。今も、昔も、これからも…………ずっとずっと大好きです」
「ああ……」
春香にキスを返す。
「俺も好きだよ。大好きだよ……春香」
春香はうっとりと表情を緩ませ、ぎゅむっ、と俺の胸に顔をうめた。
「えへへ……両想い……だね……」
「ああ…………」
そして。
「…………さよなら…………お兄ちゃ…………」
ゆっくりと。
その瞳を。
閉じ―――。
- 564 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/18 23:08:46 ID:wJObKQim
- ようとしたとき、大地は輝いた。
まず我が目を疑った。
一面に広がる、光、光、光。まさに光の海だ。
そう。
街が、街が光っていた。
「……お、お兄ちゃん……」
「ああ……これは……」
ぶるるるる。
自転車のカゴの中の携帯電話が揺れた。ふたりは呆然とそれを眺める。
しばらくして留守電に切り替わり、メッセージが流れる―――。
「もしもし?私だ。妹さんは無事か?無事じゃなかったら君を殴らせてもらう。
星が見たいんだって?聞かせてもらった。さっき、件のお姉さんに電話した。
あいにく、巨大ライトと懐中電灯とすべての家を利用した地上の星しか作れなかったよ」
担当医だ。担当医はそれだけ言うと、じゃ、と切ってしまった。
ぶるるるる。
「もしもし!?オレだ!!あの医者から話は聞いたぞ!!
町の連中をすべて駆り出した!!どうだ!?すごいだろ!!」
要姉さん。
電話から、様々な励ましの声が語られる。
がんばれ。死ぬな。諦めるんじゃないよ。おまえら、最高だよ。がんばれよ、真人、春香!
俺はよろよろと立ち上がり、携帯電話の電源を切った。
俺たちは。
俺たちは、決してふたりきりじゃなかった―――!
- 565 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/18 23:09:50 ID:wJObKQim
- 「すごいな」
「……ん……」
圧倒的な光。まるで空をはやしたてるかのように、大地が光っている。
俺は空を見上げた。……うん。今度は俺の番だ。
みせてやろう。
もう一度、タクトを振り上げる。
どうしてここまでしてくれるのか。
俺たち本川家は天才音楽家だ。
この寂れた町の名前を、一瞬で世界に広めたのだ。
町の誇り。
この街が生んだ天才音楽家の息子、真人とその妹、春香。
ならば、期待に答えなければ。あの頃のように。
あの頃?
視界が、真っ白に染まっていく。
………………そして思い出した。
俺の名前は本川真人。―――双子だった。
双子の妹の名前は、はるか。
もうひとりの妹だ。
俺と双子で生まれたはるかは、小さい頃から俺に懐いていた。
- 566 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/18 23:10:53 ID:wJObKQim
- 「おにいちゃん!待ってよーっ!」
「あははっ!早くこいよ、はるかっ!」
「待ってよーっ!……ううっ……ぐすっ……」
「あ、泣くなよ!もう、僕がお父さんに怒られるだろ?」
「ううっ……だって……」
「しょうがないなぁ……。ほら、はるか。みてごらん」
「……え?」
そう。俺はタクトを振り下ろす。
たちまち空には星が溢れ、月が輝く。
「うわあ!すごい、すっごーい!」
「えへへ。すごいだろ」
「うんっ!ありがとう、おにいちゃん!」
えへっと笑う、はるか。
「……そして数年で、はるかは死んでしまった。交通事故だった。
悲しみに暮れた親父と母さんは、養子をもらうことに決めた。
それは偶然というか奇跡というか。同じ年に春香という子どもが生まれていた。
親父と母さんは春香を養子にして、悲しみを愛情に変えて、注ぎ込んだ」
息を継ぐ。
「ははっ……。だから小さい頃、俺は春香があまり好きじゃなかったんだ。
オムライス、嫌いだったし。俺の反感を買ってたわけだ」
そして、俺は見た。
真っ白な世界に立つ、魂を分かち合った、双子の妹の姿を。
- 567 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/18 23:11:56 ID:wJObKQim
- 「久しぶりだね、はるか」
「うん」
「やっぱり、運命かな。春香ははるかにそっくりだ。……はは、言ってて混乱する」
「そうだね」
「元気?ああ、失礼だよな、それは」
「そうかも」
「くそっ。なんではるかのこと、忘れていたんだろうな?」
「私が死んで、春香ちゃんを養子にして、それからお父さんとお母さん、亡くなったから」
「ああ、そうだった。だから記憶に鍵をかけたんだった」
「本当はね。お父さんとお母さんが憎かったの。私のこと、忘れていたから」
「ああ」
「春香ちゃんも憎かった。おにいちゃんを独り占めしていたから」
「ああ」
「でも、おにいちゃん、春香ちゃんのこと好きなんだよね?」
「ああ」
「……負けちゃった」
「はは」
言葉はいらなかった。
ありがとう、はるか。
- 568 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/18 23:13:00 ID:wJObKQim
- 大丈夫。
俺は“僕”に戻れる。
あの日に失った力も、取り戻せる。
僕は半身のカケラを再び手に入れた。
ほら、タクトが見えるようになった。
タクトを振りかざす。
―――僕は、タクトを振り下ろした。
瞬間。
ようやく、空は輝いた。
- 569 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/18 23:14:03 ID:wJObKQim
- 「わ……」
春香は目を丸くして、ぼうっ、と空を見上げた。
数多の星々と見事な満月が、優しく世界を照らしていた。
「どうだい?」
僕は春香に振り返る。
「……あはは……やっぱり……お兄ちゃんはすごいよ……」
歩み寄り、その体を抱きしめ、改めて周囲を見回した。
……すごい光景だ。空と地上は呆れるほどの光を放っていた。
「春香」
僕は春香の顔を両手で挟み、固定する。
「好きだ」
「……うん」
そして―――。
「ありがとう……お兄ちゃん。わたし、幸せでした……」
そして、長い長い物語は……僕らの、長い長い物語は。ようやく終わりを告げたのだった。
- 570 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/18 23:15:06 ID:wJObKQim
-
ジリリリリ。
……目覚まし時計が鳴っていた。
僕は腕を伸ばし、乱暴に止める。
昨日で連休は終わり。今日からは登校だ。
ふと、空になった左腕を見る。数日前までは春香の頭があった、左腕。
今は誰もいない。
僕はベッドから上体を起こし、思いっきり背伸びをした。
欠伸をしながら階段を下りる。
半ば意識が覚醒しないまま、リビングのドアを開けた。
「おはよう、春香」
「おはよう、お兄ちゃん」
春香はエプロン姿でくるりと振り向き、両腕をぶんぶんと振った。
「ほらほらぁっ!早く食べないと学校に遅れちゃいますよ?」
「ああ、早く食べないとな」
テーブルに座る。春香はエプロンを外し、向かいの席に座った。
「それじゃ、いただきます」
「はいっ、お水」
「お。さんきゅ」
「えへへ……。一人前のお兄ちゃんますたーだもん。当然だよ」
「なにそれ」
- 571 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/18 23:16:10 ID:wJObKQim
- ふたつ、変わったことがある。
ひとつめは春香の病気。もともと原因不明だったけれど、これまた原因不明に治ってしまった。
町の住民はわしたちの活躍のおかげじゃ!と信じて疑わなかったりする。
……おそらくあの時、はるかが何かをしたのだろう。
今や春香は一人で眠るようになり、家事のすべてを取り仕切るようになっていた。
そしてふたつめ。僕たちは―――。
……いや、話さないでおこう。何だか分かるはずだろうし。
そうそう。最近、新曲を書き上げた。春香が入院していた頃から作曲していたやつだ。
来週、要さんたちと初合わせが行われる。そのうち僕も練習しておかないとな。
そして。
僕が名づけた、この曲のタイトルは―――。
『パンドラ』 ―――終わり。
- 572 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/18 23:17:03 ID:q7aCQjGo
- リアルタイムGJ
全米が泣いた!
- 573 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/18 23:28:21 ID:regz0yie
- ネタがだせない…むしろ自分がちゃんとかきこめてるかもわからない
目の前がぐしゃぐしゃだし自分でなに書いてるかわかんない
とにかく神「海中時計さん」に感動をありがとうございました!
- 574 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/18 23:43:17 ID:wJObKQim
- >>572
ありがとうございます。嬉しいです。
>>573
正直、感動してくれる人がいたら嬉しすぎです。
俺も涙でキーボードが見5jpy
- 575 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/18 23:57:33 ID:W+yB/ujZ
- GJ!
いや〜、久しぶりに感動しました
- 576 :前スレ921 :05/02/18 23:58:38 ID:RChPIumj
- 乙でした!
アレ?目が霞んでよく見えない(つд⊂)
(。゚д゚)……
(つД`)・゚。
俺から言える事は二つだけ……
萌えと感動をありがとう。
次回作待ってます。
涙が止まらねぇ(。ノД`)。゚。
- 577 :[○]総会屋 ◆dlxMjaHjk6 :05/02/19 01:06:13 ID:bFOsHtzX
-
\ _n /
\ ( l _、_ グッジョブ /
.\ \ \ ( <_,` ) /
\ ヽ___ ̄ ̄ ) /
_、_ グッジョブ \ / / / _、_ グッジョブ
( ,_ノ` ) n \∧∧∧∧/ ( <_,` ) n
 ̄ \ ( E) < の .グ >  ̄ \ ( E)
フ /ヽ ヽ_// < ッ > フ /ヽ ヽ_//
─────────────< 予 .ジ >────────────────
∩ . < ョ >
( ⌒) ∩ good job! < 感 .ブ >. |┃三
/,. ノ i .,,E /∨∨∨∨\. |┃ ガラッ 話は聞かせて
./ /" / /" / .\ |┃ ≡ _、_ もらった
./ / _、_ / ノ' / グッジョブ!! \__.|ミ\___( <_,` )< グッジョブ!
/ / ,_ノ` )/ / /| _、_ _、_ \ =___ \
( / /\ \/( ,_ノ` )/( <_,` )ヽ/\≡ ) 人 \
ヽ | / \(uu / uu)/ \
- 578 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/19 03:03:39 ID:Kg1TqN/8
- すげーとしか言えないです。
コレの後じゃ誰も貼れなくなるかもですよ・・・・。
本当、すげー。 すげー。 すげー。
バグった。 しかしすごい。
- 579 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/19 04:45:09 ID:Kg1TqN/8
- よし、余韻をぶち壊して貼るぞ! じゃないと誰も貼れなくなるからな!
僕を踏み台にしてくれ! コレでも読んで自身を付けるんだ!
「下には下がいるもんだな」 って!
- 580 :1:ただの日曜日SS :05/02/19 04:48:12 ID:Kg1TqN/8
- 日曜の朝日を浴びながら、浅い息を繰り返し、小刻みに、跳ねる様に、前へ、前へ。
約800mの折り返し地点。
スピードを落とさずターン。
今まで追い抜いてきた風景が再び現れる。
また、前へ、前へ。
時速制限の看板、曲がり角のミラー、すれ違い際に交わす新聞配達員との挨拶―――。
数年前からずっと変わらない、俺のジョギングの風景。
と、ふいに現れる見慣れない、見慣れた後姿。
短めの黒髪に小さなリボン。
あれは、翔華(しょうか)?
何故翔華がここに?
いつもの朝の散歩――いやそれは無い。
数年来、ジョギング中に会ったことは無い。
俺のジョギングも、翔華の散歩も別の時間、それぞれの時刻を外れることなく続けられてきた。
だったら、何故。
辺りをキョロキョロと見回し、何かを探している様だ。
段々と距離が縮まり、声が聞こえ始める。
「――ゃん、健兄ちゃん!」
- 581 :2:過去と現在のSS :05/02/19 04:49:13 ID:Kg1TqN/8
- 『二人とも、待ってよぉ〜』
『何やってんだ、翔華!』
『翔華、こっちだ急げ!』
『そんなに早く走れないよぉ〜』
小さい頃のことだ。
俺は一組の兄妹に出会った。
毎日毎日同じ公園で会ううちに、いつの間にか俺も兄妹の一員になっていた。
兄の名は健一郎。 妹の名は翔華。
『よ〜し、ここまで来れば大丈夫だな』
『健、翔華がまだ来てないぞ』
『大丈夫だって。 すぐに――ほらな』
『はぁ、はぁ、ひどいよ〜っ。 二人とも翔華のこと置いてくんだもん』
『あのなぁ翔華・・・・今回の作戦は素早い行動がモノを言うんだ。 お前に合わせてたら確実に失敗しちゃうだろ』
『ふえぇ・・・健兄ちゃん、ひどいよぉ〜』
『健、ちょっと言いすぎじゃないか』
『甘やかすな、洋介。 別にオレは翔華をいじめてる訳じゃないんだ。
翔華はやれば出来るんだ。 翔華、もう大丈夫だよな?』
『う、うんっ』
兄は誰よりも妹を理解していて、それを知っている妹は誰よりも兄を信頼していた。
俺も早くそうなりたい。 そう願ってやまなかった。
けれども、兄は、今―――。
- 582 :3:兄妹+1SS :05/02/19 04:50:13 ID:Kg1TqN/8
- 「健兄ちゃ――んっ!」
余程懸命なのか、大分近づいても俺に気付く気配は無い。
「翔華、どうした」
殆ど真後ろに立って声を掛ける。
「あ・・・・洋兄ちゃん!」
若干、涙目なのに気付く。
「あの・・・健兄ちゃんが、昨日からいないの・・・・」
「・・・またか」
気付かれないよう、小さく溜め息。
「放って置いても、今晩辺りにひょっこり帰ってくるだろ?」
週に一度はふらっと出て行き、一晩もすれば帰ってくる。
それがアイツの行動パターンだ。
「でも・・・・事故とかに遭ってるかも・・」
その度に心配する翔華。
「大丈夫だよ。 生まれたばっかの仔犬じゃないんだからさ」
――その度になだめる俺、なだめられる翔華。
「でも・・・なんか、胸騒ぎが・・するの」
しかし、今日の翔華は引かなかった。
「すごく・・嫌な予感、するの・・・・怪我とかしてるのかも」
何故――と思い、一つの変えようの無い事実に思い当たる。
そうか。 明日なのか。
「どうしよう・・・・健兄ちゃんに何かあったら・・・私、私・・・っ」
「――分かった。 俺も探そう」
「あ・・・うん、お願い、洋兄ちゃん」
- 583 :4:ココロ前向きSS :05/02/19 04:51:17 ID:Kg1TqN/8
- 『誰にも見付かってないか?』
『うん、多分大丈夫だよ』
『本当かぁ?』
『う、うん・・・・多分、大丈夫・・・』
『健、やめろって。 それより早く行ったほうがいいんじゃないか?』
『そうだな。 ここでうだうだやってたら見付かっちまう』
『ほら翔華、そこ、気を付けて』
『うん、洋兄ちゃん』
『ほらお前ら、急げよ』
『分かってるって。 ・・・・でもさ健、本当に在ったのか?』
『ああ、間違いないって。 あれはダイヤモンド、ってやつだ』
『ダイヤモンドか・・・重いのか、やっぱり』
『ああ。 でなきゃ翔華なんか連れてかないって。 猫の手も借りたい、ってやつだよ』
『うぅ〜、健兄ちゃんひどい〜』
『いいからしっかり働けよ、翔華。 お前も洋介が家族になったら嬉しいだろ?』
『う、うんっ。 お母さんにダイヤモンドあげて、洋兄ちゃんを家族にして下さい、って頼むんだよね?』
『ああ! それで洋介はオレたちの本物の家族だ!』
『二人とも、ゴメンな・・・・オレのために・・』
『何言ってんだ、洋介。 弟のために一肌脱ぐ、ってやつだぜ』
『そうだよ、洋兄ちゃん』
『・・・えぇ〜、オレが弟なのかよ』
『当たり前だ。 お前が一番新入りなんだからな。
本当はお前が一番下なんだけど、どう見ても翔華よりしっかりしてるから二番目な』
『うぅ〜・・そうだけどぉ。 やっぱり健兄ちゃんひどい〜』
『・・ま、いっか。 じゃあ悪いけど二人とも、オレのために力を貸してくれ!』
『おう!』
『うん!』
- 584 :5:過去に囚われたSS :05/02/19 04:53:23 ID:Kg1TqN/8
- 学校、商店街、駅前。 辺りを見ながら回っていく。
「・・・・見付からないね」
「やっぱり公園だな」
「うん・・・急ご」
気ばかり焦っている様だ。
理由のない焦燥感。
翔華・・・お前は、今も―――。
「健兄ちゃん・・・・」
- 585 :6:廃屋探検SS :05/02/19 04:54:28 ID:Kg1TqN/8
- 廃屋の危なっかしい階段を登り、三階へ。
廊下を箸まで歩いて、健が止まる。
『ここだ』
右手に指差す古めかしい扉。
『すげぇボロいな。 開くのか?』
『思いっきりやればな。 洋介、手伝え』
『おう』
二人掛かりで戸をこじ開ける。
がたん。
『あ、開いたよ』
『よし、中に入るぞ・・・あ、入り口のとこ、気を付けろよ』
見ると、床が今にも崩れそうになっていた。
ひょい、と健が飛び越えていく。
俺もそれに続いた。
『翔華、跳べるか?』
『う、うん、やってみる』
危なっかしく、ぴょん、と跳ぶ。 しかし、着地際にバランスを崩し転びそうになる。
『危ない!』
とっさに手を掴み、引っ張って抱き寄せる。
『翔華、大丈夫か?』
『う、うん・・・ありがとう、洋兄ちゃん』
『気にすんなって』
カァー、カァー。
いきなり響く烏の鳴き声。
振り向くと、俺の身長位ある窓ガラスの向こう、木の枝に烏が止まっていた。
『あはは、笑われちゃったな』
『あはは、そだね』
『おい、お前ら何やってんだー?』
奥から健の声。
『悪い、すぐ行く』
- 586 :7:萌え無しSS :05/02/19 04:55:31 ID:Kg1TqN/8
- 無駄に広い公園を、文字どうり草の根分けて探していく。
一分、十分、三十分。 時間が積み重なるうちに、随分無駄なことをしている様な気がしてくる。
「健兄ちゃん・・・無事でいてね・・・・」
翔華の悲痛とも言える願いが、かろうじて俺を繋いでいた。
きらっ。
視界の隅に映る光の反射。
歩み寄り、それを拾い上げる。
「洋兄ちゃん・・?」
それはアイツがいつも首にかけているタグプレートだった。
「そ、それって・・・・け、健兄ちゃんの・・・っ!
健兄ちゃん、何か事件とか、事故とかに巻き込まれたの!?」
動揺する翔華。
「落ち着け、翔華。 コレ、いつも外れやすいってぼやいてたやつだろ?」
「う、うん・・・健兄ちゃんのことだから、落としたの気付かなかったんだよね?」
自分に言い聞かせるように、翔華は呟いた。
「健兄ちゃん・・・・大丈夫、大丈夫だよね・・・・・」
アイツの無事を祈る翔華は、最早悲痛そのもので―――。
「健兄ちゃん・・・・!」
翔華・・・・お前は今も―――健一郎に縛られている。
- 587 :8:トラウマSS :05/02/19 04:56:41 ID:Kg1TqN/8
- 『うわぁ・・・すごーい!』
『こりゃあ・・・すごい量だな』
『な? これだけあればきっとお母さんも許してくれるぜ』
『そ、そうだねっ』
『しかし・・重いってのは量が多い、てことだったのか』
『ああ。 コレなら分けて運べるから翔華でも役に立つだろ』
『うん、翔華も頑張る!』
持って来た鞄に、ガラス細工のダイヤモンドを詰めていく。
それが俺たちの願いを叶える魔法の石だと信じて。
『よし・・・翔華、それ背負って立ってみろ』
『え・・・まだ入るよ?』
『いいから』
『う、うん・・・わわ、重いよぉ・・・』
『やっぱりな・・・ほら、こっちに入れなおせ』
『う、うん・・・この位かな』
『健、こっちは詰め終わったぜ』
『よし・・・こっちもオッケーだ』
『結構重いな・・・・翔華、あの床跳べるか?』
『多分・・・』
『まず洋介から行け。 で、鞄だけ渡してその後に翔華が跳ぶんだ』
『よし、それでいこう』
『せ〜の、よっと・・・・と』
『洋兄ちゃん、大丈夫?』
『おう。 よし翔華、鞄渡せ』
『うん―――』
ぎしっ。
軋んだ床の音を、今でも憶えている。
- 588 :9:物理的SS :05/02/19 04:57:45 ID:Kg1TqN/8
- 『あ――』
崩れる床。
手を伸ばす俺。
届かない。
健一郎の手が、翔華に届いた。
そのまま引っ張り寄せて――。
何も無い方向へ翔華を送り出す。
物理法則に作用反作用というものがある。
いわく、力が作用するときには必ず反対方向に同等の力が発生するという。
また、同じ加速度のときならば、質量が多いほど力は増す。
リュックいっぱいにガラス細工を積んだ健一郎は、その力を制御出来る訳もなく――。
ガラス窓を突き破り、宙を舞った。
―――鈍い音。
時が止まった。
何が起こったのか、分からなかった。
- 589 :10:ココロの時SS :05/02/19 04:58:47 ID:Kg1TqN/8
- 『健にい・・・・ちゃん・・・・?』
数秒後か、数分後か。
翔華の声が俺を現実に引き戻した。
『け・・・健!』
廃屋を駆け下りていく。
『健! 健!』
あの木の根元。
『健、け――』
赤。 赤。 赤。
赤にまみれた、人形が一体。
『け・・・・ん・・・・・・?』
虚ろな目で、ただ宙を見つめて。
『おい・・・嘘だろ・・・・・?』
『けんにいちゃん・・・・・?』
上から、翔華の声。
『翔華! 見るな!!』
見せてはいけない。 何故か真っ先にそれが浮かんだ。
『けんにい・・・・』
『翔華! 見るな!! 翔華っ!!』
『う・・そ・・・・けんにい・・ちゃん・・・・・?』
人形は動き出すこともなく。
『う・・・・わぁぁぁ――――っ!!!』
ただ翔華の慟哭を聞き続けて。
そして、彼女の時が止まった。
- 590 :11:犬SS :05/02/19 05:00:02 ID:Kg1TqN/8
- がさがさっ。
草むらから物音。
「あ・・・健兄ちゃん!?」
「・・・・・・・」
「健兄ちゃんでしょっ!? 健兄ちゃん!!」
「・・・・ほら、出て来いよ」
がさがさ、がさっ。
「健兄ちゃん!!」
駆け寄り、抱きつく。
「心配したんだから・・・健兄ちゃんに何かあったら・・・私、私ぃ・・・っ!!」
「・・・・・?」
きょとん、とした顔。 なぜ翔華が泣いているのか分かっていないようだ。
ぺろっ、と涙を舐め取る。
「健兄ちゃん・・・・無事で、ひっく、無事でよかった・・」
想いが伝わったのか。 ようやく口を開く。
「わうっ」
元気を出して、とでも言うように、その犬は翔華の涙を、頬を舐め続けた。
- 591 :12:PTSDSS :05/02/19 05:01:12 ID:Kg1TqN/8
- 兄は誰よりも妹を理解していて、それを知っている妹は誰よりも兄を信頼していた。
兄を失った妹の心は、粉々に砕けた。
何をするでもなく、兄の名を呼び続けていた。
俺はといえば、何も出来ない自分を憎むことしか出来なかった。
ある日、妹に一匹の犬があてがわれた。
何でもいい、生きるという行為に復帰するきっかけになれば――。
そう願ってのことだった。
妹は、粉々になった心を辛うじて繋ぎ止めた。
そして、その犬は彼女の兄になった。
「健兄ちゃん・・・良かった・・・・よかったよ・・」
泣き続ける翔華を、俺は直視することが出来なかった。
憐憫、後悔、怒り。 全てのような、どれでもないような感情を持て余していた。
「また・・・・居なくなるのは・・やだよ、健兄ちゃん・・」
それは、ただ単にこの犬の放浪癖へのつぶやきだったのかもしれない。
だが、俺には――二度目の別れに対する怯えに聞こえた。
- 592 :13:流れ出す時のSS :05/02/19 05:02:32 ID:Kg1TqN/8
- 泣き止み、帰り道。
俺は聞かずには居られなかった。
「翔華・・・・明日は何の日か知ってるか?」
答えて欲しかった。
健一郎のために。
翔華のために。
俺のために。
「明日・・・・? なんだろ? 分かんないや」
けれども、願いは叶わなかった。
「・・・・・そっか」
「何の日なの?」
「いや・・・・何でもないよ」
翔華・・・それが翔華の望みなら・・・・俺はそれに従うよ。
「何だろ〜・・・? 何かあった気もするんだけど」
「いいんだ。 忘れてくれ」
それが、きっと翔華のためなんだ。
「でも・・・何か気になる・・・・・あれ?」
「翔華・・・?」
「あれ? あれれ?」
泣いていた。
声もあげず、ただ涙を流していた。
「あれ? な、なんで? 何で涙が・・・?」
―――それが、俺を動かした。
あるいは無意識の悲しい記憶が揺さぶられただけかもしれない。
けれども、俺には翔華が今の自分を嘆いているように見えた。
- 593 :14:俺の屍を超えていけSS :05/02/19 05:07:32 ID:Kg1TqN/8
- 「な、何で泣いてるんだろ? え、えへへ、おかしいね、健兄ちゃん?」
「わうっ」
「あれれれ? ま、また涙が・・・」
翔華・・・そろそろ歩き出そうか。
俺も、勇気を出すよ。
「・・・・・・翔華、明日暇か?」
健一郎が死んだ、明日。
その日から止まった時を、動かそう。
「え? う、うん、暇だよ」
兄は誰よりも妹を理解していて、それを知っている妹は誰よりも兄を信頼していた。
俺も早くそうなりたい。 そう願ってやまなかった。
「ちょっと付き合ってくれないか?」
「え・・・へへ〜、で〜とのお誘い?」
けれども、兄は、今はもう居ない。
だから、俺が兄になるんだ。
「まぁそんなとこかな」
誰よりも翔華を理解して。
「え・・・・? あ、う、うん、そうなの? じゃ、じゃあ準備しておくね」
誰よりも翔華を想って。
「そんなに準備とかはいらないぞ。 色気の無いところだからな」
誰よりも翔華と一緒にいて。
「え、何処行くの?」
「墓参り、かな」
「おはか・・・?」
「ああ。 一緒に、行こう――」
健一郎、見ていてくれ。
お前以上の兄になってみせるよ。
明日、俺たち三人の、時が動き出す。
- 594 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/19 05:17:05 ID:Kg1TqN/8
- 以上です。
マネして真面目な話を書いてみました。 出来はあぼーん。 ('A`)
ふふふ、これならばみんな自身を持って貼れるハズだ。
自分なりにせいいっぱいSS的なものを書いたつもりですが、出来はあぼーん。 (AA略
台本でいいです、もう。 そっちのが楽だし。
ってかこれPTSDじゃないね、トラウマだけど。
てかてか、血のつながったあにいもうとモノ書いたことないや。 このスレ的にあぼ(ry
まぁいつもどうり「:」をNGにしておけばおkですから。 多分。
では、次回からはもっといいSSが貼られる予定なので、職人ならびに神さま、あとはよろしく。
へたれ台本をたれ流してるお姉さんは逃げますから。
言い訳がウザいね。 あぼーん。 逃げ逃げ。
- 595 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/19 05:21:59 ID:b/5C8TBX
- 愚痴っていいですか?
さらにはりづらく感じるのは決して俺だけじゃないな
もうエロ妹スレのSS書くのいやになってきたわ俺
三人の神SS+神SS見せられたら書けないよ(´;ω;`)
マジで…
- 596 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/19 07:22:46 ID:PyVdSitL
- 今さら言う必要もないだろうけど、言わずにはいられない
ここのSS、ヘタな小説やゲームより泣ける(さらに萌える)
- 597 :前スレ921 :05/02/19 07:52:00 ID:fwguD8yi
- 甘いですよ清次郎の人!
下には下がいるもんです!
何を隠そう一番下はこの漏れさorz
一番下というものをお見せしましょう
……貼りづらい('A`)
- 598 :前スレ921 :05/02/19 07:53:16 ID:fwguD8yi
- ドアを開けた瞬間、笑顔で広司に手を振っていた夢亜の表情が凍り付いた。
「どうした?」
この質問の返答はわかっているが一応聞いておく。社交事例のようなものだ。
「……さ……さぶぅい……」
予想以上の反応。ついさっきまで笑顔で手を振っていたのに今はその細い両腕を自分を抱き締めるようにして震えている。
俺達をカウンターから見送っていた広司も密に吹き出していた。
こういう事をされるとツッコミたくなってしまう……折角テレビでの件を忘れたようだしここで夢亜の機嫌を損ねるような事はしない方が良いだろう。
- 599 :前921 :05/02/19 07:55:21 ID:fwguD8yi
- ともあれ夢亜と星一は家へと歩き始めた。
「夢亜、寒い中悪いが、寄り道してもいいか?」
「お兄ちゃん……私を殺す気なの……?」
夢亜から早く帰りたい・という雰囲気が漂ってくる。
自分の体を両腕で抱え込み、細い体はぶるぶると震えている。
だが、今ここで夢亜を帰らせる訳には行かない。
星一は着ているダッフルコートを脱ぎ、夢亜に掛けてやる。
「っ!?……え?」
「それ貸してやるから少し寄り道に付き合ってくれ。」
「でも、それじゃお兄ちゃんが寒いよ!!」
「俺はいいから。付き合ってくれるよな?」
- 600 :前スレ921 :05/02/19 07:56:57 ID:fwguD8yi
- 「う…うん。ありがとう。」
夢亜は訳のわからない。という顔をしている。
「サンキュー。この寄り道は夢亜と一緒じゃなきゃ意味がないからな。」
「そ、そうなの……?ねぇ、どこ行くの?」
夢亜は相変わらずきょとんとしている。俺の普段とは違う態度に戸惑っているのだろう。
「……着けばわかる。」
そう言って俺は家とは違う方向へ歩き始めた。
―――10分程度して星一は歩みを止めた。夢亜もワンテンポ遅れて、星一の横で止まる。
「着いた。」
「着いたって……ここ、海だよ?」
- 601 :前スレ921 :05/02/19 07:58:18 ID:fwguD8yi
- そう。ここは海だ。
家からさほど離れていないが、この辺りは民家も無く、普段から人通りも少ない静かな所だ。
調度風も止み、穏やかな波の音だけが辺りに響く……
「上だ。」
「上??……あっ」
兄に促されて見上げて空は、雲一つない夜空に無数の星とほんの少し掛けた穏やかな月が佇んでいた。
「うわぁ〜〜〜……」
家から見る夜空とは比べものにならない。
うっすらと軟らかな蒼みを帯びた銀の月。
夜空に宝石をちりばめたような星……いや、ちりばめたというより敷き詰めたと言った方が正しいかもしれない。
そして穏やかな波の音。
- 602 :前スレ921 :05/02/19 08:00:17 ID:fwguD8yi
- 夢亜は思わず感嘆の声を漏らし、見とれてしまった。
「まぁ…アレだ…テレビを見れなかったお詫び……だな。どうだ?」
「凄い!!こんなに綺麗な星空初めてだよ!!」
我を取り戻した夢亜は感激の言葉と共に兄の方へと向き直る。
と、兄がいつもと違う事に気付いた。
普段は何でも冷静にこなしてしまう兄が、もどかしそうな、歯痒そうな顔をしている。
普段しなれない事をして、照れているのだろう。
長年同じ家で暮らしている夢亜でも初めて見る。
「そっか。それは良かった。ここは俺のお気に入りの場所だからな。」
- 603 :前スレ921 :05/02/19 08:02:50 ID:fwguD8yi
- 星空を見上げた兄の口調はとても穏やかなものだった。
こんな兄の姿は初めてだった。いつもの冷静な顔でもふざけた顔でも無く、少し子供っぽさの漂うぎこちないが軟らかな照れ笑い。
「お兄ちゃんのお気に入りの場所なのに、私に教えちゃっていいの?」
余り自分の事を話さない兄の秘密を知ってしまったみたいで、少し不安になる……
「言ったろ?夢亜と一緒じゃなきゃ意味がない・って。夢亜だから教えたんだよ……」
そう言った兄の顔からはぎこちなさはもうなく、穏やかな優しい顔で私を見ていた。
- 604 :前スレ921 :05/02/19 08:04:19 ID:fwguD8yi
- いつも私の前に居た兄。追い掛けても追い掛けてもいつも私の前にいた兄が今、私を見ている。これが兄ではなく、本当の星一の姿……
そう思ってしまったら急に恥ずかしくなってきた。
「そ、そんな……あ…ありがとう……」
それだけ言って兄から顔を反らす。
冬なのに顔が熱い。頭がぼーっとしてしまって立っているのも辛い……
「……折角だからそこに座って広司がくれたミルクティーでも飲んでくか。」
そう言いながらスタスタと防波堤の方へと歩いて行く。
「お兄ちゃん!!」
- 605 :前スレ921 :05/02/19 08:06:45 ID:fwguD8yi
- 夢亜は防波堤へ向かう兄へ向かって走り出した。
そして兄が振り向く間もなく背中に飛び付く。
「だぁーい好きっっっ♥」
言葉にすればたった一言……それでもぼーっとする頭の中で考えた私の精一杯の気持ち……
「俺もだ……夢亜…大好きだよ」
聞き逃してしまいそうな程、穏やかな波の音よりも小さな声、それでも私にはしっかりと聞こえた―――ずっと聞きたかった。たった一言―――
夢亜は力一杯兄を抱き締める。離れないように……精一杯の笑顔の瞳から流れる涙が見えないように……
- 606 :前スレ921 :05/02/19 08:20:25 ID:fwguD8yi
- これで本編は終わり。
これが俺の限界orz
マイPCよ……なぜあぼーんしてしまったのさ……
しかもいっつも『大好き』で締めてんの('A`)ワンパターン
神達が舞い降りるまでの繋ぎ程度にでも読めて貰えれば幸いです。
萌えない泣けないつまらない。三拍子そろってるorz
SS書いてみようかな・って人。俺を踏み台にしてがんがって書いてみませう。
踏み台にすらならないかもね('A`)
おれのレベルじゃ他の人達の足元すら見えないよママン。゚・(ノД`)・゚。
- 607 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/19 11:20:53 ID:runVYSLl
- 記憶力のない俺にはどの話か分からなくって来ている…。
しかし断片だけでも十分萌える!さすが最強の神集団。GJ!!
- 608 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/19 17:43:56 ID:Kg1TqN/8
- 対処例 1
1 ぞぬをダウソ。
2 読みたいヒトのコテをコピー。
3 フィルタのHN欄にコピー。
4 フィルタかける。
5 (゜д゜)ウマー
スレタイ的には
921さんのSS ○
おいらの台本もどき ×
何だかんだで「大好き」に勝る萌え台詞はないっすよ。 最高。 (´д`*)
- 609 :堕天使は紫音の調べ ◆cXtmHcvU.. :05/02/20 02:05:03 ID:PpJ3dGJT
- みんなすごくレベル高い…
もう小説家だ…… (ノд`)゜。゜
- 610 :コンズ :05/02/20 15:13:41 ID:XYqH5QjX
- いんや、最早小説家の域を超えちまったようだ!すばらし過ぎる!
どなたか投下お願いしまふ!!
- 611 :前スレ921 :05/02/20 19:41:28 ID:Lep92P5F
- あんまり褒められるとニヤニヤし過ぎてとろけちゃいます(=´∀`=)
>>コンズ氏
では投下させていただきます。
短い&スレ違いであまり引きずりたくないのでプロローグとエピローグ一度に貼ります。
- 612 :前スレ921 :05/02/20 19:45:11 ID:Lep92P5F
- 暗闇に居た。
何も見えない、光の無い世界。
気付いた時にはそこに居た。
(ここは…どこ……)
当然な疑問。
ただ、声に出したつもりだが、声が出ていたかわからない。
何もわからず立ち尽くしている。そう、何も……
名前すらわからない。
不安も恐怖も感じない。
何も感じない。ただ、胸に空いた気持ちを除いては―――。
何か足りないような……とても大切なものを忘れているような……。
暗闇の恐怖も不安も感じないのに、この気持ちだけが気になって考え込んでしまう。
『――夢亜――』
- 613 :前スレ921 :05/02/20 19:46:15 ID:Lep92P5F
- 突然声がした。
いや、声というより心に直接響いてきたと言った方が正しいかもしれない。
夢亜。
そうだ。私の名前。
しかし、声の主はいったい……
そう思った瞬間、突然景色が変わった。
暗闇にぽつぽつと淡く青白い、小さな優しい光が瞬き始めた。
光は瞬く間に広がっていきすぐに辺り一面に広がった。
幻想的な風景。まるで満天の星空の中に舞い降りたような、とても綺麗だ。
何となく、近くの淡い光に触れようと手を伸ばす……
光に手が触れた。
それと同時に今まで無かった感情が沸き起こる。
- 614 :前スレ921 :05/02/20 19:48:29 ID:Lep92P5F
- 不安……広い世界に一人だけ取り残されてしまったような不安。そして恐怖。
苦しい……意識が朦朧(もうろう)としていく……目の前の『世界』が霞んでいく……
意識が薄れていく……恐い……
(……お兄……ちゃん……)
- 615 :前スレ921 :05/02/20 19:50:53 ID:Lep92P5F
- 幻想的な風景。
まるで満天の星空の中に舞い降りたような、とても綺麗な風景。
気付いた時にはそこに居た。
指先に触れていた淡い光―――かけがえのない思い出
淡い光―――それは記憶
兄との思い出……
胸に空いた気持ちは消えていた。
しかし何か足りない………
とても大切なもの………
記憶の中に居ても
ここには居ない兄
瞼が熱い……
瞼の熱は液体となり少女の頬を伝う
―――お兄ちゃん―――
返事など来るはずはない
液体が雫となり頬からこぼれ落ちる
そして地面へ―――
『―――夢亜―――』
- 616 :前スレ921 :05/02/20 19:56:39 ID:Lep92P5F
- 聞こえるはずのない声
少女は叫ぶ
『お兄ちゃん!!』
少女の瞳から大粒の涙がこぼれた。
―――その瞬間
光達が騒ぎだす
強風に流されるように私の周りを飛び交う
光達は重なり、次第に大きくなってゆく
いつしか光はひとつになり少女を包む
何故だろう
暖かい
心地良い
同時に強い眠気が訪れる
意識が薄れていく―――
- 617 :前スレ921 :05/02/20 19:58:38 ID:Lep92P5F
- ………暖かい。
あの光だろうか……?
―――
何か聞こえる……
「夢亜……夢亜……っ」
兄の声。
重い瞼をゆっくりと開く。
白い天井が見える。
「夢亜……」
兄の声が震えている。
「……どうしたの……?」
突然、手が濡れた。
ゆっくりと頭を動かし兄を見る。
「夢亜……良かった……」
泣いている……あの兄が……
- 618 :前スレ921 :05/02/20 20:00:04 ID:Lep92P5F
- 何故かわからない……
「お兄ちゃん……泣かないで……」
突然兄に抱き締められる。
「夢亜ぁ……」
「お兄ちゃん、私ね、夢を見てたの。
お兄ちゃんと星を見た時の夢―――」
ここが病院だという事
私が事故にあったという事を知るのはこの後だった。
- 619 :前スレ921 :05/02/20 20:20:24 ID:Lep92P5F
- これにて今回のSS(台詞集)終了です。
皆さんこんなヘタレに長い間お付き合いいただきありがとうございました。
━夢亜のまとめ━
プロローグ>>612-614
第一話 >>456-459
第二話 >>495-504
第三話 >>534-541
第四話 >>598-605
エピローグ>>615-618
- 620 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/20 20:33:10 ID:zfiDSEHP
- 最初っから順番どうり貼った方がよかったと思いました。
ともあれ、ぐっかれ。
携帯からなんてすごい。 僕には真似出来ない。
次回作待ち。
- 621 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/20 20:42:37 ID:zNLAeDKx
- グッジョブ!
こころゆくまで萌えパワー充電さしてもらいました
これで心置きなく受験に迎えます
- 622 :前スレ931 :05/02/20 22:31:09 ID:F/fNqW10
- お見事でした、921さん
遅れましたが、スバラシイです海中さん
ぬ〜…俺も次こそ誇れるようなSS書こう…
- 623 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/20 22:42:13 ID:zfiDSEHP
- あんまり頑張られると貼りづらくなるヒトが何人か・・・あ、僕だけっすか? そうですか。
そんなわけで、そろそろもとの馬鹿みたいな感じの台本を貼っつけたくなってきた。
理由1 みんなのために犠牲になろう! 踏み台精神! (建前)
理由2 真面目なのは正直、自分にはもう無理。
理由3 SS風に書くのめんどい。 台本を想像で補ってこそ萌えイズム! がんがれみんな!
理由4 単に貼りたい。
ただ、こーいうの貼ると嵐が来そうでやなんだよなぁ。
神とか新規のヒトとかに迷惑かかりそう。
でも多分貼る。
- 624 :前スレ931 :05/02/20 22:50:20 ID:F/fNqW10
- >>623
どしどし貼っちゃって下さい!
待ってますよう?
- 625 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/20 23:10:14 ID:zfiDSEHP
- 待つと言われたら待たせない。
それが僕の戦略。 いみーでぃえっとりぃに貼りゅ。
- 626 :1:相談SS :05/02/20 23:12:14 ID:zfiDSEHP
- 「鉄、俺の相談に乗ってくれ」
「あ? 何だよいきなり」
「保品川って男、知ってるか」
「保品川・・・・保品川先輩か? 陸上部だろ?」
「そいつってさ・・・好みのタイプとかって、あるのか?」
「は?」
「どういうやつが好みなんだ? 年下派か? 奥手なのは苦手か? 林檎は好きか?
どーいう風に告られたら落ちそうだ? 付き合ってる奴はいないんだよな?」
「お、おい、史郎、お前まさか・・・」
「まさか・・・なんだ?」
「・・・・保品川先輩、狙ってんのか?」
「・・・・・はぁ?」
- 627 :2:頼られSS :05/02/20 23:13:15 ID:zfiDSEHP
- トンでもない誤解を受けるところだった。
「よう、俺の名前は小野寺史郎。 家族構成は両親と妹が一匹。 その妹が今回の騒動の原因なんだ」
「・・・・・おい、何を言い出すんだ」
「うるせぇなぁ、折角人が物語の導入風に事情を説明しようとしてんのに」
「悪かったよ、続けろ」
「いや、もう飽きた。 掻い摘んで説明するとな――」
「おにいちゃん・・・・あのね?」
食事が終わって部屋でくつろいでいると、ドア越しに声が掛かった。
「その・・・相談が・・・あるんだけど」
「・・・・まず部屋に入ってきたらどうだ」
「ふぇぇっ!? お、おにいちゃん、今の聞こえてたの!?」
「は? ・・・・独り言・・?」
「あ、あの・・・・・入る・・・・ね?」
おずおずと開けられるドア。
「あ、あのね・・・その・・・相談が・・・あるんだけど」
「それはさっき聞いた・・・・ってか、何してたんだよドアの前で」
「れ、練習・・・相談、持ちかける・・・」
「はぁ・・・?」
「あの・・・・ね?」
視線をさまよわせて、もじもじもじもじ。
段々と頬が赤くなってきている。
「その・・・おにいちゃんは・・保品川さんて・・・知ってる?」
「知らん」
「にゃうぅぅ・・・・そう・・・」
がっくりとうなだれ、帰ろうとする。
「まぁ待て、話くらいなら聞いてやるから、そんなにしょんぼりすんな」
「う、うん・・・・じゃあ、聞いてくれる?」
「おう」
- 628 :3:にゃうぅSS :05/02/20 23:14:15 ID:zfiDSEHP
- 「あの、ね・・・・?」
「おう」
「かなるね・・・?」
「おう」
「その・・・・ね?」
「おう・・・・」
「・・・・にゃうぅ」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「はよ言え―――っっ!!!」
「にゃうぅっっ、ごめんなさい〜〜っっ!!」
飛び退き、部屋の隅にうずくまる佳奈留。
「ごめんなさいぃ、ごめんなさいぃ・・・・」
「あ〜・・・いや、悪かった。 つい、な・・・だから泣かんでくれ・・・・」
「にゃうぅ・・うん・・・」
「と、言う訳だ、鉄」
「さっぱり分からん」
「だろうな。 肝心のところを話してない」
「殴るぞ」
「お前の姉さんに言いつけるぞ」
「関係有るか」
「無いな。 よし、続きだ」
「結論だけ言え」
「その先輩を今日の放課後、呼び出してくれ」
「お前はどうしてそう極端なんだ」
「遺伝だ」
「遺伝か。 妹さんには受け継がれてないようだがな」
「文句ならファラデーに言えよ馬鹿」
「メンデルだ大馬鹿野郎」
- 629 :4:告白SS :05/02/20 23:15:17 ID:zfiDSEHP
- 「あのね・・・・かなるね・・・す、好きに・・・・なっちゃったみたい・・なの」
三十分くらいしてから、ようやく佳奈留が口を開いた。
「・・・・何だって?」
が、ちょいと読み込みエラー。
「だ、だから・・・かなる・・・好きに・・なっちゃったみたい・・・」
「はぁ? 佳奈留が? 何を?」
「だ、だからぁ・・・その・・・・」
「俺か?」
「ちっ、ちち違うよぉっ! その、保品川さんのこと!!」
「・・・・・へぇ」
「にゃ・・・・にゃうぅ〜〜〜っっ!!」
みるみる顔が赤くなる。
手で顔を隠そうと試みるも、全く隠れない。
「にゃうっ、にゃうぅ〜っ!」
ばっ、とベッドに逃げ込み、布団にくるまってしまう。
・・・・そこ、俺のベッドですが。
「へぇ・・・佳奈留が恋を、ねぇ・・」
「にゃうぅっっ」
「佳奈留、そのままでいいから話せよ」
「にゃう・・・うん」
佳奈留がその男を見初めたのは、何でも我が高校の文化祭だったらしい。
俺と見て回ったわけだが、そのとき運動部主催の腕相撲対決が行われた。
景品に某電気ネズミのぬいぐるみ。
今どきどうかと思ったが、佳奈留がたいそう気に入った様子だったので参加した。
で、だ。 そのとき俺と対決したのが保品川なる男らしい。
何でもそこそこ名の知れたスプリンターらしく、名前は簡単に分かったらしい。
何となく気になり、それからずっと悶々と眠れぬ日々を過ごしていたらしい。
で、昨日やっと気付いたそうだ。
コレは恋だ、って。
- 630 :5:初恋SS :05/02/20 23:16:21 ID:zfiDSEHP
- 時刻は六時三十分。 呼び出してもらった時間にはあと三十分ある。
あの後佳奈留が言い出したことは、正直驚いた。
「だから・・・ね? その・・・保品川さんに・・伝えたいの・・・・」
「ふむ?」
「だから、だから・・・明日、保品川さんと・・お話したいの・・・・」
「・・・・いきなり告白か」
「にゃ、にゃうぅ・・・」
否定しなかった。
「いいけど・・・いいのか、そんないきなりで? 心の準備とか」
「かなるは・・・平気だよ? ・・・ううん、平気なんかじゃないけど・・・多分、いつまで経っても・・そうだから・・。
だったら・・・・想いが確かなうちに・・・伝えたいよ・・」
「あの佳奈留にあんなこと言わせるたぁね・・・」
思わずごちる。
「兄貴としては、少々複雑だね」
いつの間にか、佳奈留も大人になってたんだな。
妹の旅立ちを見送る兄・・・なかなか絵になりそうだな。
と、向こうからてってけと駆けて来る少女。
「来たか・・・」
「お、おにいちゃん・・・ごめんね・・遅くなっちゃった・・・・」
「いや、まだ余裕だ」
長い針は、9を少し越えたところ。
・・・・あんな短い回想で15分も使ってたのか。
感慨浸りすぎ、俺。
- 631 :6:保護者のSS :05/02/20 23:17:26 ID:zfiDSEHP
- 「さて・・・俺は帰るかな」
「にゃうっ? か、帰っちゃうの?」
「邪魔だろ」
「そ、そんなこと、無いけど・・・」
随分と心細そうだこと。
「あのなぁ、保護者同伴で告白する奴がどこに居るっての」
「にゃうぅ・・・そうだけどぉ・・」
「言うことは決めてあんだろ? なら、バシッといけ!」
「にゃう・・・う、うんっ」
決意を固めた佳奈留は、まさに戦乙女の顔をしていた。
「だいじょぶだ。 佳奈留の可愛さは俺が保障する。 佳奈留に告られてぐっとこない奴はいない!」
「にゃう・・・うん、がんばるっ」
「よし、それで良い。 それじゃあな。 幸運を祈る!」
「にゃう!」
妙な返事だったが、気合はばっちりだ。
大丈夫、きっと上手くいくさ。
なんてったって、この俺の妹だからな。
「ふぅ・・・・今頃告ってる頃かな」
時計を見る。 七時七分七秒。 スリーセブン。
ふっ・・・勝ったな、この勝負。
テーブルの上には晩御飯。 「暖めて食べて」のメモ付。 母さん夜勤らしい。
「勝利の晩餐にゃ、ちょっとしょぼいが・・・お、佳奈留の好きな林檎じゃん」
佳奈留との祝賀会のため、晩御飯はステイ。
「あ〜、早く帰って来〜い。 兄ちゃん腹減ったぞ〜」
- 632 :7:心配SS :05/02/20 23:18:29 ID:zfiDSEHP
- 「いや待てよ・・・上手くいったんなら帰りが遅くなる心配も・・・いやいや!
佳奈留に限ってそんなこたぁねーか!
でもなぁ・・・明日帰ってくるとかじゃねぇよな、まさか・・・ない! それはない!
しかぁし! ちょっと語らってくるくらいはあるかもしれん! 腹減る!!」
いつにも増して饒舌な独り言。
何だかんだで心配らしい。
あはは、俺ってば良い兄貴してる?
がらがら――。
キタ――――!!
「お、お帰り、佳奈留!!」
「ただいま・・・」
「か、佳奈留・・・・どう・・だった?」
「えへへ・・・・」
佳奈留がにっこりと笑う――力無く。
「駄目でした・・・・」
「そ・・・・そう、か・・」
「えへへへ・・・へ・・・・・・・・・・・うぅ」
「佳奈留・・・」
「・・・・おに・・おにいちゃぁぁんっっ!」
「佳奈留・・・・・!」
「う、うああぁぁぁぁぁんっ、わぁぁぁぁぁんっっ」
何も言えなかった。 ただ、佳奈留を抱きしめてやることしか、俺には出来なかった。
くそっ、何が良い兄貴だ・・・・!
- 633 :8:兄とSS :05/02/20 23:19:32 ID:zfiDSEHP
- 「おにい・・・ちゃん」
「ん・・・?」
「今日・・・一緒に寝て、いい?」
「ああ・・・・」
辛い事があったとき、佳奈留はいつもそうねだってきた。
「ご飯、食べなくていいか?」
「うん・・・食べたく、ない・・・」
「そっか・・よっと」
お姫様抱っこ。
「はは、結構大きくなったな」
「にゃう・・重いってこと?」
「そーいう意味じゃないって」
とん、とん、とん、と階段を登っていく。
「佳奈留、開けてくれ」
「ん・・・はい」
「電気を・・」
「すぐ寝るのに?」
「そーだな。 電気はいいか」
とさっ。
ベッドに横たえてやる。 しかし、何だかな・・・。
「にゃう・・? おにいちゃん・・・?」
「ん、何でもない」
これじゃあまるで俺が佳奈留の恋人みたいじゃないか。
- 634 :9:添い寝SS :05/02/20 23:20:32 ID:zfiDSEHP
- 「おにいちゃん・・・・はやくぅ・・・」
「はいはい、今入りますよっと」
俺も布団に入り込む。
「にゃう」
待ちかねた、とでも言わんばかりに抱きつく佳奈留。
「にゃう・・・・おにいちゃん」
「なんだ?」
「ううん・・・なんでもないよ」
「・・・・佳奈留、無理はするなよ」
「大丈夫・・・・かなる、おにいちゃんが居れば、なんでも大丈夫だもん」
「そうか」
「うん・・・・・お休み、おにいちゃん」
「お休み、佳奈留」
ゆっくりと・・・・眠りに落ちていく。
ゆっくりと・・・・穏やかに。
夢の世界へ。
- 635 :二酸化炭素 :05/02/20 23:22:20 ID:FARTYvB+
- 妹「にぃたん〜」
兄「ん?どうした雛乃?」
妹「ひなおなかすいた〜」
兄「そうか〜なにが食べたい?」
妹「かれ〜がたべたい〜」
兄「わかった大人しくテレビみてまっててな」
妹「うん!ひないい子だからおとなしくしてる〜」
俺とひなはかなり年の離れた兄妹だ
俺19ひな5
親はひながまだ2歳のころに他界している
当初は親戚が預かってくれるといってくれていたのだが
断ったどうしても俺が守らなくちゃいけない気がして…
だから今はひなと俺の二人暮しとても大変だでも
兄「できたぞ〜」
妹「かれ〜!」
兄「おいしいか?」
妹「うん!ひなにぃたんの作ったかれ〜大好き〜」
兄「そうかありがとう」
妹「ひなね〜おっきくなったら大好きなにぃたんのお嫁さんになるの〜」
兄「はははっ!楽しみにしてるぞ」
ちゅ
妹「にぃたんだーいすきぃ!」
兄「…ふふっ」
でもこんな生活も悪くない
はぁ〜変なものはってしまった
リハビリもかねて書いてみたがだめですね
スレ汚しスイマセン'`,、('∀`)'`,、
- 636 :二酸化炭素 :05/02/20 23:24:56 ID:FARTYvB+
- うわ〜!スイマセン!!
こんな糞SSで神SS汚してしまって!!
うわ俺なんか死ねばいい!!
- 637 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/20 23:25:18 ID:zfiDSEHP
- おおっと、タイミング被っちまったぜい。
炭素くんへの乙コールはちょいとまってくれ!
僕のがまだあるんだ〜っ。
- 638 :10:約束SS :05/02/20 23:26:27 ID:zfiDSEHP
- 『おにいちゃんは、かなるのこと、すき?』
『ん? まーすきかな』
『えへへ、そしたらけっこんだね』
『結婚?』
『うんっ! けっこん! すきどーしのおとこのことおんなのこは、けっこんするの!』
『ばかだなー、佳奈留。 兄妹は結婚できないんだぞ』
『え・・・?』
『それにだなー、結婚するんなら大人しい女の子がいい、ってきいたことがあるぞ』
『ええ? ええっ?』
『おまえどっちもだめじゃん』
『そ、そんなー・・・かなる、おとなしいおんなのこになるよっ。 だから、だからっ』
『でも、兄妹じゃん』
『う・・うぅ〜・・・・やだぁ・・・・おにいちゃんとけっこんするぅ』
『むりなものはむりなんだよ』
『やだぁ・・・・おにいちゃんとけっこんするんだもんっ』
『泣くなよなぁ・・・しょうがないなぁ』
『にゃう・・・けっこん・・・・』
『佳奈留、結婚はむりだけどな、オレがずっと一緒にいてやるよ』
『ずっと・・・いっしょ?』
『ああ。 それなら結婚と変わんないだろ・・・・・・たぶん』
『うん・・・わかった・・・・・かなる、それでがまんする』
『そのかわり』
『にゃう?』
『もうわがまま言うなよ。 オレがずっと一緒にいてやるんだから』
『にゃう・・・・がんばる・・・』
『がんばる、じゃない! なんでも大丈夫にしろ!』
『にゃ、にゃうぅ・・・・うん、かなる、なんでもだいじょぶにするっ』
『よーし、それでいい』
『だから・・・・ずっといっしょだよ、おにいちゃん?』
- 639 :11:思い出しSS :05/02/20 23:27:48 ID:zfiDSEHP
- 朝。
素敵な夢を見た朝は寝起き抜群。
「何で思い出しちゃうかねぇ・・・・」
しかもこのタイミングで・・・・いやこのタイミングだから思い出したんだろうけど。
「ずっと一緒か・・・」
「にゃう・・・? おにいちゃん?」
俺の右腕が声を発した! でなく、右腕に抱きついた佳奈留が寝ぼけ声を出す。
「おにいちゃん・・・今・・」
「あーいや、何でもないぞよ?」
「おにいちゃんも・・・同じ夢・・・・見たの?」
「へ・・? ・・・・・ん、多分な」
「にゃう・・・・えへへ」
む・・・なんか恥ず。
「さて、起きるぞ!」
「にゃうぅ・・・もーちょっと」
「なぬ?」
「もーちょっと・・・・このままがいい」
「・・・・我侭は言わんのじゃなかったのか?」
「お願いだよう・・・・」
「ああもう・・・もう少しだけだぞ」
「にゃう、有り難う、おにいちゃん」
すりすりと頬を擦り付けてくる。 腕がくすぐったい。
「んで? どーすんの?」
「にゃう・・・ちょっと、お話しよ?」
「・・・・この状態でいる理由が分からんが、まぁいいだろう」
- 640 :12:発覚SS :05/02/20 23:28:56 ID:zfiDSEHP
- 「昨日ね・・・保品川さんにね、言われて・・ちょっとショックだったことが・・・・あるの」
「なに? よし言ってみろ、場合によっちゃタダじゃおかんぞあの野郎」
「にゃうぅ・・・駄目だからね?」
「まず話してみなさい」
「うん・・・・あのね・・かなるね、一生懸命伝えたの・・・・・かなるの気持ち」
「うん」
「でもね・・保品川さんにはね・・・・・」
「好きな奴とか・・・恋人とかがいたのか?」
「ううん・・・そうじゃないの。 でもね、誰よりも大切な人が居るんだって」
「・・・・・恋人も作れないくらいか?」
「うん・・・・・」
恋人も作れないくらい大切な人、か。
「だから、ごめん、って・・・」
「それがショックだったのか?」
「ううん・・・・その後ね、別れ際に言われたの」
「何て?」
「キミにも、そういう人が居るんじゃないか、って・・・・」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「・・・・そうか」
「えへへ・・・・誰だか分かっちゃった」
「・・・誰だよ?」
「にゃう、内緒だもん」
勿論、聞かなくても分かっていた。 自惚れじゃ無く、確信。
- 641 :13:婚約SS :05/02/20 23:30:11 ID:zfiDSEHP
- 「でも、かなるは・・・出来ればその人と、恋人とかになりたかったなぁ・・・」
「・・・なれないのか?」
「にゃう・・・昔、結婚断られちゃったから、ね・・・」
「そうか・・・・」
「にゃうぅ・・」
「でも、それって昔の話なんだろ?」
「にゃう?」
「今だったら・・・・案外おっけーかもしれんぞ?」
「にゃ、にゃ、にゃうぅっっ!?」
真っ赤になる佳奈留。
「お、おにいちゃん、それって・・・っ?!」
「聞いて・・・・みればいいじゃないか」
「お、おにいちゃん・・・・」
見つめ合います。 可愛いです。 俺って幸せ者。
「あの・・・・・かなる・・・・やっぱり、おにいちゃんと・・けっこん・・・・したい・・・・・・」
「いいぜ・・結婚、しちゃおうか」
「にゃあ・・・・・おにい・・ちゃん・・・・・でもぉ・・兄妹は、駄目・・・・なんだよ?」
「なんだ、やっぱり嫌なのか?」
「にゃうぅぅっっ」
ぶんぶんと首を振る。
俺はもう、兄妹とか、どうでも良かった。 ただあるのは、このか弱い一人の女の子を守りたい。
その想いだけだった。
「佳奈留、目、閉じろ」
「にゃう?」
言われたとうりに目を瞑る。
「開けるなよ・・・」
「にゃ・・・・にゃうっ!!??」
唇と唇が触れ合った。
「おにい・・・・ちゃん・・」
「婚約代わりだ、受け取れ」
「にゃう・・・・うん」
- 642 :14:そういうことSS :05/02/20 23:31:48 ID:zfiDSEHP
- 「おにいちゃん・・・・すき・・」
「ん・・・まぁ言わなくても分かってるだろうが、俺もだ」
「にゃうぅ・・なんで? なんでちゅーしてくれたの?」
「そりゃ・・・・好きだからだろ」
「今まで・・・なんにもなかったのに?」
「お互い様だろ・・・お前なんて、昨日まで別の男好きだったじゃねぇか」
「にゃ、にゃうぅぅっっ!!」
「あ〜・・・母さん父さんになんて言おうか」
「にゃうぅ・・しょうがないよ、正直に・・・話そ?」
「そうだな・・・さし当たって、母さんに話すか。 もう帰ってきてるだろ」
「にゃう? お母さん宿直から継続で、今晩まで帰って来ないって言ってたよ・・・?」
「なんと? 聞いてなかった。 父さんは?」
「昨日は泊り込み・・・今日も、かな・・・?」
「佳奈留・・・・今日って休みだったよな?」
「にゃう? うん・・・」
「ふむ・・・・夜まで二人っきりだな」
「にゃ・・・・・・にゃうぅっ!!??」
「・・・・佳奈留。 実は俺、すでに辛抱堪らん」
「にゃ・・・・・?」
「・・・・・・かなるぅ〜〜〜っっっ!!」
「にゃにゃっ!?!? お、おにいちゃ、にゃふぅっっ」
「愛してるぞ〜〜〜っっ!!」
まぁ・・・・その後は想像にまかすわ。
ただ確かなのは―――俺たちは愛し合ってるっていう事実。
いろいろこれから大変かもしんないけど、まぁどーにかなるっしょ。
「な、佳奈留?」
「にゃうぅ・・おにいちゃんのばかぁ・・・////」
「でも・・・やっぱりだいすきだよ、おにいちゃんっ」
- 643 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/20 23:37:11 ID:NXo0zrGO
- 思ったんだが、これはSS倉庫をちゃんと作るべきじゃないか?
こんな素晴らしい作品が山ほど有るのにログに埋もれるのは勿体ない。
- 644 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/20 23:37:41 ID:zfiDSEHP
- 途中、ちょっとしたアクシデンツもありましたが、こんな感じの馬鹿台本です。
初めて血の繋がったあにいもうと。 そんでちゅー。
なんだか試験的な中身っぽいですが、結局妹泣かしちゃいました。
悪い癖だ。 何故泣かす。 そこに保護欲を掻き立てる妹がいるからさ。
じゃあ今日はこれで終わり。
炭素くん、ぐっかれ。
何気にいいよこれ。 不意を討たれた感じだよ・・・・。
- 645 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/20 23:43:04 ID:Znw8glEs
- ウッホ〜!!猫娘激萌え〜!!
マジお疲れです!
- 646 :二酸化炭素 :05/02/20 23:43:36 ID:FARTYvB+
- SS倉庫立てます?
スイマセンあんな糞マジ産業廃棄物だしてしまって
まったく名前どおり害ですね俺は
あ〜マジではらなきゃよかったですよ
くだらないものでスレ汚してスイマセン
誰か消せたら俺のスレ消してください
- 647 :二酸化炭素 :05/02/21 00:03:54 ID:zpfow9Am
- ピンポイントですが
ないしょだもんはきました
マジで(*´Д`*)ハァハァ
- 648 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/21 00:08:43 ID:wOMyxk7V
- じゅけんせいとゆかいなかぞくたち(仮題)
第一話 >>27-34 >>35
第二話 >>50-64 >>65-66
第三話 >>87-100 >>101
- 649 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/21 00:10:04 ID:wOMyxk7V
- 第四話 >>112-119 >>120
第五話 >>126-132 >>133
第六話 >>148-160 >>161
以下続刊。
- 650 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/21 00:11:08 ID:wOMyxk7V
- にせいもうとSS >>235-245 >>246-247
トラウマSSもどき >>580-593 >>594
ちゅーしちゃう台本 >>626-634 >>638-642 >>644
需要はないと知りつつ、取り敢えずまとめてみた。
量だけならそこそこ書いてるね、僕。
そうですねぇ、神々のSSがまとめて読めればかなりいいかもしれないですねぇ。
特に主神遊星さまはいっぱい書かれてるからねぇ。 マジ尊敬。
- 651 :コンズ :05/02/21 01:39:42 ID:CkdqDOkY
- ぷはーっ!!皆様最高でした!!
ところで神達わナゼ自分のSSを否定するのだろう?
こんなにもイイっ(・∀・)のに!!
もうたまらんですたいっ!!
- 652 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/21 01:47:22 ID:IO/Oj1tq
- 天才とは決して自分を肯定しないのだ!
常に自分を未完成の状態に追い込み切磋琢磨することが神の神である所以なのだ!
- 653 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/21 01:52:49 ID:wOMyxk7V
- ちょ、ちょっと待って! 今>>652がいいこと言った!!
僕も(非常に畏れ多いけど)神目指してがんがる!! せいぜいがんがる!!
- 654 :二酸化 :05/02/21 02:05:21 ID:zpfow9Am
- ('-`).。oO今更ホントに俺のは糞だなんていえないな
('∀`)いわなくてもしってるか
- 655 :[○]( ,_ノ` )y━・~~~任侠道 ◆dlxMjaHjk6 :05/02/21 03:04:32 ID:c0hbPswv
- ひゆたんのSSマダー?
- 656 :コンズ :05/02/21 04:04:46 ID:CkdqDOkY
- 652>ははーm(_ _)m恐れいりました!!
でも自分を追い詰めすぎる人も中にわ……。
- 657 :前スレ921 :05/02/21 05:23:37 ID:qqCAaVot
- 俺なんかのSSにお褒めの言葉をありがとうございます。
これで一端俺のSSは休憩です。
(;´-`).。oO(元はSS職人じゃなくて絵描きですなんて言えない)
931さん、今のままでも充分誇れる実力をお持ちかと('A`)次回作楽しみにしてます。
清次郎の方、乙です!可愛い(*´д`)ハァハァ
硬い文になりやすい情景、心理描写でも硬い文が少なく、読み易さはこのスレでもトップクラスかと('A`)
二酸化炭素さん、乙です!糞なんて事ないです。充分萌えです!
スレタイ的には一番正しいですし('A`)
- 658 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/21 16:08:08 ID:CALs8QRS
- お兄ちゃんどいて!そいつ殺せない!
- 659 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/21 18:59:43 ID:3nSwa5zq
- みんなエロバージョンのスレいった?
神が降臨してるぞ。
- 660 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/22 00:03:51 ID:GilBMcoz
- >>659に言われて久しぶりに逝ってきました。
結構みんな向こうも見てるんだな。遊星さんの始めの方を見たとき
「未来ちゃんが!未来ちゃんがぁーーーー!!」 と思ってしまった
- 661 :雨音は紫音の調べ ◆cXtmHcvU.. :05/02/22 01:34:15 ID:335h9alb
- 遊星さんはエロSSも素晴らしい……
まさに「神」です……
- 662 :某コテ :05/02/22 06:47:21 ID:4f52IKJZ
- ('-`).。oO(>>660-661辺りで褒められてはいるけど……
未来に申し訳ないから、あんまり見て欲しくないんだよなぁ……)
- 663 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/22 08:45:47 ID:qbKVtHn9
- すんません誰かそこのURL張っていただけませんか?m(_ _)m
- 664 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/22 18:01:09 ID:X8Zm5H8W
- ほらよ
妹に言われたいセリフ【エロバージョン】
http://game9.2ch.net/test/read.cgi/gal/1030079482/l50
- 665 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/22 20:55:17 ID:qbKVtHn9
- >664
今見てきました!
いや〜最高ですね。神が沢山いらっしゃる!
萌の神様たち!これからも頑張って!!
- 666 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/02/22 22:03:03 ID:4f52IKJZ
- 「ごちそうさまでした」
俺の妹、沙耶が胸の前でチョコンと手を合わせて言った。
「お粗末様でした」
形式的な挨拶をしながら俺は食器を片付け始める。
「お味噌汁美味しかったよ、おにぃちゃん」
「好きだもんな、豆腐の味噌汁?」
「うん。おにぃちゃんは何が好きなの?」
「俺か……俺はタマネギかな」
「はわっ!?タマネギっ!?」
沙耶はタマネギが嫌いなのだ。
少しは食えるようになったとはいえ、普通に食べるにはまだまだ遠いようだ。
「そうだ……もう冷蔵庫カラだから……今日買い物行かなきゃな」
「おにぃちゃん、サヤがお買い物行くー!!」
沙耶が右手を高々と上げて答える。
「いいのか?」
「うん!!今日ね、サヤたち、早く帰れるんだよ」
「そうか?じゃ頼もうかな」
「いいよー!!何を買うのー?」
「ああ、今、メモを書いてやるよ」
俺は電話台からメモ用紙とペンを取って、書き始める。
「えっと……挽き肉、ケチャップ、卵、ニンジン……そしてタマネギ、と……こんなモンでいいかな」
「はわわっ!?タマネギ……!?」
「タマネギはイヤ?」
「うん……好きじゃないよぉ……」
「そう?じゃ、買わなくてもいいよ」
「はわっ!?いいの!?」
「ああ。嫌いならしょうがないじゃないか」
「うん……ゴメンね……」
沙耶はちょっと申し訳なさそうに、ペコリと頭を下げる。
「謝らなくてもいいよ。しかし……タマネギがダメなら、ハンバーグは中止しなきゃな」
- 667 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/02/22 22:04:13 ID:4f52IKJZ
- 「はわわわわわっ!?ハンバーグ!?」
「しょうがない。今日は寒いから、晩飯は湯豆腐にでもしようかなー?」
とここまで言って、ふと沙耶を見ると……
「はわわわわ……ハンバーグ食べたいよぅ……」
肩を落とし、俯いて、可愛そうなぐらいションボリしている沙耶。
「はんばーぐ……食べたいよぉ……グスン……」
だんだん沙耶の瞳に涙が溜まってくる。
……さてと、意地悪もこのへんにしておくか。
「沙耶、ハンバーグ食べたい?」
「うん……」
「タマネギは?」
「はわっ……我慢するよぉ……」
「じゃ、ハンバーグ作ろうか?」
「う、うん!!」
沙耶が無邪気に笑う。
俺はそんな沙耶の頭の上に手を置いて、
「お使いよろしくな?沙耶?」
「はーい!!」
沙耶は右手を大きく上げて、それをパタパタと左右に振った。
「おっきなハンバーグ作るから、おやつは食べるなよー?」
「うん!!分かったよー!!」
[続く]
───────────────────────
シリアスは書けないんじゃなくて、書かない。それが俺の響き。
皆には負けてられない。つーことで、ネタを振り絞って書いてみたが……やっぱ俺はダメ人間だ……。
変なエロ風のSSまで書いちゃうし……みんなの足元にも及ばないどころか、台本書き失格だな、俺は……orz
- 668 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/22 22:28:29 ID:yRP+hBH/
- そんなことない!
遊星さんのSSは萌えまくりですよ
- 669 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/22 22:36:59 ID:fMG0SKNg
- 乙ですー。
何を言いますか!
このスレは遊星さんを中心に回っている。と俺は思ってますよ。
- 670 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/22 22:47:45 ID:bamURdMp
- 遊星さん乙です。
デモ、デキルコトナラ未来チャンノツヅキキボン。
エロバージョンスレミタラガマンデキナクナッチャッタ。
- 671 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/22 23:54:16 ID:h7JY7j0V
- ……ある日の夕方、俺は暇つぶしのために珍しく図書室を訪れていた。
あまりここに来る機会はなかったが、室内はなかなか広いようだ。
少なくとも、入り口からは端が見えない。
最新の本から、論文でも使わないような資料集まで置いてある。
……無駄に費用かけてるなぁ。ここの学校。
「ま、適当な本でも探すか」
整然と並ぶ書棚の間をぶらぶらと歩き、興味を引くタイトルを探す。
……そうこうしているうちに、眠気が襲い掛かってきた。
ね、眠い……!
俺は近くのイスに腰掛け、テーブルにぐったりと体を預ける。
暖房で適度に暖められた室内、この独特の雰囲気―――。
……反則だ。
俺がゆっくりと瞳を閉じようとした、その時。
こほん。
咳払い?
俺は顔を上げた。
そこには。
- 672 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/22 23:55:26 ID:h7JY7j0V
- 「……なんだ、優希か」
そう呟くと、咳の主はむっとした表情になった。
「にいさま?ここは本を読むための場所ですよ?」
「ああ、知ってるよ」
「それなら話は早いです。ここは仮眠室じゃありませんっ」
本から少しだけ顔を覗かせて、ぺろっと舌を出した。
本人は不満を表しているつもりなのだろうが、端から見ればそれは子どもっぽくて―――。
俺の妹、優希は再び本の世界に没頭し始めた。
夕日に照らされてオレンジ色に輝く、波打つような長髪。
すらっと伸びた四肢に、ふっくらと弾力を感じさせる体。
そして、愛嬌のある瞳。
うむ。合格。
……何に?
「……なんだろうなぁ」
ひとり呟くと、優希は可愛らしい目をぎろっと向けた。
「……にいさま?」
「ん?」
「そんなに眠りたいなら、家に帰ればいいじゃないですか」
「家に帰るのも面倒だ」
「……なまけものぉ」
優希はぷうっと頬を膨らませ、つんつんと俺の頭をつついた。
「怠けてばっかりいると、豚さんになっちゃいますよー?」
「ならない、ならない。そういう優希も、本ばかり読んでると堅物になっちゃうぞー?」
「むかっ。優希は堅物になんかなりませんっ」
「いいや、すでに堅物だ。そんな本読んでる時点で堅物だ」
「むーっ!どうせタイトルもろくに見てないくせに―――」
- 673 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/22 23:56:36 ID:h7JY7j0V
- そこで優希はハッとして、ばたんと本を閉じた。
その隣にはしおりが挟まれずに置かれていた。俺は不思議そうに見つめる。
「その本、なんて―――」
「なんでもないですよぉっ!?」
思いっきり裏返っている。あやしい。
「なあ、なんてタイトルなんだ?貸してみろよ」
「だっ、ダメです!にいさまには難しすぎる本ですっ!」
「それ微妙にムカつく……」
俺はがたんと席を立つ。続いて優希も席を立った。
「に、にいさま、優希を襲うつもりですか?」
「ちと本を借りるだけさ。ほぅら、痛くない、痛くないよ……」
優希は注射が嫌いだ。
奥義、トラウマ攻め。
「やっ、やだぁー!ちゅうしゃやだぁーっ!」
案の定、優希はぶるぶると肩を震わせ、がくりと崩れ落ちた。
「ふふふ、思い知ったか」
そのまま身を屈め、本を拾おうとすると―――。
……あれ?なんか足がいっぱい見えるような……。
「…………騒いでごめんなさい」
- 674 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/22 23:58:26 ID:h7JY7j0V
- 「……はあ。結局、帰るのか」
「当たり前ですっ!にいさまは学校に泊まるつもりですかっ!?」
「なかなかいいと思わないか?夜の学校っていうのも……」
「おっ、お化けやだぁ……!」
「で、どんな本を借りたんだ?」
「あっ!だっ、だめ、だめです……」
「ふむふむ。……なんじゃこりゃ」
「ああ……だからだめって言ったのに……」
「必読!女ゴコロの伝え方、ねえ。確かに俺には難しい本だな」
「ほんと……鈍感すぎます」
「え?何か言ったか?」
「なんでもないですよーだっ」
- 675 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/22 23:59:36 ID:h7JY7j0V
- 夜。
夕飯と風呂を済ませた俺は、いつものように寝る準備をしていた。
コンコン。
「ん?優希?」
「えと……入っても……いい?」
「どうぞ」
ドアが開く。
髪をツインテールにまとめ、恥ずかしそうに微笑んだ優希の姿があった。
胸元に枕を抱いている。
「えへへ……一緒に寝ても……いい?」
「もちろん、お姫様」
そう言って、おどけた調子でお辞儀してみる。すると、優希はぷっと吹き出した。
「あははっ……おにぃたんらしくないよぉー♪」
おにぃたん。
そう。
優希は、夜が近づくに連れて退行する。
- 676 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/23 00:01:16 ID:BPfv4nPH
- ベッドにもぐりこみ、優希のすぐ隣に寝転がる。
優希は俺の腕にしがみ付き、すりすりと頬を寄せてきた。
「うみゅ……おにぃたん……」
「お休み、優希」
優しく囁き、頭を撫でてやる。さらさらした髪が心地良い。
明日の朝になれば、あの優希に戻り、夜の記憶も失ってしまう。
「おにぃたん……大好き……だよぉ……」
「ああ……俺もだ」
朝と夜の優希。それでも、優希に変わりはないのだから。
額に優しくキスをする。
あのちょっと生意気な優希と、この甘えん坊な優希にたいして―――。
(兄)順哉
じゅんや。……これは読み手様、つまりあなたのことです。
(妹)
優希……朝。
ゆき。髪は下ろしている。生真面目な優等生。読書好きな照れ屋さん。
優希……夜。
髪はツインテール。精神年齢は小学生並み。なんにでも抱きつく傾向あり。無垢。
- 677 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/23 00:03:48 ID:BPfv4nPH
- よし、まずは前スレ46様への土下座から始めようか_| ̄|○ごめんなさい。
それからつまらないものを貼ってしまってごめんなさい。
……もう俺には萌えが見えない……グフッ。
- 678 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/23 00:08:13 ID:qbKVtHn9
- なんとぉー!?
昼は堅めのキャラで夜が近づくにつれ退行していくだと!?
初めて聞くタイプだ……。
海中さん、やはりあなたも神っす!!
- 679 :雨音は紫音の調べ ◆cXtmHcvU.. :05/02/23 00:37:23 ID:gSFBhbl7
- 遊星さん!SS萌まくりです!つづきが気になる……
ダメ人間なんてとんでもないですよ!
ダメ人間は僕ですから!
海中さん新作キタ―――!
朝と夜で性格変わるキャラ……
激しく萌えますね〜!
- 680 :最期の予科練特攻隊 ◆DJlWEppPe2 :05/02/23 00:39:04 ID:VHUi0gxk
- l|..;' .r''Yj .|'ン_,,,_ナ'‐/ | _ j゙ l l |l, ', '; ゙
l |. | (;!.| l<f;':::::j`゙ ,、/ヽ!.| |.|! l l,.リ
| lヽ!.l .|'┴‐' /ィ:ハ リ.j.ハl .j| .j.|
l | :| い| , ヽ/ ゙ィ゙|//.ノ|/j /ノ
j .| .|. l' 、 。 /j| j / ソ
l | j | \,_ _,..ィl,ノj.ノ
,' j ,r'iノ ./ _,、..Yj'T´l,. | l,
/,.- '´:::::l, | ,.-‐'.ド、;: l,. l,.';、
/,ヾ;.、:::::::::::::ヾ! ´ ノ:::::::「ド、'l l,
/´ ゙\'、'、:::::::::::::l 「:|::::::l.l| ゙l,l,'、
| \ヽヽ、::::| j:::|::::/,イ .j.'、ヽ
l、 ヾ'7-、,.;゙ l、::j;/ト;l, l, ヾミ、
ト、 .| ゙'j Fj.ヒ;'_ノ l l, ヾ、
! ,,...、、.ヽ, / |´ f/ .レ‐―:、 ヾ;.\
l,/:::::::::::;;;;;Y .f7''ト! 〉-‐-、l, い,.'、
l;::::;r‐''´ ./ |' !.! / Y゙ ! |. l,
ヾ;ム { |. | | l,
.|lヽ l j ! ,.ィ'´゙ト-、 l
l,.|. \ .ハ, /'´.,n i.゙'ヽ. j
L_ |\,_ .,ィ゙ l/j, .j:r' ノj ,'.ド!
.j`゙゙'7'''''フ'ーr‐:ッ'/7::l゙ト-:<ノ.ノ
/::::::/::::/::::/::rシ/:::;'::l:::|:::::|゙'´!'、
,'::::::/::::/:::/:://:::::::::Lr‐y:::::|:::::l:::'、
./:::::/:::/:::/:://:::::;.ィ'" .ヽ、,|::::::l;::::'、
.,':::::/:::/:::/:/::∠,,,,,,_,...--‐'´゙>ァ:::::::l,
/:::::/::/::://:::/ ∞ / `'ヽ、,l'、
.,'::::/::/:::/;'_;;ハ、; ;/ ゙ト;l,
/::::/:/::::/;r' \ / |〈!
/l:::;':/:::::;イ `'ドr=/ |:::
- 681 :最期の予科練特攻隊 ◆DJlWEppPe2 :05/02/23 00:44:09 ID:VHUi0gxk
- 紫音さんは駄目人間なんかぢゃないよ
たしかに遊星さんはネ申だが
- 682 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/23 10:19:46 ID:fRgeocak
- 海中さん、相変わらず素晴らしいです!
現実離れした個性、能力持ちのキャラをそこまでしっかり書けるなんてお見事としか言いようがありません。
- 683 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/23 14:49:57 ID:PykoSVGD
- 前に出てて気になったこと。こんなに良い(萌える)話がいっぱいなのにまとめサイトが無いんだ!あ、もしも有ったらスマソ。
- 684 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/02/23 21:04:08 ID:SxoPB1G5
- 「えへへ、はんばーぐっ♪ハンバーグっ♪」
沙耶が、スーパーのレジ袋を持って、ピョコピョコ跳ねながら家に向かっている。
相当重そうであるが、沙耶はそんなことお構いなしで、夕飯のハンバーグが楽しみでしょうがないようだ。
「あっ、沙耶ちゃんだー!!」
「こんにちは、沙耶ちゃん」
沙耶は後ろから誰かに呼ばれ、振り返った。
「あっ、ちなおねぇちゃん、ゆなおねぇちゃん!!こんにちわ!!」
唯奈と千奈は、沙耶の兄の友人である石川真司の妹で、双子。
「沙耶ちゃん、おつかい?」
ショートカットの姉、唯奈が尋ねる。
「うん!!」
「偉いんだね?」
「えへへ……」
「そうだ、千奈ちゃん!あれ、御馳走してあげようよ?」
「いいですね。沙耶ちゃん、今から私たちのお家に来ない?」
今度は、ロングヘアーの妹、千奈が尋ねた。
「え?」
「私が、スイートポテトパイを焼いたんですけど……ちょっと作りすぎちゃって……」
「すいーとぽてとぱい……?」
「えっと……サツマイモのパイかな」
「千奈ちゃんのパイ、美味しいんだよー」
「パイ、美味しそう……」
「じゃ、決まりだね!!さ、行こう!!」
───────────────────────
- 685 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/02/23 21:05:13 ID:SxoPB1G5
- 「ただいま」
返事なし……。
沙耶なら飛びついてくると思ったんだけどなぁ……。
「沙耶?」
居間にもキッチンにもいない……。
「部屋か?」
そう考えた俺は、階段を上り、沙耶の部屋に向かった。
「沙耶ー?」
俺がドアを開け、中を見ると……
「はぁ……おにぃちゃん……はぁ……はぁ……」
ベッドの上で力なく寝転がっている沙耶が、肩で息をしながら言った。
ま、ソッチ方面でないのは確実だ。誤解するなよ。
「えっと……何やってるんだ?」
「はわわわわっ!!な、何でもないよぉ!!」
何かあるんだ……分かりやすい……。
「秘密?」
「う、うん」
「じゃ、いつものお仕置き行こうか?」
「わわっ!?引っ張るのはやだよぉ!!」
「じゃあ言う?」
「はわ……」
悩んでいるのか、ちょっと俯いて黙っている沙耶。
そして……
- 686 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/02/23 21:06:14 ID:SxoPB1G5
- 「おにぃちゃん……怒らない……?」
「わかった。怒らないから、言ってみな」
「じゃあ、言うね……えっと……ゴメンなさい、おにぃちゃん……」
「ゴメンなさいって……何が?」
「食べちゃったの……」
「何を?」
「お使いの帰りにね……ゆなおねぇちゃんと、ちなおねぇちゃんに会ってね……
『すいーとぽてとぱい』を作ったから食べない?って言われて……」
「それで食べちゃったのか?」
「ううん……サヤが、『おにぃちゃんと、おやつ食べちゃダメだよって約束したから……』って言ったら……」
ここから長くなるので、要約。
つまり、真司の妹たちに会った沙耶は、スイートポテトパイを薦められたが、沙耶はそれを断った。
それなら、持って帰って俺と二人で食べてね♥と言われ、二切れ持って帰ってきたが……
「一口……食べちゃったの……」
一口だけかよ……。
「なるほどね……で、ベッドの上で何してたの?」
「運動しておなか減らそうと思って……」
全く……何処までバカ正直なんだか……。
「沙耶……お兄ちゃんとの約束を守る悪い娘は……?」
「やっぱり……オシオキ……?」
「当たり前だ……」
「はわわ……」
髪の毛を引っ張ることを見越してだろうか、俺に差し出すように、沙耶は両手でツインテールを掴んで持ち上げた。
「よし、覚悟しろよー?」
ゆっくり手を伸ばす俺。俯いてギュッと目を閉じる沙耶。
そこで、
- 687 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/02/23 21:07:28 ID:SxoPB1G5
- 「あっ!俺も約束破っちゃったな!!」
「えっ……?」
「俺、怒らないって約束したのに……ゴメンな、沙耶」
「おにぃちゃん……」
「ま、でも、コレでチャラだよな?」
俺は、沙耶の頬に手を触れて微笑む。
「うん!!」
沙耶も本当に嬉しそうに無邪気に笑った。
「じゃ、気を取り直してハンバーグ作ろうか」
「うん!!楽しみだなー!!ハンバーグ!!」
「あぁ、楽しみだな」
俺は沙耶の頭の上に手を置いて、優しく撫でる。
沙耶はちょっとくすぐったそうに笑って、
「でもね、おにぃちゃん、ハンバーグ、あんまり大きくなくてもいいよ?」
「何で?」
「ちなおねぇちゃんと、ゆなおねぇちゃんにもらったパイがあるもんね?」
「そう言えばそうだな。後で二人で食べような?」
「うん!!」
大き目のハンバーグ。付け合せのニンジンのグラッセ。美味しいパイ。
そして、大切な妹の笑顔……幸せってヤツを感じるね。
───────────────────────
ピンポーン
「誰か来たな……」
「あっ、お兄さん。私行きますね」
「千奈ちゃん、いってらっしゃーい」
パタパタと玄関に向かっていく千奈。
俺も隣に座っている唯奈も、黙って、玄関の会話に耳を澄ましている
- 688 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/02/23 21:08:36 ID:SxoPB1G5
- すると……
「お兄さん、お客さんですよ」
「誰?」
「三上さんですよ」
「修二か……何の用だろ……」
俺はそんなことを考えながら、玄関に向かう。
「よぅ。修二」
「こんばんは、真司」
「えっと……こんばんは……」
修二の後ろに隠れていた修二の妹の沙耶ちゃんが顔だけ出して、言った。
「こんばんは、沙耶ちゃん……で、何か用か?」
「ああ、ウチの妹が、お前の妹さんに良い物貰ったからな。コッチもお裾分け。沙耶」
「うん、どうぞ」
修二に言われて、沙耶ちゃんが大きな皿を俺に差し出した。
「何だ、コレ」
「三上修二特製ハンバーグ。皆で食べてくれ」
「わぁー!!美味しそー!!」
唯奈が横から首を出す。
「うぉっ!?唯奈、何時からいた!?」
「さっきからいたよー!!ね、千奈ちゃん?」
「はい、すみません……」
「千奈もか!?」
そんな俺たちのやり取りを見て、修二が笑う。
- 689 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/02/23 21:10:05 ID:SxoPB1G5
- 「じゃ、兄妹水入らずの邪魔になっちゃ悪いから、俺たちも帰ろうか?沙耶」
「うん」
「ああ、悪いな。何のお構いもしないで」
「いいって。じゃあな」
「おぅ。また明日、学校でな」
軽く手を振って、ドアから出て行く三上兄妹。
「俺たちも晩飯にしようか?」
「うん!!」
「はい」
ハンバーグあり、デザートありで、今日の晩飯はちょっと豪華。
友人と妹たちの有難みを感じるね。
───────────────────────
少年よ、旅立つのなら晴れた日に胸を張って……。
沙耶と双子のコラボ台本。そして、あまり人気の無い双子、プッシュ計画第一弾。
でも、こんな話でゴメンよ、千奈、唯奈……orz。
やっぱり俺はダメ人間だ……。
>>670
未来はホワイトデーに備えて待機中です。しばらくお待ちください。
ま、エロではないけどね。
>>681
ネ申→神→紙→薄くて軽い→俺の台本は軽くて薄っぺら……
まさにその通り。
なるほど、ネ申とはよく言ったものだな。
- 690 :670 :05/02/23 21:12:58 ID:TGm50Rph
- リアルタイム!GJ!
ID変わってると思いますが、キニシナイ。携帯なので。
ホワイトデーまで
お あ ず け で す か ?
- 691 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/23 21:32:46 ID:fRgeocak
- 乙ですー。
双子プッシュ計画第一弾とゆー事は第二弾も期待していいんですね(゚∀゚)
- 692 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/02/23 21:46:30 ID:SxoPB1G5
- >>690
しょうがない。ネタが無いから……なりきりやると怒られるし……。
でも、ホワイトデーは割とマシな話になったと思うよ。
>>691
うん。そのうち、他の妹とコラボさせるかも。
- 693 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/23 21:46:59 ID:Lve4HgLc
- 乙〜
受験前の緊張吹っ飛んだ
- 694 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/02/23 21:54:17 ID:SxoPB1G5
- >>693
国公立前期の二次はもうすぐだからねぇ……。頑張って。
- 695 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/23 22:07:55 ID:Lve4HgLc
- >>694
ありがとう〜
そろそろ現実に戻ります(ノД`)゜。
- 696 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/23 22:36:14 ID:GRdBrqt+
- >>683
過去ログ倉庫ならある・・・・ってテンプレに書いてるから知ってるか
まとめが欲しいならぬしが作るが良いぞよ
俺には無理だー
- 697 :691 :05/02/23 22:36:25 ID:fRgeocak
- >>692
何人かの妹を持つ遊星さんだからこそ出来る事ですね。
期待しちゃいます!!
(*´∀`).。oO(萌え妹×萌え妹=2x萌え)
頑張って下さい!
- 698 :雨音は紫音の調べ ◆cXtmHcvU.. :05/02/24 00:02:38 ID:gSFBhbl7
- おお…!
ついに夢のコラボレーションがキタ――!!
第二弾も期待してます〜!
- 699 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/02/24 22:34:16 ID:RMcbQ+qQ
- >>690
エロバージョンに一つ話を貼りましたよ。
ま、あんな話でよければ、ホワイトデーまでの時間つぶしに見てやって。
あの長さの話を一時間で書き上げるとは……相当溜まってるな、俺も。
- 700 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/24 23:22:18 ID:MbsMlPVZ
- さすが遊星師匠です……。次元が違います……(*´ー`*)ーЭ
('A`) さあ、つまらないSSでも貼ろうかな。
- 701 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/24 23:23:32 ID:MbsMlPVZ
- ある日の夕方、
「おっかしいですねぇ……おっかしいですねぇ……」
「な、何が?」
ぶつぶつと謎の呪文を唱えつづけていた優希によって、俺の沈黙はついに破られた。
優希は――平安時代のお姫様のような――長い髪をふわりとなびかせて振り向く。
「にいさま、私のパジャマ知りませんか?」
「パジャマ?優希の?」
「はい。昨日はちゃんと着ていたんですけど……どこいっちゃったんだろぉ……」
ぎくり。
……思い当たる節があった。
- 702 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/24 23:24:46 ID:MbsMlPVZ
- ―――昨夜、
「ねぇねぇ……おにぃたん、もう寝ちゃった?」
「いいや。まだ起きてるよ」
「えへへ……真夜中なのに起きてるって、なんだかどきどきするよねっ」
例のごとく、夜モードの優希は楽しそうに笑った。昼の優希とは違った笑みだ。
またも怖くて眠れないと言って、勝手にベッドにもぐりこんで来たのだった。
「そうだなぁ……たしかに昔はドキドキしたけどな」
「あは♪おにぃたんといっしょー♪」
「でも、今は全然そんなことないぞ。小さな頃だけだろ?」
「……むーっ!おにぃたんはもう純粋な心じゃなくなっちゃいました……」
「な、なんだそりゃ」
「でもでもっ!ゆきといっしょにいれば、おにぃたんも純粋な心に戻れるのですっ♪」
「……寝る」
「あわわっ!ご、ごめんなしゃい!だからもうちょっとお話しようよぉ……」
「嫌だ。寝る」
「おにぃたん……うう……」
さすがにやり過ぎただろうか。声のトーンは落ち、今にも泣き出しそうに聞こえた。
「……仕方ない。もう少しだけだぞ?」
言いながら優希のほうへ寝返りを打つ。すると、彼女の体がわずかに震えた。
「ん。どうした?」
「……おしっこ」
- 703 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/24 23:26:00 ID:MbsMlPVZ
- まず、ガバッ!と擬音が出そうなほど飛び上がり、優希を見た。
……シーツは汚れていない。
「ち、違うよっ!?まだしてないもん!」
「いや、まだとか言うなよ!早くトイレに行ってこい!」
「でも……おそと、真っ暗だよね……?」
「ついていってやるから!ほら、行くぞ!」
嫌がる優希の手を引っ張り、俺は部屋を飛び出した。
優希の言うとおり。廊下は真っ暗だった。しかも今は草木も眠る丑三つ時。
ああ、たしかに怖いかもしれない。
少しだけひるんだ、その間に。隣の優希はぶるるっと震えた。
…………。
- 704 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/24 23:27:14 ID:MbsMlPVZ
- 「……あー。洗ったんじゃないのか?」
「え?にいさま、洗濯機に入れたんですか!?」
「あ、ああ。思い出した。コーヒーこぼしちゃってさ」
とっさに口から出たウソに感心していると、いつのまにか優希の姿はなくなっていた。
すぐにドアが開き、優希が戻ってくる。
「あった?」
「ありました……。あれじゃ明日まで乾きません……」
「あらら。悪かったよ」
「……にいさまのばかっ!私、パジャマは一着しかないんですよ!?」
……はあ。また優希を怒らせてしまった。
こうなると一日は確実に口を利いてもらえないのだ。ちなみに前回は二日つづいた。
「もうっ……ジャージなんてあったかなぁ……」
「あの、優希?」
「な、ん、で、す、か?」
うわぁ……めちゃくちゃ怒ってる。
「ええと、俺の服貸してやるよ」
うん。自分でもびっくりした。
- 705 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/24 23:28:48 ID:MbsMlPVZ
- 「……ちょっと大きいです……」
「文句言うなよ。仕方ないだろ?」
「もとはと言えば、にいさまのせいなんですけどねぇ……」
「う。悪かったよ……」
優希は俺のお古のパジャマを着ていた。
思いっきり裾をまくっているズボンに、だぶだぶの上着。
「しかも、にいさまの匂いがします。……最悪です」
言いながら優希は服の首元を引っ張り、自らの可愛らしい鼻から下を覆った。
「おいおい、何してるんだよ」
「べっ、別になんでもないです。なんでもないですよっ?」
なんだろう。心なしか声がうわずっているように聞こえる。
それに何やら頬が赤い。隠れた口が、かすかに微笑んでいるような……。
「ん……にいさまの匂い……」
「とりあえず、機嫌直してくれるかな?」
「はい……今日は特別ですからね?」
「……肝に銘じておきます」
「はい」
優希は裾をずるずると引きずり、ドアノブに手をかけ、
「にいさま、おやすみなさいっ」
何故かとても嬉しそうな表情で、ばたんとドアを閉めた。
……やれやれ。
その日、優希は俺の部屋には来なかった。
- 706 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/24 23:30:03 ID:MbsMlPVZ
- 「あれ?優希、昨日貸した服は?」
「えっ!?あ、ああ、洗っちゃいましたよ?」
「そっか。ま、洗っといたほうがいいか」
「そ、そうですっ。……あのままじゃとても返せませんから……」
「何か言ったか?」
「なっ、なんでもないですっ」
- 707 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/24 23:43:31 ID:MbsMlPVZ
- ( ´−`) .。oO(しばらく旅に出ます。探さな(ry
- 708 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/24 23:48:19 ID:Xv2ABRV9
- 嫌〜!神様行かないで〜!!
最高級のSSを書いておきながら旅に出ることはありませんよ!
しかし疑問なのは借りたパジャマを洗った原因はお漏らしか?それとも愛えk(ry
- 709 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/25 04:02:58 ID:t5VC0NUG
- >>708
洗ってないんじゃない?返さない為の言い訳かと
- 710 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/26 00:32:38 ID:35738s6a
- 何気におまいらも神くさい
いろんな意味で
- 711 :雨音は紫音の調べ ◆cXtmHcvU.. :05/02/26 00:36:38 ID:PcmdVnuw
- 神が…神が旅に……
戻ってきてくださ〜い!!・゜・(つД`)・゜・
兄さまのにおいであんな事やこんな事を……?!(*´Д`)ハァハァ
- 712 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/26 00:39:10 ID:1ZxCtb55
- >>710
おまいのIDのほうが神くさい希ガス
- 713 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/26 00:48:08 ID:7YqZQ6IS
- その夜の優希ちゃんの裏話をエロスレでキボン
- 714 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/26 14:53:45 ID:hFl08Qfj
- >>714
俺がかわりに書いてやってもいいぞ?
- 715 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/26 14:59:11 ID:hFl08Qfj
- まちがえた
>>713○
>>714×
- 716 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/02/26 16:43:39 ID:FiyifdD8
- SS書きにとって、自分のキャラは大切な仲間!!
(俺は全く関係ないが)誰かが代わりに書くなど、言語道断だ!!
でも、実はかなり読みたいよ……(;´Д`)
- 717 :710 :05/02/27 04:13:27 ID:l4kLR0Wd
- >>712
35738s6a
巫女な沙耶・・・・か?
神かも。
- 718 :コンズ :05/02/27 04:59:41 ID:RQMGDSBc
- 遊星さん、海中時計さん、乙です!!
遊星さん>双子の出番をもっとください〜!!
海中時計さん>戻ってきてー!!てかホントに良かったですよ!!素直じゃない所がたまらないっ(´Д`)ハァハァ
- 719 :遊星より愛を込めて(変態) ◆isG/JvRidQ :05/02/27 18:30:13 ID:vX1Ndpm0
- 「はわわっ!?おにぃちゃん、この服、何なの!?」
「あの……巫女さんの服かな……?」
「みくさん?」
「巫女さん。えーと、大きな神社とかで働いている女の人の事かな……」
「じゃあ、何でサヤが神社の女の人の服を着てるの?」
「知らん」
「はわ……」
ちょっと落胆した顔をする沙耶。俺は沙耶の頭にポンと手を置いて、
「でも、可愛いよ、沙耶」
「可愛いのっ!?嬉しいなー!!」
そう言って両手を高く上げ、パタパタ振った。
そして、一通り喜びを表現した後……沙耶がブルッと震える。
「寒い?」
「ううん……おしっこ……」
「ああ、行ってきな」
「うん」
沙耶がトイレに行こうと、歩き出すと……
「はわわわわ……足が……はわっ!!」
裾を踏んで、沙耶が豪快に転ぶ。
「大丈夫か!?」
「うん……大丈夫……でも、トイレ……行けないよぅ……」
「しょうがないなぁ……。抱っこして連れてってやるよ」
「うん。ありがと……」
俺は沙耶を抱きかかえて、放り込むようにトイレに入れる。
「ふぅ……間に合った……」
「はわわわわわわわわわっ!!!脱げないよぅ!!漏れちゃうよぅ……おにぃちゃん……助けてよぅ」
「助けるって……どうすればっ!?」
「はわ……わわ……おにぃちゃぁん……クスン……」
「まさかっ!?沙耶!?」
(´-`).。oO(>>717巫女な沙耶……こんな感じか……?でも、38で無くて39だったら……エロスレで一本書けたな……)
- 720 :712 :05/02/27 19:26:55 ID:THn0lA1V
- >>717
素晴らしいと思いません?巫女ですよ巫女w
>>719
乙です!!
まさか書いてしまうとは……可愛い(*´д`)ハアハア
語呂合わせでネタを探す前スレ921でしたorz
- 721 :1:小学生SS :05/02/28 04:32:49 ID:4QHPzMiZ
- さて、今日の授業が終わったわけです。
未来を担う若人であるボクは、今日も今日とて倶楽部活動に励もうと思っております。
ランドセル背負って校庭へGO。
「またねー、かなちゃーん」
「うん、またね、なおちゃん」
たったかたったか廊下を走っちゃいます。
ボクの学校はただいま併合移転の真っ最中。 校庭は校庭でも中学校の校庭を使います。
そんな訳で、移動に無駄な時間を掛けてられないのです。
中庭。
2メートルのフェンスも幅跳びで鍛えたボクの前には無意味。
ほいほいほいっと登っちゃいます。
てっぺんまで来て折り返そうとしてたら・・・中学校側に人がいた。
「キミ・・・・パンツ見えてるよ?」
「・・・・えへへ」
一瞬ドキッっとしたけど、女の人みたい。
「降りれるの?」
「うん」
ぴょんと一っ跳び。
「中々体力あるね。 アクティブな性格だし・・・・なんでスカートなの?」
「えへへ・・。 お兄ちゃんが女の子らしくしろって言うからです」
- 722 :2:勧誘SS :05/02/28 04:33:59 ID:4QHPzMiZ
- 「ふ〜ん・・・。 キミ、何年生?」
「えと、6年生です」
「そっか、来年中学か・・・・ね、羽球――バドミントン興味ない?」
「あ・・・・えと、ごめんなさい。 ボク・・・じゃない、わたし幅跳びやってるんです」
「む・・そっか、残念。 いい戦力になりそうだったんだけどなぁ」
ごめんね、お姉さん。
ボク、幅跳びがスキなの。
「んじゃ、引き止めて悪かったね。 気が向いたらオレんとこ来て見て。
コートなら大体開いてるから、息抜きにでもやりに来るといいよ」
「あ、はい、有り難うございます」
「じゃね〜」
体育館の方に駆けて行く。
今の人・・・・自分のこと、オレって・・・言ってたな・・。
あ、いけない、練習遅れちゃう。
グランドの角、砂場の方に行こうとすると――。
「なお〜」
道路の方からボクを呼ぶ声。 この声は――。
「なおくんっ」
「よ、なお。 今から練習か?」
「うんっ。 ねね、なおくんはどうしたの? 学校終わったの?」
「ああ、試験中だから早めに終わったんだ」
「そ〜なんだ〜」
この人がボクのお兄ちゃん、尚登。
車で20分くらいのところに通ってる高校二年生なんだよ。
背はボクよりずっと高くてサッカー部。 勉強は・・・・まぁ普通くらい、かな?
それで・・・ボクの大好きなお兄ちゃんなんだ♪
- 723 :3:地獄極楽SS :05/02/28 04:35:12 ID:4QHPzMiZ
- 「一緒に帰ろうかと思ったけど、無理か」
「ん〜・・・そうだね〜」
「何そんなにへこんでんだよ」
「だってぇ・・・折角一緒に帰れたかも知れなかったのにぃ・・」
なおくんと一緒に学校通えたのは、ボクが一年生でなおくんが六年生だった一年間だけ。
しかも帰りの時間なんて滅多に合わないから、一緒に帰れたことなんて・・・・えと、全部で四回しかないや。
「そんなんでへこむか、普通? ま、それじゃあ帰りは遅いんだな?」
「ん、多分ね」
「んじゃ、俺は商店街でしばらくブラブラしてから帰るわ」
「またゲーム?」
「だはは、起き上がり大門の悪夢、再びだ」
「なにそれ?」
「お前は分かんなくていいよ。 とにかく、なんかあったら携帯に入れてくれ」
「ん、分かったよ」
「じゃ、頑張れよ」
「うん、ボクがんばっちゃう!」
「な〜お〜?」
「あ・・・・えへへ、わたし、がんばるねっ」
「うむ、精進するがよいぞ。 じゃな」
「気を付けてね〜」
後姿を見送る。 あ〜・・・我が兄ながら、かっこいいなぁ・・・・。
後姿もいいんだよねぇ・・・。
「あっ、練習!!」
- 724 :4:臨時コーチSS :05/02/28 04:36:16 ID:4QHPzMiZ
- 急いで砂場に駆ける。
あれ? 洋介さんがいない?
きょろきょろ・・・・あ、いた。
「よ〜すけさ〜ん、なにしてるの〜? こっちだよ〜?」
ボクを見付けた洋介さんが、ちょっと早歩きでこっちに来る。
「洋介さん、遅刻?」
「違うよ。 素直ちゃん、話聞いてないでしょ?」
「え?」
「俺がコーチ出来るのは昨日までだって言ったろ?」
「え・・・・ウソーっ?!」
「あのねぇ・・・もともと十日間だけの約束でしょ?」
「あ・・・そうだったかも」
「もうテスト期間も終わりだから、時間も合わないしね」
「洋介さんの学校は今日で終わりなんだ・・」
「そう。 今日はちょっと用事があるしね。 だから、今日の練習はなし」
「ええ〜? ボ・・わたし、一人でも練習出来るよ〜」
「駄目。 一人で練習なんてやらせられないよ。
怪我したら『特別に面倒見てくれ』って千葉先生に言われた俺の立場がないでしょ。
もともと学校にも無理言ってるみたいだし」
- 725 :5:大会前SS :05/02/28 04:37:17 ID:4QHPzMiZ
- 「でもぉ・・・・」
「それに、その格好で跳ぶ気?」
「え・・・あ、着替え忘れてた」
スカートのままだったよ。
「コレは着替えればいいでしょっ。 それより練習させてよぉ」
「ダダこねないでよ・・・なんでそんなに跳びたいのさ?」
「それは・・・幅跳び、スキだし」
「それだけ?」
「今度の大会で、勝ちたいから・・」
「なんでさ?」
「その・・・・お兄ちゃんに・・・幅跳び、中学校いっても続けていいって言ってもらいたいから」
「ふ〜む・・・・お兄さん、幅跳び反対か?」
「その・・・女の子らしくしろって、いつも言ってるから」
「そうか・・・。 なんにしろ、今日はナシだ」
「そんな〜」
「体休めるのも練習のうちだぞ」
「う〜・・・・うん」
「よし。 それじゃな」
「は〜い、さよなら〜」
- 726 :6:忍び込みSS :05/02/28 04:38:26 ID:4QHPzMiZ
- いきなり暇になってしまいました。
なんにもすることがないから家に帰っちゃいます。
「ただいま〜」
誰も居ない家に鍵を開けて入ります。
用心のために鍵をかけておきます。
茶の間にランドセルを降ろして一呼吸置きます。
ん〜・・・なおくんもいないしどーしよっかなぁ。
ちょっとゲームケースを漁ってみます。
「・・・・格闘ゲームと、サッカーゲームばっかり」
なおくんの趣味です。
ボクは格闘ゲームやらないし、サッカーゲームだって一人じゃやらないので困りものです。
「なおく〜ん、は〜やくかえってこ〜いっ」
こんな時間がもったいないです。
一分一秒、なおくんと遊んでたいです。
今、なおくんは居ません。 ボク一人です。
「なおく〜ん・・・さびしいよぉ・・・・」
一人・・・しょうがないから一人で何か楽しいことを探しましょう。
一人・・・一人でするもの・・・・一人じゃなきゃ出来ない・・なおくんがいたら出来ないこと・・・・。
「あ・・・・」
一個、浮かびました。
「なおくんのお部屋・・・・最近入ってないなぁ・・・・・」
あ、でも駄目駄目。 勝手にお部屋入るなんて・・・・。
でも・・ちょっと気になっちゃうよね・・・・・でも駄目だもん。
「あ・・・ボクの漫画・・一冊返してもらってないや・・・・」
・・・・・・なんか、急に読みたくなった・・・・ような気がするな〜。
「返してもらいに行くだけ・・・・だよ?」
そうだよ。 早く返してくれないのが悪いんだもん。
- 727 :7:ガサ入れSS :05/02/28 04:39:41 ID:4QHPzMiZ
- こんこん。
「入るよ〜・・・」
返事がないのが分かっていても、やっぱりノックとかしてしまう。
がちゃ――。
あ、以外に片付いてる・・・・。
ちょっと前よりキレイになったお部屋。
壁にはサッカー選手のポスターが何枚か。
それと――なおくんのにおい。
あれ? なんかどきどきしてきちゃった・・・・。
「ま、漫画・・・どこだろ?」
あわてて辺りを見る。
「ないなー・・・本棚?」
上から見てって・・・・しゃがんで下の段を見る。
雑誌だね。 じゃあ違うね。
「どこかなー・・・ふう」
ベッドに腰掛ける。
ベッド・・・なおくんの、ベッド。
なおくんがいつも寝てるベッド・・・・・。
あ、あれ? またどきどきしてきちゃった・・・・。
なおくんのベッド・・・・・。
ぽふっ。
ちょっと寝転がってみる。
「なおくん・・・・お兄ちゃんのにおい・・・・」
どうしよう・・・・・心臓がばくばくいってる・・。
でも、やな気分じゃない・・・もっとこうしてたい・・・・。
「なおくん・・・・」
ころんと転がってみる。
あれ?
右腕に異物感・・・・何コレ?
掛け布団をめくってみる。 本・・・・雑誌だ。
- 728 :8:妹が見付けちゃう本といえばSS :05/02/28 04:40:45 ID:4QHPzMiZ
- 「も〜、なおくんてば、ちゃんと本棚に戻しとかなきゃ駄目だよ〜?」
何となく、ぺらぺらとめくってみる。
「・・・・・・・あれ?」
なんか・・・・コレって・・・。
「えっちな・・・・本?」
女の人が・・裸で・・・・わぁ、男の人もっ?!
「わぁー、わぁー、なにこれなにこれなにこれっ!?」
ばん、と閉じる。
「も、も、もお! なおくんてば、こんなえっちな本読んでたんだね!」
ボクのことお部屋に入れなくなったのはこーいうことなんだねっ!
む〜、なんか頭にきちゃうよ。
こんな・・こんな本なんかに・・・・こんな・・・・・・・・・。
ちら、っと見る。 表紙からじゃ、とてもあんな中身は予想出来ないよ。
「こ、こんな・・・こんな、えっちな本・・・・なおくん、読んでるんだね・・・」
ぺらっ・・・・・ぺらっ・・・・・。
あ、あれ? ボク、なにしてるんだろ?
そ、そんな、じっくり読んじゃってなんか・・・・わ・・・何コレ・・・?
読み進めるうちに、気になる単語で手が止まる。
「お兄ちゃん・・・・」
兄と妹の、禁断の・・・・・・・・き、禁断の、愛・・・・。
お兄ちゃん・・・・なおくんと・・・ボク・・・。 ボ、ボクとなおくんが・・・。
目を閉じて、想像してみる。
恋人になった、なおくんとボク・・・・。
・・・・・またどきどきしてきたよ・・・もっと、もっとどきどき・・・・したい・・。
ボクは夢中になってその妄想を追いかけていった―――。
- 729 :9:寝起きSS :05/02/28 04:41:54 ID:4QHPzMiZ
- 「んう・・・・?」
いつの間にか・・・寝てたんだ・・。
う〜、すごくいい夢だった気がするのに・・・思い出せないや。
ちょっと寒い。 身を縮こまらせる。
とんとんとんとん・・・・階段を登る音。
誰か帰ってきたのかな?
がちゃ―――。
「あれ・・・・なお? 帰ってたのか? ってかなんで俺の部屋に?」
あ・・・・わ、忘れてたっ。 ここ、なおくんのお部屋だよう!
「あ、ご、ごめん、まん、漫画、取り来たら、その、寝ちゃってっ」
「ん、陸上で疲れてたんだな」
「あの・・・・怒った?」
「なんでさ? 疲れてたんだろ? 仕方ないさ」
あ・・・なおくん優しい・・・。
「い、今起きるね・・・」
「ん? 寝ててもいいぞ?」
「そ、そんな訳にも・・・」
ゆっくり起き上がる。
「ん? なお、なに抱えてんだ?」
「え?」
腕を見る。
大事そうに抱きしめられた雑誌が一冊。
あれ・・・コレって・・・・。
離してみる。
「うあっっ!!? そ、それはっ!!??」
「えっちな・・・本」
え・・・・ボ、ボク、えっちな本を大事そうに抱えて寝てたのっ!?
や、やだぁっ。
- 730 :10:追いかけっこSS :05/02/28 04:44:15 ID:4QHPzMiZ
- 「なななおくん、ごめんなさいっ! ボ、ボク、そんな、その、偶然・・・じゃなくて、そのっ」
言葉が上手く繋がらないよっ。
「そ、その・・・・あう〜っっ」
もう逃げちゃうよ、こんなの〜っっ!!
「あ、コラ、置いてけソレ!!」
「あうぅ〜、あうぅ〜っ」
なおくんのばかっ、なおくんがぜ〜んぶ悪いんだもんっ!
か、顔が真っ赤だよ〜っ!
「ま、待てぇ、なお!」
「ふああっ!? 何で追っかけてくるのぉ?!」
い、今なおくんの顔見たら、顔見たらっ!!
顔がぐんぐん熱くなってくのが自分でも・・・・やぁっ!!
「そ、その本返せってば!」
「やぁ、こ、来ないでよぉっ」
「待てぇ、このっ!」
「来ないでぇ、来ないでってば、なおくんのばかぁ〜〜〜っっっ!!!」
- 731 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/28 04:50:16 ID:4QHPzMiZ
- 置いときます。
この台本には続きみたいのがありまして・・・・まぁ多分公開はしません。
ってかですね、かなりやばいんですよ、コレ。
一人称が僕と同じ。 歳の差も、サッカー部なのも一緒。
こんなのうちの兄に見られたら、と思うとどきどきものですよ。
うむ、「おにいちゃんのにおい」って一回使ってみたかった台詞でした。
設定がヤバイ台本 >>721-730
- 732 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/28 04:52:21 ID:4QHPzMiZ
- 兄 →尚登 で、妹からはなおくん
妹 →素直 で、兄からはなお
分かりづらい名前でごめん。
- 733 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/28 08:31:39 ID:h6YHOE7w
- ここまで書いておいて続きを書かない手はありませんよ!
かなり期待してますんで続ききぼん!
- 734 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/02/28 17:17:32 ID:c2O8WETf
- 。・゚・(ノД`)・゚・。ごめんね。試験期間だから。ごめんね。
- 735 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/28 23:06:37 ID:4QHPzMiZ
- うふふ、早く帰ってこないと僕のちらしの裏ですよ〜?
>>733
やぁ・・・続きじゃないんですよ。 間話?
期待は裏切ると思いますから・・・・。
嗚呼、兄の部屋に忍び込んでた時期が懐かしい。
今では堂々と兄パソから2chやってます。 駄目いも。
- 736 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/02/28 23:09:23 ID:4QHPzMiZ
- あ゛、海神様へのレスか?
いかんにゃ〜、最近調子に乗ってるで、自分。
ちょっとしめてくる。 きゅっ。
暫く僕も旅に出るわさ。
- 737 :前スレ931 :05/02/28 23:13:45 ID:9/ojwIIT
- >>736
いやいや、ナイスでしたよ姐さん
ボクっこは自分的にツボなんで、続き期待ですー
- 738 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/03/03 01:26:55 ID:Zqdoy3mC
- 関係ないいけど、元ネタこれかな?
ttp://www.watch.impress.co.jp/game/docs/20020905/thing.htm
- 739 :遊星より愛を込め(消滅中) ◆isG/JvRidQ :05/03/03 20:55:55 ID:h2dCEBvZ
- 俺のコテハンの元ネタのこと?だったら、全然違うけど。
- 740 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/03/03 21:01:05 ID:Zqdoy3mC
- あ、そうですか。 無駄レスすいません。
- 741 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/03/03 22:55:15 ID:zkpi/qH3
- Σ(゚Д゚;≡;゚д゚)ゆ、遊星ししょー!?
- 742 :前スレ931 :05/03/03 23:10:08 ID:OqjEgbXZ
- うう…近頃めっきりSS減って悲しい限りです…
今はみんな充電中っつーことっすか…
- 743 :前スレ921 :05/03/03 23:29:35 ID:o+KQxof7
- 近頃SS書かずにD.C.P.S.やりまくってるわな……
しばらくPCはネット復活させられそうにないし、携帯からだと迷惑ですし
('A`).。oO(俺のSSなんて無い方がいいだろうし)
>>742
みんな受験関係で忙しいんじゃないですかね……確か3/01に試験があった気がします('A`)
- 744 :前スレ931 :05/03/03 23:39:15 ID:OqjEgbXZ
- >>743
そんな!前回の凄く面白かったっすよ。続き待ってますよう?
俺っちも、飲み会ラッシュが終わってやっとSS書き始めましたぁ(出来るだけ面白いものにするため
努力はしてるんですが…ヒロインが主人公の妹じゃないんですよねこれが。いいのかしらん?)
にしても受験かぁ…去年にやっと開放されましたよ俺は…
皆さんにも最後まで頑張って欲しいものですねぇ
- 745 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/03/04 00:02:35 ID:9LuaOXsS
- 「遊星より愛を込めて」とくれば、ウルトラセブンに決まっておろう。と
- 746 :前スレ921 :05/03/04 00:20:48 ID:/TyYmNgR
- >>744
そんな事言われたらまた書いちゃいますよ 笑
俺は順調に行けば今年受験だったハズなんですがねぇ……何処で人生が狂ったのか今じゃ社会人兼学生WWWWorz
て何書いてんだ俺
受験は頑張って欲しいですね。
てか、ヒロインが妹じゃないのはスレタイ的にさすがにやばいのでは?
妹と限定されているのがこのスレの良い所であり、悪い所でも…ある…ような…
どうなんでしょう
- 747 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/03/04 00:24:32 ID:+AWeJDjL
- >>230-231
僕は姉を書きましたよ、と。
- 748 :前スレ931 :05/03/04 00:27:06 ID:7UGQEFJN
- >>746
んと…兄と妹っていう関係そのものがテーマなんで、ギリギリいけるかなーとか思ったんですけど…
ダメかなぁ…
- 749 :前スレ921 :05/03/04 00:44:42 ID:/TyYmNgR
- >>748
なるほど…そういう事なら大丈夫じゃないでしょうか。
俺の視野が狭かったです。すいません。
期待してますね!
>>747
と、いう訳で俺のはやとちり&勘違いでした…申し訳ないです…
- 750 :前スレ931 :05/03/04 01:03:53 ID:huXytmWO
- >>749
いえ、こちらの設定の方がヤバイだけっすから…もうちょっとスレタイに沿うように
しときますです。
前スレ921さんのも期待してますからねー
- 751 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/03/04 01:27:18 ID:+AWeJDjL
- >兄と妹っていう関係そのものがテーマ
すごい期待したのは僕だけじゃないハズだ!
ワクワクドキドキ。
- 752 :前スレ921 :05/03/04 01:47:18 ID:/TyYmNgR
- >>750
931さんは今のままで良いと思いますよ!おかげで少しネタが浮かびました。
(;´-`).。oO(そっかぁ…偽妹もありだよな……)
無理に妹(義妹)にする必要はないんですよね…『妹な存在』
>>751
同じく激しく期待してます。
清次郎の人さん(ですよね?)の次回作も楽しみにしてますよ……清次郎の人・では失礼なんで何か呼び方はないでしょうか…('A`)
- 753 :遊星より愛を込(消滅中) ◆isG/JvRidQ :05/03/04 08:25:00 ID:GANQieSP
- >>745
御名答。そこまで分かれば、由来については言う事も無いでしょう。
>>747
つ[試作]姉に言われたいセリフ
>>750
一応貼ってみるといいと思うよ。
例えスレタイに沿って無くても、萌えられたら儲けもんだw
ま、俺個人としては「お兄ちゃん(またはそれに類する語)」で呼んでくれれば、妹の条件としては十分なんだけど。
>前スレ921 前スレ931 清次郎の中の人
コテハン、せめてトリップを付けたらどうだろうか……。
- 754 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/03/04 17:41:08 ID:HjVkiM0L
- ―――それは正に象牙の塔。
月下の草原を舞台に、二人の剣士は戦闘の極致を迎えていた。
その対照的な動きはさらに加速し、幾重の剣戟を重ねる。
片や、烈火の如き騎士。灼熱を思わせる剣線。
対するは、流水の如き騎士。変幻を思わせる剣線。
しかし絢爛さは微塵も無い。ただ無機質な、殺意の剣。
……それは正に象牙の塔。
突然、赤の騎士は後方に飛んだ。仕切り直しをするつもりだろうか。
「……やるな。だが、」
白刃の切っ先を向ける。
「勝つのは俺だ」
それを憮然と見つめていた青の騎士は、毅然とした態度で答える。
「もう手加減しませんよ?」
沈黙。
……空気が張り詰めていく。殺意がすべてを塗り潰していく。
重層の殺意。そして。
―――緊迫は一気に崩れた。
二人の輪郭が歪み、時間を超越する―――!!
瞬間。
……赤の騎士はすれ違い様に一閃されていた。
- 755 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/03/04 17:42:11 ID:HjVkiM0L
- 2P WIN!
「…………」
俺はコントローラーを落とした。食い入るように画面を睨む。
「今の……俺のほうが速かったよな?優希」
横を見ると、優希はえへへと可愛らしく胸を張っていた。
「にいさま。言い訳は見苦しいですよ?」
「……はい。負けました……」
しぶしぶ“夕食を創る者”と書かれたエプロンを手に取る。
「今夜はピーマン使うか」
「ぴっ、ピーマンですかっ!?ちょ、ちょっと待ってくださいっ!!あああ、ダメぇ!!」
- 756 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/03/04 17:43:21 ID:HjVkiM0L
- _| ̄|○ むしゃくしゃして書いた。
ピーマン嫌いなら何でもよかった。今は反省している。
- 757 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/03/04 20:57:00 ID:+AWeJDjL
- スキキライはいけないと知りつつ、好き嫌いする娘は良いものだ・・・。
コテハンて、自分、名乗る程の者じゃないんで・・・・。
- 758 :兄:尚登サイト :05/03/05 03:41:46 ID:xWjP97C2
- 「あ〜あ、早く春になんないかな〜」
この冬何度目だろう、そのセリフを聞いたのは。
「もう三月だ、すぐに春になる」
「ん〜、そ〜だけど〜・・・。 早く雪、とけないかなぁ?」
「お前なぁ・・・毎日毎日、そればっかりだぞ」
いい加減嫌になってくる。
「だって〜・・・早くまた跳びたいんだもん」
「あ〜あ・・・幅跳び中毒だよ、これじゃ」
「むぅ、なおくん、なんかやな感じっ」
ぷんむくれて、窓を見やる。
「あ〜あ、早く春になんないかな〜」
「・・・・・やれやれ」
オレは立ち上がり、壁に掛けてあるコートを掴んだ。
「ん・・・・なおくんどっか行くの?」
「コンビニ」
「じゃ、ボクも行く」
立ち上がって上着を掴む。
「だめだ」
「えっ、何で?」
きょとんとした顔。 まぁ断られるとは思ってなかったんだろう。
「何でだと思う?」
「えと・・・・・あ、あの、わたしも・・わたしも連れてって」
「いいぜ、なお」
「うん、ありがと」
なおの奴はもうじき中学だってのに、どうにもガキっぽいというか、男の子っぽいというか。
前から特に言葉遣いに関しては注意してきたが・・・一向に「ボク」が治らない。
将来困るぞ・・・・。
- 759 :兄:尚登サイト :05/03/05 03:43:05 ID:xWjP97C2
- 「コンビニって、ドコの?」
「一番近く。 わざわざ遠いとこ、こんな寒い中行くかよ」
「あはっ、そうだね〜寒いよね〜」
「あ〜・・・一つ言いたいことがある」
「な〜に、なおくん?」
「・・・・・・・・なんで短パンなんだ?」
そう、信じられないことに短パンなのだ、このおぜうさんは。 上着は着てるクセに。
「コレぐらいが丁度いいんだよ」
「ウソだ・・・・・」
「ってゆーかなおくんが寒がりすぎなの。 それでも北国育ちかぁ〜」
「気温が一桁なんだ・・・コレぐらいが正しいリアクションだ」
「運動してないからだよぉ〜。 なおくん、体力あるクセに。 サッカー部のクセに」
「知るか。 オレは寒いの、とにかく」
さっさと行っちまおう。
「あ、まってよなおくんっ」
並んで歩き出す。
「何しに行くの?」
「雑誌」
「雑誌・・・・・?」
「雑誌だ。 買いに行くんだよ」
「雑誌って・・・・」
「あん?」
なんか様子が・・・・?
- 760 :妹:素直サイト :05/03/05 03:44:17 ID:xWjP97C2
- 「雑誌って・・・・」
ボクの頭の中に数ヶ月前のことが蘇ります。
なおくんの部屋にあった・・・・えっちな・・・・。
「なお?」
「えっ?! な、なに?!」
「なにって・・・・どーかしたか?」
「う、ううん! なんでもないよっ!!」
ぶんぶん、っと首を振ります。
「・・・・行くぞ?」
「う、うんっ」
なおくんが歩きだします。 ボクも遅れずについて行きます。
うう・・・なんだか顔が火照ってきたよ・・・・・。
ちら、となおくんを見ると、何も知らないなおくんは真っ直ぐ前を見ているだけです。
いつものカッコイイ顔のままで・・・・・。
・・・・うぅ〜、また顔が・・もぉ、なおくんのせいだもんっ。
なおくんがえっちなのがいけないんだもんっ!
「・・・・・なおくんのバカ」
「・・・なんだと?」
「なんでもないもん」
ぷいっ、だもん。
「何いきなり不機嫌になっとるんだ・・・・?」
「ふんっ、だ」
- 761 :妹:素直サイト :05/03/05 03:45:21 ID:xWjP97C2
- 結局なおくんが買ったのはサッカーの雑誌でした。 ・・・でも、別のときにきっと買うんだもん。
「真っ直ぐ帰るぞ」
「え〜? 折角出てきたのにぃ?」
「寒い」
「だったらさ、商店街行こ?」
「商店街ぃ〜?」
「ホラ、なんか暖かいの食べてこーよっ」
「暖かいのか・・・・それならいいかな」
「やったぁ、決まり♪ 何食べよかな〜♪」
折角なんだから寒いのも楽しまなくちゃ。
「・・・・ふぅ」
「ん? どしたの、なおくん」
「いや、機嫌直ったみたいだな、って」
「へ? 機嫌?」
「・・・・いや、何でもない」
変ななおくんです。 そんなことより、何食べよっかな〜。
「甘いのがいいな〜。 鯛焼きとか」
「鯛焼きは・・・・お前はマズイような・・・」
「へ? なにそれ? 何でボクが鯛焼き食べちゃ駄目なの?」
「ボクって言うからだ」
「何ソレぇ? ヒドイよ、そんなこじつけ!」
「そんなこと言うならやめにする」
「あ、あ、ごめんなさい、ボ、わたしが悪かったよっ」
「よろしい」
「・・・・・むぅ、食べ物を盾にするなんて・・」
「何か言ったか」
「なんでもないもん」
- 762 :兄:尚登サイト :05/03/05 03:46:23 ID:xWjP97C2
- 「なんでもないもん」
またまたなおがむくれてしまった。
う〜む、ちょいとひどかったかもな・・・・。
しかし、ボク、背が低い、生足、ショートカット、に鯛焼きまでプラスされたら・・・・色々マズイ気がする。
それだけは阻止しろと天が言ってる気がする。
「・・・・で、何にする?」
「えと・・・・甘くて暖かいの・・」
「甘いのじゃなきゃ駄目なのか?」
「んー・・・・なおくんは甘くない方がいい?」
「俺は甘いのはそんなに好きじゃない」
「そだったね。 じゃ、肉まん!」
「肉まんか・・・コンビニに戻るのか?」
「おやおや〜? なおくん知らないの〜?」
「・・・・なんだよ」
「最近おにがわらさんとこの近くに中華まん屋さんが出来たんだよ〜?」
おにがわらさんとこ、とは、おにがわら診療所のことだが・・・。
「ちゅうかまんやぁ〜?」
何だソレ。 聞いたことが無い。
「なおくんもボ・・・わたしも田舎者だから知らないだけだよ〜。 都会じゃ中華まん屋さんくらいあるんだよ」
・・・・・そうなのか。
「ね、行ってみよ?」
「むぅ・・・百聞は一見にしかずか」
「決まりだねっ。 肉まん肉まん〜♪」
「あれ・・・ってゆーかそれならお前はあんまん食えばいいだろ」
「なおくんと同じのがいいんだもん」
「・・・・そーかよ」
- 763 :兄:尚登サイト :05/03/05 04:08:21 ID:xWjP97C2
- 「ん、ここか」
確かに・・・中華まん屋、とでっかく看板に書いてあるな・・・・なんで病院の近くに食い物屋・・・・・・。
「尚登さん?」
「あん? 誰だ俺を呼ぶのは」
「えーと、虎鉄です」
後ろに立っていたのは中学のときの後輩だった。
「鉄か。 なにやってんだ?」
「あの、ここ、俺の家です」
指差すのはおにがわら診療所。
「そーいやそーだったな」
「先輩は?」
「中華まん屋に」
「あー・・・・あそこですか・・」
「あん? 何だよ、その思わせぶりなセリフ」
「いえ・・・・そちらは?」
と、なおを見やる。
「あ、えと、妹の素直です。 今度中学生になります」
ぺこりとお辞儀。
「こんにちは。 俺は虎鉄。 よろしくね」
「あ、はいっ」
「さてさて挨拶も済んだ所で話を戻そうか」
「・・・・逸らそうとしたのに」
「そんなことは許さん。 吐け」
「あ〜、その・・・・店に入るの、この時間帯は先輩だけにした方がいいですよ」
「は?」
「それじゃ」
「あ、こら待てっ」
なんだよ・・・逃げるようなことなのか?
- 764 :妹:素直サイト :05/03/05 04:10:55 ID:xWjP97C2
- 「それじゃ」
虎鉄さんが家に入って行ってしまいました。 なんだろ・・・・?
「・・・・・まぁ、一応俺だけで入るから待っててくれ」
「・・・うん」
なおくんがお店に入って行きます。 待ちます。 ・・・・・・。
「・・・・・うぅ、遅い〜」
時計を見ます。 もう三分は経ってます。
「早く〜。 なおく〜ん、一人で外に居る身にもなってよ〜」
五分以上待たせたらデコピンしちゃいます。
「う〜、う〜、遅いよ〜」
「・・・・・誰か待ってんの?」
「え・・・あっ、お姉さん」
「や、憶えててくれたんだ」
それはこの間パンツを見られたお姉さんでした。
「誰待ってるの? お兄さん?」
「はい。 なおくんってばヒドイんです。 もう五分・・あ〜、六分も! ボクのこと待たせてるんですよ!」
「六分って・・・・はは、せっかちさんなんだ」
「そんなことないですよ〜。 なおくんの方がよっぽどせっかちです。 ボクが着替えるのも待てないんだから・・・」
この間、着替えてる所を見られたんです・・・。 恥ずかしかったです、あれは・・・。
「似たもの兄妹か・・・羨ましいね」
「え・・そうですか? 似ててもいいことなんてないですよ?」
「ん〜、オレ、アニキと全然似てないからさ」
「お兄さん、いらっしゃるんですか?」
「うん。 中々かっこいいよ?」
「そ、それならなおくんだってっ」
「あはは・・・・誰だって自分のアニキが一番だよね。 キミもお兄さん好きなんだ?」
「え・・あ、あの、その・・・・」
「オレもね〜・・・なんか素直になれないんだけどさ、アニキのこと好きだよ」
「ボ、ボクも・・好き・・・・です。 でも・・ボクも、素直じゃないかも・・・」
「ん〜・・・お互い、要努力、だね」
- 765 :妹:素直サイト :05/03/05 04:12:20 ID:xWjP97C2
- 「じゃ、またね」
「あ、はいっ」
お姉さんが歩いていきます。
「素直に、かぁ・・・」
ボクの名前なのになぁ・・・。 なれないんだよね・・・。
きぃ・・・と、お店のドアが開きます。
「あ、なおくん」
「・・・・・無駄に疲れた」
「・・・・なおくん?」
「いや・・・何でもない。 ほら、肉まん」
「わ、ありがとー。 待ってて、お金・・・・」
「いらねーよ」
「え、でも・・・」
「奢る、ソレくらい」
「あ・・・あ、ありがと」
袋から熱い肉まんを取り出します。
「わ、あっついねぇ」
「まぁわざわざ店で買って冷めてたら最悪だからな」
「ん〜、おいしいねぇ」
「そうか・・・」
「あれ、なおくん食べないの?」
「・・・・疲れたからいい・・・」
「え〜、一緒に食べよ〜よ?」
「いや・・・・食欲がない。 ってか買ってない」
え・・買ってないの? そ、そんなぁ・・・・一緒に同じの食べたかったのに・・。
「むぅ・・・しょうがないなぁ」
「ああ・・・・悪いな」
「はい」
「ん?」
- 766 :兄:尚登サイト :05/03/05 04:14:25 ID:xWjP97C2
- 「はい」
と差し出された右手。
「・・なんだよ?」
「半分こ」
「はぁ? だから、いらないって―――」
「だめだもん、食べなきゃ」
「なんで・・?」
「なおくんと・・・・同じがいい。 一緒の食べたいんだもん」
コイツ・・・なかなか可愛いことを言いよるわい・・・。
「まぁ、そこまで言うなら」
右手から食べかけ肉まんを頂く。
「って、半分以上残ってるぞ」
「食べてもいいよ?」
「バカ、コレはもともとお前のために買ったんだから、それじゃ本末転倒だろ」
「でも、疲れたときは美味しい物いっぱい食べれば元気になれるよ」
「あ、いや・・そんな心配されるほど疲れた訳じゃないから」
「そお? でも食べて。 ボクおなかいっぱいだから」
「んなわけ・・・・まぁいいや、食うぞ?」
「うん」
「ん・・・言うだけあって、なかなか美味いな」
あの女、腕だけは確かか・・・。
「おいしいよね」
「ん。 やっぱりお前も食え」
「え・・? いーよ、ボクはもう」
「遠慮なんかすんなって」
「してないよぉ」
「くのやろう、あんまり遠慮するのも失礼なんだぞ」
「してないってば〜」
- 767 :兄:尚登サイト :05/03/05 04:15:59 ID:xWjP97C2
- 「そんなに嫌なら・・・・こうだ!」
「え・・むぐっ?!?」
肉まんを無理やり突っ込んでやる。
「むぐむぐ・・・・?!」
「ほーれほれ。 食わんと窒息するぞ?」
「む、むぐ・・・・・・んぐ・・」
食い始めたようだな。 手を放してやる。
「んぐんぐ・・・ぷは、ひ、ヒドイよぉ、なおくんっ」
「なにおう。 お前があんまり嫌がるからだろ?」
「嫌がってなんかないよぉ。 ボクはただ、なおくんにいっぱい食べて欲しかっただけだもん」
「嘘吐けぇ、俺が口にしたもんなんて食べたくないだけだろ?」
「そ、そんなことなっ・・・!!」
「・・・・?」
「か・・・・間接キス?」
「は・・・? 何を今更」
肉まんでキスもなにも無いと思うが・・・。 でも、一応そうなる・・・よな?
「え、やだ、ボ、ボク、なおくんと間接・・・?!」
そーゆーの気にする辺り、まだ小学生だよなぁ・・・もうすぐ中学だけど。
「まぁはじめにしたのは俺の方だけどな。 なおの食べかけ食ったから」
「わ、わ、そ、それじゃ、お互いに・・・!?」
なんか面白いな。
「これじゃ本当にキスしたのと変わんないかもなぁ〜?」
「ええ??!! そそ、そんなぁ?!」
「なんだなお、俺とキスは嫌か」
「え、あの、その・・・・っ」
「やっぱそーなのかぁ・・・お兄ちゃん傷ついたなぁ」
「あ、あう・・・・」
- 768 :妹:素直サイト :05/03/05 04:24:14 ID:xWjP97C2
- 「やっぱそーなのかぁ・・・お兄ちゃん傷ついたなぁ」
な、なおくんとなら・・いやじゃないケド・・・・・・・。
う〜・・・ヒドイよ・・ファーストキス・・・・もっとちゃんとしたのがよかったよぉ・・・。
「うぅ・・・ヒドイ、ヒドイよぉ・・・ぐす」
「おわ、なお、泣くなよ!」
「だってぇ・・ボクのファーストキス・・・」
「あ、アレは冗談だって」
「・・・本当?」
「本当だって! 泣かないでくれよ、な?」
「う・・うん」
ごしごし、と涙を拭います。
「わ、悪いなお、まさか泣くとは思わなかった」
「う、ううん、ボクこそ泣いちゃったりしてゴメンね?」
「いやいや、今のは俺が完全に悪い。 女の子なのにな・・・あーいうからかい方はまずかったな」
「ん・・・えへへ、いっつもボクに女の子らしくしろとか言ってるのにね〜?」
「う・・・・スマン」
なおくんってば、口ばっかりなんだから。
「う〜む・・俺が女の子のこと分かってないんだもんなぁ・・・もっと乙女心を学ばねばならんな」
「ぷっ・・なおくんってば真面目な顔でなに言ってるの〜?」
「いやぁ、深刻な問題だぞ。 こんなんじゃいつまで経っても彼女の一人も出来ん・・・」
「え・・・・彼女?」
「いつまでもフリーじゃなぁ。 何かとお前にも世話させちまうし」
「う、うん・・・・・」
なおくんに・・・彼女・・・・。
「そ、そんなに焦んなくてもいいんじゃない?」
「ん〜・・・まぁ焦って身に付くモンでもないか」
「そ、そ〜だよ!」
「まぁこんなんだから、彼女出来ても世話になるかもしんねーな。 そんときは頼むわ」
「う、うん・・・・・」
なんか・・・・やだな・・。
- 769 :妹:素直サイト :05/03/05 04:29:21 ID:xWjP97C2
- なおくんも・・・彼女、つくっちゃうんだね・・・。
そう、だよね・・・・男の人だもん、それが普通だよね・・・・。
いつまでも・・・・ボクと一緒じゃ・・・ないんだもんね・・・・。
「なお・・?」
「ん、なに?」
「いや・・・なんか沈んでるから・・やっぱ結構傷ついたか、アレ」
「ううん、そんなことないよ?」
「う〜ん・・・分かった、何か一つ言うことを聞いてやろう」
「そ、そんな、別にそんなことしなくても・・・」
「遠慮なく言え」
「・・・・・・・・」
ボクの、願い・・・・・。
なおくん・・・ボク・・ずっとこのままがいいよ・・・・。 二人で居たいよ・・・彼女なんてつくっちゃやだよ・・。
でも・・・こんなの、ただのワガママだよね・・。 素直になるとか・・そんなんじゃないよね・・・。
「なおくん・・・」
「おう」
「なんでも・・・いいの?」
「二言はない」
「だったら・・・・ちゃんとして」
「なにを?」
「キス・・・・ちゃんと、して」
「は・・・・はいっ?!」
「ボク・・初めては、なおくんがいい・・・・なおくんじゃなきゃ、やだ・・」
「ば、バカお前、そんなの・・・・っ」
「やだもん・・・なおくんと離れるの、やだもん。 でも、ワガママだから、それだと・・・だから、代わりに、キスして・・・」
ちょっと・・・泣いてた。 泣き落としなんて・・卑怯かな? でも・・・・。
「なおくん・・・・・」
ボクは、目を閉じた。
「な、なお・・・・」
そして―――――。
- 770 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/03/05 04:36:51 ID:xWjP97C2
- 終わりだよ?
封印したのはネタが被ったんで永久封印です。
こんなのでよければあげます、先生。
「お兄ちゃん(またはそれに類する語)」じゃないけど、妹だからセフってことに。
設定がアレなのの続きみたいなの >>758-769
サイトチェンジの生かし方を模索中。 コレじゃ読みづらいだけですからねぇ。
しかし連投規制がウザいです・・・・。
どうしても呼ぶ名前が欲しいという奇特な方は、>>3を。
- 771 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/03/05 04:46:09 ID:xWjP97C2
- 妹サイトが敬語混じりで読みづらいのは、小学生っぽいかなーって思ったからです。
駄目だこりゃ。
次回からの台本に期待しないで下さい。
なんかホントにちらしになっちゃいそうでこあい。
神々のSS所望。 もっとだ、もっと僕に力を・・・・!!!
- 772 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/03/05 05:08:31 ID:/Y8RxE+v
- えっと…清次郎の中の人ですか?
GJです!
Kanonネタキタ━━━( ゚∀゚ )━(∀゚ )━(゚ )━( )━( ゚)━( ゚∀)━( ゚∀゚ )━━━!!!!
兄は一体中で何をされたんですか?
- 773 :コンズ :05/03/05 08:06:15 ID:XC1qqSCF
- キタ━━(°∀°)━━━
乙華麗様です!!次回に期待っ!!
まだかね?
- 774 :雨音は紫音の調べ ◆cXtmHcvU.. :05/03/05 08:37:43 ID:g2Iqivhb
- GJ!Σd(>ヮ<)
兄が中で何をしたのか僕も気になるっス。
肉まん作ってたのかな?
- 775 :中華:偽妹 1 :05/03/05 14:37:16 ID:xWjP97C2
- どうして自分がこんなことをするのか、よく分からなかった。
「それじゃあ始めるよ」
なんで女の子が僕を不敵に睨んでいるのか分からなかった。
「勝負は一本。 お題は――言わなくても分かってるね?」
女の子が頷く。 ばあさんが僕を見る。
「いいね?」
ここで駄目、って応えても駄目なんだろうね・・・。
しかたなく頷く。
「それじゃあ厨房担当決めの一本勝負・・・・はじめ!」
調理場に声が響き渡った。
「ここかな・・・・?」
求人ちらしを頼りに着いた場所。 開店前で看板も出していない。
「病院の隣・・・ここだよ・・ね?」
戸をこんこん、と叩く。
「あの・・・すみませーん。 ちらし見て来たんですけど・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・。
なかなか返事が返ってこない。
「あれ・・・開いてる?」
手をかけると戸が動いた。
「あの・・・・」
首だけ入れて中を覗く。 うわ・・・・な、なにこれ・・・。
「ぼ、ボロい・・・・」
「あんだって?」
「うわぁっ!?」
後ろから声。 驚いて僕は奇声を発してしまった。
「あんた、何してんだい?」
そこに居たのは一人のばあさん。
「えと・・・その」
「見てのとおり、うちは開店前で金目のモンなんかないよ」
- 776 :中華:偽妹 2 :05/03/05 14:38:26 ID:xWjP97C2
- 「金目・・・って違います! 泥棒なんかじゃないですよ!」
「ならなんだってんだい?」
「あ、あの・・・これ」
と差し出すちらし。
「ほう・・・あんた、うちで働く気かい?」
「は、はい、出来れば」
「見てのとおりうちは貧乏だからいい待遇なんて出来ないよ?」
「・・・・いいんです」
「ふん、ワケありかい。 まぁいいさ、安月給でなら雇うよ」
「あ、有り難う御座います!」
「まぁ中に入んな」
中に通される。 まぁ、なんというか・・・・。
「ボロいかい?」
「そ、その・・・・」
「ま、安く買い叩いたからね。 でも」
と、そこは―――。
「ここだけはしっかりしとる」
「わ・・・す、すごい、ちゃんとした厨房だ・・・・!!」
周りがボロいせいもあって、厨房の設備は格段に良く見えた。
「どうだい? 料理屋の一つでもやれそうなモンだろ?」
「は、はい、すごいです」
「かっかっかっ。 その目付き、あんたも厨房希望かい」
「え・・・あんたも?」
「ま、中に入んな」
「あ、はい」
事務室らしき所に入れられると、そこには・・・。
「ばばさま、何してるか?」
・・・・女の子がいた。
- 777 :中華:偽妹 3 :05/03/05 14:39:28 ID:xWjP97C2
- 「うちはただの中華まん屋。 調理に二人もいらん。 ちゃっちゃと決めちまいな」
そ、その理屈は分かるけど・・・。
「ふふふ・・・この勝負、わたしの勝ちね!」
そのちょっと怪しい日本語も分かるけど・・・・。
「な、なんでホイコーロー勝負!?」
「オトコが決まったコト、グダグダ言わないアル!」
「あ、アル・・・!? ば、ばあさん、この娘、なんなの?!」
「うん? あたしの孫さね。 広東育ちの」
「いや、アルって・・・・」
「そんなことより料理しなくていいのかい?」
「おわぁ、そーだった!」
野菜を切っていく。 ふと目をやると・・・。
「わ、なんだあの手つき!?」
・・・・・・野菜が宙を舞って切られていく。
「あの子はホイコーローが一番得意なんだ」
「って、僕が不利じゃないですか!!」
「イチイチうるさいアル! オトコならビシッとするアル!」
うー、このままじゃ負けちゃうって! 折角見付けた僕の居場所なのに・・・・!
「ま、負けられるかぁ!!」
僕はペースを上げた・・・・。
- 778 :中華:偽妹 4 :05/03/05 14:40:36 ID:xWjP97C2
- 「そこまで!」
どうにか僕が作り終えた所で、ばあさんが言った。
「ふふーん、わたしの回鍋肉が冷めてしまうとこだたアル」
「う・・・」
「まず食ってみるのが先さね」
先にあの娘のから食べる。
「ふむ・・・腕を上げたね」
「当然アル」
「・・・・美味い」
ちゃんとしたホイコーローは肉より野菜が美味い・・・・コレは、まさにそれだ。
「ふふふーん、どうやら勝負あったカンジアル」
「それじゃあこっちも食うよ」
う・・・・ど、どうだ・・・?!
「ほう・・・・これは・・・・」
何その微妙なリアクション!?
「勝負あったね」
「当然アル」
「厨房担当は―――アンタだよ」
「・・・・・・ぼ、僕!?」
「・・・・・・ええ?! な、なんでアル、ばばさま!!」
「食ってみな」
「む・・・・あむ」
神妙な面持ちで食べていく・・・。
「そ、そんな・・・ウソアル・・・・・」
「この勝負、アンタの負けさ」
「ウソ・・・ウソアル!!」
「あ・・・っ」
女の子は飛び出して行った。
「ほっときな。 アンタは明日から来な」
い、いいのかな・・・でも、他人の僕が出来ることなんてないし・・。
- 779 :中華:偽妹 5 :05/03/05 14:42:27 ID:xWjP97C2
- 翌日、僕は店の前に居た。 昨日の今日で・・・あの娘に会うのは、ちょっと気が引けるなぁ。
相当な自身があったみたいだったからなぁ・・・。 しかも一番得意なホイコーロー・・。
「っていうか開店もしてないのに何させるつもりなんだろう・・・」
「やることならいっぱいあるんだよ」
「うわぁ、ばあさん、また後ろかよ!?」
「何をビビってんだい。 店内の片付けがあるんだ、とっととお入り」
「わ、ちょ、待って、心の準備が・・・」
無理やり中に入れられると―――。
「あ、お兄ちゃん、ようこそアル!」
あの娘が・・・・ってええ!?
「お、お兄ちゃん・・・・!?」
「昨日お兄ちゃんに負けて分かたアル。 わたし、テングなてた。 上には上が居るアル。
お兄ちゃんの回鍋肉、とてもおいしかた・・・・だから、お兄ちゃんてよばせて欲しいアル!」
「だ、だからの使い方が変なような・・・なんでお兄ちゃん?! 意味分かってる!?」
「尊敬できる、身近、年上、って聞いたら、ばばさまが教えてくれたアル。 間違てたアルか?」
「ば、ばあさん!?」
「かっかっかっ。 いいじゃないか、アンタシスコンだろ?」
「うぐ、何故ソレを・・・・!?」
「駄目アルか・・・?」
「だ、駄目って言うか・・・」
「お兄ちゃん・・・・」
「・・・・・・・是非そう呼んで下さい」
「やったぁ、んこぃ、どもありがと!」
「わわ、跳び付かないでよっ」
「わたし、藍、らん言うアル。 お兄ちゃんは?」
「ぼ、僕は浩人・・・・」
「ひろと・・・かこいい名前アル。 これからよろしくアル、浩人お兄ちゃん!」
う・・・お、お兄ちゃん・・・・ぼ、僕の理性、もつんだろうか・・・・。
僕の、新しい日常が始まった・・・騒がしく。
- 780 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/03/05 14:47:37 ID:xWjP97C2
- 中華ならなんでもよかった・・・とういう話。
ホイコーローは四川料理、ランは北京読み、育ちは広東・・・とバラバラ。
一応わざとですよ?
続かせようかと思ったけど、止めた方がいいカンジ・・・。
プロジェクト僕のチラシの裏。
- 781 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/03/05 14:53:34 ID:xWjP97C2
- 一時間半じゃこんなんですた。
身近、ていうのはこれから身近になるってことですよ。
ほぼ毎日顔あわせるようになるから。
中華な偽妹 >>775-779
>>772 >>774
秘密です・・・って対したことじゃないんですが。
- 782 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/03/05 16:20:14 ID:+Xb4ZXZv
- 「お兄ちゃん?……もうっ、早く起きてよ〜!」
………………。
「わたし朝練があるんだからね?先に行っちゃうよ?」
…………。
「……ふんだ。いいもん、お兄ちゃんなんて知らないから!」
……。
「―――あれ?」
俺は目を開けた。もぞもぞと布団から這い出て、目覚まし時計を引っ掴んだ。
……すでに8時。
…………あはは。
完っ璧に遅刻コースだ!!
「くそっ!比奈のやつ、起こせっての!!」
―――あれ?
待てよ。そういえば何か聞いたような気がする。
俺はせわしなく動きながらも、わずか数行上のやりとりを回想してみる。
……ああ。そういや言ってたな。
「はあ……間に合うかなぁ」
絶望的な期待を込めて、俺は制服の袖に腕を通した。
- 783 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/03/05 16:21:48 ID:+Xb4ZXZv
- 「なんだ、余裕じゃないか」
校門をくぐり、備え付けの時計を見上げ、俺は呼吸を整えた。
本気で走ったら案外早く着いてしまった。さすが俺だ。元テニス部なだけある。
緩やかなスロープをのぼっていくと、ふと視界に嫌なものが入った。
「……朝練か」
見ると、テニス部の連中がコンクリートの壁に打ち込みの練習をしているところだった。
その中に見慣れた後ろ姿があるのを見つけ、俺はゆっくりと近づいていく。
「よう、比奈。朝から元気ですねぇ」
「ひゃうっ!?」
突然、背後から声をかけられた制服の女の子―――比奈は、慌ててボールを打ち損なった。
ふたりのすぐ横を通過して、ボールはスロープを転がっていく。
「あ!あああっ!!」
それを比奈は呆然と眺め、がっくりと肩を落とした。
「お兄ちゃん……?」
「ははは。愉快、愉快」
そのまま背中を向けて立ち去ろうとすると、がしっと手を掴まれた。
「拾ってきて」
「嫌だ」
……ゴゴゴゴゴ、と擬音が聞こえてきそうな雰囲気に変わっていく。
ところが。比奈は本気で怒っているつもりだろうけど、まったく怖くない。
そもそも比奈は校内で1、2を争うほど可愛いのだ。ぷくっと頬を膨らませても、むしろ可愛い。
「……お兄ちゃん、もう一回言うね?……拾ってきて?」
「もう一回言うぞ、比奈。……い、や、だ」
周囲が後ずさりを始めた、瞬間。
- 784 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/03/05 16:23:28 ID:+Xb4ZXZv
- 「―――コラ!比奈さん、朝練はジャージに着替えてやりなさいって言ったでしょ!?」
げ。
「は、はいっ!すみません、先輩……」
向こうから一人の女生徒が歩いてくる。そいつは俺の顔を見て、にんまりと笑みを浮かべた。
「あらあら、真司君。ついに我がテニス部に戻ってくれる気になったのね?」
「アホ」
現テニス部部長で、同級生でもある女子を睨む。
「俺は戻らないって言ってるだろ」
……そう。昔、俺はテニス部に入っていた。
しかしある試合でケガをしてしまい、そのまま退部した。
そのケガは今も俺の右腕を呪っているからだ。
「……そうよね。テニスできる腕じゃないもんね」
「そういうこと。じゃあな。そろそろチャイム鳴るぞ?あと、比奈」
「は、はいっ!?」
「……朝練はジャージですること。じゃないと白いものが見え隠れして非常にいい」
きょとんとした比奈はまず下を見て、それからじわじわと顔を赤くした。
ワケの分からないセリフを吐いた俺は背中を向ける。
「おっ、お兄ちゃん!?それは早く言ってよぅ!」
「もうひとつ」
元テニス部のエースとしてではなく、兄として言う。
「今度から、朝は無理矢理にでも起こしてくれ。お前が困りそうだしな」
「あ……う、うん」
- 785 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/03/05 16:25:26 ID:+Xb4ZXZv
- 大方、俺のせいで朝練に遅れ、制服のまま練習をしていたのだろう。
やれやれ。俺はため息をもらしながら下駄箱を開けた。
―――さあ、一日が始まる。
=====
_| ̄|○ このスレの役立たず、海中時計です。
何を発狂したか、これからテニス部の妹SSを書くつもりのようです。
すみませんが、また俺のくだらないSSに付き合っていただけると幸いです。
- 786 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/03/05 16:35:35 ID:xWjP97C2
- テニスだー!!
壁打ちキボン(謎)。
軟式かな、硬式かな・・・・ワクワク。
- 787 :前スレ921→すばる ◆9tSxotve.o :05/03/05 21:40:24 ID:VGSl8MND
- とりあえずコテ&トリ付けました。
以後これでお願いします。
海中さん、乙ですー。おもしろかったです!
たゆんさん(で、いいのかな?)、乙ですー。
あれってサイトチェンジっていうんですか?知らなかったです…難しいですよね…
次回作も楽しみにしてますよ(゚∀゚)
- 788 :雨音は紫音の調べ ◆cXtmHcvU.. :05/03/06 02:03:18 ID:CFfydd51
- >>たゆんさん
ここでは馴れ馴れしく「ちゃん」つけない方がいいですよね?
SS乙です〜!
語尾にアル…イイですねぇ… (≧∇≦)b
>>海中時計さん
テニスっ娘萌えまくりです! Σd(>ヮ<)
白いものが見え隠れ…… (*´Д`)ハァハァ
>>すばるさん
コテ&トリおめでとうございます!
- 789 :コンズ :05/03/06 02:49:07 ID:mEFyJ9vS
- たゆん様、海中時計様、乙です!!やっぱりココわイイっ(・∀・)
- 790 ::生命を貫く鉄の槍 :05/03/06 03:37:23 ID:VMtaWsII
- カチャリ、カチャリ――。
暗い洞窟に音が響く。 僕は唯一の明かりのアルコールランプを頼りに、「武器」を組み立ていた。
これは僕らを守る槍。
同時に、僕らがここに居なければならない理由を作った槍。
――僕と、あの子の両親を貫いた槍。
「おにいちゃん・・・・・」
奥から声。
「まだ、起きてたの?」
「うん。 手入れをしないと、すぐに壊れちゃうんだ」
そういって僕は彼女に黒い槍を見せる―――拳銃という名の槍を。
「早く寝ないと、明日も大変だよ?」
「うん、分かってる。 もう寝るよ」
「じゃあ、一緒に寝よう?」
「うん」
簡単なベッド・・・拾った毛布を敷いただけのそれ。
二人で並んで横になる。
「寒くない?」
「うん。 おにいちゃんにくっつけば大丈夫」
「そっか。 じゃ、おやすみ」
アルコールランプの灯りを消す。
「うん、おやすみおにいちゃん。 明日も・・・よろしくね?」
「うん」
僕は目を閉じた。
明日も続く戦いに備えて。
僕はただ、この子を守りたかった。
- 791 ::ただ殺意を乗せたその音 :05/03/06 03:38:37 ID:VMtaWsII
- タタタッ、タタンッ。
嫌になるくらい軽快な音。
だがその音一つ一つに禍々しい程の狂気が詰まっているのを、僕は知っていた。
タタタタタンッ。
絶え間なく続く音の絶え間を見計らい、僕は飛び出す。
タンッ、タンッ、タンッ。
音を、今度は僕が発する。
三つのうち一つが、その狂気の牙をむいて男に飛び掛ったようだ。
あと、三人。
僕は左の腰に下げたパイナップルを手に取った。
安全ピンを抜いて、投げる。
そして、炸裂。
二人の男がソレに飲まれたようだ。
あと、一人。
僕は周囲を見渡した。
先程の爆発を逃れて・・・・彼は何処に?
慎重に身を乗り出す――瞬間、後ろに物音。
男が僕の後ろに飛び出して来た。
だが・・・・。
「な・・・・子供?!」
男は引き金を引くのを躊躇ってしまった。
僕は、左手の引き金を引いた。
タンッ。
嫌になるくらい軽快な音。
「おじさん、ここには子供なんていないよ。 ここにいるのは、生き残る人と死ぬ人だけだよ」
もう応えることなどないソレに、僕はつぶやいた。
僕は生き残る。 ただ、彼女を守るために。
- 792 ::11年の命、戦場を駆けて :05/03/06 03:40:16 ID:VMtaWsII
- 戦場は旧市街地を離れ、原野の方に広がっていった。
遮蔽物の少ない原野。
当然標的になる確率は高くなる。
でも、僕は戦っていた。
あの子と生きていくために。
「コージさん、今日の分、下さい」
「ん、お疲れさん。 ほら」
食べ物の入った袋を受け取る。
「ありがとうございます。 それじゃ、また」
早く帰ろう。 あの子が待ってるから。
「コージ・・・あの子・・・」
「ん、まだ11だそうだ」
「11・・・・生きていくためとはいえ・・・あんな子供が戦場に、ね・・・・」
幾度もの爆破を繰り返され、道は荒れ果てている。
そんな道を、転ぶ限界の速さで駆けていく。
今日の食料にはあの子の好きなリンゴが入ってる。
僕は早くあの子が喜ぶ顔が見たかった。
「おにいちゃん、おかえりなさい!」
あの子が迎えてくれた。
どうやら洞窟の外で僕を待っててくれたらしい。
「ただいま」
この子の笑顔を見て、僕はやっと戦場から帰って来られる。
僕だって、本当は怖い。
僕や、この子の家族を殺した、こんな武器は憎い。
でも、僕はこの子の笑顔のためなら、どんなつらいことも我慢出来た。
僕は、誰のためでもなくこの子のために死ぬんだろうと思っていた。
- 793 ::少年の存在意義 :05/03/06 03:41:50 ID:VMtaWsII
- 「ほら、リンゴだよ」
「わぁ・・・リンゴだぁ」
満面の笑顔になる。
ああ、それだけで僕は救われる。
血で汚れたこの手にも、何の悔いも浮かばなくなる。
「食べていいの?」
「もちろん」
「ありがとう、おにいちゃん!」
僕は、この子に救われている。
この子がいるから、僕は生きている。
ただ、この子が望むように・・・・。
「あむ・・・おいしいよ」
「うん、そっか」
おいしそうに、リンゴをかじる。
「おにいちゃんは食べないの?」
「うん、全部食べていいよ」
「わぁ、ありがとう」
頭を撫でると、くすぐったそうに目を細めた。
「おにいちゃん・・・やっぱりおにいちゃんも食べよ?」
「うん? 僕のことは気にしなくていいよ」
「でも、はんぶんこがいいよ」
「・・・そうかい?」
「うんっ。 おにいちゃんと一緒の方が、きっともっとおいしいもん」
「じゃあ・・僕も一口」
爽やかな甘味が僕に広がる。
「うん・・・おいしいね」
「うん! おにいちゃんと一緒だもん!」
この子のために・・・・そう、僕はこの子のために、ここに存在しているんだ。
- 794 ::二人、戦場に生き抜いて :05/03/06 03:43:16 ID:VMtaWsII
- 「おにいちゃん・・・」
「ん?」
「明日も・・・よろしくね?」
「うん」
「明日も・・・おにいちゃんでいてね・・・・?」
「うん」
「ずっとずっと・・おにいちゃんでいてね?」
「うん」
「おにいちゃんは・・・・おいてっちゃやだよ?」
「うん・・・・僕は置いてかない」
「おにいちゃんだけ・・・・おかあさんたちのところに行っちゃ・・・やだよ?」
「うん・・・・僕は、死なないよ」
「おにいちゃん・・・・」
「うん・・・・おやすみ」
僕はただ、この子を守りたかった。
戦場の中、残された僕ら。
お互い一人。 でも今は二人。
僕は生き残る。 ただ、彼女を守るために。
でも、その時が来れば―――。
僕は、誰のためでもなくこの子のために死ぬんだろうと思っていた。
だって僕は、もう死んでいてもいい存在だったから。
この子が僕に生きる意味を与えてくれたんだ。
この子のために・・・・そう、僕はこの子のために、ここに存在しているんだ。
僕は生きる。 この戦場を、この子と供に。
- 795 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/03/06 03:49:00 ID:VMtaWsII
- ときどき不意に真面目なのを書きたくなる。
それが台本屋クォリティ。
「お兄ちゃん(またはそれに類する語)」で、
どれだけ普通じゃない兄妹モノを書けるかチャレンジしてみますた。
ちなみに外国ですよ。 言わなくても分かるか。
戦場の二人 >>790-794
呼ばれるのは何でもよかった。 今も反省はしていない。
なんか某スレ以外でHN呼ばれるの、妙な気分・・・。
- 796 :中華:第二話 1 :05/03/06 05:32:32 ID:VMtaWsII
- 一週間。 僕がこの店に来て、一週間。
かなりボロかった店内の内装も、かなりしっかりしたものになった。
「明日、店を開けるよ」
「え、明日ですか?」
結構急だったので驚いた。
「ああそうさ。 アンタの仕事も明日からが本番さね」
「分かりました・・・それじゃ厨房借りていいですか?」
「練習かい?」
「はい。 開店初日に下手なもの出せませんから」
「かっかっかっ。 アンタなら大丈夫さね」
・・・なんの根拠があってそんなこと言うんだろう・・・・。
「ま、気の済むようにするがいいさね」
「あ、はい、有り難うございます」
「さて、と」
僕は受け取ってあったレシピを取り出す。
別に中華まんを専門に作っていたわけじゃないけど、それでもここの中華まんのレシピは結構変わってると思う。
「え・・・ここで春菊入れ・・シメジ!?」
・・・・・本当にこのレシピであってるんだろうか。
あ、あとは蒸しあがるのを待つだけ・・・・なんだけど。
「ふ、不安だ・・・・」
「お兄ちゃん、何してるアル?」
「わぁ! ら、藍! び、びっくりしたぁ」
「あ、でういんじゅ・・・ゴメンなさい」
しゅんとする藍。
「あ、や、そんな謝ることじゃないんだ。 僕がぼーっとしてたのが悪いんだし」
っていうか・・・まだ「お兄ちゃん」耐性がついてないだけなんだけど・・・。
- 797 :中華:第二話 2 :05/03/06 05:34:15 ID:VMtaWsII
- 「あ、そのね、試しに作ってみてるんだ」
蒸し器を指す。
「そうアルか・・・。 ばばさまの中華まんはとてもほうめいよ!」
「ほうめい?」
「おいしアル」
「へ、へぇ・・・」
でも、シメジ・・・・まぁ食べてみれば分かるか。
「ん、出来たかな」
蒸し器から取り出していく。
「ん〜、いい匂いアル」
「そうだね・・・・食べてみよう」
僕は肉まんを一つ取って食べてみた。
「わ・・・・・美味いよ、コレ」
「いくどう、おいしいね? お兄ちゃん、わたしも食べていいアル?」
「ん、いいよ」
「んこぃ・・・・ん〜、はんふく・・・お兄ちゃんのウデも合わさて、とてもおいしいアル」
「ん〜、コレなら売れそうだね」
すぐにこの町の名物になるんじゃないかな。
「看板娘もいるアル。 売れない方がヘンよ」
「あはは、そーだね」
ん・・・僕の腕も落ちてないみたいだし、一安心かな。
「よいしょっと」
片付けなくちゃね。
「あ、わたしも手伝うアル」
「ん、それじゃ頼んじゃおうかな」
「任せるアル!」
二人で並んでジャブジャブ。
あ〜・・・なんか本当の兄妹みたいだ・・・・・幸せ。
「お兄ちゃん? なんかぼーとしてるアル。 だいじょぶか?」
「ん!? あ、ああ!! 大丈夫、大丈夫!!」
- 798 :中華:第二話 3 :05/03/06 05:35:18 ID:VMtaWsII
- 「よっし、片付け終わり」
「二人なら早いアル」
「うん、助かったよ」
「そ、それじゃあ・・・」
と、頭を突き出す藍。
「・・・・・藍?」
「なでなで・・・・」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・くぅ!! 可愛い!! 可愛すぎる!!
「んんっ、そ、それじゃあ・・・なでなで」
「はう〜・・・・はんふく・・・・・」
本当に幸せそうに目を細める。
僕も幸せです、本当に。
「は、はい、お終い」
名残惜しいけど、いつまでもこうしてる訳にもいかないからね・・・。
「はう・・・・しあわせだたアル」
「そ、それじゃあまたね」
「あ・・・・お兄ちゃん、帰てしまうアル?」
「う、うん・・・・」
「そうアルか・・・・」
またまたしゅんとする藍。
「あ、明日も来るよ?」
「うん・・・・・」
「そ、それじゃね・・・」
「うん・・・・お兄ちゃん、ちょぃぎん・・・」
そ、そんな泣きそうな目で見られても・・・・!
「あん? まだ居たのかい」
「あ、ばあさん・・・」
「やれやれ、外見てみな」
「外・・・・? うわ、何この雪!?」
外は季節外れの大雪模様だった。
- 799 :中華:第二話 4 :05/03/06 05:36:44 ID:VMtaWsII
- 「こ、これじゃあ電車も止まってるかも・・・・」
僕は携帯を取り出して、調べてみた。
「うわ・・・・明日まで復旧は絶望的って・・・・」
「お兄ちゃん・・・・・電車、駄目だたアルか?」
「うん・・・・どうしようかな・・・・」
「・・・お兄ちゃん、それなら泊まてくといいアル」
「え・・・・・と、泊まるって、ドコに?」
「ココ・・・わたしとばばさまのウチにアル」
「え・・・・ええ?!」
「ソレがいいアル、決定アル! お兄ちゃんお一人、ご案内アル!」
「え、ちょ、待って待って!」
「まぁ仕方ないさね。 今日は泊まってきな」
「ば、ばあさんまで・・・!」
「やたアル! お兄ちゃんと明日まで・・・明日も一緒アル!」
そ、それは・・・一晩同じ家にいるということで・・・・かなり僕の理性がピンチなんですけど・・?!
こうして僕の一日は・・・・まだまだ続きそうな予感。
頑張れ、僕の理性! 神奈川浩人の、明日はどっちだ!?
続くらしい。
- 800 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/03/06 05:42:46 ID:VMtaWsII
- そしてときどき狂ったように書くのも台本屋クォリティ。
今の僕ならもう一本くらい書けそうなテンション。
書かないけど。 質より量が僕の台本屋モットー。
紅の蒼龍(仮題)第二話 >>796-799
800ゲト。 ゴメンなさい。
みんな! SSは一日一本にしとこうぜ!
健康に悪いから!
まぁ僕は台本なんで多分大丈夫れすけろね。
- 801 :雨音は紫音の調べ ◆cXtmHcvU.. :05/03/07 08:45:35 ID:STmHwddS
- たゆんさん乙ですー!
>>790-794
シリアスだ……
僕もこの子のために戦うよ!w(何と?)
>>796-799
つづきキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!!!
萌えるぜ……ッ!!
- 802 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/03/08 02:45:37 ID:lOxsD9GB
- 僕が悪かったんで誰かなんか書いてください。 orz
- 803 :中華:第三話 1 :05/03/08 05:09:05 ID:lOxsD9GB
- 「お兄ちゃーん、湯加減どうアルかー?」
「んー、最高だねー」
「そうアルかー。 足りない物、何かあるアルかー?」
「んー、シャンプーもあるし・・・大丈夫だよー」
「それじゃあわたしも入ていいアルかー?」
「んー、もちろ・・・・ダメー!!!」
「ちぇー、失敗アル」
ね、狙ってたんですか、アナタ・・・・。
というわけで。
僕は今、藍とばあさんの店の奥、居住スペースのお風呂に入ってます。
「(う〜・・・自分をドコまで保てるか・・・)」
お恥ずかしい限りだが、俗に言う妹フェチな僕。
そんな僕が藍の「お兄ちゃん」攻撃に耐えられるか・・・・かなり不安だ・・。
「(昔は純粋に『普通の兄妹』に憧れてただけなんだけどなぁ・・・何時からそういう対象になっちゃったんだろ・・・)」
ふぅ・・・まぁここで自分を追い込んでも仕方ない。
体も頭も顔も洗ったし・・・・あがろう。
「あれ・・・・着替えが・・ある」
あがってみると、そこには着替えが用意されていた。
「ん〜・・・・藍とばあさん、二人暮らし・・だったよなぁ?」
どう見ても男物のパジャマ・・・だね。
「お兄ちゃんのために買っといたアル」
「わぁ、藍?!」
戸越しに声を掛けたようだ・・・・。 びっくりした。
「着たアル?」
「ややや、ちょっと待って!」
急いで服を着ていく。
- 804 :中華:第三話 2 :05/03/08 05:10:19 ID:lOxsD9GB
- 「も〜い〜か〜い?」
「う、うん」
がらら。
戸が開けられる。
「ん〜・・・ちゃんと似合てるね。 よかた〜」
「ホントに僕のために買った・・・の?」
「勿論アル。 ちゃんと全部わたしが選んだよ」
「へぇ・・・サイズも合ってる」
「パンツも買たアル」
「・・・・・アレも藍が買ったの?」
「・・・・・ちょと、恥ずかしかたアル。 ちゃ、ちゃんと穿いてるアル?」
「う、うん」
「ならいいアル。 恥ずかし思いしたかいがあるよ」
し、しかし、そんなことまでしてくれるとはね・・・。
「晩御飯、出来てるよ」
「あ、じゃあ頂こうかな」
「はいな! こちアル!」
引っ張られていくと・・・。
「わ、茶の間だ」
畳敷きの茶の間だった。
「日本の建物なんだ、普通だろ?」
とばあさん。
まぁそうなんだけど、店内はすっかり中華屋の内装だからちょっと戸惑ってしまったわけだ。
「ほれ、とっととお座り。 飯が冷めちまう」
促され、ちゃぶ台に着く。 ・・・・ちゃぶ台なんて初めて見た。
そこに並んでいたのは―――。
「和食だ・・・・」
秋刀魚、味噌汁、菜っ葉に漬物・・・・・完全に和食。
「コレ・・・誰が作ったんです?」
ばあさん、和食も作れたのか?
- 805 :中華:第三話 3 :05/03/08 05:11:24 ID:lOxsD9GB
- 「わたしアル」
「え・・・藍がコレを?」
「はいな。 勉強したアル」
「へぇ・・・凄いなぁ」
「まぁまだまださね。 季節外ればっかりさ」
「あ・・・そう言えばそうだ」
「えへへ・・・まだ出来るのそれくらいしかなかたから・・」
「いやでも凄いよ・・・食べてもいいかな?」
「勿論アル」
「じゃ、いただきます」
ん・・・・コレは・・。
「美味しい・・・」
「ホント!? やた、ほぃさむ!」
「うん、美味しいよ、コレ・・・・凄い、下手すると僕が作ったのより美味しいかも・・・」
「そな褒めても、ナニも出ないよ〜」
「ん〜、でも本当に美味しいよ。 凄いね」
「そう言われると練習したかいあるよ〜」
「やっぱ練習したんだ?」
「はいな。 お兄ちゃんのために・・・あ」
「え・・・ぼ、僕のため?」
「・・・・・・・はいな」
こ、こんなことまで・・・・? え、ホントに・・・?!
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・何二人で世界作ってんのさ。 ここにババァが居ること、忘れんじゃないよ」
「え、あ、何言ってんすか、も〜! あははははっ!!」
「そ、そうアルばばさま! あははははっ!!」
・・・・食卓に二人の寒い笑いが響いた。
- 806 :中華:第三話 4 :05/03/08 05:12:31 ID:lOxsD9GB
- 「ふぅ〜・・・何か・・・眠れない」
それで。
僕はやっと床についたんだけれども・・・なんか眠れない。
「ん〜・・・藍があんなにまで僕を慕っててくれてるとはね・・・」
どうしてだろう・・・・藍は・・僕をかなり慕ってるみたいだ・・・・・でも、なんか・・・。
コンコン―――。
「・・・誰?」
「わたし・・・アル」
「・・藍? どうしたの、こんな時間に・・・」
「開けて・・・いいか?」
「うん」
すっ・・・と戸が引かれ、藍が入ってくる。
「で、どしたの?」
「あの・・・お兄ちゃん・・お願い・・・あるよ」
「うん?」
「一緒・・・・寝ていいか?」
「・・・・・・・・(えぇぇぇ―――――!!?)」
な、なんとか声には出さなかったけど・・・そ、それはマズイんじゃないかな!?
「ら、藍、いくらなんでも、そ、ソレは・・・・」
「ダメ・・・・・か?」
「・・・・藍?」
すがる様な・・・・目。
「う・・・・・ん〜・・・・・しょうがないなぁ・・」
「やたぁ・・んこぃ」
早速布団に潜り込んでくる。
「お兄ちゃん・・・じょうたう」
「う、うん・・・お休み・・・・」
そうして・・・・一分と経たないうちに、藍は寝息を立て始めた。
藍・・・・キミはどうして・・そこまで僕を信用してるんだ?
・・・・・なにか・・不自然な程に・・・・・・・。
- 807 :中華:第三話 5 :05/03/08 05:14:48 ID:lOxsD9GB
- 「すぅ・・・・」
穏やかな息。 本当に・・・・僕に委ねてしまっている。
まだ、会って一週間そこらなのに・・・・。
「おにい・・・ちゃ・・」
「ん・・・・?」
「すぅ・・・」
寝言で、僕を? はは・・・出来すぎだよ・・・。
「おいてちゃ・・・・や・・・」
「・・・・え・・?」
「また・・・藍を・・・らう・・・・せい、んだく・・・!!」
「・・・・・・」
「ご・・・・んだく・・・! まま、ばば・・・・ご・・らう・・・じょい・・!!」
意味は・・・・分からなかった。
けれど・・・・この娘の抱える何かを・・・垣間見た気がした・・・・。
「・・・・よしよし」
僕は、藍の頭を撫でた。 少しでも・・・藍を安心させてやりたくて・・・・・・。
「あ・・・ご・・・・・ご、んごい・・・ほう・・」
藍は、幸せそうに微笑んだ。
僕の存在が少しでもこの娘の救いになるなら・・・・こうして撫で続けよう。
いつか、本当に救える日が来るまで・・・・。
小さな決意と供に・・・僕の一日は終わった。
- 808 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/03/08 05:29:42 ID:lOxsD9GB
- お呼びじゃないのは知ってるけれど〜、出来ちゃったから貼っちゃいま〜す。
保守。
誰かなんか書いて〜・・・もう来んな〜とかでもいいから・・・・。
広東語はかなりてけと〜なんで解読しようたって無駄無駄無駄ぁですよ〜。
紅の蒼龍(もうこれでいいや)第三話 >>803-807
台本の三連投に成功。
- 809 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/03/08 16:56:01 ID:ORQiDLcI
- ノ ‐─┬ /
,イ 囗. | / _ 丿丿
| __| ―ナ′
/ ‐' ̄
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ナ' ̄ / 、___
/ ノ`‐、_
/ _ 丿丿 _メ | _/
―ナ′ 〈__ X / ̄\
/ ‐' ̄ / V /
/ \ l レ ' `‐ ノ
/ 、___ Χ ̄ ̄〉
\ 丿 /
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| _/  ̄ ̄〉 / ,
X / ̄\ ノ / _|
/ V / / く_/`ヽ
レ ' `‐ ノ ―――'フ
/ ̄ ┼┐┬┐
| 〈 / V
`− 乂 人
┼‐ | ―┼‐
┼‐ | |
{__) | _|
| く_/`ヽ
- 810 :遊星より愛を ◆isG/JvRidQ :05/03/08 18:40:02 ID:NhkRDZ5m
- 久しぶりだな……いろんな意味でさ。
幾多のSSが貼られているが……ま、俺が一々感想書いてくと、作品に泥を塗ることになるだろうから何も言わない。
だが、言葉じゃ表せないほど、みんな素晴らしい!!それだけは言っとこう。
- 811 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/03/08 19:26:47 ID:lOxsD9GB
- >>809
有り難う。 何もレス付かないのが一番つらいよ。 本当、有り難う。
>>810
(つД`)・゜・。
- 812 :すばる ◆9tSxotve.o :05/03/08 21:12:19 ID:kbJRUqFP
- 前スレ並に過疎化してる……とりあえず『名無しさん歓迎』
>>たゆんさん
乙ですー。
折角SS投下してくれているのに反応が遅くなって申し訳ないです_no
このスレには無いタイプのSSですね!イイっ(゚∀゚)
- 813 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/03/08 22:07:07 ID:hu1qyMz1
- ホワイトデーには祭りになるはず…ですよね、神の皆様!?
- 814 :すばる ◆9tSxotve.o :05/03/08 22:27:54 ID:kbJRUqFP
- 俺は神達には及ばずながらもホワイトデイSS書くつもりですよ。
ネタが浮かばなければパスしますが…。
- 815 :コンズ :05/03/09 16:58:03 ID:tpkrUFt6
- たゆんさん、中華娘のSSの方、萌えさせていただきましたよ!!
遊星さん>是非双子を〜(しつこい
すばるさん>楽しみにしておりますぞ!!
ホワイトデーっていつだっけ?orz
- 816 :未来たん教信者 :05/03/09 17:15:37 ID:o7MrBJNZ
- ホワイトデーは未来たんですよね?遊星さん。
- 817 :未来たん教信者二号 :05/03/09 18:19:24 ID:wjdEweEC
- 漏れも未来たんきぼんです!
- 818 :遊星より愛 ◆isG/JvRidQ :05/03/09 20:59:33 ID:r241y1Vx
- 未来のつもりだよ。
ま、しかし、俺の命もあと五レス。台本など到底貼れまいよ。
- 819 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/03/09 22:21:51 ID:f6Nizatw
- 終末まで残り4レス?!
↓
神が氏ぬ。
↓
神々の黄昏(ラグナロク)。
↓
世界滅ぶ。
↓
そこで僕が世界を再生。
↓
僕が創造神。
↓
(゚д゚)ウマー
ここで何故かVPネタ。
そうか・・・ホワイトデーか・・・忘れてた。
なんも貰ったことないからねー、あはは。 だってあげたこと無いからね・・・・。
やっぱり充電期間ってのが欲しいんですねぇ・・垂れ流し状態で、環境にも悪そうな自分。 ゴメン。
>このスレには無いタイプのSS
ヌレ違いの悪寒。 すいません。 (´Д`;lll)
- 820 :すばる ◆9tSxotve.o :05/03/09 23:26:54 ID:r//voCY8
- >>818
つ【を込めて】
ドゾー
>>819
世界観が・なんでスレ違いなんて事ないスよ!
寧ろスレ違いでも萌えられるなら気にしな(ry
- 821 :中華:第四話 1 :05/03/10 01:34:32 ID:uRJdAEi+
- さてさて、僕がこの店に来て一週間と三日。
お客さんも段々と増えてきた手ごたえが感じられる。
「ん〜・・・もう三時過ぎか・・・・」
ちょっと半端な時間だ。 休日だからこんな時間に来る人もあんまりいないだろうけど、かと言って来ない訳でもない。
「ん〜・・・仕込みでもしとこうかな・・・」
がた――んっ!
「わ?! な、何だ!?」
店の方から大きな音。 な、何かあったのかな・・・?
僕は急いで厨房を出た。
「・・・るアル! おマエに売るモノはないアル!」
「はぁ?! お前、何言ってんだ?!」
口論が聞こえる・・・ま、まさか・・・・。
「ど・・・どうしたのさ・・・?」
「あ・・・お兄ちゃん! 出てきちゃダメアル! ココは危険アル!」
藍が僕を追い返そうとする。
「お、おいアンタ! 責任者か!?」
お客さんらしき男の人が、それを止める。
「放すアル! お兄ちゃんは渡さないアル!!」
「てめ、変なこと言うんじゃねぇ!」
「あ、あの!! 二人とも落ち着いて!!」
「あ・・・はいな」
「・・・・・む」
「そ、それで・・・どうしたんですか?」
「この女、いきなり俺に売るモノぁねえとか言い出したんだよ」
「ふん、どうせお兄ちゃんを狙うオンナの手先ね! オンナの匂い、するよ!」
「このアマ、さっきから調子乗りやがって・・・!!」
ああ・・・・またなんだね、藍・・・。
「藍・・・誰彼構わず喧嘩売るのやめなさい」
「む・・お兄ちゃんがそう言うなら・・・」
- 822 :中華:第四話 2 :05/03/10 01:35:58 ID:uRJdAEi+
- 「あの、すみません・・・本当に・・・」
頭を下げる。
「いや・・・アンタに謝られても・・・」
「あ、ほら、藍も・・・」
「わ、わたしは謝らないよ! だてそいつ、ウソ吐いたよ!」
「ウソ・・・?」
「わたし聞いた! オンナ連れてるな、て。 でもそいつ、オンナなんて連れてない言うたよ!」
「そ、それじゃあ連れてないんだよ。 藍の勘違いだったんだよ」
「ち、違うよ! そいつからオンナの匂いするよ! ホントよ!」
「・・・俺、そんな匂うか・・?」
「あ、す、すいません!!」
「あ、いや・・・女連れってのは・・間違いじゃないんだよ。 外に待たせてるから」
「ほら! やぱりウソ吐いてたアル!」
「あんなぁ、普通いきなり女連れか、って聞かれたら恋人とかそういうもんだと思うだろ? 待たせてんのは妹だよ」
「む・・・・その妹がお兄ちゃん狙てるに違いないアル」
「こ、こら藍!」
「あ〜・・もういいわ。 何か疲れた・・・・」
「あ、す、すいません! そ、それでご注文の方は・・・」
「肉まん一個」
「お一つでよろしいのですか?」
「食欲失せたわ」
「あ、はい、で、では、御代は要りませんので・・・・」
「ん? そうか? なら貰っとくぞ」
「毎度有り難うございましたー」
ふぅ・・・・さてと・・。
「藍・・・・またやったね?」
「ら、藍はお兄ちゃんのためを思てやたアル!」
「僕のことを思うなら、喧嘩はよしてよ・・・」
これでもう・・・あーもう、何回目だろう、藍が客に喧嘩売ったのは。 僕が居ると女の人が来るだけで喧嘩腰だもんなぁ・・・。
「ねぇ・・・僕のこと狙う人なんて居ないんだから・・・もうちょっと落ち着いてよ」
- 823 :中華:第四話 3 :05/03/10 01:37:10 ID:uRJdAEi+
- 「甘いよ・・・甘いアル、お兄ちゃんは・・・一瞬の油断が死を呼ぶよ」
「な、何言ってるのさ・・・」
「でも、お兄ちゃんが迷惑なら・・・」
「迷惑って言うか・・・まぁ、喧嘩は止めてよ」
「・・・・・・はいな。 それなら、これ持つアル」
「・・・・何コレ?」
「護身用の武器ね」
柄からずっしりと来るその重み。 すらっとした美しい刃。
ゆるやかにカーヴを描いた刀身は、日本刀のそれよりもずっと幅がある。
「・・・・何コレ?」
僕は思わず同じ言葉を発していた。
「青竜刀アル」
「・・・お返しします」
「な、なんでアル? ナギナタみたいなののがよかたか?」
「いや・・・あのね藍、日本には銃刀法というものがあってね、こういうものは持ち歩いちゃいけないの」
「そ、そうなのか?」
「うん。 だから、コレはしまっといてね。 気持ちはありがた〜く、受け取るから」
「むぅ・・・明日までに代わり探しとくアル」
いりません。
まぁこんな感じで、藍が客に喧嘩を吹っ掛けること以外、概ね問題は無かったんだ。 ただ・・・。
「お兄ちゃん、今日も泊まてくアル!」
「あ、いや・・・きょ、今日は流石に・・・」
「だ、ダメか・・・?」
「あ、いや、その・・・・」
「お願いアル・・・・」
「・・・・・・・う〜・・・うん・・・」
「やた! 今日も一緒アル!」
・・・・と、あの日以来、この家の厄介になってます・・・。
- 824 :中華:第四話 4 :05/03/10 01:38:15 ID:uRJdAEi+
- 「おやぁ? アンタ、また泊まってくのかい?」
「は、はい・・・すいません」
「あたしゃ構わんさね。 それよりアンタんとこの親御さんにゃ連絡してるのかい?」
「いえ、家は出てるんで・・・」
「そうかい。 ま、あたしゃあの娘がよけりゃそれでいいさ」
「は、はぁ・・・」
一緒の寝てるなんて言えないよなぁ・・・。
「お兄ちゃん、今日も一緒に寝るアルーっ!」
「わ―――っっ!!」
「・・・・ほう」
「あ、や、その、こ、これには訳がっ!!」
「あ・・・ば、ばばさま居たのか?!」
「居たともさ」
「あ、あう、わ、わたし、ご飯作てくるアル!!」
わ、ぼ、僕を置いて逃げたっ!!
「一緒に、ねぇ・・・」
「あ、その、なんて言うか・・・」
や、ヤバくないか、コレ!?
「・・・・・あたしはね、あの娘が望むんなら何だっていいのさ」
「え・・・?」
「あたしはあの娘に何にも出来なかったからね・・・」
「ば、ばあさん・・・?」
「あの娘・・・・何か言ってなかったかい? ・・・・寝言とかで」
寝言・・・毎晩繰り返される、寝言・・・・。
「言って・・・ました。 中国語で、なんか・・・・」
「・・・・そうかい。 まだ夢に見るのかい、あの娘は」
「あ、あの・・・・何か・・・あったんですか?」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
- 825 :中華:第四話 5 :05/03/10 01:39:47 ID:uRJdAEi+
- 「ご飯出来たよーっっ!!」
沈黙は藍の声に破られた。
「わ、ら、藍、随分早かったね」
「へへー、今日のめにゅうはコレね!」
「お・・・うどんだね」
「はいな。 下準備軽くしとけばちょちょいのちょいよ」
「それじゃあ、いただきます・・・・・うん、コレも美味いよ」
「へへーん、当然アル! アイジョウたっぷりそそいだアル!」
「あ、あはは、ありがとう」
「・・・ふむ。 あたしの好みを言わせて貰えば、もう少しコシが欲しいところだね」
「ふむふむ、コシが足りないか。 お兄ちゃんもそう思うアルか?」
「ん〜、そうだね。 今のままでも十分美味しいと思うけど、僕もコシの強いのが好みかな」
「分かたアル。 次はもとコシ入れるアル!」
「ん、頑張れ藍」
「はいなっ」
満面の笑みとガッツポーズ。 うん、やっぱり藍はこういう顔が似合う。
夢にうなされる藍は・・悲しそうで、辛そうで・・・・。
「(・・・・明るくなったね、この娘も)」
聞こえるか聞こえないかの、ばあさんのつぶやき・・・やっぱり、この娘は、何かを抱えてるんだ。
「(僕は・・・この娘に何か出来るのか? 僕にその何かを・・・・藍と共有出来るだけの、器があるのか?)」
無いのかも・・・知れない。
けれども・・・・・僕は、藍のために、何かをしてやりたかった。
「ご・・・・んだく・・・! まま、ばば・・・・ご・・らう・・・じょい・・!!」
「・・・・よしよし・・・大丈夫、大丈夫だから―――」
僕には、撫で続けることしか出来ないんだろうか?
彼女を救ってやることは出来ないんだろうか?
「おにい・・・ちゃん・・・」
僕は―――――藍を、救いたい。
この娘の、「お兄ちゃん」として――――。
- 826 :中華:第四話 6 :05/03/10 01:41:26 ID:uRJdAEi+
- 「た、大変アルーっ!! 遅れてしまうアルー!!」
大きな声で目を覚ます。
「ん・・・? 藍・・・・・? どうしたの・・?」
「あ、あう、遅れてしまいそうアル!! お兄ちゃん、いってきます!! アル!!」
「・・・・い、いってらっしゃい」
言い終わる前に・・というか言ったのも分かんなかっただろうな、藍は出てってしまった。
「・・・・? 何なんだろう・・・?」
僕は着替えて下に降りた。
「あ、ばあさん・・・おはようございます」
「ん、おはよう」
「あの・・・藍、どこに行ったんですか?」
「あの娘かい? 仕入れさ」
「へぇ・・・今日は藍が行ったんですか?」
「いつもあの娘さ。 今日は寝坊した様だがね」
「寝坊って・・・わ、まだ五時になってない・・。 どうりで薄暗いわけだ・・・・」
「本当はもう少し後でもいいんだがね、アンタに食わせる晩飯の材料も仕入れてくるんだとさ」
「え・・・僕の? わざわざ・・・?」
・・・そんなことまで・・・・。
藍・・・なんで、なんでキミは・・・・。
- 827 :中華:第四話 7 :05/03/10 01:42:47 ID:uRJdAEi+
- 「あの・・・どうして藍は・・・・そうまで僕に・・?」
「・・・・アンタを好いてるんだろうさ」
「そ、そういう話じゃないんです!」
「照れ隠しかい?」
「ふざけないで下さい!! あの娘は・・・何か、何かあるんでしょう?! 何かを抱え込んでるんでしょう!?」
「・・・・・アンタ、あの娘のなんなんだい?」
僕は―――僕は、あの娘の・・。
「僕は、あの娘の、兄です」
驚くほどに・・・素直にその言葉が言えた。
まだ、ホンの数日だけれど・・・確かに藍は僕にとって大きな存在になっていた。
僕の・・・・・妹として。
大切な片翼として・・・・・。
忘れえぬ痛みと供に。
「・・・・・・・そうかい。 聞いて・・くれるかい? あの娘の支えになってやってくれるのかい?」
「はい・・・・」
僕は、今度こそ、苦しみから彼女を解き放ってやりたかった。
一日が始まる。
藍と、僕が、本当の兄妹になるために―――。
- 828 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/03/10 01:47:22 ID:uRJdAEi+
- 何をやってもダメなヒトがやってきました。
もうすぐ終わるはずだから・・・・。 四連投・・・。
ゴメンね、こんな中華属性以外のヒトには無用の長物置いて。
神々が降臨される前に終わらせたいんだけど・・・。
紅の蒼龍第四話 >>821-827
萌えないよ、コレ・・・・どうしてくれようか。
- 829 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/03/10 07:44:49 ID:BAwcCc/6
- こんなに続きが気になるのはこの間の神ラッシュ以来だ!
早く続ききぼん!
- 830 :すばる ◆9tSxotve.o :05/03/10 15:41:57 ID:BV/8FAR5
- >>821-827
乙ですー。
イイっ(・∀・)です!
続きも期待してますよ。
- 831 :遊星より ◆isG/JvRidQ :05/03/10 22:53:16 ID:y+SAEwN5
- >>816-817
エロバージョンに一つ貼ったぞ。
兄の変態度アップだが、よければ見て。
>>821-827
乙ッス!!
毎回素晴らしいですよ、マジで。
- 832 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/03/11 07:48:45 ID:x/7uM6Ff
- 妹「お兄ちゃんキモィ…」
- 833 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/03/11 15:32:37 ID:ecBwaEqZ
- 妹「ちょっとぉ お兄ちゃんのと一緒に洗濯しないでよ」
- 834 :地獄の死者 :05/03/12 16:20:27 ID:NFWMm24s
- 妹「一緒に寝よっ」
- 835 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/03/13 21:03:33 ID:xJ0cSVLy
- ageられてますね・・・まぁいいけど。
なんだか神々らにまで気を使わせてしまったようで・・・僕って奴ぁ、ドコまでも・・・。
そんじゃあいつかの続きでも貼りましょうかね・・・。
出来は結構ひどいですが・・・どうも伝えたいことを重視しすぎてまとまってないんですよね・・。
でも14日に張ることだけは避けたいので・・・。
前言い訳はこんぐらいにして、貼りましょーか。
なうろ−でぃんぐ・・・・。
- 836 ::僕がお兄ちゃんになってあげるから :05/03/13 21:36:51 ID:xJ0cSVLy
- 僕があの子と出会ったとき、彼女は動かなくなった二人の前に呆然と座り込んでいた。
『・・・・逃げないの?』
僕は聞いた。
『・・・・・・』
彼女は応えなかった。
『ここにいても・・・殺されるだけだよ。 その人たちも・・・・そんなことは望まないんじゃない・・・かな』
『・・・・・・』
この二人は、彼女の両親だろうか・・・・。
『僕も・・・お父さんとお母さん、殺されたんだ。 でも、二人は最後まで僕に生きろ、って言ってた。
だから、キミのお父さんとお母さんも―――』
『思い出せないの』
言葉が遮られた。
『えっ?』
『多分、この人たちがお父さんとお母さんだと思うの・・・でも、思い出せないの。
確かにお父さんもお母さんも居たの。 とっても優しかったの。 大好きなおにいちゃんも居たの。
でも・・・この人たちが・・お父さんとお母さんなのか・・・・・思い出せないの・・・』
そんな・・・ことって・・・・。
『ねぇ・・・おしえて。 この人たちがお父さんとお母さんなの・・・? 死んじゃったの・・・・?
ひっく・・・わたしを置いて、死んじゃったの・・・・?』
『・・・・・・』
『うう・・・おにいちゃんも死んじゃったの? わ、わたしのこと、守ってくれるって言ってたのに、死んじゃったの?
ずっと、ずっと守ってくれるって言ってたのは、ウソだったの・・・?』
同じ―――この子も、僕と一緒で・・誰も居ない、もう一人きりなんだ。
『お兄ちゃん、お兄ちゃん・・・助けてぇ・・・こんなの、嫌だよぉ・・・』
そう思ったら・・・この子を放って置けなくなった。
『・・・泣かないで』
『うう・・・おにいちゃん・・・おにいちゃん・・・・ひっく・・』
『泣かないで・・・僕が・・・・僕が―――』
『僕がお兄ちゃんになってあげるから』
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0ch BBS 2004-10-30