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[第四弾]妹に言われたいセリフ

790 ::生命を貫く鉄の槍 :05/03/06 03:37:23 ID:VMtaWsII
 カチャリ、カチャリ――。
 暗い洞窟に音が響く。 僕は唯一の明かりのアルコールランプを頼りに、「武器」を組み立ていた。
 これは僕らを守る槍。
 同時に、僕らがここに居なければならない理由を作った槍。
 ――僕と、あの子の両親を貫いた槍。
「おにいちゃん・・・・・」
 奥から声。
「まだ、起きてたの?」
「うん。 手入れをしないと、すぐに壊れちゃうんだ」
 そういって僕は彼女に黒い槍を見せる―――拳銃という名の槍を。
「早く寝ないと、明日も大変だよ?」
「うん、分かってる。 もう寝るよ」
「じゃあ、一緒に寝よう?」
「うん」
 簡単なベッド・・・拾った毛布を敷いただけのそれ。
 二人で並んで横になる。
「寒くない?」
「うん。 おにいちゃんにくっつけば大丈夫」
「そっか。 じゃ、おやすみ」
 アルコールランプの灯りを消す。
「うん、おやすみおにいちゃん。 明日も・・・よろしくね?」
「うん」
 僕は目を閉じた。
 明日も続く戦いに備えて。

 僕はただ、この子を守りたかった。


791 ::ただ殺意を乗せたその音 :05/03/06 03:38:37 ID:VMtaWsII
 タタタッ、タタンッ。
 嫌になるくらい軽快な音。
 だがその音一つ一つに禍々しい程の狂気が詰まっているのを、僕は知っていた。
 タタタタタンッ。
 絶え間なく続く音の絶え間を見計らい、僕は飛び出す。
 タンッ、タンッ、タンッ。
 音を、今度は僕が発する。
 三つのうち一つが、その狂気の牙をむいて男に飛び掛ったようだ。
 あと、三人。
 僕は左の腰に下げたパイナップルを手に取った。
 安全ピンを抜いて、投げる。
 そして、炸裂。
 二人の男がソレに飲まれたようだ。
 あと、一人。
 僕は周囲を見渡した。
 先程の爆発を逃れて・・・・彼は何処に?
 慎重に身を乗り出す――瞬間、後ろに物音。
 男が僕の後ろに飛び出して来た。
 だが・・・・。
「な・・・・子供?!」
 男は引き金を引くのを躊躇ってしまった。
 僕は、左手の引き金を引いた。
 タンッ。
 嫌になるくらい軽快な音。
「おじさん、ここには子供なんていないよ。 ここにいるのは、生き残る人と死ぬ人だけだよ」
 もう応えることなどないソレに、僕はつぶやいた。

 僕は生き残る。 ただ、彼女を守るために。

792 ::11年の命、戦場を駆けて :05/03/06 03:40:16 ID:VMtaWsII
 戦場は旧市街地を離れ、原野の方に広がっていった。
 遮蔽物の少ない原野。
 当然標的になる確率は高くなる。
 でも、僕は戦っていた。
 あの子と生きていくために。
「コージさん、今日の分、下さい」
「ん、お疲れさん。 ほら」
 食べ物の入った袋を受け取る。
「ありがとうございます。 それじゃ、また」
 早く帰ろう。 あの子が待ってるから。

「コージ・・・あの子・・・」
「ん、まだ11だそうだ」
「11・・・・生きていくためとはいえ・・・あんな子供が戦場に、ね・・・・」

 幾度もの爆破を繰り返され、道は荒れ果てている。
 そんな道を、転ぶ限界の速さで駆けていく。
 今日の食料にはあの子の好きなリンゴが入ってる。
 僕は早くあの子が喜ぶ顔が見たかった。
「おにいちゃん、おかえりなさい!」
 あの子が迎えてくれた。
 どうやら洞窟の外で僕を待っててくれたらしい。
「ただいま」
 この子の笑顔を見て、僕はやっと戦場から帰って来られる。
 僕だって、本当は怖い。
 僕や、この子の家族を殺した、こんな武器は憎い。
 でも、僕はこの子の笑顔のためなら、どんなつらいことも我慢出来た。

 僕は、誰のためでもなくこの子のために死ぬんだろうと思っていた。

793 ::少年の存在意義 :05/03/06 03:41:50 ID:VMtaWsII
「ほら、リンゴだよ」
「わぁ・・・リンゴだぁ」
 満面の笑顔になる。
 ああ、それだけで僕は救われる。
 血で汚れたこの手にも、何の悔いも浮かばなくなる。
「食べていいの?」
「もちろん」
「ありがとう、おにいちゃん!」
 僕は、この子に救われている。
 この子がいるから、僕は生きている。
 ただ、この子が望むように・・・・。
「あむ・・・おいしいよ」
「うん、そっか」
 おいしそうに、リンゴをかじる。
「おにいちゃんは食べないの?」
「うん、全部食べていいよ」
「わぁ、ありがとう」
 頭を撫でると、くすぐったそうに目を細めた。
「おにいちゃん・・・やっぱりおにいちゃんも食べよ?」
「うん? 僕のことは気にしなくていいよ」
「でも、はんぶんこがいいよ」
「・・・そうかい?」
「うんっ。 おにいちゃんと一緒の方が、きっともっとおいしいもん」
「じゃあ・・僕も一口」
 爽やかな甘味が僕に広がる。
「うん・・・おいしいね」
「うん! おにいちゃんと一緒だもん!」

 この子のために・・・・そう、僕はこの子のために、ここに存在しているんだ。

794 ::二人、戦場に生き抜いて :05/03/06 03:43:16 ID:VMtaWsII
「おにいちゃん・・・」
「ん?」
「明日も・・・よろしくね?」
「うん」
「明日も・・・おにいちゃんでいてね・・・・?」
「うん」
「ずっとずっと・・おにいちゃんでいてね?」
「うん」
「おにいちゃんは・・・・おいてっちゃやだよ?」
「うん・・・・僕は置いてかない」
「おにいちゃんだけ・・・・おかあさんたちのところに行っちゃ・・・やだよ?」
「うん・・・・僕は、死なないよ」
「おにいちゃん・・・・」
「うん・・・・おやすみ」

 僕はただ、この子を守りたかった。
 戦場の中、残された僕ら。
 お互い一人。 でも今は二人。
 僕は生き残る。 ただ、彼女を守るために。
 でも、その時が来れば―――。
 僕は、誰のためでもなくこの子のために死ぬんだろうと思っていた。
 だって僕は、もう死んでいてもいい存在だったから。
 この子が僕に生きる意味を与えてくれたんだ。
 この子のために・・・・そう、僕はこの子のために、ここに存在しているんだ。
 僕は生きる。 この戦場を、この子と供に。

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0ch BBS 2004-10-30