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[第四弾]妹に言われたいセリフ

626 :1:相談SS :05/02/20 23:12:14 ID:zfiDSEHP
「鉄、俺の相談に乗ってくれ」
「あ? 何だよいきなり」
「保品川って男、知ってるか」
「保品川・・・・保品川先輩か? 陸上部だろ?」
「そいつってさ・・・好みのタイプとかって、あるのか?」
「は?」
「どういうやつが好みなんだ? 年下派か? 奥手なのは苦手か? 林檎は好きか?
 どーいう風に告られたら落ちそうだ? 付き合ってる奴はいないんだよな?」
「お、おい、史郎、お前まさか・・・」
「まさか・・・なんだ?」
「・・・・保品川先輩、狙ってんのか?」
「・・・・・はぁ?」

627 :2:頼られSS :05/02/20 23:13:15 ID:zfiDSEHP
 トンでもない誤解を受けるところだった。
「よう、俺の名前は小野寺史郎。 家族構成は両親と妹が一匹。 その妹が今回の騒動の原因なんだ」
「・・・・・おい、何を言い出すんだ」
「うるせぇなぁ、折角人が物語の導入風に事情を説明しようとしてんのに」
「悪かったよ、続けろ」
「いや、もう飽きた。 掻い摘んで説明するとな――」


「おにいちゃん・・・・あのね?」
 食事が終わって部屋でくつろいでいると、ドア越しに声が掛かった。
「その・・・相談が・・・あるんだけど」
「・・・・まず部屋に入ってきたらどうだ」
「ふぇぇっ!? お、おにいちゃん、今の聞こえてたの!?」
「は? ・・・・独り言・・?」
「あ、あの・・・・・入る・・・・ね?」
 おずおずと開けられるドア。
「あ、あのね・・・その・・・相談が・・・あるんだけど」
「それはさっき聞いた・・・・ってか、何してたんだよドアの前で」
「れ、練習・・・相談、持ちかける・・・」
「はぁ・・・?」
「あの・・・・ね?」
 視線をさまよわせて、もじもじもじもじ。
 段々と頬が赤くなってきている。
「その・・・おにいちゃんは・・保品川さんて・・・知ってる?」
「知らん」
「にゃうぅぅ・・・・そう・・・」
 がっくりとうなだれ、帰ろうとする。
「まぁ待て、話くらいなら聞いてやるから、そんなにしょんぼりすんな」
「う、うん・・・・じゃあ、聞いてくれる?」
「おう」

628 :3:にゃうぅSS :05/02/20 23:14:15 ID:zfiDSEHP
「あの、ね・・・・?」
「おう」
「かなるね・・・?」
「おう」
「その・・・・ね?」
「おう・・・・」
「・・・・にゃうぅ」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「はよ言え―――っっ!!!」
「にゃうぅっっ、ごめんなさい〜〜っっ!!」
 飛び退き、部屋の隅にうずくまる佳奈留。
「ごめんなさいぃ、ごめんなさいぃ・・・・」
「あ〜・・・いや、悪かった。 つい、な・・・だから泣かんでくれ・・・・」
「にゃうぅ・・うん・・・」

「と、言う訳だ、鉄」
「さっぱり分からん」
「だろうな。 肝心のところを話してない」
「殴るぞ」
「お前の姉さんに言いつけるぞ」
「関係有るか」
「無いな。 よし、続きだ」
「結論だけ言え」
「その先輩を今日の放課後、呼び出してくれ」
「お前はどうしてそう極端なんだ」
「遺伝だ」
「遺伝か。 妹さんには受け継がれてないようだがな」
「文句ならファラデーに言えよ馬鹿」
「メンデルだ大馬鹿野郎」

629 :4:告白SS :05/02/20 23:15:17 ID:zfiDSEHP
「あのね・・・・かなるね・・・す、好きに・・・・なっちゃったみたい・・なの」
 三十分くらいしてから、ようやく佳奈留が口を開いた。
「・・・・何だって?」
 が、ちょいと読み込みエラー。
「だ、だから・・・かなる・・・好きに・・なっちゃったみたい・・・」
「はぁ? 佳奈留が? 何を?」
「だ、だからぁ・・・その・・・・」
「俺か?」
「ちっ、ちち違うよぉっ! その、保品川さんのこと!!」
「・・・・・へぇ」
「にゃ・・・・にゃうぅ〜〜〜っっ!!」
 みるみる顔が赤くなる。
 手で顔を隠そうと試みるも、全く隠れない。
「にゃうっ、にゃうぅ〜っ!」
 ばっ、とベッドに逃げ込み、布団にくるまってしまう。
 ・・・・そこ、俺のベッドですが。
「へぇ・・・佳奈留が恋を、ねぇ・・」
「にゃうぅっっ」
「佳奈留、そのままでいいから話せよ」
「にゃう・・・うん」

 佳奈留がその男を見初めたのは、何でも我が高校の文化祭だったらしい。
 俺と見て回ったわけだが、そのとき運動部主催の腕相撲対決が行われた。
 景品に某電気ネズミのぬいぐるみ。
 今どきどうかと思ったが、佳奈留がたいそう気に入った様子だったので参加した。
 で、だ。 そのとき俺と対決したのが保品川なる男らしい。
 何でもそこそこ名の知れたスプリンターらしく、名前は簡単に分かったらしい。
 何となく気になり、それからずっと悶々と眠れぬ日々を過ごしていたらしい。
 で、昨日やっと気付いたそうだ。
 コレは恋だ、って。

630 :5:初恋SS :05/02/20 23:16:21 ID:zfiDSEHP
 時刻は六時三十分。 呼び出してもらった時間にはあと三十分ある。
 あの後佳奈留が言い出したことは、正直驚いた。

「だから・・・ね? その・・・保品川さんに・・伝えたいの・・・・」
「ふむ?」
「だから、だから・・・明日、保品川さんと・・お話したいの・・・・」
「・・・・いきなり告白か」
「にゃ、にゃうぅ・・・」
 否定しなかった。
「いいけど・・・いいのか、そんないきなりで? 心の準備とか」
「かなるは・・・平気だよ? ・・・ううん、平気なんかじゃないけど・・・多分、いつまで経っても・・そうだから・・。
 だったら・・・・想いが確かなうちに・・・伝えたいよ・・」

「あの佳奈留にあんなこと言わせるたぁね・・・」
 思わずごちる。
「兄貴としては、少々複雑だね」
 いつの間にか、佳奈留も大人になってたんだな。
 妹の旅立ちを見送る兄・・・なかなか絵になりそうだな。
 と、向こうからてってけと駆けて来る少女。
「来たか・・・」
「お、おにいちゃん・・・ごめんね・・遅くなっちゃった・・・・」
「いや、まだ余裕だ」
 長い針は、9を少し越えたところ。
 ・・・・あんな短い回想で15分も使ってたのか。
 感慨浸りすぎ、俺。

631 :6:保護者のSS :05/02/20 23:17:26 ID:zfiDSEHP
「さて・・・俺は帰るかな」
「にゃうっ? か、帰っちゃうの?」
「邪魔だろ」
「そ、そんなこと、無いけど・・・」
 随分と心細そうだこと。
「あのなぁ、保護者同伴で告白する奴がどこに居るっての」
「にゃうぅ・・・そうだけどぉ・・」
「言うことは決めてあんだろ? なら、バシッといけ!」
「にゃう・・・う、うんっ」
 決意を固めた佳奈留は、まさに戦乙女の顔をしていた。
「だいじょぶだ。 佳奈留の可愛さは俺が保障する。 佳奈留に告られてぐっとこない奴はいない!」
「にゃう・・・うん、がんばるっ」
「よし、それで良い。 それじゃあな。 幸運を祈る!」
「にゃう!」
 妙な返事だったが、気合はばっちりだ。
 大丈夫、きっと上手くいくさ。
 なんてったって、この俺の妹だからな。


「ふぅ・・・・今頃告ってる頃かな」
 時計を見る。 七時七分七秒。 スリーセブン。
 ふっ・・・勝ったな、この勝負。
 テーブルの上には晩御飯。 「暖めて食べて」のメモ付。 母さん夜勤らしい。
「勝利の晩餐にゃ、ちょっとしょぼいが・・・お、佳奈留の好きな林檎じゃん」
 佳奈留との祝賀会のため、晩御飯はステイ。
「あ〜、早く帰って来〜い。 兄ちゃん腹減ったぞ〜」

632 :7:心配SS :05/02/20 23:18:29 ID:zfiDSEHP
「いや待てよ・・・上手くいったんなら帰りが遅くなる心配も・・・いやいや!
 佳奈留に限ってそんなこたぁねーか!
 でもなぁ・・・明日帰ってくるとかじゃねぇよな、まさか・・・ない! それはない!
 しかぁし! ちょっと語らってくるくらいはあるかもしれん! 腹減る!!」
 いつにも増して饒舌な独り言。
 何だかんだで心配らしい。
 あはは、俺ってば良い兄貴してる?
 がらがら――。
 キタ――――!!
「お、お帰り、佳奈留!!」
「ただいま・・・」
「か、佳奈留・・・・どう・・だった?」
「えへへ・・・・」
 佳奈留がにっこりと笑う――力無く。
「駄目でした・・・・」
「そ・・・・そう、か・・」
「えへへへ・・・へ・・・・・・・・・・・うぅ」
「佳奈留・・・」
「・・・・おに・・おにいちゃぁぁんっっ!」
「佳奈留・・・・・!」
「う、うああぁぁぁぁぁんっ、わぁぁぁぁぁんっっ」
 何も言えなかった。 ただ、佳奈留を抱きしめてやることしか、俺には出来なかった。
 くそっ、何が良い兄貴だ・・・・!

633 :8:兄とSS :05/02/20 23:19:32 ID:zfiDSEHP
「おにい・・・ちゃん」
「ん・・・?」
「今日・・・一緒に寝て、いい?」
「ああ・・・・」
 辛い事があったとき、佳奈留はいつもそうねだってきた。
「ご飯、食べなくていいか?」
「うん・・・食べたく、ない・・・」
「そっか・・よっと」
 お姫様抱っこ。
「はは、結構大きくなったな」
「にゃう・・重いってこと?」
「そーいう意味じゃないって」
 とん、とん、とん、と階段を登っていく。
「佳奈留、開けてくれ」
「ん・・・はい」
「電気を・・」
「すぐ寝るのに?」
「そーだな。 電気はいいか」
 とさっ。
 ベッドに横たえてやる。 しかし、何だかな・・・。
「にゃう・・? おにいちゃん・・・?」
「ん、何でもない」
 これじゃあまるで俺が佳奈留の恋人みたいじゃないか。

634 :9:添い寝SS :05/02/20 23:20:32 ID:zfiDSEHP
「おにいちゃん・・・・はやくぅ・・・」
「はいはい、今入りますよっと」
 俺も布団に入り込む。
「にゃう」
 待ちかねた、とでも言わんばかりに抱きつく佳奈留。
「にゃう・・・・おにいちゃん」
「なんだ?」
「ううん・・・なんでもないよ」
「・・・・佳奈留、無理はするなよ」
「大丈夫・・・・かなる、おにいちゃんが居れば、なんでも大丈夫だもん」
「そうか」
「うん・・・・・お休み、おにいちゃん」
「お休み、佳奈留」
 ゆっくりと・・・・眠りに落ちていく。
 ゆっくりと・・・・穏やかに。
 夢の世界へ。

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