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[第四弾]妹に言われたいセリフ

758 :兄:尚登サイト :05/03/05 03:41:46 ID:xWjP97C2
「あ〜あ、早く春になんないかな〜」
 この冬何度目だろう、そのセリフを聞いたのは。
「もう三月だ、すぐに春になる」
「ん〜、そ〜だけど〜・・・。 早く雪、とけないかなぁ?」
「お前なぁ・・・毎日毎日、そればっかりだぞ」
 いい加減嫌になってくる。
「だって〜・・・早くまた跳びたいんだもん」
「あ〜あ・・・幅跳び中毒だよ、これじゃ」
「むぅ、なおくん、なんかやな感じっ」
 ぷんむくれて、窓を見やる。
「あ〜あ、早く春になんないかな〜」
「・・・・・やれやれ」
 オレは立ち上がり、壁に掛けてあるコートを掴んだ。
「ん・・・・なおくんどっか行くの?」
「コンビニ」
「じゃ、ボクも行く」
 立ち上がって上着を掴む。
「だめだ」
「えっ、何で?」
 きょとんとした顔。 まぁ断られるとは思ってなかったんだろう。
「何でだと思う?」
「えと・・・・・あ、あの、わたしも・・わたしも連れてって」
「いいぜ、なお」
「うん、ありがと」
 なおの奴はもうじき中学だってのに、どうにもガキっぽいというか、男の子っぽいというか。
 前から特に言葉遣いに関しては注意してきたが・・・一向に「ボク」が治らない。
 将来困るぞ・・・・。

759 :兄:尚登サイト :05/03/05 03:43:05 ID:xWjP97C2
「コンビニって、ドコの?」
「一番近く。 わざわざ遠いとこ、こんな寒い中行くかよ」
「あはっ、そうだね〜寒いよね〜」
「あ〜・・・一つ言いたいことがある」
「な〜に、なおくん?」
「・・・・・・・・なんで短パンなんだ?」
 そう、信じられないことに短パンなのだ、このおぜうさんは。 上着は着てるクセに。
「コレぐらいが丁度いいんだよ」
「ウソだ・・・・・」
「ってゆーかなおくんが寒がりすぎなの。 それでも北国育ちかぁ〜」
「気温が一桁なんだ・・・コレぐらいが正しいリアクションだ」
「運動してないからだよぉ〜。 なおくん、体力あるクセに。 サッカー部のクセに」
「知るか。 オレは寒いの、とにかく」
 さっさと行っちまおう。
「あ、まってよなおくんっ」
 並んで歩き出す。
「何しに行くの?」
「雑誌」
「雑誌・・・・・?」
「雑誌だ。 買いに行くんだよ」
「雑誌って・・・・」
「あん?」
 なんか様子が・・・・?

760 :妹:素直サイト :05/03/05 03:44:17 ID:xWjP97C2
「雑誌って・・・・」
 ボクの頭の中に数ヶ月前のことが蘇ります。
 なおくんの部屋にあった・・・・えっちな・・・・。
「なお?」
「えっ?! な、なに?!」
「なにって・・・・どーかしたか?」
「う、ううん! なんでもないよっ!!」
 ぶんぶん、っと首を振ります。
「・・・・行くぞ?」
「う、うんっ」
 なおくんが歩きだします。 ボクも遅れずについて行きます。
 うう・・・なんだか顔が火照ってきたよ・・・・・。
 ちら、となおくんを見ると、何も知らないなおくんは真っ直ぐ前を見ているだけです。
 いつものカッコイイ顔のままで・・・・・。
 ・・・・うぅ〜、また顔が・・もぉ、なおくんのせいだもんっ。
 なおくんがえっちなのがいけないんだもんっ!
「・・・・・なおくんのバカ」
「・・・なんだと?」
「なんでもないもん」
 ぷいっ、だもん。
「何いきなり不機嫌になっとるんだ・・・・?」
「ふんっ、だ」

761 :妹:素直サイト :05/03/05 03:45:21 ID:xWjP97C2
 結局なおくんが買ったのはサッカーの雑誌でした。 ・・・でも、別のときにきっと買うんだもん。
「真っ直ぐ帰るぞ」
「え〜? 折角出てきたのにぃ?」
「寒い」
「だったらさ、商店街行こ?」
「商店街ぃ〜?」
「ホラ、なんか暖かいの食べてこーよっ」
「暖かいのか・・・・それならいいかな」
「やったぁ、決まり♪ 何食べよかな〜♪」
 折角なんだから寒いのも楽しまなくちゃ。
「・・・・ふぅ」
「ん? どしたの、なおくん」
「いや、機嫌直ったみたいだな、って」
「へ? 機嫌?」
「・・・・いや、何でもない」
 変ななおくんです。 そんなことより、何食べよっかな〜。
「甘いのがいいな〜。 鯛焼きとか」
「鯛焼きは・・・・お前はマズイような・・・」
「へ? なにそれ? 何でボクが鯛焼き食べちゃ駄目なの?」
「ボクって言うからだ」
「何ソレぇ? ヒドイよ、そんなこじつけ!」
「そんなこと言うならやめにする」
「あ、あ、ごめんなさい、ボ、わたしが悪かったよっ」
「よろしい」
「・・・・・むぅ、食べ物を盾にするなんて・・」
「何か言ったか」
「なんでもないもん」

762 :兄:尚登サイト :05/03/05 03:46:23 ID:xWjP97C2
「なんでもないもん」
 またまたなおがむくれてしまった。
 う〜む、ちょいとひどかったかもな・・・・。
 しかし、ボク、背が低い、生足、ショートカット、に鯛焼きまでプラスされたら・・・・色々マズイ気がする。
 それだけは阻止しろと天が言ってる気がする。
「・・・・で、何にする?」
「えと・・・・甘くて暖かいの・・」
「甘いのじゃなきゃ駄目なのか?」
「んー・・・・なおくんは甘くない方がいい?」
「俺は甘いのはそんなに好きじゃない」
「そだったね。 じゃ、肉まん!」
「肉まんか・・・コンビニに戻るのか?」
「おやおや〜? なおくん知らないの〜?」
「・・・・なんだよ」
「最近おにがわらさんとこの近くに中華まん屋さんが出来たんだよ〜?」
 おにがわらさんとこ、とは、おにがわら診療所のことだが・・・。
「ちゅうかまんやぁ〜?」
 何だソレ。 聞いたことが無い。
「なおくんもボ・・・わたしも田舎者だから知らないだけだよ〜。 都会じゃ中華まん屋さんくらいあるんだよ」
 ・・・・・そうなのか。
「ね、行ってみよ?」
「むぅ・・・百聞は一見にしかずか」
「決まりだねっ。 肉まん肉まん〜♪」
「あれ・・・ってゆーかそれならお前はあんまん食えばいいだろ」
「なおくんと同じのがいいんだもん」
「・・・・そーかよ」

763 :兄:尚登サイト :05/03/05 04:08:21 ID:xWjP97C2
「ん、ここか」
 確かに・・・中華まん屋、とでっかく看板に書いてあるな・・・・なんで病院の近くに食い物屋・・・・・・。
「尚登さん?」
「あん? 誰だ俺を呼ぶのは」
「えーと、虎鉄です」
 後ろに立っていたのは中学のときの後輩だった。
「鉄か。 なにやってんだ?」
「あの、ここ、俺の家です」
 指差すのはおにがわら診療所。
「そーいやそーだったな」
「先輩は?」
「中華まん屋に」
「あー・・・・あそこですか・・」
「あん? 何だよ、その思わせぶりなセリフ」
「いえ・・・・そちらは?」
 と、なおを見やる。
「あ、えと、妹の素直です。 今度中学生になります」
 ぺこりとお辞儀。
「こんにちは。 俺は虎鉄。 よろしくね」
「あ、はいっ」
「さてさて挨拶も済んだ所で話を戻そうか」
「・・・・逸らそうとしたのに」
「そんなことは許さん。 吐け」
「あ〜、その・・・・店に入るの、この時間帯は先輩だけにした方がいいですよ」
「は?」
「それじゃ」
「あ、こら待てっ」
 なんだよ・・・逃げるようなことなのか?

764 :妹:素直サイト :05/03/05 04:10:55 ID:xWjP97C2
「それじゃ」
 虎鉄さんが家に入って行ってしまいました。 なんだろ・・・・?
「・・・・・まぁ、一応俺だけで入るから待っててくれ」
「・・・うん」
 なおくんがお店に入って行きます。 待ちます。 ・・・・・・。
「・・・・・うぅ、遅い〜」
 時計を見ます。 もう三分は経ってます。
「早く〜。 なおく〜ん、一人で外に居る身にもなってよ〜」
 五分以上待たせたらデコピンしちゃいます。
「う〜、う〜、遅いよ〜」
「・・・・・誰か待ってんの?」
「え・・・あっ、お姉さん」
「や、憶えててくれたんだ」
 それはこの間パンツを見られたお姉さんでした。
「誰待ってるの? お兄さん?」
「はい。 なおくんってばヒドイんです。 もう五分・・あ〜、六分も! ボクのこと待たせてるんですよ!」
「六分って・・・・はは、せっかちさんなんだ」
「そんなことないですよ〜。 なおくんの方がよっぽどせっかちです。 ボクが着替えるのも待てないんだから・・・」
 この間、着替えてる所を見られたんです・・・。 恥ずかしかったです、あれは・・・。
「似たもの兄妹か・・・羨ましいね」
「え・・そうですか? 似ててもいいことなんてないですよ?」
「ん〜、オレ、アニキと全然似てないからさ」
「お兄さん、いらっしゃるんですか?」
「うん。 中々かっこいいよ?」
「そ、それならなおくんだってっ」
「あはは・・・・誰だって自分のアニキが一番だよね。 キミもお兄さん好きなんだ?」
「え・・あ、あの、その・・・・」
「オレもね〜・・・なんか素直になれないんだけどさ、アニキのこと好きだよ」
「ボ、ボクも・・好き・・・・です。 でも・・ボクも、素直じゃないかも・・・」
「ん〜・・・お互い、要努力、だね」

765 :妹:素直サイト :05/03/05 04:12:20 ID:xWjP97C2
「じゃ、またね」
「あ、はいっ」
 お姉さんが歩いていきます。
「素直に、かぁ・・・」
 ボクの名前なのになぁ・・・。 なれないんだよね・・・。
 きぃ・・・と、お店のドアが開きます。
「あ、なおくん」
「・・・・・無駄に疲れた」
「・・・・なおくん?」
「いや・・・何でもない。 ほら、肉まん」
「わ、ありがとー。 待ってて、お金・・・・」
「いらねーよ」
「え、でも・・・」
「奢る、ソレくらい」
「あ・・・あ、ありがと」
 袋から熱い肉まんを取り出します。
「わ、あっついねぇ」
「まぁわざわざ店で買って冷めてたら最悪だからな」
「ん〜、おいしいねぇ」
「そうか・・・」
「あれ、なおくん食べないの?」
「・・・・疲れたからいい・・・」
「え〜、一緒に食べよ〜よ?」
「いや・・・・食欲がない。 ってか買ってない」
 え・・買ってないの? そ、そんなぁ・・・・一緒に同じの食べたかったのに・・。
「むぅ・・・しょうがないなぁ」
「ああ・・・・悪いな」
「はい」
「ん?」

766 :兄:尚登サイト :05/03/05 04:14:25 ID:xWjP97C2
「はい」
 と差し出された右手。
「・・なんだよ?」
「半分こ」
「はぁ? だから、いらないって―――」
「だめだもん、食べなきゃ」
「なんで・・?」
「なおくんと・・・・同じがいい。 一緒の食べたいんだもん」
 コイツ・・・なかなか可愛いことを言いよるわい・・・。
「まぁ、そこまで言うなら」
 右手から食べかけ肉まんを頂く。
「って、半分以上残ってるぞ」
「食べてもいいよ?」
「バカ、コレはもともとお前のために買ったんだから、それじゃ本末転倒だろ」
「でも、疲れたときは美味しい物いっぱい食べれば元気になれるよ」
「あ、いや・・そんな心配されるほど疲れた訳じゃないから」
「そお? でも食べて。 ボクおなかいっぱいだから」
「んなわけ・・・・まぁいいや、食うぞ?」
「うん」
「ん・・・言うだけあって、なかなか美味いな」
 あの女、腕だけは確かか・・・。
「おいしいよね」
「ん。 やっぱりお前も食え」
「え・・? いーよ、ボクはもう」
「遠慮なんかすんなって」
「してないよぉ」
「くのやろう、あんまり遠慮するのも失礼なんだぞ」
「してないってば〜」

767 :兄:尚登サイト :05/03/05 04:15:59 ID:xWjP97C2
「そんなに嫌なら・・・・こうだ!」
「え・・むぐっ?!?」
 肉まんを無理やり突っ込んでやる。
「むぐむぐ・・・・?!」
「ほーれほれ。 食わんと窒息するぞ?」
「む、むぐ・・・・・・んぐ・・」
 食い始めたようだな。 手を放してやる。
「んぐんぐ・・・ぷは、ひ、ヒドイよぉ、なおくんっ」
「なにおう。 お前があんまり嫌がるからだろ?」
「嫌がってなんかないよぉ。 ボクはただ、なおくんにいっぱい食べて欲しかっただけだもん」
「嘘吐けぇ、俺が口にしたもんなんて食べたくないだけだろ?」
「そ、そんなことなっ・・・!!」
「・・・・?」
「か・・・・間接キス?」
「は・・・? 何を今更」
 肉まんでキスもなにも無いと思うが・・・。 でも、一応そうなる・・・よな?
「え、やだ、ボ、ボク、なおくんと間接・・・?!」
 そーゆーの気にする辺り、まだ小学生だよなぁ・・・もうすぐ中学だけど。
「まぁはじめにしたのは俺の方だけどな。 なおの食べかけ食ったから」
「わ、わ、そ、それじゃ、お互いに・・・!?」
 なんか面白いな。
「これじゃ本当にキスしたのと変わんないかもなぁ〜?」
「ええ??!! そそ、そんなぁ?!」
「なんだなお、俺とキスは嫌か」
「え、あの、その・・・・っ」
「やっぱそーなのかぁ・・・お兄ちゃん傷ついたなぁ」
「あ、あう・・・・」

768 :妹:素直サイト :05/03/05 04:24:14 ID:xWjP97C2
「やっぱそーなのかぁ・・・お兄ちゃん傷ついたなぁ」
 な、なおくんとなら・・いやじゃないケド・・・・・・・。
 う〜・・・ヒドイよ・・ファーストキス・・・・もっとちゃんとしたのがよかったよぉ・・・。
「うぅ・・・ヒドイ、ヒドイよぉ・・・ぐす」
「おわ、なお、泣くなよ!」
「だってぇ・・ボクのファーストキス・・・」
「あ、アレは冗談だって」
「・・・本当?」
「本当だって! 泣かないでくれよ、な?」
「う・・うん」
 ごしごし、と涙を拭います。
「わ、悪いなお、まさか泣くとは思わなかった」
「う、ううん、ボクこそ泣いちゃったりしてゴメンね?」
「いやいや、今のは俺が完全に悪い。 女の子なのにな・・・あーいうからかい方はまずかったな」
「ん・・・えへへ、いっつもボクに女の子らしくしろとか言ってるのにね〜?」
「う・・・・スマン」
 なおくんってば、口ばっかりなんだから。
「う〜む・・俺が女の子のこと分かってないんだもんなぁ・・・もっと乙女心を学ばねばならんな」
「ぷっ・・なおくんってば真面目な顔でなに言ってるの〜?」
「いやぁ、深刻な問題だぞ。 こんなんじゃいつまで経っても彼女の一人も出来ん・・・」
「え・・・・彼女?」
「いつまでもフリーじゃなぁ。 何かとお前にも世話させちまうし」
「う、うん・・・・・」
 なおくんに・・・彼女・・・・。
「そ、そんなに焦んなくてもいいんじゃない?」
「ん〜・・・まぁ焦って身に付くモンでもないか」
「そ、そ〜だよ!」
「まぁこんなんだから、彼女出来ても世話になるかもしんねーな。 そんときは頼むわ」
「う、うん・・・・・」
 なんか・・・・やだな・・。

769 :妹:素直サイト :05/03/05 04:29:21 ID:xWjP97C2
 なおくんも・・・彼女、つくっちゃうんだね・・・。
 そう、だよね・・・・男の人だもん、それが普通だよね・・・・。
 いつまでも・・・・ボクと一緒じゃ・・・ないんだもんね・・・・。
「なお・・?」
「ん、なに?」
「いや・・・なんか沈んでるから・・やっぱ結構傷ついたか、アレ」
「ううん、そんなことないよ?」
「う〜ん・・・分かった、何か一つ言うことを聞いてやろう」
「そ、そんな、別にそんなことしなくても・・・」
「遠慮なく言え」
「・・・・・・・・」
 ボクの、願い・・・・・。
 なおくん・・・ボク・・ずっとこのままがいいよ・・・・。 二人で居たいよ・・・彼女なんてつくっちゃやだよ・・。
 でも・・・こんなの、ただのワガママだよね・・。 素直になるとか・・そんなんじゃないよね・・・。
「なおくん・・・」
「おう」
「なんでも・・・いいの?」
「二言はない」
「だったら・・・・ちゃんとして」
「なにを?」
「キス・・・・ちゃんと、して」
「は・・・・はいっ?!」
「ボク・・初めては、なおくんがいい・・・・なおくんじゃなきゃ、やだ・・」
「ば、バカお前、そんなの・・・・っ」
「やだもん・・・なおくんと離れるの、やだもん。 でも、ワガママだから、それだと・・・だから、代わりに、キスして・・・」
 ちょっと・・・泣いてた。 泣き落としなんて・・卑怯かな? でも・・・・。
「なおくん・・・・・」
 ボクは、目を閉じた。
「な、なお・・・・」
 そして―――――。

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