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[第四弾]妹に言われたいセリフ

126 :第五話:受験生、悩む・前編 :05/01/27 04:15:34 ID:+qlL+pIN
「はぁ・・・・」
 いつもの帰り道。 俺の足取りは重かった。
「俺の点数じゃ、無理か・・・・」
 第一志望、D判定。 その言葉が俺に重くのしかかっていた。
「第二は予想点どうりA判なのに・・・」
 今年の俺の第一志望仲間たちは、例年よりレベルが高いらしい。
「ギリギリC判定にいけるかと思ったんだが・・・・はぁ」
 どうしたものか。 家のことを考えると、私大なんてもっての他。 今年、来年と高校受験も重なっている。
「あ〜、しかも締め切りせまる! だしなぁ・・・・」
「何の締め切り?」
「いや、願書の・・・っていつからいた」
「さっきから」
「答えになってな・・・待て、俺声に出してたか?」
「ん、だから聞いたんじゃん、何の締め切りって」
 ・・・・かなり悩んでるな、俺。 漫画やゲームじゃあるまいし、独り言なんて・・・・。
「アニキって悩むと結構声に出すのがクセだからね」
 ・・・・漫画やゲームのみんな、すまない、俺も仲間らしい。
「あれ、何でお前がいるんだ?」
「何でって・・・はぁ、アニキよっぽど悩んでるだろ?」
「そんなことないぞ」
「嘘ばっか。 ここがどこだかも分かってないじゃん」
 言われて見渡すと・・・。
「あ、東中だ・・・」
「そ。 オレと雛ちゃんが通ってて、アニキも昔は通ってた、東中の正門前」
「・・・・・いつの間に俺はここまで・・・」
 なんか電車降りた記憶がないぞ。
「・・・・・ほんとに悩んでるみたいだね」
「や、そんなことは」
「・・待ってて、いまオレの鞄取ってくるから」
「ああ」

127 :何か、昨日の今日ですがネタ的に :05/01/27 04:18:03 ID:+qlL+pIN
「お待たせ」
「いや、別に。 ・・・着替えなくていいのか?」
「待たせたら悪いだろ」
「そんくらい待つっての」
「それに、せ、せくしーだろ」
「は?」
「な、何でもねーよっ」
 顔を真っ赤にして、何でもないですか? 慣れない冗談言うからだっての。 あ、いかん、俺までなんか恥ずかしくなってきた。
「あんまりそーいう寒いかっこすんなよ。 こっちまで寒くなるだろ」
「なっ! アニキ、さむいとはなんださむいとは! 確かにオレ、胸も色気もないけどさ!」
「な、なにを勘違いしてんだ、お前は!! 物理的に寒いって話だ!!」
「へ・・・? あ、あ、そそそうか、そうだよなあはははは」
 あーまた顔赤くして・・・・。
「生足晒してると、雛みたいに風邪引くぞ」
「・・・・・オレも風邪引いたら」
「ん?」
「・・何でもない」
 やれやれ。 コイツも変なとこで焼きもち焼きというか、それでいて意地っ張りと言うか。
「看病してやるよ」
 頭に手をのっけてそう言ってやる。
「あ・・・・う、うん」
「じゃ、帰るぞ」
「そ、そーだな」
「ってかお前、マジで寒くないかその格好」
「へ? いやへーきだけど?」
 マジか・・・・? 見てるだけで風邪引きそうなんだが。
「それに雛ちゃんが言ってた」
「何て?」
「ブルマーは滅び行く日本の魂だから、絶対に保護が必要だって」
 ・・・・・・・・・・雛、お兄さんはキミの将来に不安を抱かずにいられないよ。

128 :この時期がぎりぎりですんで :05/01/27 04:20:12 ID:+qlL+pIN
 あ、将来・・・・そういえば俺、そのことで悩んでたんだっけ・・・・。
 なんかコイツと話してると、そーいうの飛んでくんだよなぁ・・・。
「アニキ? 行こ?」
「あ、ああ」

「部活はどーよ?」
「何、いきなり?」
「や、そーいう格好見たからさ」
「ま、順調かな。 県はかたいね」
「そっか」
「まぁ、ここらでバドミントンやってる学校少ないから」
「だな。 アレって地味に疲れるんだよなぁ・・・・」
 小さい頃は俺ともやってたんだが・・・・今は勝負にならないんだろうな。
「・・・・」
「・・・・」
 何となく訪れる沈黙。
「あの、さ」
「・・・・ん?」
「アニキ・・・・やっぱりあの大学、受けるのか?」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・そのことなんだけど、さ」
「ん?」

129 :半リアルタイムですから :05/01/27 04:22:20 ID:+qlL+pIN
「何か俺、判定がピンチらしいんだよ」
「え・・・? だってアニキ、Cくらいは取れそうって」
「ぎりぎり取れそうって言ったんだよ。 何か今年の受験生、レベル高いみたいでな。 Dだってよ」
「でぃ、D・・・!?」
「ああ・・・まず受かんないな」
「そ、そんな・・・アニキ、頑張ってたのに・・・・・」
「足りなかったんだろーなぁ、俺のは」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・そ、それで、アニキは・・・・・どうすんのさ?」
「ん・・・・選択肢は二つ。 もうちょっと北に、そこそこな大学があるんだ。 判定はA」
「花大?」
「そ。 かなり近場になるな」
「近い・・・・んだ」
「・・・・・もう一つ。 学部を変えて受ける」
「学部って・・・」
「理学諦めて、工学にすんのさ。 それだけで判定C」
「で、でもアニキ、その、理学のために頑張ってたんだろ?」
「ん・・・まぁな。 花大ならこっから通うことも出来るしな〜」
「・・・・・・っ」
「・・ん、どした?」
「・・・・何でも、ない・・」
「・・・・・・」
 それから家に着くまで、俺たちは無言だった。

130 :因みに花大は実在しません :05/01/27 04:25:38 ID:+qlL+pIN

 部屋に入って、ベッドに身を投げる。
『花大ならこっから通うことも出来るしな』
 ソレを聞いて気付いた。
 オレたちはアニキの負担になってる。 オレたちがどこかでアニキの足を引っ張っている。
 アニキはきっとこう言う。 そんなことない、って。
 でもそれはアニキが優しいから。 アニキがいい兄だから。
 アニキが前に話してくれた。 俺の目指してる大学は最高だ、って。
 アニキは忘れてるのかもしれない。 でも、オレは憶えてる。 すごく、すっごく楽しそうだったから。
 あそこで俺が勉強したいと思ってるのを勉強出来たら、幸せってやつだな、って。
 アニキが勉強したいっていう理学、オレにはよく分かんない。
 でもアニキは、あそこで勉強したかったんだと思う。
 多分、花大じゃ意味がないんだ。
 でも、アニキは花大を選ぶ。 優しいから。 いい兄だから。
 きっと自分の望みを、無意識に殺して。
「そんなの・・・・・駄目だよ・・・・・・」
 何が駄目なんだろう?
 アニキはやりたかった理学が出来る。
 アニキは家を出ることが無い。
 アニキは何も苦しまない。
 ソレがアニキにとって、当然だから。
 今までずっと、そうだったから。
 一緒に居られて雛ちゃんは嬉しいハズ。
 一緒に居られてオレも嬉しいハズ。
 でも・・・・。
「分かんない・・・・分かんないけど、それじゃ駄目だよ・・・・・アニキ・・・」

131 :がんがれ受験生 :05/01/27 04:29:23 ID:+qlL+pIN
「ふぅ・・・」
 一息つく。
「雛は・・病院か」
 病み上がりだからな。 多分親父あたりに連れてって貰ってるんだろう。
「・・・・・大学、か」
 本当のことを言えば、俺の心は大体決まっている。
「あいつらに寂しい思いさせんのも、な・・・・」
 住めば都。 何処でだって、勉強は出来るさ。
「花大で決まり、かな・・・・」
「・・・それでいいの?」
「うわ、居たのかよ? って俺、また声に出してたんか・・・」
「アニキ、それで・・・・花大でいいの・・?」
「ん・・・・そーだな。 やっぱ理学は捨てがたいし。 それになんてったって、家から通えるのがポイント高いし・・・」

132 :後編・・・・気が重い・・・・ :05/01/27 04:31:20 ID:+qlL+pIN
「嘘だ・・・」
「え?」
「嘘だ・・・・アニキ、嘘吐きだ・・」
 馨が俺に詰め寄る。
「アニキ、ほんとは花大じゃないんだろ?! あそこで勉強したいって、言ってただろ!!」
「い、いや・・・俺は、理学を・・」
「嘘だ! アニキ、また自分を犠牲にしようとしてる!」
「そっ、そんなことっ」
「あるよ! アニキはいっつも自分殺して、オレとか、雛ちゃんとか、家族を優先してる!!」
「お、俺は・・・・」
「・・・・・・嫌だよ・・・アニキと離れるのも、嫌だけど・・・・オレたちのせいでアニキが苦しむなんて・・・もっと嫌だよ・・!!」
「・・・・・俺は・・・」
「・・・・・」
「・・俺は、自分の意思で、花大に決めたんだよ・・・・・・」
 ぱしーーーん。
 一瞬何をされたか分からなかった。
 馨が、俺を平手打ちにしたのだ。
「・・・お兄ちゃんの、バカっ!!」
 反転して走り出す馨。
 馨の涙ぐんだ顔を見た俺は、玄関の戸が閉まる音を呆然と聞くことしか出来なかった。


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0ch BBS 2004-10-30