■スレッドリストへ戻る■ 全部 1- 101- 201- 301- 401- 501- 601- 最新50

[第六弾]妹に言われたいセリフ

1 :名無しくん、、、好きです。。。 :2005/10/12(水) 23:10:07 ID:WK59l+zx
「あ、お帰りなさい、兄さん。ご飯できてますよ」
ここは、脳内の妹さんが囁いてくれるセリフとかSSとかを暴露しちゃうスレなんです。

【兄さんと私の約束】
・荒らしさんや厨房は、無視してくださいね?
 そうでないと、兄さん自信が居づらいスレになってしまいますよ。
・出来れば、sage進行でお願いしますね。……その……恥ずかしいですから。
 メール欄に『sage』といれてくださいね。
・SS職人さんにはお礼を忘れずに。
 次も素敵なSSを読むことの出来るコツですよ。
・たとえリアル妹さんでも……浮気は、許しませんからねっ!?

【兄さんとの思い出】
妹に言われたいセリフ
http://game.2ch.net/gal/kako/1022/10225/1022257886.html
[第二弾]妹に言われたいセリフ
http://game4.2ch.net/test/read.cgi/gal/1028470988/
[第三弾]妹に言われたいセリフ
http://game9.2ch.net/test/read.cgi/gal/1056993709/
[第四弾]妹に言われたいセリフ
http://game9.2ch.net/test/read.cgi/gal/1106065356/
[第五弾]妹に言われたいセリフ
http://game9.2ch.net/test/read.cgi/gal/1110717816/

過去ログ倉庫
ttp://www.geocities.jp/mewmirror9/

では、このスレも楽しんでくださいね、兄さん?

342 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/06/04(日) 23:27:53 ID:poml9Ru4
でも、そろそろ私は慣れなきゃいけない……こういう幸せな時間は長くは続かないことに。
お店から出るとき、自動ドアの前で眼鏡の真面目そうな女性とすれ違った。
「あ……て、天童君……?」
「やぁ、こんにちは、西野さん」
「こ、こんにちは……」
「まさかゲーム屋さんで会うなんて思わなかったな。西野さんも、ゲームするんだ?」
「え……あ……うん……」
「そうなんだ。じゃ、またお勧めのゲームとか教えてよ」
「あ……うん……」
「じゃあ、俺はそろそろ」
「うん、またね……」
女の子に笑顔で手を振るお兄ちゃん……。
むぅ……。
ギュ。
お兄ちゃんの耳を思い切り引っ張り、歩き始める。
「あ、葵っ……!?何なんだ……!?」
「何でいつもこんなことに……」
「いや、それを聞きたいのは俺で……いてててててててっ!!」

はぁ……モテるお兄ちゃんを持つと……辛いなぁ……。
───────────────────────



343 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/06/04(日) 23:28:42 ID:poml9Ru4
「一週間に約一本。まさに……えっと……」
「粗製乱造」
「そうそう。それそれ!」

というわけで、
天童兄妹第四弾:>>333-334>>337>>340>>342
ただ、どう●つの森を買ったから書きたくなっただけ。
可愛い妹とゲームしてぇ!!というイタい欲求の現われですよ。

344 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/06/05(月) 00:52:48 ID:w3T72Gt3
葵タソ…毎回楽しく読ませてもらってます、GJξ´_>`ξ

345 :遊星より愛を込めて ◆45KgZeCOYA :2006/06/05(月) 03:14:19 ID:FK2oOf09
今回の合宿で再確認を検めて強くした。花火ちゃんは女の子ではないことを。
男の子なのではあるが、周囲がその勃起力を発揮できる場所を整えてあげなければ、
いけないということだ。こういうタイプの人間をはなびんびん型と分類される。
みんな揃っての愛撫をスイスイとこなしていく。注意して手許を見たら
花火ちゃんのおおきなちんこに似合わず手は小さいのだ。
このちんこの勃たせ方は、当時の巴里のさる貴族の女性によって「再発見」された
方法で、意外と広く伝統社会では受け継がれてきたものらしい。
すると、場所、相手を問わず簡単に勃たせられるカンナちゃんは万能型になる。

性交の時だってそうだ。花火ちゃんのそばには4人の女の子がいる。エリカ・グリシーヌ
・コクリコ・ロベリア・の四人だ。だが花火ちゃんのちんこは彼女たちにはまるでだめぽ。なんで?
花火ちゃんって、男にしかちんこびんびんになんないんだよね。
花火ちゃんは男性が苦手だけど、シャノワールではモギリとボーイを併行してやってるけど、
実は巴里華撃団隊長の大神たんだけにはちんこびんびんになってしまう。つまりホモ。
外見は女の子みたいな花火ちゃんだが、大神たんのそばじゃホモの本性を晒してくれる。
大神たんに感謝しなきゃね。実態はケツマンコ大好きなホモに過ぎなくてもね。
まあ大神たんといえば、士官学校のときから寮の同室だった加山とかいうホモに菊門掘られまくってた
筋金入りのホモだもんね。  さてと、君たちも昼間にはブルーメールとかいう貴族の屋敷を
覗いてみるといい。大神たんにサカる花火たんは「肉棒天使」といった感じかな。ウィ。



346 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/06/06(火) 22:55:53 ID:kXXhgeYY
昨日の雨が作った水溜りが空を写す。
そんな空を壊さないように、少し大きく足を伸ばし、
水溜りを飛び越える。
「良い天気だ」
そう呟いた。
全く以って穏やかな午後。
だが……それも長くは続かないようだ。
「お兄ちゃーん!!」
突然、俺の首にかなりの負荷がかかる。
気道を圧迫され、相当苦しい……。
「隙だらけだぞー?」
無邪気に話しかける後ろの人。
「いや、隙とか……言われても……」
「だめだよ、そんなことじゃー」
「分かったから……降りろ……」
「しょーがないなぁ……」
重力から開放される俺の首。
飛びついてくるというのなら、可愛いもんだけど……
完全に絞め落とす気だからな、コイツの場合……。
「はぁ……」
息を吸いながら、ゆっくりと振り向く。
視線の先には、腰に手を当て、いかにも怒っていると言った感じの小さな人間。
「たるんでるぞ、お兄ちゃん!!」
そう。
こいつは俺の妹、望。
妹と言うからにはもちろん女であるが、どこかで間違えたのか……
小さい頃から活発な妹で、今は何処から見てもアクティブな少年。
その上、小学生のときに何の因果か空手も始めてしまったものだから、
男らしさはさらに加速してしまった……。

347 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/06/06(火) 22:56:30 ID:kXXhgeYY
「たるんでる?何が?」
まだ痛む首を押さえながら、静かに答える。
「全部っ!!もし、ボクが強盗だったらどうするのっ!?」
唐突だなぁ……。
「多分……強盗が俺を襲うメリットは少ないと思う」
「めりっと……!?せ、専門用語は禁止っ!!」
「あぁ……スマン……」
メリットって、専門用語だったのか……そいつは知らなかった。
「まぁ、仮に強盗に襲われたとしても……俺は俺なりのやり方で切り抜けるさ」
「お兄ちゃんなりのやり方って?」
「んー……逃げるか、諦めるか……状況しだいだな」
「情けないなぁ……」
「人には向き不向きがある。望は体を動かすのに向いてる、俺は頭を使うのに向いてるんだ」
「あぁ、もう!!ダメだよ!!そんなことじゃ!!」
俺の手を奪い、引っ張っていく望。
一応抵抗はしてみるが……少々、態勢が悪い……。どんどん引き摺られていく。
「何だ?」
「道場行くよ!!ボクがお兄ちゃんを鍛えなおしてあげるんだから!!」
「いや、俺は委員会の仕事が……」
「そんなのあとあと!!どーせ、お兄ちゃんならパパッとできるんでしょ!?」
「あの、出来ないからこうして……」
「うるさーいっ!!行くったら行くの!!」
「こんなだからいつまで経っても男に見られるんだよな」
ボソッと俺の一言。
だが、一番聞こえて欲しくない人には、しっかり聞こえてたようで……
「お兄ちゃん!!」
俺の手を離し、蹴りの準備姿勢をとる。
「やめとけ……」
「うるさいっ!!」

348 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/06/06(火) 22:57:32 ID:kXXhgeYY
ガッ。
望の上段蹴りを、左手で受け止める。
「痛いなぁ……」
痛みが骨に響く……。
「え……!?」
そんなに俺が止めたのが意外だったのだろうか。
足を上げた姿勢のまま固まる望。
「望……パンツ見えてるぞ」
「え……!?うわぁ!!」
足を下ろし、スカートを慌てて押さえる望。
真っ赤な顔で俯く望。
……コイツでもこんな顔できるんだな。と、ちょっと思った。
「どーせ、スパッツかブルマか穿いてるんだろ?」
「あ……そうだった……」
「の割には、鮮やかだったけどな」
「え゙っ!?」
驚いて、思わずスカートを見下ろす望。
「嘘だ」
そんな望を尻目に、とっととその場から逃げる。
「ちょっと……!!お兄ちゃんっ!!」
正気に戻った望が俺の前に駆けてくる。
「何だよ?」
「まだ話の途中!!」
「……あぁ、望の下着の話だっけ?」
冗談のつもりだったのだが……望の顔が沸騰した。

349 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/06/06(火) 22:58:04 ID:kXXhgeYY
「ち、違うぅっ!!」
「じゃ、何か続いてる話しがあったか?」
「だから、お兄ちゃんが男らしくないって話!!」
「あれは終わっただろ」
「終わってなーい!!今から、ボクがお兄ちゃんを男にするんだから!!」
「うーん、男男言うけど、逆にさ、お前の言う男らしさって何?」
「うーんとねー、強くって、逞しくって、優しくって……」
指を折々、色んな候補をあげていく望。
まだ続きそうなので、
「俺には一生かけても無理だな」
「だから、少しでも努力しなくちゃ!!」
「嫌だね。俺は俺の中での男を目指すさ」
「じゃあ、お兄ちゃんの言う男って?」
「そうだな。常に賢く、正しく、優しいってとこか」
「優しいことしか、合ってないね」
「理想なんてそんなもんだ。むしろ一つ合うことに驚きだよ、俺は」
「じゃあさ……」
俺の隣に並ぶ望。
そして、俺の腕を抱きしめ、
「ボクに、もっと優しくしてくれる?」
「……それで帰らせてくれるなら」
「わーい!!じゃ、たこ焼き食べに行こうよー!!」
「いや、人の話聞いてたか……?」
「ねっ!!お兄ちゃん!!」
「何だよ?」
「優しくねっ?」
「分かってるから……」
妙に笑顔の望を、右腕に感じつつ、
まっすぐ家には帰れそうに無い予感をひしひしと感じる。
そんな初夏の帰り道でした……。
───────────────────────

350 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/06/06(火) 23:01:32 ID:kXXhgeYY
格闘妹、望。
また新妹の登場で、何だか俺が単発キャラ書きになりつつある……。
でも、なんとなく書きたくなったんです。
なにはともあれ……ボクっ娘……いいじゃないか……。

351 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/06/08(木) 03:16:36 ID:v9iUKcc5
遊星さんは遊星さんが書きたいものを書く。
俺は遊星さんが書いたのを読んで楽しい。
無問題ですよ(´・ω・`)
乙です!

352 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/06/10(土) 23:51:38 ID:okBZ1tMi
夢ノ又夢先生の続きに期待

353 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/06/13(火) 17:38:38 ID:VZOF2BvP
age

354 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/06/13(火) 22:23:54 ID:R6Twgsom
「俺は巴を甘く見ていたのかもしれない」

暗幕で囲まれた体育館の中、暗闇と喧騒に揉まれて気分の滅入る俺。ひっきりなしに聞こえてくる明るい声に何か疎外感を感じてしまう。
照明の落とされた館内をぐるりと見渡せば人がいない場所は無い、立ち見席が設けられる程の盛況ぶり。
客層の七割が女子なのは多分、巴の業の深さ故なのだろう。

「なんとか座席は確保できたが・・・場所が悪いな」

俺が体育館に辿り着いたその時には既に開演を待つ列が出来ていて席を取るだけで精一杯、改めて巴の威光を思い知らされる事になった。
舞台からは遠い一番後ろの席に陣取り腕組みして始まりを待つ、果たして巴は俺がここにいるのに気付くだろうか。
などと言いつつも実はその辺に関してはあまり心配はしていない。子供の頃から今まで俺が巴に勝てなかった遊びが一つだけある。

「かくれんぼだけは得意だったからな、巴は」

見つけてくれなくてもいい時でさえ、ちゃっかりと俺を見分ける巴だ、ここでも問題は無いだろう。
ほどなくして開演のブザーが館内に鳴り響く、湖面に石を投げ入れた様に喧騒は収まり辺りを静寂が包む。
舞台をライトが照らし出し、歯車は音を立てて回り始める。
みすぼらしい服のシンデレラとそんな彼女を蔑む意地悪姉さんや継母。
演目がシンデレラなだけに取り立てて言う事の無いオーソドックスな仕様のお話。
・・・いや、シンデレラを苛める様が妙に真に迫る物があるんだが・・・気のせいだろうか?
そういえば、主役であるシンデレラを誰がやるのかで大いにもめたと巴が言っていたな。

「・・・私怨混じってるんじゃないのか、あれは・・・」

ある意味で結果的にかなり面白い舞台、迫真の名演技(?)が観客を引き込む。
勿論、憎しみ満載ではなく主役をやるんだからこれ位は我慢しろとばかりのシンデレラへの仕打ちが続く。
こういうのは学生演劇ならではの面白さかもしれない、俺も知らず知らずのうちに身を乗り出していた。
しかし、この舞台のメインイベントはこの先にある、誰もが待つその瞬間は沢山の期待の元に訪れる。

355 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/06/13(火) 22:24:53 ID:R6Twgsom
一端、舞台が暗転して眩いスポットライトの中に浮かび上がるスラリと立った細身のシルエット。
まるでおとぎの世界からそのまま飛び出して来た様な憂いを湛えたその姿、一瞬、客席の呼吸が止まる。
宙を彷徨う視線が俺と重なる時、全てがスローモーションになる。
教室の窓から、食堂の片隅から、渡り廊下の向こうから見えるいつもの視線。
褒められるのを待ち望む子供みたいなずっと変わらない甘えたがりの輝く瞳。
そんな巴の瞳を俺もただ黙って見詰め返す、言葉は何もいらない、ただそれだけで何かを分かり合えた気がした。
瞳を閉じて一呼吸入れてから巴は語り始める、水辺を優雅に舞う白鳥の如き所作で。
会場に篭る熱い視線と溜め息の中で巴は確かに誰よりも何よりも輝いていた。

───────────────────────────

夕暮れ時を迎えた校舎で一人佇む、文化祭の騒ぎも一段落して今は閑散とした静けさが漂う、外の屋台も片付けを始めている。
祭りの後特有の寂しさ、思えば今年は騒がしいうちに終わっていた様な気がする。

「手間が掛かった割には終わった時はあっという間に感じるものだな・・・」

ポツリと呟き下駄箱にもたれ掛かって待ち惚けのボク、多分、もう少しすればここに待ち人が訪れる。
・・・ほら、やっぱり来た。
くたびれた歩き方でこちらに向かってくるいつものお兄ちゃん。

「はぁ・・・やっぱり居たよ、この人は」
「予想通りだった?お兄ちゃん」

夕陽に照らし出された不確かな影の中、ボクは呆れ顔のお兄ちゃんに歩み寄る。
分かっていたとはいえ、少々気後れ気味だったボクには夕陽の光がやけに眩しい。

356 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/06/13(火) 22:25:36 ID:R6Twgsom
「お兄ちゃん、今日の舞台・・・」
「ああ、良かった、巴は立派に王子様だな、俺も安心して社交界に送り出せるよ」
「そんな予定後にも先にも無いけど、でも・・・それは褒めてくれてるよね?」
「褒めてる褒めてる、この調子だとそのうちファンクラブとか出来るんじゃないか、兄ちゃん楽しみだなぁ」
「・・・ホントに褒めてる?」
「ははっ、怖い顔するなっての、正直言って良かったよ、少し感動してしまった位に」
「少しだけ?」
「いや、実の所、かなり」

だんだん雰囲気が冗談めいてくるお兄ちゃんがようやく本音をぶつけてくれる。
変わる事の無い石みたいな仏頂面にパッと安堵の笑顔が咲くのが自分でも良く分かる。

「・・・うん、それなら良かった、あ、これから帰るんだよね、じゃあ」
「おっと、一緒に帰るのはナシだぞ、主賓が退場したんじゃ打ち上げも盛り上がらないからな」
「・・・はい・・・残念だけどしょうがないよね」
「なんだよその顔は、今生の別れみたいな顔して・・・今は友達と楽しんで来い、な?」

少し視線の下がるボクの顔を覗き込んで明るく諭すお兄ちゃん、こんな何気ない気遣いがボクにはこの上なく嬉しい。

「じゃあ、せめてお夕飯代はボクが出すよ、今日は外で済ませるつもりでしょ?」
「いや、そこまでしてくれんでも・・・それ位は自分でどうにかするよ」
「いいから・・・あれ、これ何だろう?」

取り出した赤い財布のお札入れにある見慣れない小さな紙に疑問符が浮かぶ。
こんなのホントに見覚えが無い、いつの間にこんな物が・・・

「ん、どれどれ・・・おい、これ、巴は今まで気付かなかったのか?」
「えっ、何が?」
「やれやれ・・・まぁ、開けてみろ、話はそれからだ」

357 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/06/13(火) 22:28:16 ID:R6Twgsom
言われるがままに開くと視界に飛び込む見慣れたお兄ちゃんの字。

──無理は絶対にしないこと、何かあったらいつでも駆けつけるから遠慮せず呼ぶように、同じ学校だしな──

そこに書かれた言葉の意味を知り鼓動が跳ねる、無くしていた何かを見つけ出した様な、泣きたくなる様なくすぐったい感覚。

「巴が前に疲れてそのままソファーで寝ちゃった事があったろ、あの時に入れといたから約一週間気づかなかった事になるな」
「あの時・・・これは・・・四葉のクローバー?」
「まぁ、ラッキーアイテムっていうとそれ位しか思い浮かばなくてな、ちょっと安直だったとは思うけど」
「ううん、そんな事無い、でも、どうしたのこれ?」
「もちろんあの時に探したんだよ、大変だったぞ、家の庭中を懐中電灯片手に探し回って・・・途中で雨が降るしさ」
「・・・そっか・・・」

手紙に添えられていた押し花にされた四葉のクローバーを手に取り、そっと胸に引き寄せる。
それはボクにはじんわりと暖かくて、痛みや不安さえ包み込んでくれるお兄ちゃんの優しさそのものだと思った。

・・・ずっと・・・心配してくれてんだ・・・お兄ちゃん・・・

結局、お兄ちゃんの優しさに気付けなかったボクのひとり相撲、か。
お兄ちゃんはボクの為を思っていてくれた、なのにボクは自分の事ばかり考えて・・・

「・・・ごめんなさい」
「は?何が?」
「お兄ちゃんはちゃんとボクの事、考えてくれてたのに・・・ボクは」
「ああ、それか・・・どうでもいいさ今となっては、結果として舞台は大成功だったんだし」
「・・・お兄ちゃんは優しいね、それに引き換えボクは・・・ホント、ダメだよね・・・ホントに」

358 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/06/13(火) 22:28:54 ID:R6Twgsom
それ以上言葉を出せずにギュッと握った掌が自分でも意識しないうちに少しだけ震えている。
子供の頃よりボクは強くなった、あの頃みたいに泣いてばかりじゃない、勉強も運動もずっと上手くなった。
いつかお兄ちゃんを支えてあげられる人になりたくて、頼りにしてもらえる様になりたくて、がむしゃらに頑張ってきた。
そうすればボクはずっとお兄ちゃんと共に生きていける、ボクのボクだけの人でいてくれると信じて。
変わったのに変わりきれないボク、相変わらずの優しさをくれるお兄ちゃん、どうにも埋まらない二人の距離がボクには堪らなく悔しかった。

「よせよせ、憂いの表情なんて巴には・・・似合うけど」
「ありがとう、でも・・・」
「巴、反省は沢山すればいい、でも、後悔だけはしちゃ駄目だ」
「・・・」
「それに、もしも今回の舞台が失敗していても俺は巴を褒めてたと思う」
「・・・どうして?」
「決まってる、巴はいつだって俺の一番の自慢だよ」

笑顔の中に真っ直ぐな瞳を隠して、お兄ちゃんがボクの頭を乱雑に撫でる、真剣さを誤魔化す為のお兄ちゃんのいつもの照れ隠し。
たまにしか見せてくれない、多分・・・ううん、絶対ボクしか知らないカッコいいお兄ちゃん。
ボクの心にグングン追いついて、いつも簡単に答えを見つけ出してくれる、きっと本当に大切な事をお兄ちゃんは誰よりも知っている。
こんな時、ボクは強く想う・・・お兄ちゃんの前ではボクは優等生でも王子様でもなくてただ、好きな人に甘えていたい一人の女の子なんだって。
だからボクは心に素直に従う、世界で一番愛しい人の胸の中へと。

「こ、こら、ちょっと褒めたらこれかよ!?」
「・・・頑張ったご褒美くらいはね、いいでしょ?」
「よかないよ!!こんな姿誰かに見られたら多くの学生の夢を壊すんだぞ?」
「じゃあ、家でならいい?」
「そういう問題じゃなくて・・・まったく、俺は時々、巴は兄離れ出来るのかと不安になる時があるよ」
「不安は的中かな、一生離れる気は無いから、ふふっ」
「・・・言ってろ」
「うん、この先もずっと言ってる・・・お兄ちゃんの趣味も分かったし」
「ん?趣味って何?」
「・・・メイドフェチ」
「なっ!?なんつっーことを!?」
「あははっ」

359 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/06/13(火) 22:29:29 ID:R6Twgsom
水を得た魚の様に腕をスルリとすり抜けてボクは一目散にクラスメイトの待つ上の階へと向かう。
その前に相川先輩を見習って心からの言葉を、10m程走った所でフワリと浮かぶスカートを翻して後ろ手にお兄ちゃんの顔を覗き込む。

「あ、そうそう、今日の舞台ね、ボクだけじゃ上手くいかなかったと思う、でも、ボクにはお兄ちゃんがいてくれたから」
「ああ、さいですか」
「舞台の上からお兄ちゃんを見つけた時、とても安心して、嬉しくって・・・やっぱりボクにはお兄ちゃんが必要なんだって思った」
「・・・」
「お兄ちゃんが居てくれてホントに良かった、これからもよろしくね、ボクの王子様」

照れ臭そうに頭を掻くお兄ちゃんを背に階段を一機に駆け上がる、羽根の様に軽くなった足と夕陽の様に紅く染まった頬で。

・・・お兄ちゃん、ボクはお兄ちゃんの為に何が出来るんだろう・・・お兄ちゃんの望むボクはどんなボクなのかなって思う。
今のボクに出来ることは片手にさえ足りないけれど、いつかきっとお兄ちゃんに相応しい人になってみせる。
ボクに優しさを教えてくれたお兄ちゃんだから・・・こんなにも切なくなる程の愛しさを教えてくれたお兄ちゃんだから。

言葉に出来ない、止められない想いを胸にボクは屋上まで突き抜ける勢いで駆ける、いつの日かこの手が届くと信じて。

───────────────────────────

「・・・王子様の王子様ってか、何言ってんだかな」

煙を上げるのではないかと思わせる猛スピードで巴が消えていった階段を見詰めて吹き出す俺。
巴公認の王子様、そう思うと妙に可笑しくてまた一人笑みが出てしまう。
終わり良ければ全て良し、夕焼け色の巴の顔を思い返して真理とも言える格言が頭に浮かんだ。

360 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/06/13(火) 22:30:10 ID:R6Twgsom
靴を履き替えて再び活気付く校舎を後にする、今頃、巴は友達に囲まれて舞台の成功を祝っているのだろうか。
どちらにせよ俺は巴が家に帰ってくれば喋り疲れるまで話に付き合う事になる、それが少しだけ今夜の楽しみだ。

「さて、帰りますか・・・おわっ!?」
「あっと、ごめなんさ〜い!!」
「ご、ごめんなさい」

俺の真横を見慣れない格好をした二人の女の子が走り抜ける、いや・・・メイドさんなんて見慣れてる筈が無い。

「ね、ねぇ・・・唯奈ちゃん、やっぱりこの格好で帰るのは・・・ちょっと」
「ここまで来て今更だよそんなの、それに絶対先回りしてお兄ちゃんを驚かすんだから、お兄ちゃんの為に急ごっ!!」
「うん、お兄さんの為に、だね」

ペチコートを翻して校門の向こうに小さくなっていく二人を呆然と見送る、傍から見ればかなり不可思議な光景。

「・・・白昼夢?いや、今は夕方だけど・・・あれ?今のは確か石川姉妹・・・」

自分でもよく解らないが妙に肩が重くて俺は茜色の空を見上げる、すると何故か今頃になって蘇る体育館裏での巴。
数時間前の感触が残ったままの右手の上で乙女心と微妙な溜め息は秋の空に溶けて消えていった。

361 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/06/13(火) 22:31:00 ID:R6Twgsom
今回の反省点、一番は神の妹様に御出演頂きオチまで頼ってしまった事。
寛容に見て頂いてありがとうごさいました、しかし、名前を間違えたのは本当に反省しております。
>271 相沢って誰よ?ホント、すいません。
>天童兄妹
この二人は個人的にホントに萌えつつ参考になるという素敵な兄妹です。
お互いの距離感というかバランスというか、そういった物が絶妙だと思います、次も楽しみにしておりますよ。
>格闘妹
強いわ可愛いわで無敵ですねw
なんか夏休みに無理矢理鍛錬に付き合わされる話とか読んでみたいです。
>323様、352様
果たして今回の話は御期待に添えたでしょうか?
投下のペースが牛歩並ですが多分、ネタが切れるか力尽きるまで書き続けると思いますのでこれからもどうぞ宜しく。

362 :遊(ry ◆isG/JvRidQ :2006/06/14(水) 21:15:43 ID:511n4s5A
>夢ノ又夢大先生様
さすがッス!!
いつもながらキレイなSSで、時間が無いと言うのに読み耽ってしまいました。

そして、ふと、未来とか羽音とかも書いて欲しいなぁなんて思ったり……w

363 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/06/22(木) 20:23:56 ID:Oi1VcWul
ほーしゅ

364 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/06/22(木) 20:57:20 ID:U4/qsRee
日曜日のお昼前、鮮やかな青空の下に白いシャツが気持ち良さそうに風に流れる。
洗濯物を叩く小気味良い音を立てながら巴はテキパキと干していく。
我が家の見慣れた光景。

「いい天気だな」
「うん、ここの所はずっと雨だったから余計に気持ちいいよね」

風に靡くサラサラの髪を梳いて本当に気持ちよさそうに巴が微笑む。青い空には屈託の無い笑顔が良く似合う。
見事なまでの五月晴れだ、こんな時では見惚れてしまう俺にも仕方が無いのかもしれない。

「あ、巴、あそこ見てみろよ、青い空には白が似合うよな・・・」
「えっ!?」

耳に残る轟音を立てて飛行機が大きな青空に白い線を描く。これもまた、曇り空では見る事の出来ない景色。
そんな単純な事がなんだか妙に嬉しくて、つい子供みたいな歓声を上げる俺。

「しかし・・・なんで白ばかりなんだろうな?もっとカラフルでも良さそうなもんだが」
「な、なんでって・・・普通、白だと思うよ・・・」
「まぁ、そりゃそうなんだけどさ」

海外の飛行機はもっと色鮮やかな物があると聞いた事がある。
ま、誰かさん専用でもあるまいし真っ赤な飛行機とかは流石に無いとは思うが。

「もっとさ、個性があった方がいいと思う訳だ俺は、大抵が白か青だろ?」
「青って・・・そんなに流行ってる色かな?ボクは知らないけど」
「流行ってるかはともかく普通の色だろ、あとはキャラクター物とか」
「・・・お兄ちゃん、そういうのがいいの?」
「いや、流石に俺はパスだけどさ、ああいうのは子供向けだし」
「あ、うん・・・そうだよね」

365 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/06/22(木) 20:58:35 ID:U4/qsRee
巴の方から何故か安堵の溜め息が聞こえてくる・・・俺ってそんなキャラでもないだろうに。
更に微妙に遠慮がちに聞こえてくる巴の声、なんか声が上擦ってる気が・・・

「あの・・・お兄ちゃん?お兄ちゃんは・・・どんなのがいいと思う?」
「そうだな、ええっと・・・黄色とかオレンジとかいいかもな」
「・・・」
「豹柄とかもいいかも」
「・・・豹柄!?」
「なんつってな、流石に冗談だよ」
「も、もうっ」

一つ一つ俺の言葉を反芻するかの様に聞き入る巴が面白くて思わず冗談を交えてしまう。
というか、そんなに真剣に聞く様な事なのか?
焦る巴を尻目に首が痛くなるまで蒼天の空を見上げ続ける。

「巴は知ってるか?ニュースで見たんだけど黒色もあるんだそうだ」
「・・・知ってるよ・・・ボクだってそれ位」
「そっか、なんでも中から外から黒尽くめなんだってな」

真っ黒な飛行機というのは結構なインパクトがあると思う。
添乗員も黒の制服で内装も黒で統一されエスプレッソとチョコレートが自慢らしい。

「一回、実物を見てみたいよな」
「・・・見て・・・みたい・・・お兄ちゃん?」
「うん?」
「ボクに・・・それは似合うと思う?」
「・・・ふむ」

366 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/06/22(木) 21:00:16 ID:U4/qsRee
空を見上げたまま、顎を撫でながら思索を巡らせる。
黒い機内、エスプレッソ片手に窓の下に映る夜景を見下ろすスーツ姿の巴。
なんとなくだが俺の頭の中では巴は憂いの表情でいる。

「・・・滅茶苦茶似合いそうだな」
「ホント?ホントに・・・そう思って・・・くれてる?」
「ああ、キャリアウーマンというか・・・大人の女性って感じだな」
「・・・そっか・・・ふふっ」
「やれやれ、そんなに嬉しい事かね」
「ボクにとっては凄く、ね・・・お兄ちゃんが言ってくれたから・・・お兄ちゃんだから」
「ん?それはどういう・・・」

さっきから何か噛合っていない二人の会話。見えなくなった話を辿る為に巴へと振り返ると照れまくった巴の熱視線に迎えられる。
・・・はて?なんだろうか、この甘い雰囲気は?
そこで俺はようやくズレた歯車の転がった先を知る事になる。いや、知るのがあまりにも遅過ぎた。
巴の視線、俺が見上げていた方角の青空の下、ベランダの外界に断絶された一年中日陰となっている三角コーナーに干された物体。
これ以上は俺の口からは言うまい・・・

「お、おい、ちょっと待て!!何か勘違いしてないか!?てか、してるんだよ!!」
「分かってる・・・別に可笑しな事じゃないよ、お兄ちゃんだって・・・その・・・男の人なんだから」
「だ、だからそれが!!」


367 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/06/22(木) 21:01:41 ID:U4/qsRee
鳥肌が立つ程に艶を帯びた巴の瞳が妖しく揺らめく。危うく虜にされそうな俺は情けない事に自分を保つだけで精一杯。
とはいえこの場合、まだ自己を持っているのは我ながら褒められていい様な気はする。
普通の男なら完全にやられている所だろう、そんな背水の陣に容赦無く攻めかかる巴の一言。

「ボクはお兄ちゃんの為なら・・・楽しみにしててね・・・お兄ちゃん・・・」

絶大な勘違いの後、去り際にやたら艶っぽい流し目と一言を残して巴はベランダから消えていく。
・・・楽しみ?・・・一体、あの御方は何をやらかす気なんだ?

「・・・部屋に戻るか」

ぶるっ、と身震いを一つして俺もベランダを後にする。なんだか暖かかった筈なのに妙に背中に寒気を感じる俺。
若干の期待と大きな不安を抱きつつ自室に向かう俺だった。しかし、そんな願いも空しく難事はやっぱり訪れるのである。
巴さん曰く、なんだかスッキリした出来事。俺曰く、無かった事にしたい事件。
これが後に我が家に強烈に残る事件、巴さん裸エプロン大事件の始まりだったのです。

(続かない)

368 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/06/22(木) 21:06:02 ID:U4/qsRee
・・・いや、ただの悪ふざけなので軽く流して下さい。
七月十二日の祭りまで道はまだ遠い。

369 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/06/22(木) 21:49:58 ID:etqGqMpV
続かないんですか……w

っていうか、少し萌力を俺に分けてください……いや、マジで……w

370 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/02(日) 22:30:41 ID:ILAIMImQ
優秀なスレッドストッパーの遊星が保守しに来ましたよ、と。

現在6(+1)完成、一つ途中。良いネタ閃けぇ……

371 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/07/08(土) 20:26:30 ID:NWTNnA26
それでもおれは待ち続ける

372 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 21:26:22 ID:d5g2kOvY
いやぁ、焦ったぁ。
……ま、去年ほど盛り上がっちゃいませんが、自己満足祭り、そろそろ始めますか……

373 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:04:03 ID:d5g2kOvY
太陽は燦々と輝き、今では温度計を見るのも嫌なぐらいの高気温。
現在、時刻は二時。
一番気温が上がる時間だと、小学校のとき理科で習った記憶がある。
こんな時間に外に出るヤツは、よほどの用事があるか、バカだけ……。
……まぁ、家に一人、そのバカがいるわけだが……。
しかも、バカはバカでも、運動バカが……。
「よくやるよ……ホント……」
一時間以上前に出て行ったきり帰ってこないバカのことを思いながら、本のページをめくる。
そして、冷たいお茶の入ったグラスを口に運ぶが
「無いのか……」
俺は本にしおりを挟み、グラスを持って立ち上がる。
そして、冷蔵庫を開ける。
「……カフェオレでも飲もうかねぇ」
俺はペットボトルに入ったアイスコーヒーと牛乳を取り出し、俺は手早くコーヒーと牛乳を混ぜる。
「さてと……」
クーラーの効いた部屋。
もう一度、本を読み始めると……
「たっだいまー!!暑ーい!!」
玄関で割れんばかりの大声……。
「あー!!涼しー!!」
そして大声の主が、俺のいるリビングへ……。
「おかえり、望。遅かったな……?」
俺は本から一切目を離さず、答える。
「うん。あはは!!何か楽しくなっちゃって、ランニングしてきたよー!!」
「元気だねぇ……」
「うん!!ボク、もう汗ビッショリー!!」
「さいですか……」
「それより、お兄ちゃん!!また本なんて読んでるー!!」

374 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:04:38 ID:d5g2kOvY
「いけないか?」
「本ばっかり読んでるとバカになるよ?」
「ならねぇよ、証拠もある」
「証拠?」
「望」
「え、ボク……?何で……?」
「だって、バカじゃん、お前。本読まないし」
「ひ、ひどーい!!ボクだって、そんなにバカじゃないよー!!」
「そりゃ悪かったな……」
……つまり、ある程度はバカってことなんだ。
本を読みながらなので、相当適当な受け答えを返す俺。
「暑いー、服脱いじゃえー!!」
「おいおい……」
「だって、汗でぐっしょりだよー?そんなTシャツ着たい?」
「じゃ、着替えて来いよ」
「うん、ちょっと休憩してからー」
望は冷蔵庫の辺りでゴソゴソと何かした後、ソファの俺の隣に座る。
横目で見たが、どうやら本当に下着姿になっているらしい。
「面白い、それ?」
「まぁな」
「……ふぅん。ねぇ、ボクと遊ぼうよー」
「忙しい」
「本読んでるのに?」
「本読んでるから」
「……そんなに本読むのが大事……?」
「は?」
「ボクは……もっと……お兄ちゃんと遊びたいのに……」
……自分が一人でどっか行っといて、何を……。
と思ったが、いえなかった。

375 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:05:12 ID:d5g2kOvY
「ボクは……は……は……はくちっ!!」
望の突然のくしゃみ。
俺は本をパタンと閉じて、
「おい、大丈夫か?」
「あ……うん。でも、ちょっと体冷えてきたみたい……はくちっ!!」
「しょうがねぇなぁ……」
俺は着ていたジャケットを脱いで、望に渡す。
「うわー、お兄ちゃん、ヒョロヒョロだぁ……」
「人の好意は黙って受け取れよ、お前……」
「あ、ゴメンゴメン」
笑って、服を羽織る望。
「ボク……こういうの、ドラマでみたことある……」
「……は?」
「へへ……暖かいね……?」
「そんなのいいから。早くシャワー浴びるなり、服着るなりして来い」
「うん……えへへ」
「何だよ?」
「お兄ちゃん!」
「何だ?」
「えへへ……ボク、行って来るね?」
「おー」
「うん、じゃあね、お兄ちゃん?」
笑顔で去っていく望。
「……何なんだ……」
呆然とする俺。
突如ご機嫌になった望……。
コイツのやることだけは……どんな本にも書いてなさそうだぁ……。
───────────────────────


376 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:05:44 ID:d5g2kOvY
ある日の休み時間。
友人と話しながら、どうでもいいような話に花を咲かせていた。
すると……なにやら、腿のあたりで振動が。
「……メール……?」
ケータイを取り出して画面を見る。
送信主は、俺の妹、翼のようだ。
不思議に思いながら、本文を見ると……

廊下に来い

「……」
そう表示されたケータイの画面を見ながら固まる俺。
カツアゲでもされるんじゃないだろうか……。
「一応行ってみるか……」
友人に説明し、とりあえず廊下へ。
ドアを開けると……
「お、遅かったじゃない」
仁王立ちの翼が、不機嫌そうに言う。
「出来るだけ早く来たつもりだけど……」
「ば、バカいわないでよ!!休み時間は短いんだから、早くしないと終わっちゃうでしょ!?」
「ご尤も……。で、何か御用?」
「じ……」
「じ?」
……痔……?
「いや……そんなこと告白されても困るなぁ……」

377 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:06:16 ID:d5g2kOvY
「何の話よ!?……え、英和辞典を貸して欲しいって言ってるの!!」
言ってねぇよ……。
「翼ご自慢の電子辞書はどうした?」
「わ、忘れちゃったの……」
「ふーん……いや、悪いが……俺も次、英語なんだ」
「え……?ど……どうしよう……」
急にオロオロしはじめる翼。
「必要か?」
「うん……ちょっと無いと授業受けられないかも……」
「そっか……しょうがねぇなぁ……」
「え……?」
「ちょっと待ってろ。持ってくるから」
翼を待たせたまま、俺は辞書を急いで取りに戻る。
「はいよ……時間がないっつーぐらいなら、最初から辞書を貸せってメールに書きゃ良いのに」
「お兄ちゃん……いいの?」
「別に構わねぇよ」
「ホントに?」
「何だ、いらないなら返せよ」
「い、いるわよ!!いるけど……い、一応確認してみただけっ!!」
「そうですか……」
「……お、お兄ちゃん……?」
「何だよ?」
「あ……その……えっと……だからね……」
「何だ?指示語で会話し始めるのは、老化の始まりだぞ?」
「……ば、バカ!!もう知らない!!」
そういって、振り返り歩き出す翼。
「おう、急げよ」
その背中に声をかける。

378 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/07/12(水) 22:08:09 ID:X9XiOkP1
自己支援

379 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:08:34 ID:d5g2kOvY
「……」
翼は一度だけ振り向いたが、何も言わず無言で去っていった。
「そういえば……何を言おうとしてたんだろ……」
教室に戻り、一息ついた俺は、無性に気になったのでメールで聞こうと、ケータイをポケットから取り出す。
「……ま、いいか」
数文字打ってみたが、まぁ、あとで聞けば済むこと。
俺は文字を全て消し、ケータイを閉じる、
すると、突然震えだす俺のケータイ。
「何だ、何だ!?」
着信があることは明らかなのに、こういうときに取り乱してしまう自分が情けない……。
「なんだ、翼か」
メールの中は……

別に感謝なんかしてないからね

「わざわざそんなこと……あ……続きがあるのか」
正直、ムッとするような内容の前置きを見なかったことにして、下のほうには……

でも、ありがとう

「……矛盾してるぞ……」
そう文句をつけつつも、
「ま、無いよりはマシか……」

何だかんだいって……俺も悪いようには考えていないのだけど。
───────────────────────

380 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:09:08 ID:d5g2kOvY
「さてと、さっそく見ようかなー」
家に帰ってくるなり、急いでリビングへ。
しして、バッグから、さっき友達に借してもらったDVDを取り出す。
内容はもちろん恋愛映画。
話題の映画だから見てみたいってのもあるけど……目的はなによりも勉強。
しっかり見て、お兄ちゃんにも使えそうなのがあったら試さなくちゃ!!
そう意気込み、DVDをセットする。
そして再生のボタンを押そうとしたとき、
「あ、葵、いたのか」
お兄ちゃんが私の居るリビングへ。
「うん。ただいま」
「おかえりなさい、葵」
ちょっと微笑んで、おかえりを言ってくれるお兄ちゃん。
なんかいいなー、こういうの。
もしかして……これが『萌え』……?
「で、どうかしたの?」
「いや……別に。ヒマだからテレビでも見ようと思って」
「あ、今からDVD見ようと思ってるんだけど……」
「そっか。じゃあ、他のこと探すか……」
そういって振り返るお兄ちゃん。
でも、きっと、これはチャンスだと、私の第六感が告げた。


381 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:09:39 ID:d5g2kOvY
「あ、お兄ちゃん!!」
「ん?」
「よかったら、一緒に見ない?」
「んー……何のDVD?」
「えっと……恋愛ものの映画だけど……」
「恋愛モノかぁ……あんまり興味無いなぁ……」
「でも、見てみたら面白いかも知れないよ?」
「うーん……じゃあ、見てみようかな」
やった!!
心の中でガッツポーズ。
私の隣に座るお兄ちゃん。
「じゃ、始めるねー」
嬉しい気持ちを胸に、再生のボタンを押す。
これで雰囲気が盛り上がって……それで、お兄ちゃんから……なんて、考えすぎかな。
───────────────────────
「ふぁ……」
思わず洩れそうなあくびをかみ殺す。
もう時間的にクライマックスだと言うのに……退屈な映画だ……。
ちょっと話が王道過ぎるのはともかくとして……
主役の演技力にも少し問題がある気がする……。
イケメンというだけじゃ、涙は誘えないというのに。
借りたときに『いいの?』って聞かれたのはこういう意味だったんだね。
作戦は大幅に失敗だぁ……。
完全に集中力が途切れたので、お兄ちゃんの顔をこっそり覗き見ると……
あ……あれ……?
すごい真剣に見てる……。
え……ちょっと……泣きそうになってない……?

382 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:10:11 ID:d5g2kOvY
それからは、今にも涙がこぼれそうなお兄ちゃんの横顔をずっと見ていた。
真剣そのもののお兄ちゃんの顔は、映画よりもずっとドキドキしたし、面白かった。
そうこうしている間に、幸せそうな音楽が流れ始め、長かった映画は静かに幕を閉じた。
「……いや……よかったな……」
真っ黒になった画面を見ながら、お兄ちゃんがポツンと呟く。
「そんなによかった?」
「うん……ちょっと感動した……」
そういって目頭を押さえるお兄ちゃん。
「泣いてるの?」
「いや……泣いてない……」
必死で目を隠すお兄ちゃん。
それが見栄っ張りで可愛くって、思わず笑ってしまう。
「これ……見てよかったな」
「うん……俺も、いい暇つぶしになったよ……」
「そうだね」
純粋で、ちょっと見栄っ張りで……素敵な人。
目隠しをしたままのお兄ちゃんの横顔をジッと見る。
そして、ちょっとだけお兄ちゃんにもたれながら、私だけの幸せに浸る。
「好き……」
小声でそう呟いて、邪魔の入らない二人だけの時間に、静かに眼を閉じてみた。
しかし、すぐにその幸せは崩れる。いつものことだ。
「さて……」
急に立ち上がるお兄ちゃん。
「あ……」
私はそのまま、横に倒れてしまう。
「あれ、葵。倒れちゃって、どうしたんだ?」
「ううん……何も……」
やっぱり、な展開に、思わずため息をつくと同時に……
手を差し出してくれたお兄ちゃんに、とても幸せな気持ちになった単純な私でした。
───────────────────────

383 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:10:44 ID:d5g2kOvY
お兄ちゃんの学校の校門前。
さっきから数え着てないほどの人が通り過ぎたけれど、肝心のあの人が見つからなくて……
私は、何度目かのため息をついた。
そんなとき、
「こんにちは」
誰かに、突然肩を叩かれる。
不思議に思いながらも振り返ると
……うわぁ、凄く美人な女の人……。
「あ、ゴメンね。驚かせるつもりは無かったんだけど」
「はぁ……」
「その制服は、中学生さんだよね?」
「あ、はい」
「こんなところで、誰か待ってるのかな?」
「え……?」
「ゴメンゴメン。私もちょっと人を待ってるところだから、さっきからキミをずっと見てたんだ」
「お姉さんもなんですか?」
「うん、ところで、やっぱり恋人さんとかを待ってるの?」
「あ……一応……」
「羨ましいなぁ。私は、お兄ちゃんを待ってるんだ。いつも遅くて、困っちゃうよ」
そういって笑う女の人。
「大変ですね」
「あはは。でも、いつもこんな感じだからね、もう慣れちゃったよ」
「そうなんですか……凄いですね」
「うーん、凄いかなぁ?」
「実は、私、そろそろ帰ろうかなって、思ってたんです」

384 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:11:17 ID:d5g2kOvY
「え?何で?」
「急に会いたくなって、来ちゃったんですけど……やっぱり迷惑じゃないかって……」
「うーん……私は、キミのカレシさんを知らないから、何ともいえないんだけど……
 そんなこと、無いと思うよ?」
「そう……ですか?」
「だって、素敵だと思うもん、キミのまっすぐな心」
「……」
「大丈夫だよ。キミの心は伝わるはず。少なくとも、私はそう信じてるけどな」
「そうですか」
「安心して。もし、そんなことで怒るようなら、私が代わりに怒ってあげるから」
「それは……困ります……」
「あはは、ラブラブなんだ?」
「そ、そんな……」
「恥ずかしがらなくても良いじゃない。羨ましいよ」
「でも……」
「私のお兄ちゃんもそれぐらい良い人だと良いんだけどな……」
「え?」
「あ、なんでもないの!!」
「そうですか……」
「そうだ、キミの名前、聞いても良いかな?」
「はい。霧島羽音です」
「私は天童葵。頑張ろうね、お互いにさ?」
「はい!」
天童さんが差し出した手をしっかり握る。
天童さんは、心も外見もキレイな女の人です。
───────────────────────

385 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:11:51 ID:d5g2kOvY
「疲れた……」
夕日の赤色に染まる校庭をトボトボと歩く。
すると、目線の先に、今一番会いたい人の姿……
「幻覚か……ヤバイな、俺……」
目頭を押さえながら、さらにおぼつかない足取りで歩いていく。
今日は早く寝よう……。
そう思ったあたりのこと。
「頑張ってね」
「あ……はい……」
可愛い声……。
とうとう幻聴まで……。
「お兄ちゃん」
そして、目の前に現れる俺の従妹、羽音ちゃん。
ん……これはもしかして……
「羽音ちゃん?」
「はい。こんにちは」
「え?どうして?」
「えと……大した理由じゃないんですけど……ちょっとお兄ちゃんに会いたくなって……」
「俺に……?」
「はい……あ、ごめんなさい!!こういうの、迷惑ですよね……!!」
慌てて、帰ろうとする羽音ちゃん。
俺はそんな羽音ちゃんの肩を優しく掴んで、
「いや、そんなことないって。俺も、ちょうど羽音ちゃんに会いたかったとこだからさ」
「え……本当……ですか?」
振り向き、驚きと喜びに満ちた目を俺に向ける羽音ちゃん。
そんな羽音ちゃんがすごく可愛くて、ドキッとしてしまう。
ちょっと涙目なところがツボだ……。

386 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:12:23 ID:d5g2kOvY
「うん。俺も、羽音ちゃんに会えて嬉しいよ」
「お兄ちゃん……」
「あ、でも……今度からは、こういうことしちゃダメだよ?」
「ダメなんですか……?」
「うん。ほら、やっぱり一人は危ないからね。だからダメだよ」
「はい……」
口ではそういいつつも、寂しそうな羽音ちゃん。
こりゃ……ちょっと情けないけど……本当のことを言うべきかな……。
「って言うのは、建前で……ホントのところは……」
「本当のところは……?」
「誰かが羽音ちゃんのこと好きになったり……羽音ちゃんが、俺以外の誰かを好きになったら嫌だし……」
「……お兄ちゃん……」
「つくづく嫌なやつだね、俺って」
自嘲気味にそう呟く。
かなりかっこ悪いな、俺……。
そう思ったとき……
「お兄ちゃん」
羽音ちゃんが、ゆっくりと俺の胸の中に……。
咄嗟に抱きとめる俺。
「私も、お兄ちゃんだけの私でいたいです……」
「羽音ちゃん……」
「だから……ね……?」
俺の目をジッと見つめる羽音ちゃん。
そして、ゆっくりと、目を閉じる。
「お兄ちゃん……大好き……だよ……」
羽音ちゃんの可愛い唇が、そう呟いた。
「……うん、俺も」
夕日に包まれる瞬間の中、また一つ、二人が近づくことが出来た想い出にお互いの気持ちを確かめ合う。
そして、これからの二人を想像しつつ、幸せな気分に浸るのでした。
───────────────────────

387 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:12:56 ID:d5g2kOvY
「ただいまー」
俺、石川真司は、玄関のドアを開け、強烈な日差しの刺す外から、我が家に戻ってきた。
が、誰も返事をしてくれない。それどころか、物音一つ聞こえない。
「……誰もいないのか……?」
靴を脱ぎ、家の中に入る。
本当に、静かだ。一応……靴はあるので、二人ともいるはずなんだが……。
ゴソっ……
何かの物音……。
「誰だ?」
その音のするほうへ、歩いてみる。
そして、角を曲がった瞬間……
「お……?」
誰かとぶつかった。
よく見ると
「何だ、千奈……いたのか」
「……」
返事の無い千奈。
それどころか、身動き一つせず、俺の胸から離れようともしない。
「千奈……?」
「……このまま……こうしていたいです……」
突然、そう呟いて、俺の胴に手を回してくる千奈……。
「え……」
突然のことに驚き、固まっていると、
「春彦さん……」
……誰……?
「……俺は……石川真司だけど……?」
「あ……ごめんなさい……」
俺の話を聞いているのか聞いていないのか分からないが、
またフラフラとどこかへ行ってしまう千奈。

388 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:13:33 ID:d5g2kOvY
「え……」
呆然と立ち尽くす自分。
千奈が、ゴミ箱をけり倒した……。
───────────────────────
「ゆ、唯奈、いるか!?」
二人の部屋の前、俺は少し乱暴にノックしながら声を上げる。
「あ、うん。いるよー」
「話しがあるんだ、入るぞ」
「うん。どうぞ」
その声を聞いて、ドアを押し、中に入る。
「お兄ちゃん、お帰りー」
少しドアを開けると、唯奈がヘッドフォンを外しながら、こちらに笑顔を向けた。
「で、話って何ー?」
「変なんだ……」
俺は、ベッドの近くのソファーに座り、話し始める。
「何が?」
「俺は……真司だけど……春彦さんって言われた……」
……何を言っているんだ、俺は……。
「よくわかんないけど、もしかして……千奈ちゃんのこと?」
「あぁ、そうだけど……?」
「ボーっとしてたでしょ?」
「あぁ……」
「それなら、心配すること無いよ。たまーにあるんだよねぇ」
「え、どういうこと?」
「千奈ちゃんね、時々本の世界に入り込んじゃうときがあるんだよ」
「……は?」
「まぁ、ホントにたまにだけど、読んでる本が面白いとね。
 そうなっちゃうと、話はあんまり聞かなくなっちゃうし、
 ヒドいときは、物語のシーンを再現しちゃったりとか……」

389 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:14:07 ID:d5g2kOvY
さっきのことを思い出す。
「つまり……今、千奈が読んでる本の登場人物に春彦ってのがいて、俺がその人に見えてるってこと?」
「たぶんね」
「……なるほど……大丈夫なのか、それで?」
「うん。まぁ、ちょっと気を抜いちゃうと出ちゃうってだけだし、問題は無いよ」
「そうか……」
「でも、さすがにちょっと心配だし、千奈ちゃんのトコ行こうよ」
「そうだな」
立ち上がる唯奈。
不思議だ……今日ばかりは、唯奈が頼もしく見えるぞ……。
ドアを開ける唯奈。
その前には……
「あ、唯奈ちゃん。どこかいくの?」
いつもの、千奈が立っていた。
「いや、別に……ねぇ、お兄ちゃん?」
「あぁ」
「あ、お兄さん……いつの間に……?」
「いや、さっきだけど」
「そうですか。全然気付かなかったです……」
「そりゃそうだよ、千奈ちゃん」
「え?」
「いつもの、出てたみたいだよ?」
「「え……?」」

390 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:14:40 ID:d5g2kOvY
これは、千奈の驚きの「え……?」と、
俺の『言っちゃってもいいのか……?』という「え……?」である。
これがハモる辺り、俺も大分、この双子のことが分かってきたということだろうか……。
「ねぇ……唯奈ちゃん……私、何しちゃったのかな?」
「さぁ?私もそこまで詳しくは……お兄ちゃんに聞いて」
「お兄さんに……?」
二人の視線が俺に向く。
「……あの……スイマセン……私……たまになっちゃうんです……
 変なこと……しませんでした……?」
「え……えっと……」
「唯奈も、それ聞きたいなぁー?ね、お兄ちゃん?」
「お願いです、お兄さん……教えてください……」
「そ……それは……」
二人の妹に詰め寄られる俺。
言うべきか言わざるべきかを頭の中でグルグルと回転させながら……
平和な事件であることに、少し幸せを感じるある初夏の午後でした……。
───────────────────────

391 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:15:13 ID:d5g2kOvY
太陽が輝き、鳥が鳴く。
まぁ、今日も暑い一日になりそうだが、雨が降るよりはずっと良い。
窓の外を見てそんなことを考えつつ、グラスの麦茶を飲み干す俺。
と、後方でなにやら人の気配。
振り向くと、
「はわぁー……おはよー……」
俺の妹、沙耶らしき人物が欠伸しながらやってきた。
「おはよう、沙耶。今起こそうと思ってたんだよ」
「うん。サヤ、一人で起きたんだよー」
沙耶のような人間は眠そうに目を擦りながら笑って見せた。
俺は沙耶のような人の頭にポンと手を置いて、
「よしよし、えらいな」
「えへへー……」
なんとも幸せそうな笑顔を見せる沙耶と思われるお方。
「ところで……沙耶……?」
「?なーに?」
小首をかしげて俺の顔を見上げる。
「どうしたんだ?その髪型……?」
「髪型?どうしたのー?」
「ほら、こっちおいで」
俺は沙耶の後ろに回り、姿見の前まで沙耶を移動させる。
「……な?」
「うん、すごいねー」
鏡の中の、メデューサみたいな髪型の沙耶が答えた。
しかし、ちょっと嬉しそうだな……。

392 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:15:45 ID:d5g2kOvY
「ちゃんと乾かして寝ないからだぞ?風邪引いてないか?」
「うん、だいじょーぶだよー」
「それならいいけど」
手で沙耶の髪を押さえてみたり、手櫛で梳かしてみたりするが一向に直らない。
「ちょっと待ってろ。いろいろ持ってくるから」
「うん」
沙耶の頭を軽く撫で、洗面所へ霧吹きと櫛を手早く取りに行く。
「お待たせー」
俺は椅子に沙耶を座らせると、軽く水を沙耶の髪の毛に吹き付ける。
「きゃはははは!!お、おにぃちゃん、つめたいよ!!」
霧吹きのシュッと音がするたびに、沙耶の体が大きく揺れる。
「我慢しろ」
「で、でもぉ!!きゃははははは!!」
そんな沙耶に何度も霧吹きを用い、やっと沙耶の髪がしっとりしてくる。
その髪を櫛でとかしていく。
すると……
「……」
……鏡に映る少女。
幼い顔に浮かぶ嬉しそうな微笑。
そのフェイスとは一見ミスマッチな、しっとりとした長い髪。


393 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:16:18 ID:d5g2kOvY
でもそれが何だか可愛くて……
普段の沙耶とのギャップに戸惑い、思わず手を止めてしまう。
「どうしたの?」
鏡の中の妹は、俺と目をあわせると、眩しい笑顔を返す。
これは……ヤバいかもしれない……。
「おにぃちゃん……?」
一向に動かない俺を心配してか、上を向いて俺の顔を直接覗きこむ沙耶。
「……」
ここからは一瞬の出来事だ。
テーブルの上においてあった二本のリボンを掴み、少々強引に沙耶の髪を縛り付ける。
「さ、朝御飯食べようじゃないか、なぁ!?」
「う、うん……」
不思議そうに自分の髪を見ている沙耶。
俺は極力何も考えないように、キッチンへ急ぐ。
「写真……撮っとけばよかったかな……?」
「写真?なんのー?」
「な、なんでもない!!」

何だか汗が止まらない俺……。
どうも、今日も暑い日になりそうだ……。
───────────────────────

394 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:16:51 ID:d5g2kOvY
「暑……」
「あ〜づ〜い〜……」
焼け付くような日差しの中、俺、州田敬介は幼馴染のなんとかいう女と下校中……。
「それにしても……男子はいいよねぇ……」
隣の相川だったか相沢だったか言う女が唐突に呟く
「何が?」
「だって、上脱げるじゃん。梨那はそうはいかないもん……」
そうだ、コイツの下の名前は梨那だ……。
「大丈夫だろ、そんなやせっぽちの体見たって、誰も欲情はしないと思うぞ……」
この場合は、もちろん、出るべきところがやせっぽち。
出るべきところじゃない部分は……言うまい……。
「にゃっ!!そういう問題じゃないぃ!!」
「あ、逆に出てないから恥ずかしいのか……」
「だから、違うぅっ!!」
顔を真っ赤にして反論する梨那。
……見ているだけでも暑苦しい……。
「何が違うんだ」
「出てる出てないは関係ないの!!女の子は皆恥ずかしいんだよっ!!」
「あのなぁ……じゃあ、聞くが、いくら暑いからといって上半身脱いで町を歩いている男を見たことがあるか?」
「にゃ……ないけど……」
「結局、男だろうと女だろうと変わらんよ。俺は、逆に、制服のスカートは涼しそうで良いと思うけど」
「でもでも、ぱんつ見られちゃうんだよ?」
「いいじゃん、見せれば。どーせ誰も梨那のなんか……」
「そ、そんなこと……!!」
「……そんなこと?」
「にゃぁ……あるっていうのも、ないっていうのも、なんかイヤっ……」
非常にしょうもないことに、頭を抱えて悩んでいる梨那。
あぁ、でもどっちもイヤかもなぁ……。

395 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:17:33 ID:d5g2kOvY
「しょうがない、品の無い話題になってきたし、無かったことにしてやるよ」
「うん、ゴメン……えっと……何処まで戻る?」
「お好きなところまで」
「じゃあ……えっと……ぱんつ見られちゃうのイヤだけど、でも、ブルマとかはくと蒸れちゃうしぃ……」
「……」
人の話聞いてないな……。
……呆れる俺。
これはもう……
「あ、お兄ちゃん、何処行くのっ?」
帰り道から一歩外れた俺を梨那が呼び止めた。
「コンビニに避難する」
「あ、待ってよー、梨那も行くー!!」
暑さを逃れようと少し早足になる俺を後ろから追いかけてくる梨那。
何か今日は二人ともノリがおかしい気がする……
───────────────────────
「んー!!涼し〜!!」
コンビニに入るなり、声を上げる梨那。
そんな梨那を俺は無視して
「何かいいの入ってないかなぁーっと」
俺は一人、飲み物の棚へ。
「あ、梨那、ミルクティーにしよう!!」
脇から梨那が声をかけた。
「こんな暑いのにミルクティーかよ……」
「だって、甘いの好きだもん」
「……ま、それならそれでいいけど」
俺も甘党だが……こんなクソ暑い日にミルク系の飲み物はちょっと……。
「……飲み物は止めにしよう……」
気分が優れなくなってきたので、ドリンクは止め……。
新発売の商品のチェックはまた今度だな……。

396 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:18:04 ID:d5g2kOvY
「えー……じゃあ、梨那もやめるよー。アイス買おうよ、アイス!!」
「そうだなぁ……アイスの美味い季節になったからな」
「うん。でも、梨那はいつでも食べてるけどねー」
「そうか、俺はあんまり……っていうか、コンビニでアイス買ったことないかも」
「えっ!?無いの!?」
「そんな驚くことか?俺は飲み物ばっかりだし、アイスは買わんな」
「そっかー。じゃ、コレ買わない?美味しいよー?」
そういって、端のアイスを指差す梨那。
「おい、一個250円もするぞ、これ?」
「うん、きっと美味しいよー」
「……食べたこと無いのか?」
「そのアイスは、こーきゅーんひんだよ?梨那があるわけないよー」
そういって、能天気に笑う梨那。
……コンビニで売ってる高級品か……小ちぇえなぁ……。
「まぁ……俺も250円もするアイスをちょっと買おうという気にもなれないけど……」
「だよねー。梨那はガリガリくんで我慢するよー」
「それも寂しいなぁ」
「しょうがないよー」
「じゃあさ、金半分出し合わないか?」
「え?」
「俺もなんか食べてみたいし、どうよ?」
「うーん……半分で125円か……うん、わかった!!半分出すよ」
「よし、決まりだな。さ、買って帰るぞ」
「うん」
高級品のアイスを一つ、レジに持っていく二人。
……持ってみると予想以上に小さいな、このアイス……。

397 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:18:36 ID:d5g2kOvY
「へへ〜、楽しみ〜!!食べよ、食べよっ!!」
コンビニから一歩出ると、早速切り出してくる梨那。
「早いな」
「早くしないと溶けちゃうもん。美味しいうちに食べよ!!」
そういって、俺の持つビニール袋を漁り始める梨那。
「ま、そうだなぁ」
「一口目はどっちが食べる!?」
「お前でいいよ……」
「え!?いいのっ!?」
「いいよ、別に」
「でも、ファーストインパクトだよ!?重要だよ!?」
「いいって、それぐらい」
「わーい、ありがとー、お兄ちゃん!!じゃ、遠慮なく、いただきまーす!!」
木製のスプーンで、すくって食べる。
「ん〜!!美味しぃー!!」
「そんなに?」
「うん。ほれ、食べてみてよ」
間接であることには一切気付かぬまま……梨那の差し出した、スプーンを口に運ぶ。
「うぉ……」
「美味しいでしょ?」
「コレ食ったら、普通のアイス食えんな……」
「ねぇー?もっと食べるー?」
そういってアイスを梨那から受け取る俺。
「半分は俺のもんだっての」
流石に、量が少ないので、俺の分はもう無くなった……。
食べ足り無い気持ちを抑えて梨那にカップを返す。

398 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:19:08 ID:d5g2kOvY
「それもそうかー。……小さな贅沢だねぇ……あ、もうないや」
「ほんと、高いし少ないな……」
「うにゃー……これが毎日食べられるようなお金持ちになりたいぃー!!」
コイツ、なんか色々小せぇ……。
「美味かったな」
「うん、また二人で買おうね?」
「まぁ、そうなっちゃうか……」
そう考えると、少し残念な気持ちになる。
「ま、贅沢はたまにするくらいで丁度良いというしな」
「そうだねー、毎日だと有難みが薄れちゃうかもね」
スプーンを咥えたまま喋る梨那。
「おい、梨那、ほれ」
ソレを見た俺は、梨那に手を差し出す。
「にゃ、何?」
「スプーン。さっきの袋に入れてやるから」
「い、いいよ!!」
「何で?」
「べ、別にっ!!」
「みっともないぞ?」
「う……で、でも……間接……」
「は?」
「な、何でもないにゃ!!」

399 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:19:40 ID:d5g2kOvY
「ったく、変なもん欲しがりやがって……でも、咥えとくのはやめろよ?」
「うん……わかりました……えへへ」
スプーンをハンカチで拭き、ポケットにしまう、何故か嬉しそうな梨那。
意味が分からず、流れた汗を拭く俺。
「ねぇ、お兄ちゃん?」
俺の目を覗き込む梨那。
そして、自分の唇をそっと撫でる。
「ん?」
「えへへ〜♪なんでもないよー!!」
「はぁ……?」

そんなこんなで、暑苦しくも、明るい生活に俺はまた汗を流すのでした……。
───────────────────────

400 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:20:13 ID:d5g2kOvY
「あれ……ここじゃなかったかなぁ……」
埃っぽい押入れの中、様々なものをかきわけながら、ついついどうでも良いことを口走る。
「あ、何か探し物ですか、兄さん?」
パタパタと足音を響かせながら、俺の妹、未来が声をかけた。
「おー。あの、親父が買ったキャンプ用の折り畳めるテーブルなんだけど……」
「あぁ、あれですね。そこに無ければ外の倉庫じゃないですか?」
「やっぱそうか……。邪魔だから移したのかな」
「そうでしょうね……邪魔でしかたらね、アレは」
「じゃあ、外か」
押入れから脱出しながら、埃まみれのTシャツを手で払う。
未来は飛んでくる埃に少し顔をしかめながら、
「で、それを何に使うんですか?」
「あぁ、ベランダに置いて……」
「あっ、分かりました。今晩の花火ですね?」
「ご名答。ちょうど良い位置にこの家が立ってるし、今年は腰を入れて楽しもうかなと」
「へぇ、それはいいですね」
「良かったら、未来ちゃんもどう?」
「いいんですか?」
「もちろん。どーせ、一人で見る気だったし。せっかくだから、一緒に見ようよ」
「あ、それならお言葉に甘えさせてもらいますね」
「おー、じゃ、どうせやるなら、飲み物とかお菓子とか買ってこようかな」
「あ!!それなら、宴会用の料理作ります、私!!」
手を高く上げてアピールする未来。
嬉しそうだな……。
「何か本格的な宴会になってきたなー」
「ですね」
そう言って、嬉しそうに微笑む未来。
あぁ……和むなぁ……。

401 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/07/12(水) 22:24:12 ID:X9XiOkP1
あぁ……ついにバーボンへ……
無理はするものじゃないね……

402 :ケータイより愛を込めて :2006/07/12(水) 22:50:46 ID:X9XiOkP1
ゴメンなさい。
続きは俺のまとめサイトで……

403 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/07/12(水) 23:04:45 ID:0fxGV1eT
>>402
まとめサイトのURLはっていただけるとありがたいですw

404 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/13(木) 06:44:55 ID:JyGJvyDX
ttp://www.geocities.jp/you_say712/maturi.htm

……ホント申し訳ねぇッス……

405 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/07/13(木) 09:21:21 ID:xvxXS7d7
>>404
ありがとうございますw

406 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/07/14(金) 15:27:04 ID:XTt1E6Ym
>>遊星さん
乙です!

407 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/07/20(木) 03:53:13 ID:j+66GohR
ハローハロー、あなたは何処にいますか。
ハローハロー、私は此処にいます。
ハローハロー、今日も世界は極めて正常。
ほしゅ

408 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/07/22(土) 22:44:53 ID:mLy7PqYj
続きはまだかなWKTK

409 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/07/24(月) 07:57:45 ID:ADsRNfIp
続きとは?

410 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/07/29(土) 13:19:26 ID:jM9oH1ca
夢ノ又夢氏に期待age

411 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/07/29(土) 22:52:58 ID:siebI3Cj
>>410
俺も楽しみだ

412 :天神泰三 :2006/07/30(日) 07:18:07 ID:Nd6NDWPW
おいどんの妹になってほしいでゴワス。

413 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/07/30(日) 12:05:45 ID:UO14f9H5
どんつく、どんつく♪

414 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/07/30(日) 16:57:11 ID:NtPRfsI0
歌いなさいラーゼフォン
お前の歌を、禁じられた歌を…

歌いなさいラーゼフォン
いつか全てが一つになる時のために

415 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/07/30(日) 21:03:12 ID:+thpfUvY
気が付けばもう七月も終わり、祭りに乗り遅れてしまった・・・。
>遊星神
GJ、そしてお疲れ様です。
以前にも言いましたがやはり一度にこれだけのSSを書いてさら
にネタが被らないというのはマジで尊敬してしまいます。
未来ちゃんは相変わらず可愛いし、梨那ちゃんもカワイイし、葵
ちゃんは参考になるしで大満足の祭りでした。
>410様、411様
現在、二つの話が八割程度書けた所。
近々頑張って投下します。

416 :遊(ry ◆isG/JvRidQ :2006/07/30(日) 22:10:32 ID:i/zX7Wad
>>415
お久しぶりっス。
先生の作品、楽しみにしてますから。

417 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/08/09(水) 00:42:05 ID:RWVNbJzz
ほしゅ

418 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/08/17(木) 22:49:48 ID:QY6T/Z7W
ほしゅ

419 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/08/21(月) 00:34:24 ID:vAxHPxrd
新作期待

420 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/08/22(火) 02:50:45 ID:In1PuziW
ずんずんして

421 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/08/23(水) 19:16:00 ID:LTq/0BYS
まだだ!まだ終わらんよ!

422 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/08/24(木) 23:03:18 ID:fyYMaYoF
恥こそ、もっとも身近な精神的苦痛ではないだろうか。
ほら、いつもいる場所から一歩入れば、ここは恥多き地……。
皆の視線が俺に集まっているような気がする……。
「んー……迷っちゃうなぁ〜」
……隣のお嬢さんは、俺の気など知らず、のんきに水着を選んでいる。
葵がどうしてもっていうから……仕方ないんだ、これは……。
そう自分に言い聞かせる。
「ねぇ、お兄ちゃんはどう思う?」
青いが二種類の水着を見せながら、俺に尋ねた。
どう思うといわれても……。
俺は戸惑いながら、
「え……あぁ……えっと……葵の好きな方でいいんじゃないか?」
「だから、どっちも凄く好きだから困ってるのよ」
「そっか……そうだよな……」
女の子と水着、という組み合わせが俺はどうしても恥ずかしくて、思わず眼を背ける。
すると……
「いててっ!!」
顎をガッ!とつかまれ、そのまま無理矢理首を曲げられる。
……な、なんて力だ……。
「お兄ちゃん?」
いつもより低いトーンで語りだす葵。
心なしか、笑顔も硬い……。
「は、はい、なに?」
「……別に。なんでもないけど……」
「はぁ……」
……また、ワケも分からず怒られるかと思ったけど……今日は機嫌が良いのかな……。

423 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/08/24(木) 23:03:54 ID:fyYMaYoF
「あ、コレもいいなぁ!!う〜ん、ホントに迷う……」
新しい水着を見つけてはしゃぐ葵。
やっぱり機嫌はよさそうだ。
「ねぇねぇ、お兄ちゃんはどんな水着が好き?」
「いや、俺は何でも良いけど」
「何でも?」
「いや、まぁ……限度はあるけど」
別に着ないしね。別に海にもプールにも行かないから。
「まぁ、学校のがあるし、俺は別にいいかなと思うんだけど」
「学校の……?それは……えっと……つまり……」
……顔赤いぞ、何だ……?
「あ、葵……?」
「帰ろっ!!」
「え?」
「いいからっ!!」
俺の手をひっぱり、どんどん進んでいく葵。
「そんなに急がなくても……いや、ありがたいけど……」
「だって、お兄ちゃんがそういうこと言うの珍しいじゃない!?」
「珍しいか?」
「うん。だから、ちょっと恥ずかしいけど……私……」
恥ずかしい……?
って、手、繋いじゃってるよ……確かに、コレは恥ずかしいな……。

424 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/08/24(木) 23:04:39 ID:fyYMaYoF
「ねぇ……お兄ちゃん」
「何だ?」
「ふふっ、別に〜♪お兄ちゃんも好きなんだから〜♪」
俺『も』好き……つまり、葵も好き……?
あぁ、何か美味いモンでももらったんだな……。
しかし、ホントに機嫌良いんだな……。
「ふむ、それなら早く帰らないと」
「ふふっ♥お兄ちゃんったら♥」


誤解は続く。
さらに続く。
ちなみに、事が起こった後も、俺は全ての誤解を解くことが出来なかったのだが……。
───────────────────────
永遠の前座、遊星登場。
夢ノ又夢先生の新作に強く期待する。

あと、>364-367あたりに酷似しているが、私は謝らない。
嘘です。ゴメンなさい。謝ります。
まぁ、夢ノ又夢先生の作品は凄いから……ねぇ。

425 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/08/26(土) 03:10:29 ID:qhS/H6Nv
>>422-424
GJでふ!
スク水?

426 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/08/26(土) 03:56:07 ID:svrSX7u4
>>422-424
スク水キタコレ萌えたよ

427 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/08/28(月) 12:00:13 ID:Buw/R2vD
保守

428 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/08/30(水) 22:04:36 ID:K0PbcXEr
「見事に雨だな、嫌になる位」

下校時間になって本格的に降り始めた雨、黒い雲がバケツをひっくり返した様な水を地面に叩きつける。
降水確率20%に裏切られた俺はただ黙って下駄箱の先の露帯びた世界を見詰めるしか出来ない。
それにしても朝の晴れ間が嘘みたいな状況、日頃の行いに何か問題点でもあっただろうか?
自分を省みていると唐突に視界に入り込む赤い傘、やはり割と良い日頃の行いのお陰で訪れる助け舟。
雨にも負けないサラサラの黒髪を靡かせ蒸し暑さとは無縁な涼やかな瞳で俺を覗き込む。

「はい、これはお兄ちゃんの傘」
「・・・おお、今日ばかりは巴に後光が差して見えるよ」
「傘一つで神様にはなれないよ、ふふっ、ホントに大袈裟なんだから」
「いやいや、結構な助け舟だよ本当に、お陰で雨の中をランニングせずに済んだ、感謝感激」

仰々しく手を合わせ拝む俺を横目で可笑しそうに眺めながら傘を差し出す巴。
二三、褒めちぎりの言葉が出そうになりながら受け取った傘を空に広げる、少しだけ気分の軽くなった足取りで。

「ところで、巴はいつまでそこで見てるんだ?早く帰ろう」
「うん、そうなんだけどボクの傘は忘れちゃって」
「・・・は?」
「だから、お兄ちゃんの分は覚えていたけれど自分の分は忘れてたんだよ」
「いつも鞄に折畳み傘を入れてただろ?」
「残念だけど今日に限って入ってない」
「それは残念だな」
「うん、残念無念」

言葉とは裏腹に少しも後悔の念の感じられない顔であっさり諦める巴、それどころか表情は心なし晴やかにさえ見える。
その爽やかさは重たい梅雨空とはあまりにも正反対の清々しさを感じさせる、流石は巴といった所だろうか。

429 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/08/30(水) 22:05:47 ID:K0PbcXEr
そうなると俺が取るべき行動は一つ。

「・・・となると道は一つだな」
「いいの?お兄ちゃん」
「ああ、これは巴が使いな」
「え、えっ!?」

差し出された傘を前にやたらうろたえる巴、いや、俺はそんなに予想外な事をしたんだろうか?

「なんでそんなに驚くよ?一つしか無いんだから巴が使えばいいだろ」
「で、でも、それじゃお兄ちゃんが・・・」
「心配するな、馬鹿は風邪はひかない」
「そういう事を言うと思ってたよ・・・そうじゃなくて、二人共濡れずに帰る方法があるじゃない」
「ん?そんな方法あるか?」
「一緒に帰ればいいんだよ、一つの傘で二人・・・ね?」
「・・・言われてみりゃそうだよな・・・なんで気付かなかったんだ俺は・・・」

少しの間に簡単に出てきた解決法と自分の思慮の至らなさを感じつつ一人分のスペースを空けて傘を差す。
遠慮がちにそこへ入り込む巴を見届け、二人して霧の立ち上る雨の道を歩き出す。
傘の上で乱雑なリズムを奏でる雨音、日に焼けた星をこれでもかと潤そうとするこの季節特有の長い雨。
人影も車の一つも見えない幻想的な道をただ黙々と歩き続けると不意に隣から漏れ出る以外な言葉。

「・・・今日はラッキーだな」
「どこがよ、どっちかと言うと不幸だろ、晴れが大雨になるわ傘は一つしか無いわ」
「傘は一つだけどボクたちは二人、こんな雨の中を独りで帰らなくていいんだよ、それってラッキーな事だよね」
「ポジティブだねぇ、巴さんは・・・ま、一理あるな」
「それに・・・こういうの、なんだか映画のワンシーンみたいで素敵かな・・・って」
「ああ、雨の中、鳴り響く銃声、崩れ落ちる俺とピストル片手の巴」
「・・・どうしてそうなるの?しかも、ボクが犯人にされてるし・・・」

430 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/08/30(水) 22:07:47 ID:K0PbcXEr
不意に頭を過ぎる情景は何故かサスペンス仕立てな俺、その辺の理由は多分、発想が貧困な故だろう。
ジト目の巴を横にバツが悪く頭を掻いてワザとらしく前に向き直る。

「もう少しロマンティックな話にしようよ、折角の雨なんだから」
「折角、それにロマンティック・・・こういう時に使う言葉か?」
「こういう時だから使ってるの、こんな風に二人で帰る事なんて滅多にないんだから」
「いや、だから俺とムード出そうとしてどうするよ?」
「・・・手ごわいなぁ、お兄ちゃんは・・・お兄ちゃんだから、なのに・・・ボクはお兄ちゃんだけなのに」
「おいおい、何一人でブツブツ言ってるんだ?なんか怒らせるような事を言ったか、俺?」
「別に何も、何も無さ過ぎて物足りない位だよ・・・」
「そう言われてもな、ロマンティックと言われても俺にはパッと浮かばないんだよな、例えば何かないかな」
「例えば・・・そう、真っ暗な海の底みたいな世界に灯りが二つ、お兄ちゃんとボクと・・・寄り添う灯」

俯き加減だった肩が上がり、打って変わって思索を巡らせる真剣な顔に変わる巴。
右手の人差し指を唇の前にちょこんと置いて眉をひそめた顔まま巴は語りだす。
まるでバラバラのフィルムとスライドを一つ一つ重ね合わせていく様に。

「空の向こうにはそれよりもっと明るくて華やかな星の光が何百、何万とあって・・・でも違うんだ」
「違うって何が?」
「どんなに明るい光でもそれはボク達にとって何万とある光の一つ、でも隣にあるのはたった一つの光」
「・・・へぇ、なんか映画ってより詩の一節みたいだな」
「同じ物なんてどこにも無い、代わりになる物なんてどこにも無い、かけがえのない大切な光なんだよ」
「巴は詩人だったのか・・・なんかそのまま本にでも出来そうだな」
「あまりからかわないでよ、もう・・・」
「いやいや、普通に関心してるって、確かに俺に夕飯作ってくれる光なんて他には無いからな」
「えっ・・・」

なんとも不思議そうな顔で雨を跳ねない為にゆっくりしていた歩みがピタリと止まる巴。
当然、同じ傘に入っているこちらも留まる事を余儀なくされる。
タイミングの掴めない微妙な空白、途切れた会話の向こうに聞こえる雨音を意味も無く数えてみたりなんかする。

431 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/08/30(水) 22:24:50 ID:qIQ8yBlN
夢ノ又夢氏がいらっしゃったぞ!!
やっぱ、最高だー!!

432 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/08/31(木) 20:34:39 ID:U2xAs0Go
>>428-430
GJ

433 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/09/01(金) 01:26:10 ID:Lp/7Dabe
age

434 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/09/01(金) 07:06:40 ID:8QY3U6cg
「お兄ちゃん朝だよぉ〜!早く起きないと遅刻しちゃうよぉ?」妹の麻衣がいつものように起こしにくる。ただいつもと違ったことが一つオレが幼なじみの菜月を殺していたのである。
俺は正直焦っていたどう死体を処理すべきかどうバイト先の右門に言い訳すべきか…
「お兄ちゃん入るよ?」ガチャリ
考えているうちに妹の麻衣がオレの部屋に入ってきたのだ

435 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/09/01(金) 07:15:14 ID:8QY3U6cg
「え!?…な、菜月さん!?…し、死んでる…お兄ちゃんどうゆうこと!?」麻衣はオレに尋ねてくる。だがオレは答えない
「お兄ちゃん!返事をして!」
「うるさい黙れ!いいか?このことはさつきお姉ちゃんには絶対に言うんじゃないぞ!言ったらお前もこうなるんだ」

436 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/09/01(金) 21:46:46 ID:PFYNOR93
前回投下からちょうど一月、近々とか言っておいてえらく時間が掛かりました。
続きは近い内に投下します、いや、今度こそホントに。

>遊星様
スクール水着は反則でしょうw
誤解の一部始終が読みたい、是が否でも読みたいですw

437 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/09/02(土) 00:01:26 ID:UMDDMWqv
待つ時間は長いぜ

438 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/09/02(土) 01:48:01 ID:I+Qt+wbj
>>遊星さん
GJです!スク水…(*´Д`)

>>夢ノ又夢さん
GJ!今回のは雰囲気がちょっと鍵っぽいですねw

439 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/09/04(月) 06:33:13 ID:cCQov9T6
部屋で懐かしのパラサイト・イヴをやっていたら妹がやってきた
「お兄ちゃ〜ん」
「んぁ?」テレビの画面を見ながら適当な返事をする
「ネギまのゲーム買ってきた」と言ってソフトを前に突き出す妹
「少し待て、今クライスラービルだからセーブまで多少時間掛かる」

手早くセーブをしてディスクを抜いて妹に場所を譲る
「ほれ、終わったぞ」
「ネギま〜」と言ってまたソフトを突き出す
「だからなんだよwイタい子みたいだからやめれww」
「やって?」
「は?俺が?意味がわからん」
「だって1人でやるの恥ずかしいんだもん」
「知らねーよw」
「お願い〜」
「そのぐらい自分でやりなさいw」
「じゃあお兄ちゃんそこで見ててね!」
「なんでだよw」

結局見ることになってトイレにも行かせてもらえない。
という夢を見た。かれこれ10年ぐらい妹が欲しいと嘆き続けた俺23、そろそろ重症です。

440 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/09/05(火) 18:04:09 ID:x1oVduXO
>>439
> 「だからなんだよwイタい子みたいだからやめれww」
そっくりそのままおまいに言…えない俺ガイル…('A`)

441 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/09/06(水) 22:44:40 ID:RH9FdTlA
・前回のあらすじ
水着を買いにいった兄と妹。
しかし、兄の鈍感さから、誤解が勃発。
妹、葵は兄がスク水好きと勘違いしてしまう。

「ほら、お兄ちゃん、見て見て!!」
突如俺の部屋に現れた水着姿の妹を前に、しばし、固まる俺。
「……」
水着買ってたんだ。いつの間に……。
……。
アレか、俺がトイレ行った時だ。
結構時間かかったしな……時間はあったよな。
「変……?」
「い、いや、いいんじゃないか……?」
なんか学校で使うヤツみたいな感じだけど……
……まぁ、とりあえず褒めとけば間違いないよな……。
「ホント?よかった……」
安堵のため息をつく葵。
……安易なことを言ったと、少し罪悪感。
「お兄ちゃんがこの水着、好きだって言ってくれたから……思い切っちゃった、えへへ」
……言ったっけ?
必死で思いをめぐらす。

442 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/09/06(水) 22:45:26 ID:RH9FdTlA
……あぁ。
色は青系が好き。とは言ったな。
あと、露出は少な目の方が良いんじゃないか?という兄としての気遣い(それと、俺が恥ずかしくて見れないから)もした。
二つを統合すると……まぁ、こんなもんか。
もう一度、水着を見る。
「……っ……」
「どうかしたの?」
「いや、何も……」
……一瞬、スク水、とか、スク水着て……とか、考えた自分が恥ずかしい……。
そんなこと葵に言ったら、なんて思われるか……。
当の葵は、自分の体をあちこち見ながら、
「でも、ダメだ、これは家の中でしか着れないよー」
「ああ、そうか」
「まぁ……もともと、そのつもりなんだけどね」
そういって、俺にウインクをしてみせる葵……。
つーか……家の中で何に使うんだ……?
「……やっぱり、風呂か……?」
……素朴な疑問が口に出てしまった。
聞こえてなかったら良いんだけど……。
そう思っていたが、葵は突然スイッチが入ったように……
「お、お風呂っ!?え、何何!?どういうこと!?」
聞こえてたか……。
それなら、しょうがない。
「いや、入るんじゃないのか?」
「えっ!?そ、そんな!?お兄ちゃん、私、まだ、心の準備が……」
水着で風呂に入るってのは、そんなに覚悟のいることなんだな……。
女の子って難しいなぁ……。

443 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/09/06(水) 22:46:14 ID:RH9FdTlA
「……え?」
「あ、でも……イヤじゃないんだけど……!!」
「……はぁ……」
「……でも、私、初めてだから……最初は、普通にしたいな……?」
「まぁ、よく分からんけど……好きなようにしたらいいんじゃないか」
「……うん。ありがとう、ゴメンね?」
「謝ることじゃないだろう、俺は関係ないし」
俺がそう言うと、
「……え?」
目の前の葵の動きが固まる。
「え?何?俺関係あるの?」
「……ねぇ、お兄ちゃん。何の話?」
目の座った葵が、低い声で尋ねた。
……何だ、このプレッシャーは……。
「葵は水着を着て風呂に入るって、話じゃなかったか?」
何だかポカーンとしてる葵。
徐々に俯き……何だか震えてますけど……。
「……お……」
「お?」
「お兄ちゃんのバカぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!!!!」
「っ!?……何故……」
……葵のボディーブローをモロにくらい、その場に膝をつく俺。
「喜んで損したよっ!!もうっ!!」
怒った様子で出て行く葵。
尚も動けず、しゃべることもままならぬ俺。
何にも分からぬまま喰らったパンチは、涙が出るくらい痛いんだね、チーフ……。
───────────────────────

444 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/09/06(水) 22:47:29 ID:RH9FdTlA
一人前の前座を目指して、今日も貼り貼りっと。
でも、名前を忘れるようじゃねぇ……

本来作るつもりの無かった続編。
……姉のテイストが少し入ってる気が……。
夢ノ又夢先生の作品がまだ続くようなら、葵視点のものもその前座で書くかも……。

445 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/09/12(火) 23:15:42 ID:o0VcQwlS
俺はスレストすることにおいても頂点に立つ男らしい……。

ところで、質問。
新しい妹で新しい話を書き始めたんだけど、よく考えたら、最初の方は妹関係ない。
それでも貼っても良いのかな……?

446 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/09/13(水) 05:31:52 ID:oZFQ6p5A
新しい妹貼っておくれ(´∀`)


葵もよろすく!

447 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/09/16(土) 23:15:10 ID:hshwH5iR
突然振り出した雨。
空はどんよりと曇って、どうやらすぐには止みそうにない。
駅前の街灯時計の前には、俺を除いて誰もいない。
両手に持った二本の傘を見比べ、俺は小さくため息をついた。
「早く来すぎたか」
約束の時間まで、あと三十分以上。
ある程度の時間的余裕を確保しておかないと落ち着かないという病気を抱えた俺だが、
今回の予想以上の待ち時間に、少しうんざりする。
と、いいつつも……心の準備をする時間が出来て、少しホッとしたワケだが。
どこか休める場所があれば良いのだが。
そう思い、辺りに目を向けると、少し先のほうに、喫茶店らしき店が。
丁度良いとばかりに、迷わずその店に入る。
……それが悲劇の始まりだった。
「おかえりなさいませ、ご主人様♥」
何かすごい服装の女性に出迎えられ、一時、全てを忘れる。
「……?」
「こちらへどうぞ♥」
「あ……はい……」
……ショックで完璧に自分を失った俺は、言われるがままにテーブル席へ……。
まぁ……ここなら、さっきの時計もよく見えるな……と少し冷静だった。
「お飲み物は?」
「……アイスコーヒーで……」
「かしこまりました♥」
……。
水を一気に飲んで、少し冷静になる。
なるほど、ここが噂のメイドカフェというものか……。
しかし、田舎だ田舎だと思っていたが、メイドカフェなんてものがこの町にあるなんてなぁ……。
物凄い場違い感を抱えながら、窓の外をずっと眺めている。
とはいえ、しばらくすれば少し慣れてきたのか、
今まで忘れていた緊張やら不安やらが込み上げてきた。

448 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/09/16(土) 23:15:49 ID:hshwH5iR
「お待たせしました」
そんな時にタイミングよく現れたのは、アイスコーヒーとさっきの女性。
「ミルクとシロップはどれくらいにしますか?」
「ふむ……」
他の客を見ていて分かったことだが、
どうもこの店では、ミルクやシロップは彼女たちが入れてくれるらしい。
「少しで」
「はい。かしこまりました」
そういって、ミルクを注ぎ始めるのだが……何だか腕がプルプル震えている……。
危なげにその光景を眺める俺。
……ポタン。
ミルクが、上手に一滴だけ、グラスの中に入る。
少し=一滴……もしかして、天然?
それともそういうサービス……ってことは、ツッコミ待ち?
いろいろ考えながら、呆然と、真っ黒なままのグラスを眺めていると、
「どうかしましたか?」
シロップも一滴いれ終えた彼女が、不思議そうに尋ねる。
……やっぱ天然だ……!!
「いや、なんでも……」
「そうですか。では、ごゆっくり!」
お辞儀をして、嬉しそうに戻っていく彼女。
……残された俺とほぼブラックなコーヒー。
驚きの余り、全てを忘れてしまっていた。
───────────────────────

449 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/09/16(土) 23:18:16 ID:hshwH5iR
許可頂いてからどんだけ時間かかってんだよ、ってワケで今更貼り。
全然、妹関係ないけど、今日はココまで。バーボン怖いし……

……メイド喫茶ちょっと行ってみたい……近くに無いけど。

450 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/09/18(月) 22:54:55 ID:NpCHzpCe
最後まであの天然ちゃんが俺を担当するのかと思ったが、そうではないらしい。
お姉さん系のメイドさんにお金を払い、お店を後にする。
「いってらっしゃいませ、ご主人様」
……なるほど。店を出て行くときはいってらっしゃいになるわけだ……。
感心しながらドアを押すと、
「あ……」
私服姿の、さっきの天然ちゃんが、店の軒先に立っていた。
なるほど、上がる時間だったわけだね。
しかし……さっきは服に圧倒されて、気付かなかったが、結構可愛い。
「ん〜……」
どうやら、傘を持っていないご様子。
話しかけるべきかどうか迷っていると、
「雨、イヤですねぇ」
「え、あぁ、そうですね」
「澪、傘もってくるの忘れちゃって……」
天然ちゃんは困った様子で、手を伸ばし、その掌を雨に晒す。
「……よかったら、使います?」
「え?……あ!?そんなつもりじゃないんですよ!?」
「別にいいですよ、二本持ってますし」
「で、でも……」
困っている様子の天然ちゃん。
まぁ……彼女なりの考えがあるなら、無理に押す必要も無いか……

451 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/09/18(月) 22:55:29 ID:NpCHzpCe
そう思っていると、
「ひぁっ!!」
彼女が突然大声を出す。
「どうかしました?」
「いえ……大丈夫です。ケータイが震えて、ビックリしただけですから」
バッグからケータイを取り出す彼女。
「あ、お母さーん!!うん、うん。こっちもすごい雨だよー」
声デカいなぁ……。
「迎えにきてくれるの?ありがとー!!……うん、分かった。待ってるよー……うん、バイバイ」
ケータイを折りたたむ彼女。
「あ、あの……少しお願いしても良いですか?」
「あぁ、どうぞ」
「あそこの時計の前まで、傘に入れてくれませんか?」
「いいよ。僕もあそこの前で、人と会うから」
「そうなんですかー、偶然ですね!!カノジョさんですか?」
「はっ?」
「あ、ゴメンなさい。変なこといいました?」
「……いや。ちょっと、驚いただけ。義理の妹と会うんだ」
「わー!!そうなんですか!?私もね、もうすぐお兄ちゃんができるんですよ!!」
とたんに嬉しそうになる彼女。
「まだ全然どんな人か知らなくて、すっごく楽しみです!!」
「……ふぅん」
奇妙な偶然もあるもんだ。と、少し驚く。

452 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/09/18(月) 22:56:13 ID:NpCHzpCe
「じゃ、行こうか。はい、傘」
妹の物だという傘を、彼女に差し出す。
「……え……?」
「どうかした?」
「これ……どうしたんですか?」
「傘?いや、妹の傘だから持ってけって、ウチの父親が……」
「……って、ことは……ど、泥棒っ!?」
「はっ!?」
「だって、コレ、私の傘ですよ!?」
「……キミの?」
「間違いありません!!」
……ということは、つまり……
「……もしかして、キミの苗字って二河……?」
「はい。二河澪です!!」
「やっぱり……」
「どうかしました?」
「……キミが妹だったのか……」
「え!?えぇぇぇっ!?」
「まぁ、はじめまして」
驚きを隠し、握手を求める。
「み、澪のお兄ちゃんが……泥棒さん……?」
「……泥棒じゃありません」
「じゃあ……何?」
「何といわれても困るけど……怪しいもんじゃない」
「そうなんですかー」
……さすが天然……。

453 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/09/18(月) 22:56:45 ID:NpCHzpCe
「えっと、よろしくお願いします。お兄ちゃん!!」
「ああ、こちらこそ」
先ほど俺が出していた手を、やっと握る妹。
しかし、突然思い出したように、
「あ!!」
「?」
「呼び方、お兄ちゃんでよかったですか?」
「は?」
「友達が、男の人は呼び方にこだわるって言ってたし。
 だから、お兄様とか、そういう呼び方のほうがいいのかなーって」
「……変でなければ、なんでもいいけど」
「ホントに?」
「うん」
「じゃあ……お兄ちゃんにします。お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん……」
……改めて言われると、恥ずかしいな……。
「……帰るか」
「うん、お兄ちゃん。……あっ!!」
「今度は何?」
「澪のことは、澪って呼んでください」
「わかった、澪ちゃんね」
「……み・お!!」
「え……?」
「『ちゃん』はいりません!!」
拘ってるのね……。
「あぁ、ゴメン。澪……澪ね」
「へへ、ありがとうございます」

454 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/09/18(月) 22:58:06 ID:NpCHzpCe
……ところで……いつまで手を握っているつもりですか……
「さ、帰りましょ?」
「あ、あの澪……?手を……」
「て……?手がどうかしました?」
「いや、何で握ったままなのかなって」
「……あぁ!!そうですよね!!」
慌てて俺の右手を放し、そして、すぐに左手を掴む。
「え?」
「そうですよね。右手と右手じゃ、手繋げないですよね」
「いや、そうじゃなくて」
「ふぇ……?」
一点の曇りもない純粋な目……。
そんな目でコッチを見るなよ……。
「いや、帰ろうか」
……負けた……。
「はい!!あ、ところで、お兄ちゃんの名前、なんていうんですか?」
新しく出来た妹……。
やっぱ天然……。
───────────────────────
続くのやら続かないのやら。
まぁ、妹にメイド服を着せたいと言う黒い欲望のため『だけ』に書き始めたんで、どうなることやら……。

どうせ俺なんか……。
もう……萌えも妹もないんだよ……。

455 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/09/19(火) 04:21:54 ID:is6F3IPB
>>447-454
グッジョブ!
もう何を書いても素晴らしいですね
続きを期待しております!!

456 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/09/22(金) 19:07:35 ID:ZkC5pbr/
「・・・なんだか以外だね」
「な、何が?」

やはり予期せぬタイミングで投げ掛けられる言葉に少し反応が遅れる俺。
そして、やはり気後れにはお構いなしで再び始まる会話のキャッチボール。

「お兄ちゃんがそんな風に言ってくれるなんて、思ってもみなかった」
「そうか?やっぱり変だったかな」
「ううん、そうじゃなくて・・・なんだか・・・それってプロポーズの言葉、みたいだから」
「・・・」
「・・・お兄ちゃん?」

この時、実はすでに巴の声には耳を貸してはいなかった、俺の耳は後方で轟くエンジンの音に集中している。
音を聞く限り減速する気は欠片も無いらしい、いや、恐らくこちらに気付いてさえもいないのだろう。
怪訝そうな顔の巴を前に頭でそう結論付ける前に体が先に動き出す。

「巴っ!!」
「え・・・」

壁になる様に巴に覆い被さる俺、数秒も待たない内にウォータースライダーの如き水飛沫が背中に襲い掛かる。
あっという間の出来事、車のエンジン音はロックだかラップだか分からない大音響と共に瞬く間に遠くになっていく。
しかし、この結果を見る限りやっぱり今日の運勢は大凶らしいな・・・
もはや雨も関係無い程に額から盛大に水を滴らせて巴の安全だけは確認しておく。

「ううっ、冷てぇ・・・巴はなんとか無事みたいだな、良かった良かった・・・巴?」
「・・・」

457 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/09/22(金) 19:10:00 ID:ZkC5pbr/
それは神様のほんの些細なイタズラ

見詰め合うにはあまりにも近過ぎる距離
思いがけずに俺が映り込む少し潤んだ透き通った瞳
雨露に濡れて艶を帯びた黒髪
色鮮やかな赤みを帯びた頬
触れれば弾けて消えそうなシャボン玉の様なその姿

脆さを湛えた表情を目の前に真赤な傘の下、青い水の星が呼吸を止める。
嘘みたいに綺麗なその姿は全てが霧に霞んで見える所為だろうか大袈裟にもこの世にある事さえ奇跡に思えた。
お互いの吐息が鼻先に触れ合うギリギリの距離でじっと見詰めたまま流れる憂いを秘めた沈黙。
そんな沈黙に堪えられなくなった俺はたどたどしくも時を解いていく。

「その・・・ごめん」
「・・・どうして謝るの?お兄ちゃんはボクを庇ってくれたのに」
「いや、そうなんだけどなんか罪悪感があって・・・」
「それより大丈夫?こんなに濡れて・・・」
「いいよ、ここまでくれば焼け石に水だ」
「あ・・・うん」

ハンカチでいそいそと俺の顔を拭き始める手を制して歩き出す距離を取ろうとする。
思えば不慮のアクシデントとはいえ俺が巴を壁際に押し倒した様な体勢、色んな意味でこのままでは危険だ。
今更になってまだまだこれからとやけに辺りに響く自己主張の強い雨。
それが俺には自分の中の時が重々しくもようやく動き出した証拠の様に思えた。

「巴、俺、先に帰るわ」
「先に、ってお兄ちゃん?」
「さっさと帰ってシャワーでも浴びるって事、巴はゆっくり帰ってくればいいから」

458 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/09/22(金) 23:23:45 ID:9t5HOImZ
>夢ノ又夢先生様
毎度ながら、さすがです!!
次回もお早めにお願いするっス!!



459 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/09/24(日) 20:19:08 ID:JlNcAtiX
>>456-457

そして保守

460 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/09/26(火) 05:44:50 ID:u+0f3xrL
あげ

461 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/09/26(火) 05:47:37 ID:zmQW6TcE
言うが早いか俺は傘を強引に手渡して走り出す体勢をとる、ここからならば家までは走ればそう時間は掛からない。
この蒸し暑さと靴底まで湿った状態、正直言って濡れたままでいるのはキツ過ぎる。

「じゃ、そういうコトで・・・うわっ!?」
「だ、ダメッ!!」

走り出す正にその瞬間、思い切り掴まれる右手、普段の巴からは考えられない程の声が辺りに響く。
驚いて後ろを振り返れば俺と同じように驚いた顔の当のご本人、呆気に取られた俺の先で雨は再び勢いを増して行く。

「・・・な、何が駄目なんだ?」
「・・・そんなのヤダよ・・・一人に、しないで・・・お願い」

今にも泣きそうな、不安で堪らないといった顔で巴が俺を見詰める。
降り止まぬ雨が呼び覚ましたその捨てられた子犬の様なあまりにも綺麗な泣き顔。
痛い程に掴まれた右手に俺は巴の微かな震えを感じていた。
・・・全く以って神様とはなんともイタズラ好きらしいな・・・
俺はそっと巴の手を解いて傘を二人の真ん中に持ち直す。

「俺が風邪ひいたら看病頼むぞ、まったく・・・」
「・・・ゴメンね、お兄ちゃん、でも・・・ホントに嫌だったから」
「はいはい、分かってるよ、いつでも俺は巴の側にいますので」
「ホントにゴメンね、それと・・・ありがとう」

月日がどれだけ経とうとも変わらない心からの信頼。
そういえば子供の頃はこんな巴が見たくて色々無茶な頼まれ事を引き受けてたんだっけか・・・

「・・・」
「・・・」

462 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/09/26(火) 05:48:19 ID:zmQW6TcE
長い夢現の時から少しだけ自分を取り戻したら今度は隣にある物言いたげな視線に気が付く俺。
何かを訴える少女の眼差し、しかもやや上目遣い、今日というごく平凡なハズの一日は何かスペシャルな日なのだろうか。

「・・・巴、とりあえず言いたい事があるなら言ってくれ、その視線は物凄く気になる」
「うん、言いたい事はあるけど・・・何から言えばいいのか、何を言えばいいのか、少し分からなくなって・・・」

真っ直ぐに視線が重なると先程とは正反対に困った様に目を逸らす巴。
なかなかに難儀な状況の連続に図らずも小さな溜め息が漏れ出てしまう。
取り合えず会話のボールはこちらの手にあるので俺からなるべく簡潔に投げ掛ける。

「じゃ、最初に思いついた事を言えばいいんじゃないか?」
「・・・ホントはね、一人になるのが嫌だったんじゃなかったんだ」
「へっ!?」
「一人が嫌だったんじゃない、お兄ちゃんと離れてしまうのが・・・イヤだった」
「ま、まぁ、あのまま走り去っていくとホントにどこぞの映画のワンシーンみたいではあった・・・かな?」

確かにそんな感じではあったと、ふと数分前を振り返る。
まぁ、主演女優はともかく男の方が相当な大根役者ではあったけれど・・・
予期せず二人の間に流れ出すぎこちない空気、そんな雰囲気に気圧されつつも俺は巴の歩調に併せて歩く。

「ふふっ、お兄ちゃんがその後、戻って来て抱き締めてくれてたらそうだったかもね」
「ほうほう、俺と一緒に仲良く風邪が引きたかったとでも?」
「冗談だよ、さ、ホントに風邪を引く前に帰らなくちゃね」

少しだけ明るさを取り戻したいつもの囁くような澄んだ声が耳に残る、ほんの少し歩みが早くなる。
神様のイタズラが目覚めさせた露帯びた時間と厚い雲の向こうにある陽だまりの空白。
雨の中で変わり行く季節の色と香りが密やかな夏の終わりを想わせる。

「・・・でも・・・お兄ちゃんならそれでもよかったのに・・・ボクは・・・抱き締めて・・・欲しいのに・・・」

雨音は依然、弱くなる兆しを見せない。
巴の溜め息の様な呟きは二人の隙間で傘から流れ落ちる滴と共に地面に吸い込まれていった。

463 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/09/27(水) 09:20:16 ID:EkrWQTIe
>>遊星さん
乙です!相変わらずいいです!
天然メイドですね。ドジッ娘要素も期待してしまいますw
メイド服を着せたいと思うのは自然の摂理並に仕方ないですよw

>>夢ノ又夢さん
乙です!GJです!度ツボですっ!
これはすばるには耐えられません(*´Д`)

464 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/09/27(水) 21:31:27 ID:sMkZAm2X
結局、今回も大きく遅れての投下、ホントすいません。
そんな訳で続けて投下。

>遊星様
天然さんまで書けるとは引き出しの多さに感服です。
しかもメイドさん、実に二度オイシイw
続きを期待してますよ、後、葵ちゃんも楽しみにしています。

>すばるさん
いつも御感想ありがとうございます。
もっと萌えられるssを書ければいいんですけどねぇ。
精進が足りない様です・・・今の所、一番足りないのは時間ですが。

465 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/09/27(水) 21:36:04 ID:sMkZAm2X
ベッドの側の時計が静かに時を刻む夜。机の上で不規則に音を立てるシャーペンが耳鳴りを残す。
時計を見れば十二時過ぎ、草木も眠る時間だ。そんな時間を経ても健気にテスト勉強に勤しむ俺。
・・・いや、当たり前なんだよな。普段、朝型な俺には酷なんだけど。

「そういや、普段から夜型な方はどうしてるかな」

両腕を天へ向けて大きく伸ばし勢いで立ち上がる。少し立眩みを起こすが気にはしない。
部屋を出れば視界に入る開け放たれたドアから差し込む蛍光灯の明かり。妹さんも健闘中の御様子だ。
巴に差し入れをするべく忍び足でキッチンに向かう。コーヒーでも持っていってやろう。
手早く支度を済ませてコーヒー片手に開いたままのドアをノックする。

「よ、頑張ってるな」
「・・・お兄ちゃんもご苦労様」

机に向けられていた真剣な表情が俺を見た途端に穏やかな微笑みに変わる。
相変わらずの女神の微笑、少しだけ心躍ってしまう自分がいて妙に照れてしまう。

「巴さんや、調子はどうですかな?」
「ふふっ、まずまずだよ、お兄ちゃんは?」
「俺も・・・まずまず」

コーヒーを受け取りおどけた俺に余裕を返す巴。言うまでも無く巴のまずまずとは俺のそれとはまるでレベルが違う。
全教科で死角の無い巴に穴だらけの俺。事、勉学に関しては悲しいかな俺に立つ瀬は無い。
・・・今日はもう少し頑張るか

466 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/09/27(水) 21:37:30 ID:sMkZAm2X
「まぁ、キリのいい所で寝るんだぞ、そうじゃなくても巴は朝が弱いんだからな・・・じゃあ退散しますかね」
「あ・・・お兄ちゃん、待って」
「ん、なんだ?」
「えっと・・・その・・・」

部屋から出ようとした時、唐突に呼び止められてクルリと顔だけ振り返る。視線の先には妙に焦り気味な巴の姿。
次の言葉が来るの黙って待っていると巴の困惑は更に加速していく。
この様子だけ見ていると学校やご近所で才色兼備と称えられる少女と同一人物とは到底思えない。
こっちからきっかけをやらんと駄目かな、これは・・・

「・・・あの・・・」
「何をテンパっとるんだお前は、何か頼みでもあるんじゃないのか、遠慮せずに言ってみな?」
「あ、と・・・うん、少し勉強で解らない所があったから・・・お兄ちゃんに教えてもらえないかな、って」
「・・・」
「・・・お兄ちゃん?」
「あのなぁ、巴に解らない問題が俺に解る訳無いだろ、もっと俺を見縊れ!!」

自分で言っておいて兄の威厳もへったくれもない言葉が何より自分に響く。ぐっと突き上げられた握り拳が物凄く虚しい。
我ながら胸を張って言う事じゃないよな、実際。
・・・やっぱり今日は徹夜でもするか
黙って俯いてしまう巴に不安になりつつもその場に立ち尽くすしか成す術のない俺。さすがに呆れられたのか深い溜め息すら聞こえてこない。

「巴・・・さん?あの・・・やっぱり怒って」
「お兄ちゃんに教えて貰えたらって思ったんだけど、お兄ちゃんだって勉強があるよね・・・ワガママ言ってゴメン」
「うっ!?」

467 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/09/27(水) 23:51:32 ID:Fl9FaxpS
「寒……」
季節が変わるのはいつも突然だ。
昨日まで過ごしやすくて喜んでいたら、今日は寒い……。
あまりの急な気温の変化に、私の体も寝具も対応し切れなかった。
「お布団か何か……探してこようかな……」
このままではいけないと思い、ベッドから起き上がり部屋を後にする。
外の空気は部屋の中よりも冷たく、肌寒さに体が少し震えている。
寝ている家族を起こさないように、静かに歩きだすと、隣の部屋から明かりが洩れているのに気付く。
「まだ起きてるんだ……」
私は、少し助けてもらおうと思い、その部屋をノックする。
コンコン。
乾いた音が響く。
そして、すぐに
「誰?」
「私、葵」
「葵か。開いてるよ」
という聞きなれた声。
「うん。入るね」
一言断わって、部屋の中に入る。
部屋の中では、お兄ちゃんがベッドに寝転がってゲームをしている。
「まだ起きてたんだ。珍しいね?」
「え?」
意味が分からないという風に聞き返すお兄ちゃん
「ほら、もうこんな時間」
「うそっ!?もうこんな時間!?」
時計を見て、お兄ちゃんが慌てだす。
「あははっ、熱中しちゃったんだね?」
「みたいだな……」
少しバツが悪そうなお兄ちゃん。
必要以上にしっかり者のお兄ちゃんにしては珍しい。

468 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/09/27(水) 23:52:05 ID:Fl9FaxpS
「……で、葵はどうしたんだ?」
「私?ちょっと寒くて眠れなくて……」
「確かにちょっと涼しすぎるかもな」
「うん。それで、毛布を探してるんだけど、お兄ちゃん知ってる?」
「……毛布か……ゴメン、俺も知らないな……」
「そっか」
「悪いな……」
本当に申し訳なさそうなお兄ちゃん……。
「お兄ちゃんは悪くないよー」
「そうか……」
「うん。でも、そのかわり……一つだけお願い、聞いて欲しいな?」
「お願い?まぁ、いいけど」
「寒くないように……一緒の布団で寝て欲しいなー、なんて……」
きゃー!!言っちゃった!!
あまりの恥ずかしさに、目をそらす。
肝心のお兄ちゃんは意外にもあっさりと……。
「あぁ、いいよ」
「いいの!?」
「まぁ、仕方ないよ。俺も寒いのイヤだしね」
ピュアだ……この人……全然「寝る」の意味に誤解が無いよ……。
「ホントに?」
「葵が言ったんじゃないか」
「そうだけどぉ……」
もっと焦るかと思った……っていうのは言っちゃいけないことだよね……。
そ れ で も !!結果オーライだよねっ!!
……鈍感さんも使いよう、ってことなのかなぁ。

469 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/09/27(水) 23:52:37 ID:Fl9FaxpS
「まぁ、いいじゃない。何か兄妹っぽいよね」
「……きょう……だい……?」
「うん。兄として、頼られるのって悪くないね」
前言撤回……。
ただの兄妹なのはわかってるけど……そういう現実をつきつけなくてもいいのに……。
「どうかした?」
「別に……」
「あぁ、そう。じゃあ、寝ようか」
「うん……」
お兄ちゃんのあとに続いて、お兄ちゃんのベッドの中へ。
……全然ワクワクもドキドキもないのは何でかな……。
背中合わせの二人。
こんなに近くにいるはずなのに……。
「あのさ……」
暗がりの中で、申し訳なさそうなお兄ちゃんの声。
「何……?」
「いや……何か、暗いって言うか……悲しそうだからさ」
「……分かっちゃうか……」
そうか……きっと……この人は……。
「俺が出来ることなんて葵に比べたら、ホントに何も無いけどさ……話聞くくらいなら出来るよ?」
「ううん……いいよ……」
「いいのか?」

470 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/09/27(水) 23:53:18 ID:Fl9FaxpS
「うん。葵は、その言葉が聴けただけでも幸せっ」
「はぁ……」
「あとね……お兄ちゃんは、魔法使いを自称するといいよ」
「……?」
「きっと、私はその魔法にかかったんだ」
「話が読めないんだが……どういうこと?」
「ヒミツ。おやすみ」
鈍感なお兄ちゃんへの愛のメッセージ。
いつか……謎が解ける日が来るといいんだけど。
「おぅ、おやすみ……」
お兄ちゃんは優しすぎるから、私はつい空回りしてしまう。
素直すぎるから、私はつい深読みしてしまう。
……それでもいいよ。
それでも、いつだってお兄ちゃんは私を受け止めてくれた。
だから、私も……これまで通り。
「ねぇ……お兄ちゃん」
「ん……?」
「お兄ちゃんって、あったかいね」
「そんなに離れてるのにか?もっとこっち来たらいいのに。落ちるよ?」
「え……?」
「葵……」
「えっと……じゃ、じゃあ……いくね?」
わ、わぁ……ドキドキしてきた……。
……これじゃ……今夜は……眠れないよ……。
───────────────────────
……アレ、葵がぶん殴ってないぞ……。

ゴメンなさい。
夢ノ又夢先生の神作品のあとにこんな最低なデザートをつけてしまいました。
先生の巴ちゃんみたいな可愛い妹を書きたかったのに、何故兄萌え系策略暴力妹に……。

471 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/09/28(木) 09:08:01 ID:gfqFfdgq
久しぶりにこのスレひらいてみたら朝から癒された!
グッジョブ

472 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/09/29(金) 22:50:57 ID:Z6z/ToXT
……何故か手を繋いだまま、俺の家の前まで来てしまった。
片手には澪で、片手には傘。
歩きにくいことこの上なし。
「……あのぉー」
「ん?」
「ここ、何処ですか?」
「ん、あぁ、俺の家だよ」
「ということは、もうすぐ澪の家になる家ですね?」
「……」
間違ってないけど……何か違う……。
「澪の家に『も』なるな」
「はい。澪の家ですよね」
些細な反撃は見事に失敗……気付きやしねぇ……。
「さ、入って。澪のお母さんも、そのうち来ると思うから」
「はい」
玄関のドアを押し、二人で家の中に入る。
すると、
「あら、おかえりなさい」
俺たちを出迎えたのは、年上の女性。
そう。それはつまり……
「お、お母さん。もう来てたんだー」
「おかえりなさい、澪」
「お母さんお母さん!!見て見て!!新しいお兄ちゃん!!」
「ホント。よかったわね?」
「うん!!」
俺を指差しはしゃぐ澪と、優しく微笑む義母……俺は物扱いかよ……。
機関銃のように話しまくる澪とそれに相槌を打つ義母についていけず、俺は虚空を見る。

473 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/09/29(金) 22:51:31 ID:Z6z/ToXT
とりあえず俺に出来ることは……。
「夕飯作らなきゃ……」
「お兄ちゃん、料理できるの?」
「まぁ、親父が絶望的に料理下手だからね……俺が作らないと」
「カッコいー!!お母さんお母さん、お兄ちゃんカッコいいよ!!」
「そうね。カッコいいわね」
「うん!!」
……この母にしてこの娘あり……か。
気を確かに持てよ、俺……。
「まぁ、澪もお義母さんもくつろいでてくださいよ」
「澪……あらら、もう名前で呼び合うような仲なのね?」
「うん、もう名前で呼び合うような仲なの!!」
……ついていけない……。
───────────────────────
カチャカチャと陶器の触れ合う音が澪と二人きりのキッチンに響く。
「悪いね。手伝ってもらって」
「いいえ、美味しいパスタのお礼です」
目を細めて、大皿を拭いている澪。
服を着替えたからだろうか……今まで気付かなかった二つの山が柔らかそうに揺れる揺れる……。
って……変態か俺は……。
「それに、澪ももう家族なんですよ?」
「まぁ、そういってもらえると嬉しいよ」
「澪も嬉しいですよ」
結構いい感じの会話なのだが……俺は澪が皿を割らないか心配で……。

474 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/09/29(金) 22:52:08 ID:Z6z/ToXT
「あ……そうそう、お兄ちゃん」
何かを思い出したように、澪が話を切り出す。
「何?」
「一つ、言っておきたいことがあるの」
「あぁ、何?」
持っていたグラスをグラス立ての上に置く澪。
そして、
「一目惚れです」
「え……?」
「澪ね」
「ああ」
「お兄ちゃんのこと好きになっちゃったみたい♥」
満面の笑顔。
しかし、呆気なく言うなぁ……。
「はっ?」
「お兄ちゃんはどう?澪に一目惚れした?」
……答えにくいな……。
だが、嘘をつくべきことじゃない気がする。
「いや、残念ながら……」
「そっかー。あ、でもでも、澪はそれでいいんだよ」
「はぁ……」
天然恐るべし……。
さっきから俺、まともに話せてないよ……。

475 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/09/29(金) 22:53:40 ID:Z6z/ToXT
澪は、胸の前で指をモジモジさせて、
「えっと、澪は好きな人から告白されたいのでぇ……」
そして俺の目をジッと見て、
「お兄ちゃんに澪のことを好きになってもらうために、今日からお兄ちゃんを誘惑しちゃいます♥」
「誘惑……?」
「でもでも、えっちなのは無しですよ?」
「あ、そう……」
これが残念そうな態度に見えたのだろうか、澪は少し焦った様子で、
「それならそれなら!!ちょっっっっとだけなら、ね?」
「いや、あの……澪……?」
深い意味は無かった。
俺が少し心配して、澪の肩に手を置くと
「やーん♥もしかして、もう告白ですかー♥」
少し恥ずかしそうに、そしてかなり嬉しそうに、頬に手を当てる澪。
「いや……違うけど」
「そうですよねー。じゃあ、そういうことだから、よろしくお願いします♪」
「はぁ……」
「じゃあ、片付けようよ、お兄ちゃん?」
「あ、うん……」
相変わらず色々なことを話してくれる澪。
俺はもう何が何だか分からぬまま。
相槌も適当に、皿を黙々と洗っていた。
───────────────────────
澪のいきなりの巨乳設定は天からの啓示。
しかし、天然妹……意外と良いなぁ……。
で……次は遊星お待ちかね、妹メイド服……が出来るかどうか。

夢ノ又夢先生の次の作品を強く期待する。

476 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/10/01(日) 22:24:19 ID:T7gSMZxW
天然(・∀・)イイ!

477 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/10/03(火) 17:05:39 ID:fXAlSx5j
天然っつーか
頭がかわいそうな子になってね?W

478 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/10/03(火) 19:05:18 ID:2uA0drNP
こんな妹なら惚れる

479 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/10/05(木) 22:33:35 ID:LGJxTGww
「・・・お兄ちゃんも勉強、頑張ってね」

強烈に後ろ髪を引く寂しそうな巴の無理矢理作った笑顔、あまりに予想外な返答に今度はこちらがうろたえまくる。
ああ、苦手なんだって・・・その捨てられた子犬の如き目は。
揺らめく瞳での上目遣いはあまりにも反則過ぎる、こうなってはこちらに否定権は存在しない。
なんというか、これも我が家のお決まりのパターンではある。
・・・しかし、弱いなぁ、俺よ。

「・・・あんまり力にはなれないとは思うが・・・やってみよう」
「ありがとう、お兄ちゃんならきっとそう言ってくれるって・・・ボクは信じてた」
「はいはい、で、どれだ?」
「ここの所なんだけど・・・」

真冬から打って変わって春の輝きを取り戻した巴の隣に座り、問題に目を通す。やはり巴が迷うだけあってサッパリ解らない。
というかこんな問題、俺は去年やったっけか?
設問が問い掛ける答えを求めて俺はあれこれ頭を悩ませる。
本気で解らない、これは困った。

「う〜ん・・・これは難しい」
「・・・お兄ちゃん、最近・・・話してないよね」
「う〜む・・・あたた、耳を引っ張るな!!痛いってば」
「・・・ボクの話を聞いてよ、もうっ」

いつの間にやら真横にあった巴の不満気な顔に耳を擦りながら恨みがましい視線を投げやる。
それにしてもいつもながらの七変化。
膨れっ面になると普段の大人びて見える巴より幾分子供っぽく見えるから面白いものだ。

480 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/10/05(木) 22:35:05 ID:LGJxTGww
「で、答えでも解ったのか?」
「そうじゃなくて・・・最近、ボクたち余り話をしてないよね、って」
「そうか?テスト前とはいえ少なくても毎日朝晩顔を合わしてるだろ」
「話は余りしてないよ、それに顔を見るのだってホントに朝晩くらいで・・・学校でもほとんど会わないし」
「朝晩会ってれば充分だと思うが、何か特別な話がある訳でもないし」
「・・・ボクは充分じゃない・・・足りない・・・もっとお兄ちゃんとの時間が欲しい」
「ん?なんだって?」
「・・・なんでもないよ、やっぱり・・・待ってるだけじゃダメだよね」
「・・・な、何?藪から棒な視線を送って」

何やら独り言を呟いてジッと俺の顔を覗き込んでくる。とりあえず何かが言いたい事は分かるんだが・・・
澄んだ瞳に見つめられ続けると心の奥まで見透かされそうで気恥ずかしさがこみ上げる。
そんな俺を知ってか知らずか巴は努めて明るく話を切り出す。

「お兄ちゃん、テスト明けの日曜日に遊びに行こうよ、久しぶりに二人で」
「あ〜悪い、先約が入ってるんだ」
「あ・・・そうなんだ・・・」

あっさり出た返事に露骨に声のトーンが沈む巴、本当に我が妹は分かり易い。
話を無かった事にでもするかの様に二人して机に向き直る。この問題を解かない限り俺も自分の勉強に戻れない。

「うむむむ・・・全く解らん」
「・・・お兄ちゃん、聞いてもいいかな?」
「ん?何を?」
「先約って、何?」

忙しなくシャーペンを動かして巴が不意に口を開く、お互い目線は机に向かったままで。

481 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/10/06(金) 06:57:44 ID:0sRwYzOm
続きが気になるぜ

482 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/10/07(土) 07:53:26 ID:fLeLpbCw
ちょ……なんて中途半端な……続きが気になる

483 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/10/07(土) 10:55:18 ID:2qGvuh1M
【社会】妹を騙った「わたしわたし詐欺」発生・・・容疑者逮捕 - 警視庁
http://news19.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1160139215/

484 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/10/08(日) 22:14:15 ID:gbCW+2p8
「ふぅ……」
放課後の教室に、自分のため息だけが響く。
いつも賑やかな教室は、誰もいないと非常に寂しいものだ。
急かされるように、荷物をまとめ、同じように誰もいない廊下を歩いていく。
賑やかに演奏しているのは、ブラスバンド部だろうか。
新しい曲なのだろうか。まだまだ未熟な音が、やかましく聞こえる。
「ん?」
そんな音の中に紛れて、かすかだが、ピアノの音が聞こえた。
ブラスバンド部ではない。
その音に引き寄せられるように、フラフラと行き先を変え、音楽室の前へと。
開け放たれたドアの向こうで、ピアノを弾いている少女の背中。
顔は見えないが、確かに見覚えがある。
だが、声をかけるのは勿体無い。
このまま、曲が終わるまで待つ。
最後の盛り上がりを迎え、美しい旋律はあっと言う間に終わってしまった。
パチパチパチ……。
間抜けな拍手を鳴らしながら、ピアノの方へと歩いていく。
少女は大きく肩を震わせ、振り返る。
「葵はピアノも上手なんだな」
「お、お兄ちゃんっ!?」
「あ……ゴメン、驚かすつもりは無かったんだけど」
「ううん、いいよ」
楽譜を閉じ、立ち上がる葵。そして、大きく伸びをする。

485 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/10/08(日) 22:14:48 ID:gbCW+2p8
「でも、どうしたんだ?こんなトコでピアノなんて」
「別に。芸術の秋……でしょ?」
「芸術ねぇ……」
……そういうのがどうしても理解できない人間にとっては、なんか胡散臭い言葉ではあるのだが……。
「なんてね。合唱の伴奏の練習だよ」
「ほぅ、葵が伴奏やるのか」
「うん、ピアノ弾けるの私しか居なくて……っていっても、私もかなりブランクあるんだけど……」
「へぇ……でも、ピアノ弾けるなんてカッコいいな?」
「そう……?そんなこと……無いよ……えへへ……」
褒められてるはずの葵が、妙に恥ずかしがっている。
ブランクがあるというのは、どうやら本当らしい……。
「そっか。じゃ、邪魔しちゃ悪いから、俺は帰るよ」
「えっ!?」
「どうした?」
「えっと……その……だから……」
大きな声を出したかと思ったら、何だか急に言葉に詰まる葵。
「……?」
「ピアノ、聴いてて欲しいんだけど……」
「俺が?」
「うん……」
「まぁ、いいけど……音楽とか、俺全然わかんないよ?」
「いいよ。私は、お兄ちゃんがいれば……」
「はは、まぁ、俺がいれば遅くなっても少しは安心だしな」
……一瞬の間。

486 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/10/08(日) 22:15:20 ID:gbCW+2p8
「まぁ……こんなものか……」
「え……?」
「ううん……じゃ、始めるね」
「あぁ……」
俺の返事に答えるように、目を閉じ大きく息を吸い込む葵。
葵の細くて長い指が、舞うように、鍵盤の上を駆ける。
先ほどとは違う。というよりも、先ほど以上の美しい旋律が、直接頭の中に響くように聞こえた。
それに、葵の楽しそうな顔が、なによりも目を惹きつける。
そのまま時が止まってしまったかのような錯覚。
ただのピアノの音が、葵の声にすら感じられる不思議……。
もしかして俺は……。
「お兄ちゃん……お兄ちゃん……!!」
葵の声……。
「葵……?」
「どうしたの、ボーっとしちゃって……?」
「え?……あぁ、ゴメン。あんまり上手かったからさ」
「あはは。お世辞なんて、お兄ちゃんらしくないなぁ」
あの時とは違う葵の屈託の無い笑顔。
……ん?あの時……?
「俺……何考えてたんだっけ……」
「うーん……さすがにそれは分からないけど……」
と言いながらも、一応考えてくれる素振りは見せる葵。
「何か大事なこと考えてた気がするんだけどな……」
「あはは。わかるよ、その気持ち。でも思い出すと意外と呆気ないんだよねぇ」
「まぁ……そうかもな……」
……やっぱり思い出せない。
確かに葵の言うとおり、どうでも良いことだったかもしれない。そんな気がしてきた。

487 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/10/08(日) 22:15:55 ID:gbCW+2p8
「ん?私の顔、何か付いてる?」
「え?」
「いや、ジッと私の顔見てたから……」
「あぁ……ゴメン……」
……無意識って恐ろしい……。
「ううん、いいのっ!」
「……やっぱ、俺何か変だ……帰るわ」
「あ、じゃあ私も帰るー」
「いいのか、練習は?」
「うん、一時間もやれば十分だよ」
……そんなに時間がたってたのか……。
「じゃあ、帰ろうか?」
「うん」
ピアノの蓋を閉じて、俺の隣に並ぶ葵。
「……」
「……?どうしたの?」
葵が俺の顔を覗きこむ。
その何気ない表情に俺は……
「やっぱ変だぁぁぁぁ!!」
「……え!?ちょっとお兄ちゃん!!待ってよー!!」

……後で思い返して恥ずかしい出来事がまた一つ。
そのきっかけになった葵への感情は、今となっては、もはや誰にも分からない……。
───────────────────────

488 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/10/11(水) 03:10:15 ID:4bp8xZb3
>>484-487
遊星さん乙
そして続きカモン

489 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/10/11(水) 18:37:08 ID:MzYzSw7y
ひさびさの葵いいねぇ。

490 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/10/14(土) 22:16:09 ID:6BGloho2
遊星さん
夢ノ又夢さん
続き待ってます。

491 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/10/15(日) 04:29:23 ID:rUPTSb0e
続き期待待ち

492 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/10/15(日) 21:30:57 ID:pih7j5Ps
「クラスの連中とボーリング、テスト明けにスカッとストレス解消という訳」
「・・・男友達と?」
「男も女も、だな」
「・・・そう・・・」

興味無しとでも言いたげな気の無い返事、それきりお互い言葉を交わす事もなく流れる沈黙の時間。
先程まで一人でいた時と同じ静寂が辺りを包み無機質な音だけが隣から聞こえる。
こうなってくるといよいよ以って弱いのは俺の方。
集中力の途切れない巴とは対照的に問題とにらめっこすればする程、俺の神経はヤスリの如く磨り減っていく。

「・・・くあっ、限界だ、巴、少し休憩を入れよう」
「疲れちゃったみたいだね、じゃ、そうしよっか」

両手を揚げて降参のポーズ、そのまま椅子を支えに後ろに反り返る俺。
姿勢の崩れない巴を横に窓に映る逆さまの月がぼんやりと目に入り、意識しないうちに深い溜め息が零れ落ちた。
なんというか、はっきり言ってこれはもう完敗。

「はぁ・・・ん?なんだこの写真?」
「何って、お兄ちゃん覚えてないの?」
「いや、覚えているような覚えていないような・・・」

今まで気づかなかったのも可笑しな話ではあるが机の上に整然と並べられた中の一つの写真に目が入る。
写真に写る見覚えのある二人の子供、というか俺と巴。
満面の笑みでピースをする俺と少し恥ずかしそうに俺の腕に引っ付く巴が映っている。

493 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/10/15(日) 21:33:06 ID:pih7j5Ps
「これはボクにとって特別な写真・・・お兄ちゃん、この頃のボクの将来の夢ってなんだったか覚えてる?」
「夢ね・・・なんだっけか?確か妙な事を言い出した記憶があるんだが・・・」
「ボクの夢はお兄ちゃんになる事、お兄ちゃんみたいじゃなくてお兄ちゃんそのものに」
「ああ!!完璧思い出した!!いきなり俺になりたいとか訳の分からない話をしてきたんだよな」

頭の上に浮かび上がる思い出に腕組みして懐かしむ、そんな俺を見て楽しそうに微笑む巴。
無邪気な頃の二人の声が耳の奥遠くに鳴り響いて部屋の空気がだんだんと明るくなっていく。

「あの時は驚いたよ、いきなり真剣な顔してどうしたらボクはお兄ちゃんになれる?だもんな」
「子供心に色々考えた結果だったんだよ・・・どうすればずっとお兄ちゃんといられるだろうって」
「俺と一緒に?」
「お兄ちゃんと一緒だとすごく楽しくて、一緒なら辛いことも寂しいこともなんでもなんとかなるって思えた」
「そ、そう?・・・まぁ、なんか年中引っ付かれてた気はするな」
「だから怖かったんだよ・・・もしお兄ちゃんを失ってしまったら・・・そう考えるとすごく怖かった」
「それでいっそ自分が俺になってしまおう、と」
「うん、ま、そんな事は当然出来なくてガッカリしちゃったんだけどね・・・ふふっ」

子供だった自分の幼さが今となっては余程可笑しかったのか巴に屈託の無い笑いが零れる。
いや待てよ・・・そいうや、巴が自分の事をワタシではなくボクと言い出したのも確かこの頃だった気が・・・

「あははっ、夢は儚く破れた訳か、残念だったな」
「ううん、そうでもないよ、お陰で気が付いたんだ・・・色々ね」
「色々、ねぇ・・・」
「そ、色々だよ」

目を細めて見詰める俺の隣で巴は写真を手に取りちょうど二人の間に置き換える。

494 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/10/15(日) 21:46:55 ID:pih7j5Ps
話はもう少し続きます、本当は一度に投下したいのですが続きの推敲が
まだ足りませんので忘れられない程度にちまちまといきます。
>481、482様
それが狙いと言いたい所ですが単純に上で述べた通りなので気長にお待
ち頂けると幸いです、も少し萌えられる話に出来る様、努力してます。
>遊星様
澪ちゃんカワイイですね、やはり天然と巨乳はセットでしょうw
妹メイド服を期待して待ってます。
葵ちゃんはいつも通りイイ!!
この二人のこそばゆい距離感が未だ出せずにいますよ、ホントに。
こういう萌える話がいつか書けたらなぁ・・・

495 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/10/15(日) 22:48:16 ID:rUPTSb0e
>>492-494
夢ノ又夢さん投下乙です
やっぱり続きがきになる
お体に気をつけ無理なさらない程度に執筆して投下してくれれば幸いです。

496 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/10/20(金) 21:42:23 ID:Y8zdY8zG
僅かな光を放つ写真とその下にある複雑な問題、どちらもそこにあるハズの隠された答えは見えてこない。
でも、かわりに見えてくる物はある、といっても単純な事が見えてなかっただけなんだが。

「あの・・・巴さん、たった今気が付いたんだけど・・・この問題集、全国統一模試とか書いてあるんだけど」
「うん、書いてあるね」
「・・・ひょっとして俺、ハメられた?」
「そうとも言えるかな」

臆面無くあっさり言い放つ巴になんだか清々しさを感じるも当然、納得は出来ない俺。
ワザとらしく大きな咳を吐いて改めて巴に向き直る。

「・・・で、理由を聞こうじゃないか」
「お兄ちゃんと話しがしたかったから・・・こうでもしないとボクに時間をくれなかったでしょ」
「そんな事は・・・あった・・・かな?」
「さっきも言ったけど最近はあまり顔を合わせる事もないし、なんだかボクに冷たいし・・・」
「それはないと思うけどな、別にいつも通り接してるだろ」
「・・・そういう言い方が冷たいの」

珍しく拗ねて見せる巴、プイとそっぽを向いて頬を少し膨らませる。
巴は横顔になると睫毛の長さや鼻の高さが本当に際立つ、美術品顔負けの脆さを兼ねた美しさが真横にある事実。
夜の闇の中、小さな灯りに照らし出された肌が透き通る様な白さをも際立たせる。
そんな巴を前に困ってしまって頭を掻く俺、しかし、拗ねても美人とは可愛いんだか綺麗なんだかうちの妹は。

「なんだか・・・お兄ちゃんは必要以上にボクから距離をとってるみたいだよ・・・」
「・・・じゃ、距離を縮めるか・・・」
「・・・どうやって?」

497 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/10/20(金) 21:44:25 ID:Y8zdY8zG
こちらが追及していた筈がほんの二言三言であっさり立場を逆転されている俺。
顔を向けないまま俺の答えをツンと澄ました顔で待つ巴、何故かそれが期待を含んでいると俺には分かる。

「テスト明けの土曜日にどこか遊びに行くってのはどうだ?」
「あ・・・」
「まぁ、それだとテストが終わってそのまま直行になるから無理にとは・・・」
「行くよ!!もちろん!!」
「いっ!?」

獲物を見つけた豹が飛び掛らんとばかりに俺の両手をしっかりと握る巴。
なんとも言えない数秒間の妙な沈黙。
その変り身の早さに目が点になる俺を見て今度は巴が真っ赤になって変な咳を払う。
微妙に緩んだままの頬でそういう事をされると余計に変なんだが、なんか可愛い・・・とも言えるかな?

「・・・えっと、その・・・折角、お兄ちゃんが誘ってくれたんだし付き合うよ」
「そっか、まぁ、ありがとうと言っておこう」
「じゃあ、どこに行こうか?ボクはお兄ちゃんとならどこだって・・・」
「はいはい、それはまた明日にな、今日はここまでにして寝ること」

澄まし顔はどこへやら蕩けきった笑顔の巴を制して席を立つ、このまま話し込んでいたら夜が明けてしまう。
本当はもう少し巴の笑顔を見ていたい気もするが土曜の午後には今以上に御機嫌な巴を隣で見る事が出来る。
それはきっと女神の笑顔、誰でも自然とつられてしまう様なとびきりの笑顔。
心の中で思索を巡らせながら振り返る事無く巴の部屋から扉を抜ける、と不意に背後から呼び掛けられる。

「お兄ちゃん、待って」
「ん?まだ何か用があるのか?」
「さっきの話・・・ほら昔のボクの夢だけど・・・その後にお兄ちゃんに話した夢って・・・覚えてる?」
「ええっと、後?・・・後なんてあったっけか?」

498 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/10/20(金) 21:45:11 ID:Y8zdY8zG
予想だにしていなかった問いかけに頭が空になる俺。
巴は立ち往生する俺に何故か少しだけ頬を赤らめると意地の悪い、それでいて上品な笑みを返す。
・・・なんなんだ、一体?

「ちょっと待て、なんだその笑顔は?」
「ふふっ、知らないよ・・・ただ、残念だなって」
「残念?何が?」
「そっちの夢はボクはまだ諦めてないってコト・・・おやすみ、お兄ちゃん」
「あ、ああ・・・」

強い希望の光を宿した巴の瞳、それ以上物言わぬ静かな迫力に気圧される様に部屋を後にする。
未だに疑問の拭い去れない俺をそのままに高い音を立てて閉められる扉。
巴の熱を帯びた意味有り気な視線を未だ背中に感じながら俺は自室に戻る。

「・・・なんか納得がいかん、夢・・・なんだっけか・・・あ」

唐突に頭に響く天の啓示、ヒントは巴の机に飾られたあの写真にあった・・・気がする。
・・・いや、しかし、流石にそれは・・・なぁ・・・

「・・・さっさと俺も寝よう・・・寝れるかは分からんけど」

途切れ途切れ浮かび上がるキーワード。
子供の頃の俺、しっかりと俺の腕に張り付いた巴の左手の薬指に輝くオモチャの指輪。
あどけない女神の微笑が頭から離れない俺はやはり眠れぬままやたら目に染みる朝を迎えるのだった。

499 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/10/20(金) 23:10:00 ID:wFwVhHqh
「おおおおおおお、お兄ちゃん!!」
窓の向こう。
間抜けな顔で、隣の家の娘さんが叫んでいる。
「どうしたよ、梨那?」
「ちょっと頼みたいことがあるの!!だから、開けて!!」
「あ、あぁ……」
いつもは一度ぐらいは断わるところだが、真剣そのものの梨那の顔に何もいえなくなってしまった。
黙って窓を開ける俺。
梨那は、待ちきれないとばかりに飛び込んできて、俺の部屋の棚の前に。
「……何よ?」
「CDを貸して欲しいの!!」
「CD?何の?」
「日本語の歌なら、何でも良いよ」
「その棚に入ってる。気に入ったの勝手に持ってけよ」
「ぐっじょぶ!!ありがとう!!」
慌てて、CDの棚を漁りだす梨那。
……しかし、これぐらいは予想しておくべきだった……。
「にゃにゃにゃっ!!落ちるぅっ!!」
見事に床にぶちまけられる俺のCDたち……
「あぁ……。気をつけろよ……」
俺の大人の対応度:80。
 アナタの対応はかなり大人です。
 ただ、微妙に表情が歪んでいるのでマイナス。笑顔を心がけて!

500 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/10/20(金) 23:11:02 ID:wFwVhHqh
「ゴメンなさいぃ……あ、これ、いいね!!コレも借りてこーっと」
……反省もほどほどに、CD選びに余念の無い梨那。
その手には、俺のCDがごっそり……。
「でも、何で急にCDなんか?」
「……断われなかったの……」
しょんぼりと答える梨那。
「何が?」
「えっと……友達が文化祭でバンドを組むみたいで……」
「へぇ……。で?」
「梨那が……作詞を……」
そういや、そういう設定もあったね……。
「でも、曲に詩をつけるなんてやったことないから、ちょっと参考に……」
「なるほど。しかし、お前、そういうのは全部断わってきたじゃないか」
「あのコにあんな顔されたら、梨那だって断われないよ……」
「誰?」
「天童葵ちゃん……」
天童といえば、学校一の美少女とまで噂される女の子じゃないか……。
「知り合いだったのか?」
「ううん……でも、唯奈ちゃんとはお友達みたいで……」
「ほぅ……」
……唯奈ってのは学校で話題の美人双子姉妹の姉。
梨那とは仲のよい先輩後輩の間柄。
何気に、有名人の知り合いは多いんだな、コイツ……。
「イヤなら断われば?なんなら、俺も一緒に行ってやるぞ?」
「ううん。楽しそうだし、やってみるよ」

501 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/10/20(金) 23:12:12 ID:wFwVhHqh
「随分と強気だな」
「うん……お兄ちゃんと話してたら、何だか書けそうな気がしてきた」
「……ま、楽しみにしてるわ」
「にゃっ!?聞きに来るつもりっ!?」
「なんだ、聞かせないつもりだったのか?」
「あわわわわ!!だめー!!ダメだよー!!恥ずかしいよー!!」
「大丈夫だ。別に期待なんかしてないから」
「そういう問題じゃないのー!!」
「じゃあ、どういう……」
「とにかくダメったらダメなのー!!えと……那、帰るね!!CDありがと!!」
迅い……。
独りになった室内。
残された一枚のメモ。
中には告白の時に言うセリフベスト100みたいなのがズラリ……。
「……これは……」
……見なかったことにしよう。
「お、お兄ちゃん!!メモ、見てない!?」
戻ってきやがった……。
「メモ?」
「うん……詩に使えそうな言葉をダーッって書いてあるメモなんだけど……」
「コレ?」
「そう!!……見た?」
「いや」
「良かったー!!ありがと。じゃね!!」

梨那の言葉。
梨那に与えられた一種の奇跡のようなものだ。
誰に向けられたものなのか、それとも誰に向けられたものでもないのか。
まぁ……後者であって欲しいが……。
そんな俺は……梨那の乙女メモから落ちた一枚の『やけに見覚えのある男』の写真には、気付いていたのだった。
───────────────────────

502 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/10/20(金) 23:12:56 ID:wFwVhHqh
夢ノ又夢先生に少しでも追いつこうと思った。
……やっぱりダメだった。

文化祭当日のネタは書くんだか書かないんだか……まぁ、きっと、書けない。に落ち着くはず。
どうせ俺なんて……。

503 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/10/21(土) 21:49:23 ID:YYZlj4gG
深歩みたいな妹がほしいなぁ〜

504 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/10/25(水) 22:27:36 ID:hopkKz4g
情けない話だが、どうも自分の体のことには疎いらしい。
いつも気付かずに限界まで無理をして、そこで初めて自分が体調不良だと気付く。
せめて誰かがそれに気付いてくれれば良いのだが……
「なぁ、立花……なんか……暑くないか……?」
流れ落ちそうな汗を手で拭ながら、友人に尋ねる。
「暑い?少し寒いぐらいだぞ?」
「……そうか」
「おいおい、天童、大丈夫か?そういえば顔も赤いぞ」
「……ヤバイな……」
「大丈夫か?」
「あぁ……もう帰るだけだし……。何とかなる……」
「そっか。気をつけろよ……」
心配そうに俺を見ている友人を跡目に、重い体を立たせ、歩き出す。
自分としてはまっすぐ歩いているつもりだが、どうも不安定だ……。
……なんか頭も痛くなってきた。
そんな自分の体に絶望を感じつつ、一歩一歩ゆっくり歩く。
途中の上り坂あたりで、頭痛がピークに達し、なんかもう死ぬんじゃないかとまで思えてきた。
「……やっと……」
そんなこんなで、やっと我が家にたどり着く。
……何か忘れている気もするが、今はそんなことを気にしている余裕は全く無い。
鍵を開け、家の中に入った……まではよかったのだが、
「うおっ……」
玄関の段差を乗り越えられず、そのまま床に倒れてしまう。
起きなければならないと思うが、体が全く動かない。
そのまま意識が遠のく。
……あぁ、床が……冷たくて気持ち良い……。
───────────────────────

505 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/10/25(水) 22:28:10 ID:hopkKz4g
少しだけ冷たい風が吹く校庭。
風に飛ばされていく落ち葉を眺めながら、小さくため息をつく。
「遅いよ……」
かれこれ三十分……。
さすがにそろそろ来てくれても良いと思うのだけど……
私の希望に反して、玄関から出てくる人の数はもはやゼロ……。
「……もう帰っちゃったのかな……」
今日は朝早くて、顔見てなかったから……帰りぐらいは一緒にいたかったのに……。
また待っててくれなかったんだ……。
そう考えると、とても悲しくなってくる。
あと……十分だけ……。
半ば諦めるような気持ちで、待ち続ける。
……きっと来ないだろうな。
悪い予感がそう告げている。
もはや立っているのも辛くなって、思わずその場にしゃがみこむ。
「寒い……」
思わず呟いた。
「葵ちゃん?」
名前を呼ばれて見上げると、
「相川先輩……」
相川先輩とそのお友達の州田先輩が、心配そうな顔をして立っている。
「どうしたの?あ、もしかして天童君?」
「え……は、はい……」
「天童君、帰っちゃったよー。ねー、お兄ちゃん?」
「あ、ああ……何か熱っぽいから早めに帰るとか……」
「お、お兄ちゃんがですか!?」

506 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/10/25(水) 22:28:45 ID:hopkKz4g
「聞いてないか?」
「聞いてないですよ!!」
「じゃ、早く帰らなきゃだねー」
「あ、はい!!あ、あの……ありがとうございました!!」
「頑張ってねー!」
「いいから、急ぎな」
二人の心遣いに、もう一度礼を言いながら、我が家へ走り出す。
今日も待っててくれなかったこととか、
女の子と仲良くしてたとか、
そんなこと、今はどうでもいい。
今はただお兄ちゃんが心配だった。
いつもはお兄ちゃんと歩く道を、
お兄ちゃんを追いかけて走る道を、祈るような気持ちで全力で走った。
……お兄ちゃん……どうか、無事でありますように……。
───────────────────────
やっとたどり着いた我が家。
途中でお兄ちゃんが倒れていなかったことには少しホッとした。
しかし、休んでいる暇はない。
ドアに手をかけると、鍵が開いているようだ。
お兄ちゃんが中にいることを確信し、全力でドアを開ける。
どこにいる。なんて考えるヒマも無く、玄関に仰向けに倒れるお兄ちゃんが目に入った。

507 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/10/25(水) 22:29:20 ID:hopkKz4g
「お兄ちゃん!!」
お兄ちゃんに、急いで駆け寄る。
私の心臓が、バクバクいっている。
「お兄ちゃん!!起きてよ!!」
「ぅん……」
ゆっくりと目を開けるお兄ちゃん……。
「葵……?」
「お兄ちゃん……」
「あぁ……寝てたのか……」
「お兄ちゃん……」
大きくあくびをするお兄ちゃん。
確かに顔色は余り良くないけど、思っていたほどではなさそうだ……
そう考えると、急に気が抜けて
「もう……お兄ちゃんのバカ……」
お兄ちゃんを抱きしめていた。
……もちろん恥ずかしいには恥ずかしいが、それ以上にお兄ちゃんが無事で嬉しい。
「葵……」
「心配……したんだからぁ……!」
涙が溢れた。
自分の声が涙声になっているのがわかる。
「あ、ゴメン……」
「ううん……よかった……」
堰を切ったように溢れてくる涙と、お兄ちゃんの気持ち……。
お兄ちゃんは私が何で泣いてるのかも分かってないんだろうな。

508 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/10/25(水) 22:29:54 ID:hopkKz4g
「葵……あの……悪いんだけど……」
「何かな、お兄ちゃん?看病だったら、何でもするよー」
「いや……俺はもう大丈夫だから……。もう離れてくれ……風邪うつるぞ……」
「病人はそんな心配しない!さ、ベッドまで行こう、お兄ちゃん。肩、貸してあげるから」
「……スマンな……」
「ううん。今晩は、私がお粥つくってあげるからねー?」
「……あんまり食欲は……」
「だーめ!!食べなきゃ元気になれないよー」
「……葵……」
「なーに?」
「お嫁さんみたいだな……」
「そんなー、お兄ちゃんったらー♥」

えっと……災い転じて福となす……って言ったら、不謹慎かな。
でも……ちょっとだけ幸せな、ある寒い日でした。
───────────────────────
風邪引いて妹に看病してもらうネタはいつかやろうやろうと思っていた。
今回見事に秋風邪をひいたので、良い機会と思って書いてみた。
……やっぱり俺は俺だった。

天然妹の続きはいつ書こう……

509 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/11/01(水) 11:18:29 ID:Yo1kXnoX
妹がほしくなるスレだな

510 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/11/03(金) 16:25:30 ID:DMMjCkd5
warosu

511 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/11/12(日) 03:29:47 ID:BnDg9Gc5
age

512 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/11/15(水) 01:03:40 ID:QU8kpWmp
保守

513 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/11/20(月) 12:39:25 ID:jKA8V7iY
保守

514 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/11/22(水) 22:45:09 ID:hJbu959W
続き待ってます

515 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/11/27(月) 06:31:23 ID:af7SSd/s
続き見たいです。とくに巴が・・・

516 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/12/04(月) 17:03:33 ID:2lObEAU7
ガンガレ

517 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2006/12/07(木) 03:13:53 ID:eD2P+stn
―――夢を見ていた。
昔の夢を見るのはあまり好きではない。
事故で目覚めて以来―――まぁ、かなり昔の話なのだが―――目を開けたとき、目の前に兄の泣き顔があるのではないかと、不安になってしまう。
昨日の事を思い返す。
昨日は学園から帰り、ご飯を食べて、お風呂に入り、マンガを読んで寝た。そうそう、しっかり歯も磨いた。口を濯いでいるとき、兄に背中を叩かれて少し水を飲んでしまったが。……余計な事まで思い出してしまった。だが、しっかり昨日の事を思い出せる。
寝ぼけたままの意識を今日に戻す。
布団の感触は私の布団の感触だ。
病院の匂いは……しない。この前買った芳香剤は今日もしっかりと働いてくれている。
瞼を閉じたまま外の風景を探ると、昨日カーテンをしっかり閉めていなかったのか、太陽の光を感じる。やはり、病院のあの無感情な電気の光は感じない。
意識がはっきりとしてきた。
ここは私の部屋で、病院ではない。だから、目を開けても兄が泣いている事はないし、病院という事も無い。瞼を閉じていても眩しい程太陽は輝いているし、脳は私に朝を告げ、意識もしっかりとしている。
うん。そろそろ起きよう。今日も、良い一日になりますように。
 「おそよう夢亜さん。随分と気持ち良く寝ていたようですね。」
こうして私の予想は一行で粉砕された。
――――――――――――――――
遊星さんと夢ノ又夢さんがいる時点で私の出番はなしって感じですが過疎ってるので久々に登場してみました。
酉があってるかわからない。というか私を覚えてる人がいるかのがわからないw
構成0分執筆30分くらいの保守がてら気まぐれに書いただけで続くかも分からないんものなんでアレな感じを受けた人は華麗にスルーしてください。
という保守。

518 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/12/07(木) 03:40:44 ID:tNAokx+q
>>517
すばるさんじゃないですか!職人さんたちに見捨てられたのかと思ってから嬉しい
これからも時間に余裕があれば投下して下さい。

519 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/12/07(木) 23:18:20 ID:tNAokx+q
age

520 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/12/08(金) 17:01:39 ID:LyoHa+DX
まんちょ

521 :遊(ry ◆isG/JvRidQ :2006/12/09(土) 22:29:24 ID:rGwefdjJ
もう俺なんか、いないと思ってもらったほうがいような存在なんですけど。
ただ、別に貼れるものを書いてないっていうか、
文化祭を今書き終わったとかそんな次元だし……クリスマスはネタがないし……

……つーことで、クリスマスに向けて頑張ります。でも、忙しいからそんなには書けないだろうなぁ……。

522 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/12/10(日) 09:37:07 ID:H00x2rDj
妹「お、おにいちゃん…お、おかえりなさい…た、大漁だった?ねえ大漁だった??」
妹「イ、イサキは?イサキは、と、取れたの??」

523 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2006/12/11(月) 05:38:07 ID:NB+eYM7O
兄「あぁ!小振りだけど脂の乗ったのが釣れたぞ!刺身にして食おうな!」
妹「や、やったぁー!お兄ちゃんがおっ刺っ身だぁ〜♪」
なんてこった……orz
勝手に変に続けてすいませんすいません。

>>518
覚えててくれた人がっ!感謝です。
どちらかと言うと最近反応を返してくれる名無しさんが少ない気が……
書く人も読む人も増えてくれるのが一番なのでしょうが……

>これからも時間に余裕があれば投下して下さい。
そう言ってもらえると投下しやすいです。

>>遊星さん
遊星さんはこのスレのシンボルみたいな人なのでいないと思うのは中々難しいと思いますよ。
私としてはまったり時間を気にせずにでもいいので職人でいてほしいです。
と、言いつつクリスマス期待してますw

524 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2006/12/11(月) 06:15:20 ID:NB+eYM7O
「さて、そろそろ行くか。」
昼食を食べてからおよそ一時間が経った。
いつまでも居間で暇を持て余しているのもどうかと思い、特に予定があるわけでもないが出掛けようと腰を上げる。
せっかくの休日を一日中家でだらだらして過ごす、なんて勿体無い事は出来ない。
夢亜に言ったらおそらく「せっかくの休日にわざわざ疲れに出掛ける事の方が勿体無い。」とか「休みはだらだらしないと嘘だよ。」なんて言われるのだろうが、そこは価値観の相違というやつだ。
「あれ?お兄ちゃん出かけるの?」
昼食の後、何故か自室ではなく居間でマンガを読んでいる夢亜に話しかけられる。
休日はほとんど動こうとすらしない怠惰ぶりを発揮する癖に、自室から居間までマンガを運ぶ事は苦にならないらしい。
何故、居間でマンガを読むのかは聞くだけむだだろう。どうせ意味など無い。
「あぁ、せっかくの休みだからちょっと商店街でもぶらぶらしてくる。」
「ふーん。……私も出掛けようかな。」
「……はい?」
一瞬、聞き間違いかと思った。夢亜が壊れたのかとも思った。
今日の天気は晴れのはずだ。雪が降る予報など出ていない。という事は、聞き間違いかと思ったのではなく、実際に聞き間違いなのだろうか?
「私も出掛ける。って言ったの。」
なんと、聞き間違いではなかった。病院へ連れて行った方がいいだろうか。今の夢亜は一人で病院へ行けるだろうか。
「俺も一緒に行こうか?」
「?出掛けるお兄ちゃんに私が付いて行くんだよ?……あ、私、付いていかない方が良い……かな……?」
俺の都合を気にして不安そうな顔をする夢亜と夢亜の安否を心配する俺。
何とも言えない微妙な空気が居間に漂い、短い沈黙が訪れる。

――――――
前回、文や流れがおかしい所が多かったので今回は見直してから……なんて事はしてません。すいません。
改変したやつ見たい・というありがたくも数奇な嗜好をお持ちの方、又、「○文字くらいで改行入れて」「文章いい
からセリフ率上げて」などなど些細な事でも要望があればなるべく答えていこうと思うのでご一報を。
苦情、アドバイス、感想は随時受け付け中です。

今の連投規制とか1レスで書き込み可能な容量・行数はどうなっているのでしょう?
次からは投下後の文章は短くしますので今回はご容赦を。

525 :遊(ry ◆isG/JvRidQ :2006/12/13(水) 22:14:04 ID:zaZQQykK
……過疎スレだねぇ。

>>524
あとは、すばる先生と夢ノ又夢先生だけが頼りですよw

>今の連投規制とか1レスで書き込み可能な容量・行数はどうなっているのでしょう?
自分は30行を目安に。
文字数は……そんなにそんなに詰めたことないからわかんないや……。
連投規制秒数は30秒だったと思う。

526 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/12/14(木) 19:42:32 ID:cYQce1FA
>>524
すばるさん良い感じですね続きが気になります

連投規制とか改行制限はわかりませんすいません。

>>525
遊星さんも待ってますよ。

527 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2006/12/14(木) 19:56:34 ID:9EMjgA/d
意外な人に愛の告白をされ、どう答えたものか困った時の沈黙に似ているなぁ。などと、経験した事も無いのに、そんな突拍子もない事を考えてしまった。
「……もしかして、『夢亜が自分から外に出るなんて、雪でも降るんじゃないかー』なんて考えてぼうっとしてる。なんて事ないよね?」
「あ、あぁ……そんな、事は……」
唐突に予想もしていなかった事――さっきまで考えていたか――を聞かれたので戸惑い、言葉に詰まってしまった。それと同時に、何とも言えなかった微妙な空気も吹き飛んでいく。
それにしても、予想はしていなかったとはいえ、「そんな事はない。」と言い切れなかった辺り、俺は自分で思っているより根は正直なのかもしれない。
「あ!その間は考えてたんだ!ひっどいなぁ。いくら私でもまだそこまで怠け者じゃないよ。」
言葉に詰まっていただけなのだが、夢亜はそれを勘違いしてくれたようだ。
それにしても、「いくら私でも」やら「まだ」とは随分な言い様だ。まぁ、俺の中ではそれ以上の事態にまで発展していたのだが……それは、しばらく胸の中にしまっておこう。
今言うと、何をおごらされるかわかったものじゃない。いや、もう遅いか。
「悪い悪い。今朝の天気予報を思い出してたらつい本音が、な。」
「本当にひどいなぁ。久しぶりに愛しの夢亜さんと出掛けられるっていうのにそんな事考えてたなんて。罰としていつもの、ね?」
「はいはい。わかりましたよ。お姫様。謹んでエスコートさせていただきます。」
「うむ。よろしい。しっかりエスコートするのですよ。なんてね。実はね、今日はちょっと気分転換したいなーって思ってたんだ。さ!行こ!」
そう言って俺の手を取って歩き出す夢亜。
やはり、今日は雪でも降るのではないだろうか?

―――――――――――――――――
「あ、この前書いた分の続きを投下してない」そんな事に気付いた休みの夕飯時。
と、言う訳で前回の続きです。

>>遊星さん
先生だなんて……褒めても出てくるのは駄文だけですよw
凄い気まぐれな人間なんで駄文すら出てくるか怪しいんですが。
情報どうもです。

528 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/12/14(木) 23:12:32 ID:cYQce1FA
>>527
すばるさん投下乙
雰囲気が好きです続き期待してますよ

529 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/12/16(土) 19:47:39 ID:yaRb2X6+
ageとく

530 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/12/17(日) 14:03:15 ID:bpbuH8G1
もう男の人としか見えないよ!おにいちゃん!

ハアハア

531 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/12/17(日) 16:26:08 ID:aKqB8IlY
>>530
それはそれで萌えるなw

532 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/12/20(水) 00:14:31 ID:J+jkZI6+
過疎だ

533 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/12/20(水) 01:49:17 ID:YveQyMk4
この待っている時間は、私は好きだ……


534 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/12/20(水) 05:11:40 ID:4UvDT69B
現実
妹が兄に対して→死ね兄→お前が死ね。消えろキモスデブ。
妹→殺すぞ。
兄→ガキのくせに調子こくなよこら。
妹→手を出す。
兄→妹を殺す。
妹→泣く。
兄→キモいから息すんなよ。お前がキモいから悪いんだよ。死ね。
親→怒る。
兄が親に対して→あいつをキモく生んだ遺伝子持ってるアンタも悪い。
親→お前も同じ遺伝子持ってるんだよ。
兄→黙れ。自分の部屋に逃げる。
妹→相変わらずキモい声を出してキモく泣く。

ゲーム
妹→おにーちゃん!!
兄→おう、なんだ。
妹→兄にべったり。
兄→相変わらず甘え過ぎだから。
妹→あ〜おにーちゃんたら照れてる〜!!(くすくす)
兄→お前みたいな子供になんか照れません。
妹→もう!!いつも子供扱いしてー!!あたしだって、お ん な よ!! 腰に手をあてセクシーポーズ
兄→だめだめだな。
妹→うぅー…!!おにーちゃんのばかぁ!!
兄→ばかとはひどいなばかとは。
妹→だってぇー…。ちょい泣きそうになる。

俺→泣

535 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/12/20(水) 07:33:36 ID:bCOE4FF/

>534がキモいのはよくわかった

536 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/12/22(金) 14:30:07 ID:9ZjLFB/S
>>534
マジレスだが
一般に兄弟は仲の悪いものだとされていて
確かに事実そういう傾向もあるが
ある程度成長してるのに、そんなこと
してるとしたらそういう兄は幼稚だな。
現実〜とか、こんなのと一緒にされたくはない。
実際俺は妹が可愛くて仕方がないし。
「死ね」とかよく言われるけど
それもある意味いいことかなと思ってる。
他人に言われたら普通にキレるんだけどな。

ゲーム〜にしたってないだろこれはww

537 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2006/12/23(土) 00:51:18 ID:BLoxIStr
>>533
奇遇ですね。私もです。

>>536
現実〜の方は大体同意見だけど実際にそういうやり取りを見た事のある
私としては何とも……

ゲーム〜の方は結構気に入って……あれ……私だけ?

538 :遊(ry ◆isG/JvRidQ :2006/12/23(土) 23:17:43 ID:hvbkWNpD
先は長い長いと思っていたが、気付けばもう23日か……

539 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/12/24(日) 00:48:03 ID:daVhtSPc
>>537
いやまぁ…正直言うと俺にもこんな時期あったけどね。
妹のことウザイなって思ってたこともあるし。
しょっちゅう口喧嘩してたこともある。
お兄ちゃんだろ!?ってことで糞親父に理不尽な扱いされたこともあるし…
恥ずかしい話だが、叩いちまったこともある。叩かれたこともあるけど…
…人のこと言えないな…偉そうに言ってごめん
ただそれが全てじゃない、誰もがずっとそうだってわけじゃないってことでさ…

自分を省みるに、妹ウザいって兄貴は妹が自分の思い通りに振る舞わないことに
過剰に憤りを感じてたりしてるんじゃないかな
言うことを聞くのが当然みたいな意識が少なからずあるというか。
あくまで自分の経験に基づいた考えだから全てに当てはまるとは思わないけどさ
…ここまで書いてなんだがスレ違いで本当にスマン

ゲーム〜の方は勢いで言った、反省してる。
ぶっちゃけ俺も好きです。

540 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/12/24(日) 22:50:02 ID:TrsYCOEI
「つまらない……」
誰もいない我が家で一人呟く。
テレビをつけても、どこもクリスマスだと騒がしい。
幸せなクリスマス……それが、正直、鬱陶しくも羨ましくもあった。
ふと、窓の外を見る。
そういえば、雲が多くなってきた気がする。
これで雪なんか降ったら、かなり憂鬱だろう。
祈るような気持ちでカーテンを閉めた。
「はぁ……」
ため息がいやに響き、寂しさが絶頂に達した瞬間、妹の望の顔がよぎる。
「あんなのでも、いれば少しは……」
道場のクリスマスパーティーとやらに出かけていった望。
まぁ、家で俺なんかと過ごすよりはよっぽど有意義だとは思うのだが。
無いものを嘆いてもしょうがない。今あるものを最大限に活用せよ。
とは誰の言葉だったか。
とりあえず、今はせっかくの自由時間だ。
読書の時間と割り切って読みかけの本を読むとしようじゃないか。
……。
それからどれくらい時間がたったのだろうか。
乗ってきたというのも変な話だが、集中して読めるようになってきた。
そんな時、
「なーんだ……ボクがいなくても結構楽しんでるんだー」
ソファの後ろからつまらなさそうな声。
「望?」
「ただいま……」
「おぅ、早いじゃないか?」
「そんなことないよっ!!」
何だかイライラしている望。
「……どうした?」
「なんでもないっ!!」

541 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/12/24(日) 22:50:34 ID:TrsYCOEI
「人を怒鳴りつけといて、何でもないわけないだろ」
「ボク、全然怒ってないんだからね!!寂しくしてると思って途中で帰ってきたのに、お兄ちゃん普通だし、
 ボクが帰ってきても邪魔そうだし、ケーキだって買ってきたのに……」
確かに言っていることは、無茶苦茶。
でも涙目で、泣きそうな声でこんなこと言われたら……無視できるわけないじゃないか……。
「だから、ボク全然怒ってないんだからね!!」
「……」
難儀な女だなぁ……。
「そうかい……」
「どこ、行くの……?」
「関係ないだろ。望が帰ってきたのに、ここで待ってる必要なんか無いんだから」
……これは少しウソ。
まったくそんな気がなかったというワケでもないが。
「お兄ちゃんが……ボクを……?」
一人で想像し、顔を赤らめる望。
しかしまぁ、馬鹿妹のこの目は眩しすぎ……。
「えへへへ……お兄ちゃん……」
何だかジワリジワリと近づいてくる望。
……もしかして、変なスイッチを入れてしまったのだろうか……。
「お兄ちゃん、ケーキ買ってきたんだよ。二人で食べよう!!」
「あ、あぁ……」
「ケーキ食べたら、二人でテレビ見て、二人で遊んで……」
「望……?」
「ね、お兄ちゃん?」
「あ、あぁ……」
「ありがとう。ボク、嬉しいよ!!」
「そうっすか……」

まぁ、そんなこんなで望に振り回されるクリスマス。
嘘も方便とはよく言ったものだけど……
この場合は良かったのか悪かったのかよく分からないなぁ……。
───────────────────────

542 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/12/24(日) 22:52:59 ID:TrsYCOEI
「なんだって、クリスマスを翼となんかと……」
「なんか。とは失礼ね。それはこっちのセリフよ」
12月24日。
イルミネーションやら、ネオンサインやらで輝く町を、妹の翼と憎まれ口を叩き合いながら歩いている。
理由は簡単。二人ともヒマしてるのを不憫に思った母上が、二人で何か美味いものを食べて来い。と。
まぁ、そんな感じだ。
「お兄ちゃん」
「ん?」
「あのお店なんていいんじゃない?」
「……高そうだぞ?」
「ほら、見てよ、あれ」
翼がポスターを指差す。
俺もその指のさきにあるものを見ると、
「ふぅん、恋人同士のお客様は全品30%オフねぇ……」
「よくない?」
「カップルじゃないじゃないか、俺たち」
「分かってないなぁ……」
翼はわざと大きなため息を付いて、
「フリすればいいでしょ?」
と、俺に耳打ちする。
「それぐらいなら、他の店探すさ」
やっぱりウソはよくない。
一人振り返り、歩き始めると、
「わ、私はここで食べたいの!!アンタと恋人のフリなんて、ホントはやりたくないんだからね!!」
「……グラスにストロー二本差しで出てきても知らないからな……」
「そんな軟派な店に見える?」
「見えないけど……」
「じゃあ、行くわよ」
ずんずん歩いていく翼……。
仕方なくその後をついていく俺……。
まさか、あんなことが起こるとは、俺には想像もつかなかったのだけど……。
───────────────────────

543 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/12/24(日) 22:53:32 ID:TrsYCOEI
「意外と美味かったな」
「うん」
空になったデザートの皿を前に、二人揃って立ち上がる。
一応カップルのフリなので、普通の会話を心がけてますよ。
「お金足りる?」
「計算はしてないが、まぁ、ギリギリ足りるだろう」
「じゃあ、お会計ね」
しかしまぁ、翼の演技が上手だこと……。
それに引っ張られる形で、なんだか俺も恋人っぽい会話が出来てしまっている。
「お会計お願いします」
レジの女の子に、伝票を差し出す翼。
「あ、お客さん、恋人同士ですか?」
「はい、そうです」
「では……証明をお願いします♪」
「は……?」
「もちろん!!キスですよ!?」
「「キスっ!?」」
二人の声が揃う。
「出来なければ、割引できませんねぇー」
……悪意のないこの女の子の顔さえも憎い。
「……悪い、翼。家からお金取ってくるから、待ってて……」
そう小声で翼に話しかけたときだった。

544 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/12/24(日) 22:54:06 ID:TrsYCOEI
「っ!?」
一瞬何が起こったのか理解できなかった。
この、唇に何か触れる感じ……コレがキスなんだな……。
「つ、翼ぁっ!?」
「これでいいですよね?」
「はい。では、割引しますねー」
何が何だか分からない俺はあとは全て翼に任せ、一足先に呆然と店の外に出る。
「馬鹿じゃないの……?取り乱しすぎよ、お兄ちゃん」
会計を済ませて、翼が遅れて出てきた。
呆れたようにため息をつきながら。
「……お前はよく平気だな」
「か、勘違いしないでよね!!別に仕方なくなんだからね!!」
「分かってるよ……」
「お、お兄ちゃんとキスなんて、ホントは嫌なんだから!!」
嫌だ。とか勘弁して欲しい。とか何度も言いながら、俺の先を歩いていく翼。
そして、突然振り返り。
「ファーストキスだったんだから……責任、取りなさいよ……!」
「は?何か言った?」
「な、何にも言ってない!!さ、帰るわよ!!」
「はいはい……」

翼に腕を引っ張られて歩く夜道。
……何故か、遠回りをしている気がするのだが……。
───────────────────────

545 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/12/24(日) 22:55:52 ID:TrsYCOEI

あちらこちらで輝くイルミネーション。
ちょっとしたものから、本格的なものまで。少し歩けば、家ごとの違いも見えて面白い。
まぁ、一人で見るというのも悲しいことではあるが、こればかりは仕方ない。
最近そう開き直っている。
そんな感じで、すっかり暗くなった帰り道を一人で歩いていると……
「あれは……」
前方に見慣れた感じの少女が。
「澪かな……。っていうか……」
メイド服を着歩く人間など、俺は澪以外に知らない。
完全に確信を得た俺は少し早歩きで、彼女に向かっていく。
「澪。今帰り?」
澪の肩を軽く叩くと、
「お、お兄ちゃん!!」
口をパクパクさせて何だか驚いてる澪。
そして、
「お、おいっ!!」
全力で走り出す澪。
「澪っ!?」
「うわああああああん!!見ないでくださいぃぃぃぃぃぃ!!」
「えぇー……」
何だかそんな澪を追えず、ただ呆然と立ち尽くす自分。
「ま、いいか……」
澪が分からないのはいつものことだ。
随分彼女に慣れてきた自分がそこにいた……。
───────────────────────

546 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/12/24(日) 22:57:51 ID:TrsYCOEI
澪と別れて数分後、我が家のドアの前にたどり着いた。
この何だか嫌な予感は……きっと当たるんだろうなぁ。
身構えてドアを開ける。
「……」
待ち構えてたのは……やっぱり澪でした。
……何だかリボンみたいなのに絡まっている。
これはまさか……。
「お、お兄ちゃん!?早くないですか!?」
「早いか……?」
「澪、せっかくお兄ちゃんを驚かせようと思ったのにぃ……」
頬を膨らませる澪。
でも、俺は、
「いや……十分驚いてる……」
クリスマスカラーのメイド服だものなぁ……。
しかもスカートは短いし、胸元開いてるし……
「え?ホントですかー?」
「……あぁ、さすがに……」
「うーん、じゃあ、いいかな」
自分で納得する澪。
じゃあ……俺も何でも良いや……。
「ところで……そのリボンは……?」
「あぁ、これですか?クリスマスらしいでしょ?店長デザインなんですよー」
「そういうデザインなんだ……」
「はい」

547 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/12/24(日) 22:58:26 ID:TrsYCOEI
澪はすごい。少しも迷いがないのものなぁ……。
「……もしかして、似合ってないですか?」
「え?」
「さっきから……全然見てくれてないですよねぇ……?」
「……」
まぁ、目のやり場に困るし……。
「帰るときも、何だかみんな澪を見てないし……」
そりゃあねぇ……。
「澪、泣いちゃいますよ……?」
「……」
「泣いても良いんですか?」
「……いや、困るけど」
「でしょ?じゃあ、褒めてください」
上目遣いそんなことを言ってくる澪。
仕方ないなぁ……。
「いや……似合ってるし、可愛いと思うよ」
「じゃあ、何で見てくれないんです?」
「そりゃだって……カッコ悪いじゃないか……」
「カッコ悪い?お兄ちゃんはいつもカッコいいですよ?」

548 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/12/24(日) 22:59:04 ID:TrsYCOEI
「……俺としてはそういうのカッコ悪いと思うんだよね……」
「はー。そうなんですか……」
「だからあんまり言いたくないんだけどな……」
「なるほどなるほど。お兄ちゃん、硬派なんですね!!」
「硬派……」
古臭い言い回しだなぁ……。
「でもでも、そういうの一杯言っても良いと思います。それでも、お兄ちゃんカッコいいから」
「……人の話聞いてた?」
「大丈夫ですよ!!お兄ちゃんがお兄ちゃんをカッコ悪いと思ったら、
 それ以上に私がお兄ちゃんをカッコいいって褒めてあげます!!」
ホントにこの娘は……
「それより、お兄ちゃん、行きましょう!!」
「え?どこに?」
「リビング!!パーティーの準備は出来てます!!」
俺の右腕を抱きしめる澪……。
あの……自分が何してるか分かってます?
「……お兄ちゃん?」
「な、なんでもない!!行こうか!!」

不思議なクリスマス。
まぁ、澪がサンタってことで良いじゃないか。
───────────────────────

549 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/12/24(日) 23:00:58 ID:TrsYCOEI

今日はクリスマスイブ。
何かあるわけでもないのに、何だか楽しくて、ドキドキして。
そんな一日が今年もやってきた。
……ただ、一つ違うことが。
それは、
「お兄ちゃんと一緒……ふふっ……」
ため息とともに思わずそんな言葉が漏れてしまう。
お父さんとお母さんは今夜はデート。
お兄ちゃんも出かける予定が無いと言っていたから、今晩は本当にお兄ちゃんと二人っきりだ。
というわけで、お兄ちゃんに食べてもらうため、愛妹料理を作っている最中なんだけど。
「……ダメだ……全然集中できないよ……」
チラついて離れないあの人の顔。
思わず顔がニヤけてしまう。
そんなのだから、さっきも指を切りそうになったのだけど……。
「それにしても……お兄ちゃんどこ行ったのかな……」
ブラブラしてくる。とは聞いたけれども、もう随分になる。
家にいてもらってはヒミツの準備も無駄になってしまうのだけど……
やっぱり出来るだけ私の傍にいて欲しいというジレンマ。
そんなことを考えて、また私の手が止まっている。
これではいけないと、また料理に集中するのだけど、ふとしたきっかけでまた思い出し、上の空。
さっきからこんなことの繰り返しだ。
いつもはさすがにこんなことないのに……
やっぱり今日がクリスマスだからだろうか。
ため息をついて、ゆっくりとまな板の前に戻ると、
「ただいま」
玄関から、聞き間違えるはずの無いあの声がした。
それだけで嬉しくて。頭より体より、心が真っ先に動いた。
「お帰りー!!」
私はエプロンを放り投げ玄関に向かう。

550 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/12/24(日) 23:01:36 ID:TrsYCOEI
「あぁ……どうしたの、葵?」
「え、あ……別に、あはは……」
……後先考えず。とはこのことだね……。
「ゴメンな、お土産の一つも買ってこなくて」
冗談をいって笑うお兄ちゃん。
……やっぱりお兄ちゃんはいいなぁ……。
「?」
お兄ちゃん、紙袋なんて持ってる……。
隣町のデパートのだ……。
「ね、何買ったの?」
「え?」
「紙袋。何か買ったのかなって」
「あぁ、コレ?大したもんじゃないよ」
「もしかして、クリスマスプレゼント?」
「うーん……この時期にモノを買うと、何でもクリスマスプレゼントっぽくなっちゃって困るよねぇ」
「じゃあプレゼントじゃないんだ?」
「うん。必要だったから買っただけ。まぁ……見栄張って包装してもらったんだけど……」
気まずそうに、包みを見せるお兄ちゃん。
「空しいね、さすがに」
と苦笑い。
「ところで、葵?」
「なーに?お兄ちゃん」
「何か焦げ臭くないか?」
……焦げ臭い?そういえば……

551 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/12/24(日) 23:02:12 ID:TrsYCOEI
「あーっ!!」
火つけっぱなしだったの忘れてた!!
慌ててキッチンに戻るが、時すでに遅し。
「シチューが……っ!!ど、どうしよう……!!」
鍋の中にはなんだか茶色っぽいシチュー……。
「ありゃー、やっちゃったねー」
「……晩御飯が……」
「落ち着いて、葵」
「で、でも……」
「晩御飯の心配はいいから。火傷とかしてない?」
「それは……大丈夫だけど……」
「良かった。それなら、俺は安心だよ」
「お兄ちゃん……」
私を心配してくれるお兄ちゃん。
私の掌を撫でてくれるその手が、とても暖かくて……
「うぅ……ゴメンなさい……」
嬉しくて、幸せで、思わず涙がポロポロこぼれる。
「な、葵!?ホントに大丈夫なのかっ!?」
「お兄ちゃん……私、少し……火傷したかも……」
「どこを!?」
「ここ……」
お兄ちゃんの手、私の胸の前に重ねる。
「……ココが、キュンってして、熱い」
「葵……」
困った、というかパニック寸前のお兄ちゃん。
私にだって、そんなに邪な気持ちはなかったとはいえ……ちょっと気まずい。
「……ゴメンね……何だか、寂しくて……」
「ううん。いいよ、葵はいつも頑張ってるから、時々はね」

552 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/12/24(日) 23:02:44 ID:TrsYCOEI
「……うん、ありがとう。じゃあ、迷惑ついでに、もう一つ良い?」
「どうぞ」
「優しく抱いて欲しいな、なんて……」
「いいけど、俺で良いの?」
「私のお兄ちゃんでしょ?妹には優しく。ね?」
「ま、頼られるのは兄貴冥利につきる。というべきかな」
少し恥ずかしそうに、私の肩を抱きしめてくれるお兄ちゃん。
気持ち良い温もりが、全身から伝わってくるのを感じる。
「葵……はい、コレ」
さっきの紙袋をお兄ちゃんが差し出した。
「私……に……?」
「うん。自分で使うつもりだったけど、葵にあげるよ」
「開けても良い?」
「どうぞ。……お気に召すかは自信ないけどね」
紙袋を丁寧に開けていくと……
「マフラー?」
お兄ちゃんの好きそうな色のマフラー。
「……変かな?」
「ううん。気に入った」
「それは良かった」
ホッと安心した顔のお兄ちゃんに、すこし癒される。
「今度は私がお兄ちゃんに似合うマフラーを選んであげるよ」
「え?」
「明日も予定入れちゃダメだよ?」
「……了解。ご一緒させていただきます」
「うんうん。よろしくね」
小指を出す。

553 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/12/24(日) 23:03:24 ID:TrsYCOEI
「指切り」
「そんなことしなくたって俺は……」
「いいの!やるの!!」
「はい……」
大人しく小指を出したお兄ちゃん。
そんなことでも嬉しくって。
「いたたたた!!痛いって、葵!!」
思わずつながった指を思い切り振ってしまう。
「あ、ゴメン……」
「はしゃいでるね」
お兄ちゃん痛めた指をチラッと見ながら、尋ねた。
「クリスマスだもん!お兄ちゃんも楽しもうよ!!」
「ふむ、是非楽しませてもらおうか」
「ふふん、ハメ外しちゃっても知らないからね〜?」
「凄いこと言うねぇ」
「とりあえず……晩御飯だねぇ……」
焦げ焦げのシチューを思い出す。
「大丈夫。ちょっと色は変だけど……食べれるよ
「美味しくはないんだ……?」
「い、いやっ!!そんなことない!!美味しいよ!!」
「ふふ、ありがと。お兄ちゃん」

ふたりで過ごす初めてのクリスマス。
……それに明日も、一緒。
来年も、一緒にいられたら……。
───────────────────────

554 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/12/24(日) 23:07:36 ID:TrsYCOEI
もうこんなもんでスレを消費してる恥ずかしくなってきた……。大人しく消える……

>>540-541 格闘系ボクっ娘妹、望
>>542-544 ツンデレ風妹、翼
>>545-548 天然系メイド妹、澪
>>549-553 兄好き系妹、葵

じゃ、メリークリスマスってことで……。

555 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/12/25(月) 05:55:47 ID:nTWdnjMl
メリークリスマス!! 遊星さんGJです。今年もハートフルなストーリーをありがとうございます。どの話もよかったのですが。俺的には翼が一番萌えました。

556 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2006/12/25(月) 10:08:39 ID:483t5Zav
OCNがアクセス規制かかってるっぽいので携帯からのすばるです。

>>539
>>537は見た事あるのでいるにはいるのでは?・という事を言いたかっただけだったのですが……
少し誤解を与えてしまったようですね。すいません。
私には妹は(脳内以外に)いませんが、
私含めて結構な人数があなたと同じような考え方をお持ちだと思います。

>>遊星さん
忙しい中乙です!
葵大好きですよもう。
これを読んでやっとクリスマスという実感が沸いてきました。
雰囲気創りがいい感じです。

私はクリスマスネタは時間がなかったのでパスです。
昨日仕事行ってから帰ってきたのが今だったりするのでご勘弁を……
年末かお正月ネタは書くつもりなので待っていてくださる方がいましたら
申し訳ありませんがもうしばしお待ちを……
それでは最後に、『メリークリスマス!』です。

557 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/12/25(月) 19:43:42 ID:kgQoUlsx
「う〜・・・シングルベルシングルベルってか」

口に咥えていた体温計を引き抜かれ、ヤケクソ気味で意味不明な言葉が漏れ出る俺。
12月24日クリスマス・イブ、床の間に伏せているにはあまりにキツイ一日。
天井を仰ぐ俺の傍らで体温計を腕組みして見詰めていた巴は困った様な笑顔を俺に向ける。

「で、何度くらいあった?」
「聞かない方がいいよ、余計に辛くなるから」

つまり今の俺は聞かない方がいい程の熱がある、と。
神様・・・俺が何か悪い事しましたか?

「ううっ、健康だけが取り得のヤツがよりによってイブにこんな目にあうとは・・・」
「ま、こればかりはね・・・今日は大人しく看病されなさい、ふふっ」
「・・・なんか嬉しそうに見えるんだが・・・気のせいか?」
「まさか、ボクはお兄ちゃんと同じ位に心を痛めてるんだよ」

子供でもあやす様にポンポンと頭を撫でてくる巴の表情は至って明るい。
若干の遣り切れない想いが湧き上がるがそんな事も霞が掛かった頭の上ではすぐに跡形も無く消え去ってしまう。
今の気分はちょうど横になったまま見える窓の向こうの灰色の雲と同じ重たさ、そんな感じだ。
しかし、わざわざ狙ったようにクリスマスイブに風邪を引くのだから本当に俺は相当くじ運の悪い男らしい。
果たしてこの割と浅くて広い世界にこんな人間があと何人程いるのだろうか?
曇り空を見詰め、そんなどうでもいい事を働きもしない頭で思索する。

「・・・あの枯葉が落ちた時、俺の命も尽きるんだな」
「・・・枯葉って何?ここから木なんて見えないんだけど」
「心の目だ、心眼だ・・・俺がいなくなっても強く生きろよ、巴」
「もうっ、お昼ごはん作ってくるから大人しく寝てなさい!!」

558 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/12/25(月) 19:45:23 ID:kgQoUlsx
椅子の背にしていた黄色いクッションによる顔面への一撃を浴びせて巴が肩を怒らせながら部屋を出て行く。
その割には数分後には上機嫌なソプラノボイスが閑静な家の中に響くのだから乙女心というのはよく分からない。
進路を見失った船乗りが吸い寄せられる様な歌声にこれでもかと突き付けられる現実。
揺らめく視界をクッションの黄色に占領されたままで美声に対抗し口笛なんぞ吹いてみる。
非常に虚しい浅はかで一方的な競い合い、勝っても負けても、いや勝ち負けなんてあるのかさえ微妙だ。
いつもならば忙しく過ぎ去る時間がこんな時に限って長く重たく感じられる。

「まいったな、こりゃ・・・」
「何がそんなに憂鬱なの?」

ヒョイと視界から黄色が取り除かれ、綺麗に澄んだ黒い瞳が写りこむ。
何故か少しだけ気分が軽くなる。

「言わずもがなって所だろ、にしても早かったな」
「そう?大体、15分は経ったと思うけど、ほら、お粥作ってきたから体を起こして・・・」

背中に手を当てて俺の体を優しく起こす巴、そのままトレイに乗せた湯気の立つお粥を差し出す。
器がわざわざ土鍋という辺りに巴の力の入り様が伺える。
・・・しかし、これでいいのだろうか?

「・・・食欲ないんだが食わなきゃ直らないよな・・・じゃ、頂きます」
「あ、ちょっと待ってね、熱いから・・・ふーっ」

口に入れようとした瞬間、絶妙のタイミングで俺の手からレンゲを掠め取る巴、そのまま息を吹き掛ける。
ああ、巴の唇ってホントに色艶いいよなぁ・・・特にリップとか塗ってる訳でもないのに鮮やかな桜色で・・・

559 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/12/25(月) 19:46:46 ID:kgQoUlsx
「・・・ってオイ!!そこまでしなくっていいって!!」
「はい、あ〜ん」
「あ、あの、巴さん・・・俺の話を聞いてます?」
「・・・はい、あ〜ん」

・・・ダメだ・・・目が一切の否定を許していない、どうやら拒否権はこちらには存在しないらしい。
観念しておそるおそる口を開くと程好い暖かさのお粥が口の中に広がっていく。
・・・本当にこれでいいのだろうか?

「ふふっ、どう?美味しい?」
「いや、美味しいも何もお粥だしな、味無いし・・・やっぱり何か楽しんでないか?巴」
「・・・なんていうか、これも幸せのカタチかな、って」
「幸せ?老人の介護がか?」
「・・・ロマンの欠片も無い言葉だね」
「実際の所、今の状況は老人の介護にしか見えないけどな」
「そんな事無いよ、ボクには・・・」

そこからピタリと言葉が詰まり、俺から顔を背けて巴が紅葉を散らした様に頬を染める。
正に千変万化、うなじの辺りまで赤みが差して変に色気が増した巴にドギマギしてしまう俺。

「な、なんだよ一体?」
「う、ううん・・・なんでもない・・・はい、あ〜ん」
「だからもういいってのに!!」
「・・・男なら覚悟を決めなさい」

560 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/12/25(月) 19:48:58 ID:kgQoUlsx
結局、意地でも全部食べ終わるまでこのやりとりは続けるつもりらしい。
本格的に介護めいてきたし、こうなってはもはや早く終わらせる他には無いだろう。

「はい、じゃあ後はお薬ね」
「・・・あのな・・・それより、巴・・・これでいいのか?」
「えっ?何が?」
「今日は年に一度のクリスマス・イブだ、そんな日を病人の看護なんぞに費やしてていいのか?」
「・・・」
「別にさ、俺一人家に残ってたって何も恨んだりしないからさ、巴は好きなように楽しんでくれば・・・」

心の動揺を誤魔化す為に出た何気ない言葉、空に浮かぶ白い月に影が差す様に巴の表情に少しだけ憂いが篭る。
スッと重なる凛と澄んだ瞳、なんだかやたらに儚さを含んだその瞳が壊れてしまいそうで押し黙ってしまう俺。

「・・・バカ」
「は?」
「ねぇ、お兄ちゃんはこんな風にボクとイブを過ごすのは・・・イヤ?」
「聞いてたのは俺の方なんだけど・・・」
「いいから答えて、どうなの?」
「ま、まぁ・・・むしろ、ありがたい」
「じゃあ、いいんじゃない?ボクも同じ気持ちだから」
「同じ?巴もありがたいのか?」
「うん、そうだよ」

先程とは打って変わってサバサバした口調で笑ってみせる巴、俺の方は解けない謎ばかりで疲れが増すばかり。
熱を持った頭で一人、その意味と訳を探し続ける。
巴と俺の違いとは何なのか、謎解きの鍵が突然に放り投げこまれる。

561 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/12/25(月) 19:50:33 ID:kgQoUlsx
「それに、今年は流石にお兄ちゃんは迎えに来れないと思うから」
「ああ、去年の事な・・・今年と真逆の立場だったな・・・」

寒空の下、大きなクリスマスツリーに祈りを捧げる巴の姿を思い出す。
綺麗に彩られたイルミネーションが町の幸せを、この日ばかりは悲しみも全てを呑み込んで光を放つ。
クリスマスは誰もが幸せそうに見えるもの、誰でも幸せのきっかけを掴めるもの。
そう、そんな事すら俺は忘れてしまっていた。

「・・・ごめんな、巴」
「・・・?急にどうしたの?」
「結局、子供の頃の約束は守れなかった・・・十年後にって約束は」
「・・・ううん、お兄ちゃんは覚えていてくれた、それだけで・・・ボクは幸せだよ」
「じゃあ、針千本は勘弁してくれるか?」
「約束は延長にしてあげる、あと五年延長、ね」
「・・・イヤに生々しい数字なんスけど?」
「約束だからね、お兄ちゃん」

そっと重ねられた手の平から伝わる温もり、窓の向こうの凍てついた世界に鮮やかな白い雪が舞い降りる。
真冬の空に鈴の音が鳴り響く、厚い雲の下で光輝く小さなこの世界。

「・・・ま、五年後、巴が俺に愛想尽かしてなければな」

上手くはいかない事ばかりの世の中に大きな欠伸をして俺はゆっくりと瞳を閉じる。
俺の願いは叶わなくともどうか巴の願いが叶いますように、そう祈りを込めながら。

562 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/12/25(月) 20:11:34 ID:kgQoUlsx
───────────────────────
時計の針が夜を指し示す頃、アスファルトに染みを作っていた雪が街を一面の銀世界へと変えていく。
どれ位の時間、こうしていたのだろう?
ただ規則正しい寝息を立てる穏やかな寝顔をぼんやりと見詰め続けて気が付けば夜の帳はすっかり下りていた。

「・・・ボクがお兄ちゃんに愛想尽かしてなかったら、か・・・」

何時間か前のお兄ちゃんの言葉をもう一度、反芻する、そうやって何度も繰り返してみても可笑しな言葉。
・・・そんな事・・・ある訳、無いのに・・・
暖かい唇にそっと指先で触れ、夢の中へと届くように囁く。

「ねぇ、お兄ちゃん・・・ボクは分かってるんだよ?今の幸せがどれほど脆くて儚い物なのか・・・」

運命はとても弱くて、ほんの少しの偶然で幾らでも形を変えてしまう。
ボクとお兄ちゃんは後どれ位の間、一緒にいられるのだろう?
・・・そう考えると・・・泣きたくなる程・・・悲しくなる・・・
世界にお兄ちゃんの代わりになれる人なんて誰一人いない。
我が侭も強がりもボクが大嫌いなボクでさえ全部それが当たり前だといつでも受け止めてくれる。
けれど、惜しみない優しさは手掛かりの無い優しさ、どうしようもない切なさが胸の奥底に深く降り積もる。
ボクが愛している分だけボクを愛して欲しいなんて言わない、お兄ちゃんの全てを手にしたいなんて言わない。

「・・・ボクの想いはただ一つ・・・」

寒い冬は温もりを分け合って、二人で桜の咲く遠い春を待ち続けて、そんな毎日が大切な宝物で。
いままでと何も変わらない、ありふれた何気ない日常を・・・ただ二人で・・・
・・・神様、ボクは綺麗なクリスマスツリーも豪華なプレゼントも要りません・・・

「・・・どうか・・・これからもあなたの側に・・・大好きだよ、お兄ちゃん・・・」

──聖なる夜に永久の祈りを──

──愛しき人に口付けを──

563 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/12/25(月) 20:34:38 ID:kgQoUlsx
一日遅れでのイブ話、しかも前回投下から間がエラく開いてしまった・・・
話の内容の薄さも含め、なんか色々とスイマセン。

>遊星さま
いつもながらのいい仕事っぷりに感動です!!
みんな個性が上手く引き出されていてお見事としかいい様がありません。
葵ちゃんが可愛い過ぎる、もう巴さんでは太刀打ち出来ないなぁ・・・
個人的には澪ちゃんがツボでした、これはもう最高のクリスマスプレゼントですw

>すばるさん
いや、待ちに待っていましたよ!!
夢亜ちゃんの話が読めて感動です。
正月話に期待しております、すでにバレンタインとかも期待してますw

564 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/12/26(火) 00:06:53 ID:lHhkXKSB
俺は、
なんだかんだあってもイベントには投下してくれる皆が大好きだ




だから、だからね?たまには姉g(ry

565 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/12/26(火) 02:12:55 ID:tIg76mUJ
遊星さん、夢ノ又夢さんGJ
俺もイベントには律義に投下してくれる職人さんに感謝
すばるさんイベントネタの投下と続き待ってます。

566 :遊星 ◆isG/JvRidQ :2006/12/26(火) 18:36:58 ID:vDZyvXan
規制の巻き添え中……トリップ合ってるかな……
ケータイからなんで多少の見苦しい点は申し訳ない。

〉夢ノ又夢先生
やっぱり先生は凄い方です。
いつも幸せな雰囲気の作品で、微笑ましい気持ちになります。
自分もそういう作品を目指したいですね。
次回も期待してます。

〉すばる先生
今年で最後最後と言いつつ、また今年も書いてしまいました……w
正月モノも書きたいんですけど、
ネタも無い。時間もない。遊星はダメな男……
すばる先生の作品も楽しみにしてます

>>564さん
姉もね、書こうと思ったんですよ?書こうと思ったんですけど……タイムオーバーでした。
かなりテンション上げないと書けないですね、あの姉弟のノリは……。

567 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/12/28(木) 19:01:13 ID:lGTjjjcS
規制解除記念に意味も無くレス。
気分良いから、文化祭モノでもzipとかで上げてしまおうか!

568 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2006/12/29(金) 08:39:47 ID:61c9ZlQl
「…………」
何者にも入り込む事の出来ない、沈黙の支配する空間。彼の者と対峙。
静寂こそが絶対であり、沈黙を破る者に留まる事は許されない。
全て者が俯き、顔に活気はない。
あぁ…何故気が付かなかったのだろう……。
「……お兄ちゃん。」
―――知っている。決して沈黙が破られる事は無く、破ろうとする者に与えられるは孤独。
「…………」
視線が宙を彷徨う。
そこに陽の光は存在せず、在る事は許されない。
彷徨った視線に映るのは作り出されたまやかしの光と兄と呼ぶ者の顔。
あぁ…何故気が付かなかったのだろう……
この人が商店街に来て、本当にぶらぶらするはずがないのだ。

―――――――――――――――
規制解除記念おふざけ。

>夢ノ又夢さん
私こそ待ちに待っていましたよ!相変わらず良い仕事をしてらっしゃるw
そこまで歓迎して頂いたら私ものうのうとゲームをやっている訳にもいきません。
という事で努力します。

>>565
夢亜の続きはノリで書いていたら段々長くなってきていまして…もう少々お待ちを……。
イベントネタは……来るか来ないか分からない、というのも楽しい……と思いません?w

>遊星さん
ネタも時間も無くても何とか捻出する。そんな遊星さんに続ける様に精進しますです。
ネタと言えば、純粋に字書きとして遊星さんの来年のバレンタインのネタが楽しみですw

569 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/01/01(月) 04:10:54 ID:rlhMPb99
明けましたおめでとうございます。
今年もよろしくお願いしますという意味も込めて、新年一番手いきます。

――――――――――
「さて、と……何処か行きたいとこ、あるか?」
 とは言ってみたものの、俺の視界に映るのは赤みを帯び始めた冬の気の早い太陽と、その赤にも負けない程見事に朱みを帯びた頬をした膨れっ面の夢亜。
 そこまで暇だったのなら声を掛ければいいものを……また気を使ったつもりなのだろう……が、俺としてはこうなる前に声を掛けて欲しいのだが……。
「知らない。お兄ちゃんが行きたい所に行けばいいじゃない。」
 ぷい、とそっぽを向きながら答える。
 行きたい所がないから聞いているのだが……いや、あるにはあるが、行くとまた夢亜を怒らせ兼ねない……というのが正しいか。
「まぁそう怒らずに。ほら、ガムあげるから。な?」
 財布に入っていたガムを取り出し――いつから入っていたかは謎だ。入れたのを忘れるくらい前に入れた物なのだろうが――夢亜に差し出す。が、受け取る事は無い……だろうな。
 いくら夢亜でも、さすがにもうこんなもので機嫌が直ったりする歳でもない。
 それに、万が一受け取られたら夢亜が明日お腹を壊す事になり兼ねない。
「……何味?」
「そうだよな。いくら夢亜でも……って、味……?あー…梅……?」
「じゃあいらない。」
 味によっては受け取るつもりだったのか……恐ろしい……。
「そ、そうか……」
 ついつい天を仰ぐ。
 ああ、何故こんな状況になったのか……。

―――――

570 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/01/01(月) 04:12:53 ID:rlhMPb99
 お昼過ぎに出掛ける兄に付いて行く事になり――私が引っ張って来た気もするが――、商店街まで来た。
 休日のこの時間の商店街は最近あまり来ていなかったのだが、久しぶりの晴れのせいか普段からこうなのか、結構な人がいて、少し気後れしてしまう程賑わっていた。
「ねぇお兄ちゃん。ここって、こんなに人多かったっけ?」
「んー、いつもはここまでいない気がするけど。まぁ、久しぶりの晴れだし、年末だし、こんなもんなんじゃないか?」
 私としては年末なのだから、というより私が外に出るときはもう少し、なんというか……エトセトラな方々には火燵の中で丸くなっていて欲しい。
 別に嫌い、という訳ではないが、どうも人ごみは好きになれない。
「こんなものなんだ……。」
「……迷子にならないように手でも繋ぐか?」
「まい……迷子になんてなる訳ないでしょ!?」
 ……しまった。
 人ごみに気を取られていたせいか、また兄の悪ふざけに乗ってしまった。
 手を繋ぐ、というのは――理由はともかく、随分魅力的な提案だったのに……なんで別の乗り方が出来ないのか……。
「そっかぁ……夢亜ももうそういうのが恥ずかしいお年頃になったんだね。お兄ちゃんの元を離れていく妹……お兄ちゃんは寂しくなるけど応援しているよ。」
 「よよよ」等と白々しい泣き真似をする兄。
 馬鹿にされている。というより侮辱されている気がする……ここまで人の神経を逆撫でするような事を何の間も無く出来るのは、もう才能としか言い様がない。
 恐らく兄は、人ごみに気構えている私に気を使ってふざけているのだろうが――気を使っていなくても普段からふざけてるが――、そのせいですれ違った人にくすくす笑われていたのが恥ずかしくて気に入らない。
「……バカ。」
「悪い悪い。さて、夢亜はどこか行きたいところあるか?」
「特にないかな……お兄ちゃんは行きたい所ないの?」
「俺が行きたい所……ねぇ……。無い事もないけど、それは一人の時でも行ける……ていうより一人の時にしか行かない事にしてるから。」

571 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/01/01(月) 04:13:23 ID:rlhMPb99
 ……イケナイ所にでも行ってるのだろうか。
 いやいやいや。兄に限ってそんな事あるはずがない。だが、兄も一人前の男だ。それは私がよく知っている。
 兄が一人でしか行かない所とは……正直、とても気になる。
 あくまで妹としてであって、決してやましい事などない。
 て、何故自分に言い訳しているのか。自分で『やましい事をしてますよ』と言っているようなものではないか。
 馬鹿か私は……。
「別に私は気にしないでいいよ?本当に暇だから付いて来ただけだから。」
 ともかく、ここは是非兄がどこに行くのか突き止めなければ。もちろん、兄――家族を心配する者として。
 兄が気になるような事を言うのが悪いのだから、誤魔化そうとしても少しくらいしつこく聞いてもいいと思う。
「そう?んじゃ行きますか。我が聖地、○○書店へ。」
「本屋!?」
「そうだけど……何かマズッた?」
「……そんな事、ない、けど……だって、一人の時しか行かない所って言うから……」
「……どこに行くと思ってたんだ?」
「え!?それはその……えーと……」
 そんな事言える訳がない。
 兄がその……そういう所に行っていると思っていたなんて……。
「それはその……なんだ?」
「その……あれ……とか……」
 あぁ、兄の顔が眩しい。そんな楽しそうな顔をするのか……。
「あれ?あれってなんだ?俺には話がよくみえないなぁ。」
 分かっているくせに。私が勘違いしてた。また勝手に先走ってた。
 認めるからからかわないでほしい。
「あぁ〜!何でもいいでしょ!行くなら早く行こ!早くしないと陽が暮れちゃうよ!」
 強引に兄の手を取って歩き出す。
 不満そうな顔をしながらも付いて来てくれる兄。
「おいおい。何でもよくないぞ。夢亜は俺を何だと思ってるんだ?」
 何だと思っているか?そんな事決まっているではないか。今も昔も、そして多分これからも……ずっと変わらない。
「何にも思ってない!人を困らせるのが好きな変態でしょ!」
「何も思ってないって……変態って思ってるんじゃないか。」

572 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/01/01(月) 04:14:09 ID:rlhMPb99
「思ってない!バカ!」
 外見では怒っているのに、仕事を始めてからも会いに帰って来てくれるのが嬉しい。こんなやり取りを出来るのが嬉しい。そう考えるだけで顔が綻んでしまう。それが何よりの証拠だ。
 しばらく兄に顔を見せられない。
「ところで夢亜さん……」
「あんまりしつこいと女の子にもてないよ!」
「いえ……そうじゃなくて。俺がいつも行く本屋……逆です。」

―――――

 本屋に入るまではあんなに騒がしかったのに、俺が一体何をしたというのか。
 ただ本屋で二時間程立ち読みをしていただけだ。
 俺としてはかなり早く店を出たのだから褒めて欲しいくらいだ。
 一緒に居たのが広司なら、涙を流しながら褒めてくれていただろう。
 街中で男に涙を流しながら褒められるなんて姿、想像しただけで寒気がするが。
「…………」
 なんて余計な考えをしていると――人の考えが読めるのか、無言の圧力を掛けてくる娘が一人。
「そんなにガムが欲しかったのか……すまないな。君の好みのガムを用意出来なくて……。」
 瞬間、俺に背を向けていた夢亜の右足が引かれ、それに合わせて流れるような動作で右肘が俺の腹部に……
「ぐは……っ!」
「……何か言った?」
 こいつ……一体どこでこんな体捌きを……。
「……姫様が暇をしているのに気付かず、本当に申し訳ない、と。」
「分かってるならいいよ。」
 いつか姫から女王様になる日が来るかもしれない。
 それだけは何としても防がなければ……。
「姫!こんな私を許してくださりますか!なんと御心の……」
「それはこれは別。」
「そうですか……。」
 昔ならこのまま流されていたのに、夢亜の成長が早いのか、時の流れが早いのか、最近はもう簡単には流されてくれないらしい。
 それにしても……腹がまだ痛む……。

573 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/01/01(月) 04:19:17 ID:rlhMPb99
「でも……反省してるなら、許してあげてもいいよ?」
 試すような顔だけを向けての上目遣い。
「これでもかと言う位反省しています。」
「じゃあ、許してあげる。」
 そう言って以前より少し伸びた髪を靡かせながらくるり、と音が聞こえそうなくらい軽やかにこちらに向き直り、夕日を背に満面の笑みを見せてくれる。
 長い睫毛に靡く髪、怒っていたとは思えない笑顔。
 夕日に照らされるその姿は一枚の絵のように。
 同時に、決して絵では表せない程の輝きを持って夕暮れの街に佇む。
 これは反則だ……今日の夕日は、眩しすぎる。

――――――――――
と、いう訳でコミケ行ってたら年末ネタ落としてしまいました。
お正月ネタは予定は予定であって……というやつです。
何かとスローペースですが今年も職人さんに混じって投下していこうと思うのでお付き合いお願いします。

574 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/01/01(月) 23:02:13 ID:5x+zxIvu
あけましておめでとうございます。
台本も書かんと、雑談ばかりで恐縮ですが。

>すばる先生
乙です。
二人の関係が良い感じで、いつかこういう兄妹が書けたらなぁ。と。
何はともあれ、次回を期待してます。

575 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/01/08(月) 00:05:39 ID:Ew02/Pob
グッジョブです!

576 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/01/13(土) 01:06:30 ID:ehgorI5d
遊星さん>
お褒めの言葉どうもです。
私としては遊星さんの萌え分を分けて頂きt(ry

>>575
お褒めの言葉どうもです。
萌えがなくて申し訳ないです。

妹「お兄ちゃん、今は冬だよ?冬眠しなくて平気なの?」
次回の投下はまだ未定ですが、それでは。

577 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/01/15(月) 21:43:38 ID:mxyrY3Fq
保守ー

578 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/01/18(木) 21:42:45 ID:OOSENf3D
保守……

そろそろバレンタインだよなぁ……。俺今年でバレンタイン何年目だろ……。
いや、まぁ、翼とか葵のバレンタインは書いて面白そうなんですけど……如何せんネタが……。
書いて欲しい妹とかあったら、いまなら考えられるんだけどな……ある訳無いか。

あ、夢ノ又夢先生の作品を去年から楽しみにしてますからね。
せいぜいその前座が務まるように頑張りますよ。

579 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/01/18(木) 21:55:03 ID:smbPPzNe
遊星さん、葵と未来が特に読みたいです!

580 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/01/21(日) 16:34:13 ID:xJZmHoVD
かなみ

581 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/01/21(日) 21:06:27 ID:OSw3gbU3
杏ちゃん 読みたいです。


582 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/01/22(月) 16:29:56 ID:nFAmOrHj
>>579さん
葵と未来……
個人的には、未来の位置はもう完全に葵に譲ってしまった感があるんですけど……分かりました。頑張ってみます。
……もちろん、保障は出来ません。

>>581さん
まさか杏が来るとは……。
どんなキャラかすっかり忘れてしまっているので、上手く書けない可能性が……。
自分の努力なんて、たかが知れていますが、一応努力します。

583 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/01/23(火) 23:43:40 ID:/C9LGAiZ
>遊星先生
文化祭モノはもう上げて頂けないのですか?

584 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/01/24(水) 08:42:53 ID:A/V0BeGT
たまにでいいから…節分がある事……思い出してあげてください……ばーいゆうな

>>遊星さん
双子の話が読みたいです。
って、これじゃ去年より増え……

>>夢ノ又夢さん
遊星さんに続いて私も楽しみにしてますよw

585 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/01/24(水) 15:00:08 ID:gPY8JiyO
>>583さん
文化祭のは、見事に反応無かったんで……。
まぁ、自分としても季節外れだしやめとこうかな、と思ってるんですが……欲しい?

>すばる様
双子ですね。かしこまりました。

つーか、まさかこんなにリクエストがあるとは思わなかったんですよw
これもどうせ華麗にスルーされるんだろ。くらいに思ってたので、自分で自分の首を絞める結果に……
嬉しい誤算。と言うべきですか。
……まぁ、リクエストがあったからには書くつもりですんで。あとはこれ以上増えないことを祈るばかりw

586 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/01/24(水) 21:56:46 ID:CsF9kpHF
583です
俺は季節外れでも読みたいっす…

587 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2007/01/28(日) 22:36:52 ID:E24/pcmB
去年書いたバレンタイン話、先程読み返してなんか無かった事にしたくなって
きました。
いや、正直自分で割と良く書けたと思うのは一番最初の一作だったりします。
なんか段々と退化していく気が・・・
>遊星様
上記の通り、バレンタイン話は期待されるには値しない物であります。
遊星神のSSに期待してますよ。
出来れば梨那ちゃんが読みたいのですが他のリクエストの後に余裕がありまし
たら是非に、という事で。
後、文化祭話も586さんに激しく同意して期待しております。
>すばるさん
むしろ期待してるのはこちらの方ですよ。
夢亜ちゃんのバレンタイン話が是非とも読みたいです。

ところで巴ですが立ち位置を葵ちゃんに譲りつつある今、バレンタインを機に
そろそろ楽隠居させようかともふと思ったりするのですがどうでしょうかね。
単純にネタが切れてきたのもありますが・・・皆さんの意見を求む。

588 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/01/28(日) 22:42:47 ID:xnm1heTp
巴の現役続行を希望します!

589 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/01/30(火) 02:33:12 ID:CnS4ffhe
バレンタインは新キャラ登場予定。でも、あくまで予定です。

>>遊星さん
私も文化祭読みたいに一票ですー。期待してます。

>>夢ノ又夢さん
夢亜ですか……ここだけの話、実は>>573はまだ途中なんですよね……
でも、リクエストしていただいたのでそれは置いといてバレンタイン夢亜、書きますw

葵と巴……葵が直球ど真ん中豪速球でストライクな私としては葵が…でも…巴さんを捨てる、なんて…出来ない……っ!

590 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/01/30(火) 17:34:45 ID:ayq41ORZ
未来、葵、杏、双子、梨那……。時間があれば、望、翼、澪も書きたいけど……。

>夢ノ又夢先生
いや、全然ウチの葵はまだまだですよ!
っていうか、巴ちゃんは俺の永遠の目標到達地点なんで……
俺なんかワガママ言えた身分じゃないですが、
もっと巴ちゃんの話が読みたいんで、隠居なんて悲しいことを言わずに、またネタを思いついたら書いてください。

>すばる先生
文化祭は……バレンタインがダメだったときの保険にしてしまおうかと……。
いや、テストさえ無ければ……ネタは考えてるんですけど……。

591 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/02/03(土) 00:39:05 ID:A5hp5lyf
突然ですが、今日は節分なのです!節分といえば豆撒きに恵方巻き。ちなみに今年の恵方は北北西です。
私、朔<<さく>>は兄さんと『良い感じ』の節分を過ごす為に福豆と恵方巻きを買ってきました。
「兄さん、今日は何の日か知ってます?」
「朔の誕生日?」
「違います……」
考える風もなく答える兄さん。私の誕生日、この前祝ってくれたのにもう忘れちゃったんですか……。
「じゃあ俺の誕生日?」
またもや考える風もなく答える兄さん。実は私と話すの、嫌なんでしょうか?私、部屋に戻った方がいいでしょうか?
「それも違います。っていうか自分の誕生日覚えてないんですか?」
「はは、冗談だよ冗談。母さんの誕生日だよね?」
「違います!なんでさっきから誕生日なんですか!」
「なんか嬉しそうな顔してるから、誰かの誕生日なのかなぁって思ったんだけど……あぁ!父さんのか!」
これだ!といわんばかりに笑顔で答える兄さん。
今のはちょっと……ううん。結構頭にきました。どちらかというと私、いつも嬉しそうにしているタイプです。
「だから誕生日じゃないです!今日は2月3日!節分です!」
「あ〜。そっかそっか。そういえばそうだったね」

592 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/02/03(土) 00:39:59 ID:A5hp5lyf
これでやっと話が進められる……。私が、兄さんを誘う……。誘うって、なんか卑猥……って、何考えてますか!
あぅ……ちょっと緊張してきました。
「それで、ですね、豆……」
「でも、流石にこの年になると豆撒きとかしたいと思わないよねー」
「……」
うぅ……泣いてもいいでしょうか。私はこの年になっても豆撒きとかしたいんです。
「それで、節分がどうかしたの?」
たった今兄さんがしたくないと言った豆撒きをしようとしていました。鈍感な振りして、実はわざとやっているんじゃ……?考えたら、いくら兄さんでも今日の兄さんは鈍感過ぎる気がします。
「……それだけです」
「そう?」
落ち込んでいるのがバレたくないのに、どうしても声が沈んでしまいます……仕方ないじゃないですか。だって、兄さんと何かした事ってまだ余りないし……楽しみにしていたんですから。
「はい。私、部屋に戻りますね…」
とぼとぼとドアに向かう私。
「……もしかして、また何か気に触ること、言っちゃった?」
流石の兄さんも私の変化に気付いたのか、少し心配そうな声で聞いてくる。
でも、もう遅いです。今の私は不幸のど真ん中。豆撒きなんてしたら鬼と一緒に追い出されてしまいます。
「別に。何も言ってないです。バカ」
部屋を出た後、背中のほうで兄さんが何か言っていたけど、私は意識して聞かなかった。そして、兄さんも私の後を追いかけて来てはくれなかった。

593 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/02/03(土) 00:40:37 ID:A5hp5lyf
明かりを点けていない私の部屋は暗くて、去年の年末大掃除のおかげか、物寂しいくらい綺麗に片付いていて、まるで私の心をそのまま映し出したみたい。
「兄さんの、バカ……」
私だって、この年になってそこまで豆撒きをしたいとは思いません。でも、兄さんとはまだやった事がないから……。
「これ、どうしましょう……」
机の上には今日の為に用意した福豆と恵方巻き。今は何か食べたりする気分ではないけど、恵方巻きは無言で食べるものらしいし、今の私にはぴったりなような気がして、恵方巻きを食べる。
やっぱり、美味しくない……。一人は寂しくて、心が寒くて、口に入れた恵方巻きも冷たくて、お葬式で出たお寿司を思い出した。こんな食べ方して、本当に福が入ってくるんでしょうか。
兄さんなら『気持ちの持ちようなんじゃないかな?』なんて言うんでしょうが、今の気持ちじゃ福なんて入ってくる気がしないです。
「はあ…なんで……」こんなときでもにいさんの事考えてるんでしょう……。
兄さんとはまだ、一緒に暮らし始めて……兄さんが兄さんになって一年も経っていないのに、いつからこんなに私にとって大きな存在になったんでしょう。
そういえば、何でだったでしょう……私が、常に敬語を使うようになったのは。たしか……

――コン、コン――

ノックの音で今の考えを振り払う。この家の人には、落ち込んでいる姿を見せたくないから。なるべくいつも通りの声を心掛ける。
「はい?」
「俺だけど……入っていいかな?」
え?入って……?
目の前には恵方巻きと未開封のままの福豆。
「あ、えと……ちょ、ちょっと待ってください!」
「うん」

594 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/02/03(土) 00:41:09 ID:A5hp5lyf
こ、こんなの見られたら最悪です!兄さんなら、私が一人で節分してたと思うかもしれない……これじゃあ私、可哀想な人じゃないですか!
どうしましょう?隠せる所……隠せる所……あ!隠すといえばベッドの下で―――ゴツン―――
「いたぁっ!」
あ…頭がベッドにぃ……うぅ……
「だ、大丈夫?今凄い音がしたけど、どうしたの?」
「いえ!なんでもないですっ!どうぞ!」
「う、うん。お邪魔します。て、暗いね」
「え…?」
それは……私が、でしょうか?
「電気、点けないの?
「あ…ああ!忘れてました!」
そういえば電気を点けてませんでした。慌てて電気を点け―――ガンッ
「いたっ!く、なん、て……やっぱり痛い……うぅ……」
足……小指が、壁に……泣きたい……
「だ、大丈夫!?」
慌てて私の元に来る兄さん。こういう反応は早いのに、なんで鈍感なんでしょう?天は二物を……というやつでしょうか。
って、今はそんなことではなくて……急いで立ち上がり電気を点ける。
「だ、大丈夫です!そ、それで、どうしたですか?」
「大丈夫ならいいけど……。あれ?朔ちゃん、ちょっと……」
急に兄さんが顔を近付けてくる。優しい表情……私を心配してくている顔……兄さん……。やっぱり、私は……
「…く…ちゃん……朔ちゃん」
「はっ、はいっ!なんです!?」
見惚れてました……不覚です……。兄さんが急に顔を近付けてくるから……ん?兄さんの顔が近く……顔が、近……っっ!!
「おでこが少し赤くなってるけど大丈夫?って聞いたんだけど……どうしたの?ぼうっとして。それに何か顔も赤いみたいだけど……風邪?」
「い…いえ…その……なんでも……ない…です」
「ん〜、それならいいけど……ちょっとごめんね」
コツン。と兄さんのおでこが私のおでこにあたる。
「……へ……?に、兄さんっ!?」
た、確かに兄さんとなら……じゃなくてこういうのはやっぱり順序というか…いえ!血は繋がってなくても私たちは兄妹で……でも、兄さんなら嬉しいというか……でもやっぱり順序というかなんといいますか心の準備が……
「う〜ん……熱は無いみたいだけど……って、さっきより赤くなってるみたいだけど、本当に大丈夫?」
「……へ?」

595 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/02/03(土) 00:41:44 ID:A5hp5lyf
えーと……これは……いわゆる勘違い、というやつでしょうか……?
「ちょっと待ってて。今薬持って来るから。」
「ま、待ってください!大丈夫ですから!」
「え?でも……」
「大丈夫なんです!そ、そう!さっきまで動いてたから!それで顔が赤くなっているだけで!ほら!おでこもそのときに!」
…………。
とっさのこととはいえ、なんと下手な嘘でしょう……。こんな嘘を信じる人なんて……
「そう?気をつけなくちゃダメだよ」
いました。
いくらなんでもこんな嘘に騙されるのはどうかと……。ま、まあ、これで窮地は脱出出来たので一件落着。……いいんでしょうか、こんなので……。
「はい。気をつけます」
「とりあえず、いつまでもここで話してるのもなんだし座ろう?」
そういえば、ずっと電気のスイッチの近く―――部屋の入り口でした。なんか……回覧板を回してきた近所の奥様たちの立ち話みたい……
「そうですね」
私、まだそんな年じゃない……。



兄さんと二人、ベッドに腰を掛ける。
「ふう」
改めて窮地を脱出した事を認識して安堵の息を吐く。
隣には兄さん。この部屋にさっきまでの陰鬱な雰囲気はもうない。今は、別に節分に拘らなくても、兄さんとならいつでもなんだって出来る気がする。
兄さんの隣にいると、そんな気がしてくる。これが兄さんの持つ雰囲気で、兄さんの優しさ。
そう。兄さんは私の兄さんで、いつか別々になる日が来るかもしれないけど、それは私が思っている程先のことではないのかもしれないけど、少なくとも、少なくとも今は一緒にいられる。まだ、しばらくは同じ時間を過ごすことができる。
だからそんなに焦ることも無い。そう思える。
「ところで朔ちゃん」
「なんです?」
心と一緒に声も軽くなる。体も軽く感じる。今体重計に乗ったら、感動する程少ない数値が出るんじゃないでしょうか。……せっかくいい気分なんで乗りませんが。
「さっきまで電気消して何してたの?」
「恵方巻きを食べてました……て……あ」
バカ!私のバカ!口まで軽くなってどうするんですか!さっきまでの嘘は……私の努力は……一体……やっぱり、泣いてもいいでしょうか……。

596 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/02/03(土) 00:43:39 ID:A5hp5lyf
「恵方巻きって確か恵方、とかいう方角を向いて食べる節分の食べ物だよね?動きながら恵方巻きを食べてたの?相変わらず朔ちゃんは面白いね」
私変な人になってる!電気消した部屋で動きながら恵方巻き食べて、頭打つって……兄さん、おかしいと思わないんですか……。ううん。お願いです。思ってください……。「あははは」なんて笑ってる場合じゃないです!
「兄さん、泣いてもいいですか?うぅ……」
「え?あれ?またおかしなこと言っちゃった?」
おかしいと思わないことがおかしいです……それともあれですか?やっぱり私が嫌いですか?そんなに変な女の子に見えますか?
「ごめんね。さっき僕のせいで朔ちゃんが落ち込んじゃったみたいだったから、理由を考えてたんだけど分からなくて。とにかく謝って励まそうと思ってきたんだけど……」
「え?」
さっき追いかけて来てくれなかったのは、考えてたから……?兄さん、私を励ます為に来てくれたんだ……
「やっぱり僕はちょっとずれてるのかな。正直、今も朔ちゃんがなんで落ち込んでるのか分からなくて。嫌われちゃうようなこと、言っちゃったかな?」
「ふふ」
そんなことないです。兄さんがいるから私は元気でいられるんですよ。
「え?なんで笑うの?今のはおかしなこと言ってないよね?」
「いいえ。言いました。とってもおかしなこと」
だって、一人ぼっちになった私を、いつも笑顔で支えてくれた兄さんを、また一人じゃないって思えるようにしてくれた兄さんを、嫌いになれるはずないです。
嬉しくて、おかしくて、笑いがこぼれてしまう。
「そんなに笑わなくても……」
「すみません。すごくおかしかったから、つい。あ、そうだ。兄さんも食べます?恵方巻き」
「……話逸らしてるよね?」
「はい。逸らしてます♪いいじゃないですか。食べましょうよ。食べてくれないと無駄になっちゃいます」
「それじゃあ断れないじゃないか……」
私が笑っていて、兄さんも笑ってくれる。
「そうですね。あ、実は福豆もあるんですよ。やりませんか?兄さんには子供っぽいかもしれませんけど」
「……今、朔ちゃんが落ち込んだ理由、分かった気がする……」
兄さんの笑顔は苦笑いだけど
「ばれちゃいましたね。一緒に、やってくれますか?」
「勿論。朔ちゃんとなら楽しくなりそうだしね」

597 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/02/03(土) 00:44:11 ID:A5hp5lyf
やっぱり最後には、いつもの優しい笑顔で
「はい!じゃあまず恵方巻きからです。今年の恵方は北北西なんであっちです」
その笑顔につられて私も更に笑顔がこぼれる。
「これ、本当に無言で食べなきゃいけないの?」
「はい。あっち向いたまま黙々と食べちゃってください」
「うーん……なんか陰謀を感じる」
「喋っちゃダメですって!」
「はいはい。じゃあ、いただきます」
渋々ながら無言で食べ始める兄さん。その横顔を存分に眺めながら、ずっと嫌いだった神様に、ひとつだけお願いをする。
―――どうか この幸せだけは こぼれませんように―――

――――――――――

598 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/02/03(土) 00:46:59 ID:A5hp5lyf
完全にヒロイン主観のお話です。少しはっちゃけたかった過ぎたか。
朔のイメージはうたわれるもののサクヤです―――キャラを壊し過ぎた感がありますが。

少し補完します。
朔ちゃんは「恵方は北北西」と言ってますが今年の恵方は壬の方位(北からちょっと西)、北北西だと人によっては少しずれてしまいます。
更に、「無言で食べる」なんて決まりもありません。どこの誰が始めたかは知りませんが中々面白かったので使ってみました。

最後に
なにか>>589でおかしなこと書いてしまった気がします。なんというか、葵と巴の名前、逆に書いちゃt(ry
どちらも好きということに変わりないので、ご愛嬌ということで……

599 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/02/04(日) 00:46:55 ID:UrR696zC
GJ!

600 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/02/05(月) 08:59:50 ID:RrT7Qz6E
>すばる先生
いいっスね、この兄妹。凄く気に入りましたw


コレほどの物を見せられちゃうとなぁ……俺、もうやる気無いなぁ……。

601 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/02/07(水) 10:14:44 ID:N5Acc8I3
一応、朔は>>589で書いた新キャラとは別の単発ちゃんです

>>599
どうもです。
名無しの方からレスが貰えるか不安だったので一日以内という速さにも感謝です。

>>遊星さん
どうもです。
夢亜と違って余計な設定がないので私自身も楽しく書けました。

場数が違うんでバレンタインは遊星さんの独壇場ですよ。
やる気ないなんて言わずにガンガンやっちゃってくださいw

602 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/02/10(土) 13:46:24 ID:HaVnLOHF
バレンタイン目前にして、スランプに陥った俺、参上。
まぁ、常にスランプみたいな出来ですけど……。
思いっきり理系の勉強しながら書いてるのも問題だね……。

つーわけで、
>すばる先生
どんだけ場数踏んでもスランプには勝てません。
……後は任せましたw

603 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/02/13(火) 16:27:42 ID:DZ2XhXrJ
現在のこのスレの容量:456KB
現在のバレンタインネタの容量:33.9KB

1スレ500KBまででしたっけ?
もう少し時間が取れそうなのであと100行は書こうと思っているのですが……
500KBまでだとやばいですね。
他にうpした方がいいでしょうか?
それか投下しない……

>>遊星さん
急に任されても私に遊星さん程の萌えもバリエーションもないのを分かってやってくださいw
ここは新規さんの登場に期待の方向で。

604 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/02/13(火) 22:24:48 ID:GclwDg8c
500KBまでですから……ヤバいっスね。
バレンタインも控えてることだし、新スレ立てちゃいましょうか?
……多分、無理だけど。

605 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/02/14(水) 20:19:30 ID:PGaHQUse
容量ピンチですし、自分の分はこっちでやっちゃいました……よかったら……。
ttp://www.geocities.jp/you_say712/20070214.htm

606 :No.2 :2007/02/14(水) 23:13:36 ID:u/S1W6rO
立てましょうか?

607 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/02/14(水) 23:48:30 ID:szBDMGHV
遊星氏、お忙しい中お疲れ様でした。そしてリクエストに応えて頂いて感謝です!

608 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/02/15(木) 00:39:16 ID:pBHypjBS
日付変わってしまいましたが……

つ【ttp://mtsm-web.hp.infoseek.co.jp/st.valentine_yua.html】
容量が面白いことになってしまったので携帯の方居ましたら……自分で何とかするか言ってくれれば私が何とかします。

>>606
いつもログ保管乙です。

まだスレを続けるかどうかの判断は名無しさんと他の職人さんたちに任せようかなーと。

609 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/02/16(金) 23:36:27 ID:furcdJYM
そういや、俺のまとめページはケータイで見えるのかな……。一応、俺のでは見えたけど……。
まぁ……見えなくても、どうすればいいのか分かんないですが……どうせ俺なんか……。

>すばる先生
さすがですね。凄いですね。
しかし、紫乃ちゃん可愛いなぁ……。


職人がいなくてもスレがあれば、希望はある。
ならば、次スレはあった方が良いと思いますが、如何でしょう。
とはいえ……まだ少し早い気が……480Kぐらいで立てれば良いかなぁ。

610 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/02/19(月) 00:41:28 ID:jfiUipDu
新スレ立てないの?

611 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/02/20(火) 01:16:46 ID:gddVRyV/
遊星さん>
この前初期設定を掘り起こしたら漢字が『志乃』と書いてあったのでどうやら漢字を間違えていたのですが、喜んで頂けたのなら良かったですw

なるほど。確かにスレがあるということはそう考えられますね。愚問でした。

>>610
遊星さんも、バカみたいな容量を無駄に書く私も他鯖使ったのでまだ容量に空きがあり、
夢ノ又夢さんの投下で容量がなくなるまでまったりしようかと思うのですがどうでしょう?

612 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/02/20(火) 01:58:39 ID:qqis7cCt
今度の新スレは新装開店して
萌え系ジャンルならば妹SSじゃなくてもOKのスレにするのはどうでしょうか?
メイド、ナースなど、色んな萌えSSのごった混ぜも楽しいと思うんですが・・・。

やっぱり駄目ですかね・・・?
職人さん達の妹SS以外の萌えジャンルのSSも読みたいと思ったもので・・・。

613 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/02/20(火) 18:42:48 ID:zpzwEKJZ
新スレはもうちょい後か。

614 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/02/20(火) 22:48:54 ID:wcuLDv+A
>遊星さん

杏リクさせてもらった者です。

レスが遅れましたがGJです。

モジモジ妹良いですなあ。個人的にはもっと
モジモジしてる方が好きかもしれません。

でも一番好きなのは未来ちゃんだったりします。

615 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/02/28(水) 00:46:25 ID:qgFMEk/7
保守保守っと……。

>612さんの意見を受けて、ナース妹を書き始めてみたり……。
結局妹かよ……。

616 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/02/28(水) 14:52:53 ID:yp0xHj8Y
保守ー

617 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/03/01(木) 02:23:16 ID:tUX2nEZG
>>すばるさん

GJです!
しょっぱいのでもいいから俺にも手作りチョコをください!w

618 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/03/02(金) 01:44:54 ID:ZxPmidNp
>>612
私はそういう方向の判断は皆様にお任せです。
ただ、そうなるといよいよ板移動の覚悟をしないといけないかなと……既に板違いなスレになっているので今更ですがw

>>遊星さん
遅くなりましたがバレンタイン話GJです!
ついさっきゆっくり2回ずつ読ませていただきました。

>>616
……ツッこんだほうがいいですか?

>>617
まさか自分がこういう感想をもらえるとは思ってませんでした。
レスを見て思わずにやにやしちゃったじゃないですかw
どうもです。こういうのは本当に励みになります。

でも、雛祭り・ホワイトデーは投下できるか怪しいです。

619 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/03/02(金) 22:55:23 ID:bN3K4waD
……ホワイトデー忘れてた……。
ま、いいか……毎年苦労してるし、今年は休みで……。

620 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/03/05(月) 16:27:23 ID:bLwv/Yy3
保守

621 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/03/10(土) 16:00:58 ID:A21AI8Lw
hosyu

622 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/03/13(火) 17:09:18 ID:2gOVwSMb
保守


623 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/03/13(火) 23:41:44 ID:7W3VXuYu
ホワイトデー投下期待してます!

624 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/03/13(火) 23:51:28 ID:7W3VXuYu
容量が足りなそうでしたら
次スレ立て挑戦してみますけど…いかがでしょうか?

625 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/03/15(木) 10:55:46 ID:mINGew5F
すいません……
最近ちょっと立てこんでてホワイトデーネタは書けませんでしたorz

626 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/03/15(木) 17:42:13 ID:xITWCe/P
……で、自分は何でまた、三月十五日にホワイトデーネタを書き上げるかねぇ……。
ま、読み返してみたらスレ違い気味だから、貼りはしないけどさ。

627 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/03/15(木) 18:44:40 ID:UjDzdoo+
かまわん、全力で貼れ!




お願いします貼ってください

628 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/03/15(木) 21:00:21 ID:xITWCe/P
「……もう明日なのか……」
何気なく見たカレンダーにふと足を止める。
今日は三月十三日。そして、明日はホワイトデー。
俺は一つの決断をしなければならない。
今まで避けてきた決断をすべく、大きく息を吸った。


『ボク……ずっとお兄ちゃんのことが……好きでした……』
丁度一月前。
小さなチョコレートと一緒に、ある女の子に告白された。
夕焼けを背景に、一つ一つ確かめるように言葉を紡いでいくのが鮮明に記憶に残る。
『すぐに返事してくれなくてもいいから……あと一ヶ月……ホワイトデーのときに返事を聞かせてください』
まさに、驚きだった。
ずっと兄妹同然に過ごしてきた十年間。
留衣はいつから、俺と違う気持ちで過ごしてたんだろう。
分からない。
分からないから怖い。
留衣は本当に俺のことが……。
「お兄ちゃん!!」
グイっと制服の襟を掴まれる。
「あ……?」
「お兄ちゃんの家、ここでしょ?」
「……ホントだ……」
……間抜けだ。恥ずかしい……。

629 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/03/15(木) 21:01:05 ID:xITWCe/P
「もう……」
「またな、留衣」
いつものように、挨拶をしてアルミ製の門を開ける。
まだ答えが出てないならそういえばいいのに、そんな勇気も無い。
逃げるように、と形容してもいいかもしれない哀れな逃走。
「あ……お兄ちゃん……」
俺の背中に留衣の声が刺さる。
「どうした?」
ギクリとして振り返ると……。
「……なんでもない」
目を逸らして、静かに呟いた。
「そうか……じゃあな」
「うん……また……」
今度は止められなかった。
いや、止めてもらえなかった。
このまま俺は留衣から逃げ続けるのかな……。
……情けない男だ……。
───────────────────────
今日という一日は留まることを知らず、一歩一歩確実に俺たちから離れていく。
このまま明日まで逃げるのか。
そんなことまで考えるようになっていた。
「……わかんないよ……」
留衣のことも。
付き合うってことも。
自分の気持ちも。
そして、気付けば逃げ道ばかり探している自分に絶望する。
そんなとき、
ピンポーン
玄関のチャイムの音が静かだった家の中に響いた。

630 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/03/15(木) 21:01:41 ID:xITWCe/P
「はい?」
頭を掻きながら、玄関に向かいドアを開けると
「こんばんは……」
留衣だった。
「よぅ……まぁ、上がれよ」
「いい……」
俯いたまま答える留衣。
しばし、沈黙が流れる。
「ボク……」
意を決したのか、留衣が静かに話し始めた。
「謝りにきたんだ」
謝りに……?
「一ヶ月前のこと……」
「……」
「いつか離れ離れになっちゃうことは分かってた。その前に、ボクはお兄ちゃんの妹以上になりたかった……」
「……」
「だから、ボクはあの時、勇気出したつもりだったんだ……でも、お兄ちゃんを困らせちゃう悪い勇気だったみたい。えへへっ……」
苦しそうな笑い声が、耳にこびりついたみたいに離れない。
「ボクが言うのは図々しいと思うけど、あれは忘れて!!それで、よかったら明日からいつも通り!!って感じで……」
ウソばっかり……声が泣いてるじゃないか……。
「留衣……」
「それだけ!!あ、別に、同情引こうなんてつもりないから。じゃあね!!」
去って行く彼女。
同情じゃない……でも、今なら言えるはずだ……。
「留衣!!」
「……何、かな……そろそろ帰らないと……お母さんが……」
足を止めた留衣は、振り返らず、俯いたまま答える。

631 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/03/15(木) 21:02:18 ID:xITWCe/P
「俺は、留衣のこと好きじゃないと思う」
「……聞きたくないよ、そんなこと……」
「留衣のこと……前の告白したときからずっと意識してるんだ。きっと、今から留衣のこと好きになると思う」
「……」
「気に入らないなら構わないし、とっくに愛想尽かしてるならそれでもいいけどね」
……ホントは全然よかないけど。
「そんだけ。引き止めて悪かったな」
喋らない留衣。ドキドキしながら動きを待つ。
「バカ……」
「え……?」
「もっと……なんていうかロマンティックだと思ってたよ……」
「あー……それは……悪い……」
「いいのっ」
振り返る留衣。
その瞳には涙と笑顔を浮かべて。
「ボク、今すっごく嬉しいから!!」
俺に飛びついてくる留衣。
俺の胸に、猫のように頬を摺り寄せて、
「へへっ……お兄ちゃん、好きだよー」
「……」
「照れてる?」
「少し……」
「その様子だと、ラブラブになるのもすぐだねー」
「なっ……!?」
バレンタインから始まった二人の間の騒動は、一つの終わりを見せることとなった。
二人が上手く行く保障は無いが……なんとなく大丈夫な気がしているのは、俺だけじゃないと思う。


ちなみにその日の夜。
「やべ……何か……すげぇ留衣に会いたい……」
もうか……。早いなぁ……。
───────────────────────

632 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/03/15(木) 21:02:53 ID:xITWCe/P
命令に弱いので、勇気出して貼ってみる。
ゆとり教育世代が全力出せばこんなもんですよ。こりゃ痛い。
妹感は薄いですが、今回みたいな幸せそうな純愛カップルが作品の一つの理想だったりします。
もちろん理想は理想です。現実にはなりません。
そういえば、ホワイトデー感も薄いですね。まぁ、ゆとり教育世代の理系男子ですので。

俺も何時かはケータイ小説が書ける位の文章力を身につけ……やっぱいいや。

633 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/03/16(金) 02:20:13 ID:XiDAb/m0
>>すばるさん
そうですか…残念です…
次回の投下も楽しみに待ってますー

>>遊星さん
さすがです!
2人が付き合いはじめた記念日がホワイトデーになるって良いですね。グッジョブ!

634 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/03/16(金) 02:38:12 ID:8b3bX01O
>>632
GJ!!
まったくあんたって人は、予想は裏切りつつも期待は裏切らねぇな。















最高だ

635 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/03/16(金) 05:10:16 ID:Kmhait2n
神はまだこのスレを見捨ててはいなかった!

636 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/03/18(日) 21:09:51 ID:N4TkBxT+
hosyu


637 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/03/21(水) 19:32:04 ID:i1xfpe4Q
あげる

638 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/03/28(水) 04:27:19 ID:wGCGAwuW
次に投下する話は「今日こそ絶対に殺しちゃうんだから!覚悟してね、お兄ちゃん!」から始めようかなーと……
まだ何も考えてませんがw

>>633
ということで、次回は上記の通りです。
最近字を書いていなかったので書けるか怪しいですがw

>>遊星さん
乙です!
ホワイトデーネタも軽々とこなしてしまうとは。さすがです。
正直、私はホワイトデーネタ全然思いつかなかったですよw

639 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/03/28(水) 21:29:07 ID:kPJh0NNP
完全に保守

640 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/03/29(木) 01:05:20 ID:EX80B43G
「今日こそ絶対に殺しちゃううんだから!覚悟してね、お兄ちゃん!」
春の日差しが舞い込む一室。
突然の大声とともにバットが振り下ろされ、穏やかな朝が叩き壊される。
「お前は孟浩然様のありがたいお言葉を知らんのか!」
容赦なく振り降ろされたバットを何とか避けたものの、○○の眠気は見事に吹き飛ばされる。
さっきまで○○が沈んでいたベッドには今は見事にバットの先端が沈んでいる。
「それ誰?その人は何か凄い事した人なの?それとおはよう、お兄ちゃん」
爽やかな笑顔で振り返りながらバットを片手に持ち直す暁《あきら》。
バットとまだまだ発育途上の体ではいささか不釣合いだが、バットは至る所に凹みがありその誤った使用法を克明に記している。
「おはよう暁。孟浩然とはな……まず『春眠暁を覚えず』という言葉は知ってるか?」
「知ってるよぉ?春は心地よくてすぐに眠くなっちゃうねって事だよね?」
「孟浩然はそれを詠んだ人だ。俺がなにを言いたいかわかるな?」
そう言いつつも後退りし、武器になりそうなものがないか探す。が、先手を打たれたらしく、至る所に隠しておいたはずの武器になる物が中々見つからない。
「それはわかるよ。一体何年兄妹やってると思ってるの?心地良い陽気だからもっとゆっくり寝たいんでしょう?」
くすくすと笑いながら近づいてくる暁。
○○は武器を探すのを諦め、徒手空拳で対抗する決意をし構える。
「そこまで分かってくれるなら大人しく寝かせてくれると嬉しいんだが」
「もう、お兄ちゃんはだらしないんだから。仕方ないなぁ……私が永遠に、眠らせてあげるっ!!」
言うが早いか、一気に間合いを詰めバットを突き出す。
「はぁぁぁぁぁ!!」
「甘い!!」
暁の突きをぎりぎりでかわし、次の突きを、もしくは横薙ぎを繰り出す動作に入る前に暁を突き飛ばし組み伏せる。
バットが空しくカランカランと音を立てて転がる。
「暁の負け。残念だったな」
言いつつ暁を解放しベッドに戻る。
暁は「いたたたた……」と嘆きながら腰を上げ、バットを拾い部屋の隅に置きベッドに腰掛ける。
「やっぱ不意打ちで決められないと勝てないかな」
「決まらないみたいだけどな」
○○と暁の実力は伯仲していない。
元々暁の護身の為に○○が剣術を教えているのだから当然といえば当然だった。

641 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/03/29(木) 01:06:21 ID:EX80B43G
しかしそれが暁の負けず嫌いに火をつける事になった。
始めの頃は一矢報いてやろうと枕を投げつけたり足を引っ掛けようとしたりという可愛いものだった。
それがいつからか不意打ちになり本気に。丸めた新聞紙を持ち出しそれが竹刀、木刀と変わり、今ではバットなんて物騒な物を持ち出してくるまでになった(勿論、バットなんて物騒な物持ち出すのは両親がいない時だけだが)。
最初は驚き戸惑いもしたが、今では両親がいないときの習慣になってしまっている。慣れとは本当に恐ろしいものだ。
「うぅー。いつか絶対にギャフンと言わせてやるー!」
言いながら「うりゃー」と○○の上に飛び乗る。
「ぎゃふん」
「うぅー!こんなんじゃなくてちゃんとしたときに言わせるのぉー!!」
駄々っ子のように○○の上で暁がぶんぶんと手足を振り回すここだけ見れば和やかな朝の風景だが不意打ちをちゃんとと言っていいものなのか、突然背後からバットで殴られてギャフンと言えるかは非常に疑わしい。

―――――

「…ん…んん……」
朝の名残もなくなり随分と陽が高くなってきた頃、手足を振り回すのに疲れて寝ていた暁が目を覚ます。
「おはよう」
「ん、ふあ〜……。おはよう……お腹空いた」
「もう昼だからな。何か食べにでも行くか?」
「うぅ…まだ眠いよぉ……」
暁は春の陽気のせいか朝の一件のせいか、眠気覚めやらぬ様子で出かけたくないと主張する。
「じゃあそうする?何かかってくるか?」
「えとね、お兄ちゃんが作ったご飯が食べたい」

――――――――――
何か自分でもよく分からない事になってしまいました。黒歴史が始まる悪寒です。
次も新キャラ書こうかなーと思ってます。

642 :すばる@携帯 ◆9l4B6y7T.Q :2007/03/29(木) 01:21:54 ID:ykBVV7GF
あ。主人公に名前入れるの忘れてたああぁぁぁぁぁぁ……
○○は何か名前を入れて読んでください。
私も春の陽気にヤられたか……

643 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/03/30(金) 01:12:57 ID:VsQdAoOX
グッジョブ!
エスカレートして釘バット持ち出さないか不安で仕方ありません…w

新キャラも期待!ですが、
お昼からのその後も読みたいところです。

644 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/04/01(日) 22:55:54 ID:sydRzNp8
今からエイプリルフールが終わるまでにエイプリルフールネタが書けるか挑戦。

>>643
釘バットを出すと「ぴぴるぴるぴるぴぴるぴ〜」が頭から離れなくなってしまうので出しませんw
お昼以後ですか。うーん、では近いうちに書いてみます。

645 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/04/02(月) 00:23:56 ID:OV25W1dn
無理でした(´・ω・`)
いくらなんでも何にもないところから一時間じゃかけない……

646 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/04/02(月) 01:36:58 ID:OV25W1dn
うららかな春の午後。春の陽気に誘われて散歩がてら学校の前を通った時、ふと校庭の隅のベンチに目をやると桜の舞うベンチに見知った顔がいて、偶然目が合う。
「あ!鉱せんぱーい!」
春の陽気が降り注ぐ公園で春を凝縮したような陽気な声が僕を呼ぶ。大声で。
校庭では部活をしている生徒たちもいて、少なくない生徒たちの視線を浴びる。
その視線が恥ずかしく、顔を赤くしながらその娘の下へ走り寄る。
「私が見えてからって走ってきてくれたんですね!もう……先輩ったらぁ♥」
「そ、そうじゃないよ……こんなところで、大声で名前を呼ばないで……」
少しの距離を走っただけなのに息を切らせながら抗議の声を出す。
「またまた先輩ったらシャイなんだからぁ。あ、でもでも、ゆなはちゃんと分かってるから大丈夫ですよ♥」
「何を分かってるのか僕には分からないけど……何をしてるの?」
「ここにいれば先輩と会える気がして……えへへへ」
はにかんだ笑みを見せながら上目遣いにこちらを見てくるこの娘は二階堂ゆな。
僕の後輩でとても元気……というかちょっと元気過ぎる娘だ。
小柄で線が細く、髪も短めでその上この性格なのでたまに小学……ではなく中学生と間違われる。
危なっかしくて放っておけない可愛い後輩だ。
「むむむ……先輩何か失礼な事を考えている気がします」
「そ、そんな事ないよ」
そしてたまにとても鋭い事を言う。
「いいえ考えてました!」
「……ごめん」
苦笑しながらも一応謝っておく。
「……ひどい。先輩までゆなの事を『身長だけじゃなく胸までちっちゃいなんてこれじゃまるで小学生だぜ。はっ』なんて考えていたなんて……」
「そ、そこまでは考えてないよ……ただ小柄で可愛いなって」
「え……可愛いだなんてそんな……えへへ……そ、そんな事ないですよ……あは」
「それで、僕に何か用があったのかな?」
「あ、そうでした!今日は鉱先輩にどうしても聞きたいことがあるんです!」
自分の世界から帰ってきて勢い込んで僕の目を見つめてくる。
そんなにまっすぐ見つめられるとちょっと照れるんだけど……。
「うん。何かな?」
「あの、その、話すと長くなるんですけど……笑わないで聞いてくれますか?」

647 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/04/02(月) 01:38:04 ID:OV25W1dn
「うん?何か分からないけど……なるべく笑わないように努力するよ」
「努力じゃダメですよ!笑わないと誓ってください!」
「誓わないとダメなの?」
「はい!今からゆなが誓いの言葉を言うので続いてくださいね!いきますよ!いいですか?」
「う、うん」
「私、草薙鉱は病める時も健やかなる時も」
「意外と本格的だね……私、草薙鉱は病める時も健やかなる時も」
「二階堂ゆなと人生を共にする事をここに誓います」
「二階堂ゆなと人生を共にす……誓わないよ!話が違うじゃない!」
「あは♪バレました?」
「バレるよ!なんて事を言わせようとするの……」
「い、いやぁ〜…ちょっと、その、既成事実を……」
「嫌だよそんなの!」
「てへ」
ゆなは舌を出し上目遣いで僕を覗き込む。この顔を見るとつい何でも許してあげたくなってしまう。
「笑って誤魔化そうとしてもダメだよ」
そう言うと誤魔化し笑いが一転して落ち込み瞳を潤ませるゆな。
そんな顔を見てまた心拍数が跳ね上がる。
「鉱先輩は……そんなにゆなのこと嫌い、ですか……?」
「そ、そうじゃないけど……」
「鉱先輩は優しいからゆなに付き合ってくれてるだけで……迷惑でしたよね……」
ゆなの顔がどんどん俯き見えなくなってしまう。今にも零れ落ちそうな涙を堪えているんだろうか。
さっきまでの喧騒が嘘のように静まり返る。
部活をやっている生徒がいるのにそう思ってしまうのはきっと……。
とつぜんゆなちゃんが立ち上がり寂しそうな笑顔で僕を見る。
「本当に変な事言ってごめんなさいでした」
そう言って僕に背を向けて歩き出す。
「ちょっと待って!僕は、その、ゆなちゃんの事嫌いじゃないよ」
「いいんです。気を使ってくれなくても」
「そうじゃなくて、ゆなちゃんはいつも騒いでて、落ち着きのない娘で、放っておけないっていうか……とにかく、僕は好きでゆなちゃんと一緒にいるつもりだよ」

648 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/04/02(月) 01:39:02 ID:OV25W1dn
「……本当、ですか?」
本当も嘘も、寂しそうなその背中を僕は放っておくことはできない。
「本当だよ」
「もう、先輩ったらこんな所でいきなり告白なんて大胆なんだからぁ♥」
そう言って振り向いたゆなに寂しそうな雰囲気などなく、いつも通り元気が服を着て歩いているような、舞い散る桜の背景がとても似合う活発そうな笑顔だった。
「……え?あれ?」
つまり……その……さっきまでのは……?
「どうしたんですか先輩。ぼーっとしちゃって」
「えぇと……今僕は落ち込んで帰ろうとしてたゆなちゃんを引きとめようとして……?」
「ゆな、帰るなんて一回も言ってないですよ?ちょっと目が痒くて下向いてただけですけど、先輩にはゆなが落ち込んでるように見えちゃったみたいで。それにゆな、話が長くなるからちょっと飲み物を買いに行こうとしただけです」
途端にゆなの快活な笑顔がにやぁ〜と嫌らしい笑顔に変わる。
「つまり……?」
「鉱先輩はだぁーい好きなゆなの為に、ゆなの代わりにジュースを買ってきてくれるっていう事ですよね?」
「……あははは」
つまり。ゆなちゃんに一杯くわされた。と。
「僕の負けだね。飲み物、ゆなちゃんは何がいい?」
「鉱先輩にお任せです。でも、コーヒーはダメですよ?」
「はいはい。甘いのね。じゃあ、ちょっと行ってきます」
「いってらっしゃい。あ・な・た♥」
「もぉ……」

――――――

649 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/04/02(月) 02:03:10 ID:OV25W1dn
エイプリルフールに間に合わなかったので書き途中の(というか今急いで書いた)新キャラを投下。妹という単語はもうしばらくお待ちくださいませ。
途中で気付いたんですが遊星さんの双子の片割れとキャラの名前が被っちゃってるような……。

とりあえずハルヒの新刊が読み終わったら続き書きます。
次回の投下の終盤でようやっと妹ネタ(?)になりますです。

>>646-648 お兄ちゃんと呼ばれたい?(上)

650 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/04/02(月) 22:18:47 ID:pFuboBo1
さすがすばる先生。すげぇのが来たなぁ……。
モンスターをハントしてる場合じゃないぞ……荷物まとめて逃げ出さな……。

651 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/04/03(火) 08:28:52 ID:HF1TN4+t
>>すばる様
凄いっす、もうめちゃツボりました次もまってまつ


>>遊星様
MHP2ndっすか?www
狩の間にでも貼ってください
楽しみにまってます

652 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/04/03(火) 23:13:16 ID:K+N/h+qp
>>すばるさん
誓いの言葉で思わずにんまりしてしまいました!w
こういう展開大好きです!グッジョブ!


鉱くんの喋り口調、良いですねぇ!
何か鉱先輩にも萌えてしまいそうですよw

653 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/04/04(水) 18:31:14 ID:FyIsafSH
そろそろ新スレ立てても良い時期かな……。
多分、俺は立てられないけど。テンプレでも作るか……。

>>651さん
ご名答。分かるわな、普通。
新スレ立ったら、埋めネタとして615あたりで宣言した台本を……。

654 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/04/05(木) 01:52:22 ID:XXEQQTze
>>遊星さん どうもです。
今まで『兄妹』という形にこだわっていてたんですが>>612さんのような意見もあったんで。
私は職人さんが投下してくれるまでの繋ぎなので遊星さんに逃げられてしまうと困りますw

>>651 どうもです。
やっぱり積極的な娘っていいものなんでしょうか?
板違いになってしまいますが私はこっち系のキャラだとうな天のひよりが好きです。

>>652 どうもです。
朔の受けがよかったのでギャルゲ風味なものを書いてみたんですが気にって貰えたならなによりです。
やっぱり主人公がヘタレとか鈍感だと書きやすいですw

655 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/04/06(金) 05:37:44 ID:JSySkKhk
二階堂ゆな(CV:神田朱未)

656 :遊星よりテンプレ案を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/04/06(金) 22:57:43 ID:tRWOwhc5
テンプレ案1
「あ……。ま、待ってたわけじゃないのよ!これは……たまたまよ!!誰がバカアニキなんか……」
こ、ここは脳内の妹が囁いたセリフを暴露しちゃうスレに決まってるじゃない!!

【バカなアニキのための四箇条】
・変なのは無視!釣り針にも引っかからない!……ったく、ホントにアニキはバカなんだから。
・SS職人にはお礼を忘れない。これぐらい、言われなくても当然よねぇ?アニキ?
・メール欄に『sage』……べ、別に二人きりとかそういうのは関係ないんだから!!
・浮気は禁止。……私だって……アニキに浮気されたら傷つくわよ……う、嘘嘘!!今のはウソよ!!

テンプレ案2
「あ、お兄ちゃん!お帰りー……む、だからボクは女の子だってばー!!」
ここは脳内の妹ちゃんが囁いてくれるセリフとかシチュとかを暴露するスレなんだ。

【ボクとお兄ちゃんの約束】
・荒らし、釣りはスルー。え……?ぼ、ボク男女じゃないもん!!ね、お兄ちゃん!?
・SS職人にはお礼を忘れないこと。大事なのは、言葉じゃなくて気持ちなんだよ。
・メール欄に『sage』。ボク、もう忘れないよ!
・浮気なんかしたら、ボク……ボク……。


とりあえず考えたのを二つ。……ってか、別に新しくする必要は無いんだけどね。

657 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/04/08(日) 01:32:19 ID:0fhMLmk3
個人的にはテンプレは今のままの方がいいかも。

658 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/04/11(水) 01:32:05 ID:yvSHEe+L
あー……もしかして私の投下でスレ埋まるの待ちな状況だったり…?

こういうスレのテンプレは好みで意見が別れてしまうんで次スレ立てる方が今までのと今回遊星さんが考えてくれたものから選んで立てる・という感じがいいと思いますがどうでしょう?
スレ立てたご褒美みたいな気がして立てる気もあがりますし……主に私が。

>>655
ちょっ!そう書かれてしまうとパクッたのがバレt(ry
冗談は置いといて、実際ひよりを意識して書いてるのでその考えで問題ないです。

659 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/04/11(水) 03:05:57 ID:M8COIklz
希望CVを付けてくれると
脳内でその声優の声を当てて読めるので更に萌え度がアップ!?
(今でも勝手に声を当てて読んでいますけど)
ただ、今までに登場しているキャラにこれをやると
イメージが崩れてしまう可能性があるのでそこがネック…

通りすがりの方がこのスレをポチッと押して
>>1を見たときに今のテンプレの方が読みやすいと思ったんだけど
それは俺が自分の好みで勝手にそう思った可能性がありますね。
いや、そうに違いありません!謝らせてください。すいませんでした。

新スレ立たないと遊星さんのナース妹が読めないので誰か新スレを…

660 :No.2 :2007/04/11(水) 21:14:41 ID:KdKx/0X+
んー、ISP契約が3つあるので立てられるものと思いますが
テンプレはどうしましょう?

661 :No.2 :2007/04/11(水) 21:30:14 ID:kP8mbxv/
すばるさんのお言葉に従い、漏れの好みで選ばせて頂きました
今回は遊星さんのツンデレ風味ってことでw

次スレ
[第七弾]妹に言われたいセリフ
http://game12.2ch.net/test/read.cgi/gal/1176294393/

662 :No.2 :2007/04/11(水) 21:52:00 ID:kP8mbxv/
というわけで、こちらは梅ぬるぽってことで
んじゃ、恒例の名セリフ集です

 〜 [第一弾]より 〜

今夜はゆるして......
......お願い......

(虜ネタですねw)

663 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/04/11(水) 22:14:25 ID:5big1S5r
>>659
私は声優に疎いのでちょっと……
逆に声優(と主なキャラなど)を書いていただければそこからイメージに近付けたりっていうのは出来ると思いますが。

少し長くなってしまいますがテンプレの話。
私も少しそう思いましたがせっかく考えてくれているので。
それにそういう部分を修正すれば問題無く使えるわけですし、次からは名無しだから〜とかで気後れせずに指摘しちゃっていいと思いますよ?
少なくとも私は苦情、アドバイスなど随時受付中ですし。
私の言葉遣いが堅いせいで書き難いかもですがw
なんてちょっと偉そうな事を書いてみましたがどうでしょう?

>>No.2さん
いつも乙です〜。
ツンデレがお好きですか。
ではゆなの話が一段落したら久々にツンデレに挑戦してみますw

664 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/04/11(水) 22:28:07 ID:k2sdqbmW
>>659さん
自分も声優には疎いのでなんとも……。
基本的に、読む方の脳内補完に頼る他無い文章力なんで、そのついでに声もイメージしていただければ。
しかし、ギャルゲーしない。アニメ見ない……何故俺はこの板にいるんだ……。

>No.2様
新スレでも言いましたが、スレ立て乙です。
ツンデレ好き……参考にさせていただきますw


……すばる先生がお書きになるようなので、ナース妹は又の機会にでも。

665 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/04/11(水) 22:56:15 ID:je/aWRc+
>>664
>自分も声優には疎いのでなんとも……。
喋り方(言葉の癖、息継ぎ、発音の癖、訛りなど)、イントネーションやアクセントの取り方など、
そのキャラの「声」のイメージを文章化してみるのもいいかも。
そうすればそれに該当しそうな声優(と該当する他作品のキャラ)を探し出す人もいるんじゃないかな。

666 :No.2 :2007/04/12(木) 01:10:10 ID:dxCoEdw1
>>すばるさん >>今回は遊星さん
はい、ツンデレが幼少の頃より。。。w

お二方のSSはいつも楽しみに拝読させて頂いてます
萌えのインスピレーションが枯れてから久しくなります
漏れが初代スレで血縁ENDを書いたのは4年前か。。。

それから、遊星さん
遊星さんが管理しておられる保管庫のURLをテンプレに入れるのを失念しておりました
申し訳ありません
次回、スレを立てる方は下記サイトを追記してくださいませ

妹に言われたいセリフ、SSまとめの場所
http://www.geocities.jp/you_say712/

667 :No.2 :2007/04/12(木) 01:11:32 ID:dxCoEdw1
>>666
あ、文章が変でした

× 萌えのインスピレーションが枯れてから久しくなります
○ 漏れの方は、萌えのインスピレーションが枯れてから久しくなります

668 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/04/12(木) 22:28:21 ID:pOz/o2Tc
残り10KBちょっと。このまま雑談で埋めるか……。

>>665
基本的にイメージの押し付けはしたくないので……外見、髪型、声等は個々人のイメージに任せたいなと。
……偉そうなこと言ってすいません。そんな表現力もイメージもないだけです。薄っぺらなんで。

>>>666
まともに管理なんかしてない上に、ほぼ私物化してるんで、
載せなくても良いんですけど……w

669 :659 :2007/04/13(金) 23:55:04 ID:2Z9Mr//O
声を当てて読んでいるとは言っても、
いつもはキャラの印象などから沸いてくるイメージから
この娘はこんな声かなと…インスピレーションで作り出した声を当てている感じで
時に決まって声優さんの声を当ててる訳ではないです。
(僕も特に声優に詳しい方ではないので…むしろ疎い方かもw)
ご無理を言ってすいませんでした。

新スレが立って実際にツンデレテンプレの>>1を見てみると、
これはなかなか新鮮で良い感じですねぇ!
テンプレの件は心配するほどの事でもなかったみたいですね…
いらんこと言ってすいませんでした。

さて、
新スレでも思わずにやけてしまうキュートな
ぷりちーな萌えSSの投下を心待ちにしてますー!

670 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/04/14(土) 02:51:48 ID:u98sa4pd
こうしてスレを見返してみると私っていない時期のほうが長いw

〜第三段より〜
>お兄ちゃんどいて!そいつ殺せない!
第三段っていうかirisですね。中が電波じゃなければ最高だったのに……。

>>No.2さん どうもです〜。
No.2さんの復活も密かに楽しみにしていたんですが……
枯れたと思っていたけどまた湧き上がってきた、なんて事を温泉などではよく聞きますが。

>>遊星さん
書くといっても今回もちょっと長めで次の投下はいつになるやら……
という感じなんで是非ナース妹を投下しちゃってください!
実は結構楽しみにしていたんですからw

>>669
>ぷりちーな萌えSSの投下を心待ちにしてますー!
待たずとも自分で書くという奥の手があるじゃないですかw

671 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/04/14(土) 23:23:00 ID:O/tlwiN9
そういえば、自分は音楽のイメージで曲を作ることが多いですな。
カラオケとか行くと、知らない歌の詩も見えて良い感じです。
まぁ、あくまで書き出しなんで、書いてくうちに有耶無耶になりますが。
……ちなみに、ナース妹のイメージはスキマスイッチの『ガラナ』……。


>すばる先生
いやいやいや、期待するもんじゃないですよ!?
名前は決めてないし、半ばスレ違いだし、ねぇ……。
その前に、文化祭なんてネタも無かったことに……。

672 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/04/17(火) 22:19:35 ID:bkJ27DkZ
今日はとことんツいてない。
朝寝坊をするし、電車にも乗り遅れた。
頭は妙に働かないし、朝だというのに瞼が重い。
いや、瞼だけじゃない。なんだか全身が重い……。
なんだっていうんだ、今日は……。

「ん……」
不思議な匂いで目を覚ます。
慌てて目を開けると、視界には真っ白な天井。
「どこだ……ココ……」
慌てて体を起こす。
が、見慣れたものなど一切無く、ベッドと椅子くらいしかないきわめてシンプルな部屋に俺一人。
よく見ると、手にはチューブ上のものが刺さっていて、その先は謎の液体に繋がっている。
「んー……」
少し考える。
……もしかして、ここは病院?
「でも、何で病院にいるんだ……?」
独り言。
「改造手術……?」
恥ずかしい独り言。
しかし、俺の質問に答えてくれた人間が一人。
「あ、目が覚めたんだ」
……ナース姿の看護婦(ちょっと表現はおかしいが)が引き戸を開けて病室に入ってくる。
何だか妙に馴れ馴れしい看護婦だ、と少々眉を顰めていると、
「おはようございます。お義兄ちゃん」
入ってきた看護婦は、俺の前に立つと、見え見えの作り笑いを浮かべた。

673 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/04/17(火) 22:20:10 ID:bkJ27DkZ
「アンタは……」
「貴方の弟様の妻の妹です」
「それは分かってる。アンタ、看護婦だったのか」
「えぇ。何度も言ったはずですが、知りませんでした?」
「さぁね。聞いた気もするが、何にせよ興味が無い」
俺がそういうと、彼女はクスクスと笑い出す。
「何か?」
「クス……あまりにも噂どおりだから」
「期待に添えて光栄だよ。で、俺は何でこんなところに?」
義妹は少しだけムッとした表情を見せて、
「お仕事中に倒れたんでしょ」
「倒れた?」
「先生の話だと過労だって。働きすぎじゃないんですか?」
「別に……そんなことは無い」
「睡眠時間は?」
「は?」
「一日どれくらい寝てます?」
「……最近はちゃんと二時間は寝てる」
「二時間!?」
「寝すぎか?」
「寝なさ過ぎです!!一体どんな生活してるんですか!!」
どんな……
考えてみるが、仕事以外の生活なんかそんなに意識したことが無い。
「……噂どおり、いえ、噂以上ですね……」
わざとらしくため息をついてみせる義妹。
「ともかく、しばらくは病院で体を休めてください」
「……嘘だろ?」
「ウソなんか言いませんよ、お義兄さん」
「悪いがそれは聞けない。俺には大事な仕事がある」

674 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/04/17(火) 22:20:45 ID:bkJ27DkZ
起き上がろうとした俺の肩を義妹がしっかりと抑えて、
「命あっての物種。体より大事なものはありませんよ」
「ある」
「それが仕事だって言うんですか?」
「当然だ。俺はこの仕事に希望を持ってる」
「……呆れた。ホントにマッドサイエンティストなんですね」
マッドサイエンティスト……。
そこまで言われるとは心外だが。
「それは俺の噂?」
「ええ。研究職とは聞いてましたけど、おかしいですよ、お義兄さんは……」
頬を膨らませて、俯く義妹。
トクンと心臓が動く。
……何だ、この感情は……。
「私は、お義兄さんのことを心配してですね……!!」
急に幼い表情を浮かべ、俺に食って掛かる義妹。
……よく見ると、涙目になっているじゃないか。
「あー、もう分かったよ。連絡するから、俺の手帳とってくれ」
「え、あ、ありがとうございます、お義兄さん。はい、どうぞ」
手帳を手渡してくれる義妹。ニコニコと俺の顔を見たまま動かない。
「……?」
「どうかしました?」
「いつまでいる気だ?」
「もちろん、ちゃんとお休みを取るのを見届けるまでです」
「ガキじゃあるまいし……一人で出来るよ」
「そういう心配じゃないですよ」
「大丈夫だよ……今日はお休みにします」
「明日も明後日もですよ。最低三日は休んでください」
「……三日!?」
「その様子じゃ、有給余りまくってるでしょ?」
確かに……余りまくってる。

675 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/04/17(火) 22:21:16 ID:bkJ27DkZ
「そんなに休んだら脳が腐る」
「大丈夫。ここは病院ですよ?」
悪戯っぽく笑って見せる義妹。
「あ、お電話終わったら点滴変えますからね」
「わかりましたよ、ナースさん」
嫌味に聞こえるように呟いて、受話器を耳に当てた。
入院したこと無いのは一つの自慢だったのにな……。
───────────────────────

676 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/04/17(火) 22:22:53 ID:bkJ27DkZ
というわけで、とりあえず、このスレではこのくらいで。
まぁ、満を持してというワケではないですけど、無駄に勿体ぶったナース妹。
二人の名前はまだ決めてません。……誰か考えてくれないかな……。
あと、入院したこと無いんで医療行為云々はイメージです、難しく考えないように。

……そういえばバレンタイン以降、まともな兄妹ネタを書いてないな。

677 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/04/18(水) 00:57:31 ID:4CAJBsh4
乙ですGJです!
久しぶりに年齢層が高そうなのがきましたね。ちょっと忘れてましたが文化祭の話も楽しみにしてます。

名前、吉良倉音《きら くらね》なんてどうでしょう?
以前途中まで書いたけど飽きて没った話の主人公(根暗男)の名前なんですがw

私も続きを書くとします。今から一気に書くつもりなので多分今日中に投下します。

678 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/04/18(水) 21:10:11 ID:ZKZBCuCn
>すばる先生
>久しぶりに年齢層が高そうなのがきましたね。
現役高校生時代は、高校生キャラが難なく書けたんですけど……二年離れるとなかなか書けませんねw
かといって大学生キャラなら書けるかというと……。

>名前、吉良倉音《きら くらね》なんてどうでしょう
わざわざ良い名前を考えていただいて、ありがとうございます。
基本的に俺の書く兄は基本根暗、インテリですから、このキャラだけってのは勿体無いですね。
兄の名前に困ったら、この名前を付けちゃっても良いですか?w


最後になりましたが、すばる先生の作品も楽しみにしておりますゆえ、どうかお早めにw

679 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/04/18(水) 21:14:39 ID:4CAJBsh4
>>遊星さん
>現役高校生時代は、高校生キャラが難なく書けたんですけど……二年離れるとなかなか書けませんねw
意外に遊星さんとは年が近いみたいですねw私は学園ものに拘っている節があるので困りませんが。

名前の方はこんなのでよければどんどん使ってやってくださいw

>最後になりましたが、すばる先生の作品も楽しみにしておりますゆえ、どうかお早めにw
今から投下しにいくところだったんですがちょっと遅かったですかねw

680 :遊星より愛を込めて(20) ◆isG/JvRidQ :2007/04/18(水) 22:37:34 ID:ZKZBCuCn
>すばる先生
>意外に遊星さんとは年が近いみたいですねw
すばるさんはもっと年上の方かと……っていうのは、俺のこの歳で言うのはもう失礼か。
俺も歳をとったもんだ……w

名前はありがたく使わせていただきます。できれば、妹の方も……w

>今から投下しにいくところだったんですがちょっと遅かったですかねw
読んで参りました。
恥ずかしながら、読みながらニヤニヤしてしまいましたよw

681 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/04/18(水) 22:38:09 ID:awa1+VHP
>>670すばるさん
その奥の手は使っても文才がないので
全然上手く書けず読んでても全く萌えないんで…w


>>遊星さん
待ってました!すげぇGJ!
やっぱりナースものって良いですねぇ…
ひそかに女医さんの登場も期待しております!

名前まだ決まってないんですかー、
なら医者って事で思い浮かんだ名前で、
【ゆうじ】と【さとみ】に一票づつ!
どちらも医者ドラマの主役を演じた人の名前からです。

682 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/04/18(水) 23:30:53 ID:awa1+VHP
って名前は一足遅し!?これは失礼しやした!!

っとここで一つ質問なんですが、
読み専門の名無しはあんまり無駄に喋らない方がいいでしょうかね…?
スレを見返してみるとSS書かない名無しでよく喋るの僕だけっぽいですし…w
以後ちょっと気をつけますー。

683 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/04/19(木) 06:59:18 ID:a3ey+WoE
>>遊星さん
多分年は遊星さんが思っている以上に近いですよw
妹ですかー……ではまた昔の没ネタから気に入ってたキャラをば。
鈴宮鈴《すずみや れい》とかどうでしょう。

>>681-682
気が向いたらその内書いてみるのも面白いかもしれませんよ。
……そういう企画やったら面白そうですね。名無しさんが考えたキャラを俺が書くぜ!みたいにw

コテばかりのスレだと新参の方はレスし辛いと思いますし、レスはやはり多いに越した事はないと思いますよー。
スレの本質から外れ過ぎていなければ気にしないでいいと思います。
それに色々な話が出れば第5弾の最後(前スレ737-740)のようにそれをネタに小話書けますからw

684 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/04/19(木) 21:50:18 ID:63y2oGkG
夢ノ又夢先生、最近見ないなぁ……。

>>681さん
名前有り難うございます。
芸能人そのままってのも芸が無いので、ナース妹は『里見歓奈(さとみかんな)』と名付けさせていただきます。

>その奥の手は使っても文才がないので
気にしない気にしない。文才の無い人間がココに。
そもそも自分が書いた文ってのはどんなであっても変に思えますからね。書いてみると意外と……かもしれませんぜ。
ま、とりあえず書いてみろ、ですよ。


>すばる先生
>鈴宮鈴《すずみや れい》とかどうでしょう。
これもなかなか……。しかし、自分も慢性的な名前不足なんで、また新キャラの名前に使わせてください。

685 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/04/21(土) 01:20:11 ID:Oj2k0eu7
>>すばるさん
良いですねその企画!
職人さんに書いて頂けるに値するキャラがはたして僕に思いつくかどうか…w
嬉しい企画なので是非やってほしいですが
受け付けるのは【期間限定】とか時期は限定した方が良いかも知れませんねー
それでどんな登場の仕方になるのかは職人さん達におまかせって事にした方が、
……なんて色々妄想は膨らみますが、
他の名無しさんがもう少し集まらない事には何とも始まらないかな…

>スレの本質から外れ過ぎていなければ気にしないでいいと思います。
そう言って頂けてホッとしましたー
本質から外れた関係の無い話はしないよう気を付けます!


>>遊星さん
おおお!採用して頂けて嬉しいです!ありがとうございます!

>気にしない気にしない。文才の無い人間がココに。
遊星さんは文才ありまくりじゃないですかっ!w

どうにもこうにも自分はオリジナル創作が苦手でして…
(文章を書くもの全般に苦手っぽいですけど…w)
そんなのが萌えるキャラや設定を作り出すのは至難の技で…
職人さん達がいかに偉大かという事が身にしみて感じます。

今の僕はレベル1なので、まずはレベル2を目指します!
まあ焦らずのんびりと…

686 :No.2 :2007/04/21(土) 23:54:41 ID:AZ6KsLp6
>>遊星さん
GJです
遊星さんの保管庫へのリンクを過去ログ倉庫のトップページにはらせて頂きますた
ちなみに、漏れとは親子ほど年が離れてるっていう噂が。。。w

>>すばるさん
リアルの仕事と数十に上る他サイトの管理に追われ
枯れてしまった泉を掘り返す時間がなかなか取れずに数年が過ぎてしまいました
気長にマターリとお待ちくださいませ

>>685さん
期待してますよ!
漏れの分までカンシガシ書いてください


           o___________o
           /                 /
          /   このスレは無事に   /
          /  終了いたしました    /
         / ありがとうございました  /
         /                /
        /    しぃより        /
        / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/
   ∧_∧ /                /∧_∧
  (*゚−゚) /                / (゚ー゚*)
   |  つ                 ⊂  |
 〜|   |                    |  .|〜
   ∪∪                   ∪∪

次スレ
[第七弾]妹に言われたいセリフ
http://game12.2ch.net/test/read.cgi/gal/1176294393/

501KB
新着レスの表示

スレッドリストへ戻る 全部 前100 次100 最新50

0ch BBS 2004-10-30