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[第六弾]妹に言われたいセリフ

428 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/08/30(水) 22:04:36 ID:K0PbcXEr
「見事に雨だな、嫌になる位」

下校時間になって本格的に降り始めた雨、黒い雲がバケツをひっくり返した様な水を地面に叩きつける。
降水確率20%に裏切られた俺はただ黙って下駄箱の先の露帯びた世界を見詰めるしか出来ない。
それにしても朝の晴れ間が嘘みたいな状況、日頃の行いに何か問題点でもあっただろうか?
自分を省みていると唐突に視界に入り込む赤い傘、やはり割と良い日頃の行いのお陰で訪れる助け舟。
雨にも負けないサラサラの黒髪を靡かせ蒸し暑さとは無縁な涼やかな瞳で俺を覗き込む。

「はい、これはお兄ちゃんの傘」
「・・・おお、今日ばかりは巴に後光が差して見えるよ」
「傘一つで神様にはなれないよ、ふふっ、ホントに大袈裟なんだから」
「いやいや、結構な助け舟だよ本当に、お陰で雨の中をランニングせずに済んだ、感謝感激」

仰々しく手を合わせ拝む俺を横目で可笑しそうに眺めながら傘を差し出す巴。
二三、褒めちぎりの言葉が出そうになりながら受け取った傘を空に広げる、少しだけ気分の軽くなった足取りで。

「ところで、巴はいつまでそこで見てるんだ?早く帰ろう」
「うん、そうなんだけどボクの傘は忘れちゃって」
「・・・は?」
「だから、お兄ちゃんの分は覚えていたけれど自分の分は忘れてたんだよ」
「いつも鞄に折畳み傘を入れてただろ?」
「残念だけど今日に限って入ってない」
「それは残念だな」
「うん、残念無念」

言葉とは裏腹に少しも後悔の念の感じられない顔であっさり諦める巴、それどころか表情は心なし晴やかにさえ見える。
その爽やかさは重たい梅雨空とはあまりにも正反対の清々しさを感じさせる、流石は巴といった所だろうか。

429 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/08/30(水) 22:05:47 ID:K0PbcXEr
そうなると俺が取るべき行動は一つ。

「・・・となると道は一つだな」
「いいの?お兄ちゃん」
「ああ、これは巴が使いな」
「え、えっ!?」

差し出された傘を前にやたらうろたえる巴、いや、俺はそんなに予想外な事をしたんだろうか?

「なんでそんなに驚くよ?一つしか無いんだから巴が使えばいいだろ」
「で、でも、それじゃお兄ちゃんが・・・」
「心配するな、馬鹿は風邪はひかない」
「そういう事を言うと思ってたよ・・・そうじゃなくて、二人共濡れずに帰る方法があるじゃない」
「ん?そんな方法あるか?」
「一緒に帰ればいいんだよ、一つの傘で二人・・・ね?」
「・・・言われてみりゃそうだよな・・・なんで気付かなかったんだ俺は・・・」

少しの間に簡単に出てきた解決法と自分の思慮の至らなさを感じつつ一人分のスペースを空けて傘を差す。
遠慮がちにそこへ入り込む巴を見届け、二人して霧の立ち上る雨の道を歩き出す。
傘の上で乱雑なリズムを奏でる雨音、日に焼けた星をこれでもかと潤そうとするこの季節特有の長い雨。
人影も車の一つも見えない幻想的な道をただ黙々と歩き続けると不意に隣から漏れ出る以外な言葉。

「・・・今日はラッキーだな」
「どこがよ、どっちかと言うと不幸だろ、晴れが大雨になるわ傘は一つしか無いわ」
「傘は一つだけどボクたちは二人、こんな雨の中を独りで帰らなくていいんだよ、それってラッキーな事だよね」
「ポジティブだねぇ、巴さんは・・・ま、一理あるな」
「それに・・・こういうの、なんだか映画のワンシーンみたいで素敵かな・・・って」
「ああ、雨の中、鳴り響く銃声、崩れ落ちる俺とピストル片手の巴」
「・・・どうしてそうなるの?しかも、ボクが犯人にされてるし・・・」

430 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/08/30(水) 22:07:47 ID:K0PbcXEr
不意に頭を過ぎる情景は何故かサスペンス仕立てな俺、その辺の理由は多分、発想が貧困な故だろう。
ジト目の巴を横にバツが悪く頭を掻いてワザとらしく前に向き直る。

「もう少しロマンティックな話にしようよ、折角の雨なんだから」
「折角、それにロマンティック・・・こういう時に使う言葉か?」
「こういう時だから使ってるの、こんな風に二人で帰る事なんて滅多にないんだから」
「いや、だから俺とムード出そうとしてどうするよ?」
「・・・手ごわいなぁ、お兄ちゃんは・・・お兄ちゃんだから、なのに・・・ボクはお兄ちゃんだけなのに」
「おいおい、何一人でブツブツ言ってるんだ?なんか怒らせるような事を言ったか、俺?」
「別に何も、何も無さ過ぎて物足りない位だよ・・・」
「そう言われてもな、ロマンティックと言われても俺にはパッと浮かばないんだよな、例えば何かないかな」
「例えば・・・そう、真っ暗な海の底みたいな世界に灯りが二つ、お兄ちゃんとボクと・・・寄り添う灯」

俯き加減だった肩が上がり、打って変わって思索を巡らせる真剣な顔に変わる巴。
右手の人差し指を唇の前にちょこんと置いて眉をひそめた顔まま巴は語りだす。
まるでバラバラのフィルムとスライドを一つ一つ重ね合わせていく様に。

「空の向こうにはそれよりもっと明るくて華やかな星の光が何百、何万とあって・・・でも違うんだ」
「違うって何が?」
「どんなに明るい光でもそれはボク達にとって何万とある光の一つ、でも隣にあるのはたった一つの光」
「・・・へぇ、なんか映画ってより詩の一節みたいだな」
「同じ物なんてどこにも無い、代わりになる物なんてどこにも無い、かけがえのない大切な光なんだよ」
「巴は詩人だったのか・・・なんかそのまま本にでも出来そうだな」
「あまりからかわないでよ、もう・・・」
「いやいや、普通に関心してるって、確かに俺に夕飯作ってくれる光なんて他には無いからな」
「えっ・・・」

なんとも不思議そうな顔で雨を跳ねない為にゆっくりしていた歩みがピタリと止まる巴。
当然、同じ傘に入っているこちらも留まる事を余儀なくされる。
タイミングの掴めない微妙な空白、途切れた会話の向こうに聞こえる雨音を意味も無く数えてみたりなんかする。

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0ch BBS 2004-10-30