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[第六弾]妹に言われたいセリフ

1 :名無しくん、、、好きです。。。 :2005/10/12(水) 23:10:07 ID:WK59l+zx
「あ、お帰りなさい、兄さん。ご飯できてますよ」
ここは、脳内の妹さんが囁いてくれるセリフとかSSとかを暴露しちゃうスレなんです。

【兄さんと私の約束】
・荒らしさんや厨房は、無視してくださいね?
 そうでないと、兄さん自信が居づらいスレになってしまいますよ。
・出来れば、sage進行でお願いしますね。……その……恥ずかしいですから。
 メール欄に『sage』といれてくださいね。
・SS職人さんにはお礼を忘れずに。
 次も素敵なSSを読むことの出来るコツですよ。
・たとえリアル妹さんでも……浮気は、許しませんからねっ!?

【兄さんとの思い出】
妹に言われたいセリフ
http://game.2ch.net/gal/kako/1022/10225/1022257886.html
[第二弾]妹に言われたいセリフ
http://game4.2ch.net/test/read.cgi/gal/1028470988/
[第三弾]妹に言われたいセリフ
http://game9.2ch.net/test/read.cgi/gal/1056993709/
[第四弾]妹に言われたいセリフ
http://game9.2ch.net/test/read.cgi/gal/1106065356/
[第五弾]妹に言われたいセリフ
http://game9.2ch.net/test/read.cgi/gal/1110717816/

過去ログ倉庫
ttp://www.geocities.jp/mewmirror9/

では、このスレも楽しんでくださいね、兄さん?

2 :前スレ260 :2005/10/12(水) 23:11:38 ID:WK59l+zx
「やっぱりあれにしよう」
「ううん、絶対にこっち」
「こっちの方が面白いって」
「そっちよりこっちの方が良いよ、お兄ちゃん」

そっちこっちと押し問答を続けて三十分といった所だろうか。
今日は日曜日。
よく晴れた空、心地よい風、絶好の外出日和に映画鑑賞。
そこまでは良かったのだが肝心の映画で問題が起こった。
俺と巴、見たい映画がまるで違うのだ。
正直言って映画を見に行くと決まった時点で俺の中にはアクション映画しかなかった。
ところが巴の指差した先には恋愛映画。
・・・俺に寝てろとでも言いたいのか?

「何が悲しくて兄妹で恋愛モノなんだよ?」
「そんなの関係無い」
「あるだろ、虚しくならんのかお前は」
「見たい人と見たい映画を見るのが一番なの」
「おいおい、俺の見たい映画は無視なのか?」

3 :前スレ260 :2005/10/12(水) 23:12:31 ID:WK59l+zx
話は平行線を辿るばかりで一向に前へ進まない。
不毛な論争に終止符を打つべく俺が切り出す。
いや、どう考えても妥協だな。

「じゃ、それぞれ見たい映画を見るって事で」
「・・・」
「・・・冗談だよ、泣きそうな目で見るなってば」
「ボ、ボクはそんな顔してないよ!!」
「はいはい、解ったからさっさと入ろう」
「あっ、お兄ちゃん待ってよ!もうっ!!」

話を切り上げて早々と館内へ向かう俺の後を慌てて追いかけて来る巴。
お互いにそんなやりとりを楽しんでいる。
隣にある笑顔が何よりそれを証明していた。

4 :前スレ260 :2005/10/12(水) 23:13:24 ID:WK59l+zx
「ふわぁぁぁ・・・あ〜まだかなぁ」
「ほらっ、始まってもいないのに欠伸しないの」
「始まって欠伸したら怒るクセに」

なにか言いたそうに口を尖らせる横顔に肩をすくめて延々続く予告に目を向ける。
果たしてちゃんと起きていられるだろうか。

「あの・・・お兄ちゃん、ごめんね」
「ん?何が?」
「なんだかボクに無理矢理付き合わせて」
「気にするな、見たかったんだろ、この映画」

いつの間にか叱られた後の子供みたいになっていた巴に努めて明るく返事を返す。
基本的に俺の意見が最優先な巴がこだわる映画だ、余程見かったのだろう。

「それよりこの映画ってどんな内容?」
「涙無しでは語れない物語だって」
「だって、ってお前よく知らないのか?」
「友達が良い映画だったって言ってたから」
「へぇ、伝聞を真に受けるとは巴にしては珍しいな」
「うん、前からね・・・気にはなってたんだよ」

まぁ、恋愛映画である時点で睡魔に襲われる俺にはその辺の事はどうでもいい。
しかし、俺の中で妙に引っ掛かる一言。

涙無しでは語れない

湧き上がる嫌な予感を胸に上映のブザーが鳴り響いた。


5 :前スレ260 :2005/10/12(水) 23:14:35 ID:WK59l+zx
映画は以外にも良く出来ていた・・・と思う。
やはり俺は良作であっても駄作であっても眠い物は眠いという事実に欠伸を堪えるだけな訳だ。
最初から斜めに見ている為に冗長に聞こえる愛の台詞。
そんな俺にはお構いなしにスクリーンでは物語がクライマックスへと向かっていく。
互いの事を想いつつも避けられない運命に飲み込まれていく恋人達。
やがて引き裂かれる二人の絆。
映画は今や山場を向かえ音楽がそれを盛り上げる。
その時だった、嫌な予感が現実の物となってしまったのは。

「ん?おい引っ張るなよ、寝てないから」
「・・・」
「ホントだぞ、寝てない寝てない・・・眠いけど」
「・・・」
「あれ?どうした?」
「・・・」

ふと隣に目をやると俯いたまま俺の上着の裾を握る巴の姿があったのだ。
迂闊だった、近頃こんな事がなくて忘れていたがかなりの泣き虫を連れていたんだっけか。

6 :260 :2005/10/12(水) 23:15:31 ID:WK59l+zx
華奢な肩を震わせてギュッと握られた裾に力が篭る。
恐らく今出来る精一杯の自己表現。

「・・・我慢出来そうにないか?」
「・・・」

黙ったままコクリを頷く姿を見て思わずため息が漏れる。
そっと背中に手をやるとそれが合図だったかの様に俺の胸に顔を埋める巴。

「ごめん・・・ごめんね、お兄ちゃん・・・」

胸の中を冷たく濡らして小さく繰り返し呟く。
ここから先の映画の内容は覚えていない。
ただただ綺麗な黒髪と爽やかなシトラスの香りがシャボン玉の様に揺れていた

7 :前スレ260 :2005/10/12(水) 23:20:08 ID:WK59l+zx
「なぁ、いつまでこうしてりゃいいんだ?」
「・・・もう少し・・・ダメ?」
「いや、別にいいんだけど」

二時間後、やっぱり妹はまだ俺の胸に張り付いていた。
とりあえず公園のベンチまで来てみたものの知り合いにでもこんな姿を見られたら
エライ勘違いをされそうで気が気でない。

「・・・ありがとうお兄ちゃん・・・もう大丈夫」

ゆっくりと顔をあげて弱弱しく微笑んでみせる巴。
それにしてもこうして見ていると我が妹は本当に完璧なまでに整った顔立ちをしている。
紅く染まった頬とガラス細工の様に透き通った瞳、僅かに濡れた長い睫毛。
今まで余り気にせずにいたがこれはなんというか・・・

「・・・可愛いい」
「え?」
「ぜ、全然大丈夫に見えないと言ったんだ」
「でも、今・・・」
「いいからしばらくこうしてろ!」

8 :前スレ260 :2005/10/12(水) 23:22:32 ID:WK59l+zx
不覚にも洩れ出てしまった失言を誤魔化す様に腕の中へ無理やり引き戻す。

「泣き顔見られるの絶対に嫌なクセにな」
「お兄ちゃんにしか見られてない筈だよ」
「俺にならいいのか?」
「・・・お兄ちゃんだけは特別」
「やれやれ、甘えん坊は相変わらずみたいだな」
「・・・ずっと・・・」
「ん、なんだって?」
「ずっと・・・こうしていられるなら・・・それでもいい」

憎まれ口も気に留めず熱くなった頬を子猫の様に胸に擦り付けてくる。
幼い頃、泣きついてきては離れようとしなかったあの頃のように。
・・・ホントに相変わらずの甘えん坊だ。
ま、やはりというかなんというかそれに付き合う俺の方も人の事は言えないが。

「結局、映画は見てなかったな」
「もう一回見に行く?お兄ちゃん」
「・・・勘弁してくれ」
「残念、またお兄ちゃんに慰めてもらおうと思ったのに」
「は、半分本気だろ!?お前」
「ふふっ・・・どうかな?」

先程までの泣き顔はどこへやら、涼しげな瞳で軽く流し目を返す巴。
男なら誰しも心臓が早鐘を打ちそうな事を無意識にやっているのが巴の末恐ろしい所だ。

9 :前スレ260 :2005/10/12(水) 23:23:29 ID:WK59l+zx
「大体、誘ったお前が最後まで見てないんだからなぁ」
「それは・・・その、大丈夫だと思ってたんだけど」
「ほう、あれだけ泣きついて来たのにか?」
「・・・」
「今頃恥ずかしがっても遅いつっーの」

真っ赤に茹で上がった顔を冷ますようにポンと頭に手を置いてやる。
表情が大人になったり子供になったり、長い付き合いだが未だにこういうのが面白い。

「さて、飯でも食いに行くか」
「うん、迷惑掛けた分、ボクがおごってあげるね」
「言ったな、さ〜て、何食おうかな?寿司でも食うかね」
「・・・なんでもおごるなんて言ってないからねっ!!」
「いたたっ!?耳を引っ張るな!!」
「じゃあこういうのはどうかな?ふ〜っ」
「うわはははっ!!息吹きかけるのもナシ!!」

赤や黄に色付き始めた木々のトンネルを二人してはしゃぎながら歩く。
よく晴れた空、心地よい風、絶好の外出日和に妹と映画鑑賞。
こういう休日も・・・悪くはない。

10 :前スレ260 :2005/10/12(水) 23:30:34 ID:WK59l+zx
とりあえずスレ立て、ついでにSS。
一度に全編投下したのは初めてなので推敲が足りないかもです。


11 :名無しくん、、、好きです。。。 :2005/10/13(木) 00:49:05 ID:gCLwzQIU
乙そしてグッジョブ。この兄とのシンクロ率が84%を記録した
どうでもいいが俺の中では巴ちゃんの趣味は写生という設定



12 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/10/15(土) 08:42:27 ID:xHprxFVT
>260様
GJッス!!
いや、ホント、毎回素晴らしいッスね!!


新スレだし、ボツにした台本でも貼ろうかな……。

13 :前スレ260 :2005/10/15(土) 22:45:07 ID:onXSTJAg
>>11さん
読んでくれて感謝。
100%を目指して頑張る次第です。
巴の趣味が写生というのはいいですね。
自分の中に無かった発想だったのでかなり
参考になりました。
>>遊星さん
今回のSSはかなりベタな展開ではありました
が楽しんで書けた話でした。
新スレでの遊星さんの活躍も期待してますよ。

14 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2005/10/16(日) 16:40:31 ID:EdtwdGwB
>260さん
スレ立て&投下乙です!
素晴らしいでし・・・GJ!!

>遊星さん
ホントお久しぶりです!
楽しみにして貰えるのは嬉しいですが、期待に応えられるだけの力が・・・('A`)
遊星さんの作品は相変わらず『萌え』ますね!

とりあえず前スレ埋め代わりに少し短編(?)を投下してみました。
即興&リアルタイムで書きながらの投下だったので荒いしヘタレに磨きが掛ってますが・・・言い訳です まる


15 :前スレ727の続き :2005/10/18(火) 20:37:01 ID:42b21Bpr
きょとんとしていた顔が落ち着きを取り戻して涼しげな顔に代わる。

「一目見た程度だけどあれは結構モテるんで有名な先輩だったろ?」
「そう?」
「まぁた素っ気無い事を・・・今回ばかりは少し位いいかも、とか思わなかったか?」

軽く冷やかす様に意地の悪い笑顔で尋ねる俺をよそに一切表情を変えない巴。
その色の無さはテーブルに置かれた冷水とちょうど同じ位だ。

「全然、興味無いよ」
「あ・・・そう」

眉一つ動かさず無情に言い放たれる言葉。
先程の先輩に少しだけ同情しつつとりあえず相槌だけ打っておく。
相変わらず巴は他所様、特に男に関しては厳しいな。
それでも尚、告白されるだけの魅力が巴には・・・まぁ実際ある。
兄の俺が言うのもなんだがそんじょそこらにはいない程に綺麗だしスタイルも抜群、
同級生の女の子達と歩く様は大袈裟に言えば従者を連れ立った王侯貴族。
なにげに上級生の中にも巴をお姉さま扱いする人がいる位だ。
贔屓目を無しにしても端整な顔立ちと相俟って容姿に非の打ち所は無し。
俺が友人や知人に同じ血が流れているとはとても思えないと言われる理由がここにある。
まぁ、同じ血は流れていないので仕方ないといえば仕方ないんだが。
・・・人類皆平等なんて真っ赤な嘘だよな、神様?

天井を見上げて一人、語りかける俺。

16 :前スレ260 :2005/10/18(火) 20:41:04 ID:42b21Bpr
前スレのツンデレの流れを切らない為、こちらに投下します。


17 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/10/18(火) 21:53:38 ID:BfSq/TJt
>>15-16
やっぱ先生はすげぇなぁ……。
巴ちゃん、ホント可愛いしねぇ。

つーか、俺があんなツンデレみたいなものなんか書いたせいで、
先生に余計に気を使わせちゃったみたいで……スイマセン。

18 :前スレ260 :2005/10/19(水) 20:31:36 ID:qs1+uese
「お兄ちゃん・・・遠い目してるよ」
「ん?ああ、ちょっと考え事をな」
「・・・心配事?」
「う〜ん、心配事・・・かなぁ」

ぼんやりとした灯りを見つめ続けてチカチカする目をこすりつつ答える。
心配事というより単に軽い嘆きなんだが。

「・・・あの・・お兄ちゃんはどうなの?」
「?・・・何だそれは?」
「だから・・・その・・・お兄ちゃんには好きな人とか・・・いないの?」
「いるよ」
「えっ!?」

尻尾を踏まれた三毛猫もかくやといった様相で驚きを隠せない巴。
ここまで驚いてくれると俺としてもありがたい気がしてくる。

「そんな・・・だ、誰!?」
「巴」

妙な具合な僅かな間の沈黙が途切れ途切れの巴の思考を繋ぐ。
この間、約五秒。
赤い顔して拗ねる巴を前に堪えきれずついつい笑いが零れてしまう。

「もう・・・その内、本気にするからね」
「あははっ、どうぞご自由に、てか巴は俺が好きでないと?兄ちゃん悲しいなぁ」
「・・・」
「・・・ん?」

19 :前スレ260 :2005/10/19(水) 20:45:08 ID:qs1+uese
>>遊星さん
いえいえ、とんでもない。
素晴らしいツンデレだったのでその後に
投下するのが恐れ多かったのですよ。
それにしてもツンデレまで書けるとは遊
星さんの引出しの多いこと。
羨ましい限りです。


20 :名無しくん、、、好きです。。。 :2005/10/23(日) 06:51:48 ID:ORt6Jj+E
 そう、アイツの唯一の欠点は足が遅い事だ。
 俺の妹のくせに、俺より何でも出来た。
 勉強とか。
 俺が七十点取れば、アイツは必ず満点を取った。
 スポーツとか。
 体力こそ無いが、アイツは大体のコツを直ぐ掴んで、上手く技術を身に付けた。
 人付き合いとか。
 俺の親友は一桁を超えないが、アイツの周りに友達が居なかった事は無かった。
 まぁ是については男女の違いって奴があるのかも知れない。
 後は―――まぁ、兎に角。
 全部が全部、俺を上回って居たアイツの欠点。
 それが、足の遅さだった。

21 :名無しくん、、、好きです。。。 :2005/10/23(日) 06:52:37 ID:ORt6Jj+E
「おにいちゃ〜んっ・・ま、待ってよぉ・・・・」
「・・遅ぇぞ、紗枝」
 電信柱一間隔分後ろにアイツ。
 先刻迄隣を歩いて居たと思ったら是だ。
「お前、前世亀だろ」
「ひ、ひどっ。 私亀さんじゃないよぉっ」
「じゃあ何だってんだ。 お前、その足の遅さは異常だぞ。 何で俺が百メートル歩く間に二十メートルしか歩けないんだ」
「そ、それは言い過ぎだよぉっ」
「そんな足じゃヒマラヤは越えられんぞ」
「越える気なんか無いもん」
「ヒマラヤを越える気が無いだと? 兄ちゃんはそんな夢の無い子に紗枝を育てた覚えは無いぞ」
「あ、ご、御免なさい・・」
「・・・・其処は育てられた覚えも無い、って返す所だ」
「あ、そ、そっか。 流石お兄ちゃんだ〜」
「・・嫌味抜きに言えるお前は凄いと思う」
 色んな意味で。
「お兄ちゃん」
「あん?」
「待っててくれて有り難う」
 俺の隣迄追い付いた紗枝が、俺を見上げながら言う。
「・・もっと速く歩いてくれれば、俺が待つ必要も無いんだがな」
「あう、それは言わない約束だよぉ」
 言いながら、また歩き出す。
 今度は、先刻よりゆっくりと。
「ふふっ・・」
「・・何だよ」
「お兄ちゃん、優しいから大好きっ」
 嗚呼そうだ、欠点もう一つ。
 俺なんかを、慕ってる。

22 :名無しくん、、、好きです。。。 :2005/10/23(日) 06:53:31 ID:ORt6Jj+E
 もう何年前だろう。
 今でも憶えて居る。
 あの日はそう、冬の晴れた日だった。
 積もった雪に、反射した陽光が眩しかった。
 冬休みも終わりに差し掛かって・・それで紗枝を、折角だからどっかに行こう、って誘ったんだ。
 何時も一緒だから、冬休み中も特別何かした訳じゃなかったから・・。
 そんな理由を付けて・・本当は、もっと大切な事を伝えたくて・・・・。
 俺の特別を、アイツにやろうと思ったんだ。

23 :名無しくん、、、好きです。。。 :2005/10/23(日) 06:54:28 ID:ORt6Jj+E
「・・冬場は一層厳しいものがあるな」
 振り向くと、二トントラック二台分程後方に紗枝。
「お、おにいちゃ・・」
「・・・・転ぶなよ」
 危なっかしい足取りが追い付く迄待ってやる。
「・・・・間に合うかな」
 右手の腕時計は、差し迫った時間の程を無情に告げて居た。
「ご、御免ね・・・・」
 少々息を切らせて、謝って来る。
「いや、それは良いけど・・風邪とか引いて無いよな?」
「へ? な、何でかな?」
「いや、何か結構顔赤いから」
「あ、嗚呼、だってほら、その、ちょっと疲れちゃったから」
「疲れたか? なら少し休んで行くか」
「あ、駄目だよ、間に合わなく成っちゃうっ」
「いや、だってお前・・」
「大丈夫大丈夫っ、本当はそんなに疲れて無いって言うか、何て言うかっ」
「・・は? 疲れてるんだろ、お前。 息も切れてたし」
「そ、そんな事無いってっ。 は、早く行かないと間に合わなく成っちゃうんでしょっ」
「いや、でもなぁ・・」
 俺は正直、迷って居たんだと思う。
 今更伝えるには、少し・・所じゃなく、照れ臭いものがあった。
 だから、今日じゃなくても・・って思いがあった。
 でも・・。
「・・嬉しかったの」
「ん?」
「お兄ちゃんと一緒に出掛けるなんて、凄くすっごく久し振りだったから。
 それもお兄ちゃんから誘ってくれるなんて・・小学校二年生の時、公園に遊びに行って以来だったから」
「・・良く憶えてんな」
「憶えてるよ・・だって、お兄ちゃんの事だもん」

24 :名無しくん、、、好きです。。。 :2005/10/23(日) 06:55:31 ID:ORt6Jj+E
「あん? 如何いう意味だよ」
「・・その儘、だよ、お兄ちゃん。 お兄ちゃんの事なら、何でも知ってるもん」
「何でもって・・そりゃ無いだろ」
「何でもだもーん」
「お前は何でも知ってるお星様か」
「お兄ちゃんの事ならね?」
「ほう、言ったな。 例えば?」
「えろ本は現在三冊所持っ」
 ずびしぃっ、と効果音付きで指を突き付けて来る。
「・・往来で何を言ってるんだ」
「図星でしょ〜? ふふ、お兄ちゃんも中々良い趣味ですなぁ?」
「・・行き成りオヤジに成るな。 つか・・・・読んだのか」
「ええ勿論。 妹として兄の趣味位把握して置きませんと」
「んな妹要らん・・」
「ふふ・・お兄ちゃん」
「・・あんだよ。 未だ何かあんのか」
「うん。 何でも知ってるって言ったでしょ」
「・・勘弁しろ・・・・」

25 :名無しくん、、、好きです。。。 :2005/10/23(日) 07:10:09 ID:ORt6Jj+E
「ふふ・・お兄ちゃんの、一番の秘密、知ってるもん」
「一番?」
「・・・・私の秘密でも、あるんだけど・・」
 ゆっくりと・・視線が絡まる。
 見上げる瞳は、兄を、見るそれでは無く・・そう、想い人を見る――。
「ずっと一緒だから・・ずっと一緒だけど・・」
「・・・・」
「そういう、事・・気付いて、たよね?」
「・・・・・・ん」
「・・・・答え、今日、聞かせてくれるんだよね?」
「・・ん」
「ふふ、それじゃ、急がないと。 折角用意してくれたんでしょ、その為のシチュエーション」
「ん、まぁ、な」
 何だよ、全部お見通しかよ。
 適わねぇな・・コイツには。
「お兄ちゃん、ほら早くっ」
 何時の間にか俺の前方に立つ、紗枝。
「・・このやろ、紗枝のくせに俺の前に立つとは良い度胸じゃねーかっ」
「ふふっ、早く早くっ。 日が暮れちゃうよっ」
 公園迄の駆けっこは、小学二年以来だった。

26 :名無しくん、、、好きです。。。 :2005/10/23(日) 07:11:53 ID:ORt6Jj+E
「ふ・・俺が本気を出せばこんなもんだぜ」
 照れ隠しに本気を出してしまった。
 結構全力で。
 ・・日没迄もう少し。
 如何にか間に合った様だ。
「・・お、おにい・・・・」
 遥か後方から微かに聞こえる声。
 あー・・・・居た居た。
 高層ビルを横にした位の距離に、小さな影がぴょこぴょこ跳ねて居た。
「・・無理すんなよー」
 公園を見遣る。
 雪が積もって居たが、近所の餓鬼共が冬でも遊んで居るらしく、歩くのには困らない程度だ。
 懐かしい公園だ。
 俺と紗枝が遊んだ公園。
 唯、俺と紗枝がこの公園に、この時間に居る事は無かった。
 律儀に母親の言う事を聞いて居た俺は、空が赤味を帯びる頃にはもう紗枝を連れて家に居た。
 日暮れ迄此処に二人で居るのは、初めてだ。

27 :名無しくん、、、好きです。。。 :2005/10/23(日) 07:12:53 ID:ORt6Jj+E
「―――きゃっ!」
 聞き慣れた声の、聞き慣れない短い悲鳴に、俺は思考から引き戻された。
「・・紗枝?!」
 振り向くと、道路の真ん中で尻餅をついた紗枝。
 何だ・・転んだのか。
「おい、大丈夫か?」
 歩いて近寄ろうとする。
「うん、平気・・えへへ、転んじゃった」
 恥ずかしそうに笑いながら立ち上がる。

 ――――思い出が綺麗なのは此処迄だ。
 あの瞬間。
 あの音。
 鮮明に刻み込まれて居る。
 先刻迄紗枝が居た場所には、軽自動車。
 紗枝が吹き飛ぶ。
 数メートル。
 道路の上に、吹き飛ぶ。
 事態の把握には数十秒掛かった。
 或いは、もっと。
 ・・紗枝が、跳ねられた。
 雪に染みこむ紅は、夕日に染まる中でもはっきりと見えた。

28 :名無しくん、、、好きです。。。 :2005/10/23(日) 07:13:41 ID:ORt6Jj+E
 それから・・それから数日は、余り良く憶えて居ない。
 それ程体の強い方じゃなかった紗枝の手術は、長引いたらしい。
 スピードの出し過ぎのスリップ事故だとか、そんな話がされて居た気がする。
 でも、俺は俺が悪いとしか思えなかった。
 俺の所為じゃないか・・俺が紗枝を置いて行ったから、紗枝は転んだんだ。
 紗枝の足が遅い事なんて、俺が一番知ってるじゃないか。
 紗枝の足で走れば、直ぐに転ぶなんて想像に難く無いじゃないか。
 俺が一緒に歩いて居れば、紗枝は転ばなかったかも知れないじゃないか。
 俺があの日を選んだから、事故に遭ったんじゃないか。
 俺があの日、答えを出そうとしたのが悪いんじゃないか。
 俺が、紗枝を・・・・俺なんかが、紗枝を・・。

 ―――結果から言えば、紗枝の命に別状は無かった。
 けれど・・。

29 :名無しくん、、、好きです。。。 :2005/10/23(日) 07:14:45 ID:ORt6Jj+E
 今日は退院の日だ。
 病院の人達からも見送られ、涙脆い紗枝は案の定泣いて居た。
 俺と紗枝は、家迄の道をゆっくり、ゆっくりと歩いて居た。
「・・紗枝」
「んー? 何、お兄ちゃん」
「退院おめでとう」
「何、今頃ー」
 くすくすと笑う紗枝。
「いや、何か言いそびれてたから。 ・・おめでとう」
「うん・・・・ふふ、何時の間にか私もおばさんだ」
「何言ってやがる、二十にも行かないくせに」
「お兄ちゃんは行ったんだよね?」
「嗚呼、立派に社会人だ。 敬え」
「ははーっ、私が通信教育とは言え、大学に在籍して居られるのは兄上様のお陰で御座いますーっ」
「明日からは通えるな」
「ちょっと不便だけどねー」
「まぁ俺の金で買ったんだ。 文句言うな」
「言わないよー。 絶対、何があっても」
「・・文句位言われないと困るんだが」
「如何して? 私の為に、働いて買ってくれたんでしょ? 確か借りれるのに」
「注文して作らないと、体にぴったり合わないんだ。 オーダーメイドって奴」
「嗚呼、何か妙に体に合って気持ち悪いと思ったよ」
「・・気持ち悪いってお前。 俺の苦労が吹き飛ぶ台詞だな」
「いやだってさぁ。 うん、でも、良く馴染むよ」

30 :名無しくん、、、好きです。。。 :2005/10/23(日) 07:23:37 ID:ORt6Jj+E
「・・大学迄は俺が送るからな」
「え、毎朝?」
「そう、毎朝。 朝じゃなくても」
「そ、それは迷惑掛けちゃうよ」
「良いんだ。 俺がやりたいんだから」
「・・・・そう?」
「そう。 今迄ずっと、一緒に歩く事も出来なかったからな。 暫くは・・一緒に歩こうじゃないか」
「・・ん。 もう、置いて行かれる事も無いしね」
「・・・・嗚呼」
 コイツの唯一の欠点は、足が遅い事だった。
 何時も俺の後ろに居て、それで俺は何時もコイツが追い付くのを待って居たんだ。
 でも、それはもう無い。
 コイツが俺の後ろを歩く事は、もう、無い。
「お兄ちゃん・・疲れない?」
「いや? 何で」
「や、だって、結構重いんじゃないかなーって」
「んな事ぁ無いぞ」
「そうかなぁ。 私はとっても軽いけどさ、車椅子って結構重そうじゃん」
「最近のは軽いんだ。 お前よりもな」
「あんだとーっ。 言ったなこのーっ」
 ―――紗枝の足が遅いのは、ある種の病気だったらしい。
 生まれ付き、足が弱いのだ。
 だがそれは日常の生活に現れる程では無かった。
 足が遅い、程度にしか。
 交通事故と言う、大きな負荷が、紗枝の足を壊した。
 紗枝は二度と、立って歩く事が出来なく成った。
 それは、俺の罪だ。
 抱いてはいけない想いへの、罪なんだ。
 だから俺は、兄として・・贖罪の道を、選ぶんだ―――。

31 :名無しくん、、、好きです。。。 :2005/10/23(日) 07:27:13 ID:ORt6Jj+E
「お兄ちゃん」
「ん?」
「私は重いけど、車椅子が軽いから平気なんだよね?」
「嗚呼、お前は重いが車椅子が軽いから平気だ」
「それじゃ、寄り道頼もうかな」
「父さんと母さんが待ってるぞ」
「直ぐ済みまーす」
「・・やれやれ、仕様が無ぇなぁ」
「ふふ、そんな甘いお兄ちゃんが大好き」
「はいはい、俺も大好きですよー、っと。 で、何処行くんだ」
「公園」
「公園?」
「そう。 あの日の公園に行きたい」
「・・・・・・」
「駄目?」
「・・・・いや。 分かった」

32 :名無しくん、、、好きです。。。 :2005/10/23(日) 07:28:31 ID:ORt6Jj+E
 薄っすらと赤味を帯びた空。
 公園への道が長く感じた。
 あの時と同じ時間。
 今度こそ、二人で公園に居た。
「お兄ちゃん」
「何だ」
「・・あの時の答え」
「・・・・」
「聞いて無いよ」
「・・・・・・・・」
 俺の、答え。
 あの日の、答え。
 でも・・・・それは、もう・・。
 俺に許される答えじゃない。
「俺の・・・・答え、は――」
「お兄ちゃん」
 言葉が遮られる。
「お兄ちゃん、事故の日から、ずっと私に付いて居てくれたよね」
「・・・・・・」
「毎日私の所に来て、お話して、身の回りの世話してくれて、面会時間のぎりぎり迄居てくれた。
 大学行くの止めて、会社に入って、お金貯めて、車椅子買ってくれた。
 私の在学費払ってくれてるのもお兄ちゃん。 有り難う、って思ってる。 感謝、凄くしてる」
「・・・・当然だ」
「如何して?」
「俺は・・お前の兄貴だからな」

33 :名無しくん、、、好きです。。。 :2005/10/23(日) 07:29:49 ID:ORt6Jj+E
「嘘吐き」
「・・・・・・」
「正直に成りなさい」
「・・・・・・・・・・・・罪の意識は、ある」
「・・・・やっぱり」
 悲しそうに、紗枝は呟いた。
「・・・・嬉しくない」
「・・何が?」
「全部。 そんな想いでされても、全然嬉しくない」
「・・・・・・・・」
「罪とかそういうの、すっごく頭に来る」
「・・・・・・御免」
「・・もっと頭に来る事がある」
「・・何だ?」
「お兄ちゃん、誤魔化してる」
「誤魔化して・・?」
「・・・・お兄ちゃん。 ちゃんと、答え聞かせて」
 逡巡。
 でも、やっぱり・・俺の答えは・・。
「・・・・紗枝。 ・・俺は―――」

34 :名無しくん、、、好きです。。。 :2005/10/23(日) 07:31:27 ID:ORt6Jj+E
「お兄ちゃん!」
 ・・此処迄紗枝が大きな声を出したのは、初めてじゃないだろうか。
「もう止めようよ。 お兄ちゃんは悪く無いよ。 お兄ちゃんだって本当は気付いてるでしょ?
 言い訳にしてるだけでしょ? お兄ちゃんだって辛いでしょ?
 でも・・私は、もっと辛いんだからねっ!? お兄ちゃんが苦しいと、私はもっと苦しいんだからねっ!!」
 ・・嗚呼、俺は。
「・・・・私の想いは、あの日の儘だよ。 お兄ちゃんが一番。 お兄ちゃんじゃなきゃ、駄目」
 俺一人で勝手に背負い込んで。
「なのに・・お兄ちゃんは、私から目を逸らしてる。 罪だとかそんな事考えて、私を見てくれない」
 自分にもコイツにも嘘付いて。
「ちゃんと私を見てよ・・私を見てくれないのは・・・・辛いよぉ・・」
 挙句俺の大切なものを、自分で傷付けて―――。
 啜り泣きが公園に響く。
 空は茜。
 あの日見せたかった、茜。
 ゆっくり、ゆっくりと車椅子を押す。
 高台にあるこの公園の端へ。
 街を見下ろせる場所へ。
「―――綺麗だろ」
 茜色に染まる街は、輝きを帯びた宝石だった。
「結構ありきたりだけどな。 でもさ、すげー綺麗だろ?」
「・・・・うん」
 しゃくり上げ混じりに答える。
「あの日見せたかったんだ。 俺の一番。 俺の知ってる風景で、一番綺麗な風景。
 冬場はもっとすげーんだぜ。 光が雪に反射して・・でも半分は雪を染めて・・」
 目を閉じて、紗枝は頭にそれを描いて居る様だ。

35 :名無しくん、、、好きです。。。 :2005/10/23(日) 07:40:54 ID:ORt6Jj+E
「紗枝」
「・・何?」
「俺、最低だよな。 お前事故に遭わせて。 その事何時迄も引き摺って。
 その所為にして、お前の事ちゃんと見てやんなくて。 ―――お前を傷付けて」
「お兄ちゃん。 お兄ちゃんが私と一緒に居てくれたのは、罪の意識だけ?」
「・・いや、違う」
「傷付いたのは、私だけ?」
「・・多分、違う」
「ふふ、おっけー。 今迄の事は水に流してあげましょう」
「・・・・・・有り難う」
 本当に、コイツは・・俺の妹のくせに・・出来過ぎだ・・・・。
「それで? 水に流れた後に残ったのは何?」
「あの日の、答え」
「うむ、申してみよ」
 車椅子を回転させ、俺と向き合わせる。
「・・酷い面だな」
「泣かしたのは誰よ」
「水に流したんだろ」
「女の涙は重いのよ。 水じゃ流れないわ」
「なら俺が払ってやるよ」
 両手で頬を包み、涙を拭ってやる。
「是が、俺の答えだ・・」
「お兄、ちゃん・・」
 茜から群青へと移る刹那の時間。
 俺と紗枝の影が重なった。
 ―――もう紗枝が俺の後ろを歩く事は無い。
 ずっと、俺と一緒に歩いて行くから・・。

36 :名無しくん、、、好きです。。。 :2005/10/23(日) 07:48:22 ID:ORt6Jj+E
連投規制に八回程引っ掛かった件について。

彼女は足が遅い >>20-35

いや・・何か二ヶ月半振りに覗いてみたら思い付いたもんで・・いや、何か、御免。
タイトルパクリで御免・・。
色んな柵から開放されちゃって、前世の記憶は飛んでるんだ。
紗枝って名前もう使ってたら御免・・。
何つーか・・萌えなくて御免・・。
クオリティ低くて御免・・。
話煮詰めてなくて御免・・。
是、割と即興なんだ・・(言い訳)。
出直す・・。

37 :名無しくん、、、好きです。。。 :2005/10/23(日) 11:33:53 ID:aVQINCf2
妄想もここまでくると呆れるな…
精神病院池。

38 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/10/23(日) 13:41:29 ID:pkS6VOIZ
>>20-36
お帰りなさい、姐さん。
もう来ないんじゃないかって、心配してたんですよ。
まぁ、お元気そうで何よりです。
前スレの続きも、心よりお待ち申し上げておりますです、はい。

39 :名無しくん、、、好きです。。。 :2005/10/23(日) 16:03:35 ID:i6FPX78V
駄作だって感じるなら貼るなよボケ

40 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/10/25(火) 22:58:09 ID:mVqnzPO0
「ふぅ……疲れた」
杏のベッドの前で一息つく。
冷却シートやら、薬やら、毛布やら、加湿器やら……我ながら良く頑張ったと思う。
……あとは杏ちゃんの病気が、風邪であることを祈るばかり。っと。
「さぁ、薬も飲んだし、もう寝な」
「うん……」
とは言うものの、どこか満足いっていない様子の顔をする杏。
「どうしたの?」
「え……?」
「何か、言いたいことあるでしょ?」
「う、うん……えっと……でも……いいよ……」
「いいから。言っといた方が、気分よく眠れると思うよ?俺は気にしないからさ」
「……うん」
「で、何かな?」
「あのね……えっと……約束……してほしいの……」
「何を?」
「えっと……その……一緒に……毎日……」
布団で隠れて見えないが、杏ちゃんの胸の胸の辺りがモゾモゾ動いている。
こんなときでも、例のモジモジ運動を欠かさない杏が、ちょっと可愛かった。
「……あの……だから……学校行ってほしいの……」
「うん。いいよ」
「あとね……帰るの……も……」
「うん」
「私……学校の前で……待ってるから……。今日……みたいに……」
「……」
今日みたいに……?

41 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/10/25(火) 22:58:41 ID:mVqnzPO0
「そうなんだ……」
杏は、俺を待ってたんだ。あんなに寒かったのに……。
じゃあ、俺を待ってて……風邪引いちゃったのかもな……。
「そっか……」
もう一度繰り返す。
自分勝手な意見かもしれないが、罪悪感はさほど感じていない。
俺だってまさか待ってるとは思わなかったし、第一電車の都合、あれ以上早く帰るのは不可能だった。
だが……俺が何もしなくて良いということにはならないだろう。
「約束するよ」
俺は自分の小指を立てて、杏ちゃんに見せる。
「指切りしようよ」
「うん……」
杏ちゃんが、その細い小指をゆっくりとあげる。
俺はその指を、自分の指と絡ませ、上下に二度ほど軽く振る。
ホントは歌でも歌うべきなのだろうが、そこまでのテンションはない。
「これで、よし」
まぁ、何となく指切りっぽい動作に満足し、指を離し素に戻る。
「うん……ありがとぉ……」
恥ずかしそうに、さっきまで結んでいた小指を撫でながら、礼を言う杏。
「さぁ、そろそろ寝ようね?」
「うん」
「布団かぶって。電気消してあげるから」
「うん。……いいよ」
「じゃあ、お休み」
「えと……おやすみ……なさい……」
電気を消す。
俺は邪魔にならないように、静かにドアを開け、自分の部屋に戻るのだった。
───────────────────────

42 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/10/25(火) 22:59:43 ID:mVqnzPO0
前スレからの続きですね、一応。

前もって話の流れは決めてたんだけど、実際書いてみると今一つだったり、
書いてる途中で良いネタ思いついて話をガラッと変えたり……
台本って、奥が深いですなぁ……。

43 :名無しくん、、、好きです。。。 :2005/10/26(水) 00:35:44 ID:mwit3eBR
杏ちゃんかわええ…

44 :海中 ◆xRzLN.WsAA :2005/10/26(水) 23:27:13 ID:NZrd3yom
田んぼの街の彼方へと向かって、赤い夕日が沈んでいく。
不規則に揺れるバスの中で、僕はそれを見送っていた。
「懐かしいの?」
半ば忘れかけていた声を聞き、窓から振り返る。隣の席でお袋が笑っていた。
「……全然」
僕は味気ない返事をすると、もう一度窓のほうへ顔を向けた。

先月、僕の親父が亡くなった。煙草の吸いすぎによる肺ガンだった。
親父の葬儀が終わると、狭いアパートは広くなったが、僕とお袋の距離も広がった。
専業主婦であったお袋には稼ぐ手段がなくなり、遺産だけで食っていくには厳しかった。
そこでお袋は実家に電話をし、都市から離れることを決めた。
無論、僕も転校することになった。お袋の実家であり、僕が生まれた場所へ。

45 :海中 ◆xRzLN.WsAA :2005/10/26(水) 23:28:15 ID:NZrd3yom
バスは田舎町には不釣合いなほど綺麗に整備された高台を登っていき、やがて止まった。
ステップから降りると、唐突に強い風が僕らの背中を撫でた。
空はすっかり秋に染まり、少し肌寒いくらいだ。
僕はガードレールに両手をかけ、眼下の光景を見下ろした。
真っ赤な光に染められた田んぼが続いている。その間を縫うように、いくつかの砂利道がある。
(ああ、さっきはあそこを走ったのか)
僕は冷たい風に頬をさらし、ぼんやりと世界を見つめていた。
その時、視界に何か白いものが映り込んだ。
(……ん)

白いワンピースだ。秋風になびき、ゆらゆらと揺れている。
大地を縫うような砂利道の一本を、ひとりの女の子が歩いていた。こちらに背を向けている。
長い髪は光を反射して宝石のようで、すらりとしたスタイルは僕に違和感を感じさせた。
「また田舎に不釣合いな子だな……って、あれ寒くないのかよ……」

46 :海中 ◆xRzLN.WsAA :2005/10/26(水) 23:29:21 ID:NZrd3yom
「―――何か見覚えある?」
肩越しに聞こえたお袋の声に、僕は頭を振りながら答える。
「だから、そんな昔のことなんて覚えてないって。僕、当時まだ小学校低学年でしょ?」
それもそうね、とお袋は苦笑した。それから近くに実家があることを告げた。
「ほら。もう日が沈むから、さっさと行くわよ」
「はいはい……と」
ぼやきながら、ちらりと目を向けてみる。もう女の子の姿は見えなかった。

それから数分で実家に辿り着いた僕らは、不幸な境遇に同情されたのか、
これでもかという歓待を受けた。何故か親戚のじじいやらばばあまでもが招かれ、
いつの間にか居間は宴会場と化した。こういう辺り、田舎なんだなと思う。

47 :海中 ◆xRzLN.WsAA :2005/10/26(水) 23:30:17 ID:NZrd3yom
「はあ……」
僕はすっかり酒臭くなった居間を抜け出すと、夜の庭を散歩していた。
さすがド田舎だ。普通の家でも、散歩が出来るほど庭が広い。というか家が少ない。
気の向くままに足を進めてみるも、僕はいまいちピンと来ない感覚に戸惑っていた。
ここは僕が生まれ、少なくとも小学校低学年まで過ごした町なのだ。
何か思い出があって当然なのである。しかし……。
「何にも思い出せないんだよね、これが。ひょっとして記憶力悪いのかな?」
ひとり、うんうんと頷く。あまり頷きたくはないけれど。
「あはは。でも私のことは覚えていてくれたんだ?」
「うん………………うん?」
僕は一瞬で背筋が凍るのを感じた。夜風が冷たく通り過ぎ、意識が背後へと集中する。
世界から音が消える。実家の灯りがはるか遠くに感じる。
唾を飲み込み、両足に力を入れる。ジャリッ、とかすかに音を立てる。
振り向くと、そこには。

48 :海中 ◆xRzLN.WsAA :2005/10/26(水) 23:31:19 ID:NZrd3yom
―――白いワンピースに、桃色の上着。黒く闇に溶け込んだ髪。不気味な笑顔。
「う、うおわああぁっ!?」
「ひゃっ!?」
僕は思わず尻餅をつき、女の子はぎょっとした自らの後ろを振り向いた。
「な、なにっ?何かいたの?」
「…………は?」
僕はポカンと口を空けた。コイツ、足があるぞ……?
「ねぇ、なにかいたの?……ちょっとぉ、そういう冗談はやめてよぉ……」
「……あのぅ」
「……なに?」
「……もしかすると、お化けじゃない?」
色んな意味で、世界は再び凍りついた。と思う。

49 :海中 ◆xRzLN.WsAA :2005/10/26(水) 23:33:11 ID:NZrd3yom
ごめんなさい、前作とか放り投げてごめんなさい。
しかも萌えなくてごめんなさい。
次に書き込むときは萌えーな話になる予定ですので、生暖かく待っていただけると幸いです。

50 :名無しくん、、、好きです。。。 :2005/10/27(木) 01:22:18 ID:JF967MPi
>>海中氏
毎度毎度続きが気になる終わらせ方しやがって
ああ、思惑にハマってやるさこの野郎!

51 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/10/27(木) 21:36:37 ID:m04teEmM
>海中さん
海中さんだ!!わーい!!
260先生に姐さんに、さらに海中さんもいらっしゃって、このスレもしばらくは安泰だー。

……でもね、前作の続きをね、読みたいなー、なんて、前スレのSSまとめながら思いました。ゴメンなさい

52 :海中 ◆xRzLN.WsAA :2005/10/27(木) 23:02:19 ID:NnGZNx1P
 かざした手のひらさえ見えない暗闇の中で、僕はなかなか寝付けずにいた。
目を見開いてみても、視界には黒しか映らない。僕はその上に記憶を重ねた。
先ほど会った女の子。あの子は、僕のことを知っていた。

 「むー……本当に忘れちゃったの?」
居間の光が微かに届くほどの位置にある小庭で、女の子はむすっと頬を膨らませた。
 「あー……いや、その……」
すっぱりと肯定するのも躊躇われた僕は、言葉を濁した。彼女は言葉を続ける。
 「……まぁ、しょうがないかなぁ?ずっとずっと昔のことなんだし……」
そう言う女の子の表情はどこか切なそうで、僕は慌てて口を開いた。
 「いや、知ってる、知ってるんだ。知ってるけど、思い出せないだけなんだ……」
 「んー……よく分からないけど、そーゆうことにしておきましょうっ」
女の子は白い吐息をしながら、人差し指を唇に当てた。
 「それじゃ、二度めのご挨拶しよっ?」

 そして女の子の口から紡がれた名前は、やはり僕の心には無い名前だった。
もしかすると、僕はとても酷いことをしているのだろうか。
どんなに頭の中を掘り起こしてみても、幼いころの記憶がどうしても見つからない。
でも、大丈夫。いつかは思い出せる。今日から僕はここに住むのだから。
明日は来るんだ。

53 :海中 ◆xRzLN.WsAA :2005/10/27(木) 23:03:27 ID:NnGZNx1P
 翌朝、僕は適当に顔を洗ったあと、朝食を食べるために居間へ向かった。
……はずなんだけど。
 「どうなってんだ、この家は……」
広い。とにかく広い。これはもう田舎、の一言で片付けられない問題だ。
和風で趣ある廊下が奥まで伸びていて、僕は呆然と立ち尽くした。
 「こんなにたくさんの部屋、いったい何に使うんだ……」
アレか。実はこの屋敷では、夜な夜な謎の儀式とかが行われていたりするのか。
昨夜会った女の子も実はその犠牲者で、儀式のための生贄だったり……。
 「……って、そんなワケないだろ!」
頭を抱え、近くの戸を開いた。朝から妄想に溺れる前に、さっさと朝食を済ませてしまおう。
 「あ……」
 「あ?」
室内を覗くと、まず全裸の女の子が目に入った。それから今まさに穿こうとしているぱんつ。
硬直した女の子と目が合った。…………。
 「ぱんつはいてない?」
 「ひゃあぁああああぁぁっ!!?」

54 :海中 ◆xRzLN.WsAA :2005/10/27(木) 23:04:23 ID:NnGZNx1P
 「もうっ、信じられないよ、バカ!」
 「ごめん……」
頬に赤い手形を付けたまま、僕と女の子は朝の森を歩いていた。
 「もー……戸を開ける前に中の空気を読むとかぁ……」
 「それは無理だって」
 「無理じゃないよぅ……お兄ちゃんのえっちぃ……」
朝っぱらから照れた上目遣いでそんなことを言われても困る。
 「もういいだろ?不可抗力だよ、許せ」
 「やだ。許さないもん。乙女の裸を見ちゃった男の人は、責任を取らなきゃダメなんだよっ?」
 「なんの責任だよ、それは」
 「え!?……えっと……それは……っ」
 「なんだよ?」
 「……も、もうっ!バカ!お兄ちゃんの確信犯!!」
 「……わけわんかねーよ……」
僕は上を仰ぎ見た。木々の切れ目から霧のかかった空が見える。
霧は当分、晴れそうに無かった。
 「せきにぃぃん……」
 「まだ言ってるのか……」

55 :海中 ◆xRzLN.WsAA :2005/10/27(木) 23:05:20 ID:NnGZNx1P
 森を抜けると、そこは川だった。
急に視界が開け、さらさらと清水の流れる音が響いている。いい場所だ。
 「へぇ、綺麗なところだね」
 「う、うん……」
女の子は川のすぐ近くまで歩いていき、ひざを抱えてしゃがみ込んだ。
 「どう?……何か思い出せないかな?」
 「あ……」
そうか、ここは……。僕が、いや、僕に関係のある場所なのか……。
 「ここ、どういう場所なの?」
 「……お兄ちゃんが、私やお友達とよく遊んだ場所、だよ……」
やっぱり。僕も同じように近くまで歩み、すっと水に手を触れてみた。冷たい。
 「……分からない。思い出せないよ」
僕は本当に、ここで生まれ、ここで育ったのだろうか。まったく記憶に無い、この空間。
女の子は少しだけ震えた。無理もない。
友達に……大切な記憶の友達に、裏切られたのだから。

56 :海中 ◆xRzLN.WsAA :2005/10/27(木) 23:06:20 ID:NnGZNx1P
 「えへへ……しょーがないよね。昔のことだから……」
嘘だ。しょうがなくなんか無い。心の底では、語り合いたいことが山ほどあるのだろう。
それを我慢している。記憶の無い僕を相手に、ひたすら我慢し続けている。
 「……なんで、だろ……」
ハッとして顔を向けると、小さな雫がこぼれたのが見えた。
 「……なんで、忘れちゃったの……?……お兄ちゃぁん……」
どうすることもできなかった。
 「お兄ちゃぁん……!覚えてるよねっ?ねぇ……!いっぱい、遊んだこととか……っ!!」
 「……」
 「……うっ……うう……」
女の子は僕の胸に体を預け、やがて泣き始めた。僕は空を仰ぐ。
思い出せない。こんなの、理不尽だ。分からないことを理由に、一方的に泣かれている。
理不尽なんだ。どうしようもなく悲しくて、やるせない……!
―――霧は、ますます濃くなっていく。
僕は……女の子との間に亀裂が走るのを感じながら、あえてそれを広げた。
これ以上、見に覚えの無い理由で傷つくのはごめんだった。

57 :海中 ◆xRzLN.WsAA :2005/10/27(木) 23:07:17 ID:NnGZNx1P
 「―――あっ」
気が付くと、僕は女の子を突き飛ばしていた。
 「……知らないよ」
胸のうちに眠っていた苛立ちが、ふつふつと湧き上がってくる。
 「知らないんだよ、君のことなんか!!」
 「お、お兄ちゃ……」
 「黙れよ!!僕は君のいう“お兄ちゃん”なんか知らないんだよ!!」
 「あ……」
 「本当は騙してるんじゃないのか!?僕のこと、騙しているんじゃないだろうな!!」
僕は……。
 「―――うっとうしいんだよっ!!」
その一言に、女の子は呆然と立ち尽くした。僕は踵を返し、背中を向ける。
 「うっとうしいんだよ……」
そうだ。うっとうしい。だから僕は、あのとき火を放ったんだ。
―――火?
……僕は血が冷めていくのを感じた。

58 :海中 ◆xRzLN.WsAA :2005/10/27(木) 23:10:13 ID:NnGZNx1P
・・・萌えませんね。すみませんorz...
書いているうちに何故かミステリー風味になってきました。今回は怖いかもしれません。

>>遊星さん
今回の話が終わったら、書かせてもらおうと思っています。


59 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/10/28(金) 20:25:13 ID:gffnILF1
>海中様
ものすごい、続きが気になります……。
マジで続きが楽しみですよ。

つーか、なんかワガママ言っちゃって、ゴメンなさい……。
催促する気はなかったんです……orz


あと、第五弾のSSまとめました。よろしければどうぞ。っと。

60 :終末 ◆ZkGZ7DovZM :2005/10/31(月) 02:07:21 ID:STqudk3Q
萌、萌えましたwww

61 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/11/04(金) 23:04:47 ID:30rxXhmn
ピピピピピピピ……。
可愛らしい電子音が聞こえる。
もう朝なのか……?だけど……眠ぃ……。
眠すぎて、体が動かない。
「ぅん……」
ピピピ……ピピ。
電子音が止まり、静寂が戻ってきた。
だが……俺は何もしていない。
ということは……
「え……あれ……?」
女の子の声。
「えっと……けいたろう……さん……?」
俺の名前を呼んでる……。
そうだ、思い出した。
「ん……おはよう、杏ちゃん」
目を開けると、心配そうに俺の顔を覗き込む杏の顔が。
「あー、腰痛い!!」
立ち上がり、腰を前後に曲げる。
やっぱり、座って寝ると起きたとき辛いね……。
「……えっと……えっと……」
俺の後ろでは、まったく想定外の事実に、『えっと』とモジモジ運動を繰り返す杏。
まぁ、聞かれる前に説明しようか。
「ああ、ゴメンね。杏ちゃんが心配だったからさ、ここで眠らせてもらったんだ」
「え……」
「で、さすがにベッドに入るわけにはいかないから、壁に寄りかかって寝てたら腰が痛くて」
そう言って、笑ってみる。

62 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/11/04(金) 23:05:20 ID:30rxXhmn
杏は少しも笑わず、俺の手を取り、
「けいたろうさん……」
「ん?」
「ありがとう……」
「どういたしまして。それより体の方はどう?」
「えっと……大丈夫……みたいです」
「そう?じゃあ……」
杏の額に手を触れる。
恥ずかしそうに視線をそらし、モジモジ運動を再開する杏。
……何だろ。何か、すごく可愛い。
「うん、大丈夫っぽいね」
「学校……行ける?」
「うん。でも、一応母さんに聞いてからね?」
「うん」
優しく微笑む杏。
やっぱり、昨日までの顔とは全然違って……愛らしいというか。
とにかく俺はそんな杏の頭にポンと手を置いて歩き出す。
すると……俺のパジャマの袖が何かに引っ張られる。
見ると、案の定というか、杏が申し訳なさそうに俺の袖を少しだけ掴んでいる。
俺に見られていることが分かると、杏は恥ずかしそうに頭を下げた。
「手、つなごうか?」
そんな杏に俺はそんな言葉をかける。
「……うん」
消え入りそうな声。
でも、俺は確かにそう聞こえた。
そして、杏の小さな手を掴む。
恥ずかしそうに俺を見上げる杏。
……これが幸せなのかもと、少しだけ思った。
───────────────────────

63 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/11/04(金) 23:05:51 ID:30rxXhmn
昨日と同じ道を、杏と二人歩いている。
実は、駅まで行くには少し遠回りになるが、俺は気にしてない。
隣の杏は、少しだけ嬉しそうな顔をして、俺を見上げながら歩いている。
そんなことよりもだ。
さっき母さんに言われた言葉が気になっている。
『もう立派なお兄ちゃんだ』
昨日の夜のことを話した後、母さんがこう言った。
……立派なお兄ちゃんか。
俺がねぇ……。
確かに俺は杏の兄だ。
そんなことぐらい分かっているが……いざ言われると……。
「けいたろうさん……」
チョイっと杏が制服の袖を引っ張る。
「ん?」
「危ないよ……?」
杏ちゃんが、前を見る。
俺も前を見ると……俺の目の前には電柱が。
「あ……ありがと」
「ううん」
電柱を避けて、また歩き出す。
昨日と同じ、会話のない通学路。
「ねぇ……けいたろうさん……?」
「ん?何?」
「えっとね……うんとね……」
立ち止まってモジモジの杏。
俺も立ち止まって、優しくそれを見守る。

64 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/11/04(金) 23:06:22 ID:30rxXhmn
「えっと……その…………いいかな?」
「え?」
「だからね……お兄ちゃんって、呼んでもいい?」
「お兄ちゃん?」
……正直、違和感を感じてる。
何だか痒いようなくすぐったいような、もどかしい感じ。
だけど……頼られてるみたいで、凄く嬉しい。
「ねぇ、杏ちゃん」
「うん……」
「もう一回、呼んでくれる?」
「うん……お兄ちゃん」
「何か、恥ずかしいね……でも、嬉しいよ」
「お兄ちゃん……」
杏がちょっと俯きながら、俺の手を取る。
そして、
「ありがとう」
優しい笑顔。
そして、恥ずかしそうにまた下を向いてしまう。
俺は、妹の手をそっと握りかえし、いつもと違う道を歩き始めた。
───────────────────────
ま、杏の話はこれにて終了。お疲れ様。
思いつきの割には、長い間書いてたなー。

さ、セイザーXのために寝よー。

65 :某173 :2005/11/04(金) 23:10:28 ID:euacCdSp
なんだか、すごく、可愛い。GJ!

66 :名無しくん、、、好きです。。。 :2005/11/05(土) 01:13:35 ID:bEkb4dsr
妹がベットに入り込んできて
「えへへ……お兄ちゃん、好き好きぃ……」
と抱き付いて甘えてくる。

67 :名無しくん、、、好きです。。。 :2005/11/05(土) 02:19:28 ID:itUsN43Q
ジャイ子が

68 :名無しくん、、、好きです。。。 :2005/11/05(土) 08:13:42 ID:Ze8b8HN8
>66
それを14の弟にやられたオレは





どないせよと?

69 :名無しくん、、、好きです。。。 :2005/11/05(土) 12:34:19 ID:bEkb4dsr
>>68
(´・ω・`)

70 :名無しくん、、、好きです。。。 :2005/11/06(日) 05:08:18 ID:bqyYG0FS
>>68
ウラヤマシス…

71 :名無しくん、、、好きです。。。 :2005/11/06(日) 12:39:18 ID:e0VIPJQv
>70
オレとしては今後どう弟に接していけばいいのか悩まされる日々が続いているんだが・・いくらかわいいとはいえ、甘やかしすぎたか・・

72 :名無しくん、、、好きです。。。 :2005/11/06(日) 16:00:57 ID:JK9hZa0W
>>71
掘れ









なんて無責任な事を言ったら駄目だな

73 :名無しくん、、、好きです。。。 :2005/11/06(日) 18:14:07 ID:rCI6JJj2
BLはイラネ。

74 :前スレ260 :2005/11/06(日) 21:26:10 ID:3u8+UvuN
「勿論、好きだよ・・・お兄ちゃんの事」
「な、なんだよ?急に」
「・・・変な意味じゃないんだよ、ただこれからもお兄ちゃんと一緒がいいなって・・・うん」
「あ、ああ・・・解ってる」

解っているのは頭だけで実の所、心の方はどうだか自分でもよく解らない。
細い指でコップの縁をなぞりつつ上目遣いな巴。
変にシャキッと背筋が伸びる俺。
苦し紛れに視線を逸らしても無口になった眼差しが痛い程に頬に突き刺さる。
さっきとはまた違う二人を包む微妙な空気。

「お待たせしました。スペシャルトロピカルジュースです」

そんな空気もようやくやって来たメニューにより変わる・・・筈だった。

「あっ・・・」
「げっ・・・」

やたらと豪華に盛り付けられたフルーツ、大きなグラスの真ん中にハートの軌跡を描き
巻き付いた二つのストロー。
もはやこれ以上、説明の不要な物がテーブルの上に鎮座している。
まさか、これがくるとは・・・あまりにも予想外。

「・・・あ、あのさ、巴」
「お兄ちゃん、男に二言は無いよね?」
「うっ!?」
「責任・・・とってね」

両手を組んで頬杖をついた女神の微笑み。
振り込んだダイスの目が全て裏目に出た男。
汗をかいたグラスと曇り硝子の向こうの気だるい日差し、そんなある日の午後。

75 :前スレ260 :2005/11/06(日) 21:42:05 ID:3u8+UvuN
とりあえずこの話は一段落。
次の投下予定は文化祭話です。
いや、ヘタすればクリスマスの方が先になったりして。
そんな事より、暫く間を空けていたら神々が降臨!!
皆さん相変わらずの高いクオリティ、頭が下がります。

76 :No.2 :2005/11/07(月) 01:09:31 ID:cw/NZURj
どもども
前スレがdat落ちしたので、うpりました

http://www.geocities.jp/mewmirror9/1110717816.html

77 :名無しくん、、、好きです。。。 :2005/11/11(金) 19:18:19 ID:++NYqpqQ
人が射ない

78 :名無しくん、、、好きです。。。 :2005/11/11(金) 21:57:05 ID:HVOHfyu8
>>77
ここにいるぜ

79 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/11/11(金) 22:36:45 ID:xrV1rg6y
……貼ろうと思ったけど、上の方にあるんで保留。

80 :しゅーまつ :2005/11/12(土) 03:13:55 ID:FpAzIwNG
>遊星氏
お願いしまつorz

81 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/11/12(土) 23:18:05 ID:cwp0+9it
雲ひとつ無い秋晴れの空。
十一月とは思えない暖かい日差しに、強制的に冬服になってしまった制服の袖をまくり、
俺、州田敬介は校舎内をブラブラ歩いている。
今日は年に一度の文化祭!とのことで、校舎内は活気と人間と甘い香りに溢れている。
とはいえ、俺は大した目的も無く、飲食をするような気にもなれない。
なので、こうしてブラブラと歩いているわけだ。
ちなみに、本来今日は日曜なのだが、文化祭のため、全員出校。明日は代休だ。
「誰か暇なヤツいねぇかな……」
友人はみんな用事や、やることがあるらしく、忙しくしている。
唯一の暇人だった友人、立花将人もどっかの教室で何かやるからと、走っていってしまった。
「あの時、立花についていきゃよかったんだよ」
そんなこと呟いても、今更どうにかなるものではない。
せめて、どこかゆっくり静かに座れる場所でも有れば良いのだが……
そう思い、キョロキョロと辺りを見回す。
とはいえ、基本どこもスペースの奪い合い……使ってない場所なんてある訳無いわな。
「自己主張が激しいよな。みんな」
そう皮肉ってみるも、無性に悲しくなった。
俺が少し校舎の端のほうに足を運ぶ。
すると、
「あ……」
体育館のところにいるあの人間は……俺の幼馴染、相川梨那だ。
足を止めて、梨那の様子を眺める。
梨那は体育館の近くに置いてある下駄箱の前で、両手で胸を押さえている。
ここからでは、あまり顔が見えない。
体調でも悪いのだろうか……。

82 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/11/12(土) 23:18:48 ID:cwp0+9it
ま、とりあえず、声かけてみよう。ヒマだし。
「よぅ、梨那」
俺は渡り廊下を通って体育館へ行き、後ろからこっそり梨那の肩を叩く。
「にゃっ!?」
そんなに驚いたのだろうか、大きく体を震わせた後、地面にペタンと座り込んでしまう梨那。
「お、お兄ちゃん……!?」
「そんな驚くことはねぇだろ」
相手に冗談で言った言葉が図星だったときのような、微妙な罪悪感を感じてしまう。
「あ、うん……ゴメン」
気のない返事を返す梨那。
「ほらよ」
とりあえず、梨那に手を差し出す。
「うん……」
しかし、梨那は俺の手を取らず、魂の抜けたような顔でボーっと俺の顔を眺めている。
「どうかしたか?」
「えっ……あっ、うん。なんでもないよ」
「ならいいけど。それより、お前ヒマか?ヒマなら、どっか一緒に巡ろうぜ?」
「あ、ゴメンね。梨那、やることあるから」
やっと、俺の手を取り立ち上がる梨那。
パンパンと制服のスカートの埃を払う。
「そっか、まぁ頑張ってくれ」
「うん。ありがとう、お兄ちゃん。梨那、頑張るね?」
俺の手を両手で握りながら、梨那がまじまじと俺の顔を見つめる。
言っておくが、俺は別に変な気は起きてない。
ただ、心配にも似た疑問を持ってしまったのだが。
「お……おぅ」
何を頑張るのかは不明だが、とりあえずそう返しておく。

83 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/11/12(土) 23:19:32 ID:cwp0+9it
つーか、ホント、何をするのだろう。
演劇をやるにしては、服は普通だし、裏方だとしても、意気込みすぎだ。
いろいろ考えたが、予想もつかないので、直接聞いてみることにする。
「ところで、梨那、お前何を……」
と、言いかけたが、肝心の梨那はいつのまにか遥か遠く。
体育館の裏口に入っているところだった。
梨那は一度、そこから顔を出して、笑顔で俺に小さく手を振った。
そして、また見えなくなる。
これでまた暇つぶしの当てがなくなってしまった。
「あ、そうだ」
ポケットの中に文化祭のパンフレットを入れていたことを思い出す。
ポケットの中から、八つに折りたたまれた、
黒一色の、いかにも手書きです。という感じのパンフレットを取り出す。
「えっと……今の時間、体育館でやってるのは……お、あった」
そこには、確かに『文芸部』との文字が。
梨那は文芸部じゃないハズだ。じゃ、何で……?
つーか文芸部が舞台で何すんの……?
「ま、どーせヒマだし、見てくか」
パンフレットを折りたたみながら、入り口へ向かう。
中に入ろうとすると、前に立っていた男子に呼び止められた。
「あの、チケットは?」
「え?いるの?」
暇つぶしに今見ていこうと思ったのだ。もちろん持っているわけが無い。
もっとユルい出し物だと思ったので、ちょっと驚く。
「じゃ、買うよ。いくら?」
「いえ……完全前売りになってますから」
「あぁ、そう……」
ここで抗議するほど見たいわけじゃないし、何食わぬ顔で言う。
まぁ、文芸部と梨那との関係が分かれば良いわけだし。

84 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/11/12(土) 23:20:04 ID:cwp0+9it
「ところで、キミ、文芸部?」
「はい」
「今から、何すんの?」
「作品の朗読会ですけど」
……文芸部を悪く言うつもりは無いが、
金を取る上にチケットは前売り、しかも内容が朗読じゃそんなに客は入らないだろ……。
「チケットはどう?売れてた?」
「はい。ほとんど完売で」
マジか……。
すげぇな、いろんな意味で。
「そっか……ところでさ、相川梨那って知ってる?」
「はい!!もちろん!!」
「そんな有名なんだ。さっき、裏口にいたんだけど、何かするの?」
「あ、はい。特別に参加してもらうことになったんです。
 彼女のおかげで、こんなにお客さんが来てくれて……もう感激ですよ」
「そんな凄いんだ、アイツ」
「はい!凄いです、相川先輩の詩、すごい感動しますもん」
「ふーん」
梨那とはずっと一緒だったのに、知らないことってあるもんだなー。
って、梨那の詩なんて、小4のときの花だか草だかのヤツしか読んだことないんだよ、俺は。
それだって、そんなに感動した記憶は無いが……。
一人記憶をめぐっていると、急に体育館内が静かになる。
舞台の上には、司会がいつのまにかいて、その司会に呼ばれ、文芸部員と思われる数名が舞台袖から現われる。
そのなかには、よく知ってる梨那の顔が。
……ガチガチだよ、アイツ。

85 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/11/12(土) 23:20:36 ID:cwp0+9it
「なぁ、キミ」
「はい?」
「すぐ出るから、ちょっとだけ入ってもいいかな?」
「え……?」
「いや、司会の間だけ。頼む」
「……分かりました。ホント、約束は守ってくださいよ?」
「当然だ」
俺は、スリッパを脱ぎ、体育館の中に入っていく。
満席といっても、体育館全てを埋め尽くすほどの席は無い。
俺は後ろの方に立って、舞台を見る。
みな座っている中で、一人立っているのは凄く目立つ。
梨那もこちらに気付いたようで、「どうしよう……」みたいな視線を俺に向ける。
俺にはどうしようもない。
変わってやることなんてできないし、そもそもすぐにココから出て行かなきゃならないんだ。
さっきの部員がにらんでいる。
「せっかちだな」
俺は一言だけ呟いて、右手の拳を前方に思い切り突き出す。
そして、親指を天に上げる。
「頑張れよ」
俺のいいたいことが分かったようで、小さく頷く梨那。
俺もうんうんと頷いた後、振り返って体育館を後にする。
「そういや、真司の妹が喫茶店やってるっていってたな。遊びに行くか」
と言うわけで、このあと、体育館で起こる出来事を……俺は知る由がなくなってしまったのである。
───────────────────────

86 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/11/12(土) 23:21:44 ID:cwp0+9it
まぁ、あの後はいろいろあった。
三上兄妹に会ったし、立花と石川ツインズの喫茶店にも行った(二人のウエイトレス服、つーかメイド服が最高でした)。
考えてみると、俺の文化祭はヒマに始まり、メイド服に終わったわけだ。
飾り付けられた教室で適当にHRを終え、あとは帰宅するだけである。
特に思い入れがあるわけではないが、いざ終わってみると、何となく寂しい。
ま、すぐ忘れるだろうけど。
「さ、帰るか」
教室の外。俺が歩き出そうとすると、
トントンと誰かが俺の肩を叩く。
「お兄ちゃん……」
梨那だった。
梨那は体を丸め、俺の背中に張り付きながら、俺に囁く。
「よう、梨那。どうかしたか?」
「にゃっ!?静かに!!」
「あぁ、スマン。で、どうかしたのか?」
「文芸部の人から逃げてるの〜!!」
梨那は俺の肩越しに、向こうを見ながら、小さな声で言う。
「何で?」
「打ち上げに参加して欲しいんだって〜」
「大活躍だったんだろ?行けばいいのに」
「だって〜……苦手なんだもん、ああいう真面目な雰囲気って〜」
「確かにな」
「でしょ〜?」
「で、それはいいが……何故俺のところに来た?」
「えへへ、お兄ちゃんをお誘いに来たのー。ねぇねぇ、二人で後夜祭いこーよー!」
「後夜祭なんてあるんだ……」
「うん。でも、嬉しいよー!!梨那、まだ全然お兄ちゃんと文化祭してないもん」
文化祭する:自サ変動詞。文化祭を楽しむこと。
「そーだな。このまま帰るのもつまらないし、付き合うよ」

87 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/11/12(土) 23:22:42 ID:cwp0+9it
「わーい!!やったねー!!さぁ、れっつごー!!」
後ろから、俺の首に抱きついて、頬ずりをする梨那。
「いや、退けって!!苦しいから!!」
楽しいことは二人で。
……何となくだが、今日一日がつまらなかった理由が、わかったような気がした。
───────────────────────
さて、少し話は戻るが、俺が帰ったあとの体育館。
特別ゲストとして呼ばれた梨那。
梨那の誰かさんへの想いを綴った詩は、
内容もさることながら、梨那の話し方にもその人をラブな気持ちが篭っていてステキだった。と言う。
さらにブラスバンド部が、これまたステキなメロディーを奏で始めたから、さぁ大変。
一人のカップルがキスし始めたのを皮切りに、会場内では幾度と無くキスをするカップルが見られ、
ついには噂が噂を呼び、告白の会場みたいになってしまったらしい。
結局文芸部の発表は有耶無耶になったが、成功に終わったと判断したとか。

……と言うのが、俺の後日聴いた話だが、どこまで話の尾ひれなのか分からない。
というか、ほぼ尾ひれのような気がする。
それより……その誰かさんって、誰だよ……?
まだ梨那には知らないことがある。今回それを学んだが……
……ちょっと、ムカつくよな。
───────────────────────
まず、ゴメンなさい。
文化祭話なんで、先生のとカブってます、ゴメンなさい。
つーか、変な話でゴメンなさい。
あと、別に文芸部を悪く言うつもりは無いです。気に障ったらゴメンなさい。
必要と有らば、土下座します。つーか、自害します、自害。

88 :名無しくん、、、好きです。。。 :2005/11/12(土) 23:34:13 ID:9eaKG29v
んじゃしてみてクダサイ

89 :名無しくん、、、好きです。。。 :2005/11/13(日) 00:34:49 ID:k8ncuygL
お兄ちゃんせっくすってなに?せっくすしたいのせっくすしたいの〜!せっくす教えて〜!

90 :名無しくん、、、好きです。。。 :2005/11/15(火) 01:09:27 ID:23uZB45s
>>81-87
続きはあるんすか?

91 :しゅーまつ :2005/11/19(土) 04:52:37 ID:dQtvhR/m
>遊星氏
GJ
これからも良い萌え作品をお願いします
>88
まぁまぁ

92 :前スレ260 :2005/11/20(日) 21:10:01 ID:pUindH0o
キャンバスを灰色で塗り潰した様な空。
重たげな雲にも秋の気配を感じつつ早足で家の扉を開ける。
こんな日は家の明かりが妙に暖かい。

「ただいま・・・っと」
「あ、おかえりなさい、お兄ちゃん」

台所で夕飯の準備をしていた巴が俺に向き直って丁寧に迎えてくれる。
しかし、制服の上にエプロンとはまた通好みな格好だこと。

「巴も遅かったみたいだな」
「?・・・ああ、この格好なら解っちゃうね」

エプロンの裾を掴んで巴がはにかんでみせる。
やたらと破壊力のある仕草と姿、もう少し元気があればつい頭を撫でてたかもしれない。
ちなみにこのエプロンは巴お手製。
真ん中に描かれた二匹の子猫がワンポイントだ。

「今日は寒かったね、ココア入れる?」
「そんじゃ、貰おうかな」

コポコポとカップにお湯を注ぐ音を耳に深くソファーに沈みこむ。
なんか・・・このまま寝たいな。

「・・・はい、遅くまでご苦労様」
「ん、ありがとよ」
「文化祭の準備は大変みたいだね」
「ああ、当日まで時間が無いからな」

93 :前スレ260 :2005/11/20(日) 21:11:08 ID:pUindH0o
今回の文化祭は自分のくじ運の悪さを思い知る事になってしまった。
今年は出店の数が去年より一つ多い。
うちのクラスが屋台造りから始める。
その一番キツイ屋台の製作に役が当たる。
全てが当たるのは相当な確率だと思う。

「で、巴の方はどうだ?巴達の学年は体育館で発表会だろ」
「うん・・・順調、かな」

湯気の立つマグカップを二つテーブルに置いてわざわざ真隣りに座る巴。
そんな巴の物言わぬ抗議に応じてとりあえず体を起こす。

「そんなに王子様が嫌なのか?」
「・・・知ってたんだ」
「校内にいれば自然と耳に入ると思うぞ、確か演目はシンデレラだっけか」
「・・・別に役は嫌じゃない、やるって決めたのはボクだから・・・」
「そうだな、例え女子推薦で勝手に選ばれたとしても、な」
「!?ど、どうしてそこまで解るの?」

不思議そうな顔した巴を横にココアの甘い香りに誘われて口に含む。
張り詰めた疲れを溶かすにはちょうどいい甘さ。

「そりゃあ解るさ、俺は巴の兄ちゃんだからな」
「・・・そっか・・・ふふっ、そうだね」

嬉しそうに納得した面持ちでココアに口を付ける巴。
まぁ、俺が兄でなくとも解ったとは思うが・・・誰が考えても当然の配役だし。

「お兄ちゃん、ボク・・・頑張るよ」

静かに、はっきりと自分に言い聞かせる様な巴の決意。

94 :前スレ260 :2005/11/20(日) 21:12:03 ID:pUindH0o
「まっ、俺が何も言わなくても誰に何を言われても頑張るだろうからな」
「えっ・・・」
「無理はしなくていい・・・頑張るのもいいけど、ほどほどにな」
「・・・お兄ちゃん」

慣れないウインクで照れ隠ししつつ本音を語る俺。
我ながらこういうのはホントに柄じゃないよな、というかひどく似合わん。
しかし、ブレーキかけてやらんとどこまでも走り抜けるからな、巴は。
そんな事を考えている内にちょこんと俺の肩に巴の頭が乗っかる。
不意打ち気味に視界に飛び込む流れる黒髪と胸を透く爽やかな香り。

「・・・頑張るんじゃなかったのか?」
「ほどほどに、だよね・・・心の充電・・・少しだけ・・・このままで」
「ま、俺の肩でよれけばどうぞ」

何も言わず瞳を閉じて寄り掛かる巴。
暫くして俺がココアを飲み干す頃には規則正しい寝息が聞こえてきていた。

「・・・やっぱり、頑張り過ぎてたか・・・」

巴は周りの期待に押し潰されてしまう程、弱くはない。
けれどその全てを一人で受け止められる程、強くもない。
誰だって支えが必要だ、ちょうどこんな風に寄り掛かれる支えが・・・
カレンダーに印された赤丸まで後一週間。
肩をかすめる穏やかな寝息を数えながら俺は自分に出来る事を考えていく。

「とりあえず、起こしちゃ悪いし・・・今はじっとしてるか」
「・・・お兄ちゃん・・・余所見なんて・・・ダメだからね・・・」
「ん?ね、寝言か・・・まさか寝言で釘を刺されるとは」

文化祭は騒がしい一日になりそうだな、これは。

95 :前スレ260 :2005/11/20(日) 21:21:03 ID:pUindH0o
>>遊星さん
時期的にネタがカブっても自然な事ではないでしょうか。
話までカブる事は無い訳ですし。
と、いうか遊星さんの話があまりに良いのでちょっと投下
するのに勇気が要りました。
なにはともあれ、GJです!!

96 :にぼし :2005/11/21(月) 02:51:45 ID:/lxMO0pE
最近寒くなりましたが、はお変わりありませんか?
今年の風邪は治りが悪いらしいので、お体にはお気を付け下さい。
俺は今、予備校に向かっています。
今日が初めてなので多少緊張していますが自分なりに頑張ってきます。
10時には実家に帰りますので夕飯のほう宜しくお願いいたします。
麻美の夕飯を楽しみにしています。   信二


「送信っと…」
「………何やってんだ俺は…」
今年の冬から予備校に通うことになった俺は暇だったので妹に妙なメールを送ってしまった…
「はぁ…」
バスの中、背中を丸め溜め息をつく俺…
これからまた勉強だと思うと鬱になる…


予備校に着き先生方と軽く挨拶を済ませ教室に向かった…
教室で座席表を確認し自分の席を見ると真面目そうな眼鏡の長い黒髪の女の子が座っていた…
「あれ?Eの7…」
俺はもう一度座席表を確認した…
間違いなく俺の席に女の子が座っている…

97 :にぼし :2005/11/21(月) 03:12:26 ID:/lxMO0pE
俺は座席表を持って女の子の所へ向かった…
「あの…すいません…ここ俺の席なんスけど…」
「え?あ…え?え?」
女の子は突然話し掛けられたからか焦っていた…
「ここEの7っスよね…?ほら…これ…Eの7沢田って…」
女の子に座席表を指差しながら説明した…
「あ!すいません!私、間違えちゃって…すいません!」
女の子は自分が席を間違えた事に気付くと頭を何度も下げて謝った…
「いや、いいよ。そんな謝んなくて。」
「すいません…私…ここ初めてで…」
「いいよ、いいよ。俺も初めてだし。」
「え?あなたも初めてなんですか!?」
女の子は驚いたのか少し大声を出したのでビビった…
「え…あぁ…そうだけど…」
「よかったー!初めてなの私だけじゃないかと思って不安だったんです。」
女の子は俺が予備校初めてだと分かると急に明るくなった…
「あぁ…そ…そうなんだ…」
俺は少し焦ってしまった…
「すいません…座席表…見せて貰えますか?」
「え?あぁ!はい座席表…」
女の子は座席表で自分の席を探し始めた…

98 :にぼし :2005/11/21(月) 03:28:39 ID:/lxMO0pE
「あ!すいません…一個後ろの席でした…」
女の子は困ったように笑いながら席に座った…
「あはは…」
俺は変な愛想笑いをしてしまった…
「あ!私、谷本綾子っていいます!よろしくお願いしますね!」
「あぁ…お…俺は…沢田信二です…よろしく…」
真面目そうだったので大人しい性格だと思っていた俺はかなり焦っていた…
「初めてで…まだ友達いないんで…仲良くして下さいね…?」
「あ、はい、こちらこそ。よろしくお願いします。」
また困ったような笑いを見せる谷本さんを少し可愛いと思った…
俺は授業が始まるまでの間、谷本さんと雑談をして少し仲良くなった…

99 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/11/23(水) 22:33:42 ID:fUoCigO+
>先生様
さすが先生。もう萌え!っつーか、主人公がかなり羨ましいですw
俺の先に出しといてよかったなぁ……。


>>96-98
ふむ……続き、どうなるんでしょうね。
楽しみですよ、はい。

100 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2005/11/30(水) 09:54:14 ID:fwmulV0t
保守かな

101 :名無しくん、、、好きです。。。 :2005/12/01(木) 23:41:03 ID:pujuIOl2
100ゲト、おめ。

102 :名無しくん、、、好きです。。。 :2005/12/04(日) 01:04:55 ID:v86AjqE2
今、妹の寝てるとなりで、2chを、しかも妹スレを見てる…いや、書き込んでる俺は、結構特殊な存在かもしれない。

103 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2005/12/04(日) 14:23:49 ID:kFaaVr4W
>>101
ども
でも、これだけ間が空いて取ったのに褒められても(´・ω・`)

>>102
私から見たら妹が居る時点で特殊ですねw

104 :名無しくん、、、好きです。。。 :2005/12/04(日) 17:05:16 ID:2QbHGL+J
>102
それ、なんてエロゲー?

105 :しゅーまつ :2005/12/06(火) 00:35:12 ID:5fBneeA4
寒くなってきましたね…………心が寒い

というワケで冬の物語も楽しそうなのですが………クリスマスだけでイイですかね?

スミマセン、こんな何も書いてないヤツが意見などOTL

106 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/12(月) 21:04:48 ID:nko9o7Su
保守しますかね。

>>105
無茶を言わないで……クリスマスだけでも、クリスマスですらも大ピンチだよ、僕は。

107 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2005/12/12(月) 23:24:54 ID:6GWxw+fM
>>105
僕は夏よりも春や冬を書く方が好きですね
構成だけで手をつけられてない物がいくつかあるんで時間があったら書きたいと思ってます
夢亜の話も構成や書き途中のものがあったりするので・・・
ただ、時間と力、特に力が非常に不足しているので期待はしないでくださいw

108 :しゅーまつ :2005/12/13(火) 01:31:47 ID:w4kjlDBO
遊星様、すばる様、無茶言ってスミマセン

でも寂しくてw

すばる様>いえ、とんでもないです!楽しみにしてます

遊星様>ですよね…。クリスマスSS待ってまつ!

109 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/20(火) 21:36:57 ID:r9bxcS7/
ほしゅ

クリスマスまであとわずか。冗談抜きにピンチ。

110 :名無しくん、、、好きです。。。 :2005/12/22(木) 14:25:18 ID:V8wH1ZP+
誰か早くSSを…


111 :前スレ260 :2005/12/24(土) 18:52:17 ID:ISzd//6w
「今年もあっという間だったな」

一年経て毎年同じ事をただただ思う。
あと一週間もすれば来年がやって来る、そんな当たり前の事すら感慨深い。
まぁ、世間ではまだ気の早い話みたいだが・・・。
今年は今年でイベントが残されているという訳だ。
12月24日、この日に暇なのは俺くらいかもしれない。
テレビをつけてもラジオを聴いても聞こえてくる言葉は同じ言葉。

メリー・クリスマス

「今日はその前日だろうに・・・」

湯気の立つ珈琲に溜め息が白く残って溶けていく。
その先に扉越しにマフラーを巻く巴の姿がある事にたった今気がついた。

「巴、出掛けるのか?」
「うん、約束があるから」

そういえば友達のクリスマスパーティーに誘われていると言ってたっけ。
こんな時、女の子は得だと強く思う。
流石に男集でイブを騒ぐというのはあまりにも絶望的だ。

「そうか・・・ま、せっかくのイブだから楽しまなくっちゃな」
「うん、行ってきます」

目線を合わせる事なく去り行く巴に若干の置いてけぼりを感じつつ見送る俺。
しかし、あれこそ正しいクリスマス・イブの過ごし方だろう・・・たぶん。
ならばここにいる俺はどうすべきか、そこが問題だ。
バタンと閉じられた扉を見遣り、一人腕組みして考え込む。

「・・・とりあえず、ケーキでも作るか・・・」

112 :前スレ260 :2005/12/24(土) 18:54:04 ID:ISzd//6w
数時間後、恐ろしく出来の良いクリスマスケーキが出来上がっていた。
イチゴで縁取られた真ん中に砂糖菓子のトナカイとサンタがクリームの袋を運んでいる。
我ながら会心の出来だ。

「巴が帰ってきたら一緒に食べるとするか・・・って帰ってくる時間、聞いてないよな」

巴は今頃、友達に囲まれて騒がしくも楽しい時間を過ごしているのだろうか。
慎重に冷蔵庫にケーキを運びつつ独りふと思う。

「はぁ・・・今年はうまいこと土日に重なったからなぁ」

時計の針は進んでも針が逆さまになるまでにはまだまだ時を数えなければいけない。
結局、俺に出来る残された事といえば開き直りしかない訳だ。
我ながらなんとレパートリーの少ないイブだろうか。
ソファーに深く腰を落としつつぼんやりとテレビを眺める。
ブラウン管に映るクリスマスツリーが金色に輝く。

「・・・ツリーか、今年は駅前に大きなツリーが飾られてたな」

タイムズスクエアのツリーとまではいかないが結構大掛かりな代物だと巴が言っていた気がする。

「ん?ツリー・・・巴・・・」

随分前に何か話した様な・・・
心に引っ掛かったキーワードで記憶の糸を手繰り寄せる。

113 :前スレ260 :2005/12/24(土) 18:55:46 ID:ISzd//6w
あれは確かまだ俺と巴が小さな子供の頃、

「巴、サンタさんにもらうプレゼントは決まったか?」
「うん、おにいちゃんは?」
「僕はラジコンをお願いするんだ、真っ赤なスポーツカー」
「巴はね、お星様をもらうの」
「お星様?それって空の上のあれ?」
「ううん、そうじゃなくてクリスマスツリーのてっぺんにあるお星様」

目を丸くする俺に嬉しそうに巴は屈託無く笑いかける。

「テレビでねアメリカのすっごく大きなツリーがあってそのてっぺんに綺麗なお星様があったの」
「それが欲しいの?」
「うん!!」
「それは無理だと思うよ、だって巴がそのお星様をもらったらツリーを見に来た他の子ががっかりするだろ?」
「あ・・・」

言っている事の意味を理解したのか明るかった表情がみるみるうちに曇りに早変わり。
正しい事を言った筈がなんだかもの凄い罪悪感に苛まれてしまう。

「ああっ、じ、じゃあさ見に行こうよ、そのお星様を」
「・・・ひっく、おにいちゃんと?・・・いつ?」
「今すぐは無理だけどもうちょっと巴も僕も大きくなったらさ」
「・・・いつ?大きくなったらっていつ?」
「えっ?・・・ええと・・・」

そうこうしている内にも曇りは大雨に変わる兆しを見せている。
降り出す一歩手前を前に必死に妥協点を見出す俺。

114 :前スレ260 :2005/12/24(土) 18:56:46 ID:ISzd//6w
「十年後、十年後に行こう・・・なっ!?」
「十年・・・ずっと先だよ・・・ぐすっ」
「そ、そんな事ないって!!十年なんてあっという間だよ、うん」
「・・・ほんとに?」
「僕は巴に嘘をついた事なんてないだろ?」
「・・・うん」
「じゃ・・・約束しようか、ゆびきり」

差し出した小指に巴の白くて小さな指が絡められる。

「ゆ〜びきりげんまん嘘ついたら針千本・・・」
「・・・の〜ますっ」

目尻に涙を溜めて満面の笑顔の巴、つられて同じ笑顔の俺。
お互いの声の隙間に込められた小さな願い。

12月24日午後6時、水滴で曇った窓の外はやはり曇り空。
気がつけばテレビの上にある小さな置き時計はもう夕刻を示す時間だ。

「・・・十年後、か・・・」

胸の内に湧き上がる予感に背中を押される様にコートを羽織る。
折角のクリスマスだ、ツリーを見に行く位はしておこう。
そんな風に結論付けて俺は冬の澄んだ冷たい空気に身を晒した。

115 :前スレ260 :2005/12/24(土) 22:10:00 ID:DnXxEcaI
商店街にエンドレスでかかるジングルベル。
綺麗にラッピングされた袋を抱え急ぎ足の背広姿、手を繋いで楽しそうに歩く母子。
赤と緑に飾られた街はこの日、クリスマス一色に染まる。
はしゃいだ街を横目に俺は駅前のクリスマスツリーを目指す。
ショーウインドーに映った自分の姿は随分と急いでいる。
気付かぬ内にいつの間にか早足は駆け足になっていたらしい。
開けた視界に飛び込む大きなツリー。

その下に、巴の姿があった

吹き付ける北風に耐えながらただじっと祈る様にツリーを見つめ続ける巴の姿が。
そんな巴の祈りを壊さない様、そっと隣へ歩みを進める。

「・・・大きなツリーだな、ニューヨークのツリーとまではいかないけどさ」
「・・・考え・・・てた・・・」
「何を?」
「今までの事、これからの事、ボクの事・・・お兄ちゃんの事」
「・・・」
「やっぱり、来てくれたんだね・・・お兄ちゃん」

ツリーを見上げていた瞳がゆっくりとした動きで真っ直ぐに俺に向けられる。

「ま、針千本は勘弁だからな」
「ふふっ、アメリカはまだ遠いけどここで妥協しておくね」

金色のイルミネーションを映して光輝く瞳。
美しい二つの宝石に心を奪われそうになりながら気付かないフリでツリーを見上げる。

「・・・綺麗だな」
「うん、ずっと・・・見ていたくなるよ」
「・・・巴はさ、いいクリスマスイブになったか?」
「少なくとも不幸じゃないのは確かだよ、こうしてお兄ちゃんとツリーを見る事も出来たし」

116 :前スレ260 :2005/12/24(土) 22:18:55 ID:DnXxEcaI
少しも悪びれる事なく巴は笑う。

「今日は、クリスマスイブはいい一日だったって思う、約束は・・・叶ったから」
「・・・巴・・・ホントの事、言ってみな?」
「?」
「我慢したって体に悪いだけだぞ・・・こんなに冷えて・・・寒かったな」

冷えきった黒髪を梳いて優しく頭を撫でてやる。
凍えた心も溶かしていく様に、そっと。

「家に帰って自分の部屋で独り抱え込むのか?そんなの悲しすぎる」
「・・・お兄ちゃん・・・やっぱり・・・だって・・・だって・・・嫌・・・だから」
「・・・いいから」
「・・・泣き顔なんて・・・約束、叶ったのに・・・お兄ちゃん」

大粒の涙と共に途切れ途切れの心からの言葉が音も立てず零れ落ちる。
痛い程に突き刺さる巴の気持ち。
溢れ出した気持ちは白い吐息となって冷たい夜空を彷徨いだしていく。

117 :前スレ260 :2005/12/24(土) 22:20:22 ID:DnXxEcaI
「辛・・・かった・・・一人で・・・街中でボクだけが一人ぼっちみたいで・・・」
「・・・」
「淋しかった・・・何度も家に帰ろうって思った・・・でも、出来なかった」
「・・・うん、うん」
「怖かった・・・ど、どんな顔してお兄ちゃんに会えばいいんだろう?って・・・解らなくて」
「・・・そっか、辛かったな」
「会いたい気持ちはどんどん大きくなって・・・でも会いにいけなくて・・・ボクは・・・」

胸の内から溢れ出す感情に戸惑いながら不器用に言葉を繋ぎ合わせていく。
そんな巴の姿に言葉に上手くならない優しい気持ちを届けたくて俺はただ、昔みたいに優しく頭を撫で続ける。
重なっていく素顔の泣き顔と懐かしい幼い頃の泣き顔。
巴は本当は誰よりも繊細で臆病で泣き虫な女の子。
こんな妹を泣かすなんて・・・本当に・・・とんでもない馬鹿兄貴だ、俺は。

「・・・バカみたいだね、一人で勝手に悩んで・・・お兄ちゃんは・・・」

俺の手に冷たい両手が添えられ紅く染まった頬に導かれる。

「お兄ちゃんは・・・ちゃんとボクを見つけてくれたのに」
「・・・巴・・・」
「・・・暖かい・・・お日様・・・みたいだよ・・・」

少し掠れた声と兎の様に赤い瞳、でも先程とは違い胸の痞えの取れた泣き顔。
そんな綺麗な泣き顔のまま、今日の澄んだ空気にも似た思い出に二人・・・いつまでも寄り添っていた。

118 :前スレ260 :2005/12/24(土) 22:23:07 ID:DnXxEcaI
「・・・少しは落ち着いたか?」
「・・・うん」
「にしても、変わらないもんだな」
「えっ?」
「巴の泣き顔、子供の頃のまんまだもんな」
「・・・つっ!!」

今更になって自分の置かれている事態に気が付いたのか瞬間湯沸し器になる巴。
真っ赤な顔で平静を装う巴の責める様な眼差しがなんとも可愛らしい。

「・・・イジワルだよね、お兄ちゃんは・・・」
「今頃、気が付いたか・・・巴・・・」
「・・・お兄ちゃん・・・」

見詰め合うには近すぎるお互いの息が頬に触れ合う距離。
何かを察する様に巴はそっと瞳を閉じる。
僅かに震える長い睫毛、寒さの中でも色あせることのない唇。
俺は優しく・・・額に手を当てる。

「・・・え?」
「やっぱり熱がある、それもかなり」

面食らった顔した巴を余所に羽織っていたコートを手渡す俺。

「ほら、これを着て」
「だ、大丈夫だよ・・・ボクは平気だから」

平気という割には随分慌てた、というよりなんか期待外れだった感じの巴。
先程より若干頬が赤くなった気もする。
しかし、それよりも今は巴の体調の方が先決だ。
この寒空の下にずっと一人でいたのだ、無理も無い話だが俺の診た所ではかなりの熱がある。

119 :前スレ260 :2005/12/24(土) 22:24:47 ID:DnXxEcaI
「そうかそうか・・・で、本当は?」
「・・・ゴメン、ホントは立ってるのもツライ」
「まったく・・・ほら乗りな」
「背中、お兄ちゃんボクを背負って帰る気なの?」
「立ってるのも辛いんだろ?」
「でも・・・」
「ま、クリスマスイブだしな、今日は甘えれるだけ甘えればいいさ」

おずおずと遠慮がちに俺の背中に巴が体を預けてくる。
こんな事位では泣かした分の罪滅ぼしにはならないだろうが幾らかはマシになるだろう。

「よっと、じゃあ帰ろう」
「・・・うん、お兄ちゃん・・・重くない?」
「いや、問題はそこじゃないな」
「?」

おんぶなんて何年もしていない所為か自己主張の強くなった巴の体を妙に意識してしまう。
解ってはいた筈だが軽い割にしっかり凹凸があるというかなんというか、これは。

「い、いかんいかん・・・反省したばっかだってのに」
「お兄ちゃん、やっぱりボクは歩いて」
「いやいや、見縊ってくれるなよ?巴一人担ぐ位の力は十二分に持ってるさ」

邪念を振り払い、華やぐ街と金色に輝くツリーを背に家路を歩き出す。
ジングルベルの唄は少しづつ遠ざかり、静かな夜の闇が辺りを包み始める。
永遠にも思える静寂の時間。
自分の足音だけがやけに耳に残る。

120 :前スレ260 :2005/12/24(土) 22:32:26 ID:DnXxEcaI
「・・・お兄ちゃん・・・怒ってる?」

俺の背中で大人しくしていた巴が不意に口を開く。

「怒っちゃいない、少し呆れてはいるけど」
「・・・願掛け・・・してたんだ」
「願掛け?何をお願いしたんだ?」
「それはヒミツだよ、でもお兄ちゃんのお陰で解ったんだ・・・それは大した事ないんだって」

もう離さないとばかりに肩に廻された手にギュッと力が篭められる。
そんな仕草さえ子供の頃と変わらない巴に懐かしさを感じてしまう俺。
普段は随分と大人びて見える様になったが幼さはどこかに残るものなのかもしれない。
ちょっとした悪戯心と不思議な安心感を持って俺はきっかけを待っていた神託を厳かに下す。

「俺もさ、巴に言わなきゃならない事があるんだ」
「・・・何?」
「言い難いんだがな・・・間違えてるんだよ」
「何を?」
「約束の十年後は一年先、来年だ」
「・・・え?・・・あれ?」

目の前で指折り数え、ピタリと指が止まる。
・・・おぉ、うろたえとるうろたえとる。
年末にかました今年一番の大ポカと今年一番の慌て様。
巴を完璧などという輩に見せてやりたい位だな。
焦りまくる巴を背にとうとう笑いの限界に達する。
お互い本音になっていた分、余計に可笑しくて堪らない。

「ぷっ・・・くくく・・・あはははっ!!」
「何もそんなに笑わなくてもいいのに・・・イジワル・・・」
「い、いや悪い・・・久々に笑わせてもらったよ」

121 :前スレ260 :2005/12/24(土) 22:39:14 ID:DnXxEcaI
「でも、それならどうしてお兄ちゃんはボクが外に一人でいるって分かったの?」
「う〜ん、それなんだがな・・・聞こえた気がしたんだ、巴の泣き声がさ」
「・・・そう・・・なんだ・・・」

急に真摯な顔になりじっと俺を見つめる巴。
俺は思わず気恥ずかしくなって空を見上げる。
さっきの台詞は我ながらあまりに柄じゃない事を言ってしまったと思う。

「流石に雪は降らない、か」

ポツリと漏れ出た言葉の遠くで冬の星空は冷たく瞬きを繰り返す。
同じ空の下で何人の人々が幸せにクリスマスイブを迎えているのだろう。

「・・・お兄ちゃん・・・お願いがあるんだ」
「改まってどうした?言ってみな」
「横を向いて・・・」
「・・・は?それだけ?」
「いいから横を向いて・・・」
「はぁ、こうか?」
「・・・んっ・・・」

そっと交わされる頬への口付け。
正に一瞬の出来事。
唇の触れた頬から巴の熱がうつったみたいに熱くなる。
絶句する俺。
紅い顔していたずらっぽく微笑む巴。

122 :前スレ260 :2005/12/24(土) 22:41:10 ID:DnXxEcaI
「なっっっっ!?」
「・・・感謝の気持ち、言葉だけじゃ・・・伝え切れないって・・・思ったから」
「お、お前なぁ・・・」
「大好きだよ、お兄ちゃん」

人差し指を唇に当てた巴の会心の微笑みに思わず見とれてしまう。
こんな笑顔に見つめられては言葉を発するだけの余力はない。
俺の背中で目一杯甘えてみせる妹はどうやら幸せなクリスマスイブになったらしい。
まぁ・・・そういう事にしておこう。
家に辿り着くまであとわずか。
長い時間を掛けた二人の約束は新しい思い出と共に胸の中で色褪せる事無く輝いていた。

「・・・お兄ちゃん」
「うん?」
「・・・メリークリスマス・・・」


123 :前スレ260 :2005/12/24(土) 22:52:12 ID:DnXxEcaI
という訳でちょうど前回の投下から一月メリークリスマスです。
なんとかイブの内に投下完了。
クリスマスという事で話は気持ち甘めにしたのですが如何だったでしょうか?
そんなこんなで今年も後わずか、神々のクリスマスssに期待しております。
ええ、本気で楽しみにしております、遊星様。

124 :名無しくん、、、好きです。。。 :2005/12/24(土) 23:00:09 ID:B46v4i9M
萌えました。グッジョブ!!

125 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/24(土) 23:01:39 ID:dQ915QoI
【相川梨那編】

今日は十二月ニ十四日。
ここ日本では、くりすますというお祭りが行われるらしい。
「ま、オレの知ったこっちゃないわな」
木枯らし吹く窓の外を見ながら呟き、
また一つ冬休みの宿題の問題集を埋めていく。
まぁ。このペースなら、今日中に終わるだろう。
俺が一息入れようかと思ったとき、
カンカン
甲高い音がどこかから聞こえた。
ノックかと思ったが、ドアの方からじゃない。
この音は、窓の方から……
「やっほー♪お兄ちゃん」
窓の向こうには、何だかよく知っている女が。
「……よぅ、梨那」
俺は体を縮ませ、のっそりと窓のそばに歩き、いや、もとい這っていく。
「うぅー!!さむーい!!開けて開けて!!」
梨那は足踏みをしながら、ガラスをバンバンと叩く。
「そしたら俺が寒いじゃん。玄関から入ってこいよ」
「玄関に行く前に、凍死しちゃうよー!!」
「大丈夫だ。人間はそれぐらいじゃ死なない」
「ヒドい……ヒドすぎるよー!!幼馴染がこうして寒さに震えてるんだから、少しは優しくしてよー!!」
「つーかさ、人の家のベランダに勝手に入ってくるなよ」
「もー!!そんなことはいいから、早く入れてよー!!」
「ヤダね」
「むー、しょうがない……作戦その1だ」
「作戦?」
俺が聞き返した瞬間……

126 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/24(土) 23:02:13 ID:dQ915QoI
「あーるーはれたーひーるーさがりー いーちーばーへつづーくみちー……」
梨那がこの世の終わりのような顔をして、歌を歌い始める。
しかし、クリスマスソングとかじゃなくて、ドナドナっ!?
何だ、この異様なプレッシャーはっ!?
「どなどなどーなーどーなー……」
「や、やめろよ!!」
「こうしをのーせーてー……」
「やめろって!!」
「にばしゃがゆーれーるー……あ、終わっちゃった」
「ふぅ……俺の勝ちだな」
「むぅ、やるなー」
腕を組んで少し考える梨那。
そして、
「こうなったら、泣くぞー!!」
「泣け」
俺がそういうと、ガラスの向こうの梨那は大きく息を吸い込み……
「わぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁ!!!!!」
大声で叫びだした。
……マジか。
震えるガラス。ほえる近所の犬。そして、騒がしくなる階下……。
勘弁してくれよ……。
「分かった!!入れてやるから!!止めろ!!」
俺は窓を開き、梨那を引っ張り込む。

127 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/24(土) 23:02:47 ID:dQ915QoI
「わーい!!ありがとぉ!!」
冷たい風と共に、俺の部屋へと侵入する梨那。
そして、エアコンの風が直撃する場所で、意味も無くくるくると回る。
「で……何か用?」
俺はベッドに座りながら、ぶっきらぼうに尋ねる。
「ああ、そう!!梨那、お兄ちゃんにお願いに来たの!!」
回転運動をやめ、両手を体の後ろで組んで、俺を見上げる梨那。
これは、目一杯の可愛いポーズ(のつもり)。
つまり、このポーズをしたときは、最っ高にロクでもないことを要求されるのだ。
「……宿題なら見せんぞ」
この状況で、そんなワケはない。
これからの要求を考えたら、この程度なら安いもんだ。
「ううん、今日はそうじゃなくてぇ……」
コートのポケットから、ゴソゴソと何かを取り出す。
「じゃーん!!クリスマスパーティー!!」
「行かねぇ」
こういうのも「二つ返事」と言うのだろうか。
俺は、間髪いれずに即答した。
「何でー!?まだ梨那何も言ってないぃー!!」
「梨那が、俺にとって魅力的な条件を提示してくるとは考えられない」
俺は机に向かい、答える。
話しながらでも、この程度の問題なら解ける。

128 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/24(土) 23:03:20 ID:dQ915QoI
「分かんないよー?」
「いや。分かる。まぁ、仮にそうだとしても、行くか行かないか迷うのが面倒だ。だから、知らないまま断る」
「にゃぁ……それは面倒くさがり過ぎるよー」
「短い冬休みを有効に活用したいだけだ。迷う時間が勿体無い」
「で、でも!!きっとパーティー、楽しいよー!!」
「知らん。そもそも、そんなとこ行ったら、今日中に宿題終わらんだろうが」
「え?もう終わるのっ!?」
「このペースならな。だから帰れ」
「……」
急に黙る梨那。
「どした?」
俺が問題集から目を離し、そちらを見ると、相当ヘコんでる梨那が。
「あーあ、梨那も行きたかったな……」
「一人で行きゃ良いのに」
「でも、みんなカレシ連れてくるって言うんだよ?梨那一人じゃ行けないよ……」
「あ、そう……って、おい。俺を彼氏として連れてく気だったのか!?」
「うん」
意外と強かなヤツだ……。
よかった。行かないって言って。
「行きたいなぁ……」
「あのな、梨那。そんな見栄張りたいだけだったら、行くのやめとけよ」
「別に見栄張りたいわけじゃないもん」
「じゃ、何?何でそこまでして行きたいの?」
「だって、せっかくのクリスマスなのに、何の予定もなくなっちゃうよ……」
「……ったく」
俺はシャーペンを机にたたきつけ、床にペタンと座る梨那の手を掴む。

129 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/24(土) 23:03:53 ID:dQ915QoI
「じゃ、今夜は何か食いに行こう、二人でさ」
「……え?」
あっけに取られたように、俺の目を見つめる梨那。
え、何、このリアクション?
「何だよ?」
「お兄ちゃん、すごい優しい……」
ぶん殴るぞ、このアマ。
とはいえ……この雰囲気でそんなことは出来ない。
「優しいのはイヤか?」
怒りを抑えるため、少しキザめにしてみました。
どうでしょう、お客さん。
「ううん……好き」
お気に入りのようですね。
「その代わり、パーティー断わっとけよ」
「……やっぱり、パーティーはダメなの?」
「別に誰かの男自慢なんて聞きたくないだろ?つーか、さすがに知らんヤツと同じ時間を過ごすのはイヤだ」
「うん……そうだね。だって、梨那のお兄ちゃんが一番だから」
「当然だ」
梨那の頭をポンポンと叩く。
「さてと……じゃあ、ペース上げなきゃな」
「うん、じゃあ梨那は帰るね?」
「おぅ。何か良い店ないか調べてくれよ」
「はーい!じゃ、また後でねー?」
小さく手を振り、ベランダに戻る梨那。
俺は小さく手を挙げ、それに答える。
愛用のシャーペンをくるくる回しながら見る問題は、
いつもよりも簡単で、いつもよりも早く解けてしまう。

俺は結局、何だかんだで、クリスマスに巻き込まれてしまった。
まぁ、それが良いか悪いかは、今夜しだい……か。

130 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/24(土) 23:04:25 ID:dQ915QoI
【霧島羽音編】

俺の母は、姉妹の仲が非常に良い。
年に数回は、俺の母とその姉妹、そしてそれぞれの家族が集まって、宴会を行う。
今日も、その一つ、クリスマスパーティー。
まぁ、毎年言ったり行かなかったりだが、今年は絶対に行きたい理由があった。
それは……
「お兄ちゃん、メリークリスマスです」
「あ、羽音ちゃん。メリークリスマス」
彼女は、俺の彼女の霧島羽音。
母の姉の娘なので、俺の従妹ということになる。
「いらっしゃい。もう皆来てるわよ。さ、あがってあがって」
伯母さんに丁寧に挨拶され、ゾロゾロと羽音ちゃんの家に上がっていく母。
伯母もその母についていき、羽音ちゃんに何か耳打ちしてリビングへと消えた。
そして、顔を真っ赤にする羽音ちゃん。
「何を言われたの?」
「え!?え……っと、何でもないんですけど!!」
「ならいいけど」
「えっと、あ、あがってください」
「うん。お邪魔します」
羽音ちゃんに言われるままに、靴を脱ぎリビングに向かう。
しかし……
「可愛い……」
羽音ちゃんが、ホント可愛くて、もう……。
今、かなり理性が頑張ってます。
「何か言いました?」
「うん、ちょっと独り言」
俺の気持ちも知らず、俺の顔を覗き込んでくる羽音ちゃん。
ヤバい……これじゃ、俺の理性も長くは持たないぞ……。
このままでは、『可愛い』を連発する生き物になってしまう。

131 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/24(土) 23:04:58 ID:dQ915QoI
「ねぇ、羽音ちゃん?」
「何ですか?」
「少し、いいかな?」
「あ、はい……いいですよ」
「じゃ、ちょっと外行こうか?」
「はい」
というわけで、先ほど入ってきたばかりなのに、羽音ちゃんと二人で庭に出る。
だが、外に出た瞬間、冷たい風が急速に俺の体温を奪われ、思わず身を縮ませる。
そしてやっと、「しまった」と思ったが、もう遅い。
「あ、ゴメンね。寒いのに」
「ううん。私、こう見えても寒いの平気なんですよ」
何て言いながらも、スカートは流石に寒そうだ……。
「あ、羽音ちゃん」
俺は急いで着ていたジャケットを脱いで、羽音ちゃんに着せてあげる。
「お、お兄ちゃん……」
羽音ちゃんは、凄く恥ずかしそうな顔をしていたが、突然フッと笑い出し、
「張り切ってますね?」
と、悪戯っぽく微笑む。
こんな顔されたら、ちょっとコッチが哀れに思えてきて……
「あ、というより……ちょっといっぱいいっぱいかも」
自分の不安を正直に言ってしまう。
羽音ちゃんは、その言葉を少し考えていたようだが、
「えへへ、嬉しいなー」
「え、嬉しい?」
「うん。お兄ちゃんが私のために凄く一生懸命になってくれてる。そう考えたら、嬉しくて」
そういって、俺の肩に寄り添う羽音ちゃん。

132 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/24(土) 23:05:31 ID:dQ915QoI
「お兄ちゃん……ありがとう……」
小さく俺にだけ囁く。
「え、そんな……」
「ううん。お兄ちゃんがそばにいるだけで幸せだよ……」
「うん。俺もそうみたい」
そっと羽音ちゃんの肩を抱き寄せる。
「さっき会ったときからさ、ずっと羽音ちゃんが可愛くてしょうがなくてさ……」
「うん」
「だから、頭一杯になって皆の前で言っちゃう前に、羽音ちゃんだけに言いたかった言葉があるんだ」
「……はい」
「羽音ちゃん。俺は、キミのことが……」

さて、今宵はクリスマス。
聖なる夜に、大好きな羽音ちゃんと過ごす。
もしこれが奇跡というなら……この冬は、将来きっと良い思い出になるだろうね。

133 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/24(土) 23:06:04 ID:dQ915QoI
【三上沙耶編】

「暗いよみちは〜♪ピカピカのおまえの鼻が〜♪役に立つのさ〜♪」
今日は一二月二十四日。
俺は新聞を読みながら、隣で妹の沙耶が歌うクリスマスソングに耳を傾けている。
沙耶は、嬉しそうに笑いながら、歌にあわせ体をゆする。
ゆったりとした空気の流れる我が家。
しかし、
「買い物行きたくないなぁ……」
そう。
これから夕飯の買出しに行かないと思うと、気が滅入る。
とはいえ、今日はクリスマスイブ。
沙耶が楽しみにしている以上、残り物でなんとか。というワケにも行かないだろうし……
……そうだ、沙耶に行ってもらおうか。
いや、恐らくかなりの荷物になるだろう。沙耶に行かせるのは無理だろうな。
「仕方ないな……」
天気予報によれば、雪が降るとか降らないとか。
とにかく、雪の降る前に、買い物に行きたいところだ。
「沙耶」
「あめはよふけすーぎーにー♪……はわ?なーに?」
「俺、ちょっと買い物に行って来るよ」
「あー、サヤも行きたいー!!」
「沙耶が?」
「うん!!今日はね、好きな人と一緒にいなきゃいけないんだよ〜?」
どっから聞いたんだよ、そういうこと……。
「サヤね、おにぃちゃんのこと好きだから、一緒に行くの」
「そっか。じゃ、一緒に行こうか」
「うん!!」
「ほら、外は寒いから、コート着てきな」
「うん!!」
───────────────────────

134 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/24(土) 23:06:37 ID:dQ915QoI
というわけで、沙耶と一緒に近所のスーパーへ。
「ねぇねぇ、おにぃちゃん、おにぃちゃん!!」
モコモコしたコートに、フードをすっぽり被った沙耶が俺の隣でスキップしながら言う。
「んー?」
「今日の晩御飯はなーに?」
「んー……何にしようかなー。クリスマスだし、何か美味しいもの食べたいよなー?」
「うん!!」
「作るの面倒だし、何かお惣菜でも買っていこうか?」
「うん。サヤね、ハンバーグが食べたいよー!!」
「そうだな。ハンバーグも買おうな」
「わーい!!ねぇねぇ、ケーキは!?ケーキは!?」
「ああ、後で買おう」
「うん!!」
「そうだ、何かジュースとか、お菓子も買わなきゃな」
「うん!!えへへ、楽しみだなー!!」
沙耶は、嬉しそうにいつもより高く、ピョコピョコ跳ね回る。
「沙耶、迷惑になるから少し大人しくしような?」
「はわ……ゴメンなさい」
「分かればよろしい。さ、行こう」
「うん」
沙耶に手を差し出すと、沙耶は嬉しそうに俺の手を握り締める。
そして、いつもより賑やかで、活気のある食品売り場へ向かうのだった。
───────────────────────

135 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/24(土) 23:07:11 ID:dQ915QoI
「えへへ、いっぱい買ったねー?」
ビニール袋両手で重そうに下げている沙耶が、ニコニコした顔で俺に話しかける。
「ああ。それより、沙耶、重くないか?」
「ううん。だいじょーぶだよ」
とは言うものの、相当歩きづらそうに見える。
「やっぱり、俺が持つよ」
「だ、ダメだよー!!サヤだって、できるんだからー!!」
……こうやって、人は大人になっていくのだなぁ……。
などとしみじみ思っていると、
「あれ?」
隣にいたはずの沙耶の姿が見えない。
重い荷物をぶら下げながら、後ろを振り返ると、呆然と何かを眺めている沙耶が。
「沙耶ー?」
遠くから呼んでみる。
「はわー……」
ダメだ、聞いちゃいない。
仕方なく、俺は買い物袋をもうはや引きずるようにして、沙耶のところまで戻り、トントンと肩を叩く。
「沙耶?」
「は、はわっ!!」
驚いて、持っていた袋を落とす沙耶。
「何見てたんだ?」
俺が沙耶の見ていたあたりに目を向けると、
そこには、巨大な犬のぬいぐるみが……。
「デカい……」
沙耶よりも。
「うん。可愛いよねー」
「欲しいの?」
「うん。お年玉で買うんだー」
うわ……沙耶にしては、妙に現実的……。

136 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/24(土) 23:07:58 ID:dQ915QoI
クリスマスプレゼントに買ってあげようか。って言いたかったんだが……。
せっかくの機会だ。しょうがない。ちょっと言いづらいが……
「ねぇ、沙耶」
「はわ?」
「コレ、俺から沙耶へのプレゼントにしても良いかな?」
「……?」
意味が分かりません。とでも言うかのように、首をかしげる沙耶。
「まぁ、いいか。すいません。これくださーい」
レジに持っていくのは面倒だと判断。
店員を呼び、会計をしてもらう。
「はわわっ!?い、いいよぉ、おにぃちゃん!!」
「まぁまぁ、コレ、欲しいんだろ?遠慮するなって」
「で、でも……」
「何?」
「サヤ、おにぃちゃんへのプレゼント買ってないし……」
何だ、そんなこと。
「沙耶。俺は、別にそんなもんが欲しいわけじゃないんだぞ?」
「はわ……?」
「俺は、沙耶に『ありがとう』って、笑ってほしいから、買うんだからな」
「おにぃちゃん……」
「ほれ、そういうときはさ」
「うん。ありがとう、おにぃちゃん」
「よーし、合格だ。帰るぞー?」
「うん!!」

両手に荷物一杯抱えて、家路を急ぐ。
途中、沙耶の歌う歌が、とても楽しげで、凄く楽しくなってきた。

そういえば、空が段々曇ってきている。雪が降るかもしれないな。

137 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/24(土) 23:08:31 ID:dQ915QoI
【双子編】

「ねぇねぇ、千奈ちゃん?お兄ちゃんは?」
十二月二十四日。石川家リビング。
双子の姉、唯奈がドアを開けながら、双子の妹の千奈に話しかける。
「しーっ」
千奈は微笑みながら人差し指を唇に当て、唯奈を黙らせた後、その指を下に向ける。
その指の先を覗き込む唯奈。
「あ……」
その先には、ソファーで寝息を立てる彼女たちの兄、石川真司がいた。
「今寝ちゃったところだよ」
「なーんだ、つまんないの」
「何か用事?」
「ううん。ヒマだから、遊んで欲しいなーって」
「何だ、やっぱり」
「分かってた?」
「うん。何となくだけど」
そういって、微笑む千奈。
こういうところはやはり双子なのだろう。
「でも……よく寝るお兄ちゃんだなぁ……」
唯奈は、真司の頬をツンツン指で突きながら、小さな声で言う。
「や、やめようよ、唯奈ちゃん」
「でも、起きそうもないけどなぁ」
唯奈はさっきよりも強く指を押し付け、挙句の果てにその指をグリグリ。
それでも、真司は身動き一つせず、眠り続けている。
「すごいなぁ……」
さすがの唯奈も、そんな真司に呆れてしまった。
「お兄さん、そんなに疲れてるんだね」
千奈は、真司の頬の、さきほど唯奈にグリグリされた辺りを撫でながら言った。

138 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/24(土) 23:09:04 ID:dQ915QoI
「でも、冬休みなのに何してるんだろうね?」
「そういえば、昨日も帰ってきたら寝てたよね」
「そうそう。怪しいなぁー!」
「何が?」
「ふむ。唯奈の推理が正しければ……」
思わせぶりな口調で、テーブルの上に置かれた真司の鞄を持ち上げる唯奈。
そして、中を見ると、
「やっぱり……」
「さっきから何がなの?」
「ほら、これ」
そういって、唯奈が中から取り出したのは、緑色の包装紙に包まれた小さな箱。
「クリスマスプレゼントだよ、これ」
それはマズいだろ、唯奈。
「……誰のかな?」
止めようよ、千奈。
「うーん……一個しかないところを見ると……」
「私たちのじゃないってこと?」
「多分」
「じゃあ、誰かな?」
「うーん……」
まったく同じポーズで考え込む二人。
すると……
「ん……ぅん」
真司が何か言葉を発する。
「「っ!?」」
今度も同時に、ビクッと体を震わせる二人。

139 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/24(土) 23:09:36 ID:dQ915QoI
「わわわぁっ!!ご、ゴメンなさいぃー!!」
「お、落ち着いて唯奈ちゃん。お兄さん、まだ寝てるから!」
「え……あー、よかった」
ホッと胸をなでおろす唯奈。
千奈は真司の顔を覗き込んで、完全に無事であることを確認した後、
「とにかく、それ戻さなきゃ。怒られちゃうよ?」
「うん、そうだね」
唯奈は、プレゼントを真司の鞄の中に戻し、
「でも……誰へのプレゼントなんだろう……」
「唯奈ちゃん、もうやめようよ」
「でも、千奈ちゃんは気にならないの?」
「それは……気になるけど……」
千奈は言葉に困り、ふと窓の外を見る。
外はもう暗く、星が輝くのが見える。
そのまま少し、庭を眺めていると……
「え……」
突然、庭に植えてある大きなケヤキが輝き始めたではないか。
「わぁー……」
窓に駆け寄って、眺める唯奈。
ケヤキだけではない。庭に植えてある木全てが光を放っている。
「でも、いつの間に……」
「多分、お兄ちゃんだよ」
「うん」
分かってるという風に頷く千奈。
「ねぇ、千奈ちゃん。ちょっとお兄ちゃんをビックリさせちゃおうか?」
「え?」
「ちょっと耳貸して」
「……誰も聞いてないと思うけど」
「いいの、気分気分。じゃ、お耳を拝借っと…………」
───────────────────────

140 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/24(土) 23:10:09 ID:dQ915QoI
すごい良い気持ちだ……。
ちょっと寒いけど……体も軽くて、今最高に良い気持ち……。
このまま寝ちゃおうかな……
…………
……
パン!!
「うぉっ!?」
突然、何かが破裂する音がして、俺は飛び上がる。
そしてソファーから見事に落下した。
「痛っ……」
もう何が何だか分からず、床の上に仰向けに寝転んでいる。
すると……
「きゃはははは!!お兄ちゃん、すごい驚いてるー!!」
「あの、お兄さん、大丈夫ですか?」
「え……?」
俺の視界に現れたのは……サンタクロースが二人。
俺の妹二人に非常に良く似ている。
「……」
えっと……コレは……。
寝ぼけた頭で色々考えてみた。
その結果、一つの結論に達する。
「夢か……」
「お、お兄ちゃん!!夢じゃないよ!!」
唯奈みたいなサンタが慌てて言った。
「ね、千奈ちゃん?」
「はい……現実ですよ、お兄さん」
千奈みたいなサンタが付け足す。

141 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/24(土) 23:10:41 ID:dQ915QoI
「現実……」
現実……。
へぇ、現実なんだ。
あんま驚いてないな、俺。
つーか……
「お兄ちゃん」「お兄さん」
俺が呆然と寝転がっていると、二人に呼びかけられる。
「何?」
「パーティーしようよ!!」
「お菓子や、ジュースも買ってあるんですよ」
「パーティー?」
「うん。クリスマスだもん」
「楽しみましょう?」
唯奈の屈託の無い笑顔と、千奈の少しはにかんだ笑顔。
……そっか。
そうだよな。
どうして気付かなかったのかな。こんなに嬉しいのにさ。
「ああ。そうだな」
「うん、決まり!!」
「じゃあ、準備しましょうか」

……多分、千奈と唯奈は俺にとってなくてはならない存在なのだろう。
それを再確認した、今日、クリスマスイブでした。

「ところで、あのプレゼントは……誰のなの?」
「ゆ、唯奈ちゃん!!」
「お前ら……見たのか?」
「うん。ねぇ、誰の?」
「秘密だ」
ここまで期待されてるなんて……まさか自分のなんて言えないよなぁ……。

142 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/24(土) 23:11:23 ID:dQ915QoI
【立花未来編】

外は闇の中。
闇夜を照らす街灯すらもロマンチックに感じられる今日はクリスマスイブ。
ここ立花家では、リビングのソファに俺と妹の未来が、たわいの無い話をしながら座っている。
「もう十一時四十五分ですか……」
未来が時計を見ながら呟く。
「思ったより早かったな」
俺はジュースを飲みながら答えた。
「そうですね……」
「朝からいろいろあったからね、今日は」
「ええ、本当ですよね」
じゃあ、今日のことを少しお話しようかな。
───────────────────────
というわけで、一二月二十四日の朝。
「未来ちゃん、今日の夜はどうする?」
味噌汁をフーフー冷ましている未来に話しかける。
「……と言いますと?」
未来ちゃんは、お椀を置いて、真面目な顔を見せる。
「いや、料理作る?それともどっか食べに行く?」
「料理、作りたいです」
未来が目を輝かせて答える。
「だよね。でも、それだと俺がヒマなんだよねぇ……」
「じゃあ、兄さんも一緒に作りましょうよ」
「いや……いい」
俺だって、未来ほどじゃないが料理は作れる。
でも、キッチンの中じゃ、未来にとって俺は邪魔でしかないようで、
最初は一緒に作っていても、ころあいを見て、未来に追い出されてしまう。
つーわけで、『男子厨房に入るべからず』を素で行ってます、ウチは。
「そうですよね」
未来が、予想通りといった感じで小さく頷く。

143 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/24(土) 23:11:57 ID:dQ915QoI
「じゃあ、どこか食べに行く?」
「どこも一杯ですよ、今日は?」
「だよねぇ……」
「やっぱり家でやるしかないんじゃないですか?」
嬉しそうだな、おい。
「ま、しょうがないか」
「しょうがないですよ」
……凄い笑顔だよ、未来ちゃん。
「でも、兄さんにはやってもらうことがあるんですよ」
「……荷物持ち?」
「ええ」
「ですよね……」
「はい。さてと、午前中は計画でも立てましょうか」
微妙な表情を見せる俺を横目に、未来は鼻歌を歌いながら、また味噌汁を冷まし始めたのでした。

その後。
テーブルの上に並べられた未来特選の料理の本。
嬉しそうに、ペンを走らせる未来の横顔。
俺は、そんな未来を横目で見ながら、ソファーにぐったりと座る。
「あ!!」
ふと、俺は良いアイデアを思いつき、立ち上がる。
「どうかしました?」
未来はこちらを見ずに、声をかけた。
「そうだ、未来ちゃん。俺、プレゼント買ってくるよ」
「はい。でも、誰にプレゼントするんです?」
「誰って、未来ちゃんしかいないじゃない?」
俺がそういうと、未来はゆっくりと体をこちらに向け、
「何言ってるんですか、兄さん?お互いお金がないから、プレゼントは毎年買わないことにしてたじゃないですか」
「んー。まぁ、そうなんだけど……」

144 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/24(土) 23:13:07 ID:dQ915QoI
「そんなにヒマですか?」
「うん。まぁ、それもあるけど、未来ちゃんはいつも頑張ってるから、たまにはご褒美をあげなきゃと思って」
「兄さん」
「え?」
俺が未来の方を向くと、未来は微笑みながら『こっちへ来い』と手で示す。
「何?」
俺が奇妙に思いながらも歩いていくと、
「まぁ、座ってください」
と、椅子を出す未来。
「え?何?」
俺が大人しく座ると、今度は未来が立ち上がってキッチンへ向かった。
そして、カップを二つ持ってきて、
「はい、どうぞ」
「あぁ……」
あっけに取られたままの俺に、暖かいお茶の入ったカップを手渡し、また椅子に座る未来。
「……何なの?さっきから?」
「ふふ。兄さん」
「何だよ?」
「プレゼントは、いりません」
「……やっぱり?」
「そんな残念そうな顔しないでください。何度も言いますが、家事は好きでやってるんですから
 それでご褒美を貰うわけには行きません」
「いや、でもね……」
「わかりました……じゃあ、ください」
「うん。何が良い?」
俺がそういうと、未来は少し俯きながら

145 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/24(土) 23:13:41 ID:dQ915QoI
「兄さん……」
「何?」
「えと……そうじゃなくて……えっと……欲しいのは……兄さん……です」
にいさん。
ニーサン……?
兄さん……!?
「……えぇぇぇぇっ!?」
ちょっと待ってよ!!
いきなり!?まだ昼間だよ、未来ちゃん!?
「あ、変な意味じゃないんですよ!!えっと……ただ、兄さんはどこにも行って欲しくないっていうか……
 だから……!!」
顔を真っ赤にして、必死に言い訳をする未来ちゃん。
それなら言わなきゃ良いのに。とも思うが……可愛いから良し!!うん!!
「だから……えと……今日は一緒に……」
「分かった分かった。どこにも行かないよ、今日は」
「あ、はい!!ありがとうございます!!」
「その代わり……」
「何ですか?」
「料理作ってるときも、俺に冷たくしないこと!!」
「え?してますか?」
「してるしてる。言葉がすげぇ素っ気無いもん」
「そうですか?」
「自覚ないんだ、怖いねー、潜在意識って」
「怖くありません!!大丈夫です!!」
「じゃあ、約束する?」
「します!!」
「よし、言ったなー。覚えとけよー」
───────────────────────

146 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/24(土) 23:14:28 ID:dQ915QoI
「……ま、相変わらずだったんだけどね」
「そ、そんなことないですよ?」
「そうかー?ちょっと話しかけただけなのに
 『黙ってください』とか『消えてください』とか、結構ショックだったけど?」
「え、そんなこと言いましたか?」
「言ってた言ってた。慣れてるとはいえ、ちょっと泣きたかった」
「え……嘘ですよね?」
「嘘じゃないって。だって、言い方もかなり棘があるんだもん」
俺が笑いながらそういうと、未来は急にしおらしくなって、
「兄さん、ゴメンなさい……」
小さく頭を下げた。
「いいよいいよ、気にしてないから」
「……でも」
「大丈夫、そんなことで未来ちゃんを嫌いになったりしないから」
と、冗談交じりで語る。
すると、未来ちゃんは、少し恥ずかしそうに
「はい……」
ちょっと予想外の反応に頭を掻く俺。
しかし!!やられっぱなしの俺ではない!!
「だけど……一つだけ俺のお願い聞いてくれない?」
「いいですよ、何ですか?」
かかった!!
……別にたいそうなモンじゃないですけど。
「膝枕して」
「ひ、ひざまくらっ!?」
「ダメか?」
「……どうぞ」
うっしゃあっっ!!
心の中でガッツポーズ。

147 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/24(土) 23:15:07 ID:dQ915QoI
「じゃ、お言葉に甘えて」
そのまま、未来ちゃんの、ふわふわの、マシュマロの膝に倒れこむ。
……うわぁ、柔らかぃー。
上を見れば、未来ちゃんの顔。
逆光でよく表情が見えないけど、いつもの恥ずかしそうな顔だろうな。
「……そんなにいいんですか?」
「え?」
「凄く……なんていうんですかね、恍惚としてたから……」
「恍惚……?」
「はい。そんなに気持ち良いのかなーと思って」
「うん。ふとももはフワフワだし。未来ちゃんは可愛いし」
「……もう」
ニヤニヤしながら、未来ちゃんの顔を見上げる。
未来ちゃんの優しい笑顔がぼんやりと見えて……。
「幸せだなー」
「そうですね」
「あのさ、実は俺の部屋にプレゼントがあるんだけど……ゴメン、もうちょっとこのままでいたい」
「ふふっ。わかりました」
柔らかい微笑を見せる未来。
俺は、そんな笑顔に癒されながらも、この心地よさに流されてしまう。
今日はクリスマスイブ。
日本人の俺には全く関係ないはずだが……いいよねぇ、こういうのも。

148 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/24(土) 23:21:12 ID:dQ915QoI
【反省文】
まず20レスほど、ご迷惑をおかけしましたことをお詫び申し上げます。
さえ、今回は時間(とネタ)が余りなかったので、ロクに推敲もしてない文章です、すいません。

えっと、最後に、先生の期待のはるか下を行く文章を書いてしまったことを、心よりお詫びします。

149 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2005/12/25(日) 02:09:22 ID:Wuo9mNci
>>260
乙です!
相変わらず文章が綺麗です。見習いたいものです

>>遊星氏
乙です!!
やはりネタがないと言いつつもしっかり仕上げてきますね
さすがです
でも、来年のクリスマスが少し心配ですw


気が付けばクリスマス…SS書くと言いつつなかなか投下しなくてすいません
レポートさえ…レポートさえ半年分も溜めなければ……


150 :名無しくん、、、好きです。。。 :2005/12/25(日) 02:52:55 ID:u+pCD5/N
ぐ、ぐふっっ!
何か久しぶりだから萌え耐性が低くなって…
HPガンガン削られたよ。
なにはともあれグッジョブァハッ! (←瀕死)

151 :前スレ260 :2005/12/26(月) 22:41:19 ID:4/Ooew3O
>>遊星さん
遊星さん的には期待を下回る出来なのですか。
ここまでの高いクオリティでそんな事言われてはこちらの立つ瀬がないですよw
個人的には真司兄さんが自分のプレゼントで千奈ちゃんと唯奈ちゃんをこの後
どう切り抜けたのかが気になる所ですね。
しかし、クリスマスイブに未来ちゃんの膝枕とはなんと羨ましい話か・・・
>>すばるさん
お褒めの言葉、ありがとうございます。
すばるさんのSSも期待してますよ。
何気に夢亜ちゃんの話を待ち続けていたりしています。
>>150さん
同様に羽音ちゃんにやられましたw
正直、可愛すぎる。


152 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/27(火) 20:44:09 ID:/SoYKRM5
>すばる様
もう、来年でクリスマスは四年目になりますからね。来年は相当ヤバイですねw
すばるさんのSS、楽しみにしてますよ。

>>150
そうだよね、凄いよね、260さんのSSは凄いよね。

>260様
いつもいつも、私なんぞには、もったいないほどのお褒めのお言葉をありがとうございます。
しかし、260先生のはいつ読んでもいいですよねぇ……。
そろそろコテハンとか、トリップとかつけたらどうですか?
先生がつけてなくて、俺がつけてるのは問題ですよ、問題。

153 :前スレ260 :2005/12/31(土) 00:32:21 ID:vqp8RoYf
>>遊星さん
そろそろそういったのをつけた方がいいですかね?
しかし、年間通して四作しか投稿してないのでまだまだ
という気もしますが。
今も神々には程遠い所にあると思ってます。

今年も後一日で終わりですね。
ちなみに今年一番萌えたの妹さんは羽音ちゃん。
特に萌えたSSは未来ちゃんのホワイトデー話でした。

最後に私のまだまだ稚拙なSSを読んで頂けた皆さんに
心からの感謝を。
来年は巴さんをより可愛く魅せられる様、精進致します。

154 :名無しくん、、、好きです。。。 :2005/12/31(土) 04:58:54 ID:APaHszl1
妹が携帯片手に近付いて来た
「お兄ちゃんちょっと携帯貸して?」
「へ?なんで?」
「いいから。」
「あぁはい。」
「ロックかけてんだ。」
「まぁ一応な。」
「ふーん。」
なにやら自分の携帯と俺の携帯を交互にいじってる
「はい、ありがと。」
「あぁ、何した?」
「あたしのアドとケー番入れといた。」
「別に使わないと思うけどなぁ。」
「まぁいいじゃん。」
「まぁいいけど。」
「ちゃんと入ってるか、一回メールしてくんない?」
「あぁはいはい。」
「うん、ありがと。」
…これはなんかのイベント発生か?

155 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/31(土) 20:42:16 ID:aHq9cToi
「今年も終わりなのか……」
「なんだか実感ありませんけどね、毎回のことながら」
「だね」
今日は大晦日。
俺の妹の未来とコタツに入りながら、のんびりと残された今年を過ごす。
「はぁ……でも、今年も大掃除が途中でした……」
「うーむ……まぁ、何だかんだ言っても年末は毎年忙しいからね」
「ですよねぇ……」
……たかがそれぐらいでちょっと暗くなってしまった。
雰囲気を変えるため、俺は違う話を振ってみる。
「しかし……結構食ったなぁ……」
「はは、私もです。太っちゃいますね」
そう言って、苦笑する未来。
しかし、俺が気になっているのは……
「大体、何で晩飯はすき焼きだったんだ?」
「あ、別に大した理由じゃないんですけど……ちょっと良いお肉が安かったから」
「しかも、その後に蕎麦が出てくるし」
「だって、やっぱり年越し蕎麦は必要ですよ?」
「じゃあ、すき焼きいらないじゃん」
「え……えっと、あ、でも、名古屋では大晦日には食べるんですよ?」
「おいおい、さすがにその嘘は苦しいぞ」
「いえ、これは嘘じゃないんですよ」
「マジで?」
「はい」
いや、ホントに食べるんですよ、何故か。

156 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/31(土) 20:42:49 ID:aHq9cToi
「これも文化ってヤツか……そういや、長崎の年越し蕎麦はちゃんぽんだと聞いたことが……」
「へぇ、面白いですね」
「まぁね」
俺がそう言って笑う。
会話が途切れたので、ふと時計を見ると、現在、十一時半。
今年もあと三十分で終わってしまう。
「そうだ、未来ちゃん。来年の目標とかは?」
「ふふ、鬼が笑いますよ?」
「まぁまぁ、あと三十分だし、笑ったとしても微笑くらいだろ?」
「ふふっ、そうですね」
「で、目標は?無いの?」
「んー……あるにはあるんですが、ちょっと秘密です。兄さんは?」
「……未来が言わないなら、俺も秘密にしとく」
「ふふ……」
「はは……」
お互い、少し残念そうな顔で笑う。
「ま、いいや。みかんちょうだい」
「はい、兄さん」
俺は未来からみかんを受け取り、剥きはじめる。
未来も俺を見て、みかんが欲しくなったようで、同じようにみかんを剥き始めた。
貧乏くさい話だが、俺はみかんの白い筋は取らない。そのまま食う。
だが、未来は丁寧に取ってから食べる。
……これも性格の違いなのだろうか。

157 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/31(土) 20:44:10 ID:aHq9cToi
「んー、あんまり美味しくないなぁ……」
「そう?私のは甘いですよ」
「あ、そう?じゃ、一つ頂戴」
といって、口を大きく開ける。
「に、兄さん!!そんなこと、しませんからね!?」
「けち臭いこといわないでさ。いいじゃない。みかんくらい」
「う……分かりました」
赤面状態のまま、恐る恐る俺の口にみかんを運ぶ未来。
……少し意地悪してやろうとも思ったが、流石にかわいそうなのでやめた。
「うん、美味しいね」
「……もう」
未来の羞恥心がとうとう限界に達してしまったようだ。
恥ずかしそうに、コタツの布団で顔を隠す未来。
あぁ、もう!!そういうのが、可愛いってのに!!
「来年もこんな感じなのかな……」
「でしょうね」
「なるほど。そりゃ楽しみだ」
「ふふ、はいっ」
微笑む未来。
俺もそんな未来を見て、幸せな顔になる。
エアコンやストーブとは違うコタツの温もりを感じながら、
もう一つみかんを頬張ってみた。
───────────────────────

158 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/31(土) 20:45:39 ID:aHq9cToi
大晦日の夜、いかがお過ごしでしょうか。
紅白の布施明に鳥肌ビンビンの遊星でございます。
構想含め、二時間で書いてしまいました。
まぁ、二時間で書いたなりの結果になっていると思ってます。

>260先生
トリップとか、コテハンとか別に難しく考えることは無いんですよ。
でも、自分じゃない人に自分の大切なキャラを、勝手に書かれてしまうのがイヤだから。
だから、書くとか書かないとか上手いとか下手とか関係無しに、
トリップをつけてるんだって。僕は都合よく思ってますけどねw


あと、ちょっと余談。僕のサイトに、未公開作品を追加しました。
妹ではないですが、よかったらどうぞ、っと。

159 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/01/01(日) 03:03:22 ID:eQDSVVMQ
あけおめ乙

160 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2006/01/07(土) 03:48:14 ID:HovilBMs
>260さん
260さんの期待に答えられる程のものを書けるかわかりませんが頑張ってみます
期待はしない方がいいかもしれないですw

>遊星さん
遊星さんならそう言いつつも、来年もしっかり仕上げてきそうですねw
俺のSSは上記の通りなので…楽しみにしてると出来て投下した時にがっかりするかもしれないですよw
もっとキャラ達を立たせてあげたいんですが…文章力が付いていけてないので orz

161 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/01/11(水) 19:36:24 ID:Ye0ZYc5U
あげますよ〜。

162 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/01/15(日) 02:09:55 ID:R2fpzf4A
誰もいない…………かな?

163 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/01/15(日) 02:18:19 ID:R2fpzf4A
捕れると思った…しかし、ボールはあっさり後ろに通り過ぎていった…

中学野球の地区大会決勝
俺はアイツとの約束を守れなかった。

アイツは…渚は両親が死んでからずっと泣いていた。
身寄りのない俺達は叔母夫婦に預けられた。
叔母さん達は本当に良くしてくれるが、渚は悲しみにくれて家から一歩も出ようとしなかった。
俺は叔母さん達に迷惑をかけないために…本音は渚に元気を出してほしくて
「次の試合、俺が勝ったらもう泣くなよ!だから見に来い。絶対勝つから!」
そう言った。
大会が始まり、試合に勝ち続けた。でも渚は見に来なかった。
そして、今日俺のエラーで負けた…
渚が初めて見に来たのに……

164 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/01/15(日) 02:21:42 ID:R2fpzf4A
周りでチームメイトが泣いている。俺は泣くに泣けなかった…
エラーした自分と約束を守れなかった自分に呆れていたのかもしれない…

家への帰り道、あれこれと言い訳を考えながら帰る…夕陽が目にしみるぜ…
すると影が目線にはいり、誰が立ちはだかった。
「…お兄ちゃん。」
「!!」
渚だ。まったく予想外のことにパニックになる。「……。」
「……。」
そして、沈黙。
どれくらいだったかわからないがその沈黙はさらに俺を混乱させる。
考えがまとまらないまま声をかけようとしたところで
「カッコ悪い。」
「えっ!?」
「今日のお兄ちゃん、すっっっごくカッコ悪かった!!」
「うっ…」

165 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/01/15(日) 02:24:31 ID:R2fpzf4A
分かってたがかなりキツい…。
そりゃあ、あのエラーさえなければ勝ってたのだが……。
「でも……。」
「えっ?」
「すっごく頑張ってた。」「……。」
そこまで言って俯いてしまう。
「えっと……その……ちょっとだけかっこ良かったよ…。」
そして顔を上げてとびきりの笑顔。
その笑顔は夕陽に染まって真っ赤だった。
「帰ろ。お兄ちゃん!」
そうして、差し出された手。
どうやら、立ち直ってくれたらしい。だから俺はその手をとって、こう言うんだ。
「そうだな。」

166 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/01/15(日) 02:32:53 ID:R2fpzf4A
最初に全力を持って謝ります!
本当にすいませんでした!!
完璧なるスレ汚し。
3つも使っちまった……。
出来心ですいません。もうしません。
では、撤収します。
それでは。本当にすいませんでした!!

167 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2006/01/15(日) 02:53:15 ID:1eH+YdG3
これが噂の貼り逃げってやつですね!?

>>162-166
謝らないでくださいw
もうしないなんて言わずにどんどんやっちゃってくださいw

出番が少なくて妹のキャラをしっかりとは把握出来ないですがいい作品だと思いますよ
(多分)今までにない新鮮なネタですね
是非続けて欲しいです

もしやイメージはバンプのキャッチボールですか?

168 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/01/15(日) 10:44:23 ID:R2fpzf4A
わかりにくくてすいません。
妹の最後の一言を言わせたいためだけに作って、貼ってしまいました。

あぁ、つくづく俺は駄目野郎だぁ。

169 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/01/15(日) 10:56:24 ID:R2fpzf4A
すばる様>
俺みたいに駄目な奴にありがとうございます。

出直します。

170 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/01/15(日) 21:13:20 ID:m7Wcyz4n
>>162-166
まぁまぁ、気を落とさないでくださいな。
兄はカッコよくあるべし。という信条を持つ拙僧には、大変面白く読ませていただきましたよ。
スポーツ系のSSは珍しい(と思う)ので、是非これからも書いていって欲しいですね。

偉そうですか、すいません。

171 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/01/18(水) 22:47:05 ID:9ICbKeW+
>遊星さん
偉そうなんてとんでもないです。
そう言ってくれる方々がいてくれて、嬉しいっす。
続きかけたら書きます
期待に添えられればいいのですが…orz

172 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/01/23(月) 22:23:19 ID:OYpU23Ck
age

173 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/01/25(水) 04:58:43 ID:8Rqu+gGy
妹「おにいちゃん」
ガチャリンコ
俺「お、おい、ノックくらいしろよ」
ガチャリンコ
妹「おかーさーん、おにいちゃんまた変なゲームしてるよー」

174 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/01/25(水) 20:08:08 ID:vnbsC5IP
ワロスw

175 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/01/27(金) 21:03:01 ID:eOKokHRw
>173またってコトは 一度覗かれている、と?

176 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/01/29(日) 16:23:30 ID:V+LIhJx4
妹の部屋にパソコンがあり、そこでギャルゲーしてますが、何か?

177 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/01/30(月) 01:43:11 ID:0afu9Lvd
>>176
君に勇者の称号をあたえよう

178 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/01/31(火) 20:06:27 ID:7rHt8ULX
妹「おにいちゃん」
ガチャリンコ
俺「何か用か、何も無いなら出ていってくれ」
ガチャリンコ
妹「おかーさーん、おにいちゃんが変なゲームやってて私のこと見てくれないよぉ」

179 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/02/04(土) 01:27:39 ID:P7k0B1hc
>>176
・・・凄ぇよ、アンタ。

180 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/02/04(土) 01:36:15 ID:YMTguEfd
>>176
ネ申

181 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/02/09(木) 00:34:19 ID:0QCnDwiA
スレ違いかもしれんが
ちょっときかせてくれ。
妹ではないんだが漏れの
姉の娘(小1)が最近、
一緒に風呂にはいりたいといってきた。
おまいらならドースル?

182 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/02/09(木) 12:24:48 ID:QDpkVAf+
普通に一緒に入ればいいじゃん

但しエロい目で見るのを止められないなら断れ
その子なんか感づいたら母親に報告行くと思っとけよ

183 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/02/09(木) 20:18:49 ID:seLFHUbg
姉の娘「お母さ〜ん おじさんの象さんおっきくなってカチカチだよ〜」

184 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/02/10(金) 04:05:32 ID:9+zhJRLS
つ調k(ry

185 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/02/14(火) 20:29:11 ID:hJiyPpTM
バレンタインの夜いかがお過ごしでしょうか。もはや恒例、遊星(ryでございます。
えっと……反省文を後に書くとスレがマイナスエネルギーで満ちるので、今回は反省文を先に。

【反省文】
時間がないなか、大変努力しました。いや、努力はしました。
四年目のバレンタイン……辛かったッス……。

・サラ:彼女の性格を完全に忘れました……。
    確か、はっきりとしたツンデレじゃなかったような……という感じで書いてました。

・梨那:毎回一番最初に書きあがる(すなわち、ネタがひらめく)良い娘。
  その代わり、大体ウォーミングアップ代わりにされる……ゴメン。

・沙耶:大体、いつもネタが決まらず一番最後になる困った妹。
  名前間違えネタは、セイザーXより。別に意味は無い。

・双子:兄が出てこないと言う問題作。
    でも、自分としては悪くないと思うんだけど……

・未来:未来が一人で考え事。ってのは、すごく好き。
    恥ずかしくて、面と向かってはいえないけど……みたいな。

・羽音:期待のルーキー。完全に惚れました。チョコください。

186 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/02/14(火) 20:30:00 ID:hJiyPpTM
「ここだったわね……」
ここに来れば、間違いなく会える。
この日のために用意したチョコもちゃんと持ってる。
なにしろ、この国では、今日は大切な日らしいから。


いつもの通学路を、俺は今一人で歩いている。
いつもは友達か妹が一緒だが……
なにせ今日はバレンタインデー。いつもと勝手が違うらしい。
「じゃ、いつもと変わらない俺は一体何なんだ」
実にくだらない独り言だと我ながら思う。
言って恥ずかしくなった俺は、誰もまわりにいないことを確認しつつ、少し歩くスピードを速めた。
そして、いつもの曲がり角を曲がったとき、
トントン。
何者かに、背中を叩かれる。
「……?」
俺が振り向くと、
「久しぶりね、マサト。元気だったかしら?」
「あれぇ、サラじゃないか!!」
俺の従姉の娘、サラが立っていた。
サラは遠くに住んでいて、なかなか会えない。
というか、このコと俺の妹を会わせたくないと言うか……。
「どうしたんだ、こんなとこで?」
俺は今日、妹と一緒でなかったことを感謝しつつ尋ねた。


187 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/02/14(火) 20:30:32 ID:hJiyPpTM
「どうしたんだ、じゃないわよ。今日は、バレンタインデーでしょ?」
「あ、もしかして、チョコを持ってきてくれたの?」
「ええ、日本ではそうするんでしょ?」
「うん、よく知ってたな?」
「友達が言ってたわ。まぁ、イギリスでも贈り物くらいはするけれどね」
「ま、そりゃそうだ」
何気ない言葉だけど、サラの口から友達と言う単語が聞けて嬉しかった。
「そんなことよりも、はい。チョコ」
「うん、ありがたくいただきます」
サラからチョコを受け取る。
俺が嬉しさを噛み締めながら、チョコの箱を眺めていると、
「よく分からないけど、ホンメイっていうらしいわね」
「あ……そうなの?」
まさかの大告白にちょっと驚きながら答える。
「ところで、どういう意味なの?」
知らないのかよ……。
「え……えっと……まぁ、本気で好きな人にあげるチョコってことかな」
「……そ、そんなっ……」
恥ずかしそうに、俯くサラ。
そんなサラが久しぶりで、何だか可愛かった。
「……で、でも……間違っては……ないんだよ?」
「そっか、嬉しいよ」
「……嬉しいの?」
「うん。やっぱり俺も男だからね、本命チョコもらえると嬉しいんだよ」
「そうなんだ。……私も、そういってもらえると嬉しいよ!」
少しサラの口調が柔らかくなる。
大分、テンションが上がってきたようだな。
だけどねぇ……。

188 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/02/14(火) 20:31:24 ID:hJiyPpTM
「さ、サラ。遅くなるといけないから、帰ろう?駅まで送るよ」
「え……もう?」
「うん。お父さんやお母さんが心配したらいけないだろ?」
「うん……そうだね」
少し残念そうだが、納得した様子のサラ。
俺はそんなサラに手を差し出して、
「行こう?」
「うん……」
サラは小さく返事をして、悲しそうに俺の手を取る。
「……また会えるよ」
「……」
「だって、日本にはホワイトデーっていうステキな日があるんだぜ?」
「うん……知ってる」
「その日にまた会おう」
「……うん。そうだね」
「約束だぞ」
「うん!!」
幼い笑顔を返すサラ。
俺はそんなサラの頭を優しく撫でる。
サラは少しだけ、噴出したように笑ってから、
「やめてよ、マサト。くすぐったいわ」
「イヤか?」
「べ、別に……そこまでは言ってないけどっ……」

ちょっとクールなサラと、可愛いサラ。
突然変わるから、ちょっとビックリする。
多分使い分けてるわけじゃないんだろうけど……。
どっちもサラ。……というよりも、それひっくるめてサラなんだろうね。

[END]

189 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/02/14(火) 20:31:57 ID:hJiyPpTM
1、2、3、4、5。
机の上にチョコが五つ。
義理感全開の五つのチョコ。
本命チョコほどのプレッシャーも無く、甘党の俺には、最高のプレゼントである。
「どれから食おうかなー」
俺はそんなことを検討しながら、全てのチョコをひとまとめにしてみる。
すると、
「やっほー、お兄ちゃん」
窓を勢いよく開けて、幼馴染の相川梨那が俺の部屋に入ってくる。
「にゃ、開いちゃった……」
どうやら鍵をかけ忘れたようだ……。
俺は少し驚きながら、
「梨那か、何か用か?」
「今日はバレンタインデーだよ?何か用かって言い方は無いんじゃない?」
「ああ、チョコもらいにきたのか?だけど、それは無理だ」
「ぶぅ!!そうじゃないもん!!」
俺の言葉に、頬をぷぅっと膨らませ明らかに不満そうな顔をする梨那。
「何キレてんだよ?」
「キレてない!!」
キレてんじゃん。
「わかったわかった。ちょっとやるから」
「だから、そうじゃないの!!」
「ひょっとしてさぁ、お兄ちゃんってバカなのー?」
この人を小ばかにした態度……すっげぇムカつくな
「冗談に決まってんだろ。何だ、チョコくれるのか?」
「……欲しいの?」
自分から言っておいて、この態度は何だ、梨那。

190 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/02/14(火) 20:34:46 ID:r2mSVtw0
自己支援

191 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/02/14(火) 20:34:58 ID:hJiyPpTM
「まぁ、一応」
「で、でも……今年もいつもとおんなじヤツだよ?」
「別に良いよ」
「ホントに?」
「ああ」
「じゃ、じゃあ……コレ……」
そういって梨那が恐る恐る差し出したのは、質より量の材料チョコ。
しかもラッピングすら無し。
こんなもんを毎年頂いてるわけですよ、僕は。
「ああ、ありがと。ありがたく受け取ります」
甘いものは好きだから、俺はこれぐらいのほうが嬉しかったりする。
「お、抹茶味なんてあるんだな」
ホワイトチョコとかイチゴ味のチョコは見たことあるが、抹茶は初めてだな。
ま、抹茶のチョコは大好物なので、かなり嬉しい。
俺が興味を持って梨那のチョコを眺めていると、
「……ねぇ、お兄ちゃん」
梨那が暗い声で呟く。
「ん?」
「やっぱり返して……」
「どうした?」
「だって、梨那だけそんなので恥ずかしいもん……」
「これ、気にしてんのか?いいよ、別に」
「でも……他の人に負けちゃってるから……」
「……見栄っ張りが」
「……」
「そりゃ、色気も何もあったもんじゃないけど……梨那は梨那なりに俺のこと考えてくれてるだろ?」
「……」
「しかも、俺はそれに十分満足してる。梨那はそれで何が不満なんだ?」

192 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/02/14(火) 20:35:36 ID:hJiyPpTM

「……梨那は、お兄ちゃんが喜んでくれるのが嬉しい……」
「だろ?それなら、ほれ、顔上げろ」
「……うん」
顔を上げて、嬉しそうに笑う梨那。
俺は梨那の頭にポンと手を置いて、
「俺はお前のチョコ、毎年楽しみにしてるんだからな?」
「お、お兄ちゃん……それって……」
俺がそういうと、梨那は期待に満ちた瞳でそう聞き返した。
「……?言ったままの意味だが?」
意味が分からず、そう答える。
すると、
「にゃ!?えへへへ〜。そっかー、そうなんだー。てへへへ……」
梨那がおかしな笑いをしはじめたではないですか……。
「な、何?」
「んーん。なんでもないにゃー」
にゃー!?
え、何、何、何っ!?
ちょっと脳の許容範囲超えた!!
「……悪い。することあるから、今日はこれぐらいで……」
とりあえず、冷静に考えねば……。
「うん。ごめんにゃー」
また、にゃー。
「あ、ああ、また明日な」
「うん。ばいにゃー」
またまた、にゃー。

梨那が部屋を去って、数分後……
「おかしい!!何かおかしいぞ!!」
そんな叫びが、一時間ほど続いたそうな……。

[END]

193 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/02/14(火) 20:36:10 ID:hJiyPpTM
「……」
とある朝、目覚ましが鳴る直前に目が覚めた。
「ほぅ……こういうこともあるんだな」
目覚まし時計を見ながら、妙に嬉しい気分になる俺。
すると、
「おにぃちゃーん!!朝だよー!!」
俺の妹、沙耶がドアをブチ破り、ベッドに飛び込んでくる。
「うぉっ!?」
俺は咄嗟に手を上に出し、沙耶を抱きとめる。
衝撃そのものは何とか防げたようだが、軽い重みが、体全体にかかる。
「はぁ……はぁ……」
そうか、これで早く目が覚めたのか……。
荒い呼吸をしながら、一人納得する俺。
そんな俺を横目に、俺の上の沙耶はニコニコ笑いながら、
「おにぃちゃん、おはよー!!」
「あぁ、沙耶、おはよう……久しぶりだな」
「はわ?サヤ、昨日の夜もおにぃちゃんに『おやすみなさい』したよー?」
「あ、そういう意味じゃなくて……」
「はゎ?」
首を傾ける沙耶。
「いや、もういい」
説明する気力も無いよ、もう。
沙耶は少し俺の言うことを理解しようとしていたが、
「ま、いっか」
諦めた。
「それよりねー、今日は、ばれんたいんでーだよ、おにぃちゃん!!」
「あぁ、知ってる」
今まで忘れてたけど。

194 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/02/14(火) 20:36:44 ID:hJiyPpTM
「えへへ、はい!!おにぃちゃん、チョコー!!」
沙耶は寝そべっていた体を起こして俺にチョコを差し出した。
「あぁ、ありがと」
起き上がり受け取る俺。
「食べてー」
……え?
「ね?」
食べろって?
寝起きで?朝飯前なのに?チョコを?
俺の疑問は他所に、沙耶は嬉しそうに微笑んで、足をパタパタ動かしている。
……かなわねぇな。
「……わかりました、食べます」
「わーい!!はやくっ、はやくっ!!」
沙耶に急かされるように、箱を開ける。
中には、
「いぬ……」
手の込んだ犬型のチョコ。
多分、ゴールデンレトリバー。
「ブレンダだよー!!」
「ブレンダ……」
ブレンダ……。
もう名前がついてるってか……。
って言うか、それにしてもブレンダって……。
「食べてー」
「あぁ、うん」
言われるまま、ブレンダの頭を齧りつこうとすると、
「ブロンズぅ……」
悲しそうに沙耶が言う。
……今、ブロンズって……?
ま、いいか。
気を取り直してブレンダに……

195 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/02/14(火) 20:37:17 ID:hJiyPpTM
「ブライダルぅ……」
ブライダル……。
まさか沙耶からこの単語を聞こうとは……。
「沙耶。沙耶がそんな目で見たら、チョコ食べられないだろ?」
「でも……ブリトニーが可哀想だから……」
「んー、まぁ、そうかもなぁ……」
俺はブなんとかの顔をジッと見る。
なるほど、賢そうな顔だ。
「……でも、多分、コイツは食べてもらいたいと思うな」
「え?」
「だって、コイツはチョコだろ?チョコは食べられるのが仕事。
 食べずに捨てたらもっと可哀想じゃないか?」
「……うーん」
「じゃあ、沙耶はお兄ちゃんから、『沙耶なんていらない』って言われたら、どう思う?」
「はわゎっ!!やだよぅ!!」
「だよな?だから、コイツ、食べてあげよう?」
「……うん、そうだよね」
頷く沙耶。
「バイバイ、ブルース」
沙耶はブレンダの顔を人差し指で撫でた。
結局、こいつの名前は分からずじまいだ……。
「じゃあ、いただきます」
沙耶に出来るだけ見せないように、一口で食べる。
甘みが口の中に広がる。

196 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/02/14(火) 20:37:49 ID:hJiyPpTM
……ただ、やっぱり寝起きの時にはなぁ……。
「うん、美味しかったよ、ごちそうさま、沙耶」
そんなことは言えず、美味しかったといってしまう甘い俺。
「えへへ〜」
笑いながら、俺の胸に飛び込んでくる沙耶。
その勢いで、ベッドにまた倒れる。
「えへへ、甘くっていい匂いだよ〜!!」
「あぁ、そうだな」
「うん、おにぃちゃんの匂いとね、チョコの匂い〜。すごく良い匂いだよ〜」
「そっか」
俺はそんな沙耶の後頭部を撫でながら答えた。
「うん!!てへへ、おにぃちゃん、すき〜」
沙耶が頬を摺り寄せる。
俺は少し苦笑いをしながらも、沙耶を軽く抱き寄せるのでした。

[END]

197 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/02/14(火) 20:38:22 ID:hJiyPpTM
パタン。
石川唯奈が、冷蔵庫のドアを閉める。
「うー、牛乳無いのかー」
唯奈がキッチンから出て行こうとすると、
「唯奈、ちょっといらっしゃい」
リビングのソファに座った彼女の母、恵が唯奈を呼ぶ。
恵の隣には、唯奈の双子の妹、千奈がいた。
「ん、なーに?」
「ま、座りなさい」
「うん」
言われるがままに、恵の隣に座る。
「……とうとう今日ね」
恵が小さな声で言った。
「何が?」
「バレンタインだよ?」
恵の向こうで、千奈が言う。
「あぁ」
納得した、というようにポンと拳を叩く唯奈。
「多分ね、真司君、今年も忘れてると思うのよ。だから、私が先に真司君にあげるから、早まっちゃダメよ?」
「うん!」「はい」
「よろしい。ところで、二人はどんなの用意したの?」
「お母さんは?」
「私はねー。コレよ」
そう言って紙袋から、小箱を一つ取り出す。
「何、コレ?」
「あ、このブランド、私テレビで見たことあるよ……これだけでも、二千円くらい……」
千奈が小箱を眺めながら、言う。

198 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/02/14(火) 20:38:54 ID:hJiyPpTM
「二千円っ!?」
「ホントにこれ、高かったのよー。ま、真司君のは勇さんのついでだけどねー」
勇とは、真司の父親。恵の夫。唯奈千奈の義理の父だ。
「お母さん、すごーい!!」
「ま、オトナの財力ってヤツよねー」
偉そうに髪を撫でる恵。
「千奈は?何か作ったんでしょ?」
「え?私……?私は……チョコレートケーキを作ったんだけど……」
「あぁ、あの冷蔵庫に入ってる箱ね?」
「うん。思ったよりもね、上手くできたんだー」
嬉しそうに笑う千奈。
「唯奈ちゃんは?」
「……」
気まずそうに俯く唯奈。
「唯奈ちゃん……?」
不安そうに眺める千奈を、恵が手で制し、
「自分だけ、普通のチョコだって気にしてるの?」
「……うん」
「唯奈らしくないね」
「……そうかな」
「そうよ。だって、いつもの唯奈は明るくて、いいことも悪いことも考えずに突っ走っちゃうコでしょ?
 ねぇ、千奈?」
「うん、そうだよ」
「でも……唯奈のは、ブランドものじゃないし、手作りのすごいチョコじゃないし……」
唯奈が俯いたまま話し始める。
「唯奈」
恵がその話を中断させ、珍しく真剣な顔で、
「勘違いしちゃダメよ。千奈も覚えておきなさい。チョコなんてね、入れ物なの」

199 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/02/14(火) 20:39:37 ID:r2mSVtw0
自己支援

200 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/02/14(火) 20:40:17 ID:hJiyPpTM
「「入れ物?」」
「そう。気持ちの入れ物」
恵が優しく語りかける。
「大きいのとか小さいのとか、凝ってるのとかシンプルなのもあるけど……
 結局はね、女の子の気持ちに合うか、合わないかなの」
恵はそこまで言うと、娘の肩を抱き、
「そのことはね、真司君が一番よく知ってるのよ。……本人は気付いてないけどね。
 だから、唯奈は安心して自分らしくしなさい。千奈もそれを忘れないようにね?」
「「うん」」
同時に返事をする二人。
恵は二人を優しく抱き寄せ、髪を優しく撫でる。
「良い娘たちね。真司君が羨ましいわ」
恵の言葉に対し
「へへ……そうかな……?」
照れ笑いをする唯奈と、
「……」
顔を真っ赤にする千奈。
「そうそう。唯奈と千奈にそんな顔されたら、真司君だって我慢できないわよ」
恵はそういって、立ち上がる。
そして、唯奈と千奈に向き直って、
「とにかく、今日はそれぞれ頑張りましょ?」
「うん!」「はい!」
手を合わせ、成功を祈りあう三人の女性たち。
そんな光景が平和な、石川家のバレンタインデーでした。

[END]

201 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/02/14(火) 20:40:49 ID:hJiyPpTM
「はぁ……まさかこんなに遅くなるなんて思わなかったなぁ……」
二月十三日の夜。時刻は十一時半。
シンクの前で一人ため息をつく。
しょうがない。
洗い物をして、ゴミを片付けて、予習をして、宿題をして……。
なんてことをしているうちにいつの間にかこんな時間になってしまった。
「とにかく、兄さんのチョコを作らないと」
と、自分で言って、ちょっと恥ずかしくなる。
「兄さんの……ね」
口に出すのはちょっと恥ずかしいけど……悪い言葉じゃない。
思わず微笑がこぼれる。
「さ、急がないと」
もう一度時計を見る。
普段なら、もう寝ている時間。
私は、朝御飯やお弁当を作らなくちゃならないから、どうしても朝は早くなってしまう。
兄さんのためだから……辛くはないけど、もともと、眠らないとダメな人だし……。
その分のしわ寄せは他のところに来てしまう。
だから、その分、早く寝るしかない。
実を言うと、今も、ちょっと眠い……。
だけど、絶対に手抜きだけはしたくない。
だって、明日はいつもとは違う、特別な日だから……。
「未来は頑張りますよ、兄さん」
兄さんの顔を思い浮かべながら、いつものエプロンをパジャマの上に身に着ける。
さぁ、頑張らなくちゃ。
───────────────────────

202 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/02/14(火) 20:41:21 ID:hJiyPpTM
「兄さん」
「ん?どうした、未来ちゃん?」
「はい、チョコレートです」
「くれるのか?」
「もちろんですよ、だって、兄さんのこと大好きなんですから」
「未来……」
「えへへ……そんなにみつめられると、恥ずかしいです……」
「俺も、未来のこと好きだよ」
「はい……嬉しいです」
「未来……」
「兄さん……」
未来……。
「夢かよ……」
夢でした。
時計を見ると2/14、2:00am。
「寒……」
俺は一度起き上がった体を、もう一度倒し、眠りへと就こうとしたが……
何故か目が冴えて、一向に眠れそうに無い。
「何か飲むか……」
乾燥した空気によってカラカラになった喉を潤すため、俺は上着を羽織って、キッチンへ向かう。
「!?……明かりが……」
キッチンに明かりがついている。
泥棒か……!?
俺は息を潜み、中の様子を伺う。
しかし、物音一つ聞こえない。
ま……未来が電気消し忘れたと考えるのが無難でしょうな。
「驚かせおって……」
俺が胸をなでおろし、キッチンの扉を開ける。
すると、冷蔵庫の前に思わぬものが。

203 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/02/14(火) 20:41:54 ID:hJiyPpTM
「うぉっ!?」
思わず声を上げてしまう。
俺の目の前には、冷蔵庫にもたれて眠る人。つーか、未来。
寒そうに体を丸めて眠る未来。
……微かに聞こえる寝息が可愛い。
「って、何言ってんだか……おい、未来。未来」
未来の肩を掴んでガタガタ揺する。
「むぅ……にいさん……?」
ちょっと不機嫌そうに、目を細く開ける未来。
「風邪引くぞ」
「……すぅ……すぅ……」
また、寝てしまった……。
「しょうがねぇなぁ……」
俺はスヤスヤ眠る未来を、お姫様抱っこで抱きかかえ、キッチンを後にする。
持ち上げた未来の体は冷え切っていて、俺の体温までも奪われるようだった。
「……眠り姫ってどんな話だっけ……」
階段を上りながら、ついどうでもいいことを考えてしまう。
「……さ、お部屋に着きましたよ、お姫様」
当然だが、誰も聞いちゃいない。
……言わなきゃよかったよ。
一人で勝手に恥ずかしがりながら、俺は未来を未来のベッドの上に下ろす。
そして布団と毛布をかけてやろうとしたが……
「んぅ……」
未来が何か可愛らしい声と共に、体を縮ませる。
「寒いのか……」
まぁ、そりゃそうだなぁ……。
「こりゃ世話のかかる……」
未来の髪を優しく撫でる。
……フワッと、良い香りがした。
───────────────────────

204 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/02/14(火) 20:42:30 ID:hJiyPpTM
ピピピピピピピピピ……
電子音が鳴り響く。
「……朝……」
布団の中身がモソモソ動いて、けだるい声を出す。
結局しばらくダルそうに動いていたが、ピタッと止まって、
「……って、えぇぇぇぇぇぇ!?」
「ん……未来……?」
「えっ!?えっ!?」
俺の部屋の様子や、自分の体をキョロキョロ見回す未来。
「に、兄さん!?え、兄さんの部屋っ!?何でっ!?」
「……いろいろとな」
俺も冗談をいってもよかったが、眠いためテンションが低い。
「いろいろって何ですかっ!?……も、もしかしてっ!!」
顔を赤らめる未来。
さすが未来たん、エロエロですなぁ……。
「……別に未来が想像してるようなのじゃないから」
「べ、別に想像なんてっ!!」
さらに顔を赤らめた未来、恥ずかしそうに両手を頬にあてる。
やっぱ、エプロンがそういう雰囲気を醸し出しているのだろうか……。
「ま、少し頭冷やせば、思い出せるだろ」
「思い出すって……?」
しばらく考え込む未来。
どうやら、記憶が蘇ってきたようで……

205 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/02/14(火) 20:43:06 ID:hJiyPpTM
「……そういえば、私昨日、キッチンで……」
「そう。キッチンの床で寝てたから、連れてきた」
「でも……何で兄さんの部屋に?」
「寒そうだったから」
「そうなんですか……」
未来が、少し俯いて何か考える仕草をする。
そして、
「兄さん、ありがとうございます」
ペコリと頭を下げる。
「でもね、実は私、嬉しかったんですよ」
「何で?」
「……まさか、目が覚めてすぐに兄さんに会えるなんて、思いませんでしたから」
「うん」
「兄さん、昨日一生懸命作ったチョコ、冷蔵庫にあるんです……もらって……くれますか……?」
「もちろん。一年間ずっと楽しみにしてたんだぞ?」
「はい、ありがとうございます!!」
「行こうか?」
「はい!!」

ちょっとらしくない未来と、ちょっと落ち着いた俺。
今日はバレンタイン。
……やっぱり、いつもと違うみたいだ。

[END]

206 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/02/14(火) 20:43:55 ID:hJiyPpTM
もっと早く準備をしていたら。
もっと早く走れたら、走っていたら。
そもそもお金を持ってきていたら。
いや、あの時、家まで自転車を取りに帰れば。
いや、お母さんが帰ってくるのを待っていれば……。
「寒ぃ……」
様々な仮定と後悔の波が打ち寄せる間も、北風が私の体温を残酷にも奪っていく。
だけど、
「頑張らなきゃ」
とにかく、ここまできたんだから、歩くしかない。
私は視線を落とし、バッグを見る。
これを絶対にあの人に届けるんだから……
───────────────────────
今年のバレンタインデーはいつもと違う。
……ハズだ。
俺は自宅のリビングで、意味も無くテレビのチャンネルを何回も変えてみる。
ま、時間帯も時間帯なので、夕方の情報番組が、バレンタイン特集なんかを組んでたりする。
なるほど、彼を落とすチョコ。片思いの相手に渡す本命チョコ……か。
「……ま、結局のところ、好きな人からもらえれば、チョコの種類なんて関係ないよね」
まさに天狗である。
しかし……
その『好きな人』に、まだもらえてないんだよなぁ……。
学校でもらえると思ったんだけど、そうでもないし……。
……もしかして、くれないのか……?
それとも、またいつか会ったときに?
「……それはやだなぁ」
だがしかし、それでも要求はしないのが男ってモンですよ。

207 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/02/14(火) 20:44:57 ID:hJiyPpTM
「うーん……」
そう考えると……俺がカレシなのかどうかも疑わしく思えてきた。
確かに、俺は何度も好きだって言ってるし、言われてる。
だけど、いつまでたっても俺は『お兄ちゃん』だしなぁ……。
向こうにとっては遊びの延長みたいなものなのかも。
いや、まぁ、いまさら『お兄ちゃん』から変えられてもピンと来ないんだけど。
「……はぁ」
ため息をつく。
バレンタイン特集が今となっては憎い。
「あー、落ちつかねぇや!!」
テレビを消し、勢いよく立ち上がる。
「……チョコ欲しいな」
情けないことを言うな。と自分でも思った。
俺がソファの周りをぐるぐる回っていると。
ピンポーン。
インターフォンが来客を告げる。
「はーい」
俺が出て行くと……
「お兄ちゃん、こんにちは」
「あ……」
俺の待ち人、羽音ちゃんが彼女の通う中学校の制服を着て立っていた。
「は、羽音ちゃん……!!」
喜びと驚きで、一気に覚醒する脳。
しかし、次の瞬間、
「……やっと……会えたよ……」
そう呟いて、膝を落とす羽音ちゃん。
「は、羽音!?」
慌てて駆け寄る。

208 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/02/14(火) 20:45:59 ID:hJiyPpTM
「あ、あはは……」
俺が羽音ちゃんの肩を抱くと、羽音ちゃんは恥ずかしそうな微笑を見せて、
「すいません……。ちょっと歩いたら、疲れちゃったみたいです……」
「歩いたって?」
「あ、学校終わった後、お兄ちゃんを探して、学校まで行ったんですけど、もう帰っちゃったみたいで……
 それで、そのままここまで……」
「……ってことは、羽音ちゃんの家から、ここまで!?体、大丈夫なの!?」
「あ、はい……お兄ちゃんの顔を見たら、安心して、力が抜けちゃいました……」
「なんで……」
「あ、忘れてました」
そういうと羽音ちゃんは鞄の中をゴソゴソと探り、真っ赤な箱を取り出す。
「……えっと、一応、本命チョコなんですけど。もらって……くれませんか?」
恥ずかしそうな顔で、チョコを差し出す羽音ちゃん。
それが嬉しくて、驚いて、でも、なんだか自分が情けなくて……。
「……ひぁ!?お、お兄ちゃん!?」
彼女を思わず抱きしめていた。
「ゴメン……羽音ちゃん、俺のために頑張ってたのに……俺、ずっと待ってばっかりだった……」
「お兄ちゃん……」
「しかも、最後には羽音ちゃんを疑ってた……本当にゴメン!!」
さらに強く抱きしめる。
「お、お兄ちゃぁん……」
顔は全く見えないが、羽音ちゃんは泣きそうな声で俺を呼ぶ。
「会いたかったよぅ!!歩いてる間、すごく不安だったよぉ……!!」
堰を切ったように泣き出す羽音ちゃん。

209 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/02/14(火) 20:47:07 ID:hJiyPpTM
「うん……」
「途中すごく寒かったし、暗くなったし、道にも迷っちゃって……怖かった……!!」
「ゴメンね……」
「違うの!!でも、お兄ちゃんに会えるから、私、頑張ったんだよ!!」
「羽音……」
「会えて……嬉しいよっ……!!」
俺の胸に抱きつき、涙を流す羽音ちゃん。
こんな羽音ちゃんをみたのは、俺は初めてで……
どうして良いか分からずに、ただ彼女を抱きしめ、髪を撫でていた。
それから、どれくらいそうしていただろうか。
しばらくして、少し落ち着いた様子の羽音ちゃんが、
「ゴメンね……絶対泣かないって決めてたのに……お兄ちゃん、優しいから……」
「ううん。そうやって、何でも言ってくれた方が嬉しいよ」
「……」
よほど取り乱したことが恥ずかしかったのだろうか。
赤面し、俯く羽音ちゃん。
「……羽音ちゃん。いや、羽音」
「はい」
「ありがとう。好きだよ」
「……うん。私も」
静かに目を閉じる羽音。
「おねだり上手め」
……これ以上は、何も言うまい。
今年は人生最高のバレンタインになったみたいだね。

[END]

210 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/02/14(火) 23:08:57 ID:gkKUQD/L
恵さんにチョコ貰いてぇ〜!

211 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/02/18(土) 20:45:39 ID:qjqO1jQV
流石としか言い様がありません!
サラかわいいな〜


212 :海中 ◆xRzLN.WsAA :2006/02/25(土) 19:34:07 ID:sJhG9+Hj
青い青い空の下、蒼い蒼い海がある。
終わりが無いかのように見える蒼色は光に映え、まるで雪原のように煌いていた。
「本当に……乗っちまった……」
俺は手すりにもたれかかり、眼下を見下ろした。穏やかな波を立て、船は進んでいる。
「しおかぜが気持ちいいね」
ぽつりと呟かれ、ふと声のしたほうに顔を向けると、白いワンピースの少女が海を眺めていた。
「気持ちいいけどさ……ずっと景色はこのままなんだぜ?」
「優希としては、それもいいかな。えへへ」
「はぁ……元気でいいねぇ……」
「うんっ!だから、お兄ちゃんも元気になろっ?」
「努力するよ……」
満面の笑みをこぼす妹を尻目に、早くも俺は後悔の淵に突っ立っていた。

そもそもの発端は、医者である父だった。
優れた技術で名高い某病院に勤務していた父の元に、ある壮大な話が持ち上がったのだ。
海上都市『フリーダムシップ』。
その実はメガフロートを土台とした長期滞在型の超大型客船で、全長約1400メートル。
船上にはひとつの都市が丸ごと収まっており、学校・病院・デパート・飛行場・カジノ・
会社・遊園地など、ありとあらゆる施設が整っている。
三年かけて世界を一周する、超が三つくらい付くほどの豪華客船だ。
そして、親父が、そこに、勤務、する、ことに、なって、しまった、のだ。

213 :海中 ◆xRzLN.WsAA :2006/02/25(土) 19:35:12 ID:sJhG9+Hj
「ありえねぇ……」
俺は今、船上のマンションの一室のベランダにいる。背後のまあまあ広い室内では、
浮かれた両親たちがこれからの物語に妄想を膨らませていた。
「お兄ちゃん、元気出してよぅ……酔ったりしないから、大丈夫だよ」
「いや、それは心配してないけどさ」
いきなり船の上で暮らせって言われても、無理がある。そもそも学校だって転校だ。
船の中の日本人学校に。
「ありえねぇ……」
自分の理解できる領域を遥かに超えたスケールに、俺はただただ呆然とするしかなかった。
「えと、それじゃあ散歩にでも行く?」
「散歩?船の中をか?」
「他にどこに行くのよ〜……。もう……」
「そういや、何でもあるんだってな。地図を頼りに行ってみるか」
そうだ、船上に何でもあるなんて楽しいじゃないか。そうだ、きっと楽しいぞ。
何しろ超豪華客船だもんな。珍しいものがたくさんあるぜ、きっと。
……きっと。
「えへへ〜♪よーし、しゅっぱーつ♪」
優希に引きずられながら、俺はのそのそと歩き出した。

214 :海中 ◆xRzLN.WsAA :2006/02/25(土) 19:36:19 ID:sJhG9+Hj
探索に出かけた俺たちだが、俺の杞憂はあっという間に消し飛んでいた。
何しろすべてのスケールが半端じゃないのだ。部屋を出ると長い廊下が左右に続き、
展望室からは街の様子が一望できる。
おそらく中心と思われる広場には木々が生い茂り、まるで地上の公園のようだった。
「すげぇ」
「す、すごいね……」
二人してベンチに腰かける。辺りを見回すと、同じような日本人家族を何組か見かけた。
日本人居住区でもあるのだろうか。
「ねぇ、お兄ちゃん……」
「ん?」
優希は少しだけ唇をかみ締めたあと、ふっと小さく笑い、
「な、なんでもない……」
そう呟き、またガラスのほうへと顔を向けた。

街中は出航直後ということもあってか、物凄い人の数だった。
しかもすれ違う人ほぼ全員が外国人。アジア系も何人か見かけるが、それでも金髪が多い。
だが、それに臆する俺ではない。残念ながら、英語は得意なのだ。
親父が医者であり、さらに有名大学をサラッと出ている秀才のため、当然のことながら
勉強を強要されて、否応無しに学力は良くなっていた。まあ、そういう設定だ。
とにかく、これほどの国際的な都市で英語が話せるのは必須であり、その点では安心できた。

215 :海中 ◆xRzLN.WsAA :2006/02/25(土) 19:37:25 ID:sJhG9+Hj
「わっ!ねぇ、アレ見てよお兄ちゃん!」
優希に腕を引かれ、人の波をかき分けながら進んでいく。頭上を見上げると、切り取られた空から
まばゆいばかりの日差しが降り注いでいた。
やがて俺たちは海面に最も近い港に辿り着いた。木馬の足のように、幾つかの発着場が
伸びている。二人はその先端まで歩き、縁に腰かけた。
水面がゆらゆらと揺れて、互いの顔を鏡のように映す。
「うわぁ〜!綺麗だね……」
「そうだな。海はもっと汚いと思ってたけど、意外と綺麗だな」
「うん……」
俺は動く水面をじっと見据える。優希はぽつりと漏らした。
「あと、三年だね……」
「ああ……」
三年、それは俺たちにとっては非常に重要なものだ。
「でもね。優希、最後にこんな旅行が出来るなんて、幸せだよ?」


216 :海中 ◆xRzLN.WsAA :2006/02/25(土) 19:38:28 ID:sJhG9+Hj
「……最後なんて言うなよ……」
俺の妹、優希はおよそ三年後に死ぬ。
生まれたときから心臓に重い障害を宿していた優希は、生まれたときから死を知っていた。
成長するにつれて次第に身体に異常を覚え、小学生のときに病だと判明した。
原因不明の心臓病。医者の親父が全力で治療に当たったが、効果は得られなかった。
最先端の医療施設で分かったことといえば、冗談のような寿命だけだった。
これが。
これが、彼女の最後の旅になる。
次に日本に帰ってきたとき、彼女はもういない。生きていたとしても、ほんの少しの差でしかない。
「えへへ……そんな暗い顔しちゃダメだよ」
優希は俺の顔を覗きこみ、にっこりと笑った。
俺たちの足元では轟々と巨大な何かが唸り声を上げている。
決して逃れられない『何か』にたいして、俺は震えを感じた。
「……優希」
「……ん?」
青い青い空の下、蒼い蒼い海の上で、俺は立ち上がった。
「ありがとな。元気、出た」
「……!!」
手を差し出す。俺の手のひらは優希の手をしっかりと掴み、その身体を引き寄せた。
「えへへ……ありがとっ」
始まったばかりなんだ。何もかも、まだ。

2007年7月。その旅は始まった。


217 :海中 ◆xRzLN.WsAA :2006/02/25(土) 19:40:58 ID:sJhG9+Hj
絶対に忘れられていると思います、お久しぶりです。
いろいろと書き逃げしてきた前科があるのですが、今回だけは
しっかりと書き終えたいと思っています。

ちなみに「フリーダムシップ」自体はノンフィクションです。

218 :遊(ry ◆isG/JvRidQ :2006/02/26(日) 10:29:49 ID:zdEKP7KA
お久しぶりです。海中様。
ちょい悲しい感じのお話ですか……素敵な話の予感がしますねぇ

219 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/02/27(月) 01:40:14 ID:Q3YE6+1r
期待

220 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/02/27(月) 03:29:31 ID:ywWrEi/x
遊星様>>バレンタインSS読ませていただきますた
やはり姉妹イイッ!
真司君が羨ましいわw
遊星様の次回の登場はいつに?
これからも期待しております

海中様>>スゴい設定ですな!
船の上で普通の生活が……ありえねぇ(主人公風
これまた期待しております

221 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/03/06(月) 18:37:24 ID:7i9Mq4hP
SF的設定良いっすね。
でも、全長1400mで空港を入れるのは苦しいとか余計な突っ込みを入れてみたり。

あと、一回ageた方が良いかも?

222 :age職人 :2006/03/10(金) 03:50:52 ID:1aOBYDh4
age玉ボンバー

223 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/03/10(金) 16:04:02 ID:lX3bjVwb
 光に気づいた。
 無くしてから大切だと気づいた。

 手を伸ばせば何にでも届きそうな、狭い部屋。
 ただでさえ狭いというのに、そこには勉強机が二つ置かれている。
 片方は教科書類が乱雑に広げられていて、もう片方は可愛らしく装飾されたものだ。
 そんな手狭な部屋を改めて眺めていると、不意に部屋の戸が開け放たれた。
「も〜、また寝転がってる」
 そこには、不機嫌そうにこちらを睨んでいる妹、ヒカリがいた。
 今年で中三になるはずなのだが、その低い身長や幼げな顔つきのせいか、実年齢よりも一回り幼く見える。
「……何ジロジロ見てるのよ」
「いや、別に」
 あからさまに怪訝な顔をしながら、俺から視線を外しある一点を見つめた。そこは机の上、教科書が山のように積み重なっている。
 触れれば崩れ落ちそうなそれを、上から丁寧に片付けていく。
「少しは整理したらどうなの?」
「今やろうと思ってたんだよ。余計なことを」
「どうだか……って余計なことって何よ!」
 返しては返される。いつもと同じやりとり。
 そんな他愛もないやりとりが、何故か嬉しかった。
「まったく、私がいなくなったら埋もれちゃうんじゃない? この部屋」
 ヒカリはそう言いつつもテキパキと片付けていく。
 その反対側、彼女の机周りは綺麗に整理整頓されていた。
 大半の荷物はダンボールに詰められていて、後は手で持ち運べるような物しか残されていない。

 そう、もうすぐで彼女はこの部屋から、この家から出て行くのだ。

224 :223 :2006/03/10(金) 16:05:03 ID:lX3bjVwb
sage忘れました。すいませんorz

225 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/03/10(金) 16:49:21 ID:I71D5L4U
>>実年齢よりも一回り幼く見える

ここおかしくね?中学生で一回り幼いと1歳とかになってしまうのではないかと。

226 :遊(ry ◆isG/JvRidQ :2006/03/10(金) 18:21:44 ID:iH1sfFDh
>>223
あぁ、また悲しい系のお話だ……弱いんだよなぁ、こういう話に……・。

>>225
ヤフーの辞書より(1、2略)
3 十二支が一回めぐる年数。一二年。「兄と―年が違う」
4 物事の程度、また、人の度量の大きさなどの一段階。「―小さい服」「人物が―大きい」

4に使えるか否かが微妙なところだねぇ……。
ま、いいんじゃない、何となく意味がわかりゃw

227 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/03/12(日) 00:46:52 ID:GWckR+XV
>>213-217
海中氏期待あげ

228 :海中 ◆xRzLN.WsAA :2006/03/12(日) 12:53:09 ID:iUl8b3KR
三月。
船はオーストラリア東海岸沿いへと進み、順調な航海を続けていた。
一ヶ月も乗船していると、もはや勝手知ったる他人の家で、すっかり船の内部も覚えてしまった。
そして日常を行うべく、俺は船内の学校に通っていた。

まだ真新しい、建造されたばかりの白い廊下を歩く。独りの足音が周囲に木霊した。
片手に抱えているのは教科書やノートの類で、使い古したせいか微妙に変色している。
 「……はあ」
予想外に退屈だ。
平日は登校。休日は街へ出かける。たまの上陸は観光。
その繰り返しは単調で、飽きの早い俺にとっては苦痛でしかない。
 「お兄ちゃん♪」
曲がり角からひょっこりと顔を覗かせた優希に対し、俺は足を止める。
 「ああ、はい……」
シャーペンを一本取り出し、ポイと投げてやる。
それを見た優希はむっと顔を赤く染めて、ぷんぷんに怒りながらシャーペンを返してきた。
 「ち、ちがうよ!今日はふでばこを忘れたんじゃないの!」
 「え?違うのか?」
 「ちがうもん!」
 「はは……優希も冗談を言うようになったのか。それとも、とうとう幻聴が……」
 「ちーがーうーのっ!!」
 「あうっ!?」
思い切り爪先を踏まれ、思わずよろめいてしまう。そんな様子を無視して優希は話し出す。

229 :海中 ◆xRzLN.WsAA :2006/03/12(日) 12:54:05 ID:iUl8b3KR
 「お兄ちゃん、最近元気ないよね……。どうしたの?」
心配そうな表情で顔を覗きこむ優希。微妙に上目遣いだが、仮にも兄なのでなんともないぜ。
 「い、いや……爪先が痛いんですけど……」
 「それはわたしのせいだけど……そうじゃなくてぇ……」
優希の言いたいことは分かる。ここ最近、ろくにリラックスしていない。
もじもじと指先をいじっていた優希だが、ついに決心したのか、ポケットから何かを取り出した。
 「と、いうわけで。お兄ちゃんの息抜き大作戦を遂行しに来ましたっ!」
 「なにその作戦名。ふざけてるの?」
 「じゃーん!なんとここに、温水プールのチケットがありますっ!」
 「ちょ、おま―――」
 「泳ぎにいけっ♪お兄ちゃん」
 「日本語おかしいって」

……一通りの回想を終えて、俺は頭上を仰ぎ見た。
青空にペイントされた天井が広がり、太陽を模された照明がプールサイドを照り付けていた。
視線を上から下に戻してみると、金髪美女が各々楽しそうに泳いでいた。
 「これはこれで……」
 「……お兄ちゃん?」
背後からの殺気に怯え、俺は慌てて振り向いた。
 「……し、白いスクール水着?」
優希が着ているのはその名前の通りの代物で、幼い面影を残す優希にはよく似合っていた。
 「それ、濡れると透けるやつじゃないのか?」
 「す、透けないもん!ちゃんと試したんだからねっ!」
 「試した?」
 「あーうーあーっ!」
墓穴をほった優希はメダパニしながら俺をプールに突き落とした。

230 :海中 ◆xRzLN.WsAA :2006/03/12(日) 12:55:02 ID:iUl8b3KR
 「なっ、生温い!」
 「温水プールだもん……お兄ちゃんだいじょうぶ?」
そろそろ優希に憐れな目で見られるようになってきたので、冗談は止めることにする。
 「さてと。足は着く?」
そろりそろりと水の中を歩く優希だが、どうも無理っぽそうだ。
 「だ、だめぇ……真ん中のほうは足が着かないかも……」
綺麗な長髪の黒髪が波にゆれ、水面をゆらゆらと漂っている。波?
 「ここ、波の出るプールなのか」
彼方に目を凝らしてみると、小さな仕切りで区切られた穴があり、そこから出ているようだ。
 「うん。自由にちょうせフーッ、つ出来るみたいだよ」
 「なにやってんのさ」
見ると、優希は小さな口で必死に浮き輪を膨らませている。
 「う、……………………うきわ」
顔を真っ赤にしてぼそぼそと呟く。そんなに恥かしいのだろうか。
それはともかく、浮き輪なら中央の深いところでも問題はないだろう。
 「よし。それ付けて行ってみる?」
 「う、うん」

しばらくして浮き輪を装着した優希と俺は、プールの深い場所へと泳いでいた。
元々外国人用に作られた船なので、俺たちには何もかもが少し大きい。
ちらりと優希に視線を送ると、浮き輪で楽しそうに自分の両足をぷらぷらさせていた。
ニヤリ。

231 :海中 ◆xRzLN.WsAA :2006/03/12(日) 12:56:04 ID:iUl8b3KR
 「お、お兄ちゃん!だめっ!」
 「ん?どうしてダメなんだ?」
 「だ、だってぇ……そこは……んっ!」
 「そこ?ここがどうかしたのか?」
 「や、やぁ……入っちゃうよぉ……!」
 「大丈夫だろ」
 「あ、あうっ……!お兄ちゃん、許してぇ……!んんっ……!」
 「嫌だね。ほら、支えといてやるから。出すぞ」
 「あっ!だめぇ!だ、出しちゃだめだよぉ!」
 「だから、大丈夫だって」
 「ふぁぁ……!な、中に出てる……!」
 「ほら、お前も出せよ……!」
 「らめぇっ!やぁ……出るぅ……出ちゃうよぉぉぉぉっ!!」






 「な。水の中で空気出すと面白いだろ?」
 「やだぁ!浮き輪しぼんじゃったよ!ここ、深いところなのに……」
 「だから支えといてやるってば」
 「ばかっ!お兄ちゃんのばかぁ!!」
ストレス発散はできました。

232 :海中 ◆xRzLN.WsAA :2006/03/12(日) 12:56:59 ID:iUl8b3KR
夕日が沈むテラスで、俺と優希は手すりにもたれ、夕焼けを眺めていた。
 「お兄ちゃんのきちく……」
 「そういう言葉、どこで覚えてくるんだよ、お前は」
 「むー……」
 「ああもう、悪かったよ。あれでも食べて元気出せよ」

 「わぁ……これ……」
 「美味そうだろ?」
 「うん……お兄ちゃんの、すごく大きい……はむ」
 「……っ!お、おい、あんまり舌動かすなよ」
 「えーっ?どーしてぇ?……んむっ」
 「こいつ……!」
 「んふふ……さっきのお返しだよぉ……ぴちゅ……」
 「わっ……ば、バカ……!」
 「んむ……ちゅ……はむ……」
 「う……!!」
 「えへへ……手で強く握ってあげる……」
 「あ、やめろって……!あ……出る!」
 「きゃっ……!?……あはは、いっぱい出ちゃったね?お兄ちゃん」






 「……ソフトクリーム」
 「せっかく買ってやったのに……もう絶対に買ってやらないからな」
 「さ、さっきのお返しだもん……でも、ごめんなさい……」
船は汽笛を鳴らし、のんびりと航海を続けていく。
旅はまだまだ続くようだ。

233 :海中 ◆xRzLN.WsAA :2006/03/12(日) 12:57:59 ID:iUl8b3KR
正直  許して・・・

234 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/03/12(日) 14:13:10 ID:5LyZx7VN
許します
不覚にも笑ってしまった(´・ω・`)

235 :遊(ry ◆isG/JvRidQ :2006/03/12(日) 15:25:47 ID:OeprWq89
>>228-232
あぁ、もう、ちくしょう、この人上手いよ!
ホワイトデーにむけて頑張ろうと思ったが、一気にやる気失せたわw

236 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/03/12(日) 15:55:58 ID:h+/OF/61
なんかファミ通に昔のってた女神のまぎらわシリーズ思い出した。

237 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/03/14(火) 01:12:05 ID:JoWeREMW
全米が抜いた

>>遊(ry
やる気無くすな!頑張れ

238 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/14(火) 22:58:00 ID:7FvloQ+5
ピンポーン
「はい、はーい!!」
雑誌を放り出して、玄関に走っていく。
「どなたですか?」
ドア越しに尋ねる。
ホントは、分かるんだけどね。
「州田敬介。梨那か?」
照れくさそうに、自分の名前を告げる。
「あ、お兄ちゃん、どうしたの?」
ドアを開けながらまた尋ねる。
この質問の答えだって、私にはもう分かってる。
でも、私が先に言ったら、きみは怒って、「そうだよ」とは言わないから。
「ホワイトデーだからな」
ドアの向こうから現れたキミは、恥ずかしさを隠しながら、小さな箱を見せる。
「わぁー、ありがとう!!」
「気にするな。借りは返す」
これも照れ隠し。
キミは知らないかもしれないけど、私にはそれぐらいお見通しなんだから。
「中は何?」
「ケーキ。普通じゃつまらないだろ?」
これもウソ。
私の好きなケーキ屋さん、ちゃんと覚えててくれてる。

239 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/14(火) 22:58:33 ID:7FvloQ+5
「ありがとう、お兄ちゃん」
私も、キミに最高の笑顔をあげる。
「じゃ、俺は帰るわ」
やっぱり。
キミはクールぶってるけど、頬の赤さは隠せないよ。
「お兄ちゃん、時間あるかな……?」
「ん。なくはないけど……」
「じゃあ、これ、一緒に食べようよ」
「いや、でも……」
「いいじゃない。お兄ちゃんだって、こんな美味しそうなケーキ見てたら、食べたくなるでしょ?」
「それじゃ、梨那の分がなくなるだろ?」
「いいの。ケーキが少なくなっても、お兄ちゃんと一緒にいられるじゃない」
「……しょうがねぇな」
そう言って家の中に入ってきてくれる。
ホントはね、キミの気持ちも知ってるんだ、全部。
だけど……その気持ちはキミの口から聞きたいから。
今日も私は、バカな女を演じるのです。
──────────────────────

「にゃー!!恥ずかしぃ!!」
目の前の紙をクシャクシャに丸める。
「お兄ちゃんにケーキもらって嬉しかったから、
 何か詩が書けると思ったけど……やっぱり、無理っぽいなぁ……
 もうちょっと頭冷えてから、練り直そーっと」

240 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/14(火) 22:59:10 ID:7FvloQ+5
「ねぇ……やっぱり良くないよ、こういうの……」
「いいじゃない、千奈ちゃん。最終的には、唯奈たちのものになるんだから」
とある大型スーパーの一角。
休憩スペースのベンチに座り、コソコソとどこかを見ている二人の少女。
「でもぉ……」
「どうしたの?」
「私たち、ちょっと怪しい人だと思うよ……」
「そう?気にしすぎだよ……あ、お兄ちゃん、何か手に取って見てる」
「……」
「あ、置いた」
「やっぱり、よくないよぉ……」
──────────────────────
……ホワイトデー。
何故かチョコを送る日になってしまったバレンタインデーの
お返しをする日という、もうワケの分からん記念日だ。
日本人は、そういう亜流文化には厳しいらしく、
日本で作られた行事の割りに、結構盛り上がりには欠けるようだ。
それは、このホワイトデー特設コーナーの規模の小ささからも伺える気がする。
「……んー、今一つだな」
とある大型スーパーの一角、ホワイトデーコーナーの前で、
また一つ、商品に目をつけては、却下する。
「あんまり良いものがないなぁ……」
どうもホワイトデー用の商品って言うのは、義理感の強いものが多い気がするな……。
「まぁ、恵さんの分は買わなくて良いのは助かるけど……」
俺の義母、石川恵さんにも、チョコを頂いたことは頂いた。
けど、『アタシにお金と手間かけるぐらいなら、千奈と唯奈にその分を回してほしい』
とのことなので……全力で妹の分を選ばなくてはならなくなったワケだ。

241 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/14(火) 22:59:45 ID:7FvloQ+5
「……そもそも、千奈にはお菓子あげてもしょうがないよなぁ……」
……とすると、無難なトコだと、ハンカチとかか……?
「でも、この辺にあるようなのじゃ、かなり義理くさいよな……」
それに、女物ってのは、よく分からないしな。
「……ま、唯奈はお菓子でもいいとしても……お菓子の選択が難しいなぁ……」
うーん……
やめやめ、ちょっと休憩だ。何か飲も……。
──────────────────────
またまた、双子。
「わわ!!お兄さん、こっち来るよ!!」
「落ち着いて。慌てると怪しまれるよ。ゆっくり逃げよ」
「う、うん、そうだね」
「行こう」
同じタイミングで振り返る二人。
そこに、
「あ、すいません!」
背後から真司の声が……
同時に体を震わせる千奈と唯奈。
「ど、どうしよう、千奈ちゃん……」
「しょうがないよ、謝ろう?」
またも、振り返る。
すると真司は、
「あ、忘れ物ですよ」
そう言って、唯奈のバッグを差し出す。

242 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/14(火) 23:00:29 ID:7FvloQ+5
「え……あ……ありがとうございます」
バレてない!
唯奈はそう確信し、普段より声を高くし、答えた。
「いえいえ、じゃ失礼します」
優しく微笑んで、去っていく真司。
「変装のお陰だね……?」
眼鏡をクイッとあげ、こっそりメガネ千奈に耳打ちするメガネ唯奈。
……これ、素敵です。
「……何だろう、私はすごい罪悪感を感じるんだけど……」
「うん……実は私も……」
「どうしよう?」
「どうしようね?」
──────────────────────
「……んー」
ペットボトルを手に、まだ悩んでいる真司。
「まいったな……時間もなくなってきたぞ……」
浮かない顔でお茶を一口飲む。
そして大きく息を吐く。
「ま……好き嫌いは考えず、二人に似合うか似合わないかで決めることにしよう」
そう決め、立ち上がる真司。
すると、
「お兄ちゃーん!」
唯奈と、少し遅れて千奈がやってくる。

243 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/14(火) 23:01:05 ID:7FvloQ+5
「あ……唯奈……千奈も……何で?」
「見てたんですよ、お兄さんのこと」
「え……?えっと……これは……その……」
「誤魔化さなくても分かってるよ。ホワイトデーのプレゼントでしょ?」
「あ、あぁ……でも、まだ……」
「それも分かってますよ、お兄さん」
「そんな情けない顔しないでよ、私たちが選んであげる」
「え……?」
「唯奈が千奈ちゃんのを」
「私が唯奈ちゃんのを選びますよ」
「唯奈たちは、生まれたときからずぅっと一緒なんだから」
「お互いの好みは、よく分かってますよ」
「だから、お兄ちゃんに千奈ちゃんのこと教えてあげるよ」
「お兄さんに唯奈ちゃんのこと教えますよ」
……息ピッタリのコンビネーションに圧倒する真司。
そして、
「うん、じゃ頼もうかな」
「うん!」「はい!」
大きく返事をする二人。
真司は微笑んで、彼女たちの手を優しく握り、歩き出した。

[一応、END]

244 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/14(火) 23:01:44 ID:7FvloQ+5
「んー……」
本を見ながら唸る。
すると、
「おにぃちゃん!!何してるのー?」
背後から、俺の妹、沙耶が声をかける。
「ん?あー、本を読んでるんだ」
「どんな本ー?」
「お菓子の本。ほら、ホワイトデーだから沙耶に何か作ってあげようと思ったんだけどさ」
「サヤに!?見せて見せて!!」
「あぁ」
ソファを乗り出してくる沙耶にも見えるように、本を移動させる。
「はわー……」
チーズケーキ、ガトーショコラ、苺大福……
いろんなお菓子をパラパラと見せていくうちに、沙耶の瞳に期待の色が溢れてくる。
「いいなぁ……食べたいなぁ……」
ボソッと呟いたこの言葉に悪気はないと信じたい……。
「でもな、沙耶。俺は、そんなに難しいのは作れないからなぁ……」
「そうなのー?」
「そうだけど……」
さすがに、ヘコむだろうな、沙耶……。
などと考えていたが、
「それならね、おにぃちゃん、サヤ、これがいいよー!」
沙耶が上半身を完全に乗り出し、本の一ページを指差す。
「え……?これでいいのか?」
「うん!」
大きく頷く沙耶。
「んー、じゃあ、今日のおやつはこれにするか……」
「うん!!」
「それなら、材料買いに行かなきゃ」
「うん、沙耶も行くー!!」
──────────────────────

245 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/14(火) 23:02:29 ID:7FvloQ+5
「ねぇ、ねぇ!!もういいんじゃない!?」
フライパンの前。
椅子の上に膝立ちし、眺める沙耶が、うずうずしながら尋ねる。
「いや、まだだな」
俺はそんな沙耶の肩を、沙耶が落ちないようにつかみ、フライパンの様子を見守った。
「まだかな、まだかなぁ?」
「そろそろかな。どいて、危ないから」
右手でフライパンの柄を、左手で皿を持ちスタンバイ。
「うん、早く、早くっ!!」
「よっと」
フライパンを皿の上にひっくり返す。
すると、湯気と共に、大きくて厚いホットケーキが。
うむ、自信作だ。
「わぁー!!おいしそー!!」
「だな」
これに、さっき買ったバターとシロップとあとはホイップクリームを乗せて完成。
ココアを添えて、沙耶の待つテーブルへ運ぶ。
「さ、召し上がれ」
「うん、いただきまーっす!!」
一段目のホットケーキを、勢いよくフォークで突き刺し、豪快に食す沙耶。

246 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/14(火) 23:03:01 ID:7FvloQ+5
「こらこら、ナイフ使えよ。服汚れるぞ」
「へへー、美味しいよ、おにぃちゃん!」
「……ま、いいか。まだ焼こうか?」
「サヤは良いよー。それより、おにぃちゃん、あーんして」
一切れをフォークに刺して、掲げる沙耶。
「え……?」
「おいしーよ。食べないの?」
「いや、食べるよ」
俺は沙耶から、フォークごと受け取り、ホットケーキを口に運ぶ。
「うん、うまいな」
「ねー?おにぃちゃんの味だよー」
「俺の味……?」
「うん。おにぃちゃん、よく作ってくれたよねー?」
「あぁ……」
作るのラクだしねぇ……。
「サヤは、これがおにぃちゃんの味なんだって思うんだー」
「そっか」
「うん、ありがとう、おにぃちゃん!!」
笑顔でホットケーキを頬張る沙耶。
そうだ、もう一枚焼いてあげなきゃな。

[おしまい]

247 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/14(火) 23:04:43 ID:7FvloQ+5
三月十四日。
昼下がりを走る電車はスピードを落とし、とある大きな駅に滑り込む。
俺は窓から、駅名を確認すると、バッグを掴んで電車から降りる。
「……意外と早いもんだな」
時計を見ながら呟いた。
ほとんど来た事のない駅を、案内板に従い改札を出た。
……そこまではよかったが……
「……サラの家、知らないぞ」
知らないんですよ。
サラがいつもやるみたいに、驚かせようと思って、何の連絡もしないで、ここまできたのはいいけど……。
「仕方ねぇ、電話して迎えに来てもらうか」
そう思い、携帯電話をポケットから取り出し、電話をかける。
プルルルルルル……
呼び出し音が数回鳴った後、
「え……!?マサト!?」
サラの声が聞こえた。
しかし、それはケータイからではなく……
「こんにちは、マサト」
サラが、俺の目の前に現れる。
「え……?サラ……?」
「ええ、久しぶりね。こんなところでどうしたの?」
「あ、ほら、ホワイトデーに会うって約束だろ?」
「来てくれたってこと?」
「学校早く終わったからね」
「そうなんだ」
サラがちょっとだけ俯く。

248 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/14(火) 23:05:38 ID:7FvloQ+5
多分、照れ隠しなんだろうと思うと、嬉しくなった。
「立ち話もなんだからさ、喫茶店でも行こうよ。何か良いところ知ってる?」
「うん、一度行ってみたいとこがあったんだ。そこでいい?」
「任せるよ」
「そう、じゃあ、行きましょうか」
サラに従い、全く知らない道を歩く。
ときどき振り返り、何か言うわけでもなく俺の顔を眺めるサラが何か可愛かった。
──────────────────────
「マサトは何にする?」
「……」
今まで我慢していたが……もう限界みたいだ。
「ここ……喫茶店じゃなくて茶店じゃない!?」
いかにもな和風建築物の中で突っ込みを入れる。
「いいじゃない、何でも」
サラは何食わぬ顔でお茶を飲んだ。
「ま、まぁ……そうだけど」
「でも、驚いたわ。マサトがこっちに来るなんて」
「俺も。まさかあんな偶然があるなんて」
「……運命の赤い糸……かな……?」
「え?何だって?」
「い、いえ、聞こえなかったらいいの!!」
顔を赤らめ、手をパタパタ振るサラ。
「そう……ま、そういうの慣れてるけど……」
俺もお茶を掴み、飲む。
「ところで、マサト、聞きたいことがあるの!!」
「あぁ、何?」
「私に、何をくれるの?」
「は……?」

249 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/14(火) 23:07:10 ID:7FvloQ+5
「日本だと、バレンタインデーのプレゼントはチョコレートでしょ?じゃあ、ホワイトデーは何なの?」
「あ、知らなかったのか?」
「いろいろ聞いてみたんだけど、クッキーだったり、マシュマロだったり、キャンディーだったり……
 ハンカチとか下着とか、諸説あるみたいだったの」
「ほぅ……」
「だから、マサトは何を持ってくるのかなって」
気体に満ちた瞳。
「……え、何をって……何も持ってないけど……?」
しょうがないよ、学校帰って急いできたんだからさ……。
「え……えー!?何で何で!?楽しみにしてたのに!!」
「いや、俺も何が良いかわかんなかったし……」
「そんな……」
肩をガックリ落とすサラ。
……そんな楽しみだったのか……。
「でも……そのかわり、ここは俺がご馳走するから、それで許してくれないか?」
「……ま、いいわ。だけど……いっぱい食べるからね?」
「お手柔らかにお願いしますよ……」
「少しは拒否しなさい、冗談よ」
「何だ、冗談か……」
「せっかく来てもらったのに、そんなことしないわよ」
「そんなに嬉しかったか?」
「そ、それはそうよ……ただでさえ、一ヶ月だったんだから」
「そっか、やっぱり来てよかったよ」
「ええ、ありがとう、マサト」

少々幼い笑顔を見せるサラ。
ま、これを見れただけでも、ここに来る価値はあったんじゃないかと思う。
あとで、忘れずにサラの家の場所を聞かないとな。

[終]

250 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/14(火) 23:08:01 ID:7FvloQ+5
三月十四日、いわずと知れたホワイトデーですよ。
「ただいまー」
もはや暗くなった時間、俺は大きな紙袋を下げて、玄関のドアを開ける。
「あ、兄さん。遅かったですね」
そんな俺を出迎えてくれる妹の未来。
「おぅ、ちょっといろいろとねー」
靴を脱ぎながら答える。
「何ですか?その荷物?」
「これ?これは、ホワイトデーのプレゼント」
「兄さん、チョコ、一杯もらったんですねぇ……」
「え?あぁ、これ、全部未来ちゃんのだよ?」
「そんなに……ですか?」
「つっても、直接未来ちゃんにあげるワケじゃないけどね」
「……?」
「ま、あとの楽しみってことで」
「そうですか……ま、楽しみにしておきます」
「じゃ、早いところご飯にしよう。用意は?」
「はい、用意できてますよ」
と言うわけで、未来と二人、美味しそうな料理の並ぶ食卓につくのでした
──────────────────────

251 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/14(火) 23:08:38 ID:7FvloQ+5
「ごちそうさまでした」
「ごちそうさまでした」
空になった食器の前で、手を合わせる二人。
「さてと……」
食器を片付けるため、立ち上がる未来。
「あ、俺も手伝うよ」
同様に立ちあがる俺。
「え?いいですよ、別に」
「いいからいいから。二人でやって、早く終わらせちゃおうよ」
「そうですか。じゃ、お言葉に甘えますね?」
「おー。任せとけ」
腕まくりをして、洗い物の山に挑む俺。
黙々と、未来が洗った食器を濯ぎ、拭いていく。
「やっぱり、二人でやると早いですね」
数分後、洗い終わった皿の前で、手を拭きながら微笑む未来。
「だろ?さ、お楽しみといこうかな」
「ついに……」
「そうそう。はい、これ」
俺は先ほどの紙袋から、箱を一つ取り出し未来に手渡す。
「何ですか?」
「入浴剤。なかなかお高いですよ、それ」
「っていうか、何で……?」
「いつも頑張ってる未来ちゃんに、たまには、一番風呂を楽しんでもらおうと思ってさ」
「へぇ……」
「俺のことは気にしなくても良いから、のんびり入ってよ」
「兄さん……」
「ん?何か問題でも?」

252 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/14(火) 23:09:16 ID:7FvloQ+5
「いえ……ホワイトデーには別に何もいらない、なんて思ってたんですけど……
 いざもらってみると、何だか嬉しくて……えへへ……」
恥ずかしそうに微笑む未来。
あぁ、もう!!ちくしょう!!可愛いぜ!!
「じゃ、兄さん。遠慮なく、兄さんからのプレゼント頂きますね?」
「おぅ、ごゆっくり」
よほど嬉しかったのか、部屋を出て行くとき、小さく手を振る未来。
それを満足げに見送る俺。
思ったより順調だなぁ、おい。
──────────────────────
「ふぅ……」
お風呂の中で大きく深呼吸をする。
「兄さんが言うだけのことはあるなぁ……」
肩までお湯につかりながら、良い気分で呟いた。
凄くいい香りだし、お肌もツルツルしてきた気がする。
そもそもこんなに長風呂をしたのは久しぶりだ。
何だかリラックスしすぎて、眠くなってきてしまった。
「あとで、兄さんにお礼言わなくちゃ」
「いや、礼には及ばないぞ」
後方から、兄さんの声。
「あ、兄さん……いたんですか……」
「ああ、ちょっと様子を見に来た」
「いいですよ、これ……すごく気持ち良いです……」
「そっか。お気に召された様子で、光栄ですよ、姫」
「ふふっ……」
「何だよ?」
「恥ずかしいんですけど、さっき私、お姫様になったみたいだな。って思ってたんですよ。
 それが、可笑しくて」
「んじゃまぁ、せっかくだし、もうしばらくやりますか。お姫様ごっこ」

253 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/14(火) 23:09:51 ID:7FvloQ+5
「……じゃ、お願いしちゃおうかな」
「了解。お姫様」
「兄さんは何役ですか?」
「王子……って柄じゃないから、家来かな」
「そうですか、お願いしますね」
「お任せください。姫」
「ふふっ。頼りにしてますよ」
……お風呂は人を変えるようです(立花未来、後日談)
──────────────────────
ベッドに横になる未来。
彼女の透き通るような真っ白な肌に、野獣のごとき俺の手が、獲物を求めるかのように這い回る。
「あっ……兄さん……そこは……」
俺が未来の敏感な部分に触れるたびに、未来は可愛らしい悲鳴をあげた。
その声が、俺を一層やる気にさせるのだ。
「気持ち良い?」
俺はクスリと笑って、さらに彼女を快楽へと誘うべく、さらに力を込める。
「あっ……はい……いいです……んっ……」
未来は締りのない顔で、ただ体に溢れる快楽に身をゆだねている。
そんな彼女に、俺は……

254 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/14(火) 23:10:43 ID:7FvloQ+5
「マッサージぐらいで紛らわしい声出すなよ。親父が聞いたら卒倒するぞ」
正解:マッサージ。
「あ、すみません……でも、気持ちよくて……」
「それだけ疲れてるってことだね」
「やっぱりそうなんですか……」
未来の背筋をふにふに。
「まぁねぇ、あれだけ毎日頑張ってりゃ、当然じゃない?」
「あはは、何だかんだ言っても結構大変ですからね」
未来の腰をもみもみ。
「ま、好きでやってるのはわかるけど、たまには休まなきゃってことだね」
「そうですね……」
未来のお尻をじー。
「ま、そんな暗くなるなよ」
「そうですね……」
未来のふとももをぷにぷに。
「未来が無理しないように。未来が頑張り過ぎないように。そのために俺がいるんだろ」
「兄さん……」
「俺は未来の兄貴なんだからな。たまには甘えてもらわないと」
「ふふっ、覚えておきます」
微笑む未来。

255 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/14(火) 23:11:19 ID:7FvloQ+5
そんな未来の足をなでなで。
「ねぇ、兄さん?」
「どうした?」
「今日はありがとうございます」
『いや、こちらこそ、いい思いをさせてもらったよ!!』
とは、さすがに言う気にならなかった。
「なに。こんなんでよければ、いつでもするさ」
当然下心有りで。
「はい、お願いしますね……あ、そうだ。兄さんにもやってあげますよ、マッサージ」
「おいおい、それじゃ、意味ないだろ?」
「いいじゃないですか。ほら、寝てください」
「んじゃ、お願いしようかね」
「はい」

ロマンティック、とは程遠いが、ま、こういうホワイトデーでも良いんじゃないのかな。
なんて、未来にマッサージされながら思う。
というより、未来と楽しめりゃ、何だっていいのかもしれないな。

[おわり]

256 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/14(火) 23:12:34 ID:7FvloQ+5
とにかく時間がなかったです……でも、頑張ることは頑張りました……結果は伴ってないけど……

257 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/03/14(火) 23:39:50 ID:+WPFg8Bn
いやGJだ。
芸風広いなー。

258 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/03/15(水) 12:56:21 ID:SBmPuSZl
Gj! 
…ちょっとしたミスにより遊星さんのまとめサイトが見れなく…
 誰かおたすけを!

259 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/15(水) 13:34:46 ID:7zsPNpDG
>>258
www.geocities.jp/you_say712/

そういや、ここには貼ってなかったっけねぇ

260 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/03/15(水) 17:10:50 ID:SBmPuSZl
ゆ、遊星様!?ありがとうございます(ノДT)
 それとsage忘れスマソ

261 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/03/17(金) 11:43:10 ID:JbCl7rQk
海中様、遊星様、GJです!

海中様>エロいw
面白かったです!!

今回はギャグですね

遊星様>ヤバいっ、サラ萌えました!
サラはツンデレかな?
プレゼント(´・ω・`)

サラ&双子最強w

262 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/03/19(日) 19:52:35 ID:isOInMJv
待ちに待った文化祭当日。いつもの何倍もの活気と熱気を帯びた学園に弾んだ声が飛び交う。
俺もそんな空気を人並みに楽しんでいた、筈だったのだが

「はい、オーダー入りま〜す!!イチゴクリームにバナナチョコ一つです!!」
「・・・はいはい」

何故か屋台でクレープを作っていた。・・・明らかに何かが間違っている。

「・・・あのさ、なんで俺が作らなくちゃならないワケ?」
「それだけ上手く作れる人はそういないよ、あたしだって無理だもん」
「その才能を使わない手はないワケよ」

強靭な笑みを見せるクラスメイト達にたじろぐ俺。
ほんの少しクラスの出店状況を見てみようと思ったのが運の尽きだった。
連れ立って歩いていた筈の仲間は知らぬ内に姿を眩ませ、気が付けば俺一人拘束。
あまりにも無情な展開だが、そんな訳で今現在屋台を切り盛りしている。

「くっ、くそ・・・全員トンズラとは友達甲斐の無い奴等だ!!」
「いいのよ、男子で当てになるのって言えばキミくらいのもんだし」
「屋台造ってクレープまで作るってか、村一番の働き者だな俺は」
「まぁまぁ、これでも私達ほんとに感謝してるんだからさ」
「うん、実際、村一番の働き者だよキミは」

なんとなく上手く扱われている感じがあるが今更その辺りは深く考えまい、虚しいだけだ。
愚痴を零しつつも手早くクレープを仕上げていく。その所業に周りから漏れる感嘆の声。

263 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/03/19(日) 19:54:07 ID:isOInMJv
「ほい、出来上がり」
「ほんと上手だよねぇ、ひょっとしてどっかクレープ屋でバイトしてたとか?」
「流石にそれはないな・・・まぁ、家で何度か作った事があるからさ」
「ひょっとして、巴ちゃん直伝だったり!?」
「え?ああ・・・そんな所」

目を輝かせて問いかける女子を前に俺は曖昧な作り笑いで答える。
当然、巴と共に培った技術なのだが教えたのは俺だったりするんだよな。
まぁ、それを言った所で誰も信じやしないとは思うが。
男子厨房に入るべからずという言葉はもはや昭和の向こうに霞んで見える。

「・・・ところで、昼になったら俺は抜けるからな、流石にその辺でご勘弁を」
「ありがとうね、お陰で助かっちゃったよ」
「一番忙しい時に助っ人だったからね、ほんとありがとう!!」
「じゃあさ、どうせだったら後で私達と文化祭見て回る?お詫びに奢ったげるから」
「う〜ん・・・気持ちだけ受け取っておくよ」

割と本気で言ってくれていた様だがやんわりと断っておく。
女の輪の中に男独りはキツ過ぎる。公園へ遊びに連れ歩くチワワじゃあるまいし。

「あっ!!いらっしゃいませ!!」
「・・・うっ!?な、なんか嫌な予感が・・・」

そんな事を考えて苦笑いしていると一オクターブ高い接客の声が聞こえてくる。
ほぼ同時に背中に感じる悪寒。この感覚、まさか・・・振り向いたその先にいたのはやはり氷の女帝、もとい我が妹。

264 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/03/19(日) 19:55:44 ID:isOInMJv
「・・・イチゴチョコひとつ」

大きくは無い、むしろ囁く様な、それでいてはっきりと聞こえる独特の澄んだ声。色めき立つ周りとは少し違う緊張が俺に走る。
長い付き合いで大体解るんだが・・・妹様は大変ご機嫌斜めらしい。

「兄さん、楽しそうだね」
「えっ?そ、そうかな・・・ははっ」

急にこちらに向けられた穏やかだが矢の様に刺さる視線に動揺して作り笑いもままならない。
兄さんという完全に余所行きの言葉もやたらと深く胸に突き刺さる。
背筋まで凍りつく瞳の奥にある絶対零度の世界。一体何がこの子をここまで駆り立てるのか?

「はい、イチゴチョコです」
「・・・ありがとうございます」

クレープを受け取ると軽く会釈して悠然と去って行く巴。そんな巴の颯爽たる後姿を惚けた顔で皆が見送る。

「ほんと素敵よねぇ・・・巴ちゃん」
「うんうん、財布を取り出す姿もカッコイイっていうか」
「年下とはとても思えないよ、ホント」

頬を染めて後姿をうっとりと見つめるクラスメイト。数秒後、なんとはなしに俺に品定めする様な視線が集まる。
所詮、体は一つだというのに複数の視線で貫くとはなんという仕打ちだろうか。

「・・・すみませんね、どうせ俺は面白くもなんともないただの凡人ですよ」
「い、いや、そんなんじゃないんだよ!?そんな事は無いから、ねっ」
「そ、そうそう、いいひとだもんねぇ」

鑑定の結果はいい人かよ・・・まぁ、自分でもお人好しかその辺りだろうとは思うが。
それよりも巴の機嫌がすぐに直ってくれればいいのだが。
遠くになった背中を見ていると自然と深い溜め息が漏れ出てしまう俺だった。

265 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/03/19(日) 20:19:20 ID:isOInMJv
てな訳で前回、年の終わりに遊星神のご神託を承ったのでコテ&トリップ付けた前スレ260です。
相も変わらずのスローペースに誰も覚えていなくとも仕方がありません。
一応、話は去年前振りしていた文化祭話の続き。
バレンタイン話もホワイトデー話も書いてはいますが完成したのが今し方。
来年投下しましょうかね・・・生きてれば。

>海中様
SF的設定を活かしたお話は流石の一言。
というか思わせ振りな展開が上手い!!
>223様
悲しめのお話ですね、続きがとても気になっています。
期待して待ってますよ。
>遊星様
しっかりバレンタイン、ホワイトデー共に書き上げるとはお見事です。
堪能させて頂きました、羽音ちゃんが可愛い!!何気に精神年齢高い梨那ちゃんがイイ!!

266 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/21(火) 08:33:42 ID:udjHyFTw
わーい、260様、改め夢ノ又夢様がいらっしゃったぞー!
続きが楽しみだー!

267 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/04/04(火) 22:24:48 ID:09xp6MVE
保守保守っと。

にしても、アイデアがわかないなぁ……。

268 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2006/04/07(金) 15:31:46 ID:441Fyv+f
>>夢ノ又夢さん
コテトリおめですー
いつもひっそりと楽しませてもらってますですw

>>遊星さん
料理にお酒を入れすぎて酔っ払って暴れまくる妹…言ってみただけです(´・ω・`)
遊星さんは書いてる量が量だから仕方ないですよ。

それにしてもこの時間のなさは一体…
次のが書けるようになるまで名無しで潜伏するかも知れないです。

269 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/04/12(水) 01:59:15 ID:5Ar0SzUf
ひそかに期待あげ

270 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/04/17(月) 21:29:28 ID:ZDUMoLOm
意思のある静寂に包まれた体育館に司会の声が響き渡る。舞台袖から現れる数人の生徒達。
一人一人司会者に丁寧な紹介をされ大きくお辞儀してみせる。文芸部の詩の朗読がもうすぐ始まる。

「・・・お兄ちゃん・・・」

渡せなかったチケット、隣の空席。頭に過ぎるクラスメイトに囲まれて照れた笑顔のお兄ちゃん。
先程の光景を思い出すだけで秘めかねた痛みが胸にチクリと突き刺さる。

「・・・カッコ悪い・・・デレデレして」

きっと優しいお兄ちゃんの事、忙しそうなのを見かねて助け舟を出したに違いない。
頭でそう解っていても心は納得してくれない。メトロノームの様に揺らめくアンバラスな心と理性。
やがて耳に聞こえてくる詩の朗読、どうやら気付かぬ内に朗読は始まっていたらしい。
綺麗に着飾られた言葉を聴く度に思い知る、ボクにはこんな風に伝えたい言葉が無い事を。
ボクは人に言われる程、器用な方じゃない。届けたい想いは沈黙の渦の奥にある。
お兄ちゃんへの想いは嬉しい事も悲しい事も、時に大きくなる戸惑いや苛立ちだって抱え込む。
例えそれがどんなに辛くてもそのひとつひとつが本当の気持ち、偽りの無い心。
ホントはちゃんと解ってた・・・解ってるんだよ、お兄ちゃん。

「お待たせしました、次は相川梨那さんです」

泣き虫だったボクが元気にここまでこれたのはお兄ちゃんが傍に居てくれたからだって。
繋いだ手の温もりがボクを支えてくれていたんだって。
瞼を閉じればいつでも目の前に広がるずっと追いかけ続けるお兄ちゃんの大きな背中。
耳元からは落ち着いたメロディに乗せて朗読される詩が聞こえてくる。
紡がれるシンプルな言葉達が胸を打つ。それはきっと心からの気持ちだからなんだと思った。
こんな風に自分の想いを伝える事が出来ればどんなに素敵だろう。

271 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/04/17(月) 21:30:25 ID:ZDUMoLOm
「心からの気持ちをありのままに・・・」

ボクは考えすぎていたのかもしれない。そう思うとなんだか切羽詰っていた自分が余計に滑稽に思えてしかたがなかった。
気持ちは言葉にしなきゃ伝わらない、そんなお兄ちゃんの真摯な言葉を不意に思い出す。
ボクも伝えよう、欲しいのは思い出じゃない、今この時なのだから。
朗読を終え、割れんばかりの拍手に真っ赤な顔で応じる彼女を見届けてボクは席を立つ。

「あれ?最後まで聞いていかないんですか?」
「・・・舞台の準備があるから」

それに相沢先輩の詩の効果で体育館が甘い空気に包まれ始めている。
こうして入り口の男の子に呼び止められた今も場内の熱に浮かされたカップルが自分達の世界に入浸る。
もっと問題なのは数名の女子の妙な熱視線を背中に感じる事、これ以上ここに留まるのは危険を伴う。
一人に告白されでもすれば矢継ぎ早に告白されかねない、それでは卒業式の二の舞だ。
たまにお兄ちゃんから冷やかされるけど女の子の恋焦がれる人を見つめるかの様な視線を浴びるのはやっぱり苦手・・・
かといって男の人にそんな視線を送られるのも正直、嫌だけど。

「そうですか、あ、あの・・・舞台頑張って下さいね!!」
「ありがとう・・・それより相沢先輩に伝えてくれるかな、本当に素敵な詩でしたって」

後ろを振り返りもう一度あの詩の主を見やり、そっと心の中で呟く。
(あなたの想い、どうか想い人に届きますように)
そんな祈りを捧げながらボクは騒がしくなってきた会場を後にした。

272 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/04/17(月) 21:42:46 ID:ZDUMoLOm
まずは遊星神に心からの謝罪を。
折角文化祭話が被ったならこれくらい重なってもいいかなと。
怒られても文句言えません。

>すばるさん
なにやらお忙しそうで。
すばるさんssも気長にお待ちしております。

ちなみにシチューに入れる赤ワインに酔って迫りまくる巴さん
なんて話も書いてたりしたのですが無駄にえっちいので没にしましたw
流石に裸エプロンはなぁ・・・

273 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/04/17(月) 22:50:58 ID:XcLSeSYj
>夢ノ又夢大先生様
いやいやいやいやいや!!
怒るなんてとんでもない!
良いもの読めて、しかも拙僧のキャラを出した頂くなんて、感無量とはこのことですよ!!

>流石に裸エプロンはなぁ・・・
は、裸エプロンっ!?
……くそ……今、エロスレがあれば!!w

274 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/04/21(金) 23:00:33 ID:idYqj/jC
放課後。
校門の前に、一人の少女が立っている。
スラッと伸びた足、制服の上からでも分かるスタイルの良さ、大きな瞳と、日本人にしては高い鼻。
普通と生徒と同じはずの制服すらも、彼女が着ると、1ランク上の服のように見える。
彼女は、胸の下で、小さく腕を組み、何かを待っていた。
「ふぅっ……」
時計を見て、小さなため息。
そのため息にも、魅力を感じてしまう。
「あ……」
小さな声。
しかし、そこには大きな喜びが込められていた。
彼女は振り返ると、品のある笑顔を一人の男に向ける。
……その男、というのが何故か俺なワケだが……。
「お兄ちゃん!!」
少女が─まぁ、ご察しの通り俺の妹なんだけど─サラサラの髪を風に靡かせながら駆けてくる。
さっきまで無風だったと言うのに……風までが彼女の味方だ。
「やぁ、葵。待ってたのか?」
俺は彼女のオーラに圧倒されながら、何とか会話を進める。
「うん、遅かったね?」
そんな俺の心など全く知らず、フランクに話しかけてくる葵。
「ああ、まぁ、テスト近いから」
「勉強してたの?」

275 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/04/21(金) 23:01:22 ID:idYqj/jC
「いや、クラスの女の子に数学を教えt……」
「……ちょっと蚊が」
ギュ。
頬に電撃が走った。
「痛い痛い!!」
「我慢して」
涼しい顔をして、さっきよりも力を強くする葵。
指はあんなに細いのに、どこにこんな力が……!?
「ギブギブギブ!!俺がなんかしたなら謝るから!!」
まわりの生徒が俺たちを見ている。
しかし、そこは葵。
凄い力で俺の頬をつねっていても、ちょっとふざけているようにしか見えないのだ。
「……やだなぁ、お兄ちゃん、大げさだよぉ?」
そんな俺の願いに、ニコリと微笑む葵。
……鬼だ、この人……。
「痛いって!!」
限界に達した俺は、仕方なく葵の手を振りほどく。
当の葵は……
「さ、早く帰ろうよ……」
作り笑いを見せた後、捨て台詞を吐いて、先に歩いていく葵。
「……俺、何かした?」
俺はまだ痛む頬を押さえながら、こうなった原因を探る。
が、特に思い当たらない。
つまり、妹さんはご機嫌斜め、何か嫌なことがあったということだろう。
というか、俺に八つ当たりとは何とバイオレンスな……。
とりあえず、葵を追って駆け出した俺。
周りの人々の俺に対する視線が非常に冷たいよ……。
───────────────────────

276 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/04/21(金) 23:02:14 ID:idYqj/jC
「お兄ちゃん……」
帰り道を二人で歩いていると、穏やかな声で葵が俺を呼んだ。
「ん?」
「反省してる?」
「は……?」
反省?何で?
「してないか……」
呆れた。とでも言いたげな葵。
「……葵ってさ」
「え?」
「いつもそうだよな。俺と兄妹になったときから、ずっと」
「何が?」
「よくわかんないところで怒る」
「……お兄ちゃんも変わってないよ」
「そりゃそうだ」
「何が?って聞いてよ」
「何で……」
……殺気!?
「な……何が!?」
「……鈍感」
「まぁ、自分でも察しの悪い人間だとは思ってるけど」
「ホントだね」
「だろ?……って、おい!!」
「今、何で怒ってるかも、分かってないでしょ?」
「……俺に関係あるのか?」
「さぁね」

277 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/04/21(金) 23:03:00 ID:idYqj/jC
「……出会って、二年になるけど、葵のことはさっぱりわからんな……」
「一気に全部分かっちゃったら、つまらないでしょ?」
「性格悪いよ、葵……」
「……そうかもね……」
「え?」
「あ、あはは!!なんでもないの!!さ、帰ろ!!」
ぎこちない笑いとともに、急に早足になる葵。
「やっぱ、わかんねぇ……」
一人、そう呟いてみた。
───────────────────────
ゴロゴロと寝転がりながら、雑誌のページをめくる。
幸せってこういうことを言うのかなぁ。などと間の抜けたことを思った瞬間、
「ねぇ、お兄ちゃん」
葵が俺の背後に現れる。
「何?」
「数学、教えて?」
数学……。
「先生すらも一目置くような優等生の葵さんが分からないような問題、俺に解けるわけ無いだろ」
目を離さず、雑誌を読み続ける俺。
「で……でも……」
「何?」
「……」
黙ってしまう葵。
「どうした……?」
俺が後ろを振り返ると、

278 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/04/21(金) 23:03:46 ID:idYqj/jC
「お兄ちゃんのバカ!!」
「うぉっ!?」
問題集を俺の顔面に驚くほど正確に投げつけ、何処かへ走っていく葵。
「……何なんだよ、アイツは……」
床に落下した問題集に目をやる。
「あ……」
真っ白な問題集。
でも、ところどころ消しゴムのカスや、消し残りが見える。
明らかに、一度解いた問題を消した後。
「……何で……」
葵が何を考えてるのか分からない。
でも、これは聞いたほうが良いような気がした。
俺は葵の問題集を閉じ、それを持って、葵の後を追った。
───────────────────────

279 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/04/21(金) 23:04:35 ID:idYqj/jC
「あ……」
それは、運命の出会いというには、あまりにも平凡だった。
焦って転びそうになった私を、助けてくれた男の人。
「ありがとうございます」
「いえ……」
私が礼を言うと、小さくそういってまた歩き出す青年。
別にそのときは、何にも思ってなかったのに。
だけど、次の日も、その次の日も、彼のことが何故か頭から離れなかった。
いつも目で追って、いつも同じ車両に乗ろうと努力した。
それで分かったのだが、彼は本当に優しかった。
本当に、誰にでも。
お年寄りが乗ってくると、黙って席を立ったり、
満員の電車の中で、本人にも気付かれないほどさりげなく女の子を守っていたり……。
私にしか見えていない、彼の優しさ。
いつのまにか下心のある優しさにばかり触れていた私には、彼は凄く暖かかった。
……そして、いつのまにか、彼への想いは募っていた。
だから、お母さんが再婚して……あの人と兄妹になるって知ったときは、本当に嬉しかった。
運命の出会いはちゃんとあると思った。
ワガママなのは分かってる。
けど、私はアナタの特別になりたい……。
アナタの優しさを独り占めにしたい……。
だけど……
───────────────────────

280 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/04/21(金) 23:05:17 ID:idYqj/jC
「それが、この有様か……」
「何がだよ?」
そう呟いた、葵の背中を見つけ、声をかけた。
「……ったく、まさか駅にいるとは思わなかったよ」
葵の隣に座る俺。
「……嫌だな……顔合わせたくなかったのに……」
葵は驚いた様子も見せず、前を見たまま、答える。
「悪かったな……」
「……やめてよ」
「え?」
「何も分かってないのに、謝らないで……」
「……スマン。確かに、口先だけってのは良くないな。だけど……」
「どうしてこうなったのか分からない。ってことでしょ?」
「……そうだな」
「ホント鈍感……」
「今更どうにかなるもんじゃない。諦めろ」
「あ、開き直った……」
「しょうがない。やっぱり、俺には葵のことは分からないんだ」
「……そっか」
立ち上がる葵。
そして、振り返って

281 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/04/21(金) 23:06:04 ID:idYqj/jC
「聞きたい?」
「……言いたいか?」
「質問を質問で返さない」
ビシッと人差し指を差し出す葵。
……無理してるのはなんとなくわかる。
「……じゃ、聞きたくない」
「うん、それがいいよ」
憂いを帯びた微笑み。
「何だそれ……」
「私もあんまり知って欲しくないから」
「……何で?」
「うーん……」
少し考えるように俯く。
「……お兄ちゃんには、純粋なままでいて欲しいかな」
「俺が?純粋?」
「そうだね」
「ま、何でも良いけどさ」
「さ、帰ろう」
手を差し出す葵。
「あ、ああ……」
俺もゆっくり立ち上がり、歩き出す。
すると、
「ねぇ、お兄ちゃん」
「ん?」
俺が振り返ると、葵は立ち止まったまま。
「足が痛い」
「どうした?」
「わかんないけど……痛い」
「歩けるか?」
「無理」
「……しょうがない、誰かに迎えに……」

282 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/04/21(金) 23:06:52 ID:idYqj/jC
「お兄ちゃんが運んで」
「……え?」
「ダメ?」
「まぁ、いいか」
「ありがと」
礼を言ってこちらに歩いてくる葵。
「今……歩かなかったか……?」
「気にしない気にしない。さ、お願いね」
両手を前に突き出す葵。
俺が背中を向けると、
「前ぇ」
「……はいはい」
仕方なく、彼女を抱きかかえる。
葵はしばらく驚いていたが、嬉しそうに
「……ふふっ」
「何だ?」
「ちょっと見直した」
「何を?」
「内緒」
「分かんねぇ……」
「じゃ、一つヒントをあげるよ。目、閉じて」
「ん?あぁ……」
いわれるがまま、少し足を止め、目を閉じる。
「これが、私の気持ち、だよ?」
何だか含みのある言葉と共に、なにやら頬に暖かいものが……
「なにをした?」
「クスクス……さ、歩く歩く」
「……わかりましたよ」

情けない話だが、ヒントをもらっても何だか分からない。
まぁ……それはそれで葵も嬉しそうなので、今日のところはよしとしようか……。
──────────────────────

283 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/04/21(金) 23:08:38 ID:idYqj/jC
鈍感兄と嫉妬妹。というつもりで書いていたけど、後半何が何だか……。
実は、夢ノ又夢先生みたいなのを書きたかった。というのは、僕とキミだけの秘密だ。

284 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/04/23(日) 01:09:28 ID:vKH8l8Q7
GJ!
兄の鈍さがイイ!!

285 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/04/28(金) 01:03:46 ID:zP/bBIM8
そろそろほしゅ?

>>283
いい感じだと思いますよ〜

286 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/04/28(金) 21:33:38 ID:VoxOMLZP
「あの・・・先輩、おはようございます」

通い慣れたいつもの通学路でふと見知らぬ女の子に声を掛けられる。
こういう展開、男なら誰しも淡い期待が湧き上がるというもの。伏せ目がちな視線、少し恥ずかし気な顔。
これはもしかして・・・

「巴さんは一緒じゃないんですか?」

・・・俺はオマケかい。
やはりそうそう上手くはいかないらしい。微妙に泣きたい気持ちを笑顔で隠したその時、

「ええっと、今日は俺が先に出てきたから多分・・・ぐっ!?」

唐突に物凄い力で後ろから襟首を掴まれる。その先にあるのは閻魔様も裸足で逃げ出す氷の瞳を持った我が妹。
マズイ・・・完全に誤解している。
勢いに立ちすくむ女の子に射抜く様な視線を浴びせ無言のままぐんぐんと俺を引き摺り歩き出す。

「ちょ、ちょっと待ておい!!落ち着けってば!!」

スイッチの入ってしまった以上、そう簡単には収まらない巴。
あ然としたまま一人残された女の子に先程より二割多めの作り笑顔で手を振る俺だった。

287 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/04/28(金) 21:34:30 ID:VoxOMLZP
「まったく、ボクがいないとお兄ちゃんはこれなんだから!!」
「はいはい」
「あんな子にデレデレしちゃって・・・カッコ悪いよ!!」
「はいはい」
「騙されて酷い目にあうのはお兄ちゃんなんだからね!!」
「・・・あー、はいはい」

不機嫌度MAXで捲くし立てる妹に半分呆れつつ適当に相槌を打つ。それにしても何故こんなに叱れなければならないのか?
とはいっても下手に反論しようものなら倍返しが待っているし・・・
この勢いと説教では下手すれば遅刻になりそうだな。釈然としないまま目の前に広がる入道雲をぼんやりと眺める。

「お兄ちゃん!!ボクの話を真面目に聞いて!!」
「聞いてるよ、それで何が言いたい訳だお前は?」
「八方美人をなんとかしてって言ってるの!!」
「俺のどこが八方美人なんだよ」
「誰にでも優し過ぎるから八方美人なの!!」
「んなコト言われてもなぁ・・・・・・ふぁ〜あ・・・ぐっ」

考え込むフリして両腕を組むと堪え切れずに漏れ出す欠伸。その瞬間、互いの顔が白い手で無理やり近づけられる。
真っ直ぐに俺を見つめる水鏡の如く透き通った瞳。可憐さと凛とした強さを湛え、潤んだその瞳に前に思わず息を呑む。

「お兄ちゃん・・・ボクはホントに心配してるんだよ?」
「い、いや、それは分かってるんだが」
「・・・心配なんだよ、お兄ちゃん、人が好すぎるから・・・」

288 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/04/28(金) 21:35:22 ID:VoxOMLZP
凄みを効かせたと思うと急に言葉を途切らせて巴は不意に表情に影をつくる。
毎回思うんだがこの不安気な顔は反則すぎる。俺に落ち度は無い筈なのに罪悪感に囚われてしまうぞ、ホントに。

「ま、まぁ・・・なんと言うかさ、優しさが有り余ってるんだよ、きっと」

結局、出てくる言葉は言い訳にも成りえない言葉だけ、更に沈み込む巴が不安になってそっと横目で顔を盗み見る。

「・・・優しさが余ってるのなら・・・全部ボクにくれればいいのに・・・」

そっと呟いた、でもバッチリ聞こえてしまった独り言。
・・・これ以上、優しくしてくれと?
(まったく、何言ってんだか・・・)
笑いを堪えながらポケットから小銭入れを取り出し、脇にある自動販売機に向かう俺。

「・・・よっと、ほら、飲みな」
「・・・えっ?」

突然差し出されたスポーツドリンクに目を白黒させて戸惑う巴。そんな子供っぽい仕草が面白くて俺はつい吹き出してしまう。

「あははっ、そんなに驚く事ないだろ?遠慮せずにどうぞ」
「・・・」

さては先程まで説教していた手前、素直に受け取っていいものか悩んでるな。中途半端に差し伸ばされた手はそんな巴の無言のSOS。
周りの人は皆、巴は感情を顔に出さないとか気難しいとか言うがこれ程に解りやすい子もそうそういないと俺は思う。
まぁ、他人には意識してそうしている節もあるがそれが逆に人気を高める一端になってたりもする。
冷静であって冷徹ではない、そんな所だろうか。

289 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/04/28(金) 21:36:18 ID:VoxOMLZP
「そんだけ喋れば喉も渇いただろうし・・・はいよ」
「・・・ありがとう、お兄ちゃん」

巴の迷いを笑い飛ばす様に細い指にドリンクをそっと重ねる。
その瞬間、肩の力が抜けてしっかりと握り返してくる。プルタブを開けて一口付けると大きく息を吐く。

「まぁ、あれだな・・・これも俺の優しさだ」
「・・・120円の優しさだけどね」

勝ち誇った顔した俺。隣で肩肘付いて呆れかえった流し目の巴。
緩やかに流れる朝の冷えた風が巴の髪をサラリと靡かせる。

「・・・ぷっ、くくく」
「うふふっ」

僅かな沈黙が流れてどちらともなくこぼれ出す笑顔、無邪気な笑い声は張り詰めた時を溶かしていく。
ふたりして顔を見合わせ笑い合う、他愛のない事で、子供の頃と変わらない距離で。

「ふふっ、ホントにお兄ちゃんは変わらないね」
「さて・・・変わらないのか変われないのか、ま、どっちにしても俺は俺だからな」
「ボクは思うよ、お兄ちゃんはお日様だって」
「ありゃ、俺は太陽なのか?」
「そう、誰の元にも分け隔てなく降り注ぐ優しいお日様」
「あはは、俺がお日様で巴がお月様って所か」
「・・・月・・・うん、そうかもしれないね」
「いや・・・そこは笑う所だろ、冗談なんだから」
「・・・月は・・・お日様が無いと輝けないんだ・・・お日様に近づく事も出来ない、ただ、違う軌道を廻り続けるだけ・・・」


290 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/04/28(金) 21:40:25 ID:VoxOMLZP
朗らかな笑顔のまま、そっと瞳を閉じて物思う。静かに心を揺らめかせる巴の姿は笑っている筈なのにどこか寂しげな横顔に見えた。
まるで天界に飾られた彫像に命が宿ったかの様な鳥肌が立つ程の美しさを秘めた憂いあるその姿。
不覚にも俺は感情の波間を漂う巴の横顔に時を止められてしまう。
しかし、こんな時に限って記憶の片隅に忘れかけていた何かが稲妻の如く音を立てて目を覚ます。
やはり何事も、そうそう上手くはいかないらしい。

「・・・あ、あーっ!!」
「えっ!?ど、どうしたの?」
「時間だよ時間!!学校に遅れちまうぞ!!」

そうだったのだ、よくよく考えれば今は登校中、二人でのんびり語り合ってる場合じゃなかった。
慌てた手付きで内ポケットから携帯を取り出せば授業開始まで後十分、もはや絶望的な状況下にある。

「はぁ、遅刻か・・・まぁ今更慌てても仕方ないか」
「大丈夫、まだ間に合うよ」
「だ、大丈夫って・・・どうあっても学校まで二十分は掛かるだろ」

何時からか自信に満ち溢れた瞳の巴に気圧されつつも溜め息まじりな俺。人間、諦めが肝心だとしみじみ思う。
そんな負け気味な俺の手を取り巴は何の予告も無く無遠慮にトップスピードで駆け出す。

291 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/04/28(金) 21:42:04 ID:VoxOMLZP
「お、おい!?」
「走ればまだ間に合うハズだから・・・お兄ちゃん、頑張って!!」
「陸上部にスカウトされる巴ならともかく俺は無理だってば!!」
「諦めなければなんとかなる、ボクにそう教えてくれたのはお兄ちゃん、だよね」
「・・・まったく・・・やるだけやってみますか」
「うん、お兄ちゃんとならきっとなんとかなる・・・ボクは迷わない、ずっと二人でいようね」
「なんだって?走りながらじゃ聞こえないぞ」
「何でもない!!さ、ラストスパート!!」
「げっ、もう全力疾走かよ!?」

それにしても朝から怒ったり笑ったり悲しんだり走ったりとうちの巴さんの元気なこと。
二人揃って風になる爽やかな感覚。追い越していく新緑の並木道に頬を染めた巴の横顔。
学校まで後八分、なんだか余裕で間に合いそうな気がする。
俺と巴、繋いだままの手の向こうで両手を広げた太陽が笑っていた。

292 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/04/28(金) 21:50:06 ID:VoxOMLZP
遊星神に追いつけ追い越せと単発SSで頑張りましたが・・・返り討ちって感じです。
>遊星様
す、凄い・・・流石は神。お見事としか言い様がありません。
綺麗な妹の可愛い仕草がよく出ていてマジで参考になりました。
是非、葵さんのこの後も書き続けて下さい。
巴の楽隠居の日も近い!!

293 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/04/29(土) 22:29:46 ID:TWYik8JN
>夢ノ又夢大先生様
そんなご謙遜を!!
先生のほうが何倍も凄いですって!!
隠居なんて悲しいこといわずに、これからも巴ちゃんの話が読みたいです、俺は。

294 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/04/30(日) 21:54:37 ID:+DY55Uiv
期待sage

295 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/05/04(木) 22:14:34 ID:0hdfCk/C
お兄ちゃんと二人。
並んで、学校の廊下を歩いている。
今日は、廊下でバッタリ会えた。
それだけで、なんだか嬉しい気分になる。
「お兄ちゃん、嬉しそうだね?」
少しだけ、表情の柔らかい彼の横顔に尋ねる。
「そうか?」
そういって、私を見た顔は、やっぱり嬉しそうだった。
「うん。何かいいことあった?」
「まぁ……少し」
「何何ー?」
「いや、そんな葵に言うほどのことじゃ……」
「気にしないから、教えてよ」
「んー……」
考えるように俯くお兄ちゃん。
「あ、わかった!!テスト、よかったんじゃない?」
お兄ちゃんの答えを待たずに、私が答える。
「あ……うん。ちょっとだけど順位上がってた」
お兄ちゃんは照れくさそうに、成績表を見せてくれた。
「そっか。よかったね?一生懸命勉強してたもんね」
「いや……でも、葵に比べたら俺なんて……」
「私は関係ないよー。でもよかったね、お兄ちゃん」
「うん。そうだな」
もう一度、確かめるように成績表を見るお兄ちゃん。
何だか、私まで嬉しくなってきてしまった。

296 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/05/04(木) 22:15:46 ID:0hdfCk/C
「じゃ、今日は私が奢っちゃおうかな」
「いいよ、別に」
「遠慮しないの。私だって、嬉しいんだから」
「ん?葵も何かあったのか?」
「え……?」
お兄ちゃんは相変わらず、鈍感。
そういうとこも、結構可愛い。なんて思っちゃう辺り……
私もお兄ちゃんという人間に、慣れてきたのかな。
「そうじゃないけど……いいじゃない、たまには」
「……そうか、悪いな」
「ううん。何処に行こうか?」
「そうだなー……」
幸せだな。
考えるお兄ちゃんの顔を横目で見ながら思う。
なのに……
「天童ー!!」
後ろから邪魔者が……。
「お前、どうだった、テスト!?」
邪魔者に肩を叩かれお兄ちゃんが振り向く。
仕方なく私も……。
「ん?いや、そんなに自慢するほどじゃ……」
「何位!?」
「15だったかな」
「へー。俺の見てよ!!7位だぜ!?すごくね!?」
「ほぅ、すごいね」
「だろー?見てよ、葵ちゃんも」
あ、この人……。
話題を振られて、あることに気付いた。
そう考えると、何だか無性に腹が立ってきた……。

297 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/05/04(木) 22:16:49 ID:0hdfCk/C
「あ……うん、凄いんだね」
適当に、愛想笑いで答える。
「だろー!?じゃ、次は頑張れよー!!」
嬉しそうに、足早に去っていく邪魔者。
私は完全に姿が見えなくなるのを確認すると……
「誰なの、あれ……」
「同じクラスの人」
「仲良いの?」
「あんまり話すほうじゃないが……」
「そうなんだ……」
やっぱりだ……。
あまりこういうことはいいたくないんだけど……
きっと、あの人の目的は私だ……。
お兄ちゃんより、良いところを見せたくて、そのために一緒にいるところにやってきたんだろう。
せっかくお兄ちゃんは頑張ってたのに……。
せっかくお兄ちゃんが嬉しそうだったのに……。
せっかくお兄ちゃんが笑ってたのに……。
そう考えたら、怒りで頭がカッとなってきてしまった。
「感じ悪いね……」
「え?いきなりどうしたんだ、葵……?」
「だってそうでしょ?わざわざやってきて、自慢だけして帰ってくなんて」
「いや、でも気持ちは分からないでもないから……」
「でも、親しくも無いお兄ちゃんに言いにくるなんて……」
「まぁまぁ、いいじゃない。俺はそんなに気にしてないしさ」
「でもぉ……」
「いいから。ほら、今日は奢ってくれるんだろ?甘いものでも食べに行こうよ」
「うん……そうだね」
「そうそう」
そういって、笑うお兄ちゃん。

298 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/05/04(木) 22:17:51 ID:0hdfCk/C
そうだね。
私の好きなお兄ちゃんは、こういう人だもんね。
「そうだ、お兄ちゃん。お兄ちゃんの成績表、ちゃんと見せてよ」
「え?」
「いいでしょ?さっきはよく見てなかったし、お兄ちゃんの自慢できる結果なんだから、私、見てみたいよ」
「うん……いいけど」
お兄ちゃんからテストの成績表をもらう。
中を見ると……
「あれ……?さっきの人よりいいんじゃないの……?」
「あぁ……俺、学年順位と学級順位を勘違いしてたみたいで……」
「ってことは……すごいよ、お兄ちゃん」
「いや……それほどでも……」
「ううん。お兄ちゃんが頑張ってたの、私は知ってるから、だから、この結果は凄いと思うよ」
「……うーん、そうなのか……」
「そうだよ。ね?」
「うん、そうだな」
……やっぱり、私はお兄ちゃんが好きだな。
誰よりも。ずっと……。
そう思いながら、少しだけお兄ちゃんに寄り添う。
お兄ちゃんは鈍感だから、気付かない。
私だけの幸せ……。
「あ、天童君!!」
……女の声……。
「あぁ、どうしたの?」
「このまえ、天童君に教えてもらった問題、出たんだー!!ありがとー!!」
「いやいや、俺は別に……」
照れてるお兄ちゃん……
「じゃ、私は部活あるから」
「うん、また」

299 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/05/04(木) 22:19:22 ID:0hdfCk/C
ガッ!!
女の子が降り買って走り出した瞬間、無言で、お兄ちゃんのかかとを蹴る。
「っ!?」
「カッコ悪い……」
「え……葵?」

……まだまだ、二人の先は長いみたいです。
───────────────────────
天童ってのは、この兄妹の苗字です、念のため。

夢ノ又夢大先生に褒められて、調子に乗ったので、嫉妬妹第二弾。
……まぁ、所詮俺だもん。この程度だよね。

まったく関係ないけど、次は、ベタなツンデレが書きたいなぁ……

300 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/05/05(金) 13:25:02 ID:Vd7CypmJ
うっひょおおおお!!GJ!!!!!!

301 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/05/06(土) 04:40:58 ID:N/KP1aNY
天道・・・・・・・・・・・・・・・・・ じゃなくて、天童兄妹良いですねー。今回も萌えさせてもらいました。
遊星神GJ!!

302 :天空聖界より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/05/08(月) 23:04:38 ID:w2/dnPC9
よく分からない空間。
俺は一人の女性を抱きしめていた。
「お兄ちゃん……?」
「弥生……俺は……弥生のことが……」
「え……」
「弥生のことが好きだ!!」
「お兄ちゃん……嬉しいよ……やっと……私の気持ちに気付いてくれたんだね……?」
「うん、今までゴメンな……」
「ううん。いいの……私も……お兄ちゃんのことが、大好きだから!!」
「弥生……」
「お兄ちゃん……」
接近する唇。
高鳴る胸の鼓動。
俺たちは今、一つに……
───────────────────────
「って、おい!!」
ギリギリで目が覚めた。
危ないところだった……我ながらナイスガッツ……。
「何で……俺がこんな夢を……」
俺は上半身を起こし、額にかいた嫌な汗を手でぬぐう。
すると……
「あ、お兄ちゃん。おはよう」
妹の声が聞こえる。

303 :天空聖界より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/05/08(月) 23:05:10 ID:w2/dnPC9
……何故か下のほうから。
そちらに目をやると……さっきまで俺が寝ていた辺りから少しだけ離れた位置に妹の弥生が……。
「いつのまに……」
「ん、いつもの実験」
そう言って、何だかよく分からない棒、弥生曰く魔法の杖を見せる弥生。
俺の妹、弥生は魔法使いである。
いや、魔法使いらしい。よくわからないが。
「また魔法か……?」
「うん。好きな夢を見せる魔法」
「なるほど……あの夢はお前の仕業か……」
「素敵な夢だったでしょ?」
「……あぁ、素敵過ぎて冷汗かいたよ」
「でも、さすがお兄ちゃん!精神力が強いから、途中で止められちゃったよ」
「……よかった……」
もし、俺の精神力とやらが弱かったら……と考えて、嫌な気分になる。
「ただ……私もすごい疲れたぁ……」
そう言って、布団から這い出す弥生。
弥生は、魔法使いらしく真っ黒なローブ……を纏っていてくれればよかったのだが、
何故か、フリフリ、ミニスカート、ピンク色の変な服……
俗に言う、メイド服。とは違うのだろうねぇ。
だが、もうこれも初めてのことじゃないので、この記憶は抹消。俺は何も見てないっと。
「朝からご苦労だな」
「うん。お兄ちゃんが、もっと魔法の効きやすい体質だったらラクだったのになぁ……」
「ラクって……」

304 :天空聖界より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/05/08(月) 23:05:42 ID:w2/dnPC9
あれか。
俺を操り人形にでもしようってか……よかった、この体質で。
「でも……今日は大成功かな」
「何か言ったか?」
「ううん。何も」
「そうか……よし。さぁ、朝飯食おう」
「うん」
「用意できてる?」
「うん。出来てるよ」
「……魔法は……?」
「えっと……使ってないよ?」
声が裏返ってる……分かりやすいなぁ……。
「本当は?」
「ちょっと……」
目が泳いだ……。
「その割合は?」
「えっと……九割九分くらい……」
「やめてくれよ、魔法で作った飯は美味くないんだから……」
「う、うん」
「でも、まぁ、感謝してるよ。ありがとな」
「うん!!」
眩しい笑顔を見せる弥生。
こうしてる分には普通なんだけどなぁ……。
───────────────────────

305 :天空聖界より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/05/08(月) 23:06:33 ID:w2/dnPC9
今夜は満月。
眩しいくらいの月が影を作る兄の部屋。
「今日こそチャンスなんだ。お邪魔するね、お兄ちゃん」
スヤスヤと寝息を立てる兄の布団に潜り込む弥生。
「……やーる……いりーな……ゆーす……」
弥生は、杖を降りあげ、呪文を唱えた。
杖が光を徐々に帯びる。
兄の部屋が、昼間よりも明るく照らされる。
「凄い……コレが満月の力なんだ……」
満月の夜は、魔法使いに魔力が満ちる。
弥生は、それを利用しているのだ。
「この力で……お兄ちゃんを……」
弥生がそう呟いた瞬間……
「俺をどうするって……?」
「おおおおおお、お兄ちゃん……!?」
「何だ、お前が起こしといて……」
「え……?」
「眩しいよ……」
光を発する杖を指差す兄。
「あ……」
事実に気付き、呆然とする弥生。
眠い目を擦りながら、兄がうんざりした様子で尋ねる。
「また魔法か……?」
「う、うん……ゴメン……なさい……」
「そろそろ、教えてくれないか……?弥生が何をしたいのかを……」
「ゴメンなさい……それは……言えない……」
「何で?」
「だって……恥ずかしいから……」
「恥ずかしい?」
「う、うん……」
俯いている弥生。

306 :天空聖界より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/05/08(月) 23:07:35 ID:w2/dnPC9
兄は、少しだけ考えるそぶりを見せて……
「大丈夫。俺は絶対、怒らないし、笑わないから」
弥生の肩をしっかり抱きしめながら言う。
「でも……」
「俺は魔法なんかに頼らない、弥生の言葉が聞きたいよ」
「お兄ちゃん……わかったよ……」
「うん」
「……私ね。ずっと……お兄ちゃんのことが……」

満月の夜。俺は最初で最後の魔法にかかる。
これからも、魔法のような楽しい出来事があれば良いと思う。
───────────────────────
天空大聖者様がお亡くなりになったので、急遽作った。
追悼とかそういうわけじゃないけど、なんとなく今日中に書かなきゃいけない気がした。

まぁ、構想含め、二時間くらいしかかけてないので、それなりの結果かなと。
きっと二度と書かないな、このキャラは……。

307 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2006/05/09(火) 13:09:09 ID:JfdfeHzo
つぼった…(*´Д`)GJです〜

曽我町子さんの話は急で俺もびっくりです。
ご冥福をお祈りします(´-人-`)ナムナム

308 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/05/12(金) 22:18:02 ID:4TteQZUz
天空大聖者様とわ?

309 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2006/05/13(土) 17:02:00 ID:gBNPZKb1
>>308
数々の特撮番組の女王役として活躍した女優の曽我町子さんが5月7日の未明、自宅マンションで死去した。
遺作となる『魔法戦隊マジレンジャー』(2005年)では天空大聖者マジエル役 という正義側の女王を演じて、話題になったばかりだった。


310 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/05/13(土) 22:50:02 ID:B5nMNhL/
いやいや、何か湿っぽい雰囲気にしちゃって悪いねぇ。
何か悪いんで、急遽ツンデレ妹を。
やっぱツンデレって書くの苦手だなぁ……
───────────────────────
いつもの下駄箱を通り、いつもの校門へ。
学校は嫌いじゃないし、帰って何かするわけでもないが、やはりこの開放感は嬉しい。
足取りも軽く、校門の先に目をやると
一人の少女が、仁王立ちで、こちらを眺めている。
もとい、睨んでいる。
「あれは……」
俺はその少女に近寄り、
「翼じゃないか。どうかしたのか?」
「べ、別になんでもないわよ」
「もしかして、待っててくれた?」
「ばばばばば、バカいわないでよ!だ、誰が、お兄ちゃんなんか!」
「だよなぁ……」
理不尽に怒られて、俺も勢いを失う。
このとき、何だか悲しげな顔をした翼の顔を、俺は見逃していた。
「何か知らんが……頑張ってくれ」
俺は、ヒラヒラと手を振りながら、帰宅路を歩き出すと……
「で、でも……お兄ちゃんが、どうしてもって言うなら……そういうことにしてあげても良いけど……?」
「お構いなく。じゃ、お先に」
「な……何よ、その態度……私が……お兄ちゃんのためを思って……」
「何だよ?そんないきなり……」
「な、何でもないわよ!何だっていいでしょ!?」
「いいけど……」
「じゃあ、とっとと歩きなさいよ」
「は?」
「帰るんでしょ?」
「はい……」
何で妹にこうも言われるのか……。

311 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/05/13(土) 22:50:35 ID:B5nMNhL/
少し情けない気分で歩き出す。
しばらく何も言わず歩いていると……
「?」
気のせいでなければ、ジワリジワリと翼が寄ってきてる……。
何だ……何をする気だ……?
ちょっと恐怖を感じながら、翼の顔を見てみると……
「なななななな、何見てるのよっ!」
「何、といわれても……」
「ほ、ホント、やめてよね!き、気になるんだから!」
「気をつけます……」
顔を真っ赤にして怒る翼に、とりあえず頭を下げ、
少しだけ翼の接近を意識しつつ、ひたすら歩く歩く。
そのまま数分が経過。
「きゃっ!!」
後方でなにやら甲高い声。
思わず振り返ると……
素敵なタイミングで、倒れこんでくる翼。
それを胸で受けととめる俺。
……しばし、時が止まる。
「な……なに……するのよ……」
何か凄い真っ赤な顔で、文句を言ってくる翼。
「いや、お前がコケたんだろ」
呆れながら、答える俺。
「……つーか、何で顔赤いのさ?」
「ななななななななっ!?赤くなんて無いわよ!全然!」
「そうか?」
いや、どう見ても赤いですけど……
もうワケが分からなくなってきたので、いつまでも動こうとしない翼を起こそうとすると……

312 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/05/13(土) 22:51:07 ID:B5nMNhL/
「ちょ、ちょっと動かないでよ!」
「え……?」
「もう少しだけ……こうしていたいよ……」
「は……?」
「か、勘違いしないでよねっ!ちょ、ちょっと足痛めちゃっただけなんだからっ!」
「大丈夫か?」
「大丈夫よっ!」
「いや、でも……無理はよくない。おぶってやるよ」
「え……!?」
「嫌ならいいよ。痛くない程度に、ゆっくり、帰るんだな」
「嫌よ!嫌だけど……今日は……お兄ちゃんの顔を立ててあげるわ……」
顔って……
何かワケが分からないが、とりあえず、妹をおぶって歩き出す。
「ねぇ、お兄ちゃん」
翼が背中で囁くように言う。
「ん?」
「明日も……一緒に帰ろうね」
「は……?」
「ちちちちちちちち、違うのよ!ほら、最近物騒だから!」
「あぁ……そういうこと。分かったよ、翼。俺が翼を守るよ」
「お兄ちゃん……」
うっとりするかのような気の抜けた声……。
まさか、呆れてらっしゃる……?
「じゃ、なくって!何でそんな素敵……じゃなくて恥ずかしいセリフが言えるのよ!」
「いや……カッコいいかなって思って」
「こここここ、これっぽちもカッコいいなんて思ってないんだからね!!」
「分かってるよ……」

妹に怒鳴られながら進む。
何故か……悪い気はしないのであるが。
───────────────────────

313 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/05/13(土) 22:57:30 ID:B5nMNhL/
うわー、我ながら、適当だー。
俺の書く兄さんは、あんまりツンデレと絡ませるのに向いてないなぁ。

夢ノ又夢先生まだかなー。

314 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/05/14(日) 10:12:56 ID:HW1fxA8D
gj!姉スレの方もどうか…

315 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/05/16(火) 02:52:18 ID:rDrl6syh
>>309
ありがd

316 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/05/23(火) 01:50:29 ID:kJ5ki66U
保守

317 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/05/23(火) 21:44:58 ID:9P3UyKD6
「う〜ん、喫茶店か・・・ちょっと興味あるんだが、後が怖いし」

片手にしたパンフレットの向こうに仁王立ちした巴の姿が浮かび上がり身震いを一つする。
メイドさん目当てに喫茶店に行きました、なんて事がバレたら説教二時間では済まされないだろう。
注目は双子の美人姉妹との話だがやはり誘惑も鬼には敵わない。携帯を取り出し、時間を見遣れば巴の舞台まで後、一時間。

「機嫌直しの為に差し入れでも持ってくか・・・」

屋台でお菓子を適当に見繕って体育館の裏手へと足を運ぶ。・・・なんか、館内が妙に甘ったるい空気で満ちてるんだが、何かあったのか?

「すみません、ここからは関係者以外立ち入り禁止です・・・って先輩じゃないですか」
「よ、陣中見舞いに来たぞ」
「ありがとうございます!!流石は先輩、気が利きますね」

バスケット一杯に詰め込まれたお菓子を前に顔を綻ばせる女の子、顔パスな辺りに自分の知名度に少し嬉しくなる。
とはいってもやはり後輩連中の間では巴のお兄さんとして有名なだけな訳だが。
余談だが時々巴をお姉さまなんて呼ぶ子がいるが決して巴さんのお兄様なんて呼ばれた事は無い。

「毎回、お兄さんなんだよな、一度くらい呼ばれてみたいもんだが」
「はい?」
「あ、いやこっちの話、それより巴はいるかな?」
「巴さん、ですか・・・」

それ以上何を言うまでも無く視線が巴の存在を物語っている。男子はおろか女子の羨望と憧れの視線を一点に受ける眩いばかりのその姿。
巴の周りだけ視界が澄んでいるかの様にひんやりとした静けさが漂う。荘厳な空気と衣装を身に纏い瞳を閉じて瞑想する巴。
これは確かに見紛う事無く王子様だ・・・

318 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/05/23(火) 21:48:07 ID:9P3UyKD6
「すごいな、あれは白馬に乗った貴公子って感じだな」
「はい、ほんとに素敵・・・」

ほぅ、と熱の篭った溜め息を零す女の子に俺は思わず苦笑いが零れる。うちの妹はこうして今回も純真な乙女を虜にしていくのだった。
しかし、こうしていても埒があかない訳で・・・
しかたなく果てしない妄想の旅に旅立った女の子を現実に引き戻すべく目の前で手を振ってみせる。

「お〜い、帰ってきてくれ」
「・・・はっ!?ご、ごめんなさい、つい」
「それはいいから、巴に俺が来た事だけ伝えといてくれるかな」
「会っていかないんですか?」
「いや、集中してるとこ邪魔しちゃ悪いしさ」

というよりこの空間を断ち切る根性は俺には無い。
本音を言えば巴がどうこうというより夢から覚めた人々の視線が一斉にこちらに向く様な事を絶対に避けたい。
前後に振っていた手を軽く上げてそのまま俺は立ち去っていく。去り際は潔く、やはり男はこうでなくては。
・・・みんな巴に夢中で誰も気には留めていないけど。
なんとなくバツの悪いままその場を後にする俺、舞台開演にはまだ時間がある、適当に時間潰しを考えながらトボトボと牛歩。
ほんの少し頭に浮かぶメイド服、自分でも呆れてしまうが何気に未練があるらしい。

「双子の姉妹っていうと石川姉妹の事だよな、あの二人のメイド服か・・・うぐっ!?」

後ろから口を塞がれる俺、なんか他人様に恨まれる様な事でもしたろうか?
ああ、そういや一人いたっけか、恨むというより怒ってる人が。ゲーム開始時にいきなりラスボスにエンカウントしたかの様な唐突さ。
振り返ればやっぱりそこにいるそこにいない筈の妹様。

319 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/05/23(火) 21:50:59 ID:9P3UyKD6
「と、巴・・・お前どうして!?むぐっ」
「しっ!!いいからこっちに」

有無を言わさずに銀行強盗と人質みたいな体勢で体育館裏に連行される。
人気が無い事を確認してから俺に真っ直ぐ向き直る巴、やっぱり頭を撃ち抜かれるのかもしれない。
まさかとは思うがここで説教を始めても可笑しくない不穏な空気。半分諦め、半分ビビりながら固唾を呑んで巴の言葉を待つ。

「・・・お兄ちゃん」
「は、はい、なんでしょう?」

ただならぬ巴の表情に背筋は伸びきり、つい敬語になってしまう。そんな俺を巴は気にも留めずに重々しく口を開く。

「来てくれたのなら、どうして声を掛けてくれなかったの?・・・イジワルだよ」
「は?」
「ボクはお兄ちゃんをずっと待ってたのに・・・それなのに黙って行っちゃうなんて・・・」
「あ、ああ・・・そっちの事か、俺はまたてっきり」
「てっきり?」
「い、いや!!なんか集中してたみたいだったからさ、邪魔しちゃ悪いと思って」

予想外の非難に余計な事を口走りそうになる俺、わざわざ蒸し返す必要も無いので軽く流してしまう。
これ以上、話がややこしくなれば立場が悪くなる一方だ。

「気を遣って声を掛けなかったんだ、別にワザとじゃないって」
「そうだね、気を遣って屋台を手伝って気を遣って差し入れをして・・・気を遣って喫茶店へ」
「・・・あー、ひょっとして・・・聞こえてた?」
「うん、ばっちりと・・・可愛いもんね、石川さん達」

表情は変えないもののピクリとこめかみをヒクつかせて俺を見詰め続ける。
・・・非常にマズイ、完全に手の内は暴かれている。こうなっては隠すだけ無駄だ、ならば素直に認める他ない。


320 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/05/23(火) 21:55:24 ID:9P3UyKD6
「・・・正直言えば気にはなってたけど、どちらにしても行ってはなかったと思う」
「どうして?」
「誰かさんの説教喰らう事になるから」
「うん、正座で説教三時間かな・・・あ、四時間かも」
「・・・今、この状況でそれを言うのは立派な脅迫だぞ」
「そうかな?ボクはお兄ちゃんに本心を言ってるまでなんだけど」
「・・・鬼」
「鬼にしたのは誰?」
「・・・俺?」
「なんで疑問形なの、他に誰もいないのに」
「「・・・」」

鏡でも凝視するかの様にジッと互いの目を見詰め合う。他人様とは絶対に行われない大変せせこましい兄妹の戦。
この状況は高架下でのヤンキーの決闘に近い、確実に目を逸らした方の負けだ。
いや、それ以前に勝ち負けは決まっているのだが、巴の澄んだ瞳に見詰められてはどんな頑固者も根を上げるだろう。
ついでに虜にされるだろう。がっくりと肩を落とし大きくうなだれて溜め息の後、根負けした俺が口を開く。

「・・・あのな、巴が思ってる程、俺は不真面目じゃあない」
「分かってるけど・・・嫌なの」
「何が?」
「同じクラスの人達と屋台で楽しそうにしてるのを見た時、悲しかったんだ・・・ボクの事なんて何も考えてくれていないんじゃないかって」
「ちょっと待て、あれは無理矢理引き込まれたんだって」
「それも分かってる、お兄ちゃんの善意なのは・・・」
「・・・だったら、どうして?」
「お兄ちゃんが真っ直ぐな人なのはボクが一番知ってる、でも・・・それが痛い時だってあるんだよ」

まるで自分に言い聞かせる様な巴の言葉。痛みを堪えているのか、落ち込んでいるのか、なんともいえない不器用な笑顔を俺に見せる。
笑顔の奥で点と線が繋がり見えてくる感情、今の巴の表情を人は皆こう呼ぶ、自嘲、と。
憂いを帯びたこの姿を一枚の絵に出来たのなら誰も値の付けられない名画になるに違いない、そんな場違いな考えが頭を過ぎる。
何故ヤンキーの決闘からこんな事になったのかは未だに分からないが、俺がすべき事はその絵画に命を吹き込む手伝いをしてやる事。
まるで子供をあやす様にそっと巴の額を撫で上げる。

321 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/05/23(火) 21:58:24 ID:9P3UyKD6
「・・・ごめんな」
「・・・分かってて謝ってる?」
「分からない、でも結果として俺が巴を困らせた事は分かる、大事なのはそこだろ」
「違うよ・・・痛いのは頭じゃなくて・・・ここ」
「いっ!?」

前髪を梳いていた俺の手を両手でそっと包み込み、心臓の音が一番聞こえる左胸へと導く。
あまりにナチュラルな仕草だったので抵抗する間も無くなすがままな俺、近くに鏡でもあれば相当間抜けな赤い顔が映っていたに違い無い。

「分かる?ボクの鼓動、トクン、トクンって」
「あ、ああ・・・うん、かなり早い・・・って事は緊張してるのか」
「やっと気付いてくれた、そう、緊張してるんだよ・・・すごく」

緊張という言葉にはかけ離れた巴の穏やかさ。でも、俺の手の平の奥で確かに鼓動は乱雑なリズムを奏でている。
鼓動に集中していた意識が不意に途切れる、再び視線が重なる。瞳の奥に見えるのは緊張とは少し違った揺らめき、それは・・・

「緊張というより不安なんじゃないのか?顔に書いてある、不安で仕方無いってな」
「・・・どうして不安なのか・・・分かる?」
「問題はそこなんだよ、舞台に緊張するなんて無いと思うし・・・何だろうな」
「ボクが不安なのはお兄ちゃん」
「俺?俺の何が不安なんだ?」
「ホントにボクのこと、見ててくれるのかな・・・お兄ちゃんが見に来てくれなかったらどうしようって」
「やれやれ、巴は俺がそんなに薄情な男だと思ってたのか?そんな訳無い」
「・・・絶対?」
「ああ、俺は冗談は言うけど嘘はつかない・・・それを知ってるのも巴だろ」
「うん、ボクが・・・誰よりも分かってる」

添えられた両手を優しく解いてもう一度額を撫で上げてやる。
くすぐったそうに目を細める巴、学校でこんな子供みたいに純真な顔を見せるのはごく稀な事。
いや、髪を梳く俺の手に擦り寄ってくる様な姿は子供といより子猫に近い、それは心から安心しきっている何よりの証拠。
何万回の言葉より一つの温もり、それが巴を安心させてやれる鍵だと俺は手の平に少しだけ力を籠めた。

322 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/05/23(火) 22:03:05 ID:9P3UyKD6
「さぁ・・・そろそろ行った方がいい、あまり遅れるとみんな心配するぞ」
「あ、お兄ちゃん、その前に約束して欲しいんだ」
「はいはい、聞きましょう」
「・・・ボクはお兄ちゃんの為にガンバルから」
「だ、だから俺はそんな事一度も」
「ううん、ボクがそう思いたいの・・・それだけで今度のお芝居も乗り越えられるから・・・だから」
「・・・」
「だから・・・ボクの事、ちゃんと見ていてね・・・余所見なんてダメだよ、ね?」

白く細い指先を胸の前で組んで、眩い程に弾ける笑顔を見せる。
本人は意識しないでやっているのだろうが上目遣いなその笑顔が光の洪水みたいに瞬きしても瞼の裏に消えない。
コクコクと上下に頷く事しか出来ない俺を満足そうに見詰めて巴は音も立てず踵を返す。
艶やかな黒髪を風に靡かせる後ろ姿には、もはやどこにも迷いはなかった。学校でのいつもの巴の姿がそこにある。
改めて思うのだが実際、今の格好はともかく普段の校内での巴もまぎれもなく王子様だ。
まぁ、それはともかく立ち直る手助けは出来たみたいだな

「・・・お兄ちゃん」
「・・・見てるよ」
「うん・・・ふふっ、分かってたけど再確認、行ってきます」

一度だけ振り向いて俺の目に甘えてみせる巴、言うまでも無く王子様とは別の瞳で。
・・・王子と子猫って背中合わせのカードだったりするんだろうか?

「それよりも、だ」

うちの巴さんはどさくさに紛れてまた凄い事をやらかしてはいなかったろうか。
ずっと右手に残っているゴム鞠みたいな柔らかでしっかりとした弾力、掌を開いては閉じ、また開いては閉じ。
体育館の裏口へ消えていく巴を見送りつつ同じ事を繰り返す手の平をじっと見詰める。

「・・・着痩せするタイプだったのか巴は・・・じゃなくて!!・・・はぁ、俺も行くとするか」

右手をぐっとポケットに仕舞い込み歩き出した俺の前で、体育館は俄かに騒がしさを増していた。

323 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/05/23(火) 22:27:31 ID:hogOZUpJ
夢ノ又夢先生今回もよかったです。早く続きが読みたい、私生活に影響が出ない程度に頑張ってください

324 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/05/23(火) 22:28:27 ID:9P3UyKD6
別の話を八割書いてた途中、ふと文化祭話がまだ終わっていない事に気付く。
お話はもう少し続きます。
>天空大聖者様
色物の中にあって褪せる事の無い存在感、また一人、味のある役者さんがこの世を去ってしまわれましたね。
天本英世さんが亡くなられた時もショックだったなぁ・・・
>天童兄妹
いや、GJ!!としか言いようがありません!!
結構、キツイ嫉妬の筈なのにやたら葵ちゃんが可愛い!!
巴もこれ位、可愛く書ければなぁ・・・
>魔法少女
これだけの話を二時間で書き上げるとは、一月かかっても萌えないssしか書けない者にとって驚異です。
というか、これで終わりなんて勿体と思いますよ。
>ツンデレ妹さん
引っ付いてからの反応が可愛い過ぎる!!
これも続きが楽しみな妹さんです。

325 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/05/24(水) 18:32:17 ID:lmBP+7u7
すげー!!さすが先生だぁー!!
俺もこれぐらい書けるようになりたいなー。

つーか、今度は石川姉妹登場ですか。
嬉しいですね、やっぱり。

326 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/05/24(水) 22:39:51 ID:lmBP+7u7
好きな人を待ってる時間は楽しい。
このドキドキ感とか、ワクワクする感じとか。
どんな顔をしてあの人に会えば良いんだろう。とか、考えるのも好きなんだ。
そんな幸せな時間なのに……
「あ、あの……葵……じゃなくて、天童さん」
知らない人に声をかけられる。
まぁ……慣れてるんだけど。
「えっと……何、かな?」
「よかったら、俺と遊びに行かない……?」
この人には悪いけど、一切興味が無い。
……っていうか、茶髪、ピアスで、制服を崩して着てる。
古い考えなのかもしれないけど、さすがに初対面で、そんな人を信用する気には私はなれないな。
「あ、ゴメンね。お兄ちゃんを待たなくちゃいけないから」
「じゃ、お兄さんが来てから……」
このしつこさは……塾の勧誘レベルだなぁ……。
なんて思いながら、話を聞き流していると。
「あ……」
兄が私の脇を足早に通り過ぎた。
「どうしたの?」
なおも話しかけてくる知らない人。
「ゴメンね。急いでるから」
私は最低限の笑顔を見せると、お兄ちゃんを追って走り出す。
……でも、少し悪いことしたかな。
ま、いいか。
───────────────────────

327 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/05/24(水) 22:40:25 ID:lmBP+7u7
見慣れた道。
最近は寄り道することも多いせいか、
この通学路も久しぶりのような気がする。
そもそも、一人で歩くのはここ最近なかった気が……
そんなことを考えていると……。
「お兄ちゃん」
何者かに首根っこを掴まれる。
妙に優しい声が怖い……。
「あ、葵……」
俺は振り向けず、そのまま気をつけの姿勢で答える。
「私はお兄ちゃんを待ってたのに、先に行っちゃうなんて酷いんじゃない?」
「いや……だって、誰かと話してただろ?」
「だからって……待っててくれてもよかったんじゃないの?」
「でも、何か深刻そうだったし……邪魔しちゃ悪いかなと思ったから」
「……邪魔して欲しかったのに……」
葵の手の力が弱まる。
その隙に振り返り、
「今何て?」
「ううん、独り言!!」
「さいですか……」
「とにかく!!今日のところは許すけど、次からはちゃんと待っててよね!?」
「……覚えとく」
「お兄ちゃん。私としては、もうちょっと前向きな発言が聞きたいなー?」
「はい。待ちます……」
「うんうん。それでいいよ」
満足そうに何度も頷く葵。

328 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/05/24(水) 22:40:57 ID:lmBP+7u7
「……でも、俺と一緒に帰らなくちゃいけないのか?」
素朴な疑問。
「え……?」
「いや、まぁ……防犯とか、そういう意味では良いと思うんだ。
 でも、それなら俺じゃなくても良いだろ?だから、葵は何で俺にこだわるのかなって」
「うーん……」
その細い顎に手を当て、少し考える葵。
しばらくして、
「まぁ、お兄ちゃんが一番安心だから、かな」
と、微笑みと共に答えた。
「そうか?」
「うん。そうそう」
「でも、下手したら、葵のほうが俺より強いかもしれないけどな」
「まさか。そんなことないよー」
「この前、色んな部の人に誘われて困ってるって言ってなかったっけ?」
俺がそういうと、葵は少し驚いたような表情を見せる。
そして少し俯き加減で、
「……何でそういうことは覚えてるかなぁ……」
「そりゃ覚えてるって。一応、俺も何とかしてあげたいって思ってるし」
ちょっと照れくさいことを言ってしまったと後悔しながら、
誤魔化すための微笑を葵に向けた。
しかし、当の葵は驚きの表情を見せ、
「聞こえてたんだ……」
何か呟いた。
「え?」
「ううん。何でもないの!!」
「そうか……」
「それより!!」
クルッと回転して、俺の前に立つ葵。

329 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/05/24(水) 22:41:36 ID:lmBP+7u7
「家まで競走してみない?」
小首を傾げて、俺の顔を覗き込む。
「は?」
「負けた人は、勝った人の言うことを聞く。どう?」
「……俺が負けるに決まってるじゃないか」
「わかんないよー?じゃ、よーい……スタート!!」
一気に駆け出す葵。
そして、数メートル先で振り返って、
「はやく!!すごいこと命令しちゃうぞー?」
俺に向かって指を刺す葵。
「ちょ……待てよ!!」
「待たないよー!」
また駆け出した葵。
そんな葵を放っておくわけにもいかず、俺もすぐに駆け出した。
───────────────────────
「はぁ……はぁ……」
「ふぅ……」
玄関前で、息を整える二人。
俺は地面に座り込んで、力なく天を仰いでいると。
「はぁ……さすがお兄ちゃんだね……負けちゃった……あははっ!!」
学校では見せないような明るい笑顔で、大きな口を開けて笑う。
「手加減してくれたのか?」
「ううん。してないよ?」
「まさか。俺が葵に勝てるわけ……」
「お兄ちゃん」
突然、俺の膝の上に座り、俺の目をじっと見つめる葵。
「な……何だよ……?」
「私だって……女の子なんだよ……?」
「知ってるよ……」

330 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/05/24(水) 22:42:19 ID:lmBP+7u7
「でも……分かってないでしょ?」
「え?」
「凄い凄いって言われたって……やっぱり体力じゃ女の子は男の子には敵わないんだよ」
「そんなことない……」
「そうじゃないの。勝ちたいなんて思わない……その代わり……」
大きく息を吸い込む葵。
俺も唾を飲み込む。
「私を女の子として見て欲しいの……」
「……」
何だか真剣そのものな葵の顔を前に少し固まる俺。
そして、考えた末に出た言葉は
「……今でも見てるよ」
「えっ!?」
「一応、女の子だからって……気を使ってるつもりなんだけど……」
ポカーンとしてる葵。
もしかして……スベった……?
「あ、葵……?」
「はぁ……」
ため息……。
「まぁ、お兄ちゃんらしいといえばお兄ちゃんらしいかぁ……」
「え……?」
「疲れた……」
ヨロヨロと家の中に入っていく葵。
イマイチ状況がつかめず、また俺は天を見るのだった。
───────────────────────
まぁ、先生に対抗心を燃やしたというか。刺激されたと言うか……。
返り討ちどころか軽くあしらわれた感じですね。

ということで、天童兄妹何気に第三弾。
多分、次こそ天童語録が出る……。

331 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/05/25(木) 00:51:03 ID:pZrjA+Q4
夢ノ又夢さんと遊星さんダブルできたわぁ(η‘∀‘)η

乙です!GJです!!

332 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/05/30(火) 18:27:54 ID:xyMBM1AV
【町田市】兄妹の婚姻届を誤って受理【お兄ちゃん大好き】
http://news18.2ch.net/test/read.cgi/news7/1148466691/

333 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/06/04(日) 23:21:14 ID:poml9Ru4
「へへー。買っちゃったー♪」
店員さんに見送られながら、お店を後にする。
お店から出るとすぐに、鞄の中に入れた小さな箱を確認。
これが、お兄ちゃんと仲良くなる秘密兵器。
なかなか入手困難らしいけど、意外と簡単に買うことが出来た。
やっぱり運命は二人に味方してくれてるみたい。
「お兄ちゃんとおそろい♪」
まぁ、当然色違いになるんだろうけど、やっぱり好きな人と同じものが持てるのは幸せだ。
鞄ごと秘密兵器を抱きしめる。
「お願いね!!」
秘密兵器にしっかりと想いを込めて、私はお兄ちゃんの待つ我が家へと全力で駆け出した。
───────────────────────
コンコン。
俺の部屋のドアを優しく叩く。
「誰?」
ドアの向こうから聞こえる、今一番聞きたい人の声。
「お兄ちゃん、入っても良い?」
「葵か。どうぞ」
「うん。おじゃまします」
ドアを開け、割とミステリーなゾーン。
お兄ちゃんの部屋に入る。
「どうした?」
お兄ちゃんが、読んでいた本をパタンと閉じて、私に尋ねる。
「ねぇ、お兄ちゃん」
「何だ?」
「私、お兄ちゃんに見せたいものがあるんだ」
「見せたいもの?」
「うん。当ててみて」
「いや……無理だろ」
「適当でいいから、ね?」
「んー……」
お兄ちゃんは少し考えてから、

334 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/06/04(日) 23:21:49 ID:poml9Ru4
「新しいバッグとか財布とか?」
「残念。お兄ちゃんも持ってるものだよー」
「俺の……持ってる……」
考えてる考えてる♪
真剣になってくれるなんて、嬉しいな。
「ダメだ、余計分からん……」
「しょーがないなぁー。じゃーん!!」
「ゲーム機……?」
「そう。お兄ちゃんが持ってたから、私も欲しくなっちゃった」
「へぇ。で、ソフトは何を買ったんだ?」
え、ソフト……?
「ソフトって……?柔らかい……?」
「いや、そうじゃなくて……ゲームするためには必要って言うか……」
「えっ!?それがなくちゃ、ゲームできないのっ!?」
知らなかった……。
私、ゲームなんて全然しないし……。
下調べが足りなかったぁ……。
「まぁ……そうだな」
「なんだ……そうなのか……」
思わず肩を落としてしまう。
策士策に溺れるってことかなぁ……。
「そんなにゲームがやりたいなら、俺のソフト、貸してあげるよ?」
「でも、一人でしか出来ないんでしょ?」
「まぁ、そうだけど……何か?」
「私は……二人で出来るゲームがやりたいな」
「んー、そうか……じゃあ、買いに行くか?」
「え?」
「二人で出来るやつを」

335 :遊星より愛を込めて ◆45KgZeCOYA :2006/06/04(日) 23:22:55 ID:Mis7wYTv
ちんこ花火たん物語外伝 「レニ・イン・ナイトメア」 
 
 第1話 「だいすきなおにいちゃん」

カンナのちんこの魅力は語るまでもなく「男らしさ」の一言に尽きるでしょう。
レニの腕ほどもある超ビッグな肉棒は血管がビンビンに浮き上がっていて、
ゴツゴツとした実に凶悪な肉棒です。
レニたんはよくカンナに押さえ込まれて強制フェラチオをさせられるので、
レニたんのアゴはフェラチオをする度に外れてますw
もう何百回もカンナに強制フェラチオをさせられてアゴをはずしているので、
レニたんのアゴはすぐに外れてしまうクセが付いてしまいました。
だからレニたんはカンナを見ると顔面蒼白になってガタガタと震えます。
しかし、そんなレニたんも花火たんのことは大好き。
花火たんはカンナに散々強制フェラさせられてアゴが外れて
痛みに耐えているレニたんの事を優しくいたわり、手当てしてあげます。
レニたんに膝枕をしてあげて、優しく慈しむように髪をそっと撫でてあげて
心を落ち着かせてあげます。
さっきまでのカンナの荒々しさと正反対の花火たんの優しさに、
レニたんはお姉ちゃんに甘えるように花火たんに心を預けます。
そして、花火たんはそっとレニたんのチャックを下ろします。
ビキニパンツをずらすと、仮性包茎の可愛いレニたんのちんこがこんにちは。
レニたんの小粒なちんこを花火たんは指でやさしくそっとつまむとゆっくりとしごき始めます。
レニたんは「あっ、あっ・・・」と悶えて嬌声を上げます。
やがてレニたんは射精すると、「ありがとう花火お兄ちゃん、大好き!」と言って、
花火たんにキスすると、満面の笑みを見せます。



336 :遊星より愛を込めて ◆45KgZeCOYA :2006/06/04(日) 23:23:35 ID:Mis7wYTv
ちんこ花火たん物語外伝 「レニ・イン・ナイトメア」 
 
 第2話 「おわらないよるのはじまり」

花火たんに優しくされて心底明るい笑顔を見せるレニたんの事を、
カンナは柱の陰からじっと見つめていました。
自分にはあんな笑顔を絶対に見せないレニたんの事を、カンナはもっといじめたくなったのです。

その日、カンナはレニたんの事を深夜に自室に呼び出しました。
既にレニたんはどんなに酷い事をされるのかと、恐怖に真っ青になってガチガチと奥歯を鳴らしています。
カンナは開口一番レニたんにズボンを脱げと命令しました。
レニたんが震える手つきでズボンを下ろすと、やおら後ろに振り向かせ小ぶりのビキニパンツを
一気にズリおろしました。
「ひっ・・・」と小さな悲鳴がレニたんの口から漏れ、カンナは不敵にニヤリと笑います。
両手でレニの小さな臀部を割り開き、柔らかなアナルを指で弄ぶと、カンナはズボンのファスナーを
下ろし、ビッグバズーカ級の肉棒をさらけ出しました。
レニの奥歯が一層激しくガチガチと打ち鳴らされ、冷たい部屋に鳴り響きます。
「た・・・助けて、 ね、カンナ・・・」震えながらレニはか細い声で懇願しました。
しかし「カンナ様、だ!」と言い放つと、ローションも塗らずに子供の腕ほどもある肉棒を
レニのアナルに一気にぶち込みました。
「ぎゃあぁぁぁぁ〜ッッッ・・・」断末魔に近い悲鳴がレニの口から漏れ、さらに口からは泡まで吹きました。
乾いた肉棒がレニの腸内粘膜を痛めつけ、ひきつらせます。
カンナはレニの髪を掴み、激しく引き寄せては突き放し、渾身のピストンをレニのアナルに叩き付けます。
並みの男の子ならばカンナの肉棒をいきなり受けたならアナルは裂け、死亡するかもしれません。
しかし、レニたんはカンナに何百回となくアナルを蹂躙され、開発されきっていました。
超一級の男娼であるレニたんは段々と腸内が濡れて来て、最初の激痛を伴うピストンも
やがて快楽を伴うピストンに変化してきていました。
「うっ、あっあっ・・・んっ」レニたんは世界で一番嫌いなカンナに犯され、世界で一番の快楽を感じています。



337 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/06/04(日) 23:23:44 ID:poml9Ru4
二人で……買いに……。
え……もしかして、それって……デートっ!?
「う……うん!!行く、行きたい!!」
「じゃあ……行こうか」
「うん!!」
デート……初めてのデート……。
嬉しいなぁ〜っ!!
思わぬ幸運に胸を躍らせる。
ま……買いに行くのはゲーム、だけどね……。
───────────────────────
「あ、これ、CMで見たことあるよ」
「あぁ、やってたな」
「これ、二人で出来るの?」
「うーん、出来るみたいだけど……出来ることは、少なそうだ」
「そうかー。それは困るなぁ」
何だかロマンチックとは程遠い会話……。
ま、こういう気取らないのも好きだけどね。
「うーん……なかなか決まらないね?」
「そうだなぁ……」
「そういえばさ……」
「ん?」
「私、お兄ちゃんのやりたいゲームが聞きたいな」
「え?」
「ほら。さっきから、お兄ちゃん、アドバイスはくれるけど、これがいい。とかは言ってくれないでしょ?」
「でも……」
「まぁまぁ、参考にするだけだから」
「そうか……それなら……」
ゲームがずらりと並んだ棚の前で、顎に手を当てて考えるお兄ちゃん。
そして……
「コレ……かな」

338 :遊星より愛を込めて ◆45KgZeCOYA :2006/06/04(日) 23:24:05 ID:Mis7wYTv
ちんこ花火たん物語外伝 「レニ・イン・ナイトメア」 
 
 第3話 「いましめのにくのかたまり」

既にレニたんのちんこは屹立していました。
カンナの巨大な肉棒をお腹の真ん中辺りまで挿入され、透明な淫液を鈴口からポタリポタリと
溢れさせています。
カンナはレニたんの透明な蜜を指で掬い取るとレニたんの口元へ持って行きレニ自身に
淫液をなめさせました。
自分の淫液を舐め、レニの勃起は更に硬く大きくなりました。
仮性包茎ながらも一生懸命に外に出ようとしている亀頭がとても愛らしく、
まさにレニたんの分身と言うに相応しい愛らしさです。
完全に勃起したのを見るとカンナはアナルファックを止め、レニたんをソファに仰向けに寝かしました。
そして逆立ちのように頭を地面に向けさせ、両手でレニたんの頭を掴むと、腸液がしたたる肉棒を
レニたんの口内に押しやりました。
一気に肉棒の根元まで押し込みます。
「ゴキィッ」とレニたんのアゴの骨が外れる音が響き渡り、ズルズルと肉棒はレニたんの口内に収まっていきます。
レニたんの口内には当然収まり切らず、のどの奥深くを通り越し、食道の辺りまで肉棒は届きました。
カンナはガニ股になり中腰で一生懸命にレニの口を犯します。
逆さになっている為、唾液や淫液が鼻に入り、レニたんは呼吸が出来ない為窒息寸前になりました。
痙攣し、白目をむき、口から泡を吹きながら、強制フェラは続きます。
レニたんの意識が遠くなり、もう駄目だと思った刹那、カンナは肉棒を抜きました。
死んでしまったら、レニを犯す事が出来なくなるのでカンナはギリギリのラインを熟知しているのです。


339 :遊星より愛を込めて ◆45KgZeCOYA :2006/06/04(日) 23:24:39 ID:Mis7wYTv
ちんこ花火たん物語外伝 「レニ・イン・ナイトメア」 
 
 第4話 「にくしみとあいとかなしみ」

 死の一歩手前までの激しい強制フェラが終わり、レニたんは意識朦朧の中、
花火たんの事を想っていました。

− だいすきなお兄ちゃん、花火おにいちゃん。 苦しいよ・・・
  なぜ? なぜボクこんなに酷い目に遭うの? お兄ちゃんの柔らかい膝枕で甘えたいよ。
  温かいお兄ちゃんの胸で眠りたいよ。 助けて、助けて・・・  −

現実逃避にも似た空想は、カンナの暴力でかき消されました。
カンナは焦点の合っていないレニたんの顔に唾を吐きかけると、気付けに一発ビンタを食らわせました。
華奢なレニたんの体は、重力がまるで無い様に軽く中に舞いました。
口が切れたのかレニたんは血を吐きながらむせて、また鼻血も大量に流していました。
「オラオラ、休んでいいなんて言ってねーぞ! とっととご奉仕しろ、ご奉仕!」
カンナは今さっき死にかけたレニたんにまたもや強制フェラを始めました。
口が切れ、鼻血を流しながらレニたんは無理やりに口内を犯されます。
強制フェラをやりながらカンナはレニの顔にビンタをし、唾を吐き続けました。

レニたんは限界が来ていました。 
どうせ死ぬのなら、最後にカンナの肉棒を噛み、一矢報いたいと思いました。


340 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/06/04(日) 23:24:44 ID:poml9Ru4
お兄ちゃんが手に取ったのは、なんだかほのぼのしたパッケージのゲーム。
「これ……?可愛いゲーム選ぶんだね?」
「まぁね」
「どんなゲーム?」
「うーん……町に住んで、自分で好きなように生活するんだ
 それで、自分の町を、いろんな人に見せたり出来るんだよ」
「変わったゲームだね?」
「そうだね。ま、俺は、前から気になってたんだけどさ。一人で始めるのもな、って感じだったから」
「そっか……」
楽しそうなお兄ちゃん。
これだけでも、ゲーム機を買った価値はあるんじゃないかって気がする。
「お兄ちゃん、私、これにするよ」
「そうか?別に俺の意見なんて聞かなくても良いんだぞ?」
「ううん。そのかわり、お兄ちゃんも買って?」
「俺も?」
「うん。だって、せっかくだもん。二人で楽しもうよ?ね?」
「そうだな。俺も買っちゃおうかな」
「うんうん。じゃ、レジ行こー?」
「うん」
嬉しそうなお兄ちゃんと並んでレジへ。
お兄ちゃんとの時間や話題が、これから増えると思うと、凄く嬉しい。
そして、何も言わず、荷物を持ってくれた。
ホントは私が持ってたかったんだけど……しょうがないよね、お兄ちゃん優しいもん♪
「お兄ちゃん」
「何だ?」
「おそろい。だね?」
「……んー、まぁ、そういう言い方も出来るか」
「うん」
幸せな時間。

341 :遊星より愛を込めて ◆45KgZeCOYA :2006/06/04(日) 23:25:24 ID:Mis7wYTv
今回の合宿で再確認を検めて強くした。花火ちゃんは女の子ではないことを。
男の子なのではあるが、周囲がその勃起力を発揮できる場所を整えてあげなければ、
いけないということだ。こういうタイプの人間をはなびんびん型と分類される。
みんな揃っての愛撫をスイスイとこなしていく。注意して手許を見たら
花火ちゃんのおおきなちんこに似合わず手は小さいのだ。
このちんこの勃たせ方は、当時の巴里のさる貴族の女性によって「再発見」された
方法で、意外と広く伝統社会では受け継がれてきたものらしい。
すると、場所、相手を問わず簡単に勃たせられるカンナちゃんは万能型になる。

性交の時だってそうだ。花火ちゃんのそばには4人の女の子がいる。エリカ・グリシーヌ
・コクリコ・ロベリア・の四人だ。だが花火ちゃんのちんこは彼女たちにはまるでだめぽ。なんで?
花火ちゃんって、男にしかちんこびんびんになんないんだよね。
花火ちゃんは男性が苦手だけど、シャノワールではモギリとボーイを併行してやってるけど、
実は巴里華撃団隊長の大神たんだけにはちんこびんびんになってしまう。つまりホモ。
外見は女の子みたいな花火ちゃんだが、大神たんのそばじゃホモの本性を晒してくれる。
大神たんに感謝しなきゃね。実態はケツマンコ大好きなホモに過ぎなくてもね。
まあ大神たんといえば、士官学校のときから寮の同室だった加山とかいうホモに菊門掘られまくってた
筋金入りのホモだもんね。  さてと、君たちも昼間にはブルーメールとかいう貴族の屋敷を
覗いてみるといい。大神たんにサカる花火たんは「肉棒天使」といった感じかな。ウィ。



342 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/06/04(日) 23:27:53 ID:poml9Ru4
でも、そろそろ私は慣れなきゃいけない……こういう幸せな時間は長くは続かないことに。
お店から出るとき、自動ドアの前で眼鏡の真面目そうな女性とすれ違った。
「あ……て、天童君……?」
「やぁ、こんにちは、西野さん」
「こ、こんにちは……」
「まさかゲーム屋さんで会うなんて思わなかったな。西野さんも、ゲームするんだ?」
「え……あ……うん……」
「そうなんだ。じゃ、またお勧めのゲームとか教えてよ」
「あ……うん……」
「じゃあ、俺はそろそろ」
「うん、またね……」
女の子に笑顔で手を振るお兄ちゃん……。
むぅ……。
ギュ。
お兄ちゃんの耳を思い切り引っ張り、歩き始める。
「あ、葵っ……!?何なんだ……!?」
「何でいつもこんなことに……」
「いや、それを聞きたいのは俺で……いてててててててっ!!」

はぁ……モテるお兄ちゃんを持つと……辛いなぁ……。
───────────────────────



343 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/06/04(日) 23:28:42 ID:poml9Ru4
「一週間に約一本。まさに……えっと……」
「粗製乱造」
「そうそう。それそれ!」

というわけで、
天童兄妹第四弾:>>333-334>>337>>340>>342
ただ、どう●つの森を買ったから書きたくなっただけ。
可愛い妹とゲームしてぇ!!というイタい欲求の現われですよ。

344 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/06/05(月) 00:52:48 ID:w3T72Gt3
葵タソ…毎回楽しく読ませてもらってます、GJξ´_>`ξ

345 :遊星より愛を込めて ◆45KgZeCOYA :2006/06/05(月) 03:14:19 ID:FK2oOf09
今回の合宿で再確認を検めて強くした。花火ちゃんは女の子ではないことを。
男の子なのではあるが、周囲がその勃起力を発揮できる場所を整えてあげなければ、
いけないということだ。こういうタイプの人間をはなびんびん型と分類される。
みんな揃っての愛撫をスイスイとこなしていく。注意して手許を見たら
花火ちゃんのおおきなちんこに似合わず手は小さいのだ。
このちんこの勃たせ方は、当時の巴里のさる貴族の女性によって「再発見」された
方法で、意外と広く伝統社会では受け継がれてきたものらしい。
すると、場所、相手を問わず簡単に勃たせられるカンナちゃんは万能型になる。

性交の時だってそうだ。花火ちゃんのそばには4人の女の子がいる。エリカ・グリシーヌ
・コクリコ・ロベリア・の四人だ。だが花火ちゃんのちんこは彼女たちにはまるでだめぽ。なんで?
花火ちゃんって、男にしかちんこびんびんになんないんだよね。
花火ちゃんは男性が苦手だけど、シャノワールではモギリとボーイを併行してやってるけど、
実は巴里華撃団隊長の大神たんだけにはちんこびんびんになってしまう。つまりホモ。
外見は女の子みたいな花火ちゃんだが、大神たんのそばじゃホモの本性を晒してくれる。
大神たんに感謝しなきゃね。実態はケツマンコ大好きなホモに過ぎなくてもね。
まあ大神たんといえば、士官学校のときから寮の同室だった加山とかいうホモに菊門掘られまくってた
筋金入りのホモだもんね。  さてと、君たちも昼間にはブルーメールとかいう貴族の屋敷を
覗いてみるといい。大神たんにサカる花火たんは「肉棒天使」といった感じかな。ウィ。



346 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/06/06(火) 22:55:53 ID:kXXhgeYY
昨日の雨が作った水溜りが空を写す。
そんな空を壊さないように、少し大きく足を伸ばし、
水溜りを飛び越える。
「良い天気だ」
そう呟いた。
全く以って穏やかな午後。
だが……それも長くは続かないようだ。
「お兄ちゃーん!!」
突然、俺の首にかなりの負荷がかかる。
気道を圧迫され、相当苦しい……。
「隙だらけだぞー?」
無邪気に話しかける後ろの人。
「いや、隙とか……言われても……」
「だめだよ、そんなことじゃー」
「分かったから……降りろ……」
「しょーがないなぁ……」
重力から開放される俺の首。
飛びついてくるというのなら、可愛いもんだけど……
完全に絞め落とす気だからな、コイツの場合……。
「はぁ……」
息を吸いながら、ゆっくりと振り向く。
視線の先には、腰に手を当て、いかにも怒っていると言った感じの小さな人間。
「たるんでるぞ、お兄ちゃん!!」
そう。
こいつは俺の妹、望。
妹と言うからにはもちろん女であるが、どこかで間違えたのか……
小さい頃から活発な妹で、今は何処から見てもアクティブな少年。
その上、小学生のときに何の因果か空手も始めてしまったものだから、
男らしさはさらに加速してしまった……。

347 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/06/06(火) 22:56:30 ID:kXXhgeYY
「たるんでる?何が?」
まだ痛む首を押さえながら、静かに答える。
「全部っ!!もし、ボクが強盗だったらどうするのっ!?」
唐突だなぁ……。
「多分……強盗が俺を襲うメリットは少ないと思う」
「めりっと……!?せ、専門用語は禁止っ!!」
「あぁ……スマン……」
メリットって、専門用語だったのか……そいつは知らなかった。
「まぁ、仮に強盗に襲われたとしても……俺は俺なりのやり方で切り抜けるさ」
「お兄ちゃんなりのやり方って?」
「んー……逃げるか、諦めるか……状況しだいだな」
「情けないなぁ……」
「人には向き不向きがある。望は体を動かすのに向いてる、俺は頭を使うのに向いてるんだ」
「あぁ、もう!!ダメだよ!!そんなことじゃ!!」
俺の手を奪い、引っ張っていく望。
一応抵抗はしてみるが……少々、態勢が悪い……。どんどん引き摺られていく。
「何だ?」
「道場行くよ!!ボクがお兄ちゃんを鍛えなおしてあげるんだから!!」
「いや、俺は委員会の仕事が……」
「そんなのあとあと!!どーせ、お兄ちゃんならパパッとできるんでしょ!?」
「あの、出来ないからこうして……」
「うるさーいっ!!行くったら行くの!!」
「こんなだからいつまで経っても男に見られるんだよな」
ボソッと俺の一言。
だが、一番聞こえて欲しくない人には、しっかり聞こえてたようで……
「お兄ちゃん!!」
俺の手を離し、蹴りの準備姿勢をとる。
「やめとけ……」
「うるさいっ!!」

348 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/06/06(火) 22:57:32 ID:kXXhgeYY
ガッ。
望の上段蹴りを、左手で受け止める。
「痛いなぁ……」
痛みが骨に響く……。
「え……!?」
そんなに俺が止めたのが意外だったのだろうか。
足を上げた姿勢のまま固まる望。
「望……パンツ見えてるぞ」
「え……!?うわぁ!!」
足を下ろし、スカートを慌てて押さえる望。
真っ赤な顔で俯く望。
……コイツでもこんな顔できるんだな。と、ちょっと思った。
「どーせ、スパッツかブルマか穿いてるんだろ?」
「あ……そうだった……」
「の割には、鮮やかだったけどな」
「え゙っ!?」
驚いて、思わずスカートを見下ろす望。
「嘘だ」
そんな望を尻目に、とっととその場から逃げる。
「ちょっと……!!お兄ちゃんっ!!」
正気に戻った望が俺の前に駆けてくる。
「何だよ?」
「まだ話の途中!!」
「……あぁ、望の下着の話だっけ?」
冗談のつもりだったのだが……望の顔が沸騰した。

349 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/06/06(火) 22:58:04 ID:kXXhgeYY
「ち、違うぅっ!!」
「じゃ、何か続いてる話しがあったか?」
「だから、お兄ちゃんが男らしくないって話!!」
「あれは終わっただろ」
「終わってなーい!!今から、ボクがお兄ちゃんを男にするんだから!!」
「うーん、男男言うけど、逆にさ、お前の言う男らしさって何?」
「うーんとねー、強くって、逞しくって、優しくって……」
指を折々、色んな候補をあげていく望。
まだ続きそうなので、
「俺には一生かけても無理だな」
「だから、少しでも努力しなくちゃ!!」
「嫌だね。俺は俺の中での男を目指すさ」
「じゃあ、お兄ちゃんの言う男って?」
「そうだな。常に賢く、正しく、優しいってとこか」
「優しいことしか、合ってないね」
「理想なんてそんなもんだ。むしろ一つ合うことに驚きだよ、俺は」
「じゃあさ……」
俺の隣に並ぶ望。
そして、俺の腕を抱きしめ、
「ボクに、もっと優しくしてくれる?」
「……それで帰らせてくれるなら」
「わーい!!じゃ、たこ焼き食べに行こうよー!!」
「いや、人の話聞いてたか……?」
「ねっ!!お兄ちゃん!!」
「何だよ?」
「優しくねっ?」
「分かってるから……」
妙に笑顔の望を、右腕に感じつつ、
まっすぐ家には帰れそうに無い予感をひしひしと感じる。
そんな初夏の帰り道でした……。
───────────────────────

350 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/06/06(火) 23:01:32 ID:kXXhgeYY
格闘妹、望。
また新妹の登場で、何だか俺が単発キャラ書きになりつつある……。
でも、なんとなく書きたくなったんです。
なにはともあれ……ボクっ娘……いいじゃないか……。

351 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/06/08(木) 03:16:36 ID:v9iUKcc5
遊星さんは遊星さんが書きたいものを書く。
俺は遊星さんが書いたのを読んで楽しい。
無問題ですよ(´・ω・`)
乙です!

352 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/06/10(土) 23:51:38 ID:okBZ1tMi
夢ノ又夢先生の続きに期待

353 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/06/13(火) 17:38:38 ID:VZOF2BvP
age

354 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/06/13(火) 22:23:54 ID:R6Twgsom
「俺は巴を甘く見ていたのかもしれない」

暗幕で囲まれた体育館の中、暗闇と喧騒に揉まれて気分の滅入る俺。ひっきりなしに聞こえてくる明るい声に何か疎外感を感じてしまう。
照明の落とされた館内をぐるりと見渡せば人がいない場所は無い、立ち見席が設けられる程の盛況ぶり。
客層の七割が女子なのは多分、巴の業の深さ故なのだろう。

「なんとか座席は確保できたが・・・場所が悪いな」

俺が体育館に辿り着いたその時には既に開演を待つ列が出来ていて席を取るだけで精一杯、改めて巴の威光を思い知らされる事になった。
舞台からは遠い一番後ろの席に陣取り腕組みして始まりを待つ、果たして巴は俺がここにいるのに気付くだろうか。
などと言いつつも実はその辺に関してはあまり心配はしていない。子供の頃から今まで俺が巴に勝てなかった遊びが一つだけある。

「かくれんぼだけは得意だったからな、巴は」

見つけてくれなくてもいい時でさえ、ちゃっかりと俺を見分ける巴だ、ここでも問題は無いだろう。
ほどなくして開演のブザーが館内に鳴り響く、湖面に石を投げ入れた様に喧騒は収まり辺りを静寂が包む。
舞台をライトが照らし出し、歯車は音を立てて回り始める。
みすぼらしい服のシンデレラとそんな彼女を蔑む意地悪姉さんや継母。
演目がシンデレラなだけに取り立てて言う事の無いオーソドックスな仕様のお話。
・・・いや、シンデレラを苛める様が妙に真に迫る物があるんだが・・・気のせいだろうか?
そういえば、主役であるシンデレラを誰がやるのかで大いにもめたと巴が言っていたな。

「・・・私怨混じってるんじゃないのか、あれは・・・」

ある意味で結果的にかなり面白い舞台、迫真の名演技(?)が観客を引き込む。
勿論、憎しみ満載ではなく主役をやるんだからこれ位は我慢しろとばかりのシンデレラへの仕打ちが続く。
こういうのは学生演劇ならではの面白さかもしれない、俺も知らず知らずのうちに身を乗り出していた。
しかし、この舞台のメインイベントはこの先にある、誰もが待つその瞬間は沢山の期待の元に訪れる。

355 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/06/13(火) 22:24:53 ID:R6Twgsom
一端、舞台が暗転して眩いスポットライトの中に浮かび上がるスラリと立った細身のシルエット。
まるでおとぎの世界からそのまま飛び出して来た様な憂いを湛えたその姿、一瞬、客席の呼吸が止まる。
宙を彷徨う視線が俺と重なる時、全てがスローモーションになる。
教室の窓から、食堂の片隅から、渡り廊下の向こうから見えるいつもの視線。
褒められるのを待ち望む子供みたいなずっと変わらない甘えたがりの輝く瞳。
そんな巴の瞳を俺もただ黙って見詰め返す、言葉は何もいらない、ただそれだけで何かを分かり合えた気がした。
瞳を閉じて一呼吸入れてから巴は語り始める、水辺を優雅に舞う白鳥の如き所作で。
会場に篭る熱い視線と溜め息の中で巴は確かに誰よりも何よりも輝いていた。

───────────────────────────

夕暮れ時を迎えた校舎で一人佇む、文化祭の騒ぎも一段落して今は閑散とした静けさが漂う、外の屋台も片付けを始めている。
祭りの後特有の寂しさ、思えば今年は騒がしいうちに終わっていた様な気がする。

「手間が掛かった割には終わった時はあっという間に感じるものだな・・・」

ポツリと呟き下駄箱にもたれ掛かって待ち惚けのボク、多分、もう少しすればここに待ち人が訪れる。
・・・ほら、やっぱり来た。
くたびれた歩き方でこちらに向かってくるいつものお兄ちゃん。

「はぁ・・・やっぱり居たよ、この人は」
「予想通りだった?お兄ちゃん」

夕陽に照らし出された不確かな影の中、ボクは呆れ顔のお兄ちゃんに歩み寄る。
分かっていたとはいえ、少々気後れ気味だったボクには夕陽の光がやけに眩しい。

356 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/06/13(火) 22:25:36 ID:R6Twgsom
「お兄ちゃん、今日の舞台・・・」
「ああ、良かった、巴は立派に王子様だな、俺も安心して社交界に送り出せるよ」
「そんな予定後にも先にも無いけど、でも・・・それは褒めてくれてるよね?」
「褒めてる褒めてる、この調子だとそのうちファンクラブとか出来るんじゃないか、兄ちゃん楽しみだなぁ」
「・・・ホントに褒めてる?」
「ははっ、怖い顔するなっての、正直言って良かったよ、少し感動してしまった位に」
「少しだけ?」
「いや、実の所、かなり」

だんだん雰囲気が冗談めいてくるお兄ちゃんがようやく本音をぶつけてくれる。
変わる事の無い石みたいな仏頂面にパッと安堵の笑顔が咲くのが自分でも良く分かる。

「・・・うん、それなら良かった、あ、これから帰るんだよね、じゃあ」
「おっと、一緒に帰るのはナシだぞ、主賓が退場したんじゃ打ち上げも盛り上がらないからな」
「・・・はい・・・残念だけどしょうがないよね」
「なんだよその顔は、今生の別れみたいな顔して・・・今は友達と楽しんで来い、な?」

少し視線の下がるボクの顔を覗き込んで明るく諭すお兄ちゃん、こんな何気ない気遣いがボクにはこの上なく嬉しい。

「じゃあ、せめてお夕飯代はボクが出すよ、今日は外で済ませるつもりでしょ?」
「いや、そこまでしてくれんでも・・・それ位は自分でどうにかするよ」
「いいから・・・あれ、これ何だろう?」

取り出した赤い財布のお札入れにある見慣れない小さな紙に疑問符が浮かぶ。
こんなのホントに見覚えが無い、いつの間にこんな物が・・・

「ん、どれどれ・・・おい、これ、巴は今まで気付かなかったのか?」
「えっ、何が?」
「やれやれ・・・まぁ、開けてみろ、話はそれからだ」

357 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/06/13(火) 22:28:16 ID:R6Twgsom
言われるがままに開くと視界に飛び込む見慣れたお兄ちゃんの字。

──無理は絶対にしないこと、何かあったらいつでも駆けつけるから遠慮せず呼ぶように、同じ学校だしな──

そこに書かれた言葉の意味を知り鼓動が跳ねる、無くしていた何かを見つけ出した様な、泣きたくなる様なくすぐったい感覚。

「巴が前に疲れてそのままソファーで寝ちゃった事があったろ、あの時に入れといたから約一週間気づかなかった事になるな」
「あの時・・・これは・・・四葉のクローバー?」
「まぁ、ラッキーアイテムっていうとそれ位しか思い浮かばなくてな、ちょっと安直だったとは思うけど」
「ううん、そんな事無い、でも、どうしたのこれ?」
「もちろんあの時に探したんだよ、大変だったぞ、家の庭中を懐中電灯片手に探し回って・・・途中で雨が降るしさ」
「・・・そっか・・・」

手紙に添えられていた押し花にされた四葉のクローバーを手に取り、そっと胸に引き寄せる。
それはボクにはじんわりと暖かくて、痛みや不安さえ包み込んでくれるお兄ちゃんの優しさそのものだと思った。

・・・ずっと・・・心配してくれてんだ・・・お兄ちゃん・・・

結局、お兄ちゃんの優しさに気付けなかったボクのひとり相撲、か。
お兄ちゃんはボクの為を思っていてくれた、なのにボクは自分の事ばかり考えて・・・

「・・・ごめんなさい」
「は?何が?」
「お兄ちゃんはちゃんとボクの事、考えてくれてたのに・・・ボクは」
「ああ、それか・・・どうでもいいさ今となっては、結果として舞台は大成功だったんだし」
「・・・お兄ちゃんは優しいね、それに引き換えボクは・・・ホント、ダメだよね・・・ホントに」

358 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/06/13(火) 22:28:54 ID:R6Twgsom
それ以上言葉を出せずにギュッと握った掌が自分でも意識しないうちに少しだけ震えている。
子供の頃よりボクは強くなった、あの頃みたいに泣いてばかりじゃない、勉強も運動もずっと上手くなった。
いつかお兄ちゃんを支えてあげられる人になりたくて、頼りにしてもらえる様になりたくて、がむしゃらに頑張ってきた。
そうすればボクはずっとお兄ちゃんと共に生きていける、ボクのボクだけの人でいてくれると信じて。
変わったのに変わりきれないボク、相変わらずの優しさをくれるお兄ちゃん、どうにも埋まらない二人の距離がボクには堪らなく悔しかった。

「よせよせ、憂いの表情なんて巴には・・・似合うけど」
「ありがとう、でも・・・」
「巴、反省は沢山すればいい、でも、後悔だけはしちゃ駄目だ」
「・・・」
「それに、もしも今回の舞台が失敗していても俺は巴を褒めてたと思う」
「・・・どうして?」
「決まってる、巴はいつだって俺の一番の自慢だよ」

笑顔の中に真っ直ぐな瞳を隠して、お兄ちゃんがボクの頭を乱雑に撫でる、真剣さを誤魔化す為のお兄ちゃんのいつもの照れ隠し。
たまにしか見せてくれない、多分・・・ううん、絶対ボクしか知らないカッコいいお兄ちゃん。
ボクの心にグングン追いついて、いつも簡単に答えを見つけ出してくれる、きっと本当に大切な事をお兄ちゃんは誰よりも知っている。
こんな時、ボクは強く想う・・・お兄ちゃんの前ではボクは優等生でも王子様でもなくてただ、好きな人に甘えていたい一人の女の子なんだって。
だからボクは心に素直に従う、世界で一番愛しい人の胸の中へと。

「こ、こら、ちょっと褒めたらこれかよ!?」
「・・・頑張ったご褒美くらいはね、いいでしょ?」
「よかないよ!!こんな姿誰かに見られたら多くの学生の夢を壊すんだぞ?」
「じゃあ、家でならいい?」
「そういう問題じゃなくて・・・まったく、俺は時々、巴は兄離れ出来るのかと不安になる時があるよ」
「不安は的中かな、一生離れる気は無いから、ふふっ」
「・・・言ってろ」
「うん、この先もずっと言ってる・・・お兄ちゃんの趣味も分かったし」
「ん?趣味って何?」
「・・・メイドフェチ」
「なっ!?なんつっーことを!?」
「あははっ」

359 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/06/13(火) 22:29:29 ID:R6Twgsom
水を得た魚の様に腕をスルリとすり抜けてボクは一目散にクラスメイトの待つ上の階へと向かう。
その前に相川先輩を見習って心からの言葉を、10m程走った所でフワリと浮かぶスカートを翻して後ろ手にお兄ちゃんの顔を覗き込む。

「あ、そうそう、今日の舞台ね、ボクだけじゃ上手くいかなかったと思う、でも、ボクにはお兄ちゃんがいてくれたから」
「ああ、さいですか」
「舞台の上からお兄ちゃんを見つけた時、とても安心して、嬉しくって・・・やっぱりボクにはお兄ちゃんが必要なんだって思った」
「・・・」
「お兄ちゃんが居てくれてホントに良かった、これからもよろしくね、ボクの王子様」

照れ臭そうに頭を掻くお兄ちゃんを背に階段を一機に駆け上がる、羽根の様に軽くなった足と夕陽の様に紅く染まった頬で。

・・・お兄ちゃん、ボクはお兄ちゃんの為に何が出来るんだろう・・・お兄ちゃんの望むボクはどんなボクなのかなって思う。
今のボクに出来ることは片手にさえ足りないけれど、いつかきっとお兄ちゃんに相応しい人になってみせる。
ボクに優しさを教えてくれたお兄ちゃんだから・・・こんなにも切なくなる程の愛しさを教えてくれたお兄ちゃんだから。

言葉に出来ない、止められない想いを胸にボクは屋上まで突き抜ける勢いで駆ける、いつの日かこの手が届くと信じて。

───────────────────────────

「・・・王子様の王子様ってか、何言ってんだかな」

煙を上げるのではないかと思わせる猛スピードで巴が消えていった階段を見詰めて吹き出す俺。
巴公認の王子様、そう思うと妙に可笑しくてまた一人笑みが出てしまう。
終わり良ければ全て良し、夕焼け色の巴の顔を思い返して真理とも言える格言が頭に浮かんだ。

360 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/06/13(火) 22:30:10 ID:R6Twgsom
靴を履き替えて再び活気付く校舎を後にする、今頃、巴は友達に囲まれて舞台の成功を祝っているのだろうか。
どちらにせよ俺は巴が家に帰ってくれば喋り疲れるまで話に付き合う事になる、それが少しだけ今夜の楽しみだ。

「さて、帰りますか・・・おわっ!?」
「あっと、ごめなんさ〜い!!」
「ご、ごめんなさい」

俺の真横を見慣れない格好をした二人の女の子が走り抜ける、いや・・・メイドさんなんて見慣れてる筈が無い。

「ね、ねぇ・・・唯奈ちゃん、やっぱりこの格好で帰るのは・・・ちょっと」
「ここまで来て今更だよそんなの、それに絶対先回りしてお兄ちゃんを驚かすんだから、お兄ちゃんの為に急ごっ!!」
「うん、お兄さんの為に、だね」

ペチコートを翻して校門の向こうに小さくなっていく二人を呆然と見送る、傍から見ればかなり不可思議な光景。

「・・・白昼夢?いや、今は夕方だけど・・・あれ?今のは確か石川姉妹・・・」

自分でもよく解らないが妙に肩が重くて俺は茜色の空を見上げる、すると何故か今頃になって蘇る体育館裏での巴。
数時間前の感触が残ったままの右手の上で乙女心と微妙な溜め息は秋の空に溶けて消えていった。

361 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/06/13(火) 22:31:00 ID:R6Twgsom
今回の反省点、一番は神の妹様に御出演頂きオチまで頼ってしまった事。
寛容に見て頂いてありがとうごさいました、しかし、名前を間違えたのは本当に反省しております。
>271 相沢って誰よ?ホント、すいません。
>天童兄妹
この二人は個人的にホントに萌えつつ参考になるという素敵な兄妹です。
お互いの距離感というかバランスというか、そういった物が絶妙だと思います、次も楽しみにしておりますよ。
>格闘妹
強いわ可愛いわで無敵ですねw
なんか夏休みに無理矢理鍛錬に付き合わされる話とか読んでみたいです。
>323様、352様
果たして今回の話は御期待に添えたでしょうか?
投下のペースが牛歩並ですが多分、ネタが切れるか力尽きるまで書き続けると思いますのでこれからもどうぞ宜しく。

362 :遊(ry ◆isG/JvRidQ :2006/06/14(水) 21:15:43 ID:511n4s5A
>夢ノ又夢大先生様
さすがッス!!
いつもながらキレイなSSで、時間が無いと言うのに読み耽ってしまいました。

そして、ふと、未来とか羽音とかも書いて欲しいなぁなんて思ったり……w

363 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/06/22(木) 20:23:56 ID:Oi1VcWul
ほーしゅ

364 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/06/22(木) 20:57:20 ID:U4/qsRee
日曜日のお昼前、鮮やかな青空の下に白いシャツが気持ち良さそうに風に流れる。
洗濯物を叩く小気味良い音を立てながら巴はテキパキと干していく。
我が家の見慣れた光景。

「いい天気だな」
「うん、ここの所はずっと雨だったから余計に気持ちいいよね」

風に靡くサラサラの髪を梳いて本当に気持ちよさそうに巴が微笑む。青い空には屈託の無い笑顔が良く似合う。
見事なまでの五月晴れだ、こんな時では見惚れてしまう俺にも仕方が無いのかもしれない。

「あ、巴、あそこ見てみろよ、青い空には白が似合うよな・・・」
「えっ!?」

耳に残る轟音を立てて飛行機が大きな青空に白い線を描く。これもまた、曇り空では見る事の出来ない景色。
そんな単純な事がなんだか妙に嬉しくて、つい子供みたいな歓声を上げる俺。

「しかし・・・なんで白ばかりなんだろうな?もっとカラフルでも良さそうなもんだが」
「な、なんでって・・・普通、白だと思うよ・・・」
「まぁ、そりゃそうなんだけどさ」

海外の飛行機はもっと色鮮やかな物があると聞いた事がある。
ま、誰かさん専用でもあるまいし真っ赤な飛行機とかは流石に無いとは思うが。

「もっとさ、個性があった方がいいと思う訳だ俺は、大抵が白か青だろ?」
「青って・・・そんなに流行ってる色かな?ボクは知らないけど」
「流行ってるかはともかく普通の色だろ、あとはキャラクター物とか」
「・・・お兄ちゃん、そういうのがいいの?」
「いや、流石に俺はパスだけどさ、ああいうのは子供向けだし」
「あ、うん・・・そうだよね」

365 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/06/22(木) 20:58:35 ID:U4/qsRee
巴の方から何故か安堵の溜め息が聞こえてくる・・・俺ってそんなキャラでもないだろうに。
更に微妙に遠慮がちに聞こえてくる巴の声、なんか声が上擦ってる気が・・・

「あの・・・お兄ちゃん?お兄ちゃんは・・・どんなのがいいと思う?」
「そうだな、ええっと・・・黄色とかオレンジとかいいかもな」
「・・・」
「豹柄とかもいいかも」
「・・・豹柄!?」
「なんつってな、流石に冗談だよ」
「も、もうっ」

一つ一つ俺の言葉を反芻するかの様に聞き入る巴が面白くて思わず冗談を交えてしまう。
というか、そんなに真剣に聞く様な事なのか?
焦る巴を尻目に首が痛くなるまで蒼天の空を見上げ続ける。

「巴は知ってるか?ニュースで見たんだけど黒色もあるんだそうだ」
「・・・知ってるよ・・・ボクだってそれ位」
「そっか、なんでも中から外から黒尽くめなんだってな」

真っ黒な飛行機というのは結構なインパクトがあると思う。
添乗員も黒の制服で内装も黒で統一されエスプレッソとチョコレートが自慢らしい。

「一回、実物を見てみたいよな」
「・・・見て・・・みたい・・・お兄ちゃん?」
「うん?」
「ボクに・・・それは似合うと思う?」
「・・・ふむ」

366 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/06/22(木) 21:00:16 ID:U4/qsRee
空を見上げたまま、顎を撫でながら思索を巡らせる。
黒い機内、エスプレッソ片手に窓の下に映る夜景を見下ろすスーツ姿の巴。
なんとなくだが俺の頭の中では巴は憂いの表情でいる。

「・・・滅茶苦茶似合いそうだな」
「ホント?ホントに・・・そう思って・・・くれてる?」
「ああ、キャリアウーマンというか・・・大人の女性って感じだな」
「・・・そっか・・・ふふっ」
「やれやれ、そんなに嬉しい事かね」
「ボクにとっては凄く、ね・・・お兄ちゃんが言ってくれたから・・・お兄ちゃんだから」
「ん?それはどういう・・・」

さっきから何か噛合っていない二人の会話。見えなくなった話を辿る為に巴へと振り返ると照れまくった巴の熱視線に迎えられる。
・・・はて?なんだろうか、この甘い雰囲気は?
そこで俺はようやくズレた歯車の転がった先を知る事になる。いや、知るのがあまりにも遅過ぎた。
巴の視線、俺が見上げていた方角の青空の下、ベランダの外界に断絶された一年中日陰となっている三角コーナーに干された物体。
これ以上は俺の口からは言うまい・・・

「お、おい、ちょっと待て!!何か勘違いしてないか!?てか、してるんだよ!!」
「分かってる・・・別に可笑しな事じゃないよ、お兄ちゃんだって・・・その・・・男の人なんだから」
「だ、だからそれが!!」


367 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/06/22(木) 21:01:41 ID:U4/qsRee
鳥肌が立つ程に艶を帯びた巴の瞳が妖しく揺らめく。危うく虜にされそうな俺は情けない事に自分を保つだけで精一杯。
とはいえこの場合、まだ自己を持っているのは我ながら褒められていい様な気はする。
普通の男なら完全にやられている所だろう、そんな背水の陣に容赦無く攻めかかる巴の一言。

「ボクはお兄ちゃんの為なら・・・楽しみにしててね・・・お兄ちゃん・・・」

絶大な勘違いの後、去り際にやたら艶っぽい流し目と一言を残して巴はベランダから消えていく。
・・・楽しみ?・・・一体、あの御方は何をやらかす気なんだ?

「・・・部屋に戻るか」

ぶるっ、と身震いを一つして俺もベランダを後にする。なんだか暖かかった筈なのに妙に背中に寒気を感じる俺。
若干の期待と大きな不安を抱きつつ自室に向かう俺だった。しかし、そんな願いも空しく難事はやっぱり訪れるのである。
巴さん曰く、なんだかスッキリした出来事。俺曰く、無かった事にしたい事件。
これが後に我が家に強烈に残る事件、巴さん裸エプロン大事件の始まりだったのです。

(続かない)

368 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/06/22(木) 21:06:02 ID:U4/qsRee
・・・いや、ただの悪ふざけなので軽く流して下さい。
七月十二日の祭りまで道はまだ遠い。

369 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/06/22(木) 21:49:58 ID:etqGqMpV
続かないんですか……w

っていうか、少し萌力を俺に分けてください……いや、マジで……w

370 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/02(日) 22:30:41 ID:ILAIMImQ
優秀なスレッドストッパーの遊星が保守しに来ましたよ、と。

現在6(+1)完成、一つ途中。良いネタ閃けぇ……

371 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/07/08(土) 20:26:30 ID:NWTNnA26
それでもおれは待ち続ける

372 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 21:26:22 ID:d5g2kOvY
いやぁ、焦ったぁ。
……ま、去年ほど盛り上がっちゃいませんが、自己満足祭り、そろそろ始めますか……

373 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:04:03 ID:d5g2kOvY
太陽は燦々と輝き、今では温度計を見るのも嫌なぐらいの高気温。
現在、時刻は二時。
一番気温が上がる時間だと、小学校のとき理科で習った記憶がある。
こんな時間に外に出るヤツは、よほどの用事があるか、バカだけ……。
……まぁ、家に一人、そのバカがいるわけだが……。
しかも、バカはバカでも、運動バカが……。
「よくやるよ……ホント……」
一時間以上前に出て行ったきり帰ってこないバカのことを思いながら、本のページをめくる。
そして、冷たいお茶の入ったグラスを口に運ぶが
「無いのか……」
俺は本にしおりを挟み、グラスを持って立ち上がる。
そして、冷蔵庫を開ける。
「……カフェオレでも飲もうかねぇ」
俺はペットボトルに入ったアイスコーヒーと牛乳を取り出し、俺は手早くコーヒーと牛乳を混ぜる。
「さてと……」
クーラーの効いた部屋。
もう一度、本を読み始めると……
「たっだいまー!!暑ーい!!」
玄関で割れんばかりの大声……。
「あー!!涼しー!!」
そして大声の主が、俺のいるリビングへ……。
「おかえり、望。遅かったな……?」
俺は本から一切目を離さず、答える。
「うん。あはは!!何か楽しくなっちゃって、ランニングしてきたよー!!」
「元気だねぇ……」
「うん!!ボク、もう汗ビッショリー!!」
「さいですか……」
「それより、お兄ちゃん!!また本なんて読んでるー!!」

374 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:04:38 ID:d5g2kOvY
「いけないか?」
「本ばっかり読んでるとバカになるよ?」
「ならねぇよ、証拠もある」
「証拠?」
「望」
「え、ボク……?何で……?」
「だって、バカじゃん、お前。本読まないし」
「ひ、ひどーい!!ボクだって、そんなにバカじゃないよー!!」
「そりゃ悪かったな……」
……つまり、ある程度はバカってことなんだ。
本を読みながらなので、相当適当な受け答えを返す俺。
「暑いー、服脱いじゃえー!!」
「おいおい……」
「だって、汗でぐっしょりだよー?そんなTシャツ着たい?」
「じゃ、着替えて来いよ」
「うん、ちょっと休憩してからー」
望は冷蔵庫の辺りでゴソゴソと何かした後、ソファの俺の隣に座る。
横目で見たが、どうやら本当に下着姿になっているらしい。
「面白い、それ?」
「まぁな」
「……ふぅん。ねぇ、ボクと遊ぼうよー」
「忙しい」
「本読んでるのに?」
「本読んでるから」
「……そんなに本読むのが大事……?」
「は?」
「ボクは……もっと……お兄ちゃんと遊びたいのに……」
……自分が一人でどっか行っといて、何を……。
と思ったが、いえなかった。

375 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:05:12 ID:d5g2kOvY
「ボクは……は……は……はくちっ!!」
望の突然のくしゃみ。
俺は本をパタンと閉じて、
「おい、大丈夫か?」
「あ……うん。でも、ちょっと体冷えてきたみたい……はくちっ!!」
「しょうがねぇなぁ……」
俺は着ていたジャケットを脱いで、望に渡す。
「うわー、お兄ちゃん、ヒョロヒョロだぁ……」
「人の好意は黙って受け取れよ、お前……」
「あ、ゴメンゴメン」
笑って、服を羽織る望。
「ボク……こういうの、ドラマでみたことある……」
「……は?」
「へへ……暖かいね……?」
「そんなのいいから。早くシャワー浴びるなり、服着るなりして来い」
「うん……えへへ」
「何だよ?」
「お兄ちゃん!」
「何だ?」
「えへへ……ボク、行って来るね?」
「おー」
「うん、じゃあね、お兄ちゃん?」
笑顔で去っていく望。
「……何なんだ……」
呆然とする俺。
突如ご機嫌になった望……。
コイツのやることだけは……どんな本にも書いてなさそうだぁ……。
───────────────────────


376 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:05:44 ID:d5g2kOvY
ある日の休み時間。
友人と話しながら、どうでもいいような話に花を咲かせていた。
すると……なにやら、腿のあたりで振動が。
「……メール……?」
ケータイを取り出して画面を見る。
送信主は、俺の妹、翼のようだ。
不思議に思いながら、本文を見ると……

廊下に来い

「……」
そう表示されたケータイの画面を見ながら固まる俺。
カツアゲでもされるんじゃないだろうか……。
「一応行ってみるか……」
友人に説明し、とりあえず廊下へ。
ドアを開けると……
「お、遅かったじゃない」
仁王立ちの翼が、不機嫌そうに言う。
「出来るだけ早く来たつもりだけど……」
「ば、バカいわないでよ!!休み時間は短いんだから、早くしないと終わっちゃうでしょ!?」
「ご尤も……。で、何か御用?」
「じ……」
「じ?」
……痔……?
「いや……そんなこと告白されても困るなぁ……」

377 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:06:16 ID:d5g2kOvY
「何の話よ!?……え、英和辞典を貸して欲しいって言ってるの!!」
言ってねぇよ……。
「翼ご自慢の電子辞書はどうした?」
「わ、忘れちゃったの……」
「ふーん……いや、悪いが……俺も次、英語なんだ」
「え……?ど……どうしよう……」
急にオロオロしはじめる翼。
「必要か?」
「うん……ちょっと無いと授業受けられないかも……」
「そっか……しょうがねぇなぁ……」
「え……?」
「ちょっと待ってろ。持ってくるから」
翼を待たせたまま、俺は辞書を急いで取りに戻る。
「はいよ……時間がないっつーぐらいなら、最初から辞書を貸せってメールに書きゃ良いのに」
「お兄ちゃん……いいの?」
「別に構わねぇよ」
「ホントに?」
「何だ、いらないなら返せよ」
「い、いるわよ!!いるけど……い、一応確認してみただけっ!!」
「そうですか……」
「……お、お兄ちゃん……?」
「何だよ?」
「あ……その……えっと……だからね……」
「何だ?指示語で会話し始めるのは、老化の始まりだぞ?」
「……ば、バカ!!もう知らない!!」
そういって、振り返り歩き出す翼。
「おう、急げよ」
その背中に声をかける。

378 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/07/12(水) 22:08:09 ID:X9XiOkP1
自己支援

379 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:08:34 ID:d5g2kOvY
「……」
翼は一度だけ振り向いたが、何も言わず無言で去っていった。
「そういえば……何を言おうとしてたんだろ……」
教室に戻り、一息ついた俺は、無性に気になったのでメールで聞こうと、ケータイをポケットから取り出す。
「……ま、いいか」
数文字打ってみたが、まぁ、あとで聞けば済むこと。
俺は文字を全て消し、ケータイを閉じる、
すると、突然震えだす俺のケータイ。
「何だ、何だ!?」
着信があることは明らかなのに、こういうときに取り乱してしまう自分が情けない……。
「なんだ、翼か」
メールの中は……

別に感謝なんかしてないからね

「わざわざそんなこと……あ……続きがあるのか」
正直、ムッとするような内容の前置きを見なかったことにして、下のほうには……

でも、ありがとう

「……矛盾してるぞ……」
そう文句をつけつつも、
「ま、無いよりはマシか……」

何だかんだいって……俺も悪いようには考えていないのだけど。
───────────────────────

380 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:09:08 ID:d5g2kOvY
「さてと、さっそく見ようかなー」
家に帰ってくるなり、急いでリビングへ。
しして、バッグから、さっき友達に借してもらったDVDを取り出す。
内容はもちろん恋愛映画。
話題の映画だから見てみたいってのもあるけど……目的はなによりも勉強。
しっかり見て、お兄ちゃんにも使えそうなのがあったら試さなくちゃ!!
そう意気込み、DVDをセットする。
そして再生のボタンを押そうとしたとき、
「あ、葵、いたのか」
お兄ちゃんが私の居るリビングへ。
「うん。ただいま」
「おかえりなさい、葵」
ちょっと微笑んで、おかえりを言ってくれるお兄ちゃん。
なんかいいなー、こういうの。
もしかして……これが『萌え』……?
「で、どうかしたの?」
「いや……別に。ヒマだからテレビでも見ようと思って」
「あ、今からDVD見ようと思ってるんだけど……」
「そっか。じゃあ、他のこと探すか……」
そういって振り返るお兄ちゃん。
でも、きっと、これはチャンスだと、私の第六感が告げた。


381 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:09:39 ID:d5g2kOvY
「あ、お兄ちゃん!!」
「ん?」
「よかったら、一緒に見ない?」
「んー……何のDVD?」
「えっと……恋愛ものの映画だけど……」
「恋愛モノかぁ……あんまり興味無いなぁ……」
「でも、見てみたら面白いかも知れないよ?」
「うーん……じゃあ、見てみようかな」
やった!!
心の中でガッツポーズ。
私の隣に座るお兄ちゃん。
「じゃ、始めるねー」
嬉しい気持ちを胸に、再生のボタンを押す。
これで雰囲気が盛り上がって……それで、お兄ちゃんから……なんて、考えすぎかな。
───────────────────────
「ふぁ……」
思わず洩れそうなあくびをかみ殺す。
もう時間的にクライマックスだと言うのに……退屈な映画だ……。
ちょっと話が王道過ぎるのはともかくとして……
主役の演技力にも少し問題がある気がする……。
イケメンというだけじゃ、涙は誘えないというのに。
借りたときに『いいの?』って聞かれたのはこういう意味だったんだね。
作戦は大幅に失敗だぁ……。
完全に集中力が途切れたので、お兄ちゃんの顔をこっそり覗き見ると……
あ……あれ……?
すごい真剣に見てる……。
え……ちょっと……泣きそうになってない……?

382 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:10:11 ID:d5g2kOvY
それからは、今にも涙がこぼれそうなお兄ちゃんの横顔をずっと見ていた。
真剣そのもののお兄ちゃんの顔は、映画よりもずっとドキドキしたし、面白かった。
そうこうしている間に、幸せそうな音楽が流れ始め、長かった映画は静かに幕を閉じた。
「……いや……よかったな……」
真っ黒になった画面を見ながら、お兄ちゃんがポツンと呟く。
「そんなによかった?」
「うん……ちょっと感動した……」
そういって目頭を押さえるお兄ちゃん。
「泣いてるの?」
「いや……泣いてない……」
必死で目を隠すお兄ちゃん。
それが見栄っ張りで可愛くって、思わず笑ってしまう。
「これ……見てよかったな」
「うん……俺も、いい暇つぶしになったよ……」
「そうだね」
純粋で、ちょっと見栄っ張りで……素敵な人。
目隠しをしたままのお兄ちゃんの横顔をジッと見る。
そして、ちょっとだけお兄ちゃんにもたれながら、私だけの幸せに浸る。
「好き……」
小声でそう呟いて、邪魔の入らない二人だけの時間に、静かに眼を閉じてみた。
しかし、すぐにその幸せは崩れる。いつものことだ。
「さて……」
急に立ち上がるお兄ちゃん。
「あ……」
私はそのまま、横に倒れてしまう。
「あれ、葵。倒れちゃって、どうしたんだ?」
「ううん……何も……」
やっぱり、な展開に、思わずため息をつくと同時に……
手を差し出してくれたお兄ちゃんに、とても幸せな気持ちになった単純な私でした。
───────────────────────

383 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:10:44 ID:d5g2kOvY
お兄ちゃんの学校の校門前。
さっきから数え着てないほどの人が通り過ぎたけれど、肝心のあの人が見つからなくて……
私は、何度目かのため息をついた。
そんなとき、
「こんにちは」
誰かに、突然肩を叩かれる。
不思議に思いながらも振り返ると
……うわぁ、凄く美人な女の人……。
「あ、ゴメンね。驚かせるつもりは無かったんだけど」
「はぁ……」
「その制服は、中学生さんだよね?」
「あ、はい」
「こんなところで、誰か待ってるのかな?」
「え……?」
「ゴメンゴメン。私もちょっと人を待ってるところだから、さっきからキミをずっと見てたんだ」
「お姉さんもなんですか?」
「うん、ところで、やっぱり恋人さんとかを待ってるの?」
「あ……一応……」
「羨ましいなぁ。私は、お兄ちゃんを待ってるんだ。いつも遅くて、困っちゃうよ」
そういって笑う女の人。
「大変ですね」
「あはは。でも、いつもこんな感じだからね、もう慣れちゃったよ」
「そうなんですか……凄いですね」
「うーん、凄いかなぁ?」
「実は、私、そろそろ帰ろうかなって、思ってたんです」

384 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:11:17 ID:d5g2kOvY
「え?何で?」
「急に会いたくなって、来ちゃったんですけど……やっぱり迷惑じゃないかって……」
「うーん……私は、キミのカレシさんを知らないから、何ともいえないんだけど……
 そんなこと、無いと思うよ?」
「そう……ですか?」
「だって、素敵だと思うもん、キミのまっすぐな心」
「……」
「大丈夫だよ。キミの心は伝わるはず。少なくとも、私はそう信じてるけどな」
「そうですか」
「安心して。もし、そんなことで怒るようなら、私が代わりに怒ってあげるから」
「それは……困ります……」
「あはは、ラブラブなんだ?」
「そ、そんな……」
「恥ずかしがらなくても良いじゃない。羨ましいよ」
「でも……」
「私のお兄ちゃんもそれぐらい良い人だと良いんだけどな……」
「え?」
「あ、なんでもないの!!」
「そうですか……」
「そうだ、キミの名前、聞いても良いかな?」
「はい。霧島羽音です」
「私は天童葵。頑張ろうね、お互いにさ?」
「はい!」
天童さんが差し出した手をしっかり握る。
天童さんは、心も外見もキレイな女の人です。
───────────────────────

385 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:11:51 ID:d5g2kOvY
「疲れた……」
夕日の赤色に染まる校庭をトボトボと歩く。
すると、目線の先に、今一番会いたい人の姿……
「幻覚か……ヤバイな、俺……」
目頭を押さえながら、さらにおぼつかない足取りで歩いていく。
今日は早く寝よう……。
そう思ったあたりのこと。
「頑張ってね」
「あ……はい……」
可愛い声……。
とうとう幻聴まで……。
「お兄ちゃん」
そして、目の前に現れる俺の従妹、羽音ちゃん。
ん……これはもしかして……
「羽音ちゃん?」
「はい。こんにちは」
「え?どうして?」
「えと……大した理由じゃないんですけど……ちょっとお兄ちゃんに会いたくなって……」
「俺に……?」
「はい……あ、ごめんなさい!!こういうの、迷惑ですよね……!!」
慌てて、帰ろうとする羽音ちゃん。
俺はそんな羽音ちゃんの肩を優しく掴んで、
「いや、そんなことないって。俺も、ちょうど羽音ちゃんに会いたかったとこだからさ」
「え……本当……ですか?」
振り向き、驚きと喜びに満ちた目を俺に向ける羽音ちゃん。
そんな羽音ちゃんがすごく可愛くて、ドキッとしてしまう。
ちょっと涙目なところがツボだ……。

386 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:12:23 ID:d5g2kOvY
「うん。俺も、羽音ちゃんに会えて嬉しいよ」
「お兄ちゃん……」
「あ、でも……今度からは、こういうことしちゃダメだよ?」
「ダメなんですか……?」
「うん。ほら、やっぱり一人は危ないからね。だからダメだよ」
「はい……」
口ではそういいつつも、寂しそうな羽音ちゃん。
こりゃ……ちょっと情けないけど……本当のことを言うべきかな……。
「って言うのは、建前で……ホントのところは……」
「本当のところは……?」
「誰かが羽音ちゃんのこと好きになったり……羽音ちゃんが、俺以外の誰かを好きになったら嫌だし……」
「……お兄ちゃん……」
「つくづく嫌なやつだね、俺って」
自嘲気味にそう呟く。
かなりかっこ悪いな、俺……。
そう思ったとき……
「お兄ちゃん」
羽音ちゃんが、ゆっくりと俺の胸の中に……。
咄嗟に抱きとめる俺。
「私も、お兄ちゃんだけの私でいたいです……」
「羽音ちゃん……」
「だから……ね……?」
俺の目をジッと見つめる羽音ちゃん。
そして、ゆっくりと、目を閉じる。
「お兄ちゃん……大好き……だよ……」
羽音ちゃんの可愛い唇が、そう呟いた。
「……うん、俺も」
夕日に包まれる瞬間の中、また一つ、二人が近づくことが出来た想い出にお互いの気持ちを確かめ合う。
そして、これからの二人を想像しつつ、幸せな気分に浸るのでした。
───────────────────────

387 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:12:56 ID:d5g2kOvY
「ただいまー」
俺、石川真司は、玄関のドアを開け、強烈な日差しの刺す外から、我が家に戻ってきた。
が、誰も返事をしてくれない。それどころか、物音一つ聞こえない。
「……誰もいないのか……?」
靴を脱ぎ、家の中に入る。
本当に、静かだ。一応……靴はあるので、二人ともいるはずなんだが……。
ゴソっ……
何かの物音……。
「誰だ?」
その音のするほうへ、歩いてみる。
そして、角を曲がった瞬間……
「お……?」
誰かとぶつかった。
よく見ると
「何だ、千奈……いたのか」
「……」
返事の無い千奈。
それどころか、身動き一つせず、俺の胸から離れようともしない。
「千奈……?」
「……このまま……こうしていたいです……」
突然、そう呟いて、俺の胴に手を回してくる千奈……。
「え……」
突然のことに驚き、固まっていると、
「春彦さん……」
……誰……?
「……俺は……石川真司だけど……?」
「あ……ごめんなさい……」
俺の話を聞いているのか聞いていないのか分からないが、
またフラフラとどこかへ行ってしまう千奈。

388 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:13:33 ID:d5g2kOvY
「え……」
呆然と立ち尽くす自分。
千奈が、ゴミ箱をけり倒した……。
───────────────────────
「ゆ、唯奈、いるか!?」
二人の部屋の前、俺は少し乱暴にノックしながら声を上げる。
「あ、うん。いるよー」
「話しがあるんだ、入るぞ」
「うん。どうぞ」
その声を聞いて、ドアを押し、中に入る。
「お兄ちゃん、お帰りー」
少しドアを開けると、唯奈がヘッドフォンを外しながら、こちらに笑顔を向けた。
「で、話って何ー?」
「変なんだ……」
俺は、ベッドの近くのソファーに座り、話し始める。
「何が?」
「俺は……真司だけど……春彦さんって言われた……」
……何を言っているんだ、俺は……。
「よくわかんないけど、もしかして……千奈ちゃんのこと?」
「あぁ、そうだけど……?」
「ボーっとしてたでしょ?」
「あぁ……」
「それなら、心配すること無いよ。たまーにあるんだよねぇ」
「え、どういうこと?」
「千奈ちゃんね、時々本の世界に入り込んじゃうときがあるんだよ」
「……は?」
「まぁ、ホントにたまにだけど、読んでる本が面白いとね。
 そうなっちゃうと、話はあんまり聞かなくなっちゃうし、
 ヒドいときは、物語のシーンを再現しちゃったりとか……」

389 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:14:07 ID:d5g2kOvY
さっきのことを思い出す。
「つまり……今、千奈が読んでる本の登場人物に春彦ってのがいて、俺がその人に見えてるってこと?」
「たぶんね」
「……なるほど……大丈夫なのか、それで?」
「うん。まぁ、ちょっと気を抜いちゃうと出ちゃうってだけだし、問題は無いよ」
「そうか……」
「でも、さすがにちょっと心配だし、千奈ちゃんのトコ行こうよ」
「そうだな」
立ち上がる唯奈。
不思議だ……今日ばかりは、唯奈が頼もしく見えるぞ……。
ドアを開ける唯奈。
その前には……
「あ、唯奈ちゃん。どこかいくの?」
いつもの、千奈が立っていた。
「いや、別に……ねぇ、お兄ちゃん?」
「あぁ」
「あ、お兄さん……いつの間に……?」
「いや、さっきだけど」
「そうですか。全然気付かなかったです……」
「そりゃそうだよ、千奈ちゃん」
「え?」
「いつもの、出てたみたいだよ?」
「「え……?」」

390 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:14:40 ID:d5g2kOvY
これは、千奈の驚きの「え……?」と、
俺の『言っちゃってもいいのか……?』という「え……?」である。
これがハモる辺り、俺も大分、この双子のことが分かってきたということだろうか……。
「ねぇ……唯奈ちゃん……私、何しちゃったのかな?」
「さぁ?私もそこまで詳しくは……お兄ちゃんに聞いて」
「お兄さんに……?」
二人の視線が俺に向く。
「……あの……スイマセン……私……たまになっちゃうんです……
 変なこと……しませんでした……?」
「え……えっと……」
「唯奈も、それ聞きたいなぁー?ね、お兄ちゃん?」
「お願いです、お兄さん……教えてください……」
「そ……それは……」
二人の妹に詰め寄られる俺。
言うべきか言わざるべきかを頭の中でグルグルと回転させながら……
平和な事件であることに、少し幸せを感じるある初夏の午後でした……。
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391 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:15:13 ID:d5g2kOvY
太陽が輝き、鳥が鳴く。
まぁ、今日も暑い一日になりそうだが、雨が降るよりはずっと良い。
窓の外を見てそんなことを考えつつ、グラスの麦茶を飲み干す俺。
と、後方でなにやら人の気配。
振り向くと、
「はわぁー……おはよー……」
俺の妹、沙耶らしき人物が欠伸しながらやってきた。
「おはよう、沙耶。今起こそうと思ってたんだよ」
「うん。サヤ、一人で起きたんだよー」
沙耶のような人間は眠そうに目を擦りながら笑って見せた。
俺は沙耶のような人の頭にポンと手を置いて、
「よしよし、えらいな」
「えへへー……」
なんとも幸せそうな笑顔を見せる沙耶と思われるお方。
「ところで……沙耶……?」
「?なーに?」
小首をかしげて俺の顔を見上げる。
「どうしたんだ?その髪型……?」
「髪型?どうしたのー?」
「ほら、こっちおいで」
俺は沙耶の後ろに回り、姿見の前まで沙耶を移動させる。
「……な?」
「うん、すごいねー」
鏡の中の、メデューサみたいな髪型の沙耶が答えた。
しかし、ちょっと嬉しそうだな……。

392 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:15:45 ID:d5g2kOvY
「ちゃんと乾かして寝ないからだぞ?風邪引いてないか?」
「うん、だいじょーぶだよー」
「それならいいけど」
手で沙耶の髪を押さえてみたり、手櫛で梳かしてみたりするが一向に直らない。
「ちょっと待ってろ。いろいろ持ってくるから」
「うん」
沙耶の頭を軽く撫で、洗面所へ霧吹きと櫛を手早く取りに行く。
「お待たせー」
俺は椅子に沙耶を座らせると、軽く水を沙耶の髪の毛に吹き付ける。
「きゃはははは!!お、おにぃちゃん、つめたいよ!!」
霧吹きのシュッと音がするたびに、沙耶の体が大きく揺れる。
「我慢しろ」
「で、でもぉ!!きゃははははは!!」
そんな沙耶に何度も霧吹きを用い、やっと沙耶の髪がしっとりしてくる。
その髪を櫛でとかしていく。
すると……
「……」
……鏡に映る少女。
幼い顔に浮かぶ嬉しそうな微笑。
そのフェイスとは一見ミスマッチな、しっとりとした長い髪。


393 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:16:18 ID:d5g2kOvY
でもそれが何だか可愛くて……
普段の沙耶とのギャップに戸惑い、思わず手を止めてしまう。
「どうしたの?」
鏡の中の妹は、俺と目をあわせると、眩しい笑顔を返す。
これは……ヤバいかもしれない……。
「おにぃちゃん……?」
一向に動かない俺を心配してか、上を向いて俺の顔を直接覗きこむ沙耶。
「……」
ここからは一瞬の出来事だ。
テーブルの上においてあった二本のリボンを掴み、少々強引に沙耶の髪を縛り付ける。
「さ、朝御飯食べようじゃないか、なぁ!?」
「う、うん……」
不思議そうに自分の髪を見ている沙耶。
俺は極力何も考えないように、キッチンへ急ぐ。
「写真……撮っとけばよかったかな……?」
「写真?なんのー?」
「な、なんでもない!!」

何だか汗が止まらない俺……。
どうも、今日も暑い日になりそうだ……。
───────────────────────

394 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:16:51 ID:d5g2kOvY
「暑……」
「あ〜づ〜い〜……」
焼け付くような日差しの中、俺、州田敬介は幼馴染のなんとかいう女と下校中……。
「それにしても……男子はいいよねぇ……」
隣の相川だったか相沢だったか言う女が唐突に呟く
「何が?」
「だって、上脱げるじゃん。梨那はそうはいかないもん……」
そうだ、コイツの下の名前は梨那だ……。
「大丈夫だろ、そんなやせっぽちの体見たって、誰も欲情はしないと思うぞ……」
この場合は、もちろん、出るべきところがやせっぽち。
出るべきところじゃない部分は……言うまい……。
「にゃっ!!そういう問題じゃないぃ!!」
「あ、逆に出てないから恥ずかしいのか……」
「だから、違うぅっ!!」
顔を真っ赤にして反論する梨那。
……見ているだけでも暑苦しい……。
「何が違うんだ」
「出てる出てないは関係ないの!!女の子は皆恥ずかしいんだよっ!!」
「あのなぁ……じゃあ、聞くが、いくら暑いからといって上半身脱いで町を歩いている男を見たことがあるか?」
「にゃ……ないけど……」
「結局、男だろうと女だろうと変わらんよ。俺は、逆に、制服のスカートは涼しそうで良いと思うけど」
「でもでも、ぱんつ見られちゃうんだよ?」
「いいじゃん、見せれば。どーせ誰も梨那のなんか……」
「そ、そんなこと……!!」
「……そんなこと?」
「にゃぁ……あるっていうのも、ないっていうのも、なんかイヤっ……」
非常にしょうもないことに、頭を抱えて悩んでいる梨那。
あぁ、でもどっちもイヤかもなぁ……。

395 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:17:33 ID:d5g2kOvY
「しょうがない、品の無い話題になってきたし、無かったことにしてやるよ」
「うん、ゴメン……えっと……何処まで戻る?」
「お好きなところまで」
「じゃあ……えっと……ぱんつ見られちゃうのイヤだけど、でも、ブルマとかはくと蒸れちゃうしぃ……」
「……」
人の話聞いてないな……。
……呆れる俺。
これはもう……
「あ、お兄ちゃん、何処行くのっ?」
帰り道から一歩外れた俺を梨那が呼び止めた。
「コンビニに避難する」
「あ、待ってよー、梨那も行くー!!」
暑さを逃れようと少し早足になる俺を後ろから追いかけてくる梨那。
何か今日は二人ともノリがおかしい気がする……
───────────────────────
「んー!!涼し〜!!」
コンビニに入るなり、声を上げる梨那。
そんな梨那を俺は無視して
「何かいいの入ってないかなぁーっと」
俺は一人、飲み物の棚へ。
「あ、梨那、ミルクティーにしよう!!」
脇から梨那が声をかけた。
「こんな暑いのにミルクティーかよ……」
「だって、甘いの好きだもん」
「……ま、それならそれでいいけど」
俺も甘党だが……こんなクソ暑い日にミルク系の飲み物はちょっと……。
「……飲み物は止めにしよう……」
気分が優れなくなってきたので、ドリンクは止め……。
新発売の商品のチェックはまた今度だな……。

396 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:18:04 ID:d5g2kOvY
「えー……じゃあ、梨那もやめるよー。アイス買おうよ、アイス!!」
「そうだなぁ……アイスの美味い季節になったからな」
「うん。でも、梨那はいつでも食べてるけどねー」
「そうか、俺はあんまり……っていうか、コンビニでアイス買ったことないかも」
「えっ!?無いの!?」
「そんな驚くことか?俺は飲み物ばっかりだし、アイスは買わんな」
「そっかー。じゃ、コレ買わない?美味しいよー?」
そういって、端のアイスを指差す梨那。
「おい、一個250円もするぞ、これ?」
「うん、きっと美味しいよー」
「……食べたこと無いのか?」
「そのアイスは、こーきゅーんひんだよ?梨那があるわけないよー」
そういって、能天気に笑う梨那。
……コンビニで売ってる高級品か……小ちぇえなぁ……。
「まぁ……俺も250円もするアイスをちょっと買おうという気にもなれないけど……」
「だよねー。梨那はガリガリくんで我慢するよー」
「それも寂しいなぁ」
「しょうがないよー」
「じゃあさ、金半分出し合わないか?」
「え?」
「俺もなんか食べてみたいし、どうよ?」
「うーん……半分で125円か……うん、わかった!!半分出すよ」
「よし、決まりだな。さ、買って帰るぞ」
「うん」
高級品のアイスを一つ、レジに持っていく二人。
……持ってみると予想以上に小さいな、このアイス……。

397 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:18:36 ID:d5g2kOvY
「へへ〜、楽しみ〜!!食べよ、食べよっ!!」
コンビニから一歩出ると、早速切り出してくる梨那。
「早いな」
「早くしないと溶けちゃうもん。美味しいうちに食べよ!!」
そういって、俺の持つビニール袋を漁り始める梨那。
「ま、そうだなぁ」
「一口目はどっちが食べる!?」
「お前でいいよ……」
「え!?いいのっ!?」
「いいよ、別に」
「でも、ファーストインパクトだよ!?重要だよ!?」
「いいって、それぐらい」
「わーい、ありがとー、お兄ちゃん!!じゃ、遠慮なく、いただきまーす!!」
木製のスプーンで、すくって食べる。
「ん〜!!美味しぃー!!」
「そんなに?」
「うん。ほれ、食べてみてよ」
間接であることには一切気付かぬまま……梨那の差し出した、スプーンを口に運ぶ。
「うぉ……」
「美味しいでしょ?」
「コレ食ったら、普通のアイス食えんな……」
「ねぇー?もっと食べるー?」
そういってアイスを梨那から受け取る俺。
「半分は俺のもんだっての」
流石に、量が少ないので、俺の分はもう無くなった……。
食べ足り無い気持ちを抑えて梨那にカップを返す。

398 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:19:08 ID:d5g2kOvY
「それもそうかー。……小さな贅沢だねぇ……あ、もうないや」
「ほんと、高いし少ないな……」
「うにゃー……これが毎日食べられるようなお金持ちになりたいぃー!!」
コイツ、なんか色々小せぇ……。
「美味かったな」
「うん、また二人で買おうね?」
「まぁ、そうなっちゃうか……」
そう考えると、少し残念な気持ちになる。
「ま、贅沢はたまにするくらいで丁度良いというしな」
「そうだねー、毎日だと有難みが薄れちゃうかもね」
スプーンを咥えたまま喋る梨那。
「おい、梨那、ほれ」
ソレを見た俺は、梨那に手を差し出す。
「にゃ、何?」
「スプーン。さっきの袋に入れてやるから」
「い、いいよ!!」
「何で?」
「べ、別にっ!!」
「みっともないぞ?」
「う……で、でも……間接……」
「は?」
「な、何でもないにゃ!!」

399 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:19:40 ID:d5g2kOvY
「ったく、変なもん欲しがりやがって……でも、咥えとくのはやめろよ?」
「うん……わかりました……えへへ」
スプーンをハンカチで拭き、ポケットにしまう、何故か嬉しそうな梨那。
意味が分からず、流れた汗を拭く俺。
「ねぇ、お兄ちゃん?」
俺の目を覗き込む梨那。
そして、自分の唇をそっと撫でる。
「ん?」
「えへへ〜♪なんでもないよー!!」
「はぁ……?」

そんなこんなで、暑苦しくも、明るい生活に俺はまた汗を流すのでした……。
───────────────────────

400 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:20:13 ID:d5g2kOvY
「あれ……ここじゃなかったかなぁ……」
埃っぽい押入れの中、様々なものをかきわけながら、ついついどうでも良いことを口走る。
「あ、何か探し物ですか、兄さん?」
パタパタと足音を響かせながら、俺の妹、未来が声をかけた。
「おー。あの、親父が買ったキャンプ用の折り畳めるテーブルなんだけど……」
「あぁ、あれですね。そこに無ければ外の倉庫じゃないですか?」
「やっぱそうか……。邪魔だから移したのかな」
「そうでしょうね……邪魔でしかたらね、アレは」
「じゃあ、外か」
押入れから脱出しながら、埃まみれのTシャツを手で払う。
未来は飛んでくる埃に少し顔をしかめながら、
「で、それを何に使うんですか?」
「あぁ、ベランダに置いて……」
「あっ、分かりました。今晩の花火ですね?」
「ご名答。ちょうど良い位置にこの家が立ってるし、今年は腰を入れて楽しもうかなと」
「へぇ、それはいいですね」
「良かったら、未来ちゃんもどう?」
「いいんですか?」
「もちろん。どーせ、一人で見る気だったし。せっかくだから、一緒に見ようよ」
「あ、それならお言葉に甘えさせてもらいますね」
「おー、じゃ、どうせやるなら、飲み物とかお菓子とか買ってこようかな」
「あ!!それなら、宴会用の料理作ります、私!!」
手を高く上げてアピールする未来。
嬉しそうだな……。
「何か本格的な宴会になってきたなー」
「ですね」
そう言って、嬉しそうに微笑む未来。
あぁ……和むなぁ……。

401 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/07/12(水) 22:24:12 ID:X9XiOkP1
あぁ……ついにバーボンへ……
無理はするものじゃないね……

402 :ケータイより愛を込めて :2006/07/12(水) 22:50:46 ID:X9XiOkP1
ゴメンなさい。
続きは俺のまとめサイトで……

403 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/07/12(水) 23:04:45 ID:0fxGV1eT
>>402
まとめサイトのURLはっていただけるとありがたいですw

404 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/13(木) 06:44:55 ID:JyGJvyDX
ttp://www.geocities.jp/you_say712/maturi.htm

……ホント申し訳ねぇッス……

405 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/07/13(木) 09:21:21 ID:xvxXS7d7
>>404
ありがとうございますw

406 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/07/14(金) 15:27:04 ID:XTt1E6Ym
>>遊星さん
乙です!

407 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/07/20(木) 03:53:13 ID:j+66GohR
ハローハロー、あなたは何処にいますか。
ハローハロー、私は此処にいます。
ハローハロー、今日も世界は極めて正常。
ほしゅ

408 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/07/22(土) 22:44:53 ID:mLy7PqYj
続きはまだかなWKTK

409 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/07/24(月) 07:57:45 ID:ADsRNfIp
続きとは?

410 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/07/29(土) 13:19:26 ID:jM9oH1ca
夢ノ又夢氏に期待age

411 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/07/29(土) 22:52:58 ID:siebI3Cj
>>410
俺も楽しみだ

412 :天神泰三 :2006/07/30(日) 07:18:07 ID:Nd6NDWPW
おいどんの妹になってほしいでゴワス。

413 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/07/30(日) 12:05:45 ID:UO14f9H5
どんつく、どんつく♪

414 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/07/30(日) 16:57:11 ID:NtPRfsI0
歌いなさいラーゼフォン
お前の歌を、禁じられた歌を…

歌いなさいラーゼフォン
いつか全てが一つになる時のために

415 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/07/30(日) 21:03:12 ID:+thpfUvY
気が付けばもう七月も終わり、祭りに乗り遅れてしまった・・・。
>遊星神
GJ、そしてお疲れ様です。
以前にも言いましたがやはり一度にこれだけのSSを書いてさら
にネタが被らないというのはマジで尊敬してしまいます。
未来ちゃんは相変わらず可愛いし、梨那ちゃんもカワイイし、葵
ちゃんは参考になるしで大満足の祭りでした。
>410様、411様
現在、二つの話が八割程度書けた所。
近々頑張って投下します。

416 :遊(ry ◆isG/JvRidQ :2006/07/30(日) 22:10:32 ID:i/zX7Wad
>>415
お久しぶりっス。
先生の作品、楽しみにしてますから。

417 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/08/09(水) 00:42:05 ID:RWVNbJzz
ほしゅ

418 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/08/17(木) 22:49:48 ID:QY6T/Z7W
ほしゅ

419 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/08/21(月) 00:34:24 ID:vAxHPxrd
新作期待

420 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/08/22(火) 02:50:45 ID:In1PuziW
ずんずんして

421 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/08/23(水) 19:16:00 ID:LTq/0BYS
まだだ!まだ終わらんよ!

422 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/08/24(木) 23:03:18 ID:fyYMaYoF
恥こそ、もっとも身近な精神的苦痛ではないだろうか。
ほら、いつもいる場所から一歩入れば、ここは恥多き地……。
皆の視線が俺に集まっているような気がする……。
「んー……迷っちゃうなぁ〜」
……隣のお嬢さんは、俺の気など知らず、のんきに水着を選んでいる。
葵がどうしてもっていうから……仕方ないんだ、これは……。
そう自分に言い聞かせる。
「ねぇ、お兄ちゃんはどう思う?」
青いが二種類の水着を見せながら、俺に尋ねた。
どう思うといわれても……。
俺は戸惑いながら、
「え……あぁ……えっと……葵の好きな方でいいんじゃないか?」
「だから、どっちも凄く好きだから困ってるのよ」
「そっか……そうだよな……」
女の子と水着、という組み合わせが俺はどうしても恥ずかしくて、思わず眼を背ける。
すると……
「いててっ!!」
顎をガッ!とつかまれ、そのまま無理矢理首を曲げられる。
……な、なんて力だ……。
「お兄ちゃん?」
いつもより低いトーンで語りだす葵。
心なしか、笑顔も硬い……。
「は、はい、なに?」
「……別に。なんでもないけど……」
「はぁ……」
……また、ワケも分からず怒られるかと思ったけど……今日は機嫌が良いのかな……。

423 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/08/24(木) 23:03:54 ID:fyYMaYoF
「あ、コレもいいなぁ!!う〜ん、ホントに迷う……」
新しい水着を見つけてはしゃぐ葵。
やっぱり機嫌はよさそうだ。
「ねぇねぇ、お兄ちゃんはどんな水着が好き?」
「いや、俺は何でも良いけど」
「何でも?」
「いや、まぁ……限度はあるけど」
別に着ないしね。別に海にもプールにも行かないから。
「まぁ、学校のがあるし、俺は別にいいかなと思うんだけど」
「学校の……?それは……えっと……つまり……」
……顔赤いぞ、何だ……?
「あ、葵……?」
「帰ろっ!!」
「え?」
「いいからっ!!」
俺の手をひっぱり、どんどん進んでいく葵。
「そんなに急がなくても……いや、ありがたいけど……」
「だって、お兄ちゃんがそういうこと言うの珍しいじゃない!?」
「珍しいか?」
「うん。だから、ちょっと恥ずかしいけど……私……」
恥ずかしい……?
って、手、繋いじゃってるよ……確かに、コレは恥ずかしいな……。

424 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/08/24(木) 23:04:39 ID:fyYMaYoF
「ねぇ……お兄ちゃん」
「何だ?」
「ふふっ、別に〜♪お兄ちゃんも好きなんだから〜♪」
俺『も』好き……つまり、葵も好き……?
あぁ、何か美味いモンでももらったんだな……。
しかし、ホントに機嫌良いんだな……。
「ふむ、それなら早く帰らないと」
「ふふっ♥お兄ちゃんったら♥」


誤解は続く。
さらに続く。
ちなみに、事が起こった後も、俺は全ての誤解を解くことが出来なかったのだが……。
───────────────────────
永遠の前座、遊星登場。
夢ノ又夢先生の新作に強く期待する。

あと、>364-367あたりに酷似しているが、私は謝らない。
嘘です。ゴメンなさい。謝ります。
まぁ、夢ノ又夢先生の作品は凄いから……ねぇ。

425 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/08/26(土) 03:10:29 ID:qhS/H6Nv
>>422-424
GJでふ!
スク水?

426 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/08/26(土) 03:56:07 ID:svrSX7u4
>>422-424
スク水キタコレ萌えたよ

427 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/08/28(月) 12:00:13 ID:Buw/R2vD
保守

428 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/08/30(水) 22:04:36 ID:K0PbcXEr
「見事に雨だな、嫌になる位」

下校時間になって本格的に降り始めた雨、黒い雲がバケツをひっくり返した様な水を地面に叩きつける。
降水確率20%に裏切られた俺はただ黙って下駄箱の先の露帯びた世界を見詰めるしか出来ない。
それにしても朝の晴れ間が嘘みたいな状況、日頃の行いに何か問題点でもあっただろうか?
自分を省みていると唐突に視界に入り込む赤い傘、やはり割と良い日頃の行いのお陰で訪れる助け舟。
雨にも負けないサラサラの黒髪を靡かせ蒸し暑さとは無縁な涼やかな瞳で俺を覗き込む。

「はい、これはお兄ちゃんの傘」
「・・・おお、今日ばかりは巴に後光が差して見えるよ」
「傘一つで神様にはなれないよ、ふふっ、ホントに大袈裟なんだから」
「いやいや、結構な助け舟だよ本当に、お陰で雨の中をランニングせずに済んだ、感謝感激」

仰々しく手を合わせ拝む俺を横目で可笑しそうに眺めながら傘を差し出す巴。
二三、褒めちぎりの言葉が出そうになりながら受け取った傘を空に広げる、少しだけ気分の軽くなった足取りで。

「ところで、巴はいつまでそこで見てるんだ?早く帰ろう」
「うん、そうなんだけどボクの傘は忘れちゃって」
「・・・は?」
「だから、お兄ちゃんの分は覚えていたけれど自分の分は忘れてたんだよ」
「いつも鞄に折畳み傘を入れてただろ?」
「残念だけど今日に限って入ってない」
「それは残念だな」
「うん、残念無念」

言葉とは裏腹に少しも後悔の念の感じられない顔であっさり諦める巴、それどころか表情は心なし晴やかにさえ見える。
その爽やかさは重たい梅雨空とはあまりにも正反対の清々しさを感じさせる、流石は巴といった所だろうか。

429 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/08/30(水) 22:05:47 ID:K0PbcXEr
そうなると俺が取るべき行動は一つ。

「・・・となると道は一つだな」
「いいの?お兄ちゃん」
「ああ、これは巴が使いな」
「え、えっ!?」

差し出された傘を前にやたらうろたえる巴、いや、俺はそんなに予想外な事をしたんだろうか?

「なんでそんなに驚くよ?一つしか無いんだから巴が使えばいいだろ」
「で、でも、それじゃお兄ちゃんが・・・」
「心配するな、馬鹿は風邪はひかない」
「そういう事を言うと思ってたよ・・・そうじゃなくて、二人共濡れずに帰る方法があるじゃない」
「ん?そんな方法あるか?」
「一緒に帰ればいいんだよ、一つの傘で二人・・・ね?」
「・・・言われてみりゃそうだよな・・・なんで気付かなかったんだ俺は・・・」

少しの間に簡単に出てきた解決法と自分の思慮の至らなさを感じつつ一人分のスペースを空けて傘を差す。
遠慮がちにそこへ入り込む巴を見届け、二人して霧の立ち上る雨の道を歩き出す。
傘の上で乱雑なリズムを奏でる雨音、日に焼けた星をこれでもかと潤そうとするこの季節特有の長い雨。
人影も車の一つも見えない幻想的な道をただ黙々と歩き続けると不意に隣から漏れ出る以外な言葉。

「・・・今日はラッキーだな」
「どこがよ、どっちかと言うと不幸だろ、晴れが大雨になるわ傘は一つしか無いわ」
「傘は一つだけどボクたちは二人、こんな雨の中を独りで帰らなくていいんだよ、それってラッキーな事だよね」
「ポジティブだねぇ、巴さんは・・・ま、一理あるな」
「それに・・・こういうの、なんだか映画のワンシーンみたいで素敵かな・・・って」
「ああ、雨の中、鳴り響く銃声、崩れ落ちる俺とピストル片手の巴」
「・・・どうしてそうなるの?しかも、ボクが犯人にされてるし・・・」

430 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/08/30(水) 22:07:47 ID:K0PbcXEr
不意に頭を過ぎる情景は何故かサスペンス仕立てな俺、その辺の理由は多分、発想が貧困な故だろう。
ジト目の巴を横にバツが悪く頭を掻いてワザとらしく前に向き直る。

「もう少しロマンティックな話にしようよ、折角の雨なんだから」
「折角、それにロマンティック・・・こういう時に使う言葉か?」
「こういう時だから使ってるの、こんな風に二人で帰る事なんて滅多にないんだから」
「いや、だから俺とムード出そうとしてどうするよ?」
「・・・手ごわいなぁ、お兄ちゃんは・・・お兄ちゃんだから、なのに・・・ボクはお兄ちゃんだけなのに」
「おいおい、何一人でブツブツ言ってるんだ?なんか怒らせるような事を言ったか、俺?」
「別に何も、何も無さ過ぎて物足りない位だよ・・・」
「そう言われてもな、ロマンティックと言われても俺にはパッと浮かばないんだよな、例えば何かないかな」
「例えば・・・そう、真っ暗な海の底みたいな世界に灯りが二つ、お兄ちゃんとボクと・・・寄り添う灯」

俯き加減だった肩が上がり、打って変わって思索を巡らせる真剣な顔に変わる巴。
右手の人差し指を唇の前にちょこんと置いて眉をひそめた顔まま巴は語りだす。
まるでバラバラのフィルムとスライドを一つ一つ重ね合わせていく様に。

「空の向こうにはそれよりもっと明るくて華やかな星の光が何百、何万とあって・・・でも違うんだ」
「違うって何が?」
「どんなに明るい光でもそれはボク達にとって何万とある光の一つ、でも隣にあるのはたった一つの光」
「・・・へぇ、なんか映画ってより詩の一節みたいだな」
「同じ物なんてどこにも無い、代わりになる物なんてどこにも無い、かけがえのない大切な光なんだよ」
「巴は詩人だったのか・・・なんかそのまま本にでも出来そうだな」
「あまりからかわないでよ、もう・・・」
「いやいや、普通に関心してるって、確かに俺に夕飯作ってくれる光なんて他には無いからな」
「えっ・・・」

なんとも不思議そうな顔で雨を跳ねない為にゆっくりしていた歩みがピタリと止まる巴。
当然、同じ傘に入っているこちらも留まる事を余儀なくされる。
タイミングの掴めない微妙な空白、途切れた会話の向こうに聞こえる雨音を意味も無く数えてみたりなんかする。

431 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/08/30(水) 22:24:50 ID:qIQ8yBlN
夢ノ又夢氏がいらっしゃったぞ!!
やっぱ、最高だー!!

432 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/08/31(木) 20:34:39 ID:U2xAs0Go
>>428-430
GJ

433 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/09/01(金) 01:26:10 ID:Lp/7Dabe
age

434 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/09/01(金) 07:06:40 ID:8QY3U6cg
「お兄ちゃん朝だよぉ〜!早く起きないと遅刻しちゃうよぉ?」妹の麻衣がいつものように起こしにくる。ただいつもと違ったことが一つオレが幼なじみの菜月を殺していたのである。
俺は正直焦っていたどう死体を処理すべきかどうバイト先の右門に言い訳すべきか…
「お兄ちゃん入るよ?」ガチャリ
考えているうちに妹の麻衣がオレの部屋に入ってきたのだ

435 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/09/01(金) 07:15:14 ID:8QY3U6cg
「え!?…な、菜月さん!?…し、死んでる…お兄ちゃんどうゆうこと!?」麻衣はオレに尋ねてくる。だがオレは答えない
「お兄ちゃん!返事をして!」
「うるさい黙れ!いいか?このことはさつきお姉ちゃんには絶対に言うんじゃないぞ!言ったらお前もこうなるんだ」

436 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/09/01(金) 21:46:46 ID:PFYNOR93
前回投下からちょうど一月、近々とか言っておいてえらく時間が掛かりました。
続きは近い内に投下します、いや、今度こそホントに。

>遊星様
スクール水着は反則でしょうw
誤解の一部始終が読みたい、是が否でも読みたいですw

437 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/09/02(土) 00:01:26 ID:UMDDMWqv
待つ時間は長いぜ

438 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/09/02(土) 01:48:01 ID:I+Qt+wbj
>>遊星さん
GJです!スク水…(*´Д`)

>>夢ノ又夢さん
GJ!今回のは雰囲気がちょっと鍵っぽいですねw

439 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/09/04(月) 06:33:13 ID:cCQov9T6
部屋で懐かしのパラサイト・イヴをやっていたら妹がやってきた
「お兄ちゃ〜ん」
「んぁ?」テレビの画面を見ながら適当な返事をする
「ネギまのゲーム買ってきた」と言ってソフトを前に突き出す妹
「少し待て、今クライスラービルだからセーブまで多少時間掛かる」

手早くセーブをしてディスクを抜いて妹に場所を譲る
「ほれ、終わったぞ」
「ネギま〜」と言ってまたソフトを突き出す
「だからなんだよwイタい子みたいだからやめれww」
「やって?」
「は?俺が?意味がわからん」
「だって1人でやるの恥ずかしいんだもん」
「知らねーよw」
「お願い〜」
「そのぐらい自分でやりなさいw」
「じゃあお兄ちゃんそこで見ててね!」
「なんでだよw」

結局見ることになってトイレにも行かせてもらえない。
という夢を見た。かれこれ10年ぐらい妹が欲しいと嘆き続けた俺23、そろそろ重症です。

440 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/09/05(火) 18:04:09 ID:x1oVduXO
>>439
> 「だからなんだよwイタい子みたいだからやめれww」
そっくりそのままおまいに言…えない俺ガイル…('A`)

441 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/09/06(水) 22:44:40 ID:RH9FdTlA
・前回のあらすじ
水着を買いにいった兄と妹。
しかし、兄の鈍感さから、誤解が勃発。
妹、葵は兄がスク水好きと勘違いしてしまう。

「ほら、お兄ちゃん、見て見て!!」
突如俺の部屋に現れた水着姿の妹を前に、しばし、固まる俺。
「……」
水着買ってたんだ。いつの間に……。
……。
アレか、俺がトイレ行った時だ。
結構時間かかったしな……時間はあったよな。
「変……?」
「い、いや、いいんじゃないか……?」
なんか学校で使うヤツみたいな感じだけど……
……まぁ、とりあえず褒めとけば間違いないよな……。
「ホント?よかった……」
安堵のため息をつく葵。
……安易なことを言ったと、少し罪悪感。
「お兄ちゃんがこの水着、好きだって言ってくれたから……思い切っちゃった、えへへ」
……言ったっけ?
必死で思いをめぐらす。

442 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/09/06(水) 22:45:26 ID:RH9FdTlA
……あぁ。
色は青系が好き。とは言ったな。
あと、露出は少な目の方が良いんじゃないか?という兄としての気遣い(それと、俺が恥ずかしくて見れないから)もした。
二つを統合すると……まぁ、こんなもんか。
もう一度、水着を見る。
「……っ……」
「どうかしたの?」
「いや、何も……」
……一瞬、スク水、とか、スク水着て……とか、考えた自分が恥ずかしい……。
そんなこと葵に言ったら、なんて思われるか……。
当の葵は、自分の体をあちこち見ながら、
「でも、ダメだ、これは家の中でしか着れないよー」
「ああ、そうか」
「まぁ……もともと、そのつもりなんだけどね」
そういって、俺にウインクをしてみせる葵……。
つーか……家の中で何に使うんだ……?
「……やっぱり、風呂か……?」
……素朴な疑問が口に出てしまった。
聞こえてなかったら良いんだけど……。
そう思っていたが、葵は突然スイッチが入ったように……
「お、お風呂っ!?え、何何!?どういうこと!?」
聞こえてたか……。
それなら、しょうがない。
「いや、入るんじゃないのか?」
「えっ!?そ、そんな!?お兄ちゃん、私、まだ、心の準備が……」
水着で風呂に入るってのは、そんなに覚悟のいることなんだな……。
女の子って難しいなぁ……。

443 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/09/06(水) 22:46:14 ID:RH9FdTlA
「……え?」
「あ、でも……イヤじゃないんだけど……!!」
「……はぁ……」
「……でも、私、初めてだから……最初は、普通にしたいな……?」
「まぁ、よく分からんけど……好きなようにしたらいいんじゃないか」
「……うん。ありがとう、ゴメンね?」
「謝ることじゃないだろう、俺は関係ないし」
俺がそう言うと、
「……え?」
目の前の葵の動きが固まる。
「え?何?俺関係あるの?」
「……ねぇ、お兄ちゃん。何の話?」
目の座った葵が、低い声で尋ねた。
……何だ、このプレッシャーは……。
「葵は水着を着て風呂に入るって、話じゃなかったか?」
何だかポカーンとしてる葵。
徐々に俯き……何だか震えてますけど……。
「……お……」
「お?」
「お兄ちゃんのバカぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!!!!」
「っ!?……何故……」
……葵のボディーブローをモロにくらい、その場に膝をつく俺。
「喜んで損したよっ!!もうっ!!」
怒った様子で出て行く葵。
尚も動けず、しゃべることもままならぬ俺。
何にも分からぬまま喰らったパンチは、涙が出るくらい痛いんだね、チーフ……。
───────────────────────

444 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/09/06(水) 22:47:29 ID:RH9FdTlA
一人前の前座を目指して、今日も貼り貼りっと。
でも、名前を忘れるようじゃねぇ……

本来作るつもりの無かった続編。
……姉のテイストが少し入ってる気が……。
夢ノ又夢先生の作品がまだ続くようなら、葵視点のものもその前座で書くかも……。

445 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/09/12(火) 23:15:42 ID:o0VcQwlS
俺はスレストすることにおいても頂点に立つ男らしい……。

ところで、質問。
新しい妹で新しい話を書き始めたんだけど、よく考えたら、最初の方は妹関係ない。
それでも貼っても良いのかな……?

446 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/09/13(水) 05:31:52 ID:oZFQ6p5A
新しい妹貼っておくれ(´∀`)


葵もよろすく!

447 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/09/16(土) 23:15:10 ID:hshwH5iR
突然振り出した雨。
空はどんよりと曇って、どうやらすぐには止みそうにない。
駅前の街灯時計の前には、俺を除いて誰もいない。
両手に持った二本の傘を見比べ、俺は小さくため息をついた。
「早く来すぎたか」
約束の時間まで、あと三十分以上。
ある程度の時間的余裕を確保しておかないと落ち着かないという病気を抱えた俺だが、
今回の予想以上の待ち時間に、少しうんざりする。
と、いいつつも……心の準備をする時間が出来て、少しホッとしたワケだが。
どこか休める場所があれば良いのだが。
そう思い、辺りに目を向けると、少し先のほうに、喫茶店らしき店が。
丁度良いとばかりに、迷わずその店に入る。
……それが悲劇の始まりだった。
「おかえりなさいませ、ご主人様♥」
何かすごい服装の女性に出迎えられ、一時、全てを忘れる。
「……?」
「こちらへどうぞ♥」
「あ……はい……」
……ショックで完璧に自分を失った俺は、言われるがままにテーブル席へ……。
まぁ……ここなら、さっきの時計もよく見えるな……と少し冷静だった。
「お飲み物は?」
「……アイスコーヒーで……」
「かしこまりました♥」
……。
水を一気に飲んで、少し冷静になる。
なるほど、ここが噂のメイドカフェというものか……。
しかし、田舎だ田舎だと思っていたが、メイドカフェなんてものがこの町にあるなんてなぁ……。
物凄い場違い感を抱えながら、窓の外をずっと眺めている。
とはいえ、しばらくすれば少し慣れてきたのか、
今まで忘れていた緊張やら不安やらが込み上げてきた。

448 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/09/16(土) 23:15:49 ID:hshwH5iR
「お待たせしました」
そんな時にタイミングよく現れたのは、アイスコーヒーとさっきの女性。
「ミルクとシロップはどれくらいにしますか?」
「ふむ……」
他の客を見ていて分かったことだが、
どうもこの店では、ミルクやシロップは彼女たちが入れてくれるらしい。
「少しで」
「はい。かしこまりました」
そういって、ミルクを注ぎ始めるのだが……何だか腕がプルプル震えている……。
危なげにその光景を眺める俺。
……ポタン。
ミルクが、上手に一滴だけ、グラスの中に入る。
少し=一滴……もしかして、天然?
それともそういうサービス……ってことは、ツッコミ待ち?
いろいろ考えながら、呆然と、真っ黒なままのグラスを眺めていると、
「どうかしましたか?」
シロップも一滴いれ終えた彼女が、不思議そうに尋ねる。
……やっぱ天然だ……!!
「いや、なんでも……」
「そうですか。では、ごゆっくり!」
お辞儀をして、嬉しそうに戻っていく彼女。
……残された俺とほぼブラックなコーヒー。
驚きの余り、全てを忘れてしまっていた。
───────────────────────

449 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/09/16(土) 23:18:16 ID:hshwH5iR
許可頂いてからどんだけ時間かかってんだよ、ってワケで今更貼り。
全然、妹関係ないけど、今日はココまで。バーボン怖いし……

……メイド喫茶ちょっと行ってみたい……近くに無いけど。

450 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/09/18(月) 22:54:55 ID:NpCHzpCe
最後まであの天然ちゃんが俺を担当するのかと思ったが、そうではないらしい。
お姉さん系のメイドさんにお金を払い、お店を後にする。
「いってらっしゃいませ、ご主人様」
……なるほど。店を出て行くときはいってらっしゃいになるわけだ……。
感心しながらドアを押すと、
「あ……」
私服姿の、さっきの天然ちゃんが、店の軒先に立っていた。
なるほど、上がる時間だったわけだね。
しかし……さっきは服に圧倒されて、気付かなかったが、結構可愛い。
「ん〜……」
どうやら、傘を持っていないご様子。
話しかけるべきかどうか迷っていると、
「雨、イヤですねぇ」
「え、あぁ、そうですね」
「澪、傘もってくるの忘れちゃって……」
天然ちゃんは困った様子で、手を伸ばし、その掌を雨に晒す。
「……よかったら、使います?」
「え?……あ!?そんなつもりじゃないんですよ!?」
「別にいいですよ、二本持ってますし」
「で、でも……」
困っている様子の天然ちゃん。
まぁ……彼女なりの考えがあるなら、無理に押す必要も無いか……

451 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/09/18(月) 22:55:29 ID:NpCHzpCe
そう思っていると、
「ひぁっ!!」
彼女が突然大声を出す。
「どうかしました?」
「いえ……大丈夫です。ケータイが震えて、ビックリしただけですから」
バッグからケータイを取り出す彼女。
「あ、お母さーん!!うん、うん。こっちもすごい雨だよー」
声デカいなぁ……。
「迎えにきてくれるの?ありがとー!!……うん、分かった。待ってるよー……うん、バイバイ」
ケータイを折りたたむ彼女。
「あ、あの……少しお願いしても良いですか?」
「あぁ、どうぞ」
「あそこの時計の前まで、傘に入れてくれませんか?」
「いいよ。僕もあそこの前で、人と会うから」
「そうなんですかー、偶然ですね!!カノジョさんですか?」
「はっ?」
「あ、ゴメンなさい。変なこといいました?」
「……いや。ちょっと、驚いただけ。義理の妹と会うんだ」
「わー!!そうなんですか!?私もね、もうすぐお兄ちゃんができるんですよ!!」
とたんに嬉しそうになる彼女。
「まだ全然どんな人か知らなくて、すっごく楽しみです!!」
「……ふぅん」
奇妙な偶然もあるもんだ。と、少し驚く。

452 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/09/18(月) 22:56:13 ID:NpCHzpCe
「じゃ、行こうか。はい、傘」
妹の物だという傘を、彼女に差し出す。
「……え……?」
「どうかした?」
「これ……どうしたんですか?」
「傘?いや、妹の傘だから持ってけって、ウチの父親が……」
「……って、ことは……ど、泥棒っ!?」
「はっ!?」
「だって、コレ、私の傘ですよ!?」
「……キミの?」
「間違いありません!!」
……ということは、つまり……
「……もしかして、キミの苗字って二河……?」
「はい。二河澪です!!」
「やっぱり……」
「どうかしました?」
「……キミが妹だったのか……」
「え!?えぇぇぇっ!?」
「まぁ、はじめまして」
驚きを隠し、握手を求める。
「み、澪のお兄ちゃんが……泥棒さん……?」
「……泥棒じゃありません」
「じゃあ……何?」
「何といわれても困るけど……怪しいもんじゃない」
「そうなんですかー」
……さすが天然……。

453 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/09/18(月) 22:56:45 ID:NpCHzpCe
「えっと、よろしくお願いします。お兄ちゃん!!」
「ああ、こちらこそ」
先ほど俺が出していた手を、やっと握る妹。
しかし、突然思い出したように、
「あ!!」
「?」
「呼び方、お兄ちゃんでよかったですか?」
「は?」
「友達が、男の人は呼び方にこだわるって言ってたし。
 だから、お兄様とか、そういう呼び方のほうがいいのかなーって」
「……変でなければ、なんでもいいけど」
「ホントに?」
「うん」
「じゃあ……お兄ちゃんにします。お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん……」
……改めて言われると、恥ずかしいな……。
「……帰るか」
「うん、お兄ちゃん。……あっ!!」
「今度は何?」
「澪のことは、澪って呼んでください」
「わかった、澪ちゃんね」
「……み・お!!」
「え……?」
「『ちゃん』はいりません!!」
拘ってるのね……。
「あぁ、ゴメン。澪……澪ね」
「へへ、ありがとうございます」

454 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/09/18(月) 22:58:06 ID:NpCHzpCe
……ところで……いつまで手を握っているつもりですか……
「さ、帰りましょ?」
「あ、あの澪……?手を……」
「て……?手がどうかしました?」
「いや、何で握ったままなのかなって」
「……あぁ!!そうですよね!!」
慌てて俺の右手を放し、そして、すぐに左手を掴む。
「え?」
「そうですよね。右手と右手じゃ、手繋げないですよね」
「いや、そうじゃなくて」
「ふぇ……?」
一点の曇りもない純粋な目……。
そんな目でコッチを見るなよ……。
「いや、帰ろうか」
……負けた……。
「はい!!あ、ところで、お兄ちゃんの名前、なんていうんですか?」
新しく出来た妹……。
やっぱ天然……。
───────────────────────
続くのやら続かないのやら。
まぁ、妹にメイド服を着せたいと言う黒い欲望のため『だけ』に書き始めたんで、どうなることやら……。

どうせ俺なんか……。
もう……萌えも妹もないんだよ……。

455 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/09/19(火) 04:21:54 ID:is6F3IPB
>>447-454
グッジョブ!
もう何を書いても素晴らしいですね
続きを期待しております!!

456 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/09/22(金) 19:07:35 ID:ZkC5pbr/
「・・・なんだか以外だね」
「な、何が?」

やはり予期せぬタイミングで投げ掛けられる言葉に少し反応が遅れる俺。
そして、やはり気後れにはお構いなしで再び始まる会話のキャッチボール。

「お兄ちゃんがそんな風に言ってくれるなんて、思ってもみなかった」
「そうか?やっぱり変だったかな」
「ううん、そうじゃなくて・・・なんだか・・・それってプロポーズの言葉、みたいだから」
「・・・」
「・・・お兄ちゃん?」

この時、実はすでに巴の声には耳を貸してはいなかった、俺の耳は後方で轟くエンジンの音に集中している。
音を聞く限り減速する気は欠片も無いらしい、いや、恐らくこちらに気付いてさえもいないのだろう。
怪訝そうな顔の巴を前に頭でそう結論付ける前に体が先に動き出す。

「巴っ!!」
「え・・・」

壁になる様に巴に覆い被さる俺、数秒も待たない内にウォータースライダーの如き水飛沫が背中に襲い掛かる。
あっという間の出来事、車のエンジン音はロックだかラップだか分からない大音響と共に瞬く間に遠くになっていく。
しかし、この結果を見る限りやっぱり今日の運勢は大凶らしいな・・・
もはや雨も関係無い程に額から盛大に水を滴らせて巴の安全だけは確認しておく。

「ううっ、冷てぇ・・・巴はなんとか無事みたいだな、良かった良かった・・・巴?」
「・・・」

457 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/09/22(金) 19:10:00 ID:ZkC5pbr/
それは神様のほんの些細なイタズラ

見詰め合うにはあまりにも近過ぎる距離
思いがけずに俺が映り込む少し潤んだ透き通った瞳
雨露に濡れて艶を帯びた黒髪
色鮮やかな赤みを帯びた頬
触れれば弾けて消えそうなシャボン玉の様なその姿

脆さを湛えた表情を目の前に真赤な傘の下、青い水の星が呼吸を止める。
嘘みたいに綺麗なその姿は全てが霧に霞んで見える所為だろうか大袈裟にもこの世にある事さえ奇跡に思えた。
お互いの吐息が鼻先に触れ合うギリギリの距離でじっと見詰めたまま流れる憂いを秘めた沈黙。
そんな沈黙に堪えられなくなった俺はたどたどしくも時を解いていく。

「その・・・ごめん」
「・・・どうして謝るの?お兄ちゃんはボクを庇ってくれたのに」
「いや、そうなんだけどなんか罪悪感があって・・・」
「それより大丈夫?こんなに濡れて・・・」
「いいよ、ここまでくれば焼け石に水だ」
「あ・・・うん」

ハンカチでいそいそと俺の顔を拭き始める手を制して歩き出す距離を取ろうとする。
思えば不慮のアクシデントとはいえ俺が巴を壁際に押し倒した様な体勢、色んな意味でこのままでは危険だ。
今更になってまだまだこれからとやけに辺りに響く自己主張の強い雨。
それが俺には自分の中の時が重々しくもようやく動き出した証拠の様に思えた。

「巴、俺、先に帰るわ」
「先に、ってお兄ちゃん?」
「さっさと帰ってシャワーでも浴びるって事、巴はゆっくり帰ってくればいいから」

458 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/09/22(金) 23:23:45 ID:9t5HOImZ
>夢ノ又夢先生様
毎度ながら、さすがです!!
次回もお早めにお願いするっス!!



459 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/09/24(日) 20:19:08 ID:JlNcAtiX
>>456-457

そして保守

460 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/09/26(火) 05:44:50 ID:u+0f3xrL
あげ

461 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/09/26(火) 05:47:37 ID:zmQW6TcE
言うが早いか俺は傘を強引に手渡して走り出す体勢をとる、ここからならば家までは走ればそう時間は掛からない。
この蒸し暑さと靴底まで湿った状態、正直言って濡れたままでいるのはキツ過ぎる。

「じゃ、そういうコトで・・・うわっ!?」
「だ、ダメッ!!」

走り出す正にその瞬間、思い切り掴まれる右手、普段の巴からは考えられない程の声が辺りに響く。
驚いて後ろを振り返れば俺と同じように驚いた顔の当のご本人、呆気に取られた俺の先で雨は再び勢いを増して行く。

「・・・な、何が駄目なんだ?」
「・・・そんなのヤダよ・・・一人に、しないで・・・お願い」

今にも泣きそうな、不安で堪らないといった顔で巴が俺を見詰める。
降り止まぬ雨が呼び覚ましたその捨てられた子犬の様なあまりにも綺麗な泣き顔。
痛い程に掴まれた右手に俺は巴の微かな震えを感じていた。
・・・全く以って神様とはなんともイタズラ好きらしいな・・・
俺はそっと巴の手を解いて傘を二人の真ん中に持ち直す。

「俺が風邪ひいたら看病頼むぞ、まったく・・・」
「・・・ゴメンね、お兄ちゃん、でも・・・ホントに嫌だったから」
「はいはい、分かってるよ、いつでも俺は巴の側にいますので」
「ホントにゴメンね、それと・・・ありがとう」

月日がどれだけ経とうとも変わらない心からの信頼。
そういえば子供の頃はこんな巴が見たくて色々無茶な頼まれ事を引き受けてたんだっけか・・・

「・・・」
「・・・」

462 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/09/26(火) 05:48:19 ID:zmQW6TcE
長い夢現の時から少しだけ自分を取り戻したら今度は隣にある物言いたげな視線に気が付く俺。
何かを訴える少女の眼差し、しかもやや上目遣い、今日というごく平凡なハズの一日は何かスペシャルな日なのだろうか。

「・・・巴、とりあえず言いたい事があるなら言ってくれ、その視線は物凄く気になる」
「うん、言いたい事はあるけど・・・何から言えばいいのか、何を言えばいいのか、少し分からなくなって・・・」

真っ直ぐに視線が重なると先程とは正反対に困った様に目を逸らす巴。
なかなかに難儀な状況の連続に図らずも小さな溜め息が漏れ出てしまう。
取り合えず会話のボールはこちらの手にあるので俺からなるべく簡潔に投げ掛ける。

「じゃ、最初に思いついた事を言えばいいんじゃないか?」
「・・・ホントはね、一人になるのが嫌だったんじゃなかったんだ」
「へっ!?」
「一人が嫌だったんじゃない、お兄ちゃんと離れてしまうのが・・・イヤだった」
「ま、まぁ、あのまま走り去っていくとホントにどこぞの映画のワンシーンみたいではあった・・・かな?」

確かにそんな感じではあったと、ふと数分前を振り返る。
まぁ、主演女優はともかく男の方が相当な大根役者ではあったけれど・・・
予期せず二人の間に流れ出すぎこちない空気、そんな雰囲気に気圧されつつも俺は巴の歩調に併せて歩く。

「ふふっ、お兄ちゃんがその後、戻って来て抱き締めてくれてたらそうだったかもね」
「ほうほう、俺と一緒に仲良く風邪が引きたかったとでも?」
「冗談だよ、さ、ホントに風邪を引く前に帰らなくちゃね」

少しだけ明るさを取り戻したいつもの囁くような澄んだ声が耳に残る、ほんの少し歩みが早くなる。
神様のイタズラが目覚めさせた露帯びた時間と厚い雲の向こうにある陽だまりの空白。
雨の中で変わり行く季節の色と香りが密やかな夏の終わりを想わせる。

「・・・でも・・・お兄ちゃんならそれでもよかったのに・・・ボクは・・・抱き締めて・・・欲しいのに・・・」

雨音は依然、弱くなる兆しを見せない。
巴の溜め息の様な呟きは二人の隙間で傘から流れ落ちる滴と共に地面に吸い込まれていった。

463 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/09/27(水) 09:20:16 ID:EkrWQTIe
>>遊星さん
乙です!相変わらずいいです!
天然メイドですね。ドジッ娘要素も期待してしまいますw
メイド服を着せたいと思うのは自然の摂理並に仕方ないですよw

>>夢ノ又夢さん
乙です!GJです!度ツボですっ!
これはすばるには耐えられません(*´Д`)

464 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/09/27(水) 21:31:27 ID:sMkZAm2X
結局、今回も大きく遅れての投下、ホントすいません。
そんな訳で続けて投下。

>遊星様
天然さんまで書けるとは引き出しの多さに感服です。
しかもメイドさん、実に二度オイシイw
続きを期待してますよ、後、葵ちゃんも楽しみにしています。

>すばるさん
いつも御感想ありがとうございます。
もっと萌えられるssを書ければいいんですけどねぇ。
精進が足りない様です・・・今の所、一番足りないのは時間ですが。

465 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/09/27(水) 21:36:04 ID:sMkZAm2X
ベッドの側の時計が静かに時を刻む夜。机の上で不規則に音を立てるシャーペンが耳鳴りを残す。
時計を見れば十二時過ぎ、草木も眠る時間だ。そんな時間を経ても健気にテスト勉強に勤しむ俺。
・・・いや、当たり前なんだよな。普段、朝型な俺には酷なんだけど。

「そういや、普段から夜型な方はどうしてるかな」

両腕を天へ向けて大きく伸ばし勢いで立ち上がる。少し立眩みを起こすが気にはしない。
部屋を出れば視界に入る開け放たれたドアから差し込む蛍光灯の明かり。妹さんも健闘中の御様子だ。
巴に差し入れをするべく忍び足でキッチンに向かう。コーヒーでも持っていってやろう。
手早く支度を済ませてコーヒー片手に開いたままのドアをノックする。

「よ、頑張ってるな」
「・・・お兄ちゃんもご苦労様」

机に向けられていた真剣な表情が俺を見た途端に穏やかな微笑みに変わる。
相変わらずの女神の微笑、少しだけ心躍ってしまう自分がいて妙に照れてしまう。

「巴さんや、調子はどうですかな?」
「ふふっ、まずまずだよ、お兄ちゃんは?」
「俺も・・・まずまず」

コーヒーを受け取りおどけた俺に余裕を返す巴。言うまでも無く巴のまずまずとは俺のそれとはまるでレベルが違う。
全教科で死角の無い巴に穴だらけの俺。事、勉学に関しては悲しいかな俺に立つ瀬は無い。
・・・今日はもう少し頑張るか

466 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/09/27(水) 21:37:30 ID:sMkZAm2X
「まぁ、キリのいい所で寝るんだぞ、そうじゃなくても巴は朝が弱いんだからな・・・じゃあ退散しますかね」
「あ・・・お兄ちゃん、待って」
「ん、なんだ?」
「えっと・・・その・・・」

部屋から出ようとした時、唐突に呼び止められてクルリと顔だけ振り返る。視線の先には妙に焦り気味な巴の姿。
次の言葉が来るの黙って待っていると巴の困惑は更に加速していく。
この様子だけ見ていると学校やご近所で才色兼備と称えられる少女と同一人物とは到底思えない。
こっちからきっかけをやらんと駄目かな、これは・・・

「・・・あの・・・」
「何をテンパっとるんだお前は、何か頼みでもあるんじゃないのか、遠慮せずに言ってみな?」
「あ、と・・・うん、少し勉強で解らない所があったから・・・お兄ちゃんに教えてもらえないかな、って」
「・・・」
「・・・お兄ちゃん?」
「あのなぁ、巴に解らない問題が俺に解る訳無いだろ、もっと俺を見縊れ!!」

自分で言っておいて兄の威厳もへったくれもない言葉が何より自分に響く。ぐっと突き上げられた握り拳が物凄く虚しい。
我ながら胸を張って言う事じゃないよな、実際。
・・・やっぱり今日は徹夜でもするか
黙って俯いてしまう巴に不安になりつつもその場に立ち尽くすしか成す術のない俺。さすがに呆れられたのか深い溜め息すら聞こえてこない。

「巴・・・さん?あの・・・やっぱり怒って」
「お兄ちゃんに教えて貰えたらって思ったんだけど、お兄ちゃんだって勉強があるよね・・・ワガママ言ってゴメン」
「うっ!?」

467 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/09/27(水) 23:51:32 ID:Fl9FaxpS
「寒……」
季節が変わるのはいつも突然だ。
昨日まで過ごしやすくて喜んでいたら、今日は寒い……。
あまりの急な気温の変化に、私の体も寝具も対応し切れなかった。
「お布団か何か……探してこようかな……」
このままではいけないと思い、ベッドから起き上がり部屋を後にする。
外の空気は部屋の中よりも冷たく、肌寒さに体が少し震えている。
寝ている家族を起こさないように、静かに歩きだすと、隣の部屋から明かりが洩れているのに気付く。
「まだ起きてるんだ……」
私は、少し助けてもらおうと思い、その部屋をノックする。
コンコン。
乾いた音が響く。
そして、すぐに
「誰?」
「私、葵」
「葵か。開いてるよ」
という聞きなれた声。
「うん。入るね」
一言断わって、部屋の中に入る。
部屋の中では、お兄ちゃんがベッドに寝転がってゲームをしている。
「まだ起きてたんだ。珍しいね?」
「え?」
意味が分からないという風に聞き返すお兄ちゃん
「ほら、もうこんな時間」
「うそっ!?もうこんな時間!?」
時計を見て、お兄ちゃんが慌てだす。
「あははっ、熱中しちゃったんだね?」
「みたいだな……」
少しバツが悪そうなお兄ちゃん。
必要以上にしっかり者のお兄ちゃんにしては珍しい。

468 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/09/27(水) 23:52:05 ID:Fl9FaxpS
「……で、葵はどうしたんだ?」
「私?ちょっと寒くて眠れなくて……」
「確かにちょっと涼しすぎるかもな」
「うん。それで、毛布を探してるんだけど、お兄ちゃん知ってる?」
「……毛布か……ゴメン、俺も知らないな……」
「そっか」
「悪いな……」
本当に申し訳なさそうなお兄ちゃん……。
「お兄ちゃんは悪くないよー」
「そうか……」
「うん。でも、そのかわり……一つだけお願い、聞いて欲しいな?」
「お願い?まぁ、いいけど」
「寒くないように……一緒の布団で寝て欲しいなー、なんて……」
きゃー!!言っちゃった!!
あまりの恥ずかしさに、目をそらす。
肝心のお兄ちゃんは意外にもあっさりと……。
「あぁ、いいよ」
「いいの!?」
「まぁ、仕方ないよ。俺も寒いのイヤだしね」
ピュアだ……この人……全然「寝る」の意味に誤解が無いよ……。
「ホントに?」
「葵が言ったんじゃないか」
「そうだけどぉ……」
もっと焦るかと思った……っていうのは言っちゃいけないことだよね……。
そ れ で も !!結果オーライだよねっ!!
……鈍感さんも使いよう、ってことなのかなぁ。

469 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/09/27(水) 23:52:37 ID:Fl9FaxpS
「まぁ、いいじゃない。何か兄妹っぽいよね」
「……きょう……だい……?」
「うん。兄として、頼られるのって悪くないね」
前言撤回……。
ただの兄妹なのはわかってるけど……そういう現実をつきつけなくてもいいのに……。
「どうかした?」
「別に……」
「あぁ、そう。じゃあ、寝ようか」
「うん……」
お兄ちゃんのあとに続いて、お兄ちゃんのベッドの中へ。
……全然ワクワクもドキドキもないのは何でかな……。
背中合わせの二人。
こんなに近くにいるはずなのに……。
「あのさ……」
暗がりの中で、申し訳なさそうなお兄ちゃんの声。
「何……?」
「いや……何か、暗いって言うか……悲しそうだからさ」
「……分かっちゃうか……」
そうか……きっと……この人は……。
「俺が出来ることなんて葵に比べたら、ホントに何も無いけどさ……話聞くくらいなら出来るよ?」
「ううん……いいよ……」
「いいのか?」

470 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/09/27(水) 23:53:18 ID:Fl9FaxpS
「うん。葵は、その言葉が聴けただけでも幸せっ」
「はぁ……」
「あとね……お兄ちゃんは、魔法使いを自称するといいよ」
「……?」
「きっと、私はその魔法にかかったんだ」
「話が読めないんだが……どういうこと?」
「ヒミツ。おやすみ」
鈍感なお兄ちゃんへの愛のメッセージ。
いつか……謎が解ける日が来るといいんだけど。
「おぅ、おやすみ……」
お兄ちゃんは優しすぎるから、私はつい空回りしてしまう。
素直すぎるから、私はつい深読みしてしまう。
……それでもいいよ。
それでも、いつだってお兄ちゃんは私を受け止めてくれた。
だから、私も……これまで通り。
「ねぇ……お兄ちゃん」
「ん……?」
「お兄ちゃんって、あったかいね」
「そんなに離れてるのにか?もっとこっち来たらいいのに。落ちるよ?」
「え……?」
「葵……」
「えっと……じゃ、じゃあ……いくね?」
わ、わぁ……ドキドキしてきた……。
……これじゃ……今夜は……眠れないよ……。
───────────────────────
……アレ、葵がぶん殴ってないぞ……。

ゴメンなさい。
夢ノ又夢先生の神作品のあとにこんな最低なデザートをつけてしまいました。
先生の巴ちゃんみたいな可愛い妹を書きたかったのに、何故兄萌え系策略暴力妹に……。

471 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/09/28(木) 09:08:01 ID:gfqFfdgq
久しぶりにこのスレひらいてみたら朝から癒された!
グッジョブ

472 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/09/29(金) 22:50:57 ID:Z6z/ToXT
……何故か手を繋いだまま、俺の家の前まで来てしまった。
片手には澪で、片手には傘。
歩きにくいことこの上なし。
「……あのぉー」
「ん?」
「ここ、何処ですか?」
「ん、あぁ、俺の家だよ」
「ということは、もうすぐ澪の家になる家ですね?」
「……」
間違ってないけど……何か違う……。
「澪の家に『も』なるな」
「はい。澪の家ですよね」
些細な反撃は見事に失敗……気付きやしねぇ……。
「さ、入って。澪のお母さんも、そのうち来ると思うから」
「はい」
玄関のドアを押し、二人で家の中に入る。
すると、
「あら、おかえりなさい」
俺たちを出迎えたのは、年上の女性。
そう。それはつまり……
「お、お母さん。もう来てたんだー」
「おかえりなさい、澪」
「お母さんお母さん!!見て見て!!新しいお兄ちゃん!!」
「ホント。よかったわね?」
「うん!!」
俺を指差しはしゃぐ澪と、優しく微笑む義母……俺は物扱いかよ……。
機関銃のように話しまくる澪とそれに相槌を打つ義母についていけず、俺は虚空を見る。

473 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/09/29(金) 22:51:31 ID:Z6z/ToXT
とりあえず俺に出来ることは……。
「夕飯作らなきゃ……」
「お兄ちゃん、料理できるの?」
「まぁ、親父が絶望的に料理下手だからね……俺が作らないと」
「カッコいー!!お母さんお母さん、お兄ちゃんカッコいいよ!!」
「そうね。カッコいいわね」
「うん!!」
……この母にしてこの娘あり……か。
気を確かに持てよ、俺……。
「まぁ、澪もお義母さんもくつろいでてくださいよ」
「澪……あらら、もう名前で呼び合うような仲なのね?」
「うん、もう名前で呼び合うような仲なの!!」
……ついていけない……。
───────────────────────
カチャカチャと陶器の触れ合う音が澪と二人きりのキッチンに響く。
「悪いね。手伝ってもらって」
「いいえ、美味しいパスタのお礼です」
目を細めて、大皿を拭いている澪。
服を着替えたからだろうか……今まで気付かなかった二つの山が柔らかそうに揺れる揺れる……。
って……変態か俺は……。
「それに、澪ももう家族なんですよ?」
「まぁ、そういってもらえると嬉しいよ」
「澪も嬉しいですよ」
結構いい感じの会話なのだが……俺は澪が皿を割らないか心配で……。

474 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/09/29(金) 22:52:08 ID:Z6z/ToXT
「あ……そうそう、お兄ちゃん」
何かを思い出したように、澪が話を切り出す。
「何?」
「一つ、言っておきたいことがあるの」
「あぁ、何?」
持っていたグラスをグラス立ての上に置く澪。
そして、
「一目惚れです」
「え……?」
「澪ね」
「ああ」
「お兄ちゃんのこと好きになっちゃったみたい♥」
満面の笑顔。
しかし、呆気なく言うなぁ……。
「はっ?」
「お兄ちゃんはどう?澪に一目惚れした?」
……答えにくいな……。
だが、嘘をつくべきことじゃない気がする。
「いや、残念ながら……」
「そっかー。あ、でもでも、澪はそれでいいんだよ」
「はぁ……」
天然恐るべし……。
さっきから俺、まともに話せてないよ……。

475 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/09/29(金) 22:53:40 ID:Z6z/ToXT
澪は、胸の前で指をモジモジさせて、
「えっと、澪は好きな人から告白されたいのでぇ……」
そして俺の目をジッと見て、
「お兄ちゃんに澪のことを好きになってもらうために、今日からお兄ちゃんを誘惑しちゃいます♥」
「誘惑……?」
「でもでも、えっちなのは無しですよ?」
「あ、そう……」
これが残念そうな態度に見えたのだろうか、澪は少し焦った様子で、
「それならそれなら!!ちょっっっっとだけなら、ね?」
「いや、あの……澪……?」
深い意味は無かった。
俺が少し心配して、澪の肩に手を置くと
「やーん♥もしかして、もう告白ですかー♥」
少し恥ずかしそうに、そしてかなり嬉しそうに、頬に手を当てる澪。
「いや……違うけど」
「そうですよねー。じゃあ、そういうことだから、よろしくお願いします♪」
「はぁ……」
「じゃあ、片付けようよ、お兄ちゃん?」
「あ、うん……」
相変わらず色々なことを話してくれる澪。
俺はもう何が何だか分からぬまま。
相槌も適当に、皿を黙々と洗っていた。
───────────────────────
澪のいきなりの巨乳設定は天からの啓示。
しかし、天然妹……意外と良いなぁ……。
で……次は遊星お待ちかね、妹メイド服……が出来るかどうか。

夢ノ又夢先生の次の作品を強く期待する。

476 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/10/01(日) 22:24:19 ID:T7gSMZxW
天然(・∀・)イイ!

477 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/10/03(火) 17:05:39 ID:fXAlSx5j
天然っつーか
頭がかわいそうな子になってね?W

478 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/10/03(火) 19:05:18 ID:2uA0drNP
こんな妹なら惚れる

479 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/10/05(木) 22:33:35 ID:LGJxTGww
「・・・お兄ちゃんも勉強、頑張ってね」

強烈に後ろ髪を引く寂しそうな巴の無理矢理作った笑顔、あまりに予想外な返答に今度はこちらがうろたえまくる。
ああ、苦手なんだって・・・その捨てられた子犬の如き目は。
揺らめく瞳での上目遣いはあまりにも反則過ぎる、こうなってはこちらに否定権は存在しない。
なんというか、これも我が家のお決まりのパターンではある。
・・・しかし、弱いなぁ、俺よ。

「・・・あんまり力にはなれないとは思うが・・・やってみよう」
「ありがとう、お兄ちゃんならきっとそう言ってくれるって・・・ボクは信じてた」
「はいはい、で、どれだ?」
「ここの所なんだけど・・・」

真冬から打って変わって春の輝きを取り戻した巴の隣に座り、問題に目を通す。やはり巴が迷うだけあってサッパリ解らない。
というかこんな問題、俺は去年やったっけか?
設問が問い掛ける答えを求めて俺はあれこれ頭を悩ませる。
本気で解らない、これは困った。

「う〜ん・・・これは難しい」
「・・・お兄ちゃん、最近・・・話してないよね」
「う〜む・・・あたた、耳を引っ張るな!!痛いってば」
「・・・ボクの話を聞いてよ、もうっ」

いつの間にやら真横にあった巴の不満気な顔に耳を擦りながら恨みがましい視線を投げやる。
それにしてもいつもながらの七変化。
膨れっ面になると普段の大人びて見える巴より幾分子供っぽく見えるから面白いものだ。

480 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/10/05(木) 22:35:05 ID:LGJxTGww
「で、答えでも解ったのか?」
「そうじゃなくて・・・最近、ボクたち余り話をしてないよね、って」
「そうか?テスト前とはいえ少なくても毎日朝晩顔を合わしてるだろ」
「話は余りしてないよ、それに顔を見るのだってホントに朝晩くらいで・・・学校でもほとんど会わないし」
「朝晩会ってれば充分だと思うが、何か特別な話がある訳でもないし」
「・・・ボクは充分じゃない・・・足りない・・・もっとお兄ちゃんとの時間が欲しい」
「ん?なんだって?」
「・・・なんでもないよ、やっぱり・・・待ってるだけじゃダメだよね」
「・・・な、何?藪から棒な視線を送って」

何やら独り言を呟いてジッと俺の顔を覗き込んでくる。とりあえず何かが言いたい事は分かるんだが・・・
澄んだ瞳に見つめられ続けると心の奥まで見透かされそうで気恥ずかしさがこみ上げる。
そんな俺を知ってか知らずか巴は努めて明るく話を切り出す。

「お兄ちゃん、テスト明けの日曜日に遊びに行こうよ、久しぶりに二人で」
「あ〜悪い、先約が入ってるんだ」
「あ・・・そうなんだ・・・」

あっさり出た返事に露骨に声のトーンが沈む巴、本当に我が妹は分かり易い。
話を無かった事にでもするかの様に二人して机に向き直る。この問題を解かない限り俺も自分の勉強に戻れない。

「うむむむ・・・全く解らん」
「・・・お兄ちゃん、聞いてもいいかな?」
「ん?何を?」
「先約って、何?」

忙しなくシャーペンを動かして巴が不意に口を開く、お互い目線は机に向かったままで。

481 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/10/06(金) 06:57:44 ID:0sRwYzOm
続きが気になるぜ

482 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/10/07(土) 07:53:26 ID:fLeLpbCw
ちょ……なんて中途半端な……続きが気になる

483 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/10/07(土) 10:55:18 ID:2qGvuh1M
【社会】妹を騙った「わたしわたし詐欺」発生・・・容疑者逮捕 - 警視庁
http://news19.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1160139215/

484 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/10/08(日) 22:14:15 ID:gbCW+2p8
「ふぅ……」
放課後の教室に、自分のため息だけが響く。
いつも賑やかな教室は、誰もいないと非常に寂しいものだ。
急かされるように、荷物をまとめ、同じように誰もいない廊下を歩いていく。
賑やかに演奏しているのは、ブラスバンド部だろうか。
新しい曲なのだろうか。まだまだ未熟な音が、やかましく聞こえる。
「ん?」
そんな音の中に紛れて、かすかだが、ピアノの音が聞こえた。
ブラスバンド部ではない。
その音に引き寄せられるように、フラフラと行き先を変え、音楽室の前へと。
開け放たれたドアの向こうで、ピアノを弾いている少女の背中。
顔は見えないが、確かに見覚えがある。
だが、声をかけるのは勿体無い。
このまま、曲が終わるまで待つ。
最後の盛り上がりを迎え、美しい旋律はあっと言う間に終わってしまった。
パチパチパチ……。
間抜けな拍手を鳴らしながら、ピアノの方へと歩いていく。
少女は大きく肩を震わせ、振り返る。
「葵はピアノも上手なんだな」
「お、お兄ちゃんっ!?」
「あ……ゴメン、驚かすつもりは無かったんだけど」
「ううん、いいよ」
楽譜を閉じ、立ち上がる葵。そして、大きく伸びをする。

485 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/10/08(日) 22:14:48 ID:gbCW+2p8
「でも、どうしたんだ?こんなトコでピアノなんて」
「別に。芸術の秋……でしょ?」
「芸術ねぇ……」
……そういうのがどうしても理解できない人間にとっては、なんか胡散臭い言葉ではあるのだが……。
「なんてね。合唱の伴奏の練習だよ」
「ほぅ、葵が伴奏やるのか」
「うん、ピアノ弾けるの私しか居なくて……っていっても、私もかなりブランクあるんだけど……」
「へぇ……でも、ピアノ弾けるなんてカッコいいな?」
「そう……?そんなこと……無いよ……えへへ……」
褒められてるはずの葵が、妙に恥ずかしがっている。
ブランクがあるというのは、どうやら本当らしい……。
「そっか。じゃ、邪魔しちゃ悪いから、俺は帰るよ」
「えっ!?」
「どうした?」
「えっと……その……だから……」
大きな声を出したかと思ったら、何だか急に言葉に詰まる葵。
「……?」
「ピアノ、聴いてて欲しいんだけど……」
「俺が?」
「うん……」
「まぁ、いいけど……音楽とか、俺全然わかんないよ?」
「いいよ。私は、お兄ちゃんがいれば……」
「はは、まぁ、俺がいれば遅くなっても少しは安心だしな」
……一瞬の間。

486 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/10/08(日) 22:15:20 ID:gbCW+2p8
「まぁ……こんなものか……」
「え……?」
「ううん……じゃ、始めるね」
「あぁ……」
俺の返事に答えるように、目を閉じ大きく息を吸い込む葵。
葵の細くて長い指が、舞うように、鍵盤の上を駆ける。
先ほどとは違う。というよりも、先ほど以上の美しい旋律が、直接頭の中に響くように聞こえた。
それに、葵の楽しそうな顔が、なによりも目を惹きつける。
そのまま時が止まってしまったかのような錯覚。
ただのピアノの音が、葵の声にすら感じられる不思議……。
もしかして俺は……。
「お兄ちゃん……お兄ちゃん……!!」
葵の声……。
「葵……?」
「どうしたの、ボーっとしちゃって……?」
「え?……あぁ、ゴメン。あんまり上手かったからさ」
「あはは。お世辞なんて、お兄ちゃんらしくないなぁ」
あの時とは違う葵の屈託の無い笑顔。
……ん?あの時……?
「俺……何考えてたんだっけ……」
「うーん……さすがにそれは分からないけど……」
と言いながらも、一応考えてくれる素振りは見せる葵。
「何か大事なこと考えてた気がするんだけどな……」
「あはは。わかるよ、その気持ち。でも思い出すと意外と呆気ないんだよねぇ」
「まぁ……そうかもな……」
……やっぱり思い出せない。
確かに葵の言うとおり、どうでも良いことだったかもしれない。そんな気がしてきた。

487 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/10/08(日) 22:15:55 ID:gbCW+2p8
「ん?私の顔、何か付いてる?」
「え?」
「いや、ジッと私の顔見てたから……」
「あぁ……ゴメン……」
……無意識って恐ろしい……。
「ううん、いいのっ!」
「……やっぱ、俺何か変だ……帰るわ」
「あ、じゃあ私も帰るー」
「いいのか、練習は?」
「うん、一時間もやれば十分だよ」
……そんなに時間がたってたのか……。
「じゃあ、帰ろうか?」
「うん」
ピアノの蓋を閉じて、俺の隣に並ぶ葵。
「……」
「……?どうしたの?」
葵が俺の顔を覗きこむ。
その何気ない表情に俺は……
「やっぱ変だぁぁぁぁ!!」
「……え!?ちょっとお兄ちゃん!!待ってよー!!」

……後で思い返して恥ずかしい出来事がまた一つ。
そのきっかけになった葵への感情は、今となっては、もはや誰にも分からない……。
───────────────────────

488 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/10/11(水) 03:10:15 ID:4bp8xZb3
>>484-487
遊星さん乙
そして続きカモン

489 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/10/11(水) 18:37:08 ID:MzYzSw7y
ひさびさの葵いいねぇ。

490 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/10/14(土) 22:16:09 ID:6BGloho2
遊星さん
夢ノ又夢さん
続き待ってます。

491 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/10/15(日) 04:29:23 ID:rUPTSb0e
続き期待待ち

492 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/10/15(日) 21:30:57 ID:pih7j5Ps
「クラスの連中とボーリング、テスト明けにスカッとストレス解消という訳」
「・・・男友達と?」
「男も女も、だな」
「・・・そう・・・」

興味無しとでも言いたげな気の無い返事、それきりお互い言葉を交わす事もなく流れる沈黙の時間。
先程まで一人でいた時と同じ静寂が辺りを包み無機質な音だけが隣から聞こえる。
こうなってくるといよいよ以って弱いのは俺の方。
集中力の途切れない巴とは対照的に問題とにらめっこすればする程、俺の神経はヤスリの如く磨り減っていく。

「・・・くあっ、限界だ、巴、少し休憩を入れよう」
「疲れちゃったみたいだね、じゃ、そうしよっか」

両手を揚げて降参のポーズ、そのまま椅子を支えに後ろに反り返る俺。
姿勢の崩れない巴を横に窓に映る逆さまの月がぼんやりと目に入り、意識しないうちに深い溜め息が零れ落ちた。
なんというか、はっきり言ってこれはもう完敗。

「はぁ・・・ん?なんだこの写真?」
「何って、お兄ちゃん覚えてないの?」
「いや、覚えているような覚えていないような・・・」

今まで気づかなかったのも可笑しな話ではあるが机の上に整然と並べられた中の一つの写真に目が入る。
写真に写る見覚えのある二人の子供、というか俺と巴。
満面の笑みでピースをする俺と少し恥ずかしそうに俺の腕に引っ付く巴が映っている。

493 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/10/15(日) 21:33:06 ID:pih7j5Ps
「これはボクにとって特別な写真・・・お兄ちゃん、この頃のボクの将来の夢ってなんだったか覚えてる?」
「夢ね・・・なんだっけか?確か妙な事を言い出した記憶があるんだが・・・」
「ボクの夢はお兄ちゃんになる事、お兄ちゃんみたいじゃなくてお兄ちゃんそのものに」
「ああ!!完璧思い出した!!いきなり俺になりたいとか訳の分からない話をしてきたんだよな」

頭の上に浮かび上がる思い出に腕組みして懐かしむ、そんな俺を見て楽しそうに微笑む巴。
無邪気な頃の二人の声が耳の奥遠くに鳴り響いて部屋の空気がだんだんと明るくなっていく。

「あの時は驚いたよ、いきなり真剣な顔してどうしたらボクはお兄ちゃんになれる?だもんな」
「子供心に色々考えた結果だったんだよ・・・どうすればずっとお兄ちゃんといられるだろうって」
「俺と一緒に?」
「お兄ちゃんと一緒だとすごく楽しくて、一緒なら辛いことも寂しいこともなんでもなんとかなるって思えた」
「そ、そう?・・・まぁ、なんか年中引っ付かれてた気はするな」
「だから怖かったんだよ・・・もしお兄ちゃんを失ってしまったら・・・そう考えるとすごく怖かった」
「それでいっそ自分が俺になってしまおう、と」
「うん、ま、そんな事は当然出来なくてガッカリしちゃったんだけどね・・・ふふっ」

子供だった自分の幼さが今となっては余程可笑しかったのか巴に屈託の無い笑いが零れる。
いや待てよ・・・そいうや、巴が自分の事をワタシではなくボクと言い出したのも確かこの頃だった気が・・・

「あははっ、夢は儚く破れた訳か、残念だったな」
「ううん、そうでもないよ、お陰で気が付いたんだ・・・色々ね」
「色々、ねぇ・・・」
「そ、色々だよ」

目を細めて見詰める俺の隣で巴は写真を手に取りちょうど二人の間に置き換える。

494 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/10/15(日) 21:46:55 ID:pih7j5Ps
話はもう少し続きます、本当は一度に投下したいのですが続きの推敲が
まだ足りませんので忘れられない程度にちまちまといきます。
>481、482様
それが狙いと言いたい所ですが単純に上で述べた通りなので気長にお待
ち頂けると幸いです、も少し萌えられる話に出来る様、努力してます。
>遊星様
澪ちゃんカワイイですね、やはり天然と巨乳はセットでしょうw
妹メイド服を期待して待ってます。
葵ちゃんはいつも通りイイ!!
この二人のこそばゆい距離感が未だ出せずにいますよ、ホントに。
こういう萌える話がいつか書けたらなぁ・・・

495 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/10/15(日) 22:48:16 ID:rUPTSb0e
>>492-494
夢ノ又夢さん投下乙です
やっぱり続きがきになる
お体に気をつけ無理なさらない程度に執筆して投下してくれれば幸いです。

496 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/10/20(金) 21:42:23 ID:Y8zdY8zG
僅かな光を放つ写真とその下にある複雑な問題、どちらもそこにあるハズの隠された答えは見えてこない。
でも、かわりに見えてくる物はある、といっても単純な事が見えてなかっただけなんだが。

「あの・・・巴さん、たった今気が付いたんだけど・・・この問題集、全国統一模試とか書いてあるんだけど」
「うん、書いてあるね」
「・・・ひょっとして俺、ハメられた?」
「そうとも言えるかな」

臆面無くあっさり言い放つ巴になんだか清々しさを感じるも当然、納得は出来ない俺。
ワザとらしく大きな咳を吐いて改めて巴に向き直る。

「・・・で、理由を聞こうじゃないか」
「お兄ちゃんと話しがしたかったから・・・こうでもしないとボクに時間をくれなかったでしょ」
「そんな事は・・・あった・・・かな?」
「さっきも言ったけど最近はあまり顔を合わせる事もないし、なんだかボクに冷たいし・・・」
「それはないと思うけどな、別にいつも通り接してるだろ」
「・・・そういう言い方が冷たいの」

珍しく拗ねて見せる巴、プイとそっぽを向いて頬を少し膨らませる。
巴は横顔になると睫毛の長さや鼻の高さが本当に際立つ、美術品顔負けの脆さを兼ねた美しさが真横にある事実。
夜の闇の中、小さな灯りに照らし出された肌が透き通る様な白さをも際立たせる。
そんな巴を前に困ってしまって頭を掻く俺、しかし、拗ねても美人とは可愛いんだか綺麗なんだかうちの妹は。

「なんだか・・・お兄ちゃんは必要以上にボクから距離をとってるみたいだよ・・・」
「・・・じゃ、距離を縮めるか・・・」
「・・・どうやって?」

497 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/10/20(金) 21:44:25 ID:Y8zdY8zG
こちらが追及していた筈がほんの二言三言であっさり立場を逆転されている俺。
顔を向けないまま俺の答えをツンと澄ました顔で待つ巴、何故かそれが期待を含んでいると俺には分かる。

「テスト明けの土曜日にどこか遊びに行くってのはどうだ?」
「あ・・・」
「まぁ、それだとテストが終わってそのまま直行になるから無理にとは・・・」
「行くよ!!もちろん!!」
「いっ!?」

獲物を見つけた豹が飛び掛らんとばかりに俺の両手をしっかりと握る巴。
なんとも言えない数秒間の妙な沈黙。
その変り身の早さに目が点になる俺を見て今度は巴が真っ赤になって変な咳を払う。
微妙に緩んだままの頬でそういう事をされると余計に変なんだが、なんか可愛い・・・とも言えるかな?

「・・・えっと、その・・・折角、お兄ちゃんが誘ってくれたんだし付き合うよ」
「そっか、まぁ、ありがとうと言っておこう」
「じゃあ、どこに行こうか?ボクはお兄ちゃんとならどこだって・・・」
「はいはい、それはまた明日にな、今日はここまでにして寝ること」

澄まし顔はどこへやら蕩けきった笑顔の巴を制して席を立つ、このまま話し込んでいたら夜が明けてしまう。
本当はもう少し巴の笑顔を見ていたい気もするが土曜の午後には今以上に御機嫌な巴を隣で見る事が出来る。
それはきっと女神の笑顔、誰でも自然とつられてしまう様なとびきりの笑顔。
心の中で思索を巡らせながら振り返る事無く巴の部屋から扉を抜ける、と不意に背後から呼び掛けられる。

「お兄ちゃん、待って」
「ん?まだ何か用があるのか?」
「さっきの話・・・ほら昔のボクの夢だけど・・・その後にお兄ちゃんに話した夢って・・・覚えてる?」
「ええっと、後?・・・後なんてあったっけか?」

498 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/10/20(金) 21:45:11 ID:Y8zdY8zG
予想だにしていなかった問いかけに頭が空になる俺。
巴は立ち往生する俺に何故か少しだけ頬を赤らめると意地の悪い、それでいて上品な笑みを返す。
・・・なんなんだ、一体?

「ちょっと待て、なんだその笑顔は?」
「ふふっ、知らないよ・・・ただ、残念だなって」
「残念?何が?」
「そっちの夢はボクはまだ諦めてないってコト・・・おやすみ、お兄ちゃん」
「あ、ああ・・・」

強い希望の光を宿した巴の瞳、それ以上物言わぬ静かな迫力に気圧される様に部屋を後にする。
未だに疑問の拭い去れない俺をそのままに高い音を立てて閉められる扉。
巴の熱を帯びた意味有り気な視線を未だ背中に感じながら俺は自室に戻る。

「・・・なんか納得がいかん、夢・・・なんだっけか・・・あ」

唐突に頭に響く天の啓示、ヒントは巴の机に飾られたあの写真にあった・・・気がする。
・・・いや、しかし、流石にそれは・・・なぁ・・・

「・・・さっさと俺も寝よう・・・寝れるかは分からんけど」

途切れ途切れ浮かび上がるキーワード。
子供の頃の俺、しっかりと俺の腕に張り付いた巴の左手の薬指に輝くオモチャの指輪。
あどけない女神の微笑が頭から離れない俺はやはり眠れぬままやたら目に染みる朝を迎えるのだった。

499 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/10/20(金) 23:10:00 ID:wFwVhHqh
「おおおおおおお、お兄ちゃん!!」
窓の向こう。
間抜けな顔で、隣の家の娘さんが叫んでいる。
「どうしたよ、梨那?」
「ちょっと頼みたいことがあるの!!だから、開けて!!」
「あ、あぁ……」
いつもは一度ぐらいは断わるところだが、真剣そのものの梨那の顔に何もいえなくなってしまった。
黙って窓を開ける俺。
梨那は、待ちきれないとばかりに飛び込んできて、俺の部屋の棚の前に。
「……何よ?」
「CDを貸して欲しいの!!」
「CD?何の?」
「日本語の歌なら、何でも良いよ」
「その棚に入ってる。気に入ったの勝手に持ってけよ」
「ぐっじょぶ!!ありがとう!!」
慌てて、CDの棚を漁りだす梨那。
……しかし、これぐらいは予想しておくべきだった……。
「にゃにゃにゃっ!!落ちるぅっ!!」
見事に床にぶちまけられる俺のCDたち……
「あぁ……。気をつけろよ……」
俺の大人の対応度:80。
 アナタの対応はかなり大人です。
 ただ、微妙に表情が歪んでいるのでマイナス。笑顔を心がけて!

500 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/10/20(金) 23:11:02 ID:wFwVhHqh
「ゴメンなさいぃ……あ、これ、いいね!!コレも借りてこーっと」
……反省もほどほどに、CD選びに余念の無い梨那。
その手には、俺のCDがごっそり……。
「でも、何で急にCDなんか?」
「……断われなかったの……」
しょんぼりと答える梨那。
「何が?」
「えっと……友達が文化祭でバンドを組むみたいで……」
「へぇ……。で?」
「梨那が……作詞を……」
そういや、そういう設定もあったね……。
「でも、曲に詩をつけるなんてやったことないから、ちょっと参考に……」
「なるほど。しかし、お前、そういうのは全部断わってきたじゃないか」
「あのコにあんな顔されたら、梨那だって断われないよ……」
「誰?」
「天童葵ちゃん……」
天童といえば、学校一の美少女とまで噂される女の子じゃないか……。
「知り合いだったのか?」
「ううん……でも、唯奈ちゃんとはお友達みたいで……」
「ほぅ……」
……唯奈ってのは学校で話題の美人双子姉妹の姉。
梨那とは仲のよい先輩後輩の間柄。
何気に、有名人の知り合いは多いんだな、コイツ……。
「イヤなら断われば?なんなら、俺も一緒に行ってやるぞ?」
「ううん。楽しそうだし、やってみるよ」

501 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/10/20(金) 23:12:12 ID:wFwVhHqh
「随分と強気だな」
「うん……お兄ちゃんと話してたら、何だか書けそうな気がしてきた」
「……ま、楽しみにしてるわ」
「にゃっ!?聞きに来るつもりっ!?」
「なんだ、聞かせないつもりだったのか?」
「あわわわわ!!だめー!!ダメだよー!!恥ずかしいよー!!」
「大丈夫だ。別に期待なんかしてないから」
「そういう問題じゃないのー!!」
「じゃあ、どういう……」
「とにかくダメったらダメなのー!!えと……那、帰るね!!CDありがと!!」
迅い……。
独りになった室内。
残された一枚のメモ。
中には告白の時に言うセリフベスト100みたいなのがズラリ……。
「……これは……」
……見なかったことにしよう。
「お、お兄ちゃん!!メモ、見てない!?」
戻ってきやがった……。
「メモ?」
「うん……詩に使えそうな言葉をダーッって書いてあるメモなんだけど……」
「コレ?」
「そう!!……見た?」
「いや」
「良かったー!!ありがと。じゃね!!」

梨那の言葉。
梨那に与えられた一種の奇跡のようなものだ。
誰に向けられたものなのか、それとも誰に向けられたものでもないのか。
まぁ……後者であって欲しいが……。
そんな俺は……梨那の乙女メモから落ちた一枚の『やけに見覚えのある男』の写真には、気付いていたのだった。
───────────────────────

502 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/10/20(金) 23:12:56 ID:wFwVhHqh
夢ノ又夢先生に少しでも追いつこうと思った。
……やっぱりダメだった。

文化祭当日のネタは書くんだか書かないんだか……まぁ、きっと、書けない。に落ち着くはず。
どうせ俺なんて……。

503 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/10/21(土) 21:49:23 ID:YYZlj4gG
深歩みたいな妹がほしいなぁ〜

504 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/10/25(水) 22:27:36 ID:hopkKz4g
情けない話だが、どうも自分の体のことには疎いらしい。
いつも気付かずに限界まで無理をして、そこで初めて自分が体調不良だと気付く。
せめて誰かがそれに気付いてくれれば良いのだが……
「なぁ、立花……なんか……暑くないか……?」
流れ落ちそうな汗を手で拭ながら、友人に尋ねる。
「暑い?少し寒いぐらいだぞ?」
「……そうか」
「おいおい、天童、大丈夫か?そういえば顔も赤いぞ」
「……ヤバイな……」
「大丈夫か?」
「あぁ……もう帰るだけだし……。何とかなる……」
「そっか。気をつけろよ……」
心配そうに俺を見ている友人を跡目に、重い体を立たせ、歩き出す。
自分としてはまっすぐ歩いているつもりだが、どうも不安定だ……。
……なんか頭も痛くなってきた。
そんな自分の体に絶望を感じつつ、一歩一歩ゆっくり歩く。
途中の上り坂あたりで、頭痛がピークに達し、なんかもう死ぬんじゃないかとまで思えてきた。
「……やっと……」
そんなこんなで、やっと我が家にたどり着く。
……何か忘れている気もするが、今はそんなことを気にしている余裕は全く無い。
鍵を開け、家の中に入った……まではよかったのだが、
「うおっ……」
玄関の段差を乗り越えられず、そのまま床に倒れてしまう。
起きなければならないと思うが、体が全く動かない。
そのまま意識が遠のく。
……あぁ、床が……冷たくて気持ち良い……。
───────────────────────

505 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/10/25(水) 22:28:10 ID:hopkKz4g
少しだけ冷たい風が吹く校庭。
風に飛ばされていく落ち葉を眺めながら、小さくため息をつく。
「遅いよ……」
かれこれ三十分……。
さすがにそろそろ来てくれても良いと思うのだけど……
私の希望に反して、玄関から出てくる人の数はもはやゼロ……。
「……もう帰っちゃったのかな……」
今日は朝早くて、顔見てなかったから……帰りぐらいは一緒にいたかったのに……。
また待っててくれなかったんだ……。
そう考えると、とても悲しくなってくる。
あと……十分だけ……。
半ば諦めるような気持ちで、待ち続ける。
……きっと来ないだろうな。
悪い予感がそう告げている。
もはや立っているのも辛くなって、思わずその場にしゃがみこむ。
「寒い……」
思わず呟いた。
「葵ちゃん?」
名前を呼ばれて見上げると、
「相川先輩……」
相川先輩とそのお友達の州田先輩が、心配そうな顔をして立っている。
「どうしたの?あ、もしかして天童君?」
「え……は、はい……」
「天童君、帰っちゃったよー。ねー、お兄ちゃん?」
「あ、ああ……何か熱っぽいから早めに帰るとか……」
「お、お兄ちゃんがですか!?」

506 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/10/25(水) 22:28:45 ID:hopkKz4g
「聞いてないか?」
「聞いてないですよ!!」
「じゃ、早く帰らなきゃだねー」
「あ、はい!!あ、あの……ありがとうございました!!」
「頑張ってねー!」
「いいから、急ぎな」
二人の心遣いに、もう一度礼を言いながら、我が家へ走り出す。
今日も待っててくれなかったこととか、
女の子と仲良くしてたとか、
そんなこと、今はどうでもいい。
今はただお兄ちゃんが心配だった。
いつもはお兄ちゃんと歩く道を、
お兄ちゃんを追いかけて走る道を、祈るような気持ちで全力で走った。
……お兄ちゃん……どうか、無事でありますように……。
───────────────────────
やっとたどり着いた我が家。
途中でお兄ちゃんが倒れていなかったことには少しホッとした。
しかし、休んでいる暇はない。
ドアに手をかけると、鍵が開いているようだ。
お兄ちゃんが中にいることを確信し、全力でドアを開ける。
どこにいる。なんて考えるヒマも無く、玄関に仰向けに倒れるお兄ちゃんが目に入った。

507 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/10/25(水) 22:29:20 ID:hopkKz4g
「お兄ちゃん!!」
お兄ちゃんに、急いで駆け寄る。
私の心臓が、バクバクいっている。
「お兄ちゃん!!起きてよ!!」
「ぅん……」
ゆっくりと目を開けるお兄ちゃん……。
「葵……?」
「お兄ちゃん……」
「あぁ……寝てたのか……」
「お兄ちゃん……」
大きくあくびをするお兄ちゃん。
確かに顔色は余り良くないけど、思っていたほどではなさそうだ……
そう考えると、急に気が抜けて
「もう……お兄ちゃんのバカ……」
お兄ちゃんを抱きしめていた。
……もちろん恥ずかしいには恥ずかしいが、それ以上にお兄ちゃんが無事で嬉しい。
「葵……」
「心配……したんだからぁ……!」
涙が溢れた。
自分の声が涙声になっているのがわかる。
「あ、ゴメン……」
「ううん……よかった……」
堰を切ったように溢れてくる涙と、お兄ちゃんの気持ち……。
お兄ちゃんは私が何で泣いてるのかも分かってないんだろうな。

508 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/10/25(水) 22:29:54 ID:hopkKz4g
「葵……あの……悪いんだけど……」
「何かな、お兄ちゃん?看病だったら、何でもするよー」
「いや……俺はもう大丈夫だから……。もう離れてくれ……風邪うつるぞ……」
「病人はそんな心配しない!さ、ベッドまで行こう、お兄ちゃん。肩、貸してあげるから」
「……スマンな……」
「ううん。今晩は、私がお粥つくってあげるからねー?」
「……あんまり食欲は……」
「だーめ!!食べなきゃ元気になれないよー」
「……葵……」
「なーに?」
「お嫁さんみたいだな……」
「そんなー、お兄ちゃんったらー♥」

えっと……災い転じて福となす……って言ったら、不謹慎かな。
でも……ちょっとだけ幸せな、ある寒い日でした。
───────────────────────
風邪引いて妹に看病してもらうネタはいつかやろうやろうと思っていた。
今回見事に秋風邪をひいたので、良い機会と思って書いてみた。
……やっぱり俺は俺だった。

天然妹の続きはいつ書こう……

509 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/11/01(水) 11:18:29 ID:Yo1kXnoX
妹がほしくなるスレだな

510 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/11/03(金) 16:25:30 ID:DMMjCkd5
warosu

511 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/11/12(日) 03:29:47 ID:BnDg9Gc5
age

512 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/11/15(水) 01:03:40 ID:QU8kpWmp
保守

513 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/11/20(月) 12:39:25 ID:jKA8V7iY
保守

514 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/11/22(水) 22:45:09 ID:hJbu959W
続き待ってます

515 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/11/27(月) 06:31:23 ID:af7SSd/s
続き見たいです。とくに巴が・・・

516 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/12/04(月) 17:03:33 ID:2lObEAU7
ガンガレ

517 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2006/12/07(木) 03:13:53 ID:eD2P+stn
―――夢を見ていた。
昔の夢を見るのはあまり好きではない。
事故で目覚めて以来―――まぁ、かなり昔の話なのだが―――目を開けたとき、目の前に兄の泣き顔があるのではないかと、不安になってしまう。
昨日の事を思い返す。
昨日は学園から帰り、ご飯を食べて、お風呂に入り、マンガを読んで寝た。そうそう、しっかり歯も磨いた。口を濯いでいるとき、兄に背中を叩かれて少し水を飲んでしまったが。……余計な事まで思い出してしまった。だが、しっかり昨日の事を思い出せる。
寝ぼけたままの意識を今日に戻す。
布団の感触は私の布団の感触だ。
病院の匂いは……しない。この前買った芳香剤は今日もしっかりと働いてくれている。
瞼を閉じたまま外の風景を探ると、昨日カーテンをしっかり閉めていなかったのか、太陽の光を感じる。やはり、病院のあの無感情な電気の光は感じない。
意識がはっきりとしてきた。
ここは私の部屋で、病院ではない。だから、目を開けても兄が泣いている事はないし、病院という事も無い。瞼を閉じていても眩しい程太陽は輝いているし、脳は私に朝を告げ、意識もしっかりとしている。
うん。そろそろ起きよう。今日も、良い一日になりますように。
 「おそよう夢亜さん。随分と気持ち良く寝ていたようですね。」
こうして私の予想は一行で粉砕された。
――――――――――――――――
遊星さんと夢ノ又夢さんがいる時点で私の出番はなしって感じですが過疎ってるので久々に登場してみました。
酉があってるかわからない。というか私を覚えてる人がいるかのがわからないw
構成0分執筆30分くらいの保守がてら気まぐれに書いただけで続くかも分からないんものなんでアレな感じを受けた人は華麗にスルーしてください。
という保守。

518 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/12/07(木) 03:40:44 ID:tNAokx+q
>>517
すばるさんじゃないですか!職人さんたちに見捨てられたのかと思ってから嬉しい
これからも時間に余裕があれば投下して下さい。

519 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/12/07(木) 23:18:20 ID:tNAokx+q
age

520 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/12/08(金) 17:01:39 ID:LyoHa+DX
まんちょ

521 :遊(ry ◆isG/JvRidQ :2006/12/09(土) 22:29:24 ID:rGwefdjJ
もう俺なんか、いないと思ってもらったほうがいような存在なんですけど。
ただ、別に貼れるものを書いてないっていうか、
文化祭を今書き終わったとかそんな次元だし……クリスマスはネタがないし……

……つーことで、クリスマスに向けて頑張ります。でも、忙しいからそんなには書けないだろうなぁ……。

522 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/12/10(日) 09:37:07 ID:H00x2rDj
妹「お、おにいちゃん…お、おかえりなさい…た、大漁だった?ねえ大漁だった??」
妹「イ、イサキは?イサキは、と、取れたの??」

523 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2006/12/11(月) 05:38:07 ID:NB+eYM7O
兄「あぁ!小振りだけど脂の乗ったのが釣れたぞ!刺身にして食おうな!」
妹「や、やったぁー!お兄ちゃんがおっ刺っ身だぁ〜♪」
なんてこった……orz
勝手に変に続けてすいませんすいません。

>>518
覚えててくれた人がっ!感謝です。
どちらかと言うと最近反応を返してくれる名無しさんが少ない気が……
書く人も読む人も増えてくれるのが一番なのでしょうが……

>これからも時間に余裕があれば投下して下さい。
そう言ってもらえると投下しやすいです。

>>遊星さん
遊星さんはこのスレのシンボルみたいな人なのでいないと思うのは中々難しいと思いますよ。
私としてはまったり時間を気にせずにでもいいので職人でいてほしいです。
と、言いつつクリスマス期待してますw

524 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2006/12/11(月) 06:15:20 ID:NB+eYM7O
「さて、そろそろ行くか。」
昼食を食べてからおよそ一時間が経った。
いつまでも居間で暇を持て余しているのもどうかと思い、特に予定があるわけでもないが出掛けようと腰を上げる。
せっかくの休日を一日中家でだらだらして過ごす、なんて勿体無い事は出来ない。
夢亜に言ったらおそらく「せっかくの休日にわざわざ疲れに出掛ける事の方が勿体無い。」とか「休みはだらだらしないと嘘だよ。」なんて言われるのだろうが、そこは価値観の相違というやつだ。
「あれ?お兄ちゃん出かけるの?」
昼食の後、何故か自室ではなく居間でマンガを読んでいる夢亜に話しかけられる。
休日はほとんど動こうとすらしない怠惰ぶりを発揮する癖に、自室から居間までマンガを運ぶ事は苦にならないらしい。
何故、居間でマンガを読むのかは聞くだけむだだろう。どうせ意味など無い。
「あぁ、せっかくの休みだからちょっと商店街でもぶらぶらしてくる。」
「ふーん。……私も出掛けようかな。」
「……はい?」
一瞬、聞き間違いかと思った。夢亜が壊れたのかとも思った。
今日の天気は晴れのはずだ。雪が降る予報など出ていない。という事は、聞き間違いかと思ったのではなく、実際に聞き間違いなのだろうか?
「私も出掛ける。って言ったの。」
なんと、聞き間違いではなかった。病院へ連れて行った方がいいだろうか。今の夢亜は一人で病院へ行けるだろうか。
「俺も一緒に行こうか?」
「?出掛けるお兄ちゃんに私が付いて行くんだよ?……あ、私、付いていかない方が良い……かな……?」
俺の都合を気にして不安そうな顔をする夢亜と夢亜の安否を心配する俺。
何とも言えない微妙な空気が居間に漂い、短い沈黙が訪れる。

――――――
前回、文や流れがおかしい所が多かったので今回は見直してから……なんて事はしてません。すいません。
改変したやつ見たい・というありがたくも数奇な嗜好をお持ちの方、又、「○文字くらいで改行入れて」「文章いい
からセリフ率上げて」などなど些細な事でも要望があればなるべく答えていこうと思うのでご一報を。
苦情、アドバイス、感想は随時受け付け中です。

今の連投規制とか1レスで書き込み可能な容量・行数はどうなっているのでしょう?
次からは投下後の文章は短くしますので今回はご容赦を。

525 :遊(ry ◆isG/JvRidQ :2006/12/13(水) 22:14:04 ID:zaZQQykK
……過疎スレだねぇ。

>>524
あとは、すばる先生と夢ノ又夢先生だけが頼りですよw

>今の連投規制とか1レスで書き込み可能な容量・行数はどうなっているのでしょう?
自分は30行を目安に。
文字数は……そんなにそんなに詰めたことないからわかんないや……。
連投規制秒数は30秒だったと思う。

526 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/12/14(木) 19:42:32 ID:cYQce1FA
>>524
すばるさん良い感じですね続きが気になります

連投規制とか改行制限はわかりませんすいません。

>>525
遊星さんも待ってますよ。

527 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2006/12/14(木) 19:56:34 ID:9EMjgA/d
意外な人に愛の告白をされ、どう答えたものか困った時の沈黙に似ているなぁ。などと、経験した事も無いのに、そんな突拍子もない事を考えてしまった。
「……もしかして、『夢亜が自分から外に出るなんて、雪でも降るんじゃないかー』なんて考えてぼうっとしてる。なんて事ないよね?」
「あ、あぁ……そんな、事は……」
唐突に予想もしていなかった事――さっきまで考えていたか――を聞かれたので戸惑い、言葉に詰まってしまった。それと同時に、何とも言えなかった微妙な空気も吹き飛んでいく。
それにしても、予想はしていなかったとはいえ、「そんな事はない。」と言い切れなかった辺り、俺は自分で思っているより根は正直なのかもしれない。
「あ!その間は考えてたんだ!ひっどいなぁ。いくら私でもまだそこまで怠け者じゃないよ。」
言葉に詰まっていただけなのだが、夢亜はそれを勘違いしてくれたようだ。
それにしても、「いくら私でも」やら「まだ」とは随分な言い様だ。まぁ、俺の中ではそれ以上の事態にまで発展していたのだが……それは、しばらく胸の中にしまっておこう。
今言うと、何をおごらされるかわかったものじゃない。いや、もう遅いか。
「悪い悪い。今朝の天気予報を思い出してたらつい本音が、な。」
「本当にひどいなぁ。久しぶりに愛しの夢亜さんと出掛けられるっていうのにそんな事考えてたなんて。罰としていつもの、ね?」
「はいはい。わかりましたよ。お姫様。謹んでエスコートさせていただきます。」
「うむ。よろしい。しっかりエスコートするのですよ。なんてね。実はね、今日はちょっと気分転換したいなーって思ってたんだ。さ!行こ!」
そう言って俺の手を取って歩き出す夢亜。
やはり、今日は雪でも降るのではないだろうか?

―――――――――――――――――
「あ、この前書いた分の続きを投下してない」そんな事に気付いた休みの夕飯時。
と、言う訳で前回の続きです。

>>遊星さん
先生だなんて……褒めても出てくるのは駄文だけですよw
凄い気まぐれな人間なんで駄文すら出てくるか怪しいんですが。
情報どうもです。

528 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/12/14(木) 23:12:32 ID:cYQce1FA
>>527
すばるさん投下乙
雰囲気が好きです続き期待してますよ

529 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/12/16(土) 19:47:39 ID:yaRb2X6+
ageとく

530 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/12/17(日) 14:03:15 ID:bpbuH8G1
もう男の人としか見えないよ!おにいちゃん!

ハアハア

531 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/12/17(日) 16:26:08 ID:aKqB8IlY
>>530
それはそれで萌えるなw

532 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/12/20(水) 00:14:31 ID:J+jkZI6+
過疎だ

533 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/12/20(水) 01:49:17 ID:YveQyMk4
この待っている時間は、私は好きだ……


534 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/12/20(水) 05:11:40 ID:4UvDT69B
現実
妹が兄に対して→死ね兄→お前が死ね。消えろキモスデブ。
妹→殺すぞ。
兄→ガキのくせに調子こくなよこら。
妹→手を出す。
兄→妹を殺す。
妹→泣く。
兄→キモいから息すんなよ。お前がキモいから悪いんだよ。死ね。
親→怒る。
兄が親に対して→あいつをキモく生んだ遺伝子持ってるアンタも悪い。
親→お前も同じ遺伝子持ってるんだよ。
兄→黙れ。自分の部屋に逃げる。
妹→相変わらずキモい声を出してキモく泣く。

ゲーム
妹→おにーちゃん!!
兄→おう、なんだ。
妹→兄にべったり。
兄→相変わらず甘え過ぎだから。
妹→あ〜おにーちゃんたら照れてる〜!!(くすくす)
兄→お前みたいな子供になんか照れません。
妹→もう!!いつも子供扱いしてー!!あたしだって、お ん な よ!! 腰に手をあてセクシーポーズ
兄→だめだめだな。
妹→うぅー…!!おにーちゃんのばかぁ!!
兄→ばかとはひどいなばかとは。
妹→だってぇー…。ちょい泣きそうになる。

俺→泣

535 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/12/20(水) 07:33:36 ID:bCOE4FF/

>534がキモいのはよくわかった

536 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/12/22(金) 14:30:07 ID:9ZjLFB/S
>>534
マジレスだが
一般に兄弟は仲の悪いものだとされていて
確かに事実そういう傾向もあるが
ある程度成長してるのに、そんなこと
してるとしたらそういう兄は幼稚だな。
現実〜とか、こんなのと一緒にされたくはない。
実際俺は妹が可愛くて仕方がないし。
「死ね」とかよく言われるけど
それもある意味いいことかなと思ってる。
他人に言われたら普通にキレるんだけどな。

ゲーム〜にしたってないだろこれはww

537 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2006/12/23(土) 00:51:18 ID:BLoxIStr
>>533
奇遇ですね。私もです。

>>536
現実〜の方は大体同意見だけど実際にそういうやり取りを見た事のある
私としては何とも……

ゲーム〜の方は結構気に入って……あれ……私だけ?

538 :遊(ry ◆isG/JvRidQ :2006/12/23(土) 23:17:43 ID:hvbkWNpD
先は長い長いと思っていたが、気付けばもう23日か……

539 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/12/24(日) 00:48:03 ID:daVhtSPc
>>537
いやまぁ…正直言うと俺にもこんな時期あったけどね。
妹のことウザイなって思ってたこともあるし。
しょっちゅう口喧嘩してたこともある。
お兄ちゃんだろ!?ってことで糞親父に理不尽な扱いされたこともあるし…
恥ずかしい話だが、叩いちまったこともある。叩かれたこともあるけど…
…人のこと言えないな…偉そうに言ってごめん
ただそれが全てじゃない、誰もがずっとそうだってわけじゃないってことでさ…

自分を省みるに、妹ウザいって兄貴は妹が自分の思い通りに振る舞わないことに
過剰に憤りを感じてたりしてるんじゃないかな
言うことを聞くのが当然みたいな意識が少なからずあるというか。
あくまで自分の経験に基づいた考えだから全てに当てはまるとは思わないけどさ
…ここまで書いてなんだがスレ違いで本当にスマン

ゲーム〜の方は勢いで言った、反省してる。
ぶっちゃけ俺も好きです。

540 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/12/24(日) 22:50:02 ID:TrsYCOEI
「つまらない……」
誰もいない我が家で一人呟く。
テレビをつけても、どこもクリスマスだと騒がしい。
幸せなクリスマス……それが、正直、鬱陶しくも羨ましくもあった。
ふと、窓の外を見る。
そういえば、雲が多くなってきた気がする。
これで雪なんか降ったら、かなり憂鬱だろう。
祈るような気持ちでカーテンを閉めた。
「はぁ……」
ため息がいやに響き、寂しさが絶頂に達した瞬間、妹の望の顔がよぎる。
「あんなのでも、いれば少しは……」
道場のクリスマスパーティーとやらに出かけていった望。
まぁ、家で俺なんかと過ごすよりはよっぽど有意義だとは思うのだが。
無いものを嘆いてもしょうがない。今あるものを最大限に活用せよ。
とは誰の言葉だったか。
とりあえず、今はせっかくの自由時間だ。
読書の時間と割り切って読みかけの本を読むとしようじゃないか。
……。
それからどれくらい時間がたったのだろうか。
乗ってきたというのも変な話だが、集中して読めるようになってきた。
そんな時、
「なーんだ……ボクがいなくても結構楽しんでるんだー」
ソファの後ろからつまらなさそうな声。
「望?」
「ただいま……」
「おぅ、早いじゃないか?」
「そんなことないよっ!!」
何だかイライラしている望。
「……どうした?」
「なんでもないっ!!」

541 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/12/24(日) 22:50:34 ID:TrsYCOEI
「人を怒鳴りつけといて、何でもないわけないだろ」
「ボク、全然怒ってないんだからね!!寂しくしてると思って途中で帰ってきたのに、お兄ちゃん普通だし、
 ボクが帰ってきても邪魔そうだし、ケーキだって買ってきたのに……」
確かに言っていることは、無茶苦茶。
でも涙目で、泣きそうな声でこんなこと言われたら……無視できるわけないじゃないか……。
「だから、ボク全然怒ってないんだからね!!」
「……」
難儀な女だなぁ……。
「そうかい……」
「どこ、行くの……?」
「関係ないだろ。望が帰ってきたのに、ここで待ってる必要なんか無いんだから」
……これは少しウソ。
まったくそんな気がなかったというワケでもないが。
「お兄ちゃんが……ボクを……?」
一人で想像し、顔を赤らめる望。
しかしまぁ、馬鹿妹のこの目は眩しすぎ……。
「えへへへ……お兄ちゃん……」
何だかジワリジワリと近づいてくる望。
……もしかして、変なスイッチを入れてしまったのだろうか……。
「お兄ちゃん、ケーキ買ってきたんだよ。二人で食べよう!!」
「あ、あぁ……」
「ケーキ食べたら、二人でテレビ見て、二人で遊んで……」
「望……?」
「ね、お兄ちゃん?」
「あ、あぁ……」
「ありがとう。ボク、嬉しいよ!!」
「そうっすか……」

まぁ、そんなこんなで望に振り回されるクリスマス。
嘘も方便とはよく言ったものだけど……
この場合は良かったのか悪かったのかよく分からないなぁ……。
───────────────────────

542 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/12/24(日) 22:52:59 ID:TrsYCOEI
「なんだって、クリスマスを翼となんかと……」
「なんか。とは失礼ね。それはこっちのセリフよ」
12月24日。
イルミネーションやら、ネオンサインやらで輝く町を、妹の翼と憎まれ口を叩き合いながら歩いている。
理由は簡単。二人ともヒマしてるのを不憫に思った母上が、二人で何か美味いものを食べて来い。と。
まぁ、そんな感じだ。
「お兄ちゃん」
「ん?」
「あのお店なんていいんじゃない?」
「……高そうだぞ?」
「ほら、見てよ、あれ」
翼がポスターを指差す。
俺もその指のさきにあるものを見ると、
「ふぅん、恋人同士のお客様は全品30%オフねぇ……」
「よくない?」
「カップルじゃないじゃないか、俺たち」
「分かってないなぁ……」
翼はわざと大きなため息を付いて、
「フリすればいいでしょ?」
と、俺に耳打ちする。
「それぐらいなら、他の店探すさ」
やっぱりウソはよくない。
一人振り返り、歩き始めると、
「わ、私はここで食べたいの!!アンタと恋人のフリなんて、ホントはやりたくないんだからね!!」
「……グラスにストロー二本差しで出てきても知らないからな……」
「そんな軟派な店に見える?」
「見えないけど……」
「じゃあ、行くわよ」
ずんずん歩いていく翼……。
仕方なくその後をついていく俺……。
まさか、あんなことが起こるとは、俺には想像もつかなかったのだけど……。
───────────────────────

543 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/12/24(日) 22:53:32 ID:TrsYCOEI
「意外と美味かったな」
「うん」
空になったデザートの皿を前に、二人揃って立ち上がる。
一応カップルのフリなので、普通の会話を心がけてますよ。
「お金足りる?」
「計算はしてないが、まぁ、ギリギリ足りるだろう」
「じゃあ、お会計ね」
しかしまぁ、翼の演技が上手だこと……。
それに引っ張られる形で、なんだか俺も恋人っぽい会話が出来てしまっている。
「お会計お願いします」
レジの女の子に、伝票を差し出す翼。
「あ、お客さん、恋人同士ですか?」
「はい、そうです」
「では……証明をお願いします♪」
「は……?」
「もちろん!!キスですよ!?」
「「キスっ!?」」
二人の声が揃う。
「出来なければ、割引できませんねぇー」
……悪意のないこの女の子の顔さえも憎い。
「……悪い、翼。家からお金取ってくるから、待ってて……」
そう小声で翼に話しかけたときだった。

544 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/12/24(日) 22:54:06 ID:TrsYCOEI
「っ!?」
一瞬何が起こったのか理解できなかった。
この、唇に何か触れる感じ……コレがキスなんだな……。
「つ、翼ぁっ!?」
「これでいいですよね?」
「はい。では、割引しますねー」
何が何だか分からない俺はあとは全て翼に任せ、一足先に呆然と店の外に出る。
「馬鹿じゃないの……?取り乱しすぎよ、お兄ちゃん」
会計を済ませて、翼が遅れて出てきた。
呆れたようにため息をつきながら。
「……お前はよく平気だな」
「か、勘違いしないでよね!!別に仕方なくなんだからね!!」
「分かってるよ……」
「お、お兄ちゃんとキスなんて、ホントは嫌なんだから!!」
嫌だ。とか勘弁して欲しい。とか何度も言いながら、俺の先を歩いていく翼。
そして、突然振り返り。
「ファーストキスだったんだから……責任、取りなさいよ……!」
「は?何か言った?」
「な、何にも言ってない!!さ、帰るわよ!!」
「はいはい……」

翼に腕を引っ張られて歩く夜道。
……何故か、遠回りをしている気がするのだが……。
───────────────────────

545 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/12/24(日) 22:55:52 ID:TrsYCOEI

あちらこちらで輝くイルミネーション。
ちょっとしたものから、本格的なものまで。少し歩けば、家ごとの違いも見えて面白い。
まぁ、一人で見るというのも悲しいことではあるが、こればかりは仕方ない。
最近そう開き直っている。
そんな感じで、すっかり暗くなった帰り道を一人で歩いていると……
「あれは……」
前方に見慣れた感じの少女が。
「澪かな……。っていうか……」
メイド服を着歩く人間など、俺は澪以外に知らない。
完全に確信を得た俺は少し早歩きで、彼女に向かっていく。
「澪。今帰り?」
澪の肩を軽く叩くと、
「お、お兄ちゃん!!」
口をパクパクさせて何だか驚いてる澪。
そして、
「お、おいっ!!」
全力で走り出す澪。
「澪っ!?」
「うわああああああん!!見ないでくださいぃぃぃぃぃぃ!!」
「えぇー……」
何だかそんな澪を追えず、ただ呆然と立ち尽くす自分。
「ま、いいか……」
澪が分からないのはいつものことだ。
随分彼女に慣れてきた自分がそこにいた……。
───────────────────────

546 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/12/24(日) 22:57:51 ID:TrsYCOEI
澪と別れて数分後、我が家のドアの前にたどり着いた。
この何だか嫌な予感は……きっと当たるんだろうなぁ。
身構えてドアを開ける。
「……」
待ち構えてたのは……やっぱり澪でした。
……何だかリボンみたいなのに絡まっている。
これはまさか……。
「お、お兄ちゃん!?早くないですか!?」
「早いか……?」
「澪、せっかくお兄ちゃんを驚かせようと思ったのにぃ……」
頬を膨らませる澪。
でも、俺は、
「いや……十分驚いてる……」
クリスマスカラーのメイド服だものなぁ……。
しかもスカートは短いし、胸元開いてるし……
「え?ホントですかー?」
「……あぁ、さすがに……」
「うーん、じゃあ、いいかな」
自分で納得する澪。
じゃあ……俺も何でも良いや……。
「ところで……そのリボンは……?」
「あぁ、これですか?クリスマスらしいでしょ?店長デザインなんですよー」
「そういうデザインなんだ……」
「はい」

547 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/12/24(日) 22:58:26 ID:TrsYCOEI
澪はすごい。少しも迷いがないのものなぁ……。
「……もしかして、似合ってないですか?」
「え?」
「さっきから……全然見てくれてないですよねぇ……?」
「……」
まぁ、目のやり場に困るし……。
「帰るときも、何だかみんな澪を見てないし……」
そりゃあねぇ……。
「澪、泣いちゃいますよ……?」
「……」
「泣いても良いんですか?」
「……いや、困るけど」
「でしょ?じゃあ、褒めてください」
上目遣いそんなことを言ってくる澪。
仕方ないなぁ……。
「いや……似合ってるし、可愛いと思うよ」
「じゃあ、何で見てくれないんです?」
「そりゃだって……カッコ悪いじゃないか……」
「カッコ悪い?お兄ちゃんはいつもカッコいいですよ?」

548 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/12/24(日) 22:59:04 ID:TrsYCOEI
「……俺としてはそういうのカッコ悪いと思うんだよね……」
「はー。そうなんですか……」
「だからあんまり言いたくないんだけどな……」
「なるほどなるほど。お兄ちゃん、硬派なんですね!!」
「硬派……」
古臭い言い回しだなぁ……。
「でもでも、そういうの一杯言っても良いと思います。それでも、お兄ちゃんカッコいいから」
「……人の話聞いてた?」
「大丈夫ですよ!!お兄ちゃんがお兄ちゃんをカッコ悪いと思ったら、
 それ以上に私がお兄ちゃんをカッコいいって褒めてあげます!!」
ホントにこの娘は……
「それより、お兄ちゃん、行きましょう!!」
「え?どこに?」
「リビング!!パーティーの準備は出来てます!!」
俺の右腕を抱きしめる澪……。
あの……自分が何してるか分かってます?
「……お兄ちゃん?」
「な、なんでもない!!行こうか!!」

不思議なクリスマス。
まぁ、澪がサンタってことで良いじゃないか。
───────────────────────

549 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/12/24(日) 23:00:58 ID:TrsYCOEI

今日はクリスマスイブ。
何かあるわけでもないのに、何だか楽しくて、ドキドキして。
そんな一日が今年もやってきた。
……ただ、一つ違うことが。
それは、
「お兄ちゃんと一緒……ふふっ……」
ため息とともに思わずそんな言葉が漏れてしまう。
お父さんとお母さんは今夜はデート。
お兄ちゃんも出かける予定が無いと言っていたから、今晩は本当にお兄ちゃんと二人っきりだ。
というわけで、お兄ちゃんに食べてもらうため、愛妹料理を作っている最中なんだけど。
「……ダメだ……全然集中できないよ……」
チラついて離れないあの人の顔。
思わず顔がニヤけてしまう。
そんなのだから、さっきも指を切りそうになったのだけど……。
「それにしても……お兄ちゃんどこ行ったのかな……」
ブラブラしてくる。とは聞いたけれども、もう随分になる。
家にいてもらってはヒミツの準備も無駄になってしまうのだけど……
やっぱり出来るだけ私の傍にいて欲しいというジレンマ。
そんなことを考えて、また私の手が止まっている。
これではいけないと、また料理に集中するのだけど、ふとしたきっかけでまた思い出し、上の空。
さっきからこんなことの繰り返しだ。
いつもはさすがにこんなことないのに……
やっぱり今日がクリスマスだからだろうか。
ため息をついて、ゆっくりとまな板の前に戻ると、
「ただいま」
玄関から、聞き間違えるはずの無いあの声がした。
それだけで嬉しくて。頭より体より、心が真っ先に動いた。
「お帰りー!!」
私はエプロンを放り投げ玄関に向かう。

550 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/12/24(日) 23:01:36 ID:TrsYCOEI
「あぁ……どうしたの、葵?」
「え、あ……別に、あはは……」
……後先考えず。とはこのことだね……。
「ゴメンな、お土産の一つも買ってこなくて」
冗談をいって笑うお兄ちゃん。
……やっぱりお兄ちゃんはいいなぁ……。
「?」
お兄ちゃん、紙袋なんて持ってる……。
隣町のデパートのだ……。
「ね、何買ったの?」
「え?」
「紙袋。何か買ったのかなって」
「あぁ、コレ?大したもんじゃないよ」
「もしかして、クリスマスプレゼント?」
「うーん……この時期にモノを買うと、何でもクリスマスプレゼントっぽくなっちゃって困るよねぇ」
「じゃあプレゼントじゃないんだ?」
「うん。必要だったから買っただけ。まぁ……見栄張って包装してもらったんだけど……」
気まずそうに、包みを見せるお兄ちゃん。
「空しいね、さすがに」
と苦笑い。
「ところで、葵?」
「なーに?お兄ちゃん」
「何か焦げ臭くないか?」
……焦げ臭い?そういえば……

551 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/12/24(日) 23:02:12 ID:TrsYCOEI
「あーっ!!」
火つけっぱなしだったの忘れてた!!
慌ててキッチンに戻るが、時すでに遅し。
「シチューが……っ!!ど、どうしよう……!!」
鍋の中にはなんだか茶色っぽいシチュー……。
「ありゃー、やっちゃったねー」
「……晩御飯が……」
「落ち着いて、葵」
「で、でも……」
「晩御飯の心配はいいから。火傷とかしてない?」
「それは……大丈夫だけど……」
「良かった。それなら、俺は安心だよ」
「お兄ちゃん……」
私を心配してくれるお兄ちゃん。
私の掌を撫でてくれるその手が、とても暖かくて……
「うぅ……ゴメンなさい……」
嬉しくて、幸せで、思わず涙がポロポロこぼれる。
「な、葵!?ホントに大丈夫なのかっ!?」
「お兄ちゃん……私、少し……火傷したかも……」
「どこを!?」
「ここ……」
お兄ちゃんの手、私の胸の前に重ねる。
「……ココが、キュンってして、熱い」
「葵……」
困った、というかパニック寸前のお兄ちゃん。
私にだって、そんなに邪な気持ちはなかったとはいえ……ちょっと気まずい。
「……ゴメンね……何だか、寂しくて……」
「ううん。いいよ、葵はいつも頑張ってるから、時々はね」

552 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/12/24(日) 23:02:44 ID:TrsYCOEI
「……うん、ありがとう。じゃあ、迷惑ついでに、もう一つ良い?」
「どうぞ」
「優しく抱いて欲しいな、なんて……」
「いいけど、俺で良いの?」
「私のお兄ちゃんでしょ?妹には優しく。ね?」
「ま、頼られるのは兄貴冥利につきる。というべきかな」
少し恥ずかしそうに、私の肩を抱きしめてくれるお兄ちゃん。
気持ち良い温もりが、全身から伝わってくるのを感じる。
「葵……はい、コレ」
さっきの紙袋をお兄ちゃんが差し出した。
「私……に……?」
「うん。自分で使うつもりだったけど、葵にあげるよ」
「開けても良い?」
「どうぞ。……お気に召すかは自信ないけどね」
紙袋を丁寧に開けていくと……
「マフラー?」
お兄ちゃんの好きそうな色のマフラー。
「……変かな?」
「ううん。気に入った」
「それは良かった」
ホッと安心した顔のお兄ちゃんに、すこし癒される。
「今度は私がお兄ちゃんに似合うマフラーを選んであげるよ」
「え?」
「明日も予定入れちゃダメだよ?」
「……了解。ご一緒させていただきます」
「うんうん。よろしくね」
小指を出す。

553 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/12/24(日) 23:03:24 ID:TrsYCOEI
「指切り」
「そんなことしなくたって俺は……」
「いいの!やるの!!」
「はい……」
大人しく小指を出したお兄ちゃん。
そんなことでも嬉しくって。
「いたたたた!!痛いって、葵!!」
思わずつながった指を思い切り振ってしまう。
「あ、ゴメン……」
「はしゃいでるね」
お兄ちゃん痛めた指をチラッと見ながら、尋ねた。
「クリスマスだもん!お兄ちゃんも楽しもうよ!!」
「ふむ、是非楽しませてもらおうか」
「ふふん、ハメ外しちゃっても知らないからね〜?」
「凄いこと言うねぇ」
「とりあえず……晩御飯だねぇ……」
焦げ焦げのシチューを思い出す。
「大丈夫。ちょっと色は変だけど……食べれるよ
「美味しくはないんだ……?」
「い、いやっ!!そんなことない!!美味しいよ!!」
「ふふ、ありがと。お兄ちゃん」

ふたりで過ごす初めてのクリスマス。
……それに明日も、一緒。
来年も、一緒にいられたら……。
───────────────────────

554 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/12/24(日) 23:07:36 ID:TrsYCOEI
もうこんなもんでスレを消費してる恥ずかしくなってきた……。大人しく消える……

>>540-541 格闘系ボクっ娘妹、望
>>542-544 ツンデレ風妹、翼
>>545-548 天然系メイド妹、澪
>>549-553 兄好き系妹、葵

じゃ、メリークリスマスってことで……。

555 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/12/25(月) 05:55:47 ID:nTWdnjMl
メリークリスマス!! 遊星さんGJです。今年もハートフルなストーリーをありがとうございます。どの話もよかったのですが。俺的には翼が一番萌えました。

556 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2006/12/25(月) 10:08:39 ID:483t5Zav
OCNがアクセス規制かかってるっぽいので携帯からのすばるです。

>>539
>>537は見た事あるのでいるにはいるのでは?・という事を言いたかっただけだったのですが……
少し誤解を与えてしまったようですね。すいません。
私には妹は(脳内以外に)いませんが、
私含めて結構な人数があなたと同じような考え方をお持ちだと思います。

>>遊星さん
忙しい中乙です!
葵大好きですよもう。
これを読んでやっとクリスマスという実感が沸いてきました。
雰囲気創りがいい感じです。

私はクリスマスネタは時間がなかったのでパスです。
昨日仕事行ってから帰ってきたのが今だったりするのでご勘弁を……
年末かお正月ネタは書くつもりなので待っていてくださる方がいましたら
申し訳ありませんがもうしばしお待ちを……
それでは最後に、『メリークリスマス!』です。

557 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/12/25(月) 19:43:42 ID:kgQoUlsx
「う〜・・・シングルベルシングルベルってか」

口に咥えていた体温計を引き抜かれ、ヤケクソ気味で意味不明な言葉が漏れ出る俺。
12月24日クリスマス・イブ、床の間に伏せているにはあまりにキツイ一日。
天井を仰ぐ俺の傍らで体温計を腕組みして見詰めていた巴は困った様な笑顔を俺に向ける。

「で、何度くらいあった?」
「聞かない方がいいよ、余計に辛くなるから」

つまり今の俺は聞かない方がいい程の熱がある、と。
神様・・・俺が何か悪い事しましたか?

「ううっ、健康だけが取り得のヤツがよりによってイブにこんな目にあうとは・・・」
「ま、こればかりはね・・・今日は大人しく看病されなさい、ふふっ」
「・・・なんか嬉しそうに見えるんだが・・・気のせいか?」
「まさか、ボクはお兄ちゃんと同じ位に心を痛めてるんだよ」

子供でもあやす様にポンポンと頭を撫でてくる巴の表情は至って明るい。
若干の遣り切れない想いが湧き上がるがそんな事も霞が掛かった頭の上ではすぐに跡形も無く消え去ってしまう。
今の気分はちょうど横になったまま見える窓の向こうの灰色の雲と同じ重たさ、そんな感じだ。
しかし、わざわざ狙ったようにクリスマスイブに風邪を引くのだから本当に俺は相当くじ運の悪い男らしい。
果たしてこの割と浅くて広い世界にこんな人間があと何人程いるのだろうか?
曇り空を見詰め、そんなどうでもいい事を働きもしない頭で思索する。

「・・・あの枯葉が落ちた時、俺の命も尽きるんだな」
「・・・枯葉って何?ここから木なんて見えないんだけど」
「心の目だ、心眼だ・・・俺がいなくなっても強く生きろよ、巴」
「もうっ、お昼ごはん作ってくるから大人しく寝てなさい!!」

558 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/12/25(月) 19:45:23 ID:kgQoUlsx
椅子の背にしていた黄色いクッションによる顔面への一撃を浴びせて巴が肩を怒らせながら部屋を出て行く。
その割には数分後には上機嫌なソプラノボイスが閑静な家の中に響くのだから乙女心というのはよく分からない。
進路を見失った船乗りが吸い寄せられる様な歌声にこれでもかと突き付けられる現実。
揺らめく視界をクッションの黄色に占領されたままで美声に対抗し口笛なんぞ吹いてみる。
非常に虚しい浅はかで一方的な競い合い、勝っても負けても、いや勝ち負けなんてあるのかさえ微妙だ。
いつもならば忙しく過ぎ去る時間がこんな時に限って長く重たく感じられる。

「まいったな、こりゃ・・・」
「何がそんなに憂鬱なの?」

ヒョイと視界から黄色が取り除かれ、綺麗に澄んだ黒い瞳が写りこむ。
何故か少しだけ気分が軽くなる。

「言わずもがなって所だろ、にしても早かったな」
「そう?大体、15分は経ったと思うけど、ほら、お粥作ってきたから体を起こして・・・」

背中に手を当てて俺の体を優しく起こす巴、そのままトレイに乗せた湯気の立つお粥を差し出す。
器がわざわざ土鍋という辺りに巴の力の入り様が伺える。
・・・しかし、これでいいのだろうか?

「・・・食欲ないんだが食わなきゃ直らないよな・・・じゃ、頂きます」
「あ、ちょっと待ってね、熱いから・・・ふーっ」

口に入れようとした瞬間、絶妙のタイミングで俺の手からレンゲを掠め取る巴、そのまま息を吹き掛ける。
ああ、巴の唇ってホントに色艶いいよなぁ・・・特にリップとか塗ってる訳でもないのに鮮やかな桜色で・・・

559 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/12/25(月) 19:46:46 ID:kgQoUlsx
「・・・ってオイ!!そこまでしなくっていいって!!」
「はい、あ〜ん」
「あ、あの、巴さん・・・俺の話を聞いてます?」
「・・・はい、あ〜ん」

・・・ダメだ・・・目が一切の否定を許していない、どうやら拒否権はこちらには存在しないらしい。
観念しておそるおそる口を開くと程好い暖かさのお粥が口の中に広がっていく。
・・・本当にこれでいいのだろうか?

「ふふっ、どう?美味しい?」
「いや、美味しいも何もお粥だしな、味無いし・・・やっぱり何か楽しんでないか?巴」
「・・・なんていうか、これも幸せのカタチかな、って」
「幸せ?老人の介護がか?」
「・・・ロマンの欠片も無い言葉だね」
「実際の所、今の状況は老人の介護にしか見えないけどな」
「そんな事無いよ、ボクには・・・」

そこからピタリと言葉が詰まり、俺から顔を背けて巴が紅葉を散らした様に頬を染める。
正に千変万化、うなじの辺りまで赤みが差して変に色気が増した巴にドギマギしてしまう俺。

「な、なんだよ一体?」
「う、ううん・・・なんでもない・・・はい、あ〜ん」
「だからもういいってのに!!」
「・・・男なら覚悟を決めなさい」

560 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/12/25(月) 19:48:58 ID:kgQoUlsx
結局、意地でも全部食べ終わるまでこのやりとりは続けるつもりらしい。
本格的に介護めいてきたし、こうなってはもはや早く終わらせる他には無いだろう。

「はい、じゃあ後はお薬ね」
「・・・あのな・・・それより、巴・・・これでいいのか?」
「えっ?何が?」
「今日は年に一度のクリスマス・イブだ、そんな日を病人の看護なんぞに費やしてていいのか?」
「・・・」
「別にさ、俺一人家に残ってたって何も恨んだりしないからさ、巴は好きなように楽しんでくれば・・・」

心の動揺を誤魔化す為に出た何気ない言葉、空に浮かぶ白い月に影が差す様に巴の表情に少しだけ憂いが篭る。
スッと重なる凛と澄んだ瞳、なんだかやたらに儚さを含んだその瞳が壊れてしまいそうで押し黙ってしまう俺。

「・・・バカ」
「は?」
「ねぇ、お兄ちゃんはこんな風にボクとイブを過ごすのは・・・イヤ?」
「聞いてたのは俺の方なんだけど・・・」
「いいから答えて、どうなの?」
「ま、まぁ・・・むしろ、ありがたい」
「じゃあ、いいんじゃない?ボクも同じ気持ちだから」
「同じ?巴もありがたいのか?」
「うん、そうだよ」

先程とは打って変わってサバサバした口調で笑ってみせる巴、俺の方は解けない謎ばかりで疲れが増すばかり。
熱を持った頭で一人、その意味と訳を探し続ける。
巴と俺の違いとは何なのか、謎解きの鍵が突然に放り投げこまれる。

561 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/12/25(月) 19:50:33 ID:kgQoUlsx
「それに、今年は流石にお兄ちゃんは迎えに来れないと思うから」
「ああ、去年の事な・・・今年と真逆の立場だったな・・・」

寒空の下、大きなクリスマスツリーに祈りを捧げる巴の姿を思い出す。
綺麗に彩られたイルミネーションが町の幸せを、この日ばかりは悲しみも全てを呑み込んで光を放つ。
クリスマスは誰もが幸せそうに見えるもの、誰でも幸せのきっかけを掴めるもの。
そう、そんな事すら俺は忘れてしまっていた。

「・・・ごめんな、巴」
「・・・?急にどうしたの?」
「結局、子供の頃の約束は守れなかった・・・十年後にって約束は」
「・・・ううん、お兄ちゃんは覚えていてくれた、それだけで・・・ボクは幸せだよ」
「じゃあ、針千本は勘弁してくれるか?」
「約束は延長にしてあげる、あと五年延長、ね」
「・・・イヤに生々しい数字なんスけど?」
「約束だからね、お兄ちゃん」

そっと重ねられた手の平から伝わる温もり、窓の向こうの凍てついた世界に鮮やかな白い雪が舞い降りる。
真冬の空に鈴の音が鳴り響く、厚い雲の下で光輝く小さなこの世界。

「・・・ま、五年後、巴が俺に愛想尽かしてなければな」

上手くはいかない事ばかりの世の中に大きな欠伸をして俺はゆっくりと瞳を閉じる。
俺の願いは叶わなくともどうか巴の願いが叶いますように、そう祈りを込めながら。

562 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/12/25(月) 20:11:34 ID:kgQoUlsx
───────────────────────
時計の針が夜を指し示す頃、アスファルトに染みを作っていた雪が街を一面の銀世界へと変えていく。
どれ位の時間、こうしていたのだろう?
ただ規則正しい寝息を立てる穏やかな寝顔をぼんやりと見詰め続けて気が付けば夜の帳はすっかり下りていた。

「・・・ボクがお兄ちゃんに愛想尽かしてなかったら、か・・・」

何時間か前のお兄ちゃんの言葉をもう一度、反芻する、そうやって何度も繰り返してみても可笑しな言葉。
・・・そんな事・・・ある訳、無いのに・・・
暖かい唇にそっと指先で触れ、夢の中へと届くように囁く。

「ねぇ、お兄ちゃん・・・ボクは分かってるんだよ?今の幸せがどれほど脆くて儚い物なのか・・・」

運命はとても弱くて、ほんの少しの偶然で幾らでも形を変えてしまう。
ボクとお兄ちゃんは後どれ位の間、一緒にいられるのだろう?
・・・そう考えると・・・泣きたくなる程・・・悲しくなる・・・
世界にお兄ちゃんの代わりになれる人なんて誰一人いない。
我が侭も強がりもボクが大嫌いなボクでさえ全部それが当たり前だといつでも受け止めてくれる。
けれど、惜しみない優しさは手掛かりの無い優しさ、どうしようもない切なさが胸の奥底に深く降り積もる。
ボクが愛している分だけボクを愛して欲しいなんて言わない、お兄ちゃんの全てを手にしたいなんて言わない。

「・・・ボクの想いはただ一つ・・・」

寒い冬は温もりを分け合って、二人で桜の咲く遠い春を待ち続けて、そんな毎日が大切な宝物で。
いままでと何も変わらない、ありふれた何気ない日常を・・・ただ二人で・・・
・・・神様、ボクは綺麗なクリスマスツリーも豪華なプレゼントも要りません・・・

「・・・どうか・・・これからもあなたの側に・・・大好きだよ、お兄ちゃん・・・」

──聖なる夜に永久の祈りを──

──愛しき人に口付けを──

563 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/12/25(月) 20:34:38 ID:kgQoUlsx
一日遅れでのイブ話、しかも前回投下から間がエラく開いてしまった・・・
話の内容の薄さも含め、なんか色々とスイマセン。

>遊星さま
いつもながらのいい仕事っぷりに感動です!!
みんな個性が上手く引き出されていてお見事としかいい様がありません。
葵ちゃんが可愛い過ぎる、もう巴さんでは太刀打ち出来ないなぁ・・・
個人的には澪ちゃんがツボでした、これはもう最高のクリスマスプレゼントですw

>すばるさん
いや、待ちに待っていましたよ!!
夢亜ちゃんの話が読めて感動です。
正月話に期待しております、すでにバレンタインとかも期待してますw

564 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/12/26(火) 00:06:53 ID:lHhkXKSB
俺は、
なんだかんだあってもイベントには投下してくれる皆が大好きだ




だから、だからね?たまには姉g(ry

565 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/12/26(火) 02:12:55 ID:tIg76mUJ
遊星さん、夢ノ又夢さんGJ
俺もイベントには律義に投下してくれる職人さんに感謝
すばるさんイベントネタの投下と続き待ってます。

566 :遊星 ◆isG/JvRidQ :2006/12/26(火) 18:36:58 ID:vDZyvXan
規制の巻き添え中……トリップ合ってるかな……
ケータイからなんで多少の見苦しい点は申し訳ない。

〉夢ノ又夢先生
やっぱり先生は凄い方です。
いつも幸せな雰囲気の作品で、微笑ましい気持ちになります。
自分もそういう作品を目指したいですね。
次回も期待してます。

〉すばる先生
今年で最後最後と言いつつ、また今年も書いてしまいました……w
正月モノも書きたいんですけど、
ネタも無い。時間もない。遊星はダメな男……
すばる先生の作品も楽しみにしてます

>>564さん
姉もね、書こうと思ったんですよ?書こうと思ったんですけど……タイムオーバーでした。
かなりテンション上げないと書けないですね、あの姉弟のノリは……。

567 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/12/28(木) 19:01:13 ID:lGTjjjcS
規制解除記念に意味も無くレス。
気分良いから、文化祭モノでもzipとかで上げてしまおうか!

568 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2006/12/29(金) 08:39:47 ID:61c9ZlQl
「…………」
何者にも入り込む事の出来ない、沈黙の支配する空間。彼の者と対峙。
静寂こそが絶対であり、沈黙を破る者に留まる事は許されない。
全て者が俯き、顔に活気はない。
あぁ…何故気が付かなかったのだろう……。
「……お兄ちゃん。」
―――知っている。決して沈黙が破られる事は無く、破ろうとする者に与えられるは孤独。
「…………」
視線が宙を彷徨う。
そこに陽の光は存在せず、在る事は許されない。
彷徨った視線に映るのは作り出されたまやかしの光と兄と呼ぶ者の顔。
あぁ…何故気が付かなかったのだろう……
この人が商店街に来て、本当にぶらぶらするはずがないのだ。

―――――――――――――――
規制解除記念おふざけ。

>夢ノ又夢さん
私こそ待ちに待っていましたよ!相変わらず良い仕事をしてらっしゃるw
そこまで歓迎して頂いたら私ものうのうとゲームをやっている訳にもいきません。
という事で努力します。

>>565
夢亜の続きはノリで書いていたら段々長くなってきていまして…もう少々お待ちを……。
イベントネタは……来るか来ないか分からない、というのも楽しい……と思いません?w

>遊星さん
ネタも時間も無くても何とか捻出する。そんな遊星さんに続ける様に精進しますです。
ネタと言えば、純粋に字書きとして遊星さんの来年のバレンタインのネタが楽しみですw

569 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/01/01(月) 04:10:54 ID:rlhMPb99
明けましたおめでとうございます。
今年もよろしくお願いしますという意味も込めて、新年一番手いきます。

――――――――――
「さて、と……何処か行きたいとこ、あるか?」
 とは言ってみたものの、俺の視界に映るのは赤みを帯び始めた冬の気の早い太陽と、その赤にも負けない程見事に朱みを帯びた頬をした膨れっ面の夢亜。
 そこまで暇だったのなら声を掛ければいいものを……また気を使ったつもりなのだろう……が、俺としてはこうなる前に声を掛けて欲しいのだが……。
「知らない。お兄ちゃんが行きたい所に行けばいいじゃない。」
 ぷい、とそっぽを向きながら答える。
 行きたい所がないから聞いているのだが……いや、あるにはあるが、行くとまた夢亜を怒らせ兼ねない……というのが正しいか。
「まぁそう怒らずに。ほら、ガムあげるから。な?」
 財布に入っていたガムを取り出し――いつから入っていたかは謎だ。入れたのを忘れるくらい前に入れた物なのだろうが――夢亜に差し出す。が、受け取る事は無い……だろうな。
 いくら夢亜でも、さすがにもうこんなもので機嫌が直ったりする歳でもない。
 それに、万が一受け取られたら夢亜が明日お腹を壊す事になり兼ねない。
「……何味?」
「そうだよな。いくら夢亜でも……って、味……?あー…梅……?」
「じゃあいらない。」
 味によっては受け取るつもりだったのか……恐ろしい……。
「そ、そうか……」
 ついつい天を仰ぐ。
 ああ、何故こんな状況になったのか……。

―――――

570 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/01/01(月) 04:12:53 ID:rlhMPb99
 お昼過ぎに出掛ける兄に付いて行く事になり――私が引っ張って来た気もするが――、商店街まで来た。
 休日のこの時間の商店街は最近あまり来ていなかったのだが、久しぶりの晴れのせいか普段からこうなのか、結構な人がいて、少し気後れしてしまう程賑わっていた。
「ねぇお兄ちゃん。ここって、こんなに人多かったっけ?」
「んー、いつもはここまでいない気がするけど。まぁ、久しぶりの晴れだし、年末だし、こんなもんなんじゃないか?」
 私としては年末なのだから、というより私が外に出るときはもう少し、なんというか……エトセトラな方々には火燵の中で丸くなっていて欲しい。
 別に嫌い、という訳ではないが、どうも人ごみは好きになれない。
「こんなものなんだ……。」
「……迷子にならないように手でも繋ぐか?」
「まい……迷子になんてなる訳ないでしょ!?」
 ……しまった。
 人ごみに気を取られていたせいか、また兄の悪ふざけに乗ってしまった。
 手を繋ぐ、というのは――理由はともかく、随分魅力的な提案だったのに……なんで別の乗り方が出来ないのか……。
「そっかぁ……夢亜ももうそういうのが恥ずかしいお年頃になったんだね。お兄ちゃんの元を離れていく妹……お兄ちゃんは寂しくなるけど応援しているよ。」
 「よよよ」等と白々しい泣き真似をする兄。
 馬鹿にされている。というより侮辱されている気がする……ここまで人の神経を逆撫でするような事を何の間も無く出来るのは、もう才能としか言い様がない。
 恐らく兄は、人ごみに気構えている私に気を使ってふざけているのだろうが――気を使っていなくても普段からふざけてるが――、そのせいですれ違った人にくすくす笑われていたのが恥ずかしくて気に入らない。
「……バカ。」
「悪い悪い。さて、夢亜はどこか行きたいところあるか?」
「特にないかな……お兄ちゃんは行きたい所ないの?」
「俺が行きたい所……ねぇ……。無い事もないけど、それは一人の時でも行ける……ていうより一人の時にしか行かない事にしてるから。」

571 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/01/01(月) 04:13:23 ID:rlhMPb99
 ……イケナイ所にでも行ってるのだろうか。
 いやいやいや。兄に限ってそんな事あるはずがない。だが、兄も一人前の男だ。それは私がよく知っている。
 兄が一人でしか行かない所とは……正直、とても気になる。
 あくまで妹としてであって、決してやましい事などない。
 て、何故自分に言い訳しているのか。自分で『やましい事をしてますよ』と言っているようなものではないか。
 馬鹿か私は……。
「別に私は気にしないでいいよ?本当に暇だから付いて来ただけだから。」
 ともかく、ここは是非兄がどこに行くのか突き止めなければ。もちろん、兄――家族を心配する者として。
 兄が気になるような事を言うのが悪いのだから、誤魔化そうとしても少しくらいしつこく聞いてもいいと思う。
「そう?んじゃ行きますか。我が聖地、○○書店へ。」
「本屋!?」
「そうだけど……何かマズッた?」
「……そんな事、ない、けど……だって、一人の時しか行かない所って言うから……」
「……どこに行くと思ってたんだ?」
「え!?それはその……えーと……」
 そんな事言える訳がない。
 兄がその……そういう所に行っていると思っていたなんて……。
「それはその……なんだ?」
「その……あれ……とか……」
 あぁ、兄の顔が眩しい。そんな楽しそうな顔をするのか……。
「あれ?あれってなんだ?俺には話がよくみえないなぁ。」
 分かっているくせに。私が勘違いしてた。また勝手に先走ってた。
 認めるからからかわないでほしい。
「あぁ〜!何でもいいでしょ!行くなら早く行こ!早くしないと陽が暮れちゃうよ!」
 強引に兄の手を取って歩き出す。
 不満そうな顔をしながらも付いて来てくれる兄。
「おいおい。何でもよくないぞ。夢亜は俺を何だと思ってるんだ?」
 何だと思っているか?そんな事決まっているではないか。今も昔も、そして多分これからも……ずっと変わらない。
「何にも思ってない!人を困らせるのが好きな変態でしょ!」
「何も思ってないって……変態って思ってるんじゃないか。」

572 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/01/01(月) 04:14:09 ID:rlhMPb99
「思ってない!バカ!」
 外見では怒っているのに、仕事を始めてからも会いに帰って来てくれるのが嬉しい。こんなやり取りを出来るのが嬉しい。そう考えるだけで顔が綻んでしまう。それが何よりの証拠だ。
 しばらく兄に顔を見せられない。
「ところで夢亜さん……」
「あんまりしつこいと女の子にもてないよ!」
「いえ……そうじゃなくて。俺がいつも行く本屋……逆です。」

―――――

 本屋に入るまではあんなに騒がしかったのに、俺が一体何をしたというのか。
 ただ本屋で二時間程立ち読みをしていただけだ。
 俺としてはかなり早く店を出たのだから褒めて欲しいくらいだ。
 一緒に居たのが広司なら、涙を流しながら褒めてくれていただろう。
 街中で男に涙を流しながら褒められるなんて姿、想像しただけで寒気がするが。
「…………」
 なんて余計な考えをしていると――人の考えが読めるのか、無言の圧力を掛けてくる娘が一人。
「そんなにガムが欲しかったのか……すまないな。君の好みのガムを用意出来なくて……。」
 瞬間、俺に背を向けていた夢亜の右足が引かれ、それに合わせて流れるような動作で右肘が俺の腹部に……
「ぐは……っ!」
「……何か言った?」
 こいつ……一体どこでこんな体捌きを……。
「……姫様が暇をしているのに気付かず、本当に申し訳ない、と。」
「分かってるならいいよ。」
 いつか姫から女王様になる日が来るかもしれない。
 それだけは何としても防がなければ……。
「姫!こんな私を許してくださりますか!なんと御心の……」
「それはこれは別。」
「そうですか……。」
 昔ならこのまま流されていたのに、夢亜の成長が早いのか、時の流れが早いのか、最近はもう簡単には流されてくれないらしい。
 それにしても……腹がまだ痛む……。

573 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/01/01(月) 04:19:17 ID:rlhMPb99
「でも……反省してるなら、許してあげてもいいよ?」
 試すような顔だけを向けての上目遣い。
「これでもかと言う位反省しています。」
「じゃあ、許してあげる。」
 そう言って以前より少し伸びた髪を靡かせながらくるり、と音が聞こえそうなくらい軽やかにこちらに向き直り、夕日を背に満面の笑みを見せてくれる。
 長い睫毛に靡く髪、怒っていたとは思えない笑顔。
 夕日に照らされるその姿は一枚の絵のように。
 同時に、決して絵では表せない程の輝きを持って夕暮れの街に佇む。
 これは反則だ……今日の夕日は、眩しすぎる。

――――――――――
と、いう訳でコミケ行ってたら年末ネタ落としてしまいました。
お正月ネタは予定は予定であって……というやつです。
何かとスローペースですが今年も職人さんに混じって投下していこうと思うのでお付き合いお願いします。

574 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/01/01(月) 23:02:13 ID:5x+zxIvu
あけましておめでとうございます。
台本も書かんと、雑談ばかりで恐縮ですが。

>すばる先生
乙です。
二人の関係が良い感じで、いつかこういう兄妹が書けたらなぁ。と。
何はともあれ、次回を期待してます。

575 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/01/08(月) 00:05:39 ID:Ew02/Pob
グッジョブです!

576 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/01/13(土) 01:06:30 ID:ehgorI5d
遊星さん>
お褒めの言葉どうもです。
私としては遊星さんの萌え分を分けて頂きt(ry

>>575
お褒めの言葉どうもです。
萌えがなくて申し訳ないです。

妹「お兄ちゃん、今は冬だよ?冬眠しなくて平気なの?」
次回の投下はまだ未定ですが、それでは。

577 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/01/15(月) 21:43:38 ID:mxyrY3Fq
保守ー

578 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/01/18(木) 21:42:45 ID:OOSENf3D
保守……

そろそろバレンタインだよなぁ……。俺今年でバレンタイン何年目だろ……。
いや、まぁ、翼とか葵のバレンタインは書いて面白そうなんですけど……如何せんネタが……。
書いて欲しい妹とかあったら、いまなら考えられるんだけどな……ある訳無いか。

あ、夢ノ又夢先生の作品を去年から楽しみにしてますからね。
せいぜいその前座が務まるように頑張りますよ。

579 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/01/18(木) 21:55:03 ID:smbPPzNe
遊星さん、葵と未来が特に読みたいです!

580 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/01/21(日) 16:34:13 ID:xJZmHoVD
かなみ

581 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/01/21(日) 21:06:27 ID:OSw3gbU3
杏ちゃん 読みたいです。


582 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/01/22(月) 16:29:56 ID:nFAmOrHj
>>579さん
葵と未来……
個人的には、未来の位置はもう完全に葵に譲ってしまった感があるんですけど……分かりました。頑張ってみます。
……もちろん、保障は出来ません。

>>581さん
まさか杏が来るとは……。
どんなキャラかすっかり忘れてしまっているので、上手く書けない可能性が……。
自分の努力なんて、たかが知れていますが、一応努力します。

583 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/01/23(火) 23:43:40 ID:/C9LGAiZ
>遊星先生
文化祭モノはもう上げて頂けないのですか?

584 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/01/24(水) 08:42:53 ID:A/V0BeGT
たまにでいいから…節分がある事……思い出してあげてください……ばーいゆうな

>>遊星さん
双子の話が読みたいです。
って、これじゃ去年より増え……

>>夢ノ又夢さん
遊星さんに続いて私も楽しみにしてますよw

585 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/01/24(水) 15:00:08 ID:gPY8JiyO
>>583さん
文化祭のは、見事に反応無かったんで……。
まぁ、自分としても季節外れだしやめとこうかな、と思ってるんですが……欲しい?

>すばる様
双子ですね。かしこまりました。

つーか、まさかこんなにリクエストがあるとは思わなかったんですよw
これもどうせ華麗にスルーされるんだろ。くらいに思ってたので、自分で自分の首を絞める結果に……
嬉しい誤算。と言うべきですか。
……まぁ、リクエストがあったからには書くつもりですんで。あとはこれ以上増えないことを祈るばかりw

586 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/01/24(水) 21:56:46 ID:CsF9kpHF
583です
俺は季節外れでも読みたいっす…

587 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2007/01/28(日) 22:36:52 ID:E24/pcmB
去年書いたバレンタイン話、先程読み返してなんか無かった事にしたくなって
きました。
いや、正直自分で割と良く書けたと思うのは一番最初の一作だったりします。
なんか段々と退化していく気が・・・
>遊星様
上記の通り、バレンタイン話は期待されるには値しない物であります。
遊星神のSSに期待してますよ。
出来れば梨那ちゃんが読みたいのですが他のリクエストの後に余裕がありまし
たら是非に、という事で。
後、文化祭話も586さんに激しく同意して期待しております。
>すばるさん
むしろ期待してるのはこちらの方ですよ。
夢亜ちゃんのバレンタイン話が是非とも読みたいです。

ところで巴ですが立ち位置を葵ちゃんに譲りつつある今、バレンタインを機に
そろそろ楽隠居させようかともふと思ったりするのですがどうでしょうかね。
単純にネタが切れてきたのもありますが・・・皆さんの意見を求む。

588 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/01/28(日) 22:42:47 ID:xnm1heTp
巴の現役続行を希望します!

589 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/01/30(火) 02:33:12 ID:CnS4ffhe
バレンタインは新キャラ登場予定。でも、あくまで予定です。

>>遊星さん
私も文化祭読みたいに一票ですー。期待してます。

>>夢ノ又夢さん
夢亜ですか……ここだけの話、実は>>573はまだ途中なんですよね……
でも、リクエストしていただいたのでそれは置いといてバレンタイン夢亜、書きますw

葵と巴……葵が直球ど真ん中豪速球でストライクな私としては葵が…でも…巴さんを捨てる、なんて…出来ない……っ!

590 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/01/30(火) 17:34:45 ID:ayq41ORZ
未来、葵、杏、双子、梨那……。時間があれば、望、翼、澪も書きたいけど……。

>夢ノ又夢先生
いや、全然ウチの葵はまだまだですよ!
っていうか、巴ちゃんは俺の永遠の目標到達地点なんで……
俺なんかワガママ言えた身分じゃないですが、
もっと巴ちゃんの話が読みたいんで、隠居なんて悲しいことを言わずに、またネタを思いついたら書いてください。

>すばる先生
文化祭は……バレンタインがダメだったときの保険にしてしまおうかと……。
いや、テストさえ無ければ……ネタは考えてるんですけど……。

591 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/02/03(土) 00:39:05 ID:A5hp5lyf
突然ですが、今日は節分なのです!節分といえば豆撒きに恵方巻き。ちなみに今年の恵方は北北西です。
私、朔<<さく>>は兄さんと『良い感じ』の節分を過ごす為に福豆と恵方巻きを買ってきました。
「兄さん、今日は何の日か知ってます?」
「朔の誕生日?」
「違います……」
考える風もなく答える兄さん。私の誕生日、この前祝ってくれたのにもう忘れちゃったんですか……。
「じゃあ俺の誕生日?」
またもや考える風もなく答える兄さん。実は私と話すの、嫌なんでしょうか?私、部屋に戻った方がいいでしょうか?
「それも違います。っていうか自分の誕生日覚えてないんですか?」
「はは、冗談だよ冗談。母さんの誕生日だよね?」
「違います!なんでさっきから誕生日なんですか!」
「なんか嬉しそうな顔してるから、誰かの誕生日なのかなぁって思ったんだけど……あぁ!父さんのか!」
これだ!といわんばかりに笑顔で答える兄さん。
今のはちょっと……ううん。結構頭にきました。どちらかというと私、いつも嬉しそうにしているタイプです。
「だから誕生日じゃないです!今日は2月3日!節分です!」
「あ〜。そっかそっか。そういえばそうだったね」

592 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/02/03(土) 00:39:59 ID:A5hp5lyf
これでやっと話が進められる……。私が、兄さんを誘う……。誘うって、なんか卑猥……って、何考えてますか!
あぅ……ちょっと緊張してきました。
「それで、ですね、豆……」
「でも、流石にこの年になると豆撒きとかしたいと思わないよねー」
「……」
うぅ……泣いてもいいでしょうか。私はこの年になっても豆撒きとかしたいんです。
「それで、節分がどうかしたの?」
たった今兄さんがしたくないと言った豆撒きをしようとしていました。鈍感な振りして、実はわざとやっているんじゃ……?考えたら、いくら兄さんでも今日の兄さんは鈍感過ぎる気がします。
「……それだけです」
「そう?」
落ち込んでいるのがバレたくないのに、どうしても声が沈んでしまいます……仕方ないじゃないですか。だって、兄さんと何かした事ってまだ余りないし……楽しみにしていたんですから。
「はい。私、部屋に戻りますね…」
とぼとぼとドアに向かう私。
「……もしかして、また何か気に触ること、言っちゃった?」
流石の兄さんも私の変化に気付いたのか、少し心配そうな声で聞いてくる。
でも、もう遅いです。今の私は不幸のど真ん中。豆撒きなんてしたら鬼と一緒に追い出されてしまいます。
「別に。何も言ってないです。バカ」
部屋を出た後、背中のほうで兄さんが何か言っていたけど、私は意識して聞かなかった。そして、兄さんも私の後を追いかけて来てはくれなかった。

593 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/02/03(土) 00:40:37 ID:A5hp5lyf
明かりを点けていない私の部屋は暗くて、去年の年末大掃除のおかげか、物寂しいくらい綺麗に片付いていて、まるで私の心をそのまま映し出したみたい。
「兄さんの、バカ……」
私だって、この年になってそこまで豆撒きをしたいとは思いません。でも、兄さんとはまだやった事がないから……。
「これ、どうしましょう……」
机の上には今日の為に用意した福豆と恵方巻き。今は何か食べたりする気分ではないけど、恵方巻きは無言で食べるものらしいし、今の私にはぴったりなような気がして、恵方巻きを食べる。
やっぱり、美味しくない……。一人は寂しくて、心が寒くて、口に入れた恵方巻きも冷たくて、お葬式で出たお寿司を思い出した。こんな食べ方して、本当に福が入ってくるんでしょうか。
兄さんなら『気持ちの持ちようなんじゃないかな?』なんて言うんでしょうが、今の気持ちじゃ福なんて入ってくる気がしないです。
「はあ…なんで……」こんなときでもにいさんの事考えてるんでしょう……。
兄さんとはまだ、一緒に暮らし始めて……兄さんが兄さんになって一年も経っていないのに、いつからこんなに私にとって大きな存在になったんでしょう。
そういえば、何でだったでしょう……私が、常に敬語を使うようになったのは。たしか……

――コン、コン――

ノックの音で今の考えを振り払う。この家の人には、落ち込んでいる姿を見せたくないから。なるべくいつも通りの声を心掛ける。
「はい?」
「俺だけど……入っていいかな?」
え?入って……?
目の前には恵方巻きと未開封のままの福豆。
「あ、えと……ちょ、ちょっと待ってください!」
「うん」

594 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/02/03(土) 00:41:09 ID:A5hp5lyf
こ、こんなの見られたら最悪です!兄さんなら、私が一人で節分してたと思うかもしれない……これじゃあ私、可哀想な人じゃないですか!
どうしましょう?隠せる所……隠せる所……あ!隠すといえばベッドの下で―――ゴツン―――
「いたぁっ!」
あ…頭がベッドにぃ……うぅ……
「だ、大丈夫?今凄い音がしたけど、どうしたの?」
「いえ!なんでもないですっ!どうぞ!」
「う、うん。お邪魔します。て、暗いね」
「え…?」
それは……私が、でしょうか?
「電気、点けないの?
「あ…ああ!忘れてました!」
そういえば電気を点けてませんでした。慌てて電気を点け―――ガンッ
「いたっ!く、なん、て……やっぱり痛い……うぅ……」
足……小指が、壁に……泣きたい……
「だ、大丈夫!?」
慌てて私の元に来る兄さん。こういう反応は早いのに、なんで鈍感なんでしょう?天は二物を……というやつでしょうか。
って、今はそんなことではなくて……急いで立ち上がり電気を点ける。
「だ、大丈夫です!そ、それで、どうしたですか?」
「大丈夫ならいいけど……。あれ?朔ちゃん、ちょっと……」
急に兄さんが顔を近付けてくる。優しい表情……私を心配してくている顔……兄さん……。やっぱり、私は……
「…く…ちゃん……朔ちゃん」
「はっ、はいっ!なんです!?」
見惚れてました……不覚です……。兄さんが急に顔を近付けてくるから……ん?兄さんの顔が近く……顔が、近……っっ!!
「おでこが少し赤くなってるけど大丈夫?って聞いたんだけど……どうしたの?ぼうっとして。それに何か顔も赤いみたいだけど……風邪?」
「い…いえ…その……なんでも……ない…です」
「ん〜、それならいいけど……ちょっとごめんね」
コツン。と兄さんのおでこが私のおでこにあたる。
「……へ……?に、兄さんっ!?」
た、確かに兄さんとなら……じゃなくてこういうのはやっぱり順序というか…いえ!血は繋がってなくても私たちは兄妹で……でも、兄さんなら嬉しいというか……でもやっぱり順序というかなんといいますか心の準備が……
「う〜ん……熱は無いみたいだけど……って、さっきより赤くなってるみたいだけど、本当に大丈夫?」
「……へ?」

595 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/02/03(土) 00:41:44 ID:A5hp5lyf
えーと……これは……いわゆる勘違い、というやつでしょうか……?
「ちょっと待ってて。今薬持って来るから。」
「ま、待ってください!大丈夫ですから!」
「え?でも……」
「大丈夫なんです!そ、そう!さっきまで動いてたから!それで顔が赤くなっているだけで!ほら!おでこもそのときに!」
…………。
とっさのこととはいえ、なんと下手な嘘でしょう……。こんな嘘を信じる人なんて……
「そう?気をつけなくちゃダメだよ」
いました。
いくらなんでもこんな嘘に騙されるのはどうかと……。ま、まあ、これで窮地は脱出出来たので一件落着。……いいんでしょうか、こんなので……。
「はい。気をつけます」
「とりあえず、いつまでもここで話してるのもなんだし座ろう?」
そういえば、ずっと電気のスイッチの近く―――部屋の入り口でした。なんか……回覧板を回してきた近所の奥様たちの立ち話みたい……
「そうですね」
私、まだそんな年じゃない……。



兄さんと二人、ベッドに腰を掛ける。
「ふう」
改めて窮地を脱出した事を認識して安堵の息を吐く。
隣には兄さん。この部屋にさっきまでの陰鬱な雰囲気はもうない。今は、別に節分に拘らなくても、兄さんとならいつでもなんだって出来る気がする。
兄さんの隣にいると、そんな気がしてくる。これが兄さんの持つ雰囲気で、兄さんの優しさ。
そう。兄さんは私の兄さんで、いつか別々になる日が来るかもしれないけど、それは私が思っている程先のことではないのかもしれないけど、少なくとも、少なくとも今は一緒にいられる。まだ、しばらくは同じ時間を過ごすことができる。
だからそんなに焦ることも無い。そう思える。
「ところで朔ちゃん」
「なんです?」
心と一緒に声も軽くなる。体も軽く感じる。今体重計に乗ったら、感動する程少ない数値が出るんじゃないでしょうか。……せっかくいい気分なんで乗りませんが。
「さっきまで電気消して何してたの?」
「恵方巻きを食べてました……て……あ」
バカ!私のバカ!口まで軽くなってどうするんですか!さっきまでの嘘は……私の努力は……一体……やっぱり、泣いてもいいでしょうか……。

596 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/02/03(土) 00:43:39 ID:A5hp5lyf
「恵方巻きって確か恵方、とかいう方角を向いて食べる節分の食べ物だよね?動きながら恵方巻きを食べてたの?相変わらず朔ちゃんは面白いね」
私変な人になってる!電気消した部屋で動きながら恵方巻き食べて、頭打つって……兄さん、おかしいと思わないんですか……。ううん。お願いです。思ってください……。「あははは」なんて笑ってる場合じゃないです!
「兄さん、泣いてもいいですか?うぅ……」
「え?あれ?またおかしなこと言っちゃった?」
おかしいと思わないことがおかしいです……それともあれですか?やっぱり私が嫌いですか?そんなに変な女の子に見えますか?
「ごめんね。さっき僕のせいで朔ちゃんが落ち込んじゃったみたいだったから、理由を考えてたんだけど分からなくて。とにかく謝って励まそうと思ってきたんだけど……」
「え?」
さっき追いかけて来てくれなかったのは、考えてたから……?兄さん、私を励ます為に来てくれたんだ……
「やっぱり僕はちょっとずれてるのかな。正直、今も朔ちゃんがなんで落ち込んでるのか分からなくて。嫌われちゃうようなこと、言っちゃったかな?」
「ふふ」
そんなことないです。兄さんがいるから私は元気でいられるんですよ。
「え?なんで笑うの?今のはおかしなこと言ってないよね?」
「いいえ。言いました。とってもおかしなこと」
だって、一人ぼっちになった私を、いつも笑顔で支えてくれた兄さんを、また一人じゃないって思えるようにしてくれた兄さんを、嫌いになれるはずないです。
嬉しくて、おかしくて、笑いがこぼれてしまう。
「そんなに笑わなくても……」
「すみません。すごくおかしかったから、つい。あ、そうだ。兄さんも食べます?恵方巻き」
「……話逸らしてるよね?」
「はい。逸らしてます♪いいじゃないですか。食べましょうよ。食べてくれないと無駄になっちゃいます」
「それじゃあ断れないじゃないか……」
私が笑っていて、兄さんも笑ってくれる。
「そうですね。あ、実は福豆もあるんですよ。やりませんか?兄さんには子供っぽいかもしれませんけど」
「……今、朔ちゃんが落ち込んだ理由、分かった気がする……」
兄さんの笑顔は苦笑いだけど
「ばれちゃいましたね。一緒に、やってくれますか?」
「勿論。朔ちゃんとなら楽しくなりそうだしね」

597 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/02/03(土) 00:44:11 ID:A5hp5lyf
やっぱり最後には、いつもの優しい笑顔で
「はい!じゃあまず恵方巻きからです。今年の恵方は北北西なんであっちです」
その笑顔につられて私も更に笑顔がこぼれる。
「これ、本当に無言で食べなきゃいけないの?」
「はい。あっち向いたまま黙々と食べちゃってください」
「うーん……なんか陰謀を感じる」
「喋っちゃダメですって!」
「はいはい。じゃあ、いただきます」
渋々ながら無言で食べ始める兄さん。その横顔を存分に眺めながら、ずっと嫌いだった神様に、ひとつだけお願いをする。
―――どうか この幸せだけは こぼれませんように―――

――――――――――

598 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/02/03(土) 00:46:59 ID:A5hp5lyf
完全にヒロイン主観のお話です。少しはっちゃけたかった過ぎたか。
朔のイメージはうたわれるもののサクヤです―――キャラを壊し過ぎた感がありますが。

少し補完します。
朔ちゃんは「恵方は北北西」と言ってますが今年の恵方は壬の方位(北からちょっと西)、北北西だと人によっては少しずれてしまいます。
更に、「無言で食べる」なんて決まりもありません。どこの誰が始めたかは知りませんが中々面白かったので使ってみました。

最後に
なにか>>589でおかしなこと書いてしまった気がします。なんというか、葵と巴の名前、逆に書いちゃt(ry
どちらも好きということに変わりないので、ご愛嬌ということで……

599 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/02/04(日) 00:46:55 ID:UrR696zC
GJ!

600 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/02/05(月) 08:59:50 ID:RrT7Qz6E
>すばる先生
いいっスね、この兄妹。凄く気に入りましたw


コレほどの物を見せられちゃうとなぁ……俺、もうやる気無いなぁ……。

601 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/02/07(水) 10:14:44 ID:N5Acc8I3
一応、朔は>>589で書いた新キャラとは別の単発ちゃんです

>>599
どうもです。
名無しの方からレスが貰えるか不安だったので一日以内という速さにも感謝です。

>>遊星さん
どうもです。
夢亜と違って余計な設定がないので私自身も楽しく書けました。

場数が違うんでバレンタインは遊星さんの独壇場ですよ。
やる気ないなんて言わずにガンガンやっちゃってくださいw

602 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/02/10(土) 13:46:24 ID:HaVnLOHF
バレンタイン目前にして、スランプに陥った俺、参上。
まぁ、常にスランプみたいな出来ですけど……。
思いっきり理系の勉強しながら書いてるのも問題だね……。

つーわけで、
>すばる先生
どんだけ場数踏んでもスランプには勝てません。
……後は任せましたw

603 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/02/13(火) 16:27:42 ID:DZ2XhXrJ
現在のこのスレの容量:456KB
現在のバレンタインネタの容量:33.9KB

1スレ500KBまででしたっけ?
もう少し時間が取れそうなのであと100行は書こうと思っているのですが……
500KBまでだとやばいですね。
他にうpした方がいいでしょうか?
それか投下しない……

>>遊星さん
急に任されても私に遊星さん程の萌えもバリエーションもないのを分かってやってくださいw
ここは新規さんの登場に期待の方向で。

604 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/02/13(火) 22:24:48 ID:GclwDg8c
500KBまでですから……ヤバいっスね。
バレンタインも控えてることだし、新スレ立てちゃいましょうか?
……多分、無理だけど。

605 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/02/14(水) 20:19:30 ID:PGaHQUse
容量ピンチですし、自分の分はこっちでやっちゃいました……よかったら……。
ttp://www.geocities.jp/you_say712/20070214.htm

606 :No.2 :2007/02/14(水) 23:13:36 ID:u/S1W6rO
立てましょうか?

607 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/02/14(水) 23:48:30 ID:szBDMGHV
遊星氏、お忙しい中お疲れ様でした。そしてリクエストに応えて頂いて感謝です!

608 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/02/15(木) 00:39:16 ID:pBHypjBS
日付変わってしまいましたが……

つ【ttp://mtsm-web.hp.infoseek.co.jp/st.valentine_yua.html】
容量が面白いことになってしまったので携帯の方居ましたら……自分で何とかするか言ってくれれば私が何とかします。

>>606
いつもログ保管乙です。

まだスレを続けるかどうかの判断は名無しさんと他の職人さんたちに任せようかなーと。

609 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/02/16(金) 23:36:27 ID:furcdJYM
そういや、俺のまとめページはケータイで見えるのかな……。一応、俺のでは見えたけど……。
まぁ……見えなくても、どうすればいいのか分かんないですが……どうせ俺なんか……。

>すばる先生
さすがですね。凄いですね。
しかし、紫乃ちゃん可愛いなぁ……。


職人がいなくてもスレがあれば、希望はある。
ならば、次スレはあった方が良いと思いますが、如何でしょう。
とはいえ……まだ少し早い気が……480Kぐらいで立てれば良いかなぁ。

610 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/02/19(月) 00:41:28 ID:jfiUipDu
新スレ立てないの?

611 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/02/20(火) 01:16:46 ID:gddVRyV/
遊星さん>
この前初期設定を掘り起こしたら漢字が『志乃』と書いてあったのでどうやら漢字を間違えていたのですが、喜んで頂けたのなら良かったですw

なるほど。確かにスレがあるということはそう考えられますね。愚問でした。

>>610
遊星さんも、バカみたいな容量を無駄に書く私も他鯖使ったのでまだ容量に空きがあり、
夢ノ又夢さんの投下で容量がなくなるまでまったりしようかと思うのですがどうでしょう?

612 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/02/20(火) 01:58:39 ID:qqis7cCt
今度の新スレは新装開店して
萌え系ジャンルならば妹SSじゃなくてもOKのスレにするのはどうでしょうか?
メイド、ナースなど、色んな萌えSSのごった混ぜも楽しいと思うんですが・・・。

やっぱり駄目ですかね・・・?
職人さん達の妹SS以外の萌えジャンルのSSも読みたいと思ったもので・・・。

613 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/02/20(火) 18:42:48 ID:zpzwEKJZ
新スレはもうちょい後か。

614 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/02/20(火) 22:48:54 ID:wcuLDv+A
>遊星さん

杏リクさせてもらった者です。

レスが遅れましたがGJです。

モジモジ妹良いですなあ。個人的にはもっと
モジモジしてる方が好きかもしれません。

でも一番好きなのは未来ちゃんだったりします。

615 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/02/28(水) 00:46:25 ID:qgFMEk/7
保守保守っと……。

>612さんの意見を受けて、ナース妹を書き始めてみたり……。
結局妹かよ……。

616 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/02/28(水) 14:52:53 ID:yp0xHj8Y
保守ー

617 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/03/01(木) 02:23:16 ID:tUX2nEZG
>>すばるさん

GJです!
しょっぱいのでもいいから俺にも手作りチョコをください!w

618 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/03/02(金) 01:44:54 ID:ZxPmidNp
>>612
私はそういう方向の判断は皆様にお任せです。
ただ、そうなるといよいよ板移動の覚悟をしないといけないかなと……既に板違いなスレになっているので今更ですがw

>>遊星さん
遅くなりましたがバレンタイン話GJです!
ついさっきゆっくり2回ずつ読ませていただきました。

>>616
……ツッこんだほうがいいですか?

>>617
まさか自分がこういう感想をもらえるとは思ってませんでした。
レスを見て思わずにやにやしちゃったじゃないですかw
どうもです。こういうのは本当に励みになります。

でも、雛祭り・ホワイトデーは投下できるか怪しいです。

619 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/03/02(金) 22:55:23 ID:bN3K4waD
……ホワイトデー忘れてた……。
ま、いいか……毎年苦労してるし、今年は休みで……。

620 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/03/05(月) 16:27:23 ID:bLwv/Yy3
保守

621 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/03/10(土) 16:00:58 ID:A21AI8Lw
hosyu

622 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/03/13(火) 17:09:18 ID:2gOVwSMb
保守


623 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/03/13(火) 23:41:44 ID:7W3VXuYu
ホワイトデー投下期待してます!

624 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/03/13(火) 23:51:28 ID:7W3VXuYu
容量が足りなそうでしたら
次スレ立て挑戦してみますけど…いかがでしょうか?

625 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/03/15(木) 10:55:46 ID:mINGew5F
すいません……
最近ちょっと立てこんでてホワイトデーネタは書けませんでしたorz

626 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/03/15(木) 17:42:13 ID:xITWCe/P
……で、自分は何でまた、三月十五日にホワイトデーネタを書き上げるかねぇ……。
ま、読み返してみたらスレ違い気味だから、貼りはしないけどさ。

627 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/03/15(木) 18:44:40 ID:UjDzdoo+
かまわん、全力で貼れ!




お願いします貼ってください

628 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/03/15(木) 21:00:21 ID:xITWCe/P
「……もう明日なのか……」
何気なく見たカレンダーにふと足を止める。
今日は三月十三日。そして、明日はホワイトデー。
俺は一つの決断をしなければならない。
今まで避けてきた決断をすべく、大きく息を吸った。


『ボク……ずっとお兄ちゃんのことが……好きでした……』
丁度一月前。
小さなチョコレートと一緒に、ある女の子に告白された。
夕焼けを背景に、一つ一つ確かめるように言葉を紡いでいくのが鮮明に記憶に残る。
『すぐに返事してくれなくてもいいから……あと一ヶ月……ホワイトデーのときに返事を聞かせてください』
まさに、驚きだった。
ずっと兄妹同然に過ごしてきた十年間。
留衣はいつから、俺と違う気持ちで過ごしてたんだろう。
分からない。
分からないから怖い。
留衣は本当に俺のことが……。
「お兄ちゃん!!」
グイっと制服の襟を掴まれる。
「あ……?」
「お兄ちゃんの家、ここでしょ?」
「……ホントだ……」
……間抜けだ。恥ずかしい……。

629 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/03/15(木) 21:01:05 ID:xITWCe/P
「もう……」
「またな、留衣」
いつものように、挨拶をしてアルミ製の門を開ける。
まだ答えが出てないならそういえばいいのに、そんな勇気も無い。
逃げるように、と形容してもいいかもしれない哀れな逃走。
「あ……お兄ちゃん……」
俺の背中に留衣の声が刺さる。
「どうした?」
ギクリとして振り返ると……。
「……なんでもない」
目を逸らして、静かに呟いた。
「そうか……じゃあな」
「うん……また……」
今度は止められなかった。
いや、止めてもらえなかった。
このまま俺は留衣から逃げ続けるのかな……。
……情けない男だ……。
───────────────────────
今日という一日は留まることを知らず、一歩一歩確実に俺たちから離れていく。
このまま明日まで逃げるのか。
そんなことまで考えるようになっていた。
「……わかんないよ……」
留衣のことも。
付き合うってことも。
自分の気持ちも。
そして、気付けば逃げ道ばかり探している自分に絶望する。
そんなとき、
ピンポーン
玄関のチャイムの音が静かだった家の中に響いた。

630 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/03/15(木) 21:01:41 ID:xITWCe/P
「はい?」
頭を掻きながら、玄関に向かいドアを開けると
「こんばんは……」
留衣だった。
「よぅ……まぁ、上がれよ」
「いい……」
俯いたまま答える留衣。
しばし、沈黙が流れる。
「ボク……」
意を決したのか、留衣が静かに話し始めた。
「謝りにきたんだ」
謝りに……?
「一ヶ月前のこと……」
「……」
「いつか離れ離れになっちゃうことは分かってた。その前に、ボクはお兄ちゃんの妹以上になりたかった……」
「……」
「だから、ボクはあの時、勇気出したつもりだったんだ……でも、お兄ちゃんを困らせちゃう悪い勇気だったみたい。えへへっ……」
苦しそうな笑い声が、耳にこびりついたみたいに離れない。
「ボクが言うのは図々しいと思うけど、あれは忘れて!!それで、よかったら明日からいつも通り!!って感じで……」
ウソばっかり……声が泣いてるじゃないか……。
「留衣……」
「それだけ!!あ、別に、同情引こうなんてつもりないから。じゃあね!!」
去って行く彼女。
同情じゃない……でも、今なら言えるはずだ……。
「留衣!!」
「……何、かな……そろそろ帰らないと……お母さんが……」
足を止めた留衣は、振り返らず、俯いたまま答える。

631 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/03/15(木) 21:02:18 ID:xITWCe/P
「俺は、留衣のこと好きじゃないと思う」
「……聞きたくないよ、そんなこと……」
「留衣のこと……前の告白したときからずっと意識してるんだ。きっと、今から留衣のこと好きになると思う」
「……」
「気に入らないなら構わないし、とっくに愛想尽かしてるならそれでもいいけどね」
……ホントは全然よかないけど。
「そんだけ。引き止めて悪かったな」
喋らない留衣。ドキドキしながら動きを待つ。
「バカ……」
「え……?」
「もっと……なんていうかロマンティックだと思ってたよ……」
「あー……それは……悪い……」
「いいのっ」
振り返る留衣。
その瞳には涙と笑顔を浮かべて。
「ボク、今すっごく嬉しいから!!」
俺に飛びついてくる留衣。
俺の胸に、猫のように頬を摺り寄せて、
「へへっ……お兄ちゃん、好きだよー」
「……」
「照れてる?」
「少し……」
「その様子だと、ラブラブになるのもすぐだねー」
「なっ……!?」
バレンタインから始まった二人の間の騒動は、一つの終わりを見せることとなった。
二人が上手く行く保障は無いが……なんとなく大丈夫な気がしているのは、俺だけじゃないと思う。


ちなみにその日の夜。
「やべ……何か……すげぇ留衣に会いたい……」
もうか……。早いなぁ……。
───────────────────────

632 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/03/15(木) 21:02:53 ID:xITWCe/P
命令に弱いので、勇気出して貼ってみる。
ゆとり教育世代が全力出せばこんなもんですよ。こりゃ痛い。
妹感は薄いですが、今回みたいな幸せそうな純愛カップルが作品の一つの理想だったりします。
もちろん理想は理想です。現実にはなりません。
そういえば、ホワイトデー感も薄いですね。まぁ、ゆとり教育世代の理系男子ですので。

俺も何時かはケータイ小説が書ける位の文章力を身につけ……やっぱいいや。

633 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/03/16(金) 02:20:13 ID:XiDAb/m0
>>すばるさん
そうですか…残念です…
次回の投下も楽しみに待ってますー

>>遊星さん
さすがです!
2人が付き合いはじめた記念日がホワイトデーになるって良いですね。グッジョブ!

634 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/03/16(金) 02:38:12 ID:8b3bX01O
>>632
GJ!!
まったくあんたって人は、予想は裏切りつつも期待は裏切らねぇな。















最高だ

635 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/03/16(金) 05:10:16 ID:Kmhait2n
神はまだこのスレを見捨ててはいなかった!

636 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/03/18(日) 21:09:51 ID:N4TkBxT+
hosyu


637 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/03/21(水) 19:32:04 ID:i1xfpe4Q
あげる

638 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/03/28(水) 04:27:19 ID:wGCGAwuW
次に投下する話は「今日こそ絶対に殺しちゃうんだから!覚悟してね、お兄ちゃん!」から始めようかなーと……
まだ何も考えてませんがw

>>633
ということで、次回は上記の通りです。
最近字を書いていなかったので書けるか怪しいですがw

>>遊星さん
乙です!
ホワイトデーネタも軽々とこなしてしまうとは。さすがです。
正直、私はホワイトデーネタ全然思いつかなかったですよw

639 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/03/28(水) 21:29:07 ID:kPJh0NNP
完全に保守

640 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/03/29(木) 01:05:20 ID:EX80B43G
「今日こそ絶対に殺しちゃううんだから!覚悟してね、お兄ちゃん!」
春の日差しが舞い込む一室。
突然の大声とともにバットが振り下ろされ、穏やかな朝が叩き壊される。
「お前は孟浩然様のありがたいお言葉を知らんのか!」
容赦なく振り降ろされたバットを何とか避けたものの、○○の眠気は見事に吹き飛ばされる。
さっきまで○○が沈んでいたベッドには今は見事にバットの先端が沈んでいる。
「それ誰?その人は何か凄い事した人なの?それとおはよう、お兄ちゃん」
爽やかな笑顔で振り返りながらバットを片手に持ち直す暁《あきら》。
バットとまだまだ発育途上の体ではいささか不釣合いだが、バットは至る所に凹みがありその誤った使用法を克明に記している。
「おはよう暁。孟浩然とはな……まず『春眠暁を覚えず』という言葉は知ってるか?」
「知ってるよぉ?春は心地よくてすぐに眠くなっちゃうねって事だよね?」
「孟浩然はそれを詠んだ人だ。俺がなにを言いたいかわかるな?」
そう言いつつも後退りし、武器になりそうなものがないか探す。が、先手を打たれたらしく、至る所に隠しておいたはずの武器になる物が中々見つからない。
「それはわかるよ。一体何年兄妹やってると思ってるの?心地良い陽気だからもっとゆっくり寝たいんでしょう?」
くすくすと笑いながら近づいてくる暁。
○○は武器を探すのを諦め、徒手空拳で対抗する決意をし構える。
「そこまで分かってくれるなら大人しく寝かせてくれると嬉しいんだが」
「もう、お兄ちゃんはだらしないんだから。仕方ないなぁ……私が永遠に、眠らせてあげるっ!!」
言うが早いか、一気に間合いを詰めバットを突き出す。
「はぁぁぁぁぁ!!」
「甘い!!」
暁の突きをぎりぎりでかわし、次の突きを、もしくは横薙ぎを繰り出す動作に入る前に暁を突き飛ばし組み伏せる。
バットが空しくカランカランと音を立てて転がる。
「暁の負け。残念だったな」
言いつつ暁を解放しベッドに戻る。
暁は「いたたたた……」と嘆きながら腰を上げ、バットを拾い部屋の隅に置きベッドに腰掛ける。
「やっぱ不意打ちで決められないと勝てないかな」
「決まらないみたいだけどな」
○○と暁の実力は伯仲していない。
元々暁の護身の為に○○が剣術を教えているのだから当然といえば当然だった。

641 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/03/29(木) 01:06:21 ID:EX80B43G
しかしそれが暁の負けず嫌いに火をつける事になった。
始めの頃は一矢報いてやろうと枕を投げつけたり足を引っ掛けようとしたりという可愛いものだった。
それがいつからか不意打ちになり本気に。丸めた新聞紙を持ち出しそれが竹刀、木刀と変わり、今ではバットなんて物騒な物を持ち出してくるまでになった(勿論、バットなんて物騒な物持ち出すのは両親がいない時だけだが)。
最初は驚き戸惑いもしたが、今では両親がいないときの習慣になってしまっている。慣れとは本当に恐ろしいものだ。
「うぅー。いつか絶対にギャフンと言わせてやるー!」
言いながら「うりゃー」と○○の上に飛び乗る。
「ぎゃふん」
「うぅー!こんなんじゃなくてちゃんとしたときに言わせるのぉー!!」
駄々っ子のように○○の上で暁がぶんぶんと手足を振り回すここだけ見れば和やかな朝の風景だが不意打ちをちゃんとと言っていいものなのか、突然背後からバットで殴られてギャフンと言えるかは非常に疑わしい。

―――――

「…ん…んん……」
朝の名残もなくなり随分と陽が高くなってきた頃、手足を振り回すのに疲れて寝ていた暁が目を覚ます。
「おはよう」
「ん、ふあ〜……。おはよう……お腹空いた」
「もう昼だからな。何か食べにでも行くか?」
「うぅ…まだ眠いよぉ……」
暁は春の陽気のせいか朝の一件のせいか、眠気覚めやらぬ様子で出かけたくないと主張する。
「じゃあそうする?何かかってくるか?」
「えとね、お兄ちゃんが作ったご飯が食べたい」

――――――――――
何か自分でもよく分からない事になってしまいました。黒歴史が始まる悪寒です。
次も新キャラ書こうかなーと思ってます。

642 :すばる@携帯 ◆9l4B6y7T.Q :2007/03/29(木) 01:21:54 ID:ykBVV7GF
あ。主人公に名前入れるの忘れてたああぁぁぁぁぁぁ……
○○は何か名前を入れて読んでください。
私も春の陽気にヤられたか……

643 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/03/30(金) 01:12:57 ID:VsQdAoOX
グッジョブ!
エスカレートして釘バット持ち出さないか不安で仕方ありません…w

新キャラも期待!ですが、
お昼からのその後も読みたいところです。

644 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/04/01(日) 22:55:54 ID:sydRzNp8
今からエイプリルフールが終わるまでにエイプリルフールネタが書けるか挑戦。

>>643
釘バットを出すと「ぴぴるぴるぴるぴぴるぴ〜」が頭から離れなくなってしまうので出しませんw
お昼以後ですか。うーん、では近いうちに書いてみます。

645 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/04/02(月) 00:23:56 ID:OV25W1dn
無理でした(´・ω・`)
いくらなんでも何にもないところから一時間じゃかけない……

646 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/04/02(月) 01:36:58 ID:OV25W1dn
うららかな春の午後。春の陽気に誘われて散歩がてら学校の前を通った時、ふと校庭の隅のベンチに目をやると桜の舞うベンチに見知った顔がいて、偶然目が合う。
「あ!鉱せんぱーい!」
春の陽気が降り注ぐ公園で春を凝縮したような陽気な声が僕を呼ぶ。大声で。
校庭では部活をしている生徒たちもいて、少なくない生徒たちの視線を浴びる。
その視線が恥ずかしく、顔を赤くしながらその娘の下へ走り寄る。
「私が見えてからって走ってきてくれたんですね!もう……先輩ったらぁ♥」
「そ、そうじゃないよ……こんなところで、大声で名前を呼ばないで……」
少しの距離を走っただけなのに息を切らせながら抗議の声を出す。
「またまた先輩ったらシャイなんだからぁ。あ、でもでも、ゆなはちゃんと分かってるから大丈夫ですよ♥」
「何を分かってるのか僕には分からないけど……何をしてるの?」
「ここにいれば先輩と会える気がして……えへへへ」
はにかんだ笑みを見せながら上目遣いにこちらを見てくるこの娘は二階堂ゆな。
僕の後輩でとても元気……というかちょっと元気過ぎる娘だ。
小柄で線が細く、髪も短めでその上この性格なのでたまに小学……ではなく中学生と間違われる。
危なっかしくて放っておけない可愛い後輩だ。
「むむむ……先輩何か失礼な事を考えている気がします」
「そ、そんな事ないよ」
そしてたまにとても鋭い事を言う。
「いいえ考えてました!」
「……ごめん」
苦笑しながらも一応謝っておく。
「……ひどい。先輩までゆなの事を『身長だけじゃなく胸までちっちゃいなんてこれじゃまるで小学生だぜ。はっ』なんて考えていたなんて……」
「そ、そこまでは考えてないよ……ただ小柄で可愛いなって」
「え……可愛いだなんてそんな……えへへ……そ、そんな事ないですよ……あは」
「それで、僕に何か用があったのかな?」
「あ、そうでした!今日は鉱先輩にどうしても聞きたいことがあるんです!」
自分の世界から帰ってきて勢い込んで僕の目を見つめてくる。
そんなにまっすぐ見つめられるとちょっと照れるんだけど……。
「うん。何かな?」
「あの、その、話すと長くなるんですけど……笑わないで聞いてくれますか?」

647 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/04/02(月) 01:38:04 ID:OV25W1dn
「うん?何か分からないけど……なるべく笑わないように努力するよ」
「努力じゃダメですよ!笑わないと誓ってください!」
「誓わないとダメなの?」
「はい!今からゆなが誓いの言葉を言うので続いてくださいね!いきますよ!いいですか?」
「う、うん」
「私、草薙鉱は病める時も健やかなる時も」
「意外と本格的だね……私、草薙鉱は病める時も健やかなる時も」
「二階堂ゆなと人生を共にする事をここに誓います」
「二階堂ゆなと人生を共にす……誓わないよ!話が違うじゃない!」
「あは♪バレました?」
「バレるよ!なんて事を言わせようとするの……」
「い、いやぁ〜…ちょっと、その、既成事実を……」
「嫌だよそんなの!」
「てへ」
ゆなは舌を出し上目遣いで僕を覗き込む。この顔を見るとつい何でも許してあげたくなってしまう。
「笑って誤魔化そうとしてもダメだよ」
そう言うと誤魔化し笑いが一転して落ち込み瞳を潤ませるゆな。
そんな顔を見てまた心拍数が跳ね上がる。
「鉱先輩は……そんなにゆなのこと嫌い、ですか……?」
「そ、そうじゃないけど……」
「鉱先輩は優しいからゆなに付き合ってくれてるだけで……迷惑でしたよね……」
ゆなの顔がどんどん俯き見えなくなってしまう。今にも零れ落ちそうな涙を堪えているんだろうか。
さっきまでの喧騒が嘘のように静まり返る。
部活をやっている生徒がいるのにそう思ってしまうのはきっと……。
とつぜんゆなちゃんが立ち上がり寂しそうな笑顔で僕を見る。
「本当に変な事言ってごめんなさいでした」
そう言って僕に背を向けて歩き出す。
「ちょっと待って!僕は、その、ゆなちゃんの事嫌いじゃないよ」
「いいんです。気を使ってくれなくても」
「そうじゃなくて、ゆなちゃんはいつも騒いでて、落ち着きのない娘で、放っておけないっていうか……とにかく、僕は好きでゆなちゃんと一緒にいるつもりだよ」

648 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/04/02(月) 01:39:02 ID:OV25W1dn
「……本当、ですか?」
本当も嘘も、寂しそうなその背中を僕は放っておくことはできない。
「本当だよ」
「もう、先輩ったらこんな所でいきなり告白なんて大胆なんだからぁ♥」
そう言って振り向いたゆなに寂しそうな雰囲気などなく、いつも通り元気が服を着て歩いているような、舞い散る桜の背景がとても似合う活発そうな笑顔だった。
「……え?あれ?」
つまり……その……さっきまでのは……?
「どうしたんですか先輩。ぼーっとしちゃって」
「えぇと……今僕は落ち込んで帰ろうとしてたゆなちゃんを引きとめようとして……?」
「ゆな、帰るなんて一回も言ってないですよ?ちょっと目が痒くて下向いてただけですけど、先輩にはゆなが落ち込んでるように見えちゃったみたいで。それにゆな、話が長くなるからちょっと飲み物を買いに行こうとしただけです」
途端にゆなの快活な笑顔がにやぁ〜と嫌らしい笑顔に変わる。
「つまり……?」
「鉱先輩はだぁーい好きなゆなの為に、ゆなの代わりにジュースを買ってきてくれるっていう事ですよね?」
「……あははは」
つまり。ゆなちゃんに一杯くわされた。と。
「僕の負けだね。飲み物、ゆなちゃんは何がいい?」
「鉱先輩にお任せです。でも、コーヒーはダメですよ?」
「はいはい。甘いのね。じゃあ、ちょっと行ってきます」
「いってらっしゃい。あ・な・た♥」
「もぉ……」

――――――

649 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/04/02(月) 02:03:10 ID:OV25W1dn
エイプリルフールに間に合わなかったので書き途中の(というか今急いで書いた)新キャラを投下。妹という単語はもうしばらくお待ちくださいませ。
途中で気付いたんですが遊星さんの双子の片割れとキャラの名前が被っちゃってるような……。

とりあえずハルヒの新刊が読み終わったら続き書きます。
次回の投下の終盤でようやっと妹ネタ(?)になりますです。

>>646-648 お兄ちゃんと呼ばれたい?(上)

650 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/04/02(月) 22:18:47 ID:pFuboBo1
さすがすばる先生。すげぇのが来たなぁ……。
モンスターをハントしてる場合じゃないぞ……荷物まとめて逃げ出さな……。

651 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/04/03(火) 08:28:52 ID:HF1TN4+t
>>すばる様
凄いっす、もうめちゃツボりました次もまってまつ


>>遊星様
MHP2ndっすか?www
狩の間にでも貼ってください
楽しみにまってます

652 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/04/03(火) 23:13:16 ID:K+N/h+qp
>>すばるさん
誓いの言葉で思わずにんまりしてしまいました!w
こういう展開大好きです!グッジョブ!


鉱くんの喋り口調、良いですねぇ!
何か鉱先輩にも萌えてしまいそうですよw

653 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/04/04(水) 18:31:14 ID:FyIsafSH
そろそろ新スレ立てても良い時期かな……。
多分、俺は立てられないけど。テンプレでも作るか……。

>>651さん
ご名答。分かるわな、普通。
新スレ立ったら、埋めネタとして615あたりで宣言した台本を……。

654 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/04/05(木) 01:52:22 ID:XXEQQTze
>>遊星さん どうもです。
今まで『兄妹』という形にこだわっていてたんですが>>612さんのような意見もあったんで。
私は職人さんが投下してくれるまでの繋ぎなので遊星さんに逃げられてしまうと困りますw

>>651 どうもです。
やっぱり積極的な娘っていいものなんでしょうか?
板違いになってしまいますが私はこっち系のキャラだとうな天のひよりが好きです。

>>652 どうもです。
朔の受けがよかったのでギャルゲ風味なものを書いてみたんですが気にって貰えたならなによりです。
やっぱり主人公がヘタレとか鈍感だと書きやすいですw

655 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/04/06(金) 05:37:44 ID:JSySkKhk
二階堂ゆな(CV:神田朱未)

656 :遊星よりテンプレ案を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/04/06(金) 22:57:43 ID:tRWOwhc5
テンプレ案1
「あ……。ま、待ってたわけじゃないのよ!これは……たまたまよ!!誰がバカアニキなんか……」
こ、ここは脳内の妹が囁いたセリフを暴露しちゃうスレに決まってるじゃない!!

【バカなアニキのための四箇条】
・変なのは無視!釣り針にも引っかからない!……ったく、ホントにアニキはバカなんだから。
・SS職人にはお礼を忘れない。これぐらい、言われなくても当然よねぇ?アニキ?
・メール欄に『sage』……べ、別に二人きりとかそういうのは関係ないんだから!!
・浮気は禁止。……私だって……アニキに浮気されたら傷つくわよ……う、嘘嘘!!今のはウソよ!!

テンプレ案2
「あ、お兄ちゃん!お帰りー……む、だからボクは女の子だってばー!!」
ここは脳内の妹ちゃんが囁いてくれるセリフとかシチュとかを暴露するスレなんだ。

【ボクとお兄ちゃんの約束】
・荒らし、釣りはスルー。え……?ぼ、ボク男女じゃないもん!!ね、お兄ちゃん!?
・SS職人にはお礼を忘れないこと。大事なのは、言葉じゃなくて気持ちなんだよ。
・メール欄に『sage』。ボク、もう忘れないよ!
・浮気なんかしたら、ボク……ボク……。


とりあえず考えたのを二つ。……ってか、別に新しくする必要は無いんだけどね。

657 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/04/08(日) 01:32:19 ID:0fhMLmk3
個人的にはテンプレは今のままの方がいいかも。

658 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/04/11(水) 01:32:05 ID:yvSHEe+L
あー……もしかして私の投下でスレ埋まるの待ちな状況だったり…?

こういうスレのテンプレは好みで意見が別れてしまうんで次スレ立てる方が今までのと今回遊星さんが考えてくれたものから選んで立てる・という感じがいいと思いますがどうでしょう?
スレ立てたご褒美みたいな気がして立てる気もあがりますし……主に私が。

>>655
ちょっ!そう書かれてしまうとパクッたのがバレt(ry
冗談は置いといて、実際ひよりを意識して書いてるのでその考えで問題ないです。

659 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/04/11(水) 03:05:57 ID:M8COIklz
希望CVを付けてくれると
脳内でその声優の声を当てて読めるので更に萌え度がアップ!?
(今でも勝手に声を当てて読んでいますけど)
ただ、今までに登場しているキャラにこれをやると
イメージが崩れてしまう可能性があるのでそこがネック…

通りすがりの方がこのスレをポチッと押して
>>1を見たときに今のテンプレの方が読みやすいと思ったんだけど
それは俺が自分の好みで勝手にそう思った可能性がありますね。
いや、そうに違いありません!謝らせてください。すいませんでした。

新スレ立たないと遊星さんのナース妹が読めないので誰か新スレを…

660 :No.2 :2007/04/11(水) 21:14:41 ID:KdKx/0X+
んー、ISP契約が3つあるので立てられるものと思いますが
テンプレはどうしましょう?

661 :No.2 :2007/04/11(水) 21:30:14 ID:kP8mbxv/
すばるさんのお言葉に従い、漏れの好みで選ばせて頂きました
今回は遊星さんのツンデレ風味ってことでw

次スレ
[第七弾]妹に言われたいセリフ
http://game12.2ch.net/test/read.cgi/gal/1176294393/

662 :No.2 :2007/04/11(水) 21:52:00 ID:kP8mbxv/
というわけで、こちらは梅ぬるぽってことで
んじゃ、恒例の名セリフ集です

 〜 [第一弾]より 〜

今夜はゆるして......
......お願い......

(虜ネタですねw)

663 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/04/11(水) 22:14:25 ID:5big1S5r
>>659
私は声優に疎いのでちょっと……
逆に声優(と主なキャラなど)を書いていただければそこからイメージに近付けたりっていうのは出来ると思いますが。

少し長くなってしまいますがテンプレの話。
私も少しそう思いましたがせっかく考えてくれているので。
それにそういう部分を修正すれば問題無く使えるわけですし、次からは名無しだから〜とかで気後れせずに指摘しちゃっていいと思いますよ?
少なくとも私は苦情、アドバイスなど随時受付中ですし。
私の言葉遣いが堅いせいで書き難いかもですがw
なんてちょっと偉そうな事を書いてみましたがどうでしょう?

>>No.2さん
いつも乙です〜。
ツンデレがお好きですか。
ではゆなの話が一段落したら久々にツンデレに挑戦してみますw

664 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/04/11(水) 22:28:07 ID:k2sdqbmW
>>659さん
自分も声優には疎いのでなんとも……。
基本的に、読む方の脳内補完に頼る他無い文章力なんで、そのついでに声もイメージしていただければ。
しかし、ギャルゲーしない。アニメ見ない……何故俺はこの板にいるんだ……。

>No.2様
新スレでも言いましたが、スレ立て乙です。
ツンデレ好き……参考にさせていただきますw


……すばる先生がお書きになるようなので、ナース妹は又の機会にでも。

665 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/04/11(水) 22:56:15 ID:je/aWRc+
>>664
>自分も声優には疎いのでなんとも……。
喋り方(言葉の癖、息継ぎ、発音の癖、訛りなど)、イントネーションやアクセントの取り方など、
そのキャラの「声」のイメージを文章化してみるのもいいかも。
そうすればそれに該当しそうな声優(と該当する他作品のキャラ)を探し出す人もいるんじゃないかな。

666 :No.2 :2007/04/12(木) 01:10:10 ID:dxCoEdw1
>>すばるさん >>今回は遊星さん
はい、ツンデレが幼少の頃より。。。w

お二方のSSはいつも楽しみに拝読させて頂いてます
萌えのインスピレーションが枯れてから久しくなります
漏れが初代スレで血縁ENDを書いたのは4年前か。。。

それから、遊星さん
遊星さんが管理しておられる保管庫のURLをテンプレに入れるのを失念しておりました
申し訳ありません
次回、スレを立てる方は下記サイトを追記してくださいませ

妹に言われたいセリフ、SSまとめの場所
http://www.geocities.jp/you_say712/

667 :No.2 :2007/04/12(木) 01:11:32 ID:dxCoEdw1
>>666
あ、文章が変でした

× 萌えのインスピレーションが枯れてから久しくなります
○ 漏れの方は、萌えのインスピレーションが枯れてから久しくなります

668 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/04/12(木) 22:28:21 ID:pOz/o2Tc
残り10KBちょっと。このまま雑談で埋めるか……。

>>665
基本的にイメージの押し付けはしたくないので……外見、髪型、声等は個々人のイメージに任せたいなと。
……偉そうなこと言ってすいません。そんな表現力もイメージもないだけです。薄っぺらなんで。

>>>666
まともに管理なんかしてない上に、ほぼ私物化してるんで、
載せなくても良いんですけど……w

669 :659 :2007/04/13(金) 23:55:04 ID:2Z9Mr//O
声を当てて読んでいるとは言っても、
いつもはキャラの印象などから沸いてくるイメージから
この娘はこんな声かなと…インスピレーションで作り出した声を当てている感じで
時に決まって声優さんの声を当ててる訳ではないです。
(僕も特に声優に詳しい方ではないので…むしろ疎い方かもw)
ご無理を言ってすいませんでした。

新スレが立って実際にツンデレテンプレの>>1を見てみると、
これはなかなか新鮮で良い感じですねぇ!
テンプレの件は心配するほどの事でもなかったみたいですね…
いらんこと言ってすいませんでした。

さて、
新スレでも思わずにやけてしまうキュートな
ぷりちーな萌えSSの投下を心待ちにしてますー!

670 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/04/14(土) 02:51:48 ID:u98sa4pd
こうしてスレを見返してみると私っていない時期のほうが長いw

〜第三段より〜
>お兄ちゃんどいて!そいつ殺せない!
第三段っていうかirisですね。中が電波じゃなければ最高だったのに……。

>>No.2さん どうもです〜。
No.2さんの復活も密かに楽しみにしていたんですが……
枯れたと思っていたけどまた湧き上がってきた、なんて事を温泉などではよく聞きますが。

>>遊星さん
書くといっても今回もちょっと長めで次の投下はいつになるやら……
という感じなんで是非ナース妹を投下しちゃってください!
実は結構楽しみにしていたんですからw

>>669
>ぷりちーな萌えSSの投下を心待ちにしてますー!
待たずとも自分で書くという奥の手があるじゃないですかw

671 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/04/14(土) 23:23:00 ID:O/tlwiN9
そういえば、自分は音楽のイメージで曲を作ることが多いですな。
カラオケとか行くと、知らない歌の詩も見えて良い感じです。
まぁ、あくまで書き出しなんで、書いてくうちに有耶無耶になりますが。
……ちなみに、ナース妹のイメージはスキマスイッチの『ガラナ』……。


>すばる先生
いやいやいや、期待するもんじゃないですよ!?
名前は決めてないし、半ばスレ違いだし、ねぇ……。
その前に、文化祭なんてネタも無かったことに……。

672 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/04/17(火) 22:19:35 ID:bkJ27DkZ
今日はとことんツいてない。
朝寝坊をするし、電車にも乗り遅れた。
頭は妙に働かないし、朝だというのに瞼が重い。
いや、瞼だけじゃない。なんだか全身が重い……。
なんだっていうんだ、今日は……。

「ん……」
不思議な匂いで目を覚ます。
慌てて目を開けると、視界には真っ白な天井。
「どこだ……ココ……」
慌てて体を起こす。
が、見慣れたものなど一切無く、ベッドと椅子くらいしかないきわめてシンプルな部屋に俺一人。
よく見ると、手にはチューブ上のものが刺さっていて、その先は謎の液体に繋がっている。
「んー……」
少し考える。
……もしかして、ここは病院?
「でも、何で病院にいるんだ……?」
独り言。
「改造手術……?」
恥ずかしい独り言。
しかし、俺の質問に答えてくれた人間が一人。
「あ、目が覚めたんだ」
……ナース姿の看護婦(ちょっと表現はおかしいが)が引き戸を開けて病室に入ってくる。
何だか妙に馴れ馴れしい看護婦だ、と少々眉を顰めていると、
「おはようございます。お義兄ちゃん」
入ってきた看護婦は、俺の前に立つと、見え見えの作り笑いを浮かべた。

673 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/04/17(火) 22:20:10 ID:bkJ27DkZ
「アンタは……」
「貴方の弟様の妻の妹です」
「それは分かってる。アンタ、看護婦だったのか」
「えぇ。何度も言ったはずですが、知りませんでした?」
「さぁね。聞いた気もするが、何にせよ興味が無い」
俺がそういうと、彼女はクスクスと笑い出す。
「何か?」
「クス……あまりにも噂どおりだから」
「期待に添えて光栄だよ。で、俺は何でこんなところに?」
義妹は少しだけムッとした表情を見せて、
「お仕事中に倒れたんでしょ」
「倒れた?」
「先生の話だと過労だって。働きすぎじゃないんですか?」
「別に……そんなことは無い」
「睡眠時間は?」
「は?」
「一日どれくらい寝てます?」
「……最近はちゃんと二時間は寝てる」
「二時間!?」
「寝すぎか?」
「寝なさ過ぎです!!一体どんな生活してるんですか!!」
どんな……
考えてみるが、仕事以外の生活なんかそんなに意識したことが無い。
「……噂どおり、いえ、噂以上ですね……」
わざとらしくため息をついてみせる義妹。
「ともかく、しばらくは病院で体を休めてください」
「……嘘だろ?」
「ウソなんか言いませんよ、お義兄さん」
「悪いがそれは聞けない。俺には大事な仕事がある」

674 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/04/17(火) 22:20:45 ID:bkJ27DkZ
起き上がろうとした俺の肩を義妹がしっかりと抑えて、
「命あっての物種。体より大事なものはありませんよ」
「ある」
「それが仕事だって言うんですか?」
「当然だ。俺はこの仕事に希望を持ってる」
「……呆れた。ホントにマッドサイエンティストなんですね」
マッドサイエンティスト……。
そこまで言われるとは心外だが。
「それは俺の噂?」
「ええ。研究職とは聞いてましたけど、おかしいですよ、お義兄さんは……」
頬を膨らませて、俯く義妹。
トクンと心臓が動く。
……何だ、この感情は……。
「私は、お義兄さんのことを心配してですね……!!」
急に幼い表情を浮かべ、俺に食って掛かる義妹。
……よく見ると、涙目になっているじゃないか。
「あー、もう分かったよ。連絡するから、俺の手帳とってくれ」
「え、あ、ありがとうございます、お義兄さん。はい、どうぞ」
手帳を手渡してくれる義妹。ニコニコと俺の顔を見たまま動かない。
「……?」
「どうかしました?」
「いつまでいる気だ?」
「もちろん、ちゃんとお休みを取るのを見届けるまでです」
「ガキじゃあるまいし……一人で出来るよ」
「そういう心配じゃないですよ」
「大丈夫だよ……今日はお休みにします」
「明日も明後日もですよ。最低三日は休んでください」
「……三日!?」
「その様子じゃ、有給余りまくってるでしょ?」
確かに……余りまくってる。

675 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/04/17(火) 22:21:16 ID:bkJ27DkZ
「そんなに休んだら脳が腐る」
「大丈夫。ここは病院ですよ?」
悪戯っぽく笑って見せる義妹。
「あ、お電話終わったら点滴変えますからね」
「わかりましたよ、ナースさん」
嫌味に聞こえるように呟いて、受話器を耳に当てた。
入院したこと無いのは一つの自慢だったのにな……。
───────────────────────

676 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/04/17(火) 22:22:53 ID:bkJ27DkZ
というわけで、とりあえず、このスレではこのくらいで。
まぁ、満を持してというワケではないですけど、無駄に勿体ぶったナース妹。
二人の名前はまだ決めてません。……誰か考えてくれないかな……。
あと、入院したこと無いんで医療行為云々はイメージです、難しく考えないように。

……そういえばバレンタイン以降、まともな兄妹ネタを書いてないな。

677 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/04/18(水) 00:57:31 ID:4CAJBsh4
乙ですGJです!
久しぶりに年齢層が高そうなのがきましたね。ちょっと忘れてましたが文化祭の話も楽しみにしてます。

名前、吉良倉音《きら くらね》なんてどうでしょう?
以前途中まで書いたけど飽きて没った話の主人公(根暗男)の名前なんですがw

私も続きを書くとします。今から一気に書くつもりなので多分今日中に投下します。

678 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/04/18(水) 21:10:11 ID:ZKZBCuCn
>すばる先生
>久しぶりに年齢層が高そうなのがきましたね。
現役高校生時代は、高校生キャラが難なく書けたんですけど……二年離れるとなかなか書けませんねw
かといって大学生キャラなら書けるかというと……。

>名前、吉良倉音《きら くらね》なんてどうでしょう
わざわざ良い名前を考えていただいて、ありがとうございます。
基本的に俺の書く兄は基本根暗、インテリですから、このキャラだけってのは勿体無いですね。
兄の名前に困ったら、この名前を付けちゃっても良いですか?w


最後になりましたが、すばる先生の作品も楽しみにしておりますゆえ、どうかお早めにw

679 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/04/18(水) 21:14:39 ID:4CAJBsh4
>>遊星さん
>現役高校生時代は、高校生キャラが難なく書けたんですけど……二年離れるとなかなか書けませんねw
意外に遊星さんとは年が近いみたいですねw私は学園ものに拘っている節があるので困りませんが。

名前の方はこんなのでよければどんどん使ってやってくださいw

>最後になりましたが、すばる先生の作品も楽しみにしておりますゆえ、どうかお早めにw
今から投下しにいくところだったんですがちょっと遅かったですかねw

680 :遊星より愛を込めて(20) ◆isG/JvRidQ :2007/04/18(水) 22:37:34 ID:ZKZBCuCn
>すばる先生
>意外に遊星さんとは年が近いみたいですねw
すばるさんはもっと年上の方かと……っていうのは、俺のこの歳で言うのはもう失礼か。
俺も歳をとったもんだ……w

名前はありがたく使わせていただきます。できれば、妹の方も……w

>今から投下しにいくところだったんですがちょっと遅かったですかねw
読んで参りました。
恥ずかしながら、読みながらニヤニヤしてしまいましたよw

681 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/04/18(水) 22:38:09 ID:awa1+VHP
>>670すばるさん
その奥の手は使っても文才がないので
全然上手く書けず読んでても全く萌えないんで…w


>>遊星さん
待ってました!すげぇGJ!
やっぱりナースものって良いですねぇ…
ひそかに女医さんの登場も期待しております!

名前まだ決まってないんですかー、
なら医者って事で思い浮かんだ名前で、
【ゆうじ】と【さとみ】に一票づつ!
どちらも医者ドラマの主役を演じた人の名前からです。

682 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/04/18(水) 23:30:53 ID:awa1+VHP
って名前は一足遅し!?これは失礼しやした!!

っとここで一つ質問なんですが、
読み専門の名無しはあんまり無駄に喋らない方がいいでしょうかね…?
スレを見返してみるとSS書かない名無しでよく喋るの僕だけっぽいですし…w
以後ちょっと気をつけますー。

683 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/04/19(木) 06:59:18 ID:a3ey+WoE
>>遊星さん
多分年は遊星さんが思っている以上に近いですよw
妹ですかー……ではまた昔の没ネタから気に入ってたキャラをば。
鈴宮鈴《すずみや れい》とかどうでしょう。

>>681-682
気が向いたらその内書いてみるのも面白いかもしれませんよ。
……そういう企画やったら面白そうですね。名無しさんが考えたキャラを俺が書くぜ!みたいにw

コテばかりのスレだと新参の方はレスし辛いと思いますし、レスはやはり多いに越した事はないと思いますよー。
スレの本質から外れ過ぎていなければ気にしないでいいと思います。
それに色々な話が出れば第5弾の最後(前スレ737-740)のようにそれをネタに小話書けますからw

684 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/04/19(木) 21:50:18 ID:63y2oGkG
夢ノ又夢先生、最近見ないなぁ……。

>>681さん
名前有り難うございます。
芸能人そのままってのも芸が無いので、ナース妹は『里見歓奈(さとみかんな)』と名付けさせていただきます。

>その奥の手は使っても文才がないので
気にしない気にしない。文才の無い人間がココに。
そもそも自分が書いた文ってのはどんなであっても変に思えますからね。書いてみると意外と……かもしれませんぜ。
ま、とりあえず書いてみろ、ですよ。


>すばる先生
>鈴宮鈴《すずみや れい》とかどうでしょう。
これもなかなか……。しかし、自分も慢性的な名前不足なんで、また新キャラの名前に使わせてください。

685 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/04/21(土) 01:20:11 ID:Oj2k0eu7
>>すばるさん
良いですねその企画!
職人さんに書いて頂けるに値するキャラがはたして僕に思いつくかどうか…w
嬉しい企画なので是非やってほしいですが
受け付けるのは【期間限定】とか時期は限定した方が良いかも知れませんねー
それでどんな登場の仕方になるのかは職人さん達におまかせって事にした方が、
……なんて色々妄想は膨らみますが、
他の名無しさんがもう少し集まらない事には何とも始まらないかな…

>スレの本質から外れ過ぎていなければ気にしないでいいと思います。
そう言って頂けてホッとしましたー
本質から外れた関係の無い話はしないよう気を付けます!


>>遊星さん
おおお!採用して頂けて嬉しいです!ありがとうございます!

>気にしない気にしない。文才の無い人間がココに。
遊星さんは文才ありまくりじゃないですかっ!w

どうにもこうにも自分はオリジナル創作が苦手でして…
(文章を書くもの全般に苦手っぽいですけど…w)
そんなのが萌えるキャラや設定を作り出すのは至難の技で…
職人さん達がいかに偉大かという事が身にしみて感じます。

今の僕はレベル1なので、まずはレベル2を目指します!
まあ焦らずのんびりと…

686 :No.2 :2007/04/21(土) 23:54:41 ID:AZ6KsLp6
>>遊星さん
GJです
遊星さんの保管庫へのリンクを過去ログ倉庫のトップページにはらせて頂きますた
ちなみに、漏れとは親子ほど年が離れてるっていう噂が。。。w

>>すばるさん
リアルの仕事と数十に上る他サイトの管理に追われ
枯れてしまった泉を掘り返す時間がなかなか取れずに数年が過ぎてしまいました
気長にマターリとお待ちくださいませ

>>685さん
期待してますよ!
漏れの分までカンシガシ書いてください


           o___________o
           /                 /
          /   このスレは無事に   /
          /  終了いたしました    /
         / ありがとうございました  /
         /                /
        /    しぃより        /
        / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄/
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  (*゚−゚) /                / (゚ー゚*)
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