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[第六弾]妹に言われたいセリフ

456 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/09/22(金) 19:07:35 ID:ZkC5pbr/
「・・・なんだか以外だね」
「な、何が?」

やはり予期せぬタイミングで投げ掛けられる言葉に少し反応が遅れる俺。
そして、やはり気後れにはお構いなしで再び始まる会話のキャッチボール。

「お兄ちゃんがそんな風に言ってくれるなんて、思ってもみなかった」
「そうか?やっぱり変だったかな」
「ううん、そうじゃなくて・・・なんだか・・・それってプロポーズの言葉、みたいだから」
「・・・」
「・・・お兄ちゃん?」

この時、実はすでに巴の声には耳を貸してはいなかった、俺の耳は後方で轟くエンジンの音に集中している。
音を聞く限り減速する気は欠片も無いらしい、いや、恐らくこちらに気付いてさえもいないのだろう。
怪訝そうな顔の巴を前に頭でそう結論付ける前に体が先に動き出す。

「巴っ!!」
「え・・・」

壁になる様に巴に覆い被さる俺、数秒も待たない内にウォータースライダーの如き水飛沫が背中に襲い掛かる。
あっという間の出来事、車のエンジン音はロックだかラップだか分からない大音響と共に瞬く間に遠くになっていく。
しかし、この結果を見る限りやっぱり今日の運勢は大凶らしいな・・・
もはや雨も関係無い程に額から盛大に水を滴らせて巴の安全だけは確認しておく。

「ううっ、冷てぇ・・・巴はなんとか無事みたいだな、良かった良かった・・・巴?」
「・・・」

457 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/09/22(金) 19:10:00 ID:ZkC5pbr/
それは神様のほんの些細なイタズラ

見詰め合うにはあまりにも近過ぎる距離
思いがけずに俺が映り込む少し潤んだ透き通った瞳
雨露に濡れて艶を帯びた黒髪
色鮮やかな赤みを帯びた頬
触れれば弾けて消えそうなシャボン玉の様なその姿

脆さを湛えた表情を目の前に真赤な傘の下、青い水の星が呼吸を止める。
嘘みたいに綺麗なその姿は全てが霧に霞んで見える所為だろうか大袈裟にもこの世にある事さえ奇跡に思えた。
お互いの吐息が鼻先に触れ合うギリギリの距離でじっと見詰めたまま流れる憂いを秘めた沈黙。
そんな沈黙に堪えられなくなった俺はたどたどしくも時を解いていく。

「その・・・ごめん」
「・・・どうして謝るの?お兄ちゃんはボクを庇ってくれたのに」
「いや、そうなんだけどなんか罪悪感があって・・・」
「それより大丈夫?こんなに濡れて・・・」
「いいよ、ここまでくれば焼け石に水だ」
「あ・・・うん」

ハンカチでいそいそと俺の顔を拭き始める手を制して歩き出す距離を取ろうとする。
思えば不慮のアクシデントとはいえ俺が巴を壁際に押し倒した様な体勢、色んな意味でこのままでは危険だ。
今更になってまだまだこれからとやけに辺りに響く自己主張の強い雨。
それが俺には自分の中の時が重々しくもようやく動き出した証拠の様に思えた。

「巴、俺、先に帰るわ」
「先に、ってお兄ちゃん?」
「さっさと帰ってシャワーでも浴びるって事、巴はゆっくり帰ってくればいいから」

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0ch BBS 2004-10-30