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[第六弾]妹に言われたいセリフ
- 549 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/12/24(日) 23:00:58 ID:TrsYCOEI
-
今日はクリスマスイブ。
何かあるわけでもないのに、何だか楽しくて、ドキドキして。
そんな一日が今年もやってきた。
……ただ、一つ違うことが。
それは、
「お兄ちゃんと一緒……ふふっ……」
ため息とともに思わずそんな言葉が漏れてしまう。
お父さんとお母さんは今夜はデート。
お兄ちゃんも出かける予定が無いと言っていたから、今晩は本当にお兄ちゃんと二人っきりだ。
というわけで、お兄ちゃんに食べてもらうため、愛妹料理を作っている最中なんだけど。
「……ダメだ……全然集中できないよ……」
チラついて離れないあの人の顔。
思わず顔がニヤけてしまう。
そんなのだから、さっきも指を切りそうになったのだけど……。
「それにしても……お兄ちゃんどこ行ったのかな……」
ブラブラしてくる。とは聞いたけれども、もう随分になる。
家にいてもらってはヒミツの準備も無駄になってしまうのだけど……
やっぱり出来るだけ私の傍にいて欲しいというジレンマ。
そんなことを考えて、また私の手が止まっている。
これではいけないと、また料理に集中するのだけど、ふとしたきっかけでまた思い出し、上の空。
さっきからこんなことの繰り返しだ。
いつもはさすがにこんなことないのに……
やっぱり今日がクリスマスだからだろうか。
ため息をついて、ゆっくりとまな板の前に戻ると、
「ただいま」
玄関から、聞き間違えるはずの無いあの声がした。
それだけで嬉しくて。頭より体より、心が真っ先に動いた。
「お帰りー!!」
私はエプロンを放り投げ玄関に向かう。
- 550 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/12/24(日) 23:01:36 ID:TrsYCOEI
- 「あぁ……どうしたの、葵?」
「え、あ……別に、あはは……」
……後先考えず。とはこのことだね……。
「ゴメンな、お土産の一つも買ってこなくて」
冗談をいって笑うお兄ちゃん。
……やっぱりお兄ちゃんはいいなぁ……。
「?」
お兄ちゃん、紙袋なんて持ってる……。
隣町のデパートのだ……。
「ね、何買ったの?」
「え?」
「紙袋。何か買ったのかなって」
「あぁ、コレ?大したもんじゃないよ」
「もしかして、クリスマスプレゼント?」
「うーん……この時期にモノを買うと、何でもクリスマスプレゼントっぽくなっちゃって困るよねぇ」
「じゃあプレゼントじゃないんだ?」
「うん。必要だったから買っただけ。まぁ……見栄張って包装してもらったんだけど……」
気まずそうに、包みを見せるお兄ちゃん。
「空しいね、さすがに」
と苦笑い。
「ところで、葵?」
「なーに?お兄ちゃん」
「何か焦げ臭くないか?」
……焦げ臭い?そういえば……
- 551 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/12/24(日) 23:02:12 ID:TrsYCOEI
- 「あーっ!!」
火つけっぱなしだったの忘れてた!!
慌ててキッチンに戻るが、時すでに遅し。
「シチューが……っ!!ど、どうしよう……!!」
鍋の中にはなんだか茶色っぽいシチュー……。
「ありゃー、やっちゃったねー」
「……晩御飯が……」
「落ち着いて、葵」
「で、でも……」
「晩御飯の心配はいいから。火傷とかしてない?」
「それは……大丈夫だけど……」
「良かった。それなら、俺は安心だよ」
「お兄ちゃん……」
私を心配してくれるお兄ちゃん。
私の掌を撫でてくれるその手が、とても暖かくて……
「うぅ……ゴメンなさい……」
嬉しくて、幸せで、思わず涙がポロポロこぼれる。
「な、葵!?ホントに大丈夫なのかっ!?」
「お兄ちゃん……私、少し……火傷したかも……」
「どこを!?」
「ここ……」
お兄ちゃんの手、私の胸の前に重ねる。
「……ココが、キュンってして、熱い」
「葵……」
困った、というかパニック寸前のお兄ちゃん。
私にだって、そんなに邪な気持ちはなかったとはいえ……ちょっと気まずい。
「……ゴメンね……何だか、寂しくて……」
「ううん。いいよ、葵はいつも頑張ってるから、時々はね」
- 552 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/12/24(日) 23:02:44 ID:TrsYCOEI
- 「……うん、ありがとう。じゃあ、迷惑ついでに、もう一つ良い?」
「どうぞ」
「優しく抱いて欲しいな、なんて……」
「いいけど、俺で良いの?」
「私のお兄ちゃんでしょ?妹には優しく。ね?」
「ま、頼られるのは兄貴冥利につきる。というべきかな」
少し恥ずかしそうに、私の肩を抱きしめてくれるお兄ちゃん。
気持ち良い温もりが、全身から伝わってくるのを感じる。
「葵……はい、コレ」
さっきの紙袋をお兄ちゃんが差し出した。
「私……に……?」
「うん。自分で使うつもりだったけど、葵にあげるよ」
「開けても良い?」
「どうぞ。……お気に召すかは自信ないけどね」
紙袋を丁寧に開けていくと……
「マフラー?」
お兄ちゃんの好きそうな色のマフラー。
「……変かな?」
「ううん。気に入った」
「それは良かった」
ホッと安心した顔のお兄ちゃんに、すこし癒される。
「今度は私がお兄ちゃんに似合うマフラーを選んであげるよ」
「え?」
「明日も予定入れちゃダメだよ?」
「……了解。ご一緒させていただきます」
「うんうん。よろしくね」
小指を出す。
- 553 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/12/24(日) 23:03:24 ID:TrsYCOEI
- 「指切り」
「そんなことしなくたって俺は……」
「いいの!やるの!!」
「はい……」
大人しく小指を出したお兄ちゃん。
そんなことでも嬉しくって。
「いたたたた!!痛いって、葵!!」
思わずつながった指を思い切り振ってしまう。
「あ、ゴメン……」
「はしゃいでるね」
お兄ちゃん痛めた指をチラッと見ながら、尋ねた。
「クリスマスだもん!お兄ちゃんも楽しもうよ!!」
「ふむ、是非楽しませてもらおうか」
「ふふん、ハメ外しちゃっても知らないからね〜?」
「凄いこと言うねぇ」
「とりあえず……晩御飯だねぇ……」
焦げ焦げのシチューを思い出す。
「大丈夫。ちょっと色は変だけど……食べれるよ
「美味しくはないんだ……?」
「い、いやっ!!そんなことない!!美味しいよ!!」
「ふふ、ありがと。お兄ちゃん」
ふたりで過ごす初めてのクリスマス。
……それに明日も、一緒。
来年も、一緒にいられたら……。
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0ch BBS 2004-10-30