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[第六弾]妹に言われたいセリフ

646 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/04/02(月) 01:36:58 ID:OV25W1dn
うららかな春の午後。春の陽気に誘われて散歩がてら学校の前を通った時、ふと校庭の隅のベンチに目をやると桜の舞うベンチに見知った顔がいて、偶然目が合う。
「あ!鉱せんぱーい!」
春の陽気が降り注ぐ公園で春を凝縮したような陽気な声が僕を呼ぶ。大声で。
校庭では部活をしている生徒たちもいて、少なくない生徒たちの視線を浴びる。
その視線が恥ずかしく、顔を赤くしながらその娘の下へ走り寄る。
「私が見えてからって走ってきてくれたんですね!もう……先輩ったらぁ♥」
「そ、そうじゃないよ……こんなところで、大声で名前を呼ばないで……」
少しの距離を走っただけなのに息を切らせながら抗議の声を出す。
「またまた先輩ったらシャイなんだからぁ。あ、でもでも、ゆなはちゃんと分かってるから大丈夫ですよ♥」
「何を分かってるのか僕には分からないけど……何をしてるの?」
「ここにいれば先輩と会える気がして……えへへへ」
はにかんだ笑みを見せながら上目遣いにこちらを見てくるこの娘は二階堂ゆな。
僕の後輩でとても元気……というかちょっと元気過ぎる娘だ。
小柄で線が細く、髪も短めでその上この性格なのでたまに小学……ではなく中学生と間違われる。
危なっかしくて放っておけない可愛い後輩だ。
「むむむ……先輩何か失礼な事を考えている気がします」
「そ、そんな事ないよ」
そしてたまにとても鋭い事を言う。
「いいえ考えてました!」
「……ごめん」
苦笑しながらも一応謝っておく。
「……ひどい。先輩までゆなの事を『身長だけじゃなく胸までちっちゃいなんてこれじゃまるで小学生だぜ。はっ』なんて考えていたなんて……」
「そ、そこまでは考えてないよ……ただ小柄で可愛いなって」
「え……可愛いだなんてそんな……えへへ……そ、そんな事ないですよ……あは」
「それで、僕に何か用があったのかな?」
「あ、そうでした!今日は鉱先輩にどうしても聞きたいことがあるんです!」
自分の世界から帰ってきて勢い込んで僕の目を見つめてくる。
そんなにまっすぐ見つめられるとちょっと照れるんだけど……。
「うん。何かな?」
「あの、その、話すと長くなるんですけど……笑わないで聞いてくれますか?」

647 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/04/02(月) 01:38:04 ID:OV25W1dn
「うん?何か分からないけど……なるべく笑わないように努力するよ」
「努力じゃダメですよ!笑わないと誓ってください!」
「誓わないとダメなの?」
「はい!今からゆなが誓いの言葉を言うので続いてくださいね!いきますよ!いいですか?」
「う、うん」
「私、草薙鉱は病める時も健やかなる時も」
「意外と本格的だね……私、草薙鉱は病める時も健やかなる時も」
「二階堂ゆなと人生を共にする事をここに誓います」
「二階堂ゆなと人生を共にす……誓わないよ!話が違うじゃない!」
「あは♪バレました?」
「バレるよ!なんて事を言わせようとするの……」
「い、いやぁ〜…ちょっと、その、既成事実を……」
「嫌だよそんなの!」
「てへ」
ゆなは舌を出し上目遣いで僕を覗き込む。この顔を見るとつい何でも許してあげたくなってしまう。
「笑って誤魔化そうとしてもダメだよ」
そう言うと誤魔化し笑いが一転して落ち込み瞳を潤ませるゆな。
そんな顔を見てまた心拍数が跳ね上がる。
「鉱先輩は……そんなにゆなのこと嫌い、ですか……?」
「そ、そうじゃないけど……」
「鉱先輩は優しいからゆなに付き合ってくれてるだけで……迷惑でしたよね……」
ゆなの顔がどんどん俯き見えなくなってしまう。今にも零れ落ちそうな涙を堪えているんだろうか。
さっきまでの喧騒が嘘のように静まり返る。
部活をやっている生徒がいるのにそう思ってしまうのはきっと……。
とつぜんゆなちゃんが立ち上がり寂しそうな笑顔で僕を見る。
「本当に変な事言ってごめんなさいでした」
そう言って僕に背を向けて歩き出す。
「ちょっと待って!僕は、その、ゆなちゃんの事嫌いじゃないよ」
「いいんです。気を使ってくれなくても」
「そうじゃなくて、ゆなちゃんはいつも騒いでて、落ち着きのない娘で、放っておけないっていうか……とにかく、僕は好きでゆなちゃんと一緒にいるつもりだよ」

648 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/04/02(月) 01:39:02 ID:OV25W1dn
「……本当、ですか?」
本当も嘘も、寂しそうなその背中を僕は放っておくことはできない。
「本当だよ」
「もう、先輩ったらこんな所でいきなり告白なんて大胆なんだからぁ♥」
そう言って振り向いたゆなに寂しそうな雰囲気などなく、いつも通り元気が服を着て歩いているような、舞い散る桜の背景がとても似合う活発そうな笑顔だった。
「……え?あれ?」
つまり……その……さっきまでのは……?
「どうしたんですか先輩。ぼーっとしちゃって」
「えぇと……今僕は落ち込んで帰ろうとしてたゆなちゃんを引きとめようとして……?」
「ゆな、帰るなんて一回も言ってないですよ?ちょっと目が痒くて下向いてただけですけど、先輩にはゆなが落ち込んでるように見えちゃったみたいで。それにゆな、話が長くなるからちょっと飲み物を買いに行こうとしただけです」
途端にゆなの快活な笑顔がにやぁ〜と嫌らしい笑顔に変わる。
「つまり……?」
「鉱先輩はだぁーい好きなゆなの為に、ゆなの代わりにジュースを買ってきてくれるっていう事ですよね?」
「……あははは」
つまり。ゆなちゃんに一杯くわされた。と。
「僕の負けだね。飲み物、ゆなちゃんは何がいい?」
「鉱先輩にお任せです。でも、コーヒーはダメですよ?」
「はいはい。甘いのね。じゃあ、ちょっと行ってきます」
「いってらっしゃい。あ・な・た♥」
「もぉ……」

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