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[第六弾]妹に言われたいセリフ

201 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/02/14(火) 20:40:49 ID:hJiyPpTM
「はぁ……まさかこんなに遅くなるなんて思わなかったなぁ……」
二月十三日の夜。時刻は十一時半。
シンクの前で一人ため息をつく。
しょうがない。
洗い物をして、ゴミを片付けて、予習をして、宿題をして……。
なんてことをしているうちにいつの間にかこんな時間になってしまった。
「とにかく、兄さんのチョコを作らないと」
と、自分で言って、ちょっと恥ずかしくなる。
「兄さんの……ね」
口に出すのはちょっと恥ずかしいけど……悪い言葉じゃない。
思わず微笑がこぼれる。
「さ、急がないと」
もう一度時計を見る。
普段なら、もう寝ている時間。
私は、朝御飯やお弁当を作らなくちゃならないから、どうしても朝は早くなってしまう。
兄さんのためだから……辛くはないけど、もともと、眠らないとダメな人だし……。
その分のしわ寄せは他のところに来てしまう。
だから、その分、早く寝るしかない。
実を言うと、今も、ちょっと眠い……。
だけど、絶対に手抜きだけはしたくない。
だって、明日はいつもとは違う、特別な日だから……。
「未来は頑張りますよ、兄さん」
兄さんの顔を思い浮かべながら、いつものエプロンをパジャマの上に身に着ける。
さぁ、頑張らなくちゃ。
───────────────────────

202 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/02/14(火) 20:41:21 ID:hJiyPpTM
「兄さん」
「ん?どうした、未来ちゃん?」
「はい、チョコレートです」
「くれるのか?」
「もちろんですよ、だって、兄さんのこと大好きなんですから」
「未来……」
「えへへ……そんなにみつめられると、恥ずかしいです……」
「俺も、未来のこと好きだよ」
「はい……嬉しいです」
「未来……」
「兄さん……」
未来……。
「夢かよ……」
夢でした。
時計を見ると2/14、2:00am。
「寒……」
俺は一度起き上がった体を、もう一度倒し、眠りへと就こうとしたが……
何故か目が冴えて、一向に眠れそうに無い。
「何か飲むか……」
乾燥した空気によってカラカラになった喉を潤すため、俺は上着を羽織って、キッチンへ向かう。
「!?……明かりが……」
キッチンに明かりがついている。
泥棒か……!?
俺は息を潜み、中の様子を伺う。
しかし、物音一つ聞こえない。
ま……未来が電気消し忘れたと考えるのが無難でしょうな。
「驚かせおって……」
俺が胸をなでおろし、キッチンの扉を開ける。
すると、冷蔵庫の前に思わぬものが。

203 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/02/14(火) 20:41:54 ID:hJiyPpTM
「うぉっ!?」
思わず声を上げてしまう。
俺の目の前には、冷蔵庫にもたれて眠る人。つーか、未来。
寒そうに体を丸めて眠る未来。
……微かに聞こえる寝息が可愛い。
「って、何言ってんだか……おい、未来。未来」
未来の肩を掴んでガタガタ揺する。
「むぅ……にいさん……?」
ちょっと不機嫌そうに、目を細く開ける未来。
「風邪引くぞ」
「……すぅ……すぅ……」
また、寝てしまった……。
「しょうがねぇなぁ……」
俺はスヤスヤ眠る未来を、お姫様抱っこで抱きかかえ、キッチンを後にする。
持ち上げた未来の体は冷え切っていて、俺の体温までも奪われるようだった。
「……眠り姫ってどんな話だっけ……」
階段を上りながら、ついどうでもいいことを考えてしまう。
「……さ、お部屋に着きましたよ、お姫様」
当然だが、誰も聞いちゃいない。
……言わなきゃよかったよ。
一人で勝手に恥ずかしがりながら、俺は未来を未来のベッドの上に下ろす。
そして布団と毛布をかけてやろうとしたが……
「んぅ……」
未来が何か可愛らしい声と共に、体を縮ませる。
「寒いのか……」
まぁ、そりゃそうだなぁ……。
「こりゃ世話のかかる……」
未来の髪を優しく撫でる。
……フワッと、良い香りがした。
───────────────────────

204 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/02/14(火) 20:42:30 ID:hJiyPpTM
ピピピピピピピピピ……
電子音が鳴り響く。
「……朝……」
布団の中身がモソモソ動いて、けだるい声を出す。
結局しばらくダルそうに動いていたが、ピタッと止まって、
「……って、えぇぇぇぇぇぇ!?」
「ん……未来……?」
「えっ!?えっ!?」
俺の部屋の様子や、自分の体をキョロキョロ見回す未来。
「に、兄さん!?え、兄さんの部屋っ!?何でっ!?」
「……いろいろとな」
俺も冗談をいってもよかったが、眠いためテンションが低い。
「いろいろって何ですかっ!?……も、もしかしてっ!!」
顔を赤らめる未来。
さすが未来たん、エロエロですなぁ……。
「……別に未来が想像してるようなのじゃないから」
「べ、別に想像なんてっ!!」
さらに顔を赤らめた未来、恥ずかしそうに両手を頬にあてる。
やっぱ、エプロンがそういう雰囲気を醸し出しているのだろうか……。
「ま、少し頭冷やせば、思い出せるだろ」
「思い出すって……?」
しばらく考え込む未来。
どうやら、記憶が蘇ってきたようで……

205 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/02/14(火) 20:43:06 ID:hJiyPpTM
「……そういえば、私昨日、キッチンで……」
「そう。キッチンの床で寝てたから、連れてきた」
「でも……何で兄さんの部屋に?」
「寒そうだったから」
「そうなんですか……」
未来が、少し俯いて何か考える仕草をする。
そして、
「兄さん、ありがとうございます」
ペコリと頭を下げる。
「でもね、実は私、嬉しかったんですよ」
「何で?」
「……まさか、目が覚めてすぐに兄さんに会えるなんて、思いませんでしたから」
「うん」
「兄さん、昨日一生懸命作ったチョコ、冷蔵庫にあるんです……もらって……くれますか……?」
「もちろん。一年間ずっと楽しみにしてたんだぞ?」
「はい、ありがとうございます!!」
「行こうか?」
「はい!!」

ちょっとらしくない未来と、ちょっと落ち着いた俺。
今日はバレンタイン。
……やっぱり、いつもと違うみたいだ。

[END]

206 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/02/14(火) 20:43:55 ID:hJiyPpTM
もっと早く準備をしていたら。
もっと早く走れたら、走っていたら。
そもそもお金を持ってきていたら。
いや、あの時、家まで自転車を取りに帰れば。
いや、お母さんが帰ってくるのを待っていれば……。
「寒ぃ……」
様々な仮定と後悔の波が打ち寄せる間も、北風が私の体温を残酷にも奪っていく。
だけど、
「頑張らなきゃ」
とにかく、ここまできたんだから、歩くしかない。
私は視線を落とし、バッグを見る。
これを絶対にあの人に届けるんだから……
───────────────────────
今年のバレンタインデーはいつもと違う。
……ハズだ。
俺は自宅のリビングで、意味も無くテレビのチャンネルを何回も変えてみる。
ま、時間帯も時間帯なので、夕方の情報番組が、バレンタイン特集なんかを組んでたりする。
なるほど、彼を落とすチョコ。片思いの相手に渡す本命チョコ……か。
「……ま、結局のところ、好きな人からもらえれば、チョコの種類なんて関係ないよね」
まさに天狗である。
しかし……
その『好きな人』に、まだもらえてないんだよなぁ……。
学校でもらえると思ったんだけど、そうでもないし……。
……もしかして、くれないのか……?
それとも、またいつか会ったときに?
「……それはやだなぁ」
だがしかし、それでも要求はしないのが男ってモンですよ。

207 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/02/14(火) 20:44:57 ID:hJiyPpTM
「うーん……」
そう考えると……俺がカレシなのかどうかも疑わしく思えてきた。
確かに、俺は何度も好きだって言ってるし、言われてる。
だけど、いつまでたっても俺は『お兄ちゃん』だしなぁ……。
向こうにとっては遊びの延長みたいなものなのかも。
いや、まぁ、いまさら『お兄ちゃん』から変えられてもピンと来ないんだけど。
「……はぁ」
ため息をつく。
バレンタイン特集が今となっては憎い。
「あー、落ちつかねぇや!!」
テレビを消し、勢いよく立ち上がる。
「……チョコ欲しいな」
情けないことを言うな。と自分でも思った。
俺がソファの周りをぐるぐる回っていると。
ピンポーン。
インターフォンが来客を告げる。
「はーい」
俺が出て行くと……
「お兄ちゃん、こんにちは」
「あ……」
俺の待ち人、羽音ちゃんが彼女の通う中学校の制服を着て立っていた。
「は、羽音ちゃん……!!」
喜びと驚きで、一気に覚醒する脳。
しかし、次の瞬間、
「……やっと……会えたよ……」
そう呟いて、膝を落とす羽音ちゃん。
「は、羽音!?」
慌てて駆け寄る。

208 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/02/14(火) 20:45:59 ID:hJiyPpTM
「あ、あはは……」
俺が羽音ちゃんの肩を抱くと、羽音ちゃんは恥ずかしそうな微笑を見せて、
「すいません……。ちょっと歩いたら、疲れちゃったみたいです……」
「歩いたって?」
「あ、学校終わった後、お兄ちゃんを探して、学校まで行ったんですけど、もう帰っちゃったみたいで……
 それで、そのままここまで……」
「……ってことは、羽音ちゃんの家から、ここまで!?体、大丈夫なの!?」
「あ、はい……お兄ちゃんの顔を見たら、安心して、力が抜けちゃいました……」
「なんで……」
「あ、忘れてました」
そういうと羽音ちゃんは鞄の中をゴソゴソと探り、真っ赤な箱を取り出す。
「……えっと、一応、本命チョコなんですけど。もらって……くれませんか?」
恥ずかしそうな顔で、チョコを差し出す羽音ちゃん。
それが嬉しくて、驚いて、でも、なんだか自分が情けなくて……。
「……ひぁ!?お、お兄ちゃん!?」
彼女を思わず抱きしめていた。
「ゴメン……羽音ちゃん、俺のために頑張ってたのに……俺、ずっと待ってばっかりだった……」
「お兄ちゃん……」
「しかも、最後には羽音ちゃんを疑ってた……本当にゴメン!!」
さらに強く抱きしめる。
「お、お兄ちゃぁん……」
顔は全く見えないが、羽音ちゃんは泣きそうな声で俺を呼ぶ。
「会いたかったよぅ!!歩いてる間、すごく不安だったよぉ……!!」
堰を切ったように泣き出す羽音ちゃん。

209 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/02/14(火) 20:47:07 ID:hJiyPpTM
「うん……」
「途中すごく寒かったし、暗くなったし、道にも迷っちゃって……怖かった……!!」
「ゴメンね……」
「違うの!!でも、お兄ちゃんに会えるから、私、頑張ったんだよ!!」
「羽音……」
「会えて……嬉しいよっ……!!」
俺の胸に抱きつき、涙を流す羽音ちゃん。
こんな羽音ちゃんをみたのは、俺は初めてで……
どうして良いか分からずに、ただ彼女を抱きしめ、髪を撫でていた。
それから、どれくらいそうしていただろうか。
しばらくして、少し落ち着いた様子の羽音ちゃんが、
「ゴメンね……絶対泣かないって決めてたのに……お兄ちゃん、優しいから……」
「ううん。そうやって、何でも言ってくれた方が嬉しいよ」
「……」
よほど取り乱したことが恥ずかしかったのだろうか。
赤面し、俯く羽音ちゃん。
「……羽音ちゃん。いや、羽音」
「はい」
「ありがとう。好きだよ」
「……うん。私も」
静かに目を閉じる羽音。
「おねだり上手め」
……これ以上は、何も言うまい。
今年は人生最高のバレンタインになったみたいだね。

[END]

210 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/02/14(火) 23:08:57 ID:gkKUQD/L
恵さんにチョコ貰いてぇ〜!

211 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/02/18(土) 20:45:39 ID:qjqO1jQV
流石としか言い様がありません!
サラかわいいな〜


212 :海中 ◆xRzLN.WsAA :2006/02/25(土) 19:34:07 ID:sJhG9+Hj
青い青い空の下、蒼い蒼い海がある。
終わりが無いかのように見える蒼色は光に映え、まるで雪原のように煌いていた。
「本当に……乗っちまった……」
俺は手すりにもたれかかり、眼下を見下ろした。穏やかな波を立て、船は進んでいる。
「しおかぜが気持ちいいね」
ぽつりと呟かれ、ふと声のしたほうに顔を向けると、白いワンピースの少女が海を眺めていた。
「気持ちいいけどさ……ずっと景色はこのままなんだぜ?」
「優希としては、それもいいかな。えへへ」
「はぁ……元気でいいねぇ……」
「うんっ!だから、お兄ちゃんも元気になろっ?」
「努力するよ……」
満面の笑みをこぼす妹を尻目に、早くも俺は後悔の淵に突っ立っていた。

そもそもの発端は、医者である父だった。
優れた技術で名高い某病院に勤務していた父の元に、ある壮大な話が持ち上がったのだ。
海上都市『フリーダムシップ』。
その実はメガフロートを土台とした長期滞在型の超大型客船で、全長約1400メートル。
船上にはひとつの都市が丸ごと収まっており、学校・病院・デパート・飛行場・カジノ・
会社・遊園地など、ありとあらゆる施設が整っている。
三年かけて世界を一周する、超が三つくらい付くほどの豪華客船だ。
そして、親父が、そこに、勤務、する、ことに、なって、しまった、のだ。

213 :海中 ◆xRzLN.WsAA :2006/02/25(土) 19:35:12 ID:sJhG9+Hj
「ありえねぇ……」
俺は今、船上のマンションの一室のベランダにいる。背後のまあまあ広い室内では、
浮かれた両親たちがこれからの物語に妄想を膨らませていた。
「お兄ちゃん、元気出してよぅ……酔ったりしないから、大丈夫だよ」
「いや、それは心配してないけどさ」
いきなり船の上で暮らせって言われても、無理がある。そもそも学校だって転校だ。
船の中の日本人学校に。
「ありえねぇ……」
自分の理解できる領域を遥かに超えたスケールに、俺はただただ呆然とするしかなかった。
「えと、それじゃあ散歩にでも行く?」
「散歩?船の中をか?」
「他にどこに行くのよ〜……。もう……」
「そういや、何でもあるんだってな。地図を頼りに行ってみるか」
そうだ、船上に何でもあるなんて楽しいじゃないか。そうだ、きっと楽しいぞ。
何しろ超豪華客船だもんな。珍しいものがたくさんあるぜ、きっと。
……きっと。
「えへへ〜♪よーし、しゅっぱーつ♪」
優希に引きずられながら、俺はのそのそと歩き出した。

214 :海中 ◆xRzLN.WsAA :2006/02/25(土) 19:36:19 ID:sJhG9+Hj
探索に出かけた俺たちだが、俺の杞憂はあっという間に消し飛んでいた。
何しろすべてのスケールが半端じゃないのだ。部屋を出ると長い廊下が左右に続き、
展望室からは街の様子が一望できる。
おそらく中心と思われる広場には木々が生い茂り、まるで地上の公園のようだった。
「すげぇ」
「す、すごいね……」
二人してベンチに腰かける。辺りを見回すと、同じような日本人家族を何組か見かけた。
日本人居住区でもあるのだろうか。
「ねぇ、お兄ちゃん……」
「ん?」
優希は少しだけ唇をかみ締めたあと、ふっと小さく笑い、
「な、なんでもない……」
そう呟き、またガラスのほうへと顔を向けた。

街中は出航直後ということもあってか、物凄い人の数だった。
しかもすれ違う人ほぼ全員が外国人。アジア系も何人か見かけるが、それでも金髪が多い。
だが、それに臆する俺ではない。残念ながら、英語は得意なのだ。
親父が医者であり、さらに有名大学をサラッと出ている秀才のため、当然のことながら
勉強を強要されて、否応無しに学力は良くなっていた。まあ、そういう設定だ。
とにかく、これほどの国際的な都市で英語が話せるのは必須であり、その点では安心できた。

215 :海中 ◆xRzLN.WsAA :2006/02/25(土) 19:37:25 ID:sJhG9+Hj
「わっ!ねぇ、アレ見てよお兄ちゃん!」
優希に腕を引かれ、人の波をかき分けながら進んでいく。頭上を見上げると、切り取られた空から
まばゆいばかりの日差しが降り注いでいた。
やがて俺たちは海面に最も近い港に辿り着いた。木馬の足のように、幾つかの発着場が
伸びている。二人はその先端まで歩き、縁に腰かけた。
水面がゆらゆらと揺れて、互いの顔を鏡のように映す。
「うわぁ〜!綺麗だね……」
「そうだな。海はもっと汚いと思ってたけど、意外と綺麗だな」
「うん……」
俺は動く水面をじっと見据える。優希はぽつりと漏らした。
「あと、三年だね……」
「ああ……」
三年、それは俺たちにとっては非常に重要なものだ。
「でもね。優希、最後にこんな旅行が出来るなんて、幸せだよ?」


216 :海中 ◆xRzLN.WsAA :2006/02/25(土) 19:38:28 ID:sJhG9+Hj
「……最後なんて言うなよ……」
俺の妹、優希はおよそ三年後に死ぬ。
生まれたときから心臓に重い障害を宿していた優希は、生まれたときから死を知っていた。
成長するにつれて次第に身体に異常を覚え、小学生のときに病だと判明した。
原因不明の心臓病。医者の親父が全力で治療に当たったが、効果は得られなかった。
最先端の医療施設で分かったことといえば、冗談のような寿命だけだった。
これが。
これが、彼女の最後の旅になる。
次に日本に帰ってきたとき、彼女はもういない。生きていたとしても、ほんの少しの差でしかない。
「えへへ……そんな暗い顔しちゃダメだよ」
優希は俺の顔を覗きこみ、にっこりと笑った。
俺たちの足元では轟々と巨大な何かが唸り声を上げている。
決して逃れられない『何か』にたいして、俺は震えを感じた。
「……優希」
「……ん?」
青い青い空の下、蒼い蒼い海の上で、俺は立ち上がった。
「ありがとな。元気、出た」
「……!!」
手を差し出す。俺の手のひらは優希の手をしっかりと掴み、その身体を引き寄せた。
「えへへ……ありがとっ」
始まったばかりなんだ。何もかも、まだ。

2007年7月。その旅は始まった。


217 :海中 ◆xRzLN.WsAA :2006/02/25(土) 19:40:58 ID:sJhG9+Hj
絶対に忘れられていると思います、お久しぶりです。
いろいろと書き逃げしてきた前科があるのですが、今回だけは
しっかりと書き終えたいと思っています。

ちなみに「フリーダムシップ」自体はノンフィクションです。

218 :遊(ry ◆isG/JvRidQ :2006/02/26(日) 10:29:49 ID:zdEKP7KA
お久しぶりです。海中様。
ちょい悲しい感じのお話ですか……素敵な話の予感がしますねぇ

219 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/02/27(月) 01:40:14 ID:Q3YE6+1r
期待

220 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/02/27(月) 03:29:31 ID:ywWrEi/x
遊星様>>バレンタインSS読ませていただきますた
やはり姉妹イイッ!
真司君が羨ましいわw
遊星様の次回の登場はいつに?
これからも期待しております

海中様>>スゴい設定ですな!
船の上で普通の生活が……ありえねぇ(主人公風
これまた期待しております

221 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/03/06(月) 18:37:24 ID:7i9Mq4hP
SF的設定良いっすね。
でも、全長1400mで空港を入れるのは苦しいとか余計な突っ込みを入れてみたり。

あと、一回ageた方が良いかも?

222 :age職人 :2006/03/10(金) 03:50:52 ID:1aOBYDh4
age玉ボンバー

223 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/03/10(金) 16:04:02 ID:lX3bjVwb
 光に気づいた。
 無くしてから大切だと気づいた。

 手を伸ばせば何にでも届きそうな、狭い部屋。
 ただでさえ狭いというのに、そこには勉強机が二つ置かれている。
 片方は教科書類が乱雑に広げられていて、もう片方は可愛らしく装飾されたものだ。
 そんな手狭な部屋を改めて眺めていると、不意に部屋の戸が開け放たれた。
「も〜、また寝転がってる」
 そこには、不機嫌そうにこちらを睨んでいる妹、ヒカリがいた。
 今年で中三になるはずなのだが、その低い身長や幼げな顔つきのせいか、実年齢よりも一回り幼く見える。
「……何ジロジロ見てるのよ」
「いや、別に」
 あからさまに怪訝な顔をしながら、俺から視線を外しある一点を見つめた。そこは机の上、教科書が山のように積み重なっている。
 触れれば崩れ落ちそうなそれを、上から丁寧に片付けていく。
「少しは整理したらどうなの?」
「今やろうと思ってたんだよ。余計なことを」
「どうだか……って余計なことって何よ!」
 返しては返される。いつもと同じやりとり。
 そんな他愛もないやりとりが、何故か嬉しかった。
「まったく、私がいなくなったら埋もれちゃうんじゃない? この部屋」
 ヒカリはそう言いつつもテキパキと片付けていく。
 その反対側、彼女の机周りは綺麗に整理整頓されていた。
 大半の荷物はダンボールに詰められていて、後は手で持ち運べるような物しか残されていない。

 そう、もうすぐで彼女はこの部屋から、この家から出て行くのだ。

224 :223 :2006/03/10(金) 16:05:03 ID:lX3bjVwb
sage忘れました。すいませんorz

225 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/03/10(金) 16:49:21 ID:I71D5L4U
>>実年齢よりも一回り幼く見える

ここおかしくね?中学生で一回り幼いと1歳とかになってしまうのではないかと。

226 :遊(ry ◆isG/JvRidQ :2006/03/10(金) 18:21:44 ID:iH1sfFDh
>>223
あぁ、また悲しい系のお話だ……弱いんだよなぁ、こういう話に……・。

>>225
ヤフーの辞書より(1、2略)
3 十二支が一回めぐる年数。一二年。「兄と―年が違う」
4 物事の程度、また、人の度量の大きさなどの一段階。「―小さい服」「人物が―大きい」

4に使えるか否かが微妙なところだねぇ……。
ま、いいんじゃない、何となく意味がわかりゃw

227 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/03/12(日) 00:46:52 ID:GWckR+XV
>>213-217
海中氏期待あげ

228 :海中 ◆xRzLN.WsAA :2006/03/12(日) 12:53:09 ID:iUl8b3KR
三月。
船はオーストラリア東海岸沿いへと進み、順調な航海を続けていた。
一ヶ月も乗船していると、もはや勝手知ったる他人の家で、すっかり船の内部も覚えてしまった。
そして日常を行うべく、俺は船内の学校に通っていた。

まだ真新しい、建造されたばかりの白い廊下を歩く。独りの足音が周囲に木霊した。
片手に抱えているのは教科書やノートの類で、使い古したせいか微妙に変色している。
 「……はあ」
予想外に退屈だ。
平日は登校。休日は街へ出かける。たまの上陸は観光。
その繰り返しは単調で、飽きの早い俺にとっては苦痛でしかない。
 「お兄ちゃん♪」
曲がり角からひょっこりと顔を覗かせた優希に対し、俺は足を止める。
 「ああ、はい……」
シャーペンを一本取り出し、ポイと投げてやる。
それを見た優希はむっと顔を赤く染めて、ぷんぷんに怒りながらシャーペンを返してきた。
 「ち、ちがうよ!今日はふでばこを忘れたんじゃないの!」
 「え?違うのか?」
 「ちがうもん!」
 「はは……優希も冗談を言うようになったのか。それとも、とうとう幻聴が……」
 「ちーがーうーのっ!!」
 「あうっ!?」
思い切り爪先を踏まれ、思わずよろめいてしまう。そんな様子を無視して優希は話し出す。

229 :海中 ◆xRzLN.WsAA :2006/03/12(日) 12:54:05 ID:iUl8b3KR
 「お兄ちゃん、最近元気ないよね……。どうしたの?」
心配そうな表情で顔を覗きこむ優希。微妙に上目遣いだが、仮にも兄なのでなんともないぜ。
 「い、いや……爪先が痛いんですけど……」
 「それはわたしのせいだけど……そうじゃなくてぇ……」
優希の言いたいことは分かる。ここ最近、ろくにリラックスしていない。
もじもじと指先をいじっていた優希だが、ついに決心したのか、ポケットから何かを取り出した。
 「と、いうわけで。お兄ちゃんの息抜き大作戦を遂行しに来ましたっ!」
 「なにその作戦名。ふざけてるの?」
 「じゃーん!なんとここに、温水プールのチケットがありますっ!」
 「ちょ、おま―――」
 「泳ぎにいけっ♪お兄ちゃん」
 「日本語おかしいって」

……一通りの回想を終えて、俺は頭上を仰ぎ見た。
青空にペイントされた天井が広がり、太陽を模された照明がプールサイドを照り付けていた。
視線を上から下に戻してみると、金髪美女が各々楽しそうに泳いでいた。
 「これはこれで……」
 「……お兄ちゃん?」
背後からの殺気に怯え、俺は慌てて振り向いた。
 「……し、白いスクール水着?」
優希が着ているのはその名前の通りの代物で、幼い面影を残す優希にはよく似合っていた。
 「それ、濡れると透けるやつじゃないのか?」
 「す、透けないもん!ちゃんと試したんだからねっ!」
 「試した?」
 「あーうーあーっ!」
墓穴をほった優希はメダパニしながら俺をプールに突き落とした。

230 :海中 ◆xRzLN.WsAA :2006/03/12(日) 12:55:02 ID:iUl8b3KR
 「なっ、生温い!」
 「温水プールだもん……お兄ちゃんだいじょうぶ?」
そろそろ優希に憐れな目で見られるようになってきたので、冗談は止めることにする。
 「さてと。足は着く?」
そろりそろりと水の中を歩く優希だが、どうも無理っぽそうだ。
 「だ、だめぇ……真ん中のほうは足が着かないかも……」
綺麗な長髪の黒髪が波にゆれ、水面をゆらゆらと漂っている。波?
 「ここ、波の出るプールなのか」
彼方に目を凝らしてみると、小さな仕切りで区切られた穴があり、そこから出ているようだ。
 「うん。自由にちょうせフーッ、つ出来るみたいだよ」
 「なにやってんのさ」
見ると、優希は小さな口で必死に浮き輪を膨らませている。
 「う、……………………うきわ」
顔を真っ赤にしてぼそぼそと呟く。そんなに恥かしいのだろうか。
それはともかく、浮き輪なら中央の深いところでも問題はないだろう。
 「よし。それ付けて行ってみる?」
 「う、うん」

しばらくして浮き輪を装着した優希と俺は、プールの深い場所へと泳いでいた。
元々外国人用に作られた船なので、俺たちには何もかもが少し大きい。
ちらりと優希に視線を送ると、浮き輪で楽しそうに自分の両足をぷらぷらさせていた。
ニヤリ。

231 :海中 ◆xRzLN.WsAA :2006/03/12(日) 12:56:04 ID:iUl8b3KR
 「お、お兄ちゃん!だめっ!」
 「ん?どうしてダメなんだ?」
 「だ、だってぇ……そこは……んっ!」
 「そこ?ここがどうかしたのか?」
 「や、やぁ……入っちゃうよぉ……!」
 「大丈夫だろ」
 「あ、あうっ……!お兄ちゃん、許してぇ……!んんっ……!」
 「嫌だね。ほら、支えといてやるから。出すぞ」
 「あっ!だめぇ!だ、出しちゃだめだよぉ!」
 「だから、大丈夫だって」
 「ふぁぁ……!な、中に出てる……!」
 「ほら、お前も出せよ……!」
 「らめぇっ!やぁ……出るぅ……出ちゃうよぉぉぉぉっ!!」






 「な。水の中で空気出すと面白いだろ?」
 「やだぁ!浮き輪しぼんじゃったよ!ここ、深いところなのに……」
 「だから支えといてやるってば」
 「ばかっ!お兄ちゃんのばかぁ!!」
ストレス発散はできました。

232 :海中 ◆xRzLN.WsAA :2006/03/12(日) 12:56:59 ID:iUl8b3KR
夕日が沈むテラスで、俺と優希は手すりにもたれ、夕焼けを眺めていた。
 「お兄ちゃんのきちく……」
 「そういう言葉、どこで覚えてくるんだよ、お前は」
 「むー……」
 「ああもう、悪かったよ。あれでも食べて元気出せよ」

 「わぁ……これ……」
 「美味そうだろ?」
 「うん……お兄ちゃんの、すごく大きい……はむ」
 「……っ!お、おい、あんまり舌動かすなよ」
 「えーっ?どーしてぇ?……んむっ」
 「こいつ……!」
 「んふふ……さっきのお返しだよぉ……ぴちゅ……」
 「わっ……ば、バカ……!」
 「んむ……ちゅ……はむ……」
 「う……!!」
 「えへへ……手で強く握ってあげる……」
 「あ、やめろって……!あ……出る!」
 「きゃっ……!?……あはは、いっぱい出ちゃったね?お兄ちゃん」






 「……ソフトクリーム」
 「せっかく買ってやったのに……もう絶対に買ってやらないからな」
 「さ、さっきのお返しだもん……でも、ごめんなさい……」
船は汽笛を鳴らし、のんびりと航海を続けていく。
旅はまだまだ続くようだ。

233 :海中 ◆xRzLN.WsAA :2006/03/12(日) 12:57:59 ID:iUl8b3KR
正直  許して・・・

234 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/03/12(日) 14:13:10 ID:5LyZx7VN
許します
不覚にも笑ってしまった(´・ω・`)

235 :遊(ry ◆isG/JvRidQ :2006/03/12(日) 15:25:47 ID:OeprWq89
>>228-232
あぁ、もう、ちくしょう、この人上手いよ!
ホワイトデーにむけて頑張ろうと思ったが、一気にやる気失せたわw

236 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/03/12(日) 15:55:58 ID:h+/OF/61
なんかファミ通に昔のってた女神のまぎらわシリーズ思い出した。

237 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/03/14(火) 01:12:05 ID:JoWeREMW
全米が抜いた

>>遊(ry
やる気無くすな!頑張れ

238 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/14(火) 22:58:00 ID:7FvloQ+5
ピンポーン
「はい、はーい!!」
雑誌を放り出して、玄関に走っていく。
「どなたですか?」
ドア越しに尋ねる。
ホントは、分かるんだけどね。
「州田敬介。梨那か?」
照れくさそうに、自分の名前を告げる。
「あ、お兄ちゃん、どうしたの?」
ドアを開けながらまた尋ねる。
この質問の答えだって、私にはもう分かってる。
でも、私が先に言ったら、きみは怒って、「そうだよ」とは言わないから。
「ホワイトデーだからな」
ドアの向こうから現れたキミは、恥ずかしさを隠しながら、小さな箱を見せる。
「わぁー、ありがとう!!」
「気にするな。借りは返す」
これも照れ隠し。
キミは知らないかもしれないけど、私にはそれぐらいお見通しなんだから。
「中は何?」
「ケーキ。普通じゃつまらないだろ?」
これもウソ。
私の好きなケーキ屋さん、ちゃんと覚えててくれてる。

239 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/14(火) 22:58:33 ID:7FvloQ+5
「ありがとう、お兄ちゃん」
私も、キミに最高の笑顔をあげる。
「じゃ、俺は帰るわ」
やっぱり。
キミはクールぶってるけど、頬の赤さは隠せないよ。
「お兄ちゃん、時間あるかな……?」
「ん。なくはないけど……」
「じゃあ、これ、一緒に食べようよ」
「いや、でも……」
「いいじゃない。お兄ちゃんだって、こんな美味しそうなケーキ見てたら、食べたくなるでしょ?」
「それじゃ、梨那の分がなくなるだろ?」
「いいの。ケーキが少なくなっても、お兄ちゃんと一緒にいられるじゃない」
「……しょうがねぇな」
そう言って家の中に入ってきてくれる。
ホントはね、キミの気持ちも知ってるんだ、全部。
だけど……その気持ちはキミの口から聞きたいから。
今日も私は、バカな女を演じるのです。
──────────────────────

「にゃー!!恥ずかしぃ!!」
目の前の紙をクシャクシャに丸める。
「お兄ちゃんにケーキもらって嬉しかったから、
 何か詩が書けると思ったけど……やっぱり、無理っぽいなぁ……
 もうちょっと頭冷えてから、練り直そーっと」

240 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/14(火) 22:59:10 ID:7FvloQ+5
「ねぇ……やっぱり良くないよ、こういうの……」
「いいじゃない、千奈ちゃん。最終的には、唯奈たちのものになるんだから」
とある大型スーパーの一角。
休憩スペースのベンチに座り、コソコソとどこかを見ている二人の少女。
「でもぉ……」
「どうしたの?」
「私たち、ちょっと怪しい人だと思うよ……」
「そう?気にしすぎだよ……あ、お兄ちゃん、何か手に取って見てる」
「……」
「あ、置いた」
「やっぱり、よくないよぉ……」
──────────────────────
……ホワイトデー。
何故かチョコを送る日になってしまったバレンタインデーの
お返しをする日という、もうワケの分からん記念日だ。
日本人は、そういう亜流文化には厳しいらしく、
日本で作られた行事の割りに、結構盛り上がりには欠けるようだ。
それは、このホワイトデー特設コーナーの規模の小ささからも伺える気がする。
「……んー、今一つだな」
とある大型スーパーの一角、ホワイトデーコーナーの前で、
また一つ、商品に目をつけては、却下する。
「あんまり良いものがないなぁ……」
どうもホワイトデー用の商品って言うのは、義理感の強いものが多い気がするな……。
「まぁ、恵さんの分は買わなくて良いのは助かるけど……」
俺の義母、石川恵さんにも、チョコを頂いたことは頂いた。
けど、『アタシにお金と手間かけるぐらいなら、千奈と唯奈にその分を回してほしい』
とのことなので……全力で妹の分を選ばなくてはならなくなったワケだ。

241 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/14(火) 22:59:45 ID:7FvloQ+5
「……そもそも、千奈にはお菓子あげてもしょうがないよなぁ……」
……とすると、無難なトコだと、ハンカチとかか……?
「でも、この辺にあるようなのじゃ、かなり義理くさいよな……」
それに、女物ってのは、よく分からないしな。
「……ま、唯奈はお菓子でもいいとしても……お菓子の選択が難しいなぁ……」
うーん……
やめやめ、ちょっと休憩だ。何か飲も……。
──────────────────────
またまた、双子。
「わわ!!お兄さん、こっち来るよ!!」
「落ち着いて。慌てると怪しまれるよ。ゆっくり逃げよ」
「う、うん、そうだね」
「行こう」
同じタイミングで振り返る二人。
そこに、
「あ、すいません!」
背後から真司の声が……
同時に体を震わせる千奈と唯奈。
「ど、どうしよう、千奈ちゃん……」
「しょうがないよ、謝ろう?」
またも、振り返る。
すると真司は、
「あ、忘れ物ですよ」
そう言って、唯奈のバッグを差し出す。

242 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/14(火) 23:00:29 ID:7FvloQ+5
「え……あ……ありがとうございます」
バレてない!
唯奈はそう確信し、普段より声を高くし、答えた。
「いえいえ、じゃ失礼します」
優しく微笑んで、去っていく真司。
「変装のお陰だね……?」
眼鏡をクイッとあげ、こっそりメガネ千奈に耳打ちするメガネ唯奈。
……これ、素敵です。
「……何だろう、私はすごい罪悪感を感じるんだけど……」
「うん……実は私も……」
「どうしよう?」
「どうしようね?」
──────────────────────
「……んー」
ペットボトルを手に、まだ悩んでいる真司。
「まいったな……時間もなくなってきたぞ……」
浮かない顔でお茶を一口飲む。
そして大きく息を吐く。
「ま……好き嫌いは考えず、二人に似合うか似合わないかで決めることにしよう」
そう決め、立ち上がる真司。
すると、
「お兄ちゃーん!」
唯奈と、少し遅れて千奈がやってくる。

243 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/14(火) 23:01:05 ID:7FvloQ+5
「あ……唯奈……千奈も……何で?」
「見てたんですよ、お兄さんのこと」
「え……?えっと……これは……その……」
「誤魔化さなくても分かってるよ。ホワイトデーのプレゼントでしょ?」
「あ、あぁ……でも、まだ……」
「それも分かってますよ、お兄さん」
「そんな情けない顔しないでよ、私たちが選んであげる」
「え……?」
「唯奈が千奈ちゃんのを」
「私が唯奈ちゃんのを選びますよ」
「唯奈たちは、生まれたときからずぅっと一緒なんだから」
「お互いの好みは、よく分かってますよ」
「だから、お兄ちゃんに千奈ちゃんのこと教えてあげるよ」
「お兄さんに唯奈ちゃんのこと教えますよ」
……息ピッタリのコンビネーションに圧倒する真司。
そして、
「うん、じゃ頼もうかな」
「うん!」「はい!」
大きく返事をする二人。
真司は微笑んで、彼女たちの手を優しく握り、歩き出した。

[一応、END]

244 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/14(火) 23:01:44 ID:7FvloQ+5
「んー……」
本を見ながら唸る。
すると、
「おにぃちゃん!!何してるのー?」
背後から、俺の妹、沙耶が声をかける。
「ん?あー、本を読んでるんだ」
「どんな本ー?」
「お菓子の本。ほら、ホワイトデーだから沙耶に何か作ってあげようと思ったんだけどさ」
「サヤに!?見せて見せて!!」
「あぁ」
ソファを乗り出してくる沙耶にも見えるように、本を移動させる。
「はわー……」
チーズケーキ、ガトーショコラ、苺大福……
いろんなお菓子をパラパラと見せていくうちに、沙耶の瞳に期待の色が溢れてくる。
「いいなぁ……食べたいなぁ……」
ボソッと呟いたこの言葉に悪気はないと信じたい……。
「でもな、沙耶。俺は、そんなに難しいのは作れないからなぁ……」
「そうなのー?」
「そうだけど……」
さすがに、ヘコむだろうな、沙耶……。
などと考えていたが、
「それならね、おにぃちゃん、サヤ、これがいいよー!」
沙耶が上半身を完全に乗り出し、本の一ページを指差す。
「え……?これでいいのか?」
「うん!」
大きく頷く沙耶。
「んー、じゃあ、今日のおやつはこれにするか……」
「うん!!」
「それなら、材料買いに行かなきゃ」
「うん、沙耶も行くー!!」
──────────────────────

245 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/14(火) 23:02:29 ID:7FvloQ+5
「ねぇ、ねぇ!!もういいんじゃない!?」
フライパンの前。
椅子の上に膝立ちし、眺める沙耶が、うずうずしながら尋ねる。
「いや、まだだな」
俺はそんな沙耶の肩を、沙耶が落ちないようにつかみ、フライパンの様子を見守った。
「まだかな、まだかなぁ?」
「そろそろかな。どいて、危ないから」
右手でフライパンの柄を、左手で皿を持ちスタンバイ。
「うん、早く、早くっ!!」
「よっと」
フライパンを皿の上にひっくり返す。
すると、湯気と共に、大きくて厚いホットケーキが。
うむ、自信作だ。
「わぁー!!おいしそー!!」
「だな」
これに、さっき買ったバターとシロップとあとはホイップクリームを乗せて完成。
ココアを添えて、沙耶の待つテーブルへ運ぶ。
「さ、召し上がれ」
「うん、いただきまーっす!!」
一段目のホットケーキを、勢いよくフォークで突き刺し、豪快に食す沙耶。

246 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/14(火) 23:03:01 ID:7FvloQ+5
「こらこら、ナイフ使えよ。服汚れるぞ」
「へへー、美味しいよ、おにぃちゃん!」
「……ま、いいか。まだ焼こうか?」
「サヤは良いよー。それより、おにぃちゃん、あーんして」
一切れをフォークに刺して、掲げる沙耶。
「え……?」
「おいしーよ。食べないの?」
「いや、食べるよ」
俺は沙耶から、フォークごと受け取り、ホットケーキを口に運ぶ。
「うん、うまいな」
「ねー?おにぃちゃんの味だよー」
「俺の味……?」
「うん。おにぃちゃん、よく作ってくれたよねー?」
「あぁ……」
作るのラクだしねぇ……。
「サヤは、これがおにぃちゃんの味なんだって思うんだー」
「そっか」
「うん、ありがとう、おにぃちゃん!!」
笑顔でホットケーキを頬張る沙耶。
そうだ、もう一枚焼いてあげなきゃな。

[おしまい]

247 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/14(火) 23:04:43 ID:7FvloQ+5
三月十四日。
昼下がりを走る電車はスピードを落とし、とある大きな駅に滑り込む。
俺は窓から、駅名を確認すると、バッグを掴んで電車から降りる。
「……意外と早いもんだな」
時計を見ながら呟いた。
ほとんど来た事のない駅を、案内板に従い改札を出た。
……そこまではよかったが……
「……サラの家、知らないぞ」
知らないんですよ。
サラがいつもやるみたいに、驚かせようと思って、何の連絡もしないで、ここまできたのはいいけど……。
「仕方ねぇ、電話して迎えに来てもらうか」
そう思い、携帯電話をポケットから取り出し、電話をかける。
プルルルルルル……
呼び出し音が数回鳴った後、
「え……!?マサト!?」
サラの声が聞こえた。
しかし、それはケータイからではなく……
「こんにちは、マサト」
サラが、俺の目の前に現れる。
「え……?サラ……?」
「ええ、久しぶりね。こんなところでどうしたの?」
「あ、ほら、ホワイトデーに会うって約束だろ?」
「来てくれたってこと?」
「学校早く終わったからね」
「そうなんだ」
サラがちょっとだけ俯く。

248 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/14(火) 23:05:38 ID:7FvloQ+5
多分、照れ隠しなんだろうと思うと、嬉しくなった。
「立ち話もなんだからさ、喫茶店でも行こうよ。何か良いところ知ってる?」
「うん、一度行ってみたいとこがあったんだ。そこでいい?」
「任せるよ」
「そう、じゃあ、行きましょうか」
サラに従い、全く知らない道を歩く。
ときどき振り返り、何か言うわけでもなく俺の顔を眺めるサラが何か可愛かった。
──────────────────────
「マサトは何にする?」
「……」
今まで我慢していたが……もう限界みたいだ。
「ここ……喫茶店じゃなくて茶店じゃない!?」
いかにもな和風建築物の中で突っ込みを入れる。
「いいじゃない、何でも」
サラは何食わぬ顔でお茶を飲んだ。
「ま、まぁ……そうだけど」
「でも、驚いたわ。マサトがこっちに来るなんて」
「俺も。まさかあんな偶然があるなんて」
「……運命の赤い糸……かな……?」
「え?何だって?」
「い、いえ、聞こえなかったらいいの!!」
顔を赤らめ、手をパタパタ振るサラ。
「そう……ま、そういうの慣れてるけど……」
俺もお茶を掴み、飲む。
「ところで、マサト、聞きたいことがあるの!!」
「あぁ、何?」
「私に、何をくれるの?」
「は……?」

249 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/14(火) 23:07:10 ID:7FvloQ+5
「日本だと、バレンタインデーのプレゼントはチョコレートでしょ?じゃあ、ホワイトデーは何なの?」
「あ、知らなかったのか?」
「いろいろ聞いてみたんだけど、クッキーだったり、マシュマロだったり、キャンディーだったり……
 ハンカチとか下着とか、諸説あるみたいだったの」
「ほぅ……」
「だから、マサトは何を持ってくるのかなって」
気体に満ちた瞳。
「……え、何をって……何も持ってないけど……?」
しょうがないよ、学校帰って急いできたんだからさ……。
「え……えー!?何で何で!?楽しみにしてたのに!!」
「いや、俺も何が良いかわかんなかったし……」
「そんな……」
肩をガックリ落とすサラ。
……そんな楽しみだったのか……。
「でも……そのかわり、ここは俺がご馳走するから、それで許してくれないか?」
「……ま、いいわ。だけど……いっぱい食べるからね?」
「お手柔らかにお願いしますよ……」
「少しは拒否しなさい、冗談よ」
「何だ、冗談か……」
「せっかく来てもらったのに、そんなことしないわよ」
「そんなに嬉しかったか?」
「そ、それはそうよ……ただでさえ、一ヶ月だったんだから」
「そっか、やっぱり来てよかったよ」
「ええ、ありがとう、マサト」

少々幼い笑顔を見せるサラ。
ま、これを見れただけでも、ここに来る価値はあったんじゃないかと思う。
あとで、忘れずにサラの家の場所を聞かないとな。

[終]

250 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/14(火) 23:08:01 ID:7FvloQ+5
三月十四日、いわずと知れたホワイトデーですよ。
「ただいまー」
もはや暗くなった時間、俺は大きな紙袋を下げて、玄関のドアを開ける。
「あ、兄さん。遅かったですね」
そんな俺を出迎えてくれる妹の未来。
「おぅ、ちょっといろいろとねー」
靴を脱ぎながら答える。
「何ですか?その荷物?」
「これ?これは、ホワイトデーのプレゼント」
「兄さん、チョコ、一杯もらったんですねぇ……」
「え?あぁ、これ、全部未来ちゃんのだよ?」
「そんなに……ですか?」
「つっても、直接未来ちゃんにあげるワケじゃないけどね」
「……?」
「ま、あとの楽しみってことで」
「そうですか……ま、楽しみにしておきます」
「じゃ、早いところご飯にしよう。用意は?」
「はい、用意できてますよ」
と言うわけで、未来と二人、美味しそうな料理の並ぶ食卓につくのでした
──────────────────────

251 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/14(火) 23:08:38 ID:7FvloQ+5
「ごちそうさまでした」
「ごちそうさまでした」
空になった食器の前で、手を合わせる二人。
「さてと……」
食器を片付けるため、立ち上がる未来。
「あ、俺も手伝うよ」
同様に立ちあがる俺。
「え?いいですよ、別に」
「いいからいいから。二人でやって、早く終わらせちゃおうよ」
「そうですか。じゃ、お言葉に甘えますね?」
「おー。任せとけ」
腕まくりをして、洗い物の山に挑む俺。
黙々と、未来が洗った食器を濯ぎ、拭いていく。
「やっぱり、二人でやると早いですね」
数分後、洗い終わった皿の前で、手を拭きながら微笑む未来。
「だろ?さ、お楽しみといこうかな」
「ついに……」
「そうそう。はい、これ」
俺は先ほどの紙袋から、箱を一つ取り出し未来に手渡す。
「何ですか?」
「入浴剤。なかなかお高いですよ、それ」
「っていうか、何で……?」
「いつも頑張ってる未来ちゃんに、たまには、一番風呂を楽しんでもらおうと思ってさ」
「へぇ……」
「俺のことは気にしなくても良いから、のんびり入ってよ」
「兄さん……」
「ん?何か問題でも?」

252 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/14(火) 23:09:16 ID:7FvloQ+5
「いえ……ホワイトデーには別に何もいらない、なんて思ってたんですけど……
 いざもらってみると、何だか嬉しくて……えへへ……」
恥ずかしそうに微笑む未来。
あぁ、もう!!ちくしょう!!可愛いぜ!!
「じゃ、兄さん。遠慮なく、兄さんからのプレゼント頂きますね?」
「おぅ、ごゆっくり」
よほど嬉しかったのか、部屋を出て行くとき、小さく手を振る未来。
それを満足げに見送る俺。
思ったより順調だなぁ、おい。
──────────────────────
「ふぅ……」
お風呂の中で大きく深呼吸をする。
「兄さんが言うだけのことはあるなぁ……」
肩までお湯につかりながら、良い気分で呟いた。
凄くいい香りだし、お肌もツルツルしてきた気がする。
そもそもこんなに長風呂をしたのは久しぶりだ。
何だかリラックスしすぎて、眠くなってきてしまった。
「あとで、兄さんにお礼言わなくちゃ」
「いや、礼には及ばないぞ」
後方から、兄さんの声。
「あ、兄さん……いたんですか……」
「ああ、ちょっと様子を見に来た」
「いいですよ、これ……すごく気持ち良いです……」
「そっか。お気に召された様子で、光栄ですよ、姫」
「ふふっ……」
「何だよ?」
「恥ずかしいんですけど、さっき私、お姫様になったみたいだな。って思ってたんですよ。
 それが、可笑しくて」
「んじゃまぁ、せっかくだし、もうしばらくやりますか。お姫様ごっこ」

253 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/14(火) 23:09:51 ID:7FvloQ+5
「……じゃ、お願いしちゃおうかな」
「了解。お姫様」
「兄さんは何役ですか?」
「王子……って柄じゃないから、家来かな」
「そうですか、お願いしますね」
「お任せください。姫」
「ふふっ。頼りにしてますよ」
……お風呂は人を変えるようです(立花未来、後日談)
──────────────────────
ベッドに横になる未来。
彼女の透き通るような真っ白な肌に、野獣のごとき俺の手が、獲物を求めるかのように這い回る。
「あっ……兄さん……そこは……」
俺が未来の敏感な部分に触れるたびに、未来は可愛らしい悲鳴をあげた。
その声が、俺を一層やる気にさせるのだ。
「気持ち良い?」
俺はクスリと笑って、さらに彼女を快楽へと誘うべく、さらに力を込める。
「あっ……はい……いいです……んっ……」
未来は締りのない顔で、ただ体に溢れる快楽に身をゆだねている。
そんな彼女に、俺は……

254 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/14(火) 23:10:43 ID:7FvloQ+5
「マッサージぐらいで紛らわしい声出すなよ。親父が聞いたら卒倒するぞ」
正解:マッサージ。
「あ、すみません……でも、気持ちよくて……」
「それだけ疲れてるってことだね」
「やっぱりそうなんですか……」
未来の背筋をふにふに。
「まぁねぇ、あれだけ毎日頑張ってりゃ、当然じゃない?」
「あはは、何だかんだ言っても結構大変ですからね」
未来の腰をもみもみ。
「ま、好きでやってるのはわかるけど、たまには休まなきゃってことだね」
「そうですね……」
未来のお尻をじー。
「ま、そんな暗くなるなよ」
「そうですね……」
未来のふとももをぷにぷに。
「未来が無理しないように。未来が頑張り過ぎないように。そのために俺がいるんだろ」
「兄さん……」
「俺は未来の兄貴なんだからな。たまには甘えてもらわないと」
「ふふっ、覚えておきます」
微笑む未来。

255 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/14(火) 23:11:19 ID:7FvloQ+5
そんな未来の足をなでなで。
「ねぇ、兄さん?」
「どうした?」
「今日はありがとうございます」
『いや、こちらこそ、いい思いをさせてもらったよ!!』
とは、さすがに言う気にならなかった。
「なに。こんなんでよければ、いつでもするさ」
当然下心有りで。
「はい、お願いしますね……あ、そうだ。兄さんにもやってあげますよ、マッサージ」
「おいおい、それじゃ、意味ないだろ?」
「いいじゃないですか。ほら、寝てください」
「んじゃ、お願いしようかね」
「はい」

ロマンティック、とは程遠いが、ま、こういうホワイトデーでも良いんじゃないのかな。
なんて、未来にマッサージされながら思う。
というより、未来と楽しめりゃ、何だっていいのかもしれないな。

[おわり]

256 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/14(火) 23:12:34 ID:7FvloQ+5
とにかく時間がなかったです……でも、頑張ることは頑張りました……結果は伴ってないけど……

257 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/03/14(火) 23:39:50 ID:+WPFg8Bn
いやGJだ。
芸風広いなー。

258 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/03/15(水) 12:56:21 ID:SBmPuSZl
Gj! 
…ちょっとしたミスにより遊星さんのまとめサイトが見れなく…
 誰かおたすけを!

259 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/15(水) 13:34:46 ID:7zsPNpDG
>>258
www.geocities.jp/you_say712/

そういや、ここには貼ってなかったっけねぇ

260 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/03/15(水) 17:10:50 ID:SBmPuSZl
ゆ、遊星様!?ありがとうございます(ノДT)
 それとsage忘れスマソ

261 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/03/17(金) 11:43:10 ID:JbCl7rQk
海中様、遊星様、GJです!

海中様>エロいw
面白かったです!!

今回はギャグですね

遊星様>ヤバいっ、サラ萌えました!
サラはツンデレかな?
プレゼント(´・ω・`)

サラ&双子最強w

262 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/03/19(日) 19:52:35 ID:isOInMJv
待ちに待った文化祭当日。いつもの何倍もの活気と熱気を帯びた学園に弾んだ声が飛び交う。
俺もそんな空気を人並みに楽しんでいた、筈だったのだが

「はい、オーダー入りま〜す!!イチゴクリームにバナナチョコ一つです!!」
「・・・はいはい」

何故か屋台でクレープを作っていた。・・・明らかに何かが間違っている。

「・・・あのさ、なんで俺が作らなくちゃならないワケ?」
「それだけ上手く作れる人はそういないよ、あたしだって無理だもん」
「その才能を使わない手はないワケよ」

強靭な笑みを見せるクラスメイト達にたじろぐ俺。
ほんの少しクラスの出店状況を見てみようと思ったのが運の尽きだった。
連れ立って歩いていた筈の仲間は知らぬ内に姿を眩ませ、気が付けば俺一人拘束。
あまりにも無情な展開だが、そんな訳で今現在屋台を切り盛りしている。

「くっ、くそ・・・全員トンズラとは友達甲斐の無い奴等だ!!」
「いいのよ、男子で当てになるのって言えばキミくらいのもんだし」
「屋台造ってクレープまで作るってか、村一番の働き者だな俺は」
「まぁまぁ、これでも私達ほんとに感謝してるんだからさ」
「うん、実際、村一番の働き者だよキミは」

なんとなく上手く扱われている感じがあるが今更その辺りは深く考えまい、虚しいだけだ。
愚痴を零しつつも手早くクレープを仕上げていく。その所業に周りから漏れる感嘆の声。

263 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/03/19(日) 19:54:07 ID:isOInMJv
「ほい、出来上がり」
「ほんと上手だよねぇ、ひょっとしてどっかクレープ屋でバイトしてたとか?」
「流石にそれはないな・・・まぁ、家で何度か作った事があるからさ」
「ひょっとして、巴ちゃん直伝だったり!?」
「え?ああ・・・そんな所」

目を輝かせて問いかける女子を前に俺は曖昧な作り笑いで答える。
当然、巴と共に培った技術なのだが教えたのは俺だったりするんだよな。
まぁ、それを言った所で誰も信じやしないとは思うが。
男子厨房に入るべからずという言葉はもはや昭和の向こうに霞んで見える。

「・・・ところで、昼になったら俺は抜けるからな、流石にその辺でご勘弁を」
「ありがとうね、お陰で助かっちゃったよ」
「一番忙しい時に助っ人だったからね、ほんとありがとう!!」
「じゃあさ、どうせだったら後で私達と文化祭見て回る?お詫びに奢ったげるから」
「う〜ん・・・気持ちだけ受け取っておくよ」

割と本気で言ってくれていた様だがやんわりと断っておく。
女の輪の中に男独りはキツ過ぎる。公園へ遊びに連れ歩くチワワじゃあるまいし。

「あっ!!いらっしゃいませ!!」
「・・・うっ!?な、なんか嫌な予感が・・・」

そんな事を考えて苦笑いしていると一オクターブ高い接客の声が聞こえてくる。
ほぼ同時に背中に感じる悪寒。この感覚、まさか・・・振り向いたその先にいたのはやはり氷の女帝、もとい我が妹。

264 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/03/19(日) 19:55:44 ID:isOInMJv
「・・・イチゴチョコひとつ」

大きくは無い、むしろ囁く様な、それでいてはっきりと聞こえる独特の澄んだ声。色めき立つ周りとは少し違う緊張が俺に走る。
長い付き合いで大体解るんだが・・・妹様は大変ご機嫌斜めらしい。

「兄さん、楽しそうだね」
「えっ?そ、そうかな・・・ははっ」

急にこちらに向けられた穏やかだが矢の様に刺さる視線に動揺して作り笑いもままならない。
兄さんという完全に余所行きの言葉もやたらと深く胸に突き刺さる。
背筋まで凍りつく瞳の奥にある絶対零度の世界。一体何がこの子をここまで駆り立てるのか?

「はい、イチゴチョコです」
「・・・ありがとうございます」

クレープを受け取ると軽く会釈して悠然と去って行く巴。そんな巴の颯爽たる後姿を惚けた顔で皆が見送る。

「ほんと素敵よねぇ・・・巴ちゃん」
「うんうん、財布を取り出す姿もカッコイイっていうか」
「年下とはとても思えないよ、ホント」

頬を染めて後姿をうっとりと見つめるクラスメイト。数秒後、なんとはなしに俺に品定めする様な視線が集まる。
所詮、体は一つだというのに複数の視線で貫くとはなんという仕打ちだろうか。

「・・・すみませんね、どうせ俺は面白くもなんともないただの凡人ですよ」
「い、いや、そんなんじゃないんだよ!?そんな事は無いから、ねっ」
「そ、そうそう、いいひとだもんねぇ」

鑑定の結果はいい人かよ・・・まぁ、自分でもお人好しかその辺りだろうとは思うが。
それよりも巴の機嫌がすぐに直ってくれればいいのだが。
遠くになった背中を見ていると自然と深い溜め息が漏れ出てしまう俺だった。

265 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/03/19(日) 20:19:20 ID:isOInMJv
てな訳で前回、年の終わりに遊星神のご神託を承ったのでコテ&トリップ付けた前スレ260です。
相も変わらずのスローペースに誰も覚えていなくとも仕方がありません。
一応、話は去年前振りしていた文化祭話の続き。
バレンタイン話もホワイトデー話も書いてはいますが完成したのが今し方。
来年投下しましょうかね・・・生きてれば。

>海中様
SF的設定を活かしたお話は流石の一言。
というか思わせ振りな展開が上手い!!
>223様
悲しめのお話ですね、続きがとても気になっています。
期待して待ってますよ。
>遊星様
しっかりバレンタイン、ホワイトデー共に書き上げるとはお見事です。
堪能させて頂きました、羽音ちゃんが可愛い!!何気に精神年齢高い梨那ちゃんがイイ!!

266 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/21(火) 08:33:42 ID:udjHyFTw
わーい、260様、改め夢ノ又夢様がいらっしゃったぞー!
続きが楽しみだー!

267 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/04/04(火) 22:24:48 ID:09xp6MVE
保守保守っと。

にしても、アイデアがわかないなぁ……。

268 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2006/04/07(金) 15:31:46 ID:441Fyv+f
>>夢ノ又夢さん
コテトリおめですー
いつもひっそりと楽しませてもらってますですw

>>遊星さん
料理にお酒を入れすぎて酔っ払って暴れまくる妹…言ってみただけです(´・ω・`)
遊星さんは書いてる量が量だから仕方ないですよ。

それにしてもこの時間のなさは一体…
次のが書けるようになるまで名無しで潜伏するかも知れないです。

269 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/04/12(水) 01:59:15 ID:5Ar0SzUf
ひそかに期待あげ

270 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/04/17(月) 21:29:28 ID:ZDUMoLOm
意思のある静寂に包まれた体育館に司会の声が響き渡る。舞台袖から現れる数人の生徒達。
一人一人司会者に丁寧な紹介をされ大きくお辞儀してみせる。文芸部の詩の朗読がもうすぐ始まる。

「・・・お兄ちゃん・・・」

渡せなかったチケット、隣の空席。頭に過ぎるクラスメイトに囲まれて照れた笑顔のお兄ちゃん。
先程の光景を思い出すだけで秘めかねた痛みが胸にチクリと突き刺さる。

「・・・カッコ悪い・・・デレデレして」

きっと優しいお兄ちゃんの事、忙しそうなのを見かねて助け舟を出したに違いない。
頭でそう解っていても心は納得してくれない。メトロノームの様に揺らめくアンバラスな心と理性。
やがて耳に聞こえてくる詩の朗読、どうやら気付かぬ内に朗読は始まっていたらしい。
綺麗に着飾られた言葉を聴く度に思い知る、ボクにはこんな風に伝えたい言葉が無い事を。
ボクは人に言われる程、器用な方じゃない。届けたい想いは沈黙の渦の奥にある。
お兄ちゃんへの想いは嬉しい事も悲しい事も、時に大きくなる戸惑いや苛立ちだって抱え込む。
例えそれがどんなに辛くてもそのひとつひとつが本当の気持ち、偽りの無い心。
ホントはちゃんと解ってた・・・解ってるんだよ、お兄ちゃん。

「お待たせしました、次は相川梨那さんです」

泣き虫だったボクが元気にここまでこれたのはお兄ちゃんが傍に居てくれたからだって。
繋いだ手の温もりがボクを支えてくれていたんだって。
瞼を閉じればいつでも目の前に広がるずっと追いかけ続けるお兄ちゃんの大きな背中。
耳元からは落ち着いたメロディに乗せて朗読される詩が聞こえてくる。
紡がれるシンプルな言葉達が胸を打つ。それはきっと心からの気持ちだからなんだと思った。
こんな風に自分の想いを伝える事が出来ればどんなに素敵だろう。

271 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/04/17(月) 21:30:25 ID:ZDUMoLOm
「心からの気持ちをありのままに・・・」

ボクは考えすぎていたのかもしれない。そう思うとなんだか切羽詰っていた自分が余計に滑稽に思えてしかたがなかった。
気持ちは言葉にしなきゃ伝わらない、そんなお兄ちゃんの真摯な言葉を不意に思い出す。
ボクも伝えよう、欲しいのは思い出じゃない、今この時なのだから。
朗読を終え、割れんばかりの拍手に真っ赤な顔で応じる彼女を見届けてボクは席を立つ。

「あれ?最後まで聞いていかないんですか?」
「・・・舞台の準備があるから」

それに相沢先輩の詩の効果で体育館が甘い空気に包まれ始めている。
こうして入り口の男の子に呼び止められた今も場内の熱に浮かされたカップルが自分達の世界に入浸る。
もっと問題なのは数名の女子の妙な熱視線を背中に感じる事、これ以上ここに留まるのは危険を伴う。
一人に告白されでもすれば矢継ぎ早に告白されかねない、それでは卒業式の二の舞だ。
たまにお兄ちゃんから冷やかされるけど女の子の恋焦がれる人を見つめるかの様な視線を浴びるのはやっぱり苦手・・・
かといって男の人にそんな視線を送られるのも正直、嫌だけど。

「そうですか、あ、あの・・・舞台頑張って下さいね!!」
「ありがとう・・・それより相沢先輩に伝えてくれるかな、本当に素敵な詩でしたって」

後ろを振り返りもう一度あの詩の主を見やり、そっと心の中で呟く。
(あなたの想い、どうか想い人に届きますように)
そんな祈りを捧げながらボクは騒がしくなってきた会場を後にした。

272 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/04/17(月) 21:42:46 ID:ZDUMoLOm
まずは遊星神に心からの謝罪を。
折角文化祭話が被ったならこれくらい重なってもいいかなと。
怒られても文句言えません。

>すばるさん
なにやらお忙しそうで。
すばるさんssも気長にお待ちしております。

ちなみにシチューに入れる赤ワインに酔って迫りまくる巴さん
なんて話も書いてたりしたのですが無駄にえっちいので没にしましたw
流石に裸エプロンはなぁ・・・

273 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/04/17(月) 22:50:58 ID:XcLSeSYj
>夢ノ又夢大先生様
いやいやいやいやいや!!
怒るなんてとんでもない!
良いもの読めて、しかも拙僧のキャラを出した頂くなんて、感無量とはこのことですよ!!

>流石に裸エプロンはなぁ・・・
は、裸エプロンっ!?
……くそ……今、エロスレがあれば!!w

274 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/04/21(金) 23:00:33 ID:idYqj/jC
放課後。
校門の前に、一人の少女が立っている。
スラッと伸びた足、制服の上からでも分かるスタイルの良さ、大きな瞳と、日本人にしては高い鼻。
普通と生徒と同じはずの制服すらも、彼女が着ると、1ランク上の服のように見える。
彼女は、胸の下で、小さく腕を組み、何かを待っていた。
「ふぅっ……」
時計を見て、小さなため息。
そのため息にも、魅力を感じてしまう。
「あ……」
小さな声。
しかし、そこには大きな喜びが込められていた。
彼女は振り返ると、品のある笑顔を一人の男に向ける。
……その男、というのが何故か俺なワケだが……。
「お兄ちゃん!!」
少女が─まぁ、ご察しの通り俺の妹なんだけど─サラサラの髪を風に靡かせながら駆けてくる。
さっきまで無風だったと言うのに……風までが彼女の味方だ。
「やぁ、葵。待ってたのか?」
俺は彼女のオーラに圧倒されながら、何とか会話を進める。
「うん、遅かったね?」
そんな俺の心など全く知らず、フランクに話しかけてくる葵。
「ああ、まぁ、テスト近いから」
「勉強してたの?」

275 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/04/21(金) 23:01:22 ID:idYqj/jC
「いや、クラスの女の子に数学を教えt……」
「……ちょっと蚊が」
ギュ。
頬に電撃が走った。
「痛い痛い!!」
「我慢して」
涼しい顔をして、さっきよりも力を強くする葵。
指はあんなに細いのに、どこにこんな力が……!?
「ギブギブギブ!!俺がなんかしたなら謝るから!!」
まわりの生徒が俺たちを見ている。
しかし、そこは葵。
凄い力で俺の頬をつねっていても、ちょっとふざけているようにしか見えないのだ。
「……やだなぁ、お兄ちゃん、大げさだよぉ?」
そんな俺の願いに、ニコリと微笑む葵。
……鬼だ、この人……。
「痛いって!!」
限界に達した俺は、仕方なく葵の手を振りほどく。
当の葵は……
「さ、早く帰ろうよ……」
作り笑いを見せた後、捨て台詞を吐いて、先に歩いていく葵。
「……俺、何かした?」
俺はまだ痛む頬を押さえながら、こうなった原因を探る。
が、特に思い当たらない。
つまり、妹さんはご機嫌斜め、何か嫌なことがあったということだろう。
というか、俺に八つ当たりとは何とバイオレンスな……。
とりあえず、葵を追って駆け出した俺。
周りの人々の俺に対する視線が非常に冷たいよ……。
───────────────────────

276 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/04/21(金) 23:02:14 ID:idYqj/jC
「お兄ちゃん……」
帰り道を二人で歩いていると、穏やかな声で葵が俺を呼んだ。
「ん?」
「反省してる?」
「は……?」
反省?何で?
「してないか……」
呆れた。とでも言いたげな葵。
「……葵ってさ」
「え?」
「いつもそうだよな。俺と兄妹になったときから、ずっと」
「何が?」
「よくわかんないところで怒る」
「……お兄ちゃんも変わってないよ」
「そりゃそうだ」
「何が?って聞いてよ」
「何で……」
……殺気!?
「な……何が!?」
「……鈍感」
「まぁ、自分でも察しの悪い人間だとは思ってるけど」
「ホントだね」
「だろ?……って、おい!!」
「今、何で怒ってるかも、分かってないでしょ?」
「……俺に関係あるのか?」
「さぁね」

277 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/04/21(金) 23:03:00 ID:idYqj/jC
「……出会って、二年になるけど、葵のことはさっぱりわからんな……」
「一気に全部分かっちゃったら、つまらないでしょ?」
「性格悪いよ、葵……」
「……そうかもね……」
「え?」
「あ、あはは!!なんでもないの!!さ、帰ろ!!」
ぎこちない笑いとともに、急に早足になる葵。
「やっぱ、わかんねぇ……」
一人、そう呟いてみた。
───────────────────────
ゴロゴロと寝転がりながら、雑誌のページをめくる。
幸せってこういうことを言うのかなぁ。などと間の抜けたことを思った瞬間、
「ねぇ、お兄ちゃん」
葵が俺の背後に現れる。
「何?」
「数学、教えて?」
数学……。
「先生すらも一目置くような優等生の葵さんが分からないような問題、俺に解けるわけ無いだろ」
目を離さず、雑誌を読み続ける俺。
「で……でも……」
「何?」
「……」
黙ってしまう葵。
「どうした……?」
俺が後ろを振り返ると、

278 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/04/21(金) 23:03:46 ID:idYqj/jC
「お兄ちゃんのバカ!!」
「うぉっ!?」
問題集を俺の顔面に驚くほど正確に投げつけ、何処かへ走っていく葵。
「……何なんだよ、アイツは……」
床に落下した問題集に目をやる。
「あ……」
真っ白な問題集。
でも、ところどころ消しゴムのカスや、消し残りが見える。
明らかに、一度解いた問題を消した後。
「……何で……」
葵が何を考えてるのか分からない。
でも、これは聞いたほうが良いような気がした。
俺は葵の問題集を閉じ、それを持って、葵の後を追った。
───────────────────────

279 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/04/21(金) 23:04:35 ID:idYqj/jC
「あ……」
それは、運命の出会いというには、あまりにも平凡だった。
焦って転びそうになった私を、助けてくれた男の人。
「ありがとうございます」
「いえ……」
私が礼を言うと、小さくそういってまた歩き出す青年。
別にそのときは、何にも思ってなかったのに。
だけど、次の日も、その次の日も、彼のことが何故か頭から離れなかった。
いつも目で追って、いつも同じ車両に乗ろうと努力した。
それで分かったのだが、彼は本当に優しかった。
本当に、誰にでも。
お年寄りが乗ってくると、黙って席を立ったり、
満員の電車の中で、本人にも気付かれないほどさりげなく女の子を守っていたり……。
私にしか見えていない、彼の優しさ。
いつのまにか下心のある優しさにばかり触れていた私には、彼は凄く暖かかった。
……そして、いつのまにか、彼への想いは募っていた。
だから、お母さんが再婚して……あの人と兄妹になるって知ったときは、本当に嬉しかった。
運命の出会いはちゃんとあると思った。
ワガママなのは分かってる。
けど、私はアナタの特別になりたい……。
アナタの優しさを独り占めにしたい……。
だけど……
───────────────────────

280 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/04/21(金) 23:05:17 ID:idYqj/jC
「それが、この有様か……」
「何がだよ?」
そう呟いた、葵の背中を見つけ、声をかけた。
「……ったく、まさか駅にいるとは思わなかったよ」
葵の隣に座る俺。
「……嫌だな……顔合わせたくなかったのに……」
葵は驚いた様子も見せず、前を見たまま、答える。
「悪かったな……」
「……やめてよ」
「え?」
「何も分かってないのに、謝らないで……」
「……スマン。確かに、口先だけってのは良くないな。だけど……」
「どうしてこうなったのか分からない。ってことでしょ?」
「……そうだな」
「ホント鈍感……」
「今更どうにかなるもんじゃない。諦めろ」
「あ、開き直った……」
「しょうがない。やっぱり、俺には葵のことは分からないんだ」
「……そっか」
立ち上がる葵。
そして、振り返って

281 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/04/21(金) 23:06:04 ID:idYqj/jC
「聞きたい?」
「……言いたいか?」
「質問を質問で返さない」
ビシッと人差し指を差し出す葵。
……無理してるのはなんとなくわかる。
「……じゃ、聞きたくない」
「うん、それがいいよ」
憂いを帯びた微笑み。
「何だそれ……」
「私もあんまり知って欲しくないから」
「……何で?」
「うーん……」
少し考えるように俯く。
「……お兄ちゃんには、純粋なままでいて欲しいかな」
「俺が?純粋?」
「そうだね」
「ま、何でも良いけどさ」
「さ、帰ろう」
手を差し出す葵。
「あ、ああ……」
俺もゆっくり立ち上がり、歩き出す。
すると、
「ねぇ、お兄ちゃん」
「ん?」
俺が振り返ると、葵は立ち止まったまま。
「足が痛い」
「どうした?」
「わかんないけど……痛い」
「歩けるか?」
「無理」
「……しょうがない、誰かに迎えに……」

282 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/04/21(金) 23:06:52 ID:idYqj/jC
「お兄ちゃんが運んで」
「……え?」
「ダメ?」
「まぁ、いいか」
「ありがと」
礼を言ってこちらに歩いてくる葵。
「今……歩かなかったか……?」
「気にしない気にしない。さ、お願いね」
両手を前に突き出す葵。
俺が背中を向けると、
「前ぇ」
「……はいはい」
仕方なく、彼女を抱きかかえる。
葵はしばらく驚いていたが、嬉しそうに
「……ふふっ」
「何だ?」
「ちょっと見直した」
「何を?」
「内緒」
「分かんねぇ……」
「じゃ、一つヒントをあげるよ。目、閉じて」
「ん?あぁ……」
いわれるがまま、少し足を止め、目を閉じる。
「これが、私の気持ち、だよ?」
何だか含みのある言葉と共に、なにやら頬に暖かいものが……
「なにをした?」
「クスクス……さ、歩く歩く」
「……わかりましたよ」

情けない話だが、ヒントをもらっても何だか分からない。
まぁ……それはそれで葵も嬉しそうなので、今日のところはよしとしようか……。
──────────────────────

283 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/04/21(金) 23:08:38 ID:idYqj/jC
鈍感兄と嫉妬妹。というつもりで書いていたけど、後半何が何だか……。
実は、夢ノ又夢先生みたいなのを書きたかった。というのは、僕とキミだけの秘密だ。

284 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/04/23(日) 01:09:28 ID:vKH8l8Q7
GJ!
兄の鈍さがイイ!!

285 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/04/28(金) 01:03:46 ID:zP/bBIM8
そろそろほしゅ?

>>283
いい感じだと思いますよ〜

286 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/04/28(金) 21:33:38 ID:VoxOMLZP
「あの・・・先輩、おはようございます」

通い慣れたいつもの通学路でふと見知らぬ女の子に声を掛けられる。
こういう展開、男なら誰しも淡い期待が湧き上がるというもの。伏せ目がちな視線、少し恥ずかし気な顔。
これはもしかして・・・

「巴さんは一緒じゃないんですか?」

・・・俺はオマケかい。
やはりそうそう上手くはいかないらしい。微妙に泣きたい気持ちを笑顔で隠したその時、

「ええっと、今日は俺が先に出てきたから多分・・・ぐっ!?」

唐突に物凄い力で後ろから襟首を掴まれる。その先にあるのは閻魔様も裸足で逃げ出す氷の瞳を持った我が妹。
マズイ・・・完全に誤解している。
勢いに立ちすくむ女の子に射抜く様な視線を浴びせ無言のままぐんぐんと俺を引き摺り歩き出す。

「ちょ、ちょっと待ておい!!落ち着けってば!!」

スイッチの入ってしまった以上、そう簡単には収まらない巴。
あ然としたまま一人残された女の子に先程より二割多めの作り笑顔で手を振る俺だった。

287 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/04/28(金) 21:34:30 ID:VoxOMLZP
「まったく、ボクがいないとお兄ちゃんはこれなんだから!!」
「はいはい」
「あんな子にデレデレしちゃって・・・カッコ悪いよ!!」
「はいはい」
「騙されて酷い目にあうのはお兄ちゃんなんだからね!!」
「・・・あー、はいはい」

不機嫌度MAXで捲くし立てる妹に半分呆れつつ適当に相槌を打つ。それにしても何故こんなに叱れなければならないのか?
とはいっても下手に反論しようものなら倍返しが待っているし・・・
この勢いと説教では下手すれば遅刻になりそうだな。釈然としないまま目の前に広がる入道雲をぼんやりと眺める。

「お兄ちゃん!!ボクの話を真面目に聞いて!!」
「聞いてるよ、それで何が言いたい訳だお前は?」
「八方美人をなんとかしてって言ってるの!!」
「俺のどこが八方美人なんだよ」
「誰にでも優し過ぎるから八方美人なの!!」
「んなコト言われてもなぁ・・・・・・ふぁ〜あ・・・ぐっ」

考え込むフリして両腕を組むと堪え切れずに漏れ出す欠伸。その瞬間、互いの顔が白い手で無理やり近づけられる。
真っ直ぐに俺を見つめる水鏡の如く透き通った瞳。可憐さと凛とした強さを湛え、潤んだその瞳に前に思わず息を呑む。

「お兄ちゃん・・・ボクはホントに心配してるんだよ?」
「い、いや、それは分かってるんだが」
「・・・心配なんだよ、お兄ちゃん、人が好すぎるから・・・」

288 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/04/28(金) 21:35:22 ID:VoxOMLZP
凄みを効かせたと思うと急に言葉を途切らせて巴は不意に表情に影をつくる。
毎回思うんだがこの不安気な顔は反則すぎる。俺に落ち度は無い筈なのに罪悪感に囚われてしまうぞ、ホントに。

「ま、まぁ・・・なんと言うかさ、優しさが有り余ってるんだよ、きっと」

結局、出てくる言葉は言い訳にも成りえない言葉だけ、更に沈み込む巴が不安になってそっと横目で顔を盗み見る。

「・・・優しさが余ってるのなら・・・全部ボクにくれればいいのに・・・」

そっと呟いた、でもバッチリ聞こえてしまった独り言。
・・・これ以上、優しくしてくれと?
(まったく、何言ってんだか・・・)
笑いを堪えながらポケットから小銭入れを取り出し、脇にある自動販売機に向かう俺。

「・・・よっと、ほら、飲みな」
「・・・えっ?」

突然差し出されたスポーツドリンクに目を白黒させて戸惑う巴。そんな子供っぽい仕草が面白くて俺はつい吹き出してしまう。

「あははっ、そんなに驚く事ないだろ?遠慮せずにどうぞ」
「・・・」

さては先程まで説教していた手前、素直に受け取っていいものか悩んでるな。中途半端に差し伸ばされた手はそんな巴の無言のSOS。
周りの人は皆、巴は感情を顔に出さないとか気難しいとか言うがこれ程に解りやすい子もそうそういないと俺は思う。
まぁ、他人には意識してそうしている節もあるがそれが逆に人気を高める一端になってたりもする。
冷静であって冷徹ではない、そんな所だろうか。

289 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/04/28(金) 21:36:18 ID:VoxOMLZP
「そんだけ喋れば喉も渇いただろうし・・・はいよ」
「・・・ありがとう、お兄ちゃん」

巴の迷いを笑い飛ばす様に細い指にドリンクをそっと重ねる。
その瞬間、肩の力が抜けてしっかりと握り返してくる。プルタブを開けて一口付けると大きく息を吐く。

「まぁ、あれだな・・・これも俺の優しさだ」
「・・・120円の優しさだけどね」

勝ち誇った顔した俺。隣で肩肘付いて呆れかえった流し目の巴。
緩やかに流れる朝の冷えた風が巴の髪をサラリと靡かせる。

「・・・ぷっ、くくく」
「うふふっ」

僅かな沈黙が流れてどちらともなくこぼれ出す笑顔、無邪気な笑い声は張り詰めた時を溶かしていく。
ふたりして顔を見合わせ笑い合う、他愛のない事で、子供の頃と変わらない距離で。

「ふふっ、ホントにお兄ちゃんは変わらないね」
「さて・・・変わらないのか変われないのか、ま、どっちにしても俺は俺だからな」
「ボクは思うよ、お兄ちゃんはお日様だって」
「ありゃ、俺は太陽なのか?」
「そう、誰の元にも分け隔てなく降り注ぐ優しいお日様」
「あはは、俺がお日様で巴がお月様って所か」
「・・・月・・・うん、そうかもしれないね」
「いや・・・そこは笑う所だろ、冗談なんだから」
「・・・月は・・・お日様が無いと輝けないんだ・・・お日様に近づく事も出来ない、ただ、違う軌道を廻り続けるだけ・・・」


290 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/04/28(金) 21:40:25 ID:VoxOMLZP
朗らかな笑顔のまま、そっと瞳を閉じて物思う。静かに心を揺らめかせる巴の姿は笑っている筈なのにどこか寂しげな横顔に見えた。
まるで天界に飾られた彫像に命が宿ったかの様な鳥肌が立つ程の美しさを秘めた憂いあるその姿。
不覚にも俺は感情の波間を漂う巴の横顔に時を止められてしまう。
しかし、こんな時に限って記憶の片隅に忘れかけていた何かが稲妻の如く音を立てて目を覚ます。
やはり何事も、そうそう上手くはいかないらしい。

「・・・あ、あーっ!!」
「えっ!?ど、どうしたの?」
「時間だよ時間!!学校に遅れちまうぞ!!」

そうだったのだ、よくよく考えれば今は登校中、二人でのんびり語り合ってる場合じゃなかった。
慌てた手付きで内ポケットから携帯を取り出せば授業開始まで後十分、もはや絶望的な状況下にある。

「はぁ、遅刻か・・・まぁ今更慌てても仕方ないか」
「大丈夫、まだ間に合うよ」
「だ、大丈夫って・・・どうあっても学校まで二十分は掛かるだろ」

何時からか自信に満ち溢れた瞳の巴に気圧されつつも溜め息まじりな俺。人間、諦めが肝心だとしみじみ思う。
そんな負け気味な俺の手を取り巴は何の予告も無く無遠慮にトップスピードで駆け出す。

291 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/04/28(金) 21:42:04 ID:VoxOMLZP
「お、おい!?」
「走ればまだ間に合うハズだから・・・お兄ちゃん、頑張って!!」
「陸上部にスカウトされる巴ならともかく俺は無理だってば!!」
「諦めなければなんとかなる、ボクにそう教えてくれたのはお兄ちゃん、だよね」
「・・・まったく・・・やるだけやってみますか」
「うん、お兄ちゃんとならきっとなんとかなる・・・ボクは迷わない、ずっと二人でいようね」
「なんだって?走りながらじゃ聞こえないぞ」
「何でもない!!さ、ラストスパート!!」
「げっ、もう全力疾走かよ!?」

それにしても朝から怒ったり笑ったり悲しんだり走ったりとうちの巴さんの元気なこと。
二人揃って風になる爽やかな感覚。追い越していく新緑の並木道に頬を染めた巴の横顔。
学校まで後八分、なんだか余裕で間に合いそうな気がする。
俺と巴、繋いだままの手の向こうで両手を広げた太陽が笑っていた。

292 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/04/28(金) 21:50:06 ID:VoxOMLZP
遊星神に追いつけ追い越せと単発SSで頑張りましたが・・・返り討ちって感じです。
>遊星様
す、凄い・・・流石は神。お見事としか言い様がありません。
綺麗な妹の可愛い仕草がよく出ていてマジで参考になりました。
是非、葵さんのこの後も書き続けて下さい。
巴の楽隠居の日も近い!!

293 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/04/29(土) 22:29:46 ID:TWYik8JN
>夢ノ又夢大先生様
そんなご謙遜を!!
先生のほうが何倍も凄いですって!!
隠居なんて悲しいこといわずに、これからも巴ちゃんの話が読みたいです、俺は。

294 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/04/30(日) 21:54:37 ID:+DY55Uiv
期待sage

295 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/05/04(木) 22:14:34 ID:0hdfCk/C
お兄ちゃんと二人。
並んで、学校の廊下を歩いている。
今日は、廊下でバッタリ会えた。
それだけで、なんだか嬉しい気分になる。
「お兄ちゃん、嬉しそうだね?」
少しだけ、表情の柔らかい彼の横顔に尋ねる。
「そうか?」
そういって、私を見た顔は、やっぱり嬉しそうだった。
「うん。何かいいことあった?」
「まぁ……少し」
「何何ー?」
「いや、そんな葵に言うほどのことじゃ……」
「気にしないから、教えてよ」
「んー……」
考えるように俯くお兄ちゃん。
「あ、わかった!!テスト、よかったんじゃない?」
お兄ちゃんの答えを待たずに、私が答える。
「あ……うん。ちょっとだけど順位上がってた」
お兄ちゃんは照れくさそうに、成績表を見せてくれた。
「そっか。よかったね?一生懸命勉強してたもんね」
「いや……でも、葵に比べたら俺なんて……」
「私は関係ないよー。でもよかったね、お兄ちゃん」
「うん。そうだな」
もう一度、確かめるように成績表を見るお兄ちゃん。
何だか、私まで嬉しくなってきてしまった。

296 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/05/04(木) 22:15:46 ID:0hdfCk/C
「じゃ、今日は私が奢っちゃおうかな」
「いいよ、別に」
「遠慮しないの。私だって、嬉しいんだから」
「ん?葵も何かあったのか?」
「え……?」
お兄ちゃんは相変わらず、鈍感。
そういうとこも、結構可愛い。なんて思っちゃう辺り……
私もお兄ちゃんという人間に、慣れてきたのかな。
「そうじゃないけど……いいじゃない、たまには」
「……そうか、悪いな」
「ううん。何処に行こうか?」
「そうだなー……」
幸せだな。
考えるお兄ちゃんの顔を横目で見ながら思う。
なのに……
「天童ー!!」
後ろから邪魔者が……。
「お前、どうだった、テスト!?」
邪魔者に肩を叩かれお兄ちゃんが振り向く。
仕方なく私も……。
「ん?いや、そんなに自慢するほどじゃ……」
「何位!?」
「15だったかな」
「へー。俺の見てよ!!7位だぜ!?すごくね!?」
「ほぅ、すごいね」
「だろー?見てよ、葵ちゃんも」
あ、この人……。
話題を振られて、あることに気付いた。
そう考えると、何だか無性に腹が立ってきた……。

297 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/05/04(木) 22:16:49 ID:0hdfCk/C
「あ……うん、凄いんだね」
適当に、愛想笑いで答える。
「だろー!?じゃ、次は頑張れよー!!」
嬉しそうに、足早に去っていく邪魔者。
私は完全に姿が見えなくなるのを確認すると……
「誰なの、あれ……」
「同じクラスの人」
「仲良いの?」
「あんまり話すほうじゃないが……」
「そうなんだ……」
やっぱりだ……。
あまりこういうことはいいたくないんだけど……
きっと、あの人の目的は私だ……。
お兄ちゃんより、良いところを見せたくて、そのために一緒にいるところにやってきたんだろう。
せっかくお兄ちゃんは頑張ってたのに……。
せっかくお兄ちゃんが嬉しそうだったのに……。
せっかくお兄ちゃんが笑ってたのに……。
そう考えたら、怒りで頭がカッとなってきてしまった。
「感じ悪いね……」
「え?いきなりどうしたんだ、葵……?」
「だってそうでしょ?わざわざやってきて、自慢だけして帰ってくなんて」
「いや、でも気持ちは分からないでもないから……」
「でも、親しくも無いお兄ちゃんに言いにくるなんて……」
「まぁまぁ、いいじゃない。俺はそんなに気にしてないしさ」
「でもぉ……」
「いいから。ほら、今日は奢ってくれるんだろ?甘いものでも食べに行こうよ」
「うん……そうだね」
「そうそう」
そういって、笑うお兄ちゃん。

298 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/05/04(木) 22:17:51 ID:0hdfCk/C
そうだね。
私の好きなお兄ちゃんは、こういう人だもんね。
「そうだ、お兄ちゃん。お兄ちゃんの成績表、ちゃんと見せてよ」
「え?」
「いいでしょ?さっきはよく見てなかったし、お兄ちゃんの自慢できる結果なんだから、私、見てみたいよ」
「うん……いいけど」
お兄ちゃんからテストの成績表をもらう。
中を見ると……
「あれ……?さっきの人よりいいんじゃないの……?」
「あぁ……俺、学年順位と学級順位を勘違いしてたみたいで……」
「ってことは……すごいよ、お兄ちゃん」
「いや……それほどでも……」
「ううん。お兄ちゃんが頑張ってたの、私は知ってるから、だから、この結果は凄いと思うよ」
「……うーん、そうなのか……」
「そうだよ。ね?」
「うん、そうだな」
……やっぱり、私はお兄ちゃんが好きだな。
誰よりも。ずっと……。
そう思いながら、少しだけお兄ちゃんに寄り添う。
お兄ちゃんは鈍感だから、気付かない。
私だけの幸せ……。
「あ、天童君!!」
……女の声……。
「あぁ、どうしたの?」
「このまえ、天童君に教えてもらった問題、出たんだー!!ありがとー!!」
「いやいや、俺は別に……」
照れてるお兄ちゃん……
「じゃ、私は部活あるから」
「うん、また」

299 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/05/04(木) 22:19:22 ID:0hdfCk/C
ガッ!!
女の子が降り買って走り出した瞬間、無言で、お兄ちゃんのかかとを蹴る。
「っ!?」
「カッコ悪い……」
「え……葵?」

……まだまだ、二人の先は長いみたいです。
───────────────────────
天童ってのは、この兄妹の苗字です、念のため。

夢ノ又夢大先生に褒められて、調子に乗ったので、嫉妬妹第二弾。
……まぁ、所詮俺だもん。この程度だよね。

まったく関係ないけど、次は、ベタなツンデレが書きたいなぁ……

300 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/05/05(金) 13:25:02 ID:Vd7CypmJ
うっひょおおおお!!GJ!!!!!!

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0ch BBS 2004-10-30