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[第六弾]妹に言われたいセリフ
- 501 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/10/20(金) 23:12:12 ID:wFwVhHqh
- 「随分と強気だな」
「うん……お兄ちゃんと話してたら、何だか書けそうな気がしてきた」
「……ま、楽しみにしてるわ」
「にゃっ!?聞きに来るつもりっ!?」
「なんだ、聞かせないつもりだったのか?」
「あわわわわ!!だめー!!ダメだよー!!恥ずかしいよー!!」
「大丈夫だ。別に期待なんかしてないから」
「そういう問題じゃないのー!!」
「じゃあ、どういう……」
「とにかくダメったらダメなのー!!えと……那、帰るね!!CDありがと!!」
迅い……。
独りになった室内。
残された一枚のメモ。
中には告白の時に言うセリフベスト100みたいなのがズラリ……。
「……これは……」
……見なかったことにしよう。
「お、お兄ちゃん!!メモ、見てない!?」
戻ってきやがった……。
「メモ?」
「うん……詩に使えそうな言葉をダーッって書いてあるメモなんだけど……」
「コレ?」
「そう!!……見た?」
「いや」
「良かったー!!ありがと。じゃね!!」
梨那の言葉。
梨那に与えられた一種の奇跡のようなものだ。
誰に向けられたものなのか、それとも誰に向けられたものでもないのか。
まぁ……後者であって欲しいが……。
そんな俺は……梨那の乙女メモから落ちた一枚の『やけに見覚えのある男』の写真には、気付いていたのだった。
───────────────────────
- 502 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/10/20(金) 23:12:56 ID:wFwVhHqh
- 夢ノ又夢先生に少しでも追いつこうと思った。
……やっぱりダメだった。
文化祭当日のネタは書くんだか書かないんだか……まぁ、きっと、書けない。に落ち着くはず。
どうせ俺なんて……。
- 503 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/10/21(土) 21:49:23 ID:YYZlj4gG
- 深歩みたいな妹がほしいなぁ〜
- 504 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/10/25(水) 22:27:36 ID:hopkKz4g
- 情けない話だが、どうも自分の体のことには疎いらしい。
いつも気付かずに限界まで無理をして、そこで初めて自分が体調不良だと気付く。
せめて誰かがそれに気付いてくれれば良いのだが……
「なぁ、立花……なんか……暑くないか……?」
流れ落ちそうな汗を手で拭ながら、友人に尋ねる。
「暑い?少し寒いぐらいだぞ?」
「……そうか」
「おいおい、天童、大丈夫か?そういえば顔も赤いぞ」
「……ヤバイな……」
「大丈夫か?」
「あぁ……もう帰るだけだし……。何とかなる……」
「そっか。気をつけろよ……」
心配そうに俺を見ている友人を跡目に、重い体を立たせ、歩き出す。
自分としてはまっすぐ歩いているつもりだが、どうも不安定だ……。
……なんか頭も痛くなってきた。
そんな自分の体に絶望を感じつつ、一歩一歩ゆっくり歩く。
途中の上り坂あたりで、頭痛がピークに達し、なんかもう死ぬんじゃないかとまで思えてきた。
「……やっと……」
そんなこんなで、やっと我が家にたどり着く。
……何か忘れている気もするが、今はそんなことを気にしている余裕は全く無い。
鍵を開け、家の中に入った……まではよかったのだが、
「うおっ……」
玄関の段差を乗り越えられず、そのまま床に倒れてしまう。
起きなければならないと思うが、体が全く動かない。
そのまま意識が遠のく。
……あぁ、床が……冷たくて気持ち良い……。
───────────────────────
- 505 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/10/25(水) 22:28:10 ID:hopkKz4g
- 少しだけ冷たい風が吹く校庭。
風に飛ばされていく落ち葉を眺めながら、小さくため息をつく。
「遅いよ……」
かれこれ三十分……。
さすがにそろそろ来てくれても良いと思うのだけど……
私の希望に反して、玄関から出てくる人の数はもはやゼロ……。
「……もう帰っちゃったのかな……」
今日は朝早くて、顔見てなかったから……帰りぐらいは一緒にいたかったのに……。
また待っててくれなかったんだ……。
そう考えると、とても悲しくなってくる。
あと……十分だけ……。
半ば諦めるような気持ちで、待ち続ける。
……きっと来ないだろうな。
悪い予感がそう告げている。
もはや立っているのも辛くなって、思わずその場にしゃがみこむ。
「寒い……」
思わず呟いた。
「葵ちゃん?」
名前を呼ばれて見上げると、
「相川先輩……」
相川先輩とそのお友達の州田先輩が、心配そうな顔をして立っている。
「どうしたの?あ、もしかして天童君?」
「え……は、はい……」
「天童君、帰っちゃったよー。ねー、お兄ちゃん?」
「あ、ああ……何か熱っぽいから早めに帰るとか……」
「お、お兄ちゃんがですか!?」
- 506 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/10/25(水) 22:28:45 ID:hopkKz4g
- 「聞いてないか?」
「聞いてないですよ!!」
「じゃ、早く帰らなきゃだねー」
「あ、はい!!あ、あの……ありがとうございました!!」
「頑張ってねー!」
「いいから、急ぎな」
二人の心遣いに、もう一度礼を言いながら、我が家へ走り出す。
今日も待っててくれなかったこととか、
女の子と仲良くしてたとか、
そんなこと、今はどうでもいい。
今はただお兄ちゃんが心配だった。
いつもはお兄ちゃんと歩く道を、
お兄ちゃんを追いかけて走る道を、祈るような気持ちで全力で走った。
……お兄ちゃん……どうか、無事でありますように……。
───────────────────────
やっとたどり着いた我が家。
途中でお兄ちゃんが倒れていなかったことには少しホッとした。
しかし、休んでいる暇はない。
ドアに手をかけると、鍵が開いているようだ。
お兄ちゃんが中にいることを確信し、全力でドアを開ける。
どこにいる。なんて考えるヒマも無く、玄関に仰向けに倒れるお兄ちゃんが目に入った。
- 507 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/10/25(水) 22:29:20 ID:hopkKz4g
- 「お兄ちゃん!!」
お兄ちゃんに、急いで駆け寄る。
私の心臓が、バクバクいっている。
「お兄ちゃん!!起きてよ!!」
「ぅん……」
ゆっくりと目を開けるお兄ちゃん……。
「葵……?」
「お兄ちゃん……」
「あぁ……寝てたのか……」
「お兄ちゃん……」
大きくあくびをするお兄ちゃん。
確かに顔色は余り良くないけど、思っていたほどではなさそうだ……
そう考えると、急に気が抜けて
「もう……お兄ちゃんのバカ……」
お兄ちゃんを抱きしめていた。
……もちろん恥ずかしいには恥ずかしいが、それ以上にお兄ちゃんが無事で嬉しい。
「葵……」
「心配……したんだからぁ……!」
涙が溢れた。
自分の声が涙声になっているのがわかる。
「あ、ゴメン……」
「ううん……よかった……」
堰を切ったように溢れてくる涙と、お兄ちゃんの気持ち……。
お兄ちゃんは私が何で泣いてるのかも分かってないんだろうな。
- 508 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/10/25(水) 22:29:54 ID:hopkKz4g
- 「葵……あの……悪いんだけど……」
「何かな、お兄ちゃん?看病だったら、何でもするよー」
「いや……俺はもう大丈夫だから……。もう離れてくれ……風邪うつるぞ……」
「病人はそんな心配しない!さ、ベッドまで行こう、お兄ちゃん。肩、貸してあげるから」
「……スマンな……」
「ううん。今晩は、私がお粥つくってあげるからねー?」
「……あんまり食欲は……」
「だーめ!!食べなきゃ元気になれないよー」
「……葵……」
「なーに?」
「お嫁さんみたいだな……」
「そんなー、お兄ちゃんったらー♥」
えっと……災い転じて福となす……って言ったら、不謹慎かな。
でも……ちょっとだけ幸せな、ある寒い日でした。
───────────────────────
風邪引いて妹に看病してもらうネタはいつかやろうやろうと思っていた。
今回見事に秋風邪をひいたので、良い機会と思って書いてみた。
……やっぱり俺は俺だった。
天然妹の続きはいつ書こう……
- 509 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/11/01(水) 11:18:29 ID:Yo1kXnoX
- 妹がほしくなるスレだな
- 510 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/11/03(金) 16:25:30 ID:DMMjCkd5
- warosu
- 511 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/11/12(日) 03:29:47 ID:BnDg9Gc5
- age
- 512 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/11/15(水) 01:03:40 ID:QU8kpWmp
- 保守
- 513 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/11/20(月) 12:39:25 ID:jKA8V7iY
- 保守
- 514 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/11/22(水) 22:45:09 ID:hJbu959W
- 続き待ってます
- 515 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/11/27(月) 06:31:23 ID:af7SSd/s
- 続き見たいです。とくに巴が・・・
- 516 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/12/04(月) 17:03:33 ID:2lObEAU7
- ガンガレ
- 517 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2006/12/07(木) 03:13:53 ID:eD2P+stn
- ―――夢を見ていた。
昔の夢を見るのはあまり好きではない。
事故で目覚めて以来―――まぁ、かなり昔の話なのだが―――目を開けたとき、目の前に兄の泣き顔があるのではないかと、不安になってしまう。
昨日の事を思い返す。
昨日は学園から帰り、ご飯を食べて、お風呂に入り、マンガを読んで寝た。そうそう、しっかり歯も磨いた。口を濯いでいるとき、兄に背中を叩かれて少し水を飲んでしまったが。……余計な事まで思い出してしまった。だが、しっかり昨日の事を思い出せる。
寝ぼけたままの意識を今日に戻す。
布団の感触は私の布団の感触だ。
病院の匂いは……しない。この前買った芳香剤は今日もしっかりと働いてくれている。
瞼を閉じたまま外の風景を探ると、昨日カーテンをしっかり閉めていなかったのか、太陽の光を感じる。やはり、病院のあの無感情な電気の光は感じない。
意識がはっきりとしてきた。
ここは私の部屋で、病院ではない。だから、目を開けても兄が泣いている事はないし、病院という事も無い。瞼を閉じていても眩しい程太陽は輝いているし、脳は私に朝を告げ、意識もしっかりとしている。
うん。そろそろ起きよう。今日も、良い一日になりますように。
「おそよう夢亜さん。随分と気持ち良く寝ていたようですね。」
こうして私の予想は一行で粉砕された。
――――――――――――――――
遊星さんと夢ノ又夢さんがいる時点で私の出番はなしって感じですが過疎ってるので久々に登場してみました。
酉があってるかわからない。というか私を覚えてる人がいるかのがわからないw
構成0分執筆30分くらいの保守がてら気まぐれに書いただけで続くかも分からないんものなんでアレな感じを受けた人は華麗にスルーしてください。
という保守。
- 518 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/12/07(木) 03:40:44 ID:tNAokx+q
- >>517
すばるさんじゃないですか!職人さんたちに見捨てられたのかと思ってから嬉しい
これからも時間に余裕があれば投下して下さい。
- 519 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/12/07(木) 23:18:20 ID:tNAokx+q
- age
- 520 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/12/08(金) 17:01:39 ID:LyoHa+DX
- まんちょ
- 521 :遊(ry ◆isG/JvRidQ :2006/12/09(土) 22:29:24 ID:rGwefdjJ
- もう俺なんか、いないと思ってもらったほうがいような存在なんですけど。
ただ、別に貼れるものを書いてないっていうか、
文化祭を今書き終わったとかそんな次元だし……クリスマスはネタがないし……
……つーことで、クリスマスに向けて頑張ります。でも、忙しいからそんなには書けないだろうなぁ……。
- 522 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/12/10(日) 09:37:07 ID:H00x2rDj
- 妹「お、おにいちゃん…お、おかえりなさい…た、大漁だった?ねえ大漁だった??」
妹「イ、イサキは?イサキは、と、取れたの??」
- 523 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2006/12/11(月) 05:38:07 ID:NB+eYM7O
- 兄「あぁ!小振りだけど脂の乗ったのが釣れたぞ!刺身にして食おうな!」
妹「や、やったぁー!お兄ちゃんがおっ刺っ身だぁ〜♪」
なんてこった……orz
勝手に変に続けてすいませんすいません。
>>518
覚えててくれた人がっ!感謝です。
どちらかと言うと最近反応を返してくれる名無しさんが少ない気が……
書く人も読む人も増えてくれるのが一番なのでしょうが……
>これからも時間に余裕があれば投下して下さい。
そう言ってもらえると投下しやすいです。
>>遊星さん
遊星さんはこのスレのシンボルみたいな人なのでいないと思うのは中々難しいと思いますよ。
私としてはまったり時間を気にせずにでもいいので職人でいてほしいです。
と、言いつつクリスマス期待してますw
- 524 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2006/12/11(月) 06:15:20 ID:NB+eYM7O
- 「さて、そろそろ行くか。」
昼食を食べてからおよそ一時間が経った。
いつまでも居間で暇を持て余しているのもどうかと思い、特に予定があるわけでもないが出掛けようと腰を上げる。
せっかくの休日を一日中家でだらだらして過ごす、なんて勿体無い事は出来ない。
夢亜に言ったらおそらく「せっかくの休日にわざわざ疲れに出掛ける事の方が勿体無い。」とか「休みはだらだらしないと嘘だよ。」なんて言われるのだろうが、そこは価値観の相違というやつだ。
「あれ?お兄ちゃん出かけるの?」
昼食の後、何故か自室ではなく居間でマンガを読んでいる夢亜に話しかけられる。
休日はほとんど動こうとすらしない怠惰ぶりを発揮する癖に、自室から居間までマンガを運ぶ事は苦にならないらしい。
何故、居間でマンガを読むのかは聞くだけむだだろう。どうせ意味など無い。
「あぁ、せっかくの休みだからちょっと商店街でもぶらぶらしてくる。」
「ふーん。……私も出掛けようかな。」
「……はい?」
一瞬、聞き間違いかと思った。夢亜が壊れたのかとも思った。
今日の天気は晴れのはずだ。雪が降る予報など出ていない。という事は、聞き間違いかと思ったのではなく、実際に聞き間違いなのだろうか?
「私も出掛ける。って言ったの。」
なんと、聞き間違いではなかった。病院へ連れて行った方がいいだろうか。今の夢亜は一人で病院へ行けるだろうか。
「俺も一緒に行こうか?」
「?出掛けるお兄ちゃんに私が付いて行くんだよ?……あ、私、付いていかない方が良い……かな……?」
俺の都合を気にして不安そうな顔をする夢亜と夢亜の安否を心配する俺。
何とも言えない微妙な空気が居間に漂い、短い沈黙が訪れる。
――――――
前回、文や流れがおかしい所が多かったので今回は見直してから……なんて事はしてません。すいません。
改変したやつ見たい・というありがたくも数奇な嗜好をお持ちの方、又、「○文字くらいで改行入れて」「文章いい
からセリフ率上げて」などなど些細な事でも要望があればなるべく答えていこうと思うのでご一報を。
苦情、アドバイス、感想は随時受け付け中です。
今の連投規制とか1レスで書き込み可能な容量・行数はどうなっているのでしょう?
次からは投下後の文章は短くしますので今回はご容赦を。
- 525 :遊(ry ◆isG/JvRidQ :2006/12/13(水) 22:14:04 ID:zaZQQykK
- ……過疎スレだねぇ。
>>524
あとは、すばる先生と夢ノ又夢先生だけが頼りですよw
>今の連投規制とか1レスで書き込み可能な容量・行数はどうなっているのでしょう?
自分は30行を目安に。
文字数は……そんなにそんなに詰めたことないからわかんないや……。
連投規制秒数は30秒だったと思う。
- 526 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/12/14(木) 19:42:32 ID:cYQce1FA
- >>524
すばるさん良い感じですね続きが気になります
連投規制とか改行制限はわかりませんすいません。
>>525
遊星さんも待ってますよ。
- 527 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2006/12/14(木) 19:56:34 ID:9EMjgA/d
- 意外な人に愛の告白をされ、どう答えたものか困った時の沈黙に似ているなぁ。などと、経験した事も無いのに、そんな突拍子もない事を考えてしまった。
「……もしかして、『夢亜が自分から外に出るなんて、雪でも降るんじゃないかー』なんて考えてぼうっとしてる。なんて事ないよね?」
「あ、あぁ……そんな、事は……」
唐突に予想もしていなかった事――さっきまで考えていたか――を聞かれたので戸惑い、言葉に詰まってしまった。それと同時に、何とも言えなかった微妙な空気も吹き飛んでいく。
それにしても、予想はしていなかったとはいえ、「そんな事はない。」と言い切れなかった辺り、俺は自分で思っているより根は正直なのかもしれない。
「あ!その間は考えてたんだ!ひっどいなぁ。いくら私でもまだそこまで怠け者じゃないよ。」
言葉に詰まっていただけなのだが、夢亜はそれを勘違いしてくれたようだ。
それにしても、「いくら私でも」やら「まだ」とは随分な言い様だ。まぁ、俺の中ではそれ以上の事態にまで発展していたのだが……それは、しばらく胸の中にしまっておこう。
今言うと、何をおごらされるかわかったものじゃない。いや、もう遅いか。
「悪い悪い。今朝の天気予報を思い出してたらつい本音が、な。」
「本当にひどいなぁ。久しぶりに愛しの夢亜さんと出掛けられるっていうのにそんな事考えてたなんて。罰としていつもの、ね?」
「はいはい。わかりましたよ。お姫様。謹んでエスコートさせていただきます。」
「うむ。よろしい。しっかりエスコートするのですよ。なんてね。実はね、今日はちょっと気分転換したいなーって思ってたんだ。さ!行こ!」
そう言って俺の手を取って歩き出す夢亜。
やはり、今日は雪でも降るのではないだろうか?
―――――――――――――――――
「あ、この前書いた分の続きを投下してない」そんな事に気付いた休みの夕飯時。
と、言う訳で前回の続きです。
>>遊星さん
先生だなんて……褒めても出てくるのは駄文だけですよw
凄い気まぐれな人間なんで駄文すら出てくるか怪しいんですが。
情報どうもです。
- 528 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/12/14(木) 23:12:32 ID:cYQce1FA
- >>527
すばるさん投下乙
雰囲気が好きです続き期待してますよ
- 529 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/12/16(土) 19:47:39 ID:yaRb2X6+
- ageとく
- 530 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/12/17(日) 14:03:15 ID:bpbuH8G1
- もう男の人としか見えないよ!おにいちゃん!
ハアハア
- 531 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/12/17(日) 16:26:08 ID:aKqB8IlY
- >>530
それはそれで萌えるなw
- 532 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/12/20(水) 00:14:31 ID:J+jkZI6+
- 過疎だ
- 533 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/12/20(水) 01:49:17 ID:YveQyMk4
- この待っている時間は、私は好きだ……
- 534 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/12/20(水) 05:11:40 ID:4UvDT69B
- 現実
妹が兄に対して→死ね兄→お前が死ね。消えろキモスデブ。
妹→殺すぞ。
兄→ガキのくせに調子こくなよこら。
妹→手を出す。
兄→妹を殺す。
妹→泣く。
兄→キモいから息すんなよ。お前がキモいから悪いんだよ。死ね。
親→怒る。
兄が親に対して→あいつをキモく生んだ遺伝子持ってるアンタも悪い。
親→お前も同じ遺伝子持ってるんだよ。
兄→黙れ。自分の部屋に逃げる。
妹→相変わらずキモい声を出してキモく泣く。
ゲーム
妹→おにーちゃん!!
兄→おう、なんだ。
妹→兄にべったり。
兄→相変わらず甘え過ぎだから。
妹→あ〜おにーちゃんたら照れてる〜!!(くすくす)
兄→お前みたいな子供になんか照れません。
妹→もう!!いつも子供扱いしてー!!あたしだって、お ん な よ!! 腰に手をあてセクシーポーズ
兄→だめだめだな。
妹→うぅー…!!おにーちゃんのばかぁ!!
兄→ばかとはひどいなばかとは。
妹→だってぇー…。ちょい泣きそうになる。
俺→泣
- 535 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/12/20(水) 07:33:36 ID:bCOE4FF/
-
>534がキモいのはよくわかった
- 536 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/12/22(金) 14:30:07 ID:9ZjLFB/S
- >>534
マジレスだが
一般に兄弟は仲の悪いものだとされていて
確かに事実そういう傾向もあるが
ある程度成長してるのに、そんなこと
してるとしたらそういう兄は幼稚だな。
現実〜とか、こんなのと一緒にされたくはない。
実際俺は妹が可愛くて仕方がないし。
「死ね」とかよく言われるけど
それもある意味いいことかなと思ってる。
他人に言われたら普通にキレるんだけどな。
ゲーム〜にしたってないだろこれはww
- 537 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2006/12/23(土) 00:51:18 ID:BLoxIStr
- >>533
奇遇ですね。私もです。
>>536
現実〜の方は大体同意見だけど実際にそういうやり取りを見た事のある
私としては何とも……
ゲーム〜の方は結構気に入って……あれ……私だけ?
- 538 :遊(ry ◆isG/JvRidQ :2006/12/23(土) 23:17:43 ID:hvbkWNpD
- 先は長い長いと思っていたが、気付けばもう23日か……
- 539 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/12/24(日) 00:48:03 ID:daVhtSPc
- >>537
いやまぁ…正直言うと俺にもこんな時期あったけどね。
妹のことウザイなって思ってたこともあるし。
しょっちゅう口喧嘩してたこともある。
お兄ちゃんだろ!?ってことで糞親父に理不尽な扱いされたこともあるし…
恥ずかしい話だが、叩いちまったこともある。叩かれたこともあるけど…
…人のこと言えないな…偉そうに言ってごめん
ただそれが全てじゃない、誰もがずっとそうだってわけじゃないってことでさ…
自分を省みるに、妹ウザいって兄貴は妹が自分の思い通りに振る舞わないことに
過剰に憤りを感じてたりしてるんじゃないかな
言うことを聞くのが当然みたいな意識が少なからずあるというか。
あくまで自分の経験に基づいた考えだから全てに当てはまるとは思わないけどさ
…ここまで書いてなんだがスレ違いで本当にスマン
ゲーム〜の方は勢いで言った、反省してる。
ぶっちゃけ俺も好きです。
- 540 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/12/24(日) 22:50:02 ID:TrsYCOEI
- 「つまらない……」
誰もいない我が家で一人呟く。
テレビをつけても、どこもクリスマスだと騒がしい。
幸せなクリスマス……それが、正直、鬱陶しくも羨ましくもあった。
ふと、窓の外を見る。
そういえば、雲が多くなってきた気がする。
これで雪なんか降ったら、かなり憂鬱だろう。
祈るような気持ちでカーテンを閉めた。
「はぁ……」
ため息がいやに響き、寂しさが絶頂に達した瞬間、妹の望の顔がよぎる。
「あんなのでも、いれば少しは……」
道場のクリスマスパーティーとやらに出かけていった望。
まぁ、家で俺なんかと過ごすよりはよっぽど有意義だとは思うのだが。
無いものを嘆いてもしょうがない。今あるものを最大限に活用せよ。
とは誰の言葉だったか。
とりあえず、今はせっかくの自由時間だ。
読書の時間と割り切って読みかけの本を読むとしようじゃないか。
……。
それからどれくらい時間がたったのだろうか。
乗ってきたというのも変な話だが、集中して読めるようになってきた。
そんな時、
「なーんだ……ボクがいなくても結構楽しんでるんだー」
ソファの後ろからつまらなさそうな声。
「望?」
「ただいま……」
「おぅ、早いじゃないか?」
「そんなことないよっ!!」
何だかイライラしている望。
「……どうした?」
「なんでもないっ!!」
- 541 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/12/24(日) 22:50:34 ID:TrsYCOEI
- 「人を怒鳴りつけといて、何でもないわけないだろ」
「ボク、全然怒ってないんだからね!!寂しくしてると思って途中で帰ってきたのに、お兄ちゃん普通だし、
ボクが帰ってきても邪魔そうだし、ケーキだって買ってきたのに……」
確かに言っていることは、無茶苦茶。
でも涙目で、泣きそうな声でこんなこと言われたら……無視できるわけないじゃないか……。
「だから、ボク全然怒ってないんだからね!!」
「……」
難儀な女だなぁ……。
「そうかい……」
「どこ、行くの……?」
「関係ないだろ。望が帰ってきたのに、ここで待ってる必要なんか無いんだから」
……これは少しウソ。
まったくそんな気がなかったというワケでもないが。
「お兄ちゃんが……ボクを……?」
一人で想像し、顔を赤らめる望。
しかしまぁ、馬鹿妹のこの目は眩しすぎ……。
「えへへへ……お兄ちゃん……」
何だかジワリジワリと近づいてくる望。
……もしかして、変なスイッチを入れてしまったのだろうか……。
「お兄ちゃん、ケーキ買ってきたんだよ。二人で食べよう!!」
「あ、あぁ……」
「ケーキ食べたら、二人でテレビ見て、二人で遊んで……」
「望……?」
「ね、お兄ちゃん?」
「あ、あぁ……」
「ありがとう。ボク、嬉しいよ!!」
「そうっすか……」
まぁ、そんなこんなで望に振り回されるクリスマス。
嘘も方便とはよく言ったものだけど……
この場合は良かったのか悪かったのかよく分からないなぁ……。
───────────────────────
- 542 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/12/24(日) 22:52:59 ID:TrsYCOEI
- 「なんだって、クリスマスを翼となんかと……」
「なんか。とは失礼ね。それはこっちのセリフよ」
12月24日。
イルミネーションやら、ネオンサインやらで輝く町を、妹の翼と憎まれ口を叩き合いながら歩いている。
理由は簡単。二人ともヒマしてるのを不憫に思った母上が、二人で何か美味いものを食べて来い。と。
まぁ、そんな感じだ。
「お兄ちゃん」
「ん?」
「あのお店なんていいんじゃない?」
「……高そうだぞ?」
「ほら、見てよ、あれ」
翼がポスターを指差す。
俺もその指のさきにあるものを見ると、
「ふぅん、恋人同士のお客様は全品30%オフねぇ……」
「よくない?」
「カップルじゃないじゃないか、俺たち」
「分かってないなぁ……」
翼はわざと大きなため息を付いて、
「フリすればいいでしょ?」
と、俺に耳打ちする。
「それぐらいなら、他の店探すさ」
やっぱりウソはよくない。
一人振り返り、歩き始めると、
「わ、私はここで食べたいの!!アンタと恋人のフリなんて、ホントはやりたくないんだからね!!」
「……グラスにストロー二本差しで出てきても知らないからな……」
「そんな軟派な店に見える?」
「見えないけど……」
「じゃあ、行くわよ」
ずんずん歩いていく翼……。
仕方なくその後をついていく俺……。
まさか、あんなことが起こるとは、俺には想像もつかなかったのだけど……。
───────────────────────
- 543 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/12/24(日) 22:53:32 ID:TrsYCOEI
- 「意外と美味かったな」
「うん」
空になったデザートの皿を前に、二人揃って立ち上がる。
一応カップルのフリなので、普通の会話を心がけてますよ。
「お金足りる?」
「計算はしてないが、まぁ、ギリギリ足りるだろう」
「じゃあ、お会計ね」
しかしまぁ、翼の演技が上手だこと……。
それに引っ張られる形で、なんだか俺も恋人っぽい会話が出来てしまっている。
「お会計お願いします」
レジの女の子に、伝票を差し出す翼。
「あ、お客さん、恋人同士ですか?」
「はい、そうです」
「では……証明をお願いします♪」
「は……?」
「もちろん!!キスですよ!?」
「「キスっ!?」」
二人の声が揃う。
「出来なければ、割引できませんねぇー」
……悪意のないこの女の子の顔さえも憎い。
「……悪い、翼。家からお金取ってくるから、待ってて……」
そう小声で翼に話しかけたときだった。
- 544 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/12/24(日) 22:54:06 ID:TrsYCOEI
- 「っ!?」
一瞬何が起こったのか理解できなかった。
この、唇に何か触れる感じ……コレがキスなんだな……。
「つ、翼ぁっ!?」
「これでいいですよね?」
「はい。では、割引しますねー」
何が何だか分からない俺はあとは全て翼に任せ、一足先に呆然と店の外に出る。
「馬鹿じゃないの……?取り乱しすぎよ、お兄ちゃん」
会計を済ませて、翼が遅れて出てきた。
呆れたようにため息をつきながら。
「……お前はよく平気だな」
「か、勘違いしないでよね!!別に仕方なくなんだからね!!」
「分かってるよ……」
「お、お兄ちゃんとキスなんて、ホントは嫌なんだから!!」
嫌だ。とか勘弁して欲しい。とか何度も言いながら、俺の先を歩いていく翼。
そして、突然振り返り。
「ファーストキスだったんだから……責任、取りなさいよ……!」
「は?何か言った?」
「な、何にも言ってない!!さ、帰るわよ!!」
「はいはい……」
翼に腕を引っ張られて歩く夜道。
……何故か、遠回りをしている気がするのだが……。
───────────────────────
- 545 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/12/24(日) 22:55:52 ID:TrsYCOEI
-
あちらこちらで輝くイルミネーション。
ちょっとしたものから、本格的なものまで。少し歩けば、家ごとの違いも見えて面白い。
まぁ、一人で見るというのも悲しいことではあるが、こればかりは仕方ない。
最近そう開き直っている。
そんな感じで、すっかり暗くなった帰り道を一人で歩いていると……
「あれは……」
前方に見慣れた感じの少女が。
「澪かな……。っていうか……」
メイド服を着歩く人間など、俺は澪以外に知らない。
完全に確信を得た俺は少し早歩きで、彼女に向かっていく。
「澪。今帰り?」
澪の肩を軽く叩くと、
「お、お兄ちゃん!!」
口をパクパクさせて何だか驚いてる澪。
そして、
「お、おいっ!!」
全力で走り出す澪。
「澪っ!?」
「うわああああああん!!見ないでくださいぃぃぃぃぃぃ!!」
「えぇー……」
何だかそんな澪を追えず、ただ呆然と立ち尽くす自分。
「ま、いいか……」
澪が分からないのはいつものことだ。
随分彼女に慣れてきた自分がそこにいた……。
───────────────────────
- 546 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/12/24(日) 22:57:51 ID:TrsYCOEI
- 澪と別れて数分後、我が家のドアの前にたどり着いた。
この何だか嫌な予感は……きっと当たるんだろうなぁ。
身構えてドアを開ける。
「……」
待ち構えてたのは……やっぱり澪でした。
……何だかリボンみたいなのに絡まっている。
これはまさか……。
「お、お兄ちゃん!?早くないですか!?」
「早いか……?」
「澪、せっかくお兄ちゃんを驚かせようと思ったのにぃ……」
頬を膨らませる澪。
でも、俺は、
「いや……十分驚いてる……」
クリスマスカラーのメイド服だものなぁ……。
しかもスカートは短いし、胸元開いてるし……
「え?ホントですかー?」
「……あぁ、さすがに……」
「うーん、じゃあ、いいかな」
自分で納得する澪。
じゃあ……俺も何でも良いや……。
「ところで……そのリボンは……?」
「あぁ、これですか?クリスマスらしいでしょ?店長デザインなんですよー」
「そういうデザインなんだ……」
「はい」
- 547 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/12/24(日) 22:58:26 ID:TrsYCOEI
- 澪はすごい。少しも迷いがないのものなぁ……。
「……もしかして、似合ってないですか?」
「え?」
「さっきから……全然見てくれてないですよねぇ……?」
「……」
まぁ、目のやり場に困るし……。
「帰るときも、何だかみんな澪を見てないし……」
そりゃあねぇ……。
「澪、泣いちゃいますよ……?」
「……」
「泣いても良いんですか?」
「……いや、困るけど」
「でしょ?じゃあ、褒めてください」
上目遣いそんなことを言ってくる澪。
仕方ないなぁ……。
「いや……似合ってるし、可愛いと思うよ」
「じゃあ、何で見てくれないんです?」
「そりゃだって……カッコ悪いじゃないか……」
「カッコ悪い?お兄ちゃんはいつもカッコいいですよ?」
- 548 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/12/24(日) 22:59:04 ID:TrsYCOEI
- 「……俺としてはそういうのカッコ悪いと思うんだよね……」
「はー。そうなんですか……」
「だからあんまり言いたくないんだけどな……」
「なるほどなるほど。お兄ちゃん、硬派なんですね!!」
「硬派……」
古臭い言い回しだなぁ……。
「でもでも、そういうの一杯言っても良いと思います。それでも、お兄ちゃんカッコいいから」
「……人の話聞いてた?」
「大丈夫ですよ!!お兄ちゃんがお兄ちゃんをカッコ悪いと思ったら、
それ以上に私がお兄ちゃんをカッコいいって褒めてあげます!!」
ホントにこの娘は……
「それより、お兄ちゃん、行きましょう!!」
「え?どこに?」
「リビング!!パーティーの準備は出来てます!!」
俺の右腕を抱きしめる澪……。
あの……自分が何してるか分かってます?
「……お兄ちゃん?」
「な、なんでもない!!行こうか!!」
不思議なクリスマス。
まぁ、澪がサンタってことで良いじゃないか。
───────────────────────
- 549 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/12/24(日) 23:00:58 ID:TrsYCOEI
-
今日はクリスマスイブ。
何かあるわけでもないのに、何だか楽しくて、ドキドキして。
そんな一日が今年もやってきた。
……ただ、一つ違うことが。
それは、
「お兄ちゃんと一緒……ふふっ……」
ため息とともに思わずそんな言葉が漏れてしまう。
お父さんとお母さんは今夜はデート。
お兄ちゃんも出かける予定が無いと言っていたから、今晩は本当にお兄ちゃんと二人っきりだ。
というわけで、お兄ちゃんに食べてもらうため、愛妹料理を作っている最中なんだけど。
「……ダメだ……全然集中できないよ……」
チラついて離れないあの人の顔。
思わず顔がニヤけてしまう。
そんなのだから、さっきも指を切りそうになったのだけど……。
「それにしても……お兄ちゃんどこ行ったのかな……」
ブラブラしてくる。とは聞いたけれども、もう随分になる。
家にいてもらってはヒミツの準備も無駄になってしまうのだけど……
やっぱり出来るだけ私の傍にいて欲しいというジレンマ。
そんなことを考えて、また私の手が止まっている。
これではいけないと、また料理に集中するのだけど、ふとしたきっかけでまた思い出し、上の空。
さっきからこんなことの繰り返しだ。
いつもはさすがにこんなことないのに……
やっぱり今日がクリスマスだからだろうか。
ため息をついて、ゆっくりとまな板の前に戻ると、
「ただいま」
玄関から、聞き間違えるはずの無いあの声がした。
それだけで嬉しくて。頭より体より、心が真っ先に動いた。
「お帰りー!!」
私はエプロンを放り投げ玄関に向かう。
- 550 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/12/24(日) 23:01:36 ID:TrsYCOEI
- 「あぁ……どうしたの、葵?」
「え、あ……別に、あはは……」
……後先考えず。とはこのことだね……。
「ゴメンな、お土産の一つも買ってこなくて」
冗談をいって笑うお兄ちゃん。
……やっぱりお兄ちゃんはいいなぁ……。
「?」
お兄ちゃん、紙袋なんて持ってる……。
隣町のデパートのだ……。
「ね、何買ったの?」
「え?」
「紙袋。何か買ったのかなって」
「あぁ、コレ?大したもんじゃないよ」
「もしかして、クリスマスプレゼント?」
「うーん……この時期にモノを買うと、何でもクリスマスプレゼントっぽくなっちゃって困るよねぇ」
「じゃあプレゼントじゃないんだ?」
「うん。必要だったから買っただけ。まぁ……見栄張って包装してもらったんだけど……」
気まずそうに、包みを見せるお兄ちゃん。
「空しいね、さすがに」
と苦笑い。
「ところで、葵?」
「なーに?お兄ちゃん」
「何か焦げ臭くないか?」
……焦げ臭い?そういえば……
- 551 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/12/24(日) 23:02:12 ID:TrsYCOEI
- 「あーっ!!」
火つけっぱなしだったの忘れてた!!
慌ててキッチンに戻るが、時すでに遅し。
「シチューが……っ!!ど、どうしよう……!!」
鍋の中にはなんだか茶色っぽいシチュー……。
「ありゃー、やっちゃったねー」
「……晩御飯が……」
「落ち着いて、葵」
「で、でも……」
「晩御飯の心配はいいから。火傷とかしてない?」
「それは……大丈夫だけど……」
「良かった。それなら、俺は安心だよ」
「お兄ちゃん……」
私を心配してくれるお兄ちゃん。
私の掌を撫でてくれるその手が、とても暖かくて……
「うぅ……ゴメンなさい……」
嬉しくて、幸せで、思わず涙がポロポロこぼれる。
「な、葵!?ホントに大丈夫なのかっ!?」
「お兄ちゃん……私、少し……火傷したかも……」
「どこを!?」
「ここ……」
お兄ちゃんの手、私の胸の前に重ねる。
「……ココが、キュンってして、熱い」
「葵……」
困った、というかパニック寸前のお兄ちゃん。
私にだって、そんなに邪な気持ちはなかったとはいえ……ちょっと気まずい。
「……ゴメンね……何だか、寂しくて……」
「ううん。いいよ、葵はいつも頑張ってるから、時々はね」
- 552 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/12/24(日) 23:02:44 ID:TrsYCOEI
- 「……うん、ありがとう。じゃあ、迷惑ついでに、もう一つ良い?」
「どうぞ」
「優しく抱いて欲しいな、なんて……」
「いいけど、俺で良いの?」
「私のお兄ちゃんでしょ?妹には優しく。ね?」
「ま、頼られるのは兄貴冥利につきる。というべきかな」
少し恥ずかしそうに、私の肩を抱きしめてくれるお兄ちゃん。
気持ち良い温もりが、全身から伝わってくるのを感じる。
「葵……はい、コレ」
さっきの紙袋をお兄ちゃんが差し出した。
「私……に……?」
「うん。自分で使うつもりだったけど、葵にあげるよ」
「開けても良い?」
「どうぞ。……お気に召すかは自信ないけどね」
紙袋を丁寧に開けていくと……
「マフラー?」
お兄ちゃんの好きそうな色のマフラー。
「……変かな?」
「ううん。気に入った」
「それは良かった」
ホッと安心した顔のお兄ちゃんに、すこし癒される。
「今度は私がお兄ちゃんに似合うマフラーを選んであげるよ」
「え?」
「明日も予定入れちゃダメだよ?」
「……了解。ご一緒させていただきます」
「うんうん。よろしくね」
小指を出す。
- 553 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/12/24(日) 23:03:24 ID:TrsYCOEI
- 「指切り」
「そんなことしなくたって俺は……」
「いいの!やるの!!」
「はい……」
大人しく小指を出したお兄ちゃん。
そんなことでも嬉しくって。
「いたたたた!!痛いって、葵!!」
思わずつながった指を思い切り振ってしまう。
「あ、ゴメン……」
「はしゃいでるね」
お兄ちゃん痛めた指をチラッと見ながら、尋ねた。
「クリスマスだもん!お兄ちゃんも楽しもうよ!!」
「ふむ、是非楽しませてもらおうか」
「ふふん、ハメ外しちゃっても知らないからね〜?」
「凄いこと言うねぇ」
「とりあえず……晩御飯だねぇ……」
焦げ焦げのシチューを思い出す。
「大丈夫。ちょっと色は変だけど……食べれるよ
「美味しくはないんだ……?」
「い、いやっ!!そんなことない!!美味しいよ!!」
「ふふ、ありがと。お兄ちゃん」
ふたりで過ごす初めてのクリスマス。
……それに明日も、一緒。
来年も、一緒にいられたら……。
───────────────────────
- 554 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/12/24(日) 23:07:36 ID:TrsYCOEI
- もうこんなもんでスレを消費してる恥ずかしくなってきた……。大人しく消える……
>>540-541 格闘系ボクっ娘妹、望
>>542-544 ツンデレ風妹、翼
>>545-548 天然系メイド妹、澪
>>549-553 兄好き系妹、葵
じゃ、メリークリスマスってことで……。
- 555 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/12/25(月) 05:55:47 ID:nTWdnjMl
- メリークリスマス!! 遊星さんGJです。今年もハートフルなストーリーをありがとうございます。どの話もよかったのですが。俺的には翼が一番萌えました。
- 556 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2006/12/25(月) 10:08:39 ID:483t5Zav
- OCNがアクセス規制かかってるっぽいので携帯からのすばるです。
>>539
>>537は見た事あるのでいるにはいるのでは?・という事を言いたかっただけだったのですが……
少し誤解を与えてしまったようですね。すいません。
私には妹は(脳内以外に)いませんが、
私含めて結構な人数があなたと同じような考え方をお持ちだと思います。
>>遊星さん
忙しい中乙です!
葵大好きですよもう。
これを読んでやっとクリスマスという実感が沸いてきました。
雰囲気創りがいい感じです。
私はクリスマスネタは時間がなかったのでパスです。
昨日仕事行ってから帰ってきたのが今だったりするのでご勘弁を……
年末かお正月ネタは書くつもりなので待っていてくださる方がいましたら
申し訳ありませんがもうしばしお待ちを……
それでは最後に、『メリークリスマス!』です。
- 557 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/12/25(月) 19:43:42 ID:kgQoUlsx
- 「う〜・・・シングルベルシングルベルってか」
口に咥えていた体温計を引き抜かれ、ヤケクソ気味で意味不明な言葉が漏れ出る俺。
12月24日クリスマス・イブ、床の間に伏せているにはあまりにキツイ一日。
天井を仰ぐ俺の傍らで体温計を腕組みして見詰めていた巴は困った様な笑顔を俺に向ける。
「で、何度くらいあった?」
「聞かない方がいいよ、余計に辛くなるから」
つまり今の俺は聞かない方がいい程の熱がある、と。
神様・・・俺が何か悪い事しましたか?
「ううっ、健康だけが取り得のヤツがよりによってイブにこんな目にあうとは・・・」
「ま、こればかりはね・・・今日は大人しく看病されなさい、ふふっ」
「・・・なんか嬉しそうに見えるんだが・・・気のせいか?」
「まさか、ボクはお兄ちゃんと同じ位に心を痛めてるんだよ」
子供でもあやす様にポンポンと頭を撫でてくる巴の表情は至って明るい。
若干の遣り切れない想いが湧き上がるがそんな事も霞が掛かった頭の上ではすぐに跡形も無く消え去ってしまう。
今の気分はちょうど横になったまま見える窓の向こうの灰色の雲と同じ重たさ、そんな感じだ。
しかし、わざわざ狙ったようにクリスマスイブに風邪を引くのだから本当に俺は相当くじ運の悪い男らしい。
果たしてこの割と浅くて広い世界にこんな人間があと何人程いるのだろうか?
曇り空を見詰め、そんなどうでもいい事を働きもしない頭で思索する。
「・・・あの枯葉が落ちた時、俺の命も尽きるんだな」
「・・・枯葉って何?ここから木なんて見えないんだけど」
「心の目だ、心眼だ・・・俺がいなくなっても強く生きろよ、巴」
「もうっ、お昼ごはん作ってくるから大人しく寝てなさい!!」
- 558 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/12/25(月) 19:45:23 ID:kgQoUlsx
- 椅子の背にしていた黄色いクッションによる顔面への一撃を浴びせて巴が肩を怒らせながら部屋を出て行く。
その割には数分後には上機嫌なソプラノボイスが閑静な家の中に響くのだから乙女心というのはよく分からない。
進路を見失った船乗りが吸い寄せられる様な歌声にこれでもかと突き付けられる現実。
揺らめく視界をクッションの黄色に占領されたままで美声に対抗し口笛なんぞ吹いてみる。
非常に虚しい浅はかで一方的な競い合い、勝っても負けても、いや勝ち負けなんてあるのかさえ微妙だ。
いつもならば忙しく過ぎ去る時間がこんな時に限って長く重たく感じられる。
「まいったな、こりゃ・・・」
「何がそんなに憂鬱なの?」
ヒョイと視界から黄色が取り除かれ、綺麗に澄んだ黒い瞳が写りこむ。
何故か少しだけ気分が軽くなる。
「言わずもがなって所だろ、にしても早かったな」
「そう?大体、15分は経ったと思うけど、ほら、お粥作ってきたから体を起こして・・・」
背中に手を当てて俺の体を優しく起こす巴、そのままトレイに乗せた湯気の立つお粥を差し出す。
器がわざわざ土鍋という辺りに巴の力の入り様が伺える。
・・・しかし、これでいいのだろうか?
「・・・食欲ないんだが食わなきゃ直らないよな・・・じゃ、頂きます」
「あ、ちょっと待ってね、熱いから・・・ふーっ」
口に入れようとした瞬間、絶妙のタイミングで俺の手からレンゲを掠め取る巴、そのまま息を吹き掛ける。
ああ、巴の唇ってホントに色艶いいよなぁ・・・特にリップとか塗ってる訳でもないのに鮮やかな桜色で・・・
- 559 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/12/25(月) 19:46:46 ID:kgQoUlsx
- 「・・・ってオイ!!そこまでしなくっていいって!!」
「はい、あ〜ん」
「あ、あの、巴さん・・・俺の話を聞いてます?」
「・・・はい、あ〜ん」
・・・ダメだ・・・目が一切の否定を許していない、どうやら拒否権はこちらには存在しないらしい。
観念しておそるおそる口を開くと程好い暖かさのお粥が口の中に広がっていく。
・・・本当にこれでいいのだろうか?
「ふふっ、どう?美味しい?」
「いや、美味しいも何もお粥だしな、味無いし・・・やっぱり何か楽しんでないか?巴」
「・・・なんていうか、これも幸せのカタチかな、って」
「幸せ?老人の介護がか?」
「・・・ロマンの欠片も無い言葉だね」
「実際の所、今の状況は老人の介護にしか見えないけどな」
「そんな事無いよ、ボクには・・・」
そこからピタリと言葉が詰まり、俺から顔を背けて巴が紅葉を散らした様に頬を染める。
正に千変万化、うなじの辺りまで赤みが差して変に色気が増した巴にドギマギしてしまう俺。
「な、なんだよ一体?」
「う、ううん・・・なんでもない・・・はい、あ〜ん」
「だからもういいってのに!!」
「・・・男なら覚悟を決めなさい」
- 560 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/12/25(月) 19:48:58 ID:kgQoUlsx
- 結局、意地でも全部食べ終わるまでこのやりとりは続けるつもりらしい。
本格的に介護めいてきたし、こうなってはもはや早く終わらせる他には無いだろう。
「はい、じゃあ後はお薬ね」
「・・・あのな・・・それより、巴・・・これでいいのか?」
「えっ?何が?」
「今日は年に一度のクリスマス・イブだ、そんな日を病人の看護なんぞに費やしてていいのか?」
「・・・」
「別にさ、俺一人家に残ってたって何も恨んだりしないからさ、巴は好きなように楽しんでくれば・・・」
心の動揺を誤魔化す為に出た何気ない言葉、空に浮かぶ白い月に影が差す様に巴の表情に少しだけ憂いが篭る。
スッと重なる凛と澄んだ瞳、なんだかやたらに儚さを含んだその瞳が壊れてしまいそうで押し黙ってしまう俺。
「・・・バカ」
「は?」
「ねぇ、お兄ちゃんはこんな風にボクとイブを過ごすのは・・・イヤ?」
「聞いてたのは俺の方なんだけど・・・」
「いいから答えて、どうなの?」
「ま、まぁ・・・むしろ、ありがたい」
「じゃあ、いいんじゃない?ボクも同じ気持ちだから」
「同じ?巴もありがたいのか?」
「うん、そうだよ」
先程とは打って変わってサバサバした口調で笑ってみせる巴、俺の方は解けない謎ばかりで疲れが増すばかり。
熱を持った頭で一人、その意味と訳を探し続ける。
巴と俺の違いとは何なのか、謎解きの鍵が突然に放り投げこまれる。
- 561 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/12/25(月) 19:50:33 ID:kgQoUlsx
- 「それに、今年は流石にお兄ちゃんは迎えに来れないと思うから」
「ああ、去年の事な・・・今年と真逆の立場だったな・・・」
寒空の下、大きなクリスマスツリーに祈りを捧げる巴の姿を思い出す。
綺麗に彩られたイルミネーションが町の幸せを、この日ばかりは悲しみも全てを呑み込んで光を放つ。
クリスマスは誰もが幸せそうに見えるもの、誰でも幸せのきっかけを掴めるもの。
そう、そんな事すら俺は忘れてしまっていた。
「・・・ごめんな、巴」
「・・・?急にどうしたの?」
「結局、子供の頃の約束は守れなかった・・・十年後にって約束は」
「・・・ううん、お兄ちゃんは覚えていてくれた、それだけで・・・ボクは幸せだよ」
「じゃあ、針千本は勘弁してくれるか?」
「約束は延長にしてあげる、あと五年延長、ね」
「・・・イヤに生々しい数字なんスけど?」
「約束だからね、お兄ちゃん」
そっと重ねられた手の平から伝わる温もり、窓の向こうの凍てついた世界に鮮やかな白い雪が舞い降りる。
真冬の空に鈴の音が鳴り響く、厚い雲の下で光輝く小さなこの世界。
「・・・ま、五年後、巴が俺に愛想尽かしてなければな」
上手くはいかない事ばかりの世の中に大きな欠伸をして俺はゆっくりと瞳を閉じる。
俺の願いは叶わなくともどうか巴の願いが叶いますように、そう祈りを込めながら。
- 562 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/12/25(月) 20:11:34 ID:kgQoUlsx
- ───────────────────────
時計の針が夜を指し示す頃、アスファルトに染みを作っていた雪が街を一面の銀世界へと変えていく。
どれ位の時間、こうしていたのだろう?
ただ規則正しい寝息を立てる穏やかな寝顔をぼんやりと見詰め続けて気が付けば夜の帳はすっかり下りていた。
「・・・ボクがお兄ちゃんに愛想尽かしてなかったら、か・・・」
何時間か前のお兄ちゃんの言葉をもう一度、反芻する、そうやって何度も繰り返してみても可笑しな言葉。
・・・そんな事・・・ある訳、無いのに・・・
暖かい唇にそっと指先で触れ、夢の中へと届くように囁く。
「ねぇ、お兄ちゃん・・・ボクは分かってるんだよ?今の幸せがどれほど脆くて儚い物なのか・・・」
運命はとても弱くて、ほんの少しの偶然で幾らでも形を変えてしまう。
ボクとお兄ちゃんは後どれ位の間、一緒にいられるのだろう?
・・・そう考えると・・・泣きたくなる程・・・悲しくなる・・・
世界にお兄ちゃんの代わりになれる人なんて誰一人いない。
我が侭も強がりもボクが大嫌いなボクでさえ全部それが当たり前だといつでも受け止めてくれる。
けれど、惜しみない優しさは手掛かりの無い優しさ、どうしようもない切なさが胸の奥底に深く降り積もる。
ボクが愛している分だけボクを愛して欲しいなんて言わない、お兄ちゃんの全てを手にしたいなんて言わない。
「・・・ボクの想いはただ一つ・・・」
寒い冬は温もりを分け合って、二人で桜の咲く遠い春を待ち続けて、そんな毎日が大切な宝物で。
いままでと何も変わらない、ありふれた何気ない日常を・・・ただ二人で・・・
・・・神様、ボクは綺麗なクリスマスツリーも豪華なプレゼントも要りません・・・
「・・・どうか・・・これからもあなたの側に・・・大好きだよ、お兄ちゃん・・・」
──聖なる夜に永久の祈りを──
──愛しき人に口付けを──
- 563 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/12/25(月) 20:34:38 ID:kgQoUlsx
- 一日遅れでのイブ話、しかも前回投下から間がエラく開いてしまった・・・
話の内容の薄さも含め、なんか色々とスイマセン。
>遊星さま
いつもながらのいい仕事っぷりに感動です!!
みんな個性が上手く引き出されていてお見事としかいい様がありません。
葵ちゃんが可愛い過ぎる、もう巴さんでは太刀打ち出来ないなぁ・・・
個人的には澪ちゃんがツボでした、これはもう最高のクリスマスプレゼントですw
>すばるさん
いや、待ちに待っていましたよ!!
夢亜ちゃんの話が読めて感動です。
正月話に期待しております、すでにバレンタインとかも期待してますw
- 564 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/12/26(火) 00:06:53 ID:lHhkXKSB
- 俺は、
なんだかんだあってもイベントには投下してくれる皆が大好きだ
だから、だからね?たまには姉g(ry
- 565 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/12/26(火) 02:12:55 ID:tIg76mUJ
- 遊星さん、夢ノ又夢さんGJ
俺もイベントには律義に投下してくれる職人さんに感謝
すばるさんイベントネタの投下と続き待ってます。
- 566 :遊星 ◆isG/JvRidQ :2006/12/26(火) 18:36:58 ID:vDZyvXan
- 規制の巻き添え中……トリップ合ってるかな……
ケータイからなんで多少の見苦しい点は申し訳ない。
〉夢ノ又夢先生
やっぱり先生は凄い方です。
いつも幸せな雰囲気の作品で、微笑ましい気持ちになります。
自分もそういう作品を目指したいですね。
次回も期待してます。
〉すばる先生
今年で最後最後と言いつつ、また今年も書いてしまいました……w
正月モノも書きたいんですけど、
ネタも無い。時間もない。遊星はダメな男……
すばる先生の作品も楽しみにしてます
>>564さん
姉もね、書こうと思ったんですよ?書こうと思ったんですけど……タイムオーバーでした。
かなりテンション上げないと書けないですね、あの姉弟のノリは……。
- 567 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/12/28(木) 19:01:13 ID:lGTjjjcS
- 規制解除記念に意味も無くレス。
気分良いから、文化祭モノでもzipとかで上げてしまおうか!
- 568 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2006/12/29(金) 08:39:47 ID:61c9ZlQl
- 「…………」
何者にも入り込む事の出来ない、沈黙の支配する空間。彼の者と対峙。
静寂こそが絶対であり、沈黙を破る者に留まる事は許されない。
全て者が俯き、顔に活気はない。
あぁ…何故気が付かなかったのだろう……。
「……お兄ちゃん。」
―――知っている。決して沈黙が破られる事は無く、破ろうとする者に与えられるは孤独。
「…………」
視線が宙を彷徨う。
そこに陽の光は存在せず、在る事は許されない。
彷徨った視線に映るのは作り出されたまやかしの光と兄と呼ぶ者の顔。
あぁ…何故気が付かなかったのだろう……
この人が商店街に来て、本当にぶらぶらするはずがないのだ。
―――――――――――――――
規制解除記念おふざけ。
>夢ノ又夢さん
私こそ待ちに待っていましたよ!相変わらず良い仕事をしてらっしゃるw
そこまで歓迎して頂いたら私ものうのうとゲームをやっている訳にもいきません。
という事で努力します。
>>565
夢亜の続きはノリで書いていたら段々長くなってきていまして…もう少々お待ちを……。
イベントネタは……来るか来ないか分からない、というのも楽しい……と思いません?w
>遊星さん
ネタも時間も無くても何とか捻出する。そんな遊星さんに続ける様に精進しますです。
ネタと言えば、純粋に字書きとして遊星さんの来年のバレンタインのネタが楽しみですw
- 569 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/01/01(月) 04:10:54 ID:rlhMPb99
- 明けましたおめでとうございます。
今年もよろしくお願いしますという意味も込めて、新年一番手いきます。
――――――――――
「さて、と……何処か行きたいとこ、あるか?」
とは言ってみたものの、俺の視界に映るのは赤みを帯び始めた冬の気の早い太陽と、その赤にも負けない程見事に朱みを帯びた頬をした膨れっ面の夢亜。
そこまで暇だったのなら声を掛ければいいものを……また気を使ったつもりなのだろう……が、俺としてはこうなる前に声を掛けて欲しいのだが……。
「知らない。お兄ちゃんが行きたい所に行けばいいじゃない。」
ぷい、とそっぽを向きながら答える。
行きたい所がないから聞いているのだが……いや、あるにはあるが、行くとまた夢亜を怒らせ兼ねない……というのが正しいか。
「まぁそう怒らずに。ほら、ガムあげるから。な?」
財布に入っていたガムを取り出し――いつから入っていたかは謎だ。入れたのを忘れるくらい前に入れた物なのだろうが――夢亜に差し出す。が、受け取る事は無い……だろうな。
いくら夢亜でも、さすがにもうこんなもので機嫌が直ったりする歳でもない。
それに、万が一受け取られたら夢亜が明日お腹を壊す事になり兼ねない。
「……何味?」
「そうだよな。いくら夢亜でも……って、味……?あー…梅……?」
「じゃあいらない。」
味によっては受け取るつもりだったのか……恐ろしい……。
「そ、そうか……」
ついつい天を仰ぐ。
ああ、何故こんな状況になったのか……。
―――――
- 570 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/01/01(月) 04:12:53 ID:rlhMPb99
- お昼過ぎに出掛ける兄に付いて行く事になり――私が引っ張って来た気もするが――、商店街まで来た。
休日のこの時間の商店街は最近あまり来ていなかったのだが、久しぶりの晴れのせいか普段からこうなのか、結構な人がいて、少し気後れしてしまう程賑わっていた。
「ねぇお兄ちゃん。ここって、こんなに人多かったっけ?」
「んー、いつもはここまでいない気がするけど。まぁ、久しぶりの晴れだし、年末だし、こんなもんなんじゃないか?」
私としては年末なのだから、というより私が外に出るときはもう少し、なんというか……エトセトラな方々には火燵の中で丸くなっていて欲しい。
別に嫌い、という訳ではないが、どうも人ごみは好きになれない。
「こんなものなんだ……。」
「……迷子にならないように手でも繋ぐか?」
「まい……迷子になんてなる訳ないでしょ!?」
……しまった。
人ごみに気を取られていたせいか、また兄の悪ふざけに乗ってしまった。
手を繋ぐ、というのは――理由はともかく、随分魅力的な提案だったのに……なんで別の乗り方が出来ないのか……。
「そっかぁ……夢亜ももうそういうのが恥ずかしいお年頃になったんだね。お兄ちゃんの元を離れていく妹……お兄ちゃんは寂しくなるけど応援しているよ。」
「よよよ」等と白々しい泣き真似をする兄。
馬鹿にされている。というより侮辱されている気がする……ここまで人の神経を逆撫でするような事を何の間も無く出来るのは、もう才能としか言い様がない。
恐らく兄は、人ごみに気構えている私に気を使ってふざけているのだろうが――気を使っていなくても普段からふざけてるが――、そのせいですれ違った人にくすくす笑われていたのが恥ずかしくて気に入らない。
「……バカ。」
「悪い悪い。さて、夢亜はどこか行きたいところあるか?」
「特にないかな……お兄ちゃんは行きたい所ないの?」
「俺が行きたい所……ねぇ……。無い事もないけど、それは一人の時でも行ける……ていうより一人の時にしか行かない事にしてるから。」
- 571 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/01/01(月) 04:13:23 ID:rlhMPb99
- ……イケナイ所にでも行ってるのだろうか。
いやいやいや。兄に限ってそんな事あるはずがない。だが、兄も一人前の男だ。それは私がよく知っている。
兄が一人でしか行かない所とは……正直、とても気になる。
あくまで妹としてであって、決してやましい事などない。
て、何故自分に言い訳しているのか。自分で『やましい事をしてますよ』と言っているようなものではないか。
馬鹿か私は……。
「別に私は気にしないでいいよ?本当に暇だから付いて来ただけだから。」
ともかく、ここは是非兄がどこに行くのか突き止めなければ。もちろん、兄――家族を心配する者として。
兄が気になるような事を言うのが悪いのだから、誤魔化そうとしても少しくらいしつこく聞いてもいいと思う。
「そう?んじゃ行きますか。我が聖地、○○書店へ。」
「本屋!?」
「そうだけど……何かマズッた?」
「……そんな事、ない、けど……だって、一人の時しか行かない所って言うから……」
「……どこに行くと思ってたんだ?」
「え!?それはその……えーと……」
そんな事言える訳がない。
兄がその……そういう所に行っていると思っていたなんて……。
「それはその……なんだ?」
「その……あれ……とか……」
あぁ、兄の顔が眩しい。そんな楽しそうな顔をするのか……。
「あれ?あれってなんだ?俺には話がよくみえないなぁ。」
分かっているくせに。私が勘違いしてた。また勝手に先走ってた。
認めるからからかわないでほしい。
「あぁ〜!何でもいいでしょ!行くなら早く行こ!早くしないと陽が暮れちゃうよ!」
強引に兄の手を取って歩き出す。
不満そうな顔をしながらも付いて来てくれる兄。
「おいおい。何でもよくないぞ。夢亜は俺を何だと思ってるんだ?」
何だと思っているか?そんな事決まっているではないか。今も昔も、そして多分これからも……ずっと変わらない。
「何にも思ってない!人を困らせるのが好きな変態でしょ!」
「何も思ってないって……変態って思ってるんじゃないか。」
- 572 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/01/01(月) 04:14:09 ID:rlhMPb99
- 「思ってない!バカ!」
外見では怒っているのに、仕事を始めてからも会いに帰って来てくれるのが嬉しい。こんなやり取りを出来るのが嬉しい。そう考えるだけで顔が綻んでしまう。それが何よりの証拠だ。
しばらく兄に顔を見せられない。
「ところで夢亜さん……」
「あんまりしつこいと女の子にもてないよ!」
「いえ……そうじゃなくて。俺がいつも行く本屋……逆です。」
―――――
本屋に入るまではあんなに騒がしかったのに、俺が一体何をしたというのか。
ただ本屋で二時間程立ち読みをしていただけだ。
俺としてはかなり早く店を出たのだから褒めて欲しいくらいだ。
一緒に居たのが広司なら、涙を流しながら褒めてくれていただろう。
街中で男に涙を流しながら褒められるなんて姿、想像しただけで寒気がするが。
「…………」
なんて余計な考えをしていると――人の考えが読めるのか、無言の圧力を掛けてくる娘が一人。
「そんなにガムが欲しかったのか……すまないな。君の好みのガムを用意出来なくて……。」
瞬間、俺に背を向けていた夢亜の右足が引かれ、それに合わせて流れるような動作で右肘が俺の腹部に……
「ぐは……っ!」
「……何か言った?」
こいつ……一体どこでこんな体捌きを……。
「……姫様が暇をしているのに気付かず、本当に申し訳ない、と。」
「分かってるならいいよ。」
いつか姫から女王様になる日が来るかもしれない。
それだけは何としても防がなければ……。
「姫!こんな私を許してくださりますか!なんと御心の……」
「それはこれは別。」
「そうですか……。」
昔ならこのまま流されていたのに、夢亜の成長が早いのか、時の流れが早いのか、最近はもう簡単には流されてくれないらしい。
それにしても……腹がまだ痛む……。
- 573 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/01/01(月) 04:19:17 ID:rlhMPb99
- 「でも……反省してるなら、許してあげてもいいよ?」
試すような顔だけを向けての上目遣い。
「これでもかと言う位反省しています。」
「じゃあ、許してあげる。」
そう言って以前より少し伸びた髪を靡かせながらくるり、と音が聞こえそうなくらい軽やかにこちらに向き直り、夕日を背に満面の笑みを見せてくれる。
長い睫毛に靡く髪、怒っていたとは思えない笑顔。
夕日に照らされるその姿は一枚の絵のように。
同時に、決して絵では表せない程の輝きを持って夕暮れの街に佇む。
これは反則だ……今日の夕日は、眩しすぎる。
――――――――――
と、いう訳でコミケ行ってたら年末ネタ落としてしまいました。
お正月ネタは予定は予定であって……というやつです。
何かとスローペースですが今年も職人さんに混じって投下していこうと思うのでお付き合いお願いします。
- 574 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/01/01(月) 23:02:13 ID:5x+zxIvu
- あけましておめでとうございます。
台本も書かんと、雑談ばかりで恐縮ですが。
>すばる先生
乙です。
二人の関係が良い感じで、いつかこういう兄妹が書けたらなぁ。と。
何はともあれ、次回を期待してます。
- 575 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/01/08(月) 00:05:39 ID:Ew02/Pob
- グッジョブです!
- 576 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/01/13(土) 01:06:30 ID:ehgorI5d
- 遊星さん>
お褒めの言葉どうもです。
私としては遊星さんの萌え分を分けて頂きt(ry
>>575
お褒めの言葉どうもです。
萌えがなくて申し訳ないです。
妹「お兄ちゃん、今は冬だよ?冬眠しなくて平気なの?」
次回の投下はまだ未定ですが、それでは。
- 577 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/01/15(月) 21:43:38 ID:mxyrY3Fq
- 保守ー
- 578 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/01/18(木) 21:42:45 ID:OOSENf3D
- 保守……
そろそろバレンタインだよなぁ……。俺今年でバレンタイン何年目だろ……。
いや、まぁ、翼とか葵のバレンタインは書いて面白そうなんですけど……如何せんネタが……。
書いて欲しい妹とかあったら、いまなら考えられるんだけどな……ある訳無いか。
あ、夢ノ又夢先生の作品を去年から楽しみにしてますからね。
せいぜいその前座が務まるように頑張りますよ。
- 579 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/01/18(木) 21:55:03 ID:smbPPzNe
- 遊星さん、葵と未来が特に読みたいです!
- 580 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/01/21(日) 16:34:13 ID:xJZmHoVD
- かなみ
- 581 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/01/21(日) 21:06:27 ID:OSw3gbU3
- 杏ちゃん 読みたいです。
- 582 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/01/22(月) 16:29:56 ID:nFAmOrHj
- >>579さん
葵と未来……
個人的には、未来の位置はもう完全に葵に譲ってしまった感があるんですけど……分かりました。頑張ってみます。
……もちろん、保障は出来ません。
>>581さん
まさか杏が来るとは……。
どんなキャラかすっかり忘れてしまっているので、上手く書けない可能性が……。
自分の努力なんて、たかが知れていますが、一応努力します。
- 583 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/01/23(火) 23:43:40 ID:/C9LGAiZ
- >遊星先生
文化祭モノはもう上げて頂けないのですか?
- 584 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/01/24(水) 08:42:53 ID:A/V0BeGT
- たまにでいいから…節分がある事……思い出してあげてください……ばーいゆうな
>>遊星さん
双子の話が読みたいです。
って、これじゃ去年より増え……
>>夢ノ又夢さん
遊星さんに続いて私も楽しみにしてますよw
- 585 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/01/24(水) 15:00:08 ID:gPY8JiyO
- >>583さん
文化祭のは、見事に反応無かったんで……。
まぁ、自分としても季節外れだしやめとこうかな、と思ってるんですが……欲しい?
>すばる様
双子ですね。かしこまりました。
つーか、まさかこんなにリクエストがあるとは思わなかったんですよw
これもどうせ華麗にスルーされるんだろ。くらいに思ってたので、自分で自分の首を絞める結果に……
嬉しい誤算。と言うべきですか。
……まぁ、リクエストがあったからには書くつもりですんで。あとはこれ以上増えないことを祈るばかりw
- 586 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/01/24(水) 21:56:46 ID:CsF9kpHF
- 583です
俺は季節外れでも読みたいっす…
- 587 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2007/01/28(日) 22:36:52 ID:E24/pcmB
- 去年書いたバレンタイン話、先程読み返してなんか無かった事にしたくなって
きました。
いや、正直自分で割と良く書けたと思うのは一番最初の一作だったりします。
なんか段々と退化していく気が・・・
>遊星様
上記の通り、バレンタイン話は期待されるには値しない物であります。
遊星神のSSに期待してますよ。
出来れば梨那ちゃんが読みたいのですが他のリクエストの後に余裕がありまし
たら是非に、という事で。
後、文化祭話も586さんに激しく同意して期待しております。
>すばるさん
むしろ期待してるのはこちらの方ですよ。
夢亜ちゃんのバレンタイン話が是非とも読みたいです。
ところで巴ですが立ち位置を葵ちゃんに譲りつつある今、バレンタインを機に
そろそろ楽隠居させようかともふと思ったりするのですがどうでしょうかね。
単純にネタが切れてきたのもありますが・・・皆さんの意見を求む。
- 588 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/01/28(日) 22:42:47 ID:xnm1heTp
- 巴の現役続行を希望します!
- 589 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/01/30(火) 02:33:12 ID:CnS4ffhe
- バレンタインは新キャラ登場予定。でも、あくまで予定です。
>>遊星さん
私も文化祭読みたいに一票ですー。期待してます。
>>夢ノ又夢さん
夢亜ですか……ここだけの話、実は>>573はまだ途中なんですよね……
でも、リクエストしていただいたのでそれは置いといてバレンタイン夢亜、書きますw
葵と巴……葵が直球ど真ん中豪速球でストライクな私としては葵が…でも…巴さんを捨てる、なんて…出来ない……っ!
- 590 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/01/30(火) 17:34:45 ID:ayq41ORZ
- 未来、葵、杏、双子、梨那……。時間があれば、望、翼、澪も書きたいけど……。
>夢ノ又夢先生
いや、全然ウチの葵はまだまだですよ!
っていうか、巴ちゃんは俺の永遠の目標到達地点なんで……
俺なんかワガママ言えた身分じゃないですが、
もっと巴ちゃんの話が読みたいんで、隠居なんて悲しいことを言わずに、またネタを思いついたら書いてください。
>すばる先生
文化祭は……バレンタインがダメだったときの保険にしてしまおうかと……。
いや、テストさえ無ければ……ネタは考えてるんですけど……。
- 591 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/02/03(土) 00:39:05 ID:A5hp5lyf
- 突然ですが、今日は節分なのです!節分といえば豆撒きに恵方巻き。ちなみに今年の恵方は北北西です。
私、朔<<さく>>は兄さんと『良い感じ』の節分を過ごす為に福豆と恵方巻きを買ってきました。
「兄さん、今日は何の日か知ってます?」
「朔の誕生日?」
「違います……」
考える風もなく答える兄さん。私の誕生日、この前祝ってくれたのにもう忘れちゃったんですか……。
「じゃあ俺の誕生日?」
またもや考える風もなく答える兄さん。実は私と話すの、嫌なんでしょうか?私、部屋に戻った方がいいでしょうか?
「それも違います。っていうか自分の誕生日覚えてないんですか?」
「はは、冗談だよ冗談。母さんの誕生日だよね?」
「違います!なんでさっきから誕生日なんですか!」
「なんか嬉しそうな顔してるから、誰かの誕生日なのかなぁって思ったんだけど……あぁ!父さんのか!」
これだ!といわんばかりに笑顔で答える兄さん。
今のはちょっと……ううん。結構頭にきました。どちらかというと私、いつも嬉しそうにしているタイプです。
「だから誕生日じゃないです!今日は2月3日!節分です!」
「あ〜。そっかそっか。そういえばそうだったね」
- 592 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/02/03(土) 00:39:59 ID:A5hp5lyf
- これでやっと話が進められる……。私が、兄さんを誘う……。誘うって、なんか卑猥……って、何考えてますか!
あぅ……ちょっと緊張してきました。
「それで、ですね、豆……」
「でも、流石にこの年になると豆撒きとかしたいと思わないよねー」
「……」
うぅ……泣いてもいいでしょうか。私はこの年になっても豆撒きとかしたいんです。
「それで、節分がどうかしたの?」
たった今兄さんがしたくないと言った豆撒きをしようとしていました。鈍感な振りして、実はわざとやっているんじゃ……?考えたら、いくら兄さんでも今日の兄さんは鈍感過ぎる気がします。
「……それだけです」
「そう?」
落ち込んでいるのがバレたくないのに、どうしても声が沈んでしまいます……仕方ないじゃないですか。だって、兄さんと何かした事ってまだ余りないし……楽しみにしていたんですから。
「はい。私、部屋に戻りますね…」
とぼとぼとドアに向かう私。
「……もしかして、また何か気に触ること、言っちゃった?」
流石の兄さんも私の変化に気付いたのか、少し心配そうな声で聞いてくる。
でも、もう遅いです。今の私は不幸のど真ん中。豆撒きなんてしたら鬼と一緒に追い出されてしまいます。
「別に。何も言ってないです。バカ」
部屋を出た後、背中のほうで兄さんが何か言っていたけど、私は意識して聞かなかった。そして、兄さんも私の後を追いかけて来てはくれなかった。
- 593 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/02/03(土) 00:40:37 ID:A5hp5lyf
- 明かりを点けていない私の部屋は暗くて、去年の年末大掃除のおかげか、物寂しいくらい綺麗に片付いていて、まるで私の心をそのまま映し出したみたい。
「兄さんの、バカ……」
私だって、この年になってそこまで豆撒きをしたいとは思いません。でも、兄さんとはまだやった事がないから……。
「これ、どうしましょう……」
机の上には今日の為に用意した福豆と恵方巻き。今は何か食べたりする気分ではないけど、恵方巻きは無言で食べるものらしいし、今の私にはぴったりなような気がして、恵方巻きを食べる。
やっぱり、美味しくない……。一人は寂しくて、心が寒くて、口に入れた恵方巻きも冷たくて、お葬式で出たお寿司を思い出した。こんな食べ方して、本当に福が入ってくるんでしょうか。
兄さんなら『気持ちの持ちようなんじゃないかな?』なんて言うんでしょうが、今の気持ちじゃ福なんて入ってくる気がしないです。
「はあ…なんで……」こんなときでもにいさんの事考えてるんでしょう……。
兄さんとはまだ、一緒に暮らし始めて……兄さんが兄さんになって一年も経っていないのに、いつからこんなに私にとって大きな存在になったんでしょう。
そういえば、何でだったでしょう……私が、常に敬語を使うようになったのは。たしか……
――コン、コン――
ノックの音で今の考えを振り払う。この家の人には、落ち込んでいる姿を見せたくないから。なるべくいつも通りの声を心掛ける。
「はい?」
「俺だけど……入っていいかな?」
え?入って……?
目の前には恵方巻きと未開封のままの福豆。
「あ、えと……ちょ、ちょっと待ってください!」
「うん」
- 594 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/02/03(土) 00:41:09 ID:A5hp5lyf
- こ、こんなの見られたら最悪です!兄さんなら、私が一人で節分してたと思うかもしれない……これじゃあ私、可哀想な人じゃないですか!
どうしましょう?隠せる所……隠せる所……あ!隠すといえばベッドの下で―――ゴツン―――
「いたぁっ!」
あ…頭がベッドにぃ……うぅ……
「だ、大丈夫?今凄い音がしたけど、どうしたの?」
「いえ!なんでもないですっ!どうぞ!」
「う、うん。お邪魔します。て、暗いね」
「え…?」
それは……私が、でしょうか?
「電気、点けないの?
「あ…ああ!忘れてました!」
そういえば電気を点けてませんでした。慌てて電気を点け―――ガンッ
「いたっ!く、なん、て……やっぱり痛い……うぅ……」
足……小指が、壁に……泣きたい……
「だ、大丈夫!?」
慌てて私の元に来る兄さん。こういう反応は早いのに、なんで鈍感なんでしょう?天は二物を……というやつでしょうか。
って、今はそんなことではなくて……急いで立ち上がり電気を点ける。
「だ、大丈夫です!そ、それで、どうしたですか?」
「大丈夫ならいいけど……。あれ?朔ちゃん、ちょっと……」
急に兄さんが顔を近付けてくる。優しい表情……私を心配してくている顔……兄さん……。やっぱり、私は……
「…く…ちゃん……朔ちゃん」
「はっ、はいっ!なんです!?」
見惚れてました……不覚です……。兄さんが急に顔を近付けてくるから……ん?兄さんの顔が近く……顔が、近……っっ!!
「おでこが少し赤くなってるけど大丈夫?って聞いたんだけど……どうしたの?ぼうっとして。それに何か顔も赤いみたいだけど……風邪?」
「い…いえ…その……なんでも……ない…です」
「ん〜、それならいいけど……ちょっとごめんね」
コツン。と兄さんのおでこが私のおでこにあたる。
「……へ……?に、兄さんっ!?」
た、確かに兄さんとなら……じゃなくてこういうのはやっぱり順序というか…いえ!血は繋がってなくても私たちは兄妹で……でも、兄さんなら嬉しいというか……でもやっぱり順序というかなんといいますか心の準備が……
「う〜ん……熱は無いみたいだけど……って、さっきより赤くなってるみたいだけど、本当に大丈夫?」
「……へ?」
- 595 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/02/03(土) 00:41:44 ID:A5hp5lyf
- えーと……これは……いわゆる勘違い、というやつでしょうか……?
「ちょっと待ってて。今薬持って来るから。」
「ま、待ってください!大丈夫ですから!」
「え?でも……」
「大丈夫なんです!そ、そう!さっきまで動いてたから!それで顔が赤くなっているだけで!ほら!おでこもそのときに!」
…………。
とっさのこととはいえ、なんと下手な嘘でしょう……。こんな嘘を信じる人なんて……
「そう?気をつけなくちゃダメだよ」
いました。
いくらなんでもこんな嘘に騙されるのはどうかと……。ま、まあ、これで窮地は脱出出来たので一件落着。……いいんでしょうか、こんなので……。
「はい。気をつけます」
「とりあえず、いつまでもここで話してるのもなんだし座ろう?」
そういえば、ずっと電気のスイッチの近く―――部屋の入り口でした。なんか……回覧板を回してきた近所の奥様たちの立ち話みたい……
「そうですね」
私、まだそんな年じゃない……。
兄さんと二人、ベッドに腰を掛ける。
「ふう」
改めて窮地を脱出した事を認識して安堵の息を吐く。
隣には兄さん。この部屋にさっきまでの陰鬱な雰囲気はもうない。今は、別に節分に拘らなくても、兄さんとならいつでもなんだって出来る気がする。
兄さんの隣にいると、そんな気がしてくる。これが兄さんの持つ雰囲気で、兄さんの優しさ。
そう。兄さんは私の兄さんで、いつか別々になる日が来るかもしれないけど、それは私が思っている程先のことではないのかもしれないけど、少なくとも、少なくとも今は一緒にいられる。まだ、しばらくは同じ時間を過ごすことができる。
だからそんなに焦ることも無い。そう思える。
「ところで朔ちゃん」
「なんです?」
心と一緒に声も軽くなる。体も軽く感じる。今体重計に乗ったら、感動する程少ない数値が出るんじゃないでしょうか。……せっかくいい気分なんで乗りませんが。
「さっきまで電気消して何してたの?」
「恵方巻きを食べてました……て……あ」
バカ!私のバカ!口まで軽くなってどうするんですか!さっきまでの嘘は……私の努力は……一体……やっぱり、泣いてもいいでしょうか……。
- 596 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/02/03(土) 00:43:39 ID:A5hp5lyf
- 「恵方巻きって確か恵方、とかいう方角を向いて食べる節分の食べ物だよね?動きながら恵方巻きを食べてたの?相変わらず朔ちゃんは面白いね」
私変な人になってる!電気消した部屋で動きながら恵方巻き食べて、頭打つって……兄さん、おかしいと思わないんですか……。ううん。お願いです。思ってください……。「あははは」なんて笑ってる場合じゃないです!
「兄さん、泣いてもいいですか?うぅ……」
「え?あれ?またおかしなこと言っちゃった?」
おかしいと思わないことがおかしいです……それともあれですか?やっぱり私が嫌いですか?そんなに変な女の子に見えますか?
「ごめんね。さっき僕のせいで朔ちゃんが落ち込んじゃったみたいだったから、理由を考えてたんだけど分からなくて。とにかく謝って励まそうと思ってきたんだけど……」
「え?」
さっき追いかけて来てくれなかったのは、考えてたから……?兄さん、私を励ます為に来てくれたんだ……
「やっぱり僕はちょっとずれてるのかな。正直、今も朔ちゃんがなんで落ち込んでるのか分からなくて。嫌われちゃうようなこと、言っちゃったかな?」
「ふふ」
そんなことないです。兄さんがいるから私は元気でいられるんですよ。
「え?なんで笑うの?今のはおかしなこと言ってないよね?」
「いいえ。言いました。とってもおかしなこと」
だって、一人ぼっちになった私を、いつも笑顔で支えてくれた兄さんを、また一人じゃないって思えるようにしてくれた兄さんを、嫌いになれるはずないです。
嬉しくて、おかしくて、笑いがこぼれてしまう。
「そんなに笑わなくても……」
「すみません。すごくおかしかったから、つい。あ、そうだ。兄さんも食べます?恵方巻き」
「……話逸らしてるよね?」
「はい。逸らしてます♪いいじゃないですか。食べましょうよ。食べてくれないと無駄になっちゃいます」
「それじゃあ断れないじゃないか……」
私が笑っていて、兄さんも笑ってくれる。
「そうですね。あ、実は福豆もあるんですよ。やりませんか?兄さんには子供っぽいかもしれませんけど」
「……今、朔ちゃんが落ち込んだ理由、分かった気がする……」
兄さんの笑顔は苦笑いだけど
「ばれちゃいましたね。一緒に、やってくれますか?」
「勿論。朔ちゃんとなら楽しくなりそうだしね」
- 597 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/02/03(土) 00:44:11 ID:A5hp5lyf
- やっぱり最後には、いつもの優しい笑顔で
「はい!じゃあまず恵方巻きからです。今年の恵方は北北西なんであっちです」
その笑顔につられて私も更に笑顔がこぼれる。
「これ、本当に無言で食べなきゃいけないの?」
「はい。あっち向いたまま黙々と食べちゃってください」
「うーん……なんか陰謀を感じる」
「喋っちゃダメですって!」
「はいはい。じゃあ、いただきます」
渋々ながら無言で食べ始める兄さん。その横顔を存分に眺めながら、ずっと嫌いだった神様に、ひとつだけお願いをする。
―――どうか この幸せだけは こぼれませんように―――
――――――――――
- 598 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/02/03(土) 00:46:59 ID:A5hp5lyf
- 完全にヒロイン主観のお話です。少しはっちゃけたかった過ぎたか。
朔のイメージはうたわれるもののサクヤです―――キャラを壊し過ぎた感がありますが。
少し補完します。
朔ちゃんは「恵方は北北西」と言ってますが今年の恵方は壬の方位(北からちょっと西)、北北西だと人によっては少しずれてしまいます。
更に、「無言で食べる」なんて決まりもありません。どこの誰が始めたかは知りませんが中々面白かったので使ってみました。
最後に
なにか>>589でおかしなこと書いてしまった気がします。なんというか、葵と巴の名前、逆に書いちゃt(ry
どちらも好きということに変わりないので、ご愛嬌ということで……
- 599 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/02/04(日) 00:46:55 ID:UrR696zC
- GJ!
- 600 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/02/05(月) 08:59:50 ID:RrT7Qz6E
- >すばる先生
いいっスね、この兄妹。凄く気に入りましたw
コレほどの物を見せられちゃうとなぁ……俺、もうやる気無いなぁ……。
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