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[第六弾]妹に言われたいセリフ

301 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/05/06(土) 04:40:58 ID:N/KP1aNY
天道・・・・・・・・・・・・・・・・・ じゃなくて、天童兄妹良いですねー。今回も萌えさせてもらいました。
遊星神GJ!!

302 :天空聖界より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/05/08(月) 23:04:38 ID:w2/dnPC9
よく分からない空間。
俺は一人の女性を抱きしめていた。
「お兄ちゃん……?」
「弥生……俺は……弥生のことが……」
「え……」
「弥生のことが好きだ!!」
「お兄ちゃん……嬉しいよ……やっと……私の気持ちに気付いてくれたんだね……?」
「うん、今までゴメンな……」
「ううん。いいの……私も……お兄ちゃんのことが、大好きだから!!」
「弥生……」
「お兄ちゃん……」
接近する唇。
高鳴る胸の鼓動。
俺たちは今、一つに……
───────────────────────
「って、おい!!」
ギリギリで目が覚めた。
危ないところだった……我ながらナイスガッツ……。
「何で……俺がこんな夢を……」
俺は上半身を起こし、額にかいた嫌な汗を手でぬぐう。
すると……
「あ、お兄ちゃん。おはよう」
妹の声が聞こえる。

303 :天空聖界より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/05/08(月) 23:05:10 ID:w2/dnPC9
……何故か下のほうから。
そちらに目をやると……さっきまで俺が寝ていた辺りから少しだけ離れた位置に妹の弥生が……。
「いつのまに……」
「ん、いつもの実験」
そう言って、何だかよく分からない棒、弥生曰く魔法の杖を見せる弥生。
俺の妹、弥生は魔法使いである。
いや、魔法使いらしい。よくわからないが。
「また魔法か……?」
「うん。好きな夢を見せる魔法」
「なるほど……あの夢はお前の仕業か……」
「素敵な夢だったでしょ?」
「……あぁ、素敵過ぎて冷汗かいたよ」
「でも、さすがお兄ちゃん!精神力が強いから、途中で止められちゃったよ」
「……よかった……」
もし、俺の精神力とやらが弱かったら……と考えて、嫌な気分になる。
「ただ……私もすごい疲れたぁ……」
そう言って、布団から這い出す弥生。
弥生は、魔法使いらしく真っ黒なローブ……を纏っていてくれればよかったのだが、
何故か、フリフリ、ミニスカート、ピンク色の変な服……
俗に言う、メイド服。とは違うのだろうねぇ。
だが、もうこれも初めてのことじゃないので、この記憶は抹消。俺は何も見てないっと。
「朝からご苦労だな」
「うん。お兄ちゃんが、もっと魔法の効きやすい体質だったらラクだったのになぁ……」
「ラクって……」

304 :天空聖界より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/05/08(月) 23:05:42 ID:w2/dnPC9
あれか。
俺を操り人形にでもしようってか……よかった、この体質で。
「でも……今日は大成功かな」
「何か言ったか?」
「ううん。何も」
「そうか……よし。さぁ、朝飯食おう」
「うん」
「用意できてる?」
「うん。出来てるよ」
「……魔法は……?」
「えっと……使ってないよ?」
声が裏返ってる……分かりやすいなぁ……。
「本当は?」
「ちょっと……」
目が泳いだ……。
「その割合は?」
「えっと……九割九分くらい……」
「やめてくれよ、魔法で作った飯は美味くないんだから……」
「う、うん」
「でも、まぁ、感謝してるよ。ありがとな」
「うん!!」
眩しい笑顔を見せる弥生。
こうしてる分には普通なんだけどなぁ……。
───────────────────────

305 :天空聖界より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/05/08(月) 23:06:33 ID:w2/dnPC9
今夜は満月。
眩しいくらいの月が影を作る兄の部屋。
「今日こそチャンスなんだ。お邪魔するね、お兄ちゃん」
スヤスヤと寝息を立てる兄の布団に潜り込む弥生。
「……やーる……いりーな……ゆーす……」
弥生は、杖を降りあげ、呪文を唱えた。
杖が光を徐々に帯びる。
兄の部屋が、昼間よりも明るく照らされる。
「凄い……コレが満月の力なんだ……」
満月の夜は、魔法使いに魔力が満ちる。
弥生は、それを利用しているのだ。
「この力で……お兄ちゃんを……」
弥生がそう呟いた瞬間……
「俺をどうするって……?」
「おおおおおお、お兄ちゃん……!?」
「何だ、お前が起こしといて……」
「え……?」
「眩しいよ……」
光を発する杖を指差す兄。
「あ……」
事実に気付き、呆然とする弥生。
眠い目を擦りながら、兄がうんざりした様子で尋ねる。
「また魔法か……?」
「う、うん……ゴメン……なさい……」
「そろそろ、教えてくれないか……?弥生が何をしたいのかを……」
「ゴメンなさい……それは……言えない……」
「何で?」
「だって……恥ずかしいから……」
「恥ずかしい?」
「う、うん……」
俯いている弥生。

306 :天空聖界より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/05/08(月) 23:07:35 ID:w2/dnPC9
兄は、少しだけ考えるそぶりを見せて……
「大丈夫。俺は絶対、怒らないし、笑わないから」
弥生の肩をしっかり抱きしめながら言う。
「でも……」
「俺は魔法なんかに頼らない、弥生の言葉が聞きたいよ」
「お兄ちゃん……わかったよ……」
「うん」
「……私ね。ずっと……お兄ちゃんのことが……」

満月の夜。俺は最初で最後の魔法にかかる。
これからも、魔法のような楽しい出来事があれば良いと思う。
───────────────────────
天空大聖者様がお亡くなりになったので、急遽作った。
追悼とかそういうわけじゃないけど、なんとなく今日中に書かなきゃいけない気がした。

まぁ、構想含め、二時間くらいしかかけてないので、それなりの結果かなと。
きっと二度と書かないな、このキャラは……。

307 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2006/05/09(火) 13:09:09 ID:JfdfeHzo
つぼった…(*´Д`)GJです〜

曽我町子さんの話は急で俺もびっくりです。
ご冥福をお祈りします(´-人-`)ナムナム

308 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/05/12(金) 22:18:02 ID:4TteQZUz
天空大聖者様とわ?

309 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2006/05/13(土) 17:02:00 ID:gBNPZKb1
>>308
数々の特撮番組の女王役として活躍した女優の曽我町子さんが5月7日の未明、自宅マンションで死去した。
遺作となる『魔法戦隊マジレンジャー』(2005年)では天空大聖者マジエル役 という正義側の女王を演じて、話題になったばかりだった。


310 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/05/13(土) 22:50:02 ID:B5nMNhL/
いやいや、何か湿っぽい雰囲気にしちゃって悪いねぇ。
何か悪いんで、急遽ツンデレ妹を。
やっぱツンデレって書くの苦手だなぁ……
───────────────────────
いつもの下駄箱を通り、いつもの校門へ。
学校は嫌いじゃないし、帰って何かするわけでもないが、やはりこの開放感は嬉しい。
足取りも軽く、校門の先に目をやると
一人の少女が、仁王立ちで、こちらを眺めている。
もとい、睨んでいる。
「あれは……」
俺はその少女に近寄り、
「翼じゃないか。どうかしたのか?」
「べ、別になんでもないわよ」
「もしかして、待っててくれた?」
「ばばばばば、バカいわないでよ!だ、誰が、お兄ちゃんなんか!」
「だよなぁ……」
理不尽に怒られて、俺も勢いを失う。
このとき、何だか悲しげな顔をした翼の顔を、俺は見逃していた。
「何か知らんが……頑張ってくれ」
俺は、ヒラヒラと手を振りながら、帰宅路を歩き出すと……
「で、でも……お兄ちゃんが、どうしてもって言うなら……そういうことにしてあげても良いけど……?」
「お構いなく。じゃ、お先に」
「な……何よ、その態度……私が……お兄ちゃんのためを思って……」
「何だよ?そんないきなり……」
「な、何でもないわよ!何だっていいでしょ!?」
「いいけど……」
「じゃあ、とっとと歩きなさいよ」
「は?」
「帰るんでしょ?」
「はい……」
何で妹にこうも言われるのか……。

311 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/05/13(土) 22:50:35 ID:B5nMNhL/
少し情けない気分で歩き出す。
しばらく何も言わず歩いていると……
「?」
気のせいでなければ、ジワリジワリと翼が寄ってきてる……。
何だ……何をする気だ……?
ちょっと恐怖を感じながら、翼の顔を見てみると……
「なななななな、何見てるのよっ!」
「何、といわれても……」
「ほ、ホント、やめてよね!き、気になるんだから!」
「気をつけます……」
顔を真っ赤にして怒る翼に、とりあえず頭を下げ、
少しだけ翼の接近を意識しつつ、ひたすら歩く歩く。
そのまま数分が経過。
「きゃっ!!」
後方でなにやら甲高い声。
思わず振り返ると……
素敵なタイミングで、倒れこんでくる翼。
それを胸で受けととめる俺。
……しばし、時が止まる。
「な……なに……するのよ……」
何か凄い真っ赤な顔で、文句を言ってくる翼。
「いや、お前がコケたんだろ」
呆れながら、答える俺。
「……つーか、何で顔赤いのさ?」
「ななななななななっ!?赤くなんて無いわよ!全然!」
「そうか?」
いや、どう見ても赤いですけど……
もうワケが分からなくなってきたので、いつまでも動こうとしない翼を起こそうとすると……

312 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/05/13(土) 22:51:07 ID:B5nMNhL/
「ちょ、ちょっと動かないでよ!」
「え……?」
「もう少しだけ……こうしていたいよ……」
「は……?」
「か、勘違いしないでよねっ!ちょ、ちょっと足痛めちゃっただけなんだからっ!」
「大丈夫か?」
「大丈夫よっ!」
「いや、でも……無理はよくない。おぶってやるよ」
「え……!?」
「嫌ならいいよ。痛くない程度に、ゆっくり、帰るんだな」
「嫌よ!嫌だけど……今日は……お兄ちゃんの顔を立ててあげるわ……」
顔って……
何かワケが分からないが、とりあえず、妹をおぶって歩き出す。
「ねぇ、お兄ちゃん」
翼が背中で囁くように言う。
「ん?」
「明日も……一緒に帰ろうね」
「は……?」
「ちちちちちちちち、違うのよ!ほら、最近物騒だから!」
「あぁ……そういうこと。分かったよ、翼。俺が翼を守るよ」
「お兄ちゃん……」
うっとりするかのような気の抜けた声……。
まさか、呆れてらっしゃる……?
「じゃ、なくって!何でそんな素敵……じゃなくて恥ずかしいセリフが言えるのよ!」
「いや……カッコいいかなって思って」
「こここここ、これっぽちもカッコいいなんて思ってないんだからね!!」
「分かってるよ……」

妹に怒鳴られながら進む。
何故か……悪い気はしないのであるが。
───────────────────────

313 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/05/13(土) 22:57:30 ID:B5nMNhL/
うわー、我ながら、適当だー。
俺の書く兄さんは、あんまりツンデレと絡ませるのに向いてないなぁ。

夢ノ又夢先生まだかなー。

314 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/05/14(日) 10:12:56 ID:HW1fxA8D
gj!姉スレの方もどうか…

315 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/05/16(火) 02:52:18 ID:rDrl6syh
>>309
ありがd

316 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/05/23(火) 01:50:29 ID:kJ5ki66U
保守

317 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/05/23(火) 21:44:58 ID:9P3UyKD6
「う〜ん、喫茶店か・・・ちょっと興味あるんだが、後が怖いし」

片手にしたパンフレットの向こうに仁王立ちした巴の姿が浮かび上がり身震いを一つする。
メイドさん目当てに喫茶店に行きました、なんて事がバレたら説教二時間では済まされないだろう。
注目は双子の美人姉妹との話だがやはり誘惑も鬼には敵わない。携帯を取り出し、時間を見遣れば巴の舞台まで後、一時間。

「機嫌直しの為に差し入れでも持ってくか・・・」

屋台でお菓子を適当に見繕って体育館の裏手へと足を運ぶ。・・・なんか、館内が妙に甘ったるい空気で満ちてるんだが、何かあったのか?

「すみません、ここからは関係者以外立ち入り禁止です・・・って先輩じゃないですか」
「よ、陣中見舞いに来たぞ」
「ありがとうございます!!流石は先輩、気が利きますね」

バスケット一杯に詰め込まれたお菓子を前に顔を綻ばせる女の子、顔パスな辺りに自分の知名度に少し嬉しくなる。
とはいってもやはり後輩連中の間では巴のお兄さんとして有名なだけな訳だが。
余談だが時々巴をお姉さまなんて呼ぶ子がいるが決して巴さんのお兄様なんて呼ばれた事は無い。

「毎回、お兄さんなんだよな、一度くらい呼ばれてみたいもんだが」
「はい?」
「あ、いやこっちの話、それより巴はいるかな?」
「巴さん、ですか・・・」

それ以上何を言うまでも無く視線が巴の存在を物語っている。男子はおろか女子の羨望と憧れの視線を一点に受ける眩いばかりのその姿。
巴の周りだけ視界が澄んでいるかの様にひんやりとした静けさが漂う。荘厳な空気と衣装を身に纏い瞳を閉じて瞑想する巴。
これは確かに見紛う事無く王子様だ・・・

318 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/05/23(火) 21:48:07 ID:9P3UyKD6
「すごいな、あれは白馬に乗った貴公子って感じだな」
「はい、ほんとに素敵・・・」

ほぅ、と熱の篭った溜め息を零す女の子に俺は思わず苦笑いが零れる。うちの妹はこうして今回も純真な乙女を虜にしていくのだった。
しかし、こうしていても埒があかない訳で・・・
しかたなく果てしない妄想の旅に旅立った女の子を現実に引き戻すべく目の前で手を振ってみせる。

「お〜い、帰ってきてくれ」
「・・・はっ!?ご、ごめんなさい、つい」
「それはいいから、巴に俺が来た事だけ伝えといてくれるかな」
「会っていかないんですか?」
「いや、集中してるとこ邪魔しちゃ悪いしさ」

というよりこの空間を断ち切る根性は俺には無い。
本音を言えば巴がどうこうというより夢から覚めた人々の視線が一斉にこちらに向く様な事を絶対に避けたい。
前後に振っていた手を軽く上げてそのまま俺は立ち去っていく。去り際は潔く、やはり男はこうでなくては。
・・・みんな巴に夢中で誰も気には留めていないけど。
なんとなくバツの悪いままその場を後にする俺、舞台開演にはまだ時間がある、適当に時間潰しを考えながらトボトボと牛歩。
ほんの少し頭に浮かぶメイド服、自分でも呆れてしまうが何気に未練があるらしい。

「双子の姉妹っていうと石川姉妹の事だよな、あの二人のメイド服か・・・うぐっ!?」

後ろから口を塞がれる俺、なんか他人様に恨まれる様な事でもしたろうか?
ああ、そういや一人いたっけか、恨むというより怒ってる人が。ゲーム開始時にいきなりラスボスにエンカウントしたかの様な唐突さ。
振り返ればやっぱりそこにいるそこにいない筈の妹様。

319 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/05/23(火) 21:50:59 ID:9P3UyKD6
「と、巴・・・お前どうして!?むぐっ」
「しっ!!いいからこっちに」

有無を言わさずに銀行強盗と人質みたいな体勢で体育館裏に連行される。
人気が無い事を確認してから俺に真っ直ぐ向き直る巴、やっぱり頭を撃ち抜かれるのかもしれない。
まさかとは思うがここで説教を始めても可笑しくない不穏な空気。半分諦め、半分ビビりながら固唾を呑んで巴の言葉を待つ。

「・・・お兄ちゃん」
「は、はい、なんでしょう?」

ただならぬ巴の表情に背筋は伸びきり、つい敬語になってしまう。そんな俺を巴は気にも留めずに重々しく口を開く。

「来てくれたのなら、どうして声を掛けてくれなかったの?・・・イジワルだよ」
「は?」
「ボクはお兄ちゃんをずっと待ってたのに・・・それなのに黙って行っちゃうなんて・・・」
「あ、ああ・・・そっちの事か、俺はまたてっきり」
「てっきり?」
「い、いや!!なんか集中してたみたいだったからさ、邪魔しちゃ悪いと思って」

予想外の非難に余計な事を口走りそうになる俺、わざわざ蒸し返す必要も無いので軽く流してしまう。
これ以上、話がややこしくなれば立場が悪くなる一方だ。

「気を遣って声を掛けなかったんだ、別にワザとじゃないって」
「そうだね、気を遣って屋台を手伝って気を遣って差し入れをして・・・気を遣って喫茶店へ」
「・・・あー、ひょっとして・・・聞こえてた?」
「うん、ばっちりと・・・可愛いもんね、石川さん達」

表情は変えないもののピクリとこめかみをヒクつかせて俺を見詰め続ける。
・・・非常にマズイ、完全に手の内は暴かれている。こうなっては隠すだけ無駄だ、ならば素直に認める他ない。


320 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/05/23(火) 21:55:24 ID:9P3UyKD6
「・・・正直言えば気にはなってたけど、どちらにしても行ってはなかったと思う」
「どうして?」
「誰かさんの説教喰らう事になるから」
「うん、正座で説教三時間かな・・・あ、四時間かも」
「・・・今、この状況でそれを言うのは立派な脅迫だぞ」
「そうかな?ボクはお兄ちゃんに本心を言ってるまでなんだけど」
「・・・鬼」
「鬼にしたのは誰?」
「・・・俺?」
「なんで疑問形なの、他に誰もいないのに」
「「・・・」」

鏡でも凝視するかの様にジッと互いの目を見詰め合う。他人様とは絶対に行われない大変せせこましい兄妹の戦。
この状況は高架下でのヤンキーの決闘に近い、確実に目を逸らした方の負けだ。
いや、それ以前に勝ち負けは決まっているのだが、巴の澄んだ瞳に見詰められてはどんな頑固者も根を上げるだろう。
ついでに虜にされるだろう。がっくりと肩を落とし大きくうなだれて溜め息の後、根負けした俺が口を開く。

「・・・あのな、巴が思ってる程、俺は不真面目じゃあない」
「分かってるけど・・・嫌なの」
「何が?」
「同じクラスの人達と屋台で楽しそうにしてるのを見た時、悲しかったんだ・・・ボクの事なんて何も考えてくれていないんじゃないかって」
「ちょっと待て、あれは無理矢理引き込まれたんだって」
「それも分かってる、お兄ちゃんの善意なのは・・・」
「・・・だったら、どうして?」
「お兄ちゃんが真っ直ぐな人なのはボクが一番知ってる、でも・・・それが痛い時だってあるんだよ」

まるで自分に言い聞かせる様な巴の言葉。痛みを堪えているのか、落ち込んでいるのか、なんともいえない不器用な笑顔を俺に見せる。
笑顔の奥で点と線が繋がり見えてくる感情、今の巴の表情を人は皆こう呼ぶ、自嘲、と。
憂いを帯びたこの姿を一枚の絵に出来たのなら誰も値の付けられない名画になるに違いない、そんな場違いな考えが頭を過ぎる。
何故ヤンキーの決闘からこんな事になったのかは未だに分からないが、俺がすべき事はその絵画に命を吹き込む手伝いをしてやる事。
まるで子供をあやす様にそっと巴の額を撫で上げる。

321 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/05/23(火) 21:58:24 ID:9P3UyKD6
「・・・ごめんな」
「・・・分かってて謝ってる?」
「分からない、でも結果として俺が巴を困らせた事は分かる、大事なのはそこだろ」
「違うよ・・・痛いのは頭じゃなくて・・・ここ」
「いっ!?」

前髪を梳いていた俺の手を両手でそっと包み込み、心臓の音が一番聞こえる左胸へと導く。
あまりにナチュラルな仕草だったので抵抗する間も無くなすがままな俺、近くに鏡でもあれば相当間抜けな赤い顔が映っていたに違い無い。

「分かる?ボクの鼓動、トクン、トクンって」
「あ、ああ・・・うん、かなり早い・・・って事は緊張してるのか」
「やっと気付いてくれた、そう、緊張してるんだよ・・・すごく」

緊張という言葉にはかけ離れた巴の穏やかさ。でも、俺の手の平の奥で確かに鼓動は乱雑なリズムを奏でている。
鼓動に集中していた意識が不意に途切れる、再び視線が重なる。瞳の奥に見えるのは緊張とは少し違った揺らめき、それは・・・

「緊張というより不安なんじゃないのか?顔に書いてある、不安で仕方無いってな」
「・・・どうして不安なのか・・・分かる?」
「問題はそこなんだよ、舞台に緊張するなんて無いと思うし・・・何だろうな」
「ボクが不安なのはお兄ちゃん」
「俺?俺の何が不安なんだ?」
「ホントにボクのこと、見ててくれるのかな・・・お兄ちゃんが見に来てくれなかったらどうしようって」
「やれやれ、巴は俺がそんなに薄情な男だと思ってたのか?そんな訳無い」
「・・・絶対?」
「ああ、俺は冗談は言うけど嘘はつかない・・・それを知ってるのも巴だろ」
「うん、ボクが・・・誰よりも分かってる」

添えられた両手を優しく解いてもう一度額を撫で上げてやる。
くすぐったそうに目を細める巴、学校でこんな子供みたいに純真な顔を見せるのはごく稀な事。
いや、髪を梳く俺の手に擦り寄ってくる様な姿は子供といより子猫に近い、それは心から安心しきっている何よりの証拠。
何万回の言葉より一つの温もり、それが巴を安心させてやれる鍵だと俺は手の平に少しだけ力を籠めた。

322 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/05/23(火) 22:03:05 ID:9P3UyKD6
「さぁ・・・そろそろ行った方がいい、あまり遅れるとみんな心配するぞ」
「あ、お兄ちゃん、その前に約束して欲しいんだ」
「はいはい、聞きましょう」
「・・・ボクはお兄ちゃんの為にガンバルから」
「だ、だから俺はそんな事一度も」
「ううん、ボクがそう思いたいの・・・それだけで今度のお芝居も乗り越えられるから・・・だから」
「・・・」
「だから・・・ボクの事、ちゃんと見ていてね・・・余所見なんてダメだよ、ね?」

白く細い指先を胸の前で組んで、眩い程に弾ける笑顔を見せる。
本人は意識しないでやっているのだろうが上目遣いなその笑顔が光の洪水みたいに瞬きしても瞼の裏に消えない。
コクコクと上下に頷く事しか出来ない俺を満足そうに見詰めて巴は音も立てず踵を返す。
艶やかな黒髪を風に靡かせる後ろ姿には、もはやどこにも迷いはなかった。学校でのいつもの巴の姿がそこにある。
改めて思うのだが実際、今の格好はともかく普段の校内での巴もまぎれもなく王子様だ。
まぁ、それはともかく立ち直る手助けは出来たみたいだな

「・・・お兄ちゃん」
「・・・見てるよ」
「うん・・・ふふっ、分かってたけど再確認、行ってきます」

一度だけ振り向いて俺の目に甘えてみせる巴、言うまでも無く王子様とは別の瞳で。
・・・王子と子猫って背中合わせのカードだったりするんだろうか?

「それよりも、だ」

うちの巴さんはどさくさに紛れてまた凄い事をやらかしてはいなかったろうか。
ずっと右手に残っているゴム鞠みたいな柔らかでしっかりとした弾力、掌を開いては閉じ、また開いては閉じ。
体育館の裏口へ消えていく巴を見送りつつ同じ事を繰り返す手の平をじっと見詰める。

「・・・着痩せするタイプだったのか巴は・・・じゃなくて!!・・・はぁ、俺も行くとするか」

右手をぐっとポケットに仕舞い込み歩き出した俺の前で、体育館は俄かに騒がしさを増していた。

323 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/05/23(火) 22:27:31 ID:hogOZUpJ
夢ノ又夢先生今回もよかったです。早く続きが読みたい、私生活に影響が出ない程度に頑張ってください

324 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/05/23(火) 22:28:27 ID:9P3UyKD6
別の話を八割書いてた途中、ふと文化祭話がまだ終わっていない事に気付く。
お話はもう少し続きます。
>天空大聖者様
色物の中にあって褪せる事の無い存在感、また一人、味のある役者さんがこの世を去ってしまわれましたね。
天本英世さんが亡くなられた時もショックだったなぁ・・・
>天童兄妹
いや、GJ!!としか言いようがありません!!
結構、キツイ嫉妬の筈なのにやたら葵ちゃんが可愛い!!
巴もこれ位、可愛く書ければなぁ・・・
>魔法少女
これだけの話を二時間で書き上げるとは、一月かかっても萌えないssしか書けない者にとって驚異です。
というか、これで終わりなんて勿体と思いますよ。
>ツンデレ妹さん
引っ付いてからの反応が可愛い過ぎる!!
これも続きが楽しみな妹さんです。

325 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/05/24(水) 18:32:17 ID:lmBP+7u7
すげー!!さすが先生だぁー!!
俺もこれぐらい書けるようになりたいなー。

つーか、今度は石川姉妹登場ですか。
嬉しいですね、やっぱり。

326 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/05/24(水) 22:39:51 ID:lmBP+7u7
好きな人を待ってる時間は楽しい。
このドキドキ感とか、ワクワクする感じとか。
どんな顔をしてあの人に会えば良いんだろう。とか、考えるのも好きなんだ。
そんな幸せな時間なのに……
「あ、あの……葵……じゃなくて、天童さん」
知らない人に声をかけられる。
まぁ……慣れてるんだけど。
「えっと……何、かな?」
「よかったら、俺と遊びに行かない……?」
この人には悪いけど、一切興味が無い。
……っていうか、茶髪、ピアスで、制服を崩して着てる。
古い考えなのかもしれないけど、さすがに初対面で、そんな人を信用する気には私はなれないな。
「あ、ゴメンね。お兄ちゃんを待たなくちゃいけないから」
「じゃ、お兄さんが来てから……」
このしつこさは……塾の勧誘レベルだなぁ……。
なんて思いながら、話を聞き流していると。
「あ……」
兄が私の脇を足早に通り過ぎた。
「どうしたの?」
なおも話しかけてくる知らない人。
「ゴメンね。急いでるから」
私は最低限の笑顔を見せると、お兄ちゃんを追って走り出す。
……でも、少し悪いことしたかな。
ま、いいか。
───────────────────────

327 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/05/24(水) 22:40:25 ID:lmBP+7u7
見慣れた道。
最近は寄り道することも多いせいか、
この通学路も久しぶりのような気がする。
そもそも、一人で歩くのはここ最近なかった気が……
そんなことを考えていると……。
「お兄ちゃん」
何者かに首根っこを掴まれる。
妙に優しい声が怖い……。
「あ、葵……」
俺は振り向けず、そのまま気をつけの姿勢で答える。
「私はお兄ちゃんを待ってたのに、先に行っちゃうなんて酷いんじゃない?」
「いや……だって、誰かと話してただろ?」
「だからって……待っててくれてもよかったんじゃないの?」
「でも、何か深刻そうだったし……邪魔しちゃ悪いかなと思ったから」
「……邪魔して欲しかったのに……」
葵の手の力が弱まる。
その隙に振り返り、
「今何て?」
「ううん、独り言!!」
「さいですか……」
「とにかく!!今日のところは許すけど、次からはちゃんと待っててよね!?」
「……覚えとく」
「お兄ちゃん。私としては、もうちょっと前向きな発言が聞きたいなー?」
「はい。待ちます……」
「うんうん。それでいいよ」
満足そうに何度も頷く葵。

328 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/05/24(水) 22:40:57 ID:lmBP+7u7
「……でも、俺と一緒に帰らなくちゃいけないのか?」
素朴な疑問。
「え……?」
「いや、まぁ……防犯とか、そういう意味では良いと思うんだ。
 でも、それなら俺じゃなくても良いだろ?だから、葵は何で俺にこだわるのかなって」
「うーん……」
その細い顎に手を当て、少し考える葵。
しばらくして、
「まぁ、お兄ちゃんが一番安心だから、かな」
と、微笑みと共に答えた。
「そうか?」
「うん。そうそう」
「でも、下手したら、葵のほうが俺より強いかもしれないけどな」
「まさか。そんなことないよー」
「この前、色んな部の人に誘われて困ってるって言ってなかったっけ?」
俺がそういうと、葵は少し驚いたような表情を見せる。
そして少し俯き加減で、
「……何でそういうことは覚えてるかなぁ……」
「そりゃ覚えてるって。一応、俺も何とかしてあげたいって思ってるし」
ちょっと照れくさいことを言ってしまったと後悔しながら、
誤魔化すための微笑を葵に向けた。
しかし、当の葵は驚きの表情を見せ、
「聞こえてたんだ……」
何か呟いた。
「え?」
「ううん。何でもないの!!」
「そうか……」
「それより!!」
クルッと回転して、俺の前に立つ葵。

329 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/05/24(水) 22:41:36 ID:lmBP+7u7
「家まで競走してみない?」
小首を傾げて、俺の顔を覗き込む。
「は?」
「負けた人は、勝った人の言うことを聞く。どう?」
「……俺が負けるに決まってるじゃないか」
「わかんないよー?じゃ、よーい……スタート!!」
一気に駆け出す葵。
そして、数メートル先で振り返って、
「はやく!!すごいこと命令しちゃうぞー?」
俺に向かって指を刺す葵。
「ちょ……待てよ!!」
「待たないよー!」
また駆け出した葵。
そんな葵を放っておくわけにもいかず、俺もすぐに駆け出した。
───────────────────────
「はぁ……はぁ……」
「ふぅ……」
玄関前で、息を整える二人。
俺は地面に座り込んで、力なく天を仰いでいると。
「はぁ……さすがお兄ちゃんだね……負けちゃった……あははっ!!」
学校では見せないような明るい笑顔で、大きな口を開けて笑う。
「手加減してくれたのか?」
「ううん。してないよ?」
「まさか。俺が葵に勝てるわけ……」
「お兄ちゃん」
突然、俺の膝の上に座り、俺の目をじっと見つめる葵。
「な……何だよ……?」
「私だって……女の子なんだよ……?」
「知ってるよ……」

330 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/05/24(水) 22:42:19 ID:lmBP+7u7
「でも……分かってないでしょ?」
「え?」
「凄い凄いって言われたって……やっぱり体力じゃ女の子は男の子には敵わないんだよ」
「そんなことない……」
「そうじゃないの。勝ちたいなんて思わない……その代わり……」
大きく息を吸い込む葵。
俺も唾を飲み込む。
「私を女の子として見て欲しいの……」
「……」
何だか真剣そのものな葵の顔を前に少し固まる俺。
そして、考えた末に出た言葉は
「……今でも見てるよ」
「えっ!?」
「一応、女の子だからって……気を使ってるつもりなんだけど……」
ポカーンとしてる葵。
もしかして……スベった……?
「あ、葵……?」
「はぁ……」
ため息……。
「まぁ、お兄ちゃんらしいといえばお兄ちゃんらしいかぁ……」
「え……?」
「疲れた……」
ヨロヨロと家の中に入っていく葵。
イマイチ状況がつかめず、また俺は天を見るのだった。
───────────────────────
まぁ、先生に対抗心を燃やしたというか。刺激されたと言うか……。
返り討ちどころか軽くあしらわれた感じですね。

ということで、天童兄妹何気に第三弾。
多分、次こそ天童語録が出る……。

331 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/05/25(木) 00:51:03 ID:pZrjA+Q4
夢ノ又夢さんと遊星さんダブルできたわぁ(η‘∀‘)η

乙です!GJです!!

332 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/05/30(火) 18:27:54 ID:xyMBM1AV
【町田市】兄妹の婚姻届を誤って受理【お兄ちゃん大好き】
http://news18.2ch.net/test/read.cgi/news7/1148466691/

333 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/06/04(日) 23:21:14 ID:poml9Ru4
「へへー。買っちゃったー♪」
店員さんに見送られながら、お店を後にする。
お店から出るとすぐに、鞄の中に入れた小さな箱を確認。
これが、お兄ちゃんと仲良くなる秘密兵器。
なかなか入手困難らしいけど、意外と簡単に買うことが出来た。
やっぱり運命は二人に味方してくれてるみたい。
「お兄ちゃんとおそろい♪」
まぁ、当然色違いになるんだろうけど、やっぱり好きな人と同じものが持てるのは幸せだ。
鞄ごと秘密兵器を抱きしめる。
「お願いね!!」
秘密兵器にしっかりと想いを込めて、私はお兄ちゃんの待つ我が家へと全力で駆け出した。
───────────────────────
コンコン。
俺の部屋のドアを優しく叩く。
「誰?」
ドアの向こうから聞こえる、今一番聞きたい人の声。
「お兄ちゃん、入っても良い?」
「葵か。どうぞ」
「うん。おじゃまします」
ドアを開け、割とミステリーなゾーン。
お兄ちゃんの部屋に入る。
「どうした?」
お兄ちゃんが、読んでいた本をパタンと閉じて、私に尋ねる。
「ねぇ、お兄ちゃん」
「何だ?」
「私、お兄ちゃんに見せたいものがあるんだ」
「見せたいもの?」
「うん。当ててみて」
「いや……無理だろ」
「適当でいいから、ね?」
「んー……」
お兄ちゃんは少し考えてから、

334 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/06/04(日) 23:21:49 ID:poml9Ru4
「新しいバッグとか財布とか?」
「残念。お兄ちゃんも持ってるものだよー」
「俺の……持ってる……」
考えてる考えてる♪
真剣になってくれるなんて、嬉しいな。
「ダメだ、余計分からん……」
「しょーがないなぁー。じゃーん!!」
「ゲーム機……?」
「そう。お兄ちゃんが持ってたから、私も欲しくなっちゃった」
「へぇ。で、ソフトは何を買ったんだ?」
え、ソフト……?
「ソフトって……?柔らかい……?」
「いや、そうじゃなくて……ゲームするためには必要って言うか……」
「えっ!?それがなくちゃ、ゲームできないのっ!?」
知らなかった……。
私、ゲームなんて全然しないし……。
下調べが足りなかったぁ……。
「まぁ……そうだな」
「なんだ……そうなのか……」
思わず肩を落としてしまう。
策士策に溺れるってことかなぁ……。
「そんなにゲームがやりたいなら、俺のソフト、貸してあげるよ?」
「でも、一人でしか出来ないんでしょ?」
「まぁ、そうだけど……何か?」
「私は……二人で出来るゲームがやりたいな」
「んー、そうか……じゃあ、買いに行くか?」
「え?」
「二人で出来るやつを」

335 :遊星より愛を込めて ◆45KgZeCOYA :2006/06/04(日) 23:22:55 ID:Mis7wYTv
ちんこ花火たん物語外伝 「レニ・イン・ナイトメア」 
 
 第1話 「だいすきなおにいちゃん」

カンナのちんこの魅力は語るまでもなく「男らしさ」の一言に尽きるでしょう。
レニの腕ほどもある超ビッグな肉棒は血管がビンビンに浮き上がっていて、
ゴツゴツとした実に凶悪な肉棒です。
レニたんはよくカンナに押さえ込まれて強制フェラチオをさせられるので、
レニたんのアゴはフェラチオをする度に外れてますw
もう何百回もカンナに強制フェラチオをさせられてアゴをはずしているので、
レニたんのアゴはすぐに外れてしまうクセが付いてしまいました。
だからレニたんはカンナを見ると顔面蒼白になってガタガタと震えます。
しかし、そんなレニたんも花火たんのことは大好き。
花火たんはカンナに散々強制フェラさせられてアゴが外れて
痛みに耐えているレニたんの事を優しくいたわり、手当てしてあげます。
レニたんに膝枕をしてあげて、優しく慈しむように髪をそっと撫でてあげて
心を落ち着かせてあげます。
さっきまでのカンナの荒々しさと正反対の花火たんの優しさに、
レニたんはお姉ちゃんに甘えるように花火たんに心を預けます。
そして、花火たんはそっとレニたんのチャックを下ろします。
ビキニパンツをずらすと、仮性包茎の可愛いレニたんのちんこがこんにちは。
レニたんの小粒なちんこを花火たんは指でやさしくそっとつまむとゆっくりとしごき始めます。
レニたんは「あっ、あっ・・・」と悶えて嬌声を上げます。
やがてレニたんは射精すると、「ありがとう花火お兄ちゃん、大好き!」と言って、
花火たんにキスすると、満面の笑みを見せます。



336 :遊星より愛を込めて ◆45KgZeCOYA :2006/06/04(日) 23:23:35 ID:Mis7wYTv
ちんこ花火たん物語外伝 「レニ・イン・ナイトメア」 
 
 第2話 「おわらないよるのはじまり」

花火たんに優しくされて心底明るい笑顔を見せるレニたんの事を、
カンナは柱の陰からじっと見つめていました。
自分にはあんな笑顔を絶対に見せないレニたんの事を、カンナはもっといじめたくなったのです。

その日、カンナはレニたんの事を深夜に自室に呼び出しました。
既にレニたんはどんなに酷い事をされるのかと、恐怖に真っ青になってガチガチと奥歯を鳴らしています。
カンナは開口一番レニたんにズボンを脱げと命令しました。
レニたんが震える手つきでズボンを下ろすと、やおら後ろに振り向かせ小ぶりのビキニパンツを
一気にズリおろしました。
「ひっ・・・」と小さな悲鳴がレニたんの口から漏れ、カンナは不敵にニヤリと笑います。
両手でレニの小さな臀部を割り開き、柔らかなアナルを指で弄ぶと、カンナはズボンのファスナーを
下ろし、ビッグバズーカ級の肉棒をさらけ出しました。
レニの奥歯が一層激しくガチガチと打ち鳴らされ、冷たい部屋に鳴り響きます。
「た・・・助けて、 ね、カンナ・・・」震えながらレニはか細い声で懇願しました。
しかし「カンナ様、だ!」と言い放つと、ローションも塗らずに子供の腕ほどもある肉棒を
レニのアナルに一気にぶち込みました。
「ぎゃあぁぁぁぁ〜ッッッ・・・」断末魔に近い悲鳴がレニの口から漏れ、さらに口からは泡まで吹きました。
乾いた肉棒がレニの腸内粘膜を痛めつけ、ひきつらせます。
カンナはレニの髪を掴み、激しく引き寄せては突き放し、渾身のピストンをレニのアナルに叩き付けます。
並みの男の子ならばカンナの肉棒をいきなり受けたならアナルは裂け、死亡するかもしれません。
しかし、レニたんはカンナに何百回となくアナルを蹂躙され、開発されきっていました。
超一級の男娼であるレニたんは段々と腸内が濡れて来て、最初の激痛を伴うピストンも
やがて快楽を伴うピストンに変化してきていました。
「うっ、あっあっ・・・んっ」レニたんは世界で一番嫌いなカンナに犯され、世界で一番の快楽を感じています。



337 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/06/04(日) 23:23:44 ID:poml9Ru4
二人で……買いに……。
え……もしかして、それって……デートっ!?
「う……うん!!行く、行きたい!!」
「じゃあ……行こうか」
「うん!!」
デート……初めてのデート……。
嬉しいなぁ〜っ!!
思わぬ幸運に胸を躍らせる。
ま……買いに行くのはゲーム、だけどね……。
───────────────────────
「あ、これ、CMで見たことあるよ」
「あぁ、やってたな」
「これ、二人で出来るの?」
「うーん、出来るみたいだけど……出来ることは、少なそうだ」
「そうかー。それは困るなぁ」
何だかロマンチックとは程遠い会話……。
ま、こういう気取らないのも好きだけどね。
「うーん……なかなか決まらないね?」
「そうだなぁ……」
「そういえばさ……」
「ん?」
「私、お兄ちゃんのやりたいゲームが聞きたいな」
「え?」
「ほら。さっきから、お兄ちゃん、アドバイスはくれるけど、これがいい。とかは言ってくれないでしょ?」
「でも……」
「まぁまぁ、参考にするだけだから」
「そうか……それなら……」
ゲームがずらりと並んだ棚の前で、顎に手を当てて考えるお兄ちゃん。
そして……
「コレ……かな」

338 :遊星より愛を込めて ◆45KgZeCOYA :2006/06/04(日) 23:24:05 ID:Mis7wYTv
ちんこ花火たん物語外伝 「レニ・イン・ナイトメア」 
 
 第3話 「いましめのにくのかたまり」

既にレニたんのちんこは屹立していました。
カンナの巨大な肉棒をお腹の真ん中辺りまで挿入され、透明な淫液を鈴口からポタリポタリと
溢れさせています。
カンナはレニたんの透明な蜜を指で掬い取るとレニたんの口元へ持って行きレニ自身に
淫液をなめさせました。
自分の淫液を舐め、レニの勃起は更に硬く大きくなりました。
仮性包茎ながらも一生懸命に外に出ようとしている亀頭がとても愛らしく、
まさにレニたんの分身と言うに相応しい愛らしさです。
完全に勃起したのを見るとカンナはアナルファックを止め、レニたんをソファに仰向けに寝かしました。
そして逆立ちのように頭を地面に向けさせ、両手でレニたんの頭を掴むと、腸液がしたたる肉棒を
レニたんの口内に押しやりました。
一気に肉棒の根元まで押し込みます。
「ゴキィッ」とレニたんのアゴの骨が外れる音が響き渡り、ズルズルと肉棒はレニたんの口内に収まっていきます。
レニたんの口内には当然収まり切らず、のどの奥深くを通り越し、食道の辺りまで肉棒は届きました。
カンナはガニ股になり中腰で一生懸命にレニの口を犯します。
逆さになっている為、唾液や淫液が鼻に入り、レニたんは呼吸が出来ない為窒息寸前になりました。
痙攣し、白目をむき、口から泡を吹きながら、強制フェラは続きます。
レニたんの意識が遠くなり、もう駄目だと思った刹那、カンナは肉棒を抜きました。
死んでしまったら、レニを犯す事が出来なくなるのでカンナはギリギリのラインを熟知しているのです。


339 :遊星より愛を込めて ◆45KgZeCOYA :2006/06/04(日) 23:24:39 ID:Mis7wYTv
ちんこ花火たん物語外伝 「レニ・イン・ナイトメア」 
 
 第4話 「にくしみとあいとかなしみ」

 死の一歩手前までの激しい強制フェラが終わり、レニたんは意識朦朧の中、
花火たんの事を想っていました。

− だいすきなお兄ちゃん、花火おにいちゃん。 苦しいよ・・・
  なぜ? なぜボクこんなに酷い目に遭うの? お兄ちゃんの柔らかい膝枕で甘えたいよ。
  温かいお兄ちゃんの胸で眠りたいよ。 助けて、助けて・・・  −

現実逃避にも似た空想は、カンナの暴力でかき消されました。
カンナは焦点の合っていないレニたんの顔に唾を吐きかけると、気付けに一発ビンタを食らわせました。
華奢なレニたんの体は、重力がまるで無い様に軽く中に舞いました。
口が切れたのかレニたんは血を吐きながらむせて、また鼻血も大量に流していました。
「オラオラ、休んでいいなんて言ってねーぞ! とっととご奉仕しろ、ご奉仕!」
カンナは今さっき死にかけたレニたんにまたもや強制フェラを始めました。
口が切れ、鼻血を流しながらレニたんは無理やりに口内を犯されます。
強制フェラをやりながらカンナはレニの顔にビンタをし、唾を吐き続けました。

レニたんは限界が来ていました。 
どうせ死ぬのなら、最後にカンナの肉棒を噛み、一矢報いたいと思いました。


340 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/06/04(日) 23:24:44 ID:poml9Ru4
お兄ちゃんが手に取ったのは、なんだかほのぼのしたパッケージのゲーム。
「これ……?可愛いゲーム選ぶんだね?」
「まぁね」
「どんなゲーム?」
「うーん……町に住んで、自分で好きなように生活するんだ
 それで、自分の町を、いろんな人に見せたり出来るんだよ」
「変わったゲームだね?」
「そうだね。ま、俺は、前から気になってたんだけどさ。一人で始めるのもな、って感じだったから」
「そっか……」
楽しそうなお兄ちゃん。
これだけでも、ゲーム機を買った価値はあるんじゃないかって気がする。
「お兄ちゃん、私、これにするよ」
「そうか?別に俺の意見なんて聞かなくても良いんだぞ?」
「ううん。そのかわり、お兄ちゃんも買って?」
「俺も?」
「うん。だって、せっかくだもん。二人で楽しもうよ?ね?」
「そうだな。俺も買っちゃおうかな」
「うんうん。じゃ、レジ行こー?」
「うん」
嬉しそうなお兄ちゃんと並んでレジへ。
お兄ちゃんとの時間や話題が、これから増えると思うと、凄く嬉しい。
そして、何も言わず、荷物を持ってくれた。
ホントは私が持ってたかったんだけど……しょうがないよね、お兄ちゃん優しいもん♪
「お兄ちゃん」
「何だ?」
「おそろい。だね?」
「……んー、まぁ、そういう言い方も出来るか」
「うん」
幸せな時間。

341 :遊星より愛を込めて ◆45KgZeCOYA :2006/06/04(日) 23:25:24 ID:Mis7wYTv
今回の合宿で再確認を検めて強くした。花火ちゃんは女の子ではないことを。
男の子なのではあるが、周囲がその勃起力を発揮できる場所を整えてあげなければ、
いけないということだ。こういうタイプの人間をはなびんびん型と分類される。
みんな揃っての愛撫をスイスイとこなしていく。注意して手許を見たら
花火ちゃんのおおきなちんこに似合わず手は小さいのだ。
このちんこの勃たせ方は、当時の巴里のさる貴族の女性によって「再発見」された
方法で、意外と広く伝統社会では受け継がれてきたものらしい。
すると、場所、相手を問わず簡単に勃たせられるカンナちゃんは万能型になる。

性交の時だってそうだ。花火ちゃんのそばには4人の女の子がいる。エリカ・グリシーヌ
・コクリコ・ロベリア・の四人だ。だが花火ちゃんのちんこは彼女たちにはまるでだめぽ。なんで?
花火ちゃんって、男にしかちんこびんびんになんないんだよね。
花火ちゃんは男性が苦手だけど、シャノワールではモギリとボーイを併行してやってるけど、
実は巴里華撃団隊長の大神たんだけにはちんこびんびんになってしまう。つまりホモ。
外見は女の子みたいな花火ちゃんだが、大神たんのそばじゃホモの本性を晒してくれる。
大神たんに感謝しなきゃね。実態はケツマンコ大好きなホモに過ぎなくてもね。
まあ大神たんといえば、士官学校のときから寮の同室だった加山とかいうホモに菊門掘られまくってた
筋金入りのホモだもんね。  さてと、君たちも昼間にはブルーメールとかいう貴族の屋敷を
覗いてみるといい。大神たんにサカる花火たんは「肉棒天使」といった感じかな。ウィ。



342 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/06/04(日) 23:27:53 ID:poml9Ru4
でも、そろそろ私は慣れなきゃいけない……こういう幸せな時間は長くは続かないことに。
お店から出るとき、自動ドアの前で眼鏡の真面目そうな女性とすれ違った。
「あ……て、天童君……?」
「やぁ、こんにちは、西野さん」
「こ、こんにちは……」
「まさかゲーム屋さんで会うなんて思わなかったな。西野さんも、ゲームするんだ?」
「え……あ……うん……」
「そうなんだ。じゃ、またお勧めのゲームとか教えてよ」
「あ……うん……」
「じゃあ、俺はそろそろ」
「うん、またね……」
女の子に笑顔で手を振るお兄ちゃん……。
むぅ……。
ギュ。
お兄ちゃんの耳を思い切り引っ張り、歩き始める。
「あ、葵っ……!?何なんだ……!?」
「何でいつもこんなことに……」
「いや、それを聞きたいのは俺で……いてててててててっ!!」

はぁ……モテるお兄ちゃんを持つと……辛いなぁ……。
───────────────────────



343 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/06/04(日) 23:28:42 ID:poml9Ru4
「一週間に約一本。まさに……えっと……」
「粗製乱造」
「そうそう。それそれ!」

というわけで、
天童兄妹第四弾:>>333-334>>337>>340>>342
ただ、どう●つの森を買ったから書きたくなっただけ。
可愛い妹とゲームしてぇ!!というイタい欲求の現われですよ。

344 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/06/05(月) 00:52:48 ID:w3T72Gt3
葵タソ…毎回楽しく読ませてもらってます、GJξ´_>`ξ

345 :遊星より愛を込めて ◆45KgZeCOYA :2006/06/05(月) 03:14:19 ID:FK2oOf09
今回の合宿で再確認を検めて強くした。花火ちゃんは女の子ではないことを。
男の子なのではあるが、周囲がその勃起力を発揮できる場所を整えてあげなければ、
いけないということだ。こういうタイプの人間をはなびんびん型と分類される。
みんな揃っての愛撫をスイスイとこなしていく。注意して手許を見たら
花火ちゃんのおおきなちんこに似合わず手は小さいのだ。
このちんこの勃たせ方は、当時の巴里のさる貴族の女性によって「再発見」された
方法で、意外と広く伝統社会では受け継がれてきたものらしい。
すると、場所、相手を問わず簡単に勃たせられるカンナちゃんは万能型になる。

性交の時だってそうだ。花火ちゃんのそばには4人の女の子がいる。エリカ・グリシーヌ
・コクリコ・ロベリア・の四人だ。だが花火ちゃんのちんこは彼女たちにはまるでだめぽ。なんで?
花火ちゃんって、男にしかちんこびんびんになんないんだよね。
花火ちゃんは男性が苦手だけど、シャノワールではモギリとボーイを併行してやってるけど、
実は巴里華撃団隊長の大神たんだけにはちんこびんびんになってしまう。つまりホモ。
外見は女の子みたいな花火ちゃんだが、大神たんのそばじゃホモの本性を晒してくれる。
大神たんに感謝しなきゃね。実態はケツマンコ大好きなホモに過ぎなくてもね。
まあ大神たんといえば、士官学校のときから寮の同室だった加山とかいうホモに菊門掘られまくってた
筋金入りのホモだもんね。  さてと、君たちも昼間にはブルーメールとかいう貴族の屋敷を
覗いてみるといい。大神たんにサカる花火たんは「肉棒天使」といった感じかな。ウィ。



346 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/06/06(火) 22:55:53 ID:kXXhgeYY
昨日の雨が作った水溜りが空を写す。
そんな空を壊さないように、少し大きく足を伸ばし、
水溜りを飛び越える。
「良い天気だ」
そう呟いた。
全く以って穏やかな午後。
だが……それも長くは続かないようだ。
「お兄ちゃーん!!」
突然、俺の首にかなりの負荷がかかる。
気道を圧迫され、相当苦しい……。
「隙だらけだぞー?」
無邪気に話しかける後ろの人。
「いや、隙とか……言われても……」
「だめだよ、そんなことじゃー」
「分かったから……降りろ……」
「しょーがないなぁ……」
重力から開放される俺の首。
飛びついてくるというのなら、可愛いもんだけど……
完全に絞め落とす気だからな、コイツの場合……。
「はぁ……」
息を吸いながら、ゆっくりと振り向く。
視線の先には、腰に手を当て、いかにも怒っていると言った感じの小さな人間。
「たるんでるぞ、お兄ちゃん!!」
そう。
こいつは俺の妹、望。
妹と言うからにはもちろん女であるが、どこかで間違えたのか……
小さい頃から活発な妹で、今は何処から見てもアクティブな少年。
その上、小学生のときに何の因果か空手も始めてしまったものだから、
男らしさはさらに加速してしまった……。

347 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/06/06(火) 22:56:30 ID:kXXhgeYY
「たるんでる?何が?」
まだ痛む首を押さえながら、静かに答える。
「全部っ!!もし、ボクが強盗だったらどうするのっ!?」
唐突だなぁ……。
「多分……強盗が俺を襲うメリットは少ないと思う」
「めりっと……!?せ、専門用語は禁止っ!!」
「あぁ……スマン……」
メリットって、専門用語だったのか……そいつは知らなかった。
「まぁ、仮に強盗に襲われたとしても……俺は俺なりのやり方で切り抜けるさ」
「お兄ちゃんなりのやり方って?」
「んー……逃げるか、諦めるか……状況しだいだな」
「情けないなぁ……」
「人には向き不向きがある。望は体を動かすのに向いてる、俺は頭を使うのに向いてるんだ」
「あぁ、もう!!ダメだよ!!そんなことじゃ!!」
俺の手を奪い、引っ張っていく望。
一応抵抗はしてみるが……少々、態勢が悪い……。どんどん引き摺られていく。
「何だ?」
「道場行くよ!!ボクがお兄ちゃんを鍛えなおしてあげるんだから!!」
「いや、俺は委員会の仕事が……」
「そんなのあとあと!!どーせ、お兄ちゃんならパパッとできるんでしょ!?」
「あの、出来ないからこうして……」
「うるさーいっ!!行くったら行くの!!」
「こんなだからいつまで経っても男に見られるんだよな」
ボソッと俺の一言。
だが、一番聞こえて欲しくない人には、しっかり聞こえてたようで……
「お兄ちゃん!!」
俺の手を離し、蹴りの準備姿勢をとる。
「やめとけ……」
「うるさいっ!!」

348 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/06/06(火) 22:57:32 ID:kXXhgeYY
ガッ。
望の上段蹴りを、左手で受け止める。
「痛いなぁ……」
痛みが骨に響く……。
「え……!?」
そんなに俺が止めたのが意外だったのだろうか。
足を上げた姿勢のまま固まる望。
「望……パンツ見えてるぞ」
「え……!?うわぁ!!」
足を下ろし、スカートを慌てて押さえる望。
真っ赤な顔で俯く望。
……コイツでもこんな顔できるんだな。と、ちょっと思った。
「どーせ、スパッツかブルマか穿いてるんだろ?」
「あ……そうだった……」
「の割には、鮮やかだったけどな」
「え゙っ!?」
驚いて、思わずスカートを見下ろす望。
「嘘だ」
そんな望を尻目に、とっととその場から逃げる。
「ちょっと……!!お兄ちゃんっ!!」
正気に戻った望が俺の前に駆けてくる。
「何だよ?」
「まだ話の途中!!」
「……あぁ、望の下着の話だっけ?」
冗談のつもりだったのだが……望の顔が沸騰した。

349 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/06/06(火) 22:58:04 ID:kXXhgeYY
「ち、違うぅっ!!」
「じゃ、何か続いてる話しがあったか?」
「だから、お兄ちゃんが男らしくないって話!!」
「あれは終わっただろ」
「終わってなーい!!今から、ボクがお兄ちゃんを男にするんだから!!」
「うーん、男男言うけど、逆にさ、お前の言う男らしさって何?」
「うーんとねー、強くって、逞しくって、優しくって……」
指を折々、色んな候補をあげていく望。
まだ続きそうなので、
「俺には一生かけても無理だな」
「だから、少しでも努力しなくちゃ!!」
「嫌だね。俺は俺の中での男を目指すさ」
「じゃあ、お兄ちゃんの言う男って?」
「そうだな。常に賢く、正しく、優しいってとこか」
「優しいことしか、合ってないね」
「理想なんてそんなもんだ。むしろ一つ合うことに驚きだよ、俺は」
「じゃあさ……」
俺の隣に並ぶ望。
そして、俺の腕を抱きしめ、
「ボクに、もっと優しくしてくれる?」
「……それで帰らせてくれるなら」
「わーい!!じゃ、たこ焼き食べに行こうよー!!」
「いや、人の話聞いてたか……?」
「ねっ!!お兄ちゃん!!」
「何だよ?」
「優しくねっ?」
「分かってるから……」
妙に笑顔の望を、右腕に感じつつ、
まっすぐ家には帰れそうに無い予感をひしひしと感じる。
そんな初夏の帰り道でした……。
───────────────────────

350 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/06/06(火) 23:01:32 ID:kXXhgeYY
格闘妹、望。
また新妹の登場で、何だか俺が単発キャラ書きになりつつある……。
でも、なんとなく書きたくなったんです。
なにはともあれ……ボクっ娘……いいじゃないか……。

351 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/06/08(木) 03:16:36 ID:v9iUKcc5
遊星さんは遊星さんが書きたいものを書く。
俺は遊星さんが書いたのを読んで楽しい。
無問題ですよ(´・ω・`)
乙です!

352 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/06/10(土) 23:51:38 ID:okBZ1tMi
夢ノ又夢先生の続きに期待

353 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/06/13(火) 17:38:38 ID:VZOF2BvP
age

354 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/06/13(火) 22:23:54 ID:R6Twgsom
「俺は巴を甘く見ていたのかもしれない」

暗幕で囲まれた体育館の中、暗闇と喧騒に揉まれて気分の滅入る俺。ひっきりなしに聞こえてくる明るい声に何か疎外感を感じてしまう。
照明の落とされた館内をぐるりと見渡せば人がいない場所は無い、立ち見席が設けられる程の盛況ぶり。
客層の七割が女子なのは多分、巴の業の深さ故なのだろう。

「なんとか座席は確保できたが・・・場所が悪いな」

俺が体育館に辿り着いたその時には既に開演を待つ列が出来ていて席を取るだけで精一杯、改めて巴の威光を思い知らされる事になった。
舞台からは遠い一番後ろの席に陣取り腕組みして始まりを待つ、果たして巴は俺がここにいるのに気付くだろうか。
などと言いつつも実はその辺に関してはあまり心配はしていない。子供の頃から今まで俺が巴に勝てなかった遊びが一つだけある。

「かくれんぼだけは得意だったからな、巴は」

見つけてくれなくてもいい時でさえ、ちゃっかりと俺を見分ける巴だ、ここでも問題は無いだろう。
ほどなくして開演のブザーが館内に鳴り響く、湖面に石を投げ入れた様に喧騒は収まり辺りを静寂が包む。
舞台をライトが照らし出し、歯車は音を立てて回り始める。
みすぼらしい服のシンデレラとそんな彼女を蔑む意地悪姉さんや継母。
演目がシンデレラなだけに取り立てて言う事の無いオーソドックスな仕様のお話。
・・・いや、シンデレラを苛める様が妙に真に迫る物があるんだが・・・気のせいだろうか?
そういえば、主役であるシンデレラを誰がやるのかで大いにもめたと巴が言っていたな。

「・・・私怨混じってるんじゃないのか、あれは・・・」

ある意味で結果的にかなり面白い舞台、迫真の名演技(?)が観客を引き込む。
勿論、憎しみ満載ではなく主役をやるんだからこれ位は我慢しろとばかりのシンデレラへの仕打ちが続く。
こういうのは学生演劇ならではの面白さかもしれない、俺も知らず知らずのうちに身を乗り出していた。
しかし、この舞台のメインイベントはこの先にある、誰もが待つその瞬間は沢山の期待の元に訪れる。

355 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/06/13(火) 22:24:53 ID:R6Twgsom
一端、舞台が暗転して眩いスポットライトの中に浮かび上がるスラリと立った細身のシルエット。
まるでおとぎの世界からそのまま飛び出して来た様な憂いを湛えたその姿、一瞬、客席の呼吸が止まる。
宙を彷徨う視線が俺と重なる時、全てがスローモーションになる。
教室の窓から、食堂の片隅から、渡り廊下の向こうから見えるいつもの視線。
褒められるのを待ち望む子供みたいなずっと変わらない甘えたがりの輝く瞳。
そんな巴の瞳を俺もただ黙って見詰め返す、言葉は何もいらない、ただそれだけで何かを分かり合えた気がした。
瞳を閉じて一呼吸入れてから巴は語り始める、水辺を優雅に舞う白鳥の如き所作で。
会場に篭る熱い視線と溜め息の中で巴は確かに誰よりも何よりも輝いていた。

───────────────────────────

夕暮れ時を迎えた校舎で一人佇む、文化祭の騒ぎも一段落して今は閑散とした静けさが漂う、外の屋台も片付けを始めている。
祭りの後特有の寂しさ、思えば今年は騒がしいうちに終わっていた様な気がする。

「手間が掛かった割には終わった時はあっという間に感じるものだな・・・」

ポツリと呟き下駄箱にもたれ掛かって待ち惚けのボク、多分、もう少しすればここに待ち人が訪れる。
・・・ほら、やっぱり来た。
くたびれた歩き方でこちらに向かってくるいつものお兄ちゃん。

「はぁ・・・やっぱり居たよ、この人は」
「予想通りだった?お兄ちゃん」

夕陽に照らし出された不確かな影の中、ボクは呆れ顔のお兄ちゃんに歩み寄る。
分かっていたとはいえ、少々気後れ気味だったボクには夕陽の光がやけに眩しい。

356 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/06/13(火) 22:25:36 ID:R6Twgsom
「お兄ちゃん、今日の舞台・・・」
「ああ、良かった、巴は立派に王子様だな、俺も安心して社交界に送り出せるよ」
「そんな予定後にも先にも無いけど、でも・・・それは褒めてくれてるよね?」
「褒めてる褒めてる、この調子だとそのうちファンクラブとか出来るんじゃないか、兄ちゃん楽しみだなぁ」
「・・・ホントに褒めてる?」
「ははっ、怖い顔するなっての、正直言って良かったよ、少し感動してしまった位に」
「少しだけ?」
「いや、実の所、かなり」

だんだん雰囲気が冗談めいてくるお兄ちゃんがようやく本音をぶつけてくれる。
変わる事の無い石みたいな仏頂面にパッと安堵の笑顔が咲くのが自分でも良く分かる。

「・・・うん、それなら良かった、あ、これから帰るんだよね、じゃあ」
「おっと、一緒に帰るのはナシだぞ、主賓が退場したんじゃ打ち上げも盛り上がらないからな」
「・・・はい・・・残念だけどしょうがないよね」
「なんだよその顔は、今生の別れみたいな顔して・・・今は友達と楽しんで来い、な?」

少し視線の下がるボクの顔を覗き込んで明るく諭すお兄ちゃん、こんな何気ない気遣いがボクにはこの上なく嬉しい。

「じゃあ、せめてお夕飯代はボクが出すよ、今日は外で済ませるつもりでしょ?」
「いや、そこまでしてくれんでも・・・それ位は自分でどうにかするよ」
「いいから・・・あれ、これ何だろう?」

取り出した赤い財布のお札入れにある見慣れない小さな紙に疑問符が浮かぶ。
こんなのホントに見覚えが無い、いつの間にこんな物が・・・

「ん、どれどれ・・・おい、これ、巴は今まで気付かなかったのか?」
「えっ、何が?」
「やれやれ・・・まぁ、開けてみろ、話はそれからだ」

357 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/06/13(火) 22:28:16 ID:R6Twgsom
言われるがままに開くと視界に飛び込む見慣れたお兄ちゃんの字。

──無理は絶対にしないこと、何かあったらいつでも駆けつけるから遠慮せず呼ぶように、同じ学校だしな──

そこに書かれた言葉の意味を知り鼓動が跳ねる、無くしていた何かを見つけ出した様な、泣きたくなる様なくすぐったい感覚。

「巴が前に疲れてそのままソファーで寝ちゃった事があったろ、あの時に入れといたから約一週間気づかなかった事になるな」
「あの時・・・これは・・・四葉のクローバー?」
「まぁ、ラッキーアイテムっていうとそれ位しか思い浮かばなくてな、ちょっと安直だったとは思うけど」
「ううん、そんな事無い、でも、どうしたのこれ?」
「もちろんあの時に探したんだよ、大変だったぞ、家の庭中を懐中電灯片手に探し回って・・・途中で雨が降るしさ」
「・・・そっか・・・」

手紙に添えられていた押し花にされた四葉のクローバーを手に取り、そっと胸に引き寄せる。
それはボクにはじんわりと暖かくて、痛みや不安さえ包み込んでくれるお兄ちゃんの優しさそのものだと思った。

・・・ずっと・・・心配してくれてんだ・・・お兄ちゃん・・・

結局、お兄ちゃんの優しさに気付けなかったボクのひとり相撲、か。
お兄ちゃんはボクの為を思っていてくれた、なのにボクは自分の事ばかり考えて・・・

「・・・ごめんなさい」
「は?何が?」
「お兄ちゃんはちゃんとボクの事、考えてくれてたのに・・・ボクは」
「ああ、それか・・・どうでもいいさ今となっては、結果として舞台は大成功だったんだし」
「・・・お兄ちゃんは優しいね、それに引き換えボクは・・・ホント、ダメだよね・・・ホントに」

358 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/06/13(火) 22:28:54 ID:R6Twgsom
それ以上言葉を出せずにギュッと握った掌が自分でも意識しないうちに少しだけ震えている。
子供の頃よりボクは強くなった、あの頃みたいに泣いてばかりじゃない、勉強も運動もずっと上手くなった。
いつかお兄ちゃんを支えてあげられる人になりたくて、頼りにしてもらえる様になりたくて、がむしゃらに頑張ってきた。
そうすればボクはずっとお兄ちゃんと共に生きていける、ボクのボクだけの人でいてくれると信じて。
変わったのに変わりきれないボク、相変わらずの優しさをくれるお兄ちゃん、どうにも埋まらない二人の距離がボクには堪らなく悔しかった。

「よせよせ、憂いの表情なんて巴には・・・似合うけど」
「ありがとう、でも・・・」
「巴、反省は沢山すればいい、でも、後悔だけはしちゃ駄目だ」
「・・・」
「それに、もしも今回の舞台が失敗していても俺は巴を褒めてたと思う」
「・・・どうして?」
「決まってる、巴はいつだって俺の一番の自慢だよ」

笑顔の中に真っ直ぐな瞳を隠して、お兄ちゃんがボクの頭を乱雑に撫でる、真剣さを誤魔化す為のお兄ちゃんのいつもの照れ隠し。
たまにしか見せてくれない、多分・・・ううん、絶対ボクしか知らないカッコいいお兄ちゃん。
ボクの心にグングン追いついて、いつも簡単に答えを見つけ出してくれる、きっと本当に大切な事をお兄ちゃんは誰よりも知っている。
こんな時、ボクは強く想う・・・お兄ちゃんの前ではボクは優等生でも王子様でもなくてただ、好きな人に甘えていたい一人の女の子なんだって。
だからボクは心に素直に従う、世界で一番愛しい人の胸の中へと。

「こ、こら、ちょっと褒めたらこれかよ!?」
「・・・頑張ったご褒美くらいはね、いいでしょ?」
「よかないよ!!こんな姿誰かに見られたら多くの学生の夢を壊すんだぞ?」
「じゃあ、家でならいい?」
「そういう問題じゃなくて・・・まったく、俺は時々、巴は兄離れ出来るのかと不安になる時があるよ」
「不安は的中かな、一生離れる気は無いから、ふふっ」
「・・・言ってろ」
「うん、この先もずっと言ってる・・・お兄ちゃんの趣味も分かったし」
「ん?趣味って何?」
「・・・メイドフェチ」
「なっ!?なんつっーことを!?」
「あははっ」

359 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/06/13(火) 22:29:29 ID:R6Twgsom
水を得た魚の様に腕をスルリとすり抜けてボクは一目散にクラスメイトの待つ上の階へと向かう。
その前に相川先輩を見習って心からの言葉を、10m程走った所でフワリと浮かぶスカートを翻して後ろ手にお兄ちゃんの顔を覗き込む。

「あ、そうそう、今日の舞台ね、ボクだけじゃ上手くいかなかったと思う、でも、ボクにはお兄ちゃんがいてくれたから」
「ああ、さいですか」
「舞台の上からお兄ちゃんを見つけた時、とても安心して、嬉しくって・・・やっぱりボクにはお兄ちゃんが必要なんだって思った」
「・・・」
「お兄ちゃんが居てくれてホントに良かった、これからもよろしくね、ボクの王子様」

照れ臭そうに頭を掻くお兄ちゃんを背に階段を一機に駆け上がる、羽根の様に軽くなった足と夕陽の様に紅く染まった頬で。

・・・お兄ちゃん、ボクはお兄ちゃんの為に何が出来るんだろう・・・お兄ちゃんの望むボクはどんなボクなのかなって思う。
今のボクに出来ることは片手にさえ足りないけれど、いつかきっとお兄ちゃんに相応しい人になってみせる。
ボクに優しさを教えてくれたお兄ちゃんだから・・・こんなにも切なくなる程の愛しさを教えてくれたお兄ちゃんだから。

言葉に出来ない、止められない想いを胸にボクは屋上まで突き抜ける勢いで駆ける、いつの日かこの手が届くと信じて。

───────────────────────────

「・・・王子様の王子様ってか、何言ってんだかな」

煙を上げるのではないかと思わせる猛スピードで巴が消えていった階段を見詰めて吹き出す俺。
巴公認の王子様、そう思うと妙に可笑しくてまた一人笑みが出てしまう。
終わり良ければ全て良し、夕焼け色の巴の顔を思い返して真理とも言える格言が頭に浮かんだ。

360 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/06/13(火) 22:30:10 ID:R6Twgsom
靴を履き替えて再び活気付く校舎を後にする、今頃、巴は友達に囲まれて舞台の成功を祝っているのだろうか。
どちらにせよ俺は巴が家に帰ってくれば喋り疲れるまで話に付き合う事になる、それが少しだけ今夜の楽しみだ。

「さて、帰りますか・・・おわっ!?」
「あっと、ごめなんさ〜い!!」
「ご、ごめんなさい」

俺の真横を見慣れない格好をした二人の女の子が走り抜ける、いや・・・メイドさんなんて見慣れてる筈が無い。

「ね、ねぇ・・・唯奈ちゃん、やっぱりこの格好で帰るのは・・・ちょっと」
「ここまで来て今更だよそんなの、それに絶対先回りしてお兄ちゃんを驚かすんだから、お兄ちゃんの為に急ごっ!!」
「うん、お兄さんの為に、だね」

ペチコートを翻して校門の向こうに小さくなっていく二人を呆然と見送る、傍から見ればかなり不可思議な光景。

「・・・白昼夢?いや、今は夕方だけど・・・あれ?今のは確か石川姉妹・・・」

自分でもよく解らないが妙に肩が重くて俺は茜色の空を見上げる、すると何故か今頃になって蘇る体育館裏での巴。
数時間前の感触が残ったままの右手の上で乙女心と微妙な溜め息は秋の空に溶けて消えていった。

361 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/06/13(火) 22:31:00 ID:R6Twgsom
今回の反省点、一番は神の妹様に御出演頂きオチまで頼ってしまった事。
寛容に見て頂いてありがとうごさいました、しかし、名前を間違えたのは本当に反省しております。
>271 相沢って誰よ?ホント、すいません。
>天童兄妹
この二人は個人的にホントに萌えつつ参考になるという素敵な兄妹です。
お互いの距離感というかバランスというか、そういった物が絶妙だと思います、次も楽しみにしておりますよ。
>格闘妹
強いわ可愛いわで無敵ですねw
なんか夏休みに無理矢理鍛錬に付き合わされる話とか読んでみたいです。
>323様、352様
果たして今回の話は御期待に添えたでしょうか?
投下のペースが牛歩並ですが多分、ネタが切れるか力尽きるまで書き続けると思いますのでこれからもどうぞ宜しく。

362 :遊(ry ◆isG/JvRidQ :2006/06/14(水) 21:15:43 ID:511n4s5A
>夢ノ又夢大先生様
さすがッス!!
いつもながらキレイなSSで、時間が無いと言うのに読み耽ってしまいました。

そして、ふと、未来とか羽音とかも書いて欲しいなぁなんて思ったり……w

363 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/06/22(木) 20:23:56 ID:Oi1VcWul
ほーしゅ

364 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/06/22(木) 20:57:20 ID:U4/qsRee
日曜日のお昼前、鮮やかな青空の下に白いシャツが気持ち良さそうに風に流れる。
洗濯物を叩く小気味良い音を立てながら巴はテキパキと干していく。
我が家の見慣れた光景。

「いい天気だな」
「うん、ここの所はずっと雨だったから余計に気持ちいいよね」

風に靡くサラサラの髪を梳いて本当に気持ちよさそうに巴が微笑む。青い空には屈託の無い笑顔が良く似合う。
見事なまでの五月晴れだ、こんな時では見惚れてしまう俺にも仕方が無いのかもしれない。

「あ、巴、あそこ見てみろよ、青い空には白が似合うよな・・・」
「えっ!?」

耳に残る轟音を立てて飛行機が大きな青空に白い線を描く。これもまた、曇り空では見る事の出来ない景色。
そんな単純な事がなんだか妙に嬉しくて、つい子供みたいな歓声を上げる俺。

「しかし・・・なんで白ばかりなんだろうな?もっとカラフルでも良さそうなもんだが」
「な、なんでって・・・普通、白だと思うよ・・・」
「まぁ、そりゃそうなんだけどさ」

海外の飛行機はもっと色鮮やかな物があると聞いた事がある。
ま、誰かさん専用でもあるまいし真っ赤な飛行機とかは流石に無いとは思うが。

「もっとさ、個性があった方がいいと思う訳だ俺は、大抵が白か青だろ?」
「青って・・・そんなに流行ってる色かな?ボクは知らないけど」
「流行ってるかはともかく普通の色だろ、あとはキャラクター物とか」
「・・・お兄ちゃん、そういうのがいいの?」
「いや、流石に俺はパスだけどさ、ああいうのは子供向けだし」
「あ、うん・・・そうだよね」

365 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/06/22(木) 20:58:35 ID:U4/qsRee
巴の方から何故か安堵の溜め息が聞こえてくる・・・俺ってそんなキャラでもないだろうに。
更に微妙に遠慮がちに聞こえてくる巴の声、なんか声が上擦ってる気が・・・

「あの・・・お兄ちゃん?お兄ちゃんは・・・どんなのがいいと思う?」
「そうだな、ええっと・・・黄色とかオレンジとかいいかもな」
「・・・」
「豹柄とかもいいかも」
「・・・豹柄!?」
「なんつってな、流石に冗談だよ」
「も、もうっ」

一つ一つ俺の言葉を反芻するかの様に聞き入る巴が面白くて思わず冗談を交えてしまう。
というか、そんなに真剣に聞く様な事なのか?
焦る巴を尻目に首が痛くなるまで蒼天の空を見上げ続ける。

「巴は知ってるか?ニュースで見たんだけど黒色もあるんだそうだ」
「・・・知ってるよ・・・ボクだってそれ位」
「そっか、なんでも中から外から黒尽くめなんだってな」

真っ黒な飛行機というのは結構なインパクトがあると思う。
添乗員も黒の制服で内装も黒で統一されエスプレッソとチョコレートが自慢らしい。

「一回、実物を見てみたいよな」
「・・・見て・・・みたい・・・お兄ちゃん?」
「うん?」
「ボクに・・・それは似合うと思う?」
「・・・ふむ」

366 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/06/22(木) 21:00:16 ID:U4/qsRee
空を見上げたまま、顎を撫でながら思索を巡らせる。
黒い機内、エスプレッソ片手に窓の下に映る夜景を見下ろすスーツ姿の巴。
なんとなくだが俺の頭の中では巴は憂いの表情でいる。

「・・・滅茶苦茶似合いそうだな」
「ホント?ホントに・・・そう思って・・・くれてる?」
「ああ、キャリアウーマンというか・・・大人の女性って感じだな」
「・・・そっか・・・ふふっ」
「やれやれ、そんなに嬉しい事かね」
「ボクにとっては凄く、ね・・・お兄ちゃんが言ってくれたから・・・お兄ちゃんだから」
「ん?それはどういう・・・」

さっきから何か噛合っていない二人の会話。見えなくなった話を辿る為に巴へと振り返ると照れまくった巴の熱視線に迎えられる。
・・・はて?なんだろうか、この甘い雰囲気は?
そこで俺はようやくズレた歯車の転がった先を知る事になる。いや、知るのがあまりにも遅過ぎた。
巴の視線、俺が見上げていた方角の青空の下、ベランダの外界に断絶された一年中日陰となっている三角コーナーに干された物体。
これ以上は俺の口からは言うまい・・・

「お、おい、ちょっと待て!!何か勘違いしてないか!?てか、してるんだよ!!」
「分かってる・・・別に可笑しな事じゃないよ、お兄ちゃんだって・・・その・・・男の人なんだから」
「だ、だからそれが!!」


367 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/06/22(木) 21:01:41 ID:U4/qsRee
鳥肌が立つ程に艶を帯びた巴の瞳が妖しく揺らめく。危うく虜にされそうな俺は情けない事に自分を保つだけで精一杯。
とはいえこの場合、まだ自己を持っているのは我ながら褒められていい様な気はする。
普通の男なら完全にやられている所だろう、そんな背水の陣に容赦無く攻めかかる巴の一言。

「ボクはお兄ちゃんの為なら・・・楽しみにしててね・・・お兄ちゃん・・・」

絶大な勘違いの後、去り際にやたら艶っぽい流し目と一言を残して巴はベランダから消えていく。
・・・楽しみ?・・・一体、あの御方は何をやらかす気なんだ?

「・・・部屋に戻るか」

ぶるっ、と身震いを一つして俺もベランダを後にする。なんだか暖かかった筈なのに妙に背中に寒気を感じる俺。
若干の期待と大きな不安を抱きつつ自室に向かう俺だった。しかし、そんな願いも空しく難事はやっぱり訪れるのである。
巴さん曰く、なんだかスッキリした出来事。俺曰く、無かった事にしたい事件。
これが後に我が家に強烈に残る事件、巴さん裸エプロン大事件の始まりだったのです。

(続かない)

368 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/06/22(木) 21:06:02 ID:U4/qsRee
・・・いや、ただの悪ふざけなので軽く流して下さい。
七月十二日の祭りまで道はまだ遠い。

369 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/06/22(木) 21:49:58 ID:etqGqMpV
続かないんですか……w

っていうか、少し萌力を俺に分けてください……いや、マジで……w

370 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/02(日) 22:30:41 ID:ILAIMImQ
優秀なスレッドストッパーの遊星が保守しに来ましたよ、と。

現在6(+1)完成、一つ途中。良いネタ閃けぇ……

371 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/07/08(土) 20:26:30 ID:NWTNnA26
それでもおれは待ち続ける

372 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 21:26:22 ID:d5g2kOvY
いやぁ、焦ったぁ。
……ま、去年ほど盛り上がっちゃいませんが、自己満足祭り、そろそろ始めますか……

373 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:04:03 ID:d5g2kOvY
太陽は燦々と輝き、今では温度計を見るのも嫌なぐらいの高気温。
現在、時刻は二時。
一番気温が上がる時間だと、小学校のとき理科で習った記憶がある。
こんな時間に外に出るヤツは、よほどの用事があるか、バカだけ……。
……まぁ、家に一人、そのバカがいるわけだが……。
しかも、バカはバカでも、運動バカが……。
「よくやるよ……ホント……」
一時間以上前に出て行ったきり帰ってこないバカのことを思いながら、本のページをめくる。
そして、冷たいお茶の入ったグラスを口に運ぶが
「無いのか……」
俺は本にしおりを挟み、グラスを持って立ち上がる。
そして、冷蔵庫を開ける。
「……カフェオレでも飲もうかねぇ」
俺はペットボトルに入ったアイスコーヒーと牛乳を取り出し、俺は手早くコーヒーと牛乳を混ぜる。
「さてと……」
クーラーの効いた部屋。
もう一度、本を読み始めると……
「たっだいまー!!暑ーい!!」
玄関で割れんばかりの大声……。
「あー!!涼しー!!」
そして大声の主が、俺のいるリビングへ……。
「おかえり、望。遅かったな……?」
俺は本から一切目を離さず、答える。
「うん。あはは!!何か楽しくなっちゃって、ランニングしてきたよー!!」
「元気だねぇ……」
「うん!!ボク、もう汗ビッショリー!!」
「さいですか……」
「それより、お兄ちゃん!!また本なんて読んでるー!!」

374 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:04:38 ID:d5g2kOvY
「いけないか?」
「本ばっかり読んでるとバカになるよ?」
「ならねぇよ、証拠もある」
「証拠?」
「望」
「え、ボク……?何で……?」
「だって、バカじゃん、お前。本読まないし」
「ひ、ひどーい!!ボクだって、そんなにバカじゃないよー!!」
「そりゃ悪かったな……」
……つまり、ある程度はバカってことなんだ。
本を読みながらなので、相当適当な受け答えを返す俺。
「暑いー、服脱いじゃえー!!」
「おいおい……」
「だって、汗でぐっしょりだよー?そんなTシャツ着たい?」
「じゃ、着替えて来いよ」
「うん、ちょっと休憩してからー」
望は冷蔵庫の辺りでゴソゴソと何かした後、ソファの俺の隣に座る。
横目で見たが、どうやら本当に下着姿になっているらしい。
「面白い、それ?」
「まぁな」
「……ふぅん。ねぇ、ボクと遊ぼうよー」
「忙しい」
「本読んでるのに?」
「本読んでるから」
「……そんなに本読むのが大事……?」
「は?」
「ボクは……もっと……お兄ちゃんと遊びたいのに……」
……自分が一人でどっか行っといて、何を……。
と思ったが、いえなかった。

375 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:05:12 ID:d5g2kOvY
「ボクは……は……は……はくちっ!!」
望の突然のくしゃみ。
俺は本をパタンと閉じて、
「おい、大丈夫か?」
「あ……うん。でも、ちょっと体冷えてきたみたい……はくちっ!!」
「しょうがねぇなぁ……」
俺は着ていたジャケットを脱いで、望に渡す。
「うわー、お兄ちゃん、ヒョロヒョロだぁ……」
「人の好意は黙って受け取れよ、お前……」
「あ、ゴメンゴメン」
笑って、服を羽織る望。
「ボク……こういうの、ドラマでみたことある……」
「……は?」
「へへ……暖かいね……?」
「そんなのいいから。早くシャワー浴びるなり、服着るなりして来い」
「うん……えへへ」
「何だよ?」
「お兄ちゃん!」
「何だ?」
「えへへ……ボク、行って来るね?」
「おー」
「うん、じゃあね、お兄ちゃん?」
笑顔で去っていく望。
「……何なんだ……」
呆然とする俺。
突如ご機嫌になった望……。
コイツのやることだけは……どんな本にも書いてなさそうだぁ……。
───────────────────────


376 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:05:44 ID:d5g2kOvY
ある日の休み時間。
友人と話しながら、どうでもいいような話に花を咲かせていた。
すると……なにやら、腿のあたりで振動が。
「……メール……?」
ケータイを取り出して画面を見る。
送信主は、俺の妹、翼のようだ。
不思議に思いながら、本文を見ると……

廊下に来い

「……」
そう表示されたケータイの画面を見ながら固まる俺。
カツアゲでもされるんじゃないだろうか……。
「一応行ってみるか……」
友人に説明し、とりあえず廊下へ。
ドアを開けると……
「お、遅かったじゃない」
仁王立ちの翼が、不機嫌そうに言う。
「出来るだけ早く来たつもりだけど……」
「ば、バカいわないでよ!!休み時間は短いんだから、早くしないと終わっちゃうでしょ!?」
「ご尤も……。で、何か御用?」
「じ……」
「じ?」
……痔……?
「いや……そんなこと告白されても困るなぁ……」

377 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:06:16 ID:d5g2kOvY
「何の話よ!?……え、英和辞典を貸して欲しいって言ってるの!!」
言ってねぇよ……。
「翼ご自慢の電子辞書はどうした?」
「わ、忘れちゃったの……」
「ふーん……いや、悪いが……俺も次、英語なんだ」
「え……?ど……どうしよう……」
急にオロオロしはじめる翼。
「必要か?」
「うん……ちょっと無いと授業受けられないかも……」
「そっか……しょうがねぇなぁ……」
「え……?」
「ちょっと待ってろ。持ってくるから」
翼を待たせたまま、俺は辞書を急いで取りに戻る。
「はいよ……時間がないっつーぐらいなら、最初から辞書を貸せってメールに書きゃ良いのに」
「お兄ちゃん……いいの?」
「別に構わねぇよ」
「ホントに?」
「何だ、いらないなら返せよ」
「い、いるわよ!!いるけど……い、一応確認してみただけっ!!」
「そうですか……」
「……お、お兄ちゃん……?」
「何だよ?」
「あ……その……えっと……だからね……」
「何だ?指示語で会話し始めるのは、老化の始まりだぞ?」
「……ば、バカ!!もう知らない!!」
そういって、振り返り歩き出す翼。
「おう、急げよ」
その背中に声をかける。

378 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/07/12(水) 22:08:09 ID:X9XiOkP1
自己支援

379 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:08:34 ID:d5g2kOvY
「……」
翼は一度だけ振り向いたが、何も言わず無言で去っていった。
「そういえば……何を言おうとしてたんだろ……」
教室に戻り、一息ついた俺は、無性に気になったのでメールで聞こうと、ケータイをポケットから取り出す。
「……ま、いいか」
数文字打ってみたが、まぁ、あとで聞けば済むこと。
俺は文字を全て消し、ケータイを閉じる、
すると、突然震えだす俺のケータイ。
「何だ、何だ!?」
着信があることは明らかなのに、こういうときに取り乱してしまう自分が情けない……。
「なんだ、翼か」
メールの中は……

別に感謝なんかしてないからね

「わざわざそんなこと……あ……続きがあるのか」
正直、ムッとするような内容の前置きを見なかったことにして、下のほうには……

でも、ありがとう

「……矛盾してるぞ……」
そう文句をつけつつも、
「ま、無いよりはマシか……」

何だかんだいって……俺も悪いようには考えていないのだけど。
───────────────────────

380 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:09:08 ID:d5g2kOvY
「さてと、さっそく見ようかなー」
家に帰ってくるなり、急いでリビングへ。
しして、バッグから、さっき友達に借してもらったDVDを取り出す。
内容はもちろん恋愛映画。
話題の映画だから見てみたいってのもあるけど……目的はなによりも勉強。
しっかり見て、お兄ちゃんにも使えそうなのがあったら試さなくちゃ!!
そう意気込み、DVDをセットする。
そして再生のボタンを押そうとしたとき、
「あ、葵、いたのか」
お兄ちゃんが私の居るリビングへ。
「うん。ただいま」
「おかえりなさい、葵」
ちょっと微笑んで、おかえりを言ってくれるお兄ちゃん。
なんかいいなー、こういうの。
もしかして……これが『萌え』……?
「で、どうかしたの?」
「いや……別に。ヒマだからテレビでも見ようと思って」
「あ、今からDVD見ようと思ってるんだけど……」
「そっか。じゃあ、他のこと探すか……」
そういって振り返るお兄ちゃん。
でも、きっと、これはチャンスだと、私の第六感が告げた。


381 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:09:39 ID:d5g2kOvY
「あ、お兄ちゃん!!」
「ん?」
「よかったら、一緒に見ない?」
「んー……何のDVD?」
「えっと……恋愛ものの映画だけど……」
「恋愛モノかぁ……あんまり興味無いなぁ……」
「でも、見てみたら面白いかも知れないよ?」
「うーん……じゃあ、見てみようかな」
やった!!
心の中でガッツポーズ。
私の隣に座るお兄ちゃん。
「じゃ、始めるねー」
嬉しい気持ちを胸に、再生のボタンを押す。
これで雰囲気が盛り上がって……それで、お兄ちゃんから……なんて、考えすぎかな。
───────────────────────
「ふぁ……」
思わず洩れそうなあくびをかみ殺す。
もう時間的にクライマックスだと言うのに……退屈な映画だ……。
ちょっと話が王道過ぎるのはともかくとして……
主役の演技力にも少し問題がある気がする……。
イケメンというだけじゃ、涙は誘えないというのに。
借りたときに『いいの?』って聞かれたのはこういう意味だったんだね。
作戦は大幅に失敗だぁ……。
完全に集中力が途切れたので、お兄ちゃんの顔をこっそり覗き見ると……
あ……あれ……?
すごい真剣に見てる……。
え……ちょっと……泣きそうになってない……?

382 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:10:11 ID:d5g2kOvY
それからは、今にも涙がこぼれそうなお兄ちゃんの横顔をずっと見ていた。
真剣そのもののお兄ちゃんの顔は、映画よりもずっとドキドキしたし、面白かった。
そうこうしている間に、幸せそうな音楽が流れ始め、長かった映画は静かに幕を閉じた。
「……いや……よかったな……」
真っ黒になった画面を見ながら、お兄ちゃんがポツンと呟く。
「そんなによかった?」
「うん……ちょっと感動した……」
そういって目頭を押さえるお兄ちゃん。
「泣いてるの?」
「いや……泣いてない……」
必死で目を隠すお兄ちゃん。
それが見栄っ張りで可愛くって、思わず笑ってしまう。
「これ……見てよかったな」
「うん……俺も、いい暇つぶしになったよ……」
「そうだね」
純粋で、ちょっと見栄っ張りで……素敵な人。
目隠しをしたままのお兄ちゃんの横顔をジッと見る。
そして、ちょっとだけお兄ちゃんにもたれながら、私だけの幸せに浸る。
「好き……」
小声でそう呟いて、邪魔の入らない二人だけの時間に、静かに眼を閉じてみた。
しかし、すぐにその幸せは崩れる。いつものことだ。
「さて……」
急に立ち上がるお兄ちゃん。
「あ……」
私はそのまま、横に倒れてしまう。
「あれ、葵。倒れちゃって、どうしたんだ?」
「ううん……何も……」
やっぱり、な展開に、思わずため息をつくと同時に……
手を差し出してくれたお兄ちゃんに、とても幸せな気持ちになった単純な私でした。
───────────────────────

383 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:10:44 ID:d5g2kOvY
お兄ちゃんの学校の校門前。
さっきから数え着てないほどの人が通り過ぎたけれど、肝心のあの人が見つからなくて……
私は、何度目かのため息をついた。
そんなとき、
「こんにちは」
誰かに、突然肩を叩かれる。
不思議に思いながらも振り返ると
……うわぁ、凄く美人な女の人……。
「あ、ゴメンね。驚かせるつもりは無かったんだけど」
「はぁ……」
「その制服は、中学生さんだよね?」
「あ、はい」
「こんなところで、誰か待ってるのかな?」
「え……?」
「ゴメンゴメン。私もちょっと人を待ってるところだから、さっきからキミをずっと見てたんだ」
「お姉さんもなんですか?」
「うん、ところで、やっぱり恋人さんとかを待ってるの?」
「あ……一応……」
「羨ましいなぁ。私は、お兄ちゃんを待ってるんだ。いつも遅くて、困っちゃうよ」
そういって笑う女の人。
「大変ですね」
「あはは。でも、いつもこんな感じだからね、もう慣れちゃったよ」
「そうなんですか……凄いですね」
「うーん、凄いかなぁ?」
「実は、私、そろそろ帰ろうかなって、思ってたんです」

384 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:11:17 ID:d5g2kOvY
「え?何で?」
「急に会いたくなって、来ちゃったんですけど……やっぱり迷惑じゃないかって……」
「うーん……私は、キミのカレシさんを知らないから、何ともいえないんだけど……
 そんなこと、無いと思うよ?」
「そう……ですか?」
「だって、素敵だと思うもん、キミのまっすぐな心」
「……」
「大丈夫だよ。キミの心は伝わるはず。少なくとも、私はそう信じてるけどな」
「そうですか」
「安心して。もし、そんなことで怒るようなら、私が代わりに怒ってあげるから」
「それは……困ります……」
「あはは、ラブラブなんだ?」
「そ、そんな……」
「恥ずかしがらなくても良いじゃない。羨ましいよ」
「でも……」
「私のお兄ちゃんもそれぐらい良い人だと良いんだけどな……」
「え?」
「あ、なんでもないの!!」
「そうですか……」
「そうだ、キミの名前、聞いても良いかな?」
「はい。霧島羽音です」
「私は天童葵。頑張ろうね、お互いにさ?」
「はい!」
天童さんが差し出した手をしっかり握る。
天童さんは、心も外見もキレイな女の人です。
───────────────────────

385 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:11:51 ID:d5g2kOvY
「疲れた……」
夕日の赤色に染まる校庭をトボトボと歩く。
すると、目線の先に、今一番会いたい人の姿……
「幻覚か……ヤバイな、俺……」
目頭を押さえながら、さらにおぼつかない足取りで歩いていく。
今日は早く寝よう……。
そう思ったあたりのこと。
「頑張ってね」
「あ……はい……」
可愛い声……。
とうとう幻聴まで……。
「お兄ちゃん」
そして、目の前に現れる俺の従妹、羽音ちゃん。
ん……これはもしかして……
「羽音ちゃん?」
「はい。こんにちは」
「え?どうして?」
「えと……大した理由じゃないんですけど……ちょっとお兄ちゃんに会いたくなって……」
「俺に……?」
「はい……あ、ごめんなさい!!こういうの、迷惑ですよね……!!」
慌てて、帰ろうとする羽音ちゃん。
俺はそんな羽音ちゃんの肩を優しく掴んで、
「いや、そんなことないって。俺も、ちょうど羽音ちゃんに会いたかったとこだからさ」
「え……本当……ですか?」
振り向き、驚きと喜びに満ちた目を俺に向ける羽音ちゃん。
そんな羽音ちゃんがすごく可愛くて、ドキッとしてしまう。
ちょっと涙目なところがツボだ……。

386 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:12:23 ID:d5g2kOvY
「うん。俺も、羽音ちゃんに会えて嬉しいよ」
「お兄ちゃん……」
「あ、でも……今度からは、こういうことしちゃダメだよ?」
「ダメなんですか……?」
「うん。ほら、やっぱり一人は危ないからね。だからダメだよ」
「はい……」
口ではそういいつつも、寂しそうな羽音ちゃん。
こりゃ……ちょっと情けないけど……本当のことを言うべきかな……。
「って言うのは、建前で……ホントのところは……」
「本当のところは……?」
「誰かが羽音ちゃんのこと好きになったり……羽音ちゃんが、俺以外の誰かを好きになったら嫌だし……」
「……お兄ちゃん……」
「つくづく嫌なやつだね、俺って」
自嘲気味にそう呟く。
かなりかっこ悪いな、俺……。
そう思ったとき……
「お兄ちゃん」
羽音ちゃんが、ゆっくりと俺の胸の中に……。
咄嗟に抱きとめる俺。
「私も、お兄ちゃんだけの私でいたいです……」
「羽音ちゃん……」
「だから……ね……?」
俺の目をジッと見つめる羽音ちゃん。
そして、ゆっくりと、目を閉じる。
「お兄ちゃん……大好き……だよ……」
羽音ちゃんの可愛い唇が、そう呟いた。
「……うん、俺も」
夕日に包まれる瞬間の中、また一つ、二人が近づくことが出来た想い出にお互いの気持ちを確かめ合う。
そして、これからの二人を想像しつつ、幸せな気分に浸るのでした。
───────────────────────

387 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:12:56 ID:d5g2kOvY
「ただいまー」
俺、石川真司は、玄関のドアを開け、強烈な日差しの刺す外から、我が家に戻ってきた。
が、誰も返事をしてくれない。それどころか、物音一つ聞こえない。
「……誰もいないのか……?」
靴を脱ぎ、家の中に入る。
本当に、静かだ。一応……靴はあるので、二人ともいるはずなんだが……。
ゴソっ……
何かの物音……。
「誰だ?」
その音のするほうへ、歩いてみる。
そして、角を曲がった瞬間……
「お……?」
誰かとぶつかった。
よく見ると
「何だ、千奈……いたのか」
「……」
返事の無い千奈。
それどころか、身動き一つせず、俺の胸から離れようともしない。
「千奈……?」
「……このまま……こうしていたいです……」
突然、そう呟いて、俺の胴に手を回してくる千奈……。
「え……」
突然のことに驚き、固まっていると、
「春彦さん……」
……誰……?
「……俺は……石川真司だけど……?」
「あ……ごめんなさい……」
俺の話を聞いているのか聞いていないのか分からないが、
またフラフラとどこかへ行ってしまう千奈。

388 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:13:33 ID:d5g2kOvY
「え……」
呆然と立ち尽くす自分。
千奈が、ゴミ箱をけり倒した……。
───────────────────────
「ゆ、唯奈、いるか!?」
二人の部屋の前、俺は少し乱暴にノックしながら声を上げる。
「あ、うん。いるよー」
「話しがあるんだ、入るぞ」
「うん。どうぞ」
その声を聞いて、ドアを押し、中に入る。
「お兄ちゃん、お帰りー」
少しドアを開けると、唯奈がヘッドフォンを外しながら、こちらに笑顔を向けた。
「で、話って何ー?」
「変なんだ……」
俺は、ベッドの近くのソファーに座り、話し始める。
「何が?」
「俺は……真司だけど……春彦さんって言われた……」
……何を言っているんだ、俺は……。
「よくわかんないけど、もしかして……千奈ちゃんのこと?」
「あぁ、そうだけど……?」
「ボーっとしてたでしょ?」
「あぁ……」
「それなら、心配すること無いよ。たまーにあるんだよねぇ」
「え、どういうこと?」
「千奈ちゃんね、時々本の世界に入り込んじゃうときがあるんだよ」
「……は?」
「まぁ、ホントにたまにだけど、読んでる本が面白いとね。
 そうなっちゃうと、話はあんまり聞かなくなっちゃうし、
 ヒドいときは、物語のシーンを再現しちゃったりとか……」

389 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:14:07 ID:d5g2kOvY
さっきのことを思い出す。
「つまり……今、千奈が読んでる本の登場人物に春彦ってのがいて、俺がその人に見えてるってこと?」
「たぶんね」
「……なるほど……大丈夫なのか、それで?」
「うん。まぁ、ちょっと気を抜いちゃうと出ちゃうってだけだし、問題は無いよ」
「そうか……」
「でも、さすがにちょっと心配だし、千奈ちゃんのトコ行こうよ」
「そうだな」
立ち上がる唯奈。
不思議だ……今日ばかりは、唯奈が頼もしく見えるぞ……。
ドアを開ける唯奈。
その前には……
「あ、唯奈ちゃん。どこかいくの?」
いつもの、千奈が立っていた。
「いや、別に……ねぇ、お兄ちゃん?」
「あぁ」
「あ、お兄さん……いつの間に……?」
「いや、さっきだけど」
「そうですか。全然気付かなかったです……」
「そりゃそうだよ、千奈ちゃん」
「え?」
「いつもの、出てたみたいだよ?」
「「え……?」」

390 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:14:40 ID:d5g2kOvY
これは、千奈の驚きの「え……?」と、
俺の『言っちゃってもいいのか……?』という「え……?」である。
これがハモる辺り、俺も大分、この双子のことが分かってきたということだろうか……。
「ねぇ……唯奈ちゃん……私、何しちゃったのかな?」
「さぁ?私もそこまで詳しくは……お兄ちゃんに聞いて」
「お兄さんに……?」
二人の視線が俺に向く。
「……あの……スイマセン……私……たまになっちゃうんです……
 変なこと……しませんでした……?」
「え……えっと……」
「唯奈も、それ聞きたいなぁー?ね、お兄ちゃん?」
「お願いです、お兄さん……教えてください……」
「そ……それは……」
二人の妹に詰め寄られる俺。
言うべきか言わざるべきかを頭の中でグルグルと回転させながら……
平和な事件であることに、少し幸せを感じるある初夏の午後でした……。
───────────────────────

391 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:15:13 ID:d5g2kOvY
太陽が輝き、鳥が鳴く。
まぁ、今日も暑い一日になりそうだが、雨が降るよりはずっと良い。
窓の外を見てそんなことを考えつつ、グラスの麦茶を飲み干す俺。
と、後方でなにやら人の気配。
振り向くと、
「はわぁー……おはよー……」
俺の妹、沙耶らしき人物が欠伸しながらやってきた。
「おはよう、沙耶。今起こそうと思ってたんだよ」
「うん。サヤ、一人で起きたんだよー」
沙耶のような人間は眠そうに目を擦りながら笑って見せた。
俺は沙耶のような人の頭にポンと手を置いて、
「よしよし、えらいな」
「えへへー……」
なんとも幸せそうな笑顔を見せる沙耶と思われるお方。
「ところで……沙耶……?」
「?なーに?」
小首をかしげて俺の顔を見上げる。
「どうしたんだ?その髪型……?」
「髪型?どうしたのー?」
「ほら、こっちおいで」
俺は沙耶の後ろに回り、姿見の前まで沙耶を移動させる。
「……な?」
「うん、すごいねー」
鏡の中の、メデューサみたいな髪型の沙耶が答えた。
しかし、ちょっと嬉しそうだな……。

392 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:15:45 ID:d5g2kOvY
「ちゃんと乾かして寝ないからだぞ?風邪引いてないか?」
「うん、だいじょーぶだよー」
「それならいいけど」
手で沙耶の髪を押さえてみたり、手櫛で梳かしてみたりするが一向に直らない。
「ちょっと待ってろ。いろいろ持ってくるから」
「うん」
沙耶の頭を軽く撫で、洗面所へ霧吹きと櫛を手早く取りに行く。
「お待たせー」
俺は椅子に沙耶を座らせると、軽く水を沙耶の髪の毛に吹き付ける。
「きゃはははは!!お、おにぃちゃん、つめたいよ!!」
霧吹きのシュッと音がするたびに、沙耶の体が大きく揺れる。
「我慢しろ」
「で、でもぉ!!きゃははははは!!」
そんな沙耶に何度も霧吹きを用い、やっと沙耶の髪がしっとりしてくる。
その髪を櫛でとかしていく。
すると……
「……」
……鏡に映る少女。
幼い顔に浮かぶ嬉しそうな微笑。
そのフェイスとは一見ミスマッチな、しっとりとした長い髪。


393 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:16:18 ID:d5g2kOvY
でもそれが何だか可愛くて……
普段の沙耶とのギャップに戸惑い、思わず手を止めてしまう。
「どうしたの?」
鏡の中の妹は、俺と目をあわせると、眩しい笑顔を返す。
これは……ヤバいかもしれない……。
「おにぃちゃん……?」
一向に動かない俺を心配してか、上を向いて俺の顔を直接覗きこむ沙耶。
「……」
ここからは一瞬の出来事だ。
テーブルの上においてあった二本のリボンを掴み、少々強引に沙耶の髪を縛り付ける。
「さ、朝御飯食べようじゃないか、なぁ!?」
「う、うん……」
不思議そうに自分の髪を見ている沙耶。
俺は極力何も考えないように、キッチンへ急ぐ。
「写真……撮っとけばよかったかな……?」
「写真?なんのー?」
「な、なんでもない!!」

何だか汗が止まらない俺……。
どうも、今日も暑い日になりそうだ……。
───────────────────────

394 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:16:51 ID:d5g2kOvY
「暑……」
「あ〜づ〜い〜……」
焼け付くような日差しの中、俺、州田敬介は幼馴染のなんとかいう女と下校中……。
「それにしても……男子はいいよねぇ……」
隣の相川だったか相沢だったか言う女が唐突に呟く
「何が?」
「だって、上脱げるじゃん。梨那はそうはいかないもん……」
そうだ、コイツの下の名前は梨那だ……。
「大丈夫だろ、そんなやせっぽちの体見たって、誰も欲情はしないと思うぞ……」
この場合は、もちろん、出るべきところがやせっぽち。
出るべきところじゃない部分は……言うまい……。
「にゃっ!!そういう問題じゃないぃ!!」
「あ、逆に出てないから恥ずかしいのか……」
「だから、違うぅっ!!」
顔を真っ赤にして反論する梨那。
……見ているだけでも暑苦しい……。
「何が違うんだ」
「出てる出てないは関係ないの!!女の子は皆恥ずかしいんだよっ!!」
「あのなぁ……じゃあ、聞くが、いくら暑いからといって上半身脱いで町を歩いている男を見たことがあるか?」
「にゃ……ないけど……」
「結局、男だろうと女だろうと変わらんよ。俺は、逆に、制服のスカートは涼しそうで良いと思うけど」
「でもでも、ぱんつ見られちゃうんだよ?」
「いいじゃん、見せれば。どーせ誰も梨那のなんか……」
「そ、そんなこと……!!」
「……そんなこと?」
「にゃぁ……あるっていうのも、ないっていうのも、なんかイヤっ……」
非常にしょうもないことに、頭を抱えて悩んでいる梨那。
あぁ、でもどっちもイヤかもなぁ……。

395 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:17:33 ID:d5g2kOvY
「しょうがない、品の無い話題になってきたし、無かったことにしてやるよ」
「うん、ゴメン……えっと……何処まで戻る?」
「お好きなところまで」
「じゃあ……えっと……ぱんつ見られちゃうのイヤだけど、でも、ブルマとかはくと蒸れちゃうしぃ……」
「……」
人の話聞いてないな……。
……呆れる俺。
これはもう……
「あ、お兄ちゃん、何処行くのっ?」
帰り道から一歩外れた俺を梨那が呼び止めた。
「コンビニに避難する」
「あ、待ってよー、梨那も行くー!!」
暑さを逃れようと少し早足になる俺を後ろから追いかけてくる梨那。
何か今日は二人ともノリがおかしい気がする……
───────────────────────
「んー!!涼し〜!!」
コンビニに入るなり、声を上げる梨那。
そんな梨那を俺は無視して
「何かいいの入ってないかなぁーっと」
俺は一人、飲み物の棚へ。
「あ、梨那、ミルクティーにしよう!!」
脇から梨那が声をかけた。
「こんな暑いのにミルクティーかよ……」
「だって、甘いの好きだもん」
「……ま、それならそれでいいけど」
俺も甘党だが……こんなクソ暑い日にミルク系の飲み物はちょっと……。
「……飲み物は止めにしよう……」
気分が優れなくなってきたので、ドリンクは止め……。
新発売の商品のチェックはまた今度だな……。

396 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:18:04 ID:d5g2kOvY
「えー……じゃあ、梨那もやめるよー。アイス買おうよ、アイス!!」
「そうだなぁ……アイスの美味い季節になったからな」
「うん。でも、梨那はいつでも食べてるけどねー」
「そうか、俺はあんまり……っていうか、コンビニでアイス買ったことないかも」
「えっ!?無いの!?」
「そんな驚くことか?俺は飲み物ばっかりだし、アイスは買わんな」
「そっかー。じゃ、コレ買わない?美味しいよー?」
そういって、端のアイスを指差す梨那。
「おい、一個250円もするぞ、これ?」
「うん、きっと美味しいよー」
「……食べたこと無いのか?」
「そのアイスは、こーきゅーんひんだよ?梨那があるわけないよー」
そういって、能天気に笑う梨那。
……コンビニで売ってる高級品か……小ちぇえなぁ……。
「まぁ……俺も250円もするアイスをちょっと買おうという気にもなれないけど……」
「だよねー。梨那はガリガリくんで我慢するよー」
「それも寂しいなぁ」
「しょうがないよー」
「じゃあさ、金半分出し合わないか?」
「え?」
「俺もなんか食べてみたいし、どうよ?」
「うーん……半分で125円か……うん、わかった!!半分出すよ」
「よし、決まりだな。さ、買って帰るぞ」
「うん」
高級品のアイスを一つ、レジに持っていく二人。
……持ってみると予想以上に小さいな、このアイス……。

397 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:18:36 ID:d5g2kOvY
「へへ〜、楽しみ〜!!食べよ、食べよっ!!」
コンビニから一歩出ると、早速切り出してくる梨那。
「早いな」
「早くしないと溶けちゃうもん。美味しいうちに食べよ!!」
そういって、俺の持つビニール袋を漁り始める梨那。
「ま、そうだなぁ」
「一口目はどっちが食べる!?」
「お前でいいよ……」
「え!?いいのっ!?」
「いいよ、別に」
「でも、ファーストインパクトだよ!?重要だよ!?」
「いいって、それぐらい」
「わーい、ありがとー、お兄ちゃん!!じゃ、遠慮なく、いただきまーす!!」
木製のスプーンで、すくって食べる。
「ん〜!!美味しぃー!!」
「そんなに?」
「うん。ほれ、食べてみてよ」
間接であることには一切気付かぬまま……梨那の差し出した、スプーンを口に運ぶ。
「うぉ……」
「美味しいでしょ?」
「コレ食ったら、普通のアイス食えんな……」
「ねぇー?もっと食べるー?」
そういってアイスを梨那から受け取る俺。
「半分は俺のもんだっての」
流石に、量が少ないので、俺の分はもう無くなった……。
食べ足り無い気持ちを抑えて梨那にカップを返す。

398 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:19:08 ID:d5g2kOvY
「それもそうかー。……小さな贅沢だねぇ……あ、もうないや」
「ほんと、高いし少ないな……」
「うにゃー……これが毎日食べられるようなお金持ちになりたいぃー!!」
コイツ、なんか色々小せぇ……。
「美味かったな」
「うん、また二人で買おうね?」
「まぁ、そうなっちゃうか……」
そう考えると、少し残念な気持ちになる。
「ま、贅沢はたまにするくらいで丁度良いというしな」
「そうだねー、毎日だと有難みが薄れちゃうかもね」
スプーンを咥えたまま喋る梨那。
「おい、梨那、ほれ」
ソレを見た俺は、梨那に手を差し出す。
「にゃ、何?」
「スプーン。さっきの袋に入れてやるから」
「い、いいよ!!」
「何で?」
「べ、別にっ!!」
「みっともないぞ?」
「う……で、でも……間接……」
「は?」
「な、何でもないにゃ!!」

399 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:19:40 ID:d5g2kOvY
「ったく、変なもん欲しがりやがって……でも、咥えとくのはやめろよ?」
「うん……わかりました……えへへ」
スプーンをハンカチで拭き、ポケットにしまう、何故か嬉しそうな梨那。
意味が分からず、流れた汗を拭く俺。
「ねぇ、お兄ちゃん?」
俺の目を覗き込む梨那。
そして、自分の唇をそっと撫でる。
「ん?」
「えへへ〜♪なんでもないよー!!」
「はぁ……?」

そんなこんなで、暑苦しくも、明るい生活に俺はまた汗を流すのでした……。
───────────────────────

400 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:20:13 ID:d5g2kOvY
「あれ……ここじゃなかったかなぁ……」
埃っぽい押入れの中、様々なものをかきわけながら、ついついどうでも良いことを口走る。
「あ、何か探し物ですか、兄さん?」
パタパタと足音を響かせながら、俺の妹、未来が声をかけた。
「おー。あの、親父が買ったキャンプ用の折り畳めるテーブルなんだけど……」
「あぁ、あれですね。そこに無ければ外の倉庫じゃないですか?」
「やっぱそうか……。邪魔だから移したのかな」
「そうでしょうね……邪魔でしかたらね、アレは」
「じゃあ、外か」
押入れから脱出しながら、埃まみれのTシャツを手で払う。
未来は飛んでくる埃に少し顔をしかめながら、
「で、それを何に使うんですか?」
「あぁ、ベランダに置いて……」
「あっ、分かりました。今晩の花火ですね?」
「ご名答。ちょうど良い位置にこの家が立ってるし、今年は腰を入れて楽しもうかなと」
「へぇ、それはいいですね」
「良かったら、未来ちゃんもどう?」
「いいんですか?」
「もちろん。どーせ、一人で見る気だったし。せっかくだから、一緒に見ようよ」
「あ、それならお言葉に甘えさせてもらいますね」
「おー、じゃ、どうせやるなら、飲み物とかお菓子とか買ってこようかな」
「あ!!それなら、宴会用の料理作ります、私!!」
手を高く上げてアピールする未来。
嬉しそうだな……。
「何か本格的な宴会になってきたなー」
「ですね」
そう言って、嬉しそうに微笑む未来。
あぁ……和むなぁ……。

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0ch BBS 2004-10-30