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[第五弾]妹に言われたいセリフ
- 1 :たゆんサマの降臨 :05/03/13 21:43:36 ID:xJ0cSVLy
- 「また会えたね、お兄ちゃん」
ここは、脳内の妹さんが囁いてくれるセリフとかSSとかを暴露しちゃうスレです。
【お兄ちゃんと私のお約束】
・荒らしさんや厨房さんは、ちょっと可哀想だけど、見ないフリをしようね♪
・SS職人さんにはちゃんとお礼を言うこと!!デリケートな職人さんもいるんだからね?
・えっと……いっぱい見られるのはちょっとだけ恥ずかしいから……sage推奨だよ……。
メール欄に『sage』って入れてほしいな……。
・リアルの妹さんの話は程々にすること!!
【お兄ちゃんとの思い出】
妹に言われたいセリフ
http://game.2ch.net/gal/kako/1022/10225/1022257886.html
[第二弾]妹に言われたいセリフ
http://game4.2ch.net/test/read.cgi/gal/1028470988/
[第三弾]妹に言われたいセリフ
http://game9.2ch.net/test/read.cgi/gal/1056993709/
[第四弾]妹に言われたいセリフ
http://game9.2ch.net/test/read.cgi/gal/1106065356/l50
過去ログ倉庫
http://www.geocities.jp/mewmirror9/
このスレでもずぅっと一緒だよ、お兄ちゃん♪
- 2 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/03/13 21:45:09 ID:xJ0cSVLy
- 容量を忘れる辺り、僕もまだまだ初心者ですな・・・・。
続き貼ろうか・・・。
- 3 ::大好きだよ・・・おにいちゃん :05/03/13 21:48:00 ID:xJ0cSVLy
- 「明日で丁度一年になるね」
灯りを消した洞窟に、僕の呟きが響く。
「え、なにが?」
「僕が・・・・お兄ちゃんになって」
「うん・・・そうだね」
「一年・・・そうだ、お誕生日・・」
「え?」
「僕のお誕生日は祝ってもらったけど・・・」
「あ・・・わたしのは・・思い出せないから・・・・」
「そっか・・・じゃあさ、明日にしよう?」
「明日・・?」
「うん。 僕と会った日。 つらい日かもしれないけど・・・だからこそ、いい日にもした方がいいと思うんだ」
つらい事があったら、その分楽しいことをすればきっとつらいのが減ると思った。
「ダメ・・・かな?」
「・・ううん、すごく・・・すごく、うれしいよおにいちゃん・・・!」
「・・・・決まりだね。 明日はコージさんに頼んでちょっと多めに食べ物をもらおう」
「うん、うん・・・」
「なにか食べたいの、ある?」
「えとね・・・リンゴ!」
「ふふ、分かってる、必ずもらってくる。 他にはない?」
「あのね・・前におにいちゃんに作ってもらった、あのお料理が食べたいな」
「ん〜・・・アレはお肉が欲しいから・・うん、お肉がもらえたらそうしよう」
「わぁ、ありがとう、おにいちゃん」
暗くてよく見えないけれど、きっと満面の笑顔なんだろう。 僕はそれを感じたくて、そっと頬をなでた。
「あ・・・れ?」
濡れていた・・・・涙で。
「ど、どうしたの? やっぱり、つらい?」
「ううん・・・違うの。 すごく、すっごくうれしいの。 うれしすぎて、涙が出ちゃったの」
「大好きだよ・・・おにいちゃん」
- 4 ::地雷を用意しろ!! :05/03/13 21:49:22 ID:xJ0cSVLy
- 「誕生日・・・か。 いいね、そりゃ」
翌日、僕はコージさんにそのことを相談していた。
「お前も運がいい。 こないだ豚を拾ってな・・血抜きも済んでる。 持ってくといい」
「あ、ありがとうございます!」
「あとはなんか注文あるか?」
「リンゴがあれば」
「おーけー、キープしとく」
これで全部そろう・・・僕は段々と楽しい気持ちが高まっていくのを感じた。
「妹さん、大切にしろよ」
「はいっ!」
今日が楽しい日になれば、きっとあの子はもっと笑ってくれる。 あの子のためなら、僕は何だって出来るんだ。
そう、あの子の笑顔の為なら―――。 僕は死ねる。
爆音が轟いた。
ボロボロの建物が揺れる。
「・・・っ!? 敵か!? こんな所まで?!」
「コージさん、出ましょう! 崩れますよ、こんな建物!」
「ああ・・・・!!」
裏口から様子を窺いつつ出る。
「コージ!!」
「レクス、何が起きてんだ!?」
「サイアクだ・・・あいつら骨董品の戦車を引っ張り出してきやがった!」
「戦車ぁ!? そんなもん、どっから出したんだ?!」
「知らねーよ! 第二次大戦の時の骨董品だが、生身じゃキツイ!」
「くそっ、なんつー展開だよ、こりゃ!!」
「コージ、戦車に対抗するにはアレしかないぜ」
「アレって・・アレか?」
「ああ、今の装備じゃアレしかねえ」
「分かった・・・地雷を用意しろ!!」
- 5 ::ミッションスタート! :05/03/13 21:51:56 ID:xJ0cSVLy
- 「やることは簡単なんだ。 戦車に近づいて、底面に貼っつける。 後は適当に離れてボン」
「問題は近づくことだ。 奴ら歩兵と組んで行動してるからな。 とっととこいつらを排除しないといけない」
「十四、五人でどうにかなる相手なのか?」
「敵方は戦車17台、歩兵は7、80かな」
「ひゅー、敵さんいきなり本腰だねぇ。 骨董品がそんなあったのも驚きだが・・レクス、地雷よこせ」
「おいおい、司令官が突っ込んでく気かよ?」
「俺ぁ司令官なんかになった気はないね。 ヴァニシングトルーパー、それが俺の名だ」
「馬鹿言ってんじゃねーよ、タコ」
「タコだとぉ、この銃器マニア」
「その銃器マニアのお陰で今、銃器に苦労してねーんだろ」
「なら対戦車バズーカぐらい用意しとけや」
「・・・・お前らいい加減にしたらどうだ。 ほらコージ、対戦車地雷だ」
「さんきゅ、スティ。 うし、一発かますかね」
「結局お前が先陣切るのかよ・・・おいボウズ、離れるなよ」
「・・・・はい。 僕たちは後方支援、敵の歩兵を撃てばいいんですね」
「そうだ。 俺はとにかくばら撒くから、お前は確実にしとめていけ」
「分かりました」
「ったく・・・こんなガキに人殺しの指示を出さなきゃならんたぁな」
「ぼやくなレクス。 戦争ってのはそんなもんだろ」
「俺らはお前と違って、そう簡単に割り切れねー事情ってもんがあんだよ。 なぁ、コージ」
「ああ。 お前も家族が出来ればそう言ってられねーぞ、スティ・・・ってなんの話をしてんだ」
どんっ―――と、音というより衝撃が走る。
「うおっと、和やかに談笑してるうちに、敵さんらがこっちにきたみたいですな」
「ま、いつもどうり傭兵野郎Aチームの華麗なるチームワークで切り抜けようぜ」
「そうだな。 こんなのは4人で爆撃機を11機落としたときよりずっと簡単だ」
「あー、対人火気しかなくて大変だった―――」
どんっ―――。
「ま、昔話の時間でもないようだな・・・・それじゃあ」
「ミッションスタート!」
- 6 ::お前に任す :05/03/13 21:53:46 ID:xJ0cSVLy
- いつもふざけてる様で、コージさんたちの戦闘技能はすごい。
僕が引き金を五回も引かないうち、戦車一台が爆炎をあげた。
「スティ、向こうの路地!」
「了解だ」
「ボウズ、俺たちはこっちだ! コージに続くぞ!」
「はいっ!」
一人、二人と僕が敵を撃ち抜いていく。
一時間経たないうちに、四分の三ほどの戦車が破壊された。
僕も確実に死人を作っていく。
「ボウズ、引っ込め!!」
レクスさんの怒鳴り声に反射的に従う。
チュインチュインチュインッ―――鉄筋コンクリートの柱の残骸、その表面を弾丸が掠め取って行った。
「よ、どうだ」
「コージ? 先行ってたんじゃなかったのか?」
「いや、地雷が切れてな。 取りに戻らなならん」
「こっちにゃ、もう戦車はいねーんじゃねーか?」
「なら別の方に行くか」
「ああ・・・奴らをどーにかしてからな」
コンクリ越しに向こうを見やる。 数は十数人といったところか。
「おいおい、なんであんなかたまってんだよ?」
「指揮系統か作戦系統が上手くいってないのかもな・・・・しかし、それがこっちに不利に働くとはな・・・」
「よし、囮だ、向こうの建物まで走れレクス」
「ぶっ殺すぞてめぇ」
「いや、結構真面目な話なんだが」
「なおさらだ。 お前のが足も速いし適任だろーが、ヴァニシングトルーパー」
「それなら僕がやります」
「ボウズが・・・・?」
「はい。 敵も子供なら撃つ事をためらうでしょうし、足は多分お二人よりも速いと思います」
「・・・・分かった。 お前に任す」
- 7 ::ああそうか、僕は :05/03/13 21:55:29 ID:xJ0cSVLy
- 「俺が合図したら飛び出せ」
コージさんが僕を見る。
「絶対に死ぬなよ」
「はい。 食べ物、多めでお願いします」
「ああ、まかしとけ。 せいぜい派手に祝ってやれ」
合図とともに走り出す。
向かいまでの20メートル。
何のことは無い、いつもどおりだ。
戦場に子供が居るのは不思議じゃない。
けれども誰もそれが兵だとは思わず、引き金を引くのをためらう。
そう、いつもどおりのハズだった。
敵に徴集されたばかりの新兵が居たこと以外は。
動くものは標的―――戦場で恐慌状態になった新兵は、余りにも軽い引き金を引いた。
タタタタッ、タタッ。
軽快な音が響く。
どうにか当たらずに済んだ僕は、建物に飛び込む。
しばらくの間音が鳴り響く。 ・・・・・そして、静寂が訪れる。
僕はコージさんたちの方を見た。
コージさんがこっちに親指を立てた。 作戦は成功―――僕は安堵の溜め息を吐いた。
僕は立ち上がって、コージさんたちの方へ向かう。
「ナイスランだったぜ、ボウズ」
「ありがとうございます、レク――」
衝撃に、僕の言葉が遮られた。
視界が、倒れる。
体が動かない。
段々と胸の辺りが熱くなってくる。
レクスさんが何か叫んで、コージさんが銃を撃つ。
まるで、スローモーション。
ああそうか、僕は、撃たれたんだ。
- 8 ::お前が居なきゃ :05/03/13 21:57:02 ID:xJ0cSVLy
- 「しっかりしろ、ボウズ!!」
「レクス・・・・さん?」
「くそ、血が止まらねぇ!!」
「落ち着けレクス! 応急処置は済んだんだ、衛生兵を呼ぶしかねぇ!」
「ば、馬鹿野郎! 俺たちのメディックは、この前死んじまっただろうが!!」
段々と、音が遠くなってくる。
痛みがないのは、麻酔かなにかのお陰だろうか?
僕は、ここで、死ぬみたいだ。
走馬灯は見えない――代わりに、あの子の顔が浮かんだ。
僕の、大切な、妹。
僕に与えられた、最後の家族。
そうだ、今日はあの子の誕生日だ。
最高に楽しい日にしなくちゃならないんだ。
「コージ・・・さん・・」
「な、なんだ!?」
「今日・・・妹の、誕・・生日、なんです・・・」
「ああ、知ってる!」
「だから・・・・祝って、あげて、くれませんか・・」
「ああ! 盛大に祝ってやるよ!!」
「そう・・あの子の、好きな、料理も・・・一度、だけ・・・僕が作った料理・・・ホイコーローも、作ってやって・・下さい・・」
「作ってやるよ!! 俺の最高の奴をよ!!」
「あり・・がとう、ございます・・僕の、代わりに・・・今日を、最高の・・誕生、日に・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「おい・・・ボウズ・・・・死んだのか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「おい・・・ウソだろ・・・? 俺のガキより小さいのに・・・なんで死ぬんだよ!? まだ生きてなきゃ駄目だろ!?」
「くっ・・・・・・・くそっ!! くそっ!!」
「何だよ・・・死ぬんじゃねーよ!! まだ死ぬ歳じゃねーだろ!? お前が死んでいいわけねーだろっっ!!!!」
「馬鹿野郎・・・この大馬鹿野郎・・・!! 誕生日なんて――――」
「お前が居なきゃ、意味がねーだろーが―――っ!!」
- 9 ::ランだもん :05/03/13 21:59:18 ID:xJ0cSVLy
- 「あの子の・・レイジちゃんの引き取り先、見付かったぞ」
低い声で、コージはレクスに言った。
「日本の方に祖母がいたらしい。 日本なら俺も居るからな・・・なにかあればそこに行ける」
「・・・・・・・・」
「レクス・・・・」
「あの子・・・・思い出しちまったんだとさ」
「・・・・何を?」
「名前とか、戦争前の頃のこととか・・・・両親が死んだときのこととか」
「・・・・・・・・・」
「・・・・ボウズが、死んだショックでだろうな・・・・・・・・・」
コージは応えず、ドアを開けた。
その中には、兄を二度も失った少女が居た。
「・・・・レイジちゃん。 これからキミは日本のおばあさんの所に行くことになった」
「・・・・・・・おにいちゃんは?」
「俺も・・・アイツが死んだ実感なんてない。 でも、アイツは・・・・死んだんだ」
何も残さない、死。
残ったのは、彼女の深い悲しみだけ。
「またなの・・・? どうしてわたしを置いてくの? ずっとずっと、おにいちゃんでいてくれるって言ったのに・・・」
「・・・・・レイジちゃん・・・・」
「ちがう・・・ちがうもん・・」
「レイジちゃん・・?」
「わたしの名前、ちがうもん・・・・」
『名前も、思い出せないの?』
「おにいちゃんがつけてくれたんだもん」
『それじゃあ僕が付けてもいいかな?』
「わたしの・・・わたしの名前は―――」
『僕の好きな色なんだけど・・・嫌かな?』
『ううん・・・好き。 それがいいな・・・今日からわたしは―――』
「―――藍、ランだもん」
- 10 :中華:第五話 9 :05/03/13 22:02:33 ID:xJ0cSVLy
- 「・・・・・・・・・・・・」
僕は、何も言えなかった。
あの、明るい藍が抱えるモノは・・・・・あまりにもつらい過去。
「あの子は三回も家族を失ったのさ・・・」
「三回・・・?」
「実の親が死んで、引き取り先の家族は戦争で殺されて―――そして守ってくれた『兄』も殺された」
「・・・・!」
「だからあの子は家族がいなくなるのを恐れる。 必要以上に明るく振舞おうとする。
家族に嫌われたくないから・・・・・過去を自分の中に殺してまで」
「夢は・・・・藍の、悲鳴・・」
「そうさ・・・あの子は今でも繰り返し夢を見てるのさ・・・・・家族の、死をね」
なんて・・・ことだ。 藍は、藍は今までずっと、そんなものを一人で抱え込んでいたのか。
「ホイコーローがアンタと兄を重ね合わせたのさ・・・」
僕は・・・・僕は・・・藍の苦しみの前には、余りにも小さな存在じゃないか・・・・・。
「でもね・・・あの子が懐いたのそれだけじゃないはずさ。 ただの代わりなんかじゃないさ、アンタは」
僕の心を読んだように、ばあさんが言った。
「ど、どうして・・・? 僕はただホイコーローが上手く作れたって、それだけじゃないですか」
「アンタはきっぱり言った。 自分は藍の兄だ、ってね。
今まであの子のことをそこまで考えてくれたのはアンタが初めてさ。 アンタなら・・・あの子を救える」
ばあさんは僕の目を見て言った。
「救ってやっておくれ・・・あの子を」
「・・・・僕は・・」
ぴろりろりろ――――電子音が鳴り響く。 ・・・・電話だ。
「・・・・・・・・・・・・・・僕が、出ますね・・」
受話器を取り、耳に当てる。
「もしもし・・・・・・はい、そうです・・・・・・・え・・?」
- 11 :中華:第五話 10 :05/03/13 22:04:27 ID:xJ0cSVLy
- 僕は走った。
藍が向かった市場へ。
電話の相手は、警察。
藍に何かあって・・・怪我をしたらしい。
重体なのか、軽症なのか――警察でも状況を掴みかねているらしい。
藍、藍、藍――無事で・・・いてくれ・・・。
市場が見えてくる・・・人がごった返すその中に突っ込んでいく。
「藍、藍!! どこだ、どこに居る!?」
僕は奥へ、奥へと進んでいく。
管理事務所の前・・・藍は居た。
「お兄ちゃん・・・? どしたのか?」
「ら、藍・・・無事で・・・・?」
「無事・・・?」
きょとんとした表情・・・・。 そこに事務所のおばさんが話しかけてくる。
「藍ちゃんがね、引ったくりを捕まえてくれたんですよ。 犯人と格闘になって・・・でも中国武術でやっつけちゃってくれて」
「あはは、ちょちょいのちょいね。 ほら」
藍が指差す先に、丁寧に縛られて伸びている男が居た。
「わたしにぶつかて、買い物落としてしまたよ。 晩御飯の材料、ダメになて頭にきて、ちょとやりすぎたかもしれないアル」
ちろっと舌を出す藍・・・。
「怪我・・・怪我は無いの?」
「うん? 打ち合いなたから何発かもらたけど、大したことないアル」
「藍・・・・」
僕は・・・・思わず藍を抱きしめた。
「お、お兄ちゃん?」
「もう・・・こんな無茶はやめてよ・・・・すごく、すごく心配したんだ」
「ご、ごめんなさいアル。 晩御飯、とてもおいしいの作るから、許して欲しいアル・・・嫌わないで欲しいアル・・・・」
「・・・・・・・藍・・・! 大丈夫だから・・・! 僕は、何処にも行かないから・・・ずっと、藍といるから・・・・!」
「お・・・お兄ちゃん・・・・?」
「だから、だから・・・・もう、大丈夫だから・・・・・」
「どして・・・泣いてるか・・・?」
- 12 :中華:第五話 11 :05/03/13 22:07:27 ID:xJ0cSVLy
- 言葉がまとまらなくて・・僕は泣いていた。
今まで藍が抱いてきた、苦しみとか、悲しみとか・・・・それを思うと胸がいっぱいになった。
「大丈夫だから・・・・絶対、離れないから・・・」
「おにい・・・・ちゃん・・・? どうしたか? 悲しいこと、あたか?」
悲しいことがあったのは、藍、キミの方だろ?
それをずっと押し殺してきたんだろ?
「大丈夫だから・・・僕は、キミを置いていかないから・・・・・」
もう、無理はしなくていいから・・・僕が支えるから・・・・。
「・・・・・・・・・お兄ちゃん・・・・・・・・ホント、か・・? お兄ちゃんは、藍、置いてかないか?」
「ああ、絶対に置いていったりしない」
「ホントか? お父さん、お母さん、ホントのも、そでないのも・・・みんな藍、置いてた・・。
『おにいちゃん』たちも、みんな、ずと一緒言った・・・でも、みんな置いてたよ・・・・」
「僕は置いていかない!! 絶対に置いていかない!!」
「ホント・・・か? 信じて、いいか? ・・・・・ら、藍の・・ホントのお兄ちゃんに、なてくれるか?」
「ああ!! 藍は、僕の妹だ!! 誰よりも大切な、妹だ!!」
「お兄ちゃん・・・・おに・・・・ふえぇ・・・」
「藍・・・・・!!」
「お兄ちゃ――んっ!! 怖かた・・お兄ちゃんに、『お兄ちゃん』になてくれ頼んでも・・・断られる思た・・・!!
でも、お兄ちゃんに、『お兄ちゃん』なて欲しかた・・・わたしの苦しいの、助けて欲しかた・・!!」
「うん・・・大丈夫、大丈夫だ・・・僕は藍から離れてったりしないから・・・これからは、二人で越えていこう・・」
「頼ていいのか? 迷惑違うか?」
「何言ってるの・・僕と藍は兄妹なんだよ・・・頼って当たり前だし、僕だって藍に頼るし」
「うん・・・・うん・・・・!!」
「僕らは、家族なんだから・・・・」
「・・・・・うん・・・!!」
市場の真ん中で、僕と藍は抱き合って泣いていた。
周りから見れば、さぞかし奇妙な光景だったろう。
でも、丁度いい。
これは僕と藍が兄妹に・・・本当の兄妹になったことの宣言なんだ。
これからは、ずっと、ずっと一緒―――恋人にも似た、永遠の誓い。
- 13 :中華:第五話 12 :05/03/13 22:10:14 ID:xJ0cSVLy
- 繋いだ手、帰り道。
「藍、早速だけど頼みたいことがあるんだ」
「うん? なにか?」
「次の休み、空いてるかな?」
「えと、空いてるよ?」
「それじゃあ一日付き合ってくれないかな」
「構わないが・・・デートか? デートなのかっ?」
期待に満ちた目で僕を見詰める。
「ん〜、期待してるところ悪いけど、デートとは言いがたいかな」
「む・・・そか。 それならどこ行くか?」
「僕が借りてるアパート」
「アパート? 何するか?」
「引越しの手伝いして欲しいんだけど」
「引越し・・・か?」
「うん・・・・藍の家に」
「え・・・・わ、わたしのウチにか?!」
「うん・・・やっぱ兄妹だし、一緒に住んだ方がいいかな・・って。 ダメかなぁ?」
「とと、とんでもないアル! 大歓迎アル!!」
「ありがと、藍」
「お兄ちゃん・・・やっぱり、お兄ちゃんはお兄ちゃんアル」
「なんで?」
「わたしが一番して欲しいことしてくれるよ・・・お兄ちゃん、大好きアル!!」
日々が始まる。
僕らの新しい日常がやって来る。
過去でなく、現在へ、未来へと向かうために。
僕と藍、二人で歩き出す。
そう、一人でなく、二人で―――。
- 14 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/03/13 22:27:00 ID:xJ0cSVLy
- 辻褄を合わせるコーナー!!
1、警察の電話って、なんだったの?
浩人 「え〜と、なんか藍が怪我させた、をどっかで間違って伝わったみたいです」
2、仕入れはどうなったの?
藍 「ゴタゴタで忘れてしまたアル。 あの後ばばさまに怒られたよ・・・」
3、傭兵ですか?
コージ 「スマン、あの戦闘前シーンあたりは完全に趣味だ」
4、藍の経歴がよく分からんのですが。
ばばさま 「両親に死なれて、親戚の家に引き取られたのさ。
そこの息子によく懐いてたそうだよ・・・。 そして戦争でその一家は藍を残して・・・というわけさ」
5、四川料理を作れたのはなんで?
おにいちゃん「えと、僕のお母さんが四川の方の出身だった・・・じゃダメですか?」
えーと、こんなもんかな・・・?
僕がだらだらと長い台本なんか貼るもんで容量オーバーしちまいました。
でもこれでもう悔いは完全に・・・ありまくるのでこれからもごめんなさい。
紅の蒼龍第五話 前スレ最後+>>3-13
今後の予定
中華外伝
プロジェクトJの完結
あにまにプロジェクトの始動
ネタだけなら腐るほどあるのにテクニークがおっつかない。
早く神が来ますように。
- 15 :すばる ◆9tSxotve.o :05/03/13 22:55:29 ID:7bnONWe+
- スレ立て&SS乙ですー。
素晴らしかったです!
ホワイトデイSS、書けませんでしたorz
- 16 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/03/14 12:35:01 ID:ozX7WEe1
- 休みはいいねぇ……。
俺は休日の有難みを噛み締めながら、ベッドに寝転びながらダラダラと雑誌を読んでいた。
すると……
「おにぃちゃーーーーーん!!」
妹、パジャマ姿……ま、沙耶のパジャマは俺のYシャツだが……の沙耶が俺のベッドに突然飛び込んでくる。
「ぐはっ!!」
降ってきた沙耶をまともに腹に食らってしまった。
「朝だよー!!起きてよー!!」
俺の腹に抱きついて脚をバタバタさせる沙耶。
「沙耶……どいてくれ……重いよ」
俺から降りて、ベッドのそばに立つ沙耶。
そして、腕をパタパタ振りながら、
「あ、うん!!それよりね、それよりね!!」
「何?」
「今日はホワイトデーなんだよ!!知ってるー!?」
ホワイトデー……!?
ヤバっ……すっかり忘れてた……。
「いや、知らないな。ホワイトデーって何?」
「はわっ?おにぃちゃん、知らないのー?」
「うん。教えてくれ」
「えっとねぇ、男の人が女の人にバレンタインデーのお返しをあげる日なんだよー!!」
「へぇ……そんなの、俺の故郷には無かったぞ?」
「ふるさと……?」
「ああ、アメリカじゃそんな日なんてなかった」
「はわわっ!?おにぃちゃん、あめりか人だったのっ!?」
「知らなかった?」
「知らなかったよー!!じゃあ、サヤもあめりか人なのっ!?」
- 17 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/03/14 12:36:01 ID:ozX7WEe1
- 「オフコース」
「はわわっ!?サヤ、英語分からないよっ!?」
「とまぁ、冗談はコレぐらいにして……ホワイトデー、何も用意してないなぁ……」
「うん。だって、あめりかにはホワイトデーは無いんだよね?しょうがないよー」
会話が噛み合ってない……。
沙耶は何を冗談だと思ったのだろうか……。
「……いや、だからソレはウソで……」
「ウソ……?じゃあ、おにぃちゃんとサヤはあめりか人じゃないの?」
「そりゃそうだろ」
「あー!!良かったー!!サヤね、英語全然分からないからどうしようかと思っちゃったよー!!」
「ほぅ。ま、そりゃよかったな。朝飯食うぞ、朝飯」
「うん!!」
作戦成功。
ホワイトデーのことを忘れてくれたようです。……ま、どこまで持つかが問題だけどね。
───────────────────────
「どうすっかなぁ……」
とぼとぼ歩きながら呟く。
沙耶へのプレゼント、コレだ!!ってモンがないんだよな……。
「あーあ……」「あーあ……」
ドン。
誰かに正面衝突する。
「あっ、すいません……」
「すいません!!すいません!!」
俺とぶつかった女の子が、何度も頭を下げて俺に謝る。
あれ……この娘は……。
- 18 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/03/14 12:37:01 ID:ozX7WEe1
- 「ひょっとして……千奈ちゃん……?」
「えっ……み、三上さんっ?」
「こんにちは。千奈ちゃん」
「は、はい!!こんにちは……あ、あのっ!!すいませんでした!!私、ボーっとしてて!!」
「いいよいいよ。俺もちゃんと前見てなかったし……で、今日は真司は?一緒じゃないの?」
「えっと……今日は……」
「そうか。千奈ちゃんは一人で何してるの、こんなところで?」
「えっと……お散歩です」
「ま、考え事するのに一人は丁度いいしね」
「えっ……?」
「いや、何か悩んでます。って顔だったからさ。俺でよかったら話に乗るよ?」
千奈ちゃんはしばらく俯いて、迷っていたようだが……
「あっ、はい。お願いします」
「うん。で、どうしたの?」
「今日はホワイトデーで……お兄さんが美味しいもの買ってきてくれるって言ってたんですけど……」
「ふむ……」
「つい忘れて、ケーキを焼いちゃったんです……」
「うん。……で?」
「えっと……それで終わりですけど」
えっと……
真司が折角何か買ってきてくれるのに、お菓子が家にあったら真司に申し訳ない……
でも、捨てるのも勿体無いし……。みたいな感じ……?
それは悩みの部類に入ってないと思うのだけど……。
「じゃあさ、そのケーキ、俺にくれないか?」
「えっ?」
「俺もホワイトデーのプレゼント探しててね。かなりの店に行ったけど、あんまり良いのが無くってさ」
「ええ、構いませんけど……いいんですか?」
「ああ。千奈ちゃんのケーキなら、沙耶も喜ぶと思うよ」
「そうですか。そう言ってもらえると嬉しいですね」
「はははっ。……そうだ、お礼をどうしようかな。何がいい?」
- 19 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/03/14 12:38:01 ID:ozX7WEe1
- 「い、いえ!!お礼なんて悪いですよっ!!」
「いや、そういう訳にはいかないって……どうしよう」
「じゃあ……あ……あの……三上さん……一つ欲しい物があるんですけど……」
微妙に千奈ちゃんの頬が赤い……?
何だ、この妙なノリは……
「何かな?」
「えっと……えっと……」
「ん?」
「えっと……ハンバーグ……」
「ハンバーグ?」
「えっと……前頂いたのが凄く美味しかったので……もう一度食べたいなぁと思いまして」
「ははははっ!!分かった、そのうち作って持っていくよ」
「は、はいっ!!え、えっと……ケーキは家にありますけど……」
「ああ、今から行ってもいい?」
「はい」
という訳で……俺、三上修二と友人の妹、石川千奈という微妙なコンビで石川家へ……。
───────────────────────
「ただいまー」
玄関のドアを開けると……
「わーい!!おにぃちゃんが帰ってきたぁー!!」
「ただいま、沙耶」
「ん?おにぃちゃん、何か持ってる?いい匂いがするよー」
「そうか?気のせいじゃないの?」
「ううん。おにぃちゃんの匂いとは違うの。甘い匂いがするー!!」
凄い嗅覚だな……。
「バレちゃ仕方ないな。沙耶へのプレゼントだよ、ホワイトデーのな」
「はわわっ!?サヤの!?」
「うん。ま、こんなところで開けるのもなんだから、リビングに行こうか?」
「うん!!」
- 20 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/03/14 12:39:03 ID:ozX7WEe1
- という訳でリビング。
「はやくっ♪はやくっ♪」
「おぅ……」
俺は千奈ちゃんから貰った箱を開ける。
沙耶はそれを一目見て……
「はわ……わわ……」
落胆した。
それもそのはず。ケーキとはいえ、千奈ちゃんの焼いたケーキはシフォンケーキ。
ま、ケーキのスポンジ部分みたいなもんだ。
それだけでも十分美味いけど……やっぱり見た目には地味だ。
「お、おにぃちゃん……えっと……う、嬉しいよ……」
笑顔を取り繕ってはいるが、悲愴なガッカリオーラがひしひし伝わってくる……。
「へぇ……沙耶、コレで嬉しいんだ?」
「え……?」
「まだ作りかけなんだよ、コレ。でも、沙耶がそんなに喜んでくれるなら、もう食べても良いけど?」
ま、作りかけってのは千奈ちゃんに失礼だが。
面倒なんで、説明は以下の回想に任せる。
『お、美味そうだね』
『でも、これだけだと地味じゃないですか?』
『俺はそうでもないけど……沙耶にしてみれば、地味かもな』
『そうですよね。ですから……コレも差し上げますよ』
『生クリームとフルーツの缶詰……?』
『はい。家でデコレーションしてみてはどうですか?そんなに時間もかかりませんし……』
『なるほどね』
『それならケーキらしくなると思いますよ』
『うん。ありがとう。千奈ちゃん』
『いえいえ。沙耶ちゃんによろしくお願いしますね』
『あぁ、唯奈ちゃんと真司にもよろしくな……あ、それと、真司のプレゼント期待してもいいと思うよ』
『えっ……?』
- 21 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/03/14 12:46:08 ID:xF5FMMku
- 自己支援
- 22 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/03/14 12:46:35 ID:ozX7WEe1
- 『真司、色々情報収集してたからさ』
『お兄さんが?』
『ああ、なんとかアイツらを喜ばせてやりたい。って……』
『お兄さん……』
『ま、真司が帰ってくる前に俺は消えるわ。じゃあね』
『はっ!!はいっ!!』
……という訳だ。
「はわわ……作りかけ?」
「ああ、生クリームと果物の缶詰があるからさ。二人で完成させよう?」
「う、うんっ!!」
「さぁ、まずは生クリームを泡立てないとな」
「はいはいはーい!!!サヤがやりまーす!!」
右手をピンと上げて、自己主張する。
「えっ?結構、大変だぞ?」
「大丈夫だよー!!」
「そうか……じゃあ、頼むわ」
「うん!!」
俺は沙耶に恐る恐るボウルと泡立て器を渡す。
カショカショカショ……。
「んしょ、んしょ……はわわっ!!」
沙耶が勢い余って、クリームを弾き飛ばす。
俺や沙耶の髪や顔にクリームがついた。
「ふふ、きゃははははははははっ♪」
「あっ……あはははははは!!」
「おにぃちゃん、クリームついてるよー?」
「沙耶だってだぞ?」
沙耶は自分の頬についているクリームを、自分で舐めた。
そして、沙耶は突然笑いだして、
「きゃははは♪ホワイトデーって楽しいねー!!」
「そうか?」
- 23 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/03/14 12:47:40 ID:ozX7WEe1
- 「うん。おにぃちゃんと一緒が一番楽しいよー!!」
そう言って、沙耶が俺に抱きついた。
「サヤ、おにぃちゃん、大好きだよー!!」
「ははっ。ありがとう、沙耶」
沙耶の頭を優しく撫でる俺。沙耶は、心地よさそうに目を閉じた。
「さ、続き続き。生クリーム、二人で混ぜよう?」
「うん!!」
ま、沙耶が喜んでくれたようでホントによかった。
そして……早いうちにハンバーグを作らないとね。
───────────────────────
容量オーバーか……ビックリした……。しかも連投規制厳しくなってるし……。
さて、ホワイトデー台本。そして、双子プッシュ計画第1.5弾。
そして、遊星より愛を込めて、復活。
いや……名前無くなったら、ホントに消えるつもりだったんだけどさ、
こんなのを最終回にするのは嫌だ!!ってことで意味もなく復活。
ホント、ウザい奴でゴメンな……クレームあったら大人しく消えるからさ。
- 24 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/03/14 18:51:04 ID:ozX7WEe1
- 周りを見回す。
おし。唯奈良し。千奈良し。
「さぁ、行くか」
俺は自転車の鍵を開け、それに跨った。
しかし……俺は、甘かったようだ。
「あっ!!お兄ちゃん、どこに行くの?」
「よ、よぅ!!唯奈!!何か用か!?」
「コソコソしちゃって、どこに行くのかなーって思って」
「べ、別に!!言うほどのところじゃないッス!!」
「怪しい……」
完璧に疑いを持った目で、俺を見る唯奈。
「そうだ!!千奈はどうした!?」
何とか誤魔化そうと必死で別の話題を振る。
「千奈ちゃん?千奈ちゃんなら、散歩に行ったけど?」
「そうか。んじゃ、俺は……」
逃げ出そうとペダルを踏み出した俺は……唯奈にガシッと首を掴まれた。
「何で唯奈から逃げようとするかなぁ?」
「う……今日は厳しいな……」
「だって、ヒマなんだもん」
「いや、俺は用事あるからさ……」
ヤバいなぁ……急がなきゃならないのに……。
「つーことで……離脱っ!!」
俺は唯奈の手を振り払い、全力でペダルを踏む。
「あっ!!待ってよー!!」
「悪い!!理由は後で話すから!!」
「もー!!お兄ちゃんのバカ!!」
───────────────────────
- 25 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/03/14 18:52:07 ID:ozX7WEe1
- 「もうっ!!千奈ちゃん、聞いてよー!!」
何かに怒りながら、リビングに唯奈が入ってくる。
「何かな?」
千奈は、またか。といった感じで答えた。
「お兄ちゃんって、ヒドいんだよー!!」
「お兄さんが?」
「うん!!朝、コソコソしてたから、何処に行くの?って聞いたら逃げちゃったんだよー!?」
唯奈はソファーの上のクッションをポカスカ殴りながら、言った。
「私は、お兄さんって……そんなことする人じゃないと思うんだけどなぁ……」
「うん……唯奈だって……そう思うけど……」
「ふふっ」
ちょっと微笑んで、千奈は優しく唯奈を抱きしめる。
「心配しなくてもいいんだよ。お兄さんには絶対、理由があるに決まってるから」
「千奈ちゃん……」
「今は、お兄さんを待とうよ?きっと教えてくれるよ」
「うん……」
安心したのか、ゆっくり目を閉じる唯奈。千奈は、あやすように唯奈の肩をポンポンと優しく叩く。
「あの……と言うよりも……多分、お兄さんは……」
「お兄ちゃんは……?」
「えっと……やっぱり言わないほうがいいかな……」
「えっー!?教えてよー!!」
「でも、やっぱり、お兄さんから直接聞いたほうが……」
「そんなぁー!!気になるよぉー!!」
「大丈夫だよ。もうすぐ帰ってくるから」
と噂をすれば……
───────────────────────
- 26 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/03/14 18:53:35 ID:ozX7WEe1
- 「ただいま」
俺は玄関のドアを開け、中に入る。
「お兄ちゃーーーん!!!!」
すかさず唯奈が飛び出してきた。
「うぉ!?唯奈っ!?」
「早く早く早く早く!!教えてよー!!」
「いきなりだな……」
「気になってるんだよー!!!だから、早く教えてー!!」
「分かった分かった……えと、千奈は?」
「リビングにいるよー!!」
「じゃ、リビング行こう」
「うん!!」
という訳で、唯奈とリビングへ。
「お帰りなさい、お兄さん」
「ああ、ただいま。千奈」
「お兄ちゃん!!約束だよ!!早く、早くっ!!」
「あ、あぁ……えっと……」
俺は紙袋から二つ小箱を取り出し、机の上に並べた。
唯奈は期待でうずうず。千奈は嬉しそうにポーっとしている。
「えっと……確か、コッチが唯奈で……コレが千奈だな。はい」
「お兄さん、ありがとうございます」
「え……何、何?何で?」
一人状況が飲み込めていない唯奈。
そんな唯奈に千奈が囁いた。
「唯奈ちゃん……今日はホワイトデーだよ?」
「ホワイトデー……?あーーーーー!!」
「やっと思い出したのか……はい、唯奈」
唯奈にプレゼントを手渡す。唯奈は鳩が豆大福を食らったような顔をして、
「あ、ありがとう!!お兄ちゃん!!それで……ゴメンなさい。唯奈、全然知らなくて……」
「いいよいいよ。俺も逃げちゃって、結構酷いことしたし」
- 27 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/03/14 18:54:40 ID:ozX7WEe1
- 「ふふっ、これで一件落着ですね?」
「あー、まぁね。ホント、千奈には迷惑かけるなぁ……」
「いえいえ……二人が仲直り出来て、私も嬉しいです」
別に喧嘩してた訳じゃないけど……ま、いいか。
「ねぇねぇ!!千奈ちゃん、コレ!!開けてみようよ」
「そうですね。お兄さん、私たちのためにお友達に聞いていたみたいですし。楽しみですね」
「い゙っ!?千奈、ソレ、誰から聞いた?」
「ふふっ。お兄さんと仲の良い人に聞いたんですよ」
「仲の良い人って……誰だ?」
「あー!!お兄ちゃん、その人に嫉妬してるー!?」
「ばっ、バカ!!唯奈!!何言ってんだよ!?」
「さっき、目が笑ってなかったもん!!ジェラシーだー!!」
「だから違うって言ってんだろ!!」
「お兄さんが……ジェラシー……えっと……えっと……私……」
「誤解だって、千奈!!顔を赤くするな!!」
「おー。千奈ちゃん、可愛いー♪」
「えっと……私は……」
三月十四日。俺の人生初のホワイトデー。何だか、今日は二人とも勢いが凄い……。
───────────────────────
ヤバい……連投規制がマジで響いてる……。
しばらくしたら、俺も旅に出なけりゃならないし……
未来の台本、貼れないかもなぁ……。
- 28 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/03/14 19:16:58 ID:ozX7WEe1
- 「未来ちゃん」
「何ですか?兄さん」
料理の本を読んでいた未来が振り返る。
「明日、ヒマか?」
「はい、ヒマですけど?」
「んじゃ、決まり。明日は俺に付き合ってもらうよ」
「別に良いですけど……何するんですか?」
「デートだよ、デート」
「でででで、デートっ!?」
『デート』って言うだけで顔を紅くするなんて……今時、中学生でも珍しいだろ……たぶん。
「ああ、明日はホワイトデーだろ?学校もないしさ。俺からのお返しとして、遊びに行こうぜ?」
「い、イヤですよぉ!!」
即否定かよ……ちっとは悩めって……。
しかし、今日はココで引き下がる訳には行かない!!
「何で?」
「兄さんとデートなんて……は、恥ずかしいですっ……」
モジモジしやがって……可愛いヤツめ……。
「俺とはそんなにイヤ?」
「そ、そんなことないですけどっ!!」
「んじゃ、出かけるのがイヤ?」
「そ、そういうワケじゃ……」
「じゃ、相乗効果で、俺と出かけるのがイヤってことだ?」
「そんなつもりじゃ……」
よし!!後一押し!!
「じゃあ、行こうぜ?」
「はぁ……しょうがないですね……」
とか言いつつ、ちょっと嬉しそうなのは気のせいか……?
「よし。決まりね。楽しみー!!」
「あの……ところで、何処に行くんですか?」
「未来が行きたいところに行こうと思ってるけど、未来ちゃんは何処に行きたい?」
「わ、私は……別に……。兄さんは?」
- 29 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/03/14 19:18:00 ID:ozX7WEe1
- 「イキたいとこなら山ほどあるが……どこがいいかなぁ……」
「そうですねぇ……」
二人で頭を巡らせる。
日帰り可能なデートスポットねぇ……。
「あ、塚田駅のトコのなんとかって言うショッピングセンターはどう?行ったこと無いだろ?」
「そうですね……私はそこでもいいですよ?」
「んじゃ、そうするか。ソコに決定ね」
「はいっ!!」
何だ、やっぱり乗り気じゃないか……嬉しいねぇ。
「じゃ、九時ぐらいに家を出ればいいかな」
「そうですね。じゃあ、九時までに各自準備完了ってことで」
「りょーかい。遅刻するなよ?」
「兄さん、それは私のセリフですよ?」
未来ちゃんは俺を指差して、少し意地悪っぽく微笑んだ。
───────────────────────
「未来がいつまでも髪の毛いじってるからだよ!!」
「に、兄さんだって、寝坊したじゃないですか!!」
はい。遅刻です。二人とも遅刻しました。
「あぁ、もう時間がねぇ!!未来、後ろに乗れ!!」
俺は自転車のハンドルを掴み、ガレージから引っ張り出す。
「えっ!?でも、私……!!」
「いいから!!飛ばすぞ!!しっかりつかまってろ!!」
未来が後ろに座ったのを確認し、俺は全身に力を入れ、重いペダルを踏んだ。
駅までの道は下り坂だ。二人の乗る自転車は次第にスピードを上げていく。
よほど怖いのか、俺の体にしがみついている未来が可愛かった。
「に、兄さん……そ、そんなに……スピード出さないで下さい!!」
「何だよ……怖いのか?」
「ち、違います!!きゃっ!!」
「どうした?」
- 30 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/03/14 19:19:01 ID:ozX7WEe1
- 「す、スカートが捲れちゃって……きゃっ!?」
「手で押さえてりゃいいのに……」
「だ、だって……手を離したら怖いです……」
くぁぁぁぁぁぁ!!可愛いなぁ、チクショー!!耳元で囁くなよ!!
しかし、どうしようかな〜。
未来ちゃんのぱんつをその辺の奴らに見せるのは嫌だけど……怯える未来ちゃんは可愛すぎ!!
ってなことを、考えてると……。
「あんっ♥」
未来ちゃんが俺の耳元で色っぽい声を出す。
「今度は何!?」
「地面がデコボコしてて……い、痛いんです……お……お尻が……あぅ……!!」
うわぁ……力が抜けるぅ……。
「だ、だから……に、兄さん……もっと……あぅ!……ゆ、ゆっくり……してくださいっ!!」
もうさ、未来ちゃんに耳元でこんな事言われたら……
かなり迷った末、俺は力一杯ブレーキを握り締めた。
「ま、歩いていこうぜ」
「はい。すいません……」
「いいって」
俺は未来の肩をポンと叩いて、二人で歩き出した。
───────────────────────
「座れないねぇ」
「ですね……」
塚田駅へ向かう電車の中。
現在は、かろうじて他人と触れない程度の混み具合。
「次は、十崎、十崎です」
車内放送がそんなことを告げ、列車はスピードを下げていく。
ドアが開くと、かなりの人数が乗り込んできた。
「うわぁ、すげぇな」
「ですね……」
そう呟いた未来の声が沈んでいるのに俺は気付いた。
なるほどね……。
- 31 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/03/14 19:20:43 ID:ozX7WEe1
- 「未来」
俺は未来の肩をつかんで、未来を隅に押し寄せる。
そして、俺はその未来に覆いかぶさるような体勢をとった。
「大丈夫。未来は俺が守るから」
「兄さん……」
「チカンは嫌だもんな?」
「あ、ありがとうございます!!」
そんなことをやっている間に、電車は更に混んで来た。
背中に受ける力が大きくなる。
俺はグッと手に力を入れて、未来に力がかからないように踏ん張る。
「だ、大丈夫ですか!?」
「大丈夫大丈夫」
無理に笑顔を作る。
「兄さん……」
未来が心配そうな顔をしている。
……こんな細い体に無理させる訳にはいかねぇよな、やっぱ。
「兄さん……もういいですよ……こんなに顔真っ赤になって……」
「未来……」
「はい」
「いや……未来の髪って、いい匂いだよな?」
「はい?」
「チカンの気持ちもちょっと分かるかも」
「に、兄さん!?な、何言ってるんですか!?」
未来が顔を真っ赤にしながら、ちょっと小声で言う。
「それでいいよ。俺は大丈夫だから、いつも通り俺に話しかけてくれ」
「兄さん……」
「顔が赤いのも、未来ちゃんとお揃いだし……うぉっと」
過去最高の力がかかる。
痛ぅ……手がしびれてきた……。
「兄さん……」
「大丈夫。鍛えてます」
「はぁ……兄さんってば……」
- 32 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/03/14 19:21:45 ID:ozX7WEe1
- 未来が溜息をつく。
「もう止めても無理みたいですね?」
「流石……分かってるね」
「頑張って……ください……」
「あぁ」
今度は作り笑いではなく、本当の笑顔がこぼれる。俺の笑いに釣られて、未来までも笑顔になる。
そんな未来を見ると、俺の腕にも力が漲ってきた気がする。
さぁ、もうちょっと頑張ろうか!!
「次は、塚田、塚田です」
そんなアナウンスが聞こえた。
俺がちょっとホッとしている中、次第にスピードを落とす列車。
「あっ」
慣性によって、未来がバランスを崩し、俺の胸に飛び込んできた。
「未来、大丈夫か?」
俺はその未来を優しく抱きとめた。
「兄さん……ありがとうございます」
「普段に何も出来ないからね。こういうときぐらいは最後までやらなきゃな?」
未来に微笑みかける。
「兄さん……兄さんって、カッコいいですね……」
俺の胸の中で未来が呟いた。
そのセリフがすごく恥ずかしくて、俺は何も聞こえないフリをする。
「さ、降りるぞ?」
「はい」
俺はごく自然に未来の手を掴む。
力を入れすぎて真っ白になった手には、未来の手がすごく暖かく感じられた。
───────────────────────
「おっ!!未来、あの店、いいんじゃないか?」
「えぇっ!?私、そんな……」
「いいから。見るだけならタダ。行くだけ行ってみようぜ」
件のショッピングセンター内。
俺は未来の手を引っ張り、オサレな洋服屋さんに入る。
「未来ちゃん。こんなのどうかな?」
- 33 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/03/14 19:23:03 ID:ozX7WEe1
- 「えっ……ちょっと派手すぎますよ!?」
「そう?似合うと思うけど?ちょっと試着してみてよ」
「そ、そんな……恥ずかしいですよ……」
手に持っていたコートで、恥ずかしそうに顔を隠す未来。
くぅぅぅぅ!!可愛いぞ!!
「大丈夫。絶対似合うから。俺が保障する」
「で、でも……」
「いいからいいから。騙されたと思って着てみなよ」
半ばムリヤリ、未来を試着室に押し込む。
実際、似合うかどうかなんて、ファッション関係に疎い俺にはサッパリ分からない。
ま、未来はいつも地味な服装ばっかりだから、たまにはいつもと違う未来が見てみたいってのが内心だが。
「あの……兄さん……」
「おぅ、早かった……な……」
試着室から現れた未来を見て、俺は言葉を奪われた。
肩を出した漆黒のキャミソールとロングスカート……真っ白な未来の肌と相まって……美しい……。
「えっと……どうですか……?」
俺がずっと固まったまま動かないので、心配そうに未来が声をかける。
「えっ……いや、もう、未来を褒める言葉が思いつかねぇ……」
「ほら、やっぱりダメですよね?こういう大人っぽい服は私には似合いませんよ」
別に失望した訳でもなく、予想通りといった感じの未来。
「い、いやっ!!そういう意味じゃなくて!!」
「じゃあ……どういう意味ですか?」
「いや……なんつーか……すごく似合ってる。いや、それ以上だ。似合いすぎて、何も言えない」
「あの……兄さん、お世辞にしても言い過ぎですよ?」
「いや、お世辞なんかじゃないって!!ホントに似合ってるよ!!」
「え、えっと……あ、ありがとうございます……えっと……じゃ、脱ぎますね……」
未来がカーテンを閉める。
「ああ……よし、次はこの服ね」
「ま、まだ買うんですか!?」
未来が慌てて、カーテンから顔だけを出す。
- 34 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/03/14 19:24:04 ID:ozX7WEe1
- 「うん。もっともっと可愛い未来が見たいからね」
「も、もう、兄さん!!こんなところで、何言ってるんですか!!」
未来は顔を真っ赤にして、シャッとカーテンを閉じた。
───────────────────────
「兄さん……ちょっと買いたいものがあるんですけど、いいですか?」
さっきの店を出た後、未来が、恥ずかしそうに言った。
「あ、ああ……いいけど」
「ありがとうございます。じゃ、こっち来てください」
「ああ」
そう言って、案内されてきたのは……
「下着売り場……!?」
禁断の場所とも言える女性下着売り場へ来てしまった……。
「は、はい……」
「えーと……俺、その辺で休憩してるわ」
その場から緊急離脱を謀り、回れ右をした俺の首を……未来がしっかりと掴んだ。
「ダメなのかい?」
コクコクと可愛く頷く未来。
もう、未来ちゃんは甘えん坊だなぁー!!
「じゃあ、兄さん、行きましょ?」
「マジで?」
「マジ……ですよ?さ、行きましょ?」
未来は俺の手を掴んで、下着売り場へ引き込もうとする。
既に未来は聖域の中……俺はギリギリのところで踏みとどまった。
「兄さん……来てくれないんですか?」
上目遣いの未来。
ぬはぁーーー!!写真撮りてぇーーーー!!
しかし、今ので分かったぞ……コイツは、いつぞやの裏未来だ……!!
ま、だからどうした。って感じだが……。
「いや……こういうところに、男とは、普通来ないんじゃない?」
「そうですか……?結構カップルで来てる人も多いですよ?」
確かに、少ないが男連れの人もいることはいる……。
「さ、兄さんも覚悟決めてください!!」
- 35 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/03/14 19:25:06 ID:ozX7WEe1
- 「何故、今日はそんなに積極的なんだ!?」
「だって……一番見て欲しい人が一番好きなモノを着けたいですから……ねっ?」
裏未来は上目遣いで俺を見て、瞬間的に俺の手をちょっとだけ強く握った。
くぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!窒息するーーー!!
「いいですよね?兄さん?」
「あぁ……しょうがない……」
「へへへっ……ありがとうございます!!」
出来るだけ周りを見ないように、未来の背中だけを見て歩く。
「あっ、兄さん!!コレ、可愛くないですか?」
突然、未来が立ち止まる。
そして、一つブr……いや……えっと……胸用の下着を取り、自分の胸に当てる。
「どうですか?」
「いや……い、いいんじゃない……?」
俺はそんな未来を直視できず、未来の頭の辺りを見ながら適当に答える。
「もう!!兄さん、ちゃんと見てくださいよぉ!!」
「いや……やっぱ……恥ずかしいしさ……」
「そうですね。兄さんもお顔が真っ赤ですよ?」
「そ、そうだねぇ……」
居心地最悪……。
何だか、ここには俺の存在すらも許されないような気がして、俺は俯いて硬直状態になる。
「ふふっ、兄さんも、意外と純なんですね?」
「そうだねぇ……。それが分かったら、そろそろ勘弁して欲しいねぇ……」
「しょうがないですね……冗談はコレぐらいにしてあげましょうか」
未来が両手を腰に当てて、仕方ないといった感じで言う。
俺は呆気に取られて、
「冗談……?」
「はい。いくら兄さんでも、下着を選んでもらうのはさすがに……」
「そうか、冗談か……なるほど……あははははは……」
乾いた笑いが口から漏れた。
ホッとしたような、残念なような……そんな気分だった。
「未ぃ来ぅぅーーーーー!!」
- 36 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/03/14 19:26:19 ID:ozX7WEe1
- そして、その後に込み上げてきた怒り……
「あっ!!ごめんなさいっ!!」
「と行きたいところだけど。ま、こっちも十分可愛い未来を見せてもらったし……それで良しとしようか」
「に、兄さん!?何言ってるんですかっ!?」
「でも、すごく可愛かったよ?『だって……一番見て欲しい人が一番好きなモノを着けたいですから』の辺りとか」
「い、言わないで下さい!!それ、一番恥ずかしかったんですよ!!」
「じゃ、言わなきゃよかったのに。どうせ冗談なんだからさ」
「で、でも……」
俺の言葉に、顔を赤くして俯く未来。
「結構……本気だったりするんですけどね……?」
「おいおい。さすがに、もう騙されないぞ?」
「えっ……?あー……そ、そうですよね。さ、さすがにねぇ?」
「そうそう。そこまで俺も馬鹿じゃないからな。さ、次のトコ行こう」
「は、はいっ!!」
───────────────────────
「兄さん。今日はありがとうございました……」
駅から家までの帰り道。
隣で並んで歩いている未来が呟いた。
「楽しかった?」
「はい」
「そりゃ良かったよ。もしかしたら、未来ちゃんつまらないんじゃないかと思ってたんだ」
「つまらなかったですよ、すごく」
速答!?さっきのはモロに社交辞令……?
「ぅゎぁ……」
全身から力が抜け、俺はその場に膝を付く。
「に、兄さん!!この話、まだ続きがあるんですよっ!!」
「つづき……?」
- 37 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/03/14 19:27:29 ID:ozX7WEe1
- 「はい。えっと……私は可愛くもないし、オシャレにも興味ないから、
ああいう場所って、私には縁の無い物だと思ってたんです」
いや、未来ちゃんは可愛いよ!!と言いたかったが、話の腰の骨を折るのでやめた。
「私があの場所にいるのは、場違いのような気がして……最初は楽しくなった」
その気持ちは分かる。つーか、さっき散々味わった。
「でも……兄さんと一緒にいると、そんなことどうでも良くなってきちゃって……」
「……?」
「考えるのも馬鹿らしいというか、考えるのを忘れてたというか……そんな感じです」
「ま……よく分からねぇけど。要約すると、『俺と来て良かった』ってことかな?」
「はい!!」
明るく笑う未来。夕日を浴びたその顔が可愛かった。
「そうだ、どこかで飯食って帰ろうぜ!?」
「いいですね。行きましょう。何にしましょうか?」
「ここを右に曲がったトコにある店、オムライスが美味いらしいぞ?」
「いいですね。そこにしましょうか?」
「よし、決定!!さぁ、未来よ。後ろに乗れ」
「えぇっ!?い、イヤですよ!!」
「はははっ!!冗談だって。二人で歩いていこう」
「もう……兄さんってば……」
ちょっとだけ頬を膨らませて、俯きながら歩く未来。
「ねぇ……兄さん……」
「ん?」
「手……繋ぎませんか……?」
「どうしたんだ?寒いのか?」
「は……はいっ……!」
「しょうがねぇな」
優しく未来の手を握る。
未来は子供のように微笑んで……
「ありがとうございます。……兄さんの手……いいですね」
「何が?」
- 38 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/03/14 19:31:01 ID:ozX7WEe1
- 「暖かくて大きくて……未来は好きですよ。この手」
「手だけ褒められても、あんま嬉しくないけど……」
「ふふっ……あくまでも手が一番好きってことですって」
兄さんの手。私を守ってくれる優しい手……。
この手がいつまでも……いつまでも……私のそばに……。
───────────────────────
まとめ。
>>16-23 沙耶のホワイトデー。
>>24-27 双子のホワイトデー。
>>28-38 未来のホワイトデー。、
あ〜、今回キツかった……
- 39 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/03/14 20:43:37 ID:eYht8hH+
- キタ━━━(゚∀゚)━━━!!!!!
ぐっぞぶ杉!! 神杉るぜ・・・!
- 40 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/03/14 20:56:32 ID:1UtVjrQf
- 未来たんさいこ!
マジ萌えぢんじゃうよ!
てかまた微妙に響ネタ…。好きですねぇ〜w
- 41 :海中時計 ◆xRzLN.WsAA :05/03/14 21:07:20 ID:Hdp/ZNKM
- 遊星さんキタ Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒Y⌒(。A。)?!!
ぐ、ぐぐぐGJ!!
- 42 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/03/14 21:08:41 ID:vl1DUKAq
- しえん・・・・って遅いか
- 43 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/03/14 22:19:59 ID:DChDja92
- 遊星神GJです!
未来ちゃん(゚∀゚)イイ!!
- 44 :いつぞやの931 :05/03/14 23:36:35 ID:W1fguBhp
- いいかげんコテとトリップつけなきゃ…それはさておき
ステキです、遊星神GJ!
ちうか皆さん筆が早いですねぇ…すごいっす
- 45 :すばる ◆9tSxotve.o :05/03/15 00:39:26 ID:m5HOOlEt
- 遊星神GJ!!
こんなに素晴らしいのをこんなに書けるなんて凄いです。
やっぱり遊星さんが来ると活気が出ていいなぁ…この雰囲気が好き(´∀`)
- 46 :雨音は紫音の調べ ◆cXtmHcvU.. :05/03/15 22:49:15 ID:K99FmguV
- 遊星様乙です!
すごい…
凄すぎますよ…!
GJ!GJ!!GJ!!!
- 47 ::月影に踊る血印の使徒 1 :05/03/16 07:40:27 ID:ilQbt1oS
- 世界は千十一の要素で構成されている。
私は八人目に属す七十七人目。
世界の要素、そのそれぞれに使徒と呼ばれる「司る者」が存在する。
私は八人目、「死」に属する、七十七番目の要素、「血」の使途。
そう、私はヒトではない―――。
私は世界を構成する、その一つ。
「奈菜ーっ、起きないと遅刻すっぞーっ」
私の家に、今日も馬鹿みたいな声が響く。 私は既に起きている。
そうだというのに、声の主は今日も私を起こし続ける。
「奈菜ーっ、起きろってのーっ!」
・・・・いい加減五月蝿い。 仕方ない、そろそろ降りてやろう。
私は読みかけの書物を閉じ、部屋を出た。
冷たい空気が私を迎える。 私は冬というのが嫌いだ。
冬は私の仕事が多くなるから―――死を与える仕事が。
「奈菜ーっ、飯冷めるぞーっ!」
「・・・・・今行く」
馬鹿みたいに私を呼び続けるのは、私の兄。
ただし、「私」の兄ではない。
私の体の兄。
使徒は体を持たず、他人の体を借りたり、何か別の寄り代を用いて「ここ」に存在する。
私が今使っている体は、十五年前に頂いたモノだ。
別に、殺したとかそういうのではない。 死産だったのだ。
だから私に悪気もないし、むしろ感謝してもらってもいいくらいなのだが・・・。
「おせーよ、遅刻するぞ」
・・・・この兄、太刀川史也にはそうでもないようだ。
「・・・・すまない」
「いや、まーいいんだけどよ・・・まず食え」
「分かった」
用意された食事に手を付ける。 全て史也が用意したものだ。
- 48 ::月影に踊る血印の使徒 2 :05/03/16 07:42:05 ID:ilQbt1oS
- 「ふむ、今日もまた、凝った朝飯だな」
「俺なりにお前の健康には気を使ってんだよ、これでも」
「そうか。 迷惑を掛けるな、兄」
「迷惑とかじゃ・・・つかさ、その『兄』ってやめない?」
「・・・・なんだ、いきなり」
「俺は前から思ってたんだよ。 なんだよ、『兄』って。 まんますぎだろ」
「・・・・そのまま、ということは、物事の特徴をよく表わしていて望ましい呼び名ではないか?」
「あ、あのなぁ・・・」
ふむ・・・どうやら史也は兄、という呼称に不満があるらしい。
「では、どう呼べばよいのだ?」
「え・・・えーと、普通にさ、お兄ちゃん、とか、兄さん、とか・・・・」
「ふむ・・・しかし兄よ、お兄ちゃん、というのはどうかと思うぞ」
「なんでさ?」
「私の外見的な要素から判断すると、幼い印象を与える言葉は似合わないそうだ」
「そうだ、て何よ」
「私の学友からの所見だ。 それと兄さん、という方だが」
「・・・何だよ」
「さん付けというのは敬意を表わすものだと聞いている。 私の態度はとても兄に敬意を払っているようには見えないそうだ。
よってこちらも不適であろう」
「あー・・・じゃあ・・・お兄、とか、兄様ーとか・・・」
「それらも先ほど上げた理由が当てはまる」
「なんだ・・・つまり呼び方を変える気はないんだな?」
「いや、そんなことは言っていない。 ただ、私と兄の間柄に相応しい呼称が今の例にない、というだけだ」
「あー・・・・そーかよ」
そんなやり取りの間に私の食事が済んだので、洗面所に向かおうとする。
「奈菜、お前さぁ・・・」
「なんだ、兄」
「お前、やっぱり変わってるよな」
「・・・・そうだろうか」
史也は・・・私を余り快く思っていないようだ。
- 49 ::月影に踊る血印の使徒 3 :05/03/16 07:43:39 ID:ilQbt1oS
- 「どうだ、兄、遅刻しそうか」
「いや、そうでもない」
「そうか」
私と史也、並んで歩く。
史也はこれでも私と同じ、進学校に通っている。
私にとってヒトとしての人生など大した意味を成さないが、私の学力だとそこの学校が適していたらしいのでそこに入学した。
しかし、史也の方はと言うと・・・。
「兄よ、補習の予定は?」
「うぐ・・・・次のテスト前、さんしゅーかん前からだとよ」
と、このとおりである。
「そうか・・・と言うともう時期だな」
「うあー・・・・くそー、なんで奈菜と違って勉強出来ないんだー、俺はー」
「・・・・努力が足りないのだろう」
「うぬ・・・キツイね、奈菜さん・・・」
本当は、私と史也は兄妹ではないから・・・似ていなくて当然なのだが。
「・・・・・済まんな、兄よ」
「あ・・・? 何か言ったか?」
「いや、何も―――」
不意に視界に黒、いや、闇が現れる。 これは・・・・。
「奈菜、どうした?」
「いや・・・・兄よ、先に行ってくれ」
「なんだ? 具合悪いのか? 家まで運んでやろうか?」
「・・・・・・トイレだ」
「あ、そ、そうか、スマンな。 公園まで行ける・・・よな?」
「ああ・・・だから、先に行け」
「あ、ああ・・・」
視界から史也の姿が消えたのを確認して、私は喋りだす。
「・・・・感覚をジャックするのはやめてもらいたいものだな」
「いやぁ・・・声を掛ける訳にもいかなくてね」
虚空に声が響いた。
- 50 ::月影に踊る血印の使徒 4 :05/03/16 07:45:23 ID:ilQbt1oS
- 「ふん・・音など立たないのにか。 それで、私に何の用だ? 六十一番目の使徒」
「うふふ・・・私がアナタをお茶に誘うとでも? 七十七番目の使徒」
「仕事か・・・」
「ええ。 アナタの仕事。 ヒトに死を与える、そのお仕事」
「私が使われるということは、何かしらの力を持っている者が対象か?」
「いいえ、ハズレ。 確かに抗いの力は持っているけれど、特別な何かを彼が持っているわけじゃないわ」
「すると・・・・使徒の隣人か」
「そう。 使徒の側に長く居続けると、自然からの干渉に抵抗がついてしまう。 だからアナタが死を与えるの」
「ふん・・・やっかいだな」
「あら、どうして?」
「使徒に知られれば邪魔をするかもしれない・・・長く共にいれば、愛着くらい湧くのだろう」
「ふふふ、それは無いわ」
「何故?」
「だって、アナタの知り合いですもの」
「・・・・・!」
「うふふ、驚いた? それこそが私の司る『恐』・・・恐れよ」
「私が恐れる・・? ふん、ありえんな。 私こそがヒトに恐れを与える存在。 死という絶対の恐怖を」
「うふふふふ・・・『その日』は明日の午後六時と十二分。 場所は駅前の交差点」
「交通事故か」
「ええ・・・・幸せからの転落・・・ヒトって哀れね」
「・・・・ふん」
「それじゃあ、また明日」
「待て。 対称の名前を聞いていない」
「あらゴメンなさい。 でもね、お仕事に支障があったらタイヘンだから教えるな、って八人目サマに言われているの」
「・・・・・・」
「でも、誰かは言うな、なんては言われてないのよねー?」
「・・・・・・」
「今度死ぬのは・・・・アナタのお兄さんよ」
「・・・・・っ!?」
「うふふふふふふっっ! そう、その顔よ!! また明日会いましょうっ!! うふふふふふふっっ!!」
- 51 ::月影に踊る血印の使徒 5 :05/03/16 07:47:01 ID:ilQbt1oS
- 「おはよー奈菜ちゃん」
校門前で声を掛けられる。 同じクラスの有紗である。
「・・・・お早う」
「・・・・どしたの? 具合悪いの?」
顔を覗き込まれる。
「いや・・・・そんなことはないが?」
「でも・・・顔色悪いよ? ・・お兄さんも今日は一緒じゃないみたいだし」
「兄は・・・先に行かせたから、もう教室に居るだろう」
「ん〜・・・ホントに大丈夫?」
「ああ・・・・何も問題はない」
そう・・・何も問題は無い。 私は私が司る物を司るだけ。
それを否定するなど馬鹿げている、自分自身の存在を否定するのと同じだ。
明日の午後六時、史也は死ぬ。
それが運命だ・・・・。 抗うことも変えることも出来ない、運命だ。
一限目、そして二限目が終わる。
「ふぅ・・・・」
「奈菜ちゃん、幸せが逃げるよ?」
「ん・・・? 何がだ?」
「溜め息。 吐くとその分幸せが逃げちゃうんだよ」
「・・・・又根拠のないことを」
「ちっちっち。 甘ーい、甘いよ奈菜ちゃん。
溜め息吐いちゃうと弱気になる、弱気になると物事が上手くいかなくなる、物事が上手くいかないと・・・不幸せだよ?」
「ふむ・・・そういう見方もあるか」
「そんな弱気な奈菜ちゃんに特別ゲスト!」
「ん・・・?」
「はーい、史也お兄さんでーっす! ぱちぱちぱちーっ」
そこに現れたのは・・・間違いなく、史也だった。
「あ、あの、有紗ちゃん、恥ずかしいんだけど・・」
「な・・・何故兄がここに・・・・・?」
- 52 ::月影に踊る血印の使徒 6 :05/03/16 07:48:14 ID:ilQbt1oS
- 「わたしが呼んじゃいましたー。 奈菜ちゃん調子が悪いみたいなんでー」
「・・・・有紗・・・・・・・」
「やーん、お兄さん助けてー、奈菜ちゃんが怖い目で睨むんですー」
「ははは・・・・で、どうなんだ奈菜」
「いや・・・どうと言うことは無いが・・」
「ふむ・・・?」
私の額に手を当てる。
「熱は無い・・・せきも無いけど・・・確かに顔色は悪いな」
「そう・・・・か・・?」
「あ、奈菜ちゃんまさか・・・」
「え? なんか心当たりでもあんの?」
「えと・・・奈菜ちゃんひょっとして・・・あの日?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・違う」
「そっかー、わたし早とちりでお兄さん呼んじゃったかと思っちゃったよー」
「は、ははは・・・」
と、居心地悪そうな史也の苦笑い。
「あ、ご、ごめんなさいお兄さん」
「あーや、別に・・・なぁ?」
「・・・・なぜ私に話を振る」
「え、えと、それでどうします、お兄さん」
「ふむ・・顔色悪いのは確かだし・・・早退しろ、奈菜」
「いや・・・そんな大袈裟なものでは」
「バカ野郎、大げさなくらいで丁度いいんだよ、病気ってのは」
「・・私は病気では」
「奈菜!」
「・・・・・分かった」
時々史也はどうしようもなく強情になる。 どうもそのタイミングが掴めなく、私としてはやり辛いところだ。
「奈菜ちゃん、家まで送ってこうか?」
「いやいい・・・亜里沙はサボりたいだけだろう」
「・・・・えへへ」
- 53 ::月影に踊る血印の使徒 7 :05/03/16 07:51:15 ID:ilQbt1oS
- 帰り道、私は纏まらない思考と共に歩いていた。
・・・・何を悩んでいるのだ、私は? 答えならもう出ているではないか。
明日、史也に「死」を与える、ただそれだけではないか。
何も特別なことは無い、今迄通りだ。
ヒトの死は決まっている。 如何なる者も避けられない、確定した未来。
その「未来」を、「現在」に変える、唯其れだけの事。
死の無い生は有り得ず、逆も真である。 輪廻転生というものはヒトには存在しない。
だが、ヒトを構成していた要素はやがて別の存在、別のヒトを構成するだろう。
それが自然の摂理。 私は摂理の流れを代行する・・・・唯、其れだけの事。
私は八人目・・・「死」の従属。
死の従属が、死を否定するなど・・・・・有り得ない。
水が上から下に流れ落ちるのと同じ。
私は明日、史也に死を与える・・・・・・唯・・・・・・・其れだけの・・・・事。
ふと視線を上げる・・・ショウウィンドウの中に一足のシューズ。
・・・史也が欲しがっていた、シューズ。
明日、アルバイトの給料が入るので、その金で買う予定らしい。
史也は・・・何も知らない。 目前に迫った死を、知らない。
史也にとって、明日はアルバイトの給料日でしかなく、この靴を買う日でしかない。
私にとっては・・・・・私にとって・・・明日は・・・・・。
ああそうだ、私にとっても唯仕事を一つ片付ける日でしかない。
そう・・・・・唯、其れだけの、事。
「ただいま帰ったぞー」
玄関先から史也の声が響く。
「お帰り、兄」
「おー、大人しくしてたかー?」
「兄の言う大人しくに該当するかは分からんが、特に何をするでもなく過ごした」
「おー、俺の言うことちゃんと聞くなんて珍しい」
「・・・・私が兄の言う事に逆らった記憶など無いが」
「結果的に逆らってることが多いんだよ、お前は」
- 54 ::月影に踊る血印の使徒 8 :05/03/16 07:52:43 ID:ilQbt1oS
- 「・・・・そうか」
「待ってろ、飯作ってやるからよ」
「あ・・・・兄よ」
「んー? なんだ、たまには奈菜が作るか?」
「あ、いや、そうではなく・・・・・・コレを」
「ん? 何だコレ・・・開けていいのか?」
「ああ・・・・」
ビニール袋から取り出した箱、其れを開けていく。
「こ・・・れは・・・・・!?」
「・・・欲しかったのだろう?」
其れは、ショウウィンドウの中のシューズ。
史也が数ヶ月前から見詰めていたシューズだ。
「あ・・・ああ・・・でもコレ・・ど、どうしたんだ?」
「いや・・・プレゼント、と言う奴だ・・。 今迄、した事が無かったしな・・・」
「ど、どーゆー風の吹き回しだ・・・・?」
「迷惑・・・だったか?」
「い、いや、すっっっっげー嬉しい! ありがとう、奈菜!!」
「いや・・・・・・」
私は、一体何がしたいのだ? 史也にシューズを贈った所で、何が変わる訳でもない。
明日、史也は事故に遭う。 そして私に命を断たれる。
変わり様の無い、確定した未来。
変え様の無い、確定した死。
「奈菜、俺マジで嬉しいよ!! ありがと!!」
其れを知らない史也は、余りにも何時も通り過ぎて・・・・。
「・・・・・・・済まない」
其の言葉が洩れた。
「え・・・奈菜?」
「・・・済まない、済まない兄よ」
「奈菜・・・・・どうしたんだ?」
私だって・・・分からない・・・。 分からないけれど。
- 55 ::月影に踊る血印の使徒 9 :05/03/16 08:02:09 ID:ilQbt1oS
- 「済まない・・・本当に・・」
「奈菜・・・・泣くな」
「・・・・私は、泣いてなど」
「涙流すだけが、泣くって事じゃないだろ」
史也が、私を抱きしめた。
「何があったのか・・それともこれから何かあるのか・・・無理に聞こうとは思わない。
だけどさ、俺はお前の兄貴だから。 何が起こっても、起こらなくても。 それだけは変わらない。
どー仕様もなく頼りない兄貴だけどさ・・・いつだってお前の味方だぜ、俺は」
「私・・・は・・・・でも」
「でもじゃない。 俺には何も出来ないかもしれない。 でも、絶対にお前の味方だ。 何があっても、絶対に」
「私が・・・本当の妹じゃ、無かったとしても?」
「ああ」
史也は、迷うことなく応えた。
「家族ってのは、単にそーいうもんじゃないって思う。 やっぱさ、この人は家族だ、って思えなかったら家族じゃないんだよ。
だから、こいつは俺の家族だ、って思った瞬間から家族なんだよ。 ・・・・お前は俺の妹だ。 例えお前と俺が本当の兄妹じゃなかったとしても、だ」
「でも、私は・・・何時も、兄に迷惑を掛けるし」
「誰も迷惑なんて思ってねーよ」
「其れに・・・兄は、私のことを、余り好いてはいないだろう?」
「は・・・? 何言ってんの、お前? お前は俺の自慢の妹だよ。 これ以上ないくらいのな」
「いや・・・しかし」
「しかしじゃねぇー。 なんだよお前、今までずっとそう思ってたのかー?」
「あ、ああ」
「くぁー、何でそーなっちまうかなー。 俺、兄貴としての自信、喪失しちまいそー・・・」
「あ、兄・・・?」
「あのねぇ、お前のこと好きに決まってるだろ? 俺は好きでもない奴の心配なんかしねーぞ?
嫌いな奴のために飯作ったりしねーぞ? どーでもいい奴に好きだ、なんて言えるほど器用じゃねーぞ?」
「・・・・・・・」
「そんなん、お前が一番知ってるだろ?」
「・・・・・・・・・ああ、そうだった・・・そうだった、な・・・・・・」
其の夜、私は生まれて初めて、泣いた。
- 56 ::月影に踊る血印の使徒 10 :05/03/16 08:04:15 ID:ilQbt1oS
- 翌日の朝・・・私は布団に包まっていた。
「今日は学校休むのかー?」
「ああ・・・済まないが、有紗辺りに言伝してくれ」
「おうよ。 ・・・もう大丈夫なのか?」
「ああ・・・・いや、兄に嘘はいけないな。 正直、まだ悩んでいる」
「・・・・そうか。 一体何なのか分かんねーけど・・・忘れんなよ。 俺はいつでも何があっても、お前の味方だ」
「・・・・・ああ、有り難う」
「お前なら答えを見付けられるって信じてるぜ」
「・・・・行ってらっしゃい」
「おー、行ってきます」
変わらない、一日が始まる。
昨日から何も変わってなどいない。
変わったとすれば・・・それは、私。
私は、今日、答えを出さなければならない。
史也と、私に。
するすると寝巻きを脱ぎ、裸になる。
左胸に手を当て、心臓の音を聞く。
動いているはずの無い心臓。 その鼓動から、生命の繋がり方を確認する。
其の繋がりを、断つモノのイメージ。
私はヒトと同じように、大鎌を想う。
そして形作られる、姿無き、形無き、存在無き鎌。
私はヒトに死を与える者。
即ち、死神。
学校の制服の上に、黒き影を纏い。
右腕に8のルーンを描き。
左腕に77のルーンを描き。
額に使徒のルーンを描き。
「暗き闇より深く、燦然と輝く生よりも美しく・・・全てのモノに等しく在り、唯唯一なるモノとして在る―――」
口に死の詩を口ずさみ。
準備は、整った。
- 57 ::月影に踊る血印の使徒 11 :05/03/16 08:06:21 ID:ilQbt1oS
- 駅前の交差点を見下ろせる、ビルの屋上。
「やぁ・・・随分念入りな格好だね」
そこに立つ私と、六十一番目の使徒。
「私は相手が誰であろうと・・・この姿で仕事をしてきた」
「うふふふふ・・・そう」
「お前こそ、随分な格好だな」
「あら、私は何時もこの格好よ? いつもは感覚のジャックのみで会話していたからね、直接会うのは初めてだったかしら?」
表情も無く私に笑いかける・・・・マネキン。
「なら今日は如何いった風の吹き回しだ? お前が直接私の仕事を見に来るなど」
「うふふふふ。 言ったでしょう? 私が司るのは恐・・アナタが兄を手に掛ける、その瞬間。
絶望に打ちひしがれる、アナタの顔が見たいの」
顔など存在しない・・・しかし、確かにそのマネキンは、禍々しい狂気の笑みを浮かべていた。
「六時・・・そろそろね。 ほら、アナタのお兄さんよ?」
指差す先に、史也。
「うふふふふ。 覚悟は出来て? 実の兄を殺す覚悟は」
「ふん・・・・私と史也は、兄妹などでは・・・無い」
「うふふふふ、そうね、アナタはアナタでしかなく、決して太刀川奈菜では無いものね」
「ああ・・・そうだ」
「じゃあ・・・始めてもらおうかしら?」
「ああ・・・・」
手に「流れ」を纏う。 「摂理」と言う名の流れ・・・其れは強靭な刃と成る。
背後に回り込み、そして、貫く―――――。
音も無く、唯結果だけが現れる。 胸を貫かれて・・・・私を見る。
「・・・・・・何のつもりかしら?」
胸を貫かれたマネキンが語りかける。
「見ての通りだ」
「うふ、うふふふふふふふっっっ!!! 逆らうのね!? 八人目に、アナタの主に、世界の摂理に逆らうのね!!??」
「ああ」
「うふふふ、うふ、うふふふふふっっっ!!! いい、いいわ!! これこそ私が望んでいた未来!!! 素敵よ、七十七番目!!」
けたたましい笑い声・・・・だが、ヒトには聞こえないだろう。 それは「音」では無いのだから。
- 58 ::月影に踊る血印の使徒 12 :05/03/16 08:08:25 ID:ilQbt1oS
- 「うふ、うふふふふふっっ!! いい、いいわ七十七番目!! その純粋な想い!! 兄を救おうとする想い!!
絶望的な希望にすがる、その想い!!! それが潰れた時、アナタはどんな良い顔をしてくれるのかしら!!??」
マネキンが消える。
辺りを見ても、姿はない。
「うふ、うふふふふっっ!! 私は観念の三十七使徒!! 存在するモノの使徒であるアナタに勝てるはずが無い!!」
「・・・・・・・」
私は、また鎌を想う。 糺し、今度は実在する鎌を。
現れる大鎌。 其れは死、其のもの。
「いい、いいわ!!! 抗って!! 限界まで!! 抗い続けて!! そして絶望という恐怖を味わうの!! うふふふふっっ!!」
観念に形は無い。 だから、捉えるのは「感覚」。
「せいぁっ!!」
右方向に鎌を振るう。
「うふふふふふふ・・・・正解よ」
其処に居た、マネキンに刃が突き刺さる。
「でも、どうしてかしら・・・私、全然痛くないの。 血も流れないの。 何故? うふっ、うふふふふふっっ!!
正解は、マネキンだ・か・ら、でした。 うふふふふふふふふふっっ!!!」
霧散し、再び空間に消えるマネキン。
私は又、感覚を探す。 そして、鎌を振るう。
「きゃあっ、また当たりよ。 うふふ、これじゃあ負けちゃうかしら? うふふふふふっっ!!」
再び消える―――其れの繰り返し。
「・・・・くっ・・」
「うふふふふ・・・・・分かっていたのでしょう? アナタに『観念』を殺すことは出来ない。
アナタが殺せるのは、ヒトだけですもの。 うふふふふふっ」
「く・・・ぅ・・・・!!!?」
「うふふふふ・・・・私は二人目の眷属。 『闇』を操ることも出来る。 アナタに少しづつ、『闇』をプレゼントしてあげたわ」
「・・・・・ぐ・・・・!!!」
「どう? 辛いでしょう、自分のモノでないモノが流れ込んでくるのは。 ましてそれは『闇』。
何よりも深くアナタに染み込んでいくのよ。 うふ、うふふふふふっっ!! 苦しいでしょう怖いでしょう!?
うふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふっっっっっっ!!!!!!!!」
「ぐぅ・・・・・・ぁく・・・!!!!!!」
- 59 ::月影に踊る血印の使徒 13 :05/03/16 08:10:34 ID:ilQbt1oS
- 「あら・・・もうこんな時間・・いけないわ、このままじゃ時間通りに死を与えられないわ」
マネキンが下界を見下ろす。
「でも困ったわね。 死を与える使徒は使えないし・・・・私が死を与えるしかないかしら・・・? うふふふふっっ!!」
「ぅ・・・ぐ・・・貴様・・・・っっっ!!!」
「あら、さらに困ったことがあるわ。 私、死を与えるなんてしたこと無いから、あのヒトを苦しめちゃうかもしれないわ。
うふ、うふふふふふふふっっ!!」
「ぐ・・・・ぅ・・・・!!!!」
マネキンがこちらへ近づき、私を覗き込む。
「馬鹿ね。 死を与えられるアナタなら、苦しまずに彼を死なせてあげれたのに」
「くぅ・・・・・!!!」
「いらっしゃい」
闇に操られ、私は下界を見下ろせる位置に運ばれる。
「ほら・・・アナタのお兄さんが丁度今・・・事故に遭ったみたいよ」
道路に叩き付けられた、史也の姿。
「でも、あれじゃあ彼は死ねない。 アナタと長く居すぎたから、死への抵抗力が強く成りすぎているの。
それじゃあ摂理が上手く働かない。 それは世界が否定されることになってしまう。 だから、私たち使徒が、彼を殺すの」
「・・・・・・・・・」
「っていうのがタ・テ・マ・エ。 私はね、ただアナタの恐怖の顔が見たいの。 絶望という恐怖に歪んだ顔がね。
うふふ、うふ、うふふふふふふふふふふふふふふっっっっっっ!!!!!!」
「くう・・・・!!!!」
「それじゃあ、其処でゆっくり見ててね。 私が彼を殺すから。 うふふふふ・・・・」
辺りを闇が包む。 時間が静止する。 私と、マネキンを除いて。
ゆっくりとマネキンが空中を降りていく。
歓喜の歌を口ずさみ。
こちらを振り向き・・・・笑った。
地上に降り立つ。
史也の前に立ち、私にこう言った。
あなたのお兄さんは、私の中で永遠に成るの。 そう、唯の死ではなく、永遠の苦しみを味わうの。
そして、笑った。
「うふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふっっっっっっ!!!!!!」
- 60 ::月影に踊る血印の使徒 14 :05/03/16 08:18:13 ID:ilQbt1oS
- 「き・・・・さま・・・・貴様ぁ―――っっ!!!」
私は闇を振り払い、立ち上がった。
一足飛びに、ビルからマネキンへ踊り掛かる。
「せぇぇぇいっっ!!!」
真上から、真下に鎌を振り下ろす。
すたんっ・・・・。
間違いなくマネキンの真ん中を通り―――極々静かな音が響く。
刃が通った跡には、切れ目一つ無い。
だが――――。
「アナタ・・・・・何? 何をしたの? 私が、斬られた? そんな・・・在り得ない」
マネキンが、崩れていく。
「在り得ない・・・在り得ないわ。 観念を斬るなんて・・・殺すなんて!!!
アナタなどに在り得ないわ!!! 観念が観念以外に殺されるなんて!!!!」
「私が、何を司っているか、忘れたか?」
「アナタは・・・・血!!! 生命維持の機能でしかないわ!!!」
「違うな・・・・血は、家族との・・・繋がり、心の繋がりだ」
「・・・・・・・・・うふ、うふふふふふっっ・・・私が殺される? 何故?
血などという、下等な『観念』に? 『世界』に認識されてすらいない観念に?」
「ふん・・・絆は、恐怖を超えられる・・・・・お前の死は、『必然』だ」
「アナタ・・・一体、何者なの? 『世界』が把握していない要素の『意味』を見出すなんて・・・・」
「私か? 私は・・・・・・・・・・唯の馬鹿さ」
「・・・・・・・・・・うふふふふふ・・・そうね、アナタはこれ以上ないくらいの馬鹿ね。
『世界』に逆らった・・・『世界』を敵に回したんだもの」
「・・・・・・・・」
「いづれ・・・アナタの存在そのものを、消しに、使徒が来る・・でしょう・・・きっと、私より、も『強い』観念の・・・使徒が。
そのとき・・・の・・・・アナ・・タの、恐怖に歪ん・・だ顔・・・・見られなくて、残念・・・・・・・だわ。
うふ・・・うふふふふふ・・・・うふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふふ―――」
マネキンは、完全に崩れ――――そして、消えた。
やがて、時は動き出す――――――――。
- 61 ::月影に踊る血印の使徒 15 :05/03/16 08:20:30 ID:ilQbt1oS
- 「う、ん・・・・・・・」
ベッドの上で、史也が声を出す。
「起きたか」
「え・・・あれ・・・? ここは・・・」
「病院だ。 事故に遭ったんだ、憶えているか?」
「あ・・・そういえば・・・・車に吹っ飛ばされたような・・・」
「ああ・・・医者も呆れた生命力で助かったんだ」
「呆れたって・・・・・・・・・そんなやばかったのか、俺・・・・?」
「ああ・・・普通なら生きていても半身不随か植物状態だろうと言われていたが・・・それもさっぱりだ」
「へぇ・・・俺って意外としぶといんだな、ははは・・・ってぇ・・・!」
「余り無理をするな。 それでも三日、生死を彷徨ったんだ」
「み、三日もか?!」
「其れだって医者に言わせればゴキブリ並みだそうだ。 普通一週間は意識が戻らないそうだ」
「へ、へぇ・・・・」
「まあ兎に角休め。 私もそろそろ休ませて貰うよ・・・私も三日、寝てないのでね」
「え・・・お前、ずっと付き添ってたのか?」
「・・・・な、何か不味いか?」
「い、いや別に。 迷惑かけたな」
「いや、迷惑なんかじゃない・・・・・・いいから早く治せ―――お兄ちゃん」
「おー・・・・って、あれ? 今」
「お休みっ」
私はベッドの横のソファーに倒れた。
「・・・・・・お休み、奈菜」
嗚呼・・・今日は良い夢が見られそうだ。
私は、家族を護れた。
太刀川史也・・・私の初めての家族。
私の・・・・・兄。
「・・・・お兄ちゃん」
もう一度その言葉を呟いて、私は眠りに着いた。
- 62 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/03/16 08:26:27 ID:ilQbt1oS
- 昨日漫画の月姫読んでたら思いついたので書きました。
この話はホント、それだけ。 突発一発。
月影に踊る血印の使徒 >>47-61
15日に誰も貼らなかったから貼っちゃいました。
二日に一個くらいないと寂しいかなー、なんて思って。
こう一発ネタばっかやってると、名前が被ってそうで恐怖。
いや、絶対被ってる。 職人様、神様、御免なさいまし。
うふふふふふふふふふふふふふ。
- 63 :47 :05/03/16 08:29:37 ID:ilQbt1oS
- あー、速攻漢字間違えてる。
馬鹿みたいだぞ、兄よ。 orz
使途→使徒
- 64 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/03/16 16:02:48 ID:gxp51j0J
- r;ァ'N;:::::::::::::,ィ/ >::::::::::ヽ
. 〃 ヽル1'´ ∠:::::::::::::::::i
i′ ___, - ,. = -一  ̄l:::::::::::::::l
. ! , -==、´r' l::::::/,ニ.ヽ
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レー-- 、ヽヾニ-ァ,ニ;=、_ !:::l ) } ト
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:ーゝヽ、 !´ " ̄ 'l,;;;;,,,.、 ,i:::::::ミ
::::::::::::::::ヽ.-‐ ト、 r'_{ __)`ニゝ、 ,,iリ::::::::ミ
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:::::::::::::::::::::::::N. ゙、::::ヾ,.`二ニ´∠,,.i::::::::::::::::::::///
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- 65 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/03/16 16:41:56 ID:91PlNHJM
- 「お兄ちゃん誕生日おめでと」
これだけでたまらん。
- 66 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/03/16 21:33:36 ID:ilQbt1oS
- > ここはお前のサイトじゃねえんだ
そりゃ当然です。
しかし固定のアンチが居るなんて、僕ってば流石だね! orz
これからも僕を応援しないで下さいね!!
なんて冗談はともかく、貴方の存在は僕にとってかなり重要です。
「物書き殺すにゃ刃物は要らぬ、上手い上手いと褒めりゃいい」なんて言葉もあります。
僕が何かを書く上で、それを否定してくれる貴方は本当に有り難いです。
ってかこんなんで物書き気取りかよwwwwwwwww
他のヒトはもう、僕のはスルーしてるみたいなんで、読んでくれる貴方は有り難いです。
あ、読んでないのかも。 まぁいいか。
んまぁ、自分は低俗すぎて神とかのSSに批評とかなんて付けられないしー、それどころか称える言葉すら見付かんないしー。
- 67 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/03/17 00:22:26 ID:WDo81OVc
- こういうシリアス系でありながらダークではないSS大好きです。
続きはお書きになるんでしょうか?
- 68 :雨音は紫音の調べ ◆cXtmHcvU.. :05/03/17 00:28:40 ID:kwY4WIa0
- >>66
僕は何と言えば……
とりあえず思った事を…↓
萌え…と言うよりは、かっこいい! Σd(>ヮ<)
今までに類を見ないジャンルですね。
個人的には
いつものほんわか萌え萌えな話の方が好きだったりしますが
こちらもけっこうゾクゾクきて良いですねぇ…
気を悪くしたら申し訳ございませんです……
- 69 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/03/17 00:56:08 ID:a8vG1XC+
- えと、何に気を悪く・・・?
別に褒められるのが嫌いな訳じゃないですよ?
むしろ甘やかしてくれよ、パパ! な人種ですから。
ただ、褒められると調子に乗るたちでして(現に今、調子に乗ってます)、
そんな意味で>>64さんみたいなヒトは僕にとって必要不可欠なんです。
>>67
これ以上書くと、どうしてもヌレ違いになっちゃうので、無理ぽです。
少なくともこのスレには貼れないですね・・・。
奈菜がツンからデレに変わってく過程とか書きたいんですが・・・。
設定上、奈菜だけじゃ続けられないんでー。
しかし、そのお言葉、非常に嬉しいです。
マリガトー。 。・゚・(ノД`)・゚・。
- 70 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/03/17 01:12:21 ID:cGV0gJ4C
- この際スレ違いでも構いませんので続きよろしく
面白かったので
- 71 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/03/17 02:12:00 ID:a8vG1XC+
- 工エエェェ(´д`)ェェエエ工工いいのかなー、続き書いて・・・。
面白い、ってのはすげー嬉しいんですけど・・・。
んまぁ、貼る貼らないは別にして、ちょっと書いてみますかね・・・。
しかし続き物って向いてないんだよなぁ、僕・・・・。
- 72 :すばる ◆9tSxotve.o :05/03/17 04:22:51 ID:2jfuKi22
- >>たゆんさん
乙ですー。
話に乗り遅れてしまったorz
俺は中途半端に物書きしてて難しさを知っちゃってるし
普通にSSとして書くより台詞集にして書く方が難しい気がしてるくらいなんですよ。
だから短い文章で上手く表現出来てる皆さんの作品は「素晴らしい」としか言いようがないです(笑
- 73 :海中 ◆xRzLN.WsAA :05/03/17 22:12:36 ID:H4PAcvU9
- 久しぶりに覗いたら、ついつい読みふけってしまいました。
とにかくGJ!
続きキボンヌ(;´Д`)ハァハァ
- 74 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/03/18 00:03:29 ID:XWOo1dW3
- 姐さん凄過ぎですって…マジで面白かったっす!
これ読んだら自分のがクソみたいに思えてきて、書きかけだったやつ全部消しちゃいましたよ…
しばらく名無しに戻って精進するので、続きぜひお願いしますー
- 75 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/03/18 20:47:04 ID:h4ARaOEy
- 「ふぅ……」
現在、午前十時。
特にすることもないので、コーヒーでまったり。
そんな時……
ピンポーン。
玄関のチャイムが鳴った。
「はーい」
俺は返事をして、玄関に向かう。
そして、鍵を開け、ドアを開けると……
誰もいない。
悪戯かよ……俺の家にピンポンダッシュとは、怖いもの知らずだな……。
そう思い、ドアを閉めようとすると……
「こんにちは」
と、いるはずの無い女の子の声。
「下よ」
そう言われて視線を下に向けると……
「あれ、沙耶ちゃん?」
この身長、このツインテール……俺の友人の妹、三上沙耶ちゃんに違いない。
「こんにちは。一人でどうしたの?三上は一緒じゃないの?」
「は?」
「しかし……どうしたの、その髪、金髪にしちゃって……中学生でそれはマズくない?」
「あのね、誰と勘違いしてるのか知らないけど……人違いよ」
「人違い……?」
そう言われて、この娘の顔をジッと見てみる。
うむ……。よく見ると全然違うわ……。
って言うか……多分、日本人じゃない。欧米系の顔だ。
「えっと……悪かったね、知り合いに似てたから」
「まぁ、いいわ。改めて、こんにちは。アナタ、この家の人?」
「あ……あぁ。君は?」
- 76 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/03/18 20:48:08 ID:h4ARaOEy
- 「自分から名乗るのが、この国の礼儀じゃないの?」
アニメみたいなセリフだな……。
コレって、貴重な体験かもしれないぞ、ひょっとすると。
「ま、そうだな。俺は立花将人。よろしく」
「私はサラ・ハワード。こちらこそ、よろしく」
「で、自己紹介が済んだところで本題に入ろう。何か御用?」
「私のママからコレを預かってきたわ。読んで」
俺は、この少女から手渡された手紙を開く。
差出人は……俺の従姉、クミ姉ぇだ……。
…………
……
…なるほど。
しかし……手紙の内容の描写は不可能に近いので、要約すると……
『用事があって遠出しなきゃならなくなったので、この娘を明日まで預かってください』
ということだ。
「何でこんないきなり……」
「しょうがないわよ。ママだって急だったんだから」
「じゃあ、何で俺の家に……」
「頼めるのはココしか無かったのよ」
「訳あって、今日と明日、この家には俺しかいないけど……それについてどう思う?」
「私だって立場をわきまえてるつもりよ。食事さえちゃんとしてれば文句は言わないわ」
「いや……そういうことじゃなくて」
「アナタが私に手を出すとは考え辛いけど?」
「ま、そりゃそうだ」
「じゃあ、問題ないわね。で、荷物はどこに置けばいいのかしら?」
「あ、そこの部屋に置いて」
とりあえず客間に荷物を置かせて、リビングにサラを通す。
むぅ……この娘、俺と距離を置きたい感じだな。
無理に接近を謀るよりは、この距離を保つことを優先しよう。
- 77 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/03/18 20:49:08 ID:h4ARaOEy
- 「へぇ……クミ姉ぇの娘か。国際結婚をしていたとは聞いていたが……」
親戚のおじさん風の会話で行こう。ま、実際そんなもんだし。
「ええ」
「ってことは、君はハーフか何か?」
「ええ。私のパパはイギリス人なの」
「ふーん。それにしても日本語上手だね?日本に住んでるの?」
「最近、越して来たの。ま、小さい頃からママに教えてもらってたけどね」
「ってことは、英語も話せるってこと?」
「そうね。というより、英語が主体よ」
「ほぅ。凄いもんだな……お茶でも飲むかい?」
「いただくわ」
やっぱ、イギリスといえば紅茶。しかし、中途半端なもんは出せないよな……。
確か母さんの茶葉がこの辺に……。
「あー……紅茶葉、切らしてるね……ティーバッグでもいいかな?」
「えっと……私、日本のお茶が飲んでみたい」
「緑茶?まぁ……いいけど」
とりあえず二つの湯飲みに緑茶を入れて持っていく。
「ほい。お待たせ。熱いから気をつけてね」
「えっと……お砂糖は?」
「入れない」
「ミルクは?」
「入れない」
「レモンは?」
「入れない。そのまま飲むんだ」
ま、日本に来たばっかりだし、しょうがないかな……。
恐る恐る口を湯飲みに近づけるサラ。
「どう?」
- 78 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/03/18 20:50:11 ID:h4ARaOEy
- 「なんだか……落ち着く」
「ははは。なかなかイケるクチだな」
笑いながら俺もお茶を一口。
それにしても、全然笑わんな……この子。
「ところで……今度は私があなたに質問してもいいかしら?」
「いいけど。アナタってのは止めてくれないか?」
「じゃあ、どうすればいいの?」
「……将人でいいよ」
ま、『お兄ちゃん』がベストだが……そこまでは望まんよ。
「そう。じゃあ、マサト」
「何?」
「ヨウカンって食べた事ある?」
「は?」
「知らないの?」
「いや、あるけど」
凄い突拍子も無い質問にちょっと戸惑ってしまった。
羊羹って……珍しいとこ狙ってくるな……。
「美味しいの?」
「ああ。甘い物好きなら」
「なるほど……。えっと……じゃ、お城には行った事ある?」
「城?一回ぐらいは」
「へぇ……」
気まずい沈黙……。
これから、たいした予定もあるわけじゃないし……どうしようかなぁ……。
このコを連れてどっかに遊びに行ってもいいけど……多分断られるだろうなぁ……。
「キミ、日本に興味あるんだ?」
「マサト、君っていうのはやめてくれない?サラでいいわ」
「じゃ、サラちゃん。他に何か聞きたい事あるかな?」
- 79 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/03/18 20:51:14 ID:h4ARaOEy
- 「そうね……和菓子って何処で買えるの?」
「和菓子?駅前の商店街に和菓子屋さんがあるけど」
「そのお店、教えてくれない?」
「えっと……この家を出て右に行くと坂道がある。それを下がっていくと駅に着くから、
そこを左に曲がって右側の三軒目の『たちばな』っていうお店だ。黍団子が有名だな」
「たちばな……?」
「あっ。俺とは何の関係も無いから」
「まぁ、いいわ。ありがとう。ちょっと行ってくるわ」
「えっ、一人で?大丈夫?」
「決まってるじゃない。マサト、行ってくれるの?」
「おいおい。俺はサラの食べたい物は分かんないよ?」
「ほらね。一人で行くわ」
「待てって。俺も一緒に行くよ。どうせヒマだし」
「い、いいわよ!!そんなっ!」
……何を慌てているんだ。
「いや、最近変質者とか出るらしいからさ。危ないよ」
「そう……。じゃあ、ご一緒してもらおうかしら」
「ああ。財布持って来るから待ってて」
───────────────────────
鍛えろ腕を 脚を ランランラン♪磨けよ技を 男前♪
えっと、貼っていいかよく分からんが……突然始まったぜ、新シリーズ。
旅先で突然思いついて、ダラダラ書いてみた。(※注 旅先‥新潟)
続くか続かないかは正直分からん。今回は行き当たりばったりで。
しかし……イギリスの文化はもうちょっと勉強しないと……。
- 80 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/03/18 21:23:08 ID:7qXG5Xo3
- 遊星神GJ!
未来たんとともに期待しております。
- 81 :海中 ◆xRzLN.WsAA :05/03/18 22:21:52 ID:kdkeB6xD
- 新シリーズキター!!うほっ いいハーフ… >旅先は新潟 ( д) ゚ ゚
- 82 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/03/18 22:29:56 ID:8Hh7BPYS
- おお、来ましたー! 個人的に異文化体験はかなり好きー。 期待値高め。
もうバンバン貼っちゃって下さい。 (前スレ19より)
ってゆーか毎度の様に何か騒ぎ起こしてゴメンなさい。 orz
ぜ、全部消したなんて嘘ですよね・・・?
- 83 :月影に踊る血印の使徒:第二夜 1 :05/03/19 08:41:04 ID:WTKVMXJY
- 世界は千十一の要素で構成されている。
其の始原要素、10。
光、闇、生、地、水、火、風、死、獣、そして人。
全ての要素はこの始原要素の何れかに属する。
私は「死」に属する「血」の使徒。
ヒトに「死」を与える使徒。
然し、今は違う。
私は「血」に新たなる意味を見出した。
「絆」という意味を―――。
「如何だ、調子は」
ベッドの上の史也に話し掛ける。
「んあ・・・おはよう、奈菜・・・・・調子なら普通かな」
「普通、か・・・其れでは良く分からん」
「あー・・・そんなこと言われてもなぁ・・・・」
史也は腕を回し、首を横に鳴らした。
「ずっとこの状態だし・・・足が折れてる以外は多分健康そのものだぜ?」
事実、史也の傷は骨折以外既に完治していた。
之が「使徒の隣人」の持つ特性。
永きの間使徒と関わって来た者は、其の使徒の司るモノに関する「世界」からの干渉が薄れる。
私が本来司るは、ヒトの死。
史也は極端に「死に辛い体」に成っているのだ。
「もう入院してる理由なんかねーんだけどなぁ」
「否(いや)・・・念には念を入れて、だろう。 ・・・・異常な位の生命力だからな」
「うわ・・・なんかトゲのある言い方・・・」
「そんな事は無い。 之でも褒めている心算(つもり)だ」
「うわ〜、喜んでいいのか微妙〜」
ふと、ベッド向かいの棚の上を見る。
「・・・・其れは」
「ん? ああ、お前から貰ったヤツ」
- 84 :月影に踊る血印の使徒:第二夜 2 :05/03/19 08:42:27 ID:WTKVMXJY
- 其れは確かに、私があの日贈ったシューズ。
「俺の血で汚れちまったからな、空いてる時間に洗っといた」
「・・・・そうか」
「大切なモンだからなー、キレイにしとかないと」
「・・・・大切な・・・物」
史也が、私の贈った物を大切にしている―――。
何故か分からないが、私は非常に嬉しくなった。
「あ・・・奈菜、お前・・」
急に史也が私を見詰める。
「・・・・何だ?」
「今までロクに見れなかったけど、笑った顔、可愛いな」
「・・・・・・・馬鹿野郎」
すぱーん。
私の突込みが史也の頭に入る。
「いてー・・・手加減抜きかよ・・・・・」
「当然だ。 健康なのだろう?」
「んまぁ、そうだけど・・・・」
「其れじゃあ私はそろそろ行くぞ」
「ああ。 勉強頑張って来い」
「ん。 ・・・・そうだ、起こして悪かったな」
「・・・・普通は一番最初に言うんじゃないか、ソレ?」
「済まん・・・・未だ、ヒトに気を使う、と云う事に慣れていないんだ」
今迄そんな事を考えた事が無かったから・・・・。
「いんや、別にかまわねーよ。 俺も奈菜と話せて良かったし」
「そうか・・・では、行って来ます」
「おう、行ってらっしゃい」
戸を開け、病室を出る・・・前に。
「どした、奈菜?」
「・・・・・早く元気に成れよ・・・・・・・お、お兄ちゃん」
其れだけ言って、私は戸を閉めた。
- 85 :月影に踊る血印の使徒:第二夜 3 :05/03/19 08:44:47 ID:WTKVMXJY
- 「おはよー、奈菜ちゃん」
今日も校門前で有紗に声を掛けられる。
「ん、お早う、有紗」
「お兄さんどうだった?」
「うん、大丈夫そうだった」
「・・・・えへへ〜」
「・・・・何だ?」
「やっぱり今朝も行ったんだ〜」
「・・・・何か可笑しいか?」
「え〜? なんかさー、奈菜ちゃんとお兄さんが急速接近! って感じ?」
「・・・・何だ、其れは」
「前ならさー、毎日なんて通わなかったよーきっと」
「其れは・・・そうだな・・以前の私なら、きっと然程心配しなかっただろうな・・」
「およ? なんか素直にもなった感じ?」
「ん・・・私は自分が思って居たよりも、ずっと子供だった様だ。 おに・・兄が、気付かせてくれた」
そう、私は未だ未だ子供。 ヒトを寄り代とした事など、幾度もあった。 だが、一度もヒトを理解しようとした事など無かった。
だから、私は子供。 何も知らない子供なのだ。
「へぇ〜・・・呼び方変えたのもその影響?」
・・・・・有紗は時々、妙に勘が働く。
「・・・・余計な所で耳聡いな」
「お兄ちゃん、って呼ぶことにしたんだー、へぇ〜」
「・・・・何だ」
「ん〜? ど〜して隠そうとしたのかな〜って」
「・・・・・・恥ずかしい、から・・・だと思う」
之が、「恥ずかしい」と云う想い。 感じた事が無い訳じゃない・・・けれど、認識したのは、之が初めて。
「・・・・・なんか奈菜ちゃん、ますます可愛くなっちゃったなー」
「何を言っているんだ・・・・行くぞ」
「あ、待ってよ奈菜ちゃーんっ。 そんな照れなくてもいいのにーっ」
「・・・照れてなど・・いない」
・・・・・・之が、照れ。
- 86 :月影に踊る血印の使徒:第二夜 4 :05/03/19 08:47:06 ID:WTKVMXJY
- 今日も私にとって退屈でしかない時間が過ぎる。
「数」のルール、「物質」を構成する元素と言う名の「要素」、世界に存在する「力」・・・・。
どれも之も、「世界の要素」で在る私が知らない筈の無いモノばかり。
だが、此の頃は楽しみも出来た。
ヒトの想いを乗せた言葉達や、ヒトの歴史。
ヒトの想い、ヒトの物語。 どれもが私の心を満たす。
私はもっとヒトを知りたかった。 「私」を知りたかった。
何故今迄知ろうとしなかったのだろう。 世界には、ヒトで満ちていると云うのに。
今、其の歴史の時間に・・・視線を感じ窓を見る。
木々の上に留まる、一羽の鳥。
碧い瞳に、確かに「意思」を乗せて・・・。
・・・・私は手を挙げた。
中年の歴史教諭が私を見る。
「・・どうした、太刀川」
「少し、頭が痛むので・・・保健室で休養を取らせて頂きたいのですが」
「貴様、何の用だ」
私は木々の上の鳥に言った。
「なんか不機嫌だね、キミ」
鳥が、応える。
「楽しみにしていた時間を潰されたんだ。 不機嫌にも成る」
「あらら・・・こりゃ悪いことしちゃったかな・・・待ってて、取り敢えず降りるから」
ばささささっ―――目の前に降り立った鳥は、思ったよりも大きかった。
「先ずは自己紹介。 僕は七人目の僕、八百五番目の使徒。 司るは『断』。 キミは?」
・・・・こいつ・・『世界』からの刺客、か・・・?
「・・・・私は八人目に従属する七十七番目の『血』の使徒。 名は太刀川奈菜」
「へぇ・・いいな、ヒトの寄り代は名前があって。 僕も5、6代前はヒトが寄り代だったんだけどさ」
「・・・・其れで、何の用なのだ?」
「うん、あのね、ここらへんで使徒に心当たりないかな?」
「・・・・と言うと?」
- 87 :月影に踊る血印の使徒:第二夜 5 :05/03/19 08:50:13 ID:WTKVMXJY
- 「うん、実はね、『欠員』が出てるんだ。 それ自体はそんなに珍しいことでもないんだけど」
欠員――例えば使徒が寄り代から寄り代へ移る間、世界からは其の要素が消える。
短い間ならば他の要素で補う事が出来るのだが、永く「欠員」が出ると其れも又摂理の流れに淀みを生じる。
「結構永いことなんだ。 だから『忘却者』が出たんだと思うんだ」
・・・・・如何やら「世界」からの刺客ではないらしい。 私が「恐」を「殺した」のは、つい先日の事だからな・・・・。
「『忘却者』、か・・・・」
永い永いヒトや生き物、樹木などの生。
寄り代として其れ等に関わり続けて行くと、自身が使徒で在る事を「忘れて」仕舞う者が居るのだ。
「生憎と私の周りに其れらしい者は居ないな・・と言うより私はそう云ったモノを探すのに向いていない」
「うーん、そっかぁ・・・」
気配を感じ、振り返る・・・其処に一匹の猫。
「あ、姉さん」
鳥が羽ばたき、猫の側に降り立つ。
「姉さんと呼ぶのは止めなさい。 未だヒトだった時のクセが抜けていないのね」
猫が喋りだす。
「良いじゃないか、使徒としても姉弟みたいなものだろ」
「もう・・・初めまして。 私は七人目の僕、八百四番目の使徒。 司るは『切』」
「私は・・・」
「存じておりますわ。 八人目の七十七、『血』の使徒」
「・・・・・・名前が抜けている。 太刀川奈菜だ」
「そうでしたね。 では、お聞きになったと思いますが、私たちは『忘却者』を探さなければいけませんので、この辺で」
猫が後ろを向く。
「じゃ、そういうことだから。 勉強の邪魔してゴメンね、奈菜」
鳥が大きく羽ばたき、空へ昇って行った。
「そうだ、奈菜さん。 『恐』の使徒を、知りませんか?」
「・・・・・・いや、最近は見ていないな」
「・・・・そうですか。 奈菜さん、気を付ける事です。 例え貴方が『観念』を倒すことが出来たのだとしても、所詮は一使徒。
『現象』二人に掛かれば・・・・貴方が『死ぬ』ことに成るのですから。 では、さようなら」
身を翻し、猫は街へと消えて行く。 ・・・切の言葉。 其れは私の行いが「世界」に通じていると云う事・・・。
そして、命令さえ在れば・・・・何時でも私を「殺し」に来ると云う事。
- 88 :月影に踊る血印の使徒:第二夜 6 :05/03/19 08:51:50 ID:WTKVMXJY
- 「奈菜ちゃーん、心配したよぉーっ! いきなり授業休んじゃうんだもーん!」
「・・・・有紗、保健室では静かにするものだ」
「ふーんだ、親友に心配掛ける奈菜ちゃんがいけないんだもーん!」
無茶苦茶な理屈・・・だけれど。
「親友・・・・」
「そーよ! この頃奈菜ちゃんお兄さんのこととかで忙しそうだったし、わたし結構心配してたんだからね! 親友として!」
「有紗・・・・・私は、有紗の、親友なのか?」
「え・・・な、何ソレぇ!? それが幼稚園の時から一緒だった親友に言う言葉ぁ?!」
「い、いや・・・有紗にとって、私は親友と呼べる様な存在なのか?」
「あったり前じゃないのぉ! ソレとも何?! 奈菜ちゃんにとってわたしって親友でも何でもなかったの?! そーなの!?」
「わ、私は・・・親友とか、そう云うの・・良く分からないから・・・」
「何、何ー? 今日はわたしを怒らせるキャンペーン? 親友の意味? 好きか嫌いか、それだけでしょ!」
「そ、そう・・・なのか?」
「あーあ、奈菜ちゃんがわたしを嫌いだったなんてかなりショックぅ・・・」
拗ねた様な言葉。 頭で本気で無いと分かっていても、其の言葉に慌ててしまう。
「あ、否、べ、別に有紗が嫌いとかじゃなくて・・・」
「でも、わたしは親友じゃーないんでしょー?」
「あ・・・・有紗は・・・私の、親友・・・だ」
「どうして?」
「私は・・・有紗が、好き・・・・だから」
「・・・・えへへ、なーら許しちゃう」
有紗に笑顔が戻った。 ・・・此処でやっと気付く。 私はこの笑顔が好きなんだ、と。
「有紗は・・・私の事、好き・・・・か?」
「ん? うん、だーい好きっ」
何の臆面も無く・・余りにも無防備過ぎる其の言葉は――私には、眩し過ぎる。
「あ、あれ・・・? な、奈菜ちゃん、泣いてるの?」
「ん? いいや、私は笑っているよ」
「で、でも、涙が・・・」
「嬉しくたって、涙は出るのだろう?」
史也と有紗。 二人の絆が在る限り、私は負けない。
- 89 :月影に踊る血印の使徒:第二夜 7 :05/03/19 08:53:34 ID:WTKVMXJY
- 「はいはい、二人の友情物語はそこら辺にしてもらえる?」
奥から透き通る声。
「あれ、吉川先生居たのー?」
「あのねぇ・・・保健の先生が保健室に居なくてどうするの」
「だってー、こっからじゃ見えないんだもーん」
「土方さん・・・私を怒らせたいの?」
しゃっ、とカーテンが引かれる。 其処に現れるのは白衣の女性。
「いくら貴方達しか居ないからって、あんまり騒がれちゃこまるの。 ここは保健室なんですから」
「はーい。 いやーしかし吉川先生、今日もお美しいですなー」
「何を言ってるの・・・太刀川さんも元気があるなら起きて教室行きなさい」
「あ、吉川先生、今のはNGです! いくら美しい吉川先生でも、わたしの親友に無理させたらダメダメです!」
「否・・・先生の言う通りだ。 もう大丈夫だから、教室に戻ろう」
「本当に大丈夫? 無理なんかしたら駄目だよ?」
「ああ・・・大丈夫だ、無理はしない。 有紗や、おに・・いちゃんに、心配を掛けたくないからな」
言って、有紗に笑い掛ける。
「わ・・・・・な、奈菜ちゃんって・・」
「何だ?」
「笑うと一層カワイイね」
「・・・・・」
べしっ。
「い、痛ーい! 奈菜ちゃんがぶったー! 割と本気でーっ!」
「・・・二人で同じ事を言うからだ」
「え、何・・・あ、待って待ってぇ! 何処行くのぉ?」
「・・・・教室だと言ったろう」
私はドアを開け、挨拶をしてとっとと出て行く。
「あ、待って、待ってってばぁっ! そ、それじゃ失礼しまーすっ」
「んふふ・・・仲良きことは美しきかな。 子供達って飽きないわねぇ・・なんて、年寄り臭いかしら?」
にゃあ、にゃぁー。
「あら・・・・猫かしら?」
- 90 :月影に踊る血印の使徒:第二夜 8 :05/03/19 08:56:06 ID:WTKVMXJY
- 「其れじゃあな、有紗」
そして放課。
「んー、お兄さんによろしくねー・・・・はぁ」
言葉尻の溜め息。
「幸せが逃げるぞ」
「え・・・あ、そーだね」
「如何したのだ、有紗」
「んー・・・わたしもお兄さんのお見舞い行きたいなー、って。 一日くらいピアノサボっても大丈夫かな?」
「サボりは善くないな」
「え〜、奈菜ちゃんヒドいよー。 自分ばっかりお兄さんとー」
「・・・・・有紗。 私も兄・・お兄ちゃんも、有紗のピアノが好きだ」
「えっ?」
「だから・・・退院した時、聞かせてやってくれ」
「あ・・・・う、うん!」
「練習、確りな」
「まっかして! 有紗ちゃんの超絶テクでお兄さんも奈菜ちゃんもピアノ中毒にしちゃうんだから! 退院の日、覚悟しておくことね!」
「嗚呼、覚悟して置くよ。 又な」
「ばいばーい!」
街の中心街へと有紗は駆け出す。
私はと言うと反対方向、今朝の病院へと歩き出す。 学校からは少々遠い道。 歩く裡(うち)、段々と辺りも暗く成る。
家々から流れる夕食の香りと温かい灯り。 其れ等に安らぎを感じ始めている自分――――。
私は、ヒトに近づけているのだろうか・・・・。
<<・・・すけて・・・! ね・・んを、た・・て・・・!!>>
「!?」
突如私の頭に響く思念の波。 痛切で、唯想いだけをぶつける様な思念。
何だ・・・・こんな「思念」を繰る事が出来る者が・・・この街に居たのか?
突風が駆け抜け、私の真後ろで一塊に成る。
其の中心に、一匹の猫。
「・・・・・貴方・・七十七番目・・?」
其の猫が、喋りだす。
- 91 :月影に踊る血印の使徒:第二夜 9 :05/03/19 08:59:31 ID:WTKVMXJY
- 「お前は・・・切か? 寄り代を変えた様だが」
「ええ・・・私の寄り代は、『焼かれて』しまった」
「『焼かれた』・・・?」
「済まないけれど・・・力を貸して欲しいの・・断を助ける為に」
走りながら喋りだす。
「私は欠員らしきヒトを見付けた。 暫く様子を見たけれど、やっぱり『忘却者』だった・・・。
だから私は記憶に干渉して呼び起こそうとしたの」
「・・・・お前にそんな事が出来るのか?」
「私は七人目の僕。 吹き抜ける風程度になら干渉も出来るわ」
「・・其れで?」
「彼女は、目覚めた・・原始の意思の儘に・・・・。 今彼女の頭には唯一つの思いしかないわ」
辿り着いたのは―――私の、学校。
「自分が司るモノを唯司るという意思だけ」
人影無きグラウンドの真ん中に白い影。
「六人目の腕、百八番目の使徒」
美しき顔に表情は無い。
「司るは、『焼』」
「・・・・・吉川先生」
足元に、焼け焦げた黒い物体・・・昼間見た切の寄り代だろう。 手には一羽の鳥・・・・断だ。
「ねえ・・・さん・・・」
「断・・・!!」
「ゴメン・・・流石に・・『火』には、勝てなかった・・・・よ・・」
「断、待ってて、今助け―――」
ぶわんっ!
衝撃波の様なモノが掛け、思わず目を閉じる。
開く・・・と共に広がる焦げた臭い。
白衣の右手に最早鳥の姿は無く・・・・・唯、焼け焦げた、肉塊。
「・・・・・くっ・・!!」
之が、「焼」と云う「現象」・・・・。
- 92 :月影に踊る血印の使徒:第二夜 10 :05/03/19 09:01:10 ID:WTKVMXJY
- 「私は・・・・『焼』。 あらゆるモノを、大地へと還す力。 私は、還す。 全てを、『世界』に」
「・・・焼! 徒に『世界』を還元して、如何するというの!」
「私は・・・・『焼』。 あらゆるモノを、大地へ―――」
「・・・・・駄目ね・・如何にかして止めないと、この辺り一帯を焦土にしても止まらなそう」
「・・・・仕方在るまい」
私は意識を集中させる。
「暗き闇より深く、燦然と輝く生よりも美しく・・・全てのモノに等しく在り、唯唯一なるモノとして在る―――。
此処に具現せよ。 我に体現せよ。 世界に存在せよ。 汝は死、我が手に集いて其を示せ」
現れる、大鎌。
「殺すの?」
「真逆(まさか)。 あれは私の学校の先生なんだ。 死なれては困る」
「多少手荒な方法で・・・って事ね」
「ああ。 相手は『現象』だ。 二人掛かりとはいえ油断するな」
「それはこっちのセリフよ」
たんっ―――私から飛び掛る。
「汝・・・使徒で在りながら、私を邪魔するか・・・」
片手で大鎌を受け流し、私の懐へ潜り込む。
「こっちよ!!」
其の隙に背面に回り込んだ切が、其の爪を振るう―――が、最小の動作で其れを回避する。 即ち、私を吹っ飛ばし、前へ。
「くっ・・・っ!」
着地し焼の方を見る―――眼前に迫る焼。
「『焼けろ』」
ぶわっ。 私を炎が包む。
「ああっっっ!!!」
「彼女を、放しなさい!!」
切が焼に飛び掛る・・・が、又してもかわされ、体を捕らえられる。
「汝、再び『世界』へ還るか?」
「ぐっ・・・!!」
「其の手を、放せぇっ!!」
大鎌の柄を当てる様に振るう。 が、余計な気遣い立った様で、焼は難なく其れをかわす。
- 93 :月影に踊る血印の使徒:第二夜 11 :05/03/19 09:03:10 ID:WTKVMXJY
- 「っっ!!」
一瞬逸れた焼の注意を見逃さず、切は如何にか自由を得る。 私達は素早く距離を取った。
「・・・・『強い』な」
短い迎合だったが、「強さ」の差が嫌と言う程分かった。
「ええ・・六人目の系統は使徒の中でも『強い』部類。 しかも・・・風は火を煽るだけ」
「相性も悪い、か・・・全く、厄介事を持って来てくれたな」
「悪かったわね・・・・」
「・・・・切、一太刀で良い。 如何にかして焼の・・先生の体に傷を付けろ」
「何・・何をするつもり?」
「私が何を司っているか、忘れたか」
「・・・いいわ、よく分からないけれどやってみるわ」
駆け出す切。 私も右方向から焼に駆け寄る。
「せぇいっ!!」
切が躍り掛かる。 焼は上半身を逸らしてかわし、切を左手で捕らえようとする。
「はっ!!」
私が切り掛かる――大鎌の攻撃範囲外から。
「!」
一瞬の虚―――投げられた大鎌に焼の反応が遅れる。 其れは本の小さな隙。 大鎌をかわすのには問題はない。 だが。
「そこよっっ!!!」
切が焼の左腕に斬撃を与える。
「―――!?」
不測が二度も続き、焼は無防備。 意識其の物で在る使徒にとって、其れは致命的。
「私の邪魔をするな!!」
ごうっ! 切が炎に包まれ、飛ぶ。
「其方ばかり見ていて良いのか?」
私は左腕の傷口を掴んだ。
「――暫く眠っていろ」
「・・・・な、に・・・・を・・」
「喋るな、辛いぞ」
ふっ――と焼の意識が途切れ、私に崩れ落ちた。
- 94 :月影に踊る血印の使徒:第二夜 12 :05/03/19 09:05:15 ID:WTKVMXJY
- 「何を・・・したの?」
起き上がった切が、此方に歩いて来る。
「先生の体の血の流れを止めた」
「血流を・・・?」
「嗚呼。 原始の意思しかないので在れば、寄り代と使徒の結び付きも強い。 ヒトの・・寄り代の意識を奪う方法で十分だ」
「血流を止めても・・・暫くは意識が残るのではなくて?」
「こいつは『焼』だ。 酸素のない状態に長くは耐えられないだろう」
「――使徒の意識のクセを利用するとはね・・・『恐』も、そうやって倒したのかしら?」
「・・・・やはり、『世界』は知っていたか」
「少なくとも・・『始原の十人』は知っているのでしょうね。 私は『空』に聞いたのだけれど」
「はっ、あの噂好きか。 奴に掛かれば『世界』中に知れ渡るのも時間の問題だな」
私は自嘲気味に笑った。
「・・・貴方は、何故・・『世界』を――」
ごおっ!!
轟音に言葉が掻き消される。 又も切は炎に包まれた。
「なっ―――!!?」
私の腕の中の先生が―――目を、開く。
「うふ、うふふふふ・・・流石ね、『血』の使徒」
辺りが、赤に包まれる――。
「六人目の配下を使って負けるなんて・・・予想外よ」
私が、燃えている・・・・。
「安心して。 未だ、『殺さ』ないから・・私の受けた苦しみを、味あわせてあげるから・・・・。 うふふふ・・・・・・」
其の美しい顔が狂気の笑みに歪むのを見て・・・・・私の意識は、途絶えた。
冷たい感触―――私の意識は其れに呼び起こされた。
「お目覚め?」
見下ろす、『焼』・・・・・。 床に倒れた、私。
「此処が何処だか、分かるかしら?」
意識がはっきりとしてくる・・・忘れる筈が無い、今朝程来たばかりなのだから。
- 95 :月影に踊る血印の使徒:第二夜 13 :05/03/19 09:08:27 ID:WTKVMXJY
- 「そう、此処は病院。 深夜、誰もが寝静まる、患者達の病棟」
私の横には、切。
「彼女なら大丈夫。 無関係の使徒を『殺す』理由は無いもの。 唯、彼女は七人目、風の僕。
空気を断ち切ったのだから暫くは動けないでしょうね」
「お前は・・・何を・・・!?」
「うふふ・・私は私が受けた苦しみを、貴方にも返したいだけ」
「貴様・・・・『焼』では、ない・・・?!」
「うふふふふ。 そんな事は然したる問題ではないわ。 貴方が『太刀川奈菜』でないのと同じでしょう?」
息が苦しい・・・・頭が痛む・・・・・声が、頭に響く・・・。
「貴方は、『恐』を『殺した』。 私の半身も同じ、彼女を。 だから殺すの。 貴方の半身を」
私の半身・・・真逆!?
「うふふふふふふふふ。 そう、其の顔。 彼女が一番好きだった」
焼・・・白衣が、歩き出す。
「黒焦げにしてあげるから、火葬代は浮くわよ? うふふふふふふふふふふふふふふ」
「くっ・・・貴様、待て・・・!!」
「あら、無理はしない方がいいわよ? 今此処はとても酸素が薄く成ってるから」
「くぅ・・・!!!」
一歩が、途轍もなく重い。
「『焼』って便利ね。 この『現象』なら、広範囲の生き物を殲滅する事も出来るわ。
いっそ八人目の従属にした方がいいかも知れないわね。 うふふふふふふ」
「ま、て・・・・!!!」
「うふふふふ。 ゆっくりついて来るといいわ。 待っててあげるから」
たん、たん、たん―――廊下に足音が響く。
奴は・・『焼』の現象を如何にか利用して、自分の周りに酸素を確保しているのだろう・・・・。
其の後を、間抜けの様に着いて行く。
「くぅ・・・はぁ・・!!」
途中、何度も倒れそうに成りながら。 其の度に奴は此方を見て、笑う。
如何したの? 貴方の半身の命は、私の手の内に在るのよ? 取り返さなくて良いの? と。
「くっ・・・・・!!!!」
「ほら・・・もうすぐよ?」
- 96 :月影に踊る血印の使徒:第二夜 14 :05/03/19 09:10:53 ID:WTKVMXJY
- 指差すプレート・・・・507、太刀川史也。
「さて・・如何する? 此の儘部屋の外から火葬する事も出来るわ。
其れとも、直接彼が焼ける様を見たい? うふふふふふふふ」
「くっ・・・!!!!」
「私は、彼女の死に様を見られなかったわ・・・。 其れはとても辛い事。 貴方にそんな辛い思いをさせるのも気が引けるわ。
うふふ。 だから・・・貴方の目の前で焼いてあげるわ・・・うふふふふふふふふふ」
「止め・・・ろぉ―――!!!」
すっ・・・ドアが開かれる。
其処に眠る、史也。
「うふふ・・・さぁ、さよならよ」
白衣の手が、史也に伸び・・火花が散る。
ぶわっっ!!
突然の突風。 炎は史也でなく、白衣を包んだ。
「奈菜、大丈夫!?」
後ろから、聞き慣れぬ男の声。
「うふふふふ。 上手く風を操って炎を私に向けたのね? でも、この体は『焼』。 炎などに焼かれる事は無いわよ?」
すぐに火は消えた。
「奈菜、僕の『現象』を貸す! 奴と『焼』との『繋がり』を『断』って!!」
「―――出ろ!!!」
私の一言で具現する大鎌。 其処に、『現象』を乗せる。
「たぁ―――!!!」
すっ―――間違い無く、刃は白衣を捕らえた。
糸の切れた人形の様に、先生の体は崩れた。
「・・・・・・・・・・・上手く・・・いったの?」
「・・・・嗚呼。 空気が、軽く成った」
風が吹く。 外から中へ、今迄押し止められていた空気が動く。
「そうだ・・・他の患者達は・・・」
「ん、廊下とこの部屋だけみたいだよ。 彼の周りは確保されてたみたいだし、僕の部屋も大丈夫だった。 だから空気を持って来られたんだけどね」
「・・・・貴様、知っていたのか? 私が何をして・・そして誰かに狙われていたのを」
「・・・・出ようか」
- 97 :月影に踊る血印の使徒:第二夜 15 :05/03/19 09:18:03 ID:WTKVMXJY
- 屋上、星々の光が私達を包む。
「切は、如何だ」
「うん、大丈夫っぽい。 何だか変な気分だね、こうしてヒトの姿で猫の姉さんを見るのは」
左手に抱き締めた切を、男――断は優しい目で見ていた。
「ふう・・いい加減しんどいな。 よいせっと」
右手に抱えた焼――吉川先生をベンチに降ろす。
「姉さんもここで寝ていてくれよ」
そっと、切を寝かせる。 暫しの間を取って、話しだす。
「・・・・・・・・僕は『生』の意思で動いてる」
「・・・・三人目の?」
「うん。 奈菜の取った行動は確かに『摂理』の流れに反しているかもしれない。 けれど、使徒としては正しい行動だった。
奈菜の見付けた新しい『意味』は、『世界』にとっては意外なものだったし。
今までずっと『死』の従属だと思っていたのに・・・むしろ『人』の方が近かったんだもん」
断は手摺りに寄り掛かり、肩越しに街を見た。
「だから、今『世界』は揉めている。 奈菜を、『摂理』に背いた者として『殺す』か、否か」
「三人目は、私を生かす意見か」
「そうじゃない。 まだ見極めきれてないんだ。 キミを迎えるべきか否か。 だから、見届け人を僕に頼んだ」
「・・・では、何故私を助けた?」
「姉さんを助けてくれたから」
「・・・・其れだけか?」
「本音はね。 建前も在るよ。 アイツは個人の恨みで奈菜を狙ってるから、っていう。 さっきも奈菜より先に彼を殺そうとした」
「・・・奴は・・『恐』を自分の半身と言った・・・奴は、何者なんだ?」
「それは・・・まだ分からない。 唯・・・相当な『強さ』だね。
『現象』を操って・・『時の制限』を認識出来る媒介無しでやってのけた」
「『根源』か、其れ並みの『強さ』か・・・」
「・・・・どうするんだい、奈菜。 はっきり言って勝ち目は無いよ。 『世界』がすぐに結論を出すとも思えない」
「相手が何で在ろうと・・・」
私の司る『絆』に誓おう。
「私は史也を護ってみせる。 絶対に―――」
仰いだ夜空には、燦然と満月が輝いていた。
- 98 :名無しくん、、、好きです。。。 :05/03/19 09:22:09 ID:WTKVMXJY
- はい、スレ違いです。
月影に踊る血印の使徒:第二夜 >>83-97
今回、はっきり言っても言わなくても、ご期待いただいたほど面白くなかったと思います。
理由はたんとありますが、まず特に焦点がない。
前回は奈菜がうじうじ悩んだり、マネキンのいかれっぷりとか、萌え要素は結構あったんですが・・・。
今回は世界観の拡張みたいなのと、前ふりみたいなのぐらいに終始してますねぇ。
何人かのご期待頂いた方のために、出来る事なら第三夜を書かせていただきたい。
しかしスレ違い。 困ったもんだ。
っていうかこんなんでいいんかって、一時間ぐらい送るの悩みました。
「ええい送っちまえ」ってリアルに言って送信しました(馬鹿)。
これ、さっぱり分かんねーよ、どーいうこと? っていうのがあったら聞いてください。
ちゃんと考えてるのだったらお答えできますんで。
あ、今回はちょっとおまけがつきます。 少し待っててください。
- 99 :なぜなに月下:いちにちめ :05/03/19 09:26:13 ID:WTKVMXJY
- 「有紗と!」
「・・・切の」
「なぜなに月下ー!」
「・・・何故私がこんなことを・・」
「うるさい! えいぎょ−しなさい!」
「はいはい・・此処では言葉足らず、表現足らずの書き手に代わって貴方達の疑問を解決してあげるわ(棒読み)」
「まず最初の疑問は・・5レス目9行目ー! 私には向いてないってどーいうこと?」
「例えば私達七人目・・『風』の僕はヒトの心に色々干渉出来るわ。 風はヒトの心に結構影響を与えられるもの。
そして奈菜は『死』の従属。 情報を得たりするのには向いてないわ。 特に奈菜は『血』だから、余りヒトの心に関わらないもの。
最も、『絆』としての奈菜は如何だか分からないけれど。 奈菜自身もまだ『絆』としての自分を掴み切れていないから、未知数ね」
「ほー。 んじゃ、次ー!」
「(絶対に理解していないわね、この娘)」
「12のはちー。 使徒の意識のクセってー?」
「使徒は意識其の物だから、本来寄り代が受けた物理的干渉其の物以上の影響は受けないの。
ただ、例えば今回は『焼』だけれど、『焼』という現象は酸素が必要でしょう?
だから沢山酸素があればもっともっと『燃え』られる『気がする』。 逆に無いと自分の存在すらも危ういような『気がする』の」
「気がするー?」
「ええ。 意識其の物なんだから、『気がする』というのは非常に重要なの。
第一夜の奈菜の格好だって、気分を上げる以上の効果はないわ」
「へー。 気分屋さんなんだね、使徒ってー」
「・・・・・・・気分屋さん・・」
「今日の最後! 14の18! 現象を貸すって何ー?」
「使徒としての意識を薄くすることで、使徒の『現象』を世界から無くすの」
「無くすの? そしたら誰かが補わなきゃダメなんだよね?」
「そう。 逆を言うと、其の『現象』を誰かが代行出来る様に成る、ってことでしょう? 断は其れを『貸す』って表現したのね」
「ふーん」
「因みに『断』たれたモノは二度と一つに戻ることは無いわ。 之は私と『断』の最大の違いなの」
「ほほー。 よーし今日は勉強になったぜ旦那! みんなー、次回もちゃんと見てねー!」
「次なんてあるのかしら・・・?」
「それは言わないお約束〜。 もう会えないかもだけど、またねー・・・」
- 100 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/03/19 10:51:41 ID:EDS4V9VT
- 書くの早ぇぇ……しかも凄ぇ……。
姐さんに(とてつもなく身分を弁えてない)一言。
『自分を信じる事。それが自分が自分らしくあるための第一歩』(>40さん辺りは苦笑いだと思います。はい。大好きです)
つまり……他人を念頭においてSSを書くと、やっぱ書いててもつまらないですよ。
なので、自分が萌えられるor面白いと思う台本を第一目標にすべきだと思います。
それさえ行ってれば、少なくとも俺は文句言いません。
って、偉そうにもほどがあるよ……すみません、マジで。orz
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0ch BBS 2004-10-30