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[第五弾]妹に言われたいセリフ
- 3 ::大好きだよ・・・おにいちゃん :05/03/13 21:48:00 ID:xJ0cSVLy
- 「明日で丁度一年になるね」
灯りを消した洞窟に、僕の呟きが響く。
「え、なにが?」
「僕が・・・・お兄ちゃんになって」
「うん・・・そうだね」
「一年・・・そうだ、お誕生日・・」
「え?」
「僕のお誕生日は祝ってもらったけど・・・」
「あ・・・わたしのは・・思い出せないから・・・・」
「そっか・・・じゃあさ、明日にしよう?」
「明日・・?」
「うん。 僕と会った日。 つらい日かもしれないけど・・・だからこそ、いい日にもした方がいいと思うんだ」
つらい事があったら、その分楽しいことをすればきっとつらいのが減ると思った。
「ダメ・・・かな?」
「・・ううん、すごく・・・すごく、うれしいよおにいちゃん・・・!」
「・・・・決まりだね。 明日はコージさんに頼んでちょっと多めに食べ物をもらおう」
「うん、うん・・・」
「なにか食べたいの、ある?」
「えとね・・・リンゴ!」
「ふふ、分かってる、必ずもらってくる。 他にはない?」
「あのね・・前におにいちゃんに作ってもらった、あのお料理が食べたいな」
「ん〜・・・アレはお肉が欲しいから・・うん、お肉がもらえたらそうしよう」
「わぁ、ありがとう、おにいちゃん」
暗くてよく見えないけれど、きっと満面の笑顔なんだろう。 僕はそれを感じたくて、そっと頬をなでた。
「あ・・・れ?」
濡れていた・・・・涙で。
「ど、どうしたの? やっぱり、つらい?」
「ううん・・・違うの。 すごく、すっごくうれしいの。 うれしすぎて、涙が出ちゃったの」
「大好きだよ・・・おにいちゃん」
- 4 ::地雷を用意しろ!! :05/03/13 21:49:22 ID:xJ0cSVLy
- 「誕生日・・・か。 いいね、そりゃ」
翌日、僕はコージさんにそのことを相談していた。
「お前も運がいい。 こないだ豚を拾ってな・・血抜きも済んでる。 持ってくといい」
「あ、ありがとうございます!」
「あとはなんか注文あるか?」
「リンゴがあれば」
「おーけー、キープしとく」
これで全部そろう・・・僕は段々と楽しい気持ちが高まっていくのを感じた。
「妹さん、大切にしろよ」
「はいっ!」
今日が楽しい日になれば、きっとあの子はもっと笑ってくれる。 あの子のためなら、僕は何だって出来るんだ。
そう、あの子の笑顔の為なら―――。 僕は死ねる。
爆音が轟いた。
ボロボロの建物が揺れる。
「・・・っ!? 敵か!? こんな所まで?!」
「コージさん、出ましょう! 崩れますよ、こんな建物!」
「ああ・・・・!!」
裏口から様子を窺いつつ出る。
「コージ!!」
「レクス、何が起きてんだ!?」
「サイアクだ・・・あいつら骨董品の戦車を引っ張り出してきやがった!」
「戦車ぁ!? そんなもん、どっから出したんだ?!」
「知らねーよ! 第二次大戦の時の骨董品だが、生身じゃキツイ!」
「くそっ、なんつー展開だよ、こりゃ!!」
「コージ、戦車に対抗するにはアレしかないぜ」
「アレって・・アレか?」
「ああ、今の装備じゃアレしかねえ」
「分かった・・・地雷を用意しろ!!」
- 5 ::ミッションスタート! :05/03/13 21:51:56 ID:xJ0cSVLy
- 「やることは簡単なんだ。 戦車に近づいて、底面に貼っつける。 後は適当に離れてボン」
「問題は近づくことだ。 奴ら歩兵と組んで行動してるからな。 とっととこいつらを排除しないといけない」
「十四、五人でどうにかなる相手なのか?」
「敵方は戦車17台、歩兵は7、80かな」
「ひゅー、敵さんいきなり本腰だねぇ。 骨董品がそんなあったのも驚きだが・・レクス、地雷よこせ」
「おいおい、司令官が突っ込んでく気かよ?」
「俺ぁ司令官なんかになった気はないね。 ヴァニシングトルーパー、それが俺の名だ」
「馬鹿言ってんじゃねーよ、タコ」
「タコだとぉ、この銃器マニア」
「その銃器マニアのお陰で今、銃器に苦労してねーんだろ」
「なら対戦車バズーカぐらい用意しとけや」
「・・・・お前らいい加減にしたらどうだ。 ほらコージ、対戦車地雷だ」
「さんきゅ、スティ。 うし、一発かますかね」
「結局お前が先陣切るのかよ・・・おいボウズ、離れるなよ」
「・・・・はい。 僕たちは後方支援、敵の歩兵を撃てばいいんですね」
「そうだ。 俺はとにかくばら撒くから、お前は確実にしとめていけ」
「分かりました」
「ったく・・・こんなガキに人殺しの指示を出さなきゃならんたぁな」
「ぼやくなレクス。 戦争ってのはそんなもんだろ」
「俺らはお前と違って、そう簡単に割り切れねー事情ってもんがあんだよ。 なぁ、コージ」
「ああ。 お前も家族が出来ればそう言ってられねーぞ、スティ・・・ってなんの話をしてんだ」
どんっ―――と、音というより衝撃が走る。
「うおっと、和やかに談笑してるうちに、敵さんらがこっちにきたみたいですな」
「ま、いつもどうり傭兵野郎Aチームの華麗なるチームワークで切り抜けようぜ」
「そうだな。 こんなのは4人で爆撃機を11機落としたときよりずっと簡単だ」
「あー、対人火気しかなくて大変だった―――」
どんっ―――。
「ま、昔話の時間でもないようだな・・・・それじゃあ」
「ミッションスタート!」
- 6 ::お前に任す :05/03/13 21:53:46 ID:xJ0cSVLy
- いつもふざけてる様で、コージさんたちの戦闘技能はすごい。
僕が引き金を五回も引かないうち、戦車一台が爆炎をあげた。
「スティ、向こうの路地!」
「了解だ」
「ボウズ、俺たちはこっちだ! コージに続くぞ!」
「はいっ!」
一人、二人と僕が敵を撃ち抜いていく。
一時間経たないうちに、四分の三ほどの戦車が破壊された。
僕も確実に死人を作っていく。
「ボウズ、引っ込め!!」
レクスさんの怒鳴り声に反射的に従う。
チュインチュインチュインッ―――鉄筋コンクリートの柱の残骸、その表面を弾丸が掠め取って行った。
「よ、どうだ」
「コージ? 先行ってたんじゃなかったのか?」
「いや、地雷が切れてな。 取りに戻らなならん」
「こっちにゃ、もう戦車はいねーんじゃねーか?」
「なら別の方に行くか」
「ああ・・・奴らをどーにかしてからな」
コンクリ越しに向こうを見やる。 数は十数人といったところか。
「おいおい、なんであんなかたまってんだよ?」
「指揮系統か作戦系統が上手くいってないのかもな・・・・しかし、それがこっちに不利に働くとはな・・・」
「よし、囮だ、向こうの建物まで走れレクス」
「ぶっ殺すぞてめぇ」
「いや、結構真面目な話なんだが」
「なおさらだ。 お前のが足も速いし適任だろーが、ヴァニシングトルーパー」
「それなら僕がやります」
「ボウズが・・・・?」
「はい。 敵も子供なら撃つ事をためらうでしょうし、足は多分お二人よりも速いと思います」
「・・・・分かった。 お前に任す」
- 7 ::ああそうか、僕は :05/03/13 21:55:29 ID:xJ0cSVLy
- 「俺が合図したら飛び出せ」
コージさんが僕を見る。
「絶対に死ぬなよ」
「はい。 食べ物、多めでお願いします」
「ああ、まかしとけ。 せいぜい派手に祝ってやれ」
合図とともに走り出す。
向かいまでの20メートル。
何のことは無い、いつもどおりだ。
戦場に子供が居るのは不思議じゃない。
けれども誰もそれが兵だとは思わず、引き金を引くのをためらう。
そう、いつもどおりのハズだった。
敵に徴集されたばかりの新兵が居たこと以外は。
動くものは標的―――戦場で恐慌状態になった新兵は、余りにも軽い引き金を引いた。
タタタタッ、タタッ。
軽快な音が響く。
どうにか当たらずに済んだ僕は、建物に飛び込む。
しばらくの間音が鳴り響く。 ・・・・・そして、静寂が訪れる。
僕はコージさんたちの方を見た。
コージさんがこっちに親指を立てた。 作戦は成功―――僕は安堵の溜め息を吐いた。
僕は立ち上がって、コージさんたちの方へ向かう。
「ナイスランだったぜ、ボウズ」
「ありがとうございます、レク――」
衝撃に、僕の言葉が遮られた。
視界が、倒れる。
体が動かない。
段々と胸の辺りが熱くなってくる。
レクスさんが何か叫んで、コージさんが銃を撃つ。
まるで、スローモーション。
ああそうか、僕は、撃たれたんだ。
- 8 ::お前が居なきゃ :05/03/13 21:57:02 ID:xJ0cSVLy
- 「しっかりしろ、ボウズ!!」
「レクス・・・・さん?」
「くそ、血が止まらねぇ!!」
「落ち着けレクス! 応急処置は済んだんだ、衛生兵を呼ぶしかねぇ!」
「ば、馬鹿野郎! 俺たちのメディックは、この前死んじまっただろうが!!」
段々と、音が遠くなってくる。
痛みがないのは、麻酔かなにかのお陰だろうか?
僕は、ここで、死ぬみたいだ。
走馬灯は見えない――代わりに、あの子の顔が浮かんだ。
僕の、大切な、妹。
僕に与えられた、最後の家族。
そうだ、今日はあの子の誕生日だ。
最高に楽しい日にしなくちゃならないんだ。
「コージ・・・さん・・」
「な、なんだ!?」
「今日・・・妹の、誕・・生日、なんです・・・」
「ああ、知ってる!」
「だから・・・・祝って、あげて、くれませんか・・」
「ああ! 盛大に祝ってやるよ!!」
「そう・・あの子の、好きな、料理も・・・一度、だけ・・・僕が作った料理・・・ホイコーローも、作ってやって・・下さい・・」
「作ってやるよ!! 俺の最高の奴をよ!!」
「あり・・がとう、ございます・・僕の、代わりに・・・今日を、最高の・・誕生、日に・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「おい・・・ボウズ・・・・死んだのか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「おい・・・ウソだろ・・・? 俺のガキより小さいのに・・・なんで死ぬんだよ!? まだ生きてなきゃ駄目だろ!?」
「くっ・・・・・・・くそっ!! くそっ!!」
「何だよ・・・死ぬんじゃねーよ!! まだ死ぬ歳じゃねーだろ!? お前が死んでいいわけねーだろっっ!!!!」
「馬鹿野郎・・・この大馬鹿野郎・・・!! 誕生日なんて――――」
「お前が居なきゃ、意味がねーだろーが―――っ!!」
- 9 ::ランだもん :05/03/13 21:59:18 ID:xJ0cSVLy
- 「あの子の・・レイジちゃんの引き取り先、見付かったぞ」
低い声で、コージはレクスに言った。
「日本の方に祖母がいたらしい。 日本なら俺も居るからな・・・なにかあればそこに行ける」
「・・・・・・・・」
「レクス・・・・」
「あの子・・・・思い出しちまったんだとさ」
「・・・・何を?」
「名前とか、戦争前の頃のこととか・・・・両親が死んだときのこととか」
「・・・・・・・・・」
「・・・・ボウズが、死んだショックでだろうな・・・・・・・・・」
コージは応えず、ドアを開けた。
その中には、兄を二度も失った少女が居た。
「・・・・レイジちゃん。 これからキミは日本のおばあさんの所に行くことになった」
「・・・・・・・おにいちゃんは?」
「俺も・・・アイツが死んだ実感なんてない。 でも、アイツは・・・・死んだんだ」
何も残さない、死。
残ったのは、彼女の深い悲しみだけ。
「またなの・・・? どうしてわたしを置いてくの? ずっとずっと、おにいちゃんでいてくれるって言ったのに・・・」
「・・・・・レイジちゃん・・・・」
「ちがう・・・ちがうもん・・」
「レイジちゃん・・?」
「わたしの名前、ちがうもん・・・・」
『名前も、思い出せないの?』
「おにいちゃんがつけてくれたんだもん」
『それじゃあ僕が付けてもいいかな?』
「わたしの・・・わたしの名前は―――」
『僕の好きな色なんだけど・・・嫌かな?』
『ううん・・・好き。 それがいいな・・・今日からわたしは―――』
「―――藍、ランだもん」
- 10 :中華:第五話 9 :05/03/13 22:02:33 ID:xJ0cSVLy
- 「・・・・・・・・・・・・」
僕は、何も言えなかった。
あの、明るい藍が抱えるモノは・・・・・あまりにもつらい過去。
「あの子は三回も家族を失ったのさ・・・」
「三回・・・?」
「実の親が死んで、引き取り先の家族は戦争で殺されて―――そして守ってくれた『兄』も殺された」
「・・・・!」
「だからあの子は家族がいなくなるのを恐れる。 必要以上に明るく振舞おうとする。
家族に嫌われたくないから・・・・・過去を自分の中に殺してまで」
「夢は・・・・藍の、悲鳴・・」
「そうさ・・・あの子は今でも繰り返し夢を見てるのさ・・・・・家族の、死をね」
なんて・・・ことだ。 藍は、藍は今までずっと、そんなものを一人で抱え込んでいたのか。
「ホイコーローがアンタと兄を重ね合わせたのさ・・・」
僕は・・・・僕は・・・藍の苦しみの前には、余りにも小さな存在じゃないか・・・・・。
「でもね・・・あの子が懐いたのそれだけじゃないはずさ。 ただの代わりなんかじゃないさ、アンタは」
僕の心を読んだように、ばあさんが言った。
「ど、どうして・・・? 僕はただホイコーローが上手く作れたって、それだけじゃないですか」
「アンタはきっぱり言った。 自分は藍の兄だ、ってね。
今まであの子のことをそこまで考えてくれたのはアンタが初めてさ。 アンタなら・・・あの子を救える」
ばあさんは僕の目を見て言った。
「救ってやっておくれ・・・あの子を」
「・・・・僕は・・」
ぴろりろりろ――――電子音が鳴り響く。 ・・・・電話だ。
「・・・・・・・・・・・・・・僕が、出ますね・・」
受話器を取り、耳に当てる。
「もしもし・・・・・・はい、そうです・・・・・・・え・・?」
- 11 :中華:第五話 10 :05/03/13 22:04:27 ID:xJ0cSVLy
- 僕は走った。
藍が向かった市場へ。
電話の相手は、警察。
藍に何かあって・・・怪我をしたらしい。
重体なのか、軽症なのか――警察でも状況を掴みかねているらしい。
藍、藍、藍――無事で・・・いてくれ・・・。
市場が見えてくる・・・人がごった返すその中に突っ込んでいく。
「藍、藍!! どこだ、どこに居る!?」
僕は奥へ、奥へと進んでいく。
管理事務所の前・・・藍は居た。
「お兄ちゃん・・・? どしたのか?」
「ら、藍・・・無事で・・・・?」
「無事・・・?」
きょとんとした表情・・・・。 そこに事務所のおばさんが話しかけてくる。
「藍ちゃんがね、引ったくりを捕まえてくれたんですよ。 犯人と格闘になって・・・でも中国武術でやっつけちゃってくれて」
「あはは、ちょちょいのちょいね。 ほら」
藍が指差す先に、丁寧に縛られて伸びている男が居た。
「わたしにぶつかて、買い物落としてしまたよ。 晩御飯の材料、ダメになて頭にきて、ちょとやりすぎたかもしれないアル」
ちろっと舌を出す藍・・・。
「怪我・・・怪我は無いの?」
「うん? 打ち合いなたから何発かもらたけど、大したことないアル」
「藍・・・・」
僕は・・・・思わず藍を抱きしめた。
「お、お兄ちゃん?」
「もう・・・こんな無茶はやめてよ・・・・すごく、すごく心配したんだ」
「ご、ごめんなさいアル。 晩御飯、とてもおいしいの作るから、許して欲しいアル・・・嫌わないで欲しいアル・・・・」
「・・・・・・・藍・・・! 大丈夫だから・・・! 僕は、何処にも行かないから・・・ずっと、藍といるから・・・・!」
「お・・・お兄ちゃん・・・・?」
「だから、だから・・・・もう、大丈夫だから・・・・・」
「どして・・・泣いてるか・・・?」
- 12 :中華:第五話 11 :05/03/13 22:07:27 ID:xJ0cSVLy
- 言葉がまとまらなくて・・僕は泣いていた。
今まで藍が抱いてきた、苦しみとか、悲しみとか・・・・それを思うと胸がいっぱいになった。
「大丈夫だから・・・・絶対、離れないから・・・」
「おにい・・・・ちゃん・・・? どうしたか? 悲しいこと、あたか?」
悲しいことがあったのは、藍、キミの方だろ?
それをずっと押し殺してきたんだろ?
「大丈夫だから・・・僕は、キミを置いていかないから・・・・・」
もう、無理はしなくていいから・・・僕が支えるから・・・・。
「・・・・・・・・・お兄ちゃん・・・・・・・・ホント、か・・? お兄ちゃんは、藍、置いてかないか?」
「ああ、絶対に置いていったりしない」
「ホントか? お父さん、お母さん、ホントのも、そでないのも・・・みんな藍、置いてた・・。
『おにいちゃん』たちも、みんな、ずと一緒言った・・・でも、みんな置いてたよ・・・・」
「僕は置いていかない!! 絶対に置いていかない!!」
「ホント・・・か? 信じて、いいか? ・・・・・ら、藍の・・ホントのお兄ちゃんに、なてくれるか?」
「ああ!! 藍は、僕の妹だ!! 誰よりも大切な、妹だ!!」
「お兄ちゃん・・・・おに・・・・ふえぇ・・・」
「藍・・・・・!!」
「お兄ちゃ――んっ!! 怖かた・・お兄ちゃんに、『お兄ちゃん』になてくれ頼んでも・・・断られる思た・・・!!
でも、お兄ちゃんに、『お兄ちゃん』なて欲しかた・・・わたしの苦しいの、助けて欲しかた・・!!」
「うん・・・大丈夫、大丈夫だ・・・僕は藍から離れてったりしないから・・・これからは、二人で越えていこう・・」
「頼ていいのか? 迷惑違うか?」
「何言ってるの・・僕と藍は兄妹なんだよ・・・頼って当たり前だし、僕だって藍に頼るし」
「うん・・・・うん・・・・!!」
「僕らは、家族なんだから・・・・」
「・・・・・うん・・・!!」
市場の真ん中で、僕と藍は抱き合って泣いていた。
周りから見れば、さぞかし奇妙な光景だったろう。
でも、丁度いい。
これは僕と藍が兄妹に・・・本当の兄妹になったことの宣言なんだ。
これからは、ずっと、ずっと一緒―――恋人にも似た、永遠の誓い。
- 13 :中華:第五話 12 :05/03/13 22:10:14 ID:xJ0cSVLy
- 繋いだ手、帰り道。
「藍、早速だけど頼みたいことがあるんだ」
「うん? なにか?」
「次の休み、空いてるかな?」
「えと、空いてるよ?」
「それじゃあ一日付き合ってくれないかな」
「構わないが・・・デートか? デートなのかっ?」
期待に満ちた目で僕を見詰める。
「ん〜、期待してるところ悪いけど、デートとは言いがたいかな」
「む・・・そか。 それならどこ行くか?」
「僕が借りてるアパート」
「アパート? 何するか?」
「引越しの手伝いして欲しいんだけど」
「引越し・・・か?」
「うん・・・・藍の家に」
「え・・・・わ、わたしのウチにか?!」
「うん・・・やっぱ兄妹だし、一緒に住んだ方がいいかな・・って。 ダメかなぁ?」
「とと、とんでもないアル! 大歓迎アル!!」
「ありがと、藍」
「お兄ちゃん・・・やっぱり、お兄ちゃんはお兄ちゃんアル」
「なんで?」
「わたしが一番して欲しいことしてくれるよ・・・お兄ちゃん、大好きアル!!」
日々が始まる。
僕らの新しい日常がやって来る。
過去でなく、現在へ、未来へと向かうために。
僕と藍、二人で歩き出す。
そう、一人でなく、二人で―――。
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