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[第五弾]妹に言われたいセリフ

28 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/03/14 19:16:58 ID:ozX7WEe1
「未来ちゃん」
「何ですか?兄さん」
料理の本を読んでいた未来が振り返る。
「明日、ヒマか?」
「はい、ヒマですけど?」
「んじゃ、決まり。明日は俺に付き合ってもらうよ」
「別に良いですけど……何するんですか?」
「デートだよ、デート」
「でででで、デートっ!?」
『デート』って言うだけで顔を紅くするなんて……今時、中学生でも珍しいだろ……たぶん。
「ああ、明日はホワイトデーだろ?学校もないしさ。俺からのお返しとして、遊びに行こうぜ?」
「い、イヤですよぉ!!」
即否定かよ……ちっとは悩めって……。
しかし、今日はココで引き下がる訳には行かない!!
「何で?」
「兄さんとデートなんて……は、恥ずかしいですっ……」
モジモジしやがって……可愛いヤツめ……。
「俺とはそんなにイヤ?」
「そ、そんなことないですけどっ!!」
「んじゃ、出かけるのがイヤ?」
「そ、そういうワケじゃ……」
「じゃ、相乗効果で、俺と出かけるのがイヤってことだ?」
「そんなつもりじゃ……」
よし!!後一押し!!
「じゃあ、行こうぜ?」
「はぁ……しょうがないですね……」
とか言いつつ、ちょっと嬉しそうなのは気のせいか……?
「よし。決まりね。楽しみー!!」
「あの……ところで、何処に行くんですか?」
「未来が行きたいところに行こうと思ってるけど、未来ちゃんは何処に行きたい?」
「わ、私は……別に……。兄さんは?」

29 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/03/14 19:18:00 ID:ozX7WEe1
「イキたいとこなら山ほどあるが……どこがいいかなぁ……」
「そうですねぇ……」
二人で頭を巡らせる。
日帰り可能なデートスポットねぇ……。
「あ、塚田駅のトコのなんとかって言うショッピングセンターはどう?行ったこと無いだろ?」
「そうですね……私はそこでもいいですよ?」
「んじゃ、そうするか。ソコに決定ね」
「はいっ!!」
何だ、やっぱり乗り気じゃないか……嬉しいねぇ。
「じゃ、九時ぐらいに家を出ればいいかな」
「そうですね。じゃあ、九時までに各自準備完了ってことで」
「りょーかい。遅刻するなよ?」
「兄さん、それは私のセリフですよ?」
未来ちゃんは俺を指差して、少し意地悪っぽく微笑んだ。
───────────────────────
「未来がいつまでも髪の毛いじってるからだよ!!」
「に、兄さんだって、寝坊したじゃないですか!!」
はい。遅刻です。二人とも遅刻しました。
「あぁ、もう時間がねぇ!!未来、後ろに乗れ!!」
俺は自転車のハンドルを掴み、ガレージから引っ張り出す。
「えっ!?でも、私……!!」
「いいから!!飛ばすぞ!!しっかりつかまってろ!!」
未来が後ろに座ったのを確認し、俺は全身に力を入れ、重いペダルを踏んだ。
駅までの道は下り坂だ。二人の乗る自転車は次第にスピードを上げていく。
よほど怖いのか、俺の体にしがみついている未来が可愛かった。
「に、兄さん……そ、そんなに……スピード出さないで下さい!!」
「何だよ……怖いのか?」
「ち、違います!!きゃっ!!」
「どうした?」

30 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/03/14 19:19:01 ID:ozX7WEe1
「す、スカートが捲れちゃって……きゃっ!?」
「手で押さえてりゃいいのに……」
「だ、だって……手を離したら怖いです……」
くぁぁぁぁぁぁ!!可愛いなぁ、チクショー!!耳元で囁くなよ!!
しかし、どうしようかな〜。
未来ちゃんのぱんつをその辺の奴らに見せるのは嫌だけど……怯える未来ちゃんは可愛すぎ!!
ってなことを、考えてると……。
「あんっ♥」
未来ちゃんが俺の耳元で色っぽい声を出す。
「今度は何!?」
「地面がデコボコしてて……い、痛いんです……お……お尻が……あぅ……!!」
うわぁ……力が抜けるぅ……。
「だ、だから……に、兄さん……もっと……あぅ!……ゆ、ゆっくり……してくださいっ!!」
もうさ、未来ちゃんに耳元でこんな事言われたら……
かなり迷った末、俺は力一杯ブレーキを握り締めた。
「ま、歩いていこうぜ」
「はい。すいません……」
「いいって」
俺は未来の肩をポンと叩いて、二人で歩き出した。
───────────────────────
「座れないねぇ」
「ですね……」
塚田駅へ向かう電車の中。
現在は、かろうじて他人と触れない程度の混み具合。
「次は、十崎、十崎です」
車内放送がそんなことを告げ、列車はスピードを下げていく。
ドアが開くと、かなりの人数が乗り込んできた。
「うわぁ、すげぇな」
「ですね……」
そう呟いた未来の声が沈んでいるのに俺は気付いた。
なるほどね……。

31 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/03/14 19:20:43 ID:ozX7WEe1
「未来」
俺は未来の肩をつかんで、未来を隅に押し寄せる。
そして、俺はその未来に覆いかぶさるような体勢をとった。
「大丈夫。未来は俺が守るから」
「兄さん……」
「チカンは嫌だもんな?」
「あ、ありがとうございます!!」
そんなことをやっている間に、電車は更に混んで来た。
背中に受ける力が大きくなる。
俺はグッと手に力を入れて、未来に力がかからないように踏ん張る。
「だ、大丈夫ですか!?」
「大丈夫大丈夫」
無理に笑顔を作る。
「兄さん……」
未来が心配そうな顔をしている。
……こんな細い体に無理させる訳にはいかねぇよな、やっぱ。
「兄さん……もういいですよ……こんなに顔真っ赤になって……」
「未来……」
「はい」
「いや……未来の髪って、いい匂いだよな?」
「はい?」
「チカンの気持ちもちょっと分かるかも」
「に、兄さん!?な、何言ってるんですか!?」
未来が顔を真っ赤にしながら、ちょっと小声で言う。
「それでいいよ。俺は大丈夫だから、いつも通り俺に話しかけてくれ」
「兄さん……」
「顔が赤いのも、未来ちゃんとお揃いだし……うぉっと」
過去最高の力がかかる。
痛ぅ……手がしびれてきた……。
「兄さん……」
「大丈夫。鍛えてます」
「はぁ……兄さんってば……」

32 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/03/14 19:21:45 ID:ozX7WEe1
未来が溜息をつく。
「もう止めても無理みたいですね?」
「流石……分かってるね」
「頑張って……ください……」
「あぁ」
今度は作り笑いではなく、本当の笑顔がこぼれる。俺の笑いに釣られて、未来までも笑顔になる。
そんな未来を見ると、俺の腕にも力が漲ってきた気がする。
さぁ、もうちょっと頑張ろうか!!
「次は、塚田、塚田です」
そんなアナウンスが聞こえた。
俺がちょっとホッとしている中、次第にスピードを落とす列車。
「あっ」
慣性によって、未来がバランスを崩し、俺の胸に飛び込んできた。
「未来、大丈夫か?」
俺はその未来を優しく抱きとめた。
「兄さん……ありがとうございます」
「普段に何も出来ないからね。こういうときぐらいは最後までやらなきゃな?」
未来に微笑みかける。
「兄さん……兄さんって、カッコいいですね……」
俺の胸の中で未来が呟いた。
そのセリフがすごく恥ずかしくて、俺は何も聞こえないフリをする。
「さ、降りるぞ?」
「はい」
俺はごく自然に未来の手を掴む。
力を入れすぎて真っ白になった手には、未来の手がすごく暖かく感じられた。
───────────────────────
「おっ!!未来、あの店、いいんじゃないか?」
「えぇっ!?私、そんな……」
「いいから。見るだけならタダ。行くだけ行ってみようぜ」
件のショッピングセンター内。
俺は未来の手を引っ張り、オサレな洋服屋さんに入る。
「未来ちゃん。こんなのどうかな?」

33 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/03/14 19:23:03 ID:ozX7WEe1
「えっ……ちょっと派手すぎますよ!?」
「そう?似合うと思うけど?ちょっと試着してみてよ」
「そ、そんな……恥ずかしいですよ……」
手に持っていたコートで、恥ずかしそうに顔を隠す未来。
くぅぅぅぅ!!可愛いぞ!!
「大丈夫。絶対似合うから。俺が保障する」
「で、でも……」
「いいからいいから。騙されたと思って着てみなよ」
半ばムリヤリ、未来を試着室に押し込む。
実際、似合うかどうかなんて、ファッション関係に疎い俺にはサッパリ分からない。
ま、未来はいつも地味な服装ばっかりだから、たまにはいつもと違う未来が見てみたいってのが内心だが。
「あの……兄さん……」
「おぅ、早かった……な……」
試着室から現れた未来を見て、俺は言葉を奪われた。
肩を出した漆黒のキャミソールとロングスカート……真っ白な未来の肌と相まって……美しい……。
「えっと……どうですか……?」
俺がずっと固まったまま動かないので、心配そうに未来が声をかける。
「えっ……いや、もう、未来を褒める言葉が思いつかねぇ……」
「ほら、やっぱりダメですよね?こういう大人っぽい服は私には似合いませんよ」
別に失望した訳でもなく、予想通りといった感じの未来。
「い、いやっ!!そういう意味じゃなくて!!」
「じゃあ……どういう意味ですか?」
「いや……なんつーか……すごく似合ってる。いや、それ以上だ。似合いすぎて、何も言えない」
「あの……兄さん、お世辞にしても言い過ぎですよ?」
「いや、お世辞なんかじゃないって!!ホントに似合ってるよ!!」
「え、えっと……あ、ありがとうございます……えっと……じゃ、脱ぎますね……」
未来がカーテンを閉める。
「ああ……よし、次はこの服ね」
「ま、まだ買うんですか!?」
未来が慌てて、カーテンから顔だけを出す。

34 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/03/14 19:24:04 ID:ozX7WEe1
「うん。もっともっと可愛い未来が見たいからね」
「も、もう、兄さん!!こんなところで、何言ってるんですか!!」
未来は顔を真っ赤にして、シャッとカーテンを閉じた。
───────────────────────
「兄さん……ちょっと買いたいものがあるんですけど、いいですか?」
さっきの店を出た後、未来が、恥ずかしそうに言った。
「あ、ああ……いいけど」
「ありがとうございます。じゃ、こっち来てください」
「ああ」
そう言って、案内されてきたのは……
「下着売り場……!?」
禁断の場所とも言える女性下着売り場へ来てしまった……。
「は、はい……」
「えーと……俺、その辺で休憩してるわ」
その場から緊急離脱を謀り、回れ右をした俺の首を……未来がしっかりと掴んだ。
「ダメなのかい?」
コクコクと可愛く頷く未来。
もう、未来ちゃんは甘えん坊だなぁー!!
「じゃあ、兄さん、行きましょ?」
「マジで?」
「マジ……ですよ?さ、行きましょ?」
未来は俺の手を掴んで、下着売り場へ引き込もうとする。
既に未来は聖域の中……俺はギリギリのところで踏みとどまった。
「兄さん……来てくれないんですか?」
上目遣いの未来。
ぬはぁーーー!!写真撮りてぇーーーー!!
しかし、今ので分かったぞ……コイツは、いつぞやの裏未来だ……!!
ま、だからどうした。って感じだが……。
「いや……こういうところに、男とは、普通来ないんじゃない?」
「そうですか……?結構カップルで来てる人も多いですよ?」
確かに、少ないが男連れの人もいることはいる……。
「さ、兄さんも覚悟決めてください!!」

35 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/03/14 19:25:06 ID:ozX7WEe1
「何故、今日はそんなに積極的なんだ!?」
「だって……一番見て欲しい人が一番好きなモノを着けたいですから……ねっ?」
裏未来は上目遣いで俺を見て、瞬間的に俺の手をちょっとだけ強く握った。
くぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!窒息するーーー!!
「いいですよね?兄さん?」
「あぁ……しょうがない……」
「へへへっ……ありがとうございます!!」
出来るだけ周りを見ないように、未来の背中だけを見て歩く。
「あっ、兄さん!!コレ、可愛くないですか?」
突然、未来が立ち止まる。
そして、一つブr……いや……えっと……胸用の下着を取り、自分の胸に当てる。
「どうですか?」
「いや……い、いいんじゃない……?」
俺はそんな未来を直視できず、未来の頭の辺りを見ながら適当に答える。
「もう!!兄さん、ちゃんと見てくださいよぉ!!」
「いや……やっぱ……恥ずかしいしさ……」
「そうですね。兄さんもお顔が真っ赤ですよ?」
「そ、そうだねぇ……」
居心地最悪……。
何だか、ここには俺の存在すらも許されないような気がして、俺は俯いて硬直状態になる。
「ふふっ、兄さんも、意外と純なんですね?」
「そうだねぇ……。それが分かったら、そろそろ勘弁して欲しいねぇ……」
「しょうがないですね……冗談はコレぐらいにしてあげましょうか」
未来が両手を腰に当てて、仕方ないといった感じで言う。
俺は呆気に取られて、
「冗談……?」
「はい。いくら兄さんでも、下着を選んでもらうのはさすがに……」
「そうか、冗談か……なるほど……あははははは……」
乾いた笑いが口から漏れた。
ホッとしたような、残念なような……そんな気分だった。
「未ぃ来ぅぅーーーーー!!」

36 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/03/14 19:26:19 ID:ozX7WEe1
そして、その後に込み上げてきた怒り……
「あっ!!ごめんなさいっ!!」
「と行きたいところだけど。ま、こっちも十分可愛い未来を見せてもらったし……それで良しとしようか」
「に、兄さん!?何言ってるんですかっ!?」
「でも、すごく可愛かったよ?『だって……一番見て欲しい人が一番好きなモノを着けたいですから』の辺りとか」
「い、言わないで下さい!!それ、一番恥ずかしかったんですよ!!」
「じゃ、言わなきゃよかったのに。どうせ冗談なんだからさ」
「で、でも……」
俺の言葉に、顔を赤くして俯く未来。
「結構……本気だったりするんですけどね……?」
「おいおい。さすがに、もう騙されないぞ?」
「えっ……?あー……そ、そうですよね。さ、さすがにねぇ?」
「そうそう。そこまで俺も馬鹿じゃないからな。さ、次のトコ行こう」
「は、はいっ!!」
───────────────────────
「兄さん。今日はありがとうございました……」
駅から家までの帰り道。
隣で並んで歩いている未来が呟いた。
「楽しかった?」
「はい」
「そりゃ良かったよ。もしかしたら、未来ちゃんつまらないんじゃないかと思ってたんだ」
「つまらなかったですよ、すごく」
速答!?さっきのはモロに社交辞令……?
「ぅゎぁ……」
全身から力が抜け、俺はその場に膝を付く。
「に、兄さん!!この話、まだ続きがあるんですよっ!!」
「つづき……?」

37 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/03/14 19:27:29 ID:ozX7WEe1
「はい。えっと……私は可愛くもないし、オシャレにも興味ないから、
 ああいう場所って、私には縁の無い物だと思ってたんです」
いや、未来ちゃんは可愛いよ!!と言いたかったが、話の腰の骨を折るのでやめた。
「私があの場所にいるのは、場違いのような気がして……最初は楽しくなった」
その気持ちは分かる。つーか、さっき散々味わった。
「でも……兄さんと一緒にいると、そんなことどうでも良くなってきちゃって……」
「……?」
「考えるのも馬鹿らしいというか、考えるのを忘れてたというか……そんな感じです」
「ま……よく分からねぇけど。要約すると、『俺と来て良かった』ってことかな?」
「はい!!」
明るく笑う未来。夕日を浴びたその顔が可愛かった。
「そうだ、どこかで飯食って帰ろうぜ!?」
「いいですね。行きましょう。何にしましょうか?」
「ここを右に曲がったトコにある店、オムライスが美味いらしいぞ?」
「いいですね。そこにしましょうか?」
「よし、決定!!さぁ、未来よ。後ろに乗れ」
「えぇっ!?い、イヤですよ!!」
「はははっ!!冗談だって。二人で歩いていこう」
「もう……兄さんってば……」
ちょっとだけ頬を膨らませて、俯きながら歩く未来。
「ねぇ……兄さん……」
「ん?」
「手……繋ぎませんか……?」
「どうしたんだ?寒いのか?」
「は……はいっ……!」
「しょうがねぇな」
優しく未来の手を握る。
未来は子供のように微笑んで……
「ありがとうございます。……兄さんの手……いいですね」
「何が?」

38 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :05/03/14 19:31:01 ID:ozX7WEe1
「暖かくて大きくて……未来は好きですよ。この手」
「手だけ褒められても、あんま嬉しくないけど……」
「ふふっ……あくまでも手が一番好きってことですって」

兄さんの手。私を守ってくれる優しい手……。
この手がいつまでも……いつまでも……私のそばに……。
───────────────────────
まとめ。
>>16-23 沙耶のホワイトデー。
>>24-27 双子のホワイトデー。
>>28-38 未来のホワイトデー。、

あ〜、今回キツかった……

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