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[第六弾]妹に言われたいセリフ

365 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/06/22(木) 20:58:35 ID:U4/qsRee
巴の方から何故か安堵の溜め息が聞こえてくる・・・俺ってそんなキャラでもないだろうに。
更に微妙に遠慮がちに聞こえてくる巴の声、なんか声が上擦ってる気が・・・

「あの・・・お兄ちゃん?お兄ちゃんは・・・どんなのがいいと思う?」
「そうだな、ええっと・・・黄色とかオレンジとかいいかもな」
「・・・」
「豹柄とかもいいかも」
「・・・豹柄!?」
「なんつってな、流石に冗談だよ」
「も、もうっ」

一つ一つ俺の言葉を反芻するかの様に聞き入る巴が面白くて思わず冗談を交えてしまう。
というか、そんなに真剣に聞く様な事なのか?
焦る巴を尻目に首が痛くなるまで蒼天の空を見上げ続ける。

「巴は知ってるか?ニュースで見たんだけど黒色もあるんだそうだ」
「・・・知ってるよ・・・ボクだってそれ位」
「そっか、なんでも中から外から黒尽くめなんだってな」

真っ黒な飛行機というのは結構なインパクトがあると思う。
添乗員も黒の制服で内装も黒で統一されエスプレッソとチョコレートが自慢らしい。

「一回、実物を見てみたいよな」
「・・・見て・・・みたい・・・お兄ちゃん?」
「うん?」
「ボクに・・・それは似合うと思う?」
「・・・ふむ」

366 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/06/22(木) 21:00:16 ID:U4/qsRee
空を見上げたまま、顎を撫でながら思索を巡らせる。
黒い機内、エスプレッソ片手に窓の下に映る夜景を見下ろすスーツ姿の巴。
なんとなくだが俺の頭の中では巴は憂いの表情でいる。

「・・・滅茶苦茶似合いそうだな」
「ホント?ホントに・・・そう思って・・・くれてる?」
「ああ、キャリアウーマンというか・・・大人の女性って感じだな」
「・・・そっか・・・ふふっ」
「やれやれ、そんなに嬉しい事かね」
「ボクにとっては凄く、ね・・・お兄ちゃんが言ってくれたから・・・お兄ちゃんだから」
「ん?それはどういう・・・」

さっきから何か噛合っていない二人の会話。見えなくなった話を辿る為に巴へと振り返ると照れまくった巴の熱視線に迎えられる。
・・・はて?なんだろうか、この甘い雰囲気は?
そこで俺はようやくズレた歯車の転がった先を知る事になる。いや、知るのがあまりにも遅過ぎた。
巴の視線、俺が見上げていた方角の青空の下、ベランダの外界に断絶された一年中日陰となっている三角コーナーに干された物体。
これ以上は俺の口からは言うまい・・・

「お、おい、ちょっと待て!!何か勘違いしてないか!?てか、してるんだよ!!」
「分かってる・・・別に可笑しな事じゃないよ、お兄ちゃんだって・・・その・・・男の人なんだから」
「だ、だからそれが!!」


367 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/06/22(木) 21:01:41 ID:U4/qsRee
鳥肌が立つ程に艶を帯びた巴の瞳が妖しく揺らめく。危うく虜にされそうな俺は情けない事に自分を保つだけで精一杯。
とはいえこの場合、まだ自己を持っているのは我ながら褒められていい様な気はする。
普通の男なら完全にやられている所だろう、そんな背水の陣に容赦無く攻めかかる巴の一言。

「ボクはお兄ちゃんの為なら・・・楽しみにしててね・・・お兄ちゃん・・・」

絶大な勘違いの後、去り際にやたら艶っぽい流し目と一言を残して巴はベランダから消えていく。
・・・楽しみ?・・・一体、あの御方は何をやらかす気なんだ?

「・・・部屋に戻るか」

ぶるっ、と身震いを一つして俺もベランダを後にする。なんだか暖かかった筈なのに妙に背中に寒気を感じる俺。
若干の期待と大きな不安を抱きつつ自室に向かう俺だった。しかし、そんな願いも空しく難事はやっぱり訪れるのである。
巴さん曰く、なんだかスッキリした出来事。俺曰く、無かった事にしたい事件。
これが後に我が家に強烈に残る事件、巴さん裸エプロン大事件の始まりだったのです。

(続かない)

368 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/06/22(木) 21:06:02 ID:U4/qsRee
・・・いや、ただの悪ふざけなので軽く流して下さい。
七月十二日の祭りまで道はまだ遠い。

369 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/06/22(木) 21:49:58 ID:etqGqMpV
続かないんですか……w

っていうか、少し萌力を俺に分けてください……いや、マジで……w

370 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/02(日) 22:30:41 ID:ILAIMImQ
優秀なスレッドストッパーの遊星が保守しに来ましたよ、と。

現在6(+1)完成、一つ途中。良いネタ閃けぇ……

371 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/07/08(土) 20:26:30 ID:NWTNnA26
それでもおれは待ち続ける

372 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 21:26:22 ID:d5g2kOvY
いやぁ、焦ったぁ。
……ま、去年ほど盛り上がっちゃいませんが、自己満足祭り、そろそろ始めますか……

373 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:04:03 ID:d5g2kOvY
太陽は燦々と輝き、今では温度計を見るのも嫌なぐらいの高気温。
現在、時刻は二時。
一番気温が上がる時間だと、小学校のとき理科で習った記憶がある。
こんな時間に外に出るヤツは、よほどの用事があるか、バカだけ……。
……まぁ、家に一人、そのバカがいるわけだが……。
しかも、バカはバカでも、運動バカが……。
「よくやるよ……ホント……」
一時間以上前に出て行ったきり帰ってこないバカのことを思いながら、本のページをめくる。
そして、冷たいお茶の入ったグラスを口に運ぶが
「無いのか……」
俺は本にしおりを挟み、グラスを持って立ち上がる。
そして、冷蔵庫を開ける。
「……カフェオレでも飲もうかねぇ」
俺はペットボトルに入ったアイスコーヒーと牛乳を取り出し、俺は手早くコーヒーと牛乳を混ぜる。
「さてと……」
クーラーの効いた部屋。
もう一度、本を読み始めると……
「たっだいまー!!暑ーい!!」
玄関で割れんばかりの大声……。
「あー!!涼しー!!」
そして大声の主が、俺のいるリビングへ……。
「おかえり、望。遅かったな……?」
俺は本から一切目を離さず、答える。
「うん。あはは!!何か楽しくなっちゃって、ランニングしてきたよー!!」
「元気だねぇ……」
「うん!!ボク、もう汗ビッショリー!!」
「さいですか……」
「それより、お兄ちゃん!!また本なんて読んでるー!!」

374 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:04:38 ID:d5g2kOvY
「いけないか?」
「本ばっかり読んでるとバカになるよ?」
「ならねぇよ、証拠もある」
「証拠?」
「望」
「え、ボク……?何で……?」
「だって、バカじゃん、お前。本読まないし」
「ひ、ひどーい!!ボクだって、そんなにバカじゃないよー!!」
「そりゃ悪かったな……」
……つまり、ある程度はバカってことなんだ。
本を読みながらなので、相当適当な受け答えを返す俺。
「暑いー、服脱いじゃえー!!」
「おいおい……」
「だって、汗でぐっしょりだよー?そんなTシャツ着たい?」
「じゃ、着替えて来いよ」
「うん、ちょっと休憩してからー」
望は冷蔵庫の辺りでゴソゴソと何かした後、ソファの俺の隣に座る。
横目で見たが、どうやら本当に下着姿になっているらしい。
「面白い、それ?」
「まぁな」
「……ふぅん。ねぇ、ボクと遊ぼうよー」
「忙しい」
「本読んでるのに?」
「本読んでるから」
「……そんなに本読むのが大事……?」
「は?」
「ボクは……もっと……お兄ちゃんと遊びたいのに……」
……自分が一人でどっか行っといて、何を……。
と思ったが、いえなかった。

375 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:05:12 ID:d5g2kOvY
「ボクは……は……は……はくちっ!!」
望の突然のくしゃみ。
俺は本をパタンと閉じて、
「おい、大丈夫か?」
「あ……うん。でも、ちょっと体冷えてきたみたい……はくちっ!!」
「しょうがねぇなぁ……」
俺は着ていたジャケットを脱いで、望に渡す。
「うわー、お兄ちゃん、ヒョロヒョロだぁ……」
「人の好意は黙って受け取れよ、お前……」
「あ、ゴメンゴメン」
笑って、服を羽織る望。
「ボク……こういうの、ドラマでみたことある……」
「……は?」
「へへ……暖かいね……?」
「そんなのいいから。早くシャワー浴びるなり、服着るなりして来い」
「うん……えへへ」
「何だよ?」
「お兄ちゃん!」
「何だ?」
「えへへ……ボク、行って来るね?」
「おー」
「うん、じゃあね、お兄ちゃん?」
笑顔で去っていく望。
「……何なんだ……」
呆然とする俺。
突如ご機嫌になった望……。
コイツのやることだけは……どんな本にも書いてなさそうだぁ……。
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376 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:05:44 ID:d5g2kOvY
ある日の休み時間。
友人と話しながら、どうでもいいような話に花を咲かせていた。
すると……なにやら、腿のあたりで振動が。
「……メール……?」
ケータイを取り出して画面を見る。
送信主は、俺の妹、翼のようだ。
不思議に思いながら、本文を見ると……

廊下に来い

「……」
そう表示されたケータイの画面を見ながら固まる俺。
カツアゲでもされるんじゃないだろうか……。
「一応行ってみるか……」
友人に説明し、とりあえず廊下へ。
ドアを開けると……
「お、遅かったじゃない」
仁王立ちの翼が、不機嫌そうに言う。
「出来るだけ早く来たつもりだけど……」
「ば、バカいわないでよ!!休み時間は短いんだから、早くしないと終わっちゃうでしょ!?」
「ご尤も……。で、何か御用?」
「じ……」
「じ?」
……痔……?
「いや……そんなこと告白されても困るなぁ……」

377 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:06:16 ID:d5g2kOvY
「何の話よ!?……え、英和辞典を貸して欲しいって言ってるの!!」
言ってねぇよ……。
「翼ご自慢の電子辞書はどうした?」
「わ、忘れちゃったの……」
「ふーん……いや、悪いが……俺も次、英語なんだ」
「え……?ど……どうしよう……」
急にオロオロしはじめる翼。
「必要か?」
「うん……ちょっと無いと授業受けられないかも……」
「そっか……しょうがねぇなぁ……」
「え……?」
「ちょっと待ってろ。持ってくるから」
翼を待たせたまま、俺は辞書を急いで取りに戻る。
「はいよ……時間がないっつーぐらいなら、最初から辞書を貸せってメールに書きゃ良いのに」
「お兄ちゃん……いいの?」
「別に構わねぇよ」
「ホントに?」
「何だ、いらないなら返せよ」
「い、いるわよ!!いるけど……い、一応確認してみただけっ!!」
「そうですか……」
「……お、お兄ちゃん……?」
「何だよ?」
「あ……その……えっと……だからね……」
「何だ?指示語で会話し始めるのは、老化の始まりだぞ?」
「……ば、バカ!!もう知らない!!」
そういって、振り返り歩き出す翼。
「おう、急げよ」
その背中に声をかける。

378 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/07/12(水) 22:08:09 ID:X9XiOkP1
自己支援

379 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:08:34 ID:d5g2kOvY
「……」
翼は一度だけ振り向いたが、何も言わず無言で去っていった。
「そういえば……何を言おうとしてたんだろ……」
教室に戻り、一息ついた俺は、無性に気になったのでメールで聞こうと、ケータイをポケットから取り出す。
「……ま、いいか」
数文字打ってみたが、まぁ、あとで聞けば済むこと。
俺は文字を全て消し、ケータイを閉じる、
すると、突然震えだす俺のケータイ。
「何だ、何だ!?」
着信があることは明らかなのに、こういうときに取り乱してしまう自分が情けない……。
「なんだ、翼か」
メールの中は……

別に感謝なんかしてないからね

「わざわざそんなこと……あ……続きがあるのか」
正直、ムッとするような内容の前置きを見なかったことにして、下のほうには……

でも、ありがとう

「……矛盾してるぞ……」
そう文句をつけつつも、
「ま、無いよりはマシか……」

何だかんだいって……俺も悪いようには考えていないのだけど。
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380 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:09:08 ID:d5g2kOvY
「さてと、さっそく見ようかなー」
家に帰ってくるなり、急いでリビングへ。
しして、バッグから、さっき友達に借してもらったDVDを取り出す。
内容はもちろん恋愛映画。
話題の映画だから見てみたいってのもあるけど……目的はなによりも勉強。
しっかり見て、お兄ちゃんにも使えそうなのがあったら試さなくちゃ!!
そう意気込み、DVDをセットする。
そして再生のボタンを押そうとしたとき、
「あ、葵、いたのか」
お兄ちゃんが私の居るリビングへ。
「うん。ただいま」
「おかえりなさい、葵」
ちょっと微笑んで、おかえりを言ってくれるお兄ちゃん。
なんかいいなー、こういうの。
もしかして……これが『萌え』……?
「で、どうかしたの?」
「いや……別に。ヒマだからテレビでも見ようと思って」
「あ、今からDVD見ようと思ってるんだけど……」
「そっか。じゃあ、他のこと探すか……」
そういって振り返るお兄ちゃん。
でも、きっと、これはチャンスだと、私の第六感が告げた。


381 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:09:39 ID:d5g2kOvY
「あ、お兄ちゃん!!」
「ん?」
「よかったら、一緒に見ない?」
「んー……何のDVD?」
「えっと……恋愛ものの映画だけど……」
「恋愛モノかぁ……あんまり興味無いなぁ……」
「でも、見てみたら面白いかも知れないよ?」
「うーん……じゃあ、見てみようかな」
やった!!
心の中でガッツポーズ。
私の隣に座るお兄ちゃん。
「じゃ、始めるねー」
嬉しい気持ちを胸に、再生のボタンを押す。
これで雰囲気が盛り上がって……それで、お兄ちゃんから……なんて、考えすぎかな。
───────────────────────
「ふぁ……」
思わず洩れそうなあくびをかみ殺す。
もう時間的にクライマックスだと言うのに……退屈な映画だ……。
ちょっと話が王道過ぎるのはともかくとして……
主役の演技力にも少し問題がある気がする……。
イケメンというだけじゃ、涙は誘えないというのに。
借りたときに『いいの?』って聞かれたのはこういう意味だったんだね。
作戦は大幅に失敗だぁ……。
完全に集中力が途切れたので、お兄ちゃんの顔をこっそり覗き見ると……
あ……あれ……?
すごい真剣に見てる……。
え……ちょっと……泣きそうになってない……?

382 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:10:11 ID:d5g2kOvY
それからは、今にも涙がこぼれそうなお兄ちゃんの横顔をずっと見ていた。
真剣そのもののお兄ちゃんの顔は、映画よりもずっとドキドキしたし、面白かった。
そうこうしている間に、幸せそうな音楽が流れ始め、長かった映画は静かに幕を閉じた。
「……いや……よかったな……」
真っ黒になった画面を見ながら、お兄ちゃんがポツンと呟く。
「そんなによかった?」
「うん……ちょっと感動した……」
そういって目頭を押さえるお兄ちゃん。
「泣いてるの?」
「いや……泣いてない……」
必死で目を隠すお兄ちゃん。
それが見栄っ張りで可愛くって、思わず笑ってしまう。
「これ……見てよかったな」
「うん……俺も、いい暇つぶしになったよ……」
「そうだね」
純粋で、ちょっと見栄っ張りで……素敵な人。
目隠しをしたままのお兄ちゃんの横顔をジッと見る。
そして、ちょっとだけお兄ちゃんにもたれながら、私だけの幸せに浸る。
「好き……」
小声でそう呟いて、邪魔の入らない二人だけの時間に、静かに眼を閉じてみた。
しかし、すぐにその幸せは崩れる。いつものことだ。
「さて……」
急に立ち上がるお兄ちゃん。
「あ……」
私はそのまま、横に倒れてしまう。
「あれ、葵。倒れちゃって、どうしたんだ?」
「ううん……何も……」
やっぱり、な展開に、思わずため息をつくと同時に……
手を差し出してくれたお兄ちゃんに、とても幸せな気持ちになった単純な私でした。
───────────────────────

383 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:10:44 ID:d5g2kOvY
お兄ちゃんの学校の校門前。
さっきから数え着てないほどの人が通り過ぎたけれど、肝心のあの人が見つからなくて……
私は、何度目かのため息をついた。
そんなとき、
「こんにちは」
誰かに、突然肩を叩かれる。
不思議に思いながらも振り返ると
……うわぁ、凄く美人な女の人……。
「あ、ゴメンね。驚かせるつもりは無かったんだけど」
「はぁ……」
「その制服は、中学生さんだよね?」
「あ、はい」
「こんなところで、誰か待ってるのかな?」
「え……?」
「ゴメンゴメン。私もちょっと人を待ってるところだから、さっきからキミをずっと見てたんだ」
「お姉さんもなんですか?」
「うん、ところで、やっぱり恋人さんとかを待ってるの?」
「あ……一応……」
「羨ましいなぁ。私は、お兄ちゃんを待ってるんだ。いつも遅くて、困っちゃうよ」
そういって笑う女の人。
「大変ですね」
「あはは。でも、いつもこんな感じだからね、もう慣れちゃったよ」
「そうなんですか……凄いですね」
「うーん、凄いかなぁ?」
「実は、私、そろそろ帰ろうかなって、思ってたんです」

384 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:11:17 ID:d5g2kOvY
「え?何で?」
「急に会いたくなって、来ちゃったんですけど……やっぱり迷惑じゃないかって……」
「うーん……私は、キミのカレシさんを知らないから、何ともいえないんだけど……
 そんなこと、無いと思うよ?」
「そう……ですか?」
「だって、素敵だと思うもん、キミのまっすぐな心」
「……」
「大丈夫だよ。キミの心は伝わるはず。少なくとも、私はそう信じてるけどな」
「そうですか」
「安心して。もし、そんなことで怒るようなら、私が代わりに怒ってあげるから」
「それは……困ります……」
「あはは、ラブラブなんだ?」
「そ、そんな……」
「恥ずかしがらなくても良いじゃない。羨ましいよ」
「でも……」
「私のお兄ちゃんもそれぐらい良い人だと良いんだけどな……」
「え?」
「あ、なんでもないの!!」
「そうですか……」
「そうだ、キミの名前、聞いても良いかな?」
「はい。霧島羽音です」
「私は天童葵。頑張ろうね、お互いにさ?」
「はい!」
天童さんが差し出した手をしっかり握る。
天童さんは、心も外見もキレイな女の人です。
───────────────────────

385 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:11:51 ID:d5g2kOvY
「疲れた……」
夕日の赤色に染まる校庭をトボトボと歩く。
すると、目線の先に、今一番会いたい人の姿……
「幻覚か……ヤバイな、俺……」
目頭を押さえながら、さらにおぼつかない足取りで歩いていく。
今日は早く寝よう……。
そう思ったあたりのこと。
「頑張ってね」
「あ……はい……」
可愛い声……。
とうとう幻聴まで……。
「お兄ちゃん」
そして、目の前に現れる俺の従妹、羽音ちゃん。
ん……これはもしかして……
「羽音ちゃん?」
「はい。こんにちは」
「え?どうして?」
「えと……大した理由じゃないんですけど……ちょっとお兄ちゃんに会いたくなって……」
「俺に……?」
「はい……あ、ごめんなさい!!こういうの、迷惑ですよね……!!」
慌てて、帰ろうとする羽音ちゃん。
俺はそんな羽音ちゃんの肩を優しく掴んで、
「いや、そんなことないって。俺も、ちょうど羽音ちゃんに会いたかったとこだからさ」
「え……本当……ですか?」
振り向き、驚きと喜びに満ちた目を俺に向ける羽音ちゃん。
そんな羽音ちゃんがすごく可愛くて、ドキッとしてしまう。
ちょっと涙目なところがツボだ……。

386 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:12:23 ID:d5g2kOvY
「うん。俺も、羽音ちゃんに会えて嬉しいよ」
「お兄ちゃん……」
「あ、でも……今度からは、こういうことしちゃダメだよ?」
「ダメなんですか……?」
「うん。ほら、やっぱり一人は危ないからね。だからダメだよ」
「はい……」
口ではそういいつつも、寂しそうな羽音ちゃん。
こりゃ……ちょっと情けないけど……本当のことを言うべきかな……。
「って言うのは、建前で……ホントのところは……」
「本当のところは……?」
「誰かが羽音ちゃんのこと好きになったり……羽音ちゃんが、俺以外の誰かを好きになったら嫌だし……」
「……お兄ちゃん……」
「つくづく嫌なやつだね、俺って」
自嘲気味にそう呟く。
かなりかっこ悪いな、俺……。
そう思ったとき……
「お兄ちゃん」
羽音ちゃんが、ゆっくりと俺の胸の中に……。
咄嗟に抱きとめる俺。
「私も、お兄ちゃんだけの私でいたいです……」
「羽音ちゃん……」
「だから……ね……?」
俺の目をジッと見つめる羽音ちゃん。
そして、ゆっくりと、目を閉じる。
「お兄ちゃん……大好き……だよ……」
羽音ちゃんの可愛い唇が、そう呟いた。
「……うん、俺も」
夕日に包まれる瞬間の中、また一つ、二人が近づくことが出来た想い出にお互いの気持ちを確かめ合う。
そして、これからの二人を想像しつつ、幸せな気分に浸るのでした。
───────────────────────

387 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:12:56 ID:d5g2kOvY
「ただいまー」
俺、石川真司は、玄関のドアを開け、強烈な日差しの刺す外から、我が家に戻ってきた。
が、誰も返事をしてくれない。それどころか、物音一つ聞こえない。
「……誰もいないのか……?」
靴を脱ぎ、家の中に入る。
本当に、静かだ。一応……靴はあるので、二人ともいるはずなんだが……。
ゴソっ……
何かの物音……。
「誰だ?」
その音のするほうへ、歩いてみる。
そして、角を曲がった瞬間……
「お……?」
誰かとぶつかった。
よく見ると
「何だ、千奈……いたのか」
「……」
返事の無い千奈。
それどころか、身動き一つせず、俺の胸から離れようともしない。
「千奈……?」
「……このまま……こうしていたいです……」
突然、そう呟いて、俺の胴に手を回してくる千奈……。
「え……」
突然のことに驚き、固まっていると、
「春彦さん……」
……誰……?
「……俺は……石川真司だけど……?」
「あ……ごめんなさい……」
俺の話を聞いているのか聞いていないのか分からないが、
またフラフラとどこかへ行ってしまう千奈。

388 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:13:33 ID:d5g2kOvY
「え……」
呆然と立ち尽くす自分。
千奈が、ゴミ箱をけり倒した……。
───────────────────────
「ゆ、唯奈、いるか!?」
二人の部屋の前、俺は少し乱暴にノックしながら声を上げる。
「あ、うん。いるよー」
「話しがあるんだ、入るぞ」
「うん。どうぞ」
その声を聞いて、ドアを押し、中に入る。
「お兄ちゃん、お帰りー」
少しドアを開けると、唯奈がヘッドフォンを外しながら、こちらに笑顔を向けた。
「で、話って何ー?」
「変なんだ……」
俺は、ベッドの近くのソファーに座り、話し始める。
「何が?」
「俺は……真司だけど……春彦さんって言われた……」
……何を言っているんだ、俺は……。
「よくわかんないけど、もしかして……千奈ちゃんのこと?」
「あぁ、そうだけど……?」
「ボーっとしてたでしょ?」
「あぁ……」
「それなら、心配すること無いよ。たまーにあるんだよねぇ」
「え、どういうこと?」
「千奈ちゃんね、時々本の世界に入り込んじゃうときがあるんだよ」
「……は?」
「まぁ、ホントにたまにだけど、読んでる本が面白いとね。
 そうなっちゃうと、話はあんまり聞かなくなっちゃうし、
 ヒドいときは、物語のシーンを再現しちゃったりとか……」

389 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:14:07 ID:d5g2kOvY
さっきのことを思い出す。
「つまり……今、千奈が読んでる本の登場人物に春彦ってのがいて、俺がその人に見えてるってこと?」
「たぶんね」
「……なるほど……大丈夫なのか、それで?」
「うん。まぁ、ちょっと気を抜いちゃうと出ちゃうってだけだし、問題は無いよ」
「そうか……」
「でも、さすがにちょっと心配だし、千奈ちゃんのトコ行こうよ」
「そうだな」
立ち上がる唯奈。
不思議だ……今日ばかりは、唯奈が頼もしく見えるぞ……。
ドアを開ける唯奈。
その前には……
「あ、唯奈ちゃん。どこかいくの?」
いつもの、千奈が立っていた。
「いや、別に……ねぇ、お兄ちゃん?」
「あぁ」
「あ、お兄さん……いつの間に……?」
「いや、さっきだけど」
「そうですか。全然気付かなかったです……」
「そりゃそうだよ、千奈ちゃん」
「え?」
「いつもの、出てたみたいだよ?」
「「え……?」」

390 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:14:40 ID:d5g2kOvY
これは、千奈の驚きの「え……?」と、
俺の『言っちゃってもいいのか……?』という「え……?」である。
これがハモる辺り、俺も大分、この双子のことが分かってきたということだろうか……。
「ねぇ……唯奈ちゃん……私、何しちゃったのかな?」
「さぁ?私もそこまで詳しくは……お兄ちゃんに聞いて」
「お兄さんに……?」
二人の視線が俺に向く。
「……あの……スイマセン……私……たまになっちゃうんです……
 変なこと……しませんでした……?」
「え……えっと……」
「唯奈も、それ聞きたいなぁー?ね、お兄ちゃん?」
「お願いです、お兄さん……教えてください……」
「そ……それは……」
二人の妹に詰め寄られる俺。
言うべきか言わざるべきかを頭の中でグルグルと回転させながら……
平和な事件であることに、少し幸せを感じるある初夏の午後でした……。
───────────────────────

391 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:15:13 ID:d5g2kOvY
太陽が輝き、鳥が鳴く。
まぁ、今日も暑い一日になりそうだが、雨が降るよりはずっと良い。
窓の外を見てそんなことを考えつつ、グラスの麦茶を飲み干す俺。
と、後方でなにやら人の気配。
振り向くと、
「はわぁー……おはよー……」
俺の妹、沙耶らしき人物が欠伸しながらやってきた。
「おはよう、沙耶。今起こそうと思ってたんだよ」
「うん。サヤ、一人で起きたんだよー」
沙耶のような人間は眠そうに目を擦りながら笑って見せた。
俺は沙耶のような人の頭にポンと手を置いて、
「よしよし、えらいな」
「えへへー……」
なんとも幸せそうな笑顔を見せる沙耶と思われるお方。
「ところで……沙耶……?」
「?なーに?」
小首をかしげて俺の顔を見上げる。
「どうしたんだ?その髪型……?」
「髪型?どうしたのー?」
「ほら、こっちおいで」
俺は沙耶の後ろに回り、姿見の前まで沙耶を移動させる。
「……な?」
「うん、すごいねー」
鏡の中の、メデューサみたいな髪型の沙耶が答えた。
しかし、ちょっと嬉しそうだな……。

392 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:15:45 ID:d5g2kOvY
「ちゃんと乾かして寝ないからだぞ?風邪引いてないか?」
「うん、だいじょーぶだよー」
「それならいいけど」
手で沙耶の髪を押さえてみたり、手櫛で梳かしてみたりするが一向に直らない。
「ちょっと待ってろ。いろいろ持ってくるから」
「うん」
沙耶の頭を軽く撫で、洗面所へ霧吹きと櫛を手早く取りに行く。
「お待たせー」
俺は椅子に沙耶を座らせると、軽く水を沙耶の髪の毛に吹き付ける。
「きゃはははは!!お、おにぃちゃん、つめたいよ!!」
霧吹きのシュッと音がするたびに、沙耶の体が大きく揺れる。
「我慢しろ」
「で、でもぉ!!きゃははははは!!」
そんな沙耶に何度も霧吹きを用い、やっと沙耶の髪がしっとりしてくる。
その髪を櫛でとかしていく。
すると……
「……」
……鏡に映る少女。
幼い顔に浮かぶ嬉しそうな微笑。
そのフェイスとは一見ミスマッチな、しっとりとした長い髪。


393 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:16:18 ID:d5g2kOvY
でもそれが何だか可愛くて……
普段の沙耶とのギャップに戸惑い、思わず手を止めてしまう。
「どうしたの?」
鏡の中の妹は、俺と目をあわせると、眩しい笑顔を返す。
これは……ヤバいかもしれない……。
「おにぃちゃん……?」
一向に動かない俺を心配してか、上を向いて俺の顔を直接覗きこむ沙耶。
「……」
ここからは一瞬の出来事だ。
テーブルの上においてあった二本のリボンを掴み、少々強引に沙耶の髪を縛り付ける。
「さ、朝御飯食べようじゃないか、なぁ!?」
「う、うん……」
不思議そうに自分の髪を見ている沙耶。
俺は極力何も考えないように、キッチンへ急ぐ。
「写真……撮っとけばよかったかな……?」
「写真?なんのー?」
「な、なんでもない!!」

何だか汗が止まらない俺……。
どうも、今日も暑い日になりそうだ……。
───────────────────────

394 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:16:51 ID:d5g2kOvY
「暑……」
「あ〜づ〜い〜……」
焼け付くような日差しの中、俺、州田敬介は幼馴染のなんとかいう女と下校中……。
「それにしても……男子はいいよねぇ……」
隣の相川だったか相沢だったか言う女が唐突に呟く
「何が?」
「だって、上脱げるじゃん。梨那はそうはいかないもん……」
そうだ、コイツの下の名前は梨那だ……。
「大丈夫だろ、そんなやせっぽちの体見たって、誰も欲情はしないと思うぞ……」
この場合は、もちろん、出るべきところがやせっぽち。
出るべきところじゃない部分は……言うまい……。
「にゃっ!!そういう問題じゃないぃ!!」
「あ、逆に出てないから恥ずかしいのか……」
「だから、違うぅっ!!」
顔を真っ赤にして反論する梨那。
……見ているだけでも暑苦しい……。
「何が違うんだ」
「出てる出てないは関係ないの!!女の子は皆恥ずかしいんだよっ!!」
「あのなぁ……じゃあ、聞くが、いくら暑いからといって上半身脱いで町を歩いている男を見たことがあるか?」
「にゃ……ないけど……」
「結局、男だろうと女だろうと変わらんよ。俺は、逆に、制服のスカートは涼しそうで良いと思うけど」
「でもでも、ぱんつ見られちゃうんだよ?」
「いいじゃん、見せれば。どーせ誰も梨那のなんか……」
「そ、そんなこと……!!」
「……そんなこと?」
「にゃぁ……あるっていうのも、ないっていうのも、なんかイヤっ……」
非常にしょうもないことに、頭を抱えて悩んでいる梨那。
あぁ、でもどっちもイヤかもなぁ……。

395 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:17:33 ID:d5g2kOvY
「しょうがない、品の無い話題になってきたし、無かったことにしてやるよ」
「うん、ゴメン……えっと……何処まで戻る?」
「お好きなところまで」
「じゃあ……えっと……ぱんつ見られちゃうのイヤだけど、でも、ブルマとかはくと蒸れちゃうしぃ……」
「……」
人の話聞いてないな……。
……呆れる俺。
これはもう……
「あ、お兄ちゃん、何処行くのっ?」
帰り道から一歩外れた俺を梨那が呼び止めた。
「コンビニに避難する」
「あ、待ってよー、梨那も行くー!!」
暑さを逃れようと少し早足になる俺を後ろから追いかけてくる梨那。
何か今日は二人ともノリがおかしい気がする……
───────────────────────
「んー!!涼し〜!!」
コンビニに入るなり、声を上げる梨那。
そんな梨那を俺は無視して
「何かいいの入ってないかなぁーっと」
俺は一人、飲み物の棚へ。
「あ、梨那、ミルクティーにしよう!!」
脇から梨那が声をかけた。
「こんな暑いのにミルクティーかよ……」
「だって、甘いの好きだもん」
「……ま、それならそれでいいけど」
俺も甘党だが……こんなクソ暑い日にミルク系の飲み物はちょっと……。
「……飲み物は止めにしよう……」
気分が優れなくなってきたので、ドリンクは止め……。
新発売の商品のチェックはまた今度だな……。

396 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:18:04 ID:d5g2kOvY
「えー……じゃあ、梨那もやめるよー。アイス買おうよ、アイス!!」
「そうだなぁ……アイスの美味い季節になったからな」
「うん。でも、梨那はいつでも食べてるけどねー」
「そうか、俺はあんまり……っていうか、コンビニでアイス買ったことないかも」
「えっ!?無いの!?」
「そんな驚くことか?俺は飲み物ばっかりだし、アイスは買わんな」
「そっかー。じゃ、コレ買わない?美味しいよー?」
そういって、端のアイスを指差す梨那。
「おい、一個250円もするぞ、これ?」
「うん、きっと美味しいよー」
「……食べたこと無いのか?」
「そのアイスは、こーきゅーんひんだよ?梨那があるわけないよー」
そういって、能天気に笑う梨那。
……コンビニで売ってる高級品か……小ちぇえなぁ……。
「まぁ……俺も250円もするアイスをちょっと買おうという気にもなれないけど……」
「だよねー。梨那はガリガリくんで我慢するよー」
「それも寂しいなぁ」
「しょうがないよー」
「じゃあさ、金半分出し合わないか?」
「え?」
「俺もなんか食べてみたいし、どうよ?」
「うーん……半分で125円か……うん、わかった!!半分出すよ」
「よし、決まりだな。さ、買って帰るぞ」
「うん」
高級品のアイスを一つ、レジに持っていく二人。
……持ってみると予想以上に小さいな、このアイス……。

397 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:18:36 ID:d5g2kOvY
「へへ〜、楽しみ〜!!食べよ、食べよっ!!」
コンビニから一歩出ると、早速切り出してくる梨那。
「早いな」
「早くしないと溶けちゃうもん。美味しいうちに食べよ!!」
そういって、俺の持つビニール袋を漁り始める梨那。
「ま、そうだなぁ」
「一口目はどっちが食べる!?」
「お前でいいよ……」
「え!?いいのっ!?」
「いいよ、別に」
「でも、ファーストインパクトだよ!?重要だよ!?」
「いいって、それぐらい」
「わーい、ありがとー、お兄ちゃん!!じゃ、遠慮なく、いただきまーす!!」
木製のスプーンで、すくって食べる。
「ん〜!!美味しぃー!!」
「そんなに?」
「うん。ほれ、食べてみてよ」
間接であることには一切気付かぬまま……梨那の差し出した、スプーンを口に運ぶ。
「うぉ……」
「美味しいでしょ?」
「コレ食ったら、普通のアイス食えんな……」
「ねぇー?もっと食べるー?」
そういってアイスを梨那から受け取る俺。
「半分は俺のもんだっての」
流石に、量が少ないので、俺の分はもう無くなった……。
食べ足り無い気持ちを抑えて梨那にカップを返す。

398 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:19:08 ID:d5g2kOvY
「それもそうかー。……小さな贅沢だねぇ……あ、もうないや」
「ほんと、高いし少ないな……」
「うにゃー……これが毎日食べられるようなお金持ちになりたいぃー!!」
コイツ、なんか色々小せぇ……。
「美味かったな」
「うん、また二人で買おうね?」
「まぁ、そうなっちゃうか……」
そう考えると、少し残念な気持ちになる。
「ま、贅沢はたまにするくらいで丁度良いというしな」
「そうだねー、毎日だと有難みが薄れちゃうかもね」
スプーンを咥えたまま喋る梨那。
「おい、梨那、ほれ」
ソレを見た俺は、梨那に手を差し出す。
「にゃ、何?」
「スプーン。さっきの袋に入れてやるから」
「い、いいよ!!」
「何で?」
「べ、別にっ!!」
「みっともないぞ?」
「う……で、でも……間接……」
「は?」
「な、何でもないにゃ!!」

399 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:19:40 ID:d5g2kOvY
「ったく、変なもん欲しがりやがって……でも、咥えとくのはやめろよ?」
「うん……わかりました……えへへ」
スプーンをハンカチで拭き、ポケットにしまう、何故か嬉しそうな梨那。
意味が分からず、流れた汗を拭く俺。
「ねぇ、お兄ちゃん?」
俺の目を覗き込む梨那。
そして、自分の唇をそっと撫でる。
「ん?」
「えへへ〜♪なんでもないよー!!」
「はぁ……?」

そんなこんなで、暑苦しくも、明るい生活に俺はまた汗を流すのでした……。
───────────────────────

400 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:20:13 ID:d5g2kOvY
「あれ……ここじゃなかったかなぁ……」
埃っぽい押入れの中、様々なものをかきわけながら、ついついどうでも良いことを口走る。
「あ、何か探し物ですか、兄さん?」
パタパタと足音を響かせながら、俺の妹、未来が声をかけた。
「おー。あの、親父が買ったキャンプ用の折り畳めるテーブルなんだけど……」
「あぁ、あれですね。そこに無ければ外の倉庫じゃないですか?」
「やっぱそうか……。邪魔だから移したのかな」
「そうでしょうね……邪魔でしかたらね、アレは」
「じゃあ、外か」
押入れから脱出しながら、埃まみれのTシャツを手で払う。
未来は飛んでくる埃に少し顔をしかめながら、
「で、それを何に使うんですか?」
「あぁ、ベランダに置いて……」
「あっ、分かりました。今晩の花火ですね?」
「ご名答。ちょうど良い位置にこの家が立ってるし、今年は腰を入れて楽しもうかなと」
「へぇ、それはいいですね」
「良かったら、未来ちゃんもどう?」
「いいんですか?」
「もちろん。どーせ、一人で見る気だったし。せっかくだから、一緒に見ようよ」
「あ、それならお言葉に甘えさせてもらいますね」
「おー、じゃ、どうせやるなら、飲み物とかお菓子とか買ってこようかな」
「あ!!それなら、宴会用の料理作ります、私!!」
手を高く上げてアピールする未来。
嬉しそうだな……。
「何か本格的な宴会になってきたなー」
「ですね」
そう言って、嬉しそうに微笑む未来。
あぁ……和むなぁ……。

401 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/07/12(水) 22:24:12 ID:X9XiOkP1
あぁ……ついにバーボンへ……
無理はするものじゃないね……

402 :ケータイより愛を込めて :2006/07/12(水) 22:50:46 ID:X9XiOkP1
ゴメンなさい。
続きは俺のまとめサイトで……

403 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/07/12(水) 23:04:45 ID:0fxGV1eT
>>402
まとめサイトのURLはっていただけるとありがたいですw

404 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/13(木) 06:44:55 ID:JyGJvyDX
ttp://www.geocities.jp/you_say712/maturi.htm

……ホント申し訳ねぇッス……

405 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/07/13(木) 09:21:21 ID:xvxXS7d7
>>404
ありがとうございますw

406 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/07/14(金) 15:27:04 ID:XTt1E6Ym
>>遊星さん
乙です!

407 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/07/20(木) 03:53:13 ID:j+66GohR
ハローハロー、あなたは何処にいますか。
ハローハロー、私は此処にいます。
ハローハロー、今日も世界は極めて正常。
ほしゅ

408 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/07/22(土) 22:44:53 ID:mLy7PqYj
続きはまだかなWKTK

409 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/07/24(月) 07:57:45 ID:ADsRNfIp
続きとは?

410 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/07/29(土) 13:19:26 ID:jM9oH1ca
夢ノ又夢氏に期待age

411 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/07/29(土) 22:52:58 ID:siebI3Cj
>>410
俺も楽しみだ

412 :天神泰三 :2006/07/30(日) 07:18:07 ID:Nd6NDWPW
おいどんの妹になってほしいでゴワス。

413 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/07/30(日) 12:05:45 ID:UO14f9H5
どんつく、どんつく♪

414 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/07/30(日) 16:57:11 ID:NtPRfsI0
歌いなさいラーゼフォン
お前の歌を、禁じられた歌を…

歌いなさいラーゼフォン
いつか全てが一つになる時のために

415 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/07/30(日) 21:03:12 ID:+thpfUvY
気が付けばもう七月も終わり、祭りに乗り遅れてしまった・・・。
>遊星神
GJ、そしてお疲れ様です。
以前にも言いましたがやはり一度にこれだけのSSを書いてさら
にネタが被らないというのはマジで尊敬してしまいます。
未来ちゃんは相変わらず可愛いし、梨那ちゃんもカワイイし、葵
ちゃんは参考になるしで大満足の祭りでした。
>410様、411様
現在、二つの話が八割程度書けた所。
近々頑張って投下します。

416 :遊(ry ◆isG/JvRidQ :2006/07/30(日) 22:10:32 ID:i/zX7Wad
>>415
お久しぶりっス。
先生の作品、楽しみにしてますから。

417 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/08/09(水) 00:42:05 ID:RWVNbJzz
ほしゅ

418 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/08/17(木) 22:49:48 ID:QY6T/Z7W
ほしゅ

419 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/08/21(月) 00:34:24 ID:vAxHPxrd
新作期待

420 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/08/22(火) 02:50:45 ID:In1PuziW
ずんずんして

421 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/08/23(水) 19:16:00 ID:LTq/0BYS
まだだ!まだ終わらんよ!

422 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/08/24(木) 23:03:18 ID:fyYMaYoF
恥こそ、もっとも身近な精神的苦痛ではないだろうか。
ほら、いつもいる場所から一歩入れば、ここは恥多き地……。
皆の視線が俺に集まっているような気がする……。
「んー……迷っちゃうなぁ〜」
……隣のお嬢さんは、俺の気など知らず、のんきに水着を選んでいる。
葵がどうしてもっていうから……仕方ないんだ、これは……。
そう自分に言い聞かせる。
「ねぇ、お兄ちゃんはどう思う?」
青いが二種類の水着を見せながら、俺に尋ねた。
どう思うといわれても……。
俺は戸惑いながら、
「え……あぁ……えっと……葵の好きな方でいいんじゃないか?」
「だから、どっちも凄く好きだから困ってるのよ」
「そっか……そうだよな……」
女の子と水着、という組み合わせが俺はどうしても恥ずかしくて、思わず眼を背ける。
すると……
「いててっ!!」
顎をガッ!とつかまれ、そのまま無理矢理首を曲げられる。
……な、なんて力だ……。
「お兄ちゃん?」
いつもより低いトーンで語りだす葵。
心なしか、笑顔も硬い……。
「は、はい、なに?」
「……別に。なんでもないけど……」
「はぁ……」
……また、ワケも分からず怒られるかと思ったけど……今日は機嫌が良いのかな……。

423 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/08/24(木) 23:03:54 ID:fyYMaYoF
「あ、コレもいいなぁ!!う〜ん、ホントに迷う……」
新しい水着を見つけてはしゃぐ葵。
やっぱり機嫌はよさそうだ。
「ねぇねぇ、お兄ちゃんはどんな水着が好き?」
「いや、俺は何でも良いけど」
「何でも?」
「いや、まぁ……限度はあるけど」
別に着ないしね。別に海にもプールにも行かないから。
「まぁ、学校のがあるし、俺は別にいいかなと思うんだけど」
「学校の……?それは……えっと……つまり……」
……顔赤いぞ、何だ……?
「あ、葵……?」
「帰ろっ!!」
「え?」
「いいからっ!!」
俺の手をひっぱり、どんどん進んでいく葵。
「そんなに急がなくても……いや、ありがたいけど……」
「だって、お兄ちゃんがそういうこと言うの珍しいじゃない!?」
「珍しいか?」
「うん。だから、ちょっと恥ずかしいけど……私……」
恥ずかしい……?
って、手、繋いじゃってるよ……確かに、コレは恥ずかしいな……。

424 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/08/24(木) 23:04:39 ID:fyYMaYoF
「ねぇ……お兄ちゃん」
「何だ?」
「ふふっ、別に〜♪お兄ちゃんも好きなんだから〜♪」
俺『も』好き……つまり、葵も好き……?
あぁ、何か美味いモンでももらったんだな……。
しかし、ホントに機嫌良いんだな……。
「ふむ、それなら早く帰らないと」
「ふふっ♥お兄ちゃんったら♥」


誤解は続く。
さらに続く。
ちなみに、事が起こった後も、俺は全ての誤解を解くことが出来なかったのだが……。
───────────────────────
永遠の前座、遊星登場。
夢ノ又夢先生の新作に強く期待する。

あと、>364-367あたりに酷似しているが、私は謝らない。
嘘です。ゴメンなさい。謝ります。
まぁ、夢ノ又夢先生の作品は凄いから……ねぇ。

425 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/08/26(土) 03:10:29 ID:qhS/H6Nv
>>422-424
GJでふ!
スク水?

426 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/08/26(土) 03:56:07 ID:svrSX7u4
>>422-424
スク水キタコレ萌えたよ

427 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/08/28(月) 12:00:13 ID:Buw/R2vD
保守

428 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/08/30(水) 22:04:36 ID:K0PbcXEr
「見事に雨だな、嫌になる位」

下校時間になって本格的に降り始めた雨、黒い雲がバケツをひっくり返した様な水を地面に叩きつける。
降水確率20%に裏切られた俺はただ黙って下駄箱の先の露帯びた世界を見詰めるしか出来ない。
それにしても朝の晴れ間が嘘みたいな状況、日頃の行いに何か問題点でもあっただろうか?
自分を省みていると唐突に視界に入り込む赤い傘、やはり割と良い日頃の行いのお陰で訪れる助け舟。
雨にも負けないサラサラの黒髪を靡かせ蒸し暑さとは無縁な涼やかな瞳で俺を覗き込む。

「はい、これはお兄ちゃんの傘」
「・・・おお、今日ばかりは巴に後光が差して見えるよ」
「傘一つで神様にはなれないよ、ふふっ、ホントに大袈裟なんだから」
「いやいや、結構な助け舟だよ本当に、お陰で雨の中をランニングせずに済んだ、感謝感激」

仰々しく手を合わせ拝む俺を横目で可笑しそうに眺めながら傘を差し出す巴。
二三、褒めちぎりの言葉が出そうになりながら受け取った傘を空に広げる、少しだけ気分の軽くなった足取りで。

「ところで、巴はいつまでそこで見てるんだ?早く帰ろう」
「うん、そうなんだけどボクの傘は忘れちゃって」
「・・・は?」
「だから、お兄ちゃんの分は覚えていたけれど自分の分は忘れてたんだよ」
「いつも鞄に折畳み傘を入れてただろ?」
「残念だけど今日に限って入ってない」
「それは残念だな」
「うん、残念無念」

言葉とは裏腹に少しも後悔の念の感じられない顔であっさり諦める巴、それどころか表情は心なし晴やかにさえ見える。
その爽やかさは重たい梅雨空とはあまりにも正反対の清々しさを感じさせる、流石は巴といった所だろうか。

429 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/08/30(水) 22:05:47 ID:K0PbcXEr
そうなると俺が取るべき行動は一つ。

「・・・となると道は一つだな」
「いいの?お兄ちゃん」
「ああ、これは巴が使いな」
「え、えっ!?」

差し出された傘を前にやたらうろたえる巴、いや、俺はそんなに予想外な事をしたんだろうか?

「なんでそんなに驚くよ?一つしか無いんだから巴が使えばいいだろ」
「で、でも、それじゃお兄ちゃんが・・・」
「心配するな、馬鹿は風邪はひかない」
「そういう事を言うと思ってたよ・・・そうじゃなくて、二人共濡れずに帰る方法があるじゃない」
「ん?そんな方法あるか?」
「一緒に帰ればいいんだよ、一つの傘で二人・・・ね?」
「・・・言われてみりゃそうだよな・・・なんで気付かなかったんだ俺は・・・」

少しの間に簡単に出てきた解決法と自分の思慮の至らなさを感じつつ一人分のスペースを空けて傘を差す。
遠慮がちにそこへ入り込む巴を見届け、二人して霧の立ち上る雨の道を歩き出す。
傘の上で乱雑なリズムを奏でる雨音、日に焼けた星をこれでもかと潤そうとするこの季節特有の長い雨。
人影も車の一つも見えない幻想的な道をただ黙々と歩き続けると不意に隣から漏れ出る以外な言葉。

「・・・今日はラッキーだな」
「どこがよ、どっちかと言うと不幸だろ、晴れが大雨になるわ傘は一つしか無いわ」
「傘は一つだけどボクたちは二人、こんな雨の中を独りで帰らなくていいんだよ、それってラッキーな事だよね」
「ポジティブだねぇ、巴さんは・・・ま、一理あるな」
「それに・・・こういうの、なんだか映画のワンシーンみたいで素敵かな・・・って」
「ああ、雨の中、鳴り響く銃声、崩れ落ちる俺とピストル片手の巴」
「・・・どうしてそうなるの?しかも、ボクが犯人にされてるし・・・」

430 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/08/30(水) 22:07:47 ID:K0PbcXEr
不意に頭を過ぎる情景は何故かサスペンス仕立てな俺、その辺の理由は多分、発想が貧困な故だろう。
ジト目の巴を横にバツが悪く頭を掻いてワザとらしく前に向き直る。

「もう少しロマンティックな話にしようよ、折角の雨なんだから」
「折角、それにロマンティック・・・こういう時に使う言葉か?」
「こういう時だから使ってるの、こんな風に二人で帰る事なんて滅多にないんだから」
「いや、だから俺とムード出そうとしてどうするよ?」
「・・・手ごわいなぁ、お兄ちゃんは・・・お兄ちゃんだから、なのに・・・ボクはお兄ちゃんだけなのに」
「おいおい、何一人でブツブツ言ってるんだ?なんか怒らせるような事を言ったか、俺?」
「別に何も、何も無さ過ぎて物足りない位だよ・・・」
「そう言われてもな、ロマンティックと言われても俺にはパッと浮かばないんだよな、例えば何かないかな」
「例えば・・・そう、真っ暗な海の底みたいな世界に灯りが二つ、お兄ちゃんとボクと・・・寄り添う灯」

俯き加減だった肩が上がり、打って変わって思索を巡らせる真剣な顔に変わる巴。
右手の人差し指を唇の前にちょこんと置いて眉をひそめた顔まま巴は語りだす。
まるでバラバラのフィルムとスライドを一つ一つ重ね合わせていく様に。

「空の向こうにはそれよりもっと明るくて華やかな星の光が何百、何万とあって・・・でも違うんだ」
「違うって何が?」
「どんなに明るい光でもそれはボク達にとって何万とある光の一つ、でも隣にあるのはたった一つの光」
「・・・へぇ、なんか映画ってより詩の一節みたいだな」
「同じ物なんてどこにも無い、代わりになる物なんてどこにも無い、かけがえのない大切な光なんだよ」
「巴は詩人だったのか・・・なんかそのまま本にでも出来そうだな」
「あまりからかわないでよ、もう・・・」
「いやいや、普通に関心してるって、確かに俺に夕飯作ってくれる光なんて他には無いからな」
「えっ・・・」

なんとも不思議そうな顔で雨を跳ねない為にゆっくりしていた歩みがピタリと止まる巴。
当然、同じ傘に入っているこちらも留まる事を余儀なくされる。
タイミングの掴めない微妙な空白、途切れた会話の向こうに聞こえる雨音を意味も無く数えてみたりなんかする。

431 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/08/30(水) 22:24:50 ID:qIQ8yBlN
夢ノ又夢氏がいらっしゃったぞ!!
やっぱ、最高だー!!

432 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/08/31(木) 20:34:39 ID:U2xAs0Go
>>428-430
GJ

433 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/09/01(金) 01:26:10 ID:Lp/7Dabe
age

434 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/09/01(金) 07:06:40 ID:8QY3U6cg
「お兄ちゃん朝だよぉ〜!早く起きないと遅刻しちゃうよぉ?」妹の麻衣がいつものように起こしにくる。ただいつもと違ったことが一つオレが幼なじみの菜月を殺していたのである。
俺は正直焦っていたどう死体を処理すべきかどうバイト先の右門に言い訳すべきか…
「お兄ちゃん入るよ?」ガチャリ
考えているうちに妹の麻衣がオレの部屋に入ってきたのだ

435 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/09/01(金) 07:15:14 ID:8QY3U6cg
「え!?…な、菜月さん!?…し、死んでる…お兄ちゃんどうゆうこと!?」麻衣はオレに尋ねてくる。だがオレは答えない
「お兄ちゃん!返事をして!」
「うるさい黙れ!いいか?このことはさつきお姉ちゃんには絶対に言うんじゃないぞ!言ったらお前もこうなるんだ」

436 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/09/01(金) 21:46:46 ID:PFYNOR93
前回投下からちょうど一月、近々とか言っておいてえらく時間が掛かりました。
続きは近い内に投下します、いや、今度こそホントに。

>遊星様
スクール水着は反則でしょうw
誤解の一部始終が読みたい、是が否でも読みたいですw

437 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/09/02(土) 00:01:26 ID:UMDDMWqv
待つ時間は長いぜ

438 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/09/02(土) 01:48:01 ID:I+Qt+wbj
>>遊星さん
GJです!スク水…(*´Д`)

>>夢ノ又夢さん
GJ!今回のは雰囲気がちょっと鍵っぽいですねw

439 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/09/04(月) 06:33:13 ID:cCQov9T6
部屋で懐かしのパラサイト・イヴをやっていたら妹がやってきた
「お兄ちゃ〜ん」
「んぁ?」テレビの画面を見ながら適当な返事をする
「ネギまのゲーム買ってきた」と言ってソフトを前に突き出す妹
「少し待て、今クライスラービルだからセーブまで多少時間掛かる」

手早くセーブをしてディスクを抜いて妹に場所を譲る
「ほれ、終わったぞ」
「ネギま〜」と言ってまたソフトを突き出す
「だからなんだよwイタい子みたいだからやめれww」
「やって?」
「は?俺が?意味がわからん」
「だって1人でやるの恥ずかしいんだもん」
「知らねーよw」
「お願い〜」
「そのぐらい自分でやりなさいw」
「じゃあお兄ちゃんそこで見ててね!」
「なんでだよw」

結局見ることになってトイレにも行かせてもらえない。
という夢を見た。かれこれ10年ぐらい妹が欲しいと嘆き続けた俺23、そろそろ重症です。

440 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/09/05(火) 18:04:09 ID:x1oVduXO
>>439
> 「だからなんだよwイタい子みたいだからやめれww」
そっくりそのままおまいに言…えない俺ガイル…('A`)

441 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/09/06(水) 22:44:40 ID:RH9FdTlA
・前回のあらすじ
水着を買いにいった兄と妹。
しかし、兄の鈍感さから、誤解が勃発。
妹、葵は兄がスク水好きと勘違いしてしまう。

「ほら、お兄ちゃん、見て見て!!」
突如俺の部屋に現れた水着姿の妹を前に、しばし、固まる俺。
「……」
水着買ってたんだ。いつの間に……。
……。
アレか、俺がトイレ行った時だ。
結構時間かかったしな……時間はあったよな。
「変……?」
「い、いや、いいんじゃないか……?」
なんか学校で使うヤツみたいな感じだけど……
……まぁ、とりあえず褒めとけば間違いないよな……。
「ホント?よかった……」
安堵のため息をつく葵。
……安易なことを言ったと、少し罪悪感。
「お兄ちゃんがこの水着、好きだって言ってくれたから……思い切っちゃった、えへへ」
……言ったっけ?
必死で思いをめぐらす。

442 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/09/06(水) 22:45:26 ID:RH9FdTlA
……あぁ。
色は青系が好き。とは言ったな。
あと、露出は少な目の方が良いんじゃないか?という兄としての気遣い(それと、俺が恥ずかしくて見れないから)もした。
二つを統合すると……まぁ、こんなもんか。
もう一度、水着を見る。
「……っ……」
「どうかしたの?」
「いや、何も……」
……一瞬、スク水、とか、スク水着て……とか、考えた自分が恥ずかしい……。
そんなこと葵に言ったら、なんて思われるか……。
当の葵は、自分の体をあちこち見ながら、
「でも、ダメだ、これは家の中でしか着れないよー」
「ああ、そうか」
「まぁ……もともと、そのつもりなんだけどね」
そういって、俺にウインクをしてみせる葵……。
つーか……家の中で何に使うんだ……?
「……やっぱり、風呂か……?」
……素朴な疑問が口に出てしまった。
聞こえてなかったら良いんだけど……。
そう思っていたが、葵は突然スイッチが入ったように……
「お、お風呂っ!?え、何何!?どういうこと!?」
聞こえてたか……。
それなら、しょうがない。
「いや、入るんじゃないのか?」
「えっ!?そ、そんな!?お兄ちゃん、私、まだ、心の準備が……」
水着で風呂に入るってのは、そんなに覚悟のいることなんだな……。
女の子って難しいなぁ……。

443 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/09/06(水) 22:46:14 ID:RH9FdTlA
「……え?」
「あ、でも……イヤじゃないんだけど……!!」
「……はぁ……」
「……でも、私、初めてだから……最初は、普通にしたいな……?」
「まぁ、よく分からんけど……好きなようにしたらいいんじゃないか」
「……うん。ありがとう、ゴメンね?」
「謝ることじゃないだろう、俺は関係ないし」
俺がそう言うと、
「……え?」
目の前の葵の動きが固まる。
「え?何?俺関係あるの?」
「……ねぇ、お兄ちゃん。何の話?」
目の座った葵が、低い声で尋ねた。
……何だ、このプレッシャーは……。
「葵は水着を着て風呂に入るって、話じゃなかったか?」
何だかポカーンとしてる葵。
徐々に俯き……何だか震えてますけど……。
「……お……」
「お?」
「お兄ちゃんのバカぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!!!!」
「っ!?……何故……」
……葵のボディーブローをモロにくらい、その場に膝をつく俺。
「喜んで損したよっ!!もうっ!!」
怒った様子で出て行く葵。
尚も動けず、しゃべることもままならぬ俺。
何にも分からぬまま喰らったパンチは、涙が出るくらい痛いんだね、チーフ……。
───────────────────────

444 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/09/06(水) 22:47:29 ID:RH9FdTlA
一人前の前座を目指して、今日も貼り貼りっと。
でも、名前を忘れるようじゃねぇ……

本来作るつもりの無かった続編。
……姉のテイストが少し入ってる気が……。
夢ノ又夢先生の作品がまだ続くようなら、葵視点のものもその前座で書くかも……。

445 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/09/12(火) 23:15:42 ID:o0VcQwlS
俺はスレストすることにおいても頂点に立つ男らしい……。

ところで、質問。
新しい妹で新しい話を書き始めたんだけど、よく考えたら、最初の方は妹関係ない。
それでも貼っても良いのかな……?

446 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/09/13(水) 05:31:52 ID:oZFQ6p5A
新しい妹貼っておくれ(´∀`)


葵もよろすく!

447 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/09/16(土) 23:15:10 ID:hshwH5iR
突然振り出した雨。
空はどんよりと曇って、どうやらすぐには止みそうにない。
駅前の街灯時計の前には、俺を除いて誰もいない。
両手に持った二本の傘を見比べ、俺は小さくため息をついた。
「早く来すぎたか」
約束の時間まで、あと三十分以上。
ある程度の時間的余裕を確保しておかないと落ち着かないという病気を抱えた俺だが、
今回の予想以上の待ち時間に、少しうんざりする。
と、いいつつも……心の準備をする時間が出来て、少しホッとしたワケだが。
どこか休める場所があれば良いのだが。
そう思い、辺りに目を向けると、少し先のほうに、喫茶店らしき店が。
丁度良いとばかりに、迷わずその店に入る。
……それが悲劇の始まりだった。
「おかえりなさいませ、ご主人様♥」
何かすごい服装の女性に出迎えられ、一時、全てを忘れる。
「……?」
「こちらへどうぞ♥」
「あ……はい……」
……ショックで完璧に自分を失った俺は、言われるがままにテーブル席へ……。
まぁ……ここなら、さっきの時計もよく見えるな……と少し冷静だった。
「お飲み物は?」
「……アイスコーヒーで……」
「かしこまりました♥」
……。
水を一気に飲んで、少し冷静になる。
なるほど、ここが噂のメイドカフェというものか……。
しかし、田舎だ田舎だと思っていたが、メイドカフェなんてものがこの町にあるなんてなぁ……。
物凄い場違い感を抱えながら、窓の外をずっと眺めている。
とはいえ、しばらくすれば少し慣れてきたのか、
今まで忘れていた緊張やら不安やらが込み上げてきた。

448 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/09/16(土) 23:15:49 ID:hshwH5iR
「お待たせしました」
そんな時にタイミングよく現れたのは、アイスコーヒーとさっきの女性。
「ミルクとシロップはどれくらいにしますか?」
「ふむ……」
他の客を見ていて分かったことだが、
どうもこの店では、ミルクやシロップは彼女たちが入れてくれるらしい。
「少しで」
「はい。かしこまりました」
そういって、ミルクを注ぎ始めるのだが……何だか腕がプルプル震えている……。
危なげにその光景を眺める俺。
……ポタン。
ミルクが、上手に一滴だけ、グラスの中に入る。
少し=一滴……もしかして、天然?
それともそういうサービス……ってことは、ツッコミ待ち?
いろいろ考えながら、呆然と、真っ黒なままのグラスを眺めていると、
「どうかしましたか?」
シロップも一滴いれ終えた彼女が、不思議そうに尋ねる。
……やっぱ天然だ……!!
「いや、なんでも……」
「そうですか。では、ごゆっくり!」
お辞儀をして、嬉しそうに戻っていく彼女。
……残された俺とほぼブラックなコーヒー。
驚きの余り、全てを忘れてしまっていた。
───────────────────────

449 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/09/16(土) 23:18:16 ID:hshwH5iR
許可頂いてからどんだけ時間かかってんだよ、ってワケで今更貼り。
全然、妹関係ないけど、今日はココまで。バーボン怖いし……

……メイド喫茶ちょっと行ってみたい……近くに無いけど。

450 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/09/18(月) 22:54:55 ID:NpCHzpCe
最後まであの天然ちゃんが俺を担当するのかと思ったが、そうではないらしい。
お姉さん系のメイドさんにお金を払い、お店を後にする。
「いってらっしゃいませ、ご主人様」
……なるほど。店を出て行くときはいってらっしゃいになるわけだ……。
感心しながらドアを押すと、
「あ……」
私服姿の、さっきの天然ちゃんが、店の軒先に立っていた。
なるほど、上がる時間だったわけだね。
しかし……さっきは服に圧倒されて、気付かなかったが、結構可愛い。
「ん〜……」
どうやら、傘を持っていないご様子。
話しかけるべきかどうか迷っていると、
「雨、イヤですねぇ」
「え、あぁ、そうですね」
「澪、傘もってくるの忘れちゃって……」
天然ちゃんは困った様子で、手を伸ばし、その掌を雨に晒す。
「……よかったら、使います?」
「え?……あ!?そんなつもりじゃないんですよ!?」
「別にいいですよ、二本持ってますし」
「で、でも……」
困っている様子の天然ちゃん。
まぁ……彼女なりの考えがあるなら、無理に押す必要も無いか……

451 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/09/18(月) 22:55:29 ID:NpCHzpCe
そう思っていると、
「ひぁっ!!」
彼女が突然大声を出す。
「どうかしました?」
「いえ……大丈夫です。ケータイが震えて、ビックリしただけですから」
バッグからケータイを取り出す彼女。
「あ、お母さーん!!うん、うん。こっちもすごい雨だよー」
声デカいなぁ……。
「迎えにきてくれるの?ありがとー!!……うん、分かった。待ってるよー……うん、バイバイ」
ケータイを折りたたむ彼女。
「あ、あの……少しお願いしても良いですか?」
「あぁ、どうぞ」
「あそこの時計の前まで、傘に入れてくれませんか?」
「いいよ。僕もあそこの前で、人と会うから」
「そうなんですかー、偶然ですね!!カノジョさんですか?」
「はっ?」
「あ、ゴメンなさい。変なこといいました?」
「……いや。ちょっと、驚いただけ。義理の妹と会うんだ」
「わー!!そうなんですか!?私もね、もうすぐお兄ちゃんができるんですよ!!」
とたんに嬉しそうになる彼女。
「まだ全然どんな人か知らなくて、すっごく楽しみです!!」
「……ふぅん」
奇妙な偶然もあるもんだ。と、少し驚く。

452 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/09/18(月) 22:56:13 ID:NpCHzpCe
「じゃ、行こうか。はい、傘」
妹の物だという傘を、彼女に差し出す。
「……え……?」
「どうかした?」
「これ……どうしたんですか?」
「傘?いや、妹の傘だから持ってけって、ウチの父親が……」
「……って、ことは……ど、泥棒っ!?」
「はっ!?」
「だって、コレ、私の傘ですよ!?」
「……キミの?」
「間違いありません!!」
……ということは、つまり……
「……もしかして、キミの苗字って二河……?」
「はい。二河澪です!!」
「やっぱり……」
「どうかしました?」
「……キミが妹だったのか……」
「え!?えぇぇぇっ!?」
「まぁ、はじめまして」
驚きを隠し、握手を求める。
「み、澪のお兄ちゃんが……泥棒さん……?」
「……泥棒じゃありません」
「じゃあ……何?」
「何といわれても困るけど……怪しいもんじゃない」
「そうなんですかー」
……さすが天然……。

453 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/09/18(月) 22:56:45 ID:NpCHzpCe
「えっと、よろしくお願いします。お兄ちゃん!!」
「ああ、こちらこそ」
先ほど俺が出していた手を、やっと握る妹。
しかし、突然思い出したように、
「あ!!」
「?」
「呼び方、お兄ちゃんでよかったですか?」
「は?」
「友達が、男の人は呼び方にこだわるって言ってたし。
 だから、お兄様とか、そういう呼び方のほうがいいのかなーって」
「……変でなければ、なんでもいいけど」
「ホントに?」
「うん」
「じゃあ……お兄ちゃんにします。お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん……」
……改めて言われると、恥ずかしいな……。
「……帰るか」
「うん、お兄ちゃん。……あっ!!」
「今度は何?」
「澪のことは、澪って呼んでください」
「わかった、澪ちゃんね」
「……み・お!!」
「え……?」
「『ちゃん』はいりません!!」
拘ってるのね……。
「あぁ、ゴメン。澪……澪ね」
「へへ、ありがとうございます」

454 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/09/18(月) 22:58:06 ID:NpCHzpCe
……ところで……いつまで手を握っているつもりですか……
「さ、帰りましょ?」
「あ、あの澪……?手を……」
「て……?手がどうかしました?」
「いや、何で握ったままなのかなって」
「……あぁ!!そうですよね!!」
慌てて俺の右手を放し、そして、すぐに左手を掴む。
「え?」
「そうですよね。右手と右手じゃ、手繋げないですよね」
「いや、そうじゃなくて」
「ふぇ……?」
一点の曇りもない純粋な目……。
そんな目でコッチを見るなよ……。
「いや、帰ろうか」
……負けた……。
「はい!!あ、ところで、お兄ちゃんの名前、なんていうんですか?」
新しく出来た妹……。
やっぱ天然……。
───────────────────────
続くのやら続かないのやら。
まぁ、妹にメイド服を着せたいと言う黒い欲望のため『だけ』に書き始めたんで、どうなることやら……。

どうせ俺なんか……。
もう……萌えも妹もないんだよ……。

455 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/09/19(火) 04:21:54 ID:is6F3IPB
>>447-454
グッジョブ!
もう何を書いても素晴らしいですね
続きを期待しております!!

456 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/09/22(金) 19:07:35 ID:ZkC5pbr/
「・・・なんだか以外だね」
「な、何が?」

やはり予期せぬタイミングで投げ掛けられる言葉に少し反応が遅れる俺。
そして、やはり気後れにはお構いなしで再び始まる会話のキャッチボール。

「お兄ちゃんがそんな風に言ってくれるなんて、思ってもみなかった」
「そうか?やっぱり変だったかな」
「ううん、そうじゃなくて・・・なんだか・・・それってプロポーズの言葉、みたいだから」
「・・・」
「・・・お兄ちゃん?」

この時、実はすでに巴の声には耳を貸してはいなかった、俺の耳は後方で轟くエンジンの音に集中している。
音を聞く限り減速する気は欠片も無いらしい、いや、恐らくこちらに気付いてさえもいないのだろう。
怪訝そうな顔の巴を前に頭でそう結論付ける前に体が先に動き出す。

「巴っ!!」
「え・・・」

壁になる様に巴に覆い被さる俺、数秒も待たない内にウォータースライダーの如き水飛沫が背中に襲い掛かる。
あっという間の出来事、車のエンジン音はロックだかラップだか分からない大音響と共に瞬く間に遠くになっていく。
しかし、この結果を見る限りやっぱり今日の運勢は大凶らしいな・・・
もはや雨も関係無い程に額から盛大に水を滴らせて巴の安全だけは確認しておく。

「ううっ、冷てぇ・・・巴はなんとか無事みたいだな、良かった良かった・・・巴?」
「・・・」

457 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/09/22(金) 19:10:00 ID:ZkC5pbr/
それは神様のほんの些細なイタズラ

見詰め合うにはあまりにも近過ぎる距離
思いがけずに俺が映り込む少し潤んだ透き通った瞳
雨露に濡れて艶を帯びた黒髪
色鮮やかな赤みを帯びた頬
触れれば弾けて消えそうなシャボン玉の様なその姿

脆さを湛えた表情を目の前に真赤な傘の下、青い水の星が呼吸を止める。
嘘みたいに綺麗なその姿は全てが霧に霞んで見える所為だろうか大袈裟にもこの世にある事さえ奇跡に思えた。
お互いの吐息が鼻先に触れ合うギリギリの距離でじっと見詰めたまま流れる憂いを秘めた沈黙。
そんな沈黙に堪えられなくなった俺はたどたどしくも時を解いていく。

「その・・・ごめん」
「・・・どうして謝るの?お兄ちゃんはボクを庇ってくれたのに」
「いや、そうなんだけどなんか罪悪感があって・・・」
「それより大丈夫?こんなに濡れて・・・」
「いいよ、ここまでくれば焼け石に水だ」
「あ・・・うん」

ハンカチでいそいそと俺の顔を拭き始める手を制して歩き出す距離を取ろうとする。
思えば不慮のアクシデントとはいえ俺が巴を壁際に押し倒した様な体勢、色んな意味でこのままでは危険だ。
今更になってまだまだこれからとやけに辺りに響く自己主張の強い雨。
それが俺には自分の中の時が重々しくもようやく動き出した証拠の様に思えた。

「巴、俺、先に帰るわ」
「先に、ってお兄ちゃん?」
「さっさと帰ってシャワーでも浴びるって事、巴はゆっくり帰ってくればいいから」

458 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/09/22(金) 23:23:45 ID:9t5HOImZ
>夢ノ又夢先生様
毎度ながら、さすがです!!
次回もお早めにお願いするっス!!



459 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/09/24(日) 20:19:08 ID:JlNcAtiX
>>456-457

そして保守

460 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/09/26(火) 05:44:50 ID:u+0f3xrL
あげ

461 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/09/26(火) 05:47:37 ID:zmQW6TcE
言うが早いか俺は傘を強引に手渡して走り出す体勢をとる、ここからならば家までは走ればそう時間は掛からない。
この蒸し暑さと靴底まで湿った状態、正直言って濡れたままでいるのはキツ過ぎる。

「じゃ、そういうコトで・・・うわっ!?」
「だ、ダメッ!!」

走り出す正にその瞬間、思い切り掴まれる右手、普段の巴からは考えられない程の声が辺りに響く。
驚いて後ろを振り返れば俺と同じように驚いた顔の当のご本人、呆気に取られた俺の先で雨は再び勢いを増して行く。

「・・・な、何が駄目なんだ?」
「・・・そんなのヤダよ・・・一人に、しないで・・・お願い」

今にも泣きそうな、不安で堪らないといった顔で巴が俺を見詰める。
降り止まぬ雨が呼び覚ましたその捨てられた子犬の様なあまりにも綺麗な泣き顔。
痛い程に掴まれた右手に俺は巴の微かな震えを感じていた。
・・・全く以って神様とはなんともイタズラ好きらしいな・・・
俺はそっと巴の手を解いて傘を二人の真ん中に持ち直す。

「俺が風邪ひいたら看病頼むぞ、まったく・・・」
「・・・ゴメンね、お兄ちゃん、でも・・・ホントに嫌だったから」
「はいはい、分かってるよ、いつでも俺は巴の側にいますので」
「ホントにゴメンね、それと・・・ありがとう」

月日がどれだけ経とうとも変わらない心からの信頼。
そういえば子供の頃はこんな巴が見たくて色々無茶な頼まれ事を引き受けてたんだっけか・・・

「・・・」
「・・・」

462 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/09/26(火) 05:48:19 ID:zmQW6TcE
長い夢現の時から少しだけ自分を取り戻したら今度は隣にある物言いたげな視線に気が付く俺。
何かを訴える少女の眼差し、しかもやや上目遣い、今日というごく平凡なハズの一日は何かスペシャルな日なのだろうか。

「・・・巴、とりあえず言いたい事があるなら言ってくれ、その視線は物凄く気になる」
「うん、言いたい事はあるけど・・・何から言えばいいのか、何を言えばいいのか、少し分からなくなって・・・」

真っ直ぐに視線が重なると先程とは正反対に困った様に目を逸らす巴。
なかなかに難儀な状況の連続に図らずも小さな溜め息が漏れ出てしまう。
取り合えず会話のボールはこちらの手にあるので俺からなるべく簡潔に投げ掛ける。

「じゃ、最初に思いついた事を言えばいいんじゃないか?」
「・・・ホントはね、一人になるのが嫌だったんじゃなかったんだ」
「へっ!?」
「一人が嫌だったんじゃない、お兄ちゃんと離れてしまうのが・・・イヤだった」
「ま、まぁ、あのまま走り去っていくとホントにどこぞの映画のワンシーンみたいではあった・・・かな?」

確かにそんな感じではあったと、ふと数分前を振り返る。
まぁ、主演女優はともかく男の方が相当な大根役者ではあったけれど・・・
予期せず二人の間に流れ出すぎこちない空気、そんな雰囲気に気圧されつつも俺は巴の歩調に併せて歩く。

「ふふっ、お兄ちゃんがその後、戻って来て抱き締めてくれてたらそうだったかもね」
「ほうほう、俺と一緒に仲良く風邪が引きたかったとでも?」
「冗談だよ、さ、ホントに風邪を引く前に帰らなくちゃね」

少しだけ明るさを取り戻したいつもの囁くような澄んだ声が耳に残る、ほんの少し歩みが早くなる。
神様のイタズラが目覚めさせた露帯びた時間と厚い雲の向こうにある陽だまりの空白。
雨の中で変わり行く季節の色と香りが密やかな夏の終わりを想わせる。

「・・・でも・・・お兄ちゃんならそれでもよかったのに・・・ボクは・・・抱き締めて・・・欲しいのに・・・」

雨音は依然、弱くなる兆しを見せない。
巴の溜め息の様な呟きは二人の隙間で傘から流れ落ちる滴と共に地面に吸い込まれていった。

463 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/09/27(水) 09:20:16 ID:EkrWQTIe
>>遊星さん
乙です!相変わらずいいです!
天然メイドですね。ドジッ娘要素も期待してしまいますw
メイド服を着せたいと思うのは自然の摂理並に仕方ないですよw

>>夢ノ又夢さん
乙です!GJです!度ツボですっ!
これはすばるには耐えられません(*´Д`)

464 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/09/27(水) 21:31:27 ID:sMkZAm2X
結局、今回も大きく遅れての投下、ホントすいません。
そんな訳で続けて投下。

>遊星様
天然さんまで書けるとは引き出しの多さに感服です。
しかもメイドさん、実に二度オイシイw
続きを期待してますよ、後、葵ちゃんも楽しみにしています。

>すばるさん
いつも御感想ありがとうございます。
もっと萌えられるssを書ければいいんですけどねぇ。
精進が足りない様です・・・今の所、一番足りないのは時間ですが。

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0ch BBS 2004-10-30