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[第六弾]妹に言われたいセリフ

158 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/31(土) 20:45:39 ID:aHq9cToi
大晦日の夜、いかがお過ごしでしょうか。
紅白の布施明に鳥肌ビンビンの遊星でございます。
構想含め、二時間で書いてしまいました。
まぁ、二時間で書いたなりの結果になっていると思ってます。

>260先生
トリップとか、コテハンとか別に難しく考えることは無いんですよ。
でも、自分じゃない人に自分の大切なキャラを、勝手に書かれてしまうのがイヤだから。
だから、書くとか書かないとか上手いとか下手とか関係無しに、
トリップをつけてるんだって。僕は都合よく思ってますけどねw


あと、ちょっと余談。僕のサイトに、未公開作品を追加しました。
妹ではないですが、よかったらどうぞ、っと。

159 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/01/01(日) 03:03:22 ID:eQDSVVMQ
あけおめ乙

160 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2006/01/07(土) 03:48:14 ID:HovilBMs
>260さん
260さんの期待に答えられる程のものを書けるかわかりませんが頑張ってみます
期待はしない方がいいかもしれないですw

>遊星さん
遊星さんならそう言いつつも、来年もしっかり仕上げてきそうですねw
俺のSSは上記の通りなので…楽しみにしてると出来て投下した時にがっかりするかもしれないですよw
もっとキャラ達を立たせてあげたいんですが…文章力が付いていけてないので orz

161 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/01/11(水) 19:36:24 ID:Ye0ZYc5U
あげますよ〜。

162 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/01/15(日) 02:09:55 ID:R2fpzf4A
誰もいない…………かな?

163 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/01/15(日) 02:18:19 ID:R2fpzf4A
捕れると思った…しかし、ボールはあっさり後ろに通り過ぎていった…

中学野球の地区大会決勝
俺はアイツとの約束を守れなかった。

アイツは…渚は両親が死んでからずっと泣いていた。
身寄りのない俺達は叔母夫婦に預けられた。
叔母さん達は本当に良くしてくれるが、渚は悲しみにくれて家から一歩も出ようとしなかった。
俺は叔母さん達に迷惑をかけないために…本音は渚に元気を出してほしくて
「次の試合、俺が勝ったらもう泣くなよ!だから見に来い。絶対勝つから!」
そう言った。
大会が始まり、試合に勝ち続けた。でも渚は見に来なかった。
そして、今日俺のエラーで負けた…
渚が初めて見に来たのに……

164 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/01/15(日) 02:21:42 ID:R2fpzf4A
周りでチームメイトが泣いている。俺は泣くに泣けなかった…
エラーした自分と約束を守れなかった自分に呆れていたのかもしれない…

家への帰り道、あれこれと言い訳を考えながら帰る…夕陽が目にしみるぜ…
すると影が目線にはいり、誰が立ちはだかった。
「…お兄ちゃん。」
「!!」
渚だ。まったく予想外のことにパニックになる。「……。」
「……。」
そして、沈黙。
どれくらいだったかわからないがその沈黙はさらに俺を混乱させる。
考えがまとまらないまま声をかけようとしたところで
「カッコ悪い。」
「えっ!?」
「今日のお兄ちゃん、すっっっごくカッコ悪かった!!」
「うっ…」

165 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/01/15(日) 02:24:31 ID:R2fpzf4A
分かってたがかなりキツい…。
そりゃあ、あのエラーさえなければ勝ってたのだが……。
「でも……。」
「えっ?」
「すっごく頑張ってた。」「……。」
そこまで言って俯いてしまう。
「えっと……その……ちょっとだけかっこ良かったよ…。」
そして顔を上げてとびきりの笑顔。
その笑顔は夕陽に染まって真っ赤だった。
「帰ろ。お兄ちゃん!」
そうして、差し出された手。
どうやら、立ち直ってくれたらしい。だから俺はその手をとって、こう言うんだ。
「そうだな。」

166 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/01/15(日) 02:32:53 ID:R2fpzf4A
最初に全力を持って謝ります!
本当にすいませんでした!!
完璧なるスレ汚し。
3つも使っちまった……。
出来心ですいません。もうしません。
では、撤収します。
それでは。本当にすいませんでした!!

167 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2006/01/15(日) 02:53:15 ID:1eH+YdG3
これが噂の貼り逃げってやつですね!?

>>162-166
謝らないでくださいw
もうしないなんて言わずにどんどんやっちゃってくださいw

出番が少なくて妹のキャラをしっかりとは把握出来ないですがいい作品だと思いますよ
(多分)今までにない新鮮なネタですね
是非続けて欲しいです

もしやイメージはバンプのキャッチボールですか?

168 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/01/15(日) 10:44:23 ID:R2fpzf4A
わかりにくくてすいません。
妹の最後の一言を言わせたいためだけに作って、貼ってしまいました。

あぁ、つくづく俺は駄目野郎だぁ。

169 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/01/15(日) 10:56:24 ID:R2fpzf4A
すばる様>
俺みたいに駄目な奴にありがとうございます。

出直します。

170 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/01/15(日) 21:13:20 ID:m7Wcyz4n
>>162-166
まぁまぁ、気を落とさないでくださいな。
兄はカッコよくあるべし。という信条を持つ拙僧には、大変面白く読ませていただきましたよ。
スポーツ系のSSは珍しい(と思う)ので、是非これからも書いていって欲しいですね。

偉そうですか、すいません。

171 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/01/18(水) 22:47:05 ID:9ICbKeW+
>遊星さん
偉そうなんてとんでもないです。
そう言ってくれる方々がいてくれて、嬉しいっす。
続きかけたら書きます
期待に添えられればいいのですが…orz

172 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/01/23(月) 22:23:19 ID:OYpU23Ck
age

173 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/01/25(水) 04:58:43 ID:8Rqu+gGy
妹「おにいちゃん」
ガチャリンコ
俺「お、おい、ノックくらいしろよ」
ガチャリンコ
妹「おかーさーん、おにいちゃんまた変なゲームしてるよー」

174 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/01/25(水) 20:08:08 ID:vnbsC5IP
ワロスw

175 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/01/27(金) 21:03:01 ID:eOKokHRw
>173またってコトは 一度覗かれている、と?

176 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/01/29(日) 16:23:30 ID:V+LIhJx4
妹の部屋にパソコンがあり、そこでギャルゲーしてますが、何か?

177 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/01/30(月) 01:43:11 ID:0afu9Lvd
>>176
君に勇者の称号をあたえよう

178 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/01/31(火) 20:06:27 ID:7rHt8ULX
妹「おにいちゃん」
ガチャリンコ
俺「何か用か、何も無いなら出ていってくれ」
ガチャリンコ
妹「おかーさーん、おにいちゃんが変なゲームやってて私のこと見てくれないよぉ」

179 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/02/04(土) 01:27:39 ID:P7k0B1hc
>>176
・・・凄ぇよ、アンタ。

180 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/02/04(土) 01:36:15 ID:YMTguEfd
>>176
ネ申

181 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/02/09(木) 00:34:19 ID:0QCnDwiA
スレ違いかもしれんが
ちょっときかせてくれ。
妹ではないんだが漏れの
姉の娘(小1)が最近、
一緒に風呂にはいりたいといってきた。
おまいらならドースル?

182 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/02/09(木) 12:24:48 ID:QDpkVAf+
普通に一緒に入ればいいじゃん

但しエロい目で見るのを止められないなら断れ
その子なんか感づいたら母親に報告行くと思っとけよ

183 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/02/09(木) 20:18:49 ID:seLFHUbg
姉の娘「お母さ〜ん おじさんの象さんおっきくなってカチカチだよ〜」

184 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/02/10(金) 04:05:32 ID:9+zhJRLS
つ調k(ry

185 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/02/14(火) 20:29:11 ID:hJiyPpTM
バレンタインの夜いかがお過ごしでしょうか。もはや恒例、遊星(ryでございます。
えっと……反省文を後に書くとスレがマイナスエネルギーで満ちるので、今回は反省文を先に。

【反省文】
時間がないなか、大変努力しました。いや、努力はしました。
四年目のバレンタイン……辛かったッス……。

・サラ:彼女の性格を完全に忘れました……。
    確か、はっきりとしたツンデレじゃなかったような……という感じで書いてました。

・梨那:毎回一番最初に書きあがる(すなわち、ネタがひらめく)良い娘。
  その代わり、大体ウォーミングアップ代わりにされる……ゴメン。

・沙耶:大体、いつもネタが決まらず一番最後になる困った妹。
  名前間違えネタは、セイザーXより。別に意味は無い。

・双子:兄が出てこないと言う問題作。
    でも、自分としては悪くないと思うんだけど……

・未来:未来が一人で考え事。ってのは、すごく好き。
    恥ずかしくて、面と向かってはいえないけど……みたいな。

・羽音:期待のルーキー。完全に惚れました。チョコください。

186 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/02/14(火) 20:30:00 ID:hJiyPpTM
「ここだったわね……」
ここに来れば、間違いなく会える。
この日のために用意したチョコもちゃんと持ってる。
なにしろ、この国では、今日は大切な日らしいから。


いつもの通学路を、俺は今一人で歩いている。
いつもは友達か妹が一緒だが……
なにせ今日はバレンタインデー。いつもと勝手が違うらしい。
「じゃ、いつもと変わらない俺は一体何なんだ」
実にくだらない独り言だと我ながら思う。
言って恥ずかしくなった俺は、誰もまわりにいないことを確認しつつ、少し歩くスピードを速めた。
そして、いつもの曲がり角を曲がったとき、
トントン。
何者かに、背中を叩かれる。
「……?」
俺が振り向くと、
「久しぶりね、マサト。元気だったかしら?」
「あれぇ、サラじゃないか!!」
俺の従姉の娘、サラが立っていた。
サラは遠くに住んでいて、なかなか会えない。
というか、このコと俺の妹を会わせたくないと言うか……。
「どうしたんだ、こんなとこで?」
俺は今日、妹と一緒でなかったことを感謝しつつ尋ねた。


187 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/02/14(火) 20:30:32 ID:hJiyPpTM
「どうしたんだ、じゃないわよ。今日は、バレンタインデーでしょ?」
「あ、もしかして、チョコを持ってきてくれたの?」
「ええ、日本ではそうするんでしょ?」
「うん、よく知ってたな?」
「友達が言ってたわ。まぁ、イギリスでも贈り物くらいはするけれどね」
「ま、そりゃそうだ」
何気ない言葉だけど、サラの口から友達と言う単語が聞けて嬉しかった。
「そんなことよりも、はい。チョコ」
「うん、ありがたくいただきます」
サラからチョコを受け取る。
俺が嬉しさを噛み締めながら、チョコの箱を眺めていると、
「よく分からないけど、ホンメイっていうらしいわね」
「あ……そうなの?」
まさかの大告白にちょっと驚きながら答える。
「ところで、どういう意味なの?」
知らないのかよ……。
「え……えっと……まぁ、本気で好きな人にあげるチョコってことかな」
「……そ、そんなっ……」
恥ずかしそうに、俯くサラ。
そんなサラが久しぶりで、何だか可愛かった。
「……で、でも……間違っては……ないんだよ?」
「そっか、嬉しいよ」
「……嬉しいの?」
「うん。やっぱり俺も男だからね、本命チョコもらえると嬉しいんだよ」
「そうなんだ。……私も、そういってもらえると嬉しいよ!」
少しサラの口調が柔らかくなる。
大分、テンションが上がってきたようだな。
だけどねぇ……。

188 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/02/14(火) 20:31:24 ID:hJiyPpTM
「さ、サラ。遅くなるといけないから、帰ろう?駅まで送るよ」
「え……もう?」
「うん。お父さんやお母さんが心配したらいけないだろ?」
「うん……そうだね」
少し残念そうだが、納得した様子のサラ。
俺はそんなサラに手を差し出して、
「行こう?」
「うん……」
サラは小さく返事をして、悲しそうに俺の手を取る。
「……また会えるよ」
「……」
「だって、日本にはホワイトデーっていうステキな日があるんだぜ?」
「うん……知ってる」
「その日にまた会おう」
「……うん。そうだね」
「約束だぞ」
「うん!!」
幼い笑顔を返すサラ。
俺はそんなサラの頭を優しく撫でる。
サラは少しだけ、噴出したように笑ってから、
「やめてよ、マサト。くすぐったいわ」
「イヤか?」
「べ、別に……そこまでは言ってないけどっ……」

ちょっとクールなサラと、可愛いサラ。
突然変わるから、ちょっとビックリする。
多分使い分けてるわけじゃないんだろうけど……。
どっちもサラ。……というよりも、それひっくるめてサラなんだろうね。

[END]

189 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/02/14(火) 20:31:57 ID:hJiyPpTM
1、2、3、4、5。
机の上にチョコが五つ。
義理感全開の五つのチョコ。
本命チョコほどのプレッシャーも無く、甘党の俺には、最高のプレゼントである。
「どれから食おうかなー」
俺はそんなことを検討しながら、全てのチョコをひとまとめにしてみる。
すると、
「やっほー、お兄ちゃん」
窓を勢いよく開けて、幼馴染の相川梨那が俺の部屋に入ってくる。
「にゃ、開いちゃった……」
どうやら鍵をかけ忘れたようだ……。
俺は少し驚きながら、
「梨那か、何か用か?」
「今日はバレンタインデーだよ?何か用かって言い方は無いんじゃない?」
「ああ、チョコもらいにきたのか?だけど、それは無理だ」
「ぶぅ!!そうじゃないもん!!」
俺の言葉に、頬をぷぅっと膨らませ明らかに不満そうな顔をする梨那。
「何キレてんだよ?」
「キレてない!!」
キレてんじゃん。
「わかったわかった。ちょっとやるから」
「だから、そうじゃないの!!」
「ひょっとしてさぁ、お兄ちゃんってバカなのー?」
この人を小ばかにした態度……すっげぇムカつくな
「冗談に決まってんだろ。何だ、チョコくれるのか?」
「……欲しいの?」
自分から言っておいて、この態度は何だ、梨那。

190 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/02/14(火) 20:34:46 ID:r2mSVtw0
自己支援

191 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/02/14(火) 20:34:58 ID:hJiyPpTM
「まぁ、一応」
「で、でも……今年もいつもとおんなじヤツだよ?」
「別に良いよ」
「ホントに?」
「ああ」
「じゃ、じゃあ……コレ……」
そういって梨那が恐る恐る差し出したのは、質より量の材料チョコ。
しかもラッピングすら無し。
こんなもんを毎年頂いてるわけですよ、僕は。
「ああ、ありがと。ありがたく受け取ります」
甘いものは好きだから、俺はこれぐらいのほうが嬉しかったりする。
「お、抹茶味なんてあるんだな」
ホワイトチョコとかイチゴ味のチョコは見たことあるが、抹茶は初めてだな。
ま、抹茶のチョコは大好物なので、かなり嬉しい。
俺が興味を持って梨那のチョコを眺めていると、
「……ねぇ、お兄ちゃん」
梨那が暗い声で呟く。
「ん?」
「やっぱり返して……」
「どうした?」
「だって、梨那だけそんなので恥ずかしいもん……」
「これ、気にしてんのか?いいよ、別に」
「でも……他の人に負けちゃってるから……」
「……見栄っ張りが」
「……」
「そりゃ、色気も何もあったもんじゃないけど……梨那は梨那なりに俺のこと考えてくれてるだろ?」
「……」
「しかも、俺はそれに十分満足してる。梨那はそれで何が不満なんだ?」

192 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/02/14(火) 20:35:36 ID:hJiyPpTM

「……梨那は、お兄ちゃんが喜んでくれるのが嬉しい……」
「だろ?それなら、ほれ、顔上げろ」
「……うん」
顔を上げて、嬉しそうに笑う梨那。
俺は梨那の頭にポンと手を置いて、
「俺はお前のチョコ、毎年楽しみにしてるんだからな?」
「お、お兄ちゃん……それって……」
俺がそういうと、梨那は期待に満ちた瞳でそう聞き返した。
「……?言ったままの意味だが?」
意味が分からず、そう答える。
すると、
「にゃ!?えへへへ〜。そっかー、そうなんだー。てへへへ……」
梨那がおかしな笑いをしはじめたではないですか……。
「な、何?」
「んーん。なんでもないにゃー」
にゃー!?
え、何、何、何っ!?
ちょっと脳の許容範囲超えた!!
「……悪い。することあるから、今日はこれぐらいで……」
とりあえず、冷静に考えねば……。
「うん。ごめんにゃー」
また、にゃー。
「あ、ああ、また明日な」
「うん。ばいにゃー」
またまた、にゃー。

梨那が部屋を去って、数分後……
「おかしい!!何かおかしいぞ!!」
そんな叫びが、一時間ほど続いたそうな……。

[END]

193 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/02/14(火) 20:36:10 ID:hJiyPpTM
「……」
とある朝、目覚ましが鳴る直前に目が覚めた。
「ほぅ……こういうこともあるんだな」
目覚まし時計を見ながら、妙に嬉しい気分になる俺。
すると、
「おにぃちゃーん!!朝だよー!!」
俺の妹、沙耶がドアをブチ破り、ベッドに飛び込んでくる。
「うぉっ!?」
俺は咄嗟に手を上に出し、沙耶を抱きとめる。
衝撃そのものは何とか防げたようだが、軽い重みが、体全体にかかる。
「はぁ……はぁ……」
そうか、これで早く目が覚めたのか……。
荒い呼吸をしながら、一人納得する俺。
そんな俺を横目に、俺の上の沙耶はニコニコ笑いながら、
「おにぃちゃん、おはよー!!」
「あぁ、沙耶、おはよう……久しぶりだな」
「はわ?サヤ、昨日の夜もおにぃちゃんに『おやすみなさい』したよー?」
「あ、そういう意味じゃなくて……」
「はゎ?」
首を傾ける沙耶。
「いや、もういい」
説明する気力も無いよ、もう。
沙耶は少し俺の言うことを理解しようとしていたが、
「ま、いっか」
諦めた。
「それよりねー、今日は、ばれんたいんでーだよ、おにぃちゃん!!」
「あぁ、知ってる」
今まで忘れてたけど。

194 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/02/14(火) 20:36:44 ID:hJiyPpTM
「えへへ、はい!!おにぃちゃん、チョコー!!」
沙耶は寝そべっていた体を起こして俺にチョコを差し出した。
「あぁ、ありがと」
起き上がり受け取る俺。
「食べてー」
……え?
「ね?」
食べろって?
寝起きで?朝飯前なのに?チョコを?
俺の疑問は他所に、沙耶は嬉しそうに微笑んで、足をパタパタ動かしている。
……かなわねぇな。
「……わかりました、食べます」
「わーい!!はやくっ、はやくっ!!」
沙耶に急かされるように、箱を開ける。
中には、
「いぬ……」
手の込んだ犬型のチョコ。
多分、ゴールデンレトリバー。
「ブレンダだよー!!」
「ブレンダ……」
ブレンダ……。
もう名前がついてるってか……。
って言うか、それにしてもブレンダって……。
「食べてー」
「あぁ、うん」
言われるまま、ブレンダの頭を齧りつこうとすると、
「ブロンズぅ……」
悲しそうに沙耶が言う。
……今、ブロンズって……?
ま、いいか。
気を取り直してブレンダに……

195 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/02/14(火) 20:37:17 ID:hJiyPpTM
「ブライダルぅ……」
ブライダル……。
まさか沙耶からこの単語を聞こうとは……。
「沙耶。沙耶がそんな目で見たら、チョコ食べられないだろ?」
「でも……ブリトニーが可哀想だから……」
「んー、まぁ、そうかもなぁ……」
俺はブなんとかの顔をジッと見る。
なるほど、賢そうな顔だ。
「……でも、多分、コイツは食べてもらいたいと思うな」
「え?」
「だって、コイツはチョコだろ?チョコは食べられるのが仕事。
 食べずに捨てたらもっと可哀想じゃないか?」
「……うーん」
「じゃあ、沙耶はお兄ちゃんから、『沙耶なんていらない』って言われたら、どう思う?」
「はわゎっ!!やだよぅ!!」
「だよな?だから、コイツ、食べてあげよう?」
「……うん、そうだよね」
頷く沙耶。
「バイバイ、ブルース」
沙耶はブレンダの顔を人差し指で撫でた。
結局、こいつの名前は分からずじまいだ……。
「じゃあ、いただきます」
沙耶に出来るだけ見せないように、一口で食べる。
甘みが口の中に広がる。

196 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/02/14(火) 20:37:49 ID:hJiyPpTM
……ただ、やっぱり寝起きの時にはなぁ……。
「うん、美味しかったよ、ごちそうさま、沙耶」
そんなことは言えず、美味しかったといってしまう甘い俺。
「えへへ〜」
笑いながら、俺の胸に飛び込んでくる沙耶。
その勢いで、ベッドにまた倒れる。
「えへへ、甘くっていい匂いだよ〜!!」
「あぁ、そうだな」
「うん、おにぃちゃんの匂いとね、チョコの匂い〜。すごく良い匂いだよ〜」
「そっか」
俺はそんな沙耶の後頭部を撫でながら答えた。
「うん!!てへへ、おにぃちゃん、すき〜」
沙耶が頬を摺り寄せる。
俺は少し苦笑いをしながらも、沙耶を軽く抱き寄せるのでした。

[END]

197 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/02/14(火) 20:38:22 ID:hJiyPpTM
パタン。
石川唯奈が、冷蔵庫のドアを閉める。
「うー、牛乳無いのかー」
唯奈がキッチンから出て行こうとすると、
「唯奈、ちょっといらっしゃい」
リビングのソファに座った彼女の母、恵が唯奈を呼ぶ。
恵の隣には、唯奈の双子の妹、千奈がいた。
「ん、なーに?」
「ま、座りなさい」
「うん」
言われるがままに、恵の隣に座る。
「……とうとう今日ね」
恵が小さな声で言った。
「何が?」
「バレンタインだよ?」
恵の向こうで、千奈が言う。
「あぁ」
納得した、というようにポンと拳を叩く唯奈。
「多分ね、真司君、今年も忘れてると思うのよ。だから、私が先に真司君にあげるから、早まっちゃダメよ?」
「うん!」「はい」
「よろしい。ところで、二人はどんなの用意したの?」
「お母さんは?」
「私はねー。コレよ」
そう言って紙袋から、小箱を一つ取り出す。
「何、コレ?」
「あ、このブランド、私テレビで見たことあるよ……これだけでも、二千円くらい……」
千奈が小箱を眺めながら、言う。

198 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/02/14(火) 20:38:54 ID:hJiyPpTM
「二千円っ!?」
「ホントにこれ、高かったのよー。ま、真司君のは勇さんのついでだけどねー」
勇とは、真司の父親。恵の夫。唯奈千奈の義理の父だ。
「お母さん、すごーい!!」
「ま、オトナの財力ってヤツよねー」
偉そうに髪を撫でる恵。
「千奈は?何か作ったんでしょ?」
「え?私……?私は……チョコレートケーキを作ったんだけど……」
「あぁ、あの冷蔵庫に入ってる箱ね?」
「うん。思ったよりもね、上手くできたんだー」
嬉しそうに笑う千奈。
「唯奈ちゃんは?」
「……」
気まずそうに俯く唯奈。
「唯奈ちゃん……?」
不安そうに眺める千奈を、恵が手で制し、
「自分だけ、普通のチョコだって気にしてるの?」
「……うん」
「唯奈らしくないね」
「……そうかな」
「そうよ。だって、いつもの唯奈は明るくて、いいことも悪いことも考えずに突っ走っちゃうコでしょ?
 ねぇ、千奈?」
「うん、そうだよ」
「でも……唯奈のは、ブランドものじゃないし、手作りのすごいチョコじゃないし……」
唯奈が俯いたまま話し始める。
「唯奈」
恵がその話を中断させ、珍しく真剣な顔で、
「勘違いしちゃダメよ。千奈も覚えておきなさい。チョコなんてね、入れ物なの」

199 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/02/14(火) 20:39:37 ID:r2mSVtw0
自己支援

200 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/02/14(火) 20:40:17 ID:hJiyPpTM
「「入れ物?」」
「そう。気持ちの入れ物」
恵が優しく語りかける。
「大きいのとか小さいのとか、凝ってるのとかシンプルなのもあるけど……
 結局はね、女の子の気持ちに合うか、合わないかなの」
恵はそこまで言うと、娘の肩を抱き、
「そのことはね、真司君が一番よく知ってるのよ。……本人は気付いてないけどね。
 だから、唯奈は安心して自分らしくしなさい。千奈もそれを忘れないようにね?」
「「うん」」
同時に返事をする二人。
恵は二人を優しく抱き寄せ、髪を優しく撫でる。
「良い娘たちね。真司君が羨ましいわ」
恵の言葉に対し
「へへ……そうかな……?」
照れ笑いをする唯奈と、
「……」
顔を真っ赤にする千奈。
「そうそう。唯奈と千奈にそんな顔されたら、真司君だって我慢できないわよ」
恵はそういって、立ち上がる。
そして、唯奈と千奈に向き直って、
「とにかく、今日はそれぞれ頑張りましょ?」
「うん!」「はい!」
手を合わせ、成功を祈りあう三人の女性たち。
そんな光景が平和な、石川家のバレンタインデーでした。

[END]

201 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/02/14(火) 20:40:49 ID:hJiyPpTM
「はぁ……まさかこんなに遅くなるなんて思わなかったなぁ……」
二月十三日の夜。時刻は十一時半。
シンクの前で一人ため息をつく。
しょうがない。
洗い物をして、ゴミを片付けて、予習をして、宿題をして……。
なんてことをしているうちにいつの間にかこんな時間になってしまった。
「とにかく、兄さんのチョコを作らないと」
と、自分で言って、ちょっと恥ずかしくなる。
「兄さんの……ね」
口に出すのはちょっと恥ずかしいけど……悪い言葉じゃない。
思わず微笑がこぼれる。
「さ、急がないと」
もう一度時計を見る。
普段なら、もう寝ている時間。
私は、朝御飯やお弁当を作らなくちゃならないから、どうしても朝は早くなってしまう。
兄さんのためだから……辛くはないけど、もともと、眠らないとダメな人だし……。
その分のしわ寄せは他のところに来てしまう。
だから、その分、早く寝るしかない。
実を言うと、今も、ちょっと眠い……。
だけど、絶対に手抜きだけはしたくない。
だって、明日はいつもとは違う、特別な日だから……。
「未来は頑張りますよ、兄さん」
兄さんの顔を思い浮かべながら、いつものエプロンをパジャマの上に身に着ける。
さぁ、頑張らなくちゃ。
───────────────────────

202 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/02/14(火) 20:41:21 ID:hJiyPpTM
「兄さん」
「ん?どうした、未来ちゃん?」
「はい、チョコレートです」
「くれるのか?」
「もちろんですよ、だって、兄さんのこと大好きなんですから」
「未来……」
「えへへ……そんなにみつめられると、恥ずかしいです……」
「俺も、未来のこと好きだよ」
「はい……嬉しいです」
「未来……」
「兄さん……」
未来……。
「夢かよ……」
夢でした。
時計を見ると2/14、2:00am。
「寒……」
俺は一度起き上がった体を、もう一度倒し、眠りへと就こうとしたが……
何故か目が冴えて、一向に眠れそうに無い。
「何か飲むか……」
乾燥した空気によってカラカラになった喉を潤すため、俺は上着を羽織って、キッチンへ向かう。
「!?……明かりが……」
キッチンに明かりがついている。
泥棒か……!?
俺は息を潜み、中の様子を伺う。
しかし、物音一つ聞こえない。
ま……未来が電気消し忘れたと考えるのが無難でしょうな。
「驚かせおって……」
俺が胸をなでおろし、キッチンの扉を開ける。
すると、冷蔵庫の前に思わぬものが。

203 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/02/14(火) 20:41:54 ID:hJiyPpTM
「うぉっ!?」
思わず声を上げてしまう。
俺の目の前には、冷蔵庫にもたれて眠る人。つーか、未来。
寒そうに体を丸めて眠る未来。
……微かに聞こえる寝息が可愛い。
「って、何言ってんだか……おい、未来。未来」
未来の肩を掴んでガタガタ揺する。
「むぅ……にいさん……?」
ちょっと不機嫌そうに、目を細く開ける未来。
「風邪引くぞ」
「……すぅ……すぅ……」
また、寝てしまった……。
「しょうがねぇなぁ……」
俺はスヤスヤ眠る未来を、お姫様抱っこで抱きかかえ、キッチンを後にする。
持ち上げた未来の体は冷え切っていて、俺の体温までも奪われるようだった。
「……眠り姫ってどんな話だっけ……」
階段を上りながら、ついどうでもいいことを考えてしまう。
「……さ、お部屋に着きましたよ、お姫様」
当然だが、誰も聞いちゃいない。
……言わなきゃよかったよ。
一人で勝手に恥ずかしがりながら、俺は未来を未来のベッドの上に下ろす。
そして布団と毛布をかけてやろうとしたが……
「んぅ……」
未来が何か可愛らしい声と共に、体を縮ませる。
「寒いのか……」
まぁ、そりゃそうだなぁ……。
「こりゃ世話のかかる……」
未来の髪を優しく撫でる。
……フワッと、良い香りがした。
───────────────────────

204 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/02/14(火) 20:42:30 ID:hJiyPpTM
ピピピピピピピピピ……
電子音が鳴り響く。
「……朝……」
布団の中身がモソモソ動いて、けだるい声を出す。
結局しばらくダルそうに動いていたが、ピタッと止まって、
「……って、えぇぇぇぇぇぇ!?」
「ん……未来……?」
「えっ!?えっ!?」
俺の部屋の様子や、自分の体をキョロキョロ見回す未来。
「に、兄さん!?え、兄さんの部屋っ!?何でっ!?」
「……いろいろとな」
俺も冗談をいってもよかったが、眠いためテンションが低い。
「いろいろって何ですかっ!?……も、もしかしてっ!!」
顔を赤らめる未来。
さすが未来たん、エロエロですなぁ……。
「……別に未来が想像してるようなのじゃないから」
「べ、別に想像なんてっ!!」
さらに顔を赤らめた未来、恥ずかしそうに両手を頬にあてる。
やっぱ、エプロンがそういう雰囲気を醸し出しているのだろうか……。
「ま、少し頭冷やせば、思い出せるだろ」
「思い出すって……?」
しばらく考え込む未来。
どうやら、記憶が蘇ってきたようで……

205 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/02/14(火) 20:43:06 ID:hJiyPpTM
「……そういえば、私昨日、キッチンで……」
「そう。キッチンの床で寝てたから、連れてきた」
「でも……何で兄さんの部屋に?」
「寒そうだったから」
「そうなんですか……」
未来が、少し俯いて何か考える仕草をする。
そして、
「兄さん、ありがとうございます」
ペコリと頭を下げる。
「でもね、実は私、嬉しかったんですよ」
「何で?」
「……まさか、目が覚めてすぐに兄さんに会えるなんて、思いませんでしたから」
「うん」
「兄さん、昨日一生懸命作ったチョコ、冷蔵庫にあるんです……もらって……くれますか……?」
「もちろん。一年間ずっと楽しみにしてたんだぞ?」
「はい、ありがとうございます!!」
「行こうか?」
「はい!!」

ちょっとらしくない未来と、ちょっと落ち着いた俺。
今日はバレンタイン。
……やっぱり、いつもと違うみたいだ。

[END]

206 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/02/14(火) 20:43:55 ID:hJiyPpTM
もっと早く準備をしていたら。
もっと早く走れたら、走っていたら。
そもそもお金を持ってきていたら。
いや、あの時、家まで自転車を取りに帰れば。
いや、お母さんが帰ってくるのを待っていれば……。
「寒ぃ……」
様々な仮定と後悔の波が打ち寄せる間も、北風が私の体温を残酷にも奪っていく。
だけど、
「頑張らなきゃ」
とにかく、ここまできたんだから、歩くしかない。
私は視線を落とし、バッグを見る。
これを絶対にあの人に届けるんだから……
───────────────────────
今年のバレンタインデーはいつもと違う。
……ハズだ。
俺は自宅のリビングで、意味も無くテレビのチャンネルを何回も変えてみる。
ま、時間帯も時間帯なので、夕方の情報番組が、バレンタイン特集なんかを組んでたりする。
なるほど、彼を落とすチョコ。片思いの相手に渡す本命チョコ……か。
「……ま、結局のところ、好きな人からもらえれば、チョコの種類なんて関係ないよね」
まさに天狗である。
しかし……
その『好きな人』に、まだもらえてないんだよなぁ……。
学校でもらえると思ったんだけど、そうでもないし……。
……もしかして、くれないのか……?
それとも、またいつか会ったときに?
「……それはやだなぁ」
だがしかし、それでも要求はしないのが男ってモンですよ。

207 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/02/14(火) 20:44:57 ID:hJiyPpTM
「うーん……」
そう考えると……俺がカレシなのかどうかも疑わしく思えてきた。
確かに、俺は何度も好きだって言ってるし、言われてる。
だけど、いつまでたっても俺は『お兄ちゃん』だしなぁ……。
向こうにとっては遊びの延長みたいなものなのかも。
いや、まぁ、いまさら『お兄ちゃん』から変えられてもピンと来ないんだけど。
「……はぁ」
ため息をつく。
バレンタイン特集が今となっては憎い。
「あー、落ちつかねぇや!!」
テレビを消し、勢いよく立ち上がる。
「……チョコ欲しいな」
情けないことを言うな。と自分でも思った。
俺がソファの周りをぐるぐる回っていると。
ピンポーン。
インターフォンが来客を告げる。
「はーい」
俺が出て行くと……
「お兄ちゃん、こんにちは」
「あ……」
俺の待ち人、羽音ちゃんが彼女の通う中学校の制服を着て立っていた。
「は、羽音ちゃん……!!」
喜びと驚きで、一気に覚醒する脳。
しかし、次の瞬間、
「……やっと……会えたよ……」
そう呟いて、膝を落とす羽音ちゃん。
「は、羽音!?」
慌てて駆け寄る。

208 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/02/14(火) 20:45:59 ID:hJiyPpTM
「あ、あはは……」
俺が羽音ちゃんの肩を抱くと、羽音ちゃんは恥ずかしそうな微笑を見せて、
「すいません……。ちょっと歩いたら、疲れちゃったみたいです……」
「歩いたって?」
「あ、学校終わった後、お兄ちゃんを探して、学校まで行ったんですけど、もう帰っちゃったみたいで……
 それで、そのままここまで……」
「……ってことは、羽音ちゃんの家から、ここまで!?体、大丈夫なの!?」
「あ、はい……お兄ちゃんの顔を見たら、安心して、力が抜けちゃいました……」
「なんで……」
「あ、忘れてました」
そういうと羽音ちゃんは鞄の中をゴソゴソと探り、真っ赤な箱を取り出す。
「……えっと、一応、本命チョコなんですけど。もらって……くれませんか?」
恥ずかしそうな顔で、チョコを差し出す羽音ちゃん。
それが嬉しくて、驚いて、でも、なんだか自分が情けなくて……。
「……ひぁ!?お、お兄ちゃん!?」
彼女を思わず抱きしめていた。
「ゴメン……羽音ちゃん、俺のために頑張ってたのに……俺、ずっと待ってばっかりだった……」
「お兄ちゃん……」
「しかも、最後には羽音ちゃんを疑ってた……本当にゴメン!!」
さらに強く抱きしめる。
「お、お兄ちゃぁん……」
顔は全く見えないが、羽音ちゃんは泣きそうな声で俺を呼ぶ。
「会いたかったよぅ!!歩いてる間、すごく不安だったよぉ……!!」
堰を切ったように泣き出す羽音ちゃん。

209 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/02/14(火) 20:47:07 ID:hJiyPpTM
「うん……」
「途中すごく寒かったし、暗くなったし、道にも迷っちゃって……怖かった……!!」
「ゴメンね……」
「違うの!!でも、お兄ちゃんに会えるから、私、頑張ったんだよ!!」
「羽音……」
「会えて……嬉しいよっ……!!」
俺の胸に抱きつき、涙を流す羽音ちゃん。
こんな羽音ちゃんをみたのは、俺は初めてで……
どうして良いか分からずに、ただ彼女を抱きしめ、髪を撫でていた。
それから、どれくらいそうしていただろうか。
しばらくして、少し落ち着いた様子の羽音ちゃんが、
「ゴメンね……絶対泣かないって決めてたのに……お兄ちゃん、優しいから……」
「ううん。そうやって、何でも言ってくれた方が嬉しいよ」
「……」
よほど取り乱したことが恥ずかしかったのだろうか。
赤面し、俯く羽音ちゃん。
「……羽音ちゃん。いや、羽音」
「はい」
「ありがとう。好きだよ」
「……うん。私も」
静かに目を閉じる羽音。
「おねだり上手め」
……これ以上は、何も言うまい。
今年は人生最高のバレンタインになったみたいだね。

[END]

210 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/02/14(火) 23:08:57 ID:gkKUQD/L
恵さんにチョコ貰いてぇ〜!

211 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/02/18(土) 20:45:39 ID:qjqO1jQV
流石としか言い様がありません!
サラかわいいな〜


212 :海中 ◆xRzLN.WsAA :2006/02/25(土) 19:34:07 ID:sJhG9+Hj
青い青い空の下、蒼い蒼い海がある。
終わりが無いかのように見える蒼色は光に映え、まるで雪原のように煌いていた。
「本当に……乗っちまった……」
俺は手すりにもたれかかり、眼下を見下ろした。穏やかな波を立て、船は進んでいる。
「しおかぜが気持ちいいね」
ぽつりと呟かれ、ふと声のしたほうに顔を向けると、白いワンピースの少女が海を眺めていた。
「気持ちいいけどさ……ずっと景色はこのままなんだぜ?」
「優希としては、それもいいかな。えへへ」
「はぁ……元気でいいねぇ……」
「うんっ!だから、お兄ちゃんも元気になろっ?」
「努力するよ……」
満面の笑みをこぼす妹を尻目に、早くも俺は後悔の淵に突っ立っていた。

そもそもの発端は、医者である父だった。
優れた技術で名高い某病院に勤務していた父の元に、ある壮大な話が持ち上がったのだ。
海上都市『フリーダムシップ』。
その実はメガフロートを土台とした長期滞在型の超大型客船で、全長約1400メートル。
船上にはひとつの都市が丸ごと収まっており、学校・病院・デパート・飛行場・カジノ・
会社・遊園地など、ありとあらゆる施設が整っている。
三年かけて世界を一周する、超が三つくらい付くほどの豪華客船だ。
そして、親父が、そこに、勤務、する、ことに、なって、しまった、のだ。

213 :海中 ◆xRzLN.WsAA :2006/02/25(土) 19:35:12 ID:sJhG9+Hj
「ありえねぇ……」
俺は今、船上のマンションの一室のベランダにいる。背後のまあまあ広い室内では、
浮かれた両親たちがこれからの物語に妄想を膨らませていた。
「お兄ちゃん、元気出してよぅ……酔ったりしないから、大丈夫だよ」
「いや、それは心配してないけどさ」
いきなり船の上で暮らせって言われても、無理がある。そもそも学校だって転校だ。
船の中の日本人学校に。
「ありえねぇ……」
自分の理解できる領域を遥かに超えたスケールに、俺はただただ呆然とするしかなかった。
「えと、それじゃあ散歩にでも行く?」
「散歩?船の中をか?」
「他にどこに行くのよ〜……。もう……」
「そういや、何でもあるんだってな。地図を頼りに行ってみるか」
そうだ、船上に何でもあるなんて楽しいじゃないか。そうだ、きっと楽しいぞ。
何しろ超豪華客船だもんな。珍しいものがたくさんあるぜ、きっと。
……きっと。
「えへへ〜♪よーし、しゅっぱーつ♪」
優希に引きずられながら、俺はのそのそと歩き出した。

214 :海中 ◆xRzLN.WsAA :2006/02/25(土) 19:36:19 ID:sJhG9+Hj
探索に出かけた俺たちだが、俺の杞憂はあっという間に消し飛んでいた。
何しろすべてのスケールが半端じゃないのだ。部屋を出ると長い廊下が左右に続き、
展望室からは街の様子が一望できる。
おそらく中心と思われる広場には木々が生い茂り、まるで地上の公園のようだった。
「すげぇ」
「す、すごいね……」
二人してベンチに腰かける。辺りを見回すと、同じような日本人家族を何組か見かけた。
日本人居住区でもあるのだろうか。
「ねぇ、お兄ちゃん……」
「ん?」
優希は少しだけ唇をかみ締めたあと、ふっと小さく笑い、
「な、なんでもない……」
そう呟き、またガラスのほうへと顔を向けた。

街中は出航直後ということもあってか、物凄い人の数だった。
しかもすれ違う人ほぼ全員が外国人。アジア系も何人か見かけるが、それでも金髪が多い。
だが、それに臆する俺ではない。残念ながら、英語は得意なのだ。
親父が医者であり、さらに有名大学をサラッと出ている秀才のため、当然のことながら
勉強を強要されて、否応無しに学力は良くなっていた。まあ、そういう設定だ。
とにかく、これほどの国際的な都市で英語が話せるのは必須であり、その点では安心できた。

215 :海中 ◆xRzLN.WsAA :2006/02/25(土) 19:37:25 ID:sJhG9+Hj
「わっ!ねぇ、アレ見てよお兄ちゃん!」
優希に腕を引かれ、人の波をかき分けながら進んでいく。頭上を見上げると、切り取られた空から
まばゆいばかりの日差しが降り注いでいた。
やがて俺たちは海面に最も近い港に辿り着いた。木馬の足のように、幾つかの発着場が
伸びている。二人はその先端まで歩き、縁に腰かけた。
水面がゆらゆらと揺れて、互いの顔を鏡のように映す。
「うわぁ〜!綺麗だね……」
「そうだな。海はもっと汚いと思ってたけど、意外と綺麗だな」
「うん……」
俺は動く水面をじっと見据える。優希はぽつりと漏らした。
「あと、三年だね……」
「ああ……」
三年、それは俺たちにとっては非常に重要なものだ。
「でもね。優希、最後にこんな旅行が出来るなんて、幸せだよ?」


216 :海中 ◆xRzLN.WsAA :2006/02/25(土) 19:38:28 ID:sJhG9+Hj
「……最後なんて言うなよ……」
俺の妹、優希はおよそ三年後に死ぬ。
生まれたときから心臓に重い障害を宿していた優希は、生まれたときから死を知っていた。
成長するにつれて次第に身体に異常を覚え、小学生のときに病だと判明した。
原因不明の心臓病。医者の親父が全力で治療に当たったが、効果は得られなかった。
最先端の医療施設で分かったことといえば、冗談のような寿命だけだった。
これが。
これが、彼女の最後の旅になる。
次に日本に帰ってきたとき、彼女はもういない。生きていたとしても、ほんの少しの差でしかない。
「えへへ……そんな暗い顔しちゃダメだよ」
優希は俺の顔を覗きこみ、にっこりと笑った。
俺たちの足元では轟々と巨大な何かが唸り声を上げている。
決して逃れられない『何か』にたいして、俺は震えを感じた。
「……優希」
「……ん?」
青い青い空の下、蒼い蒼い海の上で、俺は立ち上がった。
「ありがとな。元気、出た」
「……!!」
手を差し出す。俺の手のひらは優希の手をしっかりと掴み、その身体を引き寄せた。
「えへへ……ありがとっ」
始まったばかりなんだ。何もかも、まだ。

2007年7月。その旅は始まった。


217 :海中 ◆xRzLN.WsAA :2006/02/25(土) 19:40:58 ID:sJhG9+Hj
絶対に忘れられていると思います、お久しぶりです。
いろいろと書き逃げしてきた前科があるのですが、今回だけは
しっかりと書き終えたいと思っています。

ちなみに「フリーダムシップ」自体はノンフィクションです。

218 :遊(ry ◆isG/JvRidQ :2006/02/26(日) 10:29:49 ID:zdEKP7KA
お久しぶりです。海中様。
ちょい悲しい感じのお話ですか……素敵な話の予感がしますねぇ

219 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/02/27(月) 01:40:14 ID:Q3YE6+1r
期待

220 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/02/27(月) 03:29:31 ID:ywWrEi/x
遊星様>>バレンタインSS読ませていただきますた
やはり姉妹イイッ!
真司君が羨ましいわw
遊星様の次回の登場はいつに?
これからも期待しております

海中様>>スゴい設定ですな!
船の上で普通の生活が……ありえねぇ(主人公風
これまた期待しております

221 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/03/06(月) 18:37:24 ID:7i9Mq4hP
SF的設定良いっすね。
でも、全長1400mで空港を入れるのは苦しいとか余計な突っ込みを入れてみたり。

あと、一回ageた方が良いかも?

222 :age職人 :2006/03/10(金) 03:50:52 ID:1aOBYDh4
age玉ボンバー

223 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/03/10(金) 16:04:02 ID:lX3bjVwb
 光に気づいた。
 無くしてから大切だと気づいた。

 手を伸ばせば何にでも届きそうな、狭い部屋。
 ただでさえ狭いというのに、そこには勉強机が二つ置かれている。
 片方は教科書類が乱雑に広げられていて、もう片方は可愛らしく装飾されたものだ。
 そんな手狭な部屋を改めて眺めていると、不意に部屋の戸が開け放たれた。
「も〜、また寝転がってる」
 そこには、不機嫌そうにこちらを睨んでいる妹、ヒカリがいた。
 今年で中三になるはずなのだが、その低い身長や幼げな顔つきのせいか、実年齢よりも一回り幼く見える。
「……何ジロジロ見てるのよ」
「いや、別に」
 あからさまに怪訝な顔をしながら、俺から視線を外しある一点を見つめた。そこは机の上、教科書が山のように積み重なっている。
 触れれば崩れ落ちそうなそれを、上から丁寧に片付けていく。
「少しは整理したらどうなの?」
「今やろうと思ってたんだよ。余計なことを」
「どうだか……って余計なことって何よ!」
 返しては返される。いつもと同じやりとり。
 そんな他愛もないやりとりが、何故か嬉しかった。
「まったく、私がいなくなったら埋もれちゃうんじゃない? この部屋」
 ヒカリはそう言いつつもテキパキと片付けていく。
 その反対側、彼女の机周りは綺麗に整理整頓されていた。
 大半の荷物はダンボールに詰められていて、後は手で持ち運べるような物しか残されていない。

 そう、もうすぐで彼女はこの部屋から、この家から出て行くのだ。

224 :223 :2006/03/10(金) 16:05:03 ID:lX3bjVwb
sage忘れました。すいませんorz

225 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/03/10(金) 16:49:21 ID:I71D5L4U
>>実年齢よりも一回り幼く見える

ここおかしくね?中学生で一回り幼いと1歳とかになってしまうのではないかと。

226 :遊(ry ◆isG/JvRidQ :2006/03/10(金) 18:21:44 ID:iH1sfFDh
>>223
あぁ、また悲しい系のお話だ……弱いんだよなぁ、こういう話に……・。

>>225
ヤフーの辞書より(1、2略)
3 十二支が一回めぐる年数。一二年。「兄と―年が違う」
4 物事の程度、また、人の度量の大きさなどの一段階。「―小さい服」「人物が―大きい」

4に使えるか否かが微妙なところだねぇ……。
ま、いいんじゃない、何となく意味がわかりゃw

227 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/03/12(日) 00:46:52 ID:GWckR+XV
>>213-217
海中氏期待あげ

228 :海中 ◆xRzLN.WsAA :2006/03/12(日) 12:53:09 ID:iUl8b3KR
三月。
船はオーストラリア東海岸沿いへと進み、順調な航海を続けていた。
一ヶ月も乗船していると、もはや勝手知ったる他人の家で、すっかり船の内部も覚えてしまった。
そして日常を行うべく、俺は船内の学校に通っていた。

まだ真新しい、建造されたばかりの白い廊下を歩く。独りの足音が周囲に木霊した。
片手に抱えているのは教科書やノートの類で、使い古したせいか微妙に変色している。
 「……はあ」
予想外に退屈だ。
平日は登校。休日は街へ出かける。たまの上陸は観光。
その繰り返しは単調で、飽きの早い俺にとっては苦痛でしかない。
 「お兄ちゃん♪」
曲がり角からひょっこりと顔を覗かせた優希に対し、俺は足を止める。
 「ああ、はい……」
シャーペンを一本取り出し、ポイと投げてやる。
それを見た優希はむっと顔を赤く染めて、ぷんぷんに怒りながらシャーペンを返してきた。
 「ち、ちがうよ!今日はふでばこを忘れたんじゃないの!」
 「え?違うのか?」
 「ちがうもん!」
 「はは……優希も冗談を言うようになったのか。それとも、とうとう幻聴が……」
 「ちーがーうーのっ!!」
 「あうっ!?」
思い切り爪先を踏まれ、思わずよろめいてしまう。そんな様子を無視して優希は話し出す。

229 :海中 ◆xRzLN.WsAA :2006/03/12(日) 12:54:05 ID:iUl8b3KR
 「お兄ちゃん、最近元気ないよね……。どうしたの?」
心配そうな表情で顔を覗きこむ優希。微妙に上目遣いだが、仮にも兄なのでなんともないぜ。
 「い、いや……爪先が痛いんですけど……」
 「それはわたしのせいだけど……そうじゃなくてぇ……」
優希の言いたいことは分かる。ここ最近、ろくにリラックスしていない。
もじもじと指先をいじっていた優希だが、ついに決心したのか、ポケットから何かを取り出した。
 「と、いうわけで。お兄ちゃんの息抜き大作戦を遂行しに来ましたっ!」
 「なにその作戦名。ふざけてるの?」
 「じゃーん!なんとここに、温水プールのチケットがありますっ!」
 「ちょ、おま―――」
 「泳ぎにいけっ♪お兄ちゃん」
 「日本語おかしいって」

……一通りの回想を終えて、俺は頭上を仰ぎ見た。
青空にペイントされた天井が広がり、太陽を模された照明がプールサイドを照り付けていた。
視線を上から下に戻してみると、金髪美女が各々楽しそうに泳いでいた。
 「これはこれで……」
 「……お兄ちゃん?」
背後からの殺気に怯え、俺は慌てて振り向いた。
 「……し、白いスクール水着?」
優希が着ているのはその名前の通りの代物で、幼い面影を残す優希にはよく似合っていた。
 「それ、濡れると透けるやつじゃないのか?」
 「す、透けないもん!ちゃんと試したんだからねっ!」
 「試した?」
 「あーうーあーっ!」
墓穴をほった優希はメダパニしながら俺をプールに突き落とした。

230 :海中 ◆xRzLN.WsAA :2006/03/12(日) 12:55:02 ID:iUl8b3KR
 「なっ、生温い!」
 「温水プールだもん……お兄ちゃんだいじょうぶ?」
そろそろ優希に憐れな目で見られるようになってきたので、冗談は止めることにする。
 「さてと。足は着く?」
そろりそろりと水の中を歩く優希だが、どうも無理っぽそうだ。
 「だ、だめぇ……真ん中のほうは足が着かないかも……」
綺麗な長髪の黒髪が波にゆれ、水面をゆらゆらと漂っている。波?
 「ここ、波の出るプールなのか」
彼方に目を凝らしてみると、小さな仕切りで区切られた穴があり、そこから出ているようだ。
 「うん。自由にちょうせフーッ、つ出来るみたいだよ」
 「なにやってんのさ」
見ると、優希は小さな口で必死に浮き輪を膨らませている。
 「う、……………………うきわ」
顔を真っ赤にしてぼそぼそと呟く。そんなに恥かしいのだろうか。
それはともかく、浮き輪なら中央の深いところでも問題はないだろう。
 「よし。それ付けて行ってみる?」
 「う、うん」

しばらくして浮き輪を装着した優希と俺は、プールの深い場所へと泳いでいた。
元々外国人用に作られた船なので、俺たちには何もかもが少し大きい。
ちらりと優希に視線を送ると、浮き輪で楽しそうに自分の両足をぷらぷらさせていた。
ニヤリ。

231 :海中 ◆xRzLN.WsAA :2006/03/12(日) 12:56:04 ID:iUl8b3KR
 「お、お兄ちゃん!だめっ!」
 「ん?どうしてダメなんだ?」
 「だ、だってぇ……そこは……んっ!」
 「そこ?ここがどうかしたのか?」
 「や、やぁ……入っちゃうよぉ……!」
 「大丈夫だろ」
 「あ、あうっ……!お兄ちゃん、許してぇ……!んんっ……!」
 「嫌だね。ほら、支えといてやるから。出すぞ」
 「あっ!だめぇ!だ、出しちゃだめだよぉ!」
 「だから、大丈夫だって」
 「ふぁぁ……!な、中に出てる……!」
 「ほら、お前も出せよ……!」
 「らめぇっ!やぁ……出るぅ……出ちゃうよぉぉぉぉっ!!」






 「な。水の中で空気出すと面白いだろ?」
 「やだぁ!浮き輪しぼんじゃったよ!ここ、深いところなのに……」
 「だから支えといてやるってば」
 「ばかっ!お兄ちゃんのばかぁ!!」
ストレス発散はできました。

232 :海中 ◆xRzLN.WsAA :2006/03/12(日) 12:56:59 ID:iUl8b3KR
夕日が沈むテラスで、俺と優希は手すりにもたれ、夕焼けを眺めていた。
 「お兄ちゃんのきちく……」
 「そういう言葉、どこで覚えてくるんだよ、お前は」
 「むー……」
 「ああもう、悪かったよ。あれでも食べて元気出せよ」

 「わぁ……これ……」
 「美味そうだろ?」
 「うん……お兄ちゃんの、すごく大きい……はむ」
 「……っ!お、おい、あんまり舌動かすなよ」
 「えーっ?どーしてぇ?……んむっ」
 「こいつ……!」
 「んふふ……さっきのお返しだよぉ……ぴちゅ……」
 「わっ……ば、バカ……!」
 「んむ……ちゅ……はむ……」
 「う……!!」
 「えへへ……手で強く握ってあげる……」
 「あ、やめろって……!あ……出る!」
 「きゃっ……!?……あはは、いっぱい出ちゃったね?お兄ちゃん」






 「……ソフトクリーム」
 「せっかく買ってやったのに……もう絶対に買ってやらないからな」
 「さ、さっきのお返しだもん……でも、ごめんなさい……」
船は汽笛を鳴らし、のんびりと航海を続けていく。
旅はまだまだ続くようだ。

233 :海中 ◆xRzLN.WsAA :2006/03/12(日) 12:57:59 ID:iUl8b3KR
正直  許して・・・

234 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/03/12(日) 14:13:10 ID:5LyZx7VN
許します
不覚にも笑ってしまった(´・ω・`)

235 :遊(ry ◆isG/JvRidQ :2006/03/12(日) 15:25:47 ID:OeprWq89
>>228-232
あぁ、もう、ちくしょう、この人上手いよ!
ホワイトデーにむけて頑張ろうと思ったが、一気にやる気失せたわw

236 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/03/12(日) 15:55:58 ID:h+/OF/61
なんかファミ通に昔のってた女神のまぎらわシリーズ思い出した。

237 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/03/14(火) 01:12:05 ID:JoWeREMW
全米が抜いた

>>遊(ry
やる気無くすな!頑張れ

238 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/14(火) 22:58:00 ID:7FvloQ+5
ピンポーン
「はい、はーい!!」
雑誌を放り出して、玄関に走っていく。
「どなたですか?」
ドア越しに尋ねる。
ホントは、分かるんだけどね。
「州田敬介。梨那か?」
照れくさそうに、自分の名前を告げる。
「あ、お兄ちゃん、どうしたの?」
ドアを開けながらまた尋ねる。
この質問の答えだって、私にはもう分かってる。
でも、私が先に言ったら、きみは怒って、「そうだよ」とは言わないから。
「ホワイトデーだからな」
ドアの向こうから現れたキミは、恥ずかしさを隠しながら、小さな箱を見せる。
「わぁー、ありがとう!!」
「気にするな。借りは返す」
これも照れ隠し。
キミは知らないかもしれないけど、私にはそれぐらいお見通しなんだから。
「中は何?」
「ケーキ。普通じゃつまらないだろ?」
これもウソ。
私の好きなケーキ屋さん、ちゃんと覚えててくれてる。

239 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/14(火) 22:58:33 ID:7FvloQ+5
「ありがとう、お兄ちゃん」
私も、キミに最高の笑顔をあげる。
「じゃ、俺は帰るわ」
やっぱり。
キミはクールぶってるけど、頬の赤さは隠せないよ。
「お兄ちゃん、時間あるかな……?」
「ん。なくはないけど……」
「じゃあ、これ、一緒に食べようよ」
「いや、でも……」
「いいじゃない。お兄ちゃんだって、こんな美味しそうなケーキ見てたら、食べたくなるでしょ?」
「それじゃ、梨那の分がなくなるだろ?」
「いいの。ケーキが少なくなっても、お兄ちゃんと一緒にいられるじゃない」
「……しょうがねぇな」
そう言って家の中に入ってきてくれる。
ホントはね、キミの気持ちも知ってるんだ、全部。
だけど……その気持ちはキミの口から聞きたいから。
今日も私は、バカな女を演じるのです。
──────────────────────

「にゃー!!恥ずかしぃ!!」
目の前の紙をクシャクシャに丸める。
「お兄ちゃんにケーキもらって嬉しかったから、
 何か詩が書けると思ったけど……やっぱり、無理っぽいなぁ……
 もうちょっと頭冷えてから、練り直そーっと」

240 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/14(火) 22:59:10 ID:7FvloQ+5
「ねぇ……やっぱり良くないよ、こういうの……」
「いいじゃない、千奈ちゃん。最終的には、唯奈たちのものになるんだから」
とある大型スーパーの一角。
休憩スペースのベンチに座り、コソコソとどこかを見ている二人の少女。
「でもぉ……」
「どうしたの?」
「私たち、ちょっと怪しい人だと思うよ……」
「そう?気にしすぎだよ……あ、お兄ちゃん、何か手に取って見てる」
「……」
「あ、置いた」
「やっぱり、よくないよぉ……」
──────────────────────
……ホワイトデー。
何故かチョコを送る日になってしまったバレンタインデーの
お返しをする日という、もうワケの分からん記念日だ。
日本人は、そういう亜流文化には厳しいらしく、
日本で作られた行事の割りに、結構盛り上がりには欠けるようだ。
それは、このホワイトデー特設コーナーの規模の小ささからも伺える気がする。
「……んー、今一つだな」
とある大型スーパーの一角、ホワイトデーコーナーの前で、
また一つ、商品に目をつけては、却下する。
「あんまり良いものがないなぁ……」
どうもホワイトデー用の商品って言うのは、義理感の強いものが多い気がするな……。
「まぁ、恵さんの分は買わなくて良いのは助かるけど……」
俺の義母、石川恵さんにも、チョコを頂いたことは頂いた。
けど、『アタシにお金と手間かけるぐらいなら、千奈と唯奈にその分を回してほしい』
とのことなので……全力で妹の分を選ばなくてはならなくなったワケだ。

241 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/14(火) 22:59:45 ID:7FvloQ+5
「……そもそも、千奈にはお菓子あげてもしょうがないよなぁ……」
……とすると、無難なトコだと、ハンカチとかか……?
「でも、この辺にあるようなのじゃ、かなり義理くさいよな……」
それに、女物ってのは、よく分からないしな。
「……ま、唯奈はお菓子でもいいとしても……お菓子の選択が難しいなぁ……」
うーん……
やめやめ、ちょっと休憩だ。何か飲も……。
──────────────────────
またまた、双子。
「わわ!!お兄さん、こっち来るよ!!」
「落ち着いて。慌てると怪しまれるよ。ゆっくり逃げよ」
「う、うん、そうだね」
「行こう」
同じタイミングで振り返る二人。
そこに、
「あ、すいません!」
背後から真司の声が……
同時に体を震わせる千奈と唯奈。
「ど、どうしよう、千奈ちゃん……」
「しょうがないよ、謝ろう?」
またも、振り返る。
すると真司は、
「あ、忘れ物ですよ」
そう言って、唯奈のバッグを差し出す。

242 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/14(火) 23:00:29 ID:7FvloQ+5
「え……あ……ありがとうございます」
バレてない!
唯奈はそう確信し、普段より声を高くし、答えた。
「いえいえ、じゃ失礼します」
優しく微笑んで、去っていく真司。
「変装のお陰だね……?」
眼鏡をクイッとあげ、こっそりメガネ千奈に耳打ちするメガネ唯奈。
……これ、素敵です。
「……何だろう、私はすごい罪悪感を感じるんだけど……」
「うん……実は私も……」
「どうしよう?」
「どうしようね?」
──────────────────────
「……んー」
ペットボトルを手に、まだ悩んでいる真司。
「まいったな……時間もなくなってきたぞ……」
浮かない顔でお茶を一口飲む。
そして大きく息を吐く。
「ま……好き嫌いは考えず、二人に似合うか似合わないかで決めることにしよう」
そう決め、立ち上がる真司。
すると、
「お兄ちゃーん!」
唯奈と、少し遅れて千奈がやってくる。

243 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/14(火) 23:01:05 ID:7FvloQ+5
「あ……唯奈……千奈も……何で?」
「見てたんですよ、お兄さんのこと」
「え……?えっと……これは……その……」
「誤魔化さなくても分かってるよ。ホワイトデーのプレゼントでしょ?」
「あ、あぁ……でも、まだ……」
「それも分かってますよ、お兄さん」
「そんな情けない顔しないでよ、私たちが選んであげる」
「え……?」
「唯奈が千奈ちゃんのを」
「私が唯奈ちゃんのを選びますよ」
「唯奈たちは、生まれたときからずぅっと一緒なんだから」
「お互いの好みは、よく分かってますよ」
「だから、お兄ちゃんに千奈ちゃんのこと教えてあげるよ」
「お兄さんに唯奈ちゃんのこと教えますよ」
……息ピッタリのコンビネーションに圧倒する真司。
そして、
「うん、じゃ頼もうかな」
「うん!」「はい!」
大きく返事をする二人。
真司は微笑んで、彼女たちの手を優しく握り、歩き出した。

[一応、END]

244 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/14(火) 23:01:44 ID:7FvloQ+5
「んー……」
本を見ながら唸る。
すると、
「おにぃちゃん!!何してるのー?」
背後から、俺の妹、沙耶が声をかける。
「ん?あー、本を読んでるんだ」
「どんな本ー?」
「お菓子の本。ほら、ホワイトデーだから沙耶に何か作ってあげようと思ったんだけどさ」
「サヤに!?見せて見せて!!」
「あぁ」
ソファを乗り出してくる沙耶にも見えるように、本を移動させる。
「はわー……」
チーズケーキ、ガトーショコラ、苺大福……
いろんなお菓子をパラパラと見せていくうちに、沙耶の瞳に期待の色が溢れてくる。
「いいなぁ……食べたいなぁ……」
ボソッと呟いたこの言葉に悪気はないと信じたい……。
「でもな、沙耶。俺は、そんなに難しいのは作れないからなぁ……」
「そうなのー?」
「そうだけど……」
さすがに、ヘコむだろうな、沙耶……。
などと考えていたが、
「それならね、おにぃちゃん、サヤ、これがいいよー!」
沙耶が上半身を完全に乗り出し、本の一ページを指差す。
「え……?これでいいのか?」
「うん!」
大きく頷く沙耶。
「んー、じゃあ、今日のおやつはこれにするか……」
「うん!!」
「それなら、材料買いに行かなきゃ」
「うん、沙耶も行くー!!」
──────────────────────

245 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/14(火) 23:02:29 ID:7FvloQ+5
「ねぇ、ねぇ!!もういいんじゃない!?」
フライパンの前。
椅子の上に膝立ちし、眺める沙耶が、うずうずしながら尋ねる。
「いや、まだだな」
俺はそんな沙耶の肩を、沙耶が落ちないようにつかみ、フライパンの様子を見守った。
「まだかな、まだかなぁ?」
「そろそろかな。どいて、危ないから」
右手でフライパンの柄を、左手で皿を持ちスタンバイ。
「うん、早く、早くっ!!」
「よっと」
フライパンを皿の上にひっくり返す。
すると、湯気と共に、大きくて厚いホットケーキが。
うむ、自信作だ。
「わぁー!!おいしそー!!」
「だな」
これに、さっき買ったバターとシロップとあとはホイップクリームを乗せて完成。
ココアを添えて、沙耶の待つテーブルへ運ぶ。
「さ、召し上がれ」
「うん、いただきまーっす!!」
一段目のホットケーキを、勢いよくフォークで突き刺し、豪快に食す沙耶。

246 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/14(火) 23:03:01 ID:7FvloQ+5
「こらこら、ナイフ使えよ。服汚れるぞ」
「へへー、美味しいよ、おにぃちゃん!」
「……ま、いいか。まだ焼こうか?」
「サヤは良いよー。それより、おにぃちゃん、あーんして」
一切れをフォークに刺して、掲げる沙耶。
「え……?」
「おいしーよ。食べないの?」
「いや、食べるよ」
俺は沙耶から、フォークごと受け取り、ホットケーキを口に運ぶ。
「うん、うまいな」
「ねー?おにぃちゃんの味だよー」
「俺の味……?」
「うん。おにぃちゃん、よく作ってくれたよねー?」
「あぁ……」
作るのラクだしねぇ……。
「サヤは、これがおにぃちゃんの味なんだって思うんだー」
「そっか」
「うん、ありがとう、おにぃちゃん!!」
笑顔でホットケーキを頬張る沙耶。
そうだ、もう一枚焼いてあげなきゃな。

[おしまい]

247 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/14(火) 23:04:43 ID:7FvloQ+5
三月十四日。
昼下がりを走る電車はスピードを落とし、とある大きな駅に滑り込む。
俺は窓から、駅名を確認すると、バッグを掴んで電車から降りる。
「……意外と早いもんだな」
時計を見ながら呟いた。
ほとんど来た事のない駅を、案内板に従い改札を出た。
……そこまではよかったが……
「……サラの家、知らないぞ」
知らないんですよ。
サラがいつもやるみたいに、驚かせようと思って、何の連絡もしないで、ここまできたのはいいけど……。
「仕方ねぇ、電話して迎えに来てもらうか」
そう思い、携帯電話をポケットから取り出し、電話をかける。
プルルルルルル……
呼び出し音が数回鳴った後、
「え……!?マサト!?」
サラの声が聞こえた。
しかし、それはケータイからではなく……
「こんにちは、マサト」
サラが、俺の目の前に現れる。
「え……?サラ……?」
「ええ、久しぶりね。こんなところでどうしたの?」
「あ、ほら、ホワイトデーに会うって約束だろ?」
「来てくれたってこと?」
「学校早く終わったからね」
「そうなんだ」
サラがちょっとだけ俯く。

248 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/14(火) 23:05:38 ID:7FvloQ+5
多分、照れ隠しなんだろうと思うと、嬉しくなった。
「立ち話もなんだからさ、喫茶店でも行こうよ。何か良いところ知ってる?」
「うん、一度行ってみたいとこがあったんだ。そこでいい?」
「任せるよ」
「そう、じゃあ、行きましょうか」
サラに従い、全く知らない道を歩く。
ときどき振り返り、何か言うわけでもなく俺の顔を眺めるサラが何か可愛かった。
──────────────────────
「マサトは何にする?」
「……」
今まで我慢していたが……もう限界みたいだ。
「ここ……喫茶店じゃなくて茶店じゃない!?」
いかにもな和風建築物の中で突っ込みを入れる。
「いいじゃない、何でも」
サラは何食わぬ顔でお茶を飲んだ。
「ま、まぁ……そうだけど」
「でも、驚いたわ。マサトがこっちに来るなんて」
「俺も。まさかあんな偶然があるなんて」
「……運命の赤い糸……かな……?」
「え?何だって?」
「い、いえ、聞こえなかったらいいの!!」
顔を赤らめ、手をパタパタ振るサラ。
「そう……ま、そういうの慣れてるけど……」
俺もお茶を掴み、飲む。
「ところで、マサト、聞きたいことがあるの!!」
「あぁ、何?」
「私に、何をくれるの?」
「は……?」

249 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/14(火) 23:07:10 ID:7FvloQ+5
「日本だと、バレンタインデーのプレゼントはチョコレートでしょ?じゃあ、ホワイトデーは何なの?」
「あ、知らなかったのか?」
「いろいろ聞いてみたんだけど、クッキーだったり、マシュマロだったり、キャンディーだったり……
 ハンカチとか下着とか、諸説あるみたいだったの」
「ほぅ……」
「だから、マサトは何を持ってくるのかなって」
気体に満ちた瞳。
「……え、何をって……何も持ってないけど……?」
しょうがないよ、学校帰って急いできたんだからさ……。
「え……えー!?何で何で!?楽しみにしてたのに!!」
「いや、俺も何が良いかわかんなかったし……」
「そんな……」
肩をガックリ落とすサラ。
……そんな楽しみだったのか……。
「でも……そのかわり、ここは俺がご馳走するから、それで許してくれないか?」
「……ま、いいわ。だけど……いっぱい食べるからね?」
「お手柔らかにお願いしますよ……」
「少しは拒否しなさい、冗談よ」
「何だ、冗談か……」
「せっかく来てもらったのに、そんなことしないわよ」
「そんなに嬉しかったか?」
「そ、それはそうよ……ただでさえ、一ヶ月だったんだから」
「そっか、やっぱり来てよかったよ」
「ええ、ありがとう、マサト」

少々幼い笑顔を見せるサラ。
ま、これを見れただけでも、ここに来る価値はあったんじゃないかと思う。
あとで、忘れずにサラの家の場所を聞かないとな。

[終]

250 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/14(火) 23:08:01 ID:7FvloQ+5
三月十四日、いわずと知れたホワイトデーですよ。
「ただいまー」
もはや暗くなった時間、俺は大きな紙袋を下げて、玄関のドアを開ける。
「あ、兄さん。遅かったですね」
そんな俺を出迎えてくれる妹の未来。
「おぅ、ちょっといろいろとねー」
靴を脱ぎながら答える。
「何ですか?その荷物?」
「これ?これは、ホワイトデーのプレゼント」
「兄さん、チョコ、一杯もらったんですねぇ……」
「え?あぁ、これ、全部未来ちゃんのだよ?」
「そんなに……ですか?」
「つっても、直接未来ちゃんにあげるワケじゃないけどね」
「……?」
「ま、あとの楽しみってことで」
「そうですか……ま、楽しみにしておきます」
「じゃ、早いところご飯にしよう。用意は?」
「はい、用意できてますよ」
と言うわけで、未来と二人、美味しそうな料理の並ぶ食卓につくのでした
──────────────────────

251 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/14(火) 23:08:38 ID:7FvloQ+5
「ごちそうさまでした」
「ごちそうさまでした」
空になった食器の前で、手を合わせる二人。
「さてと……」
食器を片付けるため、立ち上がる未来。
「あ、俺も手伝うよ」
同様に立ちあがる俺。
「え?いいですよ、別に」
「いいからいいから。二人でやって、早く終わらせちゃおうよ」
「そうですか。じゃ、お言葉に甘えますね?」
「おー。任せとけ」
腕まくりをして、洗い物の山に挑む俺。
黙々と、未来が洗った食器を濯ぎ、拭いていく。
「やっぱり、二人でやると早いですね」
数分後、洗い終わった皿の前で、手を拭きながら微笑む未来。
「だろ?さ、お楽しみといこうかな」
「ついに……」
「そうそう。はい、これ」
俺は先ほどの紙袋から、箱を一つ取り出し未来に手渡す。
「何ですか?」
「入浴剤。なかなかお高いですよ、それ」
「っていうか、何で……?」
「いつも頑張ってる未来ちゃんに、たまには、一番風呂を楽しんでもらおうと思ってさ」
「へぇ……」
「俺のことは気にしなくても良いから、のんびり入ってよ」
「兄さん……」
「ん?何か問題でも?」

252 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/14(火) 23:09:16 ID:7FvloQ+5
「いえ……ホワイトデーには別に何もいらない、なんて思ってたんですけど……
 いざもらってみると、何だか嬉しくて……えへへ……」
恥ずかしそうに微笑む未来。
あぁ、もう!!ちくしょう!!可愛いぜ!!
「じゃ、兄さん。遠慮なく、兄さんからのプレゼント頂きますね?」
「おぅ、ごゆっくり」
よほど嬉しかったのか、部屋を出て行くとき、小さく手を振る未来。
それを満足げに見送る俺。
思ったより順調だなぁ、おい。
──────────────────────
「ふぅ……」
お風呂の中で大きく深呼吸をする。
「兄さんが言うだけのことはあるなぁ……」
肩までお湯につかりながら、良い気分で呟いた。
凄くいい香りだし、お肌もツルツルしてきた気がする。
そもそもこんなに長風呂をしたのは久しぶりだ。
何だかリラックスしすぎて、眠くなってきてしまった。
「あとで、兄さんにお礼言わなくちゃ」
「いや、礼には及ばないぞ」
後方から、兄さんの声。
「あ、兄さん……いたんですか……」
「ああ、ちょっと様子を見に来た」
「いいですよ、これ……すごく気持ち良いです……」
「そっか。お気に召された様子で、光栄ですよ、姫」
「ふふっ……」
「何だよ?」
「恥ずかしいんですけど、さっき私、お姫様になったみたいだな。って思ってたんですよ。
 それが、可笑しくて」
「んじゃまぁ、せっかくだし、もうしばらくやりますか。お姫様ごっこ」

253 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/14(火) 23:09:51 ID:7FvloQ+5
「……じゃ、お願いしちゃおうかな」
「了解。お姫様」
「兄さんは何役ですか?」
「王子……って柄じゃないから、家来かな」
「そうですか、お願いしますね」
「お任せください。姫」
「ふふっ。頼りにしてますよ」
……お風呂は人を変えるようです(立花未来、後日談)
──────────────────────
ベッドに横になる未来。
彼女の透き通るような真っ白な肌に、野獣のごとき俺の手が、獲物を求めるかのように這い回る。
「あっ……兄さん……そこは……」
俺が未来の敏感な部分に触れるたびに、未来は可愛らしい悲鳴をあげた。
その声が、俺を一層やる気にさせるのだ。
「気持ち良い?」
俺はクスリと笑って、さらに彼女を快楽へと誘うべく、さらに力を込める。
「あっ……はい……いいです……んっ……」
未来は締りのない顔で、ただ体に溢れる快楽に身をゆだねている。
そんな彼女に、俺は……

254 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/14(火) 23:10:43 ID:7FvloQ+5
「マッサージぐらいで紛らわしい声出すなよ。親父が聞いたら卒倒するぞ」
正解:マッサージ。
「あ、すみません……でも、気持ちよくて……」
「それだけ疲れてるってことだね」
「やっぱりそうなんですか……」
未来の背筋をふにふに。
「まぁねぇ、あれだけ毎日頑張ってりゃ、当然じゃない?」
「あはは、何だかんだ言っても結構大変ですからね」
未来の腰をもみもみ。
「ま、好きでやってるのはわかるけど、たまには休まなきゃってことだね」
「そうですね……」
未来のお尻をじー。
「ま、そんな暗くなるなよ」
「そうですね……」
未来のふとももをぷにぷに。
「未来が無理しないように。未来が頑張り過ぎないように。そのために俺がいるんだろ」
「兄さん……」
「俺は未来の兄貴なんだからな。たまには甘えてもらわないと」
「ふふっ、覚えておきます」
微笑む未来。

255 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/14(火) 23:11:19 ID:7FvloQ+5
そんな未来の足をなでなで。
「ねぇ、兄さん?」
「どうした?」
「今日はありがとうございます」
『いや、こちらこそ、いい思いをさせてもらったよ!!』
とは、さすがに言う気にならなかった。
「なに。こんなんでよければ、いつでもするさ」
当然下心有りで。
「はい、お願いしますね……あ、そうだ。兄さんにもやってあげますよ、マッサージ」
「おいおい、それじゃ、意味ないだろ?」
「いいじゃないですか。ほら、寝てください」
「んじゃ、お願いしようかね」
「はい」

ロマンティック、とは程遠いが、ま、こういうホワイトデーでも良いんじゃないのかな。
なんて、未来にマッサージされながら思う。
というより、未来と楽しめりゃ、何だっていいのかもしれないな。

[おわり]

256 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/14(火) 23:12:34 ID:7FvloQ+5
とにかく時間がなかったです……でも、頑張ることは頑張りました……結果は伴ってないけど……

257 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/03/14(火) 23:39:50 ID:+WPFg8Bn
いやGJだ。
芸風広いなー。

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0ch BBS 2004-10-30