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[第六弾]妹に言われたいセリフ
- 348 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/06/06(火) 22:57:32 ID:kXXhgeYY
- ガッ。
望の上段蹴りを、左手で受け止める。
「痛いなぁ……」
痛みが骨に響く……。
「え……!?」
そんなに俺が止めたのが意外だったのだろうか。
足を上げた姿勢のまま固まる望。
「望……パンツ見えてるぞ」
「え……!?うわぁ!!」
足を下ろし、スカートを慌てて押さえる望。
真っ赤な顔で俯く望。
……コイツでもこんな顔できるんだな。と、ちょっと思った。
「どーせ、スパッツかブルマか穿いてるんだろ?」
「あ……そうだった……」
「の割には、鮮やかだったけどな」
「え゙っ!?」
驚いて、思わずスカートを見下ろす望。
「嘘だ」
そんな望を尻目に、とっととその場から逃げる。
「ちょっと……!!お兄ちゃんっ!!」
正気に戻った望が俺の前に駆けてくる。
「何だよ?」
「まだ話の途中!!」
「……あぁ、望の下着の話だっけ?」
冗談のつもりだったのだが……望の顔が沸騰した。
- 349 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/06/06(火) 22:58:04 ID:kXXhgeYY
- 「ち、違うぅっ!!」
「じゃ、何か続いてる話しがあったか?」
「だから、お兄ちゃんが男らしくないって話!!」
「あれは終わっただろ」
「終わってなーい!!今から、ボクがお兄ちゃんを男にするんだから!!」
「うーん、男男言うけど、逆にさ、お前の言う男らしさって何?」
「うーんとねー、強くって、逞しくって、優しくって……」
指を折々、色んな候補をあげていく望。
まだ続きそうなので、
「俺には一生かけても無理だな」
「だから、少しでも努力しなくちゃ!!」
「嫌だね。俺は俺の中での男を目指すさ」
「じゃあ、お兄ちゃんの言う男って?」
「そうだな。常に賢く、正しく、優しいってとこか」
「優しいことしか、合ってないね」
「理想なんてそんなもんだ。むしろ一つ合うことに驚きだよ、俺は」
「じゃあさ……」
俺の隣に並ぶ望。
そして、俺の腕を抱きしめ、
「ボクに、もっと優しくしてくれる?」
「……それで帰らせてくれるなら」
「わーい!!じゃ、たこ焼き食べに行こうよー!!」
「いや、人の話聞いてたか……?」
「ねっ!!お兄ちゃん!!」
「何だよ?」
「優しくねっ?」
「分かってるから……」
妙に笑顔の望を、右腕に感じつつ、
まっすぐ家には帰れそうに無い予感をひしひしと感じる。
そんな初夏の帰り道でした……。
───────────────────────
- 350 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/06/06(火) 23:01:32 ID:kXXhgeYY
- 格闘妹、望。
また新妹の登場で、何だか俺が単発キャラ書きになりつつある……。
でも、なんとなく書きたくなったんです。
なにはともあれ……ボクっ娘……いいじゃないか……。
- 351 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/06/08(木) 03:16:36 ID:v9iUKcc5
- 遊星さんは遊星さんが書きたいものを書く。
俺は遊星さんが書いたのを読んで楽しい。
無問題ですよ(´・ω・`)
乙です!
- 352 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/06/10(土) 23:51:38 ID:okBZ1tMi
- 夢ノ又夢先生の続きに期待
- 353 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/06/13(火) 17:38:38 ID:VZOF2BvP
- age
- 354 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/06/13(火) 22:23:54 ID:R6Twgsom
- 「俺は巴を甘く見ていたのかもしれない」
暗幕で囲まれた体育館の中、暗闇と喧騒に揉まれて気分の滅入る俺。ひっきりなしに聞こえてくる明るい声に何か疎外感を感じてしまう。
照明の落とされた館内をぐるりと見渡せば人がいない場所は無い、立ち見席が設けられる程の盛況ぶり。
客層の七割が女子なのは多分、巴の業の深さ故なのだろう。
「なんとか座席は確保できたが・・・場所が悪いな」
俺が体育館に辿り着いたその時には既に開演を待つ列が出来ていて席を取るだけで精一杯、改めて巴の威光を思い知らされる事になった。
舞台からは遠い一番後ろの席に陣取り腕組みして始まりを待つ、果たして巴は俺がここにいるのに気付くだろうか。
などと言いつつも実はその辺に関してはあまり心配はしていない。子供の頃から今まで俺が巴に勝てなかった遊びが一つだけある。
「かくれんぼだけは得意だったからな、巴は」
見つけてくれなくてもいい時でさえ、ちゃっかりと俺を見分ける巴だ、ここでも問題は無いだろう。
ほどなくして開演のブザーが館内に鳴り響く、湖面に石を投げ入れた様に喧騒は収まり辺りを静寂が包む。
舞台をライトが照らし出し、歯車は音を立てて回り始める。
みすぼらしい服のシンデレラとそんな彼女を蔑む意地悪姉さんや継母。
演目がシンデレラなだけに取り立てて言う事の無いオーソドックスな仕様のお話。
・・・いや、シンデレラを苛める様が妙に真に迫る物があるんだが・・・気のせいだろうか?
そういえば、主役であるシンデレラを誰がやるのかで大いにもめたと巴が言っていたな。
「・・・私怨混じってるんじゃないのか、あれは・・・」
ある意味で結果的にかなり面白い舞台、迫真の名演技(?)が観客を引き込む。
勿論、憎しみ満載ではなく主役をやるんだからこれ位は我慢しろとばかりのシンデレラへの仕打ちが続く。
こういうのは学生演劇ならではの面白さかもしれない、俺も知らず知らずのうちに身を乗り出していた。
しかし、この舞台のメインイベントはこの先にある、誰もが待つその瞬間は沢山の期待の元に訪れる。
- 355 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/06/13(火) 22:24:53 ID:R6Twgsom
- 一端、舞台が暗転して眩いスポットライトの中に浮かび上がるスラリと立った細身のシルエット。
まるでおとぎの世界からそのまま飛び出して来た様な憂いを湛えたその姿、一瞬、客席の呼吸が止まる。
宙を彷徨う視線が俺と重なる時、全てがスローモーションになる。
教室の窓から、食堂の片隅から、渡り廊下の向こうから見えるいつもの視線。
褒められるのを待ち望む子供みたいなずっと変わらない甘えたがりの輝く瞳。
そんな巴の瞳を俺もただ黙って見詰め返す、言葉は何もいらない、ただそれだけで何かを分かり合えた気がした。
瞳を閉じて一呼吸入れてから巴は語り始める、水辺を優雅に舞う白鳥の如き所作で。
会場に篭る熱い視線と溜め息の中で巴は確かに誰よりも何よりも輝いていた。
───────────────────────────
夕暮れ時を迎えた校舎で一人佇む、文化祭の騒ぎも一段落して今は閑散とした静けさが漂う、外の屋台も片付けを始めている。
祭りの後特有の寂しさ、思えば今年は騒がしいうちに終わっていた様な気がする。
「手間が掛かった割には終わった時はあっという間に感じるものだな・・・」
ポツリと呟き下駄箱にもたれ掛かって待ち惚けのボク、多分、もう少しすればここに待ち人が訪れる。
・・・ほら、やっぱり来た。
くたびれた歩き方でこちらに向かってくるいつものお兄ちゃん。
「はぁ・・・やっぱり居たよ、この人は」
「予想通りだった?お兄ちゃん」
夕陽に照らし出された不確かな影の中、ボクは呆れ顔のお兄ちゃんに歩み寄る。
分かっていたとはいえ、少々気後れ気味だったボクには夕陽の光がやけに眩しい。
- 356 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/06/13(火) 22:25:36 ID:R6Twgsom
- 「お兄ちゃん、今日の舞台・・・」
「ああ、良かった、巴は立派に王子様だな、俺も安心して社交界に送り出せるよ」
「そんな予定後にも先にも無いけど、でも・・・それは褒めてくれてるよね?」
「褒めてる褒めてる、この調子だとそのうちファンクラブとか出来るんじゃないか、兄ちゃん楽しみだなぁ」
「・・・ホントに褒めてる?」
「ははっ、怖い顔するなっての、正直言って良かったよ、少し感動してしまった位に」
「少しだけ?」
「いや、実の所、かなり」
だんだん雰囲気が冗談めいてくるお兄ちゃんがようやく本音をぶつけてくれる。
変わる事の無い石みたいな仏頂面にパッと安堵の笑顔が咲くのが自分でも良く分かる。
「・・・うん、それなら良かった、あ、これから帰るんだよね、じゃあ」
「おっと、一緒に帰るのはナシだぞ、主賓が退場したんじゃ打ち上げも盛り上がらないからな」
「・・・はい・・・残念だけどしょうがないよね」
「なんだよその顔は、今生の別れみたいな顔して・・・今は友達と楽しんで来い、な?」
少し視線の下がるボクの顔を覗き込んで明るく諭すお兄ちゃん、こんな何気ない気遣いがボクにはこの上なく嬉しい。
「じゃあ、せめてお夕飯代はボクが出すよ、今日は外で済ませるつもりでしょ?」
「いや、そこまでしてくれんでも・・・それ位は自分でどうにかするよ」
「いいから・・・あれ、これ何だろう?」
取り出した赤い財布のお札入れにある見慣れない小さな紙に疑問符が浮かぶ。
こんなのホントに見覚えが無い、いつの間にこんな物が・・・
「ん、どれどれ・・・おい、これ、巴は今まで気付かなかったのか?」
「えっ、何が?」
「やれやれ・・・まぁ、開けてみろ、話はそれからだ」
- 357 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/06/13(火) 22:28:16 ID:R6Twgsom
- 言われるがままに開くと視界に飛び込む見慣れたお兄ちゃんの字。
──無理は絶対にしないこと、何かあったらいつでも駆けつけるから遠慮せず呼ぶように、同じ学校だしな──
そこに書かれた言葉の意味を知り鼓動が跳ねる、無くしていた何かを見つけ出した様な、泣きたくなる様なくすぐったい感覚。
「巴が前に疲れてそのままソファーで寝ちゃった事があったろ、あの時に入れといたから約一週間気づかなかった事になるな」
「あの時・・・これは・・・四葉のクローバー?」
「まぁ、ラッキーアイテムっていうとそれ位しか思い浮かばなくてな、ちょっと安直だったとは思うけど」
「ううん、そんな事無い、でも、どうしたのこれ?」
「もちろんあの時に探したんだよ、大変だったぞ、家の庭中を懐中電灯片手に探し回って・・・途中で雨が降るしさ」
「・・・そっか・・・」
手紙に添えられていた押し花にされた四葉のクローバーを手に取り、そっと胸に引き寄せる。
それはボクにはじんわりと暖かくて、痛みや不安さえ包み込んでくれるお兄ちゃんの優しさそのものだと思った。
・・・ずっと・・・心配してくれてんだ・・・お兄ちゃん・・・
結局、お兄ちゃんの優しさに気付けなかったボクのひとり相撲、か。
お兄ちゃんはボクの為を思っていてくれた、なのにボクは自分の事ばかり考えて・・・
「・・・ごめんなさい」
「は?何が?」
「お兄ちゃんはちゃんとボクの事、考えてくれてたのに・・・ボクは」
「ああ、それか・・・どうでもいいさ今となっては、結果として舞台は大成功だったんだし」
「・・・お兄ちゃんは優しいね、それに引き換えボクは・・・ホント、ダメだよね・・・ホントに」
- 358 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/06/13(火) 22:28:54 ID:R6Twgsom
- それ以上言葉を出せずにギュッと握った掌が自分でも意識しないうちに少しだけ震えている。
子供の頃よりボクは強くなった、あの頃みたいに泣いてばかりじゃない、勉強も運動もずっと上手くなった。
いつかお兄ちゃんを支えてあげられる人になりたくて、頼りにしてもらえる様になりたくて、がむしゃらに頑張ってきた。
そうすればボクはずっとお兄ちゃんと共に生きていける、ボクのボクだけの人でいてくれると信じて。
変わったのに変わりきれないボク、相変わらずの優しさをくれるお兄ちゃん、どうにも埋まらない二人の距離がボクには堪らなく悔しかった。
「よせよせ、憂いの表情なんて巴には・・・似合うけど」
「ありがとう、でも・・・」
「巴、反省は沢山すればいい、でも、後悔だけはしちゃ駄目だ」
「・・・」
「それに、もしも今回の舞台が失敗していても俺は巴を褒めてたと思う」
「・・・どうして?」
「決まってる、巴はいつだって俺の一番の自慢だよ」
笑顔の中に真っ直ぐな瞳を隠して、お兄ちゃんがボクの頭を乱雑に撫でる、真剣さを誤魔化す為のお兄ちゃんのいつもの照れ隠し。
たまにしか見せてくれない、多分・・・ううん、絶対ボクしか知らないカッコいいお兄ちゃん。
ボクの心にグングン追いついて、いつも簡単に答えを見つけ出してくれる、きっと本当に大切な事をお兄ちゃんは誰よりも知っている。
こんな時、ボクは強く想う・・・お兄ちゃんの前ではボクは優等生でも王子様でもなくてただ、好きな人に甘えていたい一人の女の子なんだって。
だからボクは心に素直に従う、世界で一番愛しい人の胸の中へと。
「こ、こら、ちょっと褒めたらこれかよ!?」
「・・・頑張ったご褒美くらいはね、いいでしょ?」
「よかないよ!!こんな姿誰かに見られたら多くの学生の夢を壊すんだぞ?」
「じゃあ、家でならいい?」
「そういう問題じゃなくて・・・まったく、俺は時々、巴は兄離れ出来るのかと不安になる時があるよ」
「不安は的中かな、一生離れる気は無いから、ふふっ」
「・・・言ってろ」
「うん、この先もずっと言ってる・・・お兄ちゃんの趣味も分かったし」
「ん?趣味って何?」
「・・・メイドフェチ」
「なっ!?なんつっーことを!?」
「あははっ」
- 359 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/06/13(火) 22:29:29 ID:R6Twgsom
- 水を得た魚の様に腕をスルリとすり抜けてボクは一目散にクラスメイトの待つ上の階へと向かう。
その前に相川先輩を見習って心からの言葉を、10m程走った所でフワリと浮かぶスカートを翻して後ろ手にお兄ちゃんの顔を覗き込む。
「あ、そうそう、今日の舞台ね、ボクだけじゃ上手くいかなかったと思う、でも、ボクにはお兄ちゃんがいてくれたから」
「ああ、さいですか」
「舞台の上からお兄ちゃんを見つけた時、とても安心して、嬉しくって・・・やっぱりボクにはお兄ちゃんが必要なんだって思った」
「・・・」
「お兄ちゃんが居てくれてホントに良かった、これからもよろしくね、ボクの王子様」
照れ臭そうに頭を掻くお兄ちゃんを背に階段を一機に駆け上がる、羽根の様に軽くなった足と夕陽の様に紅く染まった頬で。
・・・お兄ちゃん、ボクはお兄ちゃんの為に何が出来るんだろう・・・お兄ちゃんの望むボクはどんなボクなのかなって思う。
今のボクに出来ることは片手にさえ足りないけれど、いつかきっとお兄ちゃんに相応しい人になってみせる。
ボクに優しさを教えてくれたお兄ちゃんだから・・・こんなにも切なくなる程の愛しさを教えてくれたお兄ちゃんだから。
言葉に出来ない、止められない想いを胸にボクは屋上まで突き抜ける勢いで駆ける、いつの日かこの手が届くと信じて。
───────────────────────────
「・・・王子様の王子様ってか、何言ってんだかな」
煙を上げるのではないかと思わせる猛スピードで巴が消えていった階段を見詰めて吹き出す俺。
巴公認の王子様、そう思うと妙に可笑しくてまた一人笑みが出てしまう。
終わり良ければ全て良し、夕焼け色の巴の顔を思い返して真理とも言える格言が頭に浮かんだ。
- 360 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/06/13(火) 22:30:10 ID:R6Twgsom
- 靴を履き替えて再び活気付く校舎を後にする、今頃、巴は友達に囲まれて舞台の成功を祝っているのだろうか。
どちらにせよ俺は巴が家に帰ってくれば喋り疲れるまで話に付き合う事になる、それが少しだけ今夜の楽しみだ。
「さて、帰りますか・・・おわっ!?」
「あっと、ごめなんさ〜い!!」
「ご、ごめんなさい」
俺の真横を見慣れない格好をした二人の女の子が走り抜ける、いや・・・メイドさんなんて見慣れてる筈が無い。
「ね、ねぇ・・・唯奈ちゃん、やっぱりこの格好で帰るのは・・・ちょっと」
「ここまで来て今更だよそんなの、それに絶対先回りしてお兄ちゃんを驚かすんだから、お兄ちゃんの為に急ごっ!!」
「うん、お兄さんの為に、だね」
ペチコートを翻して校門の向こうに小さくなっていく二人を呆然と見送る、傍から見ればかなり不可思議な光景。
「・・・白昼夢?いや、今は夕方だけど・・・あれ?今のは確か石川姉妹・・・」
自分でもよく解らないが妙に肩が重くて俺は茜色の空を見上げる、すると何故か今頃になって蘇る体育館裏での巴。
数時間前の感触が残ったままの右手の上で乙女心と微妙な溜め息は秋の空に溶けて消えていった。
- 361 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/06/13(火) 22:31:00 ID:R6Twgsom
- 今回の反省点、一番は神の妹様に御出演頂きオチまで頼ってしまった事。
寛容に見て頂いてありがとうごさいました、しかし、名前を間違えたのは本当に反省しております。
>271 相沢って誰よ?ホント、すいません。
>天童兄妹
この二人は個人的にホントに萌えつつ参考になるという素敵な兄妹です。
お互いの距離感というかバランスというか、そういった物が絶妙だと思います、次も楽しみにしておりますよ。
>格闘妹
強いわ可愛いわで無敵ですねw
なんか夏休みに無理矢理鍛錬に付き合わされる話とか読んでみたいです。
>323様、352様
果たして今回の話は御期待に添えたでしょうか?
投下のペースが牛歩並ですが多分、ネタが切れるか力尽きるまで書き続けると思いますのでこれからもどうぞ宜しく。
- 362 :遊(ry ◆isG/JvRidQ :2006/06/14(水) 21:15:43 ID:511n4s5A
- >夢ノ又夢大先生様
さすがッス!!
いつもながらキレイなSSで、時間が無いと言うのに読み耽ってしまいました。
そして、ふと、未来とか羽音とかも書いて欲しいなぁなんて思ったり……w
- 363 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/06/22(木) 20:23:56 ID:Oi1VcWul
- ほーしゅ
- 364 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/06/22(木) 20:57:20 ID:U4/qsRee
- 日曜日のお昼前、鮮やかな青空の下に白いシャツが気持ち良さそうに風に流れる。
洗濯物を叩く小気味良い音を立てながら巴はテキパキと干していく。
我が家の見慣れた光景。
「いい天気だな」
「うん、ここの所はずっと雨だったから余計に気持ちいいよね」
風に靡くサラサラの髪を梳いて本当に気持ちよさそうに巴が微笑む。青い空には屈託の無い笑顔が良く似合う。
見事なまでの五月晴れだ、こんな時では見惚れてしまう俺にも仕方が無いのかもしれない。
「あ、巴、あそこ見てみろよ、青い空には白が似合うよな・・・」
「えっ!?」
耳に残る轟音を立てて飛行機が大きな青空に白い線を描く。これもまた、曇り空では見る事の出来ない景色。
そんな単純な事がなんだか妙に嬉しくて、つい子供みたいな歓声を上げる俺。
「しかし・・・なんで白ばかりなんだろうな?もっとカラフルでも良さそうなもんだが」
「な、なんでって・・・普通、白だと思うよ・・・」
「まぁ、そりゃそうなんだけどさ」
海外の飛行機はもっと色鮮やかな物があると聞いた事がある。
ま、誰かさん専用でもあるまいし真っ赤な飛行機とかは流石に無いとは思うが。
「もっとさ、個性があった方がいいと思う訳だ俺は、大抵が白か青だろ?」
「青って・・・そんなに流行ってる色かな?ボクは知らないけど」
「流行ってるかはともかく普通の色だろ、あとはキャラクター物とか」
「・・・お兄ちゃん、そういうのがいいの?」
「いや、流石に俺はパスだけどさ、ああいうのは子供向けだし」
「あ、うん・・・そうだよね」
- 365 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/06/22(木) 20:58:35 ID:U4/qsRee
- 巴の方から何故か安堵の溜め息が聞こえてくる・・・俺ってそんなキャラでもないだろうに。
更に微妙に遠慮がちに聞こえてくる巴の声、なんか声が上擦ってる気が・・・
「あの・・・お兄ちゃん?お兄ちゃんは・・・どんなのがいいと思う?」
「そうだな、ええっと・・・黄色とかオレンジとかいいかもな」
「・・・」
「豹柄とかもいいかも」
「・・・豹柄!?」
「なんつってな、流石に冗談だよ」
「も、もうっ」
一つ一つ俺の言葉を反芻するかの様に聞き入る巴が面白くて思わず冗談を交えてしまう。
というか、そんなに真剣に聞く様な事なのか?
焦る巴を尻目に首が痛くなるまで蒼天の空を見上げ続ける。
「巴は知ってるか?ニュースで見たんだけど黒色もあるんだそうだ」
「・・・知ってるよ・・・ボクだってそれ位」
「そっか、なんでも中から外から黒尽くめなんだってな」
真っ黒な飛行機というのは結構なインパクトがあると思う。
添乗員も黒の制服で内装も黒で統一されエスプレッソとチョコレートが自慢らしい。
「一回、実物を見てみたいよな」
「・・・見て・・・みたい・・・お兄ちゃん?」
「うん?」
「ボクに・・・それは似合うと思う?」
「・・・ふむ」
- 366 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/06/22(木) 21:00:16 ID:U4/qsRee
- 空を見上げたまま、顎を撫でながら思索を巡らせる。
黒い機内、エスプレッソ片手に窓の下に映る夜景を見下ろすスーツ姿の巴。
なんとなくだが俺の頭の中では巴は憂いの表情でいる。
「・・・滅茶苦茶似合いそうだな」
「ホント?ホントに・・・そう思って・・・くれてる?」
「ああ、キャリアウーマンというか・・・大人の女性って感じだな」
「・・・そっか・・・ふふっ」
「やれやれ、そんなに嬉しい事かね」
「ボクにとっては凄く、ね・・・お兄ちゃんが言ってくれたから・・・お兄ちゃんだから」
「ん?それはどういう・・・」
さっきから何か噛合っていない二人の会話。見えなくなった話を辿る為に巴へと振り返ると照れまくった巴の熱視線に迎えられる。
・・・はて?なんだろうか、この甘い雰囲気は?
そこで俺はようやくズレた歯車の転がった先を知る事になる。いや、知るのがあまりにも遅過ぎた。
巴の視線、俺が見上げていた方角の青空の下、ベランダの外界に断絶された一年中日陰となっている三角コーナーに干された物体。
これ以上は俺の口からは言うまい・・・
「お、おい、ちょっと待て!!何か勘違いしてないか!?てか、してるんだよ!!」
「分かってる・・・別に可笑しな事じゃないよ、お兄ちゃんだって・・・その・・・男の人なんだから」
「だ、だからそれが!!」
- 367 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/06/22(木) 21:01:41 ID:U4/qsRee
- 鳥肌が立つ程に艶を帯びた巴の瞳が妖しく揺らめく。危うく虜にされそうな俺は情けない事に自分を保つだけで精一杯。
とはいえこの場合、まだ自己を持っているのは我ながら褒められていい様な気はする。
普通の男なら完全にやられている所だろう、そんな背水の陣に容赦無く攻めかかる巴の一言。
「ボクはお兄ちゃんの為なら・・・楽しみにしててね・・・お兄ちゃん・・・」
絶大な勘違いの後、去り際にやたら艶っぽい流し目と一言を残して巴はベランダから消えていく。
・・・楽しみ?・・・一体、あの御方は何をやらかす気なんだ?
「・・・部屋に戻るか」
ぶるっ、と身震いを一つして俺もベランダを後にする。なんだか暖かかった筈なのに妙に背中に寒気を感じる俺。
若干の期待と大きな不安を抱きつつ自室に向かう俺だった。しかし、そんな願いも空しく難事はやっぱり訪れるのである。
巴さん曰く、なんだかスッキリした出来事。俺曰く、無かった事にしたい事件。
これが後に我が家に強烈に残る事件、巴さん裸エプロン大事件の始まりだったのです。
(続かない)
- 368 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/06/22(木) 21:06:02 ID:U4/qsRee
- ・・・いや、ただの悪ふざけなので軽く流して下さい。
七月十二日の祭りまで道はまだ遠い。
- 369 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/06/22(木) 21:49:58 ID:etqGqMpV
- 続かないんですか……w
っていうか、少し萌力を俺に分けてください……いや、マジで……w
- 370 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/02(日) 22:30:41 ID:ILAIMImQ
- 優秀なスレッドストッパーの遊星が保守しに来ましたよ、と。
現在6(+1)完成、一つ途中。良いネタ閃けぇ……
- 371 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/07/08(土) 20:26:30 ID:NWTNnA26
- それでもおれは待ち続ける
- 372 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 21:26:22 ID:d5g2kOvY
- いやぁ、焦ったぁ。
……ま、去年ほど盛り上がっちゃいませんが、自己満足祭り、そろそろ始めますか……
- 373 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:04:03 ID:d5g2kOvY
- 太陽は燦々と輝き、今では温度計を見るのも嫌なぐらいの高気温。
現在、時刻は二時。
一番気温が上がる時間だと、小学校のとき理科で習った記憶がある。
こんな時間に外に出るヤツは、よほどの用事があるか、バカだけ……。
……まぁ、家に一人、そのバカがいるわけだが……。
しかも、バカはバカでも、運動バカが……。
「よくやるよ……ホント……」
一時間以上前に出て行ったきり帰ってこないバカのことを思いながら、本のページをめくる。
そして、冷たいお茶の入ったグラスを口に運ぶが
「無いのか……」
俺は本にしおりを挟み、グラスを持って立ち上がる。
そして、冷蔵庫を開ける。
「……カフェオレでも飲もうかねぇ」
俺はペットボトルに入ったアイスコーヒーと牛乳を取り出し、俺は手早くコーヒーと牛乳を混ぜる。
「さてと……」
クーラーの効いた部屋。
もう一度、本を読み始めると……
「たっだいまー!!暑ーい!!」
玄関で割れんばかりの大声……。
「あー!!涼しー!!」
そして大声の主が、俺のいるリビングへ……。
「おかえり、望。遅かったな……?」
俺は本から一切目を離さず、答える。
「うん。あはは!!何か楽しくなっちゃって、ランニングしてきたよー!!」
「元気だねぇ……」
「うん!!ボク、もう汗ビッショリー!!」
「さいですか……」
「それより、お兄ちゃん!!また本なんて読んでるー!!」
- 374 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:04:38 ID:d5g2kOvY
- 「いけないか?」
「本ばっかり読んでるとバカになるよ?」
「ならねぇよ、証拠もある」
「証拠?」
「望」
「え、ボク……?何で……?」
「だって、バカじゃん、お前。本読まないし」
「ひ、ひどーい!!ボクだって、そんなにバカじゃないよー!!」
「そりゃ悪かったな……」
……つまり、ある程度はバカってことなんだ。
本を読みながらなので、相当適当な受け答えを返す俺。
「暑いー、服脱いじゃえー!!」
「おいおい……」
「だって、汗でぐっしょりだよー?そんなTシャツ着たい?」
「じゃ、着替えて来いよ」
「うん、ちょっと休憩してからー」
望は冷蔵庫の辺りでゴソゴソと何かした後、ソファの俺の隣に座る。
横目で見たが、どうやら本当に下着姿になっているらしい。
「面白い、それ?」
「まぁな」
「……ふぅん。ねぇ、ボクと遊ぼうよー」
「忙しい」
「本読んでるのに?」
「本読んでるから」
「……そんなに本読むのが大事……?」
「は?」
「ボクは……もっと……お兄ちゃんと遊びたいのに……」
……自分が一人でどっか行っといて、何を……。
と思ったが、いえなかった。
- 375 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:05:12 ID:d5g2kOvY
- 「ボクは……は……は……はくちっ!!」
望の突然のくしゃみ。
俺は本をパタンと閉じて、
「おい、大丈夫か?」
「あ……うん。でも、ちょっと体冷えてきたみたい……はくちっ!!」
「しょうがねぇなぁ……」
俺は着ていたジャケットを脱いで、望に渡す。
「うわー、お兄ちゃん、ヒョロヒョロだぁ……」
「人の好意は黙って受け取れよ、お前……」
「あ、ゴメンゴメン」
笑って、服を羽織る望。
「ボク……こういうの、ドラマでみたことある……」
「……は?」
「へへ……暖かいね……?」
「そんなのいいから。早くシャワー浴びるなり、服着るなりして来い」
「うん……えへへ」
「何だよ?」
「お兄ちゃん!」
「何だ?」
「えへへ……ボク、行って来るね?」
「おー」
「うん、じゃあね、お兄ちゃん?」
笑顔で去っていく望。
「……何なんだ……」
呆然とする俺。
突如ご機嫌になった望……。
コイツのやることだけは……どんな本にも書いてなさそうだぁ……。
───────────────────────
- 376 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:05:44 ID:d5g2kOvY
- ある日の休み時間。
友人と話しながら、どうでもいいような話に花を咲かせていた。
すると……なにやら、腿のあたりで振動が。
「……メール……?」
ケータイを取り出して画面を見る。
送信主は、俺の妹、翼のようだ。
不思議に思いながら、本文を見ると……
廊下に来い
「……」
そう表示されたケータイの画面を見ながら固まる俺。
カツアゲでもされるんじゃないだろうか……。
「一応行ってみるか……」
友人に説明し、とりあえず廊下へ。
ドアを開けると……
「お、遅かったじゃない」
仁王立ちの翼が、不機嫌そうに言う。
「出来るだけ早く来たつもりだけど……」
「ば、バカいわないでよ!!休み時間は短いんだから、早くしないと終わっちゃうでしょ!?」
「ご尤も……。で、何か御用?」
「じ……」
「じ?」
……痔……?
「いや……そんなこと告白されても困るなぁ……」
- 377 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:06:16 ID:d5g2kOvY
- 「何の話よ!?……え、英和辞典を貸して欲しいって言ってるの!!」
言ってねぇよ……。
「翼ご自慢の電子辞書はどうした?」
「わ、忘れちゃったの……」
「ふーん……いや、悪いが……俺も次、英語なんだ」
「え……?ど……どうしよう……」
急にオロオロしはじめる翼。
「必要か?」
「うん……ちょっと無いと授業受けられないかも……」
「そっか……しょうがねぇなぁ……」
「え……?」
「ちょっと待ってろ。持ってくるから」
翼を待たせたまま、俺は辞書を急いで取りに戻る。
「はいよ……時間がないっつーぐらいなら、最初から辞書を貸せってメールに書きゃ良いのに」
「お兄ちゃん……いいの?」
「別に構わねぇよ」
「ホントに?」
「何だ、いらないなら返せよ」
「い、いるわよ!!いるけど……い、一応確認してみただけっ!!」
「そうですか……」
「……お、お兄ちゃん……?」
「何だよ?」
「あ……その……えっと……だからね……」
「何だ?指示語で会話し始めるのは、老化の始まりだぞ?」
「……ば、バカ!!もう知らない!!」
そういって、振り返り歩き出す翼。
「おう、急げよ」
その背中に声をかける。
- 378 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/07/12(水) 22:08:09 ID:X9XiOkP1
- 自己支援
- 379 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:08:34 ID:d5g2kOvY
- 「……」
翼は一度だけ振り向いたが、何も言わず無言で去っていった。
「そういえば……何を言おうとしてたんだろ……」
教室に戻り、一息ついた俺は、無性に気になったのでメールで聞こうと、ケータイをポケットから取り出す。
「……ま、いいか」
数文字打ってみたが、まぁ、あとで聞けば済むこと。
俺は文字を全て消し、ケータイを閉じる、
すると、突然震えだす俺のケータイ。
「何だ、何だ!?」
着信があることは明らかなのに、こういうときに取り乱してしまう自分が情けない……。
「なんだ、翼か」
メールの中は……
別に感謝なんかしてないからね
「わざわざそんなこと……あ……続きがあるのか」
正直、ムッとするような内容の前置きを見なかったことにして、下のほうには……
でも、ありがとう
「……矛盾してるぞ……」
そう文句をつけつつも、
「ま、無いよりはマシか……」
何だかんだいって……俺も悪いようには考えていないのだけど。
───────────────────────
- 380 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:09:08 ID:d5g2kOvY
- 「さてと、さっそく見ようかなー」
家に帰ってくるなり、急いでリビングへ。
しして、バッグから、さっき友達に借してもらったDVDを取り出す。
内容はもちろん恋愛映画。
話題の映画だから見てみたいってのもあるけど……目的はなによりも勉強。
しっかり見て、お兄ちゃんにも使えそうなのがあったら試さなくちゃ!!
そう意気込み、DVDをセットする。
そして再生のボタンを押そうとしたとき、
「あ、葵、いたのか」
お兄ちゃんが私の居るリビングへ。
「うん。ただいま」
「おかえりなさい、葵」
ちょっと微笑んで、おかえりを言ってくれるお兄ちゃん。
なんかいいなー、こういうの。
もしかして……これが『萌え』……?
「で、どうかしたの?」
「いや……別に。ヒマだからテレビでも見ようと思って」
「あ、今からDVD見ようと思ってるんだけど……」
「そっか。じゃあ、他のこと探すか……」
そういって振り返るお兄ちゃん。
でも、きっと、これはチャンスだと、私の第六感が告げた。
- 381 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:09:39 ID:d5g2kOvY
- 「あ、お兄ちゃん!!」
「ん?」
「よかったら、一緒に見ない?」
「んー……何のDVD?」
「えっと……恋愛ものの映画だけど……」
「恋愛モノかぁ……あんまり興味無いなぁ……」
「でも、見てみたら面白いかも知れないよ?」
「うーん……じゃあ、見てみようかな」
やった!!
心の中でガッツポーズ。
私の隣に座るお兄ちゃん。
「じゃ、始めるねー」
嬉しい気持ちを胸に、再生のボタンを押す。
これで雰囲気が盛り上がって……それで、お兄ちゃんから……なんて、考えすぎかな。
───────────────────────
「ふぁ……」
思わず洩れそうなあくびをかみ殺す。
もう時間的にクライマックスだと言うのに……退屈な映画だ……。
ちょっと話が王道過ぎるのはともかくとして……
主役の演技力にも少し問題がある気がする……。
イケメンというだけじゃ、涙は誘えないというのに。
借りたときに『いいの?』って聞かれたのはこういう意味だったんだね。
作戦は大幅に失敗だぁ……。
完全に集中力が途切れたので、お兄ちゃんの顔をこっそり覗き見ると……
あ……あれ……?
すごい真剣に見てる……。
え……ちょっと……泣きそうになってない……?
- 382 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:10:11 ID:d5g2kOvY
- それからは、今にも涙がこぼれそうなお兄ちゃんの横顔をずっと見ていた。
真剣そのもののお兄ちゃんの顔は、映画よりもずっとドキドキしたし、面白かった。
そうこうしている間に、幸せそうな音楽が流れ始め、長かった映画は静かに幕を閉じた。
「……いや……よかったな……」
真っ黒になった画面を見ながら、お兄ちゃんがポツンと呟く。
「そんなによかった?」
「うん……ちょっと感動した……」
そういって目頭を押さえるお兄ちゃん。
「泣いてるの?」
「いや……泣いてない……」
必死で目を隠すお兄ちゃん。
それが見栄っ張りで可愛くって、思わず笑ってしまう。
「これ……見てよかったな」
「うん……俺も、いい暇つぶしになったよ……」
「そうだね」
純粋で、ちょっと見栄っ張りで……素敵な人。
目隠しをしたままのお兄ちゃんの横顔をジッと見る。
そして、ちょっとだけお兄ちゃんにもたれながら、私だけの幸せに浸る。
「好き……」
小声でそう呟いて、邪魔の入らない二人だけの時間に、静かに眼を閉じてみた。
しかし、すぐにその幸せは崩れる。いつものことだ。
「さて……」
急に立ち上がるお兄ちゃん。
「あ……」
私はそのまま、横に倒れてしまう。
「あれ、葵。倒れちゃって、どうしたんだ?」
「ううん……何も……」
やっぱり、な展開に、思わずため息をつくと同時に……
手を差し出してくれたお兄ちゃんに、とても幸せな気持ちになった単純な私でした。
───────────────────────
- 383 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:10:44 ID:d5g2kOvY
- お兄ちゃんの学校の校門前。
さっきから数え着てないほどの人が通り過ぎたけれど、肝心のあの人が見つからなくて……
私は、何度目かのため息をついた。
そんなとき、
「こんにちは」
誰かに、突然肩を叩かれる。
不思議に思いながらも振り返ると
……うわぁ、凄く美人な女の人……。
「あ、ゴメンね。驚かせるつもりは無かったんだけど」
「はぁ……」
「その制服は、中学生さんだよね?」
「あ、はい」
「こんなところで、誰か待ってるのかな?」
「え……?」
「ゴメンゴメン。私もちょっと人を待ってるところだから、さっきからキミをずっと見てたんだ」
「お姉さんもなんですか?」
「うん、ところで、やっぱり恋人さんとかを待ってるの?」
「あ……一応……」
「羨ましいなぁ。私は、お兄ちゃんを待ってるんだ。いつも遅くて、困っちゃうよ」
そういって笑う女の人。
「大変ですね」
「あはは。でも、いつもこんな感じだからね、もう慣れちゃったよ」
「そうなんですか……凄いですね」
「うーん、凄いかなぁ?」
「実は、私、そろそろ帰ろうかなって、思ってたんです」
- 384 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:11:17 ID:d5g2kOvY
- 「え?何で?」
「急に会いたくなって、来ちゃったんですけど……やっぱり迷惑じゃないかって……」
「うーん……私は、キミのカレシさんを知らないから、何ともいえないんだけど……
そんなこと、無いと思うよ?」
「そう……ですか?」
「だって、素敵だと思うもん、キミのまっすぐな心」
「……」
「大丈夫だよ。キミの心は伝わるはず。少なくとも、私はそう信じてるけどな」
「そうですか」
「安心して。もし、そんなことで怒るようなら、私が代わりに怒ってあげるから」
「それは……困ります……」
「あはは、ラブラブなんだ?」
「そ、そんな……」
「恥ずかしがらなくても良いじゃない。羨ましいよ」
「でも……」
「私のお兄ちゃんもそれぐらい良い人だと良いんだけどな……」
「え?」
「あ、なんでもないの!!」
「そうですか……」
「そうだ、キミの名前、聞いても良いかな?」
「はい。霧島羽音です」
「私は天童葵。頑張ろうね、お互いにさ?」
「はい!」
天童さんが差し出した手をしっかり握る。
天童さんは、心も外見もキレイな女の人です。
───────────────────────
- 385 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:11:51 ID:d5g2kOvY
- 「疲れた……」
夕日の赤色に染まる校庭をトボトボと歩く。
すると、目線の先に、今一番会いたい人の姿……
「幻覚か……ヤバイな、俺……」
目頭を押さえながら、さらにおぼつかない足取りで歩いていく。
今日は早く寝よう……。
そう思ったあたりのこと。
「頑張ってね」
「あ……はい……」
可愛い声……。
とうとう幻聴まで……。
「お兄ちゃん」
そして、目の前に現れる俺の従妹、羽音ちゃん。
ん……これはもしかして……
「羽音ちゃん?」
「はい。こんにちは」
「え?どうして?」
「えと……大した理由じゃないんですけど……ちょっとお兄ちゃんに会いたくなって……」
「俺に……?」
「はい……あ、ごめんなさい!!こういうの、迷惑ですよね……!!」
慌てて、帰ろうとする羽音ちゃん。
俺はそんな羽音ちゃんの肩を優しく掴んで、
「いや、そんなことないって。俺も、ちょうど羽音ちゃんに会いたかったとこだからさ」
「え……本当……ですか?」
振り向き、驚きと喜びに満ちた目を俺に向ける羽音ちゃん。
そんな羽音ちゃんがすごく可愛くて、ドキッとしてしまう。
ちょっと涙目なところがツボだ……。
- 386 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:12:23 ID:d5g2kOvY
- 「うん。俺も、羽音ちゃんに会えて嬉しいよ」
「お兄ちゃん……」
「あ、でも……今度からは、こういうことしちゃダメだよ?」
「ダメなんですか……?」
「うん。ほら、やっぱり一人は危ないからね。だからダメだよ」
「はい……」
口ではそういいつつも、寂しそうな羽音ちゃん。
こりゃ……ちょっと情けないけど……本当のことを言うべきかな……。
「って言うのは、建前で……ホントのところは……」
「本当のところは……?」
「誰かが羽音ちゃんのこと好きになったり……羽音ちゃんが、俺以外の誰かを好きになったら嫌だし……」
「……お兄ちゃん……」
「つくづく嫌なやつだね、俺って」
自嘲気味にそう呟く。
かなりかっこ悪いな、俺……。
そう思ったとき……
「お兄ちゃん」
羽音ちゃんが、ゆっくりと俺の胸の中に……。
咄嗟に抱きとめる俺。
「私も、お兄ちゃんだけの私でいたいです……」
「羽音ちゃん……」
「だから……ね……?」
俺の目をジッと見つめる羽音ちゃん。
そして、ゆっくりと、目を閉じる。
「お兄ちゃん……大好き……だよ……」
羽音ちゃんの可愛い唇が、そう呟いた。
「……うん、俺も」
夕日に包まれる瞬間の中、また一つ、二人が近づくことが出来た想い出にお互いの気持ちを確かめ合う。
そして、これからの二人を想像しつつ、幸せな気分に浸るのでした。
───────────────────────
- 387 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:12:56 ID:d5g2kOvY
- 「ただいまー」
俺、石川真司は、玄関のドアを開け、強烈な日差しの刺す外から、我が家に戻ってきた。
が、誰も返事をしてくれない。それどころか、物音一つ聞こえない。
「……誰もいないのか……?」
靴を脱ぎ、家の中に入る。
本当に、静かだ。一応……靴はあるので、二人ともいるはずなんだが……。
ゴソっ……
何かの物音……。
「誰だ?」
その音のするほうへ、歩いてみる。
そして、角を曲がった瞬間……
「お……?」
誰かとぶつかった。
よく見ると
「何だ、千奈……いたのか」
「……」
返事の無い千奈。
それどころか、身動き一つせず、俺の胸から離れようともしない。
「千奈……?」
「……このまま……こうしていたいです……」
突然、そう呟いて、俺の胴に手を回してくる千奈……。
「え……」
突然のことに驚き、固まっていると、
「春彦さん……」
……誰……?
「……俺は……石川真司だけど……?」
「あ……ごめんなさい……」
俺の話を聞いているのか聞いていないのか分からないが、
またフラフラとどこかへ行ってしまう千奈。
- 388 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:13:33 ID:d5g2kOvY
- 「え……」
呆然と立ち尽くす自分。
千奈が、ゴミ箱をけり倒した……。
───────────────────────
「ゆ、唯奈、いるか!?」
二人の部屋の前、俺は少し乱暴にノックしながら声を上げる。
「あ、うん。いるよー」
「話しがあるんだ、入るぞ」
「うん。どうぞ」
その声を聞いて、ドアを押し、中に入る。
「お兄ちゃん、お帰りー」
少しドアを開けると、唯奈がヘッドフォンを外しながら、こちらに笑顔を向けた。
「で、話って何ー?」
「変なんだ……」
俺は、ベッドの近くのソファーに座り、話し始める。
「何が?」
「俺は……真司だけど……春彦さんって言われた……」
……何を言っているんだ、俺は……。
「よくわかんないけど、もしかして……千奈ちゃんのこと?」
「あぁ、そうだけど……?」
「ボーっとしてたでしょ?」
「あぁ……」
「それなら、心配すること無いよ。たまーにあるんだよねぇ」
「え、どういうこと?」
「千奈ちゃんね、時々本の世界に入り込んじゃうときがあるんだよ」
「……は?」
「まぁ、ホントにたまにだけど、読んでる本が面白いとね。
そうなっちゃうと、話はあんまり聞かなくなっちゃうし、
ヒドいときは、物語のシーンを再現しちゃったりとか……」
- 389 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:14:07 ID:d5g2kOvY
- さっきのことを思い出す。
「つまり……今、千奈が読んでる本の登場人物に春彦ってのがいて、俺がその人に見えてるってこと?」
「たぶんね」
「……なるほど……大丈夫なのか、それで?」
「うん。まぁ、ちょっと気を抜いちゃうと出ちゃうってだけだし、問題は無いよ」
「そうか……」
「でも、さすがにちょっと心配だし、千奈ちゃんのトコ行こうよ」
「そうだな」
立ち上がる唯奈。
不思議だ……今日ばかりは、唯奈が頼もしく見えるぞ……。
ドアを開ける唯奈。
その前には……
「あ、唯奈ちゃん。どこかいくの?」
いつもの、千奈が立っていた。
「いや、別に……ねぇ、お兄ちゃん?」
「あぁ」
「あ、お兄さん……いつの間に……?」
「いや、さっきだけど」
「そうですか。全然気付かなかったです……」
「そりゃそうだよ、千奈ちゃん」
「え?」
「いつもの、出てたみたいだよ?」
「「え……?」」
- 390 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:14:40 ID:d5g2kOvY
- これは、千奈の驚きの「え……?」と、
俺の『言っちゃってもいいのか……?』という「え……?」である。
これがハモる辺り、俺も大分、この双子のことが分かってきたということだろうか……。
「ねぇ……唯奈ちゃん……私、何しちゃったのかな?」
「さぁ?私もそこまで詳しくは……お兄ちゃんに聞いて」
「お兄さんに……?」
二人の視線が俺に向く。
「……あの……スイマセン……私……たまになっちゃうんです……
変なこと……しませんでした……?」
「え……えっと……」
「唯奈も、それ聞きたいなぁー?ね、お兄ちゃん?」
「お願いです、お兄さん……教えてください……」
「そ……それは……」
二人の妹に詰め寄られる俺。
言うべきか言わざるべきかを頭の中でグルグルと回転させながら……
平和な事件であることに、少し幸せを感じるある初夏の午後でした……。
───────────────────────
- 391 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:15:13 ID:d5g2kOvY
- 太陽が輝き、鳥が鳴く。
まぁ、今日も暑い一日になりそうだが、雨が降るよりはずっと良い。
窓の外を見てそんなことを考えつつ、グラスの麦茶を飲み干す俺。
と、後方でなにやら人の気配。
振り向くと、
「はわぁー……おはよー……」
俺の妹、沙耶らしき人物が欠伸しながらやってきた。
「おはよう、沙耶。今起こそうと思ってたんだよ」
「うん。サヤ、一人で起きたんだよー」
沙耶のような人間は眠そうに目を擦りながら笑って見せた。
俺は沙耶のような人の頭にポンと手を置いて、
「よしよし、えらいな」
「えへへー……」
なんとも幸せそうな笑顔を見せる沙耶と思われるお方。
「ところで……沙耶……?」
「?なーに?」
小首をかしげて俺の顔を見上げる。
「どうしたんだ?その髪型……?」
「髪型?どうしたのー?」
「ほら、こっちおいで」
俺は沙耶の後ろに回り、姿見の前まで沙耶を移動させる。
「……な?」
「うん、すごいねー」
鏡の中の、メデューサみたいな髪型の沙耶が答えた。
しかし、ちょっと嬉しそうだな……。
- 392 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:15:45 ID:d5g2kOvY
- 「ちゃんと乾かして寝ないからだぞ?風邪引いてないか?」
「うん、だいじょーぶだよー」
「それならいいけど」
手で沙耶の髪を押さえてみたり、手櫛で梳かしてみたりするが一向に直らない。
「ちょっと待ってろ。いろいろ持ってくるから」
「うん」
沙耶の頭を軽く撫で、洗面所へ霧吹きと櫛を手早く取りに行く。
「お待たせー」
俺は椅子に沙耶を座らせると、軽く水を沙耶の髪の毛に吹き付ける。
「きゃはははは!!お、おにぃちゃん、つめたいよ!!」
霧吹きのシュッと音がするたびに、沙耶の体が大きく揺れる。
「我慢しろ」
「で、でもぉ!!きゃははははは!!」
そんな沙耶に何度も霧吹きを用い、やっと沙耶の髪がしっとりしてくる。
その髪を櫛でとかしていく。
すると……
「……」
……鏡に映る少女。
幼い顔に浮かぶ嬉しそうな微笑。
そのフェイスとは一見ミスマッチな、しっとりとした長い髪。
- 393 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:16:18 ID:d5g2kOvY
- でもそれが何だか可愛くて……
普段の沙耶とのギャップに戸惑い、思わず手を止めてしまう。
「どうしたの?」
鏡の中の妹は、俺と目をあわせると、眩しい笑顔を返す。
これは……ヤバいかもしれない……。
「おにぃちゃん……?」
一向に動かない俺を心配してか、上を向いて俺の顔を直接覗きこむ沙耶。
「……」
ここからは一瞬の出来事だ。
テーブルの上においてあった二本のリボンを掴み、少々強引に沙耶の髪を縛り付ける。
「さ、朝御飯食べようじゃないか、なぁ!?」
「う、うん……」
不思議そうに自分の髪を見ている沙耶。
俺は極力何も考えないように、キッチンへ急ぐ。
「写真……撮っとけばよかったかな……?」
「写真?なんのー?」
「な、なんでもない!!」
何だか汗が止まらない俺……。
どうも、今日も暑い日になりそうだ……。
───────────────────────
- 394 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:16:51 ID:d5g2kOvY
- 「暑……」
「あ〜づ〜い〜……」
焼け付くような日差しの中、俺、州田敬介は幼馴染のなんとかいう女と下校中……。
「それにしても……男子はいいよねぇ……」
隣の相川だったか相沢だったか言う女が唐突に呟く
「何が?」
「だって、上脱げるじゃん。梨那はそうはいかないもん……」
そうだ、コイツの下の名前は梨那だ……。
「大丈夫だろ、そんなやせっぽちの体見たって、誰も欲情はしないと思うぞ……」
この場合は、もちろん、出るべきところがやせっぽち。
出るべきところじゃない部分は……言うまい……。
「にゃっ!!そういう問題じゃないぃ!!」
「あ、逆に出てないから恥ずかしいのか……」
「だから、違うぅっ!!」
顔を真っ赤にして反論する梨那。
……見ているだけでも暑苦しい……。
「何が違うんだ」
「出てる出てないは関係ないの!!女の子は皆恥ずかしいんだよっ!!」
「あのなぁ……じゃあ、聞くが、いくら暑いからといって上半身脱いで町を歩いている男を見たことがあるか?」
「にゃ……ないけど……」
「結局、男だろうと女だろうと変わらんよ。俺は、逆に、制服のスカートは涼しそうで良いと思うけど」
「でもでも、ぱんつ見られちゃうんだよ?」
「いいじゃん、見せれば。どーせ誰も梨那のなんか……」
「そ、そんなこと……!!」
「……そんなこと?」
「にゃぁ……あるっていうのも、ないっていうのも、なんかイヤっ……」
非常にしょうもないことに、頭を抱えて悩んでいる梨那。
あぁ、でもどっちもイヤかもなぁ……。
- 395 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:17:33 ID:d5g2kOvY
- 「しょうがない、品の無い話題になってきたし、無かったことにしてやるよ」
「うん、ゴメン……えっと……何処まで戻る?」
「お好きなところまで」
「じゃあ……えっと……ぱんつ見られちゃうのイヤだけど、でも、ブルマとかはくと蒸れちゃうしぃ……」
「……」
人の話聞いてないな……。
……呆れる俺。
これはもう……
「あ、お兄ちゃん、何処行くのっ?」
帰り道から一歩外れた俺を梨那が呼び止めた。
「コンビニに避難する」
「あ、待ってよー、梨那も行くー!!」
暑さを逃れようと少し早足になる俺を後ろから追いかけてくる梨那。
何か今日は二人ともノリがおかしい気がする……
───────────────────────
「んー!!涼し〜!!」
コンビニに入るなり、声を上げる梨那。
そんな梨那を俺は無視して
「何かいいの入ってないかなぁーっと」
俺は一人、飲み物の棚へ。
「あ、梨那、ミルクティーにしよう!!」
脇から梨那が声をかけた。
「こんな暑いのにミルクティーかよ……」
「だって、甘いの好きだもん」
「……ま、それならそれでいいけど」
俺も甘党だが……こんなクソ暑い日にミルク系の飲み物はちょっと……。
「……飲み物は止めにしよう……」
気分が優れなくなってきたので、ドリンクは止め……。
新発売の商品のチェックはまた今度だな……。
- 396 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:18:04 ID:d5g2kOvY
- 「えー……じゃあ、梨那もやめるよー。アイス買おうよ、アイス!!」
「そうだなぁ……アイスの美味い季節になったからな」
「うん。でも、梨那はいつでも食べてるけどねー」
「そうか、俺はあんまり……っていうか、コンビニでアイス買ったことないかも」
「えっ!?無いの!?」
「そんな驚くことか?俺は飲み物ばっかりだし、アイスは買わんな」
「そっかー。じゃ、コレ買わない?美味しいよー?」
そういって、端のアイスを指差す梨那。
「おい、一個250円もするぞ、これ?」
「うん、きっと美味しいよー」
「……食べたこと無いのか?」
「そのアイスは、こーきゅーんひんだよ?梨那があるわけないよー」
そういって、能天気に笑う梨那。
……コンビニで売ってる高級品か……小ちぇえなぁ……。
「まぁ……俺も250円もするアイスをちょっと買おうという気にもなれないけど……」
「だよねー。梨那はガリガリくんで我慢するよー」
「それも寂しいなぁ」
「しょうがないよー」
「じゃあさ、金半分出し合わないか?」
「え?」
「俺もなんか食べてみたいし、どうよ?」
「うーん……半分で125円か……うん、わかった!!半分出すよ」
「よし、決まりだな。さ、買って帰るぞ」
「うん」
高級品のアイスを一つ、レジに持っていく二人。
……持ってみると予想以上に小さいな、このアイス……。
- 397 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:18:36 ID:d5g2kOvY
- 「へへ〜、楽しみ〜!!食べよ、食べよっ!!」
コンビニから一歩出ると、早速切り出してくる梨那。
「早いな」
「早くしないと溶けちゃうもん。美味しいうちに食べよ!!」
そういって、俺の持つビニール袋を漁り始める梨那。
「ま、そうだなぁ」
「一口目はどっちが食べる!?」
「お前でいいよ……」
「え!?いいのっ!?」
「いいよ、別に」
「でも、ファーストインパクトだよ!?重要だよ!?」
「いいって、それぐらい」
「わーい、ありがとー、お兄ちゃん!!じゃ、遠慮なく、いただきまーす!!」
木製のスプーンで、すくって食べる。
「ん〜!!美味しぃー!!」
「そんなに?」
「うん。ほれ、食べてみてよ」
間接であることには一切気付かぬまま……梨那の差し出した、スプーンを口に運ぶ。
「うぉ……」
「美味しいでしょ?」
「コレ食ったら、普通のアイス食えんな……」
「ねぇー?もっと食べるー?」
そういってアイスを梨那から受け取る俺。
「半分は俺のもんだっての」
流石に、量が少ないので、俺の分はもう無くなった……。
食べ足り無い気持ちを抑えて梨那にカップを返す。
- 398 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:19:08 ID:d5g2kOvY
- 「それもそうかー。……小さな贅沢だねぇ……あ、もうないや」
「ほんと、高いし少ないな……」
「うにゃー……これが毎日食べられるようなお金持ちになりたいぃー!!」
コイツ、なんか色々小せぇ……。
「美味かったな」
「うん、また二人で買おうね?」
「まぁ、そうなっちゃうか……」
そう考えると、少し残念な気持ちになる。
「ま、贅沢はたまにするくらいで丁度良いというしな」
「そうだねー、毎日だと有難みが薄れちゃうかもね」
スプーンを咥えたまま喋る梨那。
「おい、梨那、ほれ」
ソレを見た俺は、梨那に手を差し出す。
「にゃ、何?」
「スプーン。さっきの袋に入れてやるから」
「い、いいよ!!」
「何で?」
「べ、別にっ!!」
「みっともないぞ?」
「う……で、でも……間接……」
「は?」
「な、何でもないにゃ!!」
- 399 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:19:40 ID:d5g2kOvY
- 「ったく、変なもん欲しがりやがって……でも、咥えとくのはやめろよ?」
「うん……わかりました……えへへ」
スプーンをハンカチで拭き、ポケットにしまう、何故か嬉しそうな梨那。
意味が分からず、流れた汗を拭く俺。
「ねぇ、お兄ちゃん?」
俺の目を覗き込む梨那。
そして、自分の唇をそっと撫でる。
「ん?」
「えへへ〜♪なんでもないよー!!」
「はぁ……?」
そんなこんなで、暑苦しくも、明るい生活に俺はまた汗を流すのでした……。
───────────────────────
- 400 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/12(水) 22:20:13 ID:d5g2kOvY
- 「あれ……ここじゃなかったかなぁ……」
埃っぽい押入れの中、様々なものをかきわけながら、ついついどうでも良いことを口走る。
「あ、何か探し物ですか、兄さん?」
パタパタと足音を響かせながら、俺の妹、未来が声をかけた。
「おー。あの、親父が買ったキャンプ用の折り畳めるテーブルなんだけど……」
「あぁ、あれですね。そこに無ければ外の倉庫じゃないですか?」
「やっぱそうか……。邪魔だから移したのかな」
「そうでしょうね……邪魔でしかたらね、アレは」
「じゃあ、外か」
押入れから脱出しながら、埃まみれのTシャツを手で払う。
未来は飛んでくる埃に少し顔をしかめながら、
「で、それを何に使うんですか?」
「あぁ、ベランダに置いて……」
「あっ、分かりました。今晩の花火ですね?」
「ご名答。ちょうど良い位置にこの家が立ってるし、今年は腰を入れて楽しもうかなと」
「へぇ、それはいいですね」
「良かったら、未来ちゃんもどう?」
「いいんですか?」
「もちろん。どーせ、一人で見る気だったし。せっかくだから、一緒に見ようよ」
「あ、それならお言葉に甘えさせてもらいますね」
「おー、じゃ、どうせやるなら、飲み物とかお菓子とか買ってこようかな」
「あ!!それなら、宴会用の料理作ります、私!!」
手を高く上げてアピールする未来。
嬉しそうだな……。
「何か本格的な宴会になってきたなー」
「ですね」
そう言って、嬉しそうに微笑む未来。
あぁ……和むなぁ……。
- 401 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/07/12(水) 22:24:12 ID:X9XiOkP1
- あぁ……ついにバーボンへ……
無理はするものじゃないね……
- 402 :ケータイより愛を込めて :2006/07/12(水) 22:50:46 ID:X9XiOkP1
- ゴメンなさい。
続きは俺のまとめサイトで……
- 403 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/07/12(水) 23:04:45 ID:0fxGV1eT
- >>402
まとめサイトのURLはっていただけるとありがたいですw
- 404 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/07/13(木) 06:44:55 ID:JyGJvyDX
- ttp://www.geocities.jp/you_say712/maturi.htm
……ホント申し訳ねぇッス……
- 405 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/07/13(木) 09:21:21 ID:xvxXS7d7
- >>404
ありがとうございますw
- 406 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/07/14(金) 15:27:04 ID:XTt1E6Ym
- >>遊星さん
乙です!
- 407 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/07/20(木) 03:53:13 ID:j+66GohR
- ハローハロー、あなたは何処にいますか。
ハローハロー、私は此処にいます。
ハローハロー、今日も世界は極めて正常。
ほしゅ
- 408 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/07/22(土) 22:44:53 ID:mLy7PqYj
- 続きはまだかなWKTK
- 409 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/07/24(月) 07:57:45 ID:ADsRNfIp
- 続きとは?
- 410 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/07/29(土) 13:19:26 ID:jM9oH1ca
- 夢ノ又夢氏に期待age
- 411 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/07/29(土) 22:52:58 ID:siebI3Cj
- >>410
俺も楽しみだ
- 412 :天神泰三 :2006/07/30(日) 07:18:07 ID:Nd6NDWPW
- おいどんの妹になってほしいでゴワス。
- 413 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/07/30(日) 12:05:45 ID:UO14f9H5
- どんつく、どんつく♪
- 414 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/07/30(日) 16:57:11 ID:NtPRfsI0
- 歌いなさいラーゼフォン
お前の歌を、禁じられた歌を…
歌いなさいラーゼフォン
いつか全てが一つになる時のために
- 415 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/07/30(日) 21:03:12 ID:+thpfUvY
- 気が付けばもう七月も終わり、祭りに乗り遅れてしまった・・・。
>遊星神
GJ、そしてお疲れ様です。
以前にも言いましたがやはり一度にこれだけのSSを書いてさら
にネタが被らないというのはマジで尊敬してしまいます。
未来ちゃんは相変わらず可愛いし、梨那ちゃんもカワイイし、葵
ちゃんは参考になるしで大満足の祭りでした。
>410様、411様
現在、二つの話が八割程度書けた所。
近々頑張って投下します。
- 416 :遊(ry ◆isG/JvRidQ :2006/07/30(日) 22:10:32 ID:i/zX7Wad
- >>415
お久しぶりっス。
先生の作品、楽しみにしてますから。
- 417 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/08/09(水) 00:42:05 ID:RWVNbJzz
- ほしゅ
- 418 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/08/17(木) 22:49:48 ID:QY6T/Z7W
- ほしゅ
- 419 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/08/21(月) 00:34:24 ID:vAxHPxrd
- 新作期待
- 420 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/08/22(火) 02:50:45 ID:In1PuziW
- ずんずんして
- 421 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/08/23(水) 19:16:00 ID:LTq/0BYS
- まだだ!まだ終わらんよ!
- 422 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/08/24(木) 23:03:18 ID:fyYMaYoF
- 恥こそ、もっとも身近な精神的苦痛ではないだろうか。
ほら、いつもいる場所から一歩入れば、ここは恥多き地……。
皆の視線が俺に集まっているような気がする……。
「んー……迷っちゃうなぁ〜」
……隣のお嬢さんは、俺の気など知らず、のんきに水着を選んでいる。
葵がどうしてもっていうから……仕方ないんだ、これは……。
そう自分に言い聞かせる。
「ねぇ、お兄ちゃんはどう思う?」
青いが二種類の水着を見せながら、俺に尋ねた。
どう思うといわれても……。
俺は戸惑いながら、
「え……あぁ……えっと……葵の好きな方でいいんじゃないか?」
「だから、どっちも凄く好きだから困ってるのよ」
「そっか……そうだよな……」
女の子と水着、という組み合わせが俺はどうしても恥ずかしくて、思わず眼を背ける。
すると……
「いててっ!!」
顎をガッ!とつかまれ、そのまま無理矢理首を曲げられる。
……な、なんて力だ……。
「お兄ちゃん?」
いつもより低いトーンで語りだす葵。
心なしか、笑顔も硬い……。
「は、はい、なに?」
「……別に。なんでもないけど……」
「はぁ……」
……また、ワケも分からず怒られるかと思ったけど……今日は機嫌が良いのかな……。
- 423 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/08/24(木) 23:03:54 ID:fyYMaYoF
- 「あ、コレもいいなぁ!!う〜ん、ホントに迷う……」
新しい水着を見つけてはしゃぐ葵。
やっぱり機嫌はよさそうだ。
「ねぇねぇ、お兄ちゃんはどんな水着が好き?」
「いや、俺は何でも良いけど」
「何でも?」
「いや、まぁ……限度はあるけど」
別に着ないしね。別に海にもプールにも行かないから。
「まぁ、学校のがあるし、俺は別にいいかなと思うんだけど」
「学校の……?それは……えっと……つまり……」
……顔赤いぞ、何だ……?
「あ、葵……?」
「帰ろっ!!」
「え?」
「いいからっ!!」
俺の手をひっぱり、どんどん進んでいく葵。
「そんなに急がなくても……いや、ありがたいけど……」
「だって、お兄ちゃんがそういうこと言うの珍しいじゃない!?」
「珍しいか?」
「うん。だから、ちょっと恥ずかしいけど……私……」
恥ずかしい……?
って、手、繋いじゃってるよ……確かに、コレは恥ずかしいな……。
- 424 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/08/24(木) 23:04:39 ID:fyYMaYoF
- 「ねぇ……お兄ちゃん」
「何だ?」
「ふふっ、別に〜♪お兄ちゃんも好きなんだから〜♪」
俺『も』好き……つまり、葵も好き……?
あぁ、何か美味いモンでももらったんだな……。
しかし、ホントに機嫌良いんだな……。
「ふむ、それなら早く帰らないと」
「ふふっ♥お兄ちゃんったら♥」
誤解は続く。
さらに続く。
ちなみに、事が起こった後も、俺は全ての誤解を解くことが出来なかったのだが……。
───────────────────────
永遠の前座、遊星登場。
夢ノ又夢先生の新作に強く期待する。
あと、>364-367あたりに酷似しているが、私は謝らない。
嘘です。ゴメンなさい。謝ります。
まぁ、夢ノ又夢先生の作品は凄いから……ねぇ。
- 425 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/08/26(土) 03:10:29 ID:qhS/H6Nv
- >>422-424
GJでふ!
スク水?
- 426 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/08/26(土) 03:56:07 ID:svrSX7u4
- >>422-424
スク水キタコレ萌えたよ
- 427 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/08/28(月) 12:00:13 ID:Buw/R2vD
- 保守
- 428 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/08/30(水) 22:04:36 ID:K0PbcXEr
- 「見事に雨だな、嫌になる位」
下校時間になって本格的に降り始めた雨、黒い雲がバケツをひっくり返した様な水を地面に叩きつける。
降水確率20%に裏切られた俺はただ黙って下駄箱の先の露帯びた世界を見詰めるしか出来ない。
それにしても朝の晴れ間が嘘みたいな状況、日頃の行いに何か問題点でもあっただろうか?
自分を省みていると唐突に視界に入り込む赤い傘、やはり割と良い日頃の行いのお陰で訪れる助け舟。
雨にも負けないサラサラの黒髪を靡かせ蒸し暑さとは無縁な涼やかな瞳で俺を覗き込む。
「はい、これはお兄ちゃんの傘」
「・・・おお、今日ばかりは巴に後光が差して見えるよ」
「傘一つで神様にはなれないよ、ふふっ、ホントに大袈裟なんだから」
「いやいや、結構な助け舟だよ本当に、お陰で雨の中をランニングせずに済んだ、感謝感激」
仰々しく手を合わせ拝む俺を横目で可笑しそうに眺めながら傘を差し出す巴。
二三、褒めちぎりの言葉が出そうになりながら受け取った傘を空に広げる、少しだけ気分の軽くなった足取りで。
「ところで、巴はいつまでそこで見てるんだ?早く帰ろう」
「うん、そうなんだけどボクの傘は忘れちゃって」
「・・・は?」
「だから、お兄ちゃんの分は覚えていたけれど自分の分は忘れてたんだよ」
「いつも鞄に折畳み傘を入れてただろ?」
「残念だけど今日に限って入ってない」
「それは残念だな」
「うん、残念無念」
言葉とは裏腹に少しも後悔の念の感じられない顔であっさり諦める巴、それどころか表情は心なし晴やかにさえ見える。
その爽やかさは重たい梅雨空とはあまりにも正反対の清々しさを感じさせる、流石は巴といった所だろうか。
- 429 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/08/30(水) 22:05:47 ID:K0PbcXEr
- そうなると俺が取るべき行動は一つ。
「・・・となると道は一つだな」
「いいの?お兄ちゃん」
「ああ、これは巴が使いな」
「え、えっ!?」
差し出された傘を前にやたらうろたえる巴、いや、俺はそんなに予想外な事をしたんだろうか?
「なんでそんなに驚くよ?一つしか無いんだから巴が使えばいいだろ」
「で、でも、それじゃお兄ちゃんが・・・」
「心配するな、馬鹿は風邪はひかない」
「そういう事を言うと思ってたよ・・・そうじゃなくて、二人共濡れずに帰る方法があるじゃない」
「ん?そんな方法あるか?」
「一緒に帰ればいいんだよ、一つの傘で二人・・・ね?」
「・・・言われてみりゃそうだよな・・・なんで気付かなかったんだ俺は・・・」
少しの間に簡単に出てきた解決法と自分の思慮の至らなさを感じつつ一人分のスペースを空けて傘を差す。
遠慮がちにそこへ入り込む巴を見届け、二人して霧の立ち上る雨の道を歩き出す。
傘の上で乱雑なリズムを奏でる雨音、日に焼けた星をこれでもかと潤そうとするこの季節特有の長い雨。
人影も車の一つも見えない幻想的な道をただ黙々と歩き続けると不意に隣から漏れ出る以外な言葉。
「・・・今日はラッキーだな」
「どこがよ、どっちかと言うと不幸だろ、晴れが大雨になるわ傘は一つしか無いわ」
「傘は一つだけどボクたちは二人、こんな雨の中を独りで帰らなくていいんだよ、それってラッキーな事だよね」
「ポジティブだねぇ、巴さんは・・・ま、一理あるな」
「それに・・・こういうの、なんだか映画のワンシーンみたいで素敵かな・・・って」
「ああ、雨の中、鳴り響く銃声、崩れ落ちる俺とピストル片手の巴」
「・・・どうしてそうなるの?しかも、ボクが犯人にされてるし・・・」
- 430 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/08/30(水) 22:07:47 ID:K0PbcXEr
- 不意に頭を過ぎる情景は何故かサスペンス仕立てな俺、その辺の理由は多分、発想が貧困な故だろう。
ジト目の巴を横にバツが悪く頭を掻いてワザとらしく前に向き直る。
「もう少しロマンティックな話にしようよ、折角の雨なんだから」
「折角、それにロマンティック・・・こういう時に使う言葉か?」
「こういう時だから使ってるの、こんな風に二人で帰る事なんて滅多にないんだから」
「いや、だから俺とムード出そうとしてどうするよ?」
「・・・手ごわいなぁ、お兄ちゃんは・・・お兄ちゃんだから、なのに・・・ボクはお兄ちゃんだけなのに」
「おいおい、何一人でブツブツ言ってるんだ?なんか怒らせるような事を言ったか、俺?」
「別に何も、何も無さ過ぎて物足りない位だよ・・・」
「そう言われてもな、ロマンティックと言われても俺にはパッと浮かばないんだよな、例えば何かないかな」
「例えば・・・そう、真っ暗な海の底みたいな世界に灯りが二つ、お兄ちゃんとボクと・・・寄り添う灯」
俯き加減だった肩が上がり、打って変わって思索を巡らせる真剣な顔に変わる巴。
右手の人差し指を唇の前にちょこんと置いて眉をひそめた顔まま巴は語りだす。
まるでバラバラのフィルムとスライドを一つ一つ重ね合わせていく様に。
「空の向こうにはそれよりもっと明るくて華やかな星の光が何百、何万とあって・・・でも違うんだ」
「違うって何が?」
「どんなに明るい光でもそれはボク達にとって何万とある光の一つ、でも隣にあるのはたった一つの光」
「・・・へぇ、なんか映画ってより詩の一節みたいだな」
「同じ物なんてどこにも無い、代わりになる物なんてどこにも無い、かけがえのない大切な光なんだよ」
「巴は詩人だったのか・・・なんかそのまま本にでも出来そうだな」
「あまりからかわないでよ、もう・・・」
「いやいや、普通に関心してるって、確かに俺に夕飯作ってくれる光なんて他には無いからな」
「えっ・・・」
なんとも不思議そうな顔で雨を跳ねない為にゆっくりしていた歩みがピタリと止まる巴。
当然、同じ傘に入っているこちらも留まる事を余儀なくされる。
タイミングの掴めない微妙な空白、途切れた会話の向こうに聞こえる雨音を意味も無く数えてみたりなんかする。
- 431 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/08/30(水) 22:24:50 ID:qIQ8yBlN
- 夢ノ又夢氏がいらっしゃったぞ!!
やっぱ、最高だー!!
- 432 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/08/31(木) 20:34:39 ID:U2xAs0Go
- >>428-430
GJ
- 433 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/09/01(金) 01:26:10 ID:Lp/7Dabe
- age
- 434 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/09/01(金) 07:06:40 ID:8QY3U6cg
- 「お兄ちゃん朝だよぉ〜!早く起きないと遅刻しちゃうよぉ?」妹の麻衣がいつものように起こしにくる。ただいつもと違ったことが一つオレが幼なじみの菜月を殺していたのである。
俺は正直焦っていたどう死体を処理すべきかどうバイト先の右門に言い訳すべきか…
「お兄ちゃん入るよ?」ガチャリ
考えているうちに妹の麻衣がオレの部屋に入ってきたのだ
- 435 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/09/01(金) 07:15:14 ID:8QY3U6cg
- 「え!?…な、菜月さん!?…し、死んでる…お兄ちゃんどうゆうこと!?」麻衣はオレに尋ねてくる。だがオレは答えない
「お兄ちゃん!返事をして!」
「うるさい黙れ!いいか?このことはさつきお姉ちゃんには絶対に言うんじゃないぞ!言ったらお前もこうなるんだ」
- 436 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/09/01(金) 21:46:46 ID:PFYNOR93
- 前回投下からちょうど一月、近々とか言っておいてえらく時間が掛かりました。
続きは近い内に投下します、いや、今度こそホントに。
>遊星様
スクール水着は反則でしょうw
誤解の一部始終が読みたい、是が否でも読みたいですw
- 437 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/09/02(土) 00:01:26 ID:UMDDMWqv
- 待つ時間は長いぜ
- 438 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/09/02(土) 01:48:01 ID:I+Qt+wbj
- >>遊星さん
GJです!スク水…(*´Д`)
>>夢ノ又夢さん
GJ!今回のは雰囲気がちょっと鍵っぽいですねw
- 439 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/09/04(月) 06:33:13 ID:cCQov9T6
- 部屋で懐かしのパラサイト・イヴをやっていたら妹がやってきた
「お兄ちゃ〜ん」
「んぁ?」テレビの画面を見ながら適当な返事をする
「ネギまのゲーム買ってきた」と言ってソフトを前に突き出す妹
「少し待て、今クライスラービルだからセーブまで多少時間掛かる」
手早くセーブをしてディスクを抜いて妹に場所を譲る
「ほれ、終わったぞ」
「ネギま〜」と言ってまたソフトを突き出す
「だからなんだよwイタい子みたいだからやめれww」
「やって?」
「は?俺が?意味がわからん」
「だって1人でやるの恥ずかしいんだもん」
「知らねーよw」
「お願い〜」
「そのぐらい自分でやりなさいw」
「じゃあお兄ちゃんそこで見ててね!」
「なんでだよw」
結局見ることになってトイレにも行かせてもらえない。
という夢を見た。かれこれ10年ぐらい妹が欲しいと嘆き続けた俺23、そろそろ重症です。
- 440 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/09/05(火) 18:04:09 ID:x1oVduXO
- >>439
> 「だからなんだよwイタい子みたいだからやめれww」
そっくりそのままおまいに言…えない俺ガイル…('A`)
- 441 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/09/06(水) 22:44:40 ID:RH9FdTlA
- ・前回のあらすじ
水着を買いにいった兄と妹。
しかし、兄の鈍感さから、誤解が勃発。
妹、葵は兄がスク水好きと勘違いしてしまう。
「ほら、お兄ちゃん、見て見て!!」
突如俺の部屋に現れた水着姿の妹を前に、しばし、固まる俺。
「……」
水着買ってたんだ。いつの間に……。
……。
アレか、俺がトイレ行った時だ。
結構時間かかったしな……時間はあったよな。
「変……?」
「い、いや、いいんじゃないか……?」
なんか学校で使うヤツみたいな感じだけど……
……まぁ、とりあえず褒めとけば間違いないよな……。
「ホント?よかった……」
安堵のため息をつく葵。
……安易なことを言ったと、少し罪悪感。
「お兄ちゃんがこの水着、好きだって言ってくれたから……思い切っちゃった、えへへ」
……言ったっけ?
必死で思いをめぐらす。
- 442 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/09/06(水) 22:45:26 ID:RH9FdTlA
- ……あぁ。
色は青系が好き。とは言ったな。
あと、露出は少な目の方が良いんじゃないか?という兄としての気遣い(それと、俺が恥ずかしくて見れないから)もした。
二つを統合すると……まぁ、こんなもんか。
もう一度、水着を見る。
「……っ……」
「どうかしたの?」
「いや、何も……」
……一瞬、スク水、とか、スク水着て……とか、考えた自分が恥ずかしい……。
そんなこと葵に言ったら、なんて思われるか……。
当の葵は、自分の体をあちこち見ながら、
「でも、ダメだ、これは家の中でしか着れないよー」
「ああ、そうか」
「まぁ……もともと、そのつもりなんだけどね」
そういって、俺にウインクをしてみせる葵……。
つーか……家の中で何に使うんだ……?
「……やっぱり、風呂か……?」
……素朴な疑問が口に出てしまった。
聞こえてなかったら良いんだけど……。
そう思っていたが、葵は突然スイッチが入ったように……
「お、お風呂っ!?え、何何!?どういうこと!?」
聞こえてたか……。
それなら、しょうがない。
「いや、入るんじゃないのか?」
「えっ!?そ、そんな!?お兄ちゃん、私、まだ、心の準備が……」
水着で風呂に入るってのは、そんなに覚悟のいることなんだな……。
女の子って難しいなぁ……。
- 443 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/09/06(水) 22:46:14 ID:RH9FdTlA
- 「……え?」
「あ、でも……イヤじゃないんだけど……!!」
「……はぁ……」
「……でも、私、初めてだから……最初は、普通にしたいな……?」
「まぁ、よく分からんけど……好きなようにしたらいいんじゃないか」
「……うん。ありがとう、ゴメンね?」
「謝ることじゃないだろう、俺は関係ないし」
俺がそう言うと、
「……え?」
目の前の葵の動きが固まる。
「え?何?俺関係あるの?」
「……ねぇ、お兄ちゃん。何の話?」
目の座った葵が、低い声で尋ねた。
……何だ、このプレッシャーは……。
「葵は水着を着て風呂に入るって、話じゃなかったか?」
何だかポカーンとしてる葵。
徐々に俯き……何だか震えてますけど……。
「……お……」
「お?」
「お兄ちゃんのバカぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!!!!」
「っ!?……何故……」
……葵のボディーブローをモロにくらい、その場に膝をつく俺。
「喜んで損したよっ!!もうっ!!」
怒った様子で出て行く葵。
尚も動けず、しゃべることもままならぬ俺。
何にも分からぬまま喰らったパンチは、涙が出るくらい痛いんだね、チーフ……。
───────────────────────
- 444 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/09/06(水) 22:47:29 ID:RH9FdTlA
- 一人前の前座を目指して、今日も貼り貼りっと。
でも、名前を忘れるようじゃねぇ……
本来作るつもりの無かった続編。
……姉のテイストが少し入ってる気が……。
夢ノ又夢先生の作品がまだ続くようなら、葵視点のものもその前座で書くかも……。
- 445 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/09/12(火) 23:15:42 ID:o0VcQwlS
- 俺はスレストすることにおいても頂点に立つ男らしい……。
ところで、質問。
新しい妹で新しい話を書き始めたんだけど、よく考えたら、最初の方は妹関係ない。
それでも貼っても良いのかな……?
- 446 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/09/13(水) 05:31:52 ID:oZFQ6p5A
- 新しい妹貼っておくれ(´∀`)
葵もよろすく!
- 447 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/09/16(土) 23:15:10 ID:hshwH5iR
- 突然振り出した雨。
空はどんよりと曇って、どうやらすぐには止みそうにない。
駅前の街灯時計の前には、俺を除いて誰もいない。
両手に持った二本の傘を見比べ、俺は小さくため息をついた。
「早く来すぎたか」
約束の時間まで、あと三十分以上。
ある程度の時間的余裕を確保しておかないと落ち着かないという病気を抱えた俺だが、
今回の予想以上の待ち時間に、少しうんざりする。
と、いいつつも……心の準備をする時間が出来て、少しホッとしたワケだが。
どこか休める場所があれば良いのだが。
そう思い、辺りに目を向けると、少し先のほうに、喫茶店らしき店が。
丁度良いとばかりに、迷わずその店に入る。
……それが悲劇の始まりだった。
「おかえりなさいませ、ご主人様♥」
何かすごい服装の女性に出迎えられ、一時、全てを忘れる。
「……?」
「こちらへどうぞ♥」
「あ……はい……」
……ショックで完璧に自分を失った俺は、言われるがままにテーブル席へ……。
まぁ……ここなら、さっきの時計もよく見えるな……と少し冷静だった。
「お飲み物は?」
「……アイスコーヒーで……」
「かしこまりました♥」
……。
水を一気に飲んで、少し冷静になる。
なるほど、ここが噂のメイドカフェというものか……。
しかし、田舎だ田舎だと思っていたが、メイドカフェなんてものがこの町にあるなんてなぁ……。
物凄い場違い感を抱えながら、窓の外をずっと眺めている。
とはいえ、しばらくすれば少し慣れてきたのか、
今まで忘れていた緊張やら不安やらが込み上げてきた。
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0ch BBS 2004-10-30