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[第五弾]妹に言われたいセリフ

635 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/08/19(金) 22:30:30 ID:1Nvq5qMq
夏になると寂れるのは、ここの特徴みたいなモンだ。
どんな状況でも、俺だけは沸いて出るから気を抜くな。早速、始めようか。

「はぁ……」
胸を押さえて、ため息。

─今日こそ、言うんだ。お兄ちゃんに。
─チャンスは……もう、今日しかないんだから……
─勇気を出さなきゃ……

あと10秒……9……8…………0。
待ち望んでいた授業終了のチャイムが鳴りました。
時計とのにらめっこは、私の勝ちみたいです。
みんなが立ち上がり、礼をする。そして、騒がしくなる。
そんなあの人の教室を私は廊下から、こっそりと見ています。
あの人は……いました。
日直なのでしょうか……黒板を消しています。
お疲れ様です。と心の中で呼びかけます。
あの人は、思ってたよりも、几帳面みたいで……。
何度も黒板の前を往復しています。
それが意外でもあり、微笑ましくもあり……じれったくもあります。
ふと視線を落とす。
私とあの人のお弁当。
今日は一生懸命頑張ったんですよ?
最後……ですから。
そう思うと、少し悲しくなってきました……いけませんね、こんな弱気じゃ。
だって、今日は……


636 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/08/19(金) 22:31:01 ID:1Nvq5qMq
「ねぇ、そこのキミ」
そんなことを言う男の人の声が聞こえます。
下を向いているので分かりませんが、コレが、ナンパというものでしょうか。
頑張ってくださいね。
「ねぇ、キミだってば」
またそんな声がします。
あらら……ナンパ、失敗でしょうか……?
……?
何でしょう。
右の肩の上に何か……?
顔を上げて、右の肩を見ると……手が……。
その手の先には……知らない男の人の肩……。
私……?
「私……ですか?」
「うん。キミ、最近いつもいるよねー?カレシ待ち?」
「え……えっと……違います……」
一応……カレシ……では……ないですよね……。
え……?一応……?
少し、引っかかりますが……この際無視します。
「そうなんだー。そんならさ、オレと昼メシでも食いに行かねー?」
「え……?」
「あ?もしかして、こういうの初めて?だいじょーぶだって。変な事しねーから」
「で、でも……」
「あ?迷ってる?じゃあ、オレのオゴリでいいよ。どーよ?」
「……あ、あの……」
「ん?行く?」
「え……えっと……」
困り……ました……。
早くしないと……お兄ちゃんが……。
───────────────────────

637 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/08/19(金) 22:31:35 ID:1Nvq5qMq
水道の水でチョークの粉で汚れてしまった手を洗う。
水が冷たくて気持ち良い。
そのまま、つい顔まで洗ってしまう。
「ふぅー」
夏の必需品、タオルで顔を拭く。
窓から外を見ると、気持ち良いほどの青空。
オレも、今日から本当の夏休み。
補習最終日に日直とは運が悪いけど……仕事ももう終わった。
何も気にすることは無い。
「さてと、帰るとしますか」
足取りも軽く、帰り支度のため教室へ向かう。
大した荷物もないので、一瞬で荷物をまとめ、教室を後にした。
教室の戸の前にいたのは、羽音ちゃんの背中と……彼女の前に立つ知らない男。
え……何でっ!?
何もせずにそこに立っているのもアレなので、慌てて教室に身を隠す。
教室内でホッと小さくため息をつく。
とりあえず……そう!状況の整理だ!
えっと……とりあえず、羽音ちゃんと、男A。
あの男A、羽音ちゃんの知り合いだろうか……。
羽音ちゃんの肩に手なんか置いてたし……。
よく考えれば、ここは羽音ちゃんの地元。
しかも、この学校には、この市出身の人が多いみたいだし、
羽音ちゃんの中学の先輩とかがこの学校にいても何もおかしくは無い。
何処にでもある、久しぶりに会った先輩との会話。
そう考えるのが、一番合理的だ。
それだけだ。
それだけ……なのに……何か腹立つ……。

638 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/08/19(金) 22:32:06 ID:1Nvq5qMq
まぁ、いい。
合理性の面では、ある程度納得の行く答えを得た俺は、することもなくなったので、
こっそりと羽音ちゃんの様子を伺ってみた。
二人は、まだ話してる。
会話する男と女。別によくある光景だ。
だが……ホント、イライラする。
さっきから、何でこんなに怒ってるんだ。ってぐらい腹が立つ。
さすがに俺がこんなことに口挟むの悪いと思って我慢してたが、もう我慢の限界!!
バッグを背負い、男Aに向かっていく。
羽音ちゃんの背後から、その男に向かって声をかける。
「「あの……」」
ハモった。
振り返った羽音ちゃんと目が合う。
「お、お兄ちゃんっ!?」
羽音ちゃんが、驚きで目を大きくさせて言った。
作戦変更。
この際、羽音ちゃんで良いや。
「よっ」
右手を上げ、羽音ちゃんに挨拶。
「羽音ちゃんの知り合い?」
「いえ……えっと……」
羽音ちゃんが、チラリと男Aを見る。
男Aは困惑したように視線をそらしたが、すぐにこちらに向き直り、
「あ、いえ、何でもないんス。一緒にご飯でも食べに行こうかな。なんて」
「そうなんだ」
心の中で胸を撫で下ろす。
……が、まだ安心は出来ない。羽音ちゃんがどうするかだ。

639 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/08/19(金) 22:33:26 ID:1Nvq5qMq
「えっと……それなら、俺はお邪魔かな?」
「い、いえっ!!そんなこと、ないですっ!!」
俺は二人に尋ねたつもりだったが、羽音ちゃんが答えた。
「あ……でも……この人は……」
羽音ちゃんは、もう一度男Aに向き直り……
「あ、あのっ、すいませんが……お断りさせていただきますっ!!」
頭を下げ、言った。
気まずそうに、俯く男A。
ちょっと可哀想だな。とも思ったが……嬉しい気持ちが勝った。
「行こうか?」
「はい」
並んで歩き出す二人。
さっきまでのイライラと一変して、凄く良い気分。
青い空がさっきよりも何倍も気持ちよく見えた。
───────────────────────
「はい、お兄ちゃん、どうぞ」
公園の噴水の前のベンチ。
いつもの場所に二人で座って、羽音ちゃんのお弁当を食べる。
「うん。ありがとう」
緊張した面持ちの羽音ちゃんによって手渡されたお弁当箱。
蓋を開けると、美味しそうなおかずが、キレイに敷き詰められている。
「お、今日も美味しそうだね」
緊張をほぐすため、そう言って羽音ちゃんに笑ってみせる。
「あのね……」
しかし、羽音ちゃんは緊張した顔のまま、小さな声で呟く。
「うん」

640 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/08/19(金) 22:33:59 ID:1Nvq5qMq
「今日は……全部、私が作ったんだよ」
「羽音ちゃんが?」
「うん。昨日までは、お母さんと一緒だったんだけど……今日は私一人で作ったんだよ」
そこまで言って、俯いてしまう羽音ちゃん。
「だって……今日で最後だから」
「最後って?」
「補習……今日で終わりなんですよね……?」
「ああ、そうだけど?」
「だったら……もう……お兄ちゃんに会えない……」
「え?何で?」
「だから……もうお兄ちゃんが学校に来ないから……」
だんだん小さくなる声。
最後にはもう、聞こえないぐらいまでになってしまった。
「ねぇ、羽音ちゃん?」
「はい……?」
「俺は今夏休みが始まったトコだよ?
 明日からは、ついでじゃなくて、羽音ちゃんに会うだけのためにこっちに来れるし、
 羽音ちゃんと一緒にどっか遊びにも行けるんだよ?」
「……」
「毎日だって会えるんだよ、俺たち。っていうか、俺は毎日会いたいんだけど」
「え……それって……」
「まぁ、まだ待ってよ。
 話は変わるけど、さっき羽音ちゃんが男と話してて凄くムカついたんだよね」
「うん……」
「だから……何て言うのかな……羽音ちゃんには……
 俺以外の男とは出来るだけ話して欲しくないっていうか……」
「お兄ちゃん……?」
「いつでも羽音ちゃんと一緒にいたいし、俺だけの羽音ちゃんでいて欲しい……」
「……」
「あぁ、もう!!つまり!!上手くいえないんだけど、俺、羽音ちゃんのこと、好きなんだよ!!」

641 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/08/19(金) 22:34:30 ID:1Nvq5qMq
……言ってしまった。
肝心な羽音ちゃんは……俯いたまま反応が無い。
さっきの男と同じ、どう断ろうか困ってるって感じかな……。
「あ、変な事言ってゴメン……イヤなら忘れてくれて良いから……」
「……せん……」
羽音ちゃんが何かを呟く。
「え……?」
「私、絶対に忘れませんっ!!だって……凄く……嬉しいから……っ!!
 わ、私も、ずっとずっと……昔から……お兄ちゃんのこと、好きだったから」
「羽音ちゃん……」
「私も……今日言おうと思ってたんです。でも……お兄ちゃんに先に言われちゃいましたね」
微笑む羽音ちゃん。
「可愛いね、その顔?」
「お、おおおおお兄ちゃんっ!?」
顔を真っ赤にして、慌てる羽音ちゃん。
やっぱり可愛い。
今までよりも、ずっとずっと。
「早速だけど、遊びに行こうよ。今から」
「え……?」
「嫌?」
「ううん!!行きたい!!」
「良かった。でも、その前に、お弁当を頂こうかな」
「はい!!」
幸せそうな羽音ちゃんの笑顔を見ながら、茄子の煮物を口に運ぶ。
「うん。美味しいよ」
「ホント?」
「うん。食べてみなよ」
「……あ、ホントだ。良かった……。ちゃんと柔らかくなってますね」
「うん」
「でも……ちょっとお醤油入れすぎかなぁ……」

642 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/08/19(金) 22:35:05 ID:1Nvq5qMq
ちょっと考えるように、俯き加減になる羽音ちゃん。
この瞬間でも、羽音ちゃんの顔が可愛すぎて……
「羽音ちゃん」
羽音ちゃんが振り向く。
その瞬間、羽音ちゃんの唇を奪う。
「ん……んー!!」
羽音ちゃんはパニックになって、手をジタバタ。
俺はちょっと意地悪して、強く唇を押し付ける。
とはいえ、さすがに悪い気がするので、お子様のキスだけでやめておいた。
唇を離す。
羽音ちゃんは、俺の顔をジッと見ながら、唇を手で押さえた。
「んー。砂糖かな?甘くて美味しいよ」
「お、お兄ちゃん!!」
「いやぁ、悪い悪い」
「私……初めて……だったのに」
「俺とじゃ嫌?」
「ううん……でも、初めてはもっと素敵なシチュエーションでしたかったな……」
「う……そ、それは悪かった」
「謝っても……手遅れですよ」
「いや、ホント反省してるから……許してくれ……」
「許しません!!だから……お返しですっ!!」
視界に空が広がっていく。
青空をバックに、頬を赤らめた羽音ちゃんの顔。
その顔が、徐々に近づく……。

高校最初の夏休み。
今年は……今までで一番、楽しくなりそうだ。

643 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/08/19(金) 22:36:05 ID:1Nvq5qMq
〜エピローグ(?)〜
「い、意外と羽音ちゃんも大胆だね……」
「私も……お兄ちゃんと同じなんです。
 お兄ちゃんのことが、好き過ぎて……我慢できなくなっちゃっただけですよ」
「なるほどね」
「えへへ……お兄ちゃん、大好きです」
「……」
「ほら、お兄ちゃんも」
「え……俺も言うの!?」
「当たり前です。私だけなんてズルいです」
「……あんまり、そういうの何度も言うのってカッコ悪いと思うんだけどな」
「そんなことないですよ!!さぁ!!」
「羽音……」
「はい」
「愛してるよ」
「はい!!」

[終わり]
───────────────────────
この兄妹、前の一回で終わるつもりだったけど……気に入ったんでもう一回。
ここまでハッキリした両思いは初めてだから、やりたい放題書いた。
書いてるうちに、やりたいことがポンポン浮かんできて……。


あと、そろそろ次スレのことも考えなきゃならなくなってきたよ。

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0ch BBS 2004-10-30