■スレッドリストへ戻る■ 全部 1- 101- 201- 301- 401- 501- 601- 最新50
[第六弾]妹に言われたいセリフ
- 72 :名無しくん、、、好きです。。。 :2005/11/06(日) 16:00:57 ID:JK9hZa0W
- >>71
掘れ
なんて無責任な事を言ったら駄目だな
- 73 :名無しくん、、、好きです。。。 :2005/11/06(日) 18:14:07 ID:rCI6JJj2
- BLはイラネ。
- 74 :前スレ260 :2005/11/06(日) 21:26:10 ID:3u8+UvuN
- 「勿論、好きだよ・・・お兄ちゃんの事」
「な、なんだよ?急に」
「・・・変な意味じゃないんだよ、ただこれからもお兄ちゃんと一緒がいいなって・・・うん」
「あ、ああ・・・解ってる」
解っているのは頭だけで実の所、心の方はどうだか自分でもよく解らない。
細い指でコップの縁をなぞりつつ上目遣いな巴。
変にシャキッと背筋が伸びる俺。
苦し紛れに視線を逸らしても無口になった眼差しが痛い程に頬に突き刺さる。
さっきとはまた違う二人を包む微妙な空気。
「お待たせしました。スペシャルトロピカルジュースです」
そんな空気もようやくやって来たメニューにより変わる・・・筈だった。
「あっ・・・」
「げっ・・・」
やたらと豪華に盛り付けられたフルーツ、大きなグラスの真ん中にハートの軌跡を描き
巻き付いた二つのストロー。
もはやこれ以上、説明の不要な物がテーブルの上に鎮座している。
まさか、これがくるとは・・・あまりにも予想外。
「・・・あ、あのさ、巴」
「お兄ちゃん、男に二言は無いよね?」
「うっ!?」
「責任・・・とってね」
両手を組んで頬杖をついた女神の微笑み。
振り込んだダイスの目が全て裏目に出た男。
汗をかいたグラスと曇り硝子の向こうの気だるい日差し、そんなある日の午後。
- 75 :前スレ260 :2005/11/06(日) 21:42:05 ID:3u8+UvuN
- とりあえずこの話は一段落。
次の投下予定は文化祭話です。
いや、ヘタすればクリスマスの方が先になったりして。
そんな事より、暫く間を空けていたら神々が降臨!!
皆さん相変わらずの高いクオリティ、頭が下がります。
- 76 :No.2 :2005/11/07(月) 01:09:31 ID:cw/NZURj
- どもども
前スレがdat落ちしたので、うpりました
つ http://www.geocities.jp/mewmirror9/1110717816.html
- 77 :名無しくん、、、好きです。。。 :2005/11/11(金) 19:18:19 ID:++NYqpqQ
- 人が射ない
- 78 :名無しくん、、、好きです。。。 :2005/11/11(金) 21:57:05 ID:HVOHfyu8
- >>77
ここにいるぜ
- 79 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/11/11(金) 22:36:45 ID:xrV1rg6y
- ……貼ろうと思ったけど、上の方にあるんで保留。
- 80 :しゅーまつ :2005/11/12(土) 03:13:55 ID:FpAzIwNG
- >遊星氏
お願いしまつorz
- 81 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/11/12(土) 23:18:05 ID:cwp0+9it
- 雲ひとつ無い秋晴れの空。
十一月とは思えない暖かい日差しに、強制的に冬服になってしまった制服の袖をまくり、
俺、州田敬介は校舎内をブラブラ歩いている。
今日は年に一度の文化祭!とのことで、校舎内は活気と人間と甘い香りに溢れている。
とはいえ、俺は大した目的も無く、飲食をするような気にもなれない。
なので、こうしてブラブラと歩いているわけだ。
ちなみに、本来今日は日曜なのだが、文化祭のため、全員出校。明日は代休だ。
「誰か暇なヤツいねぇかな……」
友人はみんな用事や、やることがあるらしく、忙しくしている。
唯一の暇人だった友人、立花将人もどっかの教室で何かやるからと、走っていってしまった。
「あの時、立花についていきゃよかったんだよ」
そんなこと呟いても、今更どうにかなるものではない。
せめて、どこかゆっくり静かに座れる場所でも有れば良いのだが……
そう思い、キョロキョロと辺りを見回す。
とはいえ、基本どこもスペースの奪い合い……使ってない場所なんてある訳無いわな。
「自己主張が激しいよな。みんな」
そう皮肉ってみるも、無性に悲しくなった。
俺が少し校舎の端のほうに足を運ぶ。
すると、
「あ……」
体育館のところにいるあの人間は……俺の幼馴染、相川梨那だ。
足を止めて、梨那の様子を眺める。
梨那は体育館の近くに置いてある下駄箱の前で、両手で胸を押さえている。
ここからでは、あまり顔が見えない。
体調でも悪いのだろうか……。
- 82 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/11/12(土) 23:18:48 ID:cwp0+9it
- ま、とりあえず、声かけてみよう。ヒマだし。
「よぅ、梨那」
俺は渡り廊下を通って体育館へ行き、後ろからこっそり梨那の肩を叩く。
「にゃっ!?」
そんなに驚いたのだろうか、大きく体を震わせた後、地面にペタンと座り込んでしまう梨那。
「お、お兄ちゃん……!?」
「そんな驚くことはねぇだろ」
相手に冗談で言った言葉が図星だったときのような、微妙な罪悪感を感じてしまう。
「あ、うん……ゴメン」
気のない返事を返す梨那。
「ほらよ」
とりあえず、梨那に手を差し出す。
「うん……」
しかし、梨那は俺の手を取らず、魂の抜けたような顔でボーっと俺の顔を眺めている。
「どうかしたか?」
「えっ……あっ、うん。なんでもないよ」
「ならいいけど。それより、お前ヒマか?ヒマなら、どっか一緒に巡ろうぜ?」
「あ、ゴメンね。梨那、やることあるから」
やっと、俺の手を取り立ち上がる梨那。
パンパンと制服のスカートの埃を払う。
「そっか、まぁ頑張ってくれ」
「うん。ありがとう、お兄ちゃん。梨那、頑張るね?」
俺の手を両手で握りながら、梨那がまじまじと俺の顔を見つめる。
言っておくが、俺は別に変な気は起きてない。
ただ、心配にも似た疑問を持ってしまったのだが。
「お……おぅ」
何を頑張るのかは不明だが、とりあえずそう返しておく。
- 83 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/11/12(土) 23:19:32 ID:cwp0+9it
- つーか、ホント、何をするのだろう。
演劇をやるにしては、服は普通だし、裏方だとしても、意気込みすぎだ。
いろいろ考えたが、予想もつかないので、直接聞いてみることにする。
「ところで、梨那、お前何を……」
と、言いかけたが、肝心の梨那はいつのまにか遥か遠く。
体育館の裏口に入っているところだった。
梨那は一度、そこから顔を出して、笑顔で俺に小さく手を振った。
そして、また見えなくなる。
これでまた暇つぶしの当てがなくなってしまった。
「あ、そうだ」
ポケットの中に文化祭のパンフレットを入れていたことを思い出す。
ポケットの中から、八つに折りたたまれた、
黒一色の、いかにも手書きです。という感じのパンフレットを取り出す。
「えっと……今の時間、体育館でやってるのは……お、あった」
そこには、確かに『文芸部』との文字が。
梨那は文芸部じゃないハズだ。じゃ、何で……?
つーか文芸部が舞台で何すんの……?
「ま、どーせヒマだし、見てくか」
パンフレットを折りたたみながら、入り口へ向かう。
中に入ろうとすると、前に立っていた男子に呼び止められた。
「あの、チケットは?」
「え?いるの?」
暇つぶしに今見ていこうと思ったのだ。もちろん持っているわけが無い。
もっとユルい出し物だと思ったので、ちょっと驚く。
「じゃ、買うよ。いくら?」
「いえ……完全前売りになってますから」
「あぁ、そう……」
ここで抗議するほど見たいわけじゃないし、何食わぬ顔で言う。
まぁ、文芸部と梨那との関係が分かれば良いわけだし。
- 84 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/11/12(土) 23:20:04 ID:cwp0+9it
- 「ところで、キミ、文芸部?」
「はい」
「今から、何すんの?」
「作品の朗読会ですけど」
……文芸部を悪く言うつもりは無いが、
金を取る上にチケットは前売り、しかも内容が朗読じゃそんなに客は入らないだろ……。
「チケットはどう?売れてた?」
「はい。ほとんど完売で」
マジか……。
すげぇな、いろんな意味で。
「そっか……ところでさ、相川梨那って知ってる?」
「はい!!もちろん!!」
「そんな有名なんだ。さっき、裏口にいたんだけど、何かするの?」
「あ、はい。特別に参加してもらうことになったんです。
彼女のおかげで、こんなにお客さんが来てくれて……もう感激ですよ」
「そんな凄いんだ、アイツ」
「はい!凄いです、相川先輩の詩、すごい感動しますもん」
「ふーん」
梨那とはずっと一緒だったのに、知らないことってあるもんだなー。
って、梨那の詩なんて、小4のときの花だか草だかのヤツしか読んだことないんだよ、俺は。
それだって、そんなに感動した記憶は無いが……。
一人記憶をめぐっていると、急に体育館内が静かになる。
舞台の上には、司会がいつのまにかいて、その司会に呼ばれ、文芸部員と思われる数名が舞台袖から現われる。
そのなかには、よく知ってる梨那の顔が。
……ガチガチだよ、アイツ。
- 85 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/11/12(土) 23:20:36 ID:cwp0+9it
- 「なぁ、キミ」
「はい?」
「すぐ出るから、ちょっとだけ入ってもいいかな?」
「え……?」
「いや、司会の間だけ。頼む」
「……分かりました。ホント、約束は守ってくださいよ?」
「当然だ」
俺は、スリッパを脱ぎ、体育館の中に入っていく。
満席といっても、体育館全てを埋め尽くすほどの席は無い。
俺は後ろの方に立って、舞台を見る。
みな座っている中で、一人立っているのは凄く目立つ。
梨那もこちらに気付いたようで、「どうしよう……」みたいな視線を俺に向ける。
俺にはどうしようもない。
変わってやることなんてできないし、そもそもすぐにココから出て行かなきゃならないんだ。
さっきの部員がにらんでいる。
「せっかちだな」
俺は一言だけ呟いて、右手の拳を前方に思い切り突き出す。
そして、親指を天に上げる。
「頑張れよ」
俺のいいたいことが分かったようで、小さく頷く梨那。
俺もうんうんと頷いた後、振り返って体育館を後にする。
「そういや、真司の妹が喫茶店やってるっていってたな。遊びに行くか」
と言うわけで、このあと、体育館で起こる出来事を……俺は知る由がなくなってしまったのである。
───────────────────────
- 86 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/11/12(土) 23:21:44 ID:cwp0+9it
- まぁ、あの後はいろいろあった。
三上兄妹に会ったし、立花と石川ツインズの喫茶店にも行った(二人のウエイトレス服、つーかメイド服が最高でした)。
考えてみると、俺の文化祭はヒマに始まり、メイド服に終わったわけだ。
飾り付けられた教室で適当にHRを終え、あとは帰宅するだけである。
特に思い入れがあるわけではないが、いざ終わってみると、何となく寂しい。
ま、すぐ忘れるだろうけど。
「さ、帰るか」
教室の外。俺が歩き出そうとすると、
トントンと誰かが俺の肩を叩く。
「お兄ちゃん……」
梨那だった。
梨那は体を丸め、俺の背中に張り付きながら、俺に囁く。
「よう、梨那。どうかしたか?」
「にゃっ!?静かに!!」
「あぁ、スマン。で、どうかしたのか?」
「文芸部の人から逃げてるの〜!!」
梨那は俺の肩越しに、向こうを見ながら、小さな声で言う。
「何で?」
「打ち上げに参加して欲しいんだって〜」
「大活躍だったんだろ?行けばいいのに」
「だって〜……苦手なんだもん、ああいう真面目な雰囲気って〜」
「確かにな」
「でしょ〜?」
「で、それはいいが……何故俺のところに来た?」
「えへへ、お兄ちゃんをお誘いに来たのー。ねぇねぇ、二人で後夜祭いこーよー!」
「後夜祭なんてあるんだ……」
「うん。でも、嬉しいよー!!梨那、まだ全然お兄ちゃんと文化祭してないもん」
文化祭する:自サ変動詞。文化祭を楽しむこと。
「そーだな。このまま帰るのもつまらないし、付き合うよ」
- 87 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/11/12(土) 23:22:42 ID:cwp0+9it
- 「わーい!!やったねー!!さぁ、れっつごー!!」
後ろから、俺の首に抱きついて、頬ずりをする梨那。
「いや、退けって!!苦しいから!!」
楽しいことは二人で。
……何となくだが、今日一日がつまらなかった理由が、わかったような気がした。
───────────────────────
さて、少し話は戻るが、俺が帰ったあとの体育館。
特別ゲストとして呼ばれた梨那。
梨那の誰かさんへの想いを綴った詩は、
内容もさることながら、梨那の話し方にもその人をラブな気持ちが篭っていてステキだった。と言う。
さらにブラスバンド部が、これまたステキなメロディーを奏で始めたから、さぁ大変。
一人のカップルがキスし始めたのを皮切りに、会場内では幾度と無くキスをするカップルが見られ、
ついには噂が噂を呼び、告白の会場みたいになってしまったらしい。
結局文芸部の発表は有耶無耶になったが、成功に終わったと判断したとか。
……と言うのが、俺の後日聴いた話だが、どこまで話の尾ひれなのか分からない。
というか、ほぼ尾ひれのような気がする。
それより……その誰かさんって、誰だよ……?
まだ梨那には知らないことがある。今回それを学んだが……
……ちょっと、ムカつくよな。
───────────────────────
まず、ゴメンなさい。
文化祭話なんで、先生のとカブってます、ゴメンなさい。
つーか、変な話でゴメンなさい。
あと、別に文芸部を悪く言うつもりは無いです。気に障ったらゴメンなさい。
必要と有らば、土下座します。つーか、自害します、自害。
- 88 :名無しくん、、、好きです。。。 :2005/11/12(土) 23:34:13 ID:9eaKG29v
- んじゃしてみてクダサイ
- 89 :名無しくん、、、好きです。。。 :2005/11/13(日) 00:34:49 ID:k8ncuygL
- お兄ちゃんせっくすってなに?せっくすしたいのせっくすしたいの〜!せっくす教えて〜!
- 90 :名無しくん、、、好きです。。。 :2005/11/15(火) 01:09:27 ID:23uZB45s
- >>81-87
続きはあるんすか?
- 91 :しゅーまつ :2005/11/19(土) 04:52:37 ID:dQtvhR/m
- >遊星氏
GJ
これからも良い萌え作品をお願いします
>88
まぁまぁ
- 92 :前スレ260 :2005/11/20(日) 21:10:01 ID:pUindH0o
- キャンバスを灰色で塗り潰した様な空。
重たげな雲にも秋の気配を感じつつ早足で家の扉を開ける。
こんな日は家の明かりが妙に暖かい。
「ただいま・・・っと」
「あ、おかえりなさい、お兄ちゃん」
台所で夕飯の準備をしていた巴が俺に向き直って丁寧に迎えてくれる。
しかし、制服の上にエプロンとはまた通好みな格好だこと。
「巴も遅かったみたいだな」
「?・・・ああ、この格好なら解っちゃうね」
エプロンの裾を掴んで巴がはにかんでみせる。
やたらと破壊力のある仕草と姿、もう少し元気があればつい頭を撫でてたかもしれない。
ちなみにこのエプロンは巴お手製。
真ん中に描かれた二匹の子猫がワンポイントだ。
「今日は寒かったね、ココア入れる?」
「そんじゃ、貰おうかな」
コポコポとカップにお湯を注ぐ音を耳に深くソファーに沈みこむ。
なんか・・・このまま寝たいな。
「・・・はい、遅くまでご苦労様」
「ん、ありがとよ」
「文化祭の準備は大変みたいだね」
「ああ、当日まで時間が無いからな」
- 93 :前スレ260 :2005/11/20(日) 21:11:08 ID:pUindH0o
- 今回の文化祭は自分のくじ運の悪さを思い知る事になってしまった。
今年は出店の数が去年より一つ多い。
うちのクラスが屋台造りから始める。
その一番キツイ屋台の製作に役が当たる。
全てが当たるのは相当な確率だと思う。
「で、巴の方はどうだ?巴達の学年は体育館で発表会だろ」
「うん・・・順調、かな」
湯気の立つマグカップを二つテーブルに置いてわざわざ真隣りに座る巴。
そんな巴の物言わぬ抗議に応じてとりあえず体を起こす。
「そんなに王子様が嫌なのか?」
「・・・知ってたんだ」
「校内にいれば自然と耳に入ると思うぞ、確か演目はシンデレラだっけか」
「・・・別に役は嫌じゃない、やるって決めたのはボクだから・・・」
「そうだな、例え女子推薦で勝手に選ばれたとしても、な」
「!?ど、どうしてそこまで解るの?」
不思議そうな顔した巴を横にココアの甘い香りに誘われて口に含む。
張り詰めた疲れを溶かすにはちょうどいい甘さ。
「そりゃあ解るさ、俺は巴の兄ちゃんだからな」
「・・・そっか・・・ふふっ、そうだね」
嬉しそうに納得した面持ちでココアに口を付ける巴。
まぁ、俺が兄でなくとも解ったとは思うが・・・誰が考えても当然の配役だし。
「お兄ちゃん、ボク・・・頑張るよ」
静かに、はっきりと自分に言い聞かせる様な巴の決意。
- 94 :前スレ260 :2005/11/20(日) 21:12:03 ID:pUindH0o
- 「まっ、俺が何も言わなくても誰に何を言われても頑張るだろうからな」
「えっ・・・」
「無理はしなくていい・・・頑張るのもいいけど、ほどほどにな」
「・・・お兄ちゃん」
慣れないウインクで照れ隠ししつつ本音を語る俺。
我ながらこういうのはホントに柄じゃないよな、というかひどく似合わん。
しかし、ブレーキかけてやらんとどこまでも走り抜けるからな、巴は。
そんな事を考えている内にちょこんと俺の肩に巴の頭が乗っかる。
不意打ち気味に視界に飛び込む流れる黒髪と胸を透く爽やかな香り。
「・・・頑張るんじゃなかったのか?」
「ほどほどに、だよね・・・心の充電・・・少しだけ・・・このままで」
「ま、俺の肩でよれけばどうぞ」
何も言わず瞳を閉じて寄り掛かる巴。
暫くして俺がココアを飲み干す頃には規則正しい寝息が聞こえてきていた。
「・・・やっぱり、頑張り過ぎてたか・・・」
巴は周りの期待に押し潰されてしまう程、弱くはない。
けれどその全てを一人で受け止められる程、強くもない。
誰だって支えが必要だ、ちょうどこんな風に寄り掛かれる支えが・・・
カレンダーに印された赤丸まで後一週間。
肩をかすめる穏やかな寝息を数えながら俺は自分に出来る事を考えていく。
「とりあえず、起こしちゃ悪いし・・・今はじっとしてるか」
「・・・お兄ちゃん・・・余所見なんて・・・ダメだからね・・・」
「ん?ね、寝言か・・・まさか寝言で釘を刺されるとは」
文化祭は騒がしい一日になりそうだな、これは。
- 95 :前スレ260 :2005/11/20(日) 21:21:03 ID:pUindH0o
- >>遊星さん
時期的にネタがカブっても自然な事ではないでしょうか。
話までカブる事は無い訳ですし。
と、いうか遊星さんの話があまりに良いのでちょっと投下
するのに勇気が要りました。
なにはともあれ、GJです!!
- 96 :にぼし :2005/11/21(月) 02:51:45 ID:/lxMO0pE
- 最近寒くなりましたが、はお変わりありませんか?
今年の風邪は治りが悪いらしいので、お体にはお気を付け下さい。
俺は今、予備校に向かっています。
今日が初めてなので多少緊張していますが自分なりに頑張ってきます。
10時には実家に帰りますので夕飯のほう宜しくお願いいたします。
麻美の夕飯を楽しみにしています。 信二
「送信っと…」
「………何やってんだ俺は…」
今年の冬から予備校に通うことになった俺は暇だったので妹に妙なメールを送ってしまった…
「はぁ…」
バスの中、背中を丸め溜め息をつく俺…
これからまた勉強だと思うと鬱になる…
予備校に着き先生方と軽く挨拶を済ませ教室に向かった…
教室で座席表を確認し自分の席を見ると真面目そうな眼鏡の長い黒髪の女の子が座っていた…
「あれ?Eの7…」
俺はもう一度座席表を確認した…
間違いなく俺の席に女の子が座っている…
- 97 :にぼし :2005/11/21(月) 03:12:26 ID:/lxMO0pE
- 俺は座席表を持って女の子の所へ向かった…
「あの…すいません…ここ俺の席なんスけど…」
「え?あ…え?え?」
女の子は突然話し掛けられたからか焦っていた…
「ここEの7っスよね…?ほら…これ…Eの7沢田って…」
女の子に座席表を指差しながら説明した…
「あ!すいません!私、間違えちゃって…すいません!」
女の子は自分が席を間違えた事に気付くと頭を何度も下げて謝った…
「いや、いいよ。そんな謝んなくて。」
「すいません…私…ここ初めてで…」
「いいよ、いいよ。俺も初めてだし。」
「え?あなたも初めてなんですか!?」
女の子は驚いたのか少し大声を出したのでビビった…
「え…あぁ…そうだけど…」
「よかったー!初めてなの私だけじゃないかと思って不安だったんです。」
女の子は俺が予備校初めてだと分かると急に明るくなった…
「あぁ…そ…そうなんだ…」
俺は少し焦ってしまった…
「すいません…座席表…見せて貰えますか?」
「え?あぁ!はい座席表…」
女の子は座席表で自分の席を探し始めた…
- 98 :にぼし :2005/11/21(月) 03:28:39 ID:/lxMO0pE
- 「あ!すいません…一個後ろの席でした…」
女の子は困ったように笑いながら席に座った…
「あはは…」
俺は変な愛想笑いをしてしまった…
「あ!私、谷本綾子っていいます!よろしくお願いしますね!」
「あぁ…お…俺は…沢田信二です…よろしく…」
真面目そうだったので大人しい性格だと思っていた俺はかなり焦っていた…
「初めてで…まだ友達いないんで…仲良くして下さいね…?」
「あ、はい、こちらこそ。よろしくお願いします。」
また困ったような笑いを見せる谷本さんを少し可愛いと思った…
俺は授業が始まるまでの間、谷本さんと雑談をして少し仲良くなった…
- 99 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/11/23(水) 22:33:42 ID:fUoCigO+
- >先生様
さすが先生。もう萌え!っつーか、主人公がかなり羨ましいですw
俺の先に出しといてよかったなぁ……。
>>96-98
ふむ……続き、どうなるんでしょうね。
楽しみですよ、はい。
- 100 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2005/11/30(水) 09:54:14 ID:fwmulV0t
- 保守かな
- 101 :名無しくん、、、好きです。。。 :2005/12/01(木) 23:41:03 ID:pujuIOl2
- 100ゲト、おめ。
- 102 :名無しくん、、、好きです。。。 :2005/12/04(日) 01:04:55 ID:v86AjqE2
- 今、妹の寝てるとなりで、2chを、しかも妹スレを見てる…いや、書き込んでる俺は、結構特殊な存在かもしれない。
- 103 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2005/12/04(日) 14:23:49 ID:kFaaVr4W
- >>101
ども
でも、これだけ間が空いて取ったのに褒められても(´・ω・`)
>>102
私から見たら妹が居る時点で特殊ですねw
- 104 :名無しくん、、、好きです。。。 :2005/12/04(日) 17:05:16 ID:2QbHGL+J
- >102
それ、なんてエロゲー?
- 105 :しゅーまつ :2005/12/06(火) 00:35:12 ID:5fBneeA4
- 寒くなってきましたね…………心が寒い
というワケで冬の物語も楽しそうなのですが………クリスマスだけでイイですかね?
スミマセン、こんな何も書いてないヤツが意見などOTL
- 106 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/12(月) 21:04:48 ID:nko9o7Su
- 保守しますかね。
>>105
無茶を言わないで……クリスマスだけでも、クリスマスですらも大ピンチだよ、僕は。
- 107 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2005/12/12(月) 23:24:54 ID:6GWxw+fM
- >>105
僕は夏よりも春や冬を書く方が好きですね
構成だけで手をつけられてない物がいくつかあるんで時間があったら書きたいと思ってます
夢亜の話も構成や書き途中のものがあったりするので・・・
ただ、時間と力、特に力が非常に不足しているので期待はしないでくださいw
- 108 :しゅーまつ :2005/12/13(火) 01:31:47 ID:w4kjlDBO
- 遊星様、すばる様、無茶言ってスミマセン
でも寂しくてw
すばる様>いえ、とんでもないです!楽しみにしてます
遊星様>ですよね…。クリスマスSS待ってまつ!
- 109 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/20(火) 21:36:57 ID:r9bxcS7/
- ほしゅ
クリスマスまであとわずか。冗談抜きにピンチ。
- 110 :名無しくん、、、好きです。。。 :2005/12/22(木) 14:25:18 ID:V8wH1ZP+
- 誰か早くSSを…
- 111 :前スレ260 :2005/12/24(土) 18:52:17 ID:ISzd//6w
- 「今年もあっという間だったな」
一年経て毎年同じ事をただただ思う。
あと一週間もすれば来年がやって来る、そんな当たり前の事すら感慨深い。
まぁ、世間ではまだ気の早い話みたいだが・・・。
今年は今年でイベントが残されているという訳だ。
12月24日、この日に暇なのは俺くらいかもしれない。
テレビをつけてもラジオを聴いても聞こえてくる言葉は同じ言葉。
メリー・クリスマス
「今日はその前日だろうに・・・」
湯気の立つ珈琲に溜め息が白く残って溶けていく。
その先に扉越しにマフラーを巻く巴の姿がある事にたった今気がついた。
「巴、出掛けるのか?」
「うん、約束があるから」
そういえば友達のクリスマスパーティーに誘われていると言ってたっけ。
こんな時、女の子は得だと強く思う。
流石に男集でイブを騒ぐというのはあまりにも絶望的だ。
「そうか・・・ま、せっかくのイブだから楽しまなくっちゃな」
「うん、行ってきます」
目線を合わせる事なく去り行く巴に若干の置いてけぼりを感じつつ見送る俺。
しかし、あれこそ正しいクリスマス・イブの過ごし方だろう・・・たぶん。
ならばここにいる俺はどうすべきか、そこが問題だ。
バタンと閉じられた扉を見遣り、一人腕組みして考え込む。
「・・・とりあえず、ケーキでも作るか・・・」
- 112 :前スレ260 :2005/12/24(土) 18:54:04 ID:ISzd//6w
- 数時間後、恐ろしく出来の良いクリスマスケーキが出来上がっていた。
イチゴで縁取られた真ん中に砂糖菓子のトナカイとサンタがクリームの袋を運んでいる。
我ながら会心の出来だ。
「巴が帰ってきたら一緒に食べるとするか・・・って帰ってくる時間、聞いてないよな」
巴は今頃、友達に囲まれて騒がしくも楽しい時間を過ごしているのだろうか。
慎重に冷蔵庫にケーキを運びつつ独りふと思う。
「はぁ・・・今年はうまいこと土日に重なったからなぁ」
時計の針は進んでも針が逆さまになるまでにはまだまだ時を数えなければいけない。
結局、俺に出来る残された事といえば開き直りしかない訳だ。
我ながらなんとレパートリーの少ないイブだろうか。
ソファーに深く腰を落としつつぼんやりとテレビを眺める。
ブラウン管に映るクリスマスツリーが金色に輝く。
「・・・ツリーか、今年は駅前に大きなツリーが飾られてたな」
タイムズスクエアのツリーとまではいかないが結構大掛かりな代物だと巴が言っていた気がする。
「ん?ツリー・・・巴・・・」
随分前に何か話した様な・・・
心に引っ掛かったキーワードで記憶の糸を手繰り寄せる。
- 113 :前スレ260 :2005/12/24(土) 18:55:46 ID:ISzd//6w
- あれは確かまだ俺と巴が小さな子供の頃、
「巴、サンタさんにもらうプレゼントは決まったか?」
「うん、おにいちゃんは?」
「僕はラジコンをお願いするんだ、真っ赤なスポーツカー」
「巴はね、お星様をもらうの」
「お星様?それって空の上のあれ?」
「ううん、そうじゃなくてクリスマスツリーのてっぺんにあるお星様」
目を丸くする俺に嬉しそうに巴は屈託無く笑いかける。
「テレビでねアメリカのすっごく大きなツリーがあってそのてっぺんに綺麗なお星様があったの」
「それが欲しいの?」
「うん!!」
「それは無理だと思うよ、だって巴がそのお星様をもらったらツリーを見に来た他の子ががっかりするだろ?」
「あ・・・」
言っている事の意味を理解したのか明るかった表情がみるみるうちに曇りに早変わり。
正しい事を言った筈がなんだかもの凄い罪悪感に苛まれてしまう。
「ああっ、じ、じゃあさ見に行こうよ、そのお星様を」
「・・・ひっく、おにいちゃんと?・・・いつ?」
「今すぐは無理だけどもうちょっと巴も僕も大きくなったらさ」
「・・・いつ?大きくなったらっていつ?」
「えっ?・・・ええと・・・」
そうこうしている内にも曇りは大雨に変わる兆しを見せている。
降り出す一歩手前を前に必死に妥協点を見出す俺。
- 114 :前スレ260 :2005/12/24(土) 18:56:46 ID:ISzd//6w
- 「十年後、十年後に行こう・・・なっ!?」
「十年・・・ずっと先だよ・・・ぐすっ」
「そ、そんな事ないって!!十年なんてあっという間だよ、うん」
「・・・ほんとに?」
「僕は巴に嘘をついた事なんてないだろ?」
「・・・うん」
「じゃ・・・約束しようか、ゆびきり」
差し出した小指に巴の白くて小さな指が絡められる。
「ゆ〜びきりげんまん嘘ついたら針千本・・・」
「・・・の〜ますっ」
目尻に涙を溜めて満面の笑顔の巴、つられて同じ笑顔の俺。
お互いの声の隙間に込められた小さな願い。
12月24日午後6時、水滴で曇った窓の外はやはり曇り空。
気がつけばテレビの上にある小さな置き時計はもう夕刻を示す時間だ。
「・・・十年後、か・・・」
胸の内に湧き上がる予感に背中を押される様にコートを羽織る。
折角のクリスマスだ、ツリーを見に行く位はしておこう。
そんな風に結論付けて俺は冬の澄んだ冷たい空気に身を晒した。
- 115 :前スレ260 :2005/12/24(土) 22:10:00 ID:DnXxEcaI
- 商店街にエンドレスでかかるジングルベル。
綺麗にラッピングされた袋を抱え急ぎ足の背広姿、手を繋いで楽しそうに歩く母子。
赤と緑に飾られた街はこの日、クリスマス一色に染まる。
はしゃいだ街を横目に俺は駅前のクリスマスツリーを目指す。
ショーウインドーに映った自分の姿は随分と急いでいる。
気付かぬ内にいつの間にか早足は駆け足になっていたらしい。
開けた視界に飛び込む大きなツリー。
その下に、巴の姿があった
吹き付ける北風に耐えながらただじっと祈る様にツリーを見つめ続ける巴の姿が。
そんな巴の祈りを壊さない様、そっと隣へ歩みを進める。
「・・・大きなツリーだな、ニューヨークのツリーとまではいかないけどさ」
「・・・考え・・・てた・・・」
「何を?」
「今までの事、これからの事、ボクの事・・・お兄ちゃんの事」
「・・・」
「やっぱり、来てくれたんだね・・・お兄ちゃん」
ツリーを見上げていた瞳がゆっくりとした動きで真っ直ぐに俺に向けられる。
「ま、針千本は勘弁だからな」
「ふふっ、アメリカはまだ遠いけどここで妥協しておくね」
金色のイルミネーションを映して光輝く瞳。
美しい二つの宝石に心を奪われそうになりながら気付かないフリでツリーを見上げる。
「・・・綺麗だな」
「うん、ずっと・・・見ていたくなるよ」
「・・・巴はさ、いいクリスマスイブになったか?」
「少なくとも不幸じゃないのは確かだよ、こうしてお兄ちゃんとツリーを見る事も出来たし」
- 116 :前スレ260 :2005/12/24(土) 22:18:55 ID:DnXxEcaI
- 少しも悪びれる事なく巴は笑う。
「今日は、クリスマスイブはいい一日だったって思う、約束は・・・叶ったから」
「・・・巴・・・ホントの事、言ってみな?」
「?」
「我慢したって体に悪いだけだぞ・・・こんなに冷えて・・・寒かったな」
冷えきった黒髪を梳いて優しく頭を撫でてやる。
凍えた心も溶かしていく様に、そっと。
「家に帰って自分の部屋で独り抱え込むのか?そんなの悲しすぎる」
「・・・お兄ちゃん・・・やっぱり・・・だって・・・だって・・・嫌・・・だから」
「・・・いいから」
「・・・泣き顔なんて・・・約束、叶ったのに・・・お兄ちゃん」
大粒の涙と共に途切れ途切れの心からの言葉が音も立てず零れ落ちる。
痛い程に突き刺さる巴の気持ち。
溢れ出した気持ちは白い吐息となって冷たい夜空を彷徨いだしていく。
- 117 :前スレ260 :2005/12/24(土) 22:20:22 ID:DnXxEcaI
- 「辛・・・かった・・・一人で・・・街中でボクだけが一人ぼっちみたいで・・・」
「・・・」
「淋しかった・・・何度も家に帰ろうって思った・・・でも、出来なかった」
「・・・うん、うん」
「怖かった・・・ど、どんな顔してお兄ちゃんに会えばいいんだろう?って・・・解らなくて」
「・・・そっか、辛かったな」
「会いたい気持ちはどんどん大きくなって・・・でも会いにいけなくて・・・ボクは・・・」
胸の内から溢れ出す感情に戸惑いながら不器用に言葉を繋ぎ合わせていく。
そんな巴の姿に言葉に上手くならない優しい気持ちを届けたくて俺はただ、昔みたいに優しく頭を撫で続ける。
重なっていく素顔の泣き顔と懐かしい幼い頃の泣き顔。
巴は本当は誰よりも繊細で臆病で泣き虫な女の子。
こんな妹を泣かすなんて・・・本当に・・・とんでもない馬鹿兄貴だ、俺は。
「・・・バカみたいだね、一人で勝手に悩んで・・・お兄ちゃんは・・・」
俺の手に冷たい両手が添えられ紅く染まった頬に導かれる。
「お兄ちゃんは・・・ちゃんとボクを見つけてくれたのに」
「・・・巴・・・」
「・・・暖かい・・・お日様・・・みたいだよ・・・」
少し掠れた声と兎の様に赤い瞳、でも先程とは違い胸の痞えの取れた泣き顔。
そんな綺麗な泣き顔のまま、今日の澄んだ空気にも似た思い出に二人・・・いつまでも寄り添っていた。
- 118 :前スレ260 :2005/12/24(土) 22:23:07 ID:DnXxEcaI
- 「・・・少しは落ち着いたか?」
「・・・うん」
「にしても、変わらないもんだな」
「えっ?」
「巴の泣き顔、子供の頃のまんまだもんな」
「・・・つっ!!」
今更になって自分の置かれている事態に気が付いたのか瞬間湯沸し器になる巴。
真っ赤な顔で平静を装う巴の責める様な眼差しがなんとも可愛らしい。
「・・・イジワルだよね、お兄ちゃんは・・・」
「今頃、気が付いたか・・・巴・・・」
「・・・お兄ちゃん・・・」
見詰め合うには近すぎるお互いの息が頬に触れ合う距離。
何かを察する様に巴はそっと瞳を閉じる。
僅かに震える長い睫毛、寒さの中でも色あせることのない唇。
俺は優しく・・・額に手を当てる。
「・・・え?」
「やっぱり熱がある、それもかなり」
面食らった顔した巴を余所に羽織っていたコートを手渡す俺。
「ほら、これを着て」
「だ、大丈夫だよ・・・ボクは平気だから」
平気という割には随分慌てた、というよりなんか期待外れだった感じの巴。
先程より若干頬が赤くなった気もする。
しかし、それよりも今は巴の体調の方が先決だ。
この寒空の下にずっと一人でいたのだ、無理も無い話だが俺の診た所ではかなりの熱がある。
- 119 :前スレ260 :2005/12/24(土) 22:24:47 ID:DnXxEcaI
- 「そうかそうか・・・で、本当は?」
「・・・ゴメン、ホントは立ってるのもツライ」
「まったく・・・ほら乗りな」
「背中、お兄ちゃんボクを背負って帰る気なの?」
「立ってるのも辛いんだろ?」
「でも・・・」
「ま、クリスマスイブだしな、今日は甘えれるだけ甘えればいいさ」
おずおずと遠慮がちに俺の背中に巴が体を預けてくる。
こんな事位では泣かした分の罪滅ぼしにはならないだろうが幾らかはマシになるだろう。
「よっと、じゃあ帰ろう」
「・・・うん、お兄ちゃん・・・重くない?」
「いや、問題はそこじゃないな」
「?」
おんぶなんて何年もしていない所為か自己主張の強くなった巴の体を妙に意識してしまう。
解ってはいた筈だが軽い割にしっかり凹凸があるというかなんというか、これは。
「い、いかんいかん・・・反省したばっかだってのに」
「お兄ちゃん、やっぱりボクは歩いて」
「いやいや、見縊ってくれるなよ?巴一人担ぐ位の力は十二分に持ってるさ」
邪念を振り払い、華やぐ街と金色に輝くツリーを背に家路を歩き出す。
ジングルベルの唄は少しづつ遠ざかり、静かな夜の闇が辺りを包み始める。
永遠にも思える静寂の時間。
自分の足音だけがやけに耳に残る。
- 120 :前スレ260 :2005/12/24(土) 22:32:26 ID:DnXxEcaI
- 「・・・お兄ちゃん・・・怒ってる?」
俺の背中で大人しくしていた巴が不意に口を開く。
「怒っちゃいない、少し呆れてはいるけど」
「・・・願掛け・・・してたんだ」
「願掛け?何をお願いしたんだ?」
「それはヒミツだよ、でもお兄ちゃんのお陰で解ったんだ・・・それは大した事ないんだって」
もう離さないとばかりに肩に廻された手にギュッと力が篭められる。
そんな仕草さえ子供の頃と変わらない巴に懐かしさを感じてしまう俺。
普段は随分と大人びて見える様になったが幼さはどこかに残るものなのかもしれない。
ちょっとした悪戯心と不思議な安心感を持って俺はきっかけを待っていた神託を厳かに下す。
「俺もさ、巴に言わなきゃならない事があるんだ」
「・・・何?」
「言い難いんだがな・・・間違えてるんだよ」
「何を?」
「約束の十年後は一年先、来年だ」
「・・・え?・・・あれ?」
目の前で指折り数え、ピタリと指が止まる。
・・・おぉ、うろたえとるうろたえとる。
年末にかました今年一番の大ポカと今年一番の慌て様。
巴を完璧などという輩に見せてやりたい位だな。
焦りまくる巴を背にとうとう笑いの限界に達する。
お互い本音になっていた分、余計に可笑しくて堪らない。
「ぷっ・・・くくく・・・あはははっ!!」
「何もそんなに笑わなくてもいいのに・・・イジワル・・・」
「い、いや悪い・・・久々に笑わせてもらったよ」
- 121 :前スレ260 :2005/12/24(土) 22:39:14 ID:DnXxEcaI
- 「でも、それならどうしてお兄ちゃんはボクが外に一人でいるって分かったの?」
「う〜ん、それなんだがな・・・聞こえた気がしたんだ、巴の泣き声がさ」
「・・・そう・・・なんだ・・・」
急に真摯な顔になりじっと俺を見つめる巴。
俺は思わず気恥ずかしくなって空を見上げる。
さっきの台詞は我ながらあまりに柄じゃない事を言ってしまったと思う。
「流石に雪は降らない、か」
ポツリと漏れ出た言葉の遠くで冬の星空は冷たく瞬きを繰り返す。
同じ空の下で何人の人々が幸せにクリスマスイブを迎えているのだろう。
「・・・お兄ちゃん・・・お願いがあるんだ」
「改まってどうした?言ってみな」
「横を向いて・・・」
「・・・は?それだけ?」
「いいから横を向いて・・・」
「はぁ、こうか?」
「・・・んっ・・・」
そっと交わされる頬への口付け。
正に一瞬の出来事。
唇の触れた頬から巴の熱がうつったみたいに熱くなる。
絶句する俺。
紅い顔していたずらっぽく微笑む巴。
- 122 :前スレ260 :2005/12/24(土) 22:41:10 ID:DnXxEcaI
- 「なっっっっ!?」
「・・・感謝の気持ち、言葉だけじゃ・・・伝え切れないって・・・思ったから」
「お、お前なぁ・・・」
「大好きだよ、お兄ちゃん」
人差し指を唇に当てた巴の会心の微笑みに思わず見とれてしまう。
こんな笑顔に見つめられては言葉を発するだけの余力はない。
俺の背中で目一杯甘えてみせる妹はどうやら幸せなクリスマスイブになったらしい。
まぁ・・・そういう事にしておこう。
家に辿り着くまであとわずか。
長い時間を掛けた二人の約束は新しい思い出と共に胸の中で色褪せる事無く輝いていた。
「・・・お兄ちゃん」
「うん?」
「・・・メリークリスマス・・・」
- 123 :前スレ260 :2005/12/24(土) 22:52:12 ID:DnXxEcaI
- という訳でちょうど前回の投下から一月メリークリスマスです。
なんとかイブの内に投下完了。
クリスマスという事で話は気持ち甘めにしたのですが如何だったでしょうか?
そんなこんなで今年も後わずか、神々のクリスマスssに期待しております。
ええ、本気で楽しみにしております、遊星様。
- 124 :名無しくん、、、好きです。。。 :2005/12/24(土) 23:00:09 ID:B46v4i9M
- 萌えました。グッジョブ!!
- 125 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/24(土) 23:01:39 ID:dQ915QoI
- 【相川梨那編】
今日は十二月ニ十四日。
ここ日本では、くりすますというお祭りが行われるらしい。
「ま、オレの知ったこっちゃないわな」
木枯らし吹く窓の外を見ながら呟き、
また一つ冬休みの宿題の問題集を埋めていく。
まぁ。このペースなら、今日中に終わるだろう。
俺が一息入れようかと思ったとき、
カンカン
甲高い音がどこかから聞こえた。
ノックかと思ったが、ドアの方からじゃない。
この音は、窓の方から……
「やっほー♪お兄ちゃん」
窓の向こうには、何だかよく知っている女が。
「……よぅ、梨那」
俺は体を縮ませ、のっそりと窓のそばに歩き、いや、もとい這っていく。
「うぅー!!さむーい!!開けて開けて!!」
梨那は足踏みをしながら、ガラスをバンバンと叩く。
「そしたら俺が寒いじゃん。玄関から入ってこいよ」
「玄関に行く前に、凍死しちゃうよー!!」
「大丈夫だ。人間はそれぐらいじゃ死なない」
「ヒドい……ヒドすぎるよー!!幼馴染がこうして寒さに震えてるんだから、少しは優しくしてよー!!」
「つーかさ、人の家のベランダに勝手に入ってくるなよ」
「もー!!そんなことはいいから、早く入れてよー!!」
「ヤダね」
「むー、しょうがない……作戦その1だ」
「作戦?」
俺が聞き返した瞬間……
- 126 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/24(土) 23:02:13 ID:dQ915QoI
- 「あーるーはれたーひーるーさがりー いーちーばーへつづーくみちー……」
梨那がこの世の終わりのような顔をして、歌を歌い始める。
しかし、クリスマスソングとかじゃなくて、ドナドナっ!?
何だ、この異様なプレッシャーはっ!?
「どなどなどーなーどーなー……」
「や、やめろよ!!」
「こうしをのーせーてー……」
「やめろって!!」
「にばしゃがゆーれーるー……あ、終わっちゃった」
「ふぅ……俺の勝ちだな」
「むぅ、やるなー」
腕を組んで少し考える梨那。
そして、
「こうなったら、泣くぞー!!」
「泣け」
俺がそういうと、ガラスの向こうの梨那は大きく息を吸い込み……
「わぁぁぁあぁぁぁぁぁぁぁぁっぁぁぁぁぁ!!!!!」
大声で叫びだした。
……マジか。
震えるガラス。ほえる近所の犬。そして、騒がしくなる階下……。
勘弁してくれよ……。
「分かった!!入れてやるから!!止めろ!!」
俺は窓を開き、梨那を引っ張り込む。
- 127 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/24(土) 23:02:47 ID:dQ915QoI
- 「わーい!!ありがとぉ!!」
冷たい風と共に、俺の部屋へと侵入する梨那。
そして、エアコンの風が直撃する場所で、意味も無くくるくると回る。
「で……何か用?」
俺はベッドに座りながら、ぶっきらぼうに尋ねる。
「ああ、そう!!梨那、お兄ちゃんにお願いに来たの!!」
回転運動をやめ、両手を体の後ろで組んで、俺を見上げる梨那。
これは、目一杯の可愛いポーズ(のつもり)。
つまり、このポーズをしたときは、最っ高にロクでもないことを要求されるのだ。
「……宿題なら見せんぞ」
この状況で、そんなワケはない。
これからの要求を考えたら、この程度なら安いもんだ。
「ううん、今日はそうじゃなくてぇ……」
コートのポケットから、ゴソゴソと何かを取り出す。
「じゃーん!!クリスマスパーティー!!」
「行かねぇ」
こういうのも「二つ返事」と言うのだろうか。
俺は、間髪いれずに即答した。
「何でー!?まだ梨那何も言ってないぃー!!」
「梨那が、俺にとって魅力的な条件を提示してくるとは考えられない」
俺は机に向かい、答える。
話しながらでも、この程度の問題なら解ける。
- 128 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/24(土) 23:03:20 ID:dQ915QoI
- 「分かんないよー?」
「いや。分かる。まぁ、仮にそうだとしても、行くか行かないか迷うのが面倒だ。だから、知らないまま断る」
「にゃぁ……それは面倒くさがり過ぎるよー」
「短い冬休みを有効に活用したいだけだ。迷う時間が勿体無い」
「で、でも!!きっとパーティー、楽しいよー!!」
「知らん。そもそも、そんなとこ行ったら、今日中に宿題終わらんだろうが」
「え?もう終わるのっ!?」
「このペースならな。だから帰れ」
「……」
急に黙る梨那。
「どした?」
俺が問題集から目を離し、そちらを見ると、相当ヘコんでる梨那が。
「あーあ、梨那も行きたかったな……」
「一人で行きゃ良いのに」
「でも、みんなカレシ連れてくるって言うんだよ?梨那一人じゃ行けないよ……」
「あ、そう……って、おい。俺を彼氏として連れてく気だったのか!?」
「うん」
意外と強かなヤツだ……。
よかった。行かないって言って。
「行きたいなぁ……」
「あのな、梨那。そんな見栄張りたいだけだったら、行くのやめとけよ」
「別に見栄張りたいわけじゃないもん」
「じゃ、何?何でそこまでして行きたいの?」
「だって、せっかくのクリスマスなのに、何の予定もなくなっちゃうよ……」
「……ったく」
俺はシャーペンを机にたたきつけ、床にペタンと座る梨那の手を掴む。
- 129 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/24(土) 23:03:53 ID:dQ915QoI
- 「じゃ、今夜は何か食いに行こう、二人でさ」
「……え?」
あっけに取られたように、俺の目を見つめる梨那。
え、何、このリアクション?
「何だよ?」
「お兄ちゃん、すごい優しい……」
ぶん殴るぞ、このアマ。
とはいえ……この雰囲気でそんなことは出来ない。
「優しいのはイヤか?」
怒りを抑えるため、少しキザめにしてみました。
どうでしょう、お客さん。
「ううん……好き」
お気に入りのようですね。
「その代わり、パーティー断わっとけよ」
「……やっぱり、パーティーはダメなの?」
「別に誰かの男自慢なんて聞きたくないだろ?つーか、さすがに知らんヤツと同じ時間を過ごすのはイヤだ」
「うん……そうだね。だって、梨那のお兄ちゃんが一番だから」
「当然だ」
梨那の頭をポンポンと叩く。
「さてと……じゃあ、ペース上げなきゃな」
「うん、じゃあ梨那は帰るね?」
「おぅ。何か良い店ないか調べてくれよ」
「はーい!じゃ、また後でねー?」
小さく手を振り、ベランダに戻る梨那。
俺は小さく手を挙げ、それに答える。
愛用のシャーペンをくるくる回しながら見る問題は、
いつもよりも簡単で、いつもよりも早く解けてしまう。
俺は結局、何だかんだで、クリスマスに巻き込まれてしまった。
まぁ、それが良いか悪いかは、今夜しだい……か。
- 130 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/24(土) 23:04:25 ID:dQ915QoI
- 【霧島羽音編】
俺の母は、姉妹の仲が非常に良い。
年に数回は、俺の母とその姉妹、そしてそれぞれの家族が集まって、宴会を行う。
今日も、その一つ、クリスマスパーティー。
まぁ、毎年言ったり行かなかったりだが、今年は絶対に行きたい理由があった。
それは……
「お兄ちゃん、メリークリスマスです」
「あ、羽音ちゃん。メリークリスマス」
彼女は、俺の彼女の霧島羽音。
母の姉の娘なので、俺の従妹ということになる。
「いらっしゃい。もう皆来てるわよ。さ、あがってあがって」
伯母さんに丁寧に挨拶され、ゾロゾロと羽音ちゃんの家に上がっていく母。
伯母もその母についていき、羽音ちゃんに何か耳打ちしてリビングへと消えた。
そして、顔を真っ赤にする羽音ちゃん。
「何を言われたの?」
「え!?え……っと、何でもないんですけど!!」
「ならいいけど」
「えっと、あ、あがってください」
「うん。お邪魔します」
羽音ちゃんに言われるままに、靴を脱ぎリビングに向かう。
しかし……
「可愛い……」
羽音ちゃんが、ホント可愛くて、もう……。
今、かなり理性が頑張ってます。
「何か言いました?」
「うん、ちょっと独り言」
俺の気持ちも知らず、俺の顔を覗き込んでくる羽音ちゃん。
ヤバい……これじゃ、俺の理性も長くは持たないぞ……。
このままでは、『可愛い』を連発する生き物になってしまう。
- 131 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/24(土) 23:04:58 ID:dQ915QoI
- 「ねぇ、羽音ちゃん?」
「何ですか?」
「少し、いいかな?」
「あ、はい……いいですよ」
「じゃ、ちょっと外行こうか?」
「はい」
というわけで、先ほど入ってきたばかりなのに、羽音ちゃんと二人で庭に出る。
だが、外に出た瞬間、冷たい風が急速に俺の体温を奪われ、思わず身を縮ませる。
そしてやっと、「しまった」と思ったが、もう遅い。
「あ、ゴメンね。寒いのに」
「ううん。私、こう見えても寒いの平気なんですよ」
何て言いながらも、スカートは流石に寒そうだ……。
「あ、羽音ちゃん」
俺は急いで着ていたジャケットを脱いで、羽音ちゃんに着せてあげる。
「お、お兄ちゃん……」
羽音ちゃんは、凄く恥ずかしそうな顔をしていたが、突然フッと笑い出し、
「張り切ってますね?」
と、悪戯っぽく微笑む。
こんな顔されたら、ちょっとコッチが哀れに思えてきて……
「あ、というより……ちょっといっぱいいっぱいかも」
自分の不安を正直に言ってしまう。
羽音ちゃんは、その言葉を少し考えていたようだが、
「えへへ、嬉しいなー」
「え、嬉しい?」
「うん。お兄ちゃんが私のために凄く一生懸命になってくれてる。そう考えたら、嬉しくて」
そういって、俺の肩に寄り添う羽音ちゃん。
- 132 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/24(土) 23:05:31 ID:dQ915QoI
- 「お兄ちゃん……ありがとう……」
小さく俺にだけ囁く。
「え、そんな……」
「ううん。お兄ちゃんがそばにいるだけで幸せだよ……」
「うん。俺もそうみたい」
そっと羽音ちゃんの肩を抱き寄せる。
「さっき会ったときからさ、ずっと羽音ちゃんが可愛くてしょうがなくてさ……」
「うん」
「だから、頭一杯になって皆の前で言っちゃう前に、羽音ちゃんだけに言いたかった言葉があるんだ」
「……はい」
「羽音ちゃん。俺は、キミのことが……」
さて、今宵はクリスマス。
聖なる夜に、大好きな羽音ちゃんと過ごす。
もしこれが奇跡というなら……この冬は、将来きっと良い思い出になるだろうね。
- 133 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/24(土) 23:06:04 ID:dQ915QoI
- 【三上沙耶編】
「暗いよみちは〜♪ピカピカのおまえの鼻が〜♪役に立つのさ〜♪」
今日は一二月二十四日。
俺は新聞を読みながら、隣で妹の沙耶が歌うクリスマスソングに耳を傾けている。
沙耶は、嬉しそうに笑いながら、歌にあわせ体をゆする。
ゆったりとした空気の流れる我が家。
しかし、
「買い物行きたくないなぁ……」
そう。
これから夕飯の買出しに行かないと思うと、気が滅入る。
とはいえ、今日はクリスマスイブ。
沙耶が楽しみにしている以上、残り物でなんとか。というワケにも行かないだろうし……
……そうだ、沙耶に行ってもらおうか。
いや、恐らくかなりの荷物になるだろう。沙耶に行かせるのは無理だろうな。
「仕方ないな……」
天気予報によれば、雪が降るとか降らないとか。
とにかく、雪の降る前に、買い物に行きたいところだ。
「沙耶」
「あめはよふけすーぎーにー♪……はわ?なーに?」
「俺、ちょっと買い物に行って来るよ」
「あー、サヤも行きたいー!!」
「沙耶が?」
「うん!!今日はね、好きな人と一緒にいなきゃいけないんだよ〜?」
どっから聞いたんだよ、そういうこと……。
「サヤね、おにぃちゃんのこと好きだから、一緒に行くの」
「そっか。じゃ、一緒に行こうか」
「うん!!」
「ほら、外は寒いから、コート着てきな」
「うん!!」
───────────────────────
- 134 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/24(土) 23:06:37 ID:dQ915QoI
- というわけで、沙耶と一緒に近所のスーパーへ。
「ねぇねぇ、おにぃちゃん、おにぃちゃん!!」
モコモコしたコートに、フードをすっぽり被った沙耶が俺の隣でスキップしながら言う。
「んー?」
「今日の晩御飯はなーに?」
「んー……何にしようかなー。クリスマスだし、何か美味しいもの食べたいよなー?」
「うん!!」
「作るの面倒だし、何かお惣菜でも買っていこうか?」
「うん。サヤね、ハンバーグが食べたいよー!!」
「そうだな。ハンバーグも買おうな」
「わーい!!ねぇねぇ、ケーキは!?ケーキは!?」
「ああ、後で買おう」
「うん!!」
「そうだ、何かジュースとか、お菓子も買わなきゃな」
「うん!!えへへ、楽しみだなー!!」
沙耶は、嬉しそうにいつもより高く、ピョコピョコ跳ね回る。
「沙耶、迷惑になるから少し大人しくしような?」
「はわ……ゴメンなさい」
「分かればよろしい。さ、行こう」
「うん」
沙耶に手を差し出すと、沙耶は嬉しそうに俺の手を握り締める。
そして、いつもより賑やかで、活気のある食品売り場へ向かうのだった。
───────────────────────
- 135 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/24(土) 23:07:11 ID:dQ915QoI
- 「えへへ、いっぱい買ったねー?」
ビニール袋両手で重そうに下げている沙耶が、ニコニコした顔で俺に話しかける。
「ああ。それより、沙耶、重くないか?」
「ううん。だいじょーぶだよ」
とは言うものの、相当歩きづらそうに見える。
「やっぱり、俺が持つよ」
「だ、ダメだよー!!サヤだって、できるんだからー!!」
……こうやって、人は大人になっていくのだなぁ……。
などとしみじみ思っていると、
「あれ?」
隣にいたはずの沙耶の姿が見えない。
重い荷物をぶら下げながら、後ろを振り返ると、呆然と何かを眺めている沙耶が。
「沙耶ー?」
遠くから呼んでみる。
「はわー……」
ダメだ、聞いちゃいない。
仕方なく、俺は買い物袋をもうはや引きずるようにして、沙耶のところまで戻り、トントンと肩を叩く。
「沙耶?」
「は、はわっ!!」
驚いて、持っていた袋を落とす沙耶。
「何見てたんだ?」
俺が沙耶の見ていたあたりに目を向けると、
そこには、巨大な犬のぬいぐるみが……。
「デカい……」
沙耶よりも。
「うん。可愛いよねー」
「欲しいの?」
「うん。お年玉で買うんだー」
うわ……沙耶にしては、妙に現実的……。
- 136 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/24(土) 23:07:58 ID:dQ915QoI
- クリスマスプレゼントに買ってあげようか。って言いたかったんだが……。
せっかくの機会だ。しょうがない。ちょっと言いづらいが……
「ねぇ、沙耶」
「はわ?」
「コレ、俺から沙耶へのプレゼントにしても良いかな?」
「……?」
意味が分かりません。とでも言うかのように、首をかしげる沙耶。
「まぁ、いいか。すいません。これくださーい」
レジに持っていくのは面倒だと判断。
店員を呼び、会計をしてもらう。
「はわわっ!?い、いいよぉ、おにぃちゃん!!」
「まぁまぁ、コレ、欲しいんだろ?遠慮するなって」
「で、でも……」
「何?」
「サヤ、おにぃちゃんへのプレゼント買ってないし……」
何だ、そんなこと。
「沙耶。俺は、別にそんなもんが欲しいわけじゃないんだぞ?」
「はわ……?」
「俺は、沙耶に『ありがとう』って、笑ってほしいから、買うんだからな」
「おにぃちゃん……」
「ほれ、そういうときはさ」
「うん。ありがとう、おにぃちゃん」
「よーし、合格だ。帰るぞー?」
「うん!!」
両手に荷物一杯抱えて、家路を急ぐ。
途中、沙耶の歌う歌が、とても楽しげで、凄く楽しくなってきた。
そういえば、空が段々曇ってきている。雪が降るかもしれないな。
- 137 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/24(土) 23:08:31 ID:dQ915QoI
- 【双子編】
「ねぇねぇ、千奈ちゃん?お兄ちゃんは?」
十二月二十四日。石川家リビング。
双子の姉、唯奈がドアを開けながら、双子の妹の千奈に話しかける。
「しーっ」
千奈は微笑みながら人差し指を唇に当て、唯奈を黙らせた後、その指を下に向ける。
その指の先を覗き込む唯奈。
「あ……」
その先には、ソファーで寝息を立てる彼女たちの兄、石川真司がいた。
「今寝ちゃったところだよ」
「なーんだ、つまんないの」
「何か用事?」
「ううん。ヒマだから、遊んで欲しいなーって」
「何だ、やっぱり」
「分かってた?」
「うん。何となくだけど」
そういって、微笑む千奈。
こういうところはやはり双子なのだろう。
「でも……よく寝るお兄ちゃんだなぁ……」
唯奈は、真司の頬をツンツン指で突きながら、小さな声で言う。
「や、やめようよ、唯奈ちゃん」
「でも、起きそうもないけどなぁ」
唯奈はさっきよりも強く指を押し付け、挙句の果てにその指をグリグリ。
それでも、真司は身動き一つせず、眠り続けている。
「すごいなぁ……」
さすがの唯奈も、そんな真司に呆れてしまった。
「お兄さん、そんなに疲れてるんだね」
千奈は、真司の頬の、さきほど唯奈にグリグリされた辺りを撫でながら言った。
- 138 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/24(土) 23:09:04 ID:dQ915QoI
- 「でも、冬休みなのに何してるんだろうね?」
「そういえば、昨日も帰ってきたら寝てたよね」
「そうそう。怪しいなぁー!」
「何が?」
「ふむ。唯奈の推理が正しければ……」
思わせぶりな口調で、テーブルの上に置かれた真司の鞄を持ち上げる唯奈。
そして、中を見ると、
「やっぱり……」
「さっきから何がなの?」
「ほら、これ」
そういって、唯奈が中から取り出したのは、緑色の包装紙に包まれた小さな箱。
「クリスマスプレゼントだよ、これ」
それはマズいだろ、唯奈。
「……誰のかな?」
止めようよ、千奈。
「うーん……一個しかないところを見ると……」
「私たちのじゃないってこと?」
「多分」
「じゃあ、誰かな?」
「うーん……」
まったく同じポーズで考え込む二人。
すると……
「ん……ぅん」
真司が何か言葉を発する。
「「っ!?」」
今度も同時に、ビクッと体を震わせる二人。
- 139 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/24(土) 23:09:36 ID:dQ915QoI
- 「わわわぁっ!!ご、ゴメンなさいぃー!!」
「お、落ち着いて唯奈ちゃん。お兄さん、まだ寝てるから!」
「え……あー、よかった」
ホッと胸をなでおろす唯奈。
千奈は真司の顔を覗き込んで、完全に無事であることを確認した後、
「とにかく、それ戻さなきゃ。怒られちゃうよ?」
「うん、そうだね」
唯奈は、プレゼントを真司の鞄の中に戻し、
「でも……誰へのプレゼントなんだろう……」
「唯奈ちゃん、もうやめようよ」
「でも、千奈ちゃんは気にならないの?」
「それは……気になるけど……」
千奈は言葉に困り、ふと窓の外を見る。
外はもう暗く、星が輝くのが見える。
そのまま少し、庭を眺めていると……
「え……」
突然、庭に植えてある大きなケヤキが輝き始めたではないか。
「わぁー……」
窓に駆け寄って、眺める唯奈。
ケヤキだけではない。庭に植えてある木全てが光を放っている。
「でも、いつの間に……」
「多分、お兄ちゃんだよ」
「うん」
分かってるという風に頷く千奈。
「ねぇ、千奈ちゃん。ちょっとお兄ちゃんをビックリさせちゃおうか?」
「え?」
「ちょっと耳貸して」
「……誰も聞いてないと思うけど」
「いいの、気分気分。じゃ、お耳を拝借っと…………」
───────────────────────
- 140 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/24(土) 23:10:09 ID:dQ915QoI
- すごい良い気持ちだ……。
ちょっと寒いけど……体も軽くて、今最高に良い気持ち……。
このまま寝ちゃおうかな……
…………
……
パン!!
「うぉっ!?」
突然、何かが破裂する音がして、俺は飛び上がる。
そしてソファーから見事に落下した。
「痛っ……」
もう何が何だか分からず、床の上に仰向けに寝転んでいる。
すると……
「きゃはははは!!お兄ちゃん、すごい驚いてるー!!」
「あの、お兄さん、大丈夫ですか?」
「え……?」
俺の視界に現れたのは……サンタクロースが二人。
俺の妹二人に非常に良く似ている。
「……」
えっと……コレは……。
寝ぼけた頭で色々考えてみた。
その結果、一つの結論に達する。
「夢か……」
「お、お兄ちゃん!!夢じゃないよ!!」
唯奈みたいなサンタが慌てて言った。
「ね、千奈ちゃん?」
「はい……現実ですよ、お兄さん」
千奈みたいなサンタが付け足す。
- 141 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/24(土) 23:10:41 ID:dQ915QoI
- 「現実……」
現実……。
へぇ、現実なんだ。
あんま驚いてないな、俺。
つーか……
「お兄ちゃん」「お兄さん」
俺が呆然と寝転がっていると、二人に呼びかけられる。
「何?」
「パーティーしようよ!!」
「お菓子や、ジュースも買ってあるんですよ」
「パーティー?」
「うん。クリスマスだもん」
「楽しみましょう?」
唯奈の屈託の無い笑顔と、千奈の少しはにかんだ笑顔。
……そっか。
そうだよな。
どうして気付かなかったのかな。こんなに嬉しいのにさ。
「ああ。そうだな」
「うん、決まり!!」
「じゃあ、準備しましょうか」
……多分、千奈と唯奈は俺にとってなくてはならない存在なのだろう。
それを再確認した、今日、クリスマスイブでした。
「ところで、あのプレゼントは……誰のなの?」
「ゆ、唯奈ちゃん!!」
「お前ら……見たのか?」
「うん。ねぇ、誰の?」
「秘密だ」
ここまで期待されてるなんて……まさか自分のなんて言えないよなぁ……。
- 142 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/24(土) 23:11:23 ID:dQ915QoI
- 【立花未来編】
外は闇の中。
闇夜を照らす街灯すらもロマンチックに感じられる今日はクリスマスイブ。
ここ立花家では、リビングのソファに俺と妹の未来が、たわいの無い話をしながら座っている。
「もう十一時四十五分ですか……」
未来が時計を見ながら呟く。
「思ったより早かったな」
俺はジュースを飲みながら答えた。
「そうですね……」
「朝からいろいろあったからね、今日は」
「ええ、本当ですよね」
じゃあ、今日のことを少しお話しようかな。
───────────────────────
というわけで、一二月二十四日の朝。
「未来ちゃん、今日の夜はどうする?」
味噌汁をフーフー冷ましている未来に話しかける。
「……と言いますと?」
未来ちゃんは、お椀を置いて、真面目な顔を見せる。
「いや、料理作る?それともどっか食べに行く?」
「料理、作りたいです」
未来が目を輝かせて答える。
「だよね。でも、それだと俺がヒマなんだよねぇ……」
「じゃあ、兄さんも一緒に作りましょうよ」
「いや……いい」
俺だって、未来ほどじゃないが料理は作れる。
でも、キッチンの中じゃ、未来にとって俺は邪魔でしかないようで、
最初は一緒に作っていても、ころあいを見て、未来に追い出されてしまう。
つーわけで、『男子厨房に入るべからず』を素で行ってます、ウチは。
「そうですよね」
未来が、予想通りといった感じで小さく頷く。
- 143 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/24(土) 23:11:57 ID:dQ915QoI
- 「じゃあ、どこか食べに行く?」
「どこも一杯ですよ、今日は?」
「だよねぇ……」
「やっぱり家でやるしかないんじゃないですか?」
嬉しそうだな、おい。
「ま、しょうがないか」
「しょうがないですよ」
……凄い笑顔だよ、未来ちゃん。
「でも、兄さんにはやってもらうことがあるんですよ」
「……荷物持ち?」
「ええ」
「ですよね……」
「はい。さてと、午前中は計画でも立てましょうか」
微妙な表情を見せる俺を横目に、未来は鼻歌を歌いながら、また味噌汁を冷まし始めたのでした。
その後。
テーブルの上に並べられた未来特選の料理の本。
嬉しそうに、ペンを走らせる未来の横顔。
俺は、そんな未来を横目で見ながら、ソファーにぐったりと座る。
「あ!!」
ふと、俺は良いアイデアを思いつき、立ち上がる。
「どうかしました?」
未来はこちらを見ずに、声をかけた。
「そうだ、未来ちゃん。俺、プレゼント買ってくるよ」
「はい。でも、誰にプレゼントするんです?」
「誰って、未来ちゃんしかいないじゃない?」
俺がそういうと、未来はゆっくりと体をこちらに向け、
「何言ってるんですか、兄さん?お互いお金がないから、プレゼントは毎年買わないことにしてたじゃないですか」
「んー。まぁ、そうなんだけど……」
- 144 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/24(土) 23:13:07 ID:dQ915QoI
- 「そんなにヒマですか?」
「うん。まぁ、それもあるけど、未来ちゃんはいつも頑張ってるから、たまにはご褒美をあげなきゃと思って」
「兄さん」
「え?」
俺が未来の方を向くと、未来は微笑みながら『こっちへ来い』と手で示す。
「何?」
俺が奇妙に思いながらも歩いていくと、
「まぁ、座ってください」
と、椅子を出す未来。
「え?何?」
俺が大人しく座ると、今度は未来が立ち上がってキッチンへ向かった。
そして、カップを二つ持ってきて、
「はい、どうぞ」
「あぁ……」
あっけに取られたままの俺に、暖かいお茶の入ったカップを手渡し、また椅子に座る未来。
「……何なの?さっきから?」
「ふふ。兄さん」
「何だよ?」
「プレゼントは、いりません」
「……やっぱり?」
「そんな残念そうな顔しないでください。何度も言いますが、家事は好きでやってるんですから
それでご褒美を貰うわけには行きません」
「いや、でもね……」
「わかりました……じゃあ、ください」
「うん。何が良い?」
俺がそういうと、未来は少し俯きながら
- 145 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/24(土) 23:13:41 ID:dQ915QoI
- 「兄さん……」
「何?」
「えと……そうじゃなくて……えっと……欲しいのは……兄さん……です」
にいさん。
ニーサン……?
兄さん……!?
「……えぇぇぇぇっ!?」
ちょっと待ってよ!!
いきなり!?まだ昼間だよ、未来ちゃん!?
「あ、変な意味じゃないんですよ!!えっと……ただ、兄さんはどこにも行って欲しくないっていうか……
だから……!!」
顔を真っ赤にして、必死に言い訳をする未来ちゃん。
それなら言わなきゃ良いのに。とも思うが……可愛いから良し!!うん!!
「だから……えと……今日は一緒に……」
「分かった分かった。どこにも行かないよ、今日は」
「あ、はい!!ありがとうございます!!」
「その代わり……」
「何ですか?」
「料理作ってるときも、俺に冷たくしないこと!!」
「え?してますか?」
「してるしてる。言葉がすげぇ素っ気無いもん」
「そうですか?」
「自覚ないんだ、怖いねー、潜在意識って」
「怖くありません!!大丈夫です!!」
「じゃあ、約束する?」
「します!!」
「よし、言ったなー。覚えとけよー」
───────────────────────
- 146 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/24(土) 23:14:28 ID:dQ915QoI
- 「……ま、相変わらずだったんだけどね」
「そ、そんなことないですよ?」
「そうかー?ちょっと話しかけただけなのに
『黙ってください』とか『消えてください』とか、結構ショックだったけど?」
「え、そんなこと言いましたか?」
「言ってた言ってた。慣れてるとはいえ、ちょっと泣きたかった」
「え……嘘ですよね?」
「嘘じゃないって。だって、言い方もかなり棘があるんだもん」
俺が笑いながらそういうと、未来は急にしおらしくなって、
「兄さん、ゴメンなさい……」
小さく頭を下げた。
「いいよいいよ、気にしてないから」
「……でも」
「大丈夫、そんなことで未来ちゃんを嫌いになったりしないから」
と、冗談交じりで語る。
すると、未来ちゃんは、少し恥ずかしそうに
「はい……」
ちょっと予想外の反応に頭を掻く俺。
しかし!!やられっぱなしの俺ではない!!
「だけど……一つだけ俺のお願い聞いてくれない?」
「いいですよ、何ですか?」
かかった!!
……別にたいそうなモンじゃないですけど。
「膝枕して」
「ひ、ひざまくらっ!?」
「ダメか?」
「……どうぞ」
うっしゃあっっ!!
心の中でガッツポーズ。
- 147 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/24(土) 23:15:07 ID:dQ915QoI
- 「じゃ、お言葉に甘えて」
そのまま、未来ちゃんの、ふわふわの、マシュマロの膝に倒れこむ。
……うわぁ、柔らかぃー。
上を見れば、未来ちゃんの顔。
逆光でよく表情が見えないけど、いつもの恥ずかしそうな顔だろうな。
「……そんなにいいんですか?」
「え?」
「凄く……なんていうんですかね、恍惚としてたから……」
「恍惚……?」
「はい。そんなに気持ち良いのかなーと思って」
「うん。ふとももはフワフワだし。未来ちゃんは可愛いし」
「……もう」
ニヤニヤしながら、未来ちゃんの顔を見上げる。
未来ちゃんの優しい笑顔がぼんやりと見えて……。
「幸せだなー」
「そうですね」
「あのさ、実は俺の部屋にプレゼントがあるんだけど……ゴメン、もうちょっとこのままでいたい」
「ふふっ。わかりました」
柔らかい微笑を見せる未来。
俺は、そんな笑顔に癒されながらも、この心地よさに流されてしまう。
今日はクリスマスイブ。
日本人の俺には全く関係ないはずだが……いいよねぇ、こういうのも。
- 148 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/24(土) 23:21:12 ID:dQ915QoI
- 【反省文】
まず20レスほど、ご迷惑をおかけしましたことをお詫び申し上げます。
さえ、今回は時間(とネタ)が余りなかったので、ロクに推敲もしてない文章です、すいません。
えっと、最後に、先生の期待のはるか下を行く文章を書いてしまったことを、心よりお詫びします。
- 149 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2005/12/25(日) 02:09:22 ID:Wuo9mNci
- >>260氏
乙です!
相変わらず文章が綺麗です。見習いたいものです
>>遊星氏
乙です!!
やはりネタがないと言いつつもしっかり仕上げてきますね
さすがです
でも、来年のクリスマスが少し心配ですw
気が付けばクリスマス…SS書くと言いつつなかなか投下しなくてすいません
レポートさえ…レポートさえ半年分も溜めなければ……
- 150 :名無しくん、、、好きです。。。 :2005/12/25(日) 02:52:55 ID:u+pCD5/N
- ぐ、ぐふっっ!
何か久しぶりだから萌え耐性が低くなって…
HPガンガン削られたよ。
なにはともあれグッジョブァハッ! (←瀕死)
- 151 :前スレ260 :2005/12/26(月) 22:41:19 ID:4/Ooew3O
- >>遊星さん
遊星さん的には期待を下回る出来なのですか。
ここまでの高いクオリティでそんな事言われてはこちらの立つ瀬がないですよw
個人的には真司兄さんが自分のプレゼントで千奈ちゃんと唯奈ちゃんをこの後
どう切り抜けたのかが気になる所ですね。
しかし、クリスマスイブに未来ちゃんの膝枕とはなんと羨ましい話か・・・
>>すばるさん
お褒めの言葉、ありがとうございます。
すばるさんのSSも期待してますよ。
何気に夢亜ちゃんの話を待ち続けていたりしています。
>>150さん
同様に羽音ちゃんにやられましたw
正直、可愛すぎる。
- 152 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/27(火) 20:44:09 ID:/SoYKRM5
- >すばる様
もう、来年でクリスマスは四年目になりますからね。来年は相当ヤバイですねw
すばるさんのSS、楽しみにしてますよ。
>>150様
そうだよね、凄いよね、260さんのSSは凄いよね。
>260様
いつもいつも、私なんぞには、もったいないほどのお褒めのお言葉をありがとうございます。
しかし、260先生のはいつ読んでもいいですよねぇ……。
そろそろコテハンとか、トリップとかつけたらどうですか?
先生がつけてなくて、俺がつけてるのは問題ですよ、問題。
- 153 :前スレ260 :2005/12/31(土) 00:32:21 ID:vqp8RoYf
- >>遊星さん
そろそろそういったのをつけた方がいいですかね?
しかし、年間通して四作しか投稿してないのでまだまだ
という気もしますが。
今も神々には程遠い所にあると思ってます。
今年も後一日で終わりですね。
ちなみに今年一番萌えたの妹さんは羽音ちゃん。
特に萌えたSSは未来ちゃんのホワイトデー話でした。
最後に私のまだまだ稚拙なSSを読んで頂けた皆さんに
心からの感謝を。
来年は巴さんをより可愛く魅せられる様、精進致します。
- 154 :名無しくん、、、好きです。。。 :2005/12/31(土) 04:58:54 ID:APaHszl1
- 妹が携帯片手に近付いて来た
「お兄ちゃんちょっと携帯貸して?」
「へ?なんで?」
「いいから。」
「あぁはい。」
「ロックかけてんだ。」
「まぁ一応な。」
「ふーん。」
なにやら自分の携帯と俺の携帯を交互にいじってる
「はい、ありがと。」
「あぁ、何した?」
「あたしのアドとケー番入れといた。」
「別に使わないと思うけどなぁ。」
「まぁいいじゃん。」
「まぁいいけど。」
「ちゃんと入ってるか、一回メールしてくんない?」
「あぁはいはい。」
「うん、ありがと。」
…これはなんかのイベント発生か?
- 155 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/31(土) 20:42:16 ID:aHq9cToi
- 「今年も終わりなのか……」
「なんだか実感ありませんけどね、毎回のことながら」
「だね」
今日は大晦日。
俺の妹の未来とコタツに入りながら、のんびりと残された今年を過ごす。
「はぁ……でも、今年も大掃除が途中でした……」
「うーむ……まぁ、何だかんだ言っても年末は毎年忙しいからね」
「ですよねぇ……」
……たかがそれぐらいでちょっと暗くなってしまった。
雰囲気を変えるため、俺は違う話を振ってみる。
「しかし……結構食ったなぁ……」
「はは、私もです。太っちゃいますね」
そう言って、苦笑する未来。
しかし、俺が気になっているのは……
「大体、何で晩飯はすき焼きだったんだ?」
「あ、別に大した理由じゃないんですけど……ちょっと良いお肉が安かったから」
「しかも、その後に蕎麦が出てくるし」
「だって、やっぱり年越し蕎麦は必要ですよ?」
「じゃあ、すき焼きいらないじゃん」
「え……えっと、あ、でも、名古屋では大晦日には食べるんですよ?」
「おいおい、さすがにその嘘は苦しいぞ」
「いえ、これは嘘じゃないんですよ」
「マジで?」
「はい」
いや、ホントに食べるんですよ、何故か。
- 156 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/31(土) 20:42:49 ID:aHq9cToi
- 「これも文化ってヤツか……そういや、長崎の年越し蕎麦はちゃんぽんだと聞いたことが……」
「へぇ、面白いですね」
「まぁね」
俺がそう言って笑う。
会話が途切れたので、ふと時計を見ると、現在、十一時半。
今年もあと三十分で終わってしまう。
「そうだ、未来ちゃん。来年の目標とかは?」
「ふふ、鬼が笑いますよ?」
「まぁまぁ、あと三十分だし、笑ったとしても微笑くらいだろ?」
「ふふっ、そうですね」
「で、目標は?無いの?」
「んー……あるにはあるんですが、ちょっと秘密です。兄さんは?」
「……未来が言わないなら、俺も秘密にしとく」
「ふふ……」
「はは……」
お互い、少し残念そうな顔で笑う。
「ま、いいや。みかんちょうだい」
「はい、兄さん」
俺は未来からみかんを受け取り、剥きはじめる。
未来も俺を見て、みかんが欲しくなったようで、同じようにみかんを剥き始めた。
貧乏くさい話だが、俺はみかんの白い筋は取らない。そのまま食う。
だが、未来は丁寧に取ってから食べる。
……これも性格の違いなのだろうか。
- 157 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/31(土) 20:44:10 ID:aHq9cToi
- 「んー、あんまり美味しくないなぁ……」
「そう?私のは甘いですよ」
「あ、そう?じゃ、一つ頂戴」
といって、口を大きく開ける。
「に、兄さん!!そんなこと、しませんからね!?」
「けち臭いこといわないでさ。いいじゃない。みかんくらい」
「う……分かりました」
赤面状態のまま、恐る恐る俺の口にみかんを運ぶ未来。
……少し意地悪してやろうとも思ったが、流石にかわいそうなのでやめた。
「うん、美味しいね」
「……もう」
未来の羞恥心がとうとう限界に達してしまったようだ。
恥ずかしそうに、コタツの布団で顔を隠す未来。
あぁ、もう!!そういうのが、可愛いってのに!!
「来年もこんな感じなのかな……」
「でしょうね」
「なるほど。そりゃ楽しみだ」
「ふふ、はいっ」
微笑む未来。
俺もそんな未来を見て、幸せな顔になる。
エアコンやストーブとは違うコタツの温もりを感じながら、
もう一つみかんを頬張ってみた。
───────────────────────
- 158 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/12/31(土) 20:45:39 ID:aHq9cToi
- 大晦日の夜、いかがお過ごしでしょうか。
紅白の布施明に鳥肌ビンビンの遊星でございます。
構想含め、二時間で書いてしまいました。
まぁ、二時間で書いたなりの結果になっていると思ってます。
>260先生
トリップとか、コテハンとか別に難しく考えることは無いんですよ。
でも、自分じゃない人に自分の大切なキャラを、勝手に書かれてしまうのがイヤだから。
だから、書くとか書かないとか上手いとか下手とか関係無しに、
トリップをつけてるんだって。僕は都合よく思ってますけどねw
あと、ちょっと余談。僕のサイトに、未公開作品を追加しました。
妹ではないですが、よかったらどうぞ、っと。
- 159 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/01/01(日) 03:03:22 ID:eQDSVVMQ
- あけおめ乙
- 160 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2006/01/07(土) 03:48:14 ID:HovilBMs
- >260さん
260さんの期待に答えられる程のものを書けるかわかりませんが頑張ってみます
期待はしない方がいいかもしれないですw
>遊星さん
遊星さんならそう言いつつも、来年もしっかり仕上げてきそうですねw
俺のSSは上記の通りなので…楽しみにしてると出来て投下した時にがっかりするかもしれないですよw
もっとキャラ達を立たせてあげたいんですが…文章力が付いていけてないので orz
- 161 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/01/11(水) 19:36:24 ID:Ye0ZYc5U
- あげますよ〜。
- 162 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/01/15(日) 02:09:55 ID:R2fpzf4A
- 誰もいない…………かな?
- 163 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/01/15(日) 02:18:19 ID:R2fpzf4A
- 捕れると思った…しかし、ボールはあっさり後ろに通り過ぎていった…
中学野球の地区大会決勝
俺はアイツとの約束を守れなかった。
アイツは…渚は両親が死んでからずっと泣いていた。
身寄りのない俺達は叔母夫婦に預けられた。
叔母さん達は本当に良くしてくれるが、渚は悲しみにくれて家から一歩も出ようとしなかった。
俺は叔母さん達に迷惑をかけないために…本音は渚に元気を出してほしくて
「次の試合、俺が勝ったらもう泣くなよ!だから見に来い。絶対勝つから!」
そう言った。
大会が始まり、試合に勝ち続けた。でも渚は見に来なかった。
そして、今日俺のエラーで負けた…
渚が初めて見に来たのに……
- 164 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/01/15(日) 02:21:42 ID:R2fpzf4A
- 周りでチームメイトが泣いている。俺は泣くに泣けなかった…
エラーした自分と約束を守れなかった自分に呆れていたのかもしれない…
家への帰り道、あれこれと言い訳を考えながら帰る…夕陽が目にしみるぜ…
すると影が目線にはいり、誰が立ちはだかった。
「…お兄ちゃん。」
「!!」
渚だ。まったく予想外のことにパニックになる。「……。」
「……。」
そして、沈黙。
どれくらいだったかわからないがその沈黙はさらに俺を混乱させる。
考えがまとまらないまま声をかけようとしたところで
「カッコ悪い。」
「えっ!?」
「今日のお兄ちゃん、すっっっごくカッコ悪かった!!」
「うっ…」
- 165 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/01/15(日) 02:24:31 ID:R2fpzf4A
- 分かってたがかなりキツい…。
そりゃあ、あのエラーさえなければ勝ってたのだが……。
「でも……。」
「えっ?」
「すっごく頑張ってた。」「……。」
そこまで言って俯いてしまう。
「えっと……その……ちょっとだけかっこ良かったよ…。」
そして顔を上げてとびきりの笑顔。
その笑顔は夕陽に染まって真っ赤だった。
「帰ろ。お兄ちゃん!」
そうして、差し出された手。
どうやら、立ち直ってくれたらしい。だから俺はその手をとって、こう言うんだ。
「そうだな。」
- 166 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/01/15(日) 02:32:53 ID:R2fpzf4A
- 最初に全力を持って謝ります!
本当にすいませんでした!!
完璧なるスレ汚し。
3つも使っちまった……。
出来心ですいません。もうしません。
では、撤収します。
それでは。本当にすいませんでした!!
- 167 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2006/01/15(日) 02:53:15 ID:1eH+YdG3
- これが噂の貼り逃げってやつですね!?
>>162-166
謝らないでくださいw
もうしないなんて言わずにどんどんやっちゃってくださいw
出番が少なくて妹のキャラをしっかりとは把握出来ないですがいい作品だと思いますよ
(多分)今までにない新鮮なネタですね
是非続けて欲しいです
もしやイメージはバンプのキャッチボールですか?
- 168 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/01/15(日) 10:44:23 ID:R2fpzf4A
- わかりにくくてすいません。
妹の最後の一言を言わせたいためだけに作って、貼ってしまいました。
あぁ、つくづく俺は駄目野郎だぁ。
- 169 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/01/15(日) 10:56:24 ID:R2fpzf4A
- すばる様>
俺みたいに駄目な奴にありがとうございます。
出直します。
- 170 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/01/15(日) 21:13:20 ID:m7Wcyz4n
- >>162-166
まぁまぁ、気を落とさないでくださいな。
兄はカッコよくあるべし。という信条を持つ拙僧には、大変面白く読ませていただきましたよ。
スポーツ系のSSは珍しい(と思う)ので、是非これからも書いていって欲しいですね。
偉そうですか、すいません。
- 171 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/01/18(水) 22:47:05 ID:9ICbKeW+
- >遊星さん
偉そうなんてとんでもないです。
そう言ってくれる方々がいてくれて、嬉しいっす。
続きかけたら書きます
期待に添えられればいいのですが…orz
501KB
新着レスの表示
スレッドリストへ戻る 全部 前100 次100 最新50
0ch BBS 2004-10-30