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[第六弾]妹に言われたいセリフ

81 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/11/12(土) 23:18:05 ID:cwp0+9it
雲ひとつ無い秋晴れの空。
十一月とは思えない暖かい日差しに、強制的に冬服になってしまった制服の袖をまくり、
俺、州田敬介は校舎内をブラブラ歩いている。
今日は年に一度の文化祭!とのことで、校舎内は活気と人間と甘い香りに溢れている。
とはいえ、俺は大した目的も無く、飲食をするような気にもなれない。
なので、こうしてブラブラと歩いているわけだ。
ちなみに、本来今日は日曜なのだが、文化祭のため、全員出校。明日は代休だ。
「誰か暇なヤツいねぇかな……」
友人はみんな用事や、やることがあるらしく、忙しくしている。
唯一の暇人だった友人、立花将人もどっかの教室で何かやるからと、走っていってしまった。
「あの時、立花についていきゃよかったんだよ」
そんなこと呟いても、今更どうにかなるものではない。
せめて、どこかゆっくり静かに座れる場所でも有れば良いのだが……
そう思い、キョロキョロと辺りを見回す。
とはいえ、基本どこもスペースの奪い合い……使ってない場所なんてある訳無いわな。
「自己主張が激しいよな。みんな」
そう皮肉ってみるも、無性に悲しくなった。
俺が少し校舎の端のほうに足を運ぶ。
すると、
「あ……」
体育館のところにいるあの人間は……俺の幼馴染、相川梨那だ。
足を止めて、梨那の様子を眺める。
梨那は体育館の近くに置いてある下駄箱の前で、両手で胸を押さえている。
ここからでは、あまり顔が見えない。
体調でも悪いのだろうか……。

82 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/11/12(土) 23:18:48 ID:cwp0+9it
ま、とりあえず、声かけてみよう。ヒマだし。
「よぅ、梨那」
俺は渡り廊下を通って体育館へ行き、後ろからこっそり梨那の肩を叩く。
「にゃっ!?」
そんなに驚いたのだろうか、大きく体を震わせた後、地面にペタンと座り込んでしまう梨那。
「お、お兄ちゃん……!?」
「そんな驚くことはねぇだろ」
相手に冗談で言った言葉が図星だったときのような、微妙な罪悪感を感じてしまう。
「あ、うん……ゴメン」
気のない返事を返す梨那。
「ほらよ」
とりあえず、梨那に手を差し出す。
「うん……」
しかし、梨那は俺の手を取らず、魂の抜けたような顔でボーっと俺の顔を眺めている。
「どうかしたか?」
「えっ……あっ、うん。なんでもないよ」
「ならいいけど。それより、お前ヒマか?ヒマなら、どっか一緒に巡ろうぜ?」
「あ、ゴメンね。梨那、やることあるから」
やっと、俺の手を取り立ち上がる梨那。
パンパンと制服のスカートの埃を払う。
「そっか、まぁ頑張ってくれ」
「うん。ありがとう、お兄ちゃん。梨那、頑張るね?」
俺の手を両手で握りながら、梨那がまじまじと俺の顔を見つめる。
言っておくが、俺は別に変な気は起きてない。
ただ、心配にも似た疑問を持ってしまったのだが。
「お……おぅ」
何を頑張るのかは不明だが、とりあえずそう返しておく。

83 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/11/12(土) 23:19:32 ID:cwp0+9it
つーか、ホント、何をするのだろう。
演劇をやるにしては、服は普通だし、裏方だとしても、意気込みすぎだ。
いろいろ考えたが、予想もつかないので、直接聞いてみることにする。
「ところで、梨那、お前何を……」
と、言いかけたが、肝心の梨那はいつのまにか遥か遠く。
体育館の裏口に入っているところだった。
梨那は一度、そこから顔を出して、笑顔で俺に小さく手を振った。
そして、また見えなくなる。
これでまた暇つぶしの当てがなくなってしまった。
「あ、そうだ」
ポケットの中に文化祭のパンフレットを入れていたことを思い出す。
ポケットの中から、八つに折りたたまれた、
黒一色の、いかにも手書きです。という感じのパンフレットを取り出す。
「えっと……今の時間、体育館でやってるのは……お、あった」
そこには、確かに『文芸部』との文字が。
梨那は文芸部じゃないハズだ。じゃ、何で……?
つーか文芸部が舞台で何すんの……?
「ま、どーせヒマだし、見てくか」
パンフレットを折りたたみながら、入り口へ向かう。
中に入ろうとすると、前に立っていた男子に呼び止められた。
「あの、チケットは?」
「え?いるの?」
暇つぶしに今見ていこうと思ったのだ。もちろん持っているわけが無い。
もっとユルい出し物だと思ったので、ちょっと驚く。
「じゃ、買うよ。いくら?」
「いえ……完全前売りになってますから」
「あぁ、そう……」
ここで抗議するほど見たいわけじゃないし、何食わぬ顔で言う。
まぁ、文芸部と梨那との関係が分かれば良いわけだし。

84 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/11/12(土) 23:20:04 ID:cwp0+9it
「ところで、キミ、文芸部?」
「はい」
「今から、何すんの?」
「作品の朗読会ですけど」
……文芸部を悪く言うつもりは無いが、
金を取る上にチケットは前売り、しかも内容が朗読じゃそんなに客は入らないだろ……。
「チケットはどう?売れてた?」
「はい。ほとんど完売で」
マジか……。
すげぇな、いろんな意味で。
「そっか……ところでさ、相川梨那って知ってる?」
「はい!!もちろん!!」
「そんな有名なんだ。さっき、裏口にいたんだけど、何かするの?」
「あ、はい。特別に参加してもらうことになったんです。
 彼女のおかげで、こんなにお客さんが来てくれて……もう感激ですよ」
「そんな凄いんだ、アイツ」
「はい!凄いです、相川先輩の詩、すごい感動しますもん」
「ふーん」
梨那とはずっと一緒だったのに、知らないことってあるもんだなー。
って、梨那の詩なんて、小4のときの花だか草だかのヤツしか読んだことないんだよ、俺は。
それだって、そんなに感動した記憶は無いが……。
一人記憶をめぐっていると、急に体育館内が静かになる。
舞台の上には、司会がいつのまにかいて、その司会に呼ばれ、文芸部員と思われる数名が舞台袖から現われる。
そのなかには、よく知ってる梨那の顔が。
……ガチガチだよ、アイツ。

85 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/11/12(土) 23:20:36 ID:cwp0+9it
「なぁ、キミ」
「はい?」
「すぐ出るから、ちょっとだけ入ってもいいかな?」
「え……?」
「いや、司会の間だけ。頼む」
「……分かりました。ホント、約束は守ってくださいよ?」
「当然だ」
俺は、スリッパを脱ぎ、体育館の中に入っていく。
満席といっても、体育館全てを埋め尽くすほどの席は無い。
俺は後ろの方に立って、舞台を見る。
みな座っている中で、一人立っているのは凄く目立つ。
梨那もこちらに気付いたようで、「どうしよう……」みたいな視線を俺に向ける。
俺にはどうしようもない。
変わってやることなんてできないし、そもそもすぐにココから出て行かなきゃならないんだ。
さっきの部員がにらんでいる。
「せっかちだな」
俺は一言だけ呟いて、右手の拳を前方に思い切り突き出す。
そして、親指を天に上げる。
「頑張れよ」
俺のいいたいことが分かったようで、小さく頷く梨那。
俺もうんうんと頷いた後、振り返って体育館を後にする。
「そういや、真司の妹が喫茶店やってるっていってたな。遊びに行くか」
と言うわけで、このあと、体育館で起こる出来事を……俺は知る由がなくなってしまったのである。
───────────────────────

86 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/11/12(土) 23:21:44 ID:cwp0+9it
まぁ、あの後はいろいろあった。
三上兄妹に会ったし、立花と石川ツインズの喫茶店にも行った(二人のウエイトレス服、つーかメイド服が最高でした)。
考えてみると、俺の文化祭はヒマに始まり、メイド服に終わったわけだ。
飾り付けられた教室で適当にHRを終え、あとは帰宅するだけである。
特に思い入れがあるわけではないが、いざ終わってみると、何となく寂しい。
ま、すぐ忘れるだろうけど。
「さ、帰るか」
教室の外。俺が歩き出そうとすると、
トントンと誰かが俺の肩を叩く。
「お兄ちゃん……」
梨那だった。
梨那は体を丸め、俺の背中に張り付きながら、俺に囁く。
「よう、梨那。どうかしたか?」
「にゃっ!?静かに!!」
「あぁ、スマン。で、どうかしたのか?」
「文芸部の人から逃げてるの〜!!」
梨那は俺の肩越しに、向こうを見ながら、小さな声で言う。
「何で?」
「打ち上げに参加して欲しいんだって〜」
「大活躍だったんだろ?行けばいいのに」
「だって〜……苦手なんだもん、ああいう真面目な雰囲気って〜」
「確かにな」
「でしょ〜?」
「で、それはいいが……何故俺のところに来た?」
「えへへ、お兄ちゃんをお誘いに来たのー。ねぇねぇ、二人で後夜祭いこーよー!」
「後夜祭なんてあるんだ……」
「うん。でも、嬉しいよー!!梨那、まだ全然お兄ちゃんと文化祭してないもん」
文化祭する:自サ変動詞。文化祭を楽しむこと。
「そーだな。このまま帰るのもつまらないし、付き合うよ」

87 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2005/11/12(土) 23:22:42 ID:cwp0+9it
「わーい!!やったねー!!さぁ、れっつごー!!」
後ろから、俺の首に抱きついて、頬ずりをする梨那。
「いや、退けって!!苦しいから!!」
楽しいことは二人で。
……何となくだが、今日一日がつまらなかった理由が、わかったような気がした。
───────────────────────
さて、少し話は戻るが、俺が帰ったあとの体育館。
特別ゲストとして呼ばれた梨那。
梨那の誰かさんへの想いを綴った詩は、
内容もさることながら、梨那の話し方にもその人をラブな気持ちが篭っていてステキだった。と言う。
さらにブラスバンド部が、これまたステキなメロディーを奏で始めたから、さぁ大変。
一人のカップルがキスし始めたのを皮切りに、会場内では幾度と無くキスをするカップルが見られ、
ついには噂が噂を呼び、告白の会場みたいになってしまったらしい。
結局文芸部の発表は有耶無耶になったが、成功に終わったと判断したとか。

……と言うのが、俺の後日聴いた話だが、どこまで話の尾ひれなのか分からない。
というか、ほぼ尾ひれのような気がする。
それより……その誰かさんって、誰だよ……?
まだ梨那には知らないことがある。今回それを学んだが……
……ちょっと、ムカつくよな。
───────────────────────
まず、ゴメンなさい。
文化祭話なんで、先生のとカブってます、ゴメンなさい。
つーか、変な話でゴメンなさい。
あと、別に文芸部を悪く言うつもりは無いです。気に障ったらゴメンなさい。
必要と有らば、土下座します。つーか、自害します、自害。

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