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[第六弾]妹に言われたいセリフ

259 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/15(水) 13:34:46 ID:7zsPNpDG
>>258
www.geocities.jp/you_say712/

そういや、ここには貼ってなかったっけねぇ

260 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/03/15(水) 17:10:50 ID:SBmPuSZl
ゆ、遊星様!?ありがとうございます(ノДT)
 それとsage忘れスマソ

261 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/03/17(金) 11:43:10 ID:JbCl7rQk
海中様、遊星様、GJです!

海中様>エロいw
面白かったです!!

今回はギャグですね

遊星様>ヤバいっ、サラ萌えました!
サラはツンデレかな?
プレゼント(´・ω・`)

サラ&双子最強w

262 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/03/19(日) 19:52:35 ID:isOInMJv
待ちに待った文化祭当日。いつもの何倍もの活気と熱気を帯びた学園に弾んだ声が飛び交う。
俺もそんな空気を人並みに楽しんでいた、筈だったのだが

「はい、オーダー入りま〜す!!イチゴクリームにバナナチョコ一つです!!」
「・・・はいはい」

何故か屋台でクレープを作っていた。・・・明らかに何かが間違っている。

「・・・あのさ、なんで俺が作らなくちゃならないワケ?」
「それだけ上手く作れる人はそういないよ、あたしだって無理だもん」
「その才能を使わない手はないワケよ」

強靭な笑みを見せるクラスメイト達にたじろぐ俺。
ほんの少しクラスの出店状況を見てみようと思ったのが運の尽きだった。
連れ立って歩いていた筈の仲間は知らぬ内に姿を眩ませ、気が付けば俺一人拘束。
あまりにも無情な展開だが、そんな訳で今現在屋台を切り盛りしている。

「くっ、くそ・・・全員トンズラとは友達甲斐の無い奴等だ!!」
「いいのよ、男子で当てになるのって言えばキミくらいのもんだし」
「屋台造ってクレープまで作るってか、村一番の働き者だな俺は」
「まぁまぁ、これでも私達ほんとに感謝してるんだからさ」
「うん、実際、村一番の働き者だよキミは」

なんとなく上手く扱われている感じがあるが今更その辺りは深く考えまい、虚しいだけだ。
愚痴を零しつつも手早くクレープを仕上げていく。その所業に周りから漏れる感嘆の声。

263 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/03/19(日) 19:54:07 ID:isOInMJv
「ほい、出来上がり」
「ほんと上手だよねぇ、ひょっとしてどっかクレープ屋でバイトしてたとか?」
「流石にそれはないな・・・まぁ、家で何度か作った事があるからさ」
「ひょっとして、巴ちゃん直伝だったり!?」
「え?ああ・・・そんな所」

目を輝かせて問いかける女子を前に俺は曖昧な作り笑いで答える。
当然、巴と共に培った技術なのだが教えたのは俺だったりするんだよな。
まぁ、それを言った所で誰も信じやしないとは思うが。
男子厨房に入るべからずという言葉はもはや昭和の向こうに霞んで見える。

「・・・ところで、昼になったら俺は抜けるからな、流石にその辺でご勘弁を」
「ありがとうね、お陰で助かっちゃったよ」
「一番忙しい時に助っ人だったからね、ほんとありがとう!!」
「じゃあさ、どうせだったら後で私達と文化祭見て回る?お詫びに奢ったげるから」
「う〜ん・・・気持ちだけ受け取っておくよ」

割と本気で言ってくれていた様だがやんわりと断っておく。
女の輪の中に男独りはキツ過ぎる。公園へ遊びに連れ歩くチワワじゃあるまいし。

「あっ!!いらっしゃいませ!!」
「・・・うっ!?な、なんか嫌な予感が・・・」

そんな事を考えて苦笑いしていると一オクターブ高い接客の声が聞こえてくる。
ほぼ同時に背中に感じる悪寒。この感覚、まさか・・・振り向いたその先にいたのはやはり氷の女帝、もとい我が妹。

264 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/03/19(日) 19:55:44 ID:isOInMJv
「・・・イチゴチョコひとつ」

大きくは無い、むしろ囁く様な、それでいてはっきりと聞こえる独特の澄んだ声。色めき立つ周りとは少し違う緊張が俺に走る。
長い付き合いで大体解るんだが・・・妹様は大変ご機嫌斜めらしい。

「兄さん、楽しそうだね」
「えっ?そ、そうかな・・・ははっ」

急にこちらに向けられた穏やかだが矢の様に刺さる視線に動揺して作り笑いもままならない。
兄さんという完全に余所行きの言葉もやたらと深く胸に突き刺さる。
背筋まで凍りつく瞳の奥にある絶対零度の世界。一体何がこの子をここまで駆り立てるのか?

「はい、イチゴチョコです」
「・・・ありがとうございます」

クレープを受け取ると軽く会釈して悠然と去って行く巴。そんな巴の颯爽たる後姿を惚けた顔で皆が見送る。

「ほんと素敵よねぇ・・・巴ちゃん」
「うんうん、財布を取り出す姿もカッコイイっていうか」
「年下とはとても思えないよ、ホント」

頬を染めて後姿をうっとりと見つめるクラスメイト。数秒後、なんとはなしに俺に品定めする様な視線が集まる。
所詮、体は一つだというのに複数の視線で貫くとはなんという仕打ちだろうか。

「・・・すみませんね、どうせ俺は面白くもなんともないただの凡人ですよ」
「い、いや、そんなんじゃないんだよ!?そんな事は無いから、ねっ」
「そ、そうそう、いいひとだもんねぇ」

鑑定の結果はいい人かよ・・・まぁ、自分でもお人好しかその辺りだろうとは思うが。
それよりも巴の機嫌がすぐに直ってくれればいいのだが。
遠くになった背中を見ていると自然と深い溜め息が漏れ出てしまう俺だった。

265 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/03/19(日) 20:19:20 ID:isOInMJv
てな訳で前回、年の終わりに遊星神のご神託を承ったのでコテ&トリップ付けた前スレ260です。
相も変わらずのスローペースに誰も覚えていなくとも仕方がありません。
一応、話は去年前振りしていた文化祭話の続き。
バレンタイン話もホワイトデー話も書いてはいますが完成したのが今し方。
来年投下しましょうかね・・・生きてれば。

>海中様
SF的設定を活かしたお話は流石の一言。
というか思わせ振りな展開が上手い!!
>223様
悲しめのお話ですね、続きがとても気になっています。
期待して待ってますよ。
>遊星様
しっかりバレンタイン、ホワイトデー共に書き上げるとはお見事です。
堪能させて頂きました、羽音ちゃんが可愛い!!何気に精神年齢高い梨那ちゃんがイイ!!

266 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/03/21(火) 08:33:42 ID:udjHyFTw
わーい、260様、改め夢ノ又夢様がいらっしゃったぞー!
続きが楽しみだー!

267 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/04/04(火) 22:24:48 ID:09xp6MVE
保守保守っと。

にしても、アイデアがわかないなぁ……。

268 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2006/04/07(金) 15:31:46 ID:441Fyv+f
>>夢ノ又夢さん
コテトリおめですー
いつもひっそりと楽しませてもらってますですw

>>遊星さん
料理にお酒を入れすぎて酔っ払って暴れまくる妹…言ってみただけです(´・ω・`)
遊星さんは書いてる量が量だから仕方ないですよ。

それにしてもこの時間のなさは一体…
次のが書けるようになるまで名無しで潜伏するかも知れないです。

269 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/04/12(水) 01:59:15 ID:5Ar0SzUf
ひそかに期待あげ

270 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/04/17(月) 21:29:28 ID:ZDUMoLOm
意思のある静寂に包まれた体育館に司会の声が響き渡る。舞台袖から現れる数人の生徒達。
一人一人司会者に丁寧な紹介をされ大きくお辞儀してみせる。文芸部の詩の朗読がもうすぐ始まる。

「・・・お兄ちゃん・・・」

渡せなかったチケット、隣の空席。頭に過ぎるクラスメイトに囲まれて照れた笑顔のお兄ちゃん。
先程の光景を思い出すだけで秘めかねた痛みが胸にチクリと突き刺さる。

「・・・カッコ悪い・・・デレデレして」

きっと優しいお兄ちゃんの事、忙しそうなのを見かねて助け舟を出したに違いない。
頭でそう解っていても心は納得してくれない。メトロノームの様に揺らめくアンバラスな心と理性。
やがて耳に聞こえてくる詩の朗読、どうやら気付かぬ内に朗読は始まっていたらしい。
綺麗に着飾られた言葉を聴く度に思い知る、ボクにはこんな風に伝えたい言葉が無い事を。
ボクは人に言われる程、器用な方じゃない。届けたい想いは沈黙の渦の奥にある。
お兄ちゃんへの想いは嬉しい事も悲しい事も、時に大きくなる戸惑いや苛立ちだって抱え込む。
例えそれがどんなに辛くてもそのひとつひとつが本当の気持ち、偽りの無い心。
ホントはちゃんと解ってた・・・解ってるんだよ、お兄ちゃん。

「お待たせしました、次は相川梨那さんです」

泣き虫だったボクが元気にここまでこれたのはお兄ちゃんが傍に居てくれたからだって。
繋いだ手の温もりがボクを支えてくれていたんだって。
瞼を閉じればいつでも目の前に広がるずっと追いかけ続けるお兄ちゃんの大きな背中。
耳元からは落ち着いたメロディに乗せて朗読される詩が聞こえてくる。
紡がれるシンプルな言葉達が胸を打つ。それはきっと心からの気持ちだからなんだと思った。
こんな風に自分の想いを伝える事が出来ればどんなに素敵だろう。

271 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/04/17(月) 21:30:25 ID:ZDUMoLOm
「心からの気持ちをありのままに・・・」

ボクは考えすぎていたのかもしれない。そう思うとなんだか切羽詰っていた自分が余計に滑稽に思えてしかたがなかった。
気持ちは言葉にしなきゃ伝わらない、そんなお兄ちゃんの真摯な言葉を不意に思い出す。
ボクも伝えよう、欲しいのは思い出じゃない、今この時なのだから。
朗読を終え、割れんばかりの拍手に真っ赤な顔で応じる彼女を見届けてボクは席を立つ。

「あれ?最後まで聞いていかないんですか?」
「・・・舞台の準備があるから」

それに相沢先輩の詩の効果で体育館が甘い空気に包まれ始めている。
こうして入り口の男の子に呼び止められた今も場内の熱に浮かされたカップルが自分達の世界に入浸る。
もっと問題なのは数名の女子の妙な熱視線を背中に感じる事、これ以上ここに留まるのは危険を伴う。
一人に告白されでもすれば矢継ぎ早に告白されかねない、それでは卒業式の二の舞だ。
たまにお兄ちゃんから冷やかされるけど女の子の恋焦がれる人を見つめるかの様な視線を浴びるのはやっぱり苦手・・・
かといって男の人にそんな視線を送られるのも正直、嫌だけど。

「そうですか、あ、あの・・・舞台頑張って下さいね!!」
「ありがとう・・・それより相沢先輩に伝えてくれるかな、本当に素敵な詩でしたって」

後ろを振り返りもう一度あの詩の主を見やり、そっと心の中で呟く。
(あなたの想い、どうか想い人に届きますように)
そんな祈りを捧げながらボクは騒がしくなってきた会場を後にした。

272 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/04/17(月) 21:42:46 ID:ZDUMoLOm
まずは遊星神に心からの謝罪を。
折角文化祭話が被ったならこれくらい重なってもいいかなと。
怒られても文句言えません。

>すばるさん
なにやらお忙しそうで。
すばるさんssも気長にお待ちしております。

ちなみにシチューに入れる赤ワインに酔って迫りまくる巴さん
なんて話も書いてたりしたのですが無駄にえっちいので没にしましたw
流石に裸エプロンはなぁ・・・

273 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/04/17(月) 22:50:58 ID:XcLSeSYj
>夢ノ又夢大先生様
いやいやいやいやいや!!
怒るなんてとんでもない!
良いもの読めて、しかも拙僧のキャラを出した頂くなんて、感無量とはこのことですよ!!

>流石に裸エプロンはなぁ・・・
は、裸エプロンっ!?
……くそ……今、エロスレがあれば!!w

274 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/04/21(金) 23:00:33 ID:idYqj/jC
放課後。
校門の前に、一人の少女が立っている。
スラッと伸びた足、制服の上からでも分かるスタイルの良さ、大きな瞳と、日本人にしては高い鼻。
普通と生徒と同じはずの制服すらも、彼女が着ると、1ランク上の服のように見える。
彼女は、胸の下で、小さく腕を組み、何かを待っていた。
「ふぅっ……」
時計を見て、小さなため息。
そのため息にも、魅力を感じてしまう。
「あ……」
小さな声。
しかし、そこには大きな喜びが込められていた。
彼女は振り返ると、品のある笑顔を一人の男に向ける。
……その男、というのが何故か俺なワケだが……。
「お兄ちゃん!!」
少女が─まぁ、ご察しの通り俺の妹なんだけど─サラサラの髪を風に靡かせながら駆けてくる。
さっきまで無風だったと言うのに……風までが彼女の味方だ。
「やぁ、葵。待ってたのか?」
俺は彼女のオーラに圧倒されながら、何とか会話を進める。
「うん、遅かったね?」
そんな俺の心など全く知らず、フランクに話しかけてくる葵。
「ああ、まぁ、テスト近いから」
「勉強してたの?」

275 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/04/21(金) 23:01:22 ID:idYqj/jC
「いや、クラスの女の子に数学を教えt……」
「……ちょっと蚊が」
ギュ。
頬に電撃が走った。
「痛い痛い!!」
「我慢して」
涼しい顔をして、さっきよりも力を強くする葵。
指はあんなに細いのに、どこにこんな力が……!?
「ギブギブギブ!!俺がなんかしたなら謝るから!!」
まわりの生徒が俺たちを見ている。
しかし、そこは葵。
凄い力で俺の頬をつねっていても、ちょっとふざけているようにしか見えないのだ。
「……やだなぁ、お兄ちゃん、大げさだよぉ?」
そんな俺の願いに、ニコリと微笑む葵。
……鬼だ、この人……。
「痛いって!!」
限界に達した俺は、仕方なく葵の手を振りほどく。
当の葵は……
「さ、早く帰ろうよ……」
作り笑いを見せた後、捨て台詞を吐いて、先に歩いていく葵。
「……俺、何かした?」
俺はまだ痛む頬を押さえながら、こうなった原因を探る。
が、特に思い当たらない。
つまり、妹さんはご機嫌斜め、何か嫌なことがあったということだろう。
というか、俺に八つ当たりとは何とバイオレンスな……。
とりあえず、葵を追って駆け出した俺。
周りの人々の俺に対する視線が非常に冷たいよ……。
───────────────────────

276 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/04/21(金) 23:02:14 ID:idYqj/jC
「お兄ちゃん……」
帰り道を二人で歩いていると、穏やかな声で葵が俺を呼んだ。
「ん?」
「反省してる?」
「は……?」
反省?何で?
「してないか……」
呆れた。とでも言いたげな葵。
「……葵ってさ」
「え?」
「いつもそうだよな。俺と兄妹になったときから、ずっと」
「何が?」
「よくわかんないところで怒る」
「……お兄ちゃんも変わってないよ」
「そりゃそうだ」
「何が?って聞いてよ」
「何で……」
……殺気!?
「な……何が!?」
「……鈍感」
「まぁ、自分でも察しの悪い人間だとは思ってるけど」
「ホントだね」
「だろ?……って、おい!!」
「今、何で怒ってるかも、分かってないでしょ?」
「……俺に関係あるのか?」
「さぁね」

277 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/04/21(金) 23:03:00 ID:idYqj/jC
「……出会って、二年になるけど、葵のことはさっぱりわからんな……」
「一気に全部分かっちゃったら、つまらないでしょ?」
「性格悪いよ、葵……」
「……そうかもね……」
「え?」
「あ、あはは!!なんでもないの!!さ、帰ろ!!」
ぎこちない笑いとともに、急に早足になる葵。
「やっぱ、わかんねぇ……」
一人、そう呟いてみた。
───────────────────────
ゴロゴロと寝転がりながら、雑誌のページをめくる。
幸せってこういうことを言うのかなぁ。などと間の抜けたことを思った瞬間、
「ねぇ、お兄ちゃん」
葵が俺の背後に現れる。
「何?」
「数学、教えて?」
数学……。
「先生すらも一目置くような優等生の葵さんが分からないような問題、俺に解けるわけ無いだろ」
目を離さず、雑誌を読み続ける俺。
「で……でも……」
「何?」
「……」
黙ってしまう葵。
「どうした……?」
俺が後ろを振り返ると、

278 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/04/21(金) 23:03:46 ID:idYqj/jC
「お兄ちゃんのバカ!!」
「うぉっ!?」
問題集を俺の顔面に驚くほど正確に投げつけ、何処かへ走っていく葵。
「……何なんだよ、アイツは……」
床に落下した問題集に目をやる。
「あ……」
真っ白な問題集。
でも、ところどころ消しゴムのカスや、消し残りが見える。
明らかに、一度解いた問題を消した後。
「……何で……」
葵が何を考えてるのか分からない。
でも、これは聞いたほうが良いような気がした。
俺は葵の問題集を閉じ、それを持って、葵の後を追った。
───────────────────────

279 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/04/21(金) 23:04:35 ID:idYqj/jC
「あ……」
それは、運命の出会いというには、あまりにも平凡だった。
焦って転びそうになった私を、助けてくれた男の人。
「ありがとうございます」
「いえ……」
私が礼を言うと、小さくそういってまた歩き出す青年。
別にそのときは、何にも思ってなかったのに。
だけど、次の日も、その次の日も、彼のことが何故か頭から離れなかった。
いつも目で追って、いつも同じ車両に乗ろうと努力した。
それで分かったのだが、彼は本当に優しかった。
本当に、誰にでも。
お年寄りが乗ってくると、黙って席を立ったり、
満員の電車の中で、本人にも気付かれないほどさりげなく女の子を守っていたり……。
私にしか見えていない、彼の優しさ。
いつのまにか下心のある優しさにばかり触れていた私には、彼は凄く暖かかった。
……そして、いつのまにか、彼への想いは募っていた。
だから、お母さんが再婚して……あの人と兄妹になるって知ったときは、本当に嬉しかった。
運命の出会いはちゃんとあると思った。
ワガママなのは分かってる。
けど、私はアナタの特別になりたい……。
アナタの優しさを独り占めにしたい……。
だけど……
───────────────────────

280 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/04/21(金) 23:05:17 ID:idYqj/jC
「それが、この有様か……」
「何がだよ?」
そう呟いた、葵の背中を見つけ、声をかけた。
「……ったく、まさか駅にいるとは思わなかったよ」
葵の隣に座る俺。
「……嫌だな……顔合わせたくなかったのに……」
葵は驚いた様子も見せず、前を見たまま、答える。
「悪かったな……」
「……やめてよ」
「え?」
「何も分かってないのに、謝らないで……」
「……スマン。確かに、口先だけってのは良くないな。だけど……」
「どうしてこうなったのか分からない。ってことでしょ?」
「……そうだな」
「ホント鈍感……」
「今更どうにかなるもんじゃない。諦めろ」
「あ、開き直った……」
「しょうがない。やっぱり、俺には葵のことは分からないんだ」
「……そっか」
立ち上がる葵。
そして、振り返って

281 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/04/21(金) 23:06:04 ID:idYqj/jC
「聞きたい?」
「……言いたいか?」
「質問を質問で返さない」
ビシッと人差し指を差し出す葵。
……無理してるのはなんとなくわかる。
「……じゃ、聞きたくない」
「うん、それがいいよ」
憂いを帯びた微笑み。
「何だそれ……」
「私もあんまり知って欲しくないから」
「……何で?」
「うーん……」
少し考えるように俯く。
「……お兄ちゃんには、純粋なままでいて欲しいかな」
「俺が?純粋?」
「そうだね」
「ま、何でも良いけどさ」
「さ、帰ろう」
手を差し出す葵。
「あ、ああ……」
俺もゆっくり立ち上がり、歩き出す。
すると、
「ねぇ、お兄ちゃん」
「ん?」
俺が振り返ると、葵は立ち止まったまま。
「足が痛い」
「どうした?」
「わかんないけど……痛い」
「歩けるか?」
「無理」
「……しょうがない、誰かに迎えに……」

282 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/04/21(金) 23:06:52 ID:idYqj/jC
「お兄ちゃんが運んで」
「……え?」
「ダメ?」
「まぁ、いいか」
「ありがと」
礼を言ってこちらに歩いてくる葵。
「今……歩かなかったか……?」
「気にしない気にしない。さ、お願いね」
両手を前に突き出す葵。
俺が背中を向けると、
「前ぇ」
「……はいはい」
仕方なく、彼女を抱きかかえる。
葵はしばらく驚いていたが、嬉しそうに
「……ふふっ」
「何だ?」
「ちょっと見直した」
「何を?」
「内緒」
「分かんねぇ……」
「じゃ、一つヒントをあげるよ。目、閉じて」
「ん?あぁ……」
いわれるがまま、少し足を止め、目を閉じる。
「これが、私の気持ち、だよ?」
何だか含みのある言葉と共に、なにやら頬に暖かいものが……
「なにをした?」
「クスクス……さ、歩く歩く」
「……わかりましたよ」

情けない話だが、ヒントをもらっても何だか分からない。
まぁ……それはそれで葵も嬉しそうなので、今日のところはよしとしようか……。
──────────────────────

283 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/04/21(金) 23:08:38 ID:idYqj/jC
鈍感兄と嫉妬妹。というつもりで書いていたけど、後半何が何だか……。
実は、夢ノ又夢先生みたいなのを書きたかった。というのは、僕とキミだけの秘密だ。

284 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/04/23(日) 01:09:28 ID:vKH8l8Q7
GJ!
兄の鈍さがイイ!!

285 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/04/28(金) 01:03:46 ID:zP/bBIM8
そろそろほしゅ?

>>283
いい感じだと思いますよ〜

286 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/04/28(金) 21:33:38 ID:VoxOMLZP
「あの・・・先輩、おはようございます」

通い慣れたいつもの通学路でふと見知らぬ女の子に声を掛けられる。
こういう展開、男なら誰しも淡い期待が湧き上がるというもの。伏せ目がちな視線、少し恥ずかし気な顔。
これはもしかして・・・

「巴さんは一緒じゃないんですか?」

・・・俺はオマケかい。
やはりそうそう上手くはいかないらしい。微妙に泣きたい気持ちを笑顔で隠したその時、

「ええっと、今日は俺が先に出てきたから多分・・・ぐっ!?」

唐突に物凄い力で後ろから襟首を掴まれる。その先にあるのは閻魔様も裸足で逃げ出す氷の瞳を持った我が妹。
マズイ・・・完全に誤解している。
勢いに立ちすくむ女の子に射抜く様な視線を浴びせ無言のままぐんぐんと俺を引き摺り歩き出す。

「ちょ、ちょっと待ておい!!落ち着けってば!!」

スイッチの入ってしまった以上、そう簡単には収まらない巴。
あ然としたまま一人残された女の子に先程より二割多めの作り笑顔で手を振る俺だった。

287 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/04/28(金) 21:34:30 ID:VoxOMLZP
「まったく、ボクがいないとお兄ちゃんはこれなんだから!!」
「はいはい」
「あんな子にデレデレしちゃって・・・カッコ悪いよ!!」
「はいはい」
「騙されて酷い目にあうのはお兄ちゃんなんだからね!!」
「・・・あー、はいはい」

不機嫌度MAXで捲くし立てる妹に半分呆れつつ適当に相槌を打つ。それにしても何故こんなに叱れなければならないのか?
とはいっても下手に反論しようものなら倍返しが待っているし・・・
この勢いと説教では下手すれば遅刻になりそうだな。釈然としないまま目の前に広がる入道雲をぼんやりと眺める。

「お兄ちゃん!!ボクの話を真面目に聞いて!!」
「聞いてるよ、それで何が言いたい訳だお前は?」
「八方美人をなんとかしてって言ってるの!!」
「俺のどこが八方美人なんだよ」
「誰にでも優し過ぎるから八方美人なの!!」
「んなコト言われてもなぁ・・・・・・ふぁ〜あ・・・ぐっ」

考え込むフリして両腕を組むと堪え切れずに漏れ出す欠伸。その瞬間、互いの顔が白い手で無理やり近づけられる。
真っ直ぐに俺を見つめる水鏡の如く透き通った瞳。可憐さと凛とした強さを湛え、潤んだその瞳に前に思わず息を呑む。

「お兄ちゃん・・・ボクはホントに心配してるんだよ?」
「い、いや、それは分かってるんだが」
「・・・心配なんだよ、お兄ちゃん、人が好すぎるから・・・」

288 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/04/28(金) 21:35:22 ID:VoxOMLZP
凄みを効かせたと思うと急に言葉を途切らせて巴は不意に表情に影をつくる。
毎回思うんだがこの不安気な顔は反則すぎる。俺に落ち度は無い筈なのに罪悪感に囚われてしまうぞ、ホントに。

「ま、まぁ・・・なんと言うかさ、優しさが有り余ってるんだよ、きっと」

結局、出てくる言葉は言い訳にも成りえない言葉だけ、更に沈み込む巴が不安になってそっと横目で顔を盗み見る。

「・・・優しさが余ってるのなら・・・全部ボクにくれればいいのに・・・」

そっと呟いた、でもバッチリ聞こえてしまった独り言。
・・・これ以上、優しくしてくれと?
(まったく、何言ってんだか・・・)
笑いを堪えながらポケットから小銭入れを取り出し、脇にある自動販売機に向かう俺。

「・・・よっと、ほら、飲みな」
「・・・えっ?」

突然差し出されたスポーツドリンクに目を白黒させて戸惑う巴。そんな子供っぽい仕草が面白くて俺はつい吹き出してしまう。

「あははっ、そんなに驚く事ないだろ?遠慮せずにどうぞ」
「・・・」

さては先程まで説教していた手前、素直に受け取っていいものか悩んでるな。中途半端に差し伸ばされた手はそんな巴の無言のSOS。
周りの人は皆、巴は感情を顔に出さないとか気難しいとか言うがこれ程に解りやすい子もそうそういないと俺は思う。
まぁ、他人には意識してそうしている節もあるがそれが逆に人気を高める一端になってたりもする。
冷静であって冷徹ではない、そんな所だろうか。

289 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/04/28(金) 21:36:18 ID:VoxOMLZP
「そんだけ喋れば喉も渇いただろうし・・・はいよ」
「・・・ありがとう、お兄ちゃん」

巴の迷いを笑い飛ばす様に細い指にドリンクをそっと重ねる。
その瞬間、肩の力が抜けてしっかりと握り返してくる。プルタブを開けて一口付けると大きく息を吐く。

「まぁ、あれだな・・・これも俺の優しさだ」
「・・・120円の優しさだけどね」

勝ち誇った顔した俺。隣で肩肘付いて呆れかえった流し目の巴。
緩やかに流れる朝の冷えた風が巴の髪をサラリと靡かせる。

「・・・ぷっ、くくく」
「うふふっ」

僅かな沈黙が流れてどちらともなくこぼれ出す笑顔、無邪気な笑い声は張り詰めた時を溶かしていく。
ふたりして顔を見合わせ笑い合う、他愛のない事で、子供の頃と変わらない距離で。

「ふふっ、ホントにお兄ちゃんは変わらないね」
「さて・・・変わらないのか変われないのか、ま、どっちにしても俺は俺だからな」
「ボクは思うよ、お兄ちゃんはお日様だって」
「ありゃ、俺は太陽なのか?」
「そう、誰の元にも分け隔てなく降り注ぐ優しいお日様」
「あはは、俺がお日様で巴がお月様って所か」
「・・・月・・・うん、そうかもしれないね」
「いや・・・そこは笑う所だろ、冗談なんだから」
「・・・月は・・・お日様が無いと輝けないんだ・・・お日様に近づく事も出来ない、ただ、違う軌道を廻り続けるだけ・・・」


290 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/04/28(金) 21:40:25 ID:VoxOMLZP
朗らかな笑顔のまま、そっと瞳を閉じて物思う。静かに心を揺らめかせる巴の姿は笑っている筈なのにどこか寂しげな横顔に見えた。
まるで天界に飾られた彫像に命が宿ったかの様な鳥肌が立つ程の美しさを秘めた憂いあるその姿。
不覚にも俺は感情の波間を漂う巴の横顔に時を止められてしまう。
しかし、こんな時に限って記憶の片隅に忘れかけていた何かが稲妻の如く音を立てて目を覚ます。
やはり何事も、そうそう上手くはいかないらしい。

「・・・あ、あーっ!!」
「えっ!?ど、どうしたの?」
「時間だよ時間!!学校に遅れちまうぞ!!」

そうだったのだ、よくよく考えれば今は登校中、二人でのんびり語り合ってる場合じゃなかった。
慌てた手付きで内ポケットから携帯を取り出せば授業開始まで後十分、もはや絶望的な状況下にある。

「はぁ、遅刻か・・・まぁ今更慌てても仕方ないか」
「大丈夫、まだ間に合うよ」
「だ、大丈夫って・・・どうあっても学校まで二十分は掛かるだろ」

何時からか自信に満ち溢れた瞳の巴に気圧されつつも溜め息まじりな俺。人間、諦めが肝心だとしみじみ思う。
そんな負け気味な俺の手を取り巴は何の予告も無く無遠慮にトップスピードで駆け出す。

291 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/04/28(金) 21:42:04 ID:VoxOMLZP
「お、おい!?」
「走ればまだ間に合うハズだから・・・お兄ちゃん、頑張って!!」
「陸上部にスカウトされる巴ならともかく俺は無理だってば!!」
「諦めなければなんとかなる、ボクにそう教えてくれたのはお兄ちゃん、だよね」
「・・・まったく・・・やるだけやってみますか」
「うん、お兄ちゃんとならきっとなんとかなる・・・ボクは迷わない、ずっと二人でいようね」
「なんだって?走りながらじゃ聞こえないぞ」
「何でもない!!さ、ラストスパート!!」
「げっ、もう全力疾走かよ!?」

それにしても朝から怒ったり笑ったり悲しんだり走ったりとうちの巴さんの元気なこと。
二人揃って風になる爽やかな感覚。追い越していく新緑の並木道に頬を染めた巴の横顔。
学校まで後八分、なんだか余裕で間に合いそうな気がする。
俺と巴、繋いだままの手の向こうで両手を広げた太陽が笑っていた。

292 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/04/28(金) 21:50:06 ID:VoxOMLZP
遊星神に追いつけ追い越せと単発SSで頑張りましたが・・・返り討ちって感じです。
>遊星様
す、凄い・・・流石は神。お見事としか言い様がありません。
綺麗な妹の可愛い仕草がよく出ていてマジで参考になりました。
是非、葵さんのこの後も書き続けて下さい。
巴の楽隠居の日も近い!!

293 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/04/29(土) 22:29:46 ID:TWYik8JN
>夢ノ又夢大先生様
そんなご謙遜を!!
先生のほうが何倍も凄いですって!!
隠居なんて悲しいこといわずに、これからも巴ちゃんの話が読みたいです、俺は。

294 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/04/30(日) 21:54:37 ID:+DY55Uiv
期待sage

295 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/05/04(木) 22:14:34 ID:0hdfCk/C
お兄ちゃんと二人。
並んで、学校の廊下を歩いている。
今日は、廊下でバッタリ会えた。
それだけで、なんだか嬉しい気分になる。
「お兄ちゃん、嬉しそうだね?」
少しだけ、表情の柔らかい彼の横顔に尋ねる。
「そうか?」
そういって、私を見た顔は、やっぱり嬉しそうだった。
「うん。何かいいことあった?」
「まぁ……少し」
「何何ー?」
「いや、そんな葵に言うほどのことじゃ……」
「気にしないから、教えてよ」
「んー……」
考えるように俯くお兄ちゃん。
「あ、わかった!!テスト、よかったんじゃない?」
お兄ちゃんの答えを待たずに、私が答える。
「あ……うん。ちょっとだけど順位上がってた」
お兄ちゃんは照れくさそうに、成績表を見せてくれた。
「そっか。よかったね?一生懸命勉強してたもんね」
「いや……でも、葵に比べたら俺なんて……」
「私は関係ないよー。でもよかったね、お兄ちゃん」
「うん。そうだな」
もう一度、確かめるように成績表を見るお兄ちゃん。
何だか、私まで嬉しくなってきてしまった。

296 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/05/04(木) 22:15:46 ID:0hdfCk/C
「じゃ、今日は私が奢っちゃおうかな」
「いいよ、別に」
「遠慮しないの。私だって、嬉しいんだから」
「ん?葵も何かあったのか?」
「え……?」
お兄ちゃんは相変わらず、鈍感。
そういうとこも、結構可愛い。なんて思っちゃう辺り……
私もお兄ちゃんという人間に、慣れてきたのかな。
「そうじゃないけど……いいじゃない、たまには」
「……そうか、悪いな」
「ううん。何処に行こうか?」
「そうだなー……」
幸せだな。
考えるお兄ちゃんの顔を横目で見ながら思う。
なのに……
「天童ー!!」
後ろから邪魔者が……。
「お前、どうだった、テスト!?」
邪魔者に肩を叩かれお兄ちゃんが振り向く。
仕方なく私も……。
「ん?いや、そんなに自慢するほどじゃ……」
「何位!?」
「15だったかな」
「へー。俺の見てよ!!7位だぜ!?すごくね!?」
「ほぅ、すごいね」
「だろー?見てよ、葵ちゃんも」
あ、この人……。
話題を振られて、あることに気付いた。
そう考えると、何だか無性に腹が立ってきた……。

297 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/05/04(木) 22:16:49 ID:0hdfCk/C
「あ……うん、凄いんだね」
適当に、愛想笑いで答える。
「だろー!?じゃ、次は頑張れよー!!」
嬉しそうに、足早に去っていく邪魔者。
私は完全に姿が見えなくなるのを確認すると……
「誰なの、あれ……」
「同じクラスの人」
「仲良いの?」
「あんまり話すほうじゃないが……」
「そうなんだ……」
やっぱりだ……。
あまりこういうことはいいたくないんだけど……
きっと、あの人の目的は私だ……。
お兄ちゃんより、良いところを見せたくて、そのために一緒にいるところにやってきたんだろう。
せっかくお兄ちゃんは頑張ってたのに……。
せっかくお兄ちゃんが嬉しそうだったのに……。
せっかくお兄ちゃんが笑ってたのに……。
そう考えたら、怒りで頭がカッとなってきてしまった。
「感じ悪いね……」
「え?いきなりどうしたんだ、葵……?」
「だってそうでしょ?わざわざやってきて、自慢だけして帰ってくなんて」
「いや、でも気持ちは分からないでもないから……」
「でも、親しくも無いお兄ちゃんに言いにくるなんて……」
「まぁまぁ、いいじゃない。俺はそんなに気にしてないしさ」
「でもぉ……」
「いいから。ほら、今日は奢ってくれるんだろ?甘いものでも食べに行こうよ」
「うん……そうだね」
「そうそう」
そういって、笑うお兄ちゃん。

298 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/05/04(木) 22:17:51 ID:0hdfCk/C
そうだね。
私の好きなお兄ちゃんは、こういう人だもんね。
「そうだ、お兄ちゃん。お兄ちゃんの成績表、ちゃんと見せてよ」
「え?」
「いいでしょ?さっきはよく見てなかったし、お兄ちゃんの自慢できる結果なんだから、私、見てみたいよ」
「うん……いいけど」
お兄ちゃんからテストの成績表をもらう。
中を見ると……
「あれ……?さっきの人よりいいんじゃないの……?」
「あぁ……俺、学年順位と学級順位を勘違いしてたみたいで……」
「ってことは……すごいよ、お兄ちゃん」
「いや……それほどでも……」
「ううん。お兄ちゃんが頑張ってたの、私は知ってるから、だから、この結果は凄いと思うよ」
「……うーん、そうなのか……」
「そうだよ。ね?」
「うん、そうだな」
……やっぱり、私はお兄ちゃんが好きだな。
誰よりも。ずっと……。
そう思いながら、少しだけお兄ちゃんに寄り添う。
お兄ちゃんは鈍感だから、気付かない。
私だけの幸せ……。
「あ、天童君!!」
……女の声……。
「あぁ、どうしたの?」
「このまえ、天童君に教えてもらった問題、出たんだー!!ありがとー!!」
「いやいや、俺は別に……」
照れてるお兄ちゃん……
「じゃ、私は部活あるから」
「うん、また」

299 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/05/04(木) 22:19:22 ID:0hdfCk/C
ガッ!!
女の子が降り買って走り出した瞬間、無言で、お兄ちゃんのかかとを蹴る。
「っ!?」
「カッコ悪い……」
「え……葵?」

……まだまだ、二人の先は長いみたいです。
───────────────────────
天童ってのは、この兄妹の苗字です、念のため。

夢ノ又夢大先生に褒められて、調子に乗ったので、嫉妬妹第二弾。
……まぁ、所詮俺だもん。この程度だよね。

まったく関係ないけど、次は、ベタなツンデレが書きたいなぁ……

300 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/05/05(金) 13:25:02 ID:Vd7CypmJ
うっひょおおおお!!GJ!!!!!!

301 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/05/06(土) 04:40:58 ID:N/KP1aNY
天道・・・・・・・・・・・・・・・・・ じゃなくて、天童兄妹良いですねー。今回も萌えさせてもらいました。
遊星神GJ!!

302 :天空聖界より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/05/08(月) 23:04:38 ID:w2/dnPC9
よく分からない空間。
俺は一人の女性を抱きしめていた。
「お兄ちゃん……?」
「弥生……俺は……弥生のことが……」
「え……」
「弥生のことが好きだ!!」
「お兄ちゃん……嬉しいよ……やっと……私の気持ちに気付いてくれたんだね……?」
「うん、今までゴメンな……」
「ううん。いいの……私も……お兄ちゃんのことが、大好きだから!!」
「弥生……」
「お兄ちゃん……」
接近する唇。
高鳴る胸の鼓動。
俺たちは今、一つに……
───────────────────────
「って、おい!!」
ギリギリで目が覚めた。
危ないところだった……我ながらナイスガッツ……。
「何で……俺がこんな夢を……」
俺は上半身を起こし、額にかいた嫌な汗を手でぬぐう。
すると……
「あ、お兄ちゃん。おはよう」
妹の声が聞こえる。

303 :天空聖界より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/05/08(月) 23:05:10 ID:w2/dnPC9
……何故か下のほうから。
そちらに目をやると……さっきまで俺が寝ていた辺りから少しだけ離れた位置に妹の弥生が……。
「いつのまに……」
「ん、いつもの実験」
そう言って、何だかよく分からない棒、弥生曰く魔法の杖を見せる弥生。
俺の妹、弥生は魔法使いである。
いや、魔法使いらしい。よくわからないが。
「また魔法か……?」
「うん。好きな夢を見せる魔法」
「なるほど……あの夢はお前の仕業か……」
「素敵な夢だったでしょ?」
「……あぁ、素敵過ぎて冷汗かいたよ」
「でも、さすがお兄ちゃん!精神力が強いから、途中で止められちゃったよ」
「……よかった……」
もし、俺の精神力とやらが弱かったら……と考えて、嫌な気分になる。
「ただ……私もすごい疲れたぁ……」
そう言って、布団から這い出す弥生。
弥生は、魔法使いらしく真っ黒なローブ……を纏っていてくれればよかったのだが、
何故か、フリフリ、ミニスカート、ピンク色の変な服……
俗に言う、メイド服。とは違うのだろうねぇ。
だが、もうこれも初めてのことじゃないので、この記憶は抹消。俺は何も見てないっと。
「朝からご苦労だな」
「うん。お兄ちゃんが、もっと魔法の効きやすい体質だったらラクだったのになぁ……」
「ラクって……」

304 :天空聖界より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/05/08(月) 23:05:42 ID:w2/dnPC9
あれか。
俺を操り人形にでもしようってか……よかった、この体質で。
「でも……今日は大成功かな」
「何か言ったか?」
「ううん。何も」
「そうか……よし。さぁ、朝飯食おう」
「うん」
「用意できてる?」
「うん。出来てるよ」
「……魔法は……?」
「えっと……使ってないよ?」
声が裏返ってる……分かりやすいなぁ……。
「本当は?」
「ちょっと……」
目が泳いだ……。
「その割合は?」
「えっと……九割九分くらい……」
「やめてくれよ、魔法で作った飯は美味くないんだから……」
「う、うん」
「でも、まぁ、感謝してるよ。ありがとな」
「うん!!」
眩しい笑顔を見せる弥生。
こうしてる分には普通なんだけどなぁ……。
───────────────────────

305 :天空聖界より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/05/08(月) 23:06:33 ID:w2/dnPC9
今夜は満月。
眩しいくらいの月が影を作る兄の部屋。
「今日こそチャンスなんだ。お邪魔するね、お兄ちゃん」
スヤスヤと寝息を立てる兄の布団に潜り込む弥生。
「……やーる……いりーな……ゆーす……」
弥生は、杖を降りあげ、呪文を唱えた。
杖が光を徐々に帯びる。
兄の部屋が、昼間よりも明るく照らされる。
「凄い……コレが満月の力なんだ……」
満月の夜は、魔法使いに魔力が満ちる。
弥生は、それを利用しているのだ。
「この力で……お兄ちゃんを……」
弥生がそう呟いた瞬間……
「俺をどうするって……?」
「おおおおおお、お兄ちゃん……!?」
「何だ、お前が起こしといて……」
「え……?」
「眩しいよ……」
光を発する杖を指差す兄。
「あ……」
事実に気付き、呆然とする弥生。
眠い目を擦りながら、兄がうんざりした様子で尋ねる。
「また魔法か……?」
「う、うん……ゴメン……なさい……」
「そろそろ、教えてくれないか……?弥生が何をしたいのかを……」
「ゴメンなさい……それは……言えない……」
「何で?」
「だって……恥ずかしいから……」
「恥ずかしい?」
「う、うん……」
俯いている弥生。

306 :天空聖界より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/05/08(月) 23:07:35 ID:w2/dnPC9
兄は、少しだけ考えるそぶりを見せて……
「大丈夫。俺は絶対、怒らないし、笑わないから」
弥生の肩をしっかり抱きしめながら言う。
「でも……」
「俺は魔法なんかに頼らない、弥生の言葉が聞きたいよ」
「お兄ちゃん……わかったよ……」
「うん」
「……私ね。ずっと……お兄ちゃんのことが……」

満月の夜。俺は最初で最後の魔法にかかる。
これからも、魔法のような楽しい出来事があれば良いと思う。
───────────────────────
天空大聖者様がお亡くなりになったので、急遽作った。
追悼とかそういうわけじゃないけど、なんとなく今日中に書かなきゃいけない気がした。

まぁ、構想含め、二時間くらいしかかけてないので、それなりの結果かなと。
きっと二度と書かないな、このキャラは……。

307 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2006/05/09(火) 13:09:09 ID:JfdfeHzo
つぼった…(*´Д`)GJです〜

曽我町子さんの話は急で俺もびっくりです。
ご冥福をお祈りします(´-人-`)ナムナム

308 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/05/12(金) 22:18:02 ID:4TteQZUz
天空大聖者様とわ?

309 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2006/05/13(土) 17:02:00 ID:gBNPZKb1
>>308
数々の特撮番組の女王役として活躍した女優の曽我町子さんが5月7日の未明、自宅マンションで死去した。
遺作となる『魔法戦隊マジレンジャー』(2005年)では天空大聖者マジエル役 という正義側の女王を演じて、話題になったばかりだった。


310 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/05/13(土) 22:50:02 ID:B5nMNhL/
いやいや、何か湿っぽい雰囲気にしちゃって悪いねぇ。
何か悪いんで、急遽ツンデレ妹を。
やっぱツンデレって書くの苦手だなぁ……
───────────────────────
いつもの下駄箱を通り、いつもの校門へ。
学校は嫌いじゃないし、帰って何かするわけでもないが、やはりこの開放感は嬉しい。
足取りも軽く、校門の先に目をやると
一人の少女が、仁王立ちで、こちらを眺めている。
もとい、睨んでいる。
「あれは……」
俺はその少女に近寄り、
「翼じゃないか。どうかしたのか?」
「べ、別になんでもないわよ」
「もしかして、待っててくれた?」
「ばばばばば、バカいわないでよ!だ、誰が、お兄ちゃんなんか!」
「だよなぁ……」
理不尽に怒られて、俺も勢いを失う。
このとき、何だか悲しげな顔をした翼の顔を、俺は見逃していた。
「何か知らんが……頑張ってくれ」
俺は、ヒラヒラと手を振りながら、帰宅路を歩き出すと……
「で、でも……お兄ちゃんが、どうしてもって言うなら……そういうことにしてあげても良いけど……?」
「お構いなく。じゃ、お先に」
「な……何よ、その態度……私が……お兄ちゃんのためを思って……」
「何だよ?そんないきなり……」
「な、何でもないわよ!何だっていいでしょ!?」
「いいけど……」
「じゃあ、とっとと歩きなさいよ」
「は?」
「帰るんでしょ?」
「はい……」
何で妹にこうも言われるのか……。

311 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/05/13(土) 22:50:35 ID:B5nMNhL/
少し情けない気分で歩き出す。
しばらく何も言わず歩いていると……
「?」
気のせいでなければ、ジワリジワリと翼が寄ってきてる……。
何だ……何をする気だ……?
ちょっと恐怖を感じながら、翼の顔を見てみると……
「なななななな、何見てるのよっ!」
「何、といわれても……」
「ほ、ホント、やめてよね!き、気になるんだから!」
「気をつけます……」
顔を真っ赤にして怒る翼に、とりあえず頭を下げ、
少しだけ翼の接近を意識しつつ、ひたすら歩く歩く。
そのまま数分が経過。
「きゃっ!!」
後方でなにやら甲高い声。
思わず振り返ると……
素敵なタイミングで、倒れこんでくる翼。
それを胸で受けととめる俺。
……しばし、時が止まる。
「な……なに……するのよ……」
何か凄い真っ赤な顔で、文句を言ってくる翼。
「いや、お前がコケたんだろ」
呆れながら、答える俺。
「……つーか、何で顔赤いのさ?」
「ななななななななっ!?赤くなんて無いわよ!全然!」
「そうか?」
いや、どう見ても赤いですけど……
もうワケが分からなくなってきたので、いつまでも動こうとしない翼を起こそうとすると……

312 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/05/13(土) 22:51:07 ID:B5nMNhL/
「ちょ、ちょっと動かないでよ!」
「え……?」
「もう少しだけ……こうしていたいよ……」
「は……?」
「か、勘違いしないでよねっ!ちょ、ちょっと足痛めちゃっただけなんだからっ!」
「大丈夫か?」
「大丈夫よっ!」
「いや、でも……無理はよくない。おぶってやるよ」
「え……!?」
「嫌ならいいよ。痛くない程度に、ゆっくり、帰るんだな」
「嫌よ!嫌だけど……今日は……お兄ちゃんの顔を立ててあげるわ……」
顔って……
何かワケが分からないが、とりあえず、妹をおぶって歩き出す。
「ねぇ、お兄ちゃん」
翼が背中で囁くように言う。
「ん?」
「明日も……一緒に帰ろうね」
「は……?」
「ちちちちちちちち、違うのよ!ほら、最近物騒だから!」
「あぁ……そういうこと。分かったよ、翼。俺が翼を守るよ」
「お兄ちゃん……」
うっとりするかのような気の抜けた声……。
まさか、呆れてらっしゃる……?
「じゃ、なくって!何でそんな素敵……じゃなくて恥ずかしいセリフが言えるのよ!」
「いや……カッコいいかなって思って」
「こここここ、これっぽちもカッコいいなんて思ってないんだからね!!」
「分かってるよ……」

妹に怒鳴られながら進む。
何故か……悪い気はしないのであるが。
───────────────────────

313 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/05/13(土) 22:57:30 ID:B5nMNhL/
うわー、我ながら、適当だー。
俺の書く兄さんは、あんまりツンデレと絡ませるのに向いてないなぁ。

夢ノ又夢先生まだかなー。

314 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/05/14(日) 10:12:56 ID:HW1fxA8D
gj!姉スレの方もどうか…

315 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/05/16(火) 02:52:18 ID:rDrl6syh
>>309
ありがd

316 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/05/23(火) 01:50:29 ID:kJ5ki66U
保守

317 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/05/23(火) 21:44:58 ID:9P3UyKD6
「う〜ん、喫茶店か・・・ちょっと興味あるんだが、後が怖いし」

片手にしたパンフレットの向こうに仁王立ちした巴の姿が浮かび上がり身震いを一つする。
メイドさん目当てに喫茶店に行きました、なんて事がバレたら説教二時間では済まされないだろう。
注目は双子の美人姉妹との話だがやはり誘惑も鬼には敵わない。携帯を取り出し、時間を見遣れば巴の舞台まで後、一時間。

「機嫌直しの為に差し入れでも持ってくか・・・」

屋台でお菓子を適当に見繕って体育館の裏手へと足を運ぶ。・・・なんか、館内が妙に甘ったるい空気で満ちてるんだが、何かあったのか?

「すみません、ここからは関係者以外立ち入り禁止です・・・って先輩じゃないですか」
「よ、陣中見舞いに来たぞ」
「ありがとうございます!!流石は先輩、気が利きますね」

バスケット一杯に詰め込まれたお菓子を前に顔を綻ばせる女の子、顔パスな辺りに自分の知名度に少し嬉しくなる。
とはいってもやはり後輩連中の間では巴のお兄さんとして有名なだけな訳だが。
余談だが時々巴をお姉さまなんて呼ぶ子がいるが決して巴さんのお兄様なんて呼ばれた事は無い。

「毎回、お兄さんなんだよな、一度くらい呼ばれてみたいもんだが」
「はい?」
「あ、いやこっちの話、それより巴はいるかな?」
「巴さん、ですか・・・」

それ以上何を言うまでも無く視線が巴の存在を物語っている。男子はおろか女子の羨望と憧れの視線を一点に受ける眩いばかりのその姿。
巴の周りだけ視界が澄んでいるかの様にひんやりとした静けさが漂う。荘厳な空気と衣装を身に纏い瞳を閉じて瞑想する巴。
これは確かに見紛う事無く王子様だ・・・

318 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/05/23(火) 21:48:07 ID:9P3UyKD6
「すごいな、あれは白馬に乗った貴公子って感じだな」
「はい、ほんとに素敵・・・」

ほぅ、と熱の篭った溜め息を零す女の子に俺は思わず苦笑いが零れる。うちの妹はこうして今回も純真な乙女を虜にしていくのだった。
しかし、こうしていても埒があかない訳で・・・
しかたなく果てしない妄想の旅に旅立った女の子を現実に引き戻すべく目の前で手を振ってみせる。

「お〜い、帰ってきてくれ」
「・・・はっ!?ご、ごめんなさい、つい」
「それはいいから、巴に俺が来た事だけ伝えといてくれるかな」
「会っていかないんですか?」
「いや、集中してるとこ邪魔しちゃ悪いしさ」

というよりこの空間を断ち切る根性は俺には無い。
本音を言えば巴がどうこうというより夢から覚めた人々の視線が一斉にこちらに向く様な事を絶対に避けたい。
前後に振っていた手を軽く上げてそのまま俺は立ち去っていく。去り際は潔く、やはり男はこうでなくては。
・・・みんな巴に夢中で誰も気には留めていないけど。
なんとなくバツの悪いままその場を後にする俺、舞台開演にはまだ時間がある、適当に時間潰しを考えながらトボトボと牛歩。
ほんの少し頭に浮かぶメイド服、自分でも呆れてしまうが何気に未練があるらしい。

「双子の姉妹っていうと石川姉妹の事だよな、あの二人のメイド服か・・・うぐっ!?」

後ろから口を塞がれる俺、なんか他人様に恨まれる様な事でもしたろうか?
ああ、そういや一人いたっけか、恨むというより怒ってる人が。ゲーム開始時にいきなりラスボスにエンカウントしたかの様な唐突さ。
振り返ればやっぱりそこにいるそこにいない筈の妹様。

319 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/05/23(火) 21:50:59 ID:9P3UyKD6
「と、巴・・・お前どうして!?むぐっ」
「しっ!!いいからこっちに」

有無を言わさずに銀行強盗と人質みたいな体勢で体育館裏に連行される。
人気が無い事を確認してから俺に真っ直ぐ向き直る巴、やっぱり頭を撃ち抜かれるのかもしれない。
まさかとは思うがここで説教を始めても可笑しくない不穏な空気。半分諦め、半分ビビりながら固唾を呑んで巴の言葉を待つ。

「・・・お兄ちゃん」
「は、はい、なんでしょう?」

ただならぬ巴の表情に背筋は伸びきり、つい敬語になってしまう。そんな俺を巴は気にも留めずに重々しく口を開く。

「来てくれたのなら、どうして声を掛けてくれなかったの?・・・イジワルだよ」
「は?」
「ボクはお兄ちゃんをずっと待ってたのに・・・それなのに黙って行っちゃうなんて・・・」
「あ、ああ・・・そっちの事か、俺はまたてっきり」
「てっきり?」
「い、いや!!なんか集中してたみたいだったからさ、邪魔しちゃ悪いと思って」

予想外の非難に余計な事を口走りそうになる俺、わざわざ蒸し返す必要も無いので軽く流してしまう。
これ以上、話がややこしくなれば立場が悪くなる一方だ。

「気を遣って声を掛けなかったんだ、別にワザとじゃないって」
「そうだね、気を遣って屋台を手伝って気を遣って差し入れをして・・・気を遣って喫茶店へ」
「・・・あー、ひょっとして・・・聞こえてた?」
「うん、ばっちりと・・・可愛いもんね、石川さん達」

表情は変えないもののピクリとこめかみをヒクつかせて俺を見詰め続ける。
・・・非常にマズイ、完全に手の内は暴かれている。こうなっては隠すだけ無駄だ、ならば素直に認める他ない。


320 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/05/23(火) 21:55:24 ID:9P3UyKD6
「・・・正直言えば気にはなってたけど、どちらにしても行ってはなかったと思う」
「どうして?」
「誰かさんの説教喰らう事になるから」
「うん、正座で説教三時間かな・・・あ、四時間かも」
「・・・今、この状況でそれを言うのは立派な脅迫だぞ」
「そうかな?ボクはお兄ちゃんに本心を言ってるまでなんだけど」
「・・・鬼」
「鬼にしたのは誰?」
「・・・俺?」
「なんで疑問形なの、他に誰もいないのに」
「「・・・」」

鏡でも凝視するかの様にジッと互いの目を見詰め合う。他人様とは絶対に行われない大変せせこましい兄妹の戦。
この状況は高架下でのヤンキーの決闘に近い、確実に目を逸らした方の負けだ。
いや、それ以前に勝ち負けは決まっているのだが、巴の澄んだ瞳に見詰められてはどんな頑固者も根を上げるだろう。
ついでに虜にされるだろう。がっくりと肩を落とし大きくうなだれて溜め息の後、根負けした俺が口を開く。

「・・・あのな、巴が思ってる程、俺は不真面目じゃあない」
「分かってるけど・・・嫌なの」
「何が?」
「同じクラスの人達と屋台で楽しそうにしてるのを見た時、悲しかったんだ・・・ボクの事なんて何も考えてくれていないんじゃないかって」
「ちょっと待て、あれは無理矢理引き込まれたんだって」
「それも分かってる、お兄ちゃんの善意なのは・・・」
「・・・だったら、どうして?」
「お兄ちゃんが真っ直ぐな人なのはボクが一番知ってる、でも・・・それが痛い時だってあるんだよ」

まるで自分に言い聞かせる様な巴の言葉。痛みを堪えているのか、落ち込んでいるのか、なんともいえない不器用な笑顔を俺に見せる。
笑顔の奥で点と線が繋がり見えてくる感情、今の巴の表情を人は皆こう呼ぶ、自嘲、と。
憂いを帯びたこの姿を一枚の絵に出来たのなら誰も値の付けられない名画になるに違いない、そんな場違いな考えが頭を過ぎる。
何故ヤンキーの決闘からこんな事になったのかは未だに分からないが、俺がすべき事はその絵画に命を吹き込む手伝いをしてやる事。
まるで子供をあやす様にそっと巴の額を撫で上げる。

321 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/05/23(火) 21:58:24 ID:9P3UyKD6
「・・・ごめんな」
「・・・分かってて謝ってる?」
「分からない、でも結果として俺が巴を困らせた事は分かる、大事なのはそこだろ」
「違うよ・・・痛いのは頭じゃなくて・・・ここ」
「いっ!?」

前髪を梳いていた俺の手を両手でそっと包み込み、心臓の音が一番聞こえる左胸へと導く。
あまりにナチュラルな仕草だったので抵抗する間も無くなすがままな俺、近くに鏡でもあれば相当間抜けな赤い顔が映っていたに違い無い。

「分かる?ボクの鼓動、トクン、トクンって」
「あ、ああ・・・うん、かなり早い・・・って事は緊張してるのか」
「やっと気付いてくれた、そう、緊張してるんだよ・・・すごく」

緊張という言葉にはかけ離れた巴の穏やかさ。でも、俺の手の平の奥で確かに鼓動は乱雑なリズムを奏でている。
鼓動に集中していた意識が不意に途切れる、再び視線が重なる。瞳の奥に見えるのは緊張とは少し違った揺らめき、それは・・・

「緊張というより不安なんじゃないのか?顔に書いてある、不安で仕方無いってな」
「・・・どうして不安なのか・・・分かる?」
「問題はそこなんだよ、舞台に緊張するなんて無いと思うし・・・何だろうな」
「ボクが不安なのはお兄ちゃん」
「俺?俺の何が不安なんだ?」
「ホントにボクのこと、見ててくれるのかな・・・お兄ちゃんが見に来てくれなかったらどうしようって」
「やれやれ、巴は俺がそんなに薄情な男だと思ってたのか?そんな訳無い」
「・・・絶対?」
「ああ、俺は冗談は言うけど嘘はつかない・・・それを知ってるのも巴だろ」
「うん、ボクが・・・誰よりも分かってる」

添えられた両手を優しく解いてもう一度額を撫で上げてやる。
くすぐったそうに目を細める巴、学校でこんな子供みたいに純真な顔を見せるのはごく稀な事。
いや、髪を梳く俺の手に擦り寄ってくる様な姿は子供といより子猫に近い、それは心から安心しきっている何よりの証拠。
何万回の言葉より一つの温もり、それが巴を安心させてやれる鍵だと俺は手の平に少しだけ力を籠めた。

322 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/05/23(火) 22:03:05 ID:9P3UyKD6
「さぁ・・・そろそろ行った方がいい、あまり遅れるとみんな心配するぞ」
「あ、お兄ちゃん、その前に約束して欲しいんだ」
「はいはい、聞きましょう」
「・・・ボクはお兄ちゃんの為にガンバルから」
「だ、だから俺はそんな事一度も」
「ううん、ボクがそう思いたいの・・・それだけで今度のお芝居も乗り越えられるから・・・だから」
「・・・」
「だから・・・ボクの事、ちゃんと見ていてね・・・余所見なんてダメだよ、ね?」

白く細い指先を胸の前で組んで、眩い程に弾ける笑顔を見せる。
本人は意識しないでやっているのだろうが上目遣いなその笑顔が光の洪水みたいに瞬きしても瞼の裏に消えない。
コクコクと上下に頷く事しか出来ない俺を満足そうに見詰めて巴は音も立てず踵を返す。
艶やかな黒髪を風に靡かせる後ろ姿には、もはやどこにも迷いはなかった。学校でのいつもの巴の姿がそこにある。
改めて思うのだが実際、今の格好はともかく普段の校内での巴もまぎれもなく王子様だ。
まぁ、それはともかく立ち直る手助けは出来たみたいだな

「・・・お兄ちゃん」
「・・・見てるよ」
「うん・・・ふふっ、分かってたけど再確認、行ってきます」

一度だけ振り向いて俺の目に甘えてみせる巴、言うまでも無く王子様とは別の瞳で。
・・・王子と子猫って背中合わせのカードだったりするんだろうか?

「それよりも、だ」

うちの巴さんはどさくさに紛れてまた凄い事をやらかしてはいなかったろうか。
ずっと右手に残っているゴム鞠みたいな柔らかでしっかりとした弾力、掌を開いては閉じ、また開いては閉じ。
体育館の裏口へ消えていく巴を見送りつつ同じ事を繰り返す手の平をじっと見詰める。

「・・・着痩せするタイプだったのか巴は・・・じゃなくて!!・・・はぁ、俺も行くとするか」

右手をぐっとポケットに仕舞い込み歩き出した俺の前で、体育館は俄かに騒がしさを増していた。

323 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/05/23(火) 22:27:31 ID:hogOZUpJ
夢ノ又夢先生今回もよかったです。早く続きが読みたい、私生活に影響が出ない程度に頑張ってください

324 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/05/23(火) 22:28:27 ID:9P3UyKD6
別の話を八割書いてた途中、ふと文化祭話がまだ終わっていない事に気付く。
お話はもう少し続きます。
>天空大聖者様
色物の中にあって褪せる事の無い存在感、また一人、味のある役者さんがこの世を去ってしまわれましたね。
天本英世さんが亡くなられた時もショックだったなぁ・・・
>天童兄妹
いや、GJ!!としか言いようがありません!!
結構、キツイ嫉妬の筈なのにやたら葵ちゃんが可愛い!!
巴もこれ位、可愛く書ければなぁ・・・
>魔法少女
これだけの話を二時間で書き上げるとは、一月かかっても萌えないssしか書けない者にとって驚異です。
というか、これで終わりなんて勿体と思いますよ。
>ツンデレ妹さん
引っ付いてからの反応が可愛い過ぎる!!
これも続きが楽しみな妹さんです。

325 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/05/24(水) 18:32:17 ID:lmBP+7u7
すげー!!さすが先生だぁー!!
俺もこれぐらい書けるようになりたいなー。

つーか、今度は石川姉妹登場ですか。
嬉しいですね、やっぱり。

326 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/05/24(水) 22:39:51 ID:lmBP+7u7
好きな人を待ってる時間は楽しい。
このドキドキ感とか、ワクワクする感じとか。
どんな顔をしてあの人に会えば良いんだろう。とか、考えるのも好きなんだ。
そんな幸せな時間なのに……
「あ、あの……葵……じゃなくて、天童さん」
知らない人に声をかけられる。
まぁ……慣れてるんだけど。
「えっと……何、かな?」
「よかったら、俺と遊びに行かない……?」
この人には悪いけど、一切興味が無い。
……っていうか、茶髪、ピアスで、制服を崩して着てる。
古い考えなのかもしれないけど、さすがに初対面で、そんな人を信用する気には私はなれないな。
「あ、ゴメンね。お兄ちゃんを待たなくちゃいけないから」
「じゃ、お兄さんが来てから……」
このしつこさは……塾の勧誘レベルだなぁ……。
なんて思いながら、話を聞き流していると。
「あ……」
兄が私の脇を足早に通り過ぎた。
「どうしたの?」
なおも話しかけてくる知らない人。
「ゴメンね。急いでるから」
私は最低限の笑顔を見せると、お兄ちゃんを追って走り出す。
……でも、少し悪いことしたかな。
ま、いいか。
───────────────────────

327 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/05/24(水) 22:40:25 ID:lmBP+7u7
見慣れた道。
最近は寄り道することも多いせいか、
この通学路も久しぶりのような気がする。
そもそも、一人で歩くのはここ最近なかった気が……
そんなことを考えていると……。
「お兄ちゃん」
何者かに首根っこを掴まれる。
妙に優しい声が怖い……。
「あ、葵……」
俺は振り向けず、そのまま気をつけの姿勢で答える。
「私はお兄ちゃんを待ってたのに、先に行っちゃうなんて酷いんじゃない?」
「いや……だって、誰かと話してただろ?」
「だからって……待っててくれてもよかったんじゃないの?」
「でも、何か深刻そうだったし……邪魔しちゃ悪いかなと思ったから」
「……邪魔して欲しかったのに……」
葵の手の力が弱まる。
その隙に振り返り、
「今何て?」
「ううん、独り言!!」
「さいですか……」
「とにかく!!今日のところは許すけど、次からはちゃんと待っててよね!?」
「……覚えとく」
「お兄ちゃん。私としては、もうちょっと前向きな発言が聞きたいなー?」
「はい。待ちます……」
「うんうん。それでいいよ」
満足そうに何度も頷く葵。

328 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/05/24(水) 22:40:57 ID:lmBP+7u7
「……でも、俺と一緒に帰らなくちゃいけないのか?」
素朴な疑問。
「え……?」
「いや、まぁ……防犯とか、そういう意味では良いと思うんだ。
 でも、それなら俺じゃなくても良いだろ?だから、葵は何で俺にこだわるのかなって」
「うーん……」
その細い顎に手を当て、少し考える葵。
しばらくして、
「まぁ、お兄ちゃんが一番安心だから、かな」
と、微笑みと共に答えた。
「そうか?」
「うん。そうそう」
「でも、下手したら、葵のほうが俺より強いかもしれないけどな」
「まさか。そんなことないよー」
「この前、色んな部の人に誘われて困ってるって言ってなかったっけ?」
俺がそういうと、葵は少し驚いたような表情を見せる。
そして少し俯き加減で、
「……何でそういうことは覚えてるかなぁ……」
「そりゃ覚えてるって。一応、俺も何とかしてあげたいって思ってるし」
ちょっと照れくさいことを言ってしまったと後悔しながら、
誤魔化すための微笑を葵に向けた。
しかし、当の葵は驚きの表情を見せ、
「聞こえてたんだ……」
何か呟いた。
「え?」
「ううん。何でもないの!!」
「そうか……」
「それより!!」
クルッと回転して、俺の前に立つ葵。

329 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/05/24(水) 22:41:36 ID:lmBP+7u7
「家まで競走してみない?」
小首を傾げて、俺の顔を覗き込む。
「は?」
「負けた人は、勝った人の言うことを聞く。どう?」
「……俺が負けるに決まってるじゃないか」
「わかんないよー?じゃ、よーい……スタート!!」
一気に駆け出す葵。
そして、数メートル先で振り返って、
「はやく!!すごいこと命令しちゃうぞー?」
俺に向かって指を刺す葵。
「ちょ……待てよ!!」
「待たないよー!」
また駆け出した葵。
そんな葵を放っておくわけにもいかず、俺もすぐに駆け出した。
───────────────────────
「はぁ……はぁ……」
「ふぅ……」
玄関前で、息を整える二人。
俺は地面に座り込んで、力なく天を仰いでいると。
「はぁ……さすがお兄ちゃんだね……負けちゃった……あははっ!!」
学校では見せないような明るい笑顔で、大きな口を開けて笑う。
「手加減してくれたのか?」
「ううん。してないよ?」
「まさか。俺が葵に勝てるわけ……」
「お兄ちゃん」
突然、俺の膝の上に座り、俺の目をじっと見つめる葵。
「な……何だよ……?」
「私だって……女の子なんだよ……?」
「知ってるよ……」

330 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/05/24(水) 22:42:19 ID:lmBP+7u7
「でも……分かってないでしょ?」
「え?」
「凄い凄いって言われたって……やっぱり体力じゃ女の子は男の子には敵わないんだよ」
「そんなことない……」
「そうじゃないの。勝ちたいなんて思わない……その代わり……」
大きく息を吸い込む葵。
俺も唾を飲み込む。
「私を女の子として見て欲しいの……」
「……」
何だか真剣そのものな葵の顔を前に少し固まる俺。
そして、考えた末に出た言葉は
「……今でも見てるよ」
「えっ!?」
「一応、女の子だからって……気を使ってるつもりなんだけど……」
ポカーンとしてる葵。
もしかして……スベった……?
「あ、葵……?」
「はぁ……」
ため息……。
「まぁ、お兄ちゃんらしいといえばお兄ちゃんらしいかぁ……」
「え……?」
「疲れた……」
ヨロヨロと家の中に入っていく葵。
イマイチ状況がつかめず、また俺は天を見るのだった。
───────────────────────
まぁ、先生に対抗心を燃やしたというか。刺激されたと言うか……。
返り討ちどころか軽くあしらわれた感じですね。

ということで、天童兄妹何気に第三弾。
多分、次こそ天童語録が出る……。

331 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/05/25(木) 00:51:03 ID:pZrjA+Q4
夢ノ又夢さんと遊星さんダブルできたわぁ(η‘∀‘)η

乙です!GJです!!

332 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/05/30(火) 18:27:54 ID:xyMBM1AV
【町田市】兄妹の婚姻届を誤って受理【お兄ちゃん大好き】
http://news18.2ch.net/test/read.cgi/news7/1148466691/

333 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/06/04(日) 23:21:14 ID:poml9Ru4
「へへー。買っちゃったー♪」
店員さんに見送られながら、お店を後にする。
お店から出るとすぐに、鞄の中に入れた小さな箱を確認。
これが、お兄ちゃんと仲良くなる秘密兵器。
なかなか入手困難らしいけど、意外と簡単に買うことが出来た。
やっぱり運命は二人に味方してくれてるみたい。
「お兄ちゃんとおそろい♪」
まぁ、当然色違いになるんだろうけど、やっぱり好きな人と同じものが持てるのは幸せだ。
鞄ごと秘密兵器を抱きしめる。
「お願いね!!」
秘密兵器にしっかりと想いを込めて、私はお兄ちゃんの待つ我が家へと全力で駆け出した。
───────────────────────
コンコン。
俺の部屋のドアを優しく叩く。
「誰?」
ドアの向こうから聞こえる、今一番聞きたい人の声。
「お兄ちゃん、入っても良い?」
「葵か。どうぞ」
「うん。おじゃまします」
ドアを開け、割とミステリーなゾーン。
お兄ちゃんの部屋に入る。
「どうした?」
お兄ちゃんが、読んでいた本をパタンと閉じて、私に尋ねる。
「ねぇ、お兄ちゃん」
「何だ?」
「私、お兄ちゃんに見せたいものがあるんだ」
「見せたいもの?」
「うん。当ててみて」
「いや……無理だろ」
「適当でいいから、ね?」
「んー……」
お兄ちゃんは少し考えてから、

334 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/06/04(日) 23:21:49 ID:poml9Ru4
「新しいバッグとか財布とか?」
「残念。お兄ちゃんも持ってるものだよー」
「俺の……持ってる……」
考えてる考えてる♪
真剣になってくれるなんて、嬉しいな。
「ダメだ、余計分からん……」
「しょーがないなぁー。じゃーん!!」
「ゲーム機……?」
「そう。お兄ちゃんが持ってたから、私も欲しくなっちゃった」
「へぇ。で、ソフトは何を買ったんだ?」
え、ソフト……?
「ソフトって……?柔らかい……?」
「いや、そうじゃなくて……ゲームするためには必要って言うか……」
「えっ!?それがなくちゃ、ゲームできないのっ!?」
知らなかった……。
私、ゲームなんて全然しないし……。
下調べが足りなかったぁ……。
「まぁ……そうだな」
「なんだ……そうなのか……」
思わず肩を落としてしまう。
策士策に溺れるってことかなぁ……。
「そんなにゲームがやりたいなら、俺のソフト、貸してあげるよ?」
「でも、一人でしか出来ないんでしょ?」
「まぁ、そうだけど……何か?」
「私は……二人で出来るゲームがやりたいな」
「んー、そうか……じゃあ、買いに行くか?」
「え?」
「二人で出来るやつを」

335 :遊星より愛を込めて ◆45KgZeCOYA :2006/06/04(日) 23:22:55 ID:Mis7wYTv
ちんこ花火たん物語外伝 「レニ・イン・ナイトメア」 
 
 第1話 「だいすきなおにいちゃん」

カンナのちんこの魅力は語るまでもなく「男らしさ」の一言に尽きるでしょう。
レニの腕ほどもある超ビッグな肉棒は血管がビンビンに浮き上がっていて、
ゴツゴツとした実に凶悪な肉棒です。
レニたんはよくカンナに押さえ込まれて強制フェラチオをさせられるので、
レニたんのアゴはフェラチオをする度に外れてますw
もう何百回もカンナに強制フェラチオをさせられてアゴをはずしているので、
レニたんのアゴはすぐに外れてしまうクセが付いてしまいました。
だからレニたんはカンナを見ると顔面蒼白になってガタガタと震えます。
しかし、そんなレニたんも花火たんのことは大好き。
花火たんはカンナに散々強制フェラさせられてアゴが外れて
痛みに耐えているレニたんの事を優しくいたわり、手当てしてあげます。
レニたんに膝枕をしてあげて、優しく慈しむように髪をそっと撫でてあげて
心を落ち着かせてあげます。
さっきまでのカンナの荒々しさと正反対の花火たんの優しさに、
レニたんはお姉ちゃんに甘えるように花火たんに心を預けます。
そして、花火たんはそっとレニたんのチャックを下ろします。
ビキニパンツをずらすと、仮性包茎の可愛いレニたんのちんこがこんにちは。
レニたんの小粒なちんこを花火たんは指でやさしくそっとつまむとゆっくりとしごき始めます。
レニたんは「あっ、あっ・・・」と悶えて嬌声を上げます。
やがてレニたんは射精すると、「ありがとう花火お兄ちゃん、大好き!」と言って、
花火たんにキスすると、満面の笑みを見せます。



336 :遊星より愛を込めて ◆45KgZeCOYA :2006/06/04(日) 23:23:35 ID:Mis7wYTv
ちんこ花火たん物語外伝 「レニ・イン・ナイトメア」 
 
 第2話 「おわらないよるのはじまり」

花火たんに優しくされて心底明るい笑顔を見せるレニたんの事を、
カンナは柱の陰からじっと見つめていました。
自分にはあんな笑顔を絶対に見せないレニたんの事を、カンナはもっといじめたくなったのです。

その日、カンナはレニたんの事を深夜に自室に呼び出しました。
既にレニたんはどんなに酷い事をされるのかと、恐怖に真っ青になってガチガチと奥歯を鳴らしています。
カンナは開口一番レニたんにズボンを脱げと命令しました。
レニたんが震える手つきでズボンを下ろすと、やおら後ろに振り向かせ小ぶりのビキニパンツを
一気にズリおろしました。
「ひっ・・・」と小さな悲鳴がレニたんの口から漏れ、カンナは不敵にニヤリと笑います。
両手でレニの小さな臀部を割り開き、柔らかなアナルを指で弄ぶと、カンナはズボンのファスナーを
下ろし、ビッグバズーカ級の肉棒をさらけ出しました。
レニの奥歯が一層激しくガチガチと打ち鳴らされ、冷たい部屋に鳴り響きます。
「た・・・助けて、 ね、カンナ・・・」震えながらレニはか細い声で懇願しました。
しかし「カンナ様、だ!」と言い放つと、ローションも塗らずに子供の腕ほどもある肉棒を
レニのアナルに一気にぶち込みました。
「ぎゃあぁぁぁぁ〜ッッッ・・・」断末魔に近い悲鳴がレニの口から漏れ、さらに口からは泡まで吹きました。
乾いた肉棒がレニの腸内粘膜を痛めつけ、ひきつらせます。
カンナはレニの髪を掴み、激しく引き寄せては突き放し、渾身のピストンをレニのアナルに叩き付けます。
並みの男の子ならばカンナの肉棒をいきなり受けたならアナルは裂け、死亡するかもしれません。
しかし、レニたんはカンナに何百回となくアナルを蹂躙され、開発されきっていました。
超一級の男娼であるレニたんは段々と腸内が濡れて来て、最初の激痛を伴うピストンも
やがて快楽を伴うピストンに変化してきていました。
「うっ、あっあっ・・・んっ」レニたんは世界で一番嫌いなカンナに犯され、世界で一番の快楽を感じています。



337 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/06/04(日) 23:23:44 ID:poml9Ru4
二人で……買いに……。
え……もしかして、それって……デートっ!?
「う……うん!!行く、行きたい!!」
「じゃあ……行こうか」
「うん!!」
デート……初めてのデート……。
嬉しいなぁ〜っ!!
思わぬ幸運に胸を躍らせる。
ま……買いに行くのはゲーム、だけどね……。
───────────────────────
「あ、これ、CMで見たことあるよ」
「あぁ、やってたな」
「これ、二人で出来るの?」
「うーん、出来るみたいだけど……出来ることは、少なそうだ」
「そうかー。それは困るなぁ」
何だかロマンチックとは程遠い会話……。
ま、こういう気取らないのも好きだけどね。
「うーん……なかなか決まらないね?」
「そうだなぁ……」
「そういえばさ……」
「ん?」
「私、お兄ちゃんのやりたいゲームが聞きたいな」
「え?」
「ほら。さっきから、お兄ちゃん、アドバイスはくれるけど、これがいい。とかは言ってくれないでしょ?」
「でも……」
「まぁまぁ、参考にするだけだから」
「そうか……それなら……」
ゲームがずらりと並んだ棚の前で、顎に手を当てて考えるお兄ちゃん。
そして……
「コレ……かな」

338 :遊星より愛を込めて ◆45KgZeCOYA :2006/06/04(日) 23:24:05 ID:Mis7wYTv
ちんこ花火たん物語外伝 「レニ・イン・ナイトメア」 
 
 第3話 「いましめのにくのかたまり」

既にレニたんのちんこは屹立していました。
カンナの巨大な肉棒をお腹の真ん中辺りまで挿入され、透明な淫液を鈴口からポタリポタリと
溢れさせています。
カンナはレニたんの透明な蜜を指で掬い取るとレニたんの口元へ持って行きレニ自身に
淫液をなめさせました。
自分の淫液を舐め、レニの勃起は更に硬く大きくなりました。
仮性包茎ながらも一生懸命に外に出ようとしている亀頭がとても愛らしく、
まさにレニたんの分身と言うに相応しい愛らしさです。
完全に勃起したのを見るとカンナはアナルファックを止め、レニたんをソファに仰向けに寝かしました。
そして逆立ちのように頭を地面に向けさせ、両手でレニたんの頭を掴むと、腸液がしたたる肉棒を
レニたんの口内に押しやりました。
一気に肉棒の根元まで押し込みます。
「ゴキィッ」とレニたんのアゴの骨が外れる音が響き渡り、ズルズルと肉棒はレニたんの口内に収まっていきます。
レニたんの口内には当然収まり切らず、のどの奥深くを通り越し、食道の辺りまで肉棒は届きました。
カンナはガニ股になり中腰で一生懸命にレニの口を犯します。
逆さになっている為、唾液や淫液が鼻に入り、レニたんは呼吸が出来ない為窒息寸前になりました。
痙攣し、白目をむき、口から泡を吹きながら、強制フェラは続きます。
レニたんの意識が遠くなり、もう駄目だと思った刹那、カンナは肉棒を抜きました。
死んでしまったら、レニを犯す事が出来なくなるのでカンナはギリギリのラインを熟知しているのです。


339 :遊星より愛を込めて ◆45KgZeCOYA :2006/06/04(日) 23:24:39 ID:Mis7wYTv
ちんこ花火たん物語外伝 「レニ・イン・ナイトメア」 
 
 第4話 「にくしみとあいとかなしみ」

 死の一歩手前までの激しい強制フェラが終わり、レニたんは意識朦朧の中、
花火たんの事を想っていました。

− だいすきなお兄ちゃん、花火おにいちゃん。 苦しいよ・・・
  なぜ? なぜボクこんなに酷い目に遭うの? お兄ちゃんの柔らかい膝枕で甘えたいよ。
  温かいお兄ちゃんの胸で眠りたいよ。 助けて、助けて・・・  −

現実逃避にも似た空想は、カンナの暴力でかき消されました。
カンナは焦点の合っていないレニたんの顔に唾を吐きかけると、気付けに一発ビンタを食らわせました。
華奢なレニたんの体は、重力がまるで無い様に軽く中に舞いました。
口が切れたのかレニたんは血を吐きながらむせて、また鼻血も大量に流していました。
「オラオラ、休んでいいなんて言ってねーぞ! とっととご奉仕しろ、ご奉仕!」
カンナは今さっき死にかけたレニたんにまたもや強制フェラを始めました。
口が切れ、鼻血を流しながらレニたんは無理やりに口内を犯されます。
強制フェラをやりながらカンナはレニの顔にビンタをし、唾を吐き続けました。

レニたんは限界が来ていました。 
どうせ死ぬのなら、最後にカンナの肉棒を噛み、一矢報いたいと思いました。


340 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/06/04(日) 23:24:44 ID:poml9Ru4
お兄ちゃんが手に取ったのは、なんだかほのぼのしたパッケージのゲーム。
「これ……?可愛いゲーム選ぶんだね?」
「まぁね」
「どんなゲーム?」
「うーん……町に住んで、自分で好きなように生活するんだ
 それで、自分の町を、いろんな人に見せたり出来るんだよ」
「変わったゲームだね?」
「そうだね。ま、俺は、前から気になってたんだけどさ。一人で始めるのもな、って感じだったから」
「そっか……」
楽しそうなお兄ちゃん。
これだけでも、ゲーム機を買った価値はあるんじゃないかって気がする。
「お兄ちゃん、私、これにするよ」
「そうか?別に俺の意見なんて聞かなくても良いんだぞ?」
「ううん。そのかわり、お兄ちゃんも買って?」
「俺も?」
「うん。だって、せっかくだもん。二人で楽しもうよ?ね?」
「そうだな。俺も買っちゃおうかな」
「うんうん。じゃ、レジ行こー?」
「うん」
嬉しそうなお兄ちゃんと並んでレジへ。
お兄ちゃんとの時間や話題が、これから増えると思うと、凄く嬉しい。
そして、何も言わず、荷物を持ってくれた。
ホントは私が持ってたかったんだけど……しょうがないよね、お兄ちゃん優しいもん♪
「お兄ちゃん」
「何だ?」
「おそろい。だね?」
「……んー、まぁ、そういう言い方も出来るか」
「うん」
幸せな時間。

341 :遊星より愛を込めて ◆45KgZeCOYA :2006/06/04(日) 23:25:24 ID:Mis7wYTv
今回の合宿で再確認を検めて強くした。花火ちゃんは女の子ではないことを。
男の子なのではあるが、周囲がその勃起力を発揮できる場所を整えてあげなければ、
いけないということだ。こういうタイプの人間をはなびんびん型と分類される。
みんな揃っての愛撫をスイスイとこなしていく。注意して手許を見たら
花火ちゃんのおおきなちんこに似合わず手は小さいのだ。
このちんこの勃たせ方は、当時の巴里のさる貴族の女性によって「再発見」された
方法で、意外と広く伝統社会では受け継がれてきたものらしい。
すると、場所、相手を問わず簡単に勃たせられるカンナちゃんは万能型になる。

性交の時だってそうだ。花火ちゃんのそばには4人の女の子がいる。エリカ・グリシーヌ
・コクリコ・ロベリア・の四人だ。だが花火ちゃんのちんこは彼女たちにはまるでだめぽ。なんで?
花火ちゃんって、男にしかちんこびんびんになんないんだよね。
花火ちゃんは男性が苦手だけど、シャノワールではモギリとボーイを併行してやってるけど、
実は巴里華撃団隊長の大神たんだけにはちんこびんびんになってしまう。つまりホモ。
外見は女の子みたいな花火ちゃんだが、大神たんのそばじゃホモの本性を晒してくれる。
大神たんに感謝しなきゃね。実態はケツマンコ大好きなホモに過ぎなくてもね。
まあ大神たんといえば、士官学校のときから寮の同室だった加山とかいうホモに菊門掘られまくってた
筋金入りのホモだもんね。  さてと、君たちも昼間にはブルーメールとかいう貴族の屋敷を
覗いてみるといい。大神たんにサカる花火たんは「肉棒天使」といった感じかな。ウィ。



342 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/06/04(日) 23:27:53 ID:poml9Ru4
でも、そろそろ私は慣れなきゃいけない……こういう幸せな時間は長くは続かないことに。
お店から出るとき、自動ドアの前で眼鏡の真面目そうな女性とすれ違った。
「あ……て、天童君……?」
「やぁ、こんにちは、西野さん」
「こ、こんにちは……」
「まさかゲーム屋さんで会うなんて思わなかったな。西野さんも、ゲームするんだ?」
「え……あ……うん……」
「そうなんだ。じゃ、またお勧めのゲームとか教えてよ」
「あ……うん……」
「じゃあ、俺はそろそろ」
「うん、またね……」
女の子に笑顔で手を振るお兄ちゃん……。
むぅ……。
ギュ。
お兄ちゃんの耳を思い切り引っ張り、歩き始める。
「あ、葵っ……!?何なんだ……!?」
「何でいつもこんなことに……」
「いや、それを聞きたいのは俺で……いてててててててっ!!」

はぁ……モテるお兄ちゃんを持つと……辛いなぁ……。
───────────────────────



343 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/06/04(日) 23:28:42 ID:poml9Ru4
「一週間に約一本。まさに……えっと……」
「粗製乱造」
「そうそう。それそれ!」

というわけで、
天童兄妹第四弾:>>333-334>>337>>340>>342
ただ、どう●つの森を買ったから書きたくなっただけ。
可愛い妹とゲームしてぇ!!というイタい欲求の現われですよ。

344 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/06/05(月) 00:52:48 ID:w3T72Gt3
葵タソ…毎回楽しく読ませてもらってます、GJξ´_>`ξ

345 :遊星より愛を込めて ◆45KgZeCOYA :2006/06/05(月) 03:14:19 ID:FK2oOf09
今回の合宿で再確認を検めて強くした。花火ちゃんは女の子ではないことを。
男の子なのではあるが、周囲がその勃起力を発揮できる場所を整えてあげなければ、
いけないということだ。こういうタイプの人間をはなびんびん型と分類される。
みんな揃っての愛撫をスイスイとこなしていく。注意して手許を見たら
花火ちゃんのおおきなちんこに似合わず手は小さいのだ。
このちんこの勃たせ方は、当時の巴里のさる貴族の女性によって「再発見」された
方法で、意外と広く伝統社会では受け継がれてきたものらしい。
すると、場所、相手を問わず簡単に勃たせられるカンナちゃんは万能型になる。

性交の時だってそうだ。花火ちゃんのそばには4人の女の子がいる。エリカ・グリシーヌ
・コクリコ・ロベリア・の四人だ。だが花火ちゃんのちんこは彼女たちにはまるでだめぽ。なんで?
花火ちゃんって、男にしかちんこびんびんになんないんだよね。
花火ちゃんは男性が苦手だけど、シャノワールではモギリとボーイを併行してやってるけど、
実は巴里華撃団隊長の大神たんだけにはちんこびんびんになってしまう。つまりホモ。
外見は女の子みたいな花火ちゃんだが、大神たんのそばじゃホモの本性を晒してくれる。
大神たんに感謝しなきゃね。実態はケツマンコ大好きなホモに過ぎなくてもね。
まあ大神たんといえば、士官学校のときから寮の同室だった加山とかいうホモに菊門掘られまくってた
筋金入りのホモだもんね。  さてと、君たちも昼間にはブルーメールとかいう貴族の屋敷を
覗いてみるといい。大神たんにサカる花火たんは「肉棒天使」といった感じかな。ウィ。



346 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/06/06(火) 22:55:53 ID:kXXhgeYY
昨日の雨が作った水溜りが空を写す。
そんな空を壊さないように、少し大きく足を伸ばし、
水溜りを飛び越える。
「良い天気だ」
そう呟いた。
全く以って穏やかな午後。
だが……それも長くは続かないようだ。
「お兄ちゃーん!!」
突然、俺の首にかなりの負荷がかかる。
気道を圧迫され、相当苦しい……。
「隙だらけだぞー?」
無邪気に話しかける後ろの人。
「いや、隙とか……言われても……」
「だめだよ、そんなことじゃー」
「分かったから……降りろ……」
「しょーがないなぁ……」
重力から開放される俺の首。
飛びついてくるというのなら、可愛いもんだけど……
完全に絞め落とす気だからな、コイツの場合……。
「はぁ……」
息を吸いながら、ゆっくりと振り向く。
視線の先には、腰に手を当て、いかにも怒っていると言った感じの小さな人間。
「たるんでるぞ、お兄ちゃん!!」
そう。
こいつは俺の妹、望。
妹と言うからにはもちろん女であるが、どこかで間違えたのか……
小さい頃から活発な妹で、今は何処から見てもアクティブな少年。
その上、小学生のときに何の因果か空手も始めてしまったものだから、
男らしさはさらに加速してしまった……。

347 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/06/06(火) 22:56:30 ID:kXXhgeYY
「たるんでる?何が?」
まだ痛む首を押さえながら、静かに答える。
「全部っ!!もし、ボクが強盗だったらどうするのっ!?」
唐突だなぁ……。
「多分……強盗が俺を襲うメリットは少ないと思う」
「めりっと……!?せ、専門用語は禁止っ!!」
「あぁ……スマン……」
メリットって、専門用語だったのか……そいつは知らなかった。
「まぁ、仮に強盗に襲われたとしても……俺は俺なりのやり方で切り抜けるさ」
「お兄ちゃんなりのやり方って?」
「んー……逃げるか、諦めるか……状況しだいだな」
「情けないなぁ……」
「人には向き不向きがある。望は体を動かすのに向いてる、俺は頭を使うのに向いてるんだ」
「あぁ、もう!!ダメだよ!!そんなことじゃ!!」
俺の手を奪い、引っ張っていく望。
一応抵抗はしてみるが……少々、態勢が悪い……。どんどん引き摺られていく。
「何だ?」
「道場行くよ!!ボクがお兄ちゃんを鍛えなおしてあげるんだから!!」
「いや、俺は委員会の仕事が……」
「そんなのあとあと!!どーせ、お兄ちゃんならパパッとできるんでしょ!?」
「あの、出来ないからこうして……」
「うるさーいっ!!行くったら行くの!!」
「こんなだからいつまで経っても男に見られるんだよな」
ボソッと俺の一言。
だが、一番聞こえて欲しくない人には、しっかり聞こえてたようで……
「お兄ちゃん!!」
俺の手を離し、蹴りの準備姿勢をとる。
「やめとけ……」
「うるさいっ!!」

348 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/06/06(火) 22:57:32 ID:kXXhgeYY
ガッ。
望の上段蹴りを、左手で受け止める。
「痛いなぁ……」
痛みが骨に響く……。
「え……!?」
そんなに俺が止めたのが意外だったのだろうか。
足を上げた姿勢のまま固まる望。
「望……パンツ見えてるぞ」
「え……!?うわぁ!!」
足を下ろし、スカートを慌てて押さえる望。
真っ赤な顔で俯く望。
……コイツでもこんな顔できるんだな。と、ちょっと思った。
「どーせ、スパッツかブルマか穿いてるんだろ?」
「あ……そうだった……」
「の割には、鮮やかだったけどな」
「え゙っ!?」
驚いて、思わずスカートを見下ろす望。
「嘘だ」
そんな望を尻目に、とっととその場から逃げる。
「ちょっと……!!お兄ちゃんっ!!」
正気に戻った望が俺の前に駆けてくる。
「何だよ?」
「まだ話の途中!!」
「……あぁ、望の下着の話だっけ?」
冗談のつもりだったのだが……望の顔が沸騰した。

349 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/06/06(火) 22:58:04 ID:kXXhgeYY
「ち、違うぅっ!!」
「じゃ、何か続いてる話しがあったか?」
「だから、お兄ちゃんが男らしくないって話!!」
「あれは終わっただろ」
「終わってなーい!!今から、ボクがお兄ちゃんを男にするんだから!!」
「うーん、男男言うけど、逆にさ、お前の言う男らしさって何?」
「うーんとねー、強くって、逞しくって、優しくって……」
指を折々、色んな候補をあげていく望。
まだ続きそうなので、
「俺には一生かけても無理だな」
「だから、少しでも努力しなくちゃ!!」
「嫌だね。俺は俺の中での男を目指すさ」
「じゃあ、お兄ちゃんの言う男って?」
「そうだな。常に賢く、正しく、優しいってとこか」
「優しいことしか、合ってないね」
「理想なんてそんなもんだ。むしろ一つ合うことに驚きだよ、俺は」
「じゃあさ……」
俺の隣に並ぶ望。
そして、俺の腕を抱きしめ、
「ボクに、もっと優しくしてくれる?」
「……それで帰らせてくれるなら」
「わーい!!じゃ、たこ焼き食べに行こうよー!!」
「いや、人の話聞いてたか……?」
「ねっ!!お兄ちゃん!!」
「何だよ?」
「優しくねっ?」
「分かってるから……」
妙に笑顔の望を、右腕に感じつつ、
まっすぐ家には帰れそうに無い予感をひしひしと感じる。
そんな初夏の帰り道でした……。
───────────────────────

350 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2006/06/06(火) 23:01:32 ID:kXXhgeYY
格闘妹、望。
また新妹の登場で、何だか俺が単発キャラ書きになりつつある……。
でも、なんとなく書きたくなったんです。
なにはともあれ……ボクっ娘……いいじゃないか……。

351 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/06/08(木) 03:16:36 ID:v9iUKcc5
遊星さんは遊星さんが書きたいものを書く。
俺は遊星さんが書いたのを読んで楽しい。
無問題ですよ(´・ω・`)
乙です!

352 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/06/10(土) 23:51:38 ID:okBZ1tMi
夢ノ又夢先生の続きに期待

353 :名無しくん、、、好きです。。。 :2006/06/13(火) 17:38:38 ID:VZOF2BvP
age

354 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/06/13(火) 22:23:54 ID:R6Twgsom
「俺は巴を甘く見ていたのかもしれない」

暗幕で囲まれた体育館の中、暗闇と喧騒に揉まれて気分の滅入る俺。ひっきりなしに聞こえてくる明るい声に何か疎外感を感じてしまう。
照明の落とされた館内をぐるりと見渡せば人がいない場所は無い、立ち見席が設けられる程の盛況ぶり。
客層の七割が女子なのは多分、巴の業の深さ故なのだろう。

「なんとか座席は確保できたが・・・場所が悪いな」

俺が体育館に辿り着いたその時には既に開演を待つ列が出来ていて席を取るだけで精一杯、改めて巴の威光を思い知らされる事になった。
舞台からは遠い一番後ろの席に陣取り腕組みして始まりを待つ、果たして巴は俺がここにいるのに気付くだろうか。
などと言いつつも実はその辺に関してはあまり心配はしていない。子供の頃から今まで俺が巴に勝てなかった遊びが一つだけある。

「かくれんぼだけは得意だったからな、巴は」

見つけてくれなくてもいい時でさえ、ちゃっかりと俺を見分ける巴だ、ここでも問題は無いだろう。
ほどなくして開演のブザーが館内に鳴り響く、湖面に石を投げ入れた様に喧騒は収まり辺りを静寂が包む。
舞台をライトが照らし出し、歯車は音を立てて回り始める。
みすぼらしい服のシンデレラとそんな彼女を蔑む意地悪姉さんや継母。
演目がシンデレラなだけに取り立てて言う事の無いオーソドックスな仕様のお話。
・・・いや、シンデレラを苛める様が妙に真に迫る物があるんだが・・・気のせいだろうか?
そういえば、主役であるシンデレラを誰がやるのかで大いにもめたと巴が言っていたな。

「・・・私怨混じってるんじゃないのか、あれは・・・」

ある意味で結果的にかなり面白い舞台、迫真の名演技(?)が観客を引き込む。
勿論、憎しみ満載ではなく主役をやるんだからこれ位は我慢しろとばかりのシンデレラへの仕打ちが続く。
こういうのは学生演劇ならではの面白さかもしれない、俺も知らず知らずのうちに身を乗り出していた。
しかし、この舞台のメインイベントはこの先にある、誰もが待つその瞬間は沢山の期待の元に訪れる。

355 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/06/13(火) 22:24:53 ID:R6Twgsom
一端、舞台が暗転して眩いスポットライトの中に浮かび上がるスラリと立った細身のシルエット。
まるでおとぎの世界からそのまま飛び出して来た様な憂いを湛えたその姿、一瞬、客席の呼吸が止まる。
宙を彷徨う視線が俺と重なる時、全てがスローモーションになる。
教室の窓から、食堂の片隅から、渡り廊下の向こうから見えるいつもの視線。
褒められるのを待ち望む子供みたいなずっと変わらない甘えたがりの輝く瞳。
そんな巴の瞳を俺もただ黙って見詰め返す、言葉は何もいらない、ただそれだけで何かを分かり合えた気がした。
瞳を閉じて一呼吸入れてから巴は語り始める、水辺を優雅に舞う白鳥の如き所作で。
会場に篭る熱い視線と溜め息の中で巴は確かに誰よりも何よりも輝いていた。

───────────────────────────

夕暮れ時を迎えた校舎で一人佇む、文化祭の騒ぎも一段落して今は閑散とした静けさが漂う、外の屋台も片付けを始めている。
祭りの後特有の寂しさ、思えば今年は騒がしいうちに終わっていた様な気がする。

「手間が掛かった割には終わった時はあっという間に感じるものだな・・・」

ポツリと呟き下駄箱にもたれ掛かって待ち惚けのボク、多分、もう少しすればここに待ち人が訪れる。
・・・ほら、やっぱり来た。
くたびれた歩き方でこちらに向かってくるいつものお兄ちゃん。

「はぁ・・・やっぱり居たよ、この人は」
「予想通りだった?お兄ちゃん」

夕陽に照らし出された不確かな影の中、ボクは呆れ顔のお兄ちゃんに歩み寄る。
分かっていたとはいえ、少々気後れ気味だったボクには夕陽の光がやけに眩しい。

356 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/06/13(火) 22:25:36 ID:R6Twgsom
「お兄ちゃん、今日の舞台・・・」
「ああ、良かった、巴は立派に王子様だな、俺も安心して社交界に送り出せるよ」
「そんな予定後にも先にも無いけど、でも・・・それは褒めてくれてるよね?」
「褒めてる褒めてる、この調子だとそのうちファンクラブとか出来るんじゃないか、兄ちゃん楽しみだなぁ」
「・・・ホントに褒めてる?」
「ははっ、怖い顔するなっての、正直言って良かったよ、少し感動してしまった位に」
「少しだけ?」
「いや、実の所、かなり」

だんだん雰囲気が冗談めいてくるお兄ちゃんがようやく本音をぶつけてくれる。
変わる事の無い石みたいな仏頂面にパッと安堵の笑顔が咲くのが自分でも良く分かる。

「・・・うん、それなら良かった、あ、これから帰るんだよね、じゃあ」
「おっと、一緒に帰るのはナシだぞ、主賓が退場したんじゃ打ち上げも盛り上がらないからな」
「・・・はい・・・残念だけどしょうがないよね」
「なんだよその顔は、今生の別れみたいな顔して・・・今は友達と楽しんで来い、な?」

少し視線の下がるボクの顔を覗き込んで明るく諭すお兄ちゃん、こんな何気ない気遣いがボクにはこの上なく嬉しい。

「じゃあ、せめてお夕飯代はボクが出すよ、今日は外で済ませるつもりでしょ?」
「いや、そこまでしてくれんでも・・・それ位は自分でどうにかするよ」
「いいから・・・あれ、これ何だろう?」

取り出した赤い財布のお札入れにある見慣れない小さな紙に疑問符が浮かぶ。
こんなのホントに見覚えが無い、いつの間にこんな物が・・・

「ん、どれどれ・・・おい、これ、巴は今まで気付かなかったのか?」
「えっ、何が?」
「やれやれ・・・まぁ、開けてみろ、話はそれからだ」

357 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/06/13(火) 22:28:16 ID:R6Twgsom
言われるがままに開くと視界に飛び込む見慣れたお兄ちゃんの字。

──無理は絶対にしないこと、何かあったらいつでも駆けつけるから遠慮せず呼ぶように、同じ学校だしな──

そこに書かれた言葉の意味を知り鼓動が跳ねる、無くしていた何かを見つけ出した様な、泣きたくなる様なくすぐったい感覚。

「巴が前に疲れてそのままソファーで寝ちゃった事があったろ、あの時に入れといたから約一週間気づかなかった事になるな」
「あの時・・・これは・・・四葉のクローバー?」
「まぁ、ラッキーアイテムっていうとそれ位しか思い浮かばなくてな、ちょっと安直だったとは思うけど」
「ううん、そんな事無い、でも、どうしたのこれ?」
「もちろんあの時に探したんだよ、大変だったぞ、家の庭中を懐中電灯片手に探し回って・・・途中で雨が降るしさ」
「・・・そっか・・・」

手紙に添えられていた押し花にされた四葉のクローバーを手に取り、そっと胸に引き寄せる。
それはボクにはじんわりと暖かくて、痛みや不安さえ包み込んでくれるお兄ちゃんの優しさそのものだと思った。

・・・ずっと・・・心配してくれてんだ・・・お兄ちゃん・・・

結局、お兄ちゃんの優しさに気付けなかったボクのひとり相撲、か。
お兄ちゃんはボクの為を思っていてくれた、なのにボクは自分の事ばかり考えて・・・

「・・・ごめんなさい」
「は?何が?」
「お兄ちゃんはちゃんとボクの事、考えてくれてたのに・・・ボクは」
「ああ、それか・・・どうでもいいさ今となっては、結果として舞台は大成功だったんだし」
「・・・お兄ちゃんは優しいね、それに引き換えボクは・・・ホント、ダメだよね・・・ホントに」

358 :夢ノ又夢 ◆7FqW82/Veo :2006/06/13(火) 22:28:54 ID:R6Twgsom
それ以上言葉を出せずにギュッと握った掌が自分でも意識しないうちに少しだけ震えている。
子供の頃よりボクは強くなった、あの頃みたいに泣いてばかりじゃない、勉強も運動もずっと上手くなった。
いつかお兄ちゃんを支えてあげられる人になりたくて、頼りにしてもらえる様になりたくて、がむしゃらに頑張ってきた。
そうすればボクはずっとお兄ちゃんと共に生きていける、ボクのボクだけの人でいてくれると信じて。
変わったのに変わりきれないボク、相変わらずの優しさをくれるお兄ちゃん、どうにも埋まらない二人の距離がボクには堪らなく悔しかった。

「よせよせ、憂いの表情なんて巴には・・・似合うけど」
「ありがとう、でも・・・」
「巴、反省は沢山すればいい、でも、後悔だけはしちゃ駄目だ」
「・・・」
「それに、もしも今回の舞台が失敗していても俺は巴を褒めてたと思う」
「・・・どうして?」
「決まってる、巴はいつだって俺の一番の自慢だよ」

笑顔の中に真っ直ぐな瞳を隠して、お兄ちゃんがボクの頭を乱雑に撫でる、真剣さを誤魔化す為のお兄ちゃんのいつもの照れ隠し。
たまにしか見せてくれない、多分・・・ううん、絶対ボクしか知らないカッコいいお兄ちゃん。
ボクの心にグングン追いついて、いつも簡単に答えを見つけ出してくれる、きっと本当に大切な事をお兄ちゃんは誰よりも知っている。
こんな時、ボクは強く想う・・・お兄ちゃんの前ではボクは優等生でも王子様でもなくてただ、好きな人に甘えていたい一人の女の子なんだって。
だからボクは心に素直に従う、世界で一番愛しい人の胸の中へと。

「こ、こら、ちょっと褒めたらこれかよ!?」
「・・・頑張ったご褒美くらいはね、いいでしょ?」
「よかないよ!!こんな姿誰かに見られたら多くの学生の夢を壊すんだぞ?」
「じゃあ、家でならいい?」
「そういう問題じゃなくて・・・まったく、俺は時々、巴は兄離れ出来るのかと不安になる時があるよ」
「不安は的中かな、一生離れる気は無いから、ふふっ」
「・・・言ってろ」
「うん、この先もずっと言ってる・・・お兄ちゃんの趣味も分かったし」
「ん?趣味って何?」
「・・・メイドフェチ」
「なっ!?なんつっーことを!?」
「あははっ」

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0ch BBS 2004-10-30