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[第七弾]妹に言われたいセリフ

33 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/04/24(火) 22:13:03 ID:XcMsfP7K
「何コレ?」
「私の本と……一応新聞も」
「本?借りて良いのか?」
「ええ。私はもう覚えちゃうぐらい読んでますから。暇だったら読んでください」
「ああ、悪いな」
「いいえー。義理とはいえ、兄妹じゃないですか」
こいつ、ちょっと良いヤツじゃないか……。
「お礼は期待してますよー」
前言撤回。
結局それか……。
「あの、お義兄さん……冗談ですよ?そんな絶望した顔止めてくださいよぉ……」
「……いや……感謝……してるよ?」
してるよ、してるってば……。
「だ、だからぁっ!!」
困ったように声を荒げる義妹。
「ま、礼をしたいのは山々だが……」
「だが……?」
何をすれば礼になるのだろう。
相手は仮にも女性だし。
「ま。時間はある。ゆっくり考えよう」
「ちょ、ちょっと自己解決しないでくださいよっ!!」
「人に言うことじゃない。気にするな」
「気になります」
「厄介な生き物だな……」
「人間ですもの♪」
人間単位でそんなこといわれても困る……。

34 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/04/24(火) 22:13:50 ID:XcMsfP7K
「ところで、お前さん、仕事は良いのかね……」
「あ……」
やっぱり忘れてたか。
「じゃあ、お義兄さん、また夕食の時間に来ますねー」
「いいよ、来なくて……」
「あ、ヒドいー。そんなに私のこと嫌いですかー?」
「お世辞でも好きとは言えんな……」
「ヒドいっ……ヒドいわっ!!アナタのこと信じてたのにっ!!」
ベタベタなセリフで去っていく義妹。
個室で良かったよ。
「おい……おーい……」
突拍子も無い行動に全く反応できず、取り残される俺。
今更ながら、あんなのの姉と結ばれた俺の弟って一体……。
アイツの姉にはほとんど会った事ないけど。
「……忘れよう」
嫌なことは忘れるに限る。
頭の切り替えって大事だよな。
「ま、せっかくだし借りた本でも読むか」
紙袋の中を漁る。
デカくて薄くて硬い本。
……絵本だよ、これ。
「暇つぶしにもなりゃしねぇ……」
ブツブツ呟きながら、ページをめくり始める。
……眠い。
───────────────────────
ナース妹の続き。しかも、まだ続くっぽい。
当初の話の予定とズレるズレる……昔は伏線だったものが書いてくうちに……。

あと、すばる先生からいただいた名前、早速使うことになりました。
……ま、貼るのはまだ先ですがね。

35 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/04/26(木) 00:59:20 ID:L21V6m8B
GJです!次の続きも待ってます!

36 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/04/29(日) 10:54:59 ID:5RQcHVSk
ho

37 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/05/01(火) 22:34:10 ID:WjLq4VcP
syu

38 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/05/01(火) 23:58:30 ID:Yx7Axtbp
>>28
すいません……それがどんな状況か考え付かないです…………

>>29
ageるほどしょぼくて申し訳ないです。でも、長い目で見守っていたらいつかいいのを書けようになる……かも。

>>某173さん
夢亜や四羽もそうなんですが、紫乃には元になるイメージがなく、完全にオリジナルなので特に声は考えてません。
岩男さんの声でもいいかもですね。
紫乃はこのスレではゲスト的な位置でしか出しませんが、ちゃんとした紫乃の話を作るとちょっとイメージが変わるかも?

>>遊星さん
GJです!
今回の投下分、密かに結構好きなタイプでしたw
私の考えた名前が他の方の話で使われるというのはちょっと嬉しかったりw

39 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/05/02(水) 22:55:01 ID:C8gL029q
「お義兄さん?お義兄さーん?」
遠くで声がする。
うるさいな……誰だよ……。
「お義兄ちゃん?おーい。甲斐性なしー」
……俺のことだよな。
「ガリガリメガネー?研究バカー?起きろー」
「……」
「起きないか……」
残念そうな義妹。
……ムカつく。
「……起きてるよ」
「おわっ!?お、おおおおおお、お義兄さま!?お目覚めになっていらしたのでございますですかっ!?」
「寝てる患者に悪口とは……なかなかよい趣味だな、義妹さんよ」
「お、おーっ、ほっほっほっほっ!!そんなことするのは、お義兄さまにだけですわっ!!」
……変なキャラが出てきた。
「……」
「あぅ……ノってくれなきゃ恥ずかしいじゃないですかー……」
顔を真っ赤にして、気まずそうに指をモジモジ動かす義妹。
「それなら、やらなきゃいいのに……」
「ぶー、私はお義兄さんに楽しんでもらおうと思ってー」
「いいから、そういうの」
「べ、別にアンタのためにやったんじゃないからね……っ!!」
「どっちだよ」
「あ、あははははは!!」
突然笑い出す義妹。

40 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/05/02(水) 22:55:33 ID:C8gL029q
「お義兄さん、面白いー!!」
笑いながら面白いといわれた俺は、ちょっとムッとする。
「私、お義兄さんってもっとお堅い人かと思ってましたよー」
「……」
自分で言うのもなんだが、お堅い人間だと思うが……。
「あれ、お義兄さん。どうかしましたか?」
「俺ほどつまらない人間もそうはいないと思うけどねぇ……」
「そうですかー?じゃ、相性良いんですかねぇ、私達って?」
「相性ねぇ……」
「あ、そういうの嫌いですか?」
「いや、いいよ。後学の参考にする」
「む……そんなに真面目に聞かれると困っちゃいますけど……」
義妹はコホンと咳をして、
「お義兄さんはどう思います?」
少し考える。
「……まぁ、初対面に近い状況にしてはよく話してるほうだと思う」
「ですよねー?」
首をかしげて、同意を求めてくる義妹。
「じゃあ、いっその事、付き合っちゃいましょうか、私達?」
「……は?」
「あぅ……そのリアクションは悲しいです……。私のこと、眼中に無いですかー?」
「アンタだけじゃない。付き合うとかそういうの自体がどうでもいい」
「お義兄さん……」
哀れむような目の義妹……。

41 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/05/02(水) 22:56:04 ID:C8gL029q
「お義兄さんって、女の人とお付き合いしたことありますー?」
口を開けばこんな話か……女って嫌だね。
「生まれてこの方、科学だけが恋人だ」
「それじゃわかりませんよねー」
「何が?」
「だって、それじゃ食わず嫌いじゃないですか。そういうセリフは、恋の甘さと苦さを味わってからですよー?」
「そんなもんかねぇ」
「ほら、研究だって、理論上は可能なことでも実験してみなくちゃ分からない、でしょ?同じですよ」
……ほぅ。
「なかなか言うじゃないか」
ただのバカじゃなかったんだな。
「納得していただけました?」
「少しはな」
「そうですかー」
いやらしいほどの笑顔を見せる義妹。
「ものは相談ですけどー。お義兄さんってお酒飲めますー?」
「人並みには」
「よし、決まり。退院したら二人で飲みましょ!」
「俺と……アンタ?」
「ええ。お仕事無しで、お義兄さんと話してみたいんで。いいですよね?」
覗き込むように、俺をジッと見つめる目……。
「ま、まぁ……いいんじゃないか?」
義妹の目に耐えられず、答えを急かす。
「じゃ、決まりー!明後日の夜なんてどうです?」
「……」
早い……。
いや……まぁ……その方が……いいけど……。
───────────────────────

42 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/05/02(水) 22:57:07 ID:C8gL029q
別に勿体つけるほどのモンでもないのだけど、一応続き。まだまだ続くらしい。
書けば書くほど、ナースとは関係なくなるし、妹とは関係なくなるし……
もっと先のことを考えてから書き始めるべきだよなぁ。まぁ、もともと企画段階から妹感は相当薄いのだけど。

しかし、なかなかピッタリな名前を付けてもらったもんだなぁ。

43 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/05/03(木) 03:51:50 ID:bTS0IjT9
Σd(・∀・)GJ!!

44 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/05/04(金) 01:03:05 ID:6oDh8Vaj
GJ!
続きが気になります!

45 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/05/05(土) 22:41:19 ID:U9Yj2mFh
翌朝。
「元気そうで何よりだね」
俺の顔をジロジロと眺める白衣の優男。
「そうですか」
何がおかしいのか、俺にはわからないが、
優男の後ろで、ニヤニヤと俺の挙動を眺めているいつもの看護婦が一人……。
「とりあえず点滴はもう外して……予定通り明日にでも退院できるでしょ」
一瞬喜んだ。
が、予定通りじゃ困るんだよな。
「よかったら、この機会にしっかりとした健康診断とかしようか?」
この医者も、なかなか良い度胸だ。
「いえ、結構……」
「そう。ま、気持ちは分かるけどね。医者としては一応……ね」
「そうですか……」
「じゃ、また明日の朝にでも」
一礼をして病室から出て行く優男。
彼が出て行くのを見届けるとすぐさま……
「おはようございます、お義兄さん」
さきほどと変わらぬ笑顔で、俺に話しかけてくる。
「何か……?」
「いえ……」
俺を見てはクスクス笑う義妹。
失礼な女だ、今更だが。
「失礼なヤツだな……」
「それは分かってますけど……」
「何だよ?」
「言いにくいんですけど、お義兄さん……寝癖ついてますよ?」
「……なんだ、そんなことか」
あまりの下らなさに、思ったことをそのまま口にしてしまう。

46 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/05/05(土) 22:41:51 ID:U9Yj2mFh
義妹は少し驚いたように、
「気にしないんですか?」
「そこまで無頓着じゃないが……必死になって気にするほどでもない」
基本、寝癖なんか付かないしな……。
「そーですかー」
つまらなさそうに返事をする義妹。
「いや、まぁ……わざわざありがとう」
「へ……?」
間抜けな声を出して、急に手を止める義妹。
「何か?」
「いえ……何だか、意外……」
「何が?」
「お義兄さんが、素直に『ありがとう』なんて言うとは思わなかったから」
義妹は花瓶に刺さった花をいじりながら、照れたように笑う。
「ほら、男の人ってそういうの口に出すの恥ずかしがるじゃないですか。
 お義兄さんは特にそんなタイプだと思ってたんですけど……意外です」
「なら撤回させてくれ」
「あ、褒めてるんですよ!そういうの、良いと思います」
「そうかい……」
ここまで言われるってのは、妙にくすぐったい。
褒められるのに慣れてないんだな、俺。
「さてと、点滴外しますか。動かないでくださいよ、お義兄さん」
義妹の顔が、一瞬で仕事の顔に変わる。
真面目そのものな義妹が、俺の少し血色のよくなった腕を優しく掴む。
気まずいような。
心地よいような。
長いような。
短いような。
必要以上に大人しくしている俺に、義妹は怪訝な表情を見せて、
「どうしました、お義兄さん?」
「……いや……」
恥ずかしくて、たまらず目を反らす。

47 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/05/05(土) 22:42:25 ID:U9Yj2mFh
「ふふっ……」
義妹の微笑とともに、一陣の風が吹いた。
強い風だけど、気持ちよくて。
この狭い部屋に一枚の花びらを運ぶ風。
「桜、もう咲いてるんですね」
「……」
桜なんて、気にしてなかった。それも数年単位でだ。
久しぶりに見た桜。
そして……この初めての感覚はなんだろう。
戸惑う俺に、ふぅっと風が吹いた。
義妹の掌に載った桜が、その息とともに俺の胸の上に落ちた。
驚いて顔を上げると、義妹はニッコリと笑って、
「春って気持ちいいですよね」
「あ……っと、そう。そうだな」
「ですよねー」
風を探すように、窓辺に立つ義妹。
「こんなに気持ちいいのに、お仕事なんて嫌だなー」
そしてクルリと身を翻し、
「こんなこと言ったら、お義兄さんに怒られちゃいますよね」
「まぁな」
「では、もう一頑張りしますか。お義兄さんも大人しくしててくださいね?」
「おぅ。また後で、新聞頼む」
「はーい」
小さく手を振って病室から出て行く義妹。
その光景が、頭から離れない俺。
……優秀すぎる頭も問題だ。
───────────────────────

48 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/05/05(土) 22:43:04 ID:U9Yj2mFh
大体どの時期に書いていたのかわかってしまうな……。
まぁ、そこまで季節外れってワケでもないし、
北海道あたりの話だと思っていただければ……w

もう書きあがってんだから一気に貼っちまえば良いんだけど、
一気に貼るのがあんまり好きじゃないんでチマチマと。まだまだ続くみたいよ。

49 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/05/06(日) 00:47:08 ID:NoDtuGcu
GJ!
書きあがっていらっしゃるなら是非とも毎日更新を…!

50 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/05/06(日) 04:11:51 ID:H+q9nEGF
遊星さんに続き桜の時期を逃してしまっている私も明日から続きを書き始めます。
遅くても10日までには投下できるかと。

>>遊星さん
>もう書きあがってるからこれから毎日投下します。
これから毎日ここ見ますw

51 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/05/06(日) 09:22:15 ID:TaYQHRKP
>>49さん
わざわざ有り難うございます。
毎日でも良いんですけど、毎日だと……ウザくない?w

>すばる先生
自分でハードルを上げてしまいました……w
とはいえ、すばる先生の作品が控えてる以上、
前座は前座らしく早めに貼ってしまわなければいけませんな。

52 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/05/06(日) 22:17:32 ID:TaYQHRKP
今日の時間は早い。
早いは早いが、それに加え不安定。
ときどき早くなったり、遅くなったり、不便でしょうがない。
「お義兄さーん!!ご飯一緒に食べませんー?」
ほら、いつの間にか昼だ。
「え……俺と……?」
「はい。ほら、少しですけど栄養の出るもの作ったんですよー」
……焼肉と鰻……。
「嫌いでした?」
「いや、大丈夫。それにしても、アンタ料理上手いのか?」
「んー……お肉は焼いただけですし、鰻は蒲焼を買いましたからねー」
……ま、それもそうか……。
「でも、上手いかどうかは知りませんけど、よく料理は作りますよー」
「へぇ」
「お義兄さん、知ってます?実は……お姉ちゃんの手料理って、前はほとんど私が作ってたんですよ」
「え……?」
衝撃発言、というほどでもないが……驚きの発言に箸が止まる。
「コレ、絶対内緒ですからね?」
「あのバカ、随分嫁の料理上手を自慢してた気がするが……」
「うーん……喜んでいいのかなぁ……」
「あんまりよくないと思う」
「ですよねー……」
はぁっと大袈裟にため息をつく義妹。

53 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/05/06(日) 22:18:05 ID:TaYQHRKP
「ま、それはさておき……どうぞ、お義兄さん」
「あ……ありがとう」
義妹から可愛らしい弁当箱を受け取る。
そして、一口。
「どうですか?」
「あ、あぁ。なんか久しぶり」
そもそも食事とか、食べる。とか意識したことがココ最近無かった気がする。
「私でよければ、これからも料理作りますよ?」
小さな口でご飯を頬張りながら、何気なく呟く。
「え……」
今までの人生ではありえなかった提案にしばし固まる俺。
義妹はそれを気にする素振りも見せず、
「あ、そうそう、リンゴ買ってきたんですよ、リンゴ。今剥きますねー」
小さな包丁片手にシャクシャクとリンゴを剥き始めた義妹。
どこか嬉しそうな横顔を見ながら……少し後悔の気持ちが。
「どうぞ。やっぱり入院したらリンゴ食べなくちゃですよね」
「……」
「リンゴ……嫌いですか?」
「い、いや……食べる」
出来るだけ義妹の顔を見ないように、リンゴを受け取り、齧る。
「美味しいですか?」
「あ、あぁ、美味いよ」
「それはよかった。さてと。あんまり長居するわけにはいきませんので、私は行きますね」
「あぁ、ありがとう」
「気にしないでください」
バイバイと小さく手を振って病室から消えた。
一人残る俺は心ここにあらず。
……随分、義妹に入れ込んできている自分に、戸惑い、驚き、その他諸々の感情を感じていた。
───────────────────────


54 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/05/06(日) 22:18:38 ID:TaYQHRKP
一応二夜連続で。
随分貼ってきましたが、あと少しで終わります。
次回からは妹目線になっていくので、とりあえず今回は短いですがここまでってことに。

では、また明日にでも。

55 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/05/06(日) 23:24:27 ID:NoDtuGcu
>>すばるさん
楽しみに待っております!

>>遊星さん
GJ!
僕も毎日このスレに参上します!

56 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/05/07(月) 22:12:08 ID:20I++rSh
「はぁ……」
病室から飛び出た私は、壁に寄りかかり小さくため息を吐く。
ダメだ……どんどんお義兄さんの顔が見れなくなってく……。
気にしちゃダメだと思うほど、強く意識してしまう。
「こんなの初めてだな……」
「それは恋ね。病院じゃ治せないわよ」
突然の声。
「うわぁっ!?」
「そんなに驚くこと無いでしょ?」
「声、出てましたっ!?」
「ばっちり」
笑顔で答えてくれる女性。
名前は鈴宮鈴さん。この病院の女医さんで、私の大学の先輩。
明るくて、面倒見がよくて、良い人なんだけど……。
「しかし、あのメガネがそんなに良い男かね?」
口はちょっと悪い……。
「っ!?」
「驚くなよ。みんな気付いてるって」
しかも意地悪……。
「……好きになっちゃったみたいだから……」
「簡単で良いじゃない。里見はメガネが好きなんでしょ?」
「うん。でも、お義兄さんは……違うと思います……」
「里見……両思いなんて幻想よ?気持ちなんて関係作ってから何とでもなるわ」
「関係……」
「別にカラダで迫れってワケじゃないぞ?」
「分かってますよぅ!」

57 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/05/07(月) 22:14:26 ID:20I++rSh
そういうと、鈴さんはニヤッと笑って、
「そんなら話は早い。告れ」
「えぇっ!?」
「里見、声デカいって」
「す、すいません……で、でも……」
「いいじゃない。後腐れするような関係じゃないでしょ?」
「それは……そうですけど……」
思わず暗くなる声。
鈴さんはお見通しのようで、
「拒否られるのが怖い?」
「……はい……」
「メガネの様子を見るに、その心配は無いと思うがねぇ……」
「え……」
「いや、こっちの話……とにかく告るったら告る!メガネは明日まで動けん。絶好のチャンスじゃない?」
「……ですよね」
「そうそう。次の機会なんて無いかもしれないんだから。ね?」
「鈴さん、わかりました!!私やります!」
「そうそう、その意気。じゃ、今夜結果報告を兼ねて飲みに行くわよ」
「ええっ!?」
「成功なら祝い酒、失敗なら……奢るわ」
「わ、わかりました」
鈴さんは満足そうに頷いて、
「じゃ、雑談ここまで。仕事に戻りますか」
「はい。鈴宮先生♪」
鈴さんの後に続いて、お仕事に戻る。
……とりあえず、目の前の仕事を何とかしなくちゃ。
───────────────────────

58 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/05/07(月) 22:15:04 ID:20I++rSh
三日連続。
あと一回とそれに加え、エピローグ的なものを予定しております。

ついにすばる先生から頂いた名前が日の目を見ることとなりました。
……申し訳ないくらいチョイ役なのですが。
ホントに申し訳ないんで、気が向いたら、このキャラでスピンオフ的な作品を書いてみようかななんて思ったり。

では、また明日。

59 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/05/08(火) 01:18:14 ID:MjQ20xoh
おお!女医さんも登場!GJです!
スピンオフ作品の方も是非とも希望です!

60 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/05/08(火) 22:49:14 ID:NsG9dHrl
決断は思った以上に容易だった。
こちらも、それほど本気ということなのだろう。
仕事は終わったが、着替えるヒマも惜しくて。
そのままお義兄さんの部屋へ。
「……お義兄さん……?」
大きなドアを軽くノックをして、呼びかけると、
「あぁ、入れよ」
いつものぶっきらぼうなお義兄さんの声。
それに従いゆっくり中に入る。
「どうしたんですか、電気もつけずに……」
「あ、いや……考え事してたから」
「そうですか……」
会話が止まる。
薄暗い病室に、重い空気が漂い始めた。
「あ、あのっ……!!」
「あー……っと」
ほぼ同時に話を切り出してしまった。
「あっ……お義兄さん、どうぞ」
「いや……俺は出来れば後のほうが」
「……私も後の方がいいんですけど……」
「そうか……」
また止まる。
しかし、今度はそうは長くなく、
「少しいいか?」
「え……?」
「ここじゃ話しにくいから。屋上にでも」
「えぇ、いいですよ」
「じゃ、行こうか」
お義兄さんは、ゆっくりと体を起こし、私の先を歩いていく。

61 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/05/08(火) 22:49:45 ID:NsG9dHrl
頭を整理しながら、お義兄さんのあとについていく。
本当は……このドキドキから早く開放されたいのにな。
そんなことを考えながら、いつのまにか屋上に。
満月に近い月が照らす屋上は、とても静かで、私の緊張を加速させる。
「寒くないか?」
「うん、大丈夫ですよ。お義兄さんは大丈夫ですか?」
「ああ……」
静かに頷くお義兄さん
そして、
「あの……」
ゆっくり話し出す。
「今まで世話になったな」
「いえ、別に構いませんよ」
「いや……それが言いたいわけじゃなくて……なんつーか……」
「え?」
私が聞き返した瞬間の出来事だった。
風が吹いた。
お義兄さんのほうから、私に向かって。
優しくて、温かい風が。
「その……里見歓奈。好き……だ」
「はい……?」
心臓が飛び出すように跳ねだした。
耳が自分の耳じゃないように、
目が自分の目じゃないように、
心が自分の心じゃないように。
「あ……あれ……」
ポロポロと涙が溢れてきて、どうしても止まらない。

62 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/05/08(火) 22:50:15 ID:NsG9dHrl
「……変……だな……」
「わ、悪い!そ、その……泣かせるつもりなんて……」
「……ぃ」
「え?」
「悪くなんてないですよ!!嬉しくて……泣いてるんだから……!!」
「えっと……じゃあ……」
「……」
今度は私の番だったのに……ココから先は、言葉にならなかった。
それにきっと、今の顔はひどいものだと思う。
それでもお義兄さんは、優しく私を抱きしめてくれた。
「……」
こうしていると安心する。
……でも何で止まってくれないのかな、この涙は……。
「ホントに、俺なんかでいいのか……?」
返事の代わりに強く抱きしめる。
「いいんだな?研究バカだし、家事できないし、酒癖だってそんなによくないし……」
まだまだ続きそうなお義兄さんの自分責めを……ゆっくり唇で塞ぐ。
「それは……」
驚いた顔のお義兄さんに。
「それは……好きになる前に聞きたかったかな」
さっきの味を忘れないようにもう一度。
「倉音さん……好き」
風に祝福されながら、お義兄さんの愛を噛み締める。
月明かりが妙に優しい夜だった。
───────────────────────

63 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/05/08(火) 22:51:02 ID:NsG9dHrl
「まさか、こんなことになるなんてなぁ……」
「ホント。まさかまたお姉ちゃんの妹になれるなんて……ね」
「なぁ……後悔してないか?飽きてきたりしてないか?」
「倉音さんはしてるの?」
「いや、俺は大丈夫だけど……歓奈は……」
「もちろん大丈夫。こんなに幸せなのに後悔なんか出来ないし、飽きるわけがないよ」
「そっか」
「それに……好きな人と飽きるほど一緒にいられるって素敵なことだと思う」
「歓奈……」
「あ、照れてるー?」
「そりゃ……」
「こんなもんで照れてちゃ、結婚式なんて出来ないよ?」
「……不安だな」
「不安なんてないよ。プロポーズだってちゃんとしてくれたし。二人なら大丈夫、でしょ?」
「ま、それもそうか……」
「そうそう。さぁ、帰って祝杯あげよー!」
「また飲むのか?」
「嬉しいときはお祝い。お祝いするにはお酒が必要なのだー。って私の先輩がよく言ってた」
「じゃ、人生で一番嬉しい今日は……かなり良い物を飲まなくちゃな」
「うんうん。その意気その意気。商店街寄って帰ろうか?」
「うん」
「あ、そだ。倉音さん」
「どうした、歓奈」
「これからも、よろしくね」
「ん?」
「これ、ずっと言おうと思ってたの。さ、行こう?」
「あー……っと、歓奈。俺もよろしく」
「うん」
───────────────────────

64 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/05/08(火) 22:57:06 ID:NsG9dHrl
四日目。今日で最後です。
まぁ、正直書いてるコッチも小恥ずかしいのですが、
理想は幸せそうであることなので、こんな終わり方でも良いかなと思います。

最後に、毎日凝りもせずにコメントをくれた名無しの方々。
四日間続けてここに来ることができたのも、あなた方のお陰です。どうもありがとうざいました。

65 :某173 ◆HsV9Lpvnw. :2007/05/09(水) 00:32:35 ID:0t1K+M7R
ほわ〜。
丁寧に書いてて、すごく感じ入るものがあった〜。

66 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/05/09(水) 02:41:25 ID:wKAXOn7t
>>遊星さん
とても良かったです。GJ!
毎日更新してくれてありがとうございました!
ハッピーエンドの心地好い余韻…!

お姉ちゃんの話も読んでみたくなってしまった…
今度もし気が向いたら宜しくお願いします!

67 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/05/10(木) 06:49:00 ID:Jwox27l5
>>55
毎度の如く終盤に向かうにつれグダグダになっていくので期待は禁物かもです。
しかも>>50のレスした後に100行くらい書いきそれきり手つかずという……

>>遊星さん
あまーい!乙です!
アク禁かかっていてレスできませんでしたが毎日見させていただきました。
確か次は文化祭の……

68 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/05/10(木) 22:49:17 ID:PcHGJ8KN
>>65さん
……褒めすぎじゃないでしょうか。
いや、まぁ、読み手が感じたものが全てなので、そう感じていただけたならいいんですけど。

>>66さん
歓奈の姉……誰とどう絡ませたら良いんだろう……。
現段階ではなんともなので、アイデアが降りてくるのをのんびり待ってください。
まぁ、何にせよスレ違いであることにはかわりなさそうですがw

>すばる先生
アク禁解除おめでとうございます。気持ちは物凄くわかりますよw
文化祭は……もういっそ忘れたほうがいいかもですよw
ってのもあんまりなんで……また昔書いてた別の話を近いうちに。

69 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/05/11(金) 02:31:18 ID:XX17KPmi
正直なところ、走るのはそんなに好きじゃない。冬は寒いし、夏は暑いし、何よりも疲れるし。
努力すればしただけの記録が出る。そこは好きかもしれない。
「お疲れ様!はい、タオル」
「ありがとうございます」
先輩が差し出してくれたタオルで汗を拭く。
「なんで先輩が私のタオル持ってるんですか」
「勿論、鈴夏ちゃんのバッグから取ってきたからだよ?」
またこの人は。まぁ、ありがたくない訳ではないけど。
「勝手に人のバッグ漁らないでくれませんか?」
「まぁまぁ♪それにしても、相変わらずそんなに走っても涼しい顔してるのが信じられないよ」
「そうでもないです。結構疲れてます」
「でも、この調子なら今度の大会が楽しみだね」
「……そうですね」
「あれ?浮かない顔ー。楽しみじゃないのかな?」
大会。そんなものに興味はない。
私には人と競う事の何が楽しいのか理解できないし、する気もない。
私が走ってる事と他人と競う事は関係ないから。
「そんな事ないです。その為に練習してるんですから」
「そっか。鈴夏ちゃんの足なら一位取るのは当たり前かな?」
「そんな事ないです。やるからには全力でやりますけど」
「謙遜謙遜♪それにしても、遂に公式戦デビューだね!初・体・験♥」
楽しそうに先輩が笑う。
「はぁ」
いつもの事だから呆れて溜息だって出てしまう。
「酷ーい。先輩に向かってそーゆー態度取っちゃうんだ?」
「ねぇ先輩?」
「ん〜?」
「帰りにどっか寄ってきません?」
「いいよ〜?珍しいね。鈴夏ちゃんの方から誘ってくるなんて」
「そうですか?」
そういえば珍しいかもしれない。なんとなく誘っただけなんだけど。

70 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/05/11(金) 02:31:49 ID:XX17KPmi
「うんうん。珍しいよ。もしかして……」
「なんですか?」
何か予定でもあったんだろうか。それなら無理に誘ったりしないけど。
「私に惚れたなっ!?」
「そんな訳あるはずないじゃないですか」
「あれれ。違った?」
バカかこの人は。女が女に惚れるはずがない。桜と一緒に脳細胞まで散ってるんじゃんだろうか。
「当たり前です。バカですか?」
「昔の偉い人がこんな事を言いました。『ムキになる そんなところが また怪し』」
「ああ。バカでしたね。バカにこんな事聞くのは失礼でした。すいません」
「酷いっ!」とかなんとか言ってる先輩をいつも通り溜息であしらい、なんとなく桜の方を見てみる。
「あ」
「私の魅力に気付いた!?」
あの人が桜の木の近くにあるベンチに座っていた。
最近兄さんとよくいる人。ゆな……だっけ?俯いて何か呟いてる。
「そうでしょう。そうでしょうとも。この話を聞いて私に惚れない訳が……」
「何の話ですか?先輩、意味分からないです」
「……どうせ私には魅力なんてないですよ。別にいいもんね。気にしてないもん」
「先輩」
「慰めなんていらないよ。私が欲しいのは愛なの。私を見て。read me!」
「いい加減うざいです」
「はい。ごめんなさい」
最近の兄さんの話にはよくあの人の名前が出てくる。あの人、兄さんの何なんだろう。
「さっきから何見てるの?……あぁ、ゆなちゃん?」
「先輩、あの人の事知ってるんですか?」
「知ってるも何もいつも騒いでるから有名だよ?」
「そうなんですか?」
敢えて先輩だっていつも騒いでるとは言わないでおく。また騒がれてもうるさいし。
「最近草薙君といるとこよく見るけど、あの二人って付き合ってるの?」
「なんで私に聞くんですか」
「兄妹だったらそういう話もするのかなーって思って」

71 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/05/11(金) 02:32:19 ID:XX17KPmi
「知りません。本人に聞けばいいじゃないですか」
私だって知りたい。最近の兄さんはよく分からない。
昔はなんでも分かったのに、いつの間にか分からない事の方が多くなってた。
「んー。それでもいいけど、鈴夏ちゃんに言ってないならまだ付き合ってないのかな?」
「まだってなんですか」
それじゃまるでもうすぐ付き合うみたい。兄さんにそんな話ある訳……
「ゆなちゃんのあの猛烈アタック受けてまんざらでもないみたいだし、付き合うのも時間の問題かなーって」
「……え?」
「え?って……え?もしかして気付いてなかった?」
「だって、なんで兄さんにそんな事するんですか」
「なんでって……好きだから、じゃない?」
「だから、なんで兄さんなんですか」
だって、兄さんは私の兄さんで。その兄さんが誰かと付き合うなんて考えた事ない。
「さすが草薙君の妹。鈍過ぎだね。草薙君は結構モテモテだよ?本人は気付いてないみたいだけど。あ、噂をすれば」
モテモテ?あの兄さんが?他の女の人と歩いてるとこなんて想像出来ない。
「待ち合わせかにゃ〜?……鈴夏ちゃん?」
本当に兄さんはあの人と?
そんな事……あるはずない。
あの兄さんが。私の兄さんが。
「おーい、鈴夏ちゃーん。私の事を好き好き大好きな鈴夏ちゃーん」
「……え?なんですか?」
「ツッコミもない……。どうしたの?」
「別に。急になんですか。意味分からないです」
「急じゃないんけど……もしかして、『きゃー!私の兄さんが他の女に取られちゃう!』なんて焦ってたり?」
「そんな訳ないです!別に兄さんは私のものってわけじゃないし、別に、兄さんが誰と付き合ったって……あ」
言ってから気付いた。先輩のいつもの悪ふざけ。それにムキになって反応するなんて……
「あ、あはははは……あ、ほら、なんて言うのかな?別にまだ付き合ってる訳じゃないみたいだし、よく見たら待ち合わせっていうより偶然会ったって感じだよ?ねっ!」
「…………」
先輩もまさか私がムキになると思ってなかったんだと思う。困ってる。
「その……ごめん」
「なんで謝るんですか」

72 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/05/11(金) 02:32:49 ID:XX17KPmi
ここからじゃよく見えないし、何話してるのかわからないけど、兄さんが楽しそうなのは分かる。
きっと、家であの人の事を話す時に見せる顔で笑ってるんだと思う。
昔は私と兄さんが話して、兄さんが私と話した事を笑いながら母さんたちに話してたのに。
いつの間にか、私が聞く立場になってる。
いつの間にか、私の居場所が変わってる。
きっとこのままじゃ、これからも変わってく。私の知らない所で。
「兄さんは。兄さんは、私の兄さん……ですよね?」
「え?そりゃあ、兄妹……だし」
「そうですよね。兄妹……なんだから」
「…………ねぇ、鈴夏ちゃん」
「なんですか」
「今日はもう練習終わりだよね?」
「はい」
「寄り道なんだけど、行き先は私が決めてもいいかな」
「どうぞ」
「よし、じゃあつけよう!」
「……は?」
「草薙くんとゆなちゃんを尾行するのですよ、ワトスンクン」
「アホですか?」
「春に桜の木の下でばったり会って何もないはずがない!今日、あの二人に何か起こると私の中の何かが告げている!」
バカなのは知っていたけど、遂に頭に妖精まで飼い始めたらしい。
「先輩、妖精は架空の生き物で現実には存在しませんよ」
「何言ってるの?そんなのあたりまえでしょ。鈴夏ちゃん、春だからって少し気が緩んでるんじゃないかな?」
「先輩がそれを言いますか」
「?」
『掛ける言葉が見つからない』とはこんな時の為にあるんじゃないだろうか。
「なんでもないです。尾行なんかしてどうするんですか」
「鈴夏ちゃん、気になるんでしょ?」
「それは……気にならなくはないですけど」
「つまり、私は可愛い後輩の為に一肌脱いであげようと思ってるんだよ!」
「必要ないです」

73 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/05/11(金) 02:33:20 ID:XX17KPmi
「本当は尾行なんてしちゃいけないこと……分かってる。分かってるよ。でもね、私には思い悩む鈴夏ちゃんを黙って見ているなんて出来ないの!」
「それって見つかったら全部私のせいにするってことですか?第一、別に悩んでないですし」
「あ、ちょうどホシの片方が動き出したね。これは中々グッドタイミングですぜ鈴夏さん。牛乳とあんぱんもお役目御免だね」
堂々と話を逸らされた。
……帰ろう。
「帰ります。勝手に一人でやっててください」
「なんで!?死ぬ時は一緒だよって言ってくれたじゃない!」
「言ってないです」
「じゃあ鈴夏ちゃんはあの二人が付き合う事になってもいいんだ?」
「それは……」

――――――――――――

74 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/05/11(金) 02:36:49 ID:XX17KPmi
>>69-73 無題

すいません……書き終わらなかったので急遽全部書き直しました。
ネタも無ければテーマもないですし、タイトルすら考えてないです……orz
本来は鈴夏単独で鉱とゆなをストーキングする予定だったんですが、その話はお蔵入りという事で。
次回予告が嘘になってしまいましたが、今回は鈴夏のキャラ紹介的なものと捕らえて貰えれば。
また今回みたいな事になったら目も当てられなくなってしまうので次回予告はしませんです。

>>遊星さん
楽しみにしてます。

75 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/05/12(土) 01:07:35 ID:KISmW8sh
>>遊星さん
のんびり楽しみに待ってますー!
文化祭の方も楽しみにしております!

>>すばるさん
GJです!
一人で尾行よりも二人で尾行の方が賑やかになりそう。
名探偵さんとワトスンクンの活躍ぶりに乞うご期待!?
でも先輩の様子から見て迷探偵になってしまいそうな気も…w
次回の投下も楽しみに待ってますー!

76 :某173 ◆HsV9Lpvnw. :2007/05/14(月) 20:06:59 ID:f+pLVw3n
>すばる氏

今後の展開がにぎやかになりそうで期待できるとです。

77 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/05/14(月) 22:44:04 ID:qt3/8Eya
今日は良い天気だ。
俺の部屋に差し込む暖かい日差しの中、何だか眠くなってきた。
「ふぁ……いっそ昼寝しちまうか」
大きなあくびを一つ。
そして、そのままベッドに倒れ込む。
目を閉じればすぐにでも夢の世界に突入できそうな……
ピンポーン
……玄関のチャイム。
「誰だよ……」
不機嫌をたっぷり込めて呟く。
ここで、ふと思い出した。
そういえば、あの注文したもの、そろそろ届くはず……。
俺は焦る気持ちを抑えて立ち上がり、小走りで玄関に。
印鑑片手にドアを開けると、そこには……
「突撃!お勉強会ぃー!!」
……教科書片手に、やたらテンションの高い隣人、相川梨那。
と、
「お勉強会ぃ〜!!」
「……ぉおべんきょう……かぃ……」
石川姉妹。
と、
「お邪魔します、州田先輩」
立花妹。
と、
「えと……はじめまして、州田先輩」
……この人、誰よ。

78 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/05/14(月) 22:45:16 ID:qt3/8Eya
「あ……あぁ、はじめまして。えっと……」
「天童です。天童葵」
……あぁ、名前は知ってるぞ。
「あぁ……天童の妹さんか」
「あ、お兄ちゃんのお友達ですか?兄がお世話になってます」
「いやいや」
……これが噂の天童葵か、こんな近くで見たのは初めてだな……。
しかし、なるほど……いいなぁ、天童……。
「ささ、自己紹介も済んだし、上がって上がって〜」
何故か仕切っている梨那。
俺は、皆を引き連れ俺の家に侵入しようとしている梨那の首を掴んで
「これは一体、どういうことかな?相川クン?」
「にゃ?勉強会でしょ?」
「何で俺の家でやるかって聞いてんだよ……!」
少し力を込める。
「にゃにゃっ!!痛い痛いっ!!だって、テスト近いし、お兄ちゃん頭良いし……!!」
「そういう問題じゃねぇだろ……!!」
「に゙ゃあーっ!!」
思い切って爪を立ててみる。
オロオロと俺たちを見ている招かれざる客たち。
「……」
さすがに……ここに来て追い返すわけにもいかんか……。
「しょうがねぇなぁ……」
わぁ、俺ってば大人〜。

79 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/05/14(月) 22:47:15 ID:qt3/8Eya
「いいんですか、州田センパイ?」
と、双子の姉、唯奈ちゃんが尋ねる。
……キミ、梨那の次ぐらいに乗り気だったじゃないか……。
「どうせ昼寝のつもりだったから」
「でも……本当にいいんですか?」
と、立花妹が心配そうに尋ねる。
同感、とばかりに首を縦に振る千奈ちゃん。
「ま、立花妹には夕飯ご馳走になったりするしな。その礼にはいいだろ」
「そうそう遠慮なく〜」
「梨那は黙ってろ」
「にぎゃーぁっ!!」
……つーわけで、女だらけの勉強会が何故か開幕してしまいました。
───────────────────────
大体、女ってのは何でこんな話すのが好きなのかねぇ……。
テーブルのまわりに群がる可愛い女の子+1から少し離れたソファ。
ため息交じりで、ページをめくる。
今やるべきことはハッキリ言って、ない。
だが、客人の手前、さすがに楽な姿勢をしすぎるわけにもいかず、仕方なく勉強してるフリ。
「ねぇねぇ、お兄ちゃん。ここ、教えてよー」
ノート片手にモソモソやってくる可愛くないの。
「またお前か……どこだよ……」
「ここー。なんでこうなっちゃうのー?」
「あぁっと……分子、分母に3をかけるんだ。そうすりゃ、この定理を使えるだろ?」
「ほぉー……そういえば授業で聞いたかもー。ありがとー」
笑顔で礼を言って、また群れの中に戻る一人だけ二年生の梨那……。
……って、よく考えたら、
「天童妹がいるんだよなぁ……」
天童妹は勉強も出来るらしいし……立花妹、石川妹だってそんな悪いとは思えない……。
ってことは、このまま俺は梨那専用の存在……?

80 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/05/14(月) 22:48:05 ID:qt3/8Eya
「私がどうかしましたか?州田先輩」
やや前方から、天童妹の声。
少し驚いたがそのまま、
「いや……天童さんがいれば基本的には俺は必要ないなって」
「あはは、そんなこと無いですよ」
「確かに、二年の勉強は無理みたいだな」
横目でペンを握る梨那を見る。
天童妹はそんな俺を見て、
「ホント仲良いんですね?」
と、クスリと笑う。
「そう見えるか?」
「はい。ホントの兄妹みたいです」
「それ皮肉?まぁ、幼馴染なんて兄妹みたいなものだけどな」
「……そうですか……」
俺の一言に、急に沈む天童妹。
「何よ?」
「……いえ……州田先輩に言うことじゃ……」
「ふぅん……まぁ、あの天童だしな。難しいよなぁ」
「え……?」
驚いた様子の天童妹。
「違うか?」
とは聞いてみたものの、確信に近いものなら持っている。
俺の顔は不敵な笑顔に見えているかもしれないな。
「……さすが……ですね」
「まぁね」
誤魔化しても無駄だと判断したのか、思ったよりもあっさり答える天童妹。

81 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/05/14(月) 22:48:51 ID:qt3/8Eya
「ふぅん……じゃ、妹が原因じゃないのかねぇ」
「原因……?」
「アイツの女嫌いは筋金入りだからな……いや、だったというか」
「え……」
「昔からね。ちょっと前までは会話も出来なかったんだけど、最近は随分楽しそうに話してやがるからな」
天童妹が、ギュッと拳を握る。
そうだ。この人はこういう難儀な人間だったな……。
フォローフォローっと。
「てっきり可愛い妹のお陰かと思ったんだが」
「……」
何も言わない天童妹。
「ま、いいんじゃない。真実はどうあれ、そういうことでさ。少なくとも、俺はそうだと思うけど」
「はい……」
「俺を疑ってる?」
「いいえ……じゃあ、そういうことにしておきますか……」
天童妹の瞳に、次第に力が戻る。
それを満足げに眺めていると、
ピリリリリリリリリ……
携帯の着メロが鳴り響く。
画面に書かれた名前。
タイミングだけは外さない男に、思わず笑ってしまう。
「おぅ、どうした天童」
ピクッと反応する天童妹。
「州田?悪いんだけど、問題集の58ページの問2を教えて欲しいんだけど……」
「……あー、この問題か……電話口で説明するの面倒だから、お前、俺の家来いよ」
「え?でも、俺、州田の家知らないぞ?」
「気にするな。迎えが行く」
「いいのか?」
「あぁ。家で待ってろよ」
「わかった、ありがとな」
「ふっ……こちらこそ」
「何故州田が礼を言う?」

82 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/05/14(月) 22:49:43 ID:qt3/8Eya
「別に。じゃ、切るぞ」
「待ってるよ」
黙って電話を切る。
そして、天童妹に向き直って。
「つーことで、頼むわ」
「……はい」
「あぁ、ちょっと待って。例の問題の答え、今書くから」
「州田先輩……」
「ん〜?」
必死でペンを動かしながら返事をする。
「ありがとうございます……!!」
「べつに。暇つぶしさ」
「そうですか。じゃあ、私、先輩と相川先輩のこと応援しますから」
「……」
……茶化されるのには慣れてるよ。
「ほれ、書けた」
「ありがとうございます……」
「ま、友達だからな。あの天童だから、腹立つこともあると思うけど、頑張れよ」
「はい!!」
お辞儀をして、我が家を後にする天童葵。
「ありゃー、葵ちゃん帰っちゃったんだー」
その後姿を眺めながら、梨那が呟く。
「あぁ、用事があるんだと」
「そっか。残念ー。それより、お兄ちゃん、ここ教えてよー。」
「んー?どれ?」
「58ページの問2ー」
「あぁ、これはなー……」

今頃天童家では何が起こっているのやら……。
まぁ、天童だしな。
妹怒らせてないといいけど……。
───────────────────────

83 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/05/14(月) 22:50:42 ID:qt3/8Eya
妹関係なくないか、コレ……大丈夫か、昔の俺。

この際だから言います、言っちゃいます。
散々引っ張った文化祭の話は、この話の後に繋がる話で、
未来双子葵でバンドを組む。みたいなノリだったのですが、
まぁ、演奏描写なんぞ当然書けず、
無駄にセルフコラボしたワリにはいつにも増して薄っぺらになってしまったので放置してたワケです。
部分部分は悪くないと思うんであとは流れを何とかできれば、納得できるかなと。
何にせよアイデア待ちな感じなので、ゆっくりと待っていただけたら。

>すばる先生
こういうノリ好きです。
続きを期待しておりますゆえ、お早めにw

84 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/05/15(火) 00:11:06 ID:4G3OZuQJ
GJすぎる!!

85 :某173 ◆HsV9Lpvnw. :2007/05/16(水) 01:06:56 ID:Tc2JXOUc
>……これが噂の天童葵か、こんな近くで見たのは初めてだな……。
>しかし、なるほど……いいなぁ、天童……。

「可愛い」と云う言葉を使わずに可愛いことを表現しているのがイイ。

>「そうですか。じゃあ、私、先輩と相川先輩のこと応援しますから」

予想外。でも逆に云えば、予想を読者にさせしめるだけの描写が
できているからなのだろう。
イイ!続きが楽しみ。焦らずしっかりと。

86 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/05/16(水) 01:52:48 ID:0yyk7u7v
GJです!
勉強会、懐かしい…
集まった友達と喋りまくったり
ゲームやる方に夢中になっちゃって、
ちっとも勉強が捗らなかった記憶があります…w

文化祭でバンド、良いですねー!
ゆっくりまったり楽しみに待っておりますー!

87 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/05/22(火) 20:36:35 ID:57hCNT1q
保守。

文化祭のアイデア出てくれない。ホントに秋までかかったりして……w
その代わり別のネタばかり出てくる……例の日にでも使おうかな。

88 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/05/24(木) 02:18:47 ID:6BKV4Dke
最近だんだん暑くなってきましたねぇ…
これ置いておきますんでのど渇いた方はどうぞー
っ【氷入り冷たい麦茶】×3

>>遊星さん
秋までって…まだ夏も来てないですよw

例の日って何の日だろう…
楽しみですー

89 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/05/24(木) 13:18:28 ID:f9EVOQOS
氷入り冷たい麦茶よりも氷庫さんが欲しい今日この頃……
姉スレが活気付いてきてるので私もさぼってないでそろそろ続きを書き始めるとします。

遊星さん>
楽しみにしてますよ〜

90 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/05/24(木) 21:53:49 ID:iOZh4bEz
>>88
>例の日
……一応二年前からやってみたりしてるんだけどな。
まぁ、いいや。7月12日です。詳しくは過去ログで。

>すばる先生
姉スレ、名前消すのを忘れて書いてしまった……。
ま、それはさておき……俺はしばらくアイデア無いので……
すばる先生。頼りにしてますよw

91 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/05/27(日) 00:26:36 ID:IayRk8RZ
hosyu


92 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/05/28(月) 01:06:30 ID:/GJ/CgFt
>>すばるさん
楽しみに待ってます!
姉スレへの投下も待ってますよー!

>>遊星さん
失礼しました…
まだ祭りはだいぶ先だけど今から待ち遠しいっす!
期待しております!

93 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/05/29(火) 03:08:30 ID:k8l7jFtz
>>遊星さん
そう言われると早く投下しなければいけない気がしてきますねw
実際は一回くらいなら投下出来るんですが……ちょっと気に入らない部分がありまして。
もうちょいお待ちくださいませ。
追伸。私も姉スレに誤爆しました。素で('A`)

>>92
つ【http://game12.2ch.net/test/read.cgi/gal/1106310589/522
自分、不器用ですから。
冗談はおいて。
結構前に投下しようと思ってたんでネタはあるんですが、最近自分のサイトが放置気味なのをなんとかしたいんで姉スレの投下は微妙な所です。

94 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/06/02(土) 03:27:22 ID:AExunG9q
露と散れ

95 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/06/02(土) 03:29:53 ID:AExunG9q
剣道部のエース
黒髪ロングで昔の事故で右目が薄赤のオッドアイツンデレ寡黙
剣道するときは長い髪を束ねる

俺が世話しようとすると竹刀つきつけてきて
お兄の忠告はいらない
とか怒らせると
露と散れ
とかつぶやく

96 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/06/03(日) 01:52:27 ID:RPvGOGCn
>>すばるさん
そうですかー
気長にお待ちしておりますので
お手すきの時はお願いします!
妹SSの続きも待ってますー!

サイトって小説のサイトでしょうか、
(既出でしたらすみません…)

97 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/06/04(月) 07:46:10 ID:hC7WVdp+
ロリっ子は?

98 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/06/08(金) 10:31:15 ID:148L5l8R
>>95
妄想したらちょっと萌えました

>>96
ゆなの話がなかなか進まないので、とりあえず今書いてある分を2、3日中に投下します〜。

サイトの話を出したのは初めてですよ。一次・二次創作サイトにするのが目標です。多分。
スレタイとかコテとかヒロインとかで適当にググれば見つかるようにはしてあるんで、もし、興味があれば。

99 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/06/09(土) 02:43:33 ID:N3OYWRBr
「せんぱ〜い!」
飲み物を買いに出てすぐ、さっき僕を送り出した声が後ろから聞こえてきた。
少し頬を火照らせながら走ってくる声の主は僕の元まで走ってきて、両手を膝に付き息を整え始める。
本当に出てすぐだから、これくらいで疲れるのはどうかな、とも思うけど、口に出さないでおく。
「先輩、やっぱり、ゆなも、一緒に、行きます」
「走ってこなくても、学校で待っててくれて構わないのに」
「だって、飲み物を買いに行くって、どこまで行くつもり、ですか」
「ん……一番近くの自販機まで……かな」
実はこの自販機、少し遠い。学校の中にある事にはあるのだけど、さすがに私服で学校に入るのもどうかと思いこちらを選んだ。
それが何か問題でもあったんだろうか。
「一番近くの、自販機って言っても、10分以上掛かるじゃないですか。だったらゆなも、行きます」
「……そう?そうだね。じゃあ、行こっか」
そう言って改めて前を向き歩き始めた僕だが、ゆなに動く様子はなくもう一度振り返る。
「でも、その……ちょっとだけ、待って貰えないかな、なんて」
さっきから言葉が変に途切れると思ったら、まだ疲れてたんだ……。
息を整え始めた時からずっと俯いていたから気付かなかったが、よく見るとまだ頬がほんのり赤かった。
この体力の無さには少し同情を覚える。
「べ、別に疲れたとかそういうんじゃないんですよ!?急いぐ理由もな、ごほっ……急ぐ理由も、ないから……」
慌てて誤魔化そうとするが全く意味が無くて、というか、逆効果だったり。
そんなゆなを見て、少し優しい気持ちになってしまったりもする。
「……別に無理しなくても大丈夫だよ。ちゃんと待ってるから」
「はぅ……すいません」
そう言って俯いてしまう。
「謝る事じゃないよ」
そう言って、なんとなくゆなの頭を撫でてあげる。
普段なら髪が乱れると怒るのに、ゆなが怒る様子はなかった。
それから特にする事もなく、ゆなを撫でる手の行き場もなく、沈黙。
「…………」
学校からは部活に励む声が聞こえ、空からは鳥の声が聞こえる。都会でも田舎でもない中途半端なこの地域だから、休日のこの時間は車も少ない。
「平和だなぁ……こんなに平和だと、なんていうのかな?悪い事が起こる前触れ、みたいな気がするのはなんでなんだろう」
「!」

100 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/06/09(土) 02:44:51 ID:N3OYWRBr
上下していたゆなの肩がビクッと跳ねて固まる。
「どうしたの?」
「ゆな、何も企んでないですよ?」
「…………」
なんとなく―――本当はなんとなくなんかではないのだけれど―――行き場を失っていた手を離す。
「なんでそんな目で見るんです!?なんで離れるんです!?ゆな、今何も企んでないって言ったじゃないですか!」
「……うん……そうだね」
「だからなんでそんな目で……。先輩は、ゆなの事を信用できないですか…?」
目を潤ませながら上目遣いに見つめてくる。
この目をされるとまるで拾ってきた捨て猫を親に叱られ、もう一度捨てに行く時のような、どうしようもない罪悪感に捕らわれる。
僕は悪くないのに、まるで僕が悪いような。そしていつもゆなのペースになってしまう。
せっかくの平和な時間……なんとかこの時間を守らなくては。
なんとか……なんとか……
「……もう疲れはとれたよね?そろそろ行こっか」
そう言って僕はそそくさと歩き出す。
これは仕方ないこと。仕方ないこと。僕が悪いんじゃない。だって僕はこの子を助けようとした。なんて本当に拾った子猫をまた捨てるような心境になる。
「あからさまに話をそらされた!?」
「あはは……」
「しかも笑って誤魔化そうとしてる!」
「な、なんのことかな……」
「先輩、嘘つくの下手すぎです!」
「む……早く来ないと追いつけなくなっちゃうよ、歩幅的に」
「酷いです!気にしてるのに!」「
ゆなの心無い一言に傷つきつつ怒りつつ。
これはこれで平和というのかな、なんて思いながら歩き続ける。
この時僕は、この平和な時間があっさりと壊されるとは思ってもいなかった。」

 ◇ ◆ ◇

「ゆなの心無い一言に傷つきつつ怒りつつ。これはこれで平和というのかな、なんて思いながら歩き続ける。この時僕は、この平和な時間があっさりと壊されるとは思ってもいなかった。……そう。あの大人しい鈴夏が、まさかあんな事を……」
「何言ってんですか?」

101 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/06/09(土) 02:47:12 ID:N3OYWRBr
「やだなぁ。ちょっとモノローグっぽく語ってみただけだよ。それで、どんな事をするの?」
「何もしません」
はぁ。と溜息をつき歩き出す。
「何もしない?中睦まじげなカップルを尾行してるのに?」
「っ!」
「あははー。図星突いちゃってごめんねー」
「これは、先輩がうるさいから、仕方なく……」
「自分から歩き出すほどノリノリなのにぃ?」
「先輩がうるさいから、仕方なくです!」
「はいはい、そういう事にしといてあげる」

―――――
エロゲー発売ラッシュに見事に引っ掛かってしまい、なかなかこっちに手が向きません……。
そんな私にいえるのはひとつだけ。本当、グダグダですいませんorz

102 :某173 ◆HsV9Lpvnw. :2007/06/14(木) 01:41:33 ID:HZSqU4kx
>すばる氏

乙カレー。仔猫に関する比喩を、
あえて繰り返してるあたりが技巧的なのではないか、と。

103 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/06/16(土) 15:01:01 ID:dmOtAzrw
旧家に生まれたかった
女みたいな顔で体が弱くていつも屋敷で療養してるから滅多に学校行けない
色白黒髪ストレートの妹がいて小さい頃から京都の分家のとこになんかの修行で住んでて京都弁話す

10年くらい会ってなくてある日帰ってきて
俺が咳しながら苦しんでる寝床に血のように赤い着物着て現れて
兄や、おひさしゅうございます
って言っておでこ撫でてくれんの

ちなみに絵柄はシャイニングティアーズぽい絵柄で
こんな妹欲しかった

104 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/06/19(火) 01:29:18 ID:EwUN3B1l
>>103
声は水樹奈々で?

105 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/06/25(月) 03:13:01 ID:kGMEMtNF

「ほしゅ」

「お兄ちゃん!?なんで保守したの!?」

「たまにしたくなるんだ」

「たまにしたくなるの?」
「保守ってそんな簡単にしたくなるものなの?」

「とりあえずね」

「とりあえずしたくなるものなんだ?」
「私は怖くて書き込みすらしたことないけど……こういう所って結構みんな普通に書き込みしてるの?」

「とりあえずね」

「とりあえずで普通に書き込んじやうの!?」
「驚きだよ……カルチャーショックだよ……」
「じゃ、じゃあ私が保守してもその、叩かれたりageられたりしないかな?」
「でも、こういうのってタイミングとか重要だから、やっぱり私には無理……かな?」

「とりあえずね」

「とりあえず無理なの!?じゃあ、一体どうすれば保守出来るようになるかな?」
「やっぱりこういう匠の技は見て覚えるしかないの?」

「とりあえずね」
という事でとりあえずCLANNAD風味に保守

106 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/06/28(木) 21:46:30 ID:XSYCdjW9
Hosyu

107 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/06/29(金) 23:40:47 ID:x6l3MRCA
妹にエロマンガ読ませてます
わすれな

108 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/06/30(土) 16:46:07 ID:1T8mQqjU
新作待ち

109 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/07/02(月) 05:00:09 ID:wLoiZ1Gi
「私の鍛え上げた背中を見てくれ
こいつをどう思う?」

妹「すごく…しょぼいです」

110 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/07/03(火) 21:19:25 ID:gRuy9VBH
上げ

111 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/07/04(水) 01:32:48 ID:qVcVW8Kq
>>すばるさん
GJです!
ゆなちゃんヤバイくらいに超カワイイ…

続きの投下待っております!
サイトも訪問させて頂きに参りますー!


>>105、兄ちゃん適当で笑えますねw

>>109も笑えましたw

112 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/07/06(金) 10:40:54 ID:4ItdEgtx
誰もいないの?

113 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2007/07/06(金) 16:13:40 ID:lRkKiQnt
一応いますよ〜。

>>111
どうもです。
次の投下まではちょっと時間かかりそうなのでしばし、というか結構お待ちを。

114 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/07/06(金) 21:14:18 ID:GfZke3ED
俺も一応……。
例の日の準備中ですので。しばらくお待ちを。

115 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/07/10(火) 20:54:33 ID:vsXFzBim
この空気の中でこんなことを言うのは非常に辛いのだけど……
自己満足祭りを今年も個人的に開催しようかと思います。
年々スケールダウンしていくので、今年あたり最後だろうなぁ。と思いながら見ていただければ、少しは楽しめるかも。

116 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/07/11(水) 05:05:25 ID:F07Lm+PQ
明日の事でしょうか?
楽しみに待ってます〜

117 :名無しくん、、、好きです。。。 :2007/07/11(水) 21:59:15 ID:8ZXCmZH8
>>すばるさん
いつまでも待ち続けておりますので
お手すきの時には是非続きをお願いしますー。

>>遊星さん
お祭り期待しておりますよー!明日は妹スレに全員集合!!

118 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/07/12(木) 21:01:00 ID:VZvtDdLR
人間の成長とはなんと無情なものだろう。
昔はよかった。なんていいたくは無いけど……。
この場合は、絶対に昔はよかったと自信を持って言える。
なぜなら……

「大河ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
豪邸の中にそんな声が響く。
あまりの大音量に窓がビリビリと震えている。
「またですか……」
ため息をつきながら、重い腰をあげる。
大きな音を立てないように静かに、それでいて急いで歩く。
静かさと速さ、なかなかバランスが難しい。
俺を呼ぶ声のする部屋まで、つま先立ちで跳ねるように歩いていく。
「お呼びですか。ひかるお嬢様」
ドアを開けるとそこには、
「遅い!!」
目を吊り上げた少女が仁王立ちで俺を待っていた。
「呼んだら三秒で来なさいっていつも言ってるでしょ!?」
「……申し訳ありません」
「あと、ノックぐらいしなさいよ!!」
「……申し訳ありません。以後気をつけます」
ストレス……。
「まぁ、いいわ。早速だけど、大河!かぼちゃのプリンを買ってきなさい!!」
「は?」
「食べたくなったの!!昨日テレビでやってたでしょ!?アレが食べたいの!!」
「あの……」
「何よ!?」
「その店までは一時間はかかりますよね?さすがに今から一時間後には、お店は閉店してるかと……」

119 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/07/12(木) 21:01:45 ID:VZvtDdLR
「だったら、もっと早く家出ればいいでしょ?」
「はぁ……?」
「大河は仮にも私の付き人でしょ?それぐらい察して、夕食後には買ってくるとか気を回せないの!?」
「……てめぇ……」
「いいのよ別に。大河は借金が大好きなのねー?」
「分かったよ!!行くよ!!行けば良いんだろ!!」
「行けば良いのよ」
もう静かにとか言っていられない。
ボロボロのスニーカーを装着し、一目散に駅に走る。
電車は完璧に把握している。
目的地に向かう電車まであと五分。
俺の足なら急げば間に合う。
しかし、問題は別のところに。
「あ……」
……電車代足りるか……?
───────────────────────
ひかる……いや、ひかるお嬢様は俺の従妹。
昔はホントに可愛くて素直で、俺のことをお兄ちゃんと慕っていたような女の子。
……でも、あくまでそれは昔の話。
今は見ての通りの暴君っぷりで。
親父の借金を肩代わりしてもらう代わりに、俺は住み込みでひかるお嬢様の付き人をやっている。
……住み込みといっても、家賃は納めてるし、食べ物だって自分持ち。決してラクではない。
まぁ、無利子で借金を立て替えてくれるんだから文句は言えないけどさ。
「……貧乏生活も楽じゃねぇな」
大通りをトボトボ歩きながら呟く。
閉店には間に合った。お目当てのプリンも最後の一個を買えた。
ただ、電車代が少し足りなかったばかりに、一駅分歩くことになってしまった。
「よかったよ、一個しかなくて……」
プリン=電車賃三駅分。いや、もっとか。
急がねばせっかく買ったプリンが温まってしまうと言うに。

120 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/07/12(木) 21:02:31 ID:VZvtDdLR
いや、やっぱり問題はそこじゃねぇ。
「バイトの給料日まであと三日……」
……一応米ならある。
逆に言えば、米しかない……。
「三日白米か……」
キツいなぁ……。
……せめてチャーハンにならないかなぁ。
そんなことを考えながら歩いていくと、いつの間にか家の前。
……感じる。ひかるお嬢様の怒りのオーラを……!!
ドアを開けるのを躊躇ったが……仕方ない。借金、棲家、そして部屋の米を背負って、ドアを開ける。
「……!?」
ドアを開けると、お嬢様が立っていた。
さぞ怒っているかと思いきや、
「た、大河っ……!」
ちょっと嬉しそう……。
そんなにプリンが食べたかったのか……。
驚いたのも束の間。
「お、遅かったじゃない!!」
いつものお嬢……。
「すみません。ちょっと電車が……」
「まさか乗り遅れたなんて言うんじゃないでしょうね?」
「……いえ。申し訳ありません。言い訳は恥と肝に銘じます」
つーか、電車代足りなかったなんて恥ずかしくて言えねぇ……。
「まぁ、いいわ。それより大河!」
「はい。何でしょうお嬢様?」
「勉強見なさい。明日小テストなの」
「え?プリンは……」
「もう九時過ぎてるのよ?今から食べたら太るじゃない!」
……この女め……。

121 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/07/12(木) 21:03:17 ID:VZvtDdLR
「何よ?」
「……いいえ、なにも……」
……胃に穴開きそう……。
「さ、行くわよ。誰かさんのせいで待たされたんだから」
……この溜まりに溜まったストレスよ……。
───────────────────────
「……何よ、自分は分かるー、みたいな顔してさ」
「僕が分からなくてどうするんです……」
「むぅ……」
数学は苦手なお嬢様。
ちょっと優越感。いやぁ、数学っていいですね!
「……」
「ほら、そこ計算ミス」
「……う、うるさい!分かってるわよ!!」
「それはよかった」
「何でよ……」
お嬢様のペンが止まる。
「え?だから、さっき言ったとおり、辺CDを……」
「そうじゃない……」
「は?」
「そんなに頭良いのに、何で就職なんてするのよ……」
「は……?」
「聞いてないよ、就職するなんて……」
「あぁ、進路調査書……か」
机の上の一枚の紙切れに目をやる。
「そんなこと言わなくても察して欲しいのですが」
「一人暮らしするの……?」
「それが理想ですね」
今でも半ば一人暮らしだけど。
「……」
「……?」

122 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/07/12(木) 21:04:02 ID:VZvtDdLR
沈黙。
ガタッ。
そして、突然お嬢様が無言で席を立つ。
何か声をかける暇も無くおもむろに机の上の紙を掴んで……や、破ったっ!?
「な、何をするんですか!?」
「いいの、こんなのいらないんだから!!」
「いや、必要ですから!!」
「うるさいの!大河のものをどうしようと私の勝手でしょ!!」
「だからって……」
「うるさい!うるさーい!!就職なんて、絶対許さないんだから!!」
「え……?」
「大河は大学に行って、私も次の年に同じトコに入って、で、大河と一緒に勉強して、一緒にご飯食べて……
 だから就職なんてダメなの!!絶対ダメなの!!」
「お嬢様……?」
だからってどこにそんな金があるのさ……。
「あの……別に就職するのはここが嫌いだからじゃないですよ」
「え……?」
「早く借金返さないと、旦那様に申し訳が立ちませんからね」
「だったら……だったら、なおさらダメ!!」
「何で?」
「……借金が無くなったら、大河が私のこと忘れちゃう……
 私と大河の繋がりが完全になくなっちゃう……」
んー……弱いなぁ、こういうの。
「大丈夫だよ、ひかる」
見られないようにそっと涙をこぼす彼女の前では、俺はあのときの『お兄ちゃん』に戻る。
「お兄ちゃん……」
「俺はひかるのこと忘れないし、いつだってひかるの傍にいる」
「ホント……?」
「もう少し、ひかるが素直になってくれたらな」
「……意地悪」
「え……」
「なんでもないっ……!」

123 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/07/12(木) 21:04:48 ID:VZvtDdLR
慌てて誤魔化すひかる。
俺はそんなひかるを見て、
「それで、今日はご機嫌斜めだったんだな……」
「……ゴメンなさい……大河お兄ちゃんと離れ離れになるって思ったら……」
打って変わって、しおらしいひかる。
「……ねぇ、大河お兄ちゃん。やっぱり大学行こうよ」
「でもなぁ……」
「お父さん、大河お兄ちゃんに期待してるんだよ?
 だから、一杯勉強してすごく頭よくなってお父さんのお仕事手伝って……それからでも借金返せるよ」
「……うーん……」
「ね?」
いや、条件より何より
……この笑顔に勝てるものか……。
「わかった。大学……行くよ」
……言っちゃった。
「うん。お父さんに伝えとくよ」
嬉しそうなひかる。
しばらくニコニコしていたが
「ふぅ、安心したらお腹すいちゃった。大河、プリン持ってきてよ」
恥ずかしいのか、いつものお嬢様に戻る。
「食べるんスか?」
「うん。大河も半分食べる?」
「いや……自分は……」
「あら、大河に拒否権はないのよ?」
「……いただきます」
「そうそう。素直なのは良いことよ」

お嬢様とひかる。付き人と兄の間を行ったり来たりの二人。
どう考えたって前途多難以外になりそうにもないけど……
まぁ、人が言うほど、この暮らしも悪くはない気がしてきたよ。
───────────────────────

124 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/07/12(木) 21:05:34 ID:VZvtDdLR
ウチの妹はおかしい。
信じられないくらい変な女だ。
どの辺が変かというと……

「あ、お兄様〜♥」
体中の骨が溶けそうなほど甘ったるい声で呼ばれた。
ため息とともに振り返ると、
「お兄様〜♥奈央ね、お兄様に会えなくて、すっごく寂しかったのー♥」
大袈裟なアクション込みで話し始める。
「あぁ、そうなんだ……」
「でも!でも♥こうして学校も終わったことだし、二人でお家に帰ろうねー♥」
「……あぁ、まぁ、結果そうなる」
「ふふっ、お兄様も結構大胆なのね♥」
「そうかな……?」
そうじゃないだろう……。
「気にしないで、お兄様♥お兄様の気持ち、奈央がしっかりと受け止めます♥」
感謝して良いのだろうか、これは。
「そうそう、お兄様ー♥今日は時間があるから、奈央が夕飯を作りますね♥」
「悪いよ」
「いいんですよ♥お兄様に尽くすことが奈央の幸せですから♥」
「そうなんだ……」
その幸せが非常に重いのだが……
「ね、ね♥お兄様♥夕飯は何が食べたいー?」
「いや、何でも……」
「もー、お兄様ったら遠慮深いんだからー♥」
このポジティブ思考が羨ましい……
「お兄様が素敵なのは分かりましたからー、せめて系統を教えてください。和?洋?中?」
「そうだなぁ……」
この場合は……

125 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/07/12(木) 21:06:19 ID:VZvtDdLR
「奈央の一番得意な料理が……」
「お兄様、そんなに奈央の料理を……!
 わかりましたお兄様!この私、愛するお兄様のため、一生懸命作りますわ」
「あぁ、頑張って……」
「あ!申し訳ありません、お兄様!食材の買出しに行ってきますので、お先に帰って待っててください!」
「あ、うん。頑張ってね」
「はい!では!」
名残惜しそうに僕の顔を見ていたが、覚悟を決めたのか勢いよく走り出した奈央。
こう言っちゃ悪いけど……やっと一人になれた。
───────────────────────
本当に、奈央のことはよく分からない。
確かに僕に懐いていたけど、ここまでだったかどうか。
「お兄様?」
不思議そうに僕の顔を覗き込む奈央。
「美味しく……なかったですか?」
「いや、そんなことは……」
「そうですか!沢山作りましたから、どんどん食べてくださいね!」
ドンと目の前に置かれる大盛りのポテトサラダ。
……こんなに食えないって。
それよりも、
「ねぇ、奈央……?」
「何ですの、お兄様?」
「……何かあったの?」
「え……?」
動揺の色が奈央の顔に浮かぶ。
こういう違和感はなかなか外れないものだ。
「いつもと何か違うから」
「……お兄様には敵いませんね」
奈央がぎこちない微笑みを見せた。
「僕でよければ、話聞くけど」
「……聞かないでください」

126 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/07/12(木) 21:07:04 ID:VZvtDdLR
「……?」
「お兄様には言いたくありません……」
「ダメだ」
「……」
「そういう話ほど……僕が聞いといたほうが良い話だと思うよ。だから……奈央?」
「お兄様……」
奈央は覚悟を決めたのか、大きく息を吸い込み
「奈央は……見合いをすることになりました」
「……誰と?」
「許婚と聞きました……ですから、おそらく見合いといっても……」
「……」
「奈央は……お兄様と離れたくありません……」
俯いたままの奈央。
震えた声だけが耳に刺さる。
「奈央は……奈央は……」
「奈央……」
僕に出来ることは何だろう。
慰めることか?送り出すことか?
……違うよ。
もっと大事で大きな一言を、僕は持ち続けてきたんだから。
「奈央……僕は……僕も……」
「え……?」
「ずっと……奈央のこと……好きだから……だから、お見合いなんて止めてくれ」
「お兄様……?」
「ゴメン……僕はあんまり喋るの得意じゃないから」
「……お兄様……」
ガラにもないことを言ってしまった。
奈央が僕を不思議そうに見ている。
熱い頬を隠すため、俯いて奈央の返事を待つ。
「……お兄様」
その返事とは以外にも。

127 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/07/12(木) 21:07:58 ID:VZvtDdLR
「では、お父様に早速連絡しませんとね♥」
「……は?」
「お兄様の気持ちはしぃっかり受け取りました♥これで二人は晴れて両想いですものね?」
「あれ……?お見合いは……?許婚は……?」
まさか……
「嘘?」
「嘘じゃありません。お見合いはする予定はありました。
 でも、奈央はお父様に言ったんです『お兄様以外の人と結ばれるつもりはありません』と」
「……で?」
「お兄様次第ということで、許可を頂きました。もちろんダメでしたらきっぱりと諦めるつもりで」
「……許婚は?」
「うーん、随分昔に決められたものですから。今じゃ状況も違いますし、両家とも強制はしてないようです」
「……」
いいのか、それで……。
「もう聞きたいことは無いですか?」
「……一応」
「では難しい話はここまでにして、これからはずっと一緒ですねー、お兄様ー?」
「……ハメられた……」
「やーん♥お兄様、人聞きが悪いですわー♥奈央は、お兄様の本心を引き出しただけですもの♥」
「……」

奈央には負けっぱなし……。
……でも、試合には勝ったのかな。
───────────────────────

128 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/07/12(木) 22:01:05 ID:VZvtDdLR
そりゃ、この歳になってできた妹だもの。
普通に可愛いし。
異性として意識するなって方が無理だって思うし……。
「お母さーん!!瞳のブラ、知らないー!?」

「ふぁ……」
小さく欠伸をしながら階段を下りる。
理由はどうあれ、珍しく早起きした自分を褒めながら、最後の一段を飛び降りる。
すると、
「きゃっ……!!」
角の向こうから現れた少女が、俺とぶつかりそうになって咄嗟に身を引く。
「お、お兄ちゃん……?」
「あ、悪い。瞳」
「おはよう、お兄ちゃん。今日は早いんだね?」
「……」
胸を見る。
……結構……ある……。
「どしたの?」
俺の顔を覗き込む妹。
「い、いやなんでも……それより急いでるんじゃないのか?」
「あはは、そうでした」
ペロッと舌を出して笑ってみせる妹。
……そりゃ……可愛いよな。
「じゃね、お兄ちゃん」
俺の脇をすり抜け、勢いよく階段を上がっていく妹。
「あぁ」
そして階段の上で振り返り、
「たまには早起きしなくちゃダメだよー?」
「分かってるよ」
適当に返事をして、ダイニングへ。

129 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/07/12(木) 22:01:56 ID:VZvtDdLR
用意された朝食をモソモソと食べていると、
「お兄ちゃん」
ドアから顔だけ出した妹が
「じゃあ、行ってくるね?」
「ああ、朝練頑張れよ」
「うん。お兄ちゃんも、よかったら見に来てね」
「いつかね」
「約束だよ!」
底抜けに眩しい笑顔を見せながら、小さく手を振って家を出て行く妹。
……やっと行ってくれて、ホッとしたやら残念やら。
苦い顔でコーヒーを一口飲むと、
「あ……あのコ、お昼忘れてる」
後ろで義母が呟く。
「あぁ、よかったら届けますよ」
「ホント?あのコも喜ぶわ」
「……喜ぶ?」
「えっと……コッチの話。じゃあ、お願いね。お昼はチア部の部室にいるらしいから」
「わかりました」
俺の昼と、一回り小さい妹のお昼。
……どうやら俺もかなりの本気ぶりらしい。
───────────────────────
「さてと……行こうかね」
昼休みを告げるチャイムを聞いて立ち上がった。
チア部の部室とは聞いたが、そもそも部室の場所を知らない……。
まぁ、運動部の部室は一つに固まっていると聞いたから、大体の場所は分かる。
片手に弁当を二つ持って、歩き出した。
運動部部室群は屋外にあって、この熱気の中を歩いていくのは少し嫌だったが……仕方ない。
汗を流しながら歩いていくと、目的地にたどり着いた。
俺には何の用も無い場所。場違いも良いところだ。
「チア部チア部……っと……」
と呟いて気付いたが、部が部だけに怪しいセリフ……。

130 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/07/12(木) 22:04:05 ID:VZvtDdLR
しかもそういう発言ほど、聞き流してくれないもののようで。
「こら!!何してるんだ、そこで!!」
思わず体が震える。
「……いや、別に俺は……」
言い訳しながら振り向くと、
「や。お兄ちゃん」
嬉しそうにこっちに歩いてくる瞳。
「何だ、瞳か……」
全身の力が抜ける。
「もー!声で分かってよね、声でー?」
「まぁ、それもそうなんだけど。ゴメン」
「あはは、素直でよろしい。それより何かご用?あ、何か部活始めるとか?」
「まさか」
即座に否定。
……瞳の前では言えないが、この炎天下。出来れば運動はしたくはない。
瞳は残念そうに唸った後、しばらく考えていたが、
少し遠慮がちに
「じゃあ……練習、見に来てくれた……とか?」
「近いな」
「……近い?」
何だか嬉しそうな顔。
……面倒になってきたので、ネタ晴らし。
「弁当、忘れただろ?」
「え……あ、そういえば……入れてないかも……」
「ほら、これ。お義母さんから預かってきた」
「わー!お兄ちゃん、ありがとー!!」
笑顔が眩しすぎる……。
「んじゃ、俺は……」
「あ……お兄ちゃん?」

131 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/07/12(木) 22:07:21 ID:VZvtDdLR
「何か?」
「もうお昼ごはん食べちゃった?」
「まだ昼休み始まったばっかりだぞ?」
「あ、そうなんだ!」
笑顔がさらに眩しく……。
「よかったら、練習見ていって欲しいなーなんて……思うんだけど」
「練習?今から?」
「うん、大会が近いから。お昼半分だけ練習してるんだ」
「ほー、大変なんだな。しかし、俺で良いの?」
「うん。大歓迎だよ。人の目があったほうがやる気になれるし……それに……」
「それに?」
「ううん、なんでもない!!き、着替えてくるね!!」
俺からランチボックスを受け取ると、というか奪い取ると、一目散に部室へ走っていく。
答えを聞かれぬまま、残された俺。
「……なんだか、見ていく流れ……?」
一筋の汗が流れる。
……望むところといいたいが……。
───────────────────────
「あ、お兄ちゃん!」
更衣室から現れた妹。
ブルーのワンピース状のチア服を身にまとっている。
細く締まった二の腕や、ヒラヒラのスカートから覗く太腿が眩しい。
それより目が行ってしまうのは……無防備な二つの膨らみで……。
「お……お兄ちゃん……目が……えっちだよ……」
顔を赤らめながら、胸を隠すように腕を組む妹。
「は!?」
自覚なし。その分、性質が悪し。
「え、えへへー……し、仕方ないよね?お兄ちゃんも、男の人だしー……」
本人の必死のフォローが泣ける……。
「……ゴメン」
「え、あ……いいの。お兄ちゃんにやっと見てもらえて嬉しいよ」
頬を赤らめ、微笑を見せる瞳。

132 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/07/12(木) 22:08:31 ID:VZvtDdLR
……あぁ、嫌な予感。
「似合う……かな?」
やっぱり……。
「うーん……」
そりゃ似合う。正直可愛いと思う。
だが。さっきの件もある……正直に言ったらさすがにヤバいのでは……。
「……答えにくいよね……。変なこと聞いてゴメンね?」
応えるより先に、後ろ向きな答えで納得してしまった妹。
「え、いやっ!そんなつもりじゃ!」
必死で取り繕うも、もはや手遅れ。
「ううん。いいのいいの。さ、練習練習!!」
誤魔化すように、仲間の待つ炎天下のグラウンドへ駆けて行く瞳。
……後悔。
───────────────────────
笛の音とともに、舞うチア部部員一同。
足が上がるたびに、その……素敵なものが見えるのだけど。
「チラリズム的にはイマイチ……」
……なにも口に出すこたぁねぇだろ、俺。
まぁ、見えても良い物なんだけどね、アレは。
「だからこそ……」
黙ってくれ。
それにしても、やっぱり瞳は可愛い。
……言い忘れた感があるが、恋愛感情は無い。無いったら無い。
「炎天下でついにおかしくなったか、俺も」
思考の乱れを感じ、思わず呟く。
瞳が頑張っている以上、俺も日陰で観察というワケには行かない。
だが、応援部を応援する気にもなれず、ただ呆然と立ち尽くす怪しい男な俺。
フィナーレに向けて加熱していくチア部一同と、茹っていく俺の脳。
そんな中で、俺はずっと妹に釘付けになっていることに気付いた。
俺の目を奪って放さないのは何だ?
一切の曇りも無い笑顔?
日焼けとは無縁の白い肌?

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0ch BBS 2004-10-30