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[第七弾]妹に言われたいセリフ

601 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/11/20(木) 23:17:07 ID:rdg6cRwc
人が……

602 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/12/09(火) 09:14:10 ID:JbUcbkkh
いない…

603 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/09(火) 21:08:40 ID:XH5KY8zg
いるけどね。作品無いけど。

604 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/24(水) 21:50:36 ID:5IluGuZ5
この時期は、俺みたいな人間には生き辛い。
誰かの誕生会なんて都合のいい言い訳に過ぎない。
結局、人は自分の愚かさに自覚していて、その愚かさを誤魔化すために口実を作り、騒ぐ。
それはそれでも構わないが……何故、そのメカニズムに乗らない人間を卑下するのか、それだけは不満だ。

「……今年の言い訳は決まりましたか?」
隣の遥が、ため息混じりに尋ねた。
「……大体……」
遥の質問に対し、言葉交じりにため息で返す。
「この時期は最低だな……」
まだこの俺に追い討ちをかけようと手薬煉引くテレビを、リモコンで消し、またため息をつく。
「みんな、楽しいことが大好きだからね」
「楽しめない俺みたいなヤツもいるけど……」
クリスマスの日って、みんな何してんだろうな。
「お兄ちゃんだってその気になれば……」
「その気にはならないんだ。不思議なことに」
「じゃあ、しょうがないよ」
「しょうがないな」
でも、憎い気持ちは少しある。不思議なことに。
自覚できるほどの苦い顔。
「何かクリスマスプレゼント買ってあげようか?」
「いや、そういうのは毎年断わっているだろ」
毎年大野家にはクリスマス禁止令が……というか、遥が空気呼んでくれるだけだが。
「うん。でも、少しでも楽しみがあったほうがいいよ……」
意味深な遥。
「どういうことだ?」
「どういうことって……」
何だか呆れたご様子。
俺、何か変な事言っただろうか。
……まぁ、いいか。

605 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/24(水) 21:51:09 ID:5IluGuZ5
「とにかくだ。今年もクリスマスとは縁の無い年末を送りたい……」
この単語を自分で言うのも嫌だな……。
ちょっと口の奥が苦くなる。
「だと良いけどね……」
何だかさっきから引っ掛かる遥。
「どうした、さっきから……」
もしかしてご機嫌斜めでいらっしゃる?
恐る恐る尋ねてみた。
「いや、だって……」
躊躇いがちの遥。
「?」
意味が分からない俺。
「何何何?ケンカはダメだよ?」
背後からの声。
……。
……?
「あきらっ!?」
「やっほー。久しぶりだね、お兄ちゃん」
冬でも元気なボク女……。
「……勝手に入ってくるなよな」
「勝手じゃないよ。ちゃんとお邪魔しますって言ったよ」
別に突っ込むほどのテンションは無い。
腹を立たせながらも流す。
「何か用か」
「クリスマスの予約を取りに来たの!」
今一番聞きたくない言葉をさらりと言いやがった……
「遥……頼む」
「え……うん……えっとね、あきらさん……?お兄ちゃんは、クリs……が大嫌いで……」
「うそだー。そんな人、聞いたこと無いよー」
もはや俺の存在があきらの常識外……ヘコむなぁ……。

606 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/24(水) 21:51:43 ID:5IluGuZ5
「ね?ウソだよねっ?お兄ちゃん?」
リアルで信じていないらしい。
いつもより何だかテンション高めのあきらが後ろから、俺の首に巻きついてくる。
「あっ……お、お兄ちゃんっ!!怒っちゃダメだからねっ!?」
「怒りはしないけど……」
はぁ……もう今年終わらねぇかなぁ……。
「だから、お兄ちゃん。クリスマス、ボクと一緒に遊ぼう!!」
「……」
「お仕事があるから、夜からになっちゃうけど……でも、いいよね!クリスマスは夜でも!!」
……帰って欲しいなぁ。
「じゃあ……私は……朝でもいいよ……」
またも背後で声。
「真雪か……」
「うん……。寒いね」
「ああ……寒いな」
……中身の無い会話。
「プレゼント、何がいい……?」
「いらない」
「じゃあ……自分で考える」
もうここまで来ると、日本語が通じていない可能性があるな……。
「少し遅れてしまいましたね。こんにちは、兄様」
……もういい。もう誰でもいい……。
「宮原……」
……ここ俺の家なんだけどなぁ。
「この様子ですと……クリスマスの予定はあまり空いて無いですか」
またその話かよ……。
クリスマスになると大野賢太郎の需要が増大すると言う話は聞いたことが無いが……。
まぁ、ともかく来る人来る人に嫌いな言葉を浴びせられ、どんどん弱っていく俺の体。
頼みの遥も、もはやどこにいるのかすら分からない……。
周りを見渡せば、何だか記憶に無い連中もいるし……一体俺は何をすればいいんだろう……。

607 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/24(水) 21:52:18 ID:5IluGuZ5
流れに逆らわぬように、ジッとソファーで耐えていると、
「じゃあ、平等にみんなでクリスマスパーティーを開くということで」
と、誰かが言った。
……もう決定の雰囲気。
「というわけで、お兄様。楽しみにしててくださいね。詳しくはまた追って連絡しますので」
宮原のこの笑顔を正直殴ってやりたいと思った。殴らないけど。
ぞろぞろと捌けていく人。
残る遥と俺。
「どうしよう……」
「どうしようもないよ……」
「……はぁ……」
うん、逃げよう。
───────────────────────
脱出は簡単だった。
俺の家を会場にしたのは方法としてはいいが、遥を完全に味方に付けられなかったのはかなりのミスだな。
目下の問題は、ほとぼりが冷めるまで俺はどこで何をすればいいか。だ。
友人のほとんどが今日をお楽しみだろうから、そんな中に入っていく勇気は無いし、
そもそもどこまで根回しが進んでいるか……。
買い物しようにも絶対『口に出すのも憚られる二人組』が沢山いるだろうし……。
とすると、もう行ける場所はそうないな……。
「……何もかも今日と言う日が悪い」
呟いた言葉。
恨み節は、自爆の合図。
『お前が負け犬なだけじゃないか』と北風が囁く。
「そうか、これが遥の罠だったんだな……」
遥にまで被害妄想が出ている。
これは本格的にヤバいかもしれないな……。
「どうしようかなぁ……」

608 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/24(水) 21:52:51 ID:5IluGuZ5
帰る?
帰らない?
まぁ、少なくとも手ぶらでは帰りづらい空気ではある。
かといってこれから何処に行けば良い?明日の朝までは安心は出来ないぞ……。
もはや八方塞の俺。
小さな公園のベンチだけが、かろうじて俺に扉を開いている気がした。
「はぁ……」
すっかりため息も白い季節だ。
こんな真っ黒な体から出てきたのにな。
「そうか……これが孤独か」
そういえば、いろんな負の感情を抱いてきたつもりだが、
孤独、というのは自分には縁がなかった気がするな。
そう考えると、遥の存在は偉大だな。
……五分前の自分の言葉を忘れた発言に、少し情けなくなる。
「悪かったな、遥よ」
とりあえず曇り空に向かって謝ってみた。
青空に劣等感を掻きたてられる俺だが、この嫌なことが起こりそうな曇り空も……。
「サンタさんはこんな寒い日に、何してるのかな?」
そんな声を顎で聞いた。
頭を下げ、前方に視線を向ける。
「遥っ……!?」
ヒマから解消されたと言う感情が少しと、見つかった!という感情がかなり……。
即座にダッシュの姿勢。
「お、お兄ちゃん!!大丈夫だよ、連れ戻しに来たわけじゃないから!!」
小動物の相手をするように、まずは優しい言葉。
「本当か……?」
「うん。まぁ……一応、探してくる、ってことになってるけど」
「いいのか?」
「ちょっと悪いとは思うけど……」

609 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/24(水) 21:53:23 ID:5IluGuZ5
困り顔の遥。
遥も被害者であることに変わりは無い気もするなぁ。
俺はとりあえず逃走体制を解除、もう一度ベンチに座る。
「隣、お邪魔するね」
「どうぞ」
クリスマスの昼間に兄妹二人。
誰もいない公園のベンチで。
傍目カップルですかね、俺たち。
「……寒くないか?」
「私は平気。お兄ちゃんは?」
「俺も別に」
……ホントは結構寒い。
多分遥もそうじゃないかと思う。
「……お兄ちゃんは覚えてるかな」
そんな遥が空を見上げながら、ゆっくりと話し出す。
「何を?」
「小さいとき、お兄ちゃんが私にくれたクリスマスプレゼント」
……あっさり言うなぁ。
「なんかあげたか……?」
「ふふ、覚えてない?」
「昔の俺は死んだと思ってくれたほうが良いぐらいだ」
というか、俺にも小学生の時期があったんだろうか。今となっては謎である。
「お兄ちゃんがくれたのはね……温もり」
……。
「何言ってんだよ、遥……」
ネガティブ兄シリーズとは思えないハートフルな単語が……。
この体のど真ん中からこみ上げる気持ち悪さは何だ……。
「お、お兄ちゃんが言ったんだからね!?」
恥ずかしそうに反論する遥。
「俺が……?」
衝撃の事実……。

610 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/24(水) 21:53:55 ID:5IluGuZ5
やっぱり昔の俺は死ぬべき存在だったんだ。
「うん……『僕にプレゼントできるのは温もりだけだけど……』って」
気持ち悪いことするなぁ、我ながら……。
「そんなこと言ったかな……」
「うん。クリスマスにお父さんもお母さんも帰れなくて……でも、お兄ちゃんは私の傍に居てくれた」
穏やかな微笑の遥……。
その微笑を向けるのは、俺ではなく、いつの間にかいなくなってしまった俺。
……あまり良い気分ではない。
「ちょっと不機嫌になっちゃった?」
全てお見通しとでも言いたげな、意地悪な顔の遥。
「そりゃまぁ」
そのことを含めて、バツの悪い俺。
「でもね、お兄ちゃんは……今でも私に温もりをくれてるよ?」
「バカな。そんなもの、何処にあるって言うんだ……」
「わかんないけど……きっといろんな所にあるよ。お膝の上とか、腕の中とか、胸の真ん中に」
「……」
ヤバい、この雰囲気に少し飲まれていた……。
「ずっと、一緒にいよう?」
「……」
この疑問符を恨む。
俺の答えを待っている遥の瞳。
あぁ、昔の俺はこういうところに生きていたなぁ。
「今の俺に温もりなど無い……と思いたい……。
 だが、まぁ……遥が俺の中に何かを見つけたなら……好きなだけ持って行けばいい」
昔の俺の心が今の俺の言葉を使って。
……まぁ、遥が俺にとって大事な妹なのは、そんなに変わって無いような。
「うん」
真正面を見つめて、小さく頷く遥。
「……変なこと言わせやがって」
俺も遥の眺める方を見ながら、足を組みなおす。

611 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/24(水) 21:54:39 ID:5IluGuZ5
「さ、兄妹交流も済んだことだし!そろそろ引導を渡してもらおうかな」
「……」
まぁ、予想通りではある。
いつまでも逃げ切れるとは……思って無いけどさ。
「そんな嫌な顔しないの!私もついててあげるから、ね?」
「遥の方が姉さんみたいだな……」
「あはは……久しぶりに言われたよー」
……言われてるのか。
「……悪かったな、世話焼かせて……」
「お、お兄ちゃん!?べ、別にそういう意味じゃ……」
「分かってるよ……」
本当はもっと謝り倒してやりたいが……少し空気を読んだ。
遥は少し不満そうな顔をしながらも、
「さぁ、帰ろう?」
立ち上がり振り帰る。
俺も、そのあとに続いてゆっくりと立ち上がって
「遥……少し寄り道を許可してくれよ」
「寄り道?いいけど、何処行くの?」
「姉さんに何かプレゼントでも」
「もう……」
遥は小さく不満の吐息を漏らしながらも
「じゃあ、私からも何かプレゼントしてあげるよ、おとーとクン」
意地悪に微笑んで、遥が俺の手を取り走り出す。
嫌な流れに飲まれてしまった俺とその流れを操る遥。
……やっぱり嫌いだな、クリスマス。
───────────────────────

612 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/12/26(金) 01:45:00 ID:6wsGE8Ld
GJ!

613 :No.2 :2008/12/27(土) 01:07:26 ID:fjQzd3Cl
乙ぬるぽ!

614 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/12/28(日) 23:57:43 ID:qO1aUJ7A
あげええ

615 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/12/29(月) 00:11:38 ID:YHEr3WDP
de? dounaruno

616 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/12/29(月) 07:12:27 ID:6vQVlyce
ド変態

617 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/12/29(月) 21:28:09 ID:Rlvhvy97
小説まだ〜?

618 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/12/29(月) 21:48:55 ID:arV4kgA+
( ^  ^ ) オニイチャン!!

619 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/12/29(月) 23:53:54 ID:zVHEkU++
Zガンダムのロザミィとか年上の妹ってありなのか?

620 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/30(火) 22:38:08 ID:qG6cXzTa
2メートルはあるだろう塀の上。
見たこと無いような派手、それでいて奇抜な服を着用。身長が1.5mほどの少女が、俺を睨んでいる。
「ちょっとそこのアナタ!!」
「……」
せめて遥の居るときに話をして欲しいもんだ……。
間違いなく会話のベクトルは俺に向いているが、あえてのスルー。
「無視するなぁー!!」
そう叫びながら、俺のすぐ目の前に飛び降りてくる女。
「いったぁーっ……!!」
やっぱ痛かったか……。
「あの……何か?」
「い……1分待ちなさい……」
何故命令口調……ムカつく……。
仕方ないから待つけど……。
「58……59……1分。で、何か用ですか」
「無視することないんじゃない!?」
「僕じゃないと思ったので」
「しっかり目があったでしょ!?」
「気のせいじゃないですか?」
「はぁ……そんなんでよくこの社会で生きてるわね……」
何故だ……何故見ず知らずの他人にここまで言われねばならん……。
「……絶望した……」
「そんなことで落ち込まないでよ、鬱陶しい」
鬱陶しい……。

621 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/30(火) 22:38:41 ID:qG6cXzTa
「……俺を詰るだけの用なら帰りますが……」
「そんなワケないでしょ。アナタ、名前は?」
「……矢車……」
「嘘仰い」
「大野賢太郎です……」
「やっぱり……」
「やっぱりって……?」
「大野賢太郎君……」
真顔で俺を見つめる……何……?
「……?」
「やっと見つけた!私と交際しなさい!!」
「交際……って……?」
「俗に言う、付き合うってことよ」
……何を言うかと思えば……。
こんな展開にはもううんざりしている。
あとはどう断わるかだが……
「……」
無言で逃げる。
「ちょ、ちょっと!!待ちなさい!!」
待つわけ無いだろう。
とにかく、全力ダッシュ。
自分の知る限りの細道や、分かれ道を出来るだけ通過し、いつもの倍以上の時間をかけて自宅まで。
……俺は、悪くないんだよ、うん。
───────────────────────

622 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/30(火) 22:39:13 ID:qG6cXzTa
「遅かったわね」
リビングのドアの向こうには、悪夢が待っていた。
「お兄ちゃん、お帰りなさい」
女にお茶を出しながらなんとも能天気な遥。
って、そうではなく……
「な、何故だ……っ!?」
「撒いたつもりかもしれないけど、家ぐらい知ってるわよ。フィアンセなんだから」
……。
「遥!?何か今聞こえなかったか!?」
「え……?うん……」
どうも聞き間違いではないらしい。
しかし、遥。何故お前はそんなに普通なんだ……。
まぁ、いい。そんなの今は些細なことだ。
「どういうことだ、婚約者って!?」
「婚約者は婚約者よ。知らないの?」
「誰と、誰が!?」
「私とアナタに決まってるでしょ?」
「人違いだろ」
「じゃあ、どうしてこの家に来たって言うのよ」
「……でも、全然記憶に無いぞ」
そう。それが一番大事なんだよ。
何で気付かなかったんだ、俺は。
「フィアンセの顔を忘れたって言うの!?」
「言う。お前なんか知らん。女と婚約した覚えもない」
やさぐれモード発動。
「な、何言ってるのよ!?したでしょ!?」
「知らんといっている。いつだ、いつ婚約したというんだ!?大体お前誰だ!?」
「そ、そんなの忘れる方がどうかしてるわよ!!」
「どうかしてるのは今に始まったことじゃない。四の五の言わずに教えなさい」
普段もココまで言えれば良いんだが……いや、ちょっと困るかな。

623 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/30(火) 22:39:55 ID:qG6cXzTa
「ね、ねぇ……お兄ちゃん……?」
今まで黙っていた遥が不意に口を開く。
「黒河さん……忘れちゃったの……?」
「はっ!?」
遥が裏切った!?
「ふぅ……やっと薬が効いてきた……」
「何か言ったか!?」
「いえ、何も」
確かに言ったが、今の優先度はそっちじゃない。
「遥、大丈夫か!?この女になんか脅されてるのか!?」
「え?えぇ……っと……別に何も無いけど……お兄ちゃんこそどうしたの?あんなに仲良かったのに……」
悲しそうな顔の遥……
なんか、妙な思い出を捏造されてる気がする……。
「……」
チラッと女を見ると、したり顔がムカつくこと……。
しかし、こいつはともかく……どうも遥が嘘をついてるって感じじゃないんだよなぁ。
「お兄ちゃん……ホントに大丈夫なの?」
「よく分からんが……とりあえず遥。下がってもらって良いぞ」
「う、うん……あの……お兄ちゃん?黒河さんにひどい事しちゃダメだよ……?」
「覚えとく」
遥が部屋から出て行くのを見届ける。
さて……どうしたものか……。
「うむぅ……」
「思い出してもらえたかしら?」
「いや、全然……出合ったのって、そんなに前だったか?」
若干信じ気味の発言……。うーん、なんか急に俺が忘れてるだけのような気がしてきた。
「……いつだったかしらね」
「俺が女嫌いになる前なんだよな」
「そうね」
「じゃあ、小学生くらいか」

624 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/30(火) 22:41:06 ID:qG6cXzTa
「多分ね」
「それなら、あきらに聞こう。アイツなら知ってるかもしれん」
「そ、そんな私たちのことに巻き込んだら、彼に悪いじゃない」
……。
「ついに尻尾出しやがったな」
「え……?何を?」
「高羽あきらは女だ。彼じゃない」
「……」
「さて……いろいろ話してもらおうか。とりあえずは……俺の妹に何をしたのかを。
 言っておくが、俺の足は女だって容赦なく蹴り飛ばすからな」
若干脅し気味だが、この際関係ない。
女はしばらく俯いていたが、急にコチラを睨んで
「アンタが……アンタが悪いんじゃない!!」
「は……」
逆ギレかよ……これだから……。
「順を追って説明しろ。俺が何をした」
「言っても信じないわよ……」
「信じるつもりもないが、一応言っておけ」
「……変な女だと思わないでね」
「もう思っているし、俺のまわりは変な女だらけだ」
俺の一言に意を決したとは思えないが、ゆっくりと口を開く女。
「私……魔女なの」
……。
…………。
…………やべぇ、コイツ本物だっ……!
「だ、だから言いたくなかったのに……!」
「それを信じろというほうがどうかしている……せめて証拠を見せろ証拠を」
「それは……無理」
……騙す気ゼロかよ。

625 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/30(火) 22:41:40 ID:qG6cXzTa
「使えないの……今は」
「何故?」
「恋しちゃったから……」
「ふざけてんのか?」
耳を疑うセリフに、思わず口が乱暴になる。
俺は悪くないだろ……!?
「ふざけてないわよ!!だって、しょうがないじゃない……恋しちゃったのも、魔法が使えないのも……」
「で、何だ。何で婚約者偽って俺のとこに来た」
「……魔女に戻るためには……好きな人と添い遂げる必要があるの」
「だから、何で俺なんだよ。その好きな奴のトコに行けよ」
「……だから!!アンタが好きになったって言ってるのよ!!女の子にココまで言わせないでよ!!」
不意打ち……。
苦いし気持ち悪い……吐きそうだ、俺……。
「……別に良いじゃないか……魔法なくても……生きていけるぞ……」
頭をガックリ落としながら、声を絞り出す。
「そんなワケには行かないのよ!!こうしてる間にもアイツらが……っ!!」
「アイツら?」
「アンタは気にしなくても良いのよ。さぁ、早く!私を愛しなさい!!」
もう全く会話の道筋が分からねぇ……。
「急にそんなこと言われても困るからなぁ……少し考えさせてくれよ……」
「だから!そんな悠長なこと言ってる場合じゃないんだってば!!」
「何をそんなに急いでるんだよ……ん……?」
そこまで言いかけて止める。
女が緊迫した表情で窓の外を眺めていた。
「どうした……?」
「ほら、来ちゃったじゃない!!」
怒鳴るように叫んで玄関から外に出て行く女。
あぁ、お仲間の登場ですか……。
しかし、これはチャンスだ。
玄関に鍵をかけてやろうと、肩を落として向かうと……

626 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/30(火) 22:42:23 ID:qG6cXzTa
「とうとう見つけたわっ、覚悟なさい」
さっきの女と、白い変な服の女と黒い変な服の女の二人組みが向かい合っている。
何だか緊迫した雰囲気。
「……えっと、これは何……?」
「出て来ちゃダメよ、賢太郎!」
手を大きく広げて、俺を庇う姿勢の女。
「は……?」
「こいつらは、アナタたち人間の魂を奪いに来たの!!」
「……お前は……?」
「私はアイツらと戦うために……きゃっ!!」
少し先の地面が爆発した。
「そんな話を聞く必要は無いのよ、人間さん」
黒娘が小馬鹿にしたような口調で語り始めた。
「そうそう。はやく魂欲しいなぁー!」
と、白娘。もうこいつについては語りたくない……。
設定についていけない俺。
そんな俺の背後から、
「え、え!?何、何なの、お兄ちゃん!?」
遥の登場。
もうどうしよう、この場……。
「遥、出てこないほうが良いらしいぞ」
「え……何で……?」
何でと言われても、俺もよく分からないしなぁ。
「賢太郎!のんきに話してる場合じゃないでしょ!?」
そんな場合じゃないのか……。
そんな場合が掴めない俺と遥は、どうしようもなくて、棒立ち。
「魔法力が無くなったアンタなんてもう敵じゃないの」
「そうそう。早く死んじゃいなよ!」
身の丈ほどもある杖を構える二人組。
あぁ、そういう状況……。

627 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/30(火) 22:42:56 ID:qG6cXzTa
「賢太郎……ゴメンね、巻き込んじゃって……」
「おいおいおいおい!!やめてくれよ!?そんなこと言われたら一生悔やむだろ、俺!?」
「でも……」
しかし、俺もどうせなら一矢報いてから死にたいなぁ……。
「「消えな!」」
杖の先から放たれた禍々しい光が迫る。
考える間もない。女を突き飛ばし、その光を体に受ける。
「賢太郎っ!!」
「お兄ちゃんっ!?」
全然痛くない……死んだのか、俺。
と、思ったのは一瞬。
「あれ……?」
生きてる。
っていうか……何にも感じなかったぞ。
「え?えっ?」
周りを見回すも、敵味方ともにポカーンとしている。
……俺もそのリアクションに乗ってみる。
「そ、そんな……魔光力が効かないなんて……」
「うそうそ!?人間なんかに!?」
我に返った敵さんが焦ってらっしゃる……。
周りの人が騒いでいるのに、当事者がよく分からないんですけど……。
「遥……?」
もう何したら良いのか分からなくて、遥のほうを振り返る。
「お兄ちゃん……?」
瞳に涙を浮かべた遥が、キョトンと俺の目を覗き込んだ。
「……驚いた。まさか、賢太郎が魔封心の持ち主なんて……」
魔封心って……その設定、何だよ……?
「魔封心!?」
「魔封心!?」
魔封心……?

628 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/30(火) 22:43:32 ID:qG6cXzTa
敵さんも驚いている……そんなに凄いのか、俺……?
「魔封心って……何?」
女に聞いてみる。
「要するにあらゆる魔法の干渉を受けない体質というか、性格みたいなものね……」
「性格……?」
「まぁ……魔法は所謂催眠術みたいなものなの。その催眠術自体を疑っちゃうから、かかりにくいのよ」
「つまり、お兄ちゃんがネガティブだから、魔法が効かないって事なのかな……」
「まさかでも、本人の周囲にまで影響が及んでるなんて……凄いわね、賢太郎!」
褒められたことがイマイチ腑に落ちないが……俺は今、相手に対して絶対的な高みにいるということだ。
「ま、魔封心なんて無いに決まってるじゃない!!」
「そうそう。さっきは何かの偶然よ!!」
もう一度、さっきの光が迫る。
そしてもう一度直撃したが、やっぱ何ともない。
二度目なんてどうしたら良いのか……。
「うーん……」
ここまできて何にもないと恥ずかしいな……。
「ど、どうしよう……」
「うそうそ……やっぱりホントに」
「慌てちゃダメよ!!かくなる上は……!!」
「そうそう。最後の手段!!」
最後の手段……?
「「喰らえ!!」」
俺の右側、遥に向かって放たれる光弾。
そのなんとも全く予想通りの攻撃を高めの蹴りで消す。
当てた。という視覚と当たってない。という触覚が齟齬を生んで、非常に気持ちが悪い。
その上、見事な空振りで少し体制を崩したまま足を付く。バツが悪い……。
「無事か、遥」
「うん……ありがとう」
遥が無事で何より。

629 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/30(火) 23:03:37 ID:qG6cXzTa
グッと頭を下げて、
「……こんなことだろうと思ったよ……」
「そんな……」
「うそうそ?ヤバいんじゃない?」
焦る表情に柄にも無く少し強気になる。
「……遥に矛先向けやがったな……!?」
「そ、そんなつもり無かったわよっ!?」
「そうそう。私たちは……」
弁解を聞くつもりは残念ながら無い。
身を縮め、バネを使って距離を詰める。
「……お前らはいいよなぁ……そうやって、人間を見下して……なぁ?」
「み、見下すなんてそんな、ねぇ?」
「俺の力だけでも……相当痛いからな」
少し右足を引く。
さて、どちらから蹴り飛ばしてくれようか……。
「「ひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」」
───────────────────────
「……迷惑かけたわね、賢太郎」
……例の如く、記憶は無いが。
「一応、お前には世話になった。もっとゆっくりしてけばいいのに」
「人間界に長居するわけには行かないわ……私は、魔女なんだから」
「ご苦労さんだな」
「ええ……まぁね……」
何だか暗い。
「そういえば……」
「何?」
「名前を聞いていなかった。黒河は本名なのか?」
「ええ、黒河夜影。まだ名乗ってなかったわね」
……黒河夜影……ダークな名前だ。
「……そういえば……」
「まだ何か?」
「魔法はどうした?」

630 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/30(火) 23:04:14 ID:qG6cXzTa
「……それは……あの……」
「ん?」
「あなたの魔封心の影響で……一時的に……で、でもっ、あなたのこと好きじゃなくなったわけじゃなくて……」
そんなことかい……。
「もう何でもいいや。そもそもこの設定に間違いがあったんだな」
「設定って何よ……」
「こっちの話だ」
まさか……ファンタジーに片足突っ込むとは思わなかったからなぁ。
「じゃあ、これでお別れね」
「ああ」
「また、何かあったら呼んで頂戴」
「また何も無いといいけどな」
本心だ。
「そう……そうよね……」
そう呟いて、ゆっくりと振り返る黒河。
その背中には黒い翼が。
……驚いてもいい場合なのかな、この状況は。
戸惑う俺に、黒河は肩越しに俺を見て
「じゃあね、兄」
「……」
兄って言った……?
「妹なら、また会いに来てもいいでしょう?」
「……」
「いけないかしら?」
「こういう場合……好きにしろ。ということにしているが」
「ふふふ、ありがとう。じゃあ、また会いましょう、兄?」
黒河の微笑がフッと消えた。
……あまりにも一瞬だったな。
「まぁ、一件落着ってことに……」
夕暮れの街、胃を押さえながら歩く。
……今日の記憶を消してもらえばよかったなぁ。
───────────────────────

631 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/12/31(水) 03:19:29 ID:g/kM23L7
GJ!今回はいつも以上に、
俺の好みのツボにジャストフィットしておもしろかったっす!

632 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/31(水) 21:55:23 ID:qLZHbJ0H
まぁ、別にどうということもない一日。
俺は別に急いでいるわけでもなく廊下を歩いている。
すると、
「やぁ」
……見慣れぬ声に振り返ると、やっぱり知らない女が立っていた。
「学校で会うのは初めてだな」
「……?」
あまりの出来事にもはや疑問符しか出てこない俺。
「今日も……ん?どうかしたかい?」
あまりに何も言わない俺に、話を続けようとした女が尋ねてくる。
「いや……誰……ですか……?」
勇気を出して聞いてみた。
「ん?あぁ……そういうことか」
どういうことだ!
心の中で突っ込みを入れながら相手の出方を伺っていると、
「まぁ、近いうちに分かるさ」
不敵な笑みを浮かべながら、女がそう呟いた。
「積もる話は、その時にしようじゃないか」
「はぁ……」
なんともリアクションが取りづらい……。
「じゃ、また今度」
満足したのか小さく手を振って、去っていく女。
どうしようもなく、ただそれを眺めている俺。
……新たな面倒は、もう避けられそうに無い……。
───────────────────────
「……というようなことがあってだな……」
帰り道、昼間の一件を遥に語る俺。
遥は一瞬だけ真面目な顔を見せてから、
「その女の人、誰なの?」
「それが……全然心当たりが無い」

633 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/31(水) 21:56:00 ID:qLZHbJ0H
「どんな人だった?」
「……あんまり見てない……」
「それじゃ、わかんないよ……」
呆れた表情の遥。
「だろうな」
当然だと頷く俺。
「まぁ、二度と会わなきゃ問題は無いわけだ。だから、俺は先に帰るぞ」
「あ、うん。私は買い物してから帰るよ」
「おう。後でな」
分かれ道で遥と別れる。
しばらく早歩きで自宅へと向かっていたが……
「……暗いな……」
俺の不安心が活動を開始した。
……そうだよな、この時期この時間なら真っ暗だよな……。
……遥は一回危ない目にあってるわけだし……いいのか、一人で行かせて……。
……でも、あの女には会いたくない……。
……どうしたものか……。




「あれ、お兄ちゃん!?帰ったんじゃないの!?」
「……いや……やっぱり夜道は危ないなと……」
「じゃあ……私のために……?」
「まぁ、そういうことだ……」
スーパーで何とか遥に合流に成功。
前回の発言を覆すのは、何かと言い訳がちになってしまうな……。
「ありがとう、お兄ちゃん」
何だかご機嫌な遥。
俺はカートを押して歩き出した遥のあとをゆっくり付いていく。

634 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/31(水) 21:56:45 ID:qLZHbJ0H
……まぁ、買い物の付き合いなんて退屈なものだ。
何が家にあって、何が安くて、何ができるか。
それら全てを理解してなければ、夕飯のメニューのアドバイスなど出来ない。
結局、付いてきたものの何にもしてないわけだ、俺は。
若干退屈になってきた時、
「やっぱり来たな」
……マジかよ……。
出来るだけゆっくりと振り返る。
視線の先には、なんだか白っぽい服を着ているさっきの女が
「そんなに嫌そうな顔をするな、僕だよ」
……だから嫌なんですけど……。
「……」
今度はじっくり顔を見るが……やっぱり分からない。
「お兄ちゃん?」
異変に気が付いたのか、遥がこちらに参戦してくる。
「あ」
「どうも」
発見の声を出す遥と、軽く頭を下げる女。
「あぁ、遥の知り合い……」
取り残された俺が一人、納得していると
「何だ、まだ分かってなかったのか、キミは」
呆れたような女。
……っていうか、歯に衣着せないね、この人……。
「……で、遥。誰なんだ、この人は」
「僕はパン屋だよ」
そう答えたのは遥ではなく例の女。
「パン屋……?」
「そう。ほら、そこの」
女が振り返って、指をさすお店。
そこは……

635 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/31(水) 21:57:33 ID:qLZHbJ0H
「あそこはっ!?」
「お兄ちゃん、そこのカレーパン大好きなんだよね」
確かに、あそこのパンは好きだ……。
しかし、こんな店員がいた記憶が無い……のは、当然か。女の顔を覚えられない障害を抱えているからな。
「……バイトしてるのか?」
もう一体どういうリアクションをとればいいか分からず、下らない質問でお茶を濁す。
「まぁ、そんなトコロだ」
「へぇ……」
話、膨らまず。
気まずいよ。
「さてと、素性が分かったところで自己紹介と行こうか。僕は笹野くるむ、よろしく」
「えと、私は妹の大野遥です」
「兄の賢太郎……」
自己紹介が苦手なのは分かってもらえたと思う……
「あぁ、兄妹なんだな。あまりに仲がいいから、てっきり恋人同士かと思っていたが」
「こここここここ、恋人同士っ!?」
テンパる遥。
……そんなに嫌か。
「笹野だったな。あまり遥をいじめないでやってくれ……」
「いじめる?そんなつもりは無いが……気に障ったなら申し訳ない」
「こんな不逞の兄がいるだけでも可愛そうなヤツだ……そこを刺激しないでやってくれ……」
「……ははは!面白いなぁ、キミは」
嘲笑われた……。
……もういいや、こいつ嫌いだ……。
俺が一人落ち込んでいると、
「おっと、もう帰らなければ。では、また学校で会おう」
自己完結的にあっという間に帰ってしまう笹野。
落ち込む俺に遥は、
「……お疲れ様……あんまり、私の出る幕無かったね」
「どんな気持ちであのパン食えばいいんだ……俺は……」

636 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/31(水) 21:58:11 ID:qLZHbJ0H
「買い物、続けようか」
「うん……」
肩をガックリ落として、俺は遥の後を付いていく。
この話、まだ、続くんですか……?
───────────────────────
「やぁ。探したよ。クラスぐらい聞いておけばよかったな」
あれから、二日後。
とうとう見つかってしまった……。
「……あぁ、久しぶり」
心底会いたくなかった俺は、げんなりしながら答える。
「元気が無いぞ、大丈夫か?」
「気にするな」
「それならいいが。無理はするんじゃないぞ。そうだ、カレーパンが好きだったな、これは土産だ」
小さな、見慣れた紙袋を机の上に置く。
……この俺を物で釣ろうってか……。
「で、何か用か?」
若干いい気分の俺。
……釣られてるなぁ、見事に。
「この前は、大事なことを言い忘れていたからな」
「大事なこと……?」
「ああ、大野賢太郎君、僕は君を愛している。僕と付き合ってくれないか」
「……」
……?
…………?
「何だとっ!?」
「ん?変な事言ったか、僕は?」
いたって普通の笹野。
それに対し、俺は大慌てで、
「普通!!」
「普通……?まぁ、そんなに個性的な方では無いな。普通と言えば普通だ」
「は……」

637 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/31(水) 21:58:47 ID:qLZHbJ0H
お前が普通なものか!!
いや……この突っ込みもおかしいぞ。
「いきなり!!」
まだ全然身の上話とか聞いて無いし、言っても無いし!!
「昔から善は急げと言うからな。あの子が恋人で無いことも分かったしな」
「……」
こいつは手強いぞ……。
俺の性格を知らないから遠慮が無い……。
いや、この女の性格を考えたら、それすらも乗り越えてきそうだが……。
しかも、こういうときいると心強い遥がいない。
……どう断わろうかなぁ。
げんなりしながら、次の一手を練っていると、
「そんなことより……そろそろ返事をもらえないか……その……僕だって不安なんだ」
あら、そういうところもあるんですね……。
「……」
『残念だけど……』
いや、あまり遠回りな表現が効果的な相手では無さそうだ。
『俺、彼女いるし』
いねぇし。
『ダメに決まってんだろ!!』
言えない言えない……。
もうやさぐれそうだなぁ……。
そんなことを考え始めたとき、
「……っ!?」
背筋が凍るようなこの感覚は……殺気……?
凍ってしまった首をなんとか動かして、何にも言わずに振り返る。
視線の先には
「賢にぃ……誰……その人……」
「ま、真雪……」
絶対零度の視線を容赦なく刺しこんでくる冬月真雪……。
これはヤバいんじゃないかなぁ……。

638 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/31(水) 21:59:25 ID:qLZHbJ0H
「あぁ、賢太郎君の友達だね。僕は笹野くるむ。今、賢太郎君に告白して、返事を待っているところなんだ」
空気を全く読まない笹野。
流血沙汰ですか、これは……。
「賢にぃ……答えは……?」
何でこんなノリで言わなきゃならないんだ……。
全く性質の違う二つの視線が痛い……。
「まぁ……そりゃ、お断りさせてもらうつもりだったけど……」
もはや尋問だよ、これは……。
「そうか、残念だね。いや、僕としたことが早とちりしてしまったようだね」
「は……?」
「遥君が恋人でないことを聞いて、君に恋人がいないと勘違いしてしまった。君にはこんな恋人がいたんだな」
……。
……それも違うんじゃないかな……。
いつもはその辺の複雑な事情を説明してくれる遥がいないので、仕方なく俺が。
「あの……確かに恋人いないけど……真雪も恋人とかじゃなくて……」
痛痛痛痛っ!間違って無いだろ!?
「ん?ちがうのか?」
「なんていうか……あの……俺は女性が苦手で……」
あぁ、自分で何を言っているんだ俺は……。
「賢にぃ……説明……しようか……?」
こんなグダグダな俺を哀れんで、真雪からの助け舟。
「……じゃあ、頼む」
本当に助け舟かどうかは疑問が残るが……。
もうどうでもいい……事実が伝われば……。
もはや投げやりな俺は説明を真雪に託し、机に崩れ落ちる。
帰りたいなぁ、もう……。
「なるほど、じゃあ、僕にもまだチャンスはあるんだな」
「うん……ライバル……」
「そうか。僕も晴れて君の妹だな。兄上」
こんな台詞が遠くで聞こえる。
もうどうでもいいから、この話、早く終われ……。
───────────────────────

639 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/31(水) 22:00:00 ID:qLZHbJ0H
いつもの帰り道。
いつもと同じくらいの時間。
いつもと同じようにいつものスーパー。
いつもと違う遥……。
「あ、あのね……えとね……」
ハキハキしている遥が今日に限ってモジモジ。
一体何が……。
「……熱でもあるのか?」
不思議に思って、立ち止まり、振り返る。
「熱は……ないんだけどね……」
珍しい表情の遥。
遥の感情が読めず、出方を伺うのみの俺。
「買い物に付き合ってくれて……ありがとう」
「……あぁ」
いつものことじゃないかと思いつつも、この状態の遥に水を差す気は無い。
何食わぬ顔を装って、何にも言わずにカートを押す。
「ねぇ、お兄ちゃん?お兄ちゃんは何が食べたい?」
「遥なら分かるんじゃないか」
まぁ、俺の好きな物には詳しいわけだし……。という意図の発言であり、
やんわり否定するなり、考えるなりして欲しかったわけだが、
「えっ!?そ、そんなこと……ないよぉ……」
照れるように否定した遥。
……どうしちゃったんだ、俺の妹は。
「遥……?」
何気なく肩に置いた手に、
「え……?お、お兄ちゃん……」
胸焼けのするリアクションの遥。
嫌ではないが、何なんだ、この空気……。

640 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/31(水) 22:00:40 ID:qLZHbJ0H
「やぁ、兄上」
空気をぶっ壊す笹野の声。
今回ばかりはありがたい……。
「あ、ああ、笹野。今日もバイトか」
この空気を断ち切った笹野に、出来るだけ好意的な視線。
「そうだが……兄上?」
「どうした?」
「本当に君たち兄妹は仲がいいんだな」
「こんなもんじゃないか。なぁ、遥?」
「え……?あ、うん……そうかもね」
さっきと対照的になんだか素っ気無い遥。
その遥を見て、
「兄上。遥君、何だか暗いけど、何かあったのかい?」
「さぁ、俺にも……ちょっと疲れてるんじゃないか、遥?」
「そ、そうかもしれないね」
相変わらず素っ気無い。
……遥のことなら少しは分かっていたつもりだったが、まだまだ知らないことも多いんだな。
───────────────────────
ネガティブ兄に『胃が痛い』とか『胃に穴が開く』みたいなことを言わせまくっていたら、
僕本人がクリスマスイブの日に胃潰瘍に苦しむ羽目になりました……。
というわけで、俺にも遥みたいな妹がいればなぁという意味を込めて、
ネガティブ兄の書きかけの奴を急遽完成させて、厄払い。

まぁ、創作のペースはかなり遅いですが、来年もよろしくお願いします。っと。

641 :名無しくん、、、好きです。。。 :2009/01/01(木) 22:48:35 ID:vIABjrOi
胃潰瘍ってマジですか…お大事に…

名無しを代表して、今年も宜しくお願いします。

642 :名無しくん、、、好きです。。。 :2009/01/02(金) 19:45:10 ID:pI+pjDsY
投下乙です。
お体お大事に、そして今年もよろしくお願いします。

643 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2009/01/25(日) 20:54:51 ID:eAvgFF6v
保守。

盛り上げるためには、俺なんかでも何か書かなきゃいけないとは思ってるんだが、
書きたいネタはあるけど、文章に出来る程じゃない……。

644 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2009/02/14(土) 23:58:41 ID:sfwYfq2p
土曜日。
まぁ、別に何かあるわけでもなく。
のんびりといえば聞こえはいいが、ただ暇なだけの休日。
忙しそうな遥とは対照に、リビングでコーヒーを啜る俺。
「何かつまむもん無いかな」
ちょっとコーヒーだけでは物足りなくなってきた。
何か食べ物を探すために立ち上がる。
そのとき、
ピンポーン
チャイムが鳴る。
少しだけ遥の方を見たが、どうも手が放せなさそうな顔。
俺が出るしかないのか……。
滅茶苦茶嫌。というワケではないが、結構嫌なものだ。
ちょっと暗い顔でドアを開けると、
「お早う。朝早くからすまないね。すぐ済むから勘弁してくれよ」
と、笹野。
「まぁ、忙しくは無いからいいけど……何か用か?」
「ん。まぁ、そうだな。ほら、これを」
と言って、バッグから小さな紙袋を。
「今月は何かと物入りでな、ちょっと安物になってしまって申し訳ないが」
少し、小さな声で呟いた。
俺は不審に思いながらもその紙袋を受け取って、
「あぁ、ありがとう。何だこれ?」
「ん?そんなに変なモンじゃないぞ、普通のチョコレートだ」

645 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2009/02/14(土) 23:59:46 ID:sfwYfq2p
何故俺に突然チョコレートをくれるんだろう……。
パンの材料が余ったのかな……。
「あぁ、ありがとう。あとで食べるよ」
理由は不明だが、チョコは嬉しい。コーヒーのお茶請けにしよう。
「うん、喜んでくれて何より。美味しく食べてくれると、嬉しいよ」
「あぁ、悪いな」
「気にするな、僕と君の関係を考えたら……じゃあ、僕はバイトがあるから、失礼するね」
小さく手を挙げて、コートを翻す笹野。
それを黙って見送る俺。……笹野に食で買収されすぎじゃないか、俺……。
───────────────────────
短すぎですが、一応バレンタインにはギリ間に合った……。
続きはまた明日書きます……。

646 :名無しくん、、、好きです。。。 :2009/02/15(日) 03:36:09 ID:tMlulBrO
GJ!



647 :名無しくん、、、好きです。。。 :2009/02/16(月) 21:53:05 ID:kc+Ut2RK
.       ,、r‐''''''''''''''''ー 、
      ,r'         `' 、
     /             ヽ
.    / ,             ヽ
   ,,'  ;    ,、、,_  ニニ  ,、」、
   l.  :;;;i    ´ .._`ー   ‐''"....|
   l:,;'"`'、,    . ,;ィェ、..   ,rェ;〈
.   ';i l :::i;;,, ::' "......::'''ン  .., .:::'''"゙,
    l;゙、',.::l;;;i      r   ヽ.   l,   いやあっだめっ
    l;;;;`‐;;;;;ヽ   . './'ー'''ー‐' ',  l;;;,,   なんでそんなとこ舐めるの!?
. ,、rイ;;;;;;;;;;;;;;;;;;;;ゝ  ,r";;二二二,ヽ, !;;;;:'  汚いよっ!
'.:.:.l ll ;;;;;;;;;;;;;;;;;' ,rニン"  ̄二´ `ノ;;;;;`-、
:.:.:.| l.l  '';;;;;;;;;;;;;;'         ,イ l'''  l `
:.:.:.:| ','、  '''''''''   , ‐---,ェr'".l.|  |  |
:.:.:.:|  ゙、゙、       `''''''''"",ノ l l  .|  |
:.:.:.:.|  ヽヽ     `'---‐'" .//  !

648 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2009/02/20(金) 23:16:53 ID:yUJyB29i
「早速食べるか」
リビングに戻った俺。
一段落着いたのか、ソファに座って茶を飲んでいる遥。
「あ、お兄ちゃん。もしかして、チョコレート?」
「よく分かったな。笹野からもらった」
「笹野さんから……。それにしては、嬉しそうだね?」
「丁度何か食べたいと思ってたんだ。せっかくだ、一緒に食おうか?」
「え、私はいいよ!」
強く否定する遥。
それに、ちょっとヘコむ……。
「……じゃあ、一人で食おうかな……」
ちょっと出鼻を挫かれたが、俺の動き出した甘いものを食べたい気分は止まらない。
紙袋から、上品な箱を取り出し、その箱を眺めながらテーブルへと向かう。
その最中、
「お兄ちゃんがバレンタインにそんな嬉しそうな顔してるの、初めて見たよ」
……。
ドサっ……。
……。
「お、お兄ちゃんっ!?」
遥が大声を張っている。
足の上に、小箱的なものが落下してきた痛みを感じる。
「まさか、気付いてなかったの!?」
遥の目を見る。
視線を下にズラす。
「忘れていた……」
俺はそっとチョコを拾い、そのまま紙袋に戻す。
「遥、いるか?」
「ううん……私はそれを食べる勇気は無いよ……」
「だよなぁ……」
ソファに座り、カップに残ったコーヒーを一気に飲み干す。
まさか、チョコレート一個がこんなに俺にダメージを与えるとは……。

649 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2009/02/20(金) 23:17:26 ID:yUJyB29i
「うわ、お兄ちゃん凄い……苦くないのー?」
もう別にあきらが来たって驚きはしない。
というより、もはや感情が半分凍っている。
「……熱い」
「そっかー、でも、気をつけたほうがいいよ。ベロをヤケドすると痛いよー?」
「ああ……気をつける」
「あ、でも、もしヤケドしちゃっても、ほら!ボクのチョコは食べられるよ!!」
両手で差し出されたチョコ。
「……チョコは熱くないな」
「うん。ボクはあんまり詳しくないんだけど、有名なお店のチョコなんだって!」
「ふぅん……」
出されたチョコ。覚悟は決まった。
それを中指と親指で受け取る。
「あとで食べる」
「うん。じゃあ、ボクは帰るね?」
「気をつけてな」
「うん、ありがとう。じゃあね、お兄ちゃん」
帰ったか。
……。
「え、お兄ちゃん?な、何で私をそんな目で見てるのかな……?」
「……やり場の無いこの感情をどうしたものかと思って……」
「うー……美味しいチョコでも食べたら?」
「今食べたら、諸々を認めることになる気がする……」
「そうだね……コーヒー、もう一杯飲む?」
「……もらおうか……」
立ち上がる遥。
二つのチョコを前に、頭を抱える俺。
「……居留守、使う?」
手早くコーヒーを入れてくれた遥。
コトリとカップを置いて、言い辛そうに提案。

650 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2009/02/20(金) 23:17:58 ID:yUJyB29i
「……もう二人にもらった時点で遅いだろ……」
そりゃ逃げたいは逃げたいが、後々面倒なことになる気が物凄くしている……。
「それもそうだね。じゃあ、先は長いけど頑張ろう」
コーヒーが薄い……。
……バレンタインなんて無くなればいいのに。
「気分が優れないようですが、大丈夫ですか?お兄様」
「……うん。大丈夫」
宮原。
宮原か。
「バレンタインのチョコを持って参りました、よかったら受け取ってください」
あぁ、手書き風の花柄が書かれた薄い紙袋。
「……手作りか……?」
「すいません……あまり時間がなかったもので……手の込んだものは……」
「いや、そういうつもりじゃないんだ……」
あぁ、俺のせいで気を悪くさせてしまった……。
ただでさえ元気が無いのに、さらにヘコむ……もう嫌だ……。
「ごめん……手作りのチョコなんて貰い慣れて無いから……」
「ふふ、私も本命チョコなんて渡すの初めてです」
……すっげぇパンチ打ってきやがった。
「……」
俺も初めて。とか何とか言ってやろうと思ったが、やっぱ無理だ……。
「ありがとう……あとで食べる」
「はい。では、お兄様もお忙しそうですし……私もそろそろ失礼しますね」
「……悪いな、お構いもしなくて」
「いえ。受け取ってもらえただけでも嬉しいです。それでは、また月曜日に会いましょう?」
……会いたくない。
「だから……その目は辞めてよぉ……私が悪いんじゃないよ……」
「……分かってるけど」
テーブルに突っ伏して、少し休憩。
三杯目の遥のコーヒーはさっきよりも随分濃い……。
……口の中に残る苦味では、喉の奥の苦味は紛らわせそうに無い。
───────────────────────

651 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2009/02/20(金) 23:19:32 ID:yUJyB29i
立て続けに三人の自称妹たちに会って、俺の心ももうボロボロ。
毎年俺以外の男はこの時期になるとチョコを欲しがるが……こんなのが本当に幸せだと思ってるのか……。
半分死んだような気持ちで土曜日の午前中を過ごしている。
テーブルの上には三つのチョコ。
もはやこのソファから立ち上がる気力も起きない……。
……まだ土曜で良かったな。明日はゆっくり休もう。
せめて明日のことを考えて明るくなろうとしているというのに、
「おはよう兄。っていうか、もう『こんにちは』かしら?」
背後から襲い掛かる非現実女、夜影。
「別にどっちでもいい……」
「ま、それもそうね。兄、チョコレートは好きかしら?」
「……普段なら」
今、俺のチョコレート株は大暴落しているが。
「そう……良かったわ、甘いもの嫌いだったらどうしようかと思ってたの」
四個目のチョコか……。
「……これ、大丈夫なんだろうな」
「な、何よ!!その言い方!?」
「……」
ヘコんでしまった心は大きな声に弱い……。
だって、蛙とか蛇とか入れてそうな感じするじゃないか……。
「あ、ゴメン……」
俺の死にそうな雰囲気を察してくれたのか、すかさず謝罪を入れる夜影。
「いや……俺も……」
……悪くは無いはずだ、俺は……。

652 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2009/02/20(金) 23:20:04 ID:yUJyB29i
「でも、そんな言い方……向こうの世界にはチョコレートはないし、ちゃんとこっちの世界で買ったものなんだから……」
「……」
「作るのだって、魔法は使ってないのよ……?」
「それは……悪かった……」
「そう思うのなら、このチョコ、受け取りなさい!」
「……はい……」
受け取る。
……別に、置いてってくれればいいのに。と今更ながら思う。
「じゃ、じゃあ、私は帰るから!!」
「おぅ……」
と言った瞬間には夜影は消えていた。
……アイツ便利だなぁ。
もう動く元気すらなく、しばらくそのまま食器棚の方向を眺めていると
「何処見てるの?賢にぃ」
虚空を眺める俺を本気で哀れむ真雪の声。
この人たち、今日はホントにテンポがいいなぁ……。
「……別に」
「そう……」
……心配されているね。
「遥ちゃんは?」
「……そういや、いないな。まぁ……忙しいんだ、遥は」
「忙しいんだ……」
「ああ、そうらしい」
見の無い会話は相変わらず。

653 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2009/02/20(金) 23:20:37 ID:yUJyB29i
「……そ、その……賢にぃ……?」
「ん……?」
「こ、これ……」
はいはい。チョコだよね、チョコ。
受け取りますよ。
「……あんまり気に入らないかもしれないけど……」
……あぁ、相手の卑屈に返す言葉が無い……。
俺も少し反省した方がいいなぁ……。
「気にするな、チョコ好きだぞ」
俺、ちょっと優しい。
「……よかった……」
真雪の微笑。
別に俺は今日に関しては何とも思いませんがね。
「……今日は……帰るね……」
「おぅ、気をつけて」
真雪の背中をボッーと見つめる。
……真雪のチョコを仲間達の中に入れてみた。
───────────────────────

654 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2009/02/20(金) 23:21:10 ID:yUJyB29i
「ふぅ……」
ため息にも色々あるが、まぁ、その色々を含んだため息を吐いてみる。
……もう誰も来ないはず。誰も来ないはずだ……。
「……あぁ……」
机の上のチョコレート五つを見る。
どうしようかなぁ……。
食べたい気持ちはかなりあるが、前述の理由を考えると食べられるはずが無い……。
「あー……チョコが食いたい!!」
買いに行こうかなぁ。
……いや、今日買いに言ったら、もうそれは恥ずかしい人じゃないか。
「遥に買ってきてもらおうかなぁ……」
「え?私がどうしたの?」
背後から遥の声。
まぁ、みんなの今日のタイミングの良さと来たら……。
俺は首をそのまま後ろに倒して、
「ん?チョコが食べたいんだが……さすがに今日買うのは恥ずかしいし、遥、買ってきてくれよ」
「お兄ちゃん……それは、出来ないよ……」
なんだか困り顔の遥。
「……何で?」
「こっち、向いて」
「んー?」
折れそうな首を正常な位置に一旦戻し、今度は捻る。
視線の先には
「あ……」
「……私も……チョコ、あるんだけど……やっぱり私のもダメ?」
「いや、遥のだったら食べるよ」
こういうのは失礼かもしれないが、遥には一番気兼ねが無い。
当たり前か。妹だし。

655 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2009/02/20(金) 23:21:43 ID:yUJyB29i
「ち、ちなみに……私のチョコも……他の皆とあんまり変わらない感じだけど……」
「ん?どういうこと?」
「そ、その……込められてる気持ちが……」
……?
手を後ろに組んで、モジモジの遥。
「そりゃ、そうじゃないか?」
「え……?」
「遥だって……というか、遥こそ、俺の妹だからな」
「……え?」
呆然顔の遥。
「あぁ……そっちか……」
今度は、ちょっと納得した遥。
「どっち?」
「ううん、何でもない……はい、チョコ。コーヒーは……いらないよね、もう?」
「あぁ、ありがとう。コーヒーはもうさすがにいらないね」
「私は……ちょっと疲れちゃった……休んでくるね」
「あ、あぁ……」
ヨロヨロとリビングから出て行く遥。
チョコを一つ頬張る俺。美味い。
机の上を見なければ、今幸せだなぁ。
様子のおかしい遥は……まぁ、今日は気にしないことにしよう。っていって、二度と思い出さないのだけど。
───────────────────────
何だこのあまりにも、なストーリーは。とか。
そもそも、もう日本語が上手く書けて無いじゃねぇか。とか、
こんなん書くのに何日かけてんだ。とか……。

俺、本格的に台本書きとしての能力がヤバいみたい……。
……次に会うのはいつだろうね。

656 :名無しくん、、、好きです。。。 :2009/02/22(日) 18:04:00 ID:iyOum8aP
GJ!

657 :名無しくん、、、好きです。。。 :2009/02/24(火) 01:57:05 ID:egeDSQkQ


658 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2009/03/23(月) 22:12:18 ID:VgXc8Q9Y
行く場所が無い、目的も無いというのは悲しいことだ。あるのは時間だけ……。
せめて暇な時間を共有できる人間がいればいいんだが、今の俺にはそれすらも。
まぁ、別に本屋やらコンビニやら時間をつぶせそうな場所を目指してブラブラと歩く。
「いっくん……?」
すれ違った女が振り返って呟いた。
が、この『いっくん』と呼ばれる要素を持っていない大野賢太郎には、関係の無いこと。
何にも気にせず歩き続ける。
「……いっくん……」
泣き出しそうな声。
あぁ、携帯音楽プレイヤーの電池さえ切れていなければ、聞き流せたのに……。
いや、俺には関係の無いことだ。だって、いっくんじゃないし!
少し気にしながらも、歩き続けた。
今度は、
「うぅっ……うえぇぇぇん……」
とうとう泣き出した。
周りには俺達以外は誰もいない。
少し離れたところからは、数人の人が歩いてくる。
……あぁ、この状況はどう考えたってマズいねぇ。
「……」
仕方なく振り向く。
当然女には見覚えが無い。
「……?」
何故お前も俺と同じ顔をしているんだ。
「誰……?」
泣きながら、ポツリ。
……それはこっちの台詞だ。
「人違いなら、行ってもいいですよね?」
という言うが早いか、逃げるように女から背を向ける。
大丈夫、おじさんも変な顔はして無いし。

659 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2009/03/23(月) 22:13:44 ID:VgXc8Q9Y
「ん……?」
袖が掴まれている。
「待ってくださいぃぃ……」
鼻声でこんなことを言ってくる女。
……何でだよ……関係ないだろ、俺と……。
「私、アナタにぃ〜……」
……周りの目が痛い。
家で大人しくしてりゃ良かったよ……。
───────────────────────
買い物の帰り道。
ビニール袋を手に提げた私は、正面から来る人に見覚えがあることに気づく。
そうだ、あの人は……
「あ……一郎くん」
「え……あ、遥さん」
今井一郎くんは私の従兄。
親戚だけあって、お兄ちゃんを水で薄めたような人……っていうと、少し失礼かなぁ。
「偶然だね。何してるの?」
「え……」
明らかに焦っている一郎くん。
聞いてみただけ。聞いてみただけ。
「あ、忙しそうだね。邪魔したら悪いし、私はもう行くね」
適当に気を使って、その場から抜けようとする。
「あ、あの……」
時間にして2秒後くらい。
一郎くんの声が……。
「え?」
にわかに信じられなかったが、もしかしたら私を呼んでいるかもしれない。

660 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2009/03/23(月) 22:14:39 ID:VgXc8Q9Y
首を少しだけ向けて、目だけで一郎くんを確認する。
「あ、ゴメン。ちょっと聞きたいことが……」
どうも本当に私の用らしい。
……うーん、お兄ちゃんならこんなこと絶対しないのに……。
「何かな?」
「えと……人を探してるんだけど……」
「人?どんな人?」
「このは……」
「このは……?」
このは……このは……。
……名前かなぁ、苗字かなぁ。それとも木の葉ってことなのかなぁ……。
しばらく考えていると、
「あ……」
そうだ。昔2、3回会ったことがある気がする。
確か……
「彼女さん?」
何度か一郎くんの家に遊びに行ったとき、いつも、一郎くんの後ろから離れなかった女の子の名前。
「え……?何で、それを……」
照れながらも答える一郎くん。
そんなこと忘れてたって、一郎くんの顔を見れば十分理解できるのに。
「それで、どうしたの?」
「……ちょっと……ケンカして……。俺が悪いのは……分かってるから……謝りたいんだけど……」
「なるほど、そんなことなら私も手伝うよ」
「え、いいよ!」
そうだそうだ、ここで押しても無駄だったね。
「そう?じゃあ、写真とか無い?見つけたら連絡するから」
「え?……う、うん……」
一郎くんにケータイで写真を見せてもらう。
幸せそうな顔。
……仲直りさせてあげたいな。
───────────────────────

661 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2009/03/23(月) 22:15:27 ID:VgXc8Q9Y
お久しぶりです。ネガティブ兄、いつぞやのネガティブ幼馴染編。
まぁ、全く関係は無いんだけど、裏設定を破綻させるセルフコラボ。
……当初の予定というか願望はこんな話じゃなかったんだけどなぁ。

しかし、一ヶ月書き込みなくても、落ちないんだね……
俺一人、目指せギャルゲー板最下層。

662 :名無しくん、、、好きです。。。 :2009/03/24(火) 00:09:21 ID:+8wsGQ1H
GJ!

663 :名無しくん、、、好きです。。。 :2009/03/24(火) 14:05:08 ID:hhrjdeWQ
更新来た!これでかつる!

664 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2009/03/27(金) 23:36:09 ID:hxNd4udw
「……」
「……」
「……」
公園のベンチ。
隣同士の俺と女。
……何か言ってくれよ。
「……落ち着いた……?」
仕方ないので、何故か俺が気を使う。
「す、すいませんっ!!私、ちょっとっ……」
「まぁ、いいけどさ……」
気が弱いなぁ、俺……。
「で……何か、俺に聞きたいことがあったんじゃないのか?」
もう早く帰りたい。
まぁ、嫌では有るが、仕方なく話を振ってみる。
「あ、はい……えと、その前に……私、野咲このはっていいます。あの……お名前を……」
「大野賢太郎」
「大野さん……すごくつまらないことなんですけど、大野さんが……私の友達と似てて……」
あー……。
この話は恐らくめんどくせぇぞ……。
「で、よかったら相談に乗ってもらえないかと……」
やっぱり……。
しかし、少し考えてみると、そんなことを見ず知らずの人間にすがるなんて、普通の感覚じゃない。
……それだけ友達に入れ込んでるのか、それともこの女が相当変なヤツなのか。
「まぁ、仕方ない……。で、具体的に何を?というか、どこが似てるのかまずは聞きたいんだが」
「……えと、雰囲気というか、オーラというか……陰々滅々とした感じというか……」
あー、そうか。
バカにされてんだ、俺……。
「ご、ゴメンなさい!!べ、別に大野さんがそういう人って言うつもりじゃ……」
……言ってるじゃん……。

665 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2009/03/27(金) 23:37:00 ID:hxNd4udw
でも、まぁ、
「……いいんだ、間違ってない……」
「で、でも……私、そういうところも嫌いじゃなくて……!!」
「……」
全く俺へのフォローになってないぞ……。
「えと、えと……と、というか……そういうとこも、好き……なんですけど……!!」
「……」
もう何を言っても負けな気がする。
……どうすりゃいいの?怒っていいの?
なんか女はフォローを続けてるけど、もう惚気にしか聞こえない……。
「……で、そこまで言っといて、何を俺に相談することが……」
ちょっとやさぐれた。
「……え……?」
……え……?
もしかして、いい事言った、俺……?
そんな気はなかったのに、何だかアドバイスっぽくなってしまったことに自分でも驚いている。
「そ、そうですよね、大野さん!!私は、いっくんのことが……」
全く意図してなかったんだ、その目はやめてくれよ……。
あー……消え失せたい……。
「……もう、帰っていいか……」
「あ、お礼をさせてください!」
「そういうの、いいから……」
「いえ、是非!」
……いっそ殺してほしい……。
───────────────────────

666 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2009/03/27(金) 23:37:43 ID:hxNd4udw
一郎くんと別れた後、一度家に帰り、もう一度このはさんを探す。
気を使わせないように、一郎くんには見つからないようにしていたが……
「あ、あれ、遥さん?」
まずい……見つかった……。
「遥さん、帰ったんじゃ……」
「うん。天気もいいし、ちょっとお散歩ついでに、このはさん探しのお手伝いをしようかなって」
……うーん、これもちょっとイマイチな言い訳……。
「そう……ゴメンね、わざわざ」
やっぱり今一つ納得していない一郎くんの顔。
「気にしないで。ついでだから」
焼け石に水ではあるけど、『ついで』を強調してみる。
しばらく、二人で歩いていたが、
「あ、お兄ちゃんだ」
「ホントだ、賢太郎さん……」
公園の向こうの方にお兄ちゃんがいる。
そして、遠くてよく分からないが女の人……あぁ、またお兄ちゃんは変なことに巻き込まれてるのか……。
「あれは……このは……」
「え、あの人が……?」
言われてみると、確かに特徴は似ている。
……これは、もしかして……。
「一郎くん。多分、怒るだけエネルギーの無駄だよ?」
「どういうこと?」
「……別に怒って無いならいいけど……。あのお兄ちゃんが女の人を好きになることなんてないから」
「うん……知ってる。でも、このははどうかな……」
「あの顔が、お兄ちゃんのこと好きな顔に見える?」
「……いや」
「じゃあ、行こう。お兄ちゃんも困ってるし」
「ああ」
大きく息を吐く。
そして、少し明るい口調で、
「おーい!お兄ちゃーん!!」
───────────────────────

667 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2009/03/27(金) 23:38:25 ID:hxNd4udw
第二弾。次で終わり。意外に短い……。

しかし、俺だけのスレかと思ったら、まだ人がいるんだねぇ。
あとは職人様がいらっしゃることを祈るばかり、と。

668 :名無しくん、、、好きです。。。 :2009/03/28(土) 17:57:31 ID:309AVUgD
GJ!
投稿待ちでROMってるんだ

669 :名無しくん、、、好きです。。。 :2009/03/28(土) 19:23:13 ID:HOpJFLuC
ノシ俺もだ
遊星氏は我々の希望の星なのさ!!

670 :名無しくん、、、好きです。。。 :2009/04/06(月) 16:58:47 ID:VHPa+dAS
保守

671 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2009/04/17(金) 23:10:55 ID:KkfFbybR
「おーい!お兄ちゃーん!!」
聞きなれた声。
このタイミング……さすが遥と言ったところか。
「は、遥!!」
完全に『助けてくれ』を込めた言葉。
その言葉に、何故か今まで俺の腕を掴んでいた女の手が離れる。
「……いっくん……」
視線の先。
アイツは……。
「なんだ、一郎じゃねぇか。ってことは、この女が一郎の彼女……?」
「どうもそうみたいだよ、お兄ちゃん」
……あー、そう……あの一郎にも……。
「このは……」
俺を無視して、この女に話しかける一郎。
……あぁ、もしかして俺達が邪魔?
「このは、ゴメン!俺が悪かった!!俺が……こんなだから……」
「ううん、いいの。私は、そんないっくんが好き」
「このは……」
「いっくん」
あー、何か抱き合ってるよ。
……気持ち悪ぃ!!
これネガティブ兄シリーズじゃねぇの!?
「で、何でこんなことに……?」
何と言うか敗北感のような感情に目を背けるように、遥にしょうもない質問を。
「お兄ちゃんこそ、何があったの?」
「俺は……話せば長くなるが、一郎と勘違いされて、何やかんやで相談に乗ってた。遥は?」
「私は、このはさんを探してる一郎くんに偶然会って、一緒に探してたの」
しかしまぁ、あれが一郎の彼女ねぇ……。

672 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2009/04/17(金) 23:12:19 ID:KkfFbybR
「羨ましい?」
「そういうのが全く無いといえばウソになるが……嫌悪感の方が強い」
「お兄ちゃんらしいよ」
……呆れた様子の遥。
「……帰ろうかな」
もう別に何かを言い返す気にはなれない。
何も考えずに、帰宅を提案する。
「帰りますか」
賛同する遥に心からホッとする。
しかし、
「待ってください」
帰らせてよ、バカップルさんよ……もう俺の負けなのは明白だからさぁ……。
「……」
言葉は語らない。
死ぬほど元気の無い顔で、振り返る。
「大野さん、本当に有り難う」
「……」
黙って頷く。もうどうでもいいから。
「あの、お礼といってはなんですが、お二人とも一緒に食事でも……」
「あ、もちろん奢りますから」
……この二人と一緒に?
このさっきから自分達の世界を展開しっぱなしの二人と?
死んでも嫌だ。……とは言えないんだが、どうしたらいいんだろう。
遥をチラッと見る。
お見通し、とばかりに視線を背ける遥。
……あぁ、助けてはくれないんだ……。

673 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2009/04/17(金) 23:13:05 ID:KkfFbybR
沈黙の俺。
三種の視線が突き刺さる。
「わかった……」
「わっ!?ホントですか!?」
驚く女。
……このリアクションなら、行かないという選択肢も十分有りだったな。
「ふふ〜♪」
ニヤニヤ顔の遥。
そして、
「良かった。俺たちがよく行くお店があるんです。紹介しますよ」
何か、いいトコ見せたいんだか何だか知らんが、よく喋る一郎。
ここから先はもう語りたくも無い。もう最低だよ……。
───────────────────────
……今回の話はこれで終わり。
毎度のことながら、このオチ弱さ。さすが俺。

相変わらず、アイデアは出ません。
まぁ、何か浮かべば出来るだけ書くようにはしますんで、その時もこのスレがあればな、と。

674 :名無しくん、、、好きです。。。 :2009/05/04(月) 14:59:38 ID:d4Rwl5TN
ほしゅ

675 :名無しくん、、、好きです。。。 :2009/05/08(金) 03:33:38 ID:caXeZd0e
保守

676 :名無しくん、、、好きです。。。 :2009/05/14(木) 23:10:24 ID:mDfhxhpd
・・・保守

677 :名無しくん、、、好きです。。。 :2009/05/23(土) 16:45:04 ID:iBg07Qa7
お兄、保守するねっ

678 :名無しくん、、、好きです。。。 :2009/06/07(日) 08:56:53 ID:5lnfnkg2
 

679 :名無しくん、、、好きです。。。 :2009/06/18(木) 15:02:19 ID:RyNsI+NL



680 :名無しくん、、、好きです。。。 :2009/06/25(木) 20:50:46 ID:xI1N8OQW
妹に言われたいセリフか…
可愛くて綺麗で俺に優しくて甘い妹にお兄ちゃんが一番好きだよって言われたい。

681 :名無しくん、、、好きです。。。 :2009/06/26(金) 23:57:11 ID:VXKRDMpn
父の会社の取引先の社長令嬢と俺との結婚式が終わりホテルの中庭にて
妹「ずっと…、ずっとお慕いしておりました…」
俺「え…ッ?」

妹「ごめんなさい、お兄さま」
俺「え…ッ?えぇ〜ッ?」(俺ハジマタ的なニュアンスで)

682 :名無しくん、、、好きです。。。 :2009/06/27(土) 01:58:49 ID:6/D5iIOc
>>681
血の繋がった妹とのドロドロの不倫に突入するのか
でも妻になった社長令嬢は外見だけでなく性格も素晴らしく自分を一心に慕ってくれて…

683 :名無しくん、、、好きです。。。 :2009/07/09(木) 01:36:31 ID:2vX6uc08
保守

684 :名無しくん、、、好きです。。。 :2009/07/09(木) 13:21:36 ID:6um/aRH8
妹「わたし、初めて」

685 :名無しくん、、、好きです。。。 :2009/07/09(木) 14:16:17 ID:q2jHLym/
お兄ちゃん一緒にお風呂入ろ♪
やだやだぁ一緒に入ってくれないと駄目ぇ

686 :名無しくん、、、好きです。。。 :2009/07/11(土) 00:15:36 ID:Bc7AZ5dG
「わたしが起きるの手伝ってあげるね♪それぇ」
「!」「きゃあ(>_<)お兄ちゃん裸で寝てる!」
「!!」「ウ・ソ・だよ」「…」「でも、はみ出してるヨ」

687 :名無しくん、、、好きです。。。 :2009/07/11(土) 01:25:11 ID:7h8ExjAY
『お兄!手、何か付いてるよ。ゴミかな?ちょっと見せて…あっ、あのお店…行こっ』そういって、俺の手を握ったまま、妹が駆け出した

688 :名無しくん、、、好きです。。。 :2009/07/11(土) 21:47:28 ID:fKxy5U4B
お兄ちゃんのエッチ

689 :名無しくん、、、好きです。。。 :2009/07/11(土) 22:58:36 ID:9TKPQ+r4
「お兄ちゃん…最近アニメとかしか見なくて私と全然遊んでくれないよね…付き合ってくださいなんて無理なことは言わない……でも…もう一度だけあの頃みたいに私と遊んでよ…お兄ちゃん…(ここで妹涙目)」

by妹のいない俺

690 :名無しくん、、、好きです。。。 :2009/07/11(土) 23:06:18 ID:eIu3dzYb
妹 「そんなゲームばかりして馬鹿兄さん この変態 変態 変態〜」

691 :名無しくん、、、好きです。。。 :2009/07/13(月) 23:41:47 ID:vmc4np2j
妹『お兄ちゃんが彼氏だったらなぁ…いや、何でもないよ』

692 :名無しくん、、、好きです。。。 :2009/07/26(日) 04:01:55 ID:xVtclSef
妹『・・・・・いいよ』

693 :名無しくん、、、好きです。。。 :2009/08/12(水) 15:30:15 ID:QsFHPI7g
それでもっ、あたしは、あんたのこと好きなの!

694 :名無しくん、、、好きです。。。 :2009/09/04(金) 11:29:59 ID:dYrkdhqj
妹『保守するよ』

695 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2009/09/20(日) 23:51:37 ID:iKCAl/xv
この全てを蒸発させそうなほど暑い日。
頬を流れる暑い汗すらも凍りつかせるその絶対零度の視線……。
「あ、あの……真雪……?どうかし……」
視線の持ち主は恐る恐る尋ねた俺の言葉を目で潰す。
「賢にぃに聞きたいことがある」
俺の言葉を遮って、淡々と言葉をつむぐ真雪さん。
「な、何でしょう?」
「3組の新谷さんと……付き合ってるって、本当?」
「は……?」
「色んな人から噂を聞いた」
僕らのイメージする取調べのように、机に手をつく真雪。
蛍光灯があれば、顔に押し付けられているところだ。
あぁ、そうだった……コイツ、俺のことが好きなんだった……はぁ……。
「いや、残念ながら心当たりが……」
「あるの?」
感情の無い言葉に妙な威圧感。
真雪……怖い……。
「あ、あの……冬月さん……?第一、僕その人知りませんし……そもそも、女嫌いなんですが」
めっちゃ下手から。
だって怖いし……。
「本当?」
「本当です……」
「……」
冷たい視線でジッと俺の目を見る真雪。
しばら沈黙が続いた後
「……じゃあ、賢にぃを信じる」
フッと微笑む真雪。
「あぁ……つーか、そんな有り得ないデマを信じないでくれ……」
「それも……そうだね」
その噂、根も葉も無さすぎなんですけど……。

696 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2009/09/20(日) 23:56:31 ID:iKCAl/xv
「喉渇いたな……」
「賢にぃ、何か飲み物買いに行く?」
「……行くか」
恐怖の数分間の終焉……。
まさかこれが最悪の事態の予兆であるとは……薄々気付いていた。
───────────────────────
授業終了後、妹と合流すると逃げるように校舎裏へ。
ここに来た理由は、三つ。
一日中日陰なので涼しいというのが一つ。妙な噂に振り回された人間に会いたくないのが一つと、もう一つは
「お兄ちゃん、どこ行くのー?」
「コンビニでアイス買う」
「こっちにコンビニなんてあったっけ?」
「俺も知らなかったが、穴場らしい」
こういう嫌なことがあった日は、冷たい物を食べて現実逃避したい……という淡い期待。
が、
「あー……そういうことか……」
何だか含みがあるような遥の言い方。
気になって、隣の遥を見る。
その遥の視線は前方右側に。その視線を追うと……少し高い場所に張り巡らされたフェンス。
そういえば、使ったこと無いが、プールってここだったな。
「で、プールがどうかしたか……?」
「え……だって……」
「だって……?」
今一つ、歯切れの悪い遥。
その理由は
「あ、大野君」
プールからの声に思わず振り返る。
「!?」
余りの眩しさに目を反らしてしまった……。
スラッとした肢体、少し日に焼けた肌、スクール水着という相当眩しさレベルの高い女性を直視してしまった俺。
眼が眩むぅ……。

697 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2009/09/20(日) 23:57:13 ID:iKCAl/xv
「だ、大丈夫!?大野君!?」
「いや、大丈夫っす……」
ぼやけた視界のまま、平静を装う。
「顔色悪いよ?部室使っていいから、少し休んでいったら?」
しゃがむ謎の女。
くぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!
の、脳が侵されるっ!?
「もう……いっそ殺してくれ……」
「お、お兄ちゃん……落ち着いて……人前だよ……」
「そ、そうか……そうだったな……」
大きく息を吸う。そして、吐く。
「少し落ち着いた……」
しかし、まだ脅威は去っていない。
「あのー……本当に大丈夫なんですか?」
向こうの人。
「えっと……多分大丈夫なんで、あんまりお構いなく」
と遥。しかし、この後、遥が衝撃的な一言を付け加える。
「新谷さん」
……新谷……?
……どこかで聞いた……。
「新谷……」
「自分の彼女の名前、忘れちゃったの?お兄ちゃん?」
「……あぁ……って、違ぇよ!!」
ノリツッコミは苦手だね。
「え?違うの?」
「遥までも変な噂を……。俺ってそんなに信用無いんだな……」
「私も嘘だとは思ってたけど……お兄ちゃんがプールの方にわざわざ来るから……」
「あの『あー……そういうことか……』って、そういう意味か……」
「いや、だってー!」
落ち込む俺と必死でフォローの遥。

698 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2009/09/20(日) 23:58:41 ID:iKCAl/xv
「あ、あのー……私に何かあったんですか?」
すっかり忘れてた。
っていうか、泳いでろよ、水泳部は。
「んと……何ていうか……新谷さんとこの人に噂が……」
複雑な顔で説明をする遥。
この人っていうなよ、遥……。
「え!?初耳ですよ!?」
「会ったこともないのにな」
「え!?一年生のとき同じクラスだったじゃないですか!?」
「……あぁー……」
……。
知らん。
にも関わらず、納得したかのような素振り。こういうのは得意だ。
「まぁ、それにしても……困るよなぁ」
「あはは、私は困りませんよ?」
新谷の先制攻撃。
「……」
俺、スルー失敗。
「あ、あはははっ。新谷さん、お兄ちゃんをからかわないでくださいよー」
遥のフォロー。
「そ、そうだねー」
この悲壮感がたまらなく辛い……。
この最低な空気をどうしたものかと悩んでいると
「新谷ー!サボってるんじゃないぞー!!」
青春大好き!と言った感じの水泳部男子がこちらに叫ぶ。
ああいう奴も苦手だなぁ、俺。助かったけど。
「あ、部長ー!すいませーん!!」
振り返って叫んだ新谷。

699 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2009/09/20(日) 23:59:33 ID:iKCAl/xv
そして、立ち上がって
「呼ばれちゃった。じゃあね、大野君!」
小さく手を振って駆けて行く。
「……死ぬかと思った……」
「お疲れ様」
……暑い。
───────────────────────

700 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2009/09/21(月) 00:00:47 ID:EY8k8LLy
久しぶり。
もう秋だね……。

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0ch BBS 2004-10-30