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[第七弾]妹に言われたいセリフ

77 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/05/14(月) 22:44:04 ID:qt3/8Eya
今日は良い天気だ。
俺の部屋に差し込む暖かい日差しの中、何だか眠くなってきた。
「ふぁ……いっそ昼寝しちまうか」
大きなあくびを一つ。
そして、そのままベッドに倒れ込む。
目を閉じればすぐにでも夢の世界に突入できそうな……
ピンポーン
……玄関のチャイム。
「誰だよ……」
不機嫌をたっぷり込めて呟く。
ここで、ふと思い出した。
そういえば、あの注文したもの、そろそろ届くはず……。
俺は焦る気持ちを抑えて立ち上がり、小走りで玄関に。
印鑑片手にドアを開けると、そこには……
「突撃!お勉強会ぃー!!」
……教科書片手に、やたらテンションの高い隣人、相川梨那。
と、
「お勉強会ぃ〜!!」
「……ぉおべんきょう……かぃ……」
石川姉妹。
と、
「お邪魔します、州田先輩」
立花妹。
と、
「えと……はじめまして、州田先輩」
……この人、誰よ。

78 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/05/14(月) 22:45:16 ID:qt3/8Eya
「あ……あぁ、はじめまして。えっと……」
「天童です。天童葵」
……あぁ、名前は知ってるぞ。
「あぁ……天童の妹さんか」
「あ、お兄ちゃんのお友達ですか?兄がお世話になってます」
「いやいや」
……これが噂の天童葵か、こんな近くで見たのは初めてだな……。
しかし、なるほど……いいなぁ、天童……。
「ささ、自己紹介も済んだし、上がって上がって〜」
何故か仕切っている梨那。
俺は、皆を引き連れ俺の家に侵入しようとしている梨那の首を掴んで
「これは一体、どういうことかな?相川クン?」
「にゃ?勉強会でしょ?」
「何で俺の家でやるかって聞いてんだよ……!」
少し力を込める。
「にゃにゃっ!!痛い痛いっ!!だって、テスト近いし、お兄ちゃん頭良いし……!!」
「そういう問題じゃねぇだろ……!!」
「に゙ゃあーっ!!」
思い切って爪を立ててみる。
オロオロと俺たちを見ている招かれざる客たち。
「……」
さすがに……ここに来て追い返すわけにもいかんか……。
「しょうがねぇなぁ……」
わぁ、俺ってば大人〜。

79 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/05/14(月) 22:47:15 ID:qt3/8Eya
「いいんですか、州田センパイ?」
と、双子の姉、唯奈ちゃんが尋ねる。
……キミ、梨那の次ぐらいに乗り気だったじゃないか……。
「どうせ昼寝のつもりだったから」
「でも……本当にいいんですか?」
と、立花妹が心配そうに尋ねる。
同感、とばかりに首を縦に振る千奈ちゃん。
「ま、立花妹には夕飯ご馳走になったりするしな。その礼にはいいだろ」
「そうそう遠慮なく〜」
「梨那は黙ってろ」
「にぎゃーぁっ!!」
……つーわけで、女だらけの勉強会が何故か開幕してしまいました。
───────────────────────
大体、女ってのは何でこんな話すのが好きなのかねぇ……。
テーブルのまわりに群がる可愛い女の子+1から少し離れたソファ。
ため息交じりで、ページをめくる。
今やるべきことはハッキリ言って、ない。
だが、客人の手前、さすがに楽な姿勢をしすぎるわけにもいかず、仕方なく勉強してるフリ。
「ねぇねぇ、お兄ちゃん。ここ、教えてよー」
ノート片手にモソモソやってくる可愛くないの。
「またお前か……どこだよ……」
「ここー。なんでこうなっちゃうのー?」
「あぁっと……分子、分母に3をかけるんだ。そうすりゃ、この定理を使えるだろ?」
「ほぉー……そういえば授業で聞いたかもー。ありがとー」
笑顔で礼を言って、また群れの中に戻る一人だけ二年生の梨那……。
……って、よく考えたら、
「天童妹がいるんだよなぁ……」
天童妹は勉強も出来るらしいし……立花妹、石川妹だってそんな悪いとは思えない……。
ってことは、このまま俺は梨那専用の存在……?

80 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/05/14(月) 22:48:05 ID:qt3/8Eya
「私がどうかしましたか?州田先輩」
やや前方から、天童妹の声。
少し驚いたがそのまま、
「いや……天童さんがいれば基本的には俺は必要ないなって」
「あはは、そんなこと無いですよ」
「確かに、二年の勉強は無理みたいだな」
横目でペンを握る梨那を見る。
天童妹はそんな俺を見て、
「ホント仲良いんですね?」
と、クスリと笑う。
「そう見えるか?」
「はい。ホントの兄妹みたいです」
「それ皮肉?まぁ、幼馴染なんて兄妹みたいなものだけどな」
「……そうですか……」
俺の一言に、急に沈む天童妹。
「何よ?」
「……いえ……州田先輩に言うことじゃ……」
「ふぅん……まぁ、あの天童だしな。難しいよなぁ」
「え……?」
驚いた様子の天童妹。
「違うか?」
とは聞いてみたものの、確信に近いものなら持っている。
俺の顔は不敵な笑顔に見えているかもしれないな。
「……さすが……ですね」
「まぁね」
誤魔化しても無駄だと判断したのか、思ったよりもあっさり答える天童妹。

81 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/05/14(月) 22:48:51 ID:qt3/8Eya
「ふぅん……じゃ、妹が原因じゃないのかねぇ」
「原因……?」
「アイツの女嫌いは筋金入りだからな……いや、だったというか」
「え……」
「昔からね。ちょっと前までは会話も出来なかったんだけど、最近は随分楽しそうに話してやがるからな」
天童妹が、ギュッと拳を握る。
そうだ。この人はこういう難儀な人間だったな……。
フォローフォローっと。
「てっきり可愛い妹のお陰かと思ったんだが」
「……」
何も言わない天童妹。
「ま、いいんじゃない。真実はどうあれ、そういうことでさ。少なくとも、俺はそうだと思うけど」
「はい……」
「俺を疑ってる?」
「いいえ……じゃあ、そういうことにしておきますか……」
天童妹の瞳に、次第に力が戻る。
それを満足げに眺めていると、
ピリリリリリリリリ……
携帯の着メロが鳴り響く。
画面に書かれた名前。
タイミングだけは外さない男に、思わず笑ってしまう。
「おぅ、どうした天童」
ピクッと反応する天童妹。
「州田?悪いんだけど、問題集の58ページの問2を教えて欲しいんだけど……」
「……あー、この問題か……電話口で説明するの面倒だから、お前、俺の家来いよ」
「え?でも、俺、州田の家知らないぞ?」
「気にするな。迎えが行く」
「いいのか?」
「あぁ。家で待ってろよ」
「わかった、ありがとな」
「ふっ……こちらこそ」
「何故州田が礼を言う?」

82 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/05/14(月) 22:49:43 ID:qt3/8Eya
「別に。じゃ、切るぞ」
「待ってるよ」
黙って電話を切る。
そして、天童妹に向き直って。
「つーことで、頼むわ」
「……はい」
「あぁ、ちょっと待って。例の問題の答え、今書くから」
「州田先輩……」
「ん〜?」
必死でペンを動かしながら返事をする。
「ありがとうございます……!!」
「べつに。暇つぶしさ」
「そうですか。じゃあ、私、先輩と相川先輩のこと応援しますから」
「……」
……茶化されるのには慣れてるよ。
「ほれ、書けた」
「ありがとうございます……」
「ま、友達だからな。あの天童だから、腹立つこともあると思うけど、頑張れよ」
「はい!!」
お辞儀をして、我が家を後にする天童葵。
「ありゃー、葵ちゃん帰っちゃったんだー」
その後姿を眺めながら、梨那が呟く。
「あぁ、用事があるんだと」
「そっか。残念ー。それより、お兄ちゃん、ここ教えてよー。」
「んー?どれ?」
「58ページの問2ー」
「あぁ、これはなー……」

今頃天童家では何が起こっているのやら……。
まぁ、天童だしな。
妹怒らせてないといいけど……。
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0ch BBS 2004-10-30