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[第七弾]妹に言われたいセリフ

540 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/07/13(日) 00:22:04 ID:ZGhsxL+r
「いっくんは……私じゃ嫌?」
「そんなこと……いや、俺だって、このはのこと……」
「こと……?」
ニヤニヤしてる……。
ふと考える。
このはなら……このはならば、俺は信じることが出来る気がする。
そこまで決まれば、あとは勇気だけだ。
このはの目を見る。大きく息を吸う。
「好き……だ」
あぁ、顔から火が出そうだ……。
「ふふふふふっ……」
顔を伏せて笑い出すこのは。
さっきから、こいつのリアクションは……
「わ、笑うなよ!!」
「ふふふっ、ゴメンね。でも、両想いだったなんて……嬉しくて……」
「このは……」
「あと、それ!!久しぶりに、このはって呼んでくれた!」
「嫌ならやめる」
「じゃあ、止めないでいいよー。ずっと呼んでいいよ、いっくん」
「そうか……」
テンションの高いこのは。
満更でもない俺。
「ねぇねぇ、いっくん!もう一回、名前で呼んでくれないかな?」
「このは……」
「うぅ〜!このは、幸せだよっ!!」
「うおっ!?」
「きゃあっ!?」

541 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/07/13(日) 00:26:58 ID:ZGhsxL+r
勢い良く俺の胸に飛びついて来るこのは。
受け止めてもらえると思ったのかもしれないが、突然の事過ぎて対応できずそのままベッドに倒れる。
「いっくん……」
「……」
俺の胸に寝転ぶこのは。
顔が近い……
これは……ヤバい雰囲気……。
「いっくん……さっきの約束。まだ有効かな?」
「……このはが有効だと思えば」
「じゃあ……いっくん。このはのこと……いっぱいいっぱいいっぱい、ずっとずっとずっと!幸せにしてください!」
俺の腹の上に座って言うことじゃないな、と思いつつも……。
「うん……」
「へへ、じゃあ……」
意地悪に光る子猫のようなこのはの眼……。
「こ、このは……!?」
「このはの初めて……もらっちゃってください!」

……。
接吻ですからね……?
───────────────────────
日付が変わってしまいましたが……続きです。もう一つは、少し時間を開けることにしましょう。
幼馴染……自分の書いた作品にムカついたのは初めてだ……w
ともあれ、今の僕にはこれが精一杯です……
リクエストなんて身の丈に合わないことをするもんじゃないですね……。

542 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/07/13(日) 01:37:31 ID:mpRsHQqg
リクエスト書いてくれてありがとうございます!

いやはや、やっぱりさすがです。
何か読んでいて萌えすぎて体中がむずかゆくなってきたw
エロスレがまだあった頃なら続きはそっちで…ってことになったかもしれない!?

ネガティブ兄の方も待ってますのでよろしくです!

543 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/07/14(月) 03:37:26 ID:/OEt1vhW
これは萌えた。
このはタン良いキャラだ

544 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/07/15(火) 23:14:00 ID:9wvz9mwm
その日は雨が降っていた。
氷のように冷たい雨が、持ち主から離れた傘に弾かれ音を立てる。
その音が途絶えた瞬間、冷え切った体にさらに冷たい血が流れ始めたのを感じた。
目の前の敵と鈍く輝く刃を、仇として認識する。
「……お前か、お前が遥を……」
───────────────────────
「結局、傘は必要なかったな……」
帰り道。
すっかり持て余してしまった傘の先端を軽く蹴飛ばす。
「わかんないよ。今から降るかも」
隣の遥は空を見上げながら、
「……確かに」
青空が大嫌いな俺でも気持ちの悪いと感じる色の空。
いつ一雨降ってもおかしくはない。
「ま、もう家だし俺には関係ないけどな」
「私は買い物に行かなくちゃいけないから関係有るんだけど……」
「そうだったな。付き合おうか?」
「ううん」
珍しく提案した俺。遥は首を小さく振って
「今日は、お兄ちゃんには秘密」
「何を?」
「お兄ちゃんの好きなものを作るから、今日は付いてきてくれなくても良いんだよ」
「ほぅ……」
遥もなかなか可愛いことを言う。
さほど気にはならないが、少しは楽しみにしておこう。
「じゃあ、私は荷物置いたらこのまま行くから、留守番よろしくね」
「おぅ。まかせとけ」
「うん、じゃあね」
小さく手を振って、遥は制服のまま再び家を出て行く。
「さてと……」
一人残された俺は、とりあえずポストを。

545 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/07/15(火) 23:14:32 ID:9wvz9mwm
ダイレクトメールが数枚と……ファンシーな封筒。
遥宛かと思ったが、どうやら俺にらしい。
といっても、差出人も住所も、切手も何もない。
……直接ポストに入れたのか。
正直言って怪しかったが、一応中を確認する。
「何だ……こりゃ……」
中に入っていたのは、4枚の写真と一枚のメモ。
写真には遥、あきら、宮原、真雪が。
しかし、顔の部分には絵の具で描かれたような掠れた赤のバツ印。
そしてメモには
「『もうすぐ会えるね』……って……」
性質の悪い悪戯……というワケでも無さそうな予感……。
肝心なときに一番話を聞いて欲しい人がいない……。
少し悩んだが、一応これも俺の責任だ。
気は進まないが、皆に連絡を入れようと決断した。
その時
「お、お兄ちゃん!!」
あきらが、必死の形相でこちらに駆けて来る。
「……どうした?」
並々ならぬ鬼気を感じ、俺もシリアスモード。
「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
堰を切ったように、俺の胸で泣き始めたあきら。
「ど、どうしたんだよ!?」
「怖かったよ!怖かったよぅ!!」
「何が?」
「スコップ持った変な女の人に追っかけられて……必死で逃げてきて……!!」
「で、大丈夫なのか?ケガは!?」
「ボクは平気……ちょっと、転んで膝擦り剥いちゃったけど……」

546 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/07/15(火) 23:15:17 ID:9wvz9mwm
「でも……何なんだそいつ……あきらの危ないファンか何かか?」
「分かんない……けど……ボクのこと……邪魔だって言ってた」
「邪魔……?」
「ボクがいると、あの人のところに行けない……って」
「……」
もしかして……。
「こりゃ不味いかもなぁ……」
「何が……?」
「さっきこんな封筒がポストに入ってたんだよ」
さっきの写真をあきらに見せながら、話を続ける。
「もしかしたらなんだが、この写真のみんながヤバいんじゃないのか」
「だとしたら……」
「とりあえず、みんなに伝えよう!!あきらは宮原に連絡してくれ」
「う、うん……」
俺は……とりあえず真雪に連絡を取る。
焦っている空気。
徐々に不安になってくる。
ケータイを持つ手が震えているのを自覚し始めていた。
───────────────────────
時間空けるっていうのも限度があるだろう……。
しかも、今回はここまでで。……連投制限五回はキツいです……。
一応、僕の想像するヤンデレのお話になりますが、まぁ、あまりヤンデレ度合いには自信は無いです。

あと、もう一つ>>527さんのリクエストを頂いてますが、
登場人物がネガティブになってしまう奇病に冒されたため、もう少し時間がかかります。申し訳ない。

547 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/07/16(水) 00:24:06 ID:NH7/avOq
これは怖いな…
これからどうなるのか気になるわ…

548 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/07/16(水) 15:36:54 ID:aONR3D7y
続きが気になる

549 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/07/16(水) 21:47:24 ID:yQpYwLUi
ヤンデレキターーーーーーーーーーーー

550 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/07/20(日) 00:33:25 ID:awpxw07h
とりあえず、宮原も真雪も学校に居るらしい。
遥だけが、連絡が付かないまま。
「探しに行ってくるから、あきらは家の中で待ってろ」
「ぼ、ボクも行くよ!!」
「駄目だ。危ない」
あきらも対象であることに変わりは無い。
あきらは少し不満そうな顔をしながら、
「分かった……気をつけてね」
「ああ」
返事も適当に遥が向かったであろう道を走り出す。
何も無いなら何も無いで良い。
大袈裟なら大袈裟で良い。
が、この胸騒ぎを気のせいで片付けられるほど、俺も素直な人間じゃない。
今日は昼間だというのに暗いし、このあたりは人通りもない。
絶好の襲撃環境と言ったところか。
「……」
我ながら最低の冗談に呆れて物も言えない。
良い感じに絶望感を蓄えながら、緩やかなカーブを曲がる。
視界が開けた瞬間、足が止まった。
地面に開いた見覚えのある傘。
その向こうに見える、どこかの学校の制服の女。
そして、その手には鈍く輝くスコップ。
足を止めた瞬間、雨が降っていることに気付いた。
「あ、兄上様……」
確かに女はこう言っていた。
もちろん面識はない。
危ない女の登場に、一気に全身の筋肉が張り詰める。
「……お前か、お前が遥を……」
「ううん。まだなの」
予想以上の軽口に、血液が凍ったまま沸騰し始めているのを感じる。

551 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/07/20(日) 00:34:07 ID:awpxw07h
「まだ、生きてるもの」
「……」
一安心。
が、この言葉はつまり、
「でも、安心して兄上様。この女、もうすぐ死んじゃうから」
「……」
「見てて」
その得物を振りかざす女。
それを黙って見ている気は更々無い。
手に持った傘を全力で投げる。
自分のコントロールに自信が無い俺は、傘の軌跡を見ずに距離を詰め、女と遥の間に入る。
「……!?」
驚きからか、顔を引きつらせている女。
「遥!!起きろ!!」
女から眼を離さずに後ろに下がり、遥の肩を抱き上げる。
「ん……お兄ちゃん……?」
ゆっくり目を開けた遥。
重いものをおろしたように、全身が軽くなったのを感じた。
「良かった……。怪我とかないか!?」
「う、うん……大丈夫だよ」
「はぁ……本当に良かった。立てるか、遥」
「うん。ふふ、お兄ちゃんもそういう顔するんだね」
「何が?」
「なんでもない」
遥の微笑みにホッとする。
という状況ではないようで、
「何をするんですか、兄上様。遊びたいなら、あとでゆっくり……」
「何故こんなことをする」
こいつの意味不明な話はもう沢山だ。

552 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/07/20(日) 00:34:41 ID:awpxw07h
「もちろん兄上様のためですよ。あんな女達がいるから、兄上は私に会いに来れない……」
かみ合わない会話。
次第にイライラしてくる。
「だから、兄上様、意地悪はやめてそこを退いてください」
スコップを構える女。
答えなど考えるまでもない。
牽制のつもりで放つ蹴り。
「兄上様!?」
本気で驚く辺りが癇に障る。
「次は当てるぞ」
「冗談は辞めてください」
それでもずんずんと進んでくるこの女。
どうも威嚇で応じてくれるほど楽じゃ無さそうだ。
警告通り、今度はマジ当て。
といっても、蹴るというより押す感じに近いが。
バランスを崩し、水溜りの中に突っ込む女。
泥が跳ね、彼女の顔にかかる。
これで退いてくれるという淡い期待……
「ふふっ……」
しぶとい……。
笑いながら立ち上がる女。
「兄上様を私のものにしちゃうのが先みたいですね」
とスコップを振り上げる。
……つまり、標的は俺になったと。
「遥。下がってろ」
「だ、大丈夫なの!?」
「当然」
遥を下がらせる。
あまり、取り乱している姿は見せたくないんだけど。
「はぁ……」
意識を……塗り潰す……。
───────────────────────

553 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/07/20(日) 00:35:15 ID:awpxw07h
ネガティブ兄vsヤンデレ風、第二回。
……まぁ、そろそろお蔵入りになるべく台本だったという意味が分かっていただけるのではないかと。
僕自身がヤンデレという属性をいろんな意味で理解していない、というのもそれに拍車をかけていますね……
そんなこんなで、もう少し続きます。申し訳ない。

554 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/07/20(日) 01:03:45 ID:MBENuPvX
やっぱり遥カワイイな
続きがんばって

555 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/07/20(日) 01:28:36 ID:KmCdEBN5
これをおくらいりにするなんてとんでもない!

ネガティブ兄ちゃんが頼れる男に見えてきたw
続き待ってますよ!

556 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/07/20(日) 16:23:02 ID:3XeAO+7U
冷蔵庫からフルーチェを取り出して、部屋で食べる。
バターン!
勢いよくドアを開けて妹登場。
「おにーちゃん!わたしのフルーチェ取ったでしょ!?」
すごい剣幕に思わず固まる俺。
「あ!やっぱり勝手に食べてる!返せっ!」
俺の手からフルーチェの器を奪い取る。
「もうっ!ほとんど食べちゃってるじゃん!」
「あうっ・・・ごめん」
「口の中のも返せっ!」
怒りながら、いきなりディープキス。
ちゅぱっちゅぱっ
「フルーチェおいし〜」


あーあ、妹がいるやつっていいな〜
こんなことばっかりしてんでしょ?

557 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/07/20(日) 21:27:08 ID:iLA2E87U
>>556
そうだね、前半はそれとまったく同じ状況が起こり後半は地獄絵図だね。

558 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/07/21(月) 15:26:48 ID:7Zvms0Qz
食い物を巡り兄妹で地獄絵図・・・
まぁ、普通にあるな

559 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/07/22(火) 13:48:06 ID:c78jGZa6
おちんちんは食べ物です

560 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/07/26(土) 19:46:26 ID:Fj1Ipo0g
続き期待

561 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/07/29(火) 23:03:51 ID:wz1/a6Xq
「はぁ……」
ため息と一緒にお兄ちゃんの頭が、一気に下がる。
「お、お兄ちゃん!?」
危ないっていう自覚が無いのか、前も見ていないお兄ちゃんに思わず焦りの声が出てしまった。
どうしよう……でも、間に合わない……。
そう思った瞬間、斧のように振り下ろしたスコップを、左足を軸にクルッと回って避けるお兄ちゃん。
そしてその勢いのまま、側頭部に強烈なキック。
「くっ……」
体勢を崩した女の子の右手を狙って、全体重をかけた飛び蹴り。
女の子の力が抜け、なすすべなくスコップが落ちる。
お兄ちゃんはそのままもう一回転、女の子の足を間髪入れずに払った。
「うわぁ……」
あっという間に、相手を倒してしまった。
……強い……無駄に……。
でも、足技ばっかりなのは何で……?
「はぁ……」
でも、頭は垂れたまま。
お兄ちゃんは落ちたスコップを拾って、
「お前は良いよなぁ……」
「え……」
「そんな簡単に人を殺すとか言えてさ……どうせ俺なんか……」
寝転がった相手の耳元でネガティブ全開な発言を繰り返すお兄ちゃん。
暗い……お兄ちゃん、暗いよ……。
「……」
あんまり聞こえないけど、何言ってるんだろう……。
相手の女の子も何だか暗い顔してるし……。
逆に可愛そうになってきちゃったな……。

562 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/07/29(火) 23:04:30 ID:wz1/a6Xq
「は、遥ちゃん、大丈夫!?」
後ろから声がして振り返る。
「みんな……。私は大丈夫だけど……」
あきらさんを先頭に、宮原さんと冬月さん、そしてお兄ちゃんの友達の州田さん。
「あれ、州田さん?どうしたんですか?」
「私が……頼んだ……」
「冬月先輩が?」
この二人……どういう関係だろう……。
まぁ、いいけど。
「で、遥さん?何をやってるんですか、アレは……?」
宮原さんが恐る恐る指差した先には、
雨の路上で傘も差さずに、寝転がっている女の子の耳元に片膝付いてボソボソ呟く男の人。
どう見ても見ても怪しいよね……。
「それが私にも……」
「うーん……遥ちゃんにも分かんないんじゃお手上げだねー」
「ですね」
「……だね」
この人たちは……私を何だと思ってるんだろう……。
「でも……そろそろ……」
「そ、そうだね。お兄ちゃーん?」
恐る恐る。
矛先がこっちに向いたらヤダなぁ……。
「ん?あぁ、遥。いや、すっかり夢中になってしまった」
と、振り向いたお兄ちゃんはビショビショだけど異常なほど爽やかで、ちょっと気味が悪い……。
「あぁ、みんな。来てたのか」
みんなリアクションが無い……。引いてるんだ、やっぱ……。

563 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/07/29(火) 23:05:04 ID:wz1/a6Xq
「……その人は?」
お兄ちゃんの笑顔とは対照的に、さっきの女の子はこの世の終わりのような顔をして、地面に倒れている。
「さぁ。さっきから一言も喋らないんだ」
……大丈夫かな。
「……どうするの?」
「んー……警察で良いんじゃないか。電話しよう」
軽いノリで警察に電話するお兄ちゃん。
……説明するの、私なんだろうなぁ……。
───────────────────────
お久しぶりで……。ネガティブ兄vsヤンデレ風、第三回。次で終わりになります。
まぁ、多くは語らずとも、やっぱり封印すべき作品だったなぁとこれを貼る前に思いました……。

ネガティブ兄が蹴り主体で戦うのは、もちろんあの人をリスペクトだからです。

564 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/07/30(水) 19:21:27 ID:8y448u7E
遥可愛いよ遥

565 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/07/30(水) 23:38:31 ID:sqKmXWKT
続きも期待!

566 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/08/08(金) 15:12:48 ID:RoWyTdZh
【調査】携帯電話「1日のほとんどがマナーモード」…若い世代ほど、また男性ほど着信音を気にしている傾向
http://mamono.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1218171511/286

286 名前:名無しさん@九周年[] 投稿日:2008/08/08(金) 14:59:39 ID:0MjvY/I40
電車のなかで俺の携帯が携帯がなって
「お兄ちゃん!メールが届いたよっ!」と電車の中に響き渡った
すげーゾクゾクした

567 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/08/13(水) 00:33:06 ID:YXmJE+DK
「つまり、アレはお兄ちゃんへの愛情表現のつもり……ってこと?」
「この文章を平たく解釈するとそうなるな……」
後日、びっしりと書かれた紙を読みながら。
「だが、一応心を入れ替えたってことらしいがな」
「安心して良いのかなぁ……」
ちょっと不安そうな遥。
まぁ、ああいう人間は何するか分からないからな。
「その……悪かったな」
「何が?」
「完全に俺のことなのに遥や真雪達には迷惑をかけた」
「ううん、気にしてないよ」
「……」
「お兄ちゃんが私のことを助けに来てくれたのが嬉しかった。だから、今回は許す」
「そうか」
本当はもっと責めてくれた方が、こちらとしても気が楽なのだが……
遥の微笑を見ているとそういう気分ではなくなってしまう不思議。
「うん。で、何が問題なの?」
「近いうちに本人が謝りに来るらしい」
「あぁ……お兄ちゃんには大問題だねぇ……」
「それもだし……それすらも罠なんじゃないかってふと思うんだが……」
「お兄ちゃんのネガティブも今回ばかりは大袈裟じゃない気がしてきたよ。あの人……ちょっと普通じゃないからね」
「……そうだな。その時は、俺一人で行く」
気は進まないけどな。
遥は心配そうに俺の顔を覗き込んで、
「大丈夫……?」
「死ぬほど嫌だ。でも、仕方ない。遥に危険が及ぶ」
「お兄ちゃん……」
「何だよ?」
「たまにはカッコいいこと言うんだ」
「……すまん……」

568 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/08/13(水) 00:33:39 ID:YXmJE+DK
「え?褒めたのに!?」
「いつももっとカッコよかったらよかったのに……」
「それはちょっとキモいと思うよ……」
「キモい……」
気持ち悪いならともかく、キモい……。
もう立ち直れない……。
「……どうせ俺なんか……」
「お、お兄ちゃん?そんなに落ち込まないで!?別にお兄ちゃんに言ったんじゃないからね!?」
「……」
遥の声も遠く聞こえてきた。
ピンポーン。
インターホンが鳴った……気がする。
「わ、お客さん……えと……お客さんが来たから行ってくるけど、落ち込んじゃダメだよ!?」
「……」
「あと、自棄起こして、洗剤一気飲みとかしちゃだめだからね!?」
しねぇよ……。
「あと……あとは……」
「良いから行けよ……」
「う、うん……!」
テンパる遥を追い出して、ソファーの上で一人体育座り。
と思っていたが、すぐに遥が戻ってきて
「お兄ちゃん?」
「……何だ?キモい俺に何か用か……」
「噂をすれば。だよ……」
「いっ!?」
マジかよ……まだ心の準備が……。
落ち込んでいる暇がなくなった俺は……ソファーに座ってみたり。

569 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/08/13(水) 00:34:11 ID:YXmJE+DK
「あ、あの……突然お伺いしてすいません」
この前の女が入ってくる。
「遥は下がってなさい」
一応、俺が命令したという形に。
うん、なかなか良い判断だぞ、俺。
「まぁ、座って」
「はい……」
うーん……なんつーか、狂気の色が消えているし……心配には及ばないかもなぁ。
「あの……この度はご迷惑をおかけしました。お怪我とかありませんでした?」
「はぁ、あの……こちらこそ、随分暴れまわってしまって……」
あんまり記憶にないが。
「とんでもないです!!私を止めてくれて……ホントに感謝してます」
「もう……大丈夫なんですか……?」
「そのことなんですが……。私……気付いて……しまって……」
恥ずかしそうに俯いてしまった女。
「……何にです?」
売り言葉に買い言葉。仕方なくこう聞いてみる。
すると、女はゆっくりと顔を上げて、
「蹴られることがあんなに気持ちの良いものとは……思いませんでした……♥」
訂正だ!!この女、怖ぇえ!!
「ちょ、ちょっと……!?」
「これからも、もっともっといじめてくださいね、兄上様♥」
……全身の体液が逆流しているような気分だ……。
拒絶する気力も、逃げる気力も、冗談にする気もない……。
「うぉぇ……」
喉の奥がちょっと酸っぱい……。
……夢なら……覚めてくれよ……。
───────────────────────

570 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/08/13(水) 00:36:15 ID:YXmJE+DK
お久しぶりでございます。ヤンデレ編、最終話です。
この程度のものを引っ張りすぎじゃないか……。
まぁ、なんつーか、やっぱりヤンデレってよく分かんないなー、とか、シリアスはガラじゃないなー、とか。

せっかくの夏なんで、夏の話でも書きたいと毎年思うんですが……
色々している内に毎年夏が終わってしまう……今年もダメそうだ。

571 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/08/13(水) 16:52:22 ID:c+5eaziV
お疲れさん。
もう休んでいいよ。

572 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/08/13(水) 21:59:27 ID:3Ph6qHdD
流星さんお疲れさま
遥可愛いなやっぱり。

573 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/08/14(木) 00:41:16 ID:nUX4dlb0
グッジョブ!
ヤンデレ怖えぇ…

>>572
流星…?

574 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/08/14(木) 01:14:42 ID:sVuwsfEL
>>572
遊星の間違いだったorz


575 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/08/14(木) 01:48:14 ID:giEZl0fy
遥は俺の妹

576 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/08/29(金) 08:31:59 ID:8GixXOzw
作品来ないかな

577 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/08/29(金) 23:09:11 ID:HlD1hw5m
下がり過ぎ

578 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/08/31(日) 22:53:30 ID:d7Hris2B
>>563
あの兄貴ですね、わかりますw

579 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/09/11(木) 11:14:47 ID:qmUsMVEx
保守

580 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/09/13(土) 20:47:07 ID:CXX2G0FI
この前、友達の部屋でゲームやってて、そいつにお菓子とジュースを買いに行ってもらった。

そのまま一人でゲームしてたら、いきなりガツーンと脳天に衝撃!
涙目で振り向いたら、友達の妹さんがいた。驚いて青ざめた顔してる。
どうやら友人と間違えて、脳天に思い切りエルボー落としたらしい。

「なんなの?」って言ったら、妹さんの表情がぶわわっと泣き顔になって、
「間違えたのごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめ(ry」

大粒の涙をボタボタこぼしながら泣き叫びはじめた!
さらに嗚咽しながら俺の足にすがり付いてくる。
俺の足に涙がボトボトかかって、ジーパンごしに涙の熱さが伝わる。
人ってこんなにも大量に涙が出せるもんなのか〜と冷静に思った。

泣きながら必死に「ごめんなさい」を繰り返す妹さんに、
「いいから、だいじょうぶだからw」と笑顔で答えながら、ええ、思い切り勃起しましたよw

581 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/09/14(日) 10:37:17 ID:skTJrN4h
アゲん

582 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/09/15(月) 00:30:16 ID:IVS92ooz
>>580
チュッチュしたのか?

583 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/09/15(月) 08:22:22 ID:hNZmqcFO
>>580
そこから友人の妹フラグですね。わかります。

584 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/09/17(水) 23:13:07 ID:yyOh+6eC
エルボーで死ななくて良かったね。

585 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/09/17(水) 23:56:46 ID:yyOh+6eC
兄貴とか兄さんとか呼ばれたいな。弟にはあんちゃんと呼ばれるが…

586 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/09/18(木) 00:32:14 ID:JvM8fzct
「反省したら今からPSP買ってくるといって、その通りに実行しなさい。」

587 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/09/23(火) 19:00:50 ID:H/SCoLxv
>>580
まだマシだろ・・・俺なんか友達と遊んでたら、そいつの妹がしょっちゅう嫌がらせしてくるぞ。
しかも地味に嫌な事ばっかorz俺は妹さんに嫌われるような真似した覚えはないんだがな・・・・
まあ、相手は中学生だから別に腹は立たないけど

588 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/09/23(火) 21:19:03 ID:EwzDHk3y
それなんてフラグ?

589 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/09/23(火) 21:38:07 ID:H/SCoLxv
>>588
まあ、その子かなりブラコン入ってるから、多分俺がいるのが邪魔なだけだと思うが。
でも、女相手ならともかく、男相手にそれはないか・・・・とするとやっぱ単純に俺が嫌われてるだけかなorz
いいさいいさ、嫌われるのは実の妹で慣れてますよっと

590 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/10/07(火) 20:44:38 ID:FQ8IrfQh
保守。
大分廃れたねぇ

591 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/10/07(火) 20:53:11 ID:COg0mzVf
もう気が済んだんだろ

592 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/10/14(火) 22:50:02 ID:IazpJaBZ
保守

593 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/10/14(火) 23:52:53 ID:eV1DDWZT
ほす

594 :No.2 :2008/10/15(水) 00:41:19 ID:WVlF/cqB
どもども
ご無沙汰しております

近日中に過去ログ倉庫を移転させます
行き先はさくらの既存mewlog垢か
このたびCORESERVERにて新たに取得した垢のどちらかです
いずれにせよ0ch Scriptによる掲示板形式とし
専ブラで閲覧できるようにさせて頂きます
移転が完了次第お知らせ致しますので
何卒ご理解のほどよろしくおながい致します

595 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/10/15(水) 22:11:17 ID:OJIW1/DB
おながい致します…

596 :こんなのはどうだ :2008/10/16(木) 21:58:39 ID:wA8jl2wk
「にいさん」
「ん?」

「まるむし あげようか」(手を出す)
「・・・」

597 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/10/17(金) 01:26:35 ID:bVTML3zX
>>594
お疲れ様です。

598 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2008/10/17(金) 11:53:36 ID:eOK9nk3U
>>594
おつですー

599 :No.2 :2008/10/19(日) 23:32:12 ID:ryx1M6zp
どもども
やっと作業が完了しました
万全を期してはおりますが、不具合その他がございましたら
このスレにてお知らせ下さいませ

妹に言われたいセリフ
http://mewlog.sakura.ne.jp/sisterswords/

600 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/11/04(火) 08:41:54 ID:vPU1fUCz
600

601 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/11/20(木) 23:17:07 ID:rdg6cRwc
人が……

602 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/12/09(火) 09:14:10 ID:JbUcbkkh
いない…

603 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/09(火) 21:08:40 ID:XH5KY8zg
いるけどね。作品無いけど。

604 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/24(水) 21:50:36 ID:5IluGuZ5
この時期は、俺みたいな人間には生き辛い。
誰かの誕生会なんて都合のいい言い訳に過ぎない。
結局、人は自分の愚かさに自覚していて、その愚かさを誤魔化すために口実を作り、騒ぐ。
それはそれでも構わないが……何故、そのメカニズムに乗らない人間を卑下するのか、それだけは不満だ。

「……今年の言い訳は決まりましたか?」
隣の遥が、ため息混じりに尋ねた。
「……大体……」
遥の質問に対し、言葉交じりにため息で返す。
「この時期は最低だな……」
まだこの俺に追い討ちをかけようと手薬煉引くテレビを、リモコンで消し、またため息をつく。
「みんな、楽しいことが大好きだからね」
「楽しめない俺みたいなヤツもいるけど……」
クリスマスの日って、みんな何してんだろうな。
「お兄ちゃんだってその気になれば……」
「その気にはならないんだ。不思議なことに」
「じゃあ、しょうがないよ」
「しょうがないな」
でも、憎い気持ちは少しある。不思議なことに。
自覚できるほどの苦い顔。
「何かクリスマスプレゼント買ってあげようか?」
「いや、そういうのは毎年断わっているだろ」
毎年大野家にはクリスマス禁止令が……というか、遥が空気呼んでくれるだけだが。
「うん。でも、少しでも楽しみがあったほうがいいよ……」
意味深な遥。
「どういうことだ?」
「どういうことって……」
何だか呆れたご様子。
俺、何か変な事言っただろうか。
……まぁ、いいか。

605 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/24(水) 21:51:09 ID:5IluGuZ5
「とにかくだ。今年もクリスマスとは縁の無い年末を送りたい……」
この単語を自分で言うのも嫌だな……。
ちょっと口の奥が苦くなる。
「だと良いけどね……」
何だかさっきから引っ掛かる遥。
「どうした、さっきから……」
もしかしてご機嫌斜めでいらっしゃる?
恐る恐る尋ねてみた。
「いや、だって……」
躊躇いがちの遥。
「?」
意味が分からない俺。
「何何何?ケンカはダメだよ?」
背後からの声。
……。
……?
「あきらっ!?」
「やっほー。久しぶりだね、お兄ちゃん」
冬でも元気なボク女……。
「……勝手に入ってくるなよな」
「勝手じゃないよ。ちゃんとお邪魔しますって言ったよ」
別に突っ込むほどのテンションは無い。
腹を立たせながらも流す。
「何か用か」
「クリスマスの予約を取りに来たの!」
今一番聞きたくない言葉をさらりと言いやがった……
「遥……頼む」
「え……うん……えっとね、あきらさん……?お兄ちゃんは、クリs……が大嫌いで……」
「うそだー。そんな人、聞いたこと無いよー」
もはや俺の存在があきらの常識外……ヘコむなぁ……。

606 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/24(水) 21:51:43 ID:5IluGuZ5
「ね?ウソだよねっ?お兄ちゃん?」
リアルで信じていないらしい。
いつもより何だかテンション高めのあきらが後ろから、俺の首に巻きついてくる。
「あっ……お、お兄ちゃんっ!!怒っちゃダメだからねっ!?」
「怒りはしないけど……」
はぁ……もう今年終わらねぇかなぁ……。
「だから、お兄ちゃん。クリスマス、ボクと一緒に遊ぼう!!」
「……」
「お仕事があるから、夜からになっちゃうけど……でも、いいよね!クリスマスは夜でも!!」
……帰って欲しいなぁ。
「じゃあ……私は……朝でもいいよ……」
またも背後で声。
「真雪か……」
「うん……。寒いね」
「ああ……寒いな」
……中身の無い会話。
「プレゼント、何がいい……?」
「いらない」
「じゃあ……自分で考える」
もうここまで来ると、日本語が通じていない可能性があるな……。
「少し遅れてしまいましたね。こんにちは、兄様」
……もういい。もう誰でもいい……。
「宮原……」
……ここ俺の家なんだけどなぁ。
「この様子ですと……クリスマスの予定はあまり空いて無いですか」
またその話かよ……。
クリスマスになると大野賢太郎の需要が増大すると言う話は聞いたことが無いが……。
まぁ、ともかく来る人来る人に嫌いな言葉を浴びせられ、どんどん弱っていく俺の体。
頼みの遥も、もはやどこにいるのかすら分からない……。
周りを見渡せば、何だか記憶に無い連中もいるし……一体俺は何をすればいいんだろう……。

607 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/24(水) 21:52:18 ID:5IluGuZ5
流れに逆らわぬように、ジッとソファーで耐えていると、
「じゃあ、平等にみんなでクリスマスパーティーを開くということで」
と、誰かが言った。
……もう決定の雰囲気。
「というわけで、お兄様。楽しみにしててくださいね。詳しくはまた追って連絡しますので」
宮原のこの笑顔を正直殴ってやりたいと思った。殴らないけど。
ぞろぞろと捌けていく人。
残る遥と俺。
「どうしよう……」
「どうしようもないよ……」
「……はぁ……」
うん、逃げよう。
───────────────────────
脱出は簡単だった。
俺の家を会場にしたのは方法としてはいいが、遥を完全に味方に付けられなかったのはかなりのミスだな。
目下の問題は、ほとぼりが冷めるまで俺はどこで何をすればいいか。だ。
友人のほとんどが今日をお楽しみだろうから、そんな中に入っていく勇気は無いし、
そもそもどこまで根回しが進んでいるか……。
買い物しようにも絶対『口に出すのも憚られる二人組』が沢山いるだろうし……。
とすると、もう行ける場所はそうないな……。
「……何もかも今日と言う日が悪い」
呟いた言葉。
恨み節は、自爆の合図。
『お前が負け犬なだけじゃないか』と北風が囁く。
「そうか、これが遥の罠だったんだな……」
遥にまで被害妄想が出ている。
これは本格的にヤバいかもしれないな……。
「どうしようかなぁ……」

608 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/24(水) 21:52:51 ID:5IluGuZ5
帰る?
帰らない?
まぁ、少なくとも手ぶらでは帰りづらい空気ではある。
かといってこれから何処に行けば良い?明日の朝までは安心は出来ないぞ……。
もはや八方塞の俺。
小さな公園のベンチだけが、かろうじて俺に扉を開いている気がした。
「はぁ……」
すっかりため息も白い季節だ。
こんな真っ黒な体から出てきたのにな。
「そうか……これが孤独か」
そういえば、いろんな負の感情を抱いてきたつもりだが、
孤独、というのは自分には縁がなかった気がするな。
そう考えると、遥の存在は偉大だな。
……五分前の自分の言葉を忘れた発言に、少し情けなくなる。
「悪かったな、遥よ」
とりあえず曇り空に向かって謝ってみた。
青空に劣等感を掻きたてられる俺だが、この嫌なことが起こりそうな曇り空も……。
「サンタさんはこんな寒い日に、何してるのかな?」
そんな声を顎で聞いた。
頭を下げ、前方に視線を向ける。
「遥っ……!?」
ヒマから解消されたと言う感情が少しと、見つかった!という感情がかなり……。
即座にダッシュの姿勢。
「お、お兄ちゃん!!大丈夫だよ、連れ戻しに来たわけじゃないから!!」
小動物の相手をするように、まずは優しい言葉。
「本当か……?」
「うん。まぁ……一応、探してくる、ってことになってるけど」
「いいのか?」
「ちょっと悪いとは思うけど……」

609 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/24(水) 21:53:23 ID:5IluGuZ5
困り顔の遥。
遥も被害者であることに変わりは無い気もするなぁ。
俺はとりあえず逃走体制を解除、もう一度ベンチに座る。
「隣、お邪魔するね」
「どうぞ」
クリスマスの昼間に兄妹二人。
誰もいない公園のベンチで。
傍目カップルですかね、俺たち。
「……寒くないか?」
「私は平気。お兄ちゃんは?」
「俺も別に」
……ホントは結構寒い。
多分遥もそうじゃないかと思う。
「……お兄ちゃんは覚えてるかな」
そんな遥が空を見上げながら、ゆっくりと話し出す。
「何を?」
「小さいとき、お兄ちゃんが私にくれたクリスマスプレゼント」
……あっさり言うなぁ。
「なんかあげたか……?」
「ふふ、覚えてない?」
「昔の俺は死んだと思ってくれたほうが良いぐらいだ」
というか、俺にも小学生の時期があったんだろうか。今となっては謎である。
「お兄ちゃんがくれたのはね……温もり」
……。
「何言ってんだよ、遥……」
ネガティブ兄シリーズとは思えないハートフルな単語が……。
この体のど真ん中からこみ上げる気持ち悪さは何だ……。
「お、お兄ちゃんが言ったんだからね!?」
恥ずかしそうに反論する遥。
「俺が……?」
衝撃の事実……。

610 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/24(水) 21:53:55 ID:5IluGuZ5
やっぱり昔の俺は死ぬべき存在だったんだ。
「うん……『僕にプレゼントできるのは温もりだけだけど……』って」
気持ち悪いことするなぁ、我ながら……。
「そんなこと言ったかな……」
「うん。クリスマスにお父さんもお母さんも帰れなくて……でも、お兄ちゃんは私の傍に居てくれた」
穏やかな微笑の遥……。
その微笑を向けるのは、俺ではなく、いつの間にかいなくなってしまった俺。
……あまり良い気分ではない。
「ちょっと不機嫌になっちゃった?」
全てお見通しとでも言いたげな、意地悪な顔の遥。
「そりゃまぁ」
そのことを含めて、バツの悪い俺。
「でもね、お兄ちゃんは……今でも私に温もりをくれてるよ?」
「バカな。そんなもの、何処にあるって言うんだ……」
「わかんないけど……きっといろんな所にあるよ。お膝の上とか、腕の中とか、胸の真ん中に」
「……」
ヤバい、この雰囲気に少し飲まれていた……。
「ずっと、一緒にいよう?」
「……」
この疑問符を恨む。
俺の答えを待っている遥の瞳。
あぁ、昔の俺はこういうところに生きていたなぁ。
「今の俺に温もりなど無い……と思いたい……。
 だが、まぁ……遥が俺の中に何かを見つけたなら……好きなだけ持って行けばいい」
昔の俺の心が今の俺の言葉を使って。
……まぁ、遥が俺にとって大事な妹なのは、そんなに変わって無いような。
「うん」
真正面を見つめて、小さく頷く遥。
「……変なこと言わせやがって」
俺も遥の眺める方を見ながら、足を組みなおす。

611 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/24(水) 21:54:39 ID:5IluGuZ5
「さ、兄妹交流も済んだことだし!そろそろ引導を渡してもらおうかな」
「……」
まぁ、予想通りではある。
いつまでも逃げ切れるとは……思って無いけどさ。
「そんな嫌な顔しないの!私もついててあげるから、ね?」
「遥の方が姉さんみたいだな……」
「あはは……久しぶりに言われたよー」
……言われてるのか。
「……悪かったな、世話焼かせて……」
「お、お兄ちゃん!?べ、別にそういう意味じゃ……」
「分かってるよ……」
本当はもっと謝り倒してやりたいが……少し空気を読んだ。
遥は少し不満そうな顔をしながらも、
「さぁ、帰ろう?」
立ち上がり振り帰る。
俺も、そのあとに続いてゆっくりと立ち上がって
「遥……少し寄り道を許可してくれよ」
「寄り道?いいけど、何処行くの?」
「姉さんに何かプレゼントでも」
「もう……」
遥は小さく不満の吐息を漏らしながらも
「じゃあ、私からも何かプレゼントしてあげるよ、おとーとクン」
意地悪に微笑んで、遥が俺の手を取り走り出す。
嫌な流れに飲まれてしまった俺とその流れを操る遥。
……やっぱり嫌いだな、クリスマス。
───────────────────────

612 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/12/26(金) 01:45:00 ID:6wsGE8Ld
GJ!

613 :No.2 :2008/12/27(土) 01:07:26 ID:fjQzd3Cl
乙ぬるぽ!

614 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/12/28(日) 23:57:43 ID:qO1aUJ7A
あげええ

615 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/12/29(月) 00:11:38 ID:YHEr3WDP
de? dounaruno

616 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/12/29(月) 07:12:27 ID:6vQVlyce
ド変態

617 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/12/29(月) 21:28:09 ID:Rlvhvy97
小説まだ〜?

618 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/12/29(月) 21:48:55 ID:arV4kgA+
( ^  ^ ) オニイチャン!!

619 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/12/29(月) 23:53:54 ID:zVHEkU++
Zガンダムのロザミィとか年上の妹ってありなのか?

620 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/30(火) 22:38:08 ID:qG6cXzTa
2メートルはあるだろう塀の上。
見たこと無いような派手、それでいて奇抜な服を着用。身長が1.5mほどの少女が、俺を睨んでいる。
「ちょっとそこのアナタ!!」
「……」
せめて遥の居るときに話をして欲しいもんだ……。
間違いなく会話のベクトルは俺に向いているが、あえてのスルー。
「無視するなぁー!!」
そう叫びながら、俺のすぐ目の前に飛び降りてくる女。
「いったぁーっ……!!」
やっぱ痛かったか……。
「あの……何か?」
「い……1分待ちなさい……」
何故命令口調……ムカつく……。
仕方ないから待つけど……。
「58……59……1分。で、何か用ですか」
「無視することないんじゃない!?」
「僕じゃないと思ったので」
「しっかり目があったでしょ!?」
「気のせいじゃないですか?」
「はぁ……そんなんでよくこの社会で生きてるわね……」
何故だ……何故見ず知らずの他人にここまで言われねばならん……。
「……絶望した……」
「そんなことで落ち込まないでよ、鬱陶しい」
鬱陶しい……。

621 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/30(火) 22:38:41 ID:qG6cXzTa
「……俺を詰るだけの用なら帰りますが……」
「そんなワケないでしょ。アナタ、名前は?」
「……矢車……」
「嘘仰い」
「大野賢太郎です……」
「やっぱり……」
「やっぱりって……?」
「大野賢太郎君……」
真顔で俺を見つめる……何……?
「……?」
「やっと見つけた!私と交際しなさい!!」
「交際……って……?」
「俗に言う、付き合うってことよ」
……何を言うかと思えば……。
こんな展開にはもううんざりしている。
あとはどう断わるかだが……
「……」
無言で逃げる。
「ちょ、ちょっと!!待ちなさい!!」
待つわけ無いだろう。
とにかく、全力ダッシュ。
自分の知る限りの細道や、分かれ道を出来るだけ通過し、いつもの倍以上の時間をかけて自宅まで。
……俺は、悪くないんだよ、うん。
───────────────────────

622 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/30(火) 22:39:13 ID:qG6cXzTa
「遅かったわね」
リビングのドアの向こうには、悪夢が待っていた。
「お兄ちゃん、お帰りなさい」
女にお茶を出しながらなんとも能天気な遥。
って、そうではなく……
「な、何故だ……っ!?」
「撒いたつもりかもしれないけど、家ぐらい知ってるわよ。フィアンセなんだから」
……。
「遥!?何か今聞こえなかったか!?」
「え……?うん……」
どうも聞き間違いではないらしい。
しかし、遥。何故お前はそんなに普通なんだ……。
まぁ、いい。そんなの今は些細なことだ。
「どういうことだ、婚約者って!?」
「婚約者は婚約者よ。知らないの?」
「誰と、誰が!?」
「私とアナタに決まってるでしょ?」
「人違いだろ」
「じゃあ、どうしてこの家に来たって言うのよ」
「……でも、全然記憶に無いぞ」
そう。それが一番大事なんだよ。
何で気付かなかったんだ、俺は。
「フィアンセの顔を忘れたって言うの!?」
「言う。お前なんか知らん。女と婚約した覚えもない」
やさぐれモード発動。
「な、何言ってるのよ!?したでしょ!?」
「知らんといっている。いつだ、いつ婚約したというんだ!?大体お前誰だ!?」
「そ、そんなの忘れる方がどうかしてるわよ!!」
「どうかしてるのは今に始まったことじゃない。四の五の言わずに教えなさい」
普段もココまで言えれば良いんだが……いや、ちょっと困るかな。

623 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/30(火) 22:39:55 ID:qG6cXzTa
「ね、ねぇ……お兄ちゃん……?」
今まで黙っていた遥が不意に口を開く。
「黒河さん……忘れちゃったの……?」
「はっ!?」
遥が裏切った!?
「ふぅ……やっと薬が効いてきた……」
「何か言ったか!?」
「いえ、何も」
確かに言ったが、今の優先度はそっちじゃない。
「遥、大丈夫か!?この女になんか脅されてるのか!?」
「え?えぇ……っと……別に何も無いけど……お兄ちゃんこそどうしたの?あんなに仲良かったのに……」
悲しそうな顔の遥……
なんか、妙な思い出を捏造されてる気がする……。
「……」
チラッと女を見ると、したり顔がムカつくこと……。
しかし、こいつはともかく……どうも遥が嘘をついてるって感じじゃないんだよなぁ。
「お兄ちゃん……ホントに大丈夫なの?」
「よく分からんが……とりあえず遥。下がってもらって良いぞ」
「う、うん……あの……お兄ちゃん?黒河さんにひどい事しちゃダメだよ……?」
「覚えとく」
遥が部屋から出て行くのを見届ける。
さて……どうしたものか……。
「うむぅ……」
「思い出してもらえたかしら?」
「いや、全然……出合ったのって、そんなに前だったか?」
若干信じ気味の発言……。うーん、なんか急に俺が忘れてるだけのような気がしてきた。
「……いつだったかしらね」
「俺が女嫌いになる前なんだよな」
「そうね」
「じゃあ、小学生くらいか」

624 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/30(火) 22:41:06 ID:qG6cXzTa
「多分ね」
「それなら、あきらに聞こう。アイツなら知ってるかもしれん」
「そ、そんな私たちのことに巻き込んだら、彼に悪いじゃない」
……。
「ついに尻尾出しやがったな」
「え……?何を?」
「高羽あきらは女だ。彼じゃない」
「……」
「さて……いろいろ話してもらおうか。とりあえずは……俺の妹に何をしたのかを。
 言っておくが、俺の足は女だって容赦なく蹴り飛ばすからな」
若干脅し気味だが、この際関係ない。
女はしばらく俯いていたが、急にコチラを睨んで
「アンタが……アンタが悪いんじゃない!!」
「は……」
逆ギレかよ……これだから……。
「順を追って説明しろ。俺が何をした」
「言っても信じないわよ……」
「信じるつもりもないが、一応言っておけ」
「……変な女だと思わないでね」
「もう思っているし、俺のまわりは変な女だらけだ」
俺の一言に意を決したとは思えないが、ゆっくりと口を開く女。
「私……魔女なの」
……。
…………。
…………やべぇ、コイツ本物だっ……!
「だ、だから言いたくなかったのに……!」
「それを信じろというほうがどうかしている……せめて証拠を見せろ証拠を」
「それは……無理」
……騙す気ゼロかよ。

625 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/30(火) 22:41:40 ID:qG6cXzTa
「使えないの……今は」
「何故?」
「恋しちゃったから……」
「ふざけてんのか?」
耳を疑うセリフに、思わず口が乱暴になる。
俺は悪くないだろ……!?
「ふざけてないわよ!!だって、しょうがないじゃない……恋しちゃったのも、魔法が使えないのも……」
「で、何だ。何で婚約者偽って俺のとこに来た」
「……魔女に戻るためには……好きな人と添い遂げる必要があるの」
「だから、何で俺なんだよ。その好きな奴のトコに行けよ」
「……だから!!アンタが好きになったって言ってるのよ!!女の子にココまで言わせないでよ!!」
不意打ち……。
苦いし気持ち悪い……吐きそうだ、俺……。
「……別に良いじゃないか……魔法なくても……生きていけるぞ……」
頭をガックリ落としながら、声を絞り出す。
「そんなワケには行かないのよ!!こうしてる間にもアイツらが……っ!!」
「アイツら?」
「アンタは気にしなくても良いのよ。さぁ、早く!私を愛しなさい!!」
もう全く会話の道筋が分からねぇ……。
「急にそんなこと言われても困るからなぁ……少し考えさせてくれよ……」
「だから!そんな悠長なこと言ってる場合じゃないんだってば!!」
「何をそんなに急いでるんだよ……ん……?」
そこまで言いかけて止める。
女が緊迫した表情で窓の外を眺めていた。
「どうした……?」
「ほら、来ちゃったじゃない!!」
怒鳴るように叫んで玄関から外に出て行く女。
あぁ、お仲間の登場ですか……。
しかし、これはチャンスだ。
玄関に鍵をかけてやろうと、肩を落として向かうと……

626 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/30(火) 22:42:23 ID:qG6cXzTa
「とうとう見つけたわっ、覚悟なさい」
さっきの女と、白い変な服の女と黒い変な服の女の二人組みが向かい合っている。
何だか緊迫した雰囲気。
「……えっと、これは何……?」
「出て来ちゃダメよ、賢太郎!」
手を大きく広げて、俺を庇う姿勢の女。
「は……?」
「こいつらは、アナタたち人間の魂を奪いに来たの!!」
「……お前は……?」
「私はアイツらと戦うために……きゃっ!!」
少し先の地面が爆発した。
「そんな話を聞く必要は無いのよ、人間さん」
黒娘が小馬鹿にしたような口調で語り始めた。
「そうそう。はやく魂欲しいなぁー!」
と、白娘。もうこいつについては語りたくない……。
設定についていけない俺。
そんな俺の背後から、
「え、え!?何、何なの、お兄ちゃん!?」
遥の登場。
もうどうしよう、この場……。
「遥、出てこないほうが良いらしいぞ」
「え……何で……?」
何でと言われても、俺もよく分からないしなぁ。
「賢太郎!のんきに話してる場合じゃないでしょ!?」
そんな場合じゃないのか……。
そんな場合が掴めない俺と遥は、どうしようもなくて、棒立ち。
「魔法力が無くなったアンタなんてもう敵じゃないの」
「そうそう。早く死んじゃいなよ!」
身の丈ほどもある杖を構える二人組。
あぁ、そういう状況……。

627 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/30(火) 22:42:56 ID:qG6cXzTa
「賢太郎……ゴメンね、巻き込んじゃって……」
「おいおいおいおい!!やめてくれよ!?そんなこと言われたら一生悔やむだろ、俺!?」
「でも……」
しかし、俺もどうせなら一矢報いてから死にたいなぁ……。
「「消えな!」」
杖の先から放たれた禍々しい光が迫る。
考える間もない。女を突き飛ばし、その光を体に受ける。
「賢太郎っ!!」
「お兄ちゃんっ!?」
全然痛くない……死んだのか、俺。
と、思ったのは一瞬。
「あれ……?」
生きてる。
っていうか……何にも感じなかったぞ。
「え?えっ?」
周りを見回すも、敵味方ともにポカーンとしている。
……俺もそのリアクションに乗ってみる。
「そ、そんな……魔光力が効かないなんて……」
「うそうそ!?人間なんかに!?」
我に返った敵さんが焦ってらっしゃる……。
周りの人が騒いでいるのに、当事者がよく分からないんですけど……。
「遥……?」
もう何したら良いのか分からなくて、遥のほうを振り返る。
「お兄ちゃん……?」
瞳に涙を浮かべた遥が、キョトンと俺の目を覗き込んだ。
「……驚いた。まさか、賢太郎が魔封心の持ち主なんて……」
魔封心って……その設定、何だよ……?
「魔封心!?」
「魔封心!?」
魔封心……?

628 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/30(火) 22:43:32 ID:qG6cXzTa
敵さんも驚いている……そんなに凄いのか、俺……?
「魔封心って……何?」
女に聞いてみる。
「要するにあらゆる魔法の干渉を受けない体質というか、性格みたいなものね……」
「性格……?」
「まぁ……魔法は所謂催眠術みたいなものなの。その催眠術自体を疑っちゃうから、かかりにくいのよ」
「つまり、お兄ちゃんがネガティブだから、魔法が効かないって事なのかな……」
「まさかでも、本人の周囲にまで影響が及んでるなんて……凄いわね、賢太郎!」
褒められたことがイマイチ腑に落ちないが……俺は今、相手に対して絶対的な高みにいるということだ。
「ま、魔封心なんて無いに決まってるじゃない!!」
「そうそう。さっきは何かの偶然よ!!」
もう一度、さっきの光が迫る。
そしてもう一度直撃したが、やっぱ何ともない。
二度目なんてどうしたら良いのか……。
「うーん……」
ここまできて何にもないと恥ずかしいな……。
「ど、どうしよう……」
「うそうそ……やっぱりホントに」
「慌てちゃダメよ!!かくなる上は……!!」
「そうそう。最後の手段!!」
最後の手段……?
「「喰らえ!!」」
俺の右側、遥に向かって放たれる光弾。
そのなんとも全く予想通りの攻撃を高めの蹴りで消す。
当てた。という視覚と当たってない。という触覚が齟齬を生んで、非常に気持ちが悪い。
その上、見事な空振りで少し体制を崩したまま足を付く。バツが悪い……。
「無事か、遥」
「うん……ありがとう」
遥が無事で何より。

629 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/30(火) 23:03:37 ID:qG6cXzTa
グッと頭を下げて、
「……こんなことだろうと思ったよ……」
「そんな……」
「うそうそ?ヤバいんじゃない?」
焦る表情に柄にも無く少し強気になる。
「……遥に矛先向けやがったな……!?」
「そ、そんなつもり無かったわよっ!?」
「そうそう。私たちは……」
弁解を聞くつもりは残念ながら無い。
身を縮め、バネを使って距離を詰める。
「……お前らはいいよなぁ……そうやって、人間を見下して……なぁ?」
「み、見下すなんてそんな、ねぇ?」
「俺の力だけでも……相当痛いからな」
少し右足を引く。
さて、どちらから蹴り飛ばしてくれようか……。
「「ひゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」」
───────────────────────
「……迷惑かけたわね、賢太郎」
……例の如く、記憶は無いが。
「一応、お前には世話になった。もっとゆっくりしてけばいいのに」
「人間界に長居するわけには行かないわ……私は、魔女なんだから」
「ご苦労さんだな」
「ええ……まぁね……」
何だか暗い。
「そういえば……」
「何?」
「名前を聞いていなかった。黒河は本名なのか?」
「ええ、黒河夜影。まだ名乗ってなかったわね」
……黒河夜影……ダークな名前だ。
「……そういえば……」
「まだ何か?」
「魔法はどうした?」

630 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/30(火) 23:04:14 ID:qG6cXzTa
「……それは……あの……」
「ん?」
「あなたの魔封心の影響で……一時的に……で、でもっ、あなたのこと好きじゃなくなったわけじゃなくて……」
そんなことかい……。
「もう何でもいいや。そもそもこの設定に間違いがあったんだな」
「設定って何よ……」
「こっちの話だ」
まさか……ファンタジーに片足突っ込むとは思わなかったからなぁ。
「じゃあ、これでお別れね」
「ああ」
「また、何かあったら呼んで頂戴」
「また何も無いといいけどな」
本心だ。
「そう……そうよね……」
そう呟いて、ゆっくりと振り返る黒河。
その背中には黒い翼が。
……驚いてもいい場合なのかな、この状況は。
戸惑う俺に、黒河は肩越しに俺を見て
「じゃあね、兄」
「……」
兄って言った……?
「妹なら、また会いに来てもいいでしょう?」
「……」
「いけないかしら?」
「こういう場合……好きにしろ。ということにしているが」
「ふふふ、ありがとう。じゃあ、また会いましょう、兄?」
黒河の微笑がフッと消えた。
……あまりにも一瞬だったな。
「まぁ、一件落着ってことに……」
夕暮れの街、胃を押さえながら歩く。
……今日の記憶を消してもらえばよかったなぁ。
───────────────────────

631 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/12/31(水) 03:19:29 ID:g/kM23L7
GJ!今回はいつも以上に、
俺の好みのツボにジャストフィットしておもしろかったっす!

632 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/31(水) 21:55:23 ID:qLZHbJ0H
まぁ、別にどうということもない一日。
俺は別に急いでいるわけでもなく廊下を歩いている。
すると、
「やぁ」
……見慣れぬ声に振り返ると、やっぱり知らない女が立っていた。
「学校で会うのは初めてだな」
「……?」
あまりの出来事にもはや疑問符しか出てこない俺。
「今日も……ん?どうかしたかい?」
あまりに何も言わない俺に、話を続けようとした女が尋ねてくる。
「いや……誰……ですか……?」
勇気を出して聞いてみた。
「ん?あぁ……そういうことか」
どういうことだ!
心の中で突っ込みを入れながら相手の出方を伺っていると、
「まぁ、近いうちに分かるさ」
不敵な笑みを浮かべながら、女がそう呟いた。
「積もる話は、その時にしようじゃないか」
「はぁ……」
なんともリアクションが取りづらい……。
「じゃ、また今度」
満足したのか小さく手を振って、去っていく女。
どうしようもなく、ただそれを眺めている俺。
……新たな面倒は、もう避けられそうに無い……。
───────────────────────
「……というようなことがあってだな……」
帰り道、昼間の一件を遥に語る俺。
遥は一瞬だけ真面目な顔を見せてから、
「その女の人、誰なの?」
「それが……全然心当たりが無い」

633 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/31(水) 21:56:00 ID:qLZHbJ0H
「どんな人だった?」
「……あんまり見てない……」
「それじゃ、わかんないよ……」
呆れた表情の遥。
「だろうな」
当然だと頷く俺。
「まぁ、二度と会わなきゃ問題は無いわけだ。だから、俺は先に帰るぞ」
「あ、うん。私は買い物してから帰るよ」
「おう。後でな」
分かれ道で遥と別れる。
しばらく早歩きで自宅へと向かっていたが……
「……暗いな……」
俺の不安心が活動を開始した。
……そうだよな、この時期この時間なら真っ暗だよな……。
……遥は一回危ない目にあってるわけだし……いいのか、一人で行かせて……。
……でも、あの女には会いたくない……。
……どうしたものか……。




「あれ、お兄ちゃん!?帰ったんじゃないの!?」
「……いや……やっぱり夜道は危ないなと……」
「じゃあ……私のために……?」
「まぁ、そういうことだ……」
スーパーで何とか遥に合流に成功。
前回の発言を覆すのは、何かと言い訳がちになってしまうな……。
「ありがとう、お兄ちゃん」
何だかご機嫌な遥。
俺はカートを押して歩き出した遥のあとをゆっくり付いていく。

634 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/31(水) 21:56:45 ID:qLZHbJ0H
……まぁ、買い物の付き合いなんて退屈なものだ。
何が家にあって、何が安くて、何ができるか。
それら全てを理解してなければ、夕飯のメニューのアドバイスなど出来ない。
結局、付いてきたものの何にもしてないわけだ、俺は。
若干退屈になってきた時、
「やっぱり来たな」
……マジかよ……。
出来るだけゆっくりと振り返る。
視線の先には、なんだか白っぽい服を着ているさっきの女が
「そんなに嫌そうな顔をするな、僕だよ」
……だから嫌なんですけど……。
「……」
今度はじっくり顔を見るが……やっぱり分からない。
「お兄ちゃん?」
異変に気が付いたのか、遥がこちらに参戦してくる。
「あ」
「どうも」
発見の声を出す遥と、軽く頭を下げる女。
「あぁ、遥の知り合い……」
取り残された俺が一人、納得していると
「何だ、まだ分かってなかったのか、キミは」
呆れたような女。
……っていうか、歯に衣着せないね、この人……。
「……で、遥。誰なんだ、この人は」
「僕はパン屋だよ」
そう答えたのは遥ではなく例の女。
「パン屋……?」
「そう。ほら、そこの」
女が振り返って、指をさすお店。
そこは……

635 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/31(水) 21:57:33 ID:qLZHbJ0H
「あそこはっ!?」
「お兄ちゃん、そこのカレーパン大好きなんだよね」
確かに、あそこのパンは好きだ……。
しかし、こんな店員がいた記憶が無い……のは、当然か。女の顔を覚えられない障害を抱えているからな。
「……バイトしてるのか?」
もう一体どういうリアクションをとればいいか分からず、下らない質問でお茶を濁す。
「まぁ、そんなトコロだ」
「へぇ……」
話、膨らまず。
気まずいよ。
「さてと、素性が分かったところで自己紹介と行こうか。僕は笹野くるむ、よろしく」
「えと、私は妹の大野遥です」
「兄の賢太郎……」
自己紹介が苦手なのは分かってもらえたと思う……
「あぁ、兄妹なんだな。あまりに仲がいいから、てっきり恋人同士かと思っていたが」
「こここここここ、恋人同士っ!?」
テンパる遥。
……そんなに嫌か。
「笹野だったな。あまり遥をいじめないでやってくれ……」
「いじめる?そんなつもりは無いが……気に障ったなら申し訳ない」
「こんな不逞の兄がいるだけでも可愛そうなヤツだ……そこを刺激しないでやってくれ……」
「……ははは!面白いなぁ、キミは」
嘲笑われた……。
……もういいや、こいつ嫌いだ……。
俺が一人落ち込んでいると、
「おっと、もう帰らなければ。では、また学校で会おう」
自己完結的にあっという間に帰ってしまう笹野。
落ち込む俺に遥は、
「……お疲れ様……あんまり、私の出る幕無かったね」
「どんな気持ちであのパン食えばいいんだ……俺は……」

636 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/31(水) 21:58:11 ID:qLZHbJ0H
「買い物、続けようか」
「うん……」
肩をガックリ落として、俺は遥の後を付いていく。
この話、まだ、続くんですか……?
───────────────────────
「やぁ。探したよ。クラスぐらい聞いておけばよかったな」
あれから、二日後。
とうとう見つかってしまった……。
「……あぁ、久しぶり」
心底会いたくなかった俺は、げんなりしながら答える。
「元気が無いぞ、大丈夫か?」
「気にするな」
「それならいいが。無理はするんじゃないぞ。そうだ、カレーパンが好きだったな、これは土産だ」
小さな、見慣れた紙袋を机の上に置く。
……この俺を物で釣ろうってか……。
「で、何か用か?」
若干いい気分の俺。
……釣られてるなぁ、見事に。
「この前は、大事なことを言い忘れていたからな」
「大事なこと……?」
「ああ、大野賢太郎君、僕は君を愛している。僕と付き合ってくれないか」
「……」
……?
…………?
「何だとっ!?」
「ん?変な事言ったか、僕は?」
いたって普通の笹野。
それに対し、俺は大慌てで、
「普通!!」
「普通……?まぁ、そんなに個性的な方では無いな。普通と言えば普通だ」
「は……」

637 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/31(水) 21:58:47 ID:qLZHbJ0H
お前が普通なものか!!
いや……この突っ込みもおかしいぞ。
「いきなり!!」
まだ全然身の上話とか聞いて無いし、言っても無いし!!
「昔から善は急げと言うからな。あの子が恋人で無いことも分かったしな」
「……」
こいつは手強いぞ……。
俺の性格を知らないから遠慮が無い……。
いや、この女の性格を考えたら、それすらも乗り越えてきそうだが……。
しかも、こういうときいると心強い遥がいない。
……どう断わろうかなぁ。
げんなりしながら、次の一手を練っていると、
「そんなことより……そろそろ返事をもらえないか……その……僕だって不安なんだ」
あら、そういうところもあるんですね……。
「……」
『残念だけど……』
いや、あまり遠回りな表現が効果的な相手では無さそうだ。
『俺、彼女いるし』
いねぇし。
『ダメに決まってんだろ!!』
言えない言えない……。
もうやさぐれそうだなぁ……。
そんなことを考え始めたとき、
「……っ!?」
背筋が凍るようなこの感覚は……殺気……?
凍ってしまった首をなんとか動かして、何にも言わずに振り返る。
視線の先には
「賢にぃ……誰……その人……」
「ま、真雪……」
絶対零度の視線を容赦なく刺しこんでくる冬月真雪……。
これはヤバいんじゃないかなぁ……。

638 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/31(水) 21:59:25 ID:qLZHbJ0H
「あぁ、賢太郎君の友達だね。僕は笹野くるむ。今、賢太郎君に告白して、返事を待っているところなんだ」
空気を全く読まない笹野。
流血沙汰ですか、これは……。
「賢にぃ……答えは……?」
何でこんなノリで言わなきゃならないんだ……。
全く性質の違う二つの視線が痛い……。
「まぁ……そりゃ、お断りさせてもらうつもりだったけど……」
もはや尋問だよ、これは……。
「そうか、残念だね。いや、僕としたことが早とちりしてしまったようだね」
「は……?」
「遥君が恋人でないことを聞いて、君に恋人がいないと勘違いしてしまった。君にはこんな恋人がいたんだな」
……。
……それも違うんじゃないかな……。
いつもはその辺の複雑な事情を説明してくれる遥がいないので、仕方なく俺が。
「あの……確かに恋人いないけど……真雪も恋人とかじゃなくて……」
痛痛痛痛っ!間違って無いだろ!?
「ん?ちがうのか?」
「なんていうか……あの……俺は女性が苦手で……」
あぁ、自分で何を言っているんだ俺は……。
「賢にぃ……説明……しようか……?」
こんなグダグダな俺を哀れんで、真雪からの助け舟。
「……じゃあ、頼む」
本当に助け舟かどうかは疑問が残るが……。
もうどうでもいい……事実が伝われば……。
もはや投げやりな俺は説明を真雪に託し、机に崩れ落ちる。
帰りたいなぁ、もう……。
「なるほど、じゃあ、僕にもまだチャンスはあるんだな」
「うん……ライバル……」
「そうか。僕も晴れて君の妹だな。兄上」
こんな台詞が遠くで聞こえる。
もうどうでもいいから、この話、早く終われ……。
───────────────────────

639 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/31(水) 22:00:00 ID:qLZHbJ0H
いつもの帰り道。
いつもと同じくらいの時間。
いつもと同じようにいつものスーパー。
いつもと違う遥……。
「あ、あのね……えとね……」
ハキハキしている遥が今日に限ってモジモジ。
一体何が……。
「……熱でもあるのか?」
不思議に思って、立ち止まり、振り返る。
「熱は……ないんだけどね……」
珍しい表情の遥。
遥の感情が読めず、出方を伺うのみの俺。
「買い物に付き合ってくれて……ありがとう」
「……あぁ」
いつものことじゃないかと思いつつも、この状態の遥に水を差す気は無い。
何食わぬ顔を装って、何にも言わずにカートを押す。
「ねぇ、お兄ちゃん?お兄ちゃんは何が食べたい?」
「遥なら分かるんじゃないか」
まぁ、俺の好きな物には詳しいわけだし……。という意図の発言であり、
やんわり否定するなり、考えるなりして欲しかったわけだが、
「えっ!?そ、そんなこと……ないよぉ……」
照れるように否定した遥。
……どうしちゃったんだ、俺の妹は。
「遥……?」
何気なく肩に置いた手に、
「え……?お、お兄ちゃん……」
胸焼けのするリアクションの遥。
嫌ではないが、何なんだ、この空気……。

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