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[第七弾]妹に言われたいセリフ
- 509 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/05/23(金) 23:01:44 ID:9hZJbi8v
- 読んでてドキドキする…
- 510 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/05/29(木) 00:05:52 ID:LNB5y8o0
- 投下期待age
- 511 :長い物に巻かれた :2008/05/30(金) 04:05:49 ID:etYvPPxc
- 前回の投下から、結構な時間が開いてしまいました。スミマセン。しばらくぶりですが、『紗夜』投下します。
季節は流れる。
夏が過ぎ、紗夜は一つ歳をとった。
11歳の誕生日、僕が贈ったのは、蝶があしらわれた髪飾りだった。決して高い物でもなかったけど、紗夜は凄く喜んでくれた。
新学期になった。僕は学校に行かなければならなくなったけど、紗夜はもう学校に通っていない。
通えないのだ。
だから紗夜は、僕が学校に行っている間は一人ぼっち。仕方がない事とはいえ、僕にはそれが、とても辛かった。
学校が終わったら、真っすぐ家に帰り、なるべく多くの時間を紗夜と過ごす。そして夜は受験勉強にうちこんだ。
単純な日々の繰り返し、それでも僕は、自分に出来る事を、精一杯頑張った。
季節は流れる。
二年目・春 〜茨の刺〜
秋が終わり、冬が過ぎ、春になった。
紗夜はその間、数回の入退院を繰り返した。
最初の頃は、小学校の友人達が沢山お見舞いに来てくれたが、二回、三回と入院を繰り返すたび、お見舞いに来てくれる子達は、その数を減らしていった。
無理して笑う紗夜に、僕はなにも言ってやれなかった。
僕の方は志望の高校に無事合格した。夏休み前にはぎりぎりだった学力も、紅葉や桜先輩の協力もあって、二学期が終わる頃には、合格ラインを十分にクリアする程まであがっていた。
春、微かな変化をともなって、温かなこの季節を迎えた。
〜・〜・〜・〜・〜・〜
- 512 :長い物に巻かれた :2008/05/30(金) 04:10:01 ID:etYvPPxc
- 今日は紗夜と一緒にピクニックに出掛けた。
紗夜が言うには、僕の入学祝いにデートをしてくれるらしい。
という訳で、今日はピクニック改め紗夜とのデートだ。
朝、一緒に家を出て、目的地ヘと向かう。その間、紗夜は僕と腕を組み、時折鼻唄が口ずさむ程上機嫌だった。
紗夜の歩幅は小さい。僕はその歩幅に合わせて、ゆっくりと歩いた。
しばらく歩いて目的地に着いた。時刻は午前11時頃、思っていたより時間がかかったが、まあよしとしよう。
…………チクリ。
「少し早いけど、お昼にしよ?」
紗夜がそう言ってきたので、少し考える。
きゅるる〜〜〜〜
だが、考えるまでもなく、僕のお腹が鳴った。
「そ、そうしよっか。」
恥ずかしくなって、苦笑しながらそう答えた。
適当な場所にシートを敷き、その真ん中にバスケットを置く。朝、早起きして紗夜と一緒に作ったお弁当だ。中身はサンドウィッチ。僕も紗夜も、料理は余り得意ではないので、うまく出来たとは言い難いが、作っている時は、なぜかとても楽しかった。
トマト、タマゴ、玉葱のサラダ等々、紗夜の体を考えると、肉系は避けた方がいいと思ったので、野菜中心の具材構成。いろんな種類が楽しめる様に、小さめに作って種類を豊富にした。
紗夜がトマト、僕がタマゴをそれぞれ手にとって、とりあえず一口食べてみる。
ばくりっ
「………………」
「………………」
- 513 :長い物に巻かれた :2008/05/30(金) 04:13:22 ID:etYvPPxc
- 「普通だね。」
「ああ、普通だ。」
うん、普通だった。特別美味しいという訳ではないが、別に食べれないという訳でもない。まあ、うん、普通だ。
モグモグ
最初の一つは、なぜか二人とも黙って食べた。食べ終わるのは、僕の方が幾分か早かったが、二つ目には手をのばさず、なんとなく紗夜が食べ終わるのを待った。
「普通だけど……」
「普通だけど?」
「普通だけど、うん、美味しいね。」
一つ目を食べ終えた紗夜が、ニコッと笑って、そんな矛盾したことを言う。
言っている事は明らかにおかしいんだけど、僕には紗夜の言いたい事が、なんとなく分かるような気がした。
その後、二人で話しをしながら食べたサンドウィッチは、やっぱり普通だけど美味しかった。
少なめに見積もって作ってきたんだけど、全部を食べ終わる頃には、僕のお腹はしっかり満腹になっていた。
……………チクリ。
- 514 :長い物に巻かれた :2008/05/30(金) 04:18:37 ID:etYvPPxc
- 昼食を食べ終わり、その場で少しお腹をおちつけた後、僕と紗夜は、小川の近くに移動した。僕の膝程の深さしかないので、激しい運動が出来ない紗夜と遊ぶには、ちょうどいい場所だ。
「つめたーいっ。」
紗夜は靴を脱いでから、足首辺りまでを川につけて、無邪気にはしゃいでいる。
僕は紗夜がはしゃぎ過ぎない様に注意しながら、紗夜の後ろ姿を見守っていた。
花柄のワンピースに麦藁帽子。今の紗夜の精一杯のオシャレ。
端から見ればほほえましい光景だろう。しかし、その光景を見つめる僕の心境は、とても複雑だった。
今の紗夜はとても生き生きしている様に見える。しかしそれは、事実とは違う。
無力だから、儚いから、必死に強がっているだけなのだ。
『あの日』から、八ヶ月の時間が過ぎた。紗夜の身長は少しだけ伸び、僕が進学して…………確実に、残された時間は短くなった。
(諦めない。)
この八ヶ月、何度も反芻した言葉を、再度繰り返す。
希望はまだ有る、時間はまだ残されている。だから諦めない、無力だからこそあがく、紗夜の為に。
決意を改めて確認し、紗夜の後ろ姿を見つめる。紗夜はしばらく水面を見ていたが、ふいにこちらに意識を移し、小走りに駆け寄ってきた。
「お兄ちゃっ。」
その途中、紗夜は小石に足をとられたのか、転びそうになる。僕は慌てて反応し、紗夜が転ぶ前に抱きとめた。
「うあ、大丈夫か?紗夜。」
「う、うん、ありがと、お兄ちゃん。」
紗夜は転びそうになった事が恥ずかしいのか、慌てた様子で返事をする。そこで、ふと気付いた。
「紗夜、眠い?」
「う、うん、ちょっと……」
ちょっととは言っているが、僕がみたところ、かなり眠そうだ。僕はそのまま紗夜を抱き抱えると、適当な木陰まで、紗夜を運んだ。
「ほら、無理はしない。」
「で、でも〜。」
「いいから、大人しく寝なさい。」
「う゛ー」
紗夜は不満そうにしていたが、やはりかなり眠かったらしく、すぐに寝息をたてはじめた。
- 515 :長い物に巻かれた :2008/05/30(金) 04:25:23 ID:etYvPPxc
- 「て、どこに寝かそう。」
地面にそのまま降ろす訳にもいかない、仕方ないので紗夜の帽子をとり、頭を僕の膝の上に乗せた、まあ、いわゆるひざ枕って奴だ。
ひざ枕をしたまま、紗夜の寝顔を見つめる。しばらく見つめていると、ある事に気が付いた。
「これ…………」
麦藁帽子に隠されて気が付かなかったが、紗夜の髪には蝶のあしらわれた髪飾りが着いていた。言うまでもなく、僕が紗夜の誕生日に贈ったものだ。
普段は大事にしまってあるから、今日、僕とのデートの為に着けてきたのだろう。
その事に気付いて、少しむず痒くなったので、照れ隠しの為に、寝ている紗夜の頭を、いつもより優しくなでた。
〜・〜・〜・〜・〜・〜
紗夜が目を覚ましたのは、結局少し日が傾いてからだった、暗くなってはいけないので、そのまますぐに家に帰った。大半を寝て過ごしてしまった紗夜は、とても残念そうな顔をしていたが、また出かける約束をすると、目を輝かせて喜んでいた。
夜、ベッドに横たわり、今日の事を思い出していた。
目的地に着くまでの少しの遅れ…………僕は紗夜の歩幅の狭さを考慮に入れて、予定を考えた筈だった。
少なめに作ったお昼ご飯…………紗夜が食べる量は、少しづつだが、日に日に減っている。
そして、紗夜を抱きとめた時………………紗夜の体重は、驚く程軽くなっていた………………
今まで気が付かない振りをしていた事がある。紗夜の体は、病魔という名の茨に、ゆっくりと、だが確実に、侵食されているという現実。
目を反らすのは、もう限界かもしれない。
そう思うと、僕の心に刺さった刺が、はっきりとその姿を見せる。
『恐怖』が顔を覗かせる。
現実は、多分甘くない……………
ーーーーー・ーーーーー
『紗夜』の三回目です、また思っていたより長くなってしまいました…………。えーと、次は秋の話デス。例によって、いつ貼れるかは分かりません。なるべく早く貼れる様にはするつもりです。
- 516 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/05/31(土) 20:20:58 ID:4XeUo5BF
- 投下乙
結末がわかってるだけにキツい展開ですなぁ・・・
- 517 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/06/01(日) 05:03:07 ID:aLTabkSo
- 続き待ってます。
- 518 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/06/03(火) 00:21:17 ID:IUna49Ws
- test
- 519 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/06/06(金) 02:54:05 ID:33cLwIws
- テスト?
- 520 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/06/06(金) 11:39:33 ID:cJh9laNk
- お兄ちゃん・・・
- 521 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/06/07(土) 17:17:54 ID:ygvKOlpd
- 言われたいセリフか・・・
凄まじく可愛い異母妹に潤んだ瞳でお兄様・・・とか言われたい
- 522 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/06/14(土) 23:19:55 ID:V93Bp8mF
- お兄様、投下をお待ちしております・・・
- 523 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/06/20(金) 19:03:01 ID:fu5fGQY7
- 人いねー
- 524 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/06/24(火) 22:36:39 ID:RP3PIK3q
- 過疎だ……。
何か貼りたいけどネタが無いなぁ……具体的なリクエストとかあれば書くけど。
- 525 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/06/25(水) 10:46:58 ID:O5dT47QY
- うn
- 526 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/06/25(水) 23:47:10 ID:cl99o8sZ
- 作家様方の妹系以外の作品も読んでみたい。
【幼なじみ】
- 527 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/06/29(日) 16:52:23 ID:SyL/T1BH
- >>524
ド直球な素直で甲斐甲斐しい兄に尽くす妹物が読みたいかも
- 528 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/07/04(金) 23:06:07 ID:sthxYFKf
- 兄上ー
- 529 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/07/06(日) 15:18:59 ID:4SgT/RLt
- しかし過疎だな
- 530 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/07/06(日) 15:58:58 ID:F6yWBKWe
- びっくりした……>>522
「お兄様、股下をお待ちしております・・・」って読めた。
- 531 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/07/06(日) 16:44:22 ID:qT4HRFWn
- ゴメンね、筆が遅くて……。
幼馴染が、もうすぐ書きあがるけど……よく考えたら、ここじゃ貼れないね。
- 532 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/07/06(日) 22:57:14 ID:0ftmdb/a
- 期待して待ってます!
>>よく考えたら、ここじゃ貼れないね。
そう言えばそうですね……
たびたびあることではないので特別に、このスレに貼ってもらうって事はできませんかね?
どうせなら別のスレよりここで読みたいですし、
- 533 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/07/08(火) 23:44:32 ID:k9pvMjF2
- 俺も期待してる
- 534 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/07/12(土) 20:48:15 ID:YUjszdja
- そういや、今日は7月12日でした……。
全く忘れてたんで、一応リクエストの幼馴染とお蔵入りするつもりだったネガティブ兄を貼ろうかなぁ……。
───────────────────────
いつもと同じ朝。
……眩しい朝日に、少しため息がこみ上げてくる。
そのため息を飲み込んだまま、玄関のドアを開けた。
「おはよう、いっくん。偶然だね」
目の前には、朝日の下で微笑を浮かべる幼馴染、野咲このは。
「あぁ……悪かったな」
ため息を紛らわすように、野咲の首辺りに話しかける。
「え?何で?」
「いや、いつも時間ズラしてたのに、重なって悪いなと思って」
「ん?別に悪くないよ?一緒に学校行けるの嬉しいよ」
相変わらず、このはは俺なんかにも優しい。
「っていうか、いっくん時間ずらしてたの?」
「朝から、わざわざ俺の顔なんか見たくも無いだろう?」
「え?そんなこと無いよ?」
この曇りの無い笑顔。
この否定の言葉の裏を考える俺は、随分とネガティブが板についているようだ……
「ねぇ、いっくん。いっくんが思ってるほど、私気にして無いよ?あんまり気を使わないでよ、幼馴染でしょ?」
「……気をつける」
気をつけたってどうにかなるもんでも無いとは思うが、このはに言っても分かるまい。
当たり障りの無い言葉でお茶を濁す。
「うん。さぁ、立ち話してる時間も無いし、行こうか?」
クルリと振り返る野咲。
「あぁ、先に行くといい」
「え?どうしたの?忘れ物?」
「別に自惚れているわけじゃないが、俺と何か関係があると思われても困るだろう?」
「ううん、全然困らないよ。だから、一緒に行こう?」
差し出された手。
……これは……どうしろと……。
固まる俺。
- 535 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/07/12(土) 20:48:47 ID:YUjszdja
- 「遅刻しちゃうよ?」
煽る煽る……。
「行くか」
迷った挙句、その手をスルー。
少し焦っているフリをして、仕方ない感をアピール。
「あ、待ってよ、いっくん!いっくんに話したいこと、たまってるんだから!!」
いつもと同じ朝……というのを撤回しよう。
今日はいつもよりも良くない……。
「それでね、私ね……」
「……」
気まずい思いをかかえながら、このはの言葉を黙って聴き続ける。
このはには悪いが、返すような言葉は俺は持ち合わせていない。
徐々に近づいてくる学校に、安堵を隠せない俺。
ため息だけは何とか我慢した。
しかし、気がついた。
人が多くなるにつれてこのはと一緒に歩いているというのは、結構恥ずかしい。
次第に歩くペースが上がっていく。
完全にこのはと離れてしまう俺とこのは。
距離が離れていくにつれて無口になっていくこのは。
近づいていく玄関。
このはは少し手前で駆け出して
「じゃあね、いっくん!今日は楽しかったよ!」
「あ、あぁ……」
「帰りも……一緒だといいね!」
「そうだな」
白い嘘をつく。俺も立派な大人だ。
───────────────────────
- 536 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/07/12(土) 20:49:19 ID:YUjszdja
- 思っていたより、朝の一件は尾を引いているようだ。
気付けばこのはの事ばかりを考えてしまう有様。
まぁ……これは、あまりいい意味では無いのだが。
「何で俺なんかに……」
確かに、幼馴染ではあるが、たまたま家が隣だというだけの話で、俺そのものには一切関係の無いことだ。
顔だって良くは無い。
成績だって良い方ではない。スポーツも同様。
性格なんてこの有様だ。
俺なんか見捨てて、もっといい人のトコに行けばいいのにな。
こみ上げてくる申し訳なさと、自信の持てない時自分に対する情けなさ。
今も、このはを避けて、裏門からコソコソと帰ろうとする俺。
すると、体育館裏に見知った人影。
「このはと……男だ」
この出来すぎなシチュエーション。
さすがの俺だって、どういう状況かは分かっている。
「……」
覗いて行きたいという好奇心もあったが……やはり、そういうのは良くない。
このはの幸せを祝って、俺は黙って退こうじゃないか。
足音を立てぬように、サッと死角に逃げ出す。
……不思議と、悪い気分はしないものだ。
───────────────────────
コンコン。
勉強中の俺の部屋、ノックされる音が響く。
「何か?」
特に何も考えず、扉の向こうの人間に声をかける
「うん」
予想しなかったこのはの声に驚いて振り向く。
- 537 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/07/12(土) 20:49:51 ID:YUjszdja
- 「こ……野咲?」
「ゴメンね、いきなり……ちょっと話があって」
「いや、気にするな。俺も少し話がある」
「いっくんも……?」
「俺は後でいい。先に言ってくれ」
「うん、いっくん……」
俯きがちのこのはが小さな声で話し出した。
「いっくんは……昔の約束、覚えてる?」
「約束……?」
「あ、覚えてないならいいんだ。忘れちゃうよね、普通……」
自己完結してしまったこのはにそれ以上何も言えない。
約束について色々考えていたが、
「……そ、それで、いっくんのお話って……何かな……?」
気まずくなったのか、このはが俺に話を振ってくる。
この雰囲気で話しづらいが、言わなければどうしようもない。
「野咲……もう俺とは関わらないほうがいい」
「……え……?」
「幼馴染は今日で終わりにしようと思ってな」
「……何で……」
何故か浮かない野咲。
「直して欲しいところがあるんだったら直すよ!だから……これで終わりなんて……言わないでよ……」
「でも、お前……」
「何で……何で……」
全身の力が抜けたように、肩を落とし、同じ言葉を繰り返すこのは。
このはの気持ちが全く分からずに、何も言えない俺。
「私……いっくんのこと諦めないって、決めたのに……」
「諦める……?俺を……?」
「分かってたよ……いっくんが私のこと、よく思ってないことは……。でも、好きだから……」
「何が……?」
「いっくんがだよ!!」
- 538 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/07/12(土) 20:50:23 ID:YUjszdja
- 「俺が……?」
「そうだよ!!私、ずっとずっとずぅっと……いっくんのこと好きだったんだから!!」
……繋がらない。
「ちょっと待って、野咲!?だって、お前……今日校舎裏で彼氏と会ってたじゃないか……?」
「え……」
今のこのはの顔には『キョトン』という擬音が物凄く似合う。
「……いっくん、あれ見てたの……?」
「見た。約束したじゃないか。野咲を幸せにするって。だから、いつまでも俺は野咲の足を引っ張っちゃいけないと思ってだな……」
「え……だって、いっくん……約束忘れちゃったんじゃ……」
「約束なら山ほどしたじゃないか。……まぁ、さすがに全部有効とは思っちゃいないが……」
間。
このはは、ゆっくりと顔を上げて、
「いっくん……あれは……告白されたのを……断わっただけだよ」
「何で?」
「何でって……いっくんのこと、好きだから……」
頬を赤らめるこのは。
……何で胸が熱いんだ……。
「ねぇ、いっくん……?」
「ん?」
「誤解が解けたところで、改めて言うね……」
立ち上がるこのは。
並々ならぬ真面目な雰囲気に、俺も立ち上がる。
このはの少し潤んだ真っ直ぐな目、逸らしたいけど逸らせない不思議な視線。
「いっくん……じゃなくて、今井一郎君……私とお付き合いしてください!私は、いっくんが一番好きです……!」
……身構えてはいたが……これはクる……。
そりゃあ……嬉しいけど……でも……
「……いや!?俺なんかでいいのか!?」
「いい!っていうか、いっくんじゃないとイヤ!!」
何も言い返せない……。
俺のネガティブ加減をすっかり忘れたこのはは、瞳を潤ませながら……。
- 539 :ケータイより愛を込めて :2008/07/12(土) 20:55:36 ID:8ww98EyR
- 連投規制厳しいなぁ……
続きはまた後ほどに。
- 540 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/07/13(日) 00:22:04 ID:ZGhsxL+r
- 「いっくんは……私じゃ嫌?」
「そんなこと……いや、俺だって、このはのこと……」
「こと……?」
ニヤニヤしてる……。
ふと考える。
このはなら……このはならば、俺は信じることが出来る気がする。
そこまで決まれば、あとは勇気だけだ。
このはの目を見る。大きく息を吸う。
「好き……だ」
あぁ、顔から火が出そうだ……。
「ふふふふふっ……」
顔を伏せて笑い出すこのは。
さっきから、こいつのリアクションは……
「わ、笑うなよ!!」
「ふふふっ、ゴメンね。でも、両想いだったなんて……嬉しくて……」
「このは……」
「あと、それ!!久しぶりに、このはって呼んでくれた!」
「嫌ならやめる」
「じゃあ、止めないでいいよー。ずっと呼んでいいよ、いっくん」
「そうか……」
テンションの高いこのは。
満更でもない俺。
「ねぇねぇ、いっくん!もう一回、名前で呼んでくれないかな?」
「このは……」
「うぅ〜!このは、幸せだよっ!!」
「うおっ!?」
「きゃあっ!?」
- 541 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/07/13(日) 00:26:58 ID:ZGhsxL+r
- 勢い良く俺の胸に飛びついて来るこのは。
受け止めてもらえると思ったのかもしれないが、突然の事過ぎて対応できずそのままベッドに倒れる。
「いっくん……」
「……」
俺の胸に寝転ぶこのは。
顔が近い……
これは……ヤバい雰囲気……。
「いっくん……さっきの約束。まだ有効かな?」
「……このはが有効だと思えば」
「じゃあ……いっくん。このはのこと……いっぱいいっぱいいっぱい、ずっとずっとずっと!幸せにしてください!」
俺の腹の上に座って言うことじゃないな、と思いつつも……。
「うん……」
「へへ、じゃあ……」
意地悪に光る子猫のようなこのはの眼……。
「こ、このは……!?」
「このはの初めて……もらっちゃってください!」
……。
接吻ですからね……?
───────────────────────
日付が変わってしまいましたが……続きです。もう一つは、少し時間を開けることにしましょう。
幼馴染……自分の書いた作品にムカついたのは初めてだ……w
ともあれ、今の僕にはこれが精一杯です……
リクエストなんて身の丈に合わないことをするもんじゃないですね……。
- 542 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/07/13(日) 01:37:31 ID:mpRsHQqg
- リクエスト書いてくれてありがとうございます!
いやはや、やっぱりさすがです。
何か読んでいて萌えすぎて体中がむずかゆくなってきたw
エロスレがまだあった頃なら続きはそっちで…ってことになったかもしれない!?
ネガティブ兄の方も待ってますのでよろしくです!
- 543 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/07/14(月) 03:37:26 ID:/OEt1vhW
- これは萌えた。
このはタン良いキャラだ
- 544 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/07/15(火) 23:14:00 ID:9wvz9mwm
- その日は雨が降っていた。
氷のように冷たい雨が、持ち主から離れた傘に弾かれ音を立てる。
その音が途絶えた瞬間、冷え切った体にさらに冷たい血が流れ始めたのを感じた。
目の前の敵と鈍く輝く刃を、仇として認識する。
「……お前か、お前が遥を……」
───────────────────────
「結局、傘は必要なかったな……」
帰り道。
すっかり持て余してしまった傘の先端を軽く蹴飛ばす。
「わかんないよ。今から降るかも」
隣の遥は空を見上げながら、
「……確かに」
青空が大嫌いな俺でも気持ちの悪いと感じる色の空。
いつ一雨降ってもおかしくはない。
「ま、もう家だし俺には関係ないけどな」
「私は買い物に行かなくちゃいけないから関係有るんだけど……」
「そうだったな。付き合おうか?」
「ううん」
珍しく提案した俺。遥は首を小さく振って
「今日は、お兄ちゃんには秘密」
「何を?」
「お兄ちゃんの好きなものを作るから、今日は付いてきてくれなくても良いんだよ」
「ほぅ……」
遥もなかなか可愛いことを言う。
さほど気にはならないが、少しは楽しみにしておこう。
「じゃあ、私は荷物置いたらこのまま行くから、留守番よろしくね」
「おぅ。まかせとけ」
「うん、じゃあね」
小さく手を振って、遥は制服のまま再び家を出て行く。
「さてと……」
一人残された俺は、とりあえずポストを。
- 545 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/07/15(火) 23:14:32 ID:9wvz9mwm
- ダイレクトメールが数枚と……ファンシーな封筒。
遥宛かと思ったが、どうやら俺にらしい。
といっても、差出人も住所も、切手も何もない。
……直接ポストに入れたのか。
正直言って怪しかったが、一応中を確認する。
「何だ……こりゃ……」
中に入っていたのは、4枚の写真と一枚のメモ。
写真には遥、あきら、宮原、真雪が。
しかし、顔の部分には絵の具で描かれたような掠れた赤のバツ印。
そしてメモには
「『もうすぐ会えるね』……って……」
性質の悪い悪戯……というワケでも無さそうな予感……。
肝心なときに一番話を聞いて欲しい人がいない……。
少し悩んだが、一応これも俺の責任だ。
気は進まないが、皆に連絡を入れようと決断した。
その時
「お、お兄ちゃん!!」
あきらが、必死の形相でこちらに駆けて来る。
「……どうした?」
並々ならぬ鬼気を感じ、俺もシリアスモード。
「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!」
堰を切ったように、俺の胸で泣き始めたあきら。
「ど、どうしたんだよ!?」
「怖かったよ!怖かったよぅ!!」
「何が?」
「スコップ持った変な女の人に追っかけられて……必死で逃げてきて……!!」
「で、大丈夫なのか?ケガは!?」
「ボクは平気……ちょっと、転んで膝擦り剥いちゃったけど……」
- 546 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/07/15(火) 23:15:17 ID:9wvz9mwm
- 「でも……何なんだそいつ……あきらの危ないファンか何かか?」
「分かんない……けど……ボクのこと……邪魔だって言ってた」
「邪魔……?」
「ボクがいると、あの人のところに行けない……って」
「……」
もしかして……。
「こりゃ不味いかもなぁ……」
「何が……?」
「さっきこんな封筒がポストに入ってたんだよ」
さっきの写真をあきらに見せながら、話を続ける。
「もしかしたらなんだが、この写真のみんながヤバいんじゃないのか」
「だとしたら……」
「とりあえず、みんなに伝えよう!!あきらは宮原に連絡してくれ」
「う、うん……」
俺は……とりあえず真雪に連絡を取る。
焦っている空気。
徐々に不安になってくる。
ケータイを持つ手が震えているのを自覚し始めていた。
───────────────────────
時間空けるっていうのも限度があるだろう……。
しかも、今回はここまでで。……連投制限五回はキツいです……。
一応、僕の想像するヤンデレのお話になりますが、まぁ、あまりヤンデレ度合いには自信は無いです。
あと、もう一つ>>527さんのリクエストを頂いてますが、
登場人物がネガティブになってしまう奇病に冒されたため、もう少し時間がかかります。申し訳ない。
- 547 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/07/16(水) 00:24:06 ID:NH7/avOq
- これは怖いな…
これからどうなるのか気になるわ…
- 548 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/07/16(水) 15:36:54 ID:aONR3D7y
- 続きが気になる
- 549 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/07/16(水) 21:47:24 ID:yQpYwLUi
- ヤンデレキターーーーーーーーーーーー
- 550 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/07/20(日) 00:33:25 ID:awpxw07h
- とりあえず、宮原も真雪も学校に居るらしい。
遥だけが、連絡が付かないまま。
「探しに行ってくるから、あきらは家の中で待ってろ」
「ぼ、ボクも行くよ!!」
「駄目だ。危ない」
あきらも対象であることに変わりは無い。
あきらは少し不満そうな顔をしながら、
「分かった……気をつけてね」
「ああ」
返事も適当に遥が向かったであろう道を走り出す。
何も無いなら何も無いで良い。
大袈裟なら大袈裟で良い。
が、この胸騒ぎを気のせいで片付けられるほど、俺も素直な人間じゃない。
今日は昼間だというのに暗いし、このあたりは人通りもない。
絶好の襲撃環境と言ったところか。
「……」
我ながら最低の冗談に呆れて物も言えない。
良い感じに絶望感を蓄えながら、緩やかなカーブを曲がる。
視界が開けた瞬間、足が止まった。
地面に開いた見覚えのある傘。
その向こうに見える、どこかの学校の制服の女。
そして、その手には鈍く輝くスコップ。
足を止めた瞬間、雨が降っていることに気付いた。
「あ、兄上様……」
確かに女はこう言っていた。
もちろん面識はない。
危ない女の登場に、一気に全身の筋肉が張り詰める。
「……お前か、お前が遥を……」
「ううん。まだなの」
予想以上の軽口に、血液が凍ったまま沸騰し始めているのを感じる。
- 551 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/07/20(日) 00:34:07 ID:awpxw07h
- 「まだ、生きてるもの」
「……」
一安心。
が、この言葉はつまり、
「でも、安心して兄上様。この女、もうすぐ死んじゃうから」
「……」
「見てて」
その得物を振りかざす女。
それを黙って見ている気は更々無い。
手に持った傘を全力で投げる。
自分のコントロールに自信が無い俺は、傘の軌跡を見ずに距離を詰め、女と遥の間に入る。
「……!?」
驚きからか、顔を引きつらせている女。
「遥!!起きろ!!」
女から眼を離さずに後ろに下がり、遥の肩を抱き上げる。
「ん……お兄ちゃん……?」
ゆっくり目を開けた遥。
重いものをおろしたように、全身が軽くなったのを感じた。
「良かった……。怪我とかないか!?」
「う、うん……大丈夫だよ」
「はぁ……本当に良かった。立てるか、遥」
「うん。ふふ、お兄ちゃんもそういう顔するんだね」
「何が?」
「なんでもない」
遥の微笑みにホッとする。
という状況ではないようで、
「何をするんですか、兄上様。遊びたいなら、あとでゆっくり……」
「何故こんなことをする」
こいつの意味不明な話はもう沢山だ。
- 552 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/07/20(日) 00:34:41 ID:awpxw07h
- 「もちろん兄上様のためですよ。あんな女達がいるから、兄上は私に会いに来れない……」
かみ合わない会話。
次第にイライラしてくる。
「だから、兄上様、意地悪はやめてそこを退いてください」
スコップを構える女。
答えなど考えるまでもない。
牽制のつもりで放つ蹴り。
「兄上様!?」
本気で驚く辺りが癇に障る。
「次は当てるぞ」
「冗談は辞めてください」
それでもずんずんと進んでくるこの女。
どうも威嚇で応じてくれるほど楽じゃ無さそうだ。
警告通り、今度はマジ当て。
といっても、蹴るというより押す感じに近いが。
バランスを崩し、水溜りの中に突っ込む女。
泥が跳ね、彼女の顔にかかる。
これで退いてくれるという淡い期待……
「ふふっ……」
しぶとい……。
笑いながら立ち上がる女。
「兄上様を私のものにしちゃうのが先みたいですね」
とスコップを振り上げる。
……つまり、標的は俺になったと。
「遥。下がってろ」
「だ、大丈夫なの!?」
「当然」
遥を下がらせる。
あまり、取り乱している姿は見せたくないんだけど。
「はぁ……」
意識を……塗り潰す……。
───────────────────────
- 553 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/07/20(日) 00:35:15 ID:awpxw07h
- ネガティブ兄vsヤンデレ風、第二回。
……まぁ、そろそろお蔵入りになるべく台本だったという意味が分かっていただけるのではないかと。
僕自身がヤンデレという属性をいろんな意味で理解していない、というのもそれに拍車をかけていますね……
そんなこんなで、もう少し続きます。申し訳ない。
- 554 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/07/20(日) 01:03:45 ID:MBENuPvX
- やっぱり遥カワイイな
続きがんばって
- 555 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/07/20(日) 01:28:36 ID:KmCdEBN5
- これをおくらいりにするなんてとんでもない!
ネガティブ兄ちゃんが頼れる男に見えてきたw
続き待ってますよ!
- 556 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/07/20(日) 16:23:02 ID:3XeAO+7U
- 冷蔵庫からフルーチェを取り出して、部屋で食べる。
バターン!
勢いよくドアを開けて妹登場。
「おにーちゃん!わたしのフルーチェ取ったでしょ!?」
すごい剣幕に思わず固まる俺。
「あ!やっぱり勝手に食べてる!返せっ!」
俺の手からフルーチェの器を奪い取る。
「もうっ!ほとんど食べちゃってるじゃん!」
「あうっ・・・ごめん」
「口の中のも返せっ!」
怒りながら、いきなりディープキス。
ちゅぱっちゅぱっ
「フルーチェおいし〜」
あーあ、妹がいるやつっていいな〜
こんなことばっかりしてんでしょ?
- 557 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/07/20(日) 21:27:08 ID:iLA2E87U
- >>556
そうだね、前半はそれとまったく同じ状況が起こり後半は地獄絵図だね。
- 558 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/07/21(月) 15:26:48 ID:7Zvms0Qz
- 食い物を巡り兄妹で地獄絵図・・・
まぁ、普通にあるな
- 559 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/07/22(火) 13:48:06 ID:c78jGZa6
- おちんちんは食べ物です
- 560 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/07/26(土) 19:46:26 ID:Fj1Ipo0g
- 続き期待
- 561 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/07/29(火) 23:03:51 ID:wz1/a6Xq
- 「はぁ……」
ため息と一緒にお兄ちゃんの頭が、一気に下がる。
「お、お兄ちゃん!?」
危ないっていう自覚が無いのか、前も見ていないお兄ちゃんに思わず焦りの声が出てしまった。
どうしよう……でも、間に合わない……。
そう思った瞬間、斧のように振り下ろしたスコップを、左足を軸にクルッと回って避けるお兄ちゃん。
そしてその勢いのまま、側頭部に強烈なキック。
「くっ……」
体勢を崩した女の子の右手を狙って、全体重をかけた飛び蹴り。
女の子の力が抜け、なすすべなくスコップが落ちる。
お兄ちゃんはそのままもう一回転、女の子の足を間髪入れずに払った。
「うわぁ……」
あっという間に、相手を倒してしまった。
……強い……無駄に……。
でも、足技ばっかりなのは何で……?
「はぁ……」
でも、頭は垂れたまま。
お兄ちゃんは落ちたスコップを拾って、
「お前は良いよなぁ……」
「え……」
「そんな簡単に人を殺すとか言えてさ……どうせ俺なんか……」
寝転がった相手の耳元でネガティブ全開な発言を繰り返すお兄ちゃん。
暗い……お兄ちゃん、暗いよ……。
「……」
あんまり聞こえないけど、何言ってるんだろう……。
相手の女の子も何だか暗い顔してるし……。
逆に可愛そうになってきちゃったな……。
- 562 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/07/29(火) 23:04:30 ID:wz1/a6Xq
- 「は、遥ちゃん、大丈夫!?」
後ろから声がして振り返る。
「みんな……。私は大丈夫だけど……」
あきらさんを先頭に、宮原さんと冬月さん、そしてお兄ちゃんの友達の州田さん。
「あれ、州田さん?どうしたんですか?」
「私が……頼んだ……」
「冬月先輩が?」
この二人……どういう関係だろう……。
まぁ、いいけど。
「で、遥さん?何をやってるんですか、アレは……?」
宮原さんが恐る恐る指差した先には、
雨の路上で傘も差さずに、寝転がっている女の子の耳元に片膝付いてボソボソ呟く男の人。
どう見ても見ても怪しいよね……。
「それが私にも……」
「うーん……遥ちゃんにも分かんないんじゃお手上げだねー」
「ですね」
「……だね」
この人たちは……私を何だと思ってるんだろう……。
「でも……そろそろ……」
「そ、そうだね。お兄ちゃーん?」
恐る恐る。
矛先がこっちに向いたらヤダなぁ……。
「ん?あぁ、遥。いや、すっかり夢中になってしまった」
と、振り向いたお兄ちゃんはビショビショだけど異常なほど爽やかで、ちょっと気味が悪い……。
「あぁ、みんな。来てたのか」
みんなリアクションが無い……。引いてるんだ、やっぱ……。
- 563 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/07/29(火) 23:05:04 ID:wz1/a6Xq
- 「……その人は?」
お兄ちゃんの笑顔とは対照的に、さっきの女の子はこの世の終わりのような顔をして、地面に倒れている。
「さぁ。さっきから一言も喋らないんだ」
……大丈夫かな。
「……どうするの?」
「んー……警察で良いんじゃないか。電話しよう」
軽いノリで警察に電話するお兄ちゃん。
……説明するの、私なんだろうなぁ……。
───────────────────────
お久しぶりで……。ネガティブ兄vsヤンデレ風、第三回。次で終わりになります。
まぁ、多くは語らずとも、やっぱり封印すべき作品だったなぁとこれを貼る前に思いました……。
ネガティブ兄が蹴り主体で戦うのは、もちろんあの人をリスペクトだからです。
- 564 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/07/30(水) 19:21:27 ID:8y448u7E
- 遥可愛いよ遥
- 565 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/07/30(水) 23:38:31 ID:sqKmXWKT
- 続きも期待!
- 566 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/08/08(金) 15:12:48 ID:RoWyTdZh
- 【調査】携帯電話「1日のほとんどがマナーモード」…若い世代ほど、また男性ほど着信音を気にしている傾向
http://mamono.2ch.net/test/read.cgi/newsplus/1218171511/286
286 名前:名無しさん@九周年[] 投稿日:2008/08/08(金) 14:59:39 ID:0MjvY/I40
電車のなかで俺の携帯が携帯がなって
「お兄ちゃん!メールが届いたよっ!」と電車の中に響き渡った
すげーゾクゾクした
- 567 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/08/13(水) 00:33:06 ID:YXmJE+DK
- 「つまり、アレはお兄ちゃんへの愛情表現のつもり……ってこと?」
「この文章を平たく解釈するとそうなるな……」
後日、びっしりと書かれた紙を読みながら。
「だが、一応心を入れ替えたってことらしいがな」
「安心して良いのかなぁ……」
ちょっと不安そうな遥。
まぁ、ああいう人間は何するか分からないからな。
「その……悪かったな」
「何が?」
「完全に俺のことなのに遥や真雪達には迷惑をかけた」
「ううん、気にしてないよ」
「……」
「お兄ちゃんが私のことを助けに来てくれたのが嬉しかった。だから、今回は許す」
「そうか」
本当はもっと責めてくれた方が、こちらとしても気が楽なのだが……
遥の微笑を見ているとそういう気分ではなくなってしまう不思議。
「うん。で、何が問題なの?」
「近いうちに本人が謝りに来るらしい」
「あぁ……お兄ちゃんには大問題だねぇ……」
「それもだし……それすらも罠なんじゃないかってふと思うんだが……」
「お兄ちゃんのネガティブも今回ばかりは大袈裟じゃない気がしてきたよ。あの人……ちょっと普通じゃないからね」
「……そうだな。その時は、俺一人で行く」
気は進まないけどな。
遥は心配そうに俺の顔を覗き込んで、
「大丈夫……?」
「死ぬほど嫌だ。でも、仕方ない。遥に危険が及ぶ」
「お兄ちゃん……」
「何だよ?」
「たまにはカッコいいこと言うんだ」
「……すまん……」
- 568 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/08/13(水) 00:33:39 ID:YXmJE+DK
- 「え?褒めたのに!?」
「いつももっとカッコよかったらよかったのに……」
「それはちょっとキモいと思うよ……」
「キモい……」
気持ち悪いならともかく、キモい……。
もう立ち直れない……。
「……どうせ俺なんか……」
「お、お兄ちゃん?そんなに落ち込まないで!?別にお兄ちゃんに言ったんじゃないからね!?」
「……」
遥の声も遠く聞こえてきた。
ピンポーン。
インターホンが鳴った……気がする。
「わ、お客さん……えと……お客さんが来たから行ってくるけど、落ち込んじゃダメだよ!?」
「……」
「あと、自棄起こして、洗剤一気飲みとかしちゃだめだからね!?」
しねぇよ……。
「あと……あとは……」
「良いから行けよ……」
「う、うん……!」
テンパる遥を追い出して、ソファーの上で一人体育座り。
と思っていたが、すぐに遥が戻ってきて
「お兄ちゃん?」
「……何だ?キモい俺に何か用か……」
「噂をすれば。だよ……」
「いっ!?」
マジかよ……まだ心の準備が……。
落ち込んでいる暇がなくなった俺は……ソファーに座ってみたり。
- 569 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/08/13(水) 00:34:11 ID:YXmJE+DK
- 「あ、あの……突然お伺いしてすいません」
この前の女が入ってくる。
「遥は下がってなさい」
一応、俺が命令したという形に。
うん、なかなか良い判断だぞ、俺。
「まぁ、座って」
「はい……」
うーん……なんつーか、狂気の色が消えているし……心配には及ばないかもなぁ。
「あの……この度はご迷惑をおかけしました。お怪我とかありませんでした?」
「はぁ、あの……こちらこそ、随分暴れまわってしまって……」
あんまり記憶にないが。
「とんでもないです!!私を止めてくれて……ホントに感謝してます」
「もう……大丈夫なんですか……?」
「そのことなんですが……。私……気付いて……しまって……」
恥ずかしそうに俯いてしまった女。
「……何にです?」
売り言葉に買い言葉。仕方なくこう聞いてみる。
すると、女はゆっくりと顔を上げて、
「蹴られることがあんなに気持ちの良いものとは……思いませんでした……♥」
訂正だ!!この女、怖ぇえ!!
「ちょ、ちょっと……!?」
「これからも、もっともっといじめてくださいね、兄上様♥」
……全身の体液が逆流しているような気分だ……。
拒絶する気力も、逃げる気力も、冗談にする気もない……。
「うぉぇ……」
喉の奥がちょっと酸っぱい……。
……夢なら……覚めてくれよ……。
───────────────────────
- 570 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/08/13(水) 00:36:15 ID:YXmJE+DK
- お久しぶりでございます。ヤンデレ編、最終話です。
この程度のものを引っ張りすぎじゃないか……。
まぁ、なんつーか、やっぱりヤンデレってよく分かんないなー、とか、シリアスはガラじゃないなー、とか。
せっかくの夏なんで、夏の話でも書きたいと毎年思うんですが……
色々している内に毎年夏が終わってしまう……今年もダメそうだ。
- 571 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/08/13(水) 16:52:22 ID:c+5eaziV
- お疲れさん。
もう休んでいいよ。
- 572 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/08/13(水) 21:59:27 ID:3Ph6qHdD
- 流星さんお疲れさま
遥可愛いなやっぱり。
- 573 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/08/14(木) 00:41:16 ID:nUX4dlb0
- グッジョブ!
ヤンデレ怖えぇ…
>>572
流星…?
- 574 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/08/14(木) 01:14:42 ID:sVuwsfEL
- >>572
遊星の間違いだったorz
- 575 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/08/14(木) 01:48:14 ID:giEZl0fy
- 遥は俺の妹
- 576 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/08/29(金) 08:31:59 ID:8GixXOzw
- 作品来ないかな
- 577 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/08/29(金) 23:09:11 ID:HlD1hw5m
- 下がり過ぎ
- 578 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/08/31(日) 22:53:30 ID:d7Hris2B
- >>563
あの兄貴ですね、わかりますw
- 579 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/09/11(木) 11:14:47 ID:qmUsMVEx
- 保守
- 580 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/09/13(土) 20:47:07 ID:CXX2G0FI
- この前、友達の部屋でゲームやってて、そいつにお菓子とジュースを買いに行ってもらった。
そのまま一人でゲームしてたら、いきなりガツーンと脳天に衝撃!
涙目で振り向いたら、友達の妹さんがいた。驚いて青ざめた顔してる。
どうやら友人と間違えて、脳天に思い切りエルボー落としたらしい。
「なんなの?」って言ったら、妹さんの表情がぶわわっと泣き顔になって、
「間違えたのごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめんなさい!ごめ(ry」
大粒の涙をボタボタこぼしながら泣き叫びはじめた!
さらに嗚咽しながら俺の足にすがり付いてくる。
俺の足に涙がボトボトかかって、ジーパンごしに涙の熱さが伝わる。
人ってこんなにも大量に涙が出せるもんなのか〜と冷静に思った。
泣きながら必死に「ごめんなさい」を繰り返す妹さんに、
「いいから、だいじょうぶだからw」と笑顔で答えながら、ええ、思い切り勃起しましたよw
- 581 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/09/14(日) 10:37:17 ID:skTJrN4h
- アゲん
- 582 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/09/15(月) 00:30:16 ID:IVS92ooz
- >>580
チュッチュしたのか?
- 583 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/09/15(月) 08:22:22 ID:hNZmqcFO
- >>580
そこから友人の妹フラグですね。わかります。
- 584 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/09/17(水) 23:13:07 ID:yyOh+6eC
- エルボーで死ななくて良かったね。
- 585 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/09/17(水) 23:56:46 ID:yyOh+6eC
- 兄貴とか兄さんとか呼ばれたいな。弟にはあんちゃんと呼ばれるが…
- 586 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/09/18(木) 00:32:14 ID:JvM8fzct
- 「反省したら今からPSP買ってくるといって、その通りに実行しなさい。」
- 587 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/09/23(火) 19:00:50 ID:H/SCoLxv
- >>580
まだマシだろ・・・俺なんか友達と遊んでたら、そいつの妹がしょっちゅう嫌がらせしてくるぞ。
しかも地味に嫌な事ばっかorz俺は妹さんに嫌われるような真似した覚えはないんだがな・・・・
まあ、相手は中学生だから別に腹は立たないけど
- 588 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/09/23(火) 21:19:03 ID:EwzDHk3y
- それなんてフラグ?
- 589 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/09/23(火) 21:38:07 ID:H/SCoLxv
- >>588
まあ、その子かなりブラコン入ってるから、多分俺がいるのが邪魔なだけだと思うが。
でも、女相手ならともかく、男相手にそれはないか・・・・とするとやっぱ単純に俺が嫌われてるだけかなorz
いいさいいさ、嫌われるのは実の妹で慣れてますよっと
- 590 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/10/07(火) 20:44:38 ID:FQ8IrfQh
- 保守。
大分廃れたねぇ
- 591 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/10/07(火) 20:53:11 ID:COg0mzVf
- もう気が済んだんだろ
- 592 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/10/14(火) 22:50:02 ID:IazpJaBZ
- 保守
- 593 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/10/14(火) 23:52:53 ID:eV1DDWZT
- ほす
- 594 :No.2 :2008/10/15(水) 00:41:19 ID:WVlF/cqB
- どもども
ご無沙汰しております
近日中に過去ログ倉庫を移転させます
行き先はさくらの既存mewlog垢か
このたびCORESERVERにて新たに取得した垢のどちらかです
いずれにせよ0ch Scriptによる掲示板形式とし
専ブラで閲覧できるようにさせて頂きます
移転が完了次第お知らせ致しますので
何卒ご理解のほどよろしくおながい致します
- 595 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/10/15(水) 22:11:17 ID:OJIW1/DB
- おながい致します…
- 596 :こんなのはどうだ :2008/10/16(木) 21:58:39 ID:wA8jl2wk
- 「にいさん」
「ん?」
「まるむし あげようか」(手を出す)
「・・・」
- 597 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/10/17(金) 01:26:35 ID:bVTML3zX
- >>594
お疲れ様です。
- 598 :すばる ◆9l4B6y7T.Q :2008/10/17(金) 11:53:36 ID:eOK9nk3U
- >>594
おつですー
- 599 :No.2 :2008/10/19(日) 23:32:12 ID:ryx1M6zp
- どもども
やっと作業が完了しました
万全を期してはおりますが、不具合その他がございましたら
このスレにてお知らせ下さいませ
妹に言われたいセリフ
http://mewlog.sakura.ne.jp/sisterswords/
- 600 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/11/04(火) 08:41:54 ID:vPU1fUCz
- 600
- 601 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/11/20(木) 23:17:07 ID:rdg6cRwc
- 人が……
- 602 :名無しくん、、、好きです。。。 :2008/12/09(火) 09:14:10 ID:JbUcbkkh
- いない…
- 603 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/09(火) 21:08:40 ID:XH5KY8zg
- いるけどね。作品無いけど。
- 604 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/24(水) 21:50:36 ID:5IluGuZ5
- この時期は、俺みたいな人間には生き辛い。
誰かの誕生会なんて都合のいい言い訳に過ぎない。
結局、人は自分の愚かさに自覚していて、その愚かさを誤魔化すために口実を作り、騒ぐ。
それはそれでも構わないが……何故、そのメカニズムに乗らない人間を卑下するのか、それだけは不満だ。
「……今年の言い訳は決まりましたか?」
隣の遥が、ため息混じりに尋ねた。
「……大体……」
遥の質問に対し、言葉交じりにため息で返す。
「この時期は最低だな……」
まだこの俺に追い討ちをかけようと手薬煉引くテレビを、リモコンで消し、またため息をつく。
「みんな、楽しいことが大好きだからね」
「楽しめない俺みたいなヤツもいるけど……」
クリスマスの日って、みんな何してんだろうな。
「お兄ちゃんだってその気になれば……」
「その気にはならないんだ。不思議なことに」
「じゃあ、しょうがないよ」
「しょうがないな」
でも、憎い気持ちは少しある。不思議なことに。
自覚できるほどの苦い顔。
「何かクリスマスプレゼント買ってあげようか?」
「いや、そういうのは毎年断わっているだろ」
毎年大野家にはクリスマス禁止令が……というか、遥が空気呼んでくれるだけだが。
「うん。でも、少しでも楽しみがあったほうがいいよ……」
意味深な遥。
「どういうことだ?」
「どういうことって……」
何だか呆れたご様子。
俺、何か変な事言っただろうか。
……まぁ、いいか。
- 605 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/24(水) 21:51:09 ID:5IluGuZ5
- 「とにかくだ。今年もクリスマスとは縁の無い年末を送りたい……」
この単語を自分で言うのも嫌だな……。
ちょっと口の奥が苦くなる。
「だと良いけどね……」
何だかさっきから引っ掛かる遥。
「どうした、さっきから……」
もしかしてご機嫌斜めでいらっしゃる?
恐る恐る尋ねてみた。
「いや、だって……」
躊躇いがちの遥。
「?」
意味が分からない俺。
「何何何?ケンカはダメだよ?」
背後からの声。
……。
……?
「あきらっ!?」
「やっほー。久しぶりだね、お兄ちゃん」
冬でも元気なボク女……。
「……勝手に入ってくるなよな」
「勝手じゃないよ。ちゃんとお邪魔しますって言ったよ」
別に突っ込むほどのテンションは無い。
腹を立たせながらも流す。
「何か用か」
「クリスマスの予約を取りに来たの!」
今一番聞きたくない言葉をさらりと言いやがった……
「遥……頼む」
「え……うん……えっとね、あきらさん……?お兄ちゃんは、クリs……が大嫌いで……」
「うそだー。そんな人、聞いたこと無いよー」
もはや俺の存在があきらの常識外……ヘコむなぁ……。
- 606 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/24(水) 21:51:43 ID:5IluGuZ5
- 「ね?ウソだよねっ?お兄ちゃん?」
リアルで信じていないらしい。
いつもより何だかテンション高めのあきらが後ろから、俺の首に巻きついてくる。
「あっ……お、お兄ちゃんっ!!怒っちゃダメだからねっ!?」
「怒りはしないけど……」
はぁ……もう今年終わらねぇかなぁ……。
「だから、お兄ちゃん。クリスマス、ボクと一緒に遊ぼう!!」
「……」
「お仕事があるから、夜からになっちゃうけど……でも、いいよね!クリスマスは夜でも!!」
……帰って欲しいなぁ。
「じゃあ……私は……朝でもいいよ……」
またも背後で声。
「真雪か……」
「うん……。寒いね」
「ああ……寒いな」
……中身の無い会話。
「プレゼント、何がいい……?」
「いらない」
「じゃあ……自分で考える」
もうここまで来ると、日本語が通じていない可能性があるな……。
「少し遅れてしまいましたね。こんにちは、兄様」
……もういい。もう誰でもいい……。
「宮原……」
……ここ俺の家なんだけどなぁ。
「この様子ですと……クリスマスの予定はあまり空いて無いですか」
またその話かよ……。
クリスマスになると大野賢太郎の需要が増大すると言う話は聞いたことが無いが……。
まぁ、ともかく来る人来る人に嫌いな言葉を浴びせられ、どんどん弱っていく俺の体。
頼みの遥も、もはやどこにいるのかすら分からない……。
周りを見渡せば、何だか記憶に無い連中もいるし……一体俺は何をすればいいんだろう……。
- 607 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/24(水) 21:52:18 ID:5IluGuZ5
- 流れに逆らわぬように、ジッとソファーで耐えていると、
「じゃあ、平等にみんなでクリスマスパーティーを開くということで」
と、誰かが言った。
……もう決定の雰囲気。
「というわけで、お兄様。楽しみにしててくださいね。詳しくはまた追って連絡しますので」
宮原のこの笑顔を正直殴ってやりたいと思った。殴らないけど。
ぞろぞろと捌けていく人。
残る遥と俺。
「どうしよう……」
「どうしようもないよ……」
「……はぁ……」
うん、逃げよう。
───────────────────────
脱出は簡単だった。
俺の家を会場にしたのは方法としてはいいが、遥を完全に味方に付けられなかったのはかなりのミスだな。
目下の問題は、ほとぼりが冷めるまで俺はどこで何をすればいいか。だ。
友人のほとんどが今日をお楽しみだろうから、そんな中に入っていく勇気は無いし、
そもそもどこまで根回しが進んでいるか……。
買い物しようにも絶対『口に出すのも憚られる二人組』が沢山いるだろうし……。
とすると、もう行ける場所はそうないな……。
「……何もかも今日と言う日が悪い」
呟いた言葉。
恨み節は、自爆の合図。
『お前が負け犬なだけじゃないか』と北風が囁く。
「そうか、これが遥の罠だったんだな……」
遥にまで被害妄想が出ている。
これは本格的にヤバいかもしれないな……。
「どうしようかなぁ……」
- 608 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2008/12/24(水) 21:52:51 ID:5IluGuZ5
- 帰る?
帰らない?
まぁ、少なくとも手ぶらでは帰りづらい空気ではある。
かといってこれから何処に行けば良い?明日の朝までは安心は出来ないぞ……。
もはや八方塞の俺。
小さな公園のベンチだけが、かろうじて俺に扉を開いている気がした。
「はぁ……」
すっかりため息も白い季節だ。
こんな真っ黒な体から出てきたのにな。
「そうか……これが孤独か」
そういえば、いろんな負の感情を抱いてきたつもりだが、
孤独、というのは自分には縁がなかった気がするな。
そう考えると、遥の存在は偉大だな。
……五分前の自分の言葉を忘れた発言に、少し情けなくなる。
「悪かったな、遥よ」
とりあえず曇り空に向かって謝ってみた。
青空に劣等感を掻きたてられる俺だが、この嫌なことが起こりそうな曇り空も……。
「サンタさんはこんな寒い日に、何してるのかな?」
そんな声を顎で聞いた。
頭を下げ、前方に視線を向ける。
「遥っ……!?」
ヒマから解消されたと言う感情が少しと、見つかった!という感情がかなり……。
即座にダッシュの姿勢。
「お、お兄ちゃん!!大丈夫だよ、連れ戻しに来たわけじゃないから!!」
小動物の相手をするように、まずは優しい言葉。
「本当か……?」
「うん。まぁ……一応、探してくる、ってことになってるけど」
「いいのか?」
「ちょっと悪いとは思うけど……」
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0ch BBS 2004-10-30