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[第七弾]妹に言われたいセリフ
- 128 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/07/12(木) 22:01:05 ID:VZvtDdLR
- そりゃ、この歳になってできた妹だもの。
普通に可愛いし。
異性として意識するなって方が無理だって思うし……。
「お母さーん!!瞳のブラ、知らないー!?」
「ふぁ……」
小さく欠伸をしながら階段を下りる。
理由はどうあれ、珍しく早起きした自分を褒めながら、最後の一段を飛び降りる。
すると、
「きゃっ……!!」
角の向こうから現れた少女が、俺とぶつかりそうになって咄嗟に身を引く。
「お、お兄ちゃん……?」
「あ、悪い。瞳」
「おはよう、お兄ちゃん。今日は早いんだね?」
「……」
胸を見る。
……結構……ある……。
「どしたの?」
俺の顔を覗き込む妹。
「い、いやなんでも……それより急いでるんじゃないのか?」
「あはは、そうでした」
ペロッと舌を出して笑ってみせる妹。
……そりゃ……可愛いよな。
「じゃね、お兄ちゃん」
俺の脇をすり抜け、勢いよく階段を上がっていく妹。
「あぁ」
そして階段の上で振り返り、
「たまには早起きしなくちゃダメだよー?」
「分かってるよ」
適当に返事をして、ダイニングへ。
- 129 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/07/12(木) 22:01:56 ID:VZvtDdLR
- 用意された朝食をモソモソと食べていると、
「お兄ちゃん」
ドアから顔だけ出した妹が
「じゃあ、行ってくるね?」
「ああ、朝練頑張れよ」
「うん。お兄ちゃんも、よかったら見に来てね」
「いつかね」
「約束だよ!」
底抜けに眩しい笑顔を見せながら、小さく手を振って家を出て行く妹。
……やっと行ってくれて、ホッとしたやら残念やら。
苦い顔でコーヒーを一口飲むと、
「あ……あのコ、お昼忘れてる」
後ろで義母が呟く。
「あぁ、よかったら届けますよ」
「ホント?あのコも喜ぶわ」
「……喜ぶ?」
「えっと……コッチの話。じゃあ、お願いね。お昼はチア部の部室にいるらしいから」
「わかりました」
俺の昼と、一回り小さい妹のお昼。
……どうやら俺もかなりの本気ぶりらしい。
───────────────────────
「さてと……行こうかね」
昼休みを告げるチャイムを聞いて立ち上がった。
チア部の部室とは聞いたが、そもそも部室の場所を知らない……。
まぁ、運動部の部室は一つに固まっていると聞いたから、大体の場所は分かる。
片手に弁当を二つ持って、歩き出した。
運動部部室群は屋外にあって、この熱気の中を歩いていくのは少し嫌だったが……仕方ない。
汗を流しながら歩いていくと、目的地にたどり着いた。
俺には何の用も無い場所。場違いも良いところだ。
「チア部チア部……っと……」
と呟いて気付いたが、部が部だけに怪しいセリフ……。
- 130 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/07/12(木) 22:04:05 ID:VZvtDdLR
- しかもそういう発言ほど、聞き流してくれないもののようで。
「こら!!何してるんだ、そこで!!」
思わず体が震える。
「……いや、別に俺は……」
言い訳しながら振り向くと、
「や。お兄ちゃん」
嬉しそうにこっちに歩いてくる瞳。
「何だ、瞳か……」
全身の力が抜ける。
「もー!声で分かってよね、声でー?」
「まぁ、それもそうなんだけど。ゴメン」
「あはは、素直でよろしい。それより何かご用?あ、何か部活始めるとか?」
「まさか」
即座に否定。
……瞳の前では言えないが、この炎天下。出来れば運動はしたくはない。
瞳は残念そうに唸った後、しばらく考えていたが、
少し遠慮がちに
「じゃあ……練習、見に来てくれた……とか?」
「近いな」
「……近い?」
何だか嬉しそうな顔。
……面倒になってきたので、ネタ晴らし。
「弁当、忘れただろ?」
「え……あ、そういえば……入れてないかも……」
「ほら、これ。お義母さんから預かってきた」
「わー!お兄ちゃん、ありがとー!!」
笑顔が眩しすぎる……。
「んじゃ、俺は……」
「あ……お兄ちゃん?」
- 131 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/07/12(木) 22:07:21 ID:VZvtDdLR
- 「何か?」
「もうお昼ごはん食べちゃった?」
「まだ昼休み始まったばっかりだぞ?」
「あ、そうなんだ!」
笑顔がさらに眩しく……。
「よかったら、練習見ていって欲しいなーなんて……思うんだけど」
「練習?今から?」
「うん、大会が近いから。お昼半分だけ練習してるんだ」
「ほー、大変なんだな。しかし、俺で良いの?」
「うん。大歓迎だよ。人の目があったほうがやる気になれるし……それに……」
「それに?」
「ううん、なんでもない!!き、着替えてくるね!!」
俺からランチボックスを受け取ると、というか奪い取ると、一目散に部室へ走っていく。
答えを聞かれぬまま、残された俺。
「……なんだか、見ていく流れ……?」
一筋の汗が流れる。
……望むところといいたいが……。
───────────────────────
「あ、お兄ちゃん!」
更衣室から現れた妹。
ブルーのワンピース状のチア服を身にまとっている。
細く締まった二の腕や、ヒラヒラのスカートから覗く太腿が眩しい。
それより目が行ってしまうのは……無防備な二つの膨らみで……。
「お……お兄ちゃん……目が……えっちだよ……」
顔を赤らめながら、胸を隠すように腕を組む妹。
「は!?」
自覚なし。その分、性質が悪し。
「え、えへへー……し、仕方ないよね?お兄ちゃんも、男の人だしー……」
本人の必死のフォローが泣ける……。
「……ゴメン」
「え、あ……いいの。お兄ちゃんにやっと見てもらえて嬉しいよ」
頬を赤らめ、微笑を見せる瞳。
- 132 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/07/12(木) 22:08:31 ID:VZvtDdLR
- ……あぁ、嫌な予感。
「似合う……かな?」
やっぱり……。
「うーん……」
そりゃ似合う。正直可愛いと思う。
だが。さっきの件もある……正直に言ったらさすがにヤバいのでは……。
「……答えにくいよね……。変なこと聞いてゴメンね?」
応えるより先に、後ろ向きな答えで納得してしまった妹。
「え、いやっ!そんなつもりじゃ!」
必死で取り繕うも、もはや手遅れ。
「ううん。いいのいいの。さ、練習練習!!」
誤魔化すように、仲間の待つ炎天下のグラウンドへ駆けて行く瞳。
……後悔。
───────────────────────
笛の音とともに、舞うチア部部員一同。
足が上がるたびに、その……素敵なものが見えるのだけど。
「チラリズム的にはイマイチ……」
……なにも口に出すこたぁねぇだろ、俺。
まぁ、見えても良い物なんだけどね、アレは。
「だからこそ……」
黙ってくれ。
それにしても、やっぱり瞳は可愛い。
……言い忘れた感があるが、恋愛感情は無い。無いったら無い。
「炎天下でついにおかしくなったか、俺も」
思考の乱れを感じ、思わず呟く。
瞳が頑張っている以上、俺も日陰で観察というワケには行かない。
だが、応援部を応援する気にもなれず、ただ呆然と立ち尽くす怪しい男な俺。
フィナーレに向けて加熱していくチア部一同と、茹っていく俺の脳。
そんな中で、俺はずっと妹に釘付けになっていることに気付いた。
俺の目を奪って放さないのは何だ?
一切の曇りも無い笑顔?
日焼けとは無縁の白い肌?
- 133 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/07/12(木) 22:09:03 ID:VZvtDdLR
- 『全部』なんて言うのは安っぽいセリフみたいで癪だが……恐らくそれが正解。
気持ちが伝わるってのは、きっとこういうことなんだと思う。
「あ、おーい!!」
だんだん妹に染まっていく俺の脳に止めを刺す妹の声。
「ふぅ、お兄ちゃん。お待たせー」
「おぅ、お疲れ」
「あ、ゴメンね。付き合せちゃって」
「いや、見てるのも楽しかったし」
「そうなんだ。嬉しいなー」
タオルをギュッと握り締め、満面の笑顔。
あぁ、可愛いっ!!
「あ、あの……お兄ちゃん?」
「ん?」
「よかったら……お昼一緒に食べない……?」
「俺と?」
「うん……いつもはみんなと食べるんだけど……みんなが……」
チラッと後ろを見る瞳。
その視線の先には、楽しそうにこちらを見物しているチア部部員。
「ダメかな?」
「いや、全然」
……本心はかなり嬉しいです。
「うん、じゃあ行こう?いつもね、あの木の下で食べるんだ」
スキップするように歩く妹のあとに続く。
「あ、結構涼しい」
木陰となった芝生の上に腰を下ろす。
ここには良い風が吹くようで、さっきまでの暑さからしばし開放され、
体に溜まった熱気を吐き出すように大きく息を吐いた。
- 134 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/07/12(木) 22:09:38 ID:VZvtDdLR
- 「あ……」
さっきまでの元気な瞳はどこへやら。
急に座るのを躊躇い始める瞳。
「どうした?」
「う、ううん!!なんでもない!!あ……あの……やっぱり一緒に食べるのは止めない?」
「……?まぁ、いいけど……何で?」
「……だって……汗……かいてるし……」
「気にしないぞ?」
「でも匂いとか……」
「気にしないって」
「ホント……?」
「本当だよ」
女の子ってのは大変だなぁ……。
いや、俺だって多少は気にするけどね。
「義理とはいえ、兄貴にそんな気使わなくても良いのに」
何気無く言った一言。
……だが、受け取る側は何かを感じてしまったようで。
「ダメだよ……」
俺の目の前にペタンと座り、真っ直ぐに俺の目を見る妹。
その姿、その視線にドキッとする。
「嫌われたくない……」
「へ?」
「お兄ちゃんのこと大好きだから……だから……そんなことで嫌われたくない」
真剣な眼差し。
……逃げることは許されない。それは男として恥ずべきことだから。
でも、真面目な方向に話を進められそうにない。
……なぜなら、俺の理性は熱で緩くなっているから。熱可塑性だっけ……?
「瞳ー!」
一気に距離を詰め、小さな肩を抱く。
汗?匂い?嫌われる?そんなの知るもんか。
「あぁ、もう!!お前は可愛いな!!」
「お、お兄ちゃん……?」
- 135 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/07/12(木) 22:11:19 ID:VZvtDdLR
- 「ずっと可愛いと思ってたよ。チア服だって似合ってる」
「ど、どうしたの……?」
キョトンとした妹。
「何?何でそんなに俺の心をくすぐるわけ?」
「え……」
「あぁ、もうはっきり言うよ。俺も瞳のことが好きになった」
「ウソ……?」
「さすがにそんな嘘はつかないぞ」
「……信じていいの?」
「信じてくれなきゃ俺も困る」
……っていうか、今の状況がすでに困っている。
何してくれたんだ、俺は……。
せっかくちょっと静かで知的な……
「うぅ……」
「な、泣くなよ!」
「クスンっ……でも……」
ま、いいか。
「……飯にしようか」
「うん……いっぱいお話しようね?」
「あぁ」
俺に寄りそうように座る瞳。
下から俺の顔を覗き込んだその顔が眩しすぎて。
……少々短絡的で、その場凌ぎの告白。
いや、告白といえるかどうかも怪しいが。
とにかく、この兄妹、新たな段階を迎えたことは間違いないようだ。
「はいお兄ちゃん、あーんして!」
「え、えぇ!?」
「ずっと夢だったんだ。ね?」
「仕方ない……」
……今日は暑いことで。
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