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[第七弾]妹に言われたいセリフ
- 124 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/07/12(木) 21:05:34 ID:VZvtDdLR
- ウチの妹はおかしい。
信じられないくらい変な女だ。
どの辺が変かというと……
「あ、お兄様〜♥」
体中の骨が溶けそうなほど甘ったるい声で呼ばれた。
ため息とともに振り返ると、
「お兄様〜♥奈央ね、お兄様に会えなくて、すっごく寂しかったのー♥」
大袈裟なアクション込みで話し始める。
「あぁ、そうなんだ……」
「でも!でも♥こうして学校も終わったことだし、二人でお家に帰ろうねー♥」
「……あぁ、まぁ、結果そうなる」
「ふふっ、お兄様も結構大胆なのね♥」
「そうかな……?」
そうじゃないだろう……。
「気にしないで、お兄様♥お兄様の気持ち、奈央がしっかりと受け止めます♥」
感謝して良いのだろうか、これは。
「そうそう、お兄様ー♥今日は時間があるから、奈央が夕飯を作りますね♥」
「悪いよ」
「いいんですよ♥お兄様に尽くすことが奈央の幸せですから♥」
「そうなんだ……」
その幸せが非常に重いのだが……
「ね、ね♥お兄様♥夕飯は何が食べたいー?」
「いや、何でも……」
「もー、お兄様ったら遠慮深いんだからー♥」
このポジティブ思考が羨ましい……
「お兄様が素敵なのは分かりましたからー、せめて系統を教えてください。和?洋?中?」
「そうだなぁ……」
この場合は……
- 125 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/07/12(木) 21:06:19 ID:VZvtDdLR
- 「奈央の一番得意な料理が……」
「お兄様、そんなに奈央の料理を……!
わかりましたお兄様!この私、愛するお兄様のため、一生懸命作りますわ」
「あぁ、頑張って……」
「あ!申し訳ありません、お兄様!食材の買出しに行ってきますので、お先に帰って待っててください!」
「あ、うん。頑張ってね」
「はい!では!」
名残惜しそうに僕の顔を見ていたが、覚悟を決めたのか勢いよく走り出した奈央。
こう言っちゃ悪いけど……やっと一人になれた。
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本当に、奈央のことはよく分からない。
確かに僕に懐いていたけど、ここまでだったかどうか。
「お兄様?」
不思議そうに僕の顔を覗き込む奈央。
「美味しく……なかったですか?」
「いや、そんなことは……」
「そうですか!沢山作りましたから、どんどん食べてくださいね!」
ドンと目の前に置かれる大盛りのポテトサラダ。
……こんなに食えないって。
それよりも、
「ねぇ、奈央……?」
「何ですの、お兄様?」
「……何かあったの?」
「え……?」
動揺の色が奈央の顔に浮かぶ。
こういう違和感はなかなか外れないものだ。
「いつもと何か違うから」
「……お兄様には敵いませんね」
奈央がぎこちない微笑みを見せた。
「僕でよければ、話聞くけど」
「……聞かないでください」
- 126 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/07/12(木) 21:07:04 ID:VZvtDdLR
- 「……?」
「お兄様には言いたくありません……」
「ダメだ」
「……」
「そういう話ほど……僕が聞いといたほうが良い話だと思うよ。だから……奈央?」
「お兄様……」
奈央は覚悟を決めたのか、大きく息を吸い込み
「奈央は……見合いをすることになりました」
「……誰と?」
「許婚と聞きました……ですから、おそらく見合いといっても……」
「……」
「奈央は……お兄様と離れたくありません……」
俯いたままの奈央。
震えた声だけが耳に刺さる。
「奈央は……奈央は……」
「奈央……」
僕に出来ることは何だろう。
慰めることか?送り出すことか?
……違うよ。
もっと大事で大きな一言を、僕は持ち続けてきたんだから。
「奈央……僕は……僕も……」
「え……?」
「ずっと……奈央のこと……好きだから……だから、お見合いなんて止めてくれ」
「お兄様……?」
「ゴメン……僕はあんまり喋るの得意じゃないから」
「……お兄様……」
ガラにもないことを言ってしまった。
奈央が僕を不思議そうに見ている。
熱い頬を隠すため、俯いて奈央の返事を待つ。
「……お兄様」
その返事とは以外にも。
- 127 :遊星より愛を込めて ◆isG/JvRidQ :2007/07/12(木) 21:07:58 ID:VZvtDdLR
- 「では、お父様に早速連絡しませんとね♥」
「……は?」
「お兄様の気持ちはしぃっかり受け取りました♥これで二人は晴れて両想いですものね?」
「あれ……?お見合いは……?許婚は……?」
まさか……
「嘘?」
「嘘じゃありません。お見合いはする予定はありました。
でも、奈央はお父様に言ったんです『お兄様以外の人と結ばれるつもりはありません』と」
「……で?」
「お兄様次第ということで、許可を頂きました。もちろんダメでしたらきっぱりと諦めるつもりで」
「……許婚は?」
「うーん、随分昔に決められたものですから。今じゃ状況も違いますし、両家とも強制はしてないようです」
「……」
いいのか、それで……。
「もう聞きたいことは無いですか?」
「……一応」
「では難しい話はここまでにして、これからはずっと一緒ですねー、お兄様ー?」
「……ハメられた……」
「やーん♥お兄様、人聞きが悪いですわー♥奈央は、お兄様の本心を引き出しただけですもの♥」
「……」
奈央には負けっぱなし……。
……でも、試合には勝ったのかな。
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0ch BBS 2004-10-30