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[第三弾]妹に言われたいセリフ

934 :931 :05/01/16 19:51:20 ID:oSgsUbor
ピロリロリ〜ピロロ〜………
「ん…」
布団の中で惰眠をむさぼっていた俺を現実に引き戻したのは
おとといケータイに入れたばかりの着メロ、「月のワルツ」だった。
「…やっぱ良ーなぁ、この曲………と」
曲に聞きほれている場合ではない。まとわりつく眠気を振り切り、冷たい空気
をかき回しながら手探りでケータイを探して手に取る。
「ふぁい、もしも……」
『わあーーーーーーーーっ!!』
「!!?」
受話器から聞こえてきたのは聞き覚えの有る声の、耳を劈くような叫びだった。
『起きたぁ、蓮にい?』
「まあな…。ゆずか…?」
『そーだよ、おっはよーっ♪』
朝っぱらから大声で俺を叩き起こしたのは4つ年下の妹、柚葉だった。
天文学をやりたくて必死の思いでなんとか某有名国立大学に入学。と同時に一人暮らしを
始めて早10ヶ月が過ぎた。夏以来一度も帰省しておらず、実家に電話をかけた
回数も両手で数えられる程度だったので、妹の声が妙に懐かしいものに聞こえる。


935 :931 :05/01/16 19:53:05 ID:oSgsUbor
「まだ七時だぞ…なんだよ、そのテンションは…」
『ボクにとってはもう七時、だよ。部活だったらとっくに朝錬始まってる
時間だからねっ♪。』
「俺は夢の中にいる時間だ。特に今日みたいな土曜の朝にはな……寝かせて、
頼むから…」
『ダメだよぉ寝ちゃあ。今日は大事なお客さんが来る日なんだからぁ!』
ばかにうれしそうに言う。
「?あのなぁ、そっちに誰が来ようが俺にはかんけーな…」
ぴんぽーん
「うん?誰だ?」
『ほぉら来た!』
「おい、まさかお前…」
あわてて布団から飛びぬけ玄関へ向かう。鍵を開けて氷のように冷え切った
ドアノブに手をかけ、扉を開けるとそこには良く知っているちっちゃな影が
ケータイ片手に立っていた。

「おはよ!おにーちゃん♪」

正にいたずらが成功した時の勝ち誇った表情で、柚葉は白い歯を見せて
にっと笑った。


936 :931 :05/01/16 19:55:26 ID:oSgsUbor
「おま…なんでここに!?連絡もなしに!しかもこんな早くに?…って外さむっ!!」
「まーまー落ち着いてよぉ、蓮にい。とりあえずおっじゃましま〜す♪」
俺の矢継ぎ早な質問をさらりと受け流しさっさと我が家へ入ってゆく柚葉。
「うっわ!きったなーい!よく住めるね〜こんなトコでぇ。
あ、そーいえば朝ごはんまだだったっけ。台所借りるよー♪
ボクがちゃっちゃっと作っちゃうからさ♪」
「お前な…ってあ〜もう…」
完全に主導権を握られている。ここはひとまず様子を見よう。落ち着け俺。
ガタン!「あっごめん、おしょーゆこぼしちゃったぁ。」
ドン「ああっお砂糖もぉっ」
グシャっ「卵落としたぁ!」
落ち着け俺。
……
大騒ぎをした割にはフツーの朝食を二人で食べながら、先ほどの続きをする。
「で、急にどーしたんだよお前は…」
「うん。高校受験も終わったからさ、久々に蓮にいのとこに遊びに来たんだ♪
部活ももうあんまり無くって暇なんだよぉほんと」
「そーいや推薦だったもんな。でもお前いくらヒマだったからって、わざわざ
こんな時間に来んでも…」


937 :931 :05/01/16 19:57:06 ID:oSgsUbor
実家から我が家までは2時間近くかかる。向こうを5時前に出なければ
7時過ぎにうちに来ることなんてできないはずだ。
「始発で来たのか?親父もそんな時間によく行かせてくれたなぁ。
年のわりに古い人間だからなぁ親父は…。お袋の方が許してくれたのか、やっぱ」
「え……?あ、うん。そーなんだ」
「相変わらずだな、まったく。で、元気か二人とも」
「あー…うん…。…うん元気だよ…」
「そっか、ならいいけどさ。…ん。この卵焼き美味いな」
「あ、でしょでしょー?ボク最近卵焼きにこっててさぁ♪
今日のはちょっと自信あるんだよぉ♪」
「美味いは美味いが、台所半壊させてこれだけってのはちょっと物足りなくないか?」
何せ一人用の狭い食卓の上に乗ってるのはごはんと韓国海苔(大好物で、常に
備蓄してあるのだ)、卵焼き、それにタマネギとジャガイモの味噌汁だけなのだ。
「は、半壊って…ちょっとおしょーゆとかお砂糖とか
こぼしちゃっただけじゃないかぁ」
「台所の天井コゲてんだけど」
「あははっ♪き、気のせい気のせい。細かいこと気にしてちゃ立派な
天文学者になれないよぉ?うん!」
「…」
ここは我が家が全焼しなかっただけで儲けもんとしとくべきかもしれない


938 :931 :05/01/16 19:58:30 ID:oSgsUbor
「そーいや学校はどーだ?」
俺はごはんを口に運びながらたずねた。
「うん、楽しいよお♪でもこの時期はみんな受験勉強でさぁ、忙しくって
あんまかまってくれないんだよね〜」
「お前のハイテンションぶりについていけなくなったんじゃねーか?」
「あ、ひど〜い。いつも明るく楽しくお気楽に、がボクのモットーなんだよぉ♪」
「お気楽が8割占めてんだろ、おまえわ…」
休みの朝からこのテンションはこたえるな…
にしても…我が家での一人きりじゃない朝食は久しぶりだ。
「あの時以来…か」

ふいに思い出してしまった。あの人がいた頃を。

「ああもう、女々しいなぁ我ながら」
「何がメシなの?」
「いやメシじゃな…ってあーっ!」
ふと食卓に目を移すと、大事なものがなくなっている!
「俺の!俺の海苔が無いーっ!まさか柚葉っ」
「あれ?残してたんじゃないのぉ♪」
ぺろっと舌を出す。
「のぉぉぉぉ〜〜〜〜〜!」
「あはは冗談、冗談だってば♪」
にぎやかな朝食も悪くない。久しぶりにそう思えた。


939 :931 :05/01/16 20:00:14 ID:oSgsUbor
朝食を終えるとさっそく柚葉の催促が始まった。
「ねーねー、せっかく来たんだから買い物連れてってよぉー。
色々あるんでしょー、この近くって」
「そりゃまあ確かになんでもあるっちゃあるけどさぁ…」
俺の通ってる大学は都心のど真ん中にあり、当然下宿先である俺んちも都心に
程近い。都会とは言い難いところで暮らしている柚葉が目を輝かせるのも
うなずける話ではあった。が…
「お前、今日の最高気温知ってる?」
「ううん。何度?」
「2度だ2度。オマケに午後から雪も降るんだと。な?今日はやめとこう?」
「ええ〜〜!やだよぉ!今日がいいー!」
柚葉のダダこねも久しぶりだが、ここは懐かしんでいる場合ではない。
「お前俺が寒いの苦手だって知ってんだろーが。な、明日にしようや。時間あるんだろ?」
「やだっ!」
「!」
突然語気を強めた柚葉に俺は面食らった。柚葉も一瞬気まずそうな顔をするが、
すぐにさっきまでの調子に戻る。
「あ……あの…あ…ほ、ほらぁ、せっかく早めに来たんだからぁ。今日一日だけ
わがまま聞いてよぉ〜。ね♪」
「ん〜しょうがねえなぁもう…」
久しぶりに会ったんだ。妹にちょっとはサービスしてやらないと
バチが当たるってもんかもしれない。朝飯も作ってもらったことだし。
「んじゃあ行くか、買い物」
柚葉の表情がぱあっと晴れやかなものに変わった。



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0ch BBS 2004-10-30