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[第二弾]妹に言われたいセリフ

481 :NO.7 :02/09/03 00:58 ID:???
>>473の続きです。一発目

それからヒロインは戦い続けた。それは怪物だけでは無い、自分に宿った力への恐怖に、
いつか周囲に人を巻き込んでしまう恐怖に、いつまでも終わらない戦いの日々に。誰にも
相談できない苛立ちがさらにそれを増長させる。
ヒロインにとって明るい材料は何故か怪物達が自分しか狙わない事だけだ。
これで、少なくてもヒロインが知らない所で誰かが襲われる事は無い。それだけが安心できた。
理不尽な運命に振り回され傷ついてゆくヒロイン。それは、あまりにも哀れな戦士だ。
いつしか俺は漫画にハマり。夢中になって読み進める。
物語は進み、ついにヒロインの変身能力や怪物達の秘密が語られる場面になった。
怪物がヒロインを狙う理由、それは、ヒロインが前世に関係があった。ヒロインは前世で
敵国の王子と恋におちた姫だったのだ。決して実らない恋だった。その事に嘆き悲しんだ
二人は来世で必ず一緒になると誓いを立てて自ら命を絶ったのだ。
「ちょっと待てよ、これって・・・まさか・・・・・」
物語は続く。


482 :NO.7 :02/09/03 01:01 ID:???
王子と姫、両国の王は怒り狂った。愛する我が子を失ったお互いの王は憎しみに任せて
相手の子へ呪いをかける。
王子の国の王は姫が永遠に魔物に狙われる呪いをかけ、姫の国の王は二人が結ばれない為
に永遠に兄妹として生まれる呪いをかけたのだった。
ヒロインを襲う怪物の謎は解けた。では、変身能力は?それもやはり前世にあった。
それは両国の王妃達が授けてくれた力だった。王子と姫をお腹を痛めて生んだ王妃達は
我が子達へ呪われた運命に対抗する力を与えたのだ。
姫には魔物から自分を、そして、大切な人を守る力。
王子には呪われた運命を断ち切る力を。
真実を知ったヒロインに前世の記憶が蘇る。それと同時に自分が兄に抱いている感情を自覚
する、想い名は「愛」生まれた時からずっと一緒だった兄への想いは前世の時と比べ物に
ならない位に大きくなっている。それでもヒロインはこの事は兄へは言わないつもりだった。
前世の記憶が無い兄に真実を告げても、きっと信じてはもらえないだろう。
だったら、このまま兄妹でいい。そう思いながら家に帰るとそこには兄の後ろ姿があった。
ちょっとした、イタズラ心を出して目隠しをしてやった。まぁ、これ位ならいいだろう、
兄だって許してくれるはずだ、ところが思いのほか手は邪険に払われた。さすがにこれは
悲しかったので泣いてしまった。すると兄がやさしく抱き寄せてくれた。その行為がヒロイン
の想いを弾けさせた。兄は自分のした行為に驚き、慌てて離れてなにやら言っているが、そん
なことはあっさりと聞き流して真実をいきなり言った。
兄には信じてないが、そんな事では愛の狂喜は止まらない。ヒロインは夜になるとTシャツ
一枚の姿で再度、兄の部屋を訪れる。しかし、やはり兄の記憶は戻ってない。
それなら、思い出させるだけだ。ヒロインは兄にキスをして誘惑する。兄はヒロインを受け入れ
その夜、二人は結ばれ。結ばれ事で兄の力が発動した。二人は呪われた運命に勝ったのだ。
「なんだよ、これ・・・・・」


483 :NO.7 :02/09/03 01:04 ID:???
俺は呆然と呟いた。似ている、この漫画はあまりにも今の俺と妹の状況に似すぎていた。
似ている?本当にそうなのだろうか?いや、違う、答えはわかっていた。これは似ている
のでは無い、誰かが似させているのだ。そしてその「誰か」は恐らく妹だ。しかし、何故?
そこまで考えて俺は漫画を手から落としてしまった。漫画は残り最終話があったがとても読む
気にはなれない、俺は台所にいる妹に会いに部屋を出た。
「あっ、王子様どうしたの?もう〜、見られるとはずかしいよ〜」
エプロン姿の妹は俺を見ると恥ずかしいそうに言った。まだ料理の最中らしい。
「あ、ああ。ごめん、ところでお前「魔法っ子シスター☆」って漫画知ってるか?」
「うん、知ってるよ。昔、王子様が買ってくれた本だもん。でも、どんな話だったのか
は忘れちゃったんだ」
包丁で野菜を切りながら妹は答える。だが、俺には妹が嘘を言っているのがわかった。
ずっと一緒にいたんだ、それぐらい分かる。俺はもう一度聞いて見る。
「本当か?本当に忘れたのか?なぁ、お願いだから本当の事を、」
「忘れたって言ってるでしょ!!」
俺の言葉は妹の叫びで止められた。しかし、その反応は知っていますと証言したようなものだ。
「お前・・・、なんでこんな事したんだよ・・・・・」
「知らない!わからない!私には王子様が何を言ってるのかわかんないよ!」
「嘘だ!昨日お前が俺に話した事は、あの漫画の内容にそっくりだ、その前にとった行動もその後
の行動もほとんど漫画と同じじゃないか。お前は漫画のヒロインを自分に重ね合わせたんだろう?」
「やめて!そんなこと言わないで!私は・・・私達は本当に・・・本当に・・・・!」
「違う!それは漫画の話だ!俺は王子様なんかじゃ無い、お前のお兄ちゃんなんだよ。
でも、俺は昨日言った通りに、お前を愛している。それじゃダメなのか?」
「わ、私は・・・・」
妹は泣いていた。俺はそれを見て何も言う事が出来なかった。しばらく妹の泣き声だけが聞こえていた。


484 :NO.7 :02/09/03 01:06 ID:???
やがて涙を出し切った妹が独白するようにぽつり、ぽつりと喋りはじめる。
「・・・私は強くなりたかったの、昨日お兄ちゃんは兄妹でも愛してくれるって言ってくれたけど
私はそこまで強くなれなかった、私の想いは兄妹の壁を超える事ができなかった。だから、あの
漫画と自分を重ねたの。私達は運命で結ばれている、だから兄妹で愛し合って悪くない、て。
そうする事でしか私はお兄ちゃんに想いをぶつける事ができなかった。
こんな妄想で自分を騙してでしか自分の気持ちに素直になれかったの。
ごめんなさい、お兄ちゃん。もう、こんな事は終わらせるからね」
そう言って妹はゆっくりと後ろへ下がって行く。
「一体、何を」するつもりだ?と、聞こうとしたが言葉は妹に遮られた。
「ねぇ、お兄ちゃん。「魔法っ子シスター☆」って最後どうなるか知ってる?」
「いや、知らない」
俺は最終話だけは読んでいなかった。
「だったら、教えてあげるね。あれね、最後はヒロインが自殺して終わるんだよ」
「え?」
「呪いは解けても兄妹である事には変わりは無いでしょ?だから、今度こそ普通の男女として
出会いましょうねって。そうしてヒロインは死んでしまうの、私と同じね」
「そんな・・・」
「だからね、私も・・・・・」
妹は手に持っていた包丁を喉元に当てた。まさか・・・!
「やめろ!」
「さ よ な ら お 兄 ちゃ ん」
妹は笑った、それが最後の笑顔だった。目の前が真っ赤に染まった。
「あ、ああ・・・・・あ・ああ・・・」
赤く濡れた妹を抱きしめながら俺は意味の無い呟きを出す。
どうして、どうしてこんな事になったのだろう?いや、答えはわかっている。
俺が悪いんだ!
俺が妹を追い詰めたんだ!俺が馬鹿な正義感なんかを出さなければ良かったんだ!俺が妹を
抱いたから!俺があの時抱きしめなければ!俺があんな漫画を買いさえしなければ!
俺が、俺が、俺が、俺が、俺が、俺が、俺が、俺が、俺が!
「俺がぁぁっぁぁぁあぁぁぁぁっぁぁぁぁあああっぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
絶望を叫び続けながら俺の意識は闇に落ちていった・・・。


485 :NO.7 :02/09/03 01:09 ID:???
気が付くと、俺は白い部屋でベットに寝ていた。消毒液の匂いがする、ここは病院らしい。
「気が付きましたか?」
声がする、首を横に向けると白衣を着た青年が立っていた。ここの医者だろう。
「お、俺は・・・?ううっ」
なんだ?頭が酷く痛む。
「まだ、あまり頭を使わない方がいいですよ。あなたの精神は今とても不安定ですから」
「不安定?どういう事です?」
「説明しましょう。あなたはここに運ばれて来た時、あなたの自我はある出来事によって崩壊
寸前だったのです。このままでは確実にあなたは廃人になってしまうと判断した私達はあなたの
記憶から原因となった出来事を消しました。そうする事でしかあなたを救えなかったのです。
ですが、もう安心してください、治療は成功しました。精神が不安定な為しばらくは頭痛等が
すると思いますが、一週間程で退院できますよ」
医者はそう言うと病室を出て行った。それから一週間が過ぎ、俺は退院した。病院にいる間には
医者の言った「ある出来事」を思い出す事は無かった。家に帰ってもそれは同じだった。
どうやら俺は本当に忘れてしまったらしい。
それから、数年が経った。
今、俺の隣には妻がいる。俺は結婚していた。妻とはあの時、世話になった病院で知合った。
俺が世話になった先生に挨拶しに行った時に彼女も同じ目的で来ていたのだ。彼女は昔、意識不明
の重体であの病院に入院した経験があったらしい。
今の俺は幸せだ。俺は妻を心から愛している。
「ねぇ、あなた、どうしたの?さっきから私の方ばかり見てるわよ」
「いや・・・、君の顔に見惚れていたんだ」
「やあ、もう・・。ふふふっ」
そう、俺は妻を愛している。もちろん首に薄く残った傷跡も含めた妻の全てを・・・。

檄長文、失礼しました



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0ch BBS 2004-10-30