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[第二弾]妹に言われたいセリフ

793 :NO.8 :03/02/12 22:10 ID:???
続きです。

廊下には、青白い顔をした妹が立っていた。
喉の調子が悪いのか、呼吸をする度に金属音がひゅーひゅーとしている。
「は、ケホッ。ほにいちゃ・・・ゲホッ!」
ずいぶん前から俺を呼んでいたのかも知れない。
一瞬だけ嬉しそうな顔をして、だけどせき込んでしまい、うずくまる妹。
木刀を捨て、駆けだした。
「おい!大丈夫か?」
そう言って肩を抱きしめる。その肩が凄まじく冷たい。
冷たいのは肩ではなく、パジャマだった。汗をかなりかいているようだ。
「お前、その汗・・・」
「あはは、ケホッ。ほ兄ちゃんを、呼びに行こうと思って・・・ゲホッ!」
激しく咳き込む。かなり喉がやられているようだ。
「いいから、まずは部屋に戻れ。ほら肩貸してやるから」
そう言って無理矢理肩に手を回し、立たせる。
ゆっくりと部屋に行き、妹を布団に寝かせようとして、気がついた。
布団まで汗がびっしょりなのである。
(新しい布団を出さなきゃダメだな・・・)
先程まで眠っていたとは考えられないほど頭が良く回る。
そんな事が脳裏をかすめたが、取りあえずそんなナルシズムは放っておく。
「ちょっと待っていろ。布団を引いてくるから」
「寒い・・・」
まるでうわごとのように呟く。
「これでもかぶっていろ」
そう言って毛布を妹に掛けてやる。
寒いと言っていたが、あの状況では誰でも寒いだろう。
「ちょっとだからな。辛かったら横になっていろ」
そう言って客間に行き、押入の中にある予備の布団を引く。
いつも母親に「お前は布団の引き方がきたない」と文句を言われているが、
この際はどうでも良いだろう。

794 :NO.8 :03/02/12 22:12 ID:???
妹の部屋に戻ると、妹は毛布を被って横になっていた。
「ほら、布団を引いたから向こうで寝ろ」
と言って肩を掴んだとき、パジャマが汗でびっしょりなのを思い出した。
これを着替えさせないことには、体力がどんどん奪われていく。
替えのパジャマを探すべく、悪いとは思うがタンスを勝手に開けさせて貰う。
パジャマを発見して、ついでにショーツも引っ張り出す。
ブラジャーも、と思ったが、寝ているときはつけていないことを思い出す。
タンスから引っ張り出した物一式を持って、妹の元に戻る。
かなり苦しそうな顔をしている。どうも、以前よりも熱が上がっているようだ。
「おい、起きて着替えろ!いつまでもそのままじゃ悪化するだけだぞ!」
べちべちと妹の頬を叩くが、一向に起きない。
ひゅーひゅーと苦しそうな呼吸をしているだけだ。
歯をガチガチ鳴らして、時折「寒い・・・」と言うが、殆ど意識はない。
「おい、マジかよ・・・。俺が、着替えさせるのかよ・・・。」
反応がない妹を見て、俺は天を仰いだ。
「いや、ここはアイツを呼んだ方が・・・」
いくら兄と言えども、着替えさせるのなら同性の方が・・・。


795 :NO.8 :03/02/12 22:12 ID:???
と思ったところで、今は夜中な事に気がついた。
(いやいや、夜中と言えどもこれは緊急事態。呼べば来てくれるはず)
そう思って携帯を部屋に取りに帰る。
携帯でアイツを呼び出す。
だが、呼び出し音がしている最中に妹の苦しそうな顔が浮かんだ。
確かに、携帯でアイツを呼べば、急いで俺の家に来てくれるだろう。
夜中だというのに、下手したら車でぶっ飛んでくるだろうが、
だが、それでもやはり時間はかかる。
やはり、俺が着替えさせた方が時間はかからない。
別にやましいことをしようとしているのではない。
それこそ緊急事態だ。何も、のぞきやセクハラをするわけではない。
これはれっきとした人助けだ。医療行為だ。
一部違う気もするが、そう気持ちを奮い立たせた。
ぶつりと音がして、電話が繋がった。
「ふぁい、もしもし。こんな時間に何の用?」
眠そうなアイツの声がした。
だが、俺の指は、無意識のうちに通話終了のボタンを強く押していた。


796 :NO.8 :03/02/12 22:13 ID:???
「よし・・・やるぞ・・・」
パジャマのボタンを上から外していく。
最初のボタンに手をかけようとしたとき、緊張で手が震えた。
(ここまで来て負けるわけにはいかない)
思い切って、一番上のボタンを外した。
一番辛かったのはここだった、と思う。あとは比較的スムーズに行った。
濡れて冷たくなったパジャマを脱がし、バスタオルで汗を拭き取る。
湿布を胸元と喉元、それに背中に張り付け、
その後、体が冷えない内に新しいパジャマを着せる。
そして新しく引いた布団に妹を寝かせる。
ただそれだけのことだった。

時間にすれば、わずか10分もかかっていなかったと思う。
それなのに、途轍もなく疲れた。精神的にも、肉体的にも。
まあ、ショーツまでは結局取り替えなかったのだが、
それでも意識のない人間を動かすと言うのは凄まじく重かった。
途中で目覚めるかと思ったが、妹は結局目が覚めなかった。
身体的成長に関しては何も見なかったことにしよう。
まあ、数年前まで一緒に風呂に入っていたのだ。ときっぱりと割り切ることにする。
年頃の女の子だ。出るところが出るのが普通なのだ。

797 :NO.8 :03/02/12 22:14 ID:???
その後、妹の寝顔を見ながら、額に湿布を貼っていなかったのを思い出し、
妹の部屋に湿布を取りに帰る。
部屋の中は空き巣が入ったような荒れようだった。
持ってきた湿布を妹の額に貼り付ける。
そして妹の部屋を片付けに行く。
念のため、布団や毛布は乾燥するように干しておく。
熱を測ってみたところ、40度を少し切る程度だった。
最近、俺が風邪を引いて高熱を出したときに貰ってきた解熱剤があったが、
薬は下手に他人に飲ますと危ないと思い、止めておいた。
それこそ、本当にヤバくなったら救急車を呼べば良いのだ。
そして、その後は結局妹のことが心配なので、自分の部屋から毛布を引っ張ってきて
妹が寝ている部屋の隅で丸まって寝た。

798 :NO.8 :03/02/12 22:14 ID:???
「お兄ちゃん・・・」
妹の声が聞こえた気がして目が覚めた。
妹は布団の中からこちらを見ていた。
「どうした?腹でも減ったか?」
妹の近くに寄って聞いてみた。
「それもあるけど・・・ゴホッ!ちょっと喉が乾いたから」
「おお、ちょっと待っていろ。今、水を持ってきてやるから」
茶の間のポットからお湯を汲み、体温計も持って妹の所に戻る。
「ほら。熱いから気を付けろよ」
「うん・・・」
ずずずと少しずつ白湯を飲んでいく。
「それと、熱も測っておけよ」
そう言って体温計を置いて茶の間に戻る。朝食を準備する為だ。

799 :NO.8 :03/02/12 22:16 ID:???
朝食後
「ところで、熱は何度あった?」
「うん、7度6分」
「まあ、朝は熱が低いからな。じゃあ、きちんと薬を飲んで寝ていろよ」
「うん。昨日に比べると大分良くなった感じがするけど・・・」
「それでもきちんと寝ていろ。そうだ。何か食べたいものはないか?」
「食べたいもの?」
「ああ、風邪を引いているときくらい自分の食べたいものを食べてもバチは当たらな

 いからな。何でも良いぞ」
「うーん、甘くて冷たい物とか、かなぁ・・・?」
「甘くて冷たい物か・・・よし、わかった」
「無かったら別に良いからね」
「風邪引いている人間がそんな遠慮するなよ」
「うん・・・」
「じゃあ、最低でも今日1日はきちんと寝ていろよ」
そう言って俺は部屋を出ようとした。
「ねぇ、ちょっと待って、お兄ちゃん・・・」
だが、妹の控えめな声に呼び止められた。
「ん?どうした?」
「このパジャマ・・・昨夜私が寝ているときに着ていた物じゃ無いんだけど・・・」
「うっ・・・」
いかん、気づかれた。
「とても寒くて、お兄ちゃんを呼びに行こうとしたところまでは覚えているんだけど
 その後は気がついたら朝だったし、いつ、着替えたのかな・・・?って」
「それはだな・・・何というか、お前は昨夜は汗がひどくてだな」
「・・・」
「汗で濡れたパジャマのままだと、体力を奪われて風邪に良くないと思ってだな」
「・・・・・」
「ま、何というか、着替えさせたというか、あ、いや別にで見てないぞ」
「・・・・・(赤面)」
妹は俯いて顔を赤くしてしまった。

800 :NO.8 :03/02/12 22:17 ID:???
「まあ、真面目な話、あのまま汗びっしょりのパジャマを着せておくわけには
 いかなかったんだよ。無断で着替えさせたのは悪かったと思う。この通りだ」
俺は素直に頭を下げた。
いくら妹とは言え、風邪だからとは言え、緊急事態だからとは言え、
承諾無しに服を着替えさせるのは良くない。
これは、俺が妹に攻められても仕方がないことであると思う。
だが、妹は俺を攻めなかった。
「お兄ちゃんは一番良いと思う方法を取ったんだもの。私は怒らないよ。
 それに、私が逆でも、多分お兄ちゃんを着替えさせていたと思うし」
妹の言葉は続く。
「ちょっと恥ずかしいけど、お兄ちゃんなら・・・」
最後の方は殆ど聞き取れないくらい小さな声だった。
「え?何?」
「何でもないよ」
「最後の方が聞こえなかったんだよ。何て言ったんだ?」
「何でもないって!ゴホッ!ゴホッ!!」
大声を出そうとしてせき込む妹。
「大丈夫か!?」
駆け寄って訊ねると涙目になりながらもこくんと頷いた。
「まあいいや、とにかく今は風邪を治すことに集中しろよ」
そう言って今度こそ部屋を出ていく。
俺が部屋を出るときに妹が小さく呟いた一言は、俺の耳には入らなかった。
「お兄ちゃん・・・ありがとう」

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0ch BBS 2004-10-30