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[第二弾]妹に言われたいセリフ

681 :NO.8 :02/12/24 22:35 ID:???
そして、昼食の後はDVD鑑賞となった。
3人で並んで往年の名作映画を見る。
・・・が、俺はどうにも面白く感じない。
両隣の2人を見ると、真剣に食い入るように画面を見つめている。
そんなに面白い映画だろうか・・・。と思うが、どうも面白いとは思えない。
だがしかし、ここでうたた寝など始めようものなら、
両方からあとで何を言われるか分かったものではない。
昼食後で、眠い中、俺は意識を集中させてTV画面を見つめた。

っと、意識が飛んでいた。
マズイと思って画面を見ると、ヒロインが斧を持って暴れ回っている。
いや、主人公が手錠をかけられていたのか。しかし、斧でぶった斬るとはなぁ・・・。
眠気も一瞬で吹っ飛び、画面を見つめる俺。
だが、左の肩に軽い衝撃が。
見ると、妹の頭が俺の肩に乗っかっている。
「おい・・・」
と言おうとして声が止まる。妹は寝ていたのだ。
気配だけで察知したのか、無言でTVの音量を下げるアイツ。
「寝てるんでしょ?」
「ああ」
なかなか気が利く奴だなぁ、と思った。

682 :NO.8 :02/12/24 22:37 ID:???
「今だから言うけどさぁ・・・」
小声でアイツは言い出した。
「ん?何だ?」
聞き返す俺。
「実は、アタシは秘密にしていることがあるんだ・・・」
「え・・・?」
「ほら、小学校3年の時だっけ?秘密事は無しにしようって言い合ったよね」
「ああ」
そういえば、仲良くなっていったのはその頃からだった。
「けど、その時からずっと秘密なことがあるんだ」
「実はお前は男だった。とか?」
無言で殴られる。
「別に言わなくても良いことなんだけどね・・・」
しかも、俺を殴ったことは見事に無視されている。
「いつか、言おうと思っているけど、その時はもしかしたら来ないのかも知れない」
「ふーん」
「だから、言いたいけど、言わない。アンタにはアタシが秘密を持っていることを知っていて欲しい」
「だったら、今言っちまえば良いだろう」
「言いたいけど、言ったら最後、アタシ達3人はもうバラバラになっちゃうと思う・・・」
思わずぞっとしてしまった。
アイツの、本当に真剣な顔を見たからだ。
「そんなに、そんなに大切なことなのか・・・」
俺もつられて真面目になる。
「だから、秘密を持っていることを覚えていて」
「ああ」

683 :NO.8 :02/12/24 22:37 ID:???
気が付くともう映画はクライマックスになっていた。
ヒロインが大声で主人公の名前を叫ぶ。
その声で、妹も目が覚めたようだ。
「ん・・・寝ちゃってた・・・?」
俺の顔を見ながら小首を傾げる。
「ああ、だけど今良いところだ。ここを見なけりゃこの映画を見たとは言えないな」
「逆に言えば、この映画はこのシーンのためにあると言っても良いわね」
アイツも俺に加勢する。
「良かった・・・」
まだ半分寝ぼけながら妹は姿勢を正す。

684 :NO.8 :02/12/24 22:38 ID:???
映画が終わり、妹は感動して涙を流していた。
アイツも妹につられ、もらい泣きしていた、が、俺は泣けなかった。
「感動だったねぇ」
「うん・・・」
鼻声になりながらも言っているが、俺は泣くまで感動は出来なかった。
「お兄ちゃんも感動したでしょ?」
「ああ、まあな・・・」
適当にお茶を濁す。まあ、それなりに感動は出来なんだけどなぁ。そこまでは。
「それより、もうそろそろ帰らないか?」
もういい加減な時間だ。そろそろ帰った方が良い。
「え?もうそんな時間?」
「ああ、そろそろ帰らないと迷惑にもなりかねないしな」
俺と妹は立ち上がり、帰る準備を始める。
だが、アイツが「夕飯も食べていったら?」と言い出した。
まあ、食べていった方が俺は帰ってから何も作らなくて良いから楽なんだが・・・。
しかし、昼食もお世話になったようなものだ。夕飯までお世話になるわけにはいかない。
「ああ、有り難いが、気持ちだけ受け取っておくよ」
俺は少し笑いながら答えた。
「そう、か・・・」
寂しそうな言葉とは裏腹に、笑うアイツ。
「ま、今日の所は帰るわ。本当に邪魔したな」「うん、じゃあね」
「今日はどうもありがとう。お姉ちゃん」「どういたしまして」
えらく反応が速かった気もするが・・・。気にしないでおこう。
「玄関まで送るわ」
そう言って玄関まで出てきてくれた。
「じゃあ、また明日学校でね」
「ああ」「うん」
そう言って、俺と妹は帰った。

685 :NO.8 :02/12/24 22:39 ID:???
帰り道

「今日は楽しかった・・・」
夕日を見ながら妹がそう呟く。
「そうか。それは良かった」
「お兄ちゃんは楽しくなかった?」
「楽しくなかったと思うか?」
「ううん」
「当たり前だろ?楽しいに決まっているじゃないか」
「ケーキが作れなかったのが残念」
「最初からケーキは難しいぞ。簡単な物から作り始めて、練習していけば大丈夫だ」
「じゃあ、お兄ちゃん教えてくれる?」
俺は一瞬躊躇った。
「ダメ?」
妹が聞いてきた。

「ダメな訳ないだろう?」
妹の頭を撫でてやった。
「ゆっくり、練習していこうな」
嬉しそうに目を細める妹。
「お兄ちゃん。ありがとう。大好き!」
そう言って俺の手を取る妹。
手を繋いで家に帰る兄妹の影は、長く長く延びていた。

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0ch BBS 2004-10-30